【表紙】 平成31年3月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第499号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2019 4 No.499 職場ルポ 「働き続ける力を身につける」サポートと人事制度 シダックスオフィスパートナー株式会社(東京都) グラビア コンテナ洗浄から始まったスーパーマーケットの障害者雇用 株式会社藤三 藤三センター(広島県) 編集委員が行く 一緒に働くからこそ得られること〜精神障害のある社員が活躍することで見えてきた組織のしなやかさ〜 東急リバブル株式会社(東京都)、株式会社ソシオネクスト(神奈川県) この人を訪ねて 職場定着のための「トリセツ」と「シエスタ」 岐阜保健大学 短期大学部 リハビリテーション学科講師・理学療法士 稲葉政徳さん 4月号 「おいしいお米を作るぞ!」千葉県・三浦(みうら) 聖弥(せいや)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 【前頁】 心のアート 奈良県内の地元金融機関 70周年記念通帳のデザイン 岸本 亜矢子(NPO 法人ならチャレンジド) 岸本 亜矢子(きしもと あやこ)  1990(平成2)年2月6日生まれ。奈良県香芝市(かしばし)在住。  16歳のときに交通事故に遭い、頚椎(けいつい)を損傷。首から下が不自由なので、口に筆をくわえて絵を描いています。  この作品は、地元金融機関70周年記念の通帳のデザインをさせていただいたときのものです。本当に本当にありがたかったです。こうなるように仕向けてくださった方々に大感謝です。ラッキーでした。働く喜びを噛みしめて飲み込みました。ごちそうさまでした。  次はもっといい絵を描くので、普通の通帳のデザインもぜひ描かせてほしいです。準備万端です。 画材:画用紙、水彩絵具、アクリル絵具、筆/サイズ:10p×17p ※一部画像を加工しています 文:岸本 亜矢子 【もくじ】 障害者と雇用 2019 4月号 No.499 心のアート−−前頁 奈良県内の地元金融機関70周年記念通帳のデザイン 作者:岸本 亜矢子(NPO法人ならチャレンジド) この人を訪ねて−−2 職場定着のための「トリセツ」と「シエスタ」 岐阜保健大学 短期大学部 リハビリテーション学科講師・理学療法士 稲葉政徳さん 職場ルポ−−4 「働き続ける力を身につける」サポートと人事制度 シダックスオフィスパートナー株式会社(東京都)文:豊浦美紀/写真:官野貴 NOTE−−10 障害者雇用の可能性を広げるテレワーク Vol.4(最終回) インフォメーション−−12 平成31年度 障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請が平成31年4月1日から始まります グラビア−−15 コンテナ洗浄から始まったスーパーマーケットの障害者雇用 株式会社藤三 藤三センター(広島県) 写真:小山博孝・官野貴/文:小山博孝 エッセイ−−19 第2回 一般採用と障害者採用、両方を経験してpart.1 『障がい者の就活ガイド』著者 紺野 大輝 編集委員が行く−−20 一緒に働くからこそ得られること〜精神障害のある社員が活躍することで見えてきた組織のしなやかさ〜 東急リバブル株式会社(東京都)、株式会社ソシオネクスト(神奈川県) 編集委員 大塚由紀子 霞が関だより−−26 「農福連携」で障害者の雇用創出を目ざす企業に関する研究成果報告 農林水産省 農林水産政策研究所 政策研究調査官 藤田義紀 研究開発レポート−−28 就業経験のある発達障害者の職業上のストレスに関する研究 −職場不適応の発生過程と背景要因の検討− 障害者職業総合センター 障害者支援部門 ニュースファイル−−30 掲示板−−32 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 表紙の説明 「機械を使った仕事が面白そうだったので、この題材を選びました。『春のきれいな景色のなかで働けたら気持ちがいいだろうなあ』と思って描きました。田んぼに景色が映っている様子を描くのに苦労しましたが、若葉をうまく描けたと思います。受賞を聞いて、とてもうれしかったです」 (平成30年度障害者雇用支援月間ポスター原画募集 中学校の部高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp) 【P2-3】 この人を訪ねて 職場定着のための「トリセツ」と「シエスタ」 岐阜保健大学 短期大学部 リハビリテーション学科講師・理学療法士 稲葉政徳さん いなば まさのり 1965(昭和40)年、埼玉県生まれ、滋賀県育ち。1987年、国士舘短期大学国文科卒業。2000年(平成12)年、中部リハビリテーション専門学校卒、理学療法士免許取得。2008年、畿央(きおう)大学大学院健康科学研究科修了。小児から高齢者の臨床現場を経て、専門学校の専任教員となる。2012年より現職。発達障害サークル「東ひがし近江凸凹(おうみでこぼこ)ネットワーク」主宰。 45歳で発達障害の診断 ――45歳で発達障害と診断されるまでの経緯を教えてください。 稲葉 幼少期から「ちょっと変わっている」といわれ、コミュニケーションのむずかしさも感じてはいたのですが、特に就職後は、特定のことが覚えられなかったり、勤務中に「しんどく」なることがよくありました。そんななか20歳のときに交通事故で重傷を負い、リハビリを受けたのを機に理学療法士を目ざすことにしました。最初はカイロプラクティックの学校で3年間学び卒業、病院などの助手として働きながらリハビリテーションの専門学校で4年間学び卒業しました。国家試験には一発合格できましたが、35歳でのスタートでした。小児リハビリの財団法人や介護老人保健施設、訪問リハビリなどの臨床現場を経験したあと、教員になりたいと一念発起し、妻の応援も受けて43歳で大学院に社会人入学しました。  翌年には専門学校の教員に採用され、大学院に通うかたわら順調に仕事をしていましたが、45歳になって初めてクラス担任になったとき、大きな試練に遭いました。学生をまとめることができず、学級崩壊を招いてしまったのです。そのころちょうど学校教員向けに「発達障害のある学生への対応」というカウンセリング研修が行われました。そこで発達障害の可能性を判断するためのチェックシートを見て「どれも自分に当てはまる」と気づきました。すぐにスクールカウンセラーに相談し、医療機関に行って初めて広汎性(こうはんせい)発達障害と診断されました。これまで生きづらかった理由がわかり、むしろホッとしました。二次障害も表れていたので、医師から休職をすすめられました。数カ月で復帰するつもりでしたが、妻や医師からの助言で、あせらず大学院の卒業を優先させることにしました。 採用面接で「トリセツ」配布 ――7年前、大学教員の採用面接でご自身の「トリセツ(取扱説明書)」を配布したそうですね。 稲葉 私はその1年前に初めて障害の診断を受けていたため、職場にも理解してもらう必要があると思ったのですが、口下手なので説明がむずかしい。そこでA4用紙1枚に「私のトリセツ」という題名で自分の特徴を印字したものを、面接官に配りました。以前参加した市民講座で「思ったことを言葉にしてみましょう」という話が心に残っていたのです。  内容は「私はこのようなときに力を発揮します」、「これに直面すると、力が発揮できなくなります」、「職場での5年後の目標」などのテーマに分け、それぞれ短い文章を箇条書きにしました。例えば「力が発揮できなくなる」ことについては、「一度に複数のことをお願いされると一部のことしか覚えておらず仕事に支障をきたすことがあります。(中略)一つの作業が終わってから報告させていただき、その際に次の仕事を指示くだされば幸いです」や、「細かく数字が羅列された書類は苦手で、パニックに陥ることがあります。数字処理の仕事をなるべく避けてくだされば幸いです」などと書きました。  その場で大学側から「できるだけサポートします」といわれました。私の障害を理解してもらえたのは、うれしかったですね。その後は、ほかの企業の障害者雇用担当者から「トリセツの書き方を教えてほしい」と依頼されたこともありました。 自分の心身の状態を把握し整える ――大学教員へ再就職するまでは、どのように過ごされたのですか。 稲葉 専門学校教員を休職し、しばらくして動けるようになると、朝から近くの大きな公園に行って歩いていました。二次障害克服のための運動療法です。意識したのは力を抜いて、気持ちよく歩くこと。高校生のころ興味があって受講していた、ある通信教育の「自律訓練法」も役立ちました。  発達障害であることを自覚するなかで、それまで私自身が学んできたことや体験から、疲労しやすく体調を崩しやすい精神障害・発達障害のある人にとっては、特性を含めた自己理解と周知のための「トリセツ」とともに、自分の心身の状態を把握して自ら整える「セルフコンディショニング」も非常に大切だということを改めて実感しました。 ――いまは大学教員として勤続7年になりますが、働き続けるための秘訣はありますか。 稲葉 働き始めてからも試行錯誤の連続ですが、周囲の理解もあり続けてこられました。事前にトリセツを配布したからといって、何もいわずに全面的にサポートしてもらえるとは思っていません。私は数字の羅列を見るのが苦手なので、成績表を確認するときは同僚の先生に「一緒にチェックしてもらえますか」と頼みます。たまに仕事のミスで上司から注意もされますが、重大な過失につながらないためにも、きちんと指摘してもらう必要があります。  一方で、精神障害・発達障害のある人たちは、 自覚がないまま「過集中」やストレスで体がこわばり、肩こり・背中の張り・腰痛などを引き起こした結果、体調を大きく崩すというケースが少なくありません。一番よいのは、本人が「少し休憩を取らせてください」と適宜(てきぎ)申し出ることですが、説明が得意ではない人も多い。場合によっては事実と少しずれた訴えをする可能性もあります。上司の方は、できれば先入観を排除して本人の訴えに耳を傾け、休憩を取らせるか医療機関の受診をすすめるよう判断する手助けをしてもらえたらよいですね。  長期的な職場定着のためには、なによりも基本的な健康維持が欠かせないと思います。私がおすすめする具体的な方法は「仕事や作業の合間に、心地よさを感じる軽い体操やストレッチを適宜行うこと」です。日ごろから勤務中にストレッチや休息の時間をつくるのもおすすめです。就業前などにラジオ体操をする会社がありますが、デスクでいすに座りながらでもできる簡単な体操なども、勤務の合間にやってもらえたらと思います。  ちなみに私は「脳を休ませる」ために、職場の了解を得たうえで、1日数回「シエスタ」の時間をつくっています。椅子を二つ用意して片方に座り、もう片方には足を乗せ、しばらく目を閉じるというものです。最近では、シエスタを取り入れている学校などもあると聞いていますが、企業でも障害の有無に関係なく、ぜひ導入してみてほしいですね。 「困り感」のある学生支援も ――稲葉さんは学生支援の担当もされているそうですね。 稲葉 ちょうど2018年度から、「困り感」を 抱いている学生の支援を担当することになりま した。学内での学業や生活のサポートをしたり、 地元の就労移行支援機関と提携しつつ、キャリ ア支援プログラムの受講をすすめたりするなど、 学生との間のコーディネートもしています。当 事者だからこそわかる部分もあるというのが私 の強みです。実際の支援は、ほかの教員からも サポートしてもらっています。今後は提携先の 就労移行支援機関などで、利用者が自分で心身 のコンディションを整えられるような支援もし ていきたいですね。 ――ありがとうございました。 【P4-9】 職場ルポ 「働き続ける力を身につける」サポートと人事制度 ―シダックスオフィスパートナー株式会社(東京都)― (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ シダックスオフィスパートナー株式会社 〒182-0021 東京都調布市調布ケ丘3-6-3(調布事業所) TEL 042-441-8151 FAX 042-441-8150 Keyword:特例子会社、就労定着、人事制度、職場適応援助者(ジョブコーチ)、グループワーク POINT @ 体調管理から「やりがい」まで細やかにサポート A 従業員一人ひとりに合わせてキャリア形成 B 蓄積したノウハウを全国の事業所で活かす 精神障害のある従業員が8割  障害者雇用を進めるなかで課題といわれている「就労定着」。2018(平成30)年度は、障害者総合支援法に基づく新たな障害福祉サービス「就労定着支援」もスタートしたが、これまでも各企業はさまざまな努力・工夫を重ねて「長く働き続けられる職場」を目ざしてきた。今回紹介する特例子会社「シダックスオフィスパートナー株式会社(以下、SOP)」も、その一つだ。日ごろの体調管理から仕事の「やりがい」、長期的なキャリア形成まで含めた細やかなサポート体制と人事制度をつくり、定着支援の全国展開にも取り組んでいる。  学校給食・企業食堂の受託運営などで知られるシダックスグループがSOPを設立したのは2011年。その背景には、全国の事業所で働く障害者従業員へのサポートの必要性があったという。SOPの相談役・担当部長を務める高橋(たかはし)秀明(ひであき)さんが話す。  