編集委員が行く 顔の見える仕事と業務マッチング 植村牧場株式会社(奈良県) 武庫川女子大学 准教授 増田和高 取材先データ 植村(うえむら)牧場株式会社 〒630-8102 奈良県奈良市般若寺町(はんにゃじちょう)168 TEL 0742-23-2125 FAX 0742-23-2126 増田(ますだ)和高(かずたか) 編集委員から  障害者雇用を検討する際、「障害者でもできる仕事」という発想を耳にすることがある。しかし、「障害者」と一括りにされる人々は、実際には多様な個性と得意分野をもっている。そうした個別性をとらえずに業務を調整することは、真のマッチングとはいえないはずである。  今回は「障害者雇用のさきがけ」として40年以上の実績を誇り、全国から行政や政治家が絶えず視察に訪れる植村牧場株式会社を取材した。植村牧場では、障害という枠組みで人を見るのではなく、「仕事」を通して「その人自身」を見つめる姿勢が貫かれており、その姿勢のもと実施される業務マッチングについて紹介したい。 写真:官野貴 Keyword:酪農、知的障害、業務の切り出し、業務マッチング、職住一体型雇用 POINT 1 生活の安定が仕事の土台 2 「障害」ではなく「人」を起点に考える 3 企業価値を高める「ていねいさ」  奈良市街地の静かな住宅地に所在する、1883(明治16)年創業の「植村(うえむら)牧場株式会社」(以下、「植村牧場」)。般若寺(はんにゃじむ)、旧奈良監獄、奈良ホテルなど、歴史ある名所に囲まれたこの地で、創業以来140年余にわたり運営を続けている。牧場の敷地は約6600u。その敷地に、牛舎1棟のほか、加工場やレストラン、アイスクリームの販売所、グループホームが建つ。まず驚いたのは、清潔感があり、かつ洗練された、木造のつなぎ牛舎。創業時から使用していた瓦葺(かわらぶき)牛舎が台風被害を受け、改修に向けた業者探しが難航していた際、宮大工が名乗りをあげ、その協力を得て2019(令和元)年に新牛舎が完成。内装もさることながら、新牛舎の屋根に乗るホルスタインのオブジェも印象的だ。この牛舎で育った牛から搾乳された牛乳は低温殺菌の後、牛乳瓶に充填されて自慢の「植村牛乳」として出荷される。毎朝約800本程度が近隣の一般家庭やお店に配送されるだけでなく、奈良ホテルをはじめ有名店にも牛乳を卸しており、奈良に皇族方が宿泊される際には、いわば「宮内庁御用達」として納入されているブランド牛乳である。  取材に応じてくれたのは、同牧場4代目、代表取締役の黒瀬(くろせ)礼子(れいこ)さん。朗らかで気さくなその口調のなかに、障害者雇用と仕事に対する確かな信念と覚悟が垣間見えた。 始まりは「人手不足」から  植村牧場で障害のある従業員の雇用が始まったのは約45年前。黒瀬さんが代表になって間もないころであった。きっかけは「朝早く、夜遅い牧場の仕事に人手が集まらなかった」こと。立地的にも大阪や京都、三重に接しており、就職場所と業種に選択肢が多い奈良市において、牧場での求人募集をかけても1年近く応募はなかった。そうしたなか、ハローワークから「一度、障害者を雇ってみては」といわれたことをきっかけに、障害のある人を雇用した。初めて知的障害のある人を雇用したとき「コミュニケーション能力がどの程度で、どの程度の業務なら働けるのかなど、彼らに対する認識は浅かった」と語る黒瀬さん。採用当初はまさに試行錯誤の連続であり、当初は牛糞の運搬や除草などを任せていたが、除草作業の際に大事な植木や花まで綺麗に抜いてしまうなど、思いもよらないトラブルも経験した。「正直、障害者雇用はむずかしいかもしれない」と感じる場面もあったが、その都度、特別支援学校の教員やハローワークの職員から助言を受け、一人ひとりの特性に寄り添いながら、できる仕事をともに見出していった。現在では、知的障害のある人を中心に9人の障害のある従業員が働いている。性別や年齢もさまざまで、20代から50代までの幅広い人材が日々の仕事に従事しており、うち8人が敷地内の居住施設で生活をしている。日々のルーティンをこなしながらも、個々のペースを尊重し、必要に応じて声をかける。