グラビア 郷土の味をつくる 株式会社しまおう(長崎県) 取材先データ 株式会社しまおう 〒853-0031 長崎県五島市(ごとうし)吉久木町(よしくぎちょう)729-1 TEL 0959-74-2525 写真・文:官野貴  長崎県五島市に所在する「株式会社しまおう」(以下、「しまおう」)は、地元や県内で水揚げされた海産物を使った練り物製品の製造、販売を手がける。製品は、五島市の郷土食として長年市民に親しまれている。また、市内の飲食店などで提供され、離島を訪れる観光客にも好評だ。  同社における障害者雇用のきっかけは、9年前に障害者就業・生活支援センターの依頼で職場実習を受け入れたこと。現在では、従業員23人中、5人が障害のある従業員であり、若い世代が島を出てしまい働き手の少ない離島において、障害のある従業員が欠かすことのできない戦力となっている。  9年前に職場実習を経て入社したのが石田(いしだ)利香(りか)さん(58歳)だ。実習で集中して作業に臨む姿が雇用につながったという。「食べ物をつくるのが得意です。成型がイメージ通りに仕上がるとうれしい」と話す。  入社3年目の門口(かどぐち)恵海(めぐみ)さん(28歳)も、職場実習を経て入社した一人。仕事のやりがいについてたずねると「自分のつくった製品が、贈答品などとして日本全国に送られていると思うとうれしいです」と教えてくれた。  島外で働いていた佐々野(ささの)瑠哉(りゅうや)さん(27歳)は、地元の福江島(ふくえじま)で働きたいとの思いから、しまおうへの転職を決めた。「しまおうは楽しい職場です。ここで働き続けたい」と話す。  市内のスーパーなどへの配送・納品を担当している井川(いがわ)宏汰朗(こうたろう)さん(21歳)は、特別支援学校在籍時の職場実習を経て入社。担当業務は「自分に合った仕事」と話す。納品の際、「お客さまから『しまおうのすり身が一番おいしいよ』と話しかけられたことがあり、とてもうれしかった」と教えてくれた。  同社は2024(令和6)年度、「障害者雇用に関する優 良な中小事業主に対する認定制度」(もにす認定制度)の認定や「障害者雇用優良事業所」県知事表彰を受けた。今後も、特別支援学校の職場実習を引き受けるなど、障害者雇用に貢献していく予定だという。 写真のキャプション 人気商品の一つ「すり身パック」の製造工程で、充填機にすり身を補充する石田利香さん すり身が充填されたパックの成型作業。手でパックを押し、形を整える。力加減が重要だ 成型したすり身パックをコンテナに並べる石田さん(左)。充填機への補充と成型の作業を同時並行で行っている 「すり身パック」の裏側に封印シールを貼る門口恵海さん パック裏側の表示を隠さない位置に、まっすぐに貼りつける シールを貼り終えたすり身パックをコンテナに並べる門口さん 「あじ巻かまぼこ」の製造工程で、すり身の計量・打ち出しを担当する佐々野瑠哉さん(左から2人め)。周囲の作業の進捗を見ながら、タイミングよくすり身を打ち出す 製造装置の洗浄を行う佐々野さん。装置のセッティングも担当しており、製造部門において欠かせない社員だ 出荷作業の様子。石田さんは、賞味期限の印字を1点1点ていねいに確認しながら作業を進めていた スーパーの売り場に並ぶ「しまおう」の練り物製品。地元で愛される郷土の味だ スーパーの売り場に製品を並べる井川宏汰朗さん。「自分に合った仕事です。お客さまが見やすいように商品を並べることを心がけています」と話す