「シダックスグループの全国の事業所には、約550人の障害のある従業員がいます。そのうち95%の事業所が1人のみの配属という環境で、受入れ側も『長く働き続けてもらうためにどのようにサポートすべきか』、悩むケースも少なくありませんでした。そこで、まず核となる特例子会社をつくり、ノウハウを蓄積しながら全国にも展開していこうということになりました」  現在、SOPに在籍している障害者は51人(2018年6月1日現在)で、内訳は精神障害者が39人、知的障害者が8人、身体障害者が4人。精神障害者が8割近くを占める。事業所は東京都渋谷区と調布市の2カ所に分かれている。  業務内容は、7割が「事務代行サービス」で、データ入力・各種伝票作成・実績リスト作成・資料のPDF化・ファイリング・社内書類のチェックなどだ。ほかにメール便などの集配・仕分け作業やシュレッダー、名刺・ポスター・リーフレットなどの印刷サービスなども請け負っている。 定着支援員がグループリーダーに  業務内容などによって分かれる各グループには「グループリーダー」と呼ばれる「定着支援員」(調布5人・渋谷4人)がいる。主にシダックスグループの社員が出向するが、勉強会や研修を重ねながら専門スキルを身につけているという。これまでに5人がジョブコーチ(企業在籍型職場適応援助者)、2人が障害者職業生活相談員の資格を取得。ほかに産業カウンセラーやユニバーサルマナー検定の資格保持者もいる。  設立当時からグループリーダーを務め、調布事業所長でもある佐藤(さとう)功晃(よしあき)さんは、自身も身体に障害がある。シダックスグループの調理師学校で学び、企業の社員食堂で腕をふるっていたが、20歳のころ筋肉が萎縮する病気を発症し、車いす生活に。その後はシダックスの管理本部で会計業務を担当していたところ、SOPから声がかかった。「立上げ当初からしばらくの間は、間違いなくたいへんでした。よくわからないなりに、メンバーたちと一生懸命やってきました」と振り返るが、現場で常に心がけてきたことが一つあるそうだ。「どうしたらできるか、ということです」  グループのメンバーから「この作業はできません」と相談されたときも、まず「じゃあ、どうしたらできるようになるか考えてみよう」とうながす。マンパワーの問題なのか、ハード面の問題なのかを含めて一緒に解決策を探る。そうやってともに成長してきたなかで一番よかったと思えるのは、設立当初のメンバーがほとんど残っていることだそうだ。「前の会社を3年で辞めた人が、SOPでは4、5年目に入ると、『あ、記録更新したね』と一緒にお祝いしています」と佐藤さんは顔をほころばせる。  事務代行サービスの担当フロアを訪ねると、10人ほどがパソコンと向き合い黙々と作業していた。デスクまわりを歩きながら指導していたのは、グループリーダーでジョブコーチでもある松尾(まつお)ゆり子さん。情報システム部の庶務担当から5年前に異動してきた。同時に情報システム部の一部の作業もSOPで請け負うことになったという。  松尾さんが気をつけているのは、何か注意をする際はきつい表現にならないようにして伝えることだという。「怒られた」、「嫌われた」といったマイナスの気持ちが残らないようにするためだ。  そんな松尾さんを「上司としてありがたい存在」だと話してくれたのは、同じグループに在籍する三永(みなが)信泰(のぶやす)さん(52歳)。2009年にシダックスのグループ会社に入社し、2011年のSOP設立時に転籍となった。三永さんは大学卒業後、高齢者介護施設に就職。8年間勤めたが、気力・体力的につらくなってしまい退職したという。2005年から就労移行支援事業所に通い、障害者向けの合同企業面接会でシダックスグループにめぐり合った。  SOPではデータの入力・集計・チェック、資料のPDF化などを担当している。勤務は10時〜17時までだが、繁忙期には1時間ほどの残業もこなすようになった。ただ、集中しすぎているときには、松尾さんたちから「息抜きするといいよ」と声をかけられるそうだ。  「午前中に必ず1回、午後は15時ごろを目安に外の空気を吸いにいきます。松尾さんが、なにかと話題を提供してくれて楽しい会話ができるのも、自分にとっては大事な息抜きになっています。それでもつらいときには、仕事量の調節を柔軟にできるので安心できます」 体調管理・セルフケアをサポート  SOPでは、従業員が「体調管理」、「セルフケア」をスムーズに行えるようサポート体制を整えている。  採用が決まると、まず「自己紹介シート」を作成してもらう。内容は、働きたい理由や将来の目標のほかに、得意・不得意なこと、希望する配慮、調子を崩したときの症状、不調なときに対応可能なセルフケア方法などだ。  毎日、出勤後には、体調の意思表示をしてもらう。壁に貼ってある顔マーク「ちょーハッピー」、「まあまあ」、「まずまず」、「もうだめだ」の当てはまるところに自分の名札を貼っていくほか、自分の「気分ノート」にも書き込む。よくない状態の顔マークに名札を貼った従業員には、定着支援員が詳しい状態を聞きながら必要な対応をする。  佐藤さんによると「こうしたツールは体調管理の“とっかかり”としてはとても有効でしたが、いまでは名札を貼らなくても『今日はちょっと調子が悪いんだよね』と自分からいうようになっています。ただ気分ノートについては、あとで見返したときに『あのころから体調を崩す前兆が出ていたのだな』と調子の波を自己分析するのに役立っています」  また勤務中は作業が続くと知らぬ間に疲れていたり、息抜きのために離席するのをためらう従業員もいるため、「休憩時間の細分化」を導入した。当初は1時間に1回ずつこまめに取っていたが、いまは午前1回・午後2回で各10分間ずつ設定している。これも最近は形をかえつつあるという。自分で意思表示ができるようになると「全員の一斉休憩だと、1人になれないので休憩にならない」という声もあったため、人によっては自身の裁量で休憩をとってもらうようにしている。社内には休憩用の個室も用意されている。  そして、外部からカウンセラーに来てもらい月1回の「こころの相談室」を設けている。「どんな話をしてもいい」ということにしており、従業員にリフレッシュ効果をもたらしているそうだ。  「振り返り面談」も月1回行われている。会社側と本人と支援機関の三者が同席し、仕事上で困ったことや悩み、今後の希望などについて話し合う。  主に会計業務を担当している外川(とがわ)佐智子(さちこ)さん(54歳)は、「定期的に話を聞いてもらえる環境がありがたい」と話す。もともと別の会社で正社員として働いていたが、30代のころ障害者手帳を取得。調布市の就労支援サービスを利用して、2011年にSOPに入社した。  「グループリーダーをはじめ周囲の人が私のことを理解したうえで配慮してくれ、細かいことも相談しやすいです。振り返り面談があるのも助かります。働き続けるなかで新しい悩みが出てきますから。特に私の場合は、若い同僚が増えるなかで『自分のやり方で大丈夫かな』と不安になることがあります」  外川さんは以前、どうしても外出ができなくなり半年ほど休まざるを得ないこともあったが「私の席を空けて待っていてもらえたことが、とてもうれしかった。これも大きな安心につながっています」とも明かしてくれた。 キャリア形成に向けた人事制度  SOPでの就労定着を図るために大きな役割を果たしているのが「人事制度」だ。導入のきっかけは、「上を目ざしたい」という希望をもった従業員の存在に気づいたことだという。そこで改めて、従業員自身が仕事や職場環境についてどう考えているかを知るため、全員の面談を行った。その結果、次の4点がわかった。 @体調の波を小さく整え、心身ともに安定し長期的に健康になりたい A障害特性を理解し、うまくつき合いながら人として成長したい B良好な対人関係を形成したい C(収入を含め)一人でも生活できる力を身につけたい  そこでSOPでは、従業員が仕事を続けていくうえでの不安感を減らし、やりがいを持って取り組めるようにするため、「だれもが働き続ける力を身につける」ことを人事制度のビジョンに掲げた。具体的な取組みは次の内容である。 @セルフケアの方法や円滑な対人関係を身につけるための「グループワーク」 A積極的に仕事に取り組めるようにするための「改善好事例の提案制度」 B無理のない将来設計ができる「職位制度」 C個々のキャリア形成を目的にした「目標管理シート」 グループワークや提案制度  各部署を横断した7〜8人の従業員による「グループワーク」は、毎月1回、1時間ほど行われている。1週間前に発表されるテーマは、「服装について」、「他部署訪問時の注意点」といったビジネスマナー、コミュニケーション、ヘルス、ライフ、リスク回避の5種類のスキルに関するものとなっている。最初にウォーミングアップとして1人ずつ近況などを話したあと、テーマについての意見交換が始まる。最後には模範的回答も示す。グループリーダーがファシリテーター役をつとめるが、最近は従業員も率先して手をあげているそうだ。  従業員からは「思っていたより楽しい」、「普段あまり話さない人と交流できた」という感想が出ているという。「職場内での小さないざこざも減ったような感じがします」と高橋さん。  また現場では「指示された仕事をするだけではおもしろくない」という声もあったことから、従業員が「積極的に自ら考え取り組むスタイル」に転換できる仕組みの一つとして、「改善好事例報告書」の提案制度をつくった。毎月2、3件出てくるそうだが、最初のころは5件も出した意欲的な従業員もいたそうだ。  「パソコンを駆使して私たちも気づかないような業務の効率化を図る提案をされたときは、さすがだなと思いました。エクセルのマクロ機能を活用することで、10時間かかっていた業務を3時間に短縮できた例もあります。潜在的な能力を発揮できる機会となっています」(高橋さん) 職位制度と目標管理シート  それまでSOPの従業員は「一律給与」だったが、仕事上で高い能力を発揮したい人のために個別の評価給与や職位手当、正社員登用も含めた人事制度「職位制度(キャリアパス)」をつくった(※図)。アルバイトからスタートし、一般契約社員(入社3カ月後以降)は6〜8時間勤務で時給計算だが、入社2年以降はトレーナーのほかにリーダー職・一般職として正社員になることができる。いまは正社員が5人、うち部下を持つリーダー職が2人いるという。  リーダーになると、朝礼を主導したり業務の割り振りなどを任せられることに加え、管理者として障害者職業生活相談員の資格も取得する。  「グループ内の同僚のピアサポートも行うようになり、仕事をサポートしながら相談されることで、頼られることの喜びとともに仕事へのモチベーション向上にもつながっています。将来はジョブコーチの資格も取りたいと意欲的に話してくれる人もいます」と高橋さん。  ただし通常の人事制度とは違い「無理をしない将来設計」を念頭に、あくまで本人の希望に沿って自由な選択ができるよう配慮している。  「上を目ざしたい人もいれば、いまの状態を維持したいという人もいます。何よりも本人の意思が重要です。『自分は、病状や体力に合わせた働き方をしたい』と6〜7時間の短時間勤務を希望する人や、途中で時間を短くするケースもあります。正社員から契約社員に戻ることも可能です」  職位制度を効果的に活用するために、キャリア形成をうながす「目標管理シート」もある。会社側が「採用、定着、成長、キャリアアップ、自律」というステップごとのモデル事項を示しながら、本人なりの目標設定をしてもらい、日々の仕事や生活の向上に役立ててもらう。  例えば採用時は「困ったときに確認や質問ができる」、「家族、支援機関、医療機関のサポートがある」などの項目がある。定着(第1ステップ)時には「休まずに出勤できる(体調の安定)」、「困ったときに質問できるコミュニケーション能力がある」。成長(第2ステップ)時には「ビジネススキルがある程度身についている」、「効果的、効率的な仕事ができる」といったものだ。 グループ会社の「一般正社員」登用も  人事グループに在籍する浅山(あさやま)麻衣(まい)さん(33歳)は、勤続8年目を迎える今年、正社員を目ざしている。これまでは10時〜18時勤務だったが、昨秋から服用している新しい薬が合ったようで体調も安定してきたため、1月からは9時30分〜18時勤務に変更。春から9時〜18時のフルタイム勤務にできるよう調整している。  もともと趣味で使い慣れていたパソコンでデータ入力などを担当。「初めての会社勤めでわからないことも多かったのですが、いまはいろいろな仕事を経験させてもらっています。エクセルなどを駆使したスキルも向上しました」と笑顔を見せる。  SOPでは今年度、大きなニュースもあった。当初からSOPに在籍していた30代の男性社員が、シダックスグループ内の会社に一般社員として登用されたのだ。グループ会社に1人で派遣されて事務を担当していたが「うちの社員として働かないか」との誘いを受けたという。グループ内で、障害者枠から一般枠への雇用に変わった初めてのケースとなる。高橋さんは「人材を育て、グループ内に送り出していくこともSOPの大きな役割であると思っています」と手応えを感じている。 全国の事業所に定着支援を展開  全国の事業所に対する定着支援は、特 例子会社設立の2年後である2013年 に本格的にスタートした。全国を11ブ ロックに分け、各ブロックに1人ずつ、 定着支援員を配置している。定着支援員 は社外セミナーを年5回以上受講するほ か、企業見学会にも参加しながら、障害 者職業生活相談員やジョブコーチの資格 取得も目ざす(いまは相談員5人・ジョ ブコーチ6人)。