こうした日々の積重ねが、相互の信頼関係と安定した就労につながっている様子がうかがえた。 「生活」が支える「仕事」  初期の雇用は通勤スタイルだったが、第1期生の雇用が施設入所によって終了したことをきっかけに、黒瀬さんは「住み込み」という新たなスタイルを提案し、第2期生の雇用に踏み出すことになる。敷地内に居住スペースを設け、生活と仕事を一体で支える仕組みを整えた。いわゆる「職住一体型」の雇用である。背景にあったのは、「しっかり働いてもらうためには、しっかりとした生活の土台が必要」という思い。親元を離れての宿泊体験から始まった「職住一体型」の雇用であるが、その効果は「朝早い牧場の仕事への適応」以外にも、生活スキルの向上が本人の自信となり、やがて仕事への挑戦意欲にもつながっていくという効果をもたらした。洗濯、布団干し、着替えといった日常の営みが、「やってみたい」という意欲を生み出し、働く力へと変わっていったという。ある男性従業員は、最初は生活のなかでもほとんどのことに手助けを必要としていたが、グループホームでの生活を始め、自分の洗濯をし、時間を見て就寝し、定時には持ち場に向かう生活を続けるなかで、いまでは早朝3時の業務に向けて自力で起床できるようになった。自分のことが自分でできるようになることで、自然と仕事にも責任感をもって取り組むようになっていったとのこと。また、生活のなかでこうした小さな成功体験を積み重ねることで、休日には電車に乗って映画を観に行ったり、大阪・関西万博にも出かけたりするようになった。そうした活動が本人にとっての「楽しみ」となり、生活の豊かさを実感できるようになる。植村牧場の仕事は単なる労働ではなく、生活の延長線上に位置づけられており、相互に好循環をもたらしていた。  植村牧場における「職住一体型」の雇用形態は、仕事と生活を切り離さずに支えるという取組みである。グループホームを敷地内に設け、働く場と住まいを一体的にとらえることで、生活面の安定と仕事への責任感が相乗効果をもって育まれている。これは、日々の生活が自立につながり、やがて職場での成長へとつながるという、まさに循環的なモデルである。しかしながら、すべての企業が植村牧場のような「職住一体型」の体制を整えることができるわけではない。都市部では用地の確保がむずかしく、生活支援のノウハウを社内に備えることも現実的ではない企業も多いだろう。それでも、この「職住一体型」から学べる重要な示唆がある。それは、仕事の安定のためには、生活面の安定が不可欠であるという視点だ。例えば、通勤スタイルの雇用であっても、働く障害のある人の生活状況に関心を持ち、必要に応じて地域における支援機関と連携を図り、住環境や通勤支援、体調管理などに配慮を行うことで、生活と仕事をつないでいくことは十分に可能である。また、定期的な面談や生活状況に関するヒアリングを通じて、仕事上の課題と生活上の課題を一体としてとらえる姿勢をもつことで、職場定着率を高めることにもつながる。就労継続の土台には、本人の安心できる日常があることを認識することが、企業側にも求められる時代となっている。「職住一体型」の雇用モデルはたしかに理想の一つであるが、その本質は「生活と仕事を切り離さずに考える」という価値観にある。この価値観を自社なりの形で取り入れていくことで、より多くの企業が障害者雇用の成果と可能性を実感できるようになると考える。 業務の切り出しとマッチング  障害者雇用を進めるうえで、しばしば課題としてあげられるのが「どのような業務を任せるか」という点である。採用したはよいものの、業務内容が本人の特性と合わないことによる業務上のミスマッチや、業務内容を調整する際に生じるストレス、こうした悩みは多くの企業が直面する現実であろう。そうしたなか、植村牧場が実践してきた「業務の切り出し」という工夫は、多くの企業にとって示唆に富む実践だといえる。植村牧場では、牛の世話、搾乳、牛乳瓶の洗浄、製品の箱詰め、配達助手など、多岐にわたる業務が存在している。それらの業務を作業として細かく分解し、単なる作業工程の分割ではなく、「意味ある単位」として切り出していた。