【表紙】 令和元年5月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第501号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2019/6 No.501 新企画 リーダーズトーク 特例子会社をグループ適用せず「楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)」を浸透 キユーピー株式会社 執行役員人事本部長 浦田昌也さん 株式会社キユーピーあい 代表取締役社長 中林良則さん 職場ルポ グループの一員として仕事にチャレンジできる人づくり クボタワークス株式会社(大阪府) グラビア 「仕事が生きがい」総務・人事部主任、頼られる先輩に クラシエ製薬株式会社(東京都)尼野次郎さん 編集委員が行く 地域就労支援ネットワークを軸に「働く」を支える −東京都大田区立障がい者就労支援センターを訪ねて− 東京都大田区立障がい者就労支援センター、楽天ソシオビジネス株式会社(東京都) 「電柱の鳥の巣駆除工事」福岡県・平井(ひらい) 英樹(ひでき)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 6月号 【前頁】 心のアート お昼寝 岸本 亜矢子(NPO 法人ならチャレンジド) 画材:画用紙、水彩絵具、筆/サイズ:187mm×257mm 岸本 亜矢子(きしもと あやこ)  1990(平成2)年2月6日生まれ。奈良県香芝市(かしばし)在住。  16歳のときに交通事故に遭い、頚けい椎ついを損傷。首から下が不自由なので、口に筆をくわえて絵を描いています。  いつも通院しているリハビリ病院の、リハの先生たちが見る冊子か何かの挿し絵だか表紙だか忘れたけど、そのときのイラストです。ちょっと古いです。このわんちゃんのモデルは実家で飼っていたゴールデンレトリバーのキンタです。もう亡くなってしまったけど、世界中の人に見てほしいぐらいめちゃくちゃ可愛くて優しい子でした。 文:岸本 亜矢子 【もくじ】 障害者と雇用 働く広場 目次 2019年6月号 NO.501 心のアート−−前頁 お昼寝 作者:岸本 亜矢子(NPO 法人ならチャレンジド) リーダーズトーク−−2 特例子会社をグループ適用せず「楽業偕悦」を浸透 キユーピー株式会社 執行役員人事本部長 浦田昌也さん 株式会社キユーピーあい 代表取締役社長 中林良則さん 職場ルポ−−6 グループの一員として仕事にチャレンジできる人づくり クボタワークス株式会社(大阪府) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 インフォメーション−−12 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター訓練生募集のお知らせ/2019年度「地方アビリンピック」開催地一覧/障害者の雇用をお考えの事業主の方へ 就労支援機器をご活用ください! グラビア−−15 「仕事が生きがい」総務・人事部主任、頼られる先輩に クラシエ製薬株式会社(東京都)尼野次郎さん 写真/文:官野 貴 エッセイ−−19 第4回 障害者の「働きたい」を企業とつなぐ 『障がい者の就活ガイド』著者 紺野 大輝 編集委員が行く−−20 地域就労支援ネットワークを軸に「働く」を支える −東京都大田区立障がい者就労支援センターを訪ねて− 東京都大田区立障がい者就労支援センター、楽天ソシオビジネス株式会社(東京都) 編集委員 朝日雅也 霞が関だより−−26 平成31年度 障害保健福祉部予算案の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート−−28 障害者の就職と職場定着の支援に向けた関係機関・職種の人材育成とネットワークのために 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 ニュースファイル−−30 掲示板−−32 第27回職業リハビリテーション研究・実践発表会(発表者募集のお知らせ) 表紙絵の説明 「昔から電柱が好きで、気になった自宅近くの電柱工事の写真を撮ったり、電柱工事の写真を集めたりしていました。今回は、そのなかから気に入ったものをもとに描きました。碍子(がいし)の部分など、写真を見ながら一生懸命に細かく描きました」 (平成30年度障害者雇用支援月間ポスター原画募集 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp) 【P2-5】 リーダーズ トーク Leaders Talk 新企画 特例子会社をグループ適用せず「楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)」を浸透 キユーピー株式会社 執行役員人事本部長 浦田昌也さん 浦田昌也(うらたまさや) 1987(昭和62)年、キユーピー株式会社入社。岡山営業所所長、神戸営業所所長などを経て、2012(平成24)年に広島支店支店長、2019年から執行役員人事本部長。 株式会社キユーピーあい 代表取締役社長 中林良則さん 中林良則 (なかばやしよしのり) 1982(昭和57)年、キユーピー 株式会社入社。東東京営業所所長、金沢営業所所長などを経て、2014(平成26)年に株式会社ケイ・エスエス代表取締役社長、2018年から株式会社キユーピーあい代表取締役社長。  新企画「リーダーズトーク」では、企業の経営者などリーダー≠ノ、障害者雇用の取組みや、障害のある方の働き方などについて、お話をうかがいます。  第一回目は、日本で初めてのマヨネーズやドレッシングなどを世に送り出し、今年創業100周年を迎える「キユーピー株式会社」(東京都渋谷区)。2003(平成15)年に特例子会社「株式会社キユーピーあい」(東京都町田市)を設立しましたが、障害者雇用のグループ適用はせず、特例子会社でつちかったノウハウを、グループ各社に伝えてきました。現在の障害者雇用率は、キユーピー単体で3・28%、国内グループ(物流事業を除く)で3・12%に達します。  高い雇用率に至ったこれまでの取組みや将来の展望について、同社の障害者雇用を牽引する執行役員人事本部長の浦田昌也さんと、株式会社キユーピーあい代表取締役社長の中林良則さんにお話をうかがいました。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 グループ各社で障害者が働ける場をつくる ―――障害者雇用率を達成するために特例子会社を設立する企業も多いなか、キユーピーではグループ適用(※)をしていないそうですね。 浦田 キユーピーグループでは2003(平成15)年に特例子会社「株式会社キユーピーあい」(以下、「あい」)を設立しました。  キユーピーグループには、経営基本である社是(しゃぜ)「楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)」があります。「楽業偕悦」とは、「同じ志をもって一致協力して目標に向かい、個人の意欲・やりがいを大切にして仕事を楽しみ、困難や苦しみを分かち合いながら悦(よろこ)びを偕(とも)にしていこう」という考え方です。この理念を全従業員が実感できる企業であり続けるために、キユーピーらしいダイバーシティ(多様性)を推進しています。従業員一人ひとりが一緒に働く仲間の声に耳を傾け、活発な議論をし、さまざまな場で交流しながらダイバーシティを身近に感じること。そして障害のあるなしに関係なく、理念に共感する従業員たちが能力や個性を活かし、働く喜びや、やりがいを実感できるような職場環境づくりをグループ全体で目ざすというものです。  特例子会社をグループ適用してしまうと、それぞれのグループ会社が「自分たちは障害者の雇用をしなくてもいい」といった考えに流れてしまう恐れがあり、それではグループで目ざすべきダイバーシティの推進から遠ざかってしまいます。ですから当初からキユーピー単体と「あい」、そしてグループ各社がそれぞれ社会的責任をもって障害者雇用に取り組んできました。  キユーピーグループには食品メーカーとしてさまざまな業務がありますから、全国に分散している会社・事業所・工場ごとに、それぞれの地域で障害のある方たちが活躍できる雇用の場をつくることができます。例えば、鶏卵加工事業を展開している「キユーピータマゴ株式会社」の各工場では、卵や容器を洗浄する工程などに、障害のある従業員が入ってくれています。同社の障害者雇用率は6・83%、成田工場では18%を超えており、「戦力」として活躍いただいています。  結果としてグループ全体で働いている障害のある方は計550人ほどになり、障害者雇用率もキユーピー単体で3・28%、国内グループ(物流システムを除く)でも3・12%になりました。 特例子会社がノウハウを伝えサポート ―――グループにおける特例子会社の位置づけやかかわりについて教えてください。 浦田 「あい」のスタート時、障害のある従業員は6人でしたが、現在は10倍以上に増えました。事業内容もユニフォームレンタル業務から、館内物流業務、DM封入・POP発送業務、マッサージなどのリラクゼーション業務、食堂・売店運営、清掃業務、農業まで、大きく拡大してきました。  そして、これまで「あい」で蓄積されてきた障害者雇用にかかわるノウハウを、さまざまな形でグループ各社に伝えながら支援すること、これが「あい」の大きなミッションです。キユーピー本社の労務・総務のメンバーも含めて年2回の支援会議を開催しながら、幅広い情報共有を行っています。  また、2017年まで「あい」の代表取締役社長を務めていた庄司(しょうじ) 浩(ひろし)が、今年の5月までグループ各社を巡回しながら、障害者雇用に関する受入れ側へのサポートの一環として、アドバイスなどもしていました。今後は、そのノウハウを「あい」が受け継ぎ、グループ会社への水平展開≠していきます。 中林 私たち「あい」では、グループ社員向けに「なるほど! the キユーピーあい」と題した広報活動を行っています。渋谷のキユーピー本社や、2013年に東京都調布市に開設したグループオフィスの「仙川(せんがわ)キユーポート」内に展示をしました。また、障害特性や一緒に働くうえでの工夫などをレクチャーしたり、障害のある従業員たちと一緒に食事をしながら話をする機会をつくっています。そのほか、社員向けのミニ手話講座やクイックマッサージも好評です。 「その人自身の強みは何か」を見る ――採用から定着支援、また人材育成について工夫していることはありますか。 浦田 採用から定着支援まで、「あい」で構築された四つの柱を中心にしたノウハウが、グループ会社に応用されています。  第一の柱は「採用」。本人の人生がかかっているといっても過言ではないので、その仕事にしっかりマッチングしているのかを慎重に見極めることが大切です。面接後に2週間の実習期間を経てから採用しています。  第二の柱は「総務・労務」。長く勤めてもらうためには、時代や環境に合わせながら一人ひとりにあったサポート、人的配置を含めた人事体制が必要です。場合によってはキユーピー本社の専門部署と情報を共有したり、アドバイスをもらったりしながら慎重に進めています。  第三の柱は「人材育成」。私たちは、主体性・自立性のある社員としての能力の向上をはかることに重点を置いています。障害のある人も、時間をかけて少しずつ仕事を進めながら、一般社員と同じような仕事ができるよう、能力を高めています。  第四の柱は「売上創出」。グループ内のさまざまな仕事のなかから、いかに障害特性に合った業務を切り出していくかです。むずかしい仕事も、分解したり方法を工夫すれば、障害のある人も十分に取り組むことができます。  職場においては、障害のある人≠ニいうくくりだけではなくて「その人自身の強みは何か」を見ながら、その人に合う仕事、強みを活かせる仕事をしてもらうことが一番ですよね。