同時にSOP内に「キャ リア支援室」を新設し、バックアップする。 例えばSOPで行っている振り返り面談 の内容も電子データ化されているため、 さまざまな事案について課題や対応策な どを参照できる。  また一方で、SOPのグループリーダーが1人で課題を抱え込まないようラインケア体制も整えている。毎週開かれている事例検討会議では個別の課題を全員で共有し、対応策を検討。全国の定着支援員も共有している。  さらに2カ月に1回、全国から定着支援員が集まり勉強会も開催する。そのようななかで新たに気づく課題もあるそうだ。  「例えば地方の事業所では、定着支援員よりも、現場で毎日顔を合わせる同僚たちによる自然な援助、ナチュラルサポートが一番大切です。いまは事業所ごとに定着支援員が『受入れ研修』を行っているほか、管理者に加えてキーパーソンとなる社員を最低1人はもうけ、サポートを任せられるよう指導・支援を続けています」  こうした取組みのおかげか、現場でのコミュニケーションが改善され、「従業員が現場で相談できず、急に出勤しなくなった」というケースも減っているそうだ。シダックスグループ全体での障害者雇用数は計558人(2018年6月1日時点)、雇用率も2・51%となっている。今後もさらに全国の事業所などで、障害者が自然と溶け込めるような職場環境づくりを目ざしていくという。 図 人事制度(職位制度=キャリアパス) (シダックスオフィスパートナー株式会社より提供) 相談役・担当部長の高橋秀明さん 調布事業所長でグループリーダーの佐藤功晃さん 名刺・リーフレットの作成、印刷と、パソコンを使っての仕事が多い グループリーダーでジョブコーチとしても活躍する松尾ゆり子さん 入力データをチェックする三永信泰さん。仕事量と体調を柔軟に調整して仕事を進める グループリーダーの見目(けんもく)真理(まり)さん(右)のサポートを受けて仕事を進める 月1回行われる振り返り面談。支援機関の担当者も同席のうえ、話し合う 名札を貼って、その日の体調や気分を示す顔マーク。セルフケアに欠かせない 会計業務を担当する外川佐智子さん ★の写真はシダックスオフィスパートナー株式会社より提供 業務の効率化を図る改善事例報告書の一例★ 目標管理シート★ ビジネススキルについて、意見交換を行うグループワーク★ 人事グループで正社員を目ざして働く浅山麻衣さん サポートしあって仕事をする 【P10-11】 NOTE 障害者雇用の可能性を広げるテレワーク Vol.4(最終回) 最終回となる今回は、「テレワークによる障害者雇用」導入の手順をはじめ、具体的なツールの活用方法や、緊急時の対策について、株式会社テレワークマネジメントにうかがいました。 テレワークによる障害者雇用の土台づくり  テレワークによる障害者雇用を導入する場合、何のために導入するのか、その目的を社員全員で共有することが一番のポイントとなります。目的をきちんと理解してもらえれば、各所からの協力も得られ、取り組みやすくなります。そのためには、障害者雇用への取組みを、準備段階で周知することが重要です。そして「いつまで」に「何を」行うか、関係者全員が一目でわかるような計画表を作成し、それに基づき着実に進めていきます。募集から選考、雇用契約、業務の開始までは、予想より時間がかかることが多々あります。  テレワークにより雇用するためには、現状の業務を切り出しているだけでは、業務量が足りなくなる可能性があります。すべての業務を洗い出し、「テレワークで雇用できるようにするためには、どのように業務改善すればいいか」という視点で設計していくことがポイントです。  テレワークによる障害者雇用導入の最初の土台づくりとして「資料の電子化」、「社外からの安全なアクセス環境の整備」、「コミュニケーションのIT化」をしっかりと準備することで、可能な業務の範囲も広がっていきます。 社員向け研修で「テレワークによる障害者雇用」への理解を深める  テレワーク導入の手順は、規程やルールの検討・整備、さらにシステムやツールの検討へと続きます。「通信設備や通信環境は、基本的には企業側が整備しておく必要があります。セキュリティの観点からも、パソコンをはじめとする機器類は、企業側が貸与するケースが一般的です。通信環境に関しても、企業側がWi−Fiを貸与するケースが多いのですが、Wi−Fiがつながりにくい地域の場合、自宅の通信環境を利用するケースもあります。また、テレワークでは、コミュニケーションが非常に重要ですので、通常使用するコミュニケーションツールの不具合時に対応できるよう、別のツールも準備しておくと安心です」と、同社の障害者テレワーク雇用コンサルタントである倉持(くらもち)利恵(りえ)さんはいいます。  次に、募集要項の作成と募集開始、さらに、社内研修の実施へと続きます。社内研修は、当該部署だけでなく、会社全体で行うことが望ましいでしょう。  そして次は、選考から採用、契約手続きです。応募者の書類選考や面接を経て採用者が決定したら、契約を結びます。  いよいよ雇用開始。検討中のソフトやサービスが複数ある場合、販売元に依頼して一定期間試用してみるのもよいでしょう。比較検討しながら、最適なツールを選ぶことが重要となります。  雇用後は、定期的に振り返りを行い、障害者がより働きやすいテレワークの環境づくりに努めます。  このように、人、仕事、職場にあった振り返りとフィードバックで、テレワークによる就労を定着させていきましょう。プロジェクトを進めるにあたっては、企業のトップがプロジェクトの責任者にもなっていると、大きな推進力となり、順調に進みます。「まずはやってみる」という姿勢でトライしてみて、課題が出たら、その都度それを解決しながら進めていくことが大切です。 最新ツールの活用で、コミュニケーションもアップ  同社では、「Sococo(ソココ)」という「一緒に仕事ができる」コミュニケーションツールを活用して業務を行っています。オフィスにいる社員も在宅勤務中の社員も、就業中は全員が「Sococo」にログインし、互いに声を掛けあったり、ウェブ上の会議室に集まったりします。文字や声、映像で簡単にコミュニケーションがとれ、同じ空間で働いているような一体感がウェブ画面上で生まれるのです。  前回、ご登場いただいた同社の吉成(よしなり)健太朗(けんたろう)さんも、北海道の病院に入院しながら「Sococo」にログインして、業務を行っています。障害者就労のコンサルティングをしている吉成さんは、このツールを活用することで遠隔地の顧客との打合せにも参加でき、業務にも活かすことができているそうです。  ITスキルや障害特性、体力など、個人差が大きいため、必要な環境設備内容は一人ひとり異なります。障害者本人にもヒアリングを行い、障害の特性と必要な支援機器、支援内容を把握したうえで、環境整備を進めていくのが最善といえます。 テレワーク就労における緊急時のインフラ対策について  昨今、地震をはじめさまざまな災害が各地で起こり、その際の業務インフラの対策にも注目が集まっています。特に、テレワークでの勤務時に停電などの緊急事態が起こった場合の連絡手段、補完体制を、会社として整えておくことが大事です。緊急時の連絡先と連絡方法を本人に伝えておくことはもちろん、家族や支援者がいる場合は、その方たちとも連携しておく必要があります。また、緊急時の対応については、定期的に訓練することも大切です。 ◎2018年9月に発生した「北海道胆振東部(いぶりとうぶ)地震」の対応について 〈株式会社テレワークマネジメント代表取締役 田澤由利さん〉  弊社は東京都・北海道・奈良県にオフィスがあります。昨年「北海道胆振東部地震」が発生した際、オフィスのある北海道の北見市でも停電が起こり、ネット環境が起動しなくなりました。  当社は普段から密にコミュニケーションをとっていたため、災害発生時もスマートフォンなどで社員と連絡を取り合い、対応できました。まず、北見オフィスにかかってくる電話は、奈良オフィスに転送されるように設定し、顧客の業務対応を奈良オフィスで行ったのです。  普段からテレワークによる連携、良好なコミュニケーションを行うことが、いかに重要であるかが実証されました。また、オフィス分散は、リスク回避につながるということも改めて実感しました。 テレワーク導入の手順 ステップ1:募集職務の検討(業務の見直し) ステップ2:規程やルールの検討・整備 ステップ3:システムやツールの検討 ステップ4:募集要項の作成/募集開始 ステップ5:社内研修の実施 ステップ6:選考/採用/契約手続き ステップ7:雇用開始(試用期間) ステップ8:定期的な振り返りのもと雇用継続 参考資料:『障がい者の在宅雇用導入ガイドブック』(厚生労働省) テレワークマネジメントで採用しているバーチャルオフィス「Sococo」 障害者テレワーク雇用コンサルタントの倉持利恵さん 【P12-14】 インフォメーション 平成31年度 障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請が平成31年4月1日から始まります ◆障害者雇用納付金の申告・納付、障害者雇用調整金および在宅就業障害者特例調整金の申請期限は平成31年5月15日です ◆報奨金および在宅就業障害者特例報奨金の申請期限は、平成31年7月31日です  ※障害者雇用調整金や報奨金などは申請期間を過ぎた申請に対しては支給できません。十分お気をつけください 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 納付金部  障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理などが必要とされることも多く、経済的負担がともなうこともあるため、雇用義務を履行している事業主と履行していない事業主とではその経済的負担にアンバランスが生じることになります。  障害者雇用納付金制度とは、身体障害者、知的障害者および精神障害者(以下、「対象障害者」という。)を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任であるという社会連帯責任の理念に立って、事業主間の障害者雇用にともなう経済的負担の調整を図るとともに、障害者を雇用する事業主に対して助成、援助を行うことにより障害者の雇用の促進と職業の安定を図るため、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下「法律」という。)に基づき設けられた制度です。  平成20年に法律が一部改正され、障害者雇用納付金制度の対象事業主が段階的に拡大し、平成27年4月1日から、常時雇用している労働者の数が100人を超えるすべての事業主が障害者雇用納付金の申告を行っていただくことが必要になっています。 制度改正のご案内 (平成30年4月1日改正 平成31年度申告申請から適用)  障害者の雇用の促進等に関する法律等の改正により、平成30年4月1日から障害者雇用納付金制度が次のとおり改正されました。平成31年4月1日から同年5月15日までの間(年度の中途の事業廃止等の場合は、提出期限が異なります)に申告・申請していただく障害者雇用納付金、障害者雇用調整金等(申告申請対象期間が平成30年4月から平成31年3月の分)から適用されます。 1.障害者法定雇用率の引上げ  障害者の法定雇用率が2・0%から2・2%へ引上げになりました(なお、平成33年4月までにさらに2・3%へ引き上げられることになっています)。 2.精神障害者である短時間労働者のカウント方法の変更  雇用障害者数を算定するにあたり、精神障害者である短時間労働者(一週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満)であって、原則として、新規雇入れから3年以内または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方については、平成35年3月31日までに雇い入れられ、かつ精神障害者保健福祉手帳を取得した場合にかぎり、1人を0・5人ではなく1人としてカウントすることとなります。 Q すべての事業主が障害者雇用納付金の申告・納付を行わなければならないのですか? A 障害者雇用納付金の申告が必要となるのは、常時雇用している労働者数が100人を超える事業主となります。  常時雇用している労働者数が100人を超える事業主は、年度ごとに翌年度の4月1日から5月15日までの間に本社の所在する各都道府県にある当機構申告申請窓口(注1)に障害者雇用納付金申告書を提出しなければなりません。  なお、この申告書は、年度ごとに、その雇用する対象障害者の人数が、基準となる障害者雇用率(2・2%。以下同じ)を達成している事業主も提出することとされています。  このうち、障害者雇用納付金の納付が必要となるのは、基準となる障害者雇用率を下回っている事業主となります。  また、この場合の障害者雇用納付金の額は、その基準となる障害者雇用率に不足する人数に月額5万円(注2)を乗じた額となります。 (注1)当機構各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は、高齢・障害者窓口サービス課)が申告申請窓口となります。 (注2)常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の事業主は、平成27年4月1日から平成32年3月31日まで障害者雇用納付金の減額特例が適用され、一人当たり月額「5万円」が「4万円」に減額されます。 Q 障害者雇用納付金の納付期限はいつですか? A 障害者雇用納付金の納付期限は、申告書の提出期限と同様に5月15日となります。  なお、納付すべき障害者雇用納付金の額が100万円以上となる場合は、3期に分けて延納することができ、各期の納付期限はそれぞれ次のとおりです。 延納第1期分の納付期限:5月15日 延納第2期分の納付期限:7月31日 延納第3期分の納付期限: 11月30日  また、障害者雇用納付金の納付については「ペイジー」をご利用いただけます。詳細については、裏表紙をご確認ください。 Q 障害者雇用調整金および在宅就業障害者特例調整金はどのような支給金ですか? A【障害者雇用調整金の支給】  障害者雇用納付金の申告が必要となる事業主のうち、年度ごとに、その雇用する対象障害者の人数が基準となる障害者雇用率を上回っている事業主に対して支給されます。 〈支給額〉「基準となる障害者雇用率を上回って対象障害者を雇用している人数」に「月額2万7000円」を乗じた額となります。 〈申請期間〉年度ごとに翌年度の4月1日から5月15日までです。 〈支給時期〉支給決定された年度の10月中に指定の預金口座に振り込みます。 【在宅就業障害者特例調整金の支給】  障害者雇用納付金申告または障害者雇用調整金支給申請事業主のうち、年度ごとに、在宅就業障害者か在宅就業支援団体(在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣に申請し、登録を受けた団体)に仕事を発注した事業主に支給されます。  なお、基準となる障害者雇用率が未達成の場合は、在宅就業障害者特例調整金の額に応じて障害者雇用納付金が減額されます。 〈支給額〉「事業主が当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額35万円で除して得た数」に「調整額2万1000円」を乗じた額となります。なお、各月において雇用している障害者数の年度間合計数に単位調整額2万1000円を乗じた額が限度額となります。 〈申請期間〉年度ごとに翌年度の4月1日から5月15日までです。 〈支給時期〉支給決定された年度の10月中に指定の預金口座に振り込みます。 Q 報奨金および在宅就業障害者特例報奨金はどのような支給金ですか? A【報奨金の支給】  常時雇用している労働者数が100人以下の事業主のうち、一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%相当数の年度間合計数または72人のいずれか多い数)を上回って対象障害者を雇用している事業主に支給されます。 〈支給額〉「一定数を上回って対象障害者を雇用している人数」に「月額2万1000円」を乗じた額となります。 〈申請期間〉年度ごとに翌年度の4月1日から7月31日までです。 〈支給時期〉支給決定された年度の10月中に指定の預金口座に振り込みます。  【在宅就業障害者特例報奨金の支給】  報奨金申請対象事業主のうち、年度ごとに、在宅就業障害者か在宅就業支援団体に仕事を発注した事業主に支給されます。 〈支給額〉「事業主が当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額35万円で除して得た数」に「報奨額1万7000円」を乗じた額となります。なお、各月において雇用している障害者数の年度間合計数に単位報奨額1万7000円を乗じた額が限度額となります。 〈申請期間〉年度ごとに翌年度の4月1日から7月31日までです。 〈支給時期〉支給決定された年度の10月中に指定の預金口座に振り込みます。 Q 調整金・報奨金申請時には添付書類が必要と聞きましたが、どのような書類が必要ですか? A 雇用する労働者数が300人以下で調整金や報奨金を申請する事業主は、雇用する障害者の障害の種類・程度を明らかにする書類と、その労働者の労働時間の状況を明らかにする書類を添付する必要があります。  具体的には、障害の種類・程度を明らかにする書類は障害者手帳などの写し、労働時間の状況を明らかにする書類は源泉徴収票(マイナンバーの印字のないもの)などの写しです。  なお、障害の種類・程度を明らかにする書類として、平成26年度以降の申請時に提出された雇用障害者について、障害の種類・程度の変更がなく、申請対象期間内に障害者手帳などの有効期限がきていない場合は、改めての提出は不要です。 Q 申告、申請関係の書類作成や手続きはパソコンでできますか? A 障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金および在宅就業障害者特例報奨金の申請にかかる申告申請書と各種届は、当機構ホームページ(http://www.jeed.or.jp/)の「障害者の雇用支援(障害者雇用納付金)」のコーナーに掲載していますので、ダウンロードしてパソコンで作成することができます。 ●「申告申請書作成支援シート(マクロ機能付き)」を活用していただくと、画面の案内に従って月別の常用雇用労働者数や障害者の雇用状況などを入力することにより、納付金額などが自動計算されるほか、エラーチェック機能が組み込まれており、比較的、簡易に申告申請書を作成できます。 ●「申告申請書作成支援シート(マクロ機能付き)」により作成した申告申請データを、機構ホームページを通じて送信し、申告申請の手続きを行うことができます(電子申告申請)。  なお、電子申告申請の場合も、常用雇用する労働者数が300人以下の調整金・報奨金申請事業主は、添付書類(障害者手帳や源泉徴収票などの写し)が必要となります。ただし、添付書類は電子送信することができませんので、機構ホームページより所定の添付書類送付状をダウンロードして、必要事項を記載、添付書類を添付したうえで、各都道府県にある当機構申告申請窓口まで送付してください。  また、「電子申告申請」を利用するためには、電子申告申請用IDとパスワードが必要となるほか、ご注意いただく点がありますので、詳しくは、各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京、大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にご照会ください。 障害者雇用納付金制度の概要 障害者雇用納付金の徴収 不足する障害者1人当たり月額5万円(注) ★常時雇用している労働者数が100人を超える事業主は、 ●毎年度、納付金の申告が必要 ●法定雇用率を達成している場合も申告が必要 ●法定雇用障害者数を下回っている場合は、申告とともに納付金の納付が必要 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者雇用調整金の支給 1人当たり月額2万7000円 ●常時雇用している労働者数が100人を超えており、雇用障害者数が法定雇用障害者数を超えている事業主に対し、申請に基づき支給 報奨金の支給 1人当たり月額2万1000円 ●常時雇用している労働者数が100人以下で、支給要件として定められている数を超えて障害者を雇用している事業主に対し、申請に基づき支給 在宅就業障害者特例調整金の支給 ●在宅就業障害者に仕事を発注した納付金申告事業主に対し、支払った業務の対価に応じた額を、申請に基づき支給 在宅就業障害者特例報奨金の支給 ●在宅就業障害者に仕事を発注した報奨金申請対象事業主に対し、支払った業務の対価に応じた額を、申請に基づき支給 各種助成金の支給 ●障害者を雇い入れたり、雇用を継続するために職場環境の整備などを行う事業主に対し、申請に基づき費用の一部を助成 法定雇用障害者数を下回っている事業主 雇用している身体、知的、精神障害者の数 納付金 法定雇用障害者数 法定雇用障害者数を超えている事業主 調整金 雇用している身体、知的、精神障害者の数 常時雇用している労働者数が100人を超える事業主 (注)常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の事業主は、平成27年4月1日から平成32年3月31日まで納付金の減額特例が適用され、不足する障害者1人当たり月額「5万円」が「4万円」に減額されます。 「働く広場」では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています。 2019年5月1日から新元号となりますが、この記事では、5月1日以降も平成で示しています。 【P15-18】 グラビア コンテナ洗浄から始まったスーパーマーケットの障害者雇用 株式会社藤三 藤三センター(広島県) 取材先データ 株式会社藤三(ふじさん) 藤三センター 〒739-2501 広島県東広島市黒瀬町(くろせちょう)南方工原(みなみがたくはら)925 TEL&FAX 0823-70-4190  文:小山博孝/写真:小山博孝・官野 貴  広島県内で、食料品を中心としたスーパーマーケット(藤三)、ディスカウント型スーパーマーケット(ビッグハウス)、ショッピングセンターの計25店舗を展開、運営する株式会社藤三(ふじさん)。そこでの精肉、水産、惣菜などの商品加工や仕分けなどを行う「藤三センター」で、2008(平成20)年に一人の精神障害者を採用したことから、同社の本格的な障害者雇用は始まった。  それまで同社での障害者雇用の実績は少なかったため、地域への貢献を考え、代表取締役社長の藤村(ふじむら)重造(じゅうぞう)さんから積極的に障害者雇用を推進するよう指示があり、現在では藤三センターの障がい者雇用推進室長として活躍する小林(こばやし)弘治(こうじ)さんが、その任に就いた。  当時はまだ障害者雇用の経験がなかった小林さんだったが、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、東広島市子育て・障害総合支援センターなどの指導と協力を得ながら、藤三センターでの雇用を始めた。  「障害のある従業員全員に、店舗と藤三センターとの間で商品の運搬に使うコンテナの整理と洗浄を体験してもらいました。そして、藤三センターで働く一般従業員たちに彼らの仕事ぶりを評価してもらい、理解を進めました。いまでは社内で不可欠な人材と認められ、職域拡大につながっています。現在でも、新規採用の際には障害者のみなさんにコンテナ洗浄を体験してもらい、その後ほかの部門へステップアップしてもらっています」と小林さん。  現在、藤三センターで働く障害者は25人(知的8人、精神13人、身体4人)に増え、会社全体での雇用率は4・1%。今後の目標は、さらなる職域拡大と、1店舗1人雇用を推進していくとのことだ。 小林さん(左)と、障がい者雇用推進室の久保(くぼ)ももよさん(右) 水産物担当の係長、手光(てびか)昭彦(あきひこ)さん(右)と相談をする小林さん(中央) 藤三センター長兼障がい者雇用推進室長の小林弘治さん。コンテナ洗浄が障害者雇用の出発点だった 久保さんは各店舗での指導にあたる 藤三センター コンテナ洗浄機にコンテナを入れる城川さん コンテナ洗浄班のみなさん。(右から)斎藤さん、楠部(なんぶ)公聡(まさあき)さん(27歳)、城川(しろかわ)紀枝(のりえ)さん、日谷(ひだに)春輝(はるき)さん(21歳)と、支援員の岩間(いわま)さん 各店舗から戻ったコンテナを集める斎藤(さいとう)清光(きよみつ)さん(65歳) 商品シールを貼る矢野(やの)直樹(なおき)さん(46歳) トレーにスポンジを貼る川本(かわもと)亜弓(あゆみ)さん 洗浄担当の日谷さん。パラ陸上競技の1500m、800mの選手としても活躍している 精肉のパック詰めラインで働く村上(むらかみ)哲基(てつき)さん(30歳) 各店舗へ商品を仕分けする澤田(さわだ)裕之(ひろゆき)さん(42歳) 水産物のトレーへパック詰めをする西田(にしだ)武功(たけよし)さん(47歳) 2017年に職場結婚した、水産部門で働く清水(しみず)潤(じゅん)さん(左・36歳)と、精肉部門で働くいづみさん(右) 藤三の安浦店 安浦店で商品の品出し準備をする古田(ふるた)芳大(よしひろ)さん(24歳) ビッグハウス黒瀬店 品出し作業中の時津さん 時津さん(中央)の指導にあたる支援員の内山(うちやま)真弓(まゆみ)さん(左)と久保さん(右) カットした野菜にラップ掛けをして値札をつける作業をするビッグハウス黒瀬店の時津(ときつ)慧(けい)さん(20歳) 【P19】 エッセイ第2回 一般採用と障害者採用、両方を経験してpart.1 『障がい者の就活ガイド』著者 紺野大輝 紺野大輝(こんのたいき) 1976(昭和51)年、札幌市生まれ。「脳性麻痺による脳原性運動機能障害(両上肢機能障害)2級」という障害を持って生まれる。2000(平成12)年法政大学卒業後、一般採用で都内老舗ホテルに入社、購買部で5年間勤務する。2006年、障害者採用で転職。2016 年、『障がい者の就活ガイド』(左右社)を出版。2018年8月22日、朝日新聞「天声人語」で紹介される。 公式ホームページ:http://konnotaiki.net/  私は大学を出てから17年間、これまで2社での就業を経験しています。1社目は新卒の一般採用で老舗ホテルに入社、購買部で5年間勤務しました。