例えば「牛乳の製造」とひとくくりにするのではなく、「牛乳瓶の洗浄」、「牛乳の瓶詰」、「製品となった牛乳を冷蔵庫に入れる」といった具体的な行動に分けて、それぞれに「作業の関連」と「ゴール」がみえるようにする。「仕事である以上、『障害があるから仕方がない』ということではすまされません。それぞれの仕事に責任をもってもらえるよう、厳しくいうこともあります。でも、時間はかかるかもしれないけれど、信じて任せれば応えてくれるのです。彼らはそれぞれの持ち場のプロフェッショナルなのです」と力強く語る黒瀬さん。こうした業務の切り出しが、達成感や責任感、連帯感の醸成につながっていると考えられる。  業務を切り出すことで、「何が得意で、何が苦手か」という本人の特性もみえやすくなる。加えて、「業務の切り出し」は、単に障害者に仕事を任せやすくするための手段にとどまらず、企業全体の業務設計を見直す契機にもなりうる。実際、「だれにとってもわかりやすい仕事の流れ」ができあがることで、障害のある人を含むすべての従業員の作業効率やモチベーションが向上したという報告もある。障害者雇用をうまく活用するために、特別な制度や大規模な設備投資が必要なのではない。まずは目の前の仕事をみつめ直し、「どのように任せたら、その人の力を引き出せるか」を考えること。そして、その第一歩が「業務の切り出し」だと考える。  植村牧場では、こうして切り出された業務と障害のある人の適性とのマッチングにも力をいれている。作業を「だれにでも同じように割りふる」のではなく、まずはすべての業務を順番に数カ月かけて体験してもらうことに取り組んでいるとのこと。植村牧場の業務は大きく分けて三つある。一つめは本来の酪農の仕事である牛の飼育、搾乳。二つめは搾られた牛乳を殺菌し瓶詰めにする業務。三つめは、その製品を各店や家庭に配達する業務で、運転をになう従業員の横に乗り助手的な役割を果たすことである。それぞれの業務を一通り体験するプロセスのなかで、作業中はつねに先輩たちがついて一緒に仕事をしながら作業内容を覚えてもらう。そして、作業を覚えた段階からは黙って仕事ぶりを観察しつつ、その仕事を任せてみる。その過程のなかで、一番適当と思われる作業をみきわめてその後はその作業を中心にになってもらう形で業務の割りふりを行っているということであった。「適した業務のみきわめはむずかしくないのか」という質問に対して、黒瀬さんは笑顔で「ていねいに教えても、翌日には同じミスをすることはよくあること。根負けしそうになったこともあったし、最初は適した作業が何かわかりにくいこともあったけれど、くり返しやってもらっていると一番適した、というか本人にとって『好きな作業』が必ずみつかる」と語ってくれた。「もちろん、ビジネスとしてみたときによくないことは叱ったり、注意したりすることもありますよ。でも、任せた仕事がきちんとできたときには『できたね!』って思いっきりほめるんです。そうすると自ずと仕事に対する責任感のようなものが芽生えてくるんですよね」といった黒瀬さんのコメントからもわかるように、こうした「小さな単位での体験」は、本人にとっても成功体験の積重ねとなり、「自分にもできることがある」、「次はこれに挑戦してみよう」といった前向きな意欲につながっていく。また、同僚にとっても、どこまでをサポートし、どこからは本人に任せるかという線引きが明確になることで、混乱や過剰な支援を避けることができるのである。 アナログだからみえるもの  「最新の設備はありません。業務内容もアナログそのもの。でも、手作業だからこそていねいな仕事ができるし、それが結果的にブランド価値になっているのです」。黒瀬さんは、そういって微笑む。一つひとつの業務が人の手で行われ、だれがどの仕事をになっているかがみえている。雇用の場面では「業務効率」に意識が向けられがちである。もちろん、それらは大切な視点だ。しかし、植村牧場のように、作業効率とは異なる尺度で、働く人の力が活かされている場面もある。  レストラン「いちづ」では、あえてキャッシュレス決済を導入していない。その理由は、現金会計なら落ちついて対応できる従業員がいるからだ。