例えば「集中力」があることで、工場のライン業務や物流倉庫の現場などにおいて一般従業員よりも活躍している人も少なくありません。そこでリーダーを任されたり、正社員に昇格したケースもあります。 一緒に仕事に取り組み、互いに認め合う ――グループ各社の障害者雇用で、予想以上にうまくいったと思うことはありますか。 浦田 やはり当初からグループ適用を行わなかったことで、各社がそれぞれ責任をもって雇用推進に取り組んでこられたことは大きいと思います。障害のある社員が担当している業務は特別なものではなく、これまでグループ会社の社員が行っていた身近な仕事のなかから切り出したものが少なくありません。結果的に障害のある人たちがともに取り組めるようになった業務もあり、互いの存在や立場を認め合う場にもなっているようです。各事業所ではイベントなども社員同士で一緒に楽しんでおり、「楽業偕悦」も浸透していると感じますね。 中林 「あい」は、首都圏に点在していた17のグループ事業所のオフィス機能を集約させた「仙川キユーポート」に、仙川事務所をつくりました。メール便の配達や清掃業務などを行っていますが、グループ社員とオフィス内で出会う機会が増え、互いに名前を覚えたり、「挨拶がすばらしい」といわれたりします。障害特性によっては、人の出入りが激しい職場が苦手な人もいるので配慮が必要ですが、グループ社員と自然に馴染(なじ)んでいけるような職場環境がもっと広がっていくといいなと思います。  「あい」の本社では、従業員はみなスーツ姿で一般社員とともに働いています。外部から訪問した人たちは、みんなが一緒になって仕事に取り組んでいる様子を見て、よく驚かれています。 障害者の働く現場を経営陣が肌感覚で理解 ――キユーピーグループの今後の障害者雇用の展望をお聞かせください。 浦田 いまは、障害者の雇用率を上げようとか、もっと人数を増やそうという視点では考えず、いろいろな個性をもった人たちが、その個性を活かして活躍できるグループになっていきたいと思っています。  現在、キユーピーグループではダイバーシティを推進しておりますが、それを進めていくなかで「まずは一人ひとりが多様性をもつ存在として、自分自身を磨いていこう」と話しています。さらに多様性を受け入れるために、一例ですが、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)やLGBT(セクシュアルマイノリティの総称)などについても、正しい理解ができる機会をつくっております。  障害者雇用についても、多様性を正しく理解し、受け入れ、一人ひとりの個性を活かして活躍していただくものの一つだと思っています。 中林 私は、浦田をはじめ本社役員が日ごろからよく「あい」を訪れて現場を肌感覚で理解してくれているなあと実感しています。障害のある人たちと会話や交流を重ねていくことで、彼らの働く場を特別なところ≠ニとらえないでいてくれるのです。親会社の経営トップにいる人たちが、こんなふうに常に肌感覚で理解し臨んでくれていることが、グループ会社全体のダイバーシティを進めていくうえで、非常に大切なことであると思っています。 ※グループ適用:特例子会社がある場合、グループ会社も同様に障害者雇用率を通算することができる制度 仙川キユーポートで「あい」の業務紹介を展示している(写真提供:株式会社キユーピーあい) 【P6-11】 職場ルポ グループの一員として仕事にチャレンジできる人づくり ―クボタワークス株式会社(大阪府)― 農業機械トップメーカーである株式会社クボタの特例子会社「クボタワークス株式会社」。社員たちは、職能を磨ける環境で、日々プロ意識を高めている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ クボタワークス株式会社 〒556-8601 大阪府大阪市浪速区(なにわく)敷津東(しきつひがし)1-2-47 クボタ第2ビル1階 TEL 06-6648-2605 FAX 06-6648-3874 Keyword:製造業、アビリンピック、ビルクリーニング、清掃、印刷、配送 POINT 1 研修会や勉強会で仕事へのプロ意識を高める 2 ビルクリーニング技能検定やアビリンピックに挑戦 3 会社独自の安全教育やハラスメント撲滅宣言も 広い事業所内で清掃・集配  テレビドラマ「下町ロケット」の撮影に、無人農業トラクターを提供したことで話題になった「株式会社クボタ」(以下、「クボタ」)は、農業機械の国内トップメーカーでもある。クボタが特例子会社「クボタワークス株式会社」(以下、「ワークス」)を設立したのは2002(平成14)年。  ワークスは社員19人(うち障害者11人)でスタートしたが、2019年4月時点の社員数は73人、うち障害者は50人(内訳は身体障害者が4人、知的障害者が44人、精神障害者が2人)まで増えた(グループ6社の障害者雇用率は2019年4月時点で2・44%)。事業所も、大阪市浪速区のクボタ本社と同じ敷地内にある本社事業所をはじめ、堺、堺臨海、枚方(ひらかた)、ケミックス堺のほか、4月からはクボタの事業所・工場のある恩加島(おかじま)、本社阪神、久宝寺(きゅうほうじ)、筑波が加わり計9カ所まで拡大してきた。主に、クボタグループの事業所・工場内の清掃業務を中心として、郵便物の仕分け・配送、名刺・文書印刷、軽作業などの業務を行っている。  まず、ワークスの堺事業所があるクボタ堺製造所(大阪府堺市)を訪れた。ここは1937(昭和12)年の操業開始から長い歴史を誇り、機械事業部門の「マザー工場」と呼ばれている。東京ドーム4倍超にもなる敷地内で約2500人が働いているという。2016年、その一角にワークスの堺事業所が開設された。現在、指導員を含む12人が配属され、事務所棟内のロビーや会議室、トイレ、更衣室などの清掃業務と、敷地内に散在するグループ21部門の集配業務を担当している。清掃と集配は毎日、午前と午後の交代制で全員が行うことになっている。  午前9時半ごろ、エンジン組立工場と研究開発部門棟の間の通路で台車を押していたのは南(みなみ) 剛輝(ごうき)さん(22歳)と山本(やまもと)弘樹(ひろき)さん(21歳)。台車に載せられた大きな青い箱のふたを開けてもらうと、手さげカバンがぎっしりと詰まっていた。配達先の21部門別のカバンで、それぞれに郵便物などが入っている。エレベーターで各階に行き、2人で手分けして各フロアの担当者に直接手渡したり、専用の場所に置いてきたりする。配り終えるとそのまま事務棟に移動し、今度は整理棚に新しい郵便物などを仕分けていく作業を手際よく始めた。  南さんは、地元の職業能力開発校に半年ほど通ってから、最初に食品工場に就職したそうだが「2日で辞めてしまいました」と明かす。同工場では衛生上の理由でマスクと帽子を着用するため「みんなの顔がよくわからず、マスク越しに話される内容も、よく聞き取れなかった」ことから、コミュニケーションに不安を感じたのだという。再び職業能力開発校に戻ったところ、以前に実習経験のあったワークスから声がかかった。ワークスの営業課長として社員指導にもあたっている松下(まつした)勝章(かつあき)さんからの推薦だった。  「実習時に出してもらった南さんの履歴書に、朝刊の新聞配達を3年間続けたと書いてありました。増員が必要になったとき、そのことを思い出したのです」  南さんも「新聞配達のおかげなのか、集配先を覚えるのも台車を押して回るのもまったく苦ではありません」と笑う。ちなみに南さんはマラソンが趣味。前回出場した大阪マラソンでは同僚たちの寄せ書き入りのTシャツを着て、沿道から声援を受けながら完走したそうだ。  一方で「私はインドア派です」と笑う山本さんは、「仕分作業は時期によってとても量が多く、たいへんですが、やりがいもあります。職場の人たちがみんな優しいので、ここに就職してよかったなと思います」と話してくれた。  午前10時半にいったん全員が事務所に戻り、休憩時間をとる。20歳前後の若い社員が多いためか、冗談も飛び交う学校の教室のような雰囲気だ。みんなをまとめているのは主任の曽和(そわ)喜久蔵(きくぞう)さん(61歳)。定年後に再雇用されたベテラン社員だ。機会を見つけては社員たちを近くのお好み焼き屋に連れていったり、一緒にカラオケを楽しんでいるという。松下さんは「社員を見守り世話を焼いてくれる曽和さんの人柄が、現場をうまくまとめてくれているのだと思います」と話す。 ベテランを新事業所に送り出す  堺事業所開設から2年後、車で15分ほどの距離にあるクボタ堺臨海工場でも、清掃・集配業務の一部をスタートさせた。まず先輩メンバーたちが順番に担当してみることにし、1カ月後には先輩2人と新人1人、指導員1人が堺臨海工場に直接通う形をとった。大きな生産工場内にある手洗い場や廊下は、工場の油などが混じった汚れもあり、清掃の重要度も高い。  先輩メンバーの一人、山中(やまなか)淳暉(あつき)さん(22歳)は先日、入社3年目にして母校の東朋(とうほう)高等専修学校から依頼され、講演を行ったそうだ。在校生徒や保護者ら50人を前に、マイクロソフトのパワーポイントを使い、ワークスの紹介や自分たちの仕事などについて1時間ほど話した。堺臨海事業所主任の宮田(みやた)浩二(こうじ)さんたちと一緒に資料をつくり、出張扱いで講演に臨んだという。  「私自身、クボタワークスに正社員で就職してから楽しく働けているので、後輩たちのほか、保護者にも希望につながる話ができたと思います」と山中さん。  村松(むらまつ)愛(あい)さん(23歳)は「最初はトイレの場所や確認作業、工場内を回るルートなどを覚えるのに苦労しましたが、いまはバッチリです。仕事での目標は、(世界トップレベルの清潔さで知られる羽田空港の有名な清掃員)新津(にいつ)春子(はるこ)さんのようになることです。あこがれています」と笑顔で話してくれた。 仕事へのプロ意識を育てる  ワークスでは、社会や会社、仕事のルールを守りながら「やる気」を持って新しい仕事や技能にチャレンジしていけるよう、社員教育にも力を入れている。事業所ごとに開かれている月1回の勉強会ではドキュメンタリー番組などを一緒に鑑賞しながら、職場内で気をつけること、同僚たちとのチームワークのあり方などを学び、仕事に対するプロ意識の向上も目ざしている。前出の新津春子さんのことも勉強会で紹介し、社員の間で「清掃でトップレベルを」という意欲が生まれているという。  さらに2018年からはビルクリーニング技能検定へのチャレンジもうながしている。呼びかけたのは同年からワークス代表取締役社長をつとめる酒井(さかい)直人(なおと)さん。  「清掃専門の講師を外部から招き、希望者に講習会を開催したところ、多くの社員が参加してくれました。ビルクリーニングは覚えることが複雑で、たいへんな部分も多いのですが、社員たちのプロ意識もより高まったようです」  検定は社員13人と酒井さん、松下さんが受験したが、このときは残念ながら全員不合格だったという。実技試験のあとに社員が発した「時間オーバーだった」、「ポリッシャー機器が使いにくかった」などの反省の声をふまえ、今年も引き続き受験する予定だ。 初めてのアビリンピック  2018年には、アビリンピックに初めて挑戦する社員も出てきた。「ビルクリーニング」競技で、堺事業所の南さんと山本さんの2人、「オフィスアシスタント」競技では本社事業所の白神(しらかみ)和真(かずま)さん(27歳)が、大阪での地方大会に出場した。南さん、山本さんはそろって銀賞を受賞。白神さんは金賞と、第1位に贈られる大阪府知事賞を受賞し、初の全国大会出場を決めた。  白神さんのふだんの仕事は、パソコンを使っての名刺作成やデータ入力。「オフィスアシスタント」競技の「文書発送準備作業」などは、ほとんどやったことがなかったが、同じ事務所にいる松下さんが白神さんの手の動きを見て「器用かもしれない」と判断し、声をかけたそうだ。