その後、障害者枠で転職、情報提供を行うサービス業の会社に入社しました。今回から2回にわたり、一般採用と障害者採用、それぞれで経験したことについて書きます。 ◎障害者手帳の等級変更  大学生のとき、塾講師のアルバイト(※前号で紹介)で自信をつけた私は、それまで考えていた安定した公務員≠ニいう道を選ぶことをやめ、子どものころから好きだった旅行関係の仕事を目ざすことにしました。選んだのはホテル業界。当時、「障害者採用」の制度を知らなかった私は、障害のない学生と同じ「一般採用」で就職活動をしていました。  まず私は、障害者手帳の等級を変更することを考えました。当時、私の等級は出生時に取得した、重度を表す2級。このままでは書類選考で落ちてしまうと思ったからです。このときの私の症状は、手帳取得時よりもよくなっていたので、病院で検査を受けた結果、4級に変更となりました。  しかし、私の思惑は外れ、手帳の等級を変更したものの、就職活動は苦戦しました。書類選考は通過しても、一次面接が通りません。ある会社では、面接室に入って2歩歩いたところで「うちは新卒で障害者は雇わない。時間の無駄だから、早く出て行け」と大声で怒鳴られました。椅子に座らせてももらえず、わずか3秒で面接が終了。私は「このような会社は入ってから苦労する。入社前にわかってよかった」と何度も自分に言い聞かせましたが、一方で「どの会社も本音はこうなのではないか」と不安になりました。そしてその不安を表すかのように、その後も面接での不合格が続きました。  初めて面接を通過したのは、応募50社目でした。その会社は、一次面接が最終面接という一発勝負の選考を行っていました。私は、「いままで一次面接すら通過したことがない私が、役員面接に合格するわけがない」と思っていましたが、結果は内定。私は、たった一回の面接合格で内定を得たのでした。 ◎事務の仕事をしてもらいます  その会社は説明会で「新卒は全員現場に配属する」と話していたので、私も接客の仕事ができると楽しみにしていました。ところが、2月の内定者懇親会で衝撃の事実が発覚します。  懇親会の終了時、人事担当役員から「紺野君だけ少し残ってください」といわれました。そこで、開口一番「新卒は全員接客といったけれど、君には事務の仕事をしてもらいます。君は、障害者雇用推進の一環として雇っただけ。万が一なにか問題が起きても困る」といわれたのです。  私は、「どうしてこんなに大事な話を最初に話してくれなかったのだろう」と、目の前が真っ暗になりました。「入社しても接客ができない」と就職活動中にわかっていれば、内定は断っていたと思います。しかし、この時点ですでに大学卒業まで1カ月。卒業したら自立して生活しなければなりません。これからどうなるのだろうか。暗澹(あんたん)たる気持ちで懇親会の会場を後にしました。 ◎目の前のことに全力を尽くす  2000(平成12)年4月1日、私が配属されたのは購買部でした。2月の懇親会以降、大きな不安を抱えて入社日を迎えましたが、結果的にそれは杞憂(きゆう)に終わりました。なぜなら、どのような理由で採用されたかは、その人事担当者以外だれも気にしていないと、すぐにわかったからです。  求められているのは、仕事で結果を出すことだけです。これで、私は精神的に非常に楽になりました。さらに、購買部での仕事が予想以上に面白かったのも、功を奏しました。どの会社にも、自分が知らない仕事がたくさんあり、「まずはやってみることが重要だ」と、このとき学んだのです。4年目からは役職がつき、責任も大きくなりました。  私は仕事への興味は失っていませんでしたが、このころから徐々に、その後のキャリアを考えるようになりました。この会社で働き続けるかぎり、障害者である私が働ける部署は購買部以外はほとんどありません。定年まで30年以上、この仕事を続けるのかと考えると、答えは「ノー」です。そこで私は「勤続5年」という区切りで退職、次のステージに進む決断をしました。 つづく ※第1回(2019年3月号)は、当機構ホームページでもご覧になれます。 働く広場 3月号 検索 【P20-25】 編集委員が行く 一緒に働くからこそ得られること 〜精神障害のある社員が活躍することで見えてきた組織のしなやかさ〜 東急リバブル株式会社(東京都)、株式会社ソシオネクスト(神奈川県) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 取材先データ 東急リバブル株式会社 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-9-5 精神障害者雇用開始:2014年5月 精神障害者雇用人数:43人 (2019年1月時点) 株式会社ソシオネクスト 〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜2-10-23 TEL 045-568-1070 E-mail:recruit@socionext.com 精神障害者雇用開始:2017年12月 精神障害者雇用人数:6人 (2019年1月時点) 編集委員から  精神・発達障害者雇用に取り組む企業が増加し続けている。今後の障害者雇用の主流と断言しても過言ではない。「いかに採用するか」という課題より、「いかに力を発揮してもらうか」という段階に入ってきたと考える。一緒に働く社員、そして組織も成長していく。そんな精神・発達障害者雇用のいまを紹介する。 写真:官野 貴 Keyword:精神障害、発達障害、就労移行支援事業所、障害理解、職務創出、業務体制の工夫・改善 POINT @ チームを組んで働くことで好循環を生み、全体の生産性向上につながる A 他企業の見学で刺激を受け、自社の障害者雇用を方向転換する B チャレンジスタッフチームの成長が、ほかの社員、組織も成長させる  「彼らの可能性は想像以上に大きい」といい切るのは、東急リバブル株式会社人材開発部長の野中(のなか)絵理子(えりこ)さんである。野中さんは、在宅勤務の障害者スタッフを合わせ43人もの障害のあるスタッフを部下に持つ。うち32人は精神障害、発達障害のあるスタッフである。そのうち、通勤できるスタッフは「チャレンジスタッフ」と名づけられ、社内では「チャレスタ」の愛称で親しまれている。  全国に190カ所(2018年10月1日時点)のネットワークを有する不動産仲介業大手の東急リバブルが、その「チャレスタ」の雇用に初めて取り組んだのは2014(平成26)年。いまから5年ほど前、2人の発達障害のあるスタッフと2人の精神障害のあるスタッフ、計4人の採用がスタートである。  チャレスタの仕事の範囲は実に幅広い。経理伝票のチェック、宅地建物取引士証の更新確認、在籍証明書発行業務、宅建勉強会の採点・結果入力・ランキング表作成など、15部署、180種にものぼる。現在はチームを四つに分け、チーム内の業務差配も精神・発達障害のあるスタッフが担当している。  そして2018年4月には、自社の成約顧客へのギフトフラワーを製作、発送する「フラワーアトリエチーム」も発足。7人中6人の精神障害のあるスタッフが1カ月に400セットのギフトを製作している。  障害のあるスタッフを迎え入れてから現在まで、約5年間の取組みを聞いた。 在宅勤務の雇用から精神障害者雇用へシフト  東急リバブルは、かねてより在宅勤務型の障害者雇用に積極的に取り組んできた。事業領域である不動産仲介に不可欠な間取り図や案内図の作図を、重度の身体障害のあるスタッフに在宅勤務の形で担当してもらうという仕組みだ。重度障害者の業務が事業を支えるというすばらしい取組みは、社内外から高い評価を得ていたが、「パソコンソフトを使える人材が少ない」、「障害が進行し就業が継続できないスタッフが増える」、「在宅勤務でのやりがいや成長のサポートがむずかしい」といった課題もあった。  社員数の増加、事業の拡大を背景に、より多様な人材活躍を推進し、積極的な障害者雇用に取り組むために、精神障害者の雇用にふみ切ったのが2014年のことだ。ただ、その段階では周囲は決して協力的ではなかった。  当時の採用担当者は、各部門に障害者に担当してもらえる業務についてのヒアリングを実施した。いわゆる「業務の切り出し」というものだ。「これはどうか?」、「これなら依頼したい」という業務はさまざま集まったが、量が少なかったり、スポットでしか発生しなかったりといった理由で、障害のあるスタッフが仕事として取組むには物足りなかった。スタート段階で用意できた仕事は、経理伝票のチェック、郵便物の配布などの四つであった。  ただこの状況は、東急リバブルにかぎったことではなく、どこの企業でも聞かれることだ。障害のある人と働いた経験のない人が大半である。「障害のある人の能力が過小評価されていた」と野中さんはいう。障害のあるスタッフ一人ひとりを理解し、活かすうえで、“社風がマッチした”と謙遜するが、自然に43人にまで増えたのではなく、障害のあるスタッフのがんばりや、野中さんをはじめ、かかわりあう人たちの努力あっての今日だと感じる。 チームで働く環境が好循環を生む  「精神・発達障害者雇用1期生」となる4人のメンバーは、全員が就労移行支援事業所で訓練を受けていた。この訓練により、障害特性についての自己理解や、自分が必要な配慮を都度自己発信できるようになった。また、採用後も継続的にフォローしてもらえたことも心強かったようだ。東急リバブルでは、就労移行支援事業所の担当スタッフから一人ひとりの特性を具体的にヒアリングし、働きやすい職場環境づくりに努めた。  彼らの相談窓口となる専任の社員も配置し、業務指示は一本化。専任担当が他部署との業務の調整を行い、チャレスタへ業務を差配した。視覚的な指示に努め、作業指示書やメールなどを使って業務指示を行った。就労移行支援事業所の定期訪問を受け、一人ひとりの特性や障害に対する配慮やコミュニケーションの取り方、仕事の与え方などについて継続的に助言を受けた。スタート時は特に頻回の面談を行い、双方の信頼関係の構築にも努めていった。「しっかりと型をつくっていったので、その後がやりやすかった」と野中さんはいう。  連続欠勤や周囲とのトラブルなど、精神障害者の雇用で不安視していたことは何も起こらなかったそうだ。それどころか、パフォーマンスは想像以上だった。仕事は正確、ていねい、納期通り。能力を発揮しやすい環境づくりが功を奏したといえよう。一般社員が残業してやっていた仕事、担当がはっきりしていない仕事をチャレスタがになうようになり、一般社員の負担軽減に大きく貢献した。しかも納期通り作業が完了しているので、社員は業務を滞りなく進められるわけだ。はじめは4種類しかなかった仕事が、どんどん増えていった。野中さんたちは自信をもって、社内に発信し、他部署からの仕事の依頼を積極的に受けていった。好循環が生まれたことで、現在は180種類にまで業務が増えている。 障害のあるなしではない「東急リバブル」という一つのチーム  1期生の入社から半年後、さらに3人のチャレスタの入社が決まったころのエピソードが興味深い。1期生のチャレスタたちは、特に指示されていないのに、新しく入社するチャレスタのために、そして自分たちも効率よく正確に仕事を進めるために、自分たちで話し合ってマニュアルをつくった。  「もっといい仕事をしていこう」、「もっと会社に貢献していこう」という意志の表れだと感じた野中さんは決心する。「精神障害があることで『あれはできない』、『これはできない』と思ってはもったいない。不得意なことはあるかもしれないが、できないわけではない。もっといろんな仕事をやってもらおう。能力を引き出していこう」  野中さんたちは、面接のときに必ずいう言葉がある。「チームで協力し合って仕事をしています」と。それは精神障害のあるスタッフ同士の協力ももちろんだが、もう一歩進んで障害のある人もない人も分け隔てなく東急リバブルという一つのチームで仕事をしているという意味だと感じる。 * * * * *  フラワーアトリエチーム所属の清水(しみず)亮士(りょうじ)さん(2018年4月入社)は、東急リバブルの仲介によって住宅などを購入したお客さまへのギフトフラワーの製作、発送を担当している。チーム屈指の作業スピードを誇る。「周囲のみんなをもっと理解して、さらに協力し合えるようになるのが目標」と話す。  チャレンジスタッフチーム所属の村上(むらかみ)紗恵(さえ)さん(2014年5月入社)は、給与厚生課の仕事と、フラワーアトリエのサポートもやっている。昨年からチャレスタがチームごとに仕事に取り組むようになり、依頼された業務をほかのチャレスタに差配するチームサポーター業務も担当している。「いろいろな仕事をさせてもらい、とてもやりがいがあります。会社を辞めるのは無理(考えられない)」と話す。 精神障害者雇用に取り組んで1年余りの「ソシオネクスト」  そんな東急リバブルの取組みに刺激を受け精神障害者雇用に取り組んだ企業が、半導体製品の開発および販売を行っている株式会社ソシオネクストだ(2015年設立)。その取組みは、精神障害のあるスタッフ4人の雇用からスタート。彼ら1期生の入社は2017年12月である。その後2人増え、現在6人が就業中。東急リバブルに習い、ソシオネクストでも精神障害のあるスタッフをチャレンジスタッフと呼んでいる。初めての精神障害者雇用から1年余りが経った同社の人事部長である我妻(わがつま)竜雄(たつお)さん、人材開発課長の常盤(ときわ)耕司(こうじ)さん、マネジメント担当の梅川(うめかわ)由里(ゆり)さんにお話をうかがった。  