機械ではなくお客さまの目を見て、ていねいに「ありがとうございました」と頭を下げる従業員。黒瀬さんは「看板娘のこの子の接客をみて、また来たいと思ってくださるお客さまもいる」と語る。「いちづ」での接客だけでなく、植村牧場の業務では随所でこうした「ていねいさ」を感じ取ることができた。このように、障害のある従業員が発揮する「ていねいさ」や「まじめさ」は、ただの作業能力ではなく、顧客との関係づくりや企業イメージの向上にもつながる可能性を秘めている。とりわけサービス業では、その対応が「また来たい」という顧客の感情に直結する。効率化が重視される現代において、ていねいに仕事をすることは、むしろ希少価値になりつつある。AIや自動化が進んでも、人と人との「ていねいなかかわり」を求める場面は必ず残る。障害者雇用は、そうした「人間らしい価値」を再発見する機会にもなりうるのだ。  効率化だけが企業の成長を支えるのではなく、ていねいな仕事と、ていねいに働く人の姿勢が、顧客の心に残り、企業の信頼やブランド価値を築いていく。あらためてそうした視点の重要性について取材を通して認識することができた。 顔の見える仕事が生む価値  植村牧場では、「みんなの顔が見える範囲で仕事をする」ことが、仕事のあり方の根幹として大切にされている。それは、4代目の黒瀬礼子さんの祖父が残した教えでもある。従業員の顔が見えるからこそ、だれがどの仕事をになっているのかが自然と共有され、責任が生まれ、同時にその人にしかできない「自分の仕事」として誇りも芽生えていく。これは、障害の有無にかかわらず、だれにとっても働く喜びを実感できる重要な視点だ。障害者雇用というと、「だれでもできる簡単な作業を切り出して担当してもらう」というイメージをもつ企業もあるかもしれない。しかし、植村牧場では「障害者でもできる仕事」ではなく、「その人だからこそになえる仕事」がつくられている。その理由は、日々一緒に働くなかで、「その人の顔」がしっかりと見えているからにほかならない。「顔の見える範囲で仕事をする」ということは、ただ小規模であることを意味するのではない。それは、人と人との関係性が見え、業務と担当者が結びつき、顧客の顔までが見える距離であるということだ。例えば、配達でトラブルがあったときにも、「だれが担当していたのか」、「どのようなやりとりだったのか」が具体的にわかるから説明ができ、ていねいな対応が可能になる。また、顧客の顔が見える仕事であれば、障害のある従業員にとっても「自分の仕事がだれかの役に立っている」ことを実感しやすい。その実感こそが、モチベーションを生み、職場への定着や成長にもつながっていく。そうした透明性と信頼感が、植村牧場というブランドへの地域の共感を育んできた。植村牧場に併設されたレストラン「いちづ」は映画監督の河瀬(かわせ)直美(なおみ)さんが命名し、その看板を手がけたのは書道家の紫舟(ししゅう)さんである。こうした著名人だけでなく、地域が自然と植村牧場の応援団にかかわっていることが、こうした「顔の見える関係」を大切にしてきた植村牧場の価値を物語っているように感じることができた。  「顔の見える」仕事のあり方は、規模の大小にかかわらず、どの企業にとっても参考になる姿勢である。障害者雇用の導入を検討する企業には、まずは自社の職場において「だれがどんな仕事をしているのかが見えているか」、「顧客や関係者と顔の見える関係が築けているか」という観点をもってみてほしい。そうすることで、単なる労働力の補填ではない、個人の強みや関心を活かした仕事のマッチングが可能になるものと考える。 新たな挑戦  順調と思われる植村牧場での障害者雇用であるが、黒瀬さんは新たな課題も出てきているという。そのうちの一つがこれまで雇用してきた従業員の高齢化問題である。加齢による処理能力の低下や、判断能力の低下など高齢化は業務にも影響を及ぼすようになってきている。黒瀬さんは「彼らが働きたいと望むかぎり、雇用を続けていきたい」と語るが、両親が他界してしまっている従業員などの場合、施設入所も含め「老後」をどう考えるのかということは大きな課題であるという。