しかし、大阪大会の1カ月前に行われた練習会では、白神さんは最下位だった。それからは2人で、速く正確に紙を折る方法を研究したり、名簿リストを素早く見分けるためにスポーツ選手が取り組むビジョントレーニングを行ったそうだ。研究や練習の成果もあり、本番の大阪大会では28人中で見事1位に。初めて参加した、全国アビリンピック沖縄大会ではメダルに届かなかったが、株式会社クボタの木股(きまた)昌俊(まさとし)代表取締役社長の激励訪問を受けるなど、社内で一躍有名にもなった。業務に張り合いが出て、手応えを感じている。  「アビリンピックに出て結果を残したことで、自分のスキルを社内のみなさんにアピールできたと思っています。もっと磨いていくつもりです」  白神さんの全国大会出場によって、ワークス社員の間でも一気にアビリンピックへの関心が高まった。次回アビリンピックの「オフィスアシスタント」競技には、白神さん以外に2人がすでに立候補、「ビルクリーニング」競技への参加にも10人が意欲を見せている。そこで今年からは社内選考会を実施することが決まったそうだ。 「安全教育」や「ハラスメント撲滅(ぼくめつ)宣言」も  ワークスでは社員教育の強化にも力を入れている。まず「クボタワークスが目ざすこと」を四つ、社員に向けて提示した。@社員全員がクボタグループの一員としてイキイキと働ける会社づくり(会社に行くのが楽しい!)A社会のルール、会社のルール、仕事のルールが守れる風土づくり(良いこと、悪いことをはっきり)B社員全員が高い「やる気」を持って、新しい仕事に、新しい技能にチャレンジする人づくり(みなさんのやる気は大歓迎です)Cチームワークの良い、仲間を思いやれる職場づくり(人が嫌がること、いじめや仲間外れは絶対しない)  こうした指針をもとに全社員を集めた研修会を年2回行っている。昨年は初めて「ハラスメント」をテーマにした。この背景について、酒井さんは「社員が急激に増えたことで職場内の人間関係のトラブルもありました」と率直に話す。  「個別に対応・指導をしてきましたが、何がいけないのかを全社員がしっかり理解し、意識を変えてもらう必要があると思いました」  そこで「ハラスメント撲滅宣言」と題した「絶対に言うな! 3カ条」と「絶対にするな! 8カ条」を作成した。  「言うな! 3カ条」は、@暴言 A動物やほかの人(物)に例える B相手が嫌がることを言う(家族や好きな人のことをしつこく聞く、触れてほしくないことをいじるなど)  「するな!8カ条」は、@殴る・ける・たたく・胸ぐらをつかむ A人の体をさわる Bつきまとう C仲間外れにする D無視する E断られてもLINEなどの交換をせまる FしつこくLINEや電話をする G写真をSNSに投稿しようとする  実際に文言などを作成したのは、業務部長の日下(くさか)剛辰(よしとき)さんだ。  「何がハラスメントなのか、社員が理解しやすいようになるべく具体的な内容にしました。LINEなどはプライベートな領域ですが、職場で影響が出ることもありますから。職場内でもこの宣言内容を軸にして指導することができ、実際にトラブルもぐんと減りました」  内容を忘れてしまわないよう、毎日の終礼で1項目ずつ読み合わせをするなど、「こういうことをしていませんか」と確認し合っているという。  2019年からは「ゼロ災運動」をスタートさせた。もともとクボタグループで導入されている安全運動の一つ「安全人間づくり」に沿って、職場で安全に作業できるようにする取組みだ。壁に貼られた目立つ配色のポスターには、わかりやすいイラストとともに「元気よく挨拶する」、「手はいつもポケットの外」、「身の回りの整理・整頓・清掃をする」といった8項目の基本ガイドラインが示されている。  グループ会社と同様、朝礼終礼には全員で「ゼロ災でいこう、ヨシ!」と唱和し、当番社員が1項目ずつ読みあげて、確認をうながしている。酒井さんは「私も工場にいたときから続けていましたが、みんなで一緒に大きな声を出すと、仕事への気持ちが引き締まりますし、一体感も生まれます」  また、危険予知訓練も各事業所で行っている。どんなことが危険なのか社員同士で意見を出し合い、社内外での安全意識の向上に努めているという。 事業所の分散化  2019年4月には新たに12人の社員を迎え、障害のある社員は9事業所で計50人になった。これまで清掃会社から派遣されていた指導員も、頻繁な入れ替わりによる混乱を避けるため、ワークスによる直接採用を進めている。  分散化する事業所と本社のつながりを強化するため、1月にクボタからの出向社員として芦田(あしだ)しのぶさんが配属された。それまで障害のある人とは縁のない職場にいたという芦田さんは、毎日のように各事業所を回り、社員たちと交流しながら名前と顔を覚えてもらっているところだという。「どの社員にとっても、なにか困ったときに話しやすい存在になりたい。事業所と本社のパイプ役としてどんどん動き回りたいです」と意欲を見せる。  車いすに乗る久保添(くぼぞえ)優子(ゆうこ)さんは、ワークスで15年働くベテラン社員。事務所内では事務全般を取り仕切る大黒柱である一方、「頼れるお姉さん」として社員の実質的な「相談窓口」のような役割も長く果たしてきたそうだ。  「いまではクボタグループの社員が、仕事中に困っていそうな様子のワークス社員を見かけると、心配して事務所に知らせに来てくれることもあります。また、ワークス社員をグループ社内のイベントに誘うなど、日ごろから気軽に声をかけてくれます。グループの一員として認知され、見守ってもらっているなと実感します」  社員が増えたことで、2018年からは団体で親睦旅行ができるようになった。バス旅行の行先は神戸市内の動物園。酒井さんは動物のかぶり物をして園内で隠れる演出を、日下さんはバス内でカラオケやビンゴゲームなどを企画して、社員たちからは大好評だったという。「今年も趣向をこらし、みんなで楽しみたいと思います」と酒井さんはいう。 ダイバーシティ推進に向けて  ワークスは日ごろからクボタ人事部との連携にも努めている。月1回は本社人事部とワークス、もう一つの特例子会社で、野菜の水耕栽培を手がけるクボタサンベジファーム株式会社(2010年に設立。以下、「サンベジ」)による会議で情報共有を行っている。さらにクボタ人事部が中心となって、グループ内での業務の洗い出しやマッチングの可能性を模索しているところだ。2017年からは事務代行などを手がけるグループ会社「株式会社クボタスタッフ」(以下、「スタッフ」)で精神障害者を中心とした雇用拡大も図っている。  クボタ人事部ダイバーシティ推進室長の増田(ますだ)卓司(たくじ)さんは「特例子会社が蓄積したノウハウを活かし、クボタ社内でも障害のある社員がともに働ける環境や合理的配慮のあり方について検討しています。地元の大学や就労支援機関との連携も進んでおり、一般枠での応募者も出てきています。グループ全体での障害者雇用のあり方について、ワークス・サンベジ・スタッフ3社の実績や課題を見極めながら、しっかり前に進めていきたい」と話す。  最後に酒井さんからワークスの今後の展望について語ってもらった。  「ワークスの大きなミッションの一つは、業務を通じグループ内で『なくてはならない存在』になることです。そのためにも柱である清掃業務の質・技能の向上は必須でした。検定やアビリンピックへの参加をうながすことが、予想以上に社員の技能向上に対するモチベーションアップにつながったことを実感しました。清掃業界は人手不足ともいわれているので、ワークスが少しずつ力になっていきたい。また今後は、グループ内でほかにどんな業務ができるかについてもさらに検討します。クボタグループの一員として、一人ひとりが新しい技能の習得や仕事に、いきいきとチャレンジしていけるような職場を目ざしていきたいと思っています」 「クボタワークス堺事業所」が入るクボタ堺製造所。製造・調達部門、研究開発部門、サービス部門が設置されている 社内便の集配業務に就く山本弘樹さん(左)と、南剛輝さん(右) 工場内で集配する2人 営業課長の松下勝章さん 堺臨海工場では、小型汎用エンジンなどが製造されている 堺製造所で清掃を担当する田村(たむら)彩(あや)さん(左)、三井(みつい)愛(あい)さん(中央)、松田(まつだ)夏希(なつき)さん(右) 休憩時間に遠藤(えんどう)勇士(ゆうじ)さん(右)とコミュニケーションをとる主任の曽和喜久蔵さん(左) 「講演は緊張しましたが、よい経験になりました」と話す山中淳暉さん(写真提供:クボタワークス株式会社) 堺臨海事業所主任の宮田浩二さん。山中さんとともに、出張報告書もまとめた 堺臨海工場で清掃を担当する村松愛さん(左)、山中淳暉さん(中央)、井上なつきさん(右) 代表取締役社長の酒井直人さん ビルクリーニング技能検定に向けた講習会では、ポリッシャーの使用方法などを学んだ(写真提供:クボタワークス株式会社) 配管資材の開発・製造を行う株式会社クボタケミックスの堺工場で、清掃を担当している(左から)主任の小松原(こまつばら)朗弘(あきひろ)さん、長岡(ながおか)佳雄(よしお)さん、阪本(さかもと)花(はな)さん、指導員の岩本(いわもと)弥生(やよい)さん 白神和真さんは、本社内で販売されるサンベジファーム産野菜の管理も担当している 全国アビリンピック沖縄大会で、松下さんらに見守られながら競技に取り組む白神さん 白神さん(右)、三井さん(中央)とともに、社内での練習会に参加する三浦(みうら)康平(こうへい)さん(左)(写真提供:クボタワークス株式会社) 芦田しのぶさんは、社員と親しみやすい関係づくりを心がけていると話す 朝礼終礼では、ゼロ災運動のスローガンが唱和される(写真提供:クボタワークス株式会社) 業務部長の日下剛辰さん 社員が口をそろえて「楽しかった」と話すバス旅行での一コマ(写真提供:クボタワークス株式会社) 株式会社クボタ人事部ダイバーシティ推進室長の増田卓司さん 久保添優子さんは、業務部長の日下さんとともに事務全般を取り仕切っている 【P12-14】 インフォメーション 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています〜 入所日など  国立職業リハビリテーションセンター、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、障害別に年間約10回の入所日を設けています。応募締切日や手続きなどの詳細については、お気軽にお問い合わせください。 ○遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター  埼玉県所沢市並木4-2 職業評価課04-2995-1201 http://www.nvrcd.ac.jp/ 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター  岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課0866-56-9001 http://www.kibireha.jeed.or.jp/ 募集訓練コース 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査・物品管理コース 建築系 建築CADコース ビジネス情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース 会計ビジネスコース OAビジネスコース 職域開発系 物流・組立ワークコース オフィスワークコース 販売・物流ワークコース ホテル・アメニティワークコース 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 資材管理コース ビジネス情報系 OAビジネスコース 会計ビジネスコース システム設計・管理コース ITビジネスコース 職域開発系 事務・販売・物流ワークコース 厨房・生活支援サービスワークコース オフィスワークコース 物流・組立ワークコース サービスワークコース ○訓練の期間は……  「システム設計・管理コース」、「ITビジネスコース」(ともに国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は2年間、そのほかの訓練コースは1年間の訓練です。 ○対象となる方は……  「ビジネス情報系」の「視覚障害者情報アクセスコース」(国立職業リハビリテーションセンター)、「ITビジネスコース」(国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は、視覚障害のある方を対象とし、「職域開発系」の各コースは、高次脳機能障害のある方、精神障害のある方、発達障害のある方、知的障害のある方を対象としています。そのほかの訓練コースは、知的障害のある方を除くすべての方が対象です。 事業主のみなさまへ  両センターでは、障害のある方の採用をお考えの事業主と連携し、個々の事業主の方のニーズや訓練生の障害特性などに応じた、特注型のメニューによる職業訓練を行っておりますのでご活用ください。ご利用いただく事業主の方には次のような支援も行っております。 ■ 障害特性に応じた特別な機器・設備の配備や作業遂行に関する支援方法のアドバイスなど、円滑な受入れに関する支援 ■ 雇入れ後の職場定着に向けた技術面でのフォローアップとキャリアプランづくりのための支援  詳細については… http://www.jeed.or.jp/disability/person/person07.html ◆2019年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催されます。 詳細は、「地方アビリンピック」ホームページをご覧ください。 都道府県 開催日 会場 北海道 10月頃 北海道職業能力開発促進センター 青森 9月下旬 @青森職業能力開発促進センター Aホテル青森 岩手 7月7日(日) 岩手県立産業技術短期大学校 宮城 7月13日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月12日(金) 秋田市にぎわい交流館AU(あう)(エリアなかいち) 山形 7月9日(火) 山形ビッグウイング 福島 11月9日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 12月7日(土) 12月8日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月6日(土) @栃木職業能力開発促進センター A文星芸術大学 Bとちぎ福祉プラザ 群馬 7月6日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月13日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月頃 未定 東京 2月中 @東京障害者職業能力開発校 A職業能力開発総合大学校 神奈川 10月24日(木) 10月26日(土) 国立県営神奈川障害者職業能力 開発校 新潟 9月7日(土) 新潟市総合福祉会館 富山 7月27日(土) @富山市職業訓練センター A富山県技術専門学院 石川 10月6日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 7月7日(日) 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 10月6日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月20日(土) 7月21日(日) ポリテクセンター長野 岐阜 7月13日(土) 東海職業能力開発大学校 静岡 @AB 7月6日(土) C 7月13日(土) @静岡市清水文化会館マリナート A静岡市東部勤労者福祉センター清水テルサ B清水社会福祉会館はーとぴあ清水 C学校法人静岡理工科大学 静岡デザイン専門学校 愛知 @6月16日(日) A6月22日(土) B6月23日(日) C6月29日(土) @愛知県立名古屋聾学校 A大成今池研修センター B学校法人 珪山学園 専門学校 日本聴能言語福祉学院 C中部職業能力開発促進センター 三重 12月頃 三重職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 会場 滋賀 10月中旬 @滋賀職業能力開発促進センター A滋賀職業能力開発短期大学校 京都 2月2日(土) @京都府立京都高等技術専門校 A京都府立京都障害者高等技術専門校 B京都府精神保健福祉センター 大阪 @AB 6月22日(土) @ 7月6日(土) @関西職業能力開発促進センター A(社福)日本ライトハウス視覚 障害リハビリテーションセンター B(社福)大阪市障害者福祉・スポーツ協会 大阪市職業リハビリテーションセンター 兵庫 6月22日(土) 7月6日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 @6月23日(日) A6月28日(金) @奈良県立盲学校(パソコン操作のみ) A奈良県立高等技術専門校 和歌山 6月15日(土) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月27日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月13日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 6月29日(土) 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 広島 12月または1月 広島障害者職業能力開発校 山口 10月19日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月21日(土) @徳島職業能力開発促進センター A徳島ビルメンテナンス会館 香川 1月下旬または2月上旬 @かがわ総合リハビリテーションセンター A香川県立高松養護学校 B香川県立香川中部養護学校 愛媛 7月13日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 7月6日(土) 高知職業能力開発促進センター 福岡 @6月8日(土) A6月15日(土) @福岡県立福岡高等技術専門校 A国立県営福岡障害者職業能力開発校 佐賀 1月頃 @村岡屋大和店Wa cafeさかしめ A佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月6日(土) 長崎県立長崎高等技術専門校または長崎職業能力開発促進センター 熊本 @6月29日(土) A6月30日(日) @熊本職業能力開発促進センター A熊本県立技術短期大学校 大分 11月30日(土) 社会福祉法人太陽の家 宮崎 7月6日(土) 宮崎職業能力開発促進センター 鹿児島 7月21日(日) @鹿児島職業能力開発促進センター A国立・県営鹿児島障害者職業 能力開発校 沖縄 7月20日(土) 沖縄職業能力開発大学校 地方アビリンピック 検索 ※2019年5月14日現在 ■については、予定または未定になります 開催地によっては、開催日や種目などで会場が異なります 参加選手数の増減などにより、変更される場合があります 障害者の雇用をお考えの事業主の方へ 就労支援機器をご活用ください! 中央障害者雇用情報センターでは、障害者を雇用している、または雇用しようとしているみなさまに無料で就労支援機器の貸出しを行っています。 「就労支援機器」とは障害者の就労を容易にするための機器のことで、例えば視覚障害者を対象とした拡大読書器や、聴覚障害者を対象とした補聴システム(集音システム)といったものがあります。 拡大読書器 ●書類や写真などを拡大表示する機器です。 ●コントラストや色調の変更も可能なためより見やすく調整することができます。 ●卓上型、携帯型など活用シーンに合わせて選択できます。 補聴システム(集音システム) 受信機 マイク送信機 ●マイク(送信機)が拾った音を直接、補聴器や人工内耳に届けるシステムです。 ●聞きたい音を大きくできるので就労のあらゆる場面で有効に使用できます。 ノイズキャンセラー パーテーション ●視覚的・聴覚的な刺激を低減させることで、周囲の状況に影響されずに集中できる環境を整えます。 ▲上記は一例です 貸出しの対象となる事業主 障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主など ※国、地方公共団体・独立行政法人などは除く 貸出し期間 原則、6カ月以内 ※職場実習やトライアル雇用の場合も利用できます 貸出しの流れ 申請書の提出 申請書を記入し、メールまたは郵送でご提出ください ※申請書は当機構ホームページよりダウンロードできます 貸出し決定 決定内容を通知し、機器を配送します 貸出しの終了・回収 機構契約業者が回収に伺います お問合せ先 中央障害者雇用情報センター 〒130-0022 東京都墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 TEL 03-5638-2792 E-mail kiki@jeed.or.jp ※就労支援機器を常設にて展示しているほか、説明会を随時開催しています 就労支援機器を当機構ホームページでもご紹介しています https://www.kiki.jeed.or.jp/ 検索 就労支援機器のページ 検索 【P15-18】 グラビア 「仕事が生きがい」総務・人事部主任、頼られる先輩に クラシエ製薬株式会社(東京都)尼野次郎さん 取材先データ クラシエ製薬株式会社 〒108-8080 東京都港区海岸3-20-20 ヨコソーレインボータワー6F TE L 03-5446-3300 FAX 03-5446-3371 写真/文:官野 貴  クラシエ製薬株式会社(東京都港区)の本社で働く尼野(あまの)次郎(じろう)さん(43歳)は、小学生のときに角膜が混濁し、光を感じる程度の視力となった。小中高校と盲学校で学び、大学卒業後は点字図書館で4年ほど校正の仕事をしていたが、民間企業の事務職にも興味が湧き、一般企業への就職を目ざし「国立職業リハビリテーションセンター(以下、職リハセンター)」の視覚障害者アクセスコース(現在の視覚障害者情報アクセスコース)に入所した。  職リハセンターでは、1年3カ月かけて視覚障害者用アクセス機器(点字、点図ディスプレイ)やアクセスソフト(音声化ソフト)の使用方法をはじめ、パソコンでの事務処理で求められる知識や技能を学んだ。就職活動では、実際の業務内容や職場のコミュニケーションの取り方などに不安を感じていたが、職リハセンター職員との面接の練習や、企業の採用担当者へのパソコン操作の実演などを通して自信がつき、「クラシエ製薬株式会社」への就職につながった。  現在、入社10年目の尼野さんは総務・人事部に所属し、社員の給与管理などの事務処理や電話対応などを担当している。「仕事が生きがい」と語る尼野さんの趣味は20年間続けているマラソンで、年に複数の大会にも出場している。公私ともにアクティブな尼野さんは、今春、主任へ昇進した。「今後、社内の後輩の不安を解消するアドバイスができるようになりたい」と抱負を語る。職リハセンターの訓練生には「訓練をしっかり受けて、面接なども恐れることなくチャレンジしていくことが大事」とアドバイスしている。 視覚障害者用アクセス機器を駆使し、ワードやエクセルを使いこなす 川崎市の自宅から港区の職場まで、電車で通勤している オフィスでは、出入りがしやすい角地のデスクを使用。