精神障害者雇用を始めた当時、常盤さんは障害者採用担当者として、ハローワークなどのセミナーに足しげく出席し情報収集をしていた。「障害者の労働市場はそうとうタイトだ。従来型の部門配置型の採用のままでは、法定雇用率を達成できないな」と感じていたそうだ。  さらに、現実は簡単ではない。「障害者がになえる仕事を出してほしい」と周囲に協力を求めても、十分な量の仕事はなかなか集まらなかった。  「われわれの仕事には、海外出張の精算業務といった少し複雑な業務が複数ある。また、時間外労働が多くなる時期もある。一緒に働くのはむずかしいだろう」と、当時の我妻さんは思っていたそうだ。また、当時を振り返って我妻さんはこういう。「以前の自分達は法定雇用率だけを見ていた。精神障害のある人と接した経験は皆無だったので、障害者雇用は会社の外で解決するしかないのだろうと思っていた」 東急リバブルの見学が障害者雇用を方向転換させる  そんな折、我妻さんと常盤さんは、機会に恵まれ東急リバブルを見学し、精神障害のあるスタッフの仕事ぶりに驚いた。彼らは、自分たちで工夫したり、協力したりしてしっかり仕事に取り組んでいた。難易度の高い仕事ももちろんやっていた。精神障害のあるスタッフたちとも直接話をしたが、「自分の障害を理解してもらって仕事ができることはありがたい」、「苦手なこともあるけれど、その分得意なこともある。会社の役に立つのがうれしい」と、チャレンジスタッフたちが口々に話してくれた。  「完全に間違っていたと気づいた」という我妻さんは、自身がリーダーを務める人事部門で受け入れることを決心する。見学の帰り道、一緒に見学に訪れた常盤さんと「緊急ミーティング」をしたそうだ。そこからは早い。まず会長に直接提案し、ゴーサインを得た。再度、人事部門全体に呼びかけ、精神障害のあるスタッフに担当してもらう仕事を切り出した。そして実習、面接を経て、4人の精神障害者が入社した。「応募者全員が『会社の役に立ちたい』といってくれた。その気持ちに応えて会社は彼らにやりがいを提供しなければならない」と我妻さんはいう。 マネジメント担当社員と6人のチャレンジスタッフでチーム編成  チャレンジスタッフの担当業務は、IR情報印刷、書類の電子化業務、各種社員配布書類の確認、社員から提出された書類の確認、国内出張旅費精算確認、月末払い伝票の仕分け、勤怠確認、機密文書回収・シュレッダー、会議室の備品点検・清掃などである。ホワイトボードで進捗確認をしながらチームで仕事を進めている。スタート時は3種類だった仕事も1年で19種類にまで増えた。チャレンジスタッフを迎え入れてから、業務の見直しが進み、従業員全体の時間外労働時間が大幅に減少したという。  梅川さんが6人のチャレンジスタッフの業務をマネジメントしている。梅川さんの主な仕事は、業務のとりまとめ、差配、マニュアル作成、進捗管理、体調管理などである。ルーティン業務とスポット業務を組み合わせてスケジュールを決めていく。温和な風貌は周囲を安心させる。これまで精神障害のある人とかかわった経験はなかったという。常盤さんが週1回の面談の担当である。チャレンジスタッフたちのがんばりに報いたいと、キャリアアップの仕組みもできた。 チャレンジスタッフの成長、そして周囲の社員の変化  チャレンジスタッフの一人Aさんは、「これまで3カ月以上働けたことがなかった。気がついたら1年経っていた。入社するまでは就職することが目標だったけど、その目標が叶ったのだと思うとうれしい。担当する業務が増えてきて『いろいろ任せてもらえているんだな。やった仕事が評価されているんだな』と思う」という。  Iさんは、「4人一緒の入社なので、同期ができたのはうれしい。『今日も一日がんばれたね』と励ましあえる仲間がいることがありがたい」という。  梅川さんからは、こんな話をうち明けられた。「実は彼らと働くようになって2カ月くらい経ったころ、一度音(ね)を上げたんです。マニュアルも細かくつくらなければならない。いろいろ気を遣わなければならないと思っていました」  我妻さんと常盤さんは、そんな梅川さんの姿をそばで見守り続けてきた。「当時の梅川は、優しすぎると感じる部分がありました。優しさが過ぎると頼りすぎてしまうし、頼られすぎて梅川もたいへんそうだった。でもいまは違う。やってあげるんじゃなくて、任せることができるようになった。ぐっとこらえる力ができた。ビジネスパーソンとしてとても成長したと思う」  いまの梅川さんはこう話す。「いまは伴走者の感覚です。マニュアルがあると、彼らも自分も楽ですね」 一緒に働かないと味わえない喜び  「もっと彼らを売り込みたい」という梅川さん。  「彼らは『これはできないかも』ということを楽々超えてくる」という常盤さん。  「ダイバーシティという“お題目”で制度や仕組みをつくるのは簡単だ。でもそこで働く人の意識や企業文化が変わっていかなければダメなんです。障害者雇用は、ダイバーシティ経営を会社に入れていくきっかけになると感じる。ソシオネクストはチャレンジスタッフが入社したことで、配慮の必要な人向けの新しい人事制度もできた。周りで働いている社員の意識も変わってきた。彼らは毎日成長していく。そのがんばりを目の当たりにして、自分たちもがんばろうと思う。彼らが一生懸命に仕事に取り組む姿。『役に立ちたい』といってくれること。それらが働く意味を考えさせてくれ、自分たちも成長できる。別々に働いていたらそうはならなかった。せっかくそういう機会(障害者雇用)があるのに、味わわないのはもったいない」という我妻さんである。 東急リバブル株式会社 人材開発部長の野中絵理子さん フラワーアトリエでは、ハーバリウム(左)、ボックスフラワー(右)などのギフトを製作している お客さまに贈るボックスフラワーを製作する清水亮士さん チャレンジスタッフとの面談を通して信頼関係が築かれている 村上さんたちチャレンジスタッフの働きは、一般社員の負担軽減につながり、評判がいい ほかのチャレンジスタッフのサポートもする村上紗恵さん 株式会社ソシオネクスト スタッフのマネジメントを担当する梅川由里さん 人材開発課長の常盤耕司さん 人事部長の我妻竜雄さん 会議室の清掃、備品の点検、機密文書の処理など、チャレンジスタッフが担当している 仕事の進捗状況をホワイトボードに示し、チーム全体が状況を共有し、業務を進める チャレンジスタッフを見守る梅川さん 【P26-27】 霞が関だより 「農福連携」で障害者の雇用創出を目ざす企業に関する研究成果報告 農林水産省 農林水産政策研究所 政策研究調査官 藤田義紀  農林水産省に所属する農林水産政策研究所は、障害者の農業分野での就労促進に関する研究を行っています。  今回は、2019(平成31)年1月29日(火)に東京都で開催した『「農福連携」シンポジウム』のなかで、「企業による農業分野での障害者の働く場づくりの意義と課題」と題して当研究所が発表した、農福連携に取り組む企業に関する研究成果報告の概要をご紹介します。 T 企業による農業参入の全国的な動向(特例子会社、企業出資の障害者福祉施設を中心に) ●特例子会社、企業出資の障害者福祉施設の農業分野への進出状況  2017年6月1日時点の特例子会社数は464社(2013年の380社から84社増加)。うち、農業分野に進出している特例子会社は少なくとも40社。2008年以降は、農業主体の会社が増加している(図1、図2参照)。  企業出資の障害者福祉施設(就労支援事業所1万8,288のうち営利法人が経営主体の事業所は5,005まで増加)のうち、農業分野で障害者雇用に取り組む施設も増加し、17施設を把握。そのほとんどが農業を主体としている。 ●農業分野に進出している特例子会社の特徴  調査対象企業40社は、全て親会社の従業員数が3,000人を超える大企業。  農業が経営の中心となっている特例子会社の設置は一番古いところで2008年。その後、水耕栽培や援農事業で成功している事例をモデルにして、農業分野に進出してくる特例子会社が増加している。業種的には、農業や食品に関連がない業種からの参入が多い(食品製造業、食品流通業からの参入は40社中3社にとどまる)。調査対象企業では、設立の目的は、法定雇用率の達成とCSR活動の一環との回答が多い(表1参照)。 ●農業分野に進出している企業出資の障害者福祉施設の特徴  特例子会社とは違って中小企業も多く、また、17社中9社が食品の加工や販売を行う企業となっており、これらの企業では、自社農園で生産された農産物の原材料としての使用や販売を主目的の一つとして挙げている。 ●特例子会社と企業出資の障害者福祉施設との経営作目の違い  農業分野に進出している特例子会社では、農業が経営の中心となっている会社は48%(障害者の職域の拡大の一環で農業に進出)。経営部門では、水耕栽培を行う会社が12社と最も多い。ただし、農地法の改正を受けて露地野菜を作る会社も9社に増加。農作業を受託する会社も成功事例が横展開されて6社に広がっている。  企業出資の障害者福祉施設は、農業が主たる部門になっている施設がほとんどである。経営部門では、露地野菜作を中心にした施設が4割弱(6施設)、施設野菜作が中心であるが露地野菜も作付けている施設も加えれば9施設と全体の5割強となっている。 U 農業分野に進出してくる特例子会社、企業出資の障害者福祉施設が増加している理由  現在、農業分野で障害者の働く場を拡大しようとする企業が増加している。その理由としては、 @農村地域で、仕事ができる能力があるのに就労できていない障害者を掘り起こせる可能性があること A企業の農業参入には否定的な地域もあるなかで、障害者の雇用の場を農業で作ることには公的な支援が期待できること B特例子会社が行う新たな職域として自社の業務のアウトソーシングの限界もあって、農業分野に対する評価が相対的に高まってきていると考えられること C特例子会社や就労継続支援A型事業所が農業で成立することを示す成功事例のノウハウが蓄積され、それが横展開しつつあること  などが考えられる。 ●特例子会社、企業出資の障害者福祉施設で異なる農業分野への進出目的  なお、特例子会社と企業出資の障害者福祉施設とでは、親会社の規模・業種、行っている農業の経営部門に違いがみられ、農業参入の目的でも違いがあることがうかがわれた。  特例子会社では、大企業が多いこともあって、食品関連の企業が自社製品の原材料確保や、自社の店舗で販売するために農業を行っている例はみられない。本社とは異業種の農業で、法定雇用率の充足、CSR活動として、障害者の雇用を確保しようとしているところが多い。地域貢献に資する援農に熱心な企業も増えつつある。  企業出資の障害者福祉施設でも同様の目的で農業を行っている企業もあるが(法定雇用率算入の特例を受ける企業もある)、中堅規模の食品関連企業が、自社製品の原材料確保や、自社の店舗で販売するために農業を行っている例も多い(17社中9社)。また、障害者の一般就労への送り出しに熱心な企業も多い。 V 農業分野に進出している特例子会社、企業出資の障害者福祉施設の今後の課題  農業分野に進出している特例子会社で、経常収支黒字を実現している会社は少ない(調査対象6社中1社)。特例子会社の持続性を考えれば、経常収支の黒字実現はクリアしたい一つのハードルといえる。  農業分野に進出している企業出資の障害者福祉施設で、経常収支 黒字を実現している会社は少なくない(調査対象12社中5社)。障害福祉サービスの対価として報酬(訓練等給付費)が支払われる点は、経常収支の黒字化に寄与するが、他方で制度改正を受けて利用者の工賃を生産活動から生み出す必要があるため、生産活動での赤字が許されなくなったという厳しさもある。 図1 認定年別にみた農業分野に進出している特例子会社数 農業主体 農業は一部 社 25 20 15 10 5 0 〜1999年 2000〜2004年 2005〜2009年 2010〜2014年 2015〜2017年 資料:2018年6月現在、農林水産政策研究所が各社のホームページ等から集計した結果である。 注1:基本的には農業開始年で整理しているが、農業開始年が不明な会社は認定年でカウントした。 注2:農業を止めた会社が2社あるが、上記ではカウントしていない。 図2 認定年別にみた農業分野に進出している企業出資のA型事業所数 農業主体 農業は一部 社 25 20 15 10 5 0 〜1999年 2000〜2004年 2005〜2009年 2010〜2014年 2015〜2017年 資料:2018年6月現在、農林水産政策研究所が各社のホームページ等から集計した結果である。 注:農業は一部とした事業所は、親会社が企業によるA型事業所で、そこから障害者が派遣される先として農業法人を立ち上げた事例と、農業のほか、宅配水製造、農産物の集荷・選別・出荷を行っている事例である。 