こうした側面については、やはり企業の努力だけでなく行政とも協力して検討を進めていく必要があるものと考える。  また、黒瀬さんはこれまで知的障害のある人を中心に雇用してきたが、こうした高齢化の問題と継続する人手不足の課題を受けて、地域の障害者就業・生活支援センターと協力して精神障害や発達障害のある人の雇用にも取り組み始めている。障害特性の違いにより、新たに従業員同士の人間関係からくるトラブルや、金銭的なトラブルなど知的障害のある人の雇用では経験したことのない問題や課題に直面しているとのこと。しかし、最近では牧場の生活にも慣れてきたことで、トラブルも少しずつ減少してきているそう。「悩みは尽きないですよ。でも、その都度向き合う姿勢はいままでと一緒だし、異なる特性をもつ人たちを受け入れることでみえてくる新しい側面もあります。突き詰めれば、働きやすい環境への改善につながる可能性を秘めていると思うので、がんばっていきますよ」とその決意を聞くことができた。 まとめ  取材を通して感じたのは、黒瀬さんが「障害者雇用」という枠組みで人をみていないということだ。「福祉としての支援が必要なら、福祉の作業場に行けばいい。私は福祉のためなんて立派な考えはないんよ。ただただ、任された仕事をていねいに、しっかりやってくれればいい。それが仕事というもんでしょ」と黒瀬さんは語る。障害があるからと特別扱いするのではなく、「仕事をする一人」として向き合う。「叱ることもあるし、喧嘩することもある。でも、それは障害があるからではなく、対等な仕事仲間として接しているからこそだと思っています。社長の私が怒ると一番怖いっていわれていますけどね…」と語る黒瀬さんのその姿勢は、厳しくも温かい信頼の表れと感じ取れた。  現在、多くの業種で深刻な人手不足が続いている。特に中小企業や第一次産業、サービス業などでは、「仕事はあるのに人がいない」という声が後を絶たない。このような状況において、障害者雇用は単なる社会貢献にとどまらず、企業の人材戦略として有効な選択肢となりうることが今回の取材を通して得られた結論である。植村牧場がそうであったように、「人が足りない」という課題に直面したときこそ、障害のある人の力に目を向けてほしい。もちろん、はじめからすべてがうまくいくわけではない。理解不足や戸惑い、コミュニケーションのむずかしさに直面することもあるだろう。しかし、それらを乗り越えるなかで、職場には新しい視点や協働のかたちが育まれていく。  その際に重要となることは、障害のある人を「支援される存在」としてみるのではなく、「ともに働く仲間」として迎え入れることである。そうすることで、企業は新たな人材を得るだけでなく、職場の風土そのものが豊かになると考える。実際、障害のある従業員を受け入れた企業からは、「職場の雰囲気がよくなった」、「従業員同士が互いに思いやるようになった」といった声も多く聞かれる。人手不足に悩む企業にこそ、いまこそ障害者雇用の可能性をみつめ直してほしい。ていねいな業務の切り出しや、少しの工夫と柔軟な発想があれば、多くの現場で障害のある人の力を活かすことができる。その一歩が、企業の未来を支える人材確保と、組織全体の価値向上、多様性を尊重する持続可能な社会づくりにつながっていく。  帰り際にいただいた、レストラン「いちづ」おすすめの植村牛乳を使用したクリームコロッケは、繊細で、そしてやさしい味がした。そこにも、植村牧場らしいていねいな仕事が込められていた。 写真のキャプション 「植村牧場」は住宅地の一角にある 「植村牛乳」右は業務用として出荷される900ml瓶 木造の骨組みが美しい牛舎 牛舎の屋根に置かれたホルスタインのオブジェが目を引く 植村牧場株式会社代表取締役の黒瀬礼子さん 敷地内の居住スペース 居住スペース内のリビング。従業員の憩いの場だ 牛の世話(写真提供:植村牧場株式会社) 搾乳作業(写真提供:植村牧場株式会社) 牛乳瓶の洗浄(写真提供:植村牧場株式会社) 瓶詰作業(写真提供:植村牧場株式会社) 敷地内のレストラン「いちづ」 「いちづ」では、障害のある従業員が看板娘として活躍している 「いちづ」の人気メニューの「ミックスランチ」。右側がクリームコロッケ