打合せなどもその場で行っている 点字ディスプレイ(中央手前)、点図ディスプレイ(右)などの導入には、当機構の就労支援機器貸出し制度(14ページ参照)や助成金が活用された 点図ディスプレイと付属ソフトを使用することにより、パソコン上の文字や図形を点図として表示できる タッチパネル式のコピー機も、ガイドとして点字シールを貼ることで操作が可能となる 点字ディスプレイは、パソコン上の文字情報を点字として表示できる 昼食には、同僚の肩を借りて食堂へ向かう ランナーと伴走者がスムーズに走るためにも、職場で能力を発揮するためにも、支援者や同僚とのコミュニケーションは欠かせない 月に2〜3回行われる「アキレスインターナショナルジャパン」のマラソン練習会には、さまざまな障害のあるランナーが参加している 【P19】 エッセイ第4回 障害者の「働きたい」を企業とつなぐ 『障がい者の就活ガイド』著者 紺野大輝 紺野大輝(こんのたいき) 1976(昭和51)年、札幌市生まれ。「脳性麻痺による脳原性運動機能障害(両上肢機能障害)2級」という障害を持って生まれる。2000(平成12)年法政大学卒業後、一般採用で都内老舗ホテルに入社、購買部で5年間勤務する。2006年、障害者採用で転職。2016年、『障がい者の就活ガイド』(左右社)を出版。2018年8月22日、朝日新聞「天声人語」で紹介される。 公式ホームページ:http://konnotaiki.net/ ◎講演で自らの体験を伝える  2015(平成27)年2月に、個人的におつき合いのある企業の社長さんから「就労移行支援事業所を始めたので、利用者にこれまでの経験を話してほしい」との依頼をいただきました。  それまで人権をテーマとした講演は200回以上行っていましたが、就職の話はしたことがありませんでした。「不採用の連続だった自分の経験が果たして役に立つのだろうか」。一抹の不安もありましたが、「やってみなければわからない」と引き受けることにしました。  このエッセイの第2回・第3回(※)で書いたような体験談を中心に、1時間ほど話しました。障害者採用と一般採用の違い、人事担当の視点から応募書類の書き方や面接のポイントなど、具体的なエピソードは利用者の方に好評でした。質問を受けつけると、就職活動の知識や経験がなく、「障害があるから就職はできない」と半(なか)ば諦めている人もいました。そのような方には「できないことを気にする必要はない。できることや強みを磨けば働ける」と力強く訴えました。  はじめは不安を感じながら引き受けた講演でしたが、相手に響いていることを実感し、最後には自信をもって答えることができました。 ◎社会とかかわりたい  講演終了後には個別相談を行いました。多くの方が参加していたため、1人10分と短い時間でしたが、一人ひとりがさまざまな考えを持ち、悩みを抱えていることを実感しました。ある方はこのようにいいました。  「私は障害年金をもらって実家で暮らしているので、お金には困っていませんが、働きたい。社会とかかわっていなければ、何のために生きているのかわからなくなるからです」  私はこの言葉に強い衝撃を受けました。私は一人暮らしをしていましたし、障害年金の受給もしていないため、「生活費を得なくてはならない」ということが就職の前提にありました。しかし、この講演の経験から、生計を立てること以外に、生きがいや社会とのかかわりを持つために働きたい人もいるということを知ったのです。  また、悩みも聞きました。なかでも「障害があることをオープンにするか」という相談は、多く受けました。特に、外から見えない障害はなかなか伝わらず、誤解されることも多いため、面接では障害のことは話さず、入社後困ったことが起きたら相談するという方もいました。  私も就職活動で苦労したので「とにかく内定がほしい」という気持ちは痛いほどわかります。しかし、18年間企業で勤務してわかったのは、「お互いに理解して働いた方が、よい雇用関係になる」ということです。  よって、このような質問では、「理解しようという姿勢のない会社で働くのは、果たして幸せなのだろうか」、「もし実際にトラブルなどが発生したら、一緒に働く従業員やお客さまに迷惑をかけることになる。一度失った信用を取り戻すには、多くの時間とエネルギーがかかる」という話をしています。  もちろん、私の考えがすべて正しいわけではありませんが、「内定がゴールではない。働いて充実した人生を送れるようになるのが真の成功」という想いで、一人ひとりの相談に乗りました。 ◎ライフワーク活動  その後、企業や官公庁からも障害者雇用研修の依頼が入るようになりました。企業の方も障害者とかかわったことがない人が多く、障害者雇用に不安を抱えていることを知りました。そこで、就労支援の現場で聞いた生の声を経営者・人事担当者にお伝えするように心がけています。当事者と企業の架け橋になるのが、私の役割だと感じています。  おかげさまで現在は全国各地から講演の依頼をいただき、この活動はライフワークとなっています。障害者雇用の支援を始めて4年目。障害者雇用がむずかしいと感じるのは、働く側・雇用する側の両方の知識不足が原因だと感じています。それぞれの立場を経験している私だからこそ、お互いの理解が進むよう、これからもメッセージを発信していきます。(つづく) 就労移行支援事業所での講演の様子 ※第2回(2019年4月号)、第3回(2019年5月号)は、当機構ホームページでもご覧になれます。 【P20-25】 編集委員が行く 地域就労支援ネットワークを軸に「働く」を支える −東京都大田区立障がい者就労支援センターを訪ねて− 東京都大田区立障がい者就労支援センター、楽天ソシオビジネス株式会社(東京都) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 取材先データ 東京都大田区立障がい者就労支援センター 〒143-0024 東京都大田区中央4-30-11 東京都大田区立障がい者総合サポートセンター内 TEL 03-5728-9436  FAX 03-5728-9439 楽天ソシオビジネス株式会社 〒158-0094 東京都世田谷区玉川1-14-1 楽天クリムゾンハウス TEL 050-5581-6910(代) 編集委員から  障害福祉サービス事業所等が行う定着支援と、障害者就業・生活支援センターや区市町村障害者就労支援センターなどによる定着促進のための取組みとの連携のあり方が今後さらに問われてくる。区市町村の障害者就労支援センターはいかなる機能を果たしていくべきか、改めて今後の方向を探った。 写真:小山博孝・官野 貴 Keyword:障害者就業・生活支援センター、区市町村障害者就労支援センター、地域就労支援ネットワーク、福祉事業所・相談支援事業所との連携、企業との新たな連携 POINT 1 区立の障害者総合支援施設で就労支援を展開 2 障害者相談支援事業所などを含む地域の就労支援ネットワークを構築 3 多様な接点を活用した企業との連携を展開  東京都の「区市町村障害者就労支援事業」として、区に障害者就労支援センターが初めて設置されたのは1998(平成10)年。その後着実な歩みを見せ、2019年3月現在、53区市町村、61拠点に設置されている。国の制度として、障害者就業・生活支援センターがあるが、東京都ではそのほか、区市町村障害者就労支援センターが身近な地域を基盤として、就労支援を展開している。地域に根ざした就労支援は、近年の障害者雇用率上昇の背景にもなっていると思われる。また、知的障害、精神障害、発達障害のある人々の就労に対する関心が高まるなか、生活支援と就労支援を一体的に提供する機能の充実が、ますます求められる。  さらには、障害者総合支援法に基づく「就労定着支援事業」が2018年から開始されたが、就労移行支援事業所などの障害福祉サービス事業所等(※1)が行う「定着支援」や、障害者就業・生活支援センター、東京都の区市町村障害者就労支援センターなどによる「定着促進」のための取組みとの連携のあり方が、今後さらに問われてくる。その際に、区市町村の障害者就労支援センターはいかなる機能を果たしていくべきか。改めて、今後の方向性を探りたいと思っていたところ、区と民間社会福祉法人の「協働」で支援を進める東京都大田区の取組みに出会うことができた。 総合サポートセンターの一翼をになう就労支援センター  JR京浜東北線大森駅から2qほど進むと、大森赤十字病院などの公共施設が立ち並ぶなか、「大田区立障がい者総合サポートセンター」が目に飛び込んできた。愛称は「さぽーとぴあ」。2015年3月に現在のА棟が開設され、2019年3月にB棟が完成し、グランドオープンを迎えた複合施設だ。  А棟の1階は相談支援部門。障害者相談支援事業、特定相談支援事業などを行うほか、基幹相談支援センター、障害者虐待防止センター、意思疎通支援事業など、大田区の障害者相談事業の中核をになう。2階は居住支援部門で、自立訓練(機能訓練と生活訓練)を展開。3階は地域交流支援部門として、視覚障害者向けに「声の図書室」を設置したほか、障害に関する情報を集約し、サポーターの輪を広げるため、さまざまなイベントも開催している。そして、4階に今回目ざす「大田区立障がい者就労支援センター」(以下、「就労支援センター」)がある。さらに5階には多目的室があり、多様な目的に応じて貸し出されている。  就労支援センターは、「さぽーとぴあ」の就労支援担当部門として位置づけられ、「区市町村障害者就労移行支援事業」と「就労定着支援事業」をになう。 大田区との共同運営  さっそく、就労支援センターサービス管理責任者の山田(やまだ)達也(たつや)さんと、就労支援員の広瀬(ひろせ)健次郎(けんじろう)さんが迎えてくれた。まず就労支援センターの最大の特徴をうかがうと、社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会(以下、「育成会」)が業務委託により行う「直接支援」と、大田区支援調整担当(就労)がになう「側面支援」の共同運営≠セという。直接支援では、就労相談、職業適性評価、就労促進支援、就労定着支援、仲間と語りあう居場所である「たまりば」の運営を行う。一方、側面支援では、大田区支援調整担当(就労)が中心となって就労支援ネットワークの構築を図っている。具体的には、関係機関との連携、企業開拓、区内外の就労支援ネットワークとの連携である。(図1)  大田区との協働体制の利点について、育成会に所属する山田さんは、「区が実施する多様な制度について詳しい職員がすぐ近くにいること」をあげる。就労支援部門の構成は、育成会の職員が12人、区職員が4人。同じ事務所内で、実質的に協働しながら支援が進展する。 強固な連携の要、ネットワーク会議  連携の要となる就労支援ネットワーク会議は、実務者によるネットワークづくりを、就労支援センターが事務局となって進めているのが特徴だ。具体的には、図2に示す会議が定期的に開催されている。主要な構成要素は、@大田区自立支援協議会就労支援部会、A大田区障害者就労促進担当者会議、B就労移行支援事業所連絡会、C職場体験実習実行委員会である。  このなかで、A大田区障害者就労促進担当者会議(以下、「就担会(しゅうたんかい)」)は、大田区の就労支援ネットワークの推進力でもある。その原点は遡(さかのぼ)ること40年以上前の1976(昭和51)年。かつて区が直営していた「授産施設」での「施設は通過の場であるべき」という就労支援の取組みに端を発している。その後、図2に示すように、就担会の構成メンバーも拡大。多様な関係者が参加し、いまでは毎回の参加者は、40〜50人にのぼり、大田区の障害者就労支援のネットワークモデルとなっている。また就担会は、定期的な学習会や施設ごとの就労支援状況報告に加え、課題が生じたときの協議の場の機能も果たす。「一つの事業所で抱え込まず『連携・協働』の観点から、課題を解決できるところがメリット」と広瀬さん。