表1 特例子会社の農業活動等の取組状況 取組内容 露地野菜+施設園芸 事業所名 タマアグリ 所在地 福岡県筑後市 子会社認定 年月 2009年6月 経過 法定雇用率達成及び社会貢献が目的 親会社(事業内容) タマホーム (住宅建設・販売) 従業員数 3,024 障害者雇用率 1.8%未満 取組内容 水耕栽培 事業所名 ハートランド 所在地 大阪府泉南市 子会社認定 年月 2008年3月 経過 グループ内で2番目の特例子会社(農業専門) 親会社(事業内容) コクヨ (文房具製造) 従業員数 5,380 障害者雇用率 2.3% 取組内容 水耕栽培 クボタサンベジファーム 所在地 大阪府河南町(かなんちょう) 子会社認定 年月 2011年2月 経過 グループ内で2番目の特例子会社(農業専門) 親会社(事業内容) クボタ (農業機械製造) 従業員数 9,647 障害者雇用率 2.0%以上 取組内容 水耕栽培+特用林産物+露地野菜 事業所名 センコースクールファーム鳥取 所在地 鳥取県湯梨浜町(ゆりはまちょう) 子会社認定 年月 2011年1月 経過 地域貢献、親会社事業の鳥取県進出 親会社(事業内容) センコー (物流) 従業員数 8,308 障害者雇用率 1.8%以上 取組内容 農作業請負 事業所名 ひなり浜松事業所 所在地 静岡県浜松市 子会社認定 年月 2010年5月 経過 農業専門の事業所として設立 親会社(事業内容) 伊藤忠テクノソリューションズ(コンピューターネットワークシステム販売・保守) 従業員数 7,700 障害者雇用率 2.5%以上 資料:調査結果を基に農林水産政策研究所で作成。 注:データは、ハートランドとひなり浜松事業所は、2019年1月時点のもの。その他は、2011〜2012年の調査時点のものである。 ※この研究成果の報告は、農林水産政策研究所のウェブ・サイトからご覧いただけます。 http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2018/index.html 【P28-29】 研究開発レポート 就業経験のある発達障害者の職業上のストレスに関する研究ー職場不適応の発生過程と背景要因の検討ー 障害者職業総合センター 障害者支援部門 1.はじめに  発達障害者支援法の施行以降、知的に遅れのない発達障害(知的な遅れが軽度である者も含む)が明確に支援の対象となったことを端緒として、“発達障害”に対する社会的な関心は高まっています。最近では一般枠で就職をした後に職場不適応から発達障害が疑われたり、診断に至るような事例の報告が散見されています。  発達障害という場合、日ごろから支援にたずさわる方は何らかの診断がある状態をイメージされるかもしれません。しかし近年、発達障害のある人は人口の数%〜10%程度であることが推定されており、実際に診断がつくのはその一部の人々であることがわかっています。発達障害は専門医療機関が少ないこと、また成人期では状態が複雑化することで誤診や過剰診断がなされてしまうことも指摘されています。加えて、対象者に発達障害の特性による困難があっても診断基準に合致しないケース(グレーゾーン)もあり、支援が必要であっても特性に応じた支援を提供するための相談窓口に結びつきにくく、それらをどうコーディネートし、提供するかといった“アプローチのむずかしさ”の問題があります。  そこで、本研究(※1)では文献調査とヒアリング調査を通して、成人期以降にストレスや職場不適応によって発達障害が顕在化する過程に焦点をあてて支援の課題整理を図り、職業リハビリテーションサービスに期待される支援や機能を検討することとしました。 2.発達障害者の職場での不適応の背景  発達障害と職場等のストレスに関する文献調査を行ったところ、いくつかの知見が確認されました。 @発達障害社員がメンタル不調を招くきっかけは、環境の変化やよき理解者の消失である。 A発達障害の人々はその特性ゆえ、ストレスと直面する機会が多く、ストレスの受け止め方や対処の仕方が適切でないため環境の不適応を起こしやすい。 B自閉症スペクトラム者は、過去に体験した日常的な深刻とはいいがたい不幸な出来事についての想起にともなう情動反応が、年余にわたってもなお減衰しない。 C自閉症スペクトラム者においては、胎児期以降に始まる脳機能の非定型発達によって、一般的なストレス対処を行ううえでの生物学的脆弱(ぜいじゃく)性を有すると考えられる。 D発達障害者の職場適応は、本人の職種、職位、職務内容、就業する職場の業種、規模、そのほかの就労環境によって良否が大きく異なる。  発達障害は「環境」と「個々の特性」の相互作用が適応状態を大きく左右するとの見方が、いずれの知見からもうかがえました。  これら発達障害者の障害特性と環境との相互作用による適応・不適応のあり様は、一般労働者の職業性ストレスモデル(図1)に当てはめることもできます。適応の可否は、対象者の個人要因のみならず、職場のストレッサーやストレスの緩衝要因など多数の要因の影響で成り立つとの見方が重要となります。 3.発達障害の診断と治療から支援までの流れ  職場不適応が起こるとメンタルヘルス不全から精神科医療機関を受診し、場合によっては発達障害の診断に至ります。そこで、発達障害のある人が多数受診している精神科医療機関に対するインタビュー調査を行い、「受診から発達障害の診断」、さらに「治療過程に至るまで」をたずねました。その結果、患者らは何らかの不適応状態から受診に至っていること、医師による発達障害についての診断のプロセスは概(おおむ)ね共通していることが聞かれました。ところが、医療機関ごとにメインとなっている患者像は異なっており、A・C・Dの医療機関では障害者雇用も検討の範囲となる人が多く、Bでは一般枠で雇用される発達障害グレーゾーンの人が中心となっていました。それぞれの特性や課題によって、医療機関ごとの対応や院内プログラムに違いがみられました(表1)。 4.職業リハビリテーションに期待されること  一般の労働者として社会人のスタートを切った発達障害のある人の多くが、適応上の問題をきっかけに医療機関を受診し、紆余曲折(うよきょくせつ)しながら一部は専門支援にたどり着くことになります。しかし、職業リハビリテーションの専門支援は「障害」のある人が主な利用者となっています。発達障害の診断の有無に関わらず、職場適応上のニーズに応じて職業リハビリテーションサービスを利用してもらうためには、その紹介元となる医療機関や支援機関で支援の必要性の理解が促されること、あわせて専門支援機関への“紹介”が期待されます。また、職業リハビリテーション機関では対象者の職場におけるストレス要因を明らかにするため、障害特性や職場へのストレッサーに対して適切なアセスメントを行うこと、ストレスを低減させるために環境調整を図ることが求められます。これらの専門支援機関としての機能を十分に活かすことで、発達障害者の就労を支えていくことが望まれます。 ※1 本研究(資料シリーズNo.100)は、障害者職業総合センター研究部門のホームページに掲載しています。 http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/shiryou/shiryou100.html JEED 資料シリーズ 100 検索 ※2 NIOSH:米国国立労働安全衛生研究所(National Institute of Occupational Safety and Health) 参考文献:岩田昇(2017)職業性ストレスの測定と評価,産業保健心理学 第3章, ナカニシヤ出版. 図1 NIOSH(※2) 職業性ストレスモデル(Hurrell & MacLaney,1988(岩田,2017)) 職場のストレッサー 物理的環境 役割葛藤、曖昧さ 対人葛藤 仕事の将来の曖昧さ 仕事のコントロール 雇用機会 量的労働負荷 労働負荷の変動 人々への責任 技能の低活用 認知的要求 交代制勤務 個人的要因 年齢、性別 婚姻の状態 雇用保障 肩書 性格 自尊心 仕事外の要因 家族、家庭からの要求 緩衝要因 社会的支援 上司・同僚・家族より 急性の反応 心理的反応  仕事への不満  抑うつ 生理的反応  身体的自覚症状 行動化  事故  薬物使用  病気欠勤 疾病 仕事に関連する心身の障害 医師の診断による問題 表1 発達障害を診る精神科医療機関に対するインタビュー結果 対象機関 A 患者像・受診経路 ・大学内支援で解決に至らないケース ・発達障害が疑われる場合には大学からクリニックへ紹介 対応・プログラム等 ・学内支援の段階で診断に進める ・診断がついた場合に手帳の取得勧奨 ・場合によって障害者雇用の検討 課題と感じること 手帳取得に進む前の了解や納得など「障害受容」に時間を要する 対象機関 B 患者像・受診経路 ・発達障害のグレーゾーンの者 ・成人期の者で未診断の者 ・休職中もしくは一般枠で就労中 ・周囲の指摘、自ら来院 対応・プログラム等 ・発達障害専門外来での診療と発達障害に対応した治療プログラムの実施 課題と感じること 「対人恐怖がある者」「集団を怖がる者」「こだわりの強さがある者」の場合、プログラムへの参加を選択しないケースもある 対象機関 C 患者像・受診経路 ・発達障害のグレーゾーン〜発達障害診断のつく者 ・一般枠で就労中 ・発達障害者支援センターの紹介、周囲の指摘、自ら来院 対応・プログラム等 ・診断がついた場合に手帳の取得勧奨、地域の就労支援機関の紹介 ・認知行動療法プログラムの実施 課題と感じること グレーゾーンの者が支援を利用できない 正社員の場合、配慮の必要性について相談の上でむずかしさがある 対象機関 D 患者像・受診経路 ・発達障害のグレーゾーン〜発達障害診断のつく者 ・他精神科や産業医等からの紹介、周囲の指摘、自ら来院 対応・プログラム等 ・クリニックと経営主体が同じであるB型就労移行支援事業所での活動の実施 課題と感じること 直ちに就労がむずかしい発達障害に特化した支援・治療の枠組みは必要と思われるが、技術面・経営面で課題が大きい。精神医療側の意識は高いといえない。 ※発達障害専門を標ぼうしている医療機関はBのみ 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 三重 ふるさと納税に「思いやり返礼品」  玉城町(たまきちょう)は、ふるさと納税の返礼品をリニューアル。町内の障害者就労支援施設の「思いやり返礼品」を新設した。  「身障者就労センター上々(じょうじょう)」(以下、「上々」)の「栄養満点 上々うどん」、上々と「玉城ふれあい農園」がコラボし、うどんと干しシイタケを詰め合わせた「玉城応援セット」、「NPO法人たまき末芳園(まっぽうえん)」の好きな画像でつくる「木製オリジナルパズル」など。そのほか、伊勢神宮に参拝できない人のために上々の利用者による「伊勢神宮 代行参拝」もある。 福岡 テレワークを積極活用へ  福岡県は、「テレワークによる障がい者雇用促進検討会議」の報告書と提言書を公表した。  報告書では、テレワークによる障害者雇用の円滑な実現を図るため、テレワーク導入の検討段階、導入、採用、運用、定着の5段階に分けて、主に企業における必要な取組みや留意事項などについて記載。一連の流れを俯瞰(ふかん)できるようにしたほか、チェックシートにより行うべき取組みを可視化した。  提言書では、「テレワークによる障害者雇用の理解促進の取組み」として、@セミナーなどによる企業への継続的な普及・啓発、A就労希望者および支援機関、そのほかの関係団体への普及・啓発、また「雇用導入促進の取組み」として、@県内企業における導入モデル事業の実施、A事例集の作成および企業見学会の実施、B相談窓口の設置、C就労支援機関における支援体制の充実をあげている。 生活情報 宮城 イチゴ観光農園オープン  「一般社団法人こねくと」(名取市)は、就労継続支援A型事業所として、観光農園「ラ・フレーズ」をオープンした。「ラ・フレーズ」は、フランス語でイチゴの意味。  人気品種「とちおとめ」、「もういっこ」をハウスで栽培。車いすでも移動しやすいようにハウス内の通り道を広くした。知的障害者や身体障害者たちが栽培業務と接客も行う。営業時間は10時〜15時、水・木曜日定休。5月31日(金)まで。 千葉 自社農場の野菜をネットで販売  障害者の就農支援を行っている「株式会社ファーマーズマーケット」(千葉市)は、生産者と飲食店をつなぐEC仕入れサービス「REACHSTOCK」で、自社で生産した野菜の販売を開始した。「ミニスイスチャード」、「ミニサラダ小松菜」からスタートし、「パクチー」、「サラノバレタス」を追加する予定。  本社のある千葉市の農場では、知的障害や精神障害のあるスタッフが、農業家の指導のもと野菜の生産・梱包などの作業を行っている。 リーチストック 検索 働く 大阪 特例子会社の認定取得  「株式会社マンダム」(大阪市)が多様な人財の活用と雇用の拡大を目的として設立した、「株式会社マンダムウィル」(大阪市)が、特例子会社の認定を取得した。  主な事業は、マンダムグループの商品と販売促進ツールの加工、セットアップ、梱包、発送、清掃作業などの請負業務で、障害者5人が働く。  障害者や再雇用者が無理なく長期的に、かつ意欲的に就労できるように、多様な能力や特性に合わせて業務を振り分けたり、通院などを考慮して時間単位で年休取得を可能にするなど、環境や制度を整備。仕事を通じて自己成長ができるように人財育成にも取り組んでいく。 島根 馬と触れ合い、心を癒(いや)す牧場開設  精神科の松ヶ丘病院を経営する「社会医療法人正光会」(益田市)が、昨春廃止された益田市立馬事公苑の跡地に、就労継続支援A型事業所「さんさん牧場」を開設した。  行政、医療、福祉が力を合わせ、就労継続支援A型事業所として、馬を使った事業を運営。精神障害者らがスタッフとして従事し、障害者向けのホースセラピー事業などを行う。 福岡 サテライトオフィスを開設  障害者雇用支援の「株式会社メンバーズギフテッド」(東京都中央区)は、初のサテライトオフィスを福岡市に開設した。  同社は、デジタルマーケティング支援の「株式会社メンバーズ」(東京都中央区)の子会社として、昨年10月に設立。首都圏のIT企業などに発達障害のある人材を紹介。紹介先企業と雇用契約を結んだ後も、福岡のオフィスで業務できる。 ベトナム ベトナムでパン屋を展開  「ヤマトホールディングス株式会社」の特例子会社「株式会社スワン」(以下、「スワン」)(東京都中央区)は、「365 Trading Logistics Joint Stock Company」(以下、「365社」)(ホーチミン市)と加盟店契約を締結し、海外初のフランチャイズ店となる「スワンカフェ&ベーカリー」をホーチミン市内に2店舗オープンした。  365社は、グループ内で経営するベトナム料理レストランで近所の貧しい人に昼食を提供したり、障害児に奨学金を給付するなどの支援活動を行っているが、障害者や貧困層など教育の機会のなかった人をスワンカフェ&ベーカリーで雇用することにした。パンの原料は日本から輸入し、スワンのパン製造に協力してきた「株式会社タカキベーカリー」(広島市)の担当者が、現地で日本と同じ製法でパンづくりの技術を指導。スワンは、「障害者の個性に合わせて就労能力を高めるノウハウ」を提供する。 本紹介 『よくわかる 女性のアスペルガー症候群』  精神科医の司馬(しば)理英子(りえこ)さんが、『よくわかる女性のアスペルガー症候群』(主婦の友社)を出版した。  女性のアスペルガーの場合、学校や職場などでの人づきあいに困難を抱えるほかに、恋愛、結婚、出産、育児など、人生のステージごとに、さまざまな問題やトラブルに出会うこともある。それぞれのシーンごとに、トラブルの解決法について具体的にアドバイス。B5変型判128ページ、1512円(税込)。 『なんでもやってみようと生きてきたダウン症がある僕が伝えたいこと』  ダウン症のある南(みなみ)正一郎(しょういちろう)さんが、幼少期から綴ってきた日記をもとに『なんでもやってみようと生きてきたダウン症がある僕が伝えたいこと』(遠見書房)を出版した。  両親から、社会に出てから困らないようにさまざまな経験をさせられ、社会常識を教えられた南さん。「障がい者のための働き方改革プロジェクト Lives Tokyo」では、2017、2018年と司会を務めた。空手黒帯、英会話少々、お酒大好きで、日々新しいことに挑戦中の、ダウン症当事者の半世紀。四六判200ページ、1620円(税込)。 『うつのリワークプログラム 職場復帰を支え、再休職を防ぐ!』  精神科医の五十嵐(いがらし)良雄(よしお)さんと、リワークプログラム修了生でフリーランスの編集者・ライターのふくいひろえさんが、『うつのリワークプログラム 職場復帰を支え、再休職を防ぐ!』(日経BP社)を出版した。  うつの患者が「リワークプログラム」に出合うまで/うつの「リワークプログラム」とは/リワーク・カレッジ「疑似職場でスキルを実践する」など、復職3年後の就労継続率70%を誇るプログラムの内容を、システム発案者の医者五十嵐さんと元患者のふくいさんが紹介する。四六判222ページ、1512円(税込)。 その他 東京 キャリア教育推進連携「優秀賞」受賞  「沖電気工業株式会社」(港区)の特例子会社「株式会社沖ワークウェル」(港区)は、文部科学省・経済産業省主催の第8回キャリア教育推進連携表彰「優秀賞」を受賞した。  受賞は、同社が長年にわたり継続して実施している、肢体不自由特別支援学校における「遠隔職場実習」、「キャリア教育の出前授業」が評価されたもの。ほかに、「遠隔社会見学」も行っている。  同社では、独自開発のテレワークシステムを活用し、重度障害者の在宅雇用を20年間継続。全国で約50人が在宅勤務している。 作品募集! シンボルキャラクター“ピクチャノサウルス” 障害者雇用支援月間 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 募集期間(応募作品受付期間) 2019年4月1日(月)〜6月14日(金)【必着】 児童・生徒のみならず、社会人一般の方もご応募いただけます。 (写真の応募は障害の有無を問いません) 募集要項など詳しくは 月間ポスター原画コンテスト 検索 【P32】 掲示板 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ  当機構が運営する国立職業リハビリテーションセンターおよび国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、求職中の障害のある方々に対して就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています。また、休職中や在職中の方のための職業訓練も行っています。  なお、利用にあたり、年10回程度の入所日を設けています。  募集コースや応募締切日、手続きなどの詳細については、下記までお気軽にお問い合わせください。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター 埼玉県所沢市並木4―2 http://www.nvrcd.ac.jp/ 【求職中、休職中の方】TEL:04―2995―1201 【在職中の方】TEL:04―2995―1135 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 岡山県加賀郡吉備中央町吉川 7520  http://www.kibireha.jeed.or.jp/ 【求職中の方】TEL:0866―56―9001 【休職中、在職中の方】TEL:0866―56―9003 視覚障害者の支援機器を活用した訓練風景 『働く広場』読者のみなさまへ  2019年5月号は、大型連休の関係から、お手元に届く日程が通常よりも数日遅れることが見込まれています。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いします。ご不明の点は当機構企画部情報公開広報課(電話:043−213−6216)までおたずねください。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 次号予告 ●通算500号記念  元厚生労働事務次官の村木厚子さん、全日本特別支援教育研究連盟 理事長で、元『働く広場』編集委員の松矢勝宏さんの特別対談を開催。『働く広場』500号までのあゆみを振り返って、お話をうかがいます。 ●職場ルポ  セイコーエプソン株式会社の特例子会社、エプソンミズベ株式会社(長野県)を訪問。障害のある社員が卓越したスキルを発揮する現場を取材しました。 ●グラビア  全国で回転ずしチェーンを展開する株式会社あきんどスシローの高知朝倉店(高知県)を訪問。障害のある社員を定着に導いた、現場の工夫と取組みを伝えます。 ●編集委員が行く  樋口克己編集委員が、株式会社昭和食品(群馬県)を訪問。焼き鳥や冷凍食品の製造販売を支える、障害者雇用の取組みについて取材します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 枚方総合発達医療センター 事務部 地域支援準備室 諏訪田克彦 一般社団法人Shanti 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 株式会社ダイナン 経営補佐 樋口克己 東京通信大学教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 横河電機株式会社 箕輪優子 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ http://www.jeed.or.jp  メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821  FAX 03−5484−8822 4月号 定価(本体価格129円+税) 送料別 平成31年3月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 2019年度 職業リハビリテーションに関する研修のご案内  当機構では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当する方を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や障害者の雇用支援に必要な技術の修得と資質の向上を図るための研修を実施しています。受講料は無料です。  各研修の詳細・お申込み先などは、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp) のサイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 研修 就業支援基礎研修 【対象】就業支援を担当する方 【内容】就業支援のプロセス、障害特性と職業的課題、障害者雇用施策、ケーススタディなど 日程 各地域障害者職業センターのホームページなどで別途ご案内いたします。 ◯◯障害者職業センター 検索 ※◯◯には都道府県名を入力 場所 各地域障害者職業センターなど 研修 就業支援実践研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験2年以上の方 【内容】障害別のアセスメント、支援ツールの活用方法、ケーススタディなど 日程 10〜12月に全国12エリアで開催します。 就業支援実践研修のホームページなどで別途ご案内いたします。 場所 全国12エリアの地域障害者職業センターなど 研修 就業支援スキル向上研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験3年以上の方 【内容】障害別の支援技法、職リハに関する最新情報、ケーススタディなど 日程 2020年1月28日(火)〜1月30日(木) 場所 千葉県千葉市 研修 就業支援課題別セミナー 「高次脳機能障害者の支援」 【対象】障害者の就労や雇用に関する支援を担当しており、高次脳機能障害者に対する就業支援の実務経験を有する方 ※内容については、おってホームページでご案内します 日程 2019年10月3日(木)〜10月4日(金) 場所 千葉県千葉市 研修 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など (集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度) ※対象地域は以下のとおりです 東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山 西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 日程 4月期 全国対象:2019年4月23日(火)〜4月26日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 NEW 6月期 西日本対象:2019年6月25日(火)〜6月28日(金) 場所 大阪府摂津市 日程 東日本対象:2019年6月25日(火)〜6月28日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 8月期 西日本対象:2019年8月27日(火)〜8月30日(金) 場所 大阪府摂津市 日程 東日本対象:2019年8月27日(火)〜8月30日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 10月期 全国対象:2019年10月15日(火)〜10月18日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 12月期 西日本対象:2019年12月17日(火)〜12月20日(金) 場所 大阪府摂津市 日程 東日本対象:2019年12月17日(火)〜12月20日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 NEW 2月期 西日本対象:2020年2月18日(火)〜2月21日(金) 場所 大阪府摂津市 日程 東日本対象:2020年2月18日(火)〜2月21日(金) 場所 千葉県千葉市 研修 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして一定の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど 日程 NEW <第1回> 2019年5月28日(火)〜5月31日(金) 場所 大阪府大阪市 日程 <第2回> 2019年7月23日(火)〜7月26日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 NEW <第3回> 2019年10月29日(火)〜11月1日(金) 場所 大阪府大阪市 日程 <第4回> 2019年11月26日(火)〜11月29日(金) 場所 千葉県千葉市 <お問合せ先> 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.or.jp 【裏表紙】 障害者雇用納付金は、「振込み」による支払いはできません。 4月号 平成31年3月25日発行 通巻499号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)