就労支援センターが事務局機能を果たしながら、必ずしも会議を介さなくても連携を進めることのできる関係性がすでに構築されている。 定着支援の充実を目ざして  定着支援事業の一つである「たまりば」事業。就職後の職場訪問や、仕事帰りに仲間と集まる居場所≠ニしての役割に加え、就労者激励会を継続して開催している。この「たまりば」事業の正式名称は、「就労者自助活動支援事業」。毎週金曜日の勤務終了後に、就労する仲間とゲームや食事を楽しみ、和気あいあいと過ごす活動の場である。登録者のうちの40人ほどが参加しており、活動を通して、仲間同士の支え合い、すなわちピアサポートを実現する場となっている。通常はさぽーとぴあ内で開催されるが、第3金曜日は参加者の実費負担で、大森の地域活動支援センター「スペースC」を借りて行われている。  「たまりば」は、就労支援センターが大田区下丸子(しもまるこ)にあった時代に、特別支援学校の卒業生に就職後の支援をしたことがきっかけとなり設置された。金曜日の仕事帰りにリフレッシュする「ヨコ」のつながりを求める声に対応した。いつも参加している登録者が来ないときには、職場不適応の可能性を予測することができるなど、就労支援者側から見ても定着支援の一環として優れた取組みであるといえる。特に、職場での課題のみならず、生活上の課題は職場定着に大きな影響を与えていると考えられるなか、「たまりば」は、登録者の暮らしぶりが表出し課題を見つけやすい、まさに「居場所」であり、「拠点」なのである。 継続的な定着支援のために  ところで、2018年度から障害者総合支援法に基づく就労定着支援事業がスタートした。施行から約1年、具体的な成果についての評価はまだ先になるが、福祉サービスとして位置づけられていることから、就労移行支援事業所などと公的な就労支援機関との役割分担は大きな課題といえる。  就労支援センターでも、就労移行支援事業を行っているため、就労定着支援事業の指定を受けている。「就労移行支援事業所は、就職後6カ月間のフォローアップと、その後最長3年間の就労定着支援事業を行うため、『3年半後』の定着をどう支援するのかが大事である」と山田さんは強調する。長期にわたって安定的に就労していくためには、支援の密度を段階的に見直しながら、長期的、継続的な定着支援を行う仕組みが欠かせない。一方、登録者が年々増加するなかで、どのように効果的な就労定着を実現していくべきかは大きな課題である。大田区では、就労支援センターの公的な位置づけを意識しながら、この根本的な課題に挑んでいる。  就労移行支援で主体的にかかわる多様な特徴を活かして、就労定着支援に臨むことを基本に、全体的な調整機能を果たすこと。ここでも、地域のネットワークが背景にあることに気づかされる。「どのような支援が必要になるのか」を基盤に、どの機関を中心に支援を行うのかを柔軟に決定していくことが肝心だ。 相談支援事業所などとの連携ツール『大田区ジョブック』  職場定着を確実にするためには、就労に向けた初期段階からの支援が欠かせない。このため、地域でのさまざまな相談をになう障害者相談支援事業では、就労に関する相談に対して適切な支援が求められる。しかし、就労や障害者雇用に関する情報について、必ずしも相談支援の担当者間で共有されているとはいえない。  こうしたなか、大田区立障がい者総合サポートセンターと、立教大学コミュニティ福祉学部地域連携・協働プロジェクト(担当:富田(とみた)文子(ふみこ)助教(当時))が共同で開発したのが、相談支援事業所などとの連携ツール、「障がいのある方の支援者向け就労支援施設ガイド『大田区ジョブック』」である。この冊子には、相談支援事業所で相談支援専門員などが区内の障害者の相談にあたる際、適切な事業所を案内できるよう、各事業所のプログラムの特徴などが具体的に掲載されている。就労をめぐっては、最初にどの相談支援事業所に相談するかによって、その後の働き方が方向づけられる面も少なくない。相談支援の担当者は、生活全般に高いアセスメント力を有しているが、就労となると実際の働き方、例えば就労継続支援B型事業所などの福祉的就労と、企業就労との違いを明確にイメージして相談に臨むことがむずかしい場合もある。そのようなときに『大田区ジョブック』を利用すれば、相談のなかで得られる情報から、チェックリストを用いることで、支援対象者における就労のステージを概観(がいかん)できる。こうしたツールによる情報共有は、地域生活の支援をになう相談支援事業所と、就労支援センターによる支援を密接に結びつける役割を果たしている。 「楽天ソシオビジネス」で、新たな連携を実感  地域のネットワークに基づく就労支援センターの特徴を知れば知るほど、具体的な支援の状況についても知りたくなる。そこで紹介いただいた楽天グループの特例子会社、「楽天ソシオビジネス株式会社」を訪ねた。同社は、東京都世田谷区の楽天株式会社の本社内にある。就労支援センターから電車利用で一時間ほどの場所にあるが、区は異なっても就労支援の活動には距離をいとわない支援機関の心意気が感じられる。  楽天本社ビル内にある楽天ソシオビジネスを訪ねると、さっそく同社代表取締役副社長の川島(かわしま)薫(かおる)さんと、雇用推進部定着支援グループの山岸(やまぎし)大輔(だいすけ)さんが出迎えてくれた。  同社がファクトリー事業として展開する2拠点のうちの一つが大田区にある。ここは人工光型(じんこうこうがた)植物(水耕栽培)工場で、葉物野菜を栽培し、楽天本社ビル内の社員食堂をはじめ各所に納品している。ここには、就労支援センターの登録者も勤務している。  また同社は、大田区立障がい者総合サポートセンター「さぽーとぴあ」のグランドオープンに合わせて、一般の消費者向けのカフェベーカリー業務も行っている。楽天本社ビル内で運営しているコンビニエンスストア業務のノウハウを活かしながら、さぽーとぴあを利用する障害者のみならず、近隣の障害者や高齢者、さらには地域のさまざまな住民との共生を目ざす新しい形の店舗だという。焼き立てパンの製造やレジ打ち、商品の陳列・補充、店内清掃などの通常業務に加え、開かれたお店づくりを行うことで、多くの利用者に憩いの場を提供したいとのこと。  このコンビニエンスストア機能を有するカフェベーカリーでは、ベーカリーそのものには職人を採用したが、オープン時から店内には複数の障害者を配置し、障害種別にかかわりなく業務の可能性を広げていきたいという。さぽーとぴあを訪問した際にも実感したが、目の前には公園があり、病院も近く地域住民が利用しやすい環境にある。「公的な施設ではあるが、価格設定などは自由なので、付加価値の高い商品とサービスを提供したい」と、川島副社長の夢は広がる。  また、さぽーとぴあにカフェベーカリーを開設した一番の目的は、「実習の場」を提供することだという。川島副社長は、就労支援機関に「企業で働く」というレベルを的確に理解してほしいと強調する。たしかに、就労支援センターから見れば、実習の場を増やすことに加え、企業とアセスメントの状況を共有することにもつながることになる。  障害者雇用に対する同社の基本的な姿勢は、「会社内のことは会社内で対応する」こと。そして障害の有無にかかわらず、「努力すればキャリアが進む」ことを前提としている。障害のある社員と向き合う際には、常に「自立」を念頭に置いており、同社には特別支援学校を卒業した若い従業員も多いため、働いて自立することを期待しているという。一方、彼らが職場に定着し、持てる能力を十分に発揮するためには、生活の安定や生活上の課題の解決が欠かせない。そのため、社員のプライベートにあたる生活面は、就労支援機関によるサポートを活用している。  このように、企業と支援機関との役割分担をふまえたうえで、両者が連携していくことが重要である。同社からは、就労支援センターとカフェベーカリーを通じて、より連携を強めていこうとする思いが伝わってきた。 楽天本社ビル内での実習  楽天本社ビル内には、約1万人が勤務している。そのうち約2割が外国籍の社員。受付からエレベーターの案内に至るまで、社内では英語が飛び交っており、そこからもダイバーシティ(多様性)への取組みを実感する。  昼食時間帯に、山岸さんに社員食堂を案内していただくと、多くの社員が談笑しながら食事を楽しんでいた。グループ全体の社員が利用しており、楽天ソシオビジネスのメンバーもここで昼食をとっている。  食堂内には、毎日約3千人が来店するという社内コンビニエンスストアがある。楽天ソシオビジネスの社員は、レジ打ち、商品の陳列・補充、入荷商品のチェック、店内清掃、売上げ管理などあらゆる販売業務をになっている。また、店内で焼き立てパンを提供するベーカリーでは、生地の仕込み、成形、焼成などの製造業務にも障害のある従業員が力を発揮。  しばらくレジ部門の様子をうかがっていると、現金の授受(じゅじゅ)はない。キャッシュレス化により電子マネーなどでのやり取りをする様子は、言葉によるコミュニケーションの制約がなく、確実なレジ打ち、販売業務を可能にする環境の一つといえる。ここでは、大田区内の支援事業所から来たSさんが、熱心に実習に取り組んでいた。  続いて、同じフロアにあるドライクリーニングの受付や、社内のさまざまな申請の窓口業務を行う部門へ。同じく大田区から来ている小林(こばやし)恵里(えり)さんが、楽天ソシオビジネス内で実習中だった。きりりとしたスーツ姿が実習に真剣に向き合っていることを感じさせる。回収したゲストカードをばらす作業に集中しており、午前中は、コンビニエンスストアの実習に取り組んでいたという。今後、どのような職業生活が彼女たちを待っているのか期待が膨らむが、思わず、さぽーとぴあのカフェベーカリーで、元気に働く姿を想像した。 取材を終えて  東京都の人口は推計で1386万人(2019年1月1日時点)であり、東京都の労働市場は大きく、雇用される障害者数も相当数に上る。そして大田区には、約73万人が暮らし、就労支援センターの登録者が訓練している楽天グループは、グループ全体の従業員数が1万7千人にも上る。こうした大規模な環境でも障害者の就労にあたって、そこに息づいているのはやはり、人と人とのつながりを基盤とした地域密着型の支援であった。就労支援機関と事業所との日ごろの連携や情報交換から関係性が生まれ、それが雇用・就労の実現の原動力になっていく。地域というのはその規模の大小ではなく、人と人が描く支援の輪郭(りんかく)に違いない。 ※1 障害福祉サービス事業所等:就労移行支援事業所、就労継続支援事業所(A型・B型)、生活介護事業所、障害者支援施設(就労移行支援・就労継続支援・生活介護を行うものに限る)、地域活動支援センター、小規模作業所のこと (注)楽天ソシオビジネスの取組みについては、本誌2016年1月号の「職場ルポ」(※1)で紹介しています。また、障害者雇用事例リファレンスサービス(※2)にも掲載しています。 ※1 当機構ホームページでご覧いただけます。 働く広場 2016年1月号 検索 ※2 当機構ホームページでご覧いただけます。https://www.ref.jeed.or.jp/27/27506.html 障害者 リファレンス 楽天 検索 大田区立障がい者総合サポートセンター 就労支援員の広瀬健次郎さん サービス管理責任者の山田達也さん 月に一度第3金曜日に、「たまりば」の会場となる地域活動支援センター「スペースC」 毎週「さぽーとぴあ」4階で開かれる「たまりば」は参加者の憩いの場となっている 年に12回開催される大田区障害者就労促進担当者会議 ▲写真提供:大田区立障がい者総合サポートセンター 就労支援施設ガイド『大田区ジョブック』 「さぽーとぴあ」の就労支援を受け楽天ソシオビジネスで働く神村(じんむら)海斗(かいと)さん 雇用推進部定着支援グループの山岸大輔さん 代表取締役副社長の川島薫さん オフィス内でゲストカードのばらし作業を行う小林恵里さん 店内に設置されたオーブンでパンを焼き上げる 楽天本社ビル内のコンビニエンスストア 図1 大田区立障がい者就労支援センターの業務 (区市町村障害者就労支援事業) 直接支援 東京都手をつなぐ育成会 就労支援部門 ■就労相談 ■職業適性評価 ■就労促進支援(就労移行支援事業所) ■就労定着支援 ■「たまりば」 共同運営 側面支援 大田区支援調整担当(就労) ■就労支援ネットワークの構築 ■関係機関との連携 ■企業開拓(雇用・実習) ■区内外の就労支援ネットワークとの連携 出典:大田区立障がい者就労支援センター 小林善紀氏提供資料 図2 就労支援ネットワーク会議の実施 実務者によるネットワークづくりを事務局として進める @大田区自立支援協議会就労支援部会(第3月曜日・年10回)  労働・教育・医療・民間・地域・学識・福祉 A大田区障害者就労促進担当者会議(毎月第2火曜日・年12回)  労働・教育・福祉(知的、身体障害就労系事業所等=主に就労継続支援事業B型) B就労移行支援事業所連絡会(隔月・年6回)労働・福祉  (就労移行支援事業所、自立訓練事業所) C職場体験実習実行委員会(適宜)福祉(精神障害就労系事業所) 毎回40〜50人が参加 ■内容 ネットワーク事業の企画・実施、就労支援事例や雇用についての情報交換 ■構成メンバー:就労支援事業所(20)、特別支援学校(3)、生活支援機関(6)、ハローワーク(1)、地域福祉課(福祉事務所)、広域支援機関(東京障害者職業センター、東京ジョブコーチ支援室等)(4) ■事務局:大田区立障がい者総合サポートセンター支援調整担当(就労) 会議を介さなくても連携を進める=事業所訪問・情報提供 出典:大田区立障がい者就労支援センター 小林善紀氏提供資料を改編 【P26-27】 霞が関だより 平成31年度 障害保健福祉部予算案の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 ※(2)は8月号で掲載予定です 1 障害福祉サービス等の確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進 1兆9794億円(1兆8419億円) ○障害福祉サービス等の確保、地域生活支援等 1 良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保 @障害児・障害者に対する良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保  1兆4542億円(1兆3317億円) うち障害児支援関係2810億円(2320億円)  障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスや障害児支援を総合的に確保する。  また、消費税引き上げに伴う増分について、必要な経費を計上する。 ・消費税率引上げに伴う障害福祉サービス等報酬改定率 +0・44% A障害福祉人材の処遇改善93・6億円 ※1兆4542億円の内数  障害福祉人材について、介護人材と同様の処遇改善を行う観点から対応を行う。 B就学前の障害児の発達支援の無償化6・9億円 ※1兆4542億円の内数  幼児教育・保育の無償化にあわせて、就学前の障害児の発達支援の無償化を行う。 2 地域生活支援事業等の拡充【一部新規】  495億円(493億円)  意思疎通支援や移動支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じ、事業の拡充を図る。また、地域生活支援事業に含まれる事業やその他の補助事業のうち、国として促進すべき事業について、「地域生活支援促進事業」として位置付け、質の高い事業実施を図る。 3 障害福祉サービス提供体制の整備(社会福祉施設等施設整備費) 195億円(72億円)  障害者等の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、就労移行支援事業等を行う日中活動系事業所やグループホーム、障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備を促進するとともに、耐震化整備や非常用自家発電設備整備等の防災・減災対策の強化を図る。 (参考)【平成30年度二次補正予算案】 ○障害者支援施設等の耐震化整備、非常用自家発電設備整備等 50億円  障害者支援施設等における耐震化整備や倒壊の危険性のあるブロック塀等の改修に加え、大規模停電時に医療的配慮が必要な入所者等の安全を確保するための非常用自家発電設備の整備に必要な経費を補助する。 4 障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供 2460億円(2452億円)  心身の障害の状態を軽減し、自立した日常生活等を営むために必要な自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)や障害児入所施設等を利用する者に対する医療を提供する。また、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討する。 5 特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1681億円(1637億円)  特別児童扶養手当及び特別障害者手当等の支給を行う。 6 障害者支援施設等におけるロボット等の導入モデル事業の実施【新規】 15百万円  障害福祉の現場におけるロボット技術の活用による介護業務の負担軽減等を推進するため、ロボット等の施設・事業所への導入を支援するとともに、その効果を検証するモデル事業を実施する。 7 障害児・障害者虐待防止、権利擁護などに関する総合的な施策の推進 @障害者虐待防止の推進【一部新規】地域生活支援事業等のうち6・1億円(4・9億円)  都道府県や市町村で障害児・障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、専門性の高い職員による家庭訪問や相談等の取組を充実するとともに、地域の関係機関の協力体制の整備、関係機関職員への研修等の実施、障害児・障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制を強化する。 A障害児・障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 13百万円(14百万円)  国において、障害児・障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修等を実施する。 B成年後見制度の利用促進のための体制整備 地域生活支援事業等の内数  成年後見制度の利用に要する費用の補助や法人後見に対する支援等を行うことにより、成年後見制度の利用促進を図る。 8 重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援  8・9億円( 10億円)  重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行う。 9 強度行動障害を有する者の支援を行う職員の育成 地域生活支援事業等の内数  強度行動障害を有する者等に対し、適切な支援を行う職員の人材育成を進めるため、都道府県による強度行動障害支援者養成研修(基礎研修及び実践研修)を実施する。 10 医療的ケア児に対する支援【一部新規】地域生活支援事業等のうち1・3億円(68百万円)及び75百万円(1・8億円)  地域において、医療的ケア児を受け入れる体制を促進するため、医療的ケア児等コーディネーターの配置や医療的ケア児等への支援者の養成を行うとともに、地域で関係者が協議を行う場の設置や医療的ケア児等の家族への支援を行うなど、総合的な支援を実施する。  また、ICTを活用し、外出先でも適切な医療を受けられる体制の整備を図る。 11 教育と福祉の連携の推進【新規】地域生活支援事業等の内数及び3百万円  市町村内における家庭・教育・福祉の連携促進及び地域支援対応力の向上を図るため、発達障害、医療的ケア児等について協議を行う場の設置や福祉機関と教育機関等との連携の役割を担うコーディネーターを市町村に配置する。  また、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、教育分野や福祉分野における発達障害者支援指導者向けの研修カリキュラムを作成する。 12 共生社会の実現に向けた取組の推進 @「心のバリアフリー」を広める取組の推進 地域生活支援事業等の内数  様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合う「心のバリアフリー」を身近な地域で広めるための取組について拡充を図る。 A障害福祉従事者等に対する共生社会の基本理念の普及啓発 11百万円(9百万円)  障害福祉従事者や事業経営者等が改めて共生社会の基本理念等を学び、それを実践につなげていくことを目的とした研修を実施する。 13 主任相談支援専門員の養成等   15百万円(14百万円)  地域における相談支援等の指導的役割を果たす主任相談支援専門員を養成するための研修を実施するとともに、主な配置先となる基幹相談支援センターにおける設置促進及び機能強化を図るための取組を実施する。 14 重度訪問介護利用者の大学等の修学支援 地域生活支援事業等の内数  重度訪問介護の利用者が大学等に修学するに当たって必要な身体介護等を、大学等における支援体制が構築されるまでの間において提供する 15 障害者施策に関する調査・研究の推進 5億円(4億円)  障害者施策全般にわたり解決すべき課題について、現状と課題を科学的に検証・分析し、その結果を政策に反映させていくため、調査・研究等への補助を拡充する。 ○障害児・障害者の自立及び社会参加の支援等 1 芸術文化活動の支援の推進  3・0億円(2・8億円)(うち地域生活支援事業等71百万円(71百万円)ほか)  障害者文化芸術活動推進法(平成30年6月施行)を踏まえ、芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)を通した障害者の社会参加を一層推進するため、地域における障害者の芸術文化活動への支援(相談、研修、ネットワークづくり等)を強化するとともに、全国に展開する。また、全国障害者芸術・文化祭開催県にコーディネーターを配置し、各地域でのサテライト開催との連携促進を図る。 2 障害者自立支援機器の開発の促進【一部新規】1・2億円(1・5億円)  障害者自立支援機器の実用的製品化を促進するため、企業のシーズと障害者のニーズとのマッチングや機器の開発企業に対する支援を実施するとともに、特に障害者のニーズが高い製品を特定し、その開発に取り組む企業に対する支援を強化する。 3 視覚障害者等の読書環境の向上【一部新規】3・8億円(1・8億円)及び地域生活支援事業等の内数  マラケシュ条約の批准(平成31年1月発効)や著作権法の改正(平成31年1月施行)を踏まえ、障害者の読書環境の向上を一層推進するため、障害者が利用しやすい図書の製作やサピエ(※)を活用した提供を促進する。また、地域の障害者に対するICT機器やサピエの利活用支援を行い、情報アクセシビリティの向上を図る。 4 障害児・障害者の社会参加の促進【一部新規】26億円(26億円)及び地域生活支援事業等の内数  手話通訳士確保対策の推進、手話通訳者・要約筆記者・盲ろう者向け通訳・介助員養成の支援、ヒアリングループなど聴覚障害者の「きこえ」を支援する機器の普及、電話リレーサービスや失語症者向け意思疎通支援者の派遣の全国的な実施、身体障害者補助犬の育成等により、障害児・障害者の社会参加の促進を図る。 2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策の推進 214億円(205億円)(※地域生活支援事業計上分を除く) 1 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築【一部新規】5・7億円(5・6億円)(うち地域生活支援事業等5・3億円ほか)  精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、住まいの確保支援を含めた精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。このため、障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、都道府県等と精神科病院、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築し、地域の課題を共有した上で、地域包括ケアシステムの構築に資する取組を推進するとともに、新たに精神障害者に対する地域住民の理解を深めることを目的としたシンポジウムの開催等の普及啓発事業を実施する。 2 精神科救急医療体制の整備【一部新規】(一部後掲) 17億円(17億円)  地域で生活する精神障害者の病状の急変時において、早期に対応が可能な医療体制及び精神科救急情報センターの相談体制を確保するため、引き続き地域の実情に応じた精神科救急医療体制を整備する。  また、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。 3 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進  189億円(180億円)  心神喪失者等医療観察法に基づく医療を円滑に行うため、引き続き指定入院医療機関を整備し、地域偏在の解消を進める。  また、指定医療機関の医療従事者等を対象とした研修や指定医療機関相互の技術交流等により、更なる医療の質の向上を図る。 4 てんかんの地域診療連携体制の整備  8百万円(7百万円)  てんかんの治療を専門的に行っている医療機関を「てんかん診療拠点機関」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各診療拠点機関で集積された知見の評価・検討を行うため「てんかん診療全国拠点機関」を設け、てんかんの診療連携体制を整備する。 5 摂食障害治療体制の整備  10百万円(10百万円)  摂食障害の治療を専門的に行っている医療機関を「摂食障害治療支援センター」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援センターで集積された知見の評価・検討を行うため「摂食障害全国基幹センター」を設け、摂食障害の診療連携体制を整備する。 (注1)「働く広場」では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています (注2)括弧内は平成30年度予算額です ※サピエ:視覚障害者等が、インターネットを活用して点字・音声図書をダウンロードできるシステム 【P28-29】 研究開発 レポート 障害者の就職と職場定着の支援に向けた関係機関・職種の人材育成とネットワークのために 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門  2018年6月号の研究開発レポート(※1)で紹介したように、障害者の就職と職場定着における課題と、地域の人材育成とネットワークの課題は表裏一体です。障害者に対する効果的な就労支援が実現している地域では、就労支援の成功体験を積んだスーパーバイザーを含めて、さまざまな分野の支援者が、多様な個別支援ニーズに対応するために、現場で日常的に情報交換したり、アイデアを出し合うことで、複雑な課題の総合的な解決につなげています。その一方で、そのような現場での「インフォーマル」な取組みは、外部からは分かりにくいものです。それが障害者就労支援による成果の地域差や、支援者の異動などによる地域ネットワークの不安定さの要因となってきたことも否めません。  障害者職業総合センター研究部門(以下、「当センター」)では、モデル的なワークショップの実施などをふまえ、このような地域の現場で暗黙的に実施されている人材育成とネットワーク形成のプロセスの言語化と体系化を進め、そのポイントを小冊子(※2)としてまとめました。障害や疾病のある人も働ける社会づくりが本格化するなかで、多様な関係者が、共通目標を確認し、効果的な役割分担と連携に向けた対話を促進するために活用されることを期待しています。 1 インクルーシブな企業・職場と地域づくり  そもそもなぜ、現在、障害や疾病のある人々の職業生活を支えるために、幅広い関係機関・職種が関わるようになってきたのでしょうか?それは、従来、障害や疾病のある人については日常生活や地域生活の支援が中心と考えられてきたのに対して、現在は、このような人たちが職業生活を送ることができるように社会全体で支える取組みの整備が急速に進んでいるからです。これはわが国だけでなく、世界各国でも同様です。  当センターの最新の調査研究報告書No.147(次ページ※3)でご紹介しているように、世界ではジョブコーチなどによる個別支援技術の発展にとどまらず、関係機関・職種の連携によるケースマネジメントや支援プログラムの開発が進んできました。さらに近年では、社会全体として、本人や企業・職場による多様な主体的取組みが進み、個別支援のニーズに、多様な関係機関・職種がタイムリーに「餅は餅屋」で支えていくようなものに発展しています。すなわち、「インクルーシブな企業・職場と地域づくり」こそが、地域関係機関の役割分担・連携の次のステージのビジョンなのです。  当センターでも障害者就労支援の役割分担・連携のためのワークショップの共催を地域に呼びかけたところ、社会保険労務士による役割検討、青年会議所の地域振興企画、難病対策のための保健医療関係者の研修、大学の学生相談室など、従来の「障害者就労支援」関係者の範囲を超えた多様な関係者から応募がありました。ワークショップへの参加者の多様さとその対話の内容から、地域関係者がそれぞれの強みや社会資源を活用して障害や疾病のある人の職業生活を支える、これまでにない取組みを行える可能性も確認できました。 2 共通目標と成功イメージの共有  障害や疾病のある人の職業生活を支えることに関心があり、実際に役割を果たすことのできる潜在的な関係者は、医療、福祉、教育、労働などの地域支援者、障害や疾病のあるご本人や家族、雇用する企業や職場担当者など、職場、地域のさまざまな分野の機関・職種に多くいらっしゃいます。しかし、互いにどのような専門性や社会資源を有し、どのような支援が可能で、どのような連携ニーズがあるのかについて、そもそもほとんど対話の機会がないというのが多くの地域の現状です。特に、地域関係機関・職種にとって、現在の企業・職場における多様な取組みや支援課題を理解することは、役割分担や連携のあり方を考えるうえでたいへん有益です。そこで小冊子では表1のような具体的な例を多く示しています。  また、多様な専門性、視点、価値観、支援目標を有する関係者にとって、いきなり「障害者就労支援の役割分担・連携」といわれても、建設的な対話は困難です。表2に、今回のワークショップで多様な関係者の大部分が共有でき、その後の役割分担や連携のあり方の建設的対話につながった共通目標の例を示します。  さらに、今回のワークショップを通じて、多くの参加者が、従来の連携・役割分担の試みで陥っていた典型的な失敗状況の把握と今後の改善に向けた気づきを明確にしました。それをふまえ小冊子では、特に従来、地域でインフォーマルに実施されて効果を上げているにもかかわらず、必ずしも地域関係機関・職種では共有されていない支援ポイントを、3点に整理して解説しています。 ・ 支援対象者が「職業人」であることをふまえた支援 ・ 本人と企業の個別・具体的な職業上の課題への予防的・早期対応 ・ 本人と職場の継続的なフォローアップ体制 3 ワークショップによるタテ割り思考の弊害克服  地域関係機関・職種の人材育成とネットワークはますます重要になっており、各地域では連絡会議や協議会などもつくられています。しかし、このような公式の会議では各機関の業務報告などが中心となり、期待した成果を得ることがむずかしいことも多いようです。  「ワークショップ」は、米国発祥で「主体的に参加したメンバーが協働体験を通じて創造と学習を生み出す場」として発展してきたものです。今回、当センターではモデル的に実施し、複雑な社会システムのなかでのタテ割りによる弊害の克服と、関係者が共通目標をもって効果的な役割分担と連携のあり方に向けた対話を促進する方法論としての効果の高さを確認しました。小冊子では、半日の日程で、比較的気軽に実施できるワークショップの手法として「ワールド・カフェ」(※4)の進行例を紹介しています。1時間程度で障害者就労支援の共通基盤を確認し、参加者の関心の高いテーマについてグループを交替しながら対話を深め、気づきを共有していきます。  わが国においてかねてよりある、地域の「顔の見える関係」や「飲みニケーション」も同様の意義があると考えられますが、ワークショップはより体系的であり業務としても取り組みやすいものでしょう。 ※1 「働く広場」2018年6月号は、当機構ホームページでご覧いただけます。 働く広場 2018 6月号 検索 ※2 本小冊子はhttp://www.nivr.jeed.or.jp/research/kyouzai/kyouzai61.htmlから無料でダウンロードいただけます。冊子が必要な場合などは、お問い合わせください。  ◇お問合せ先:研究企画部企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp) ※3 調査研究報告書No.147「地域関係機関・職種による障害者の就職と職場定着の支援における役割と連携のあり方に関する研究」は、http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/houkoku/houkoku147.htmlでご覧いただけます。 ※4 ワールドカフェ:参加者が気軽に自由に対話できるような話し合い方法 表1 企業・職場による障害者就労支援の取組みの例 ●障害のある「職業人」の採用・配置と雇用管理  適材適所の採用・配置、活躍できる業務を全社的に創出、人事評価基準の明確化とモニタリング、雇用管理・マネジメント、スキルアップ・ICTアクセス向上 ●合理的配慮による問題予防と生産性向上  生産性向上のための個別業務調整、多様な事情のある人が働きやすい多様な就業形態、ナチュラルサポ―トの維持と再構築支援 ●持続可能な全社的体制づくり  全社員・管理職向けの障害者雇用の研修、社内支援スタッフの整備 表2 多様な関係機関・職種が共有しやすい「障害や疾病のある人の就労支援」の共通目標の例 ●就職後の治療や生活の安定 ●多様な人材の生産性向上と就業継続 ●障害や疾病のある人の夢の実現やキャリア発達 ●経済的自立と社会参加による福祉の向上 【P30-31】 ニュースファイル 行政 厚生労働省 カード型「障害者手帳」の発行が可能に  厚生労働省が省令を改正し、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳も自治体の判断により、カード型で発行することが可能になった。従来は紙製でサイズも大きかったが、カード型は運転免許証と同じサイズでプラスチック製となる。  知的障害者が持つ療育手帳はすでにカード型の発行が可能になっており、一部の自治体で導入されている。 地方の動き 宮城 スマホアプリで交差点の信号情報を伝達  宮城県警は今年度、スマートフォンアプリを活用して交差点の信号情報を受け取れる新システムを、東北で初めて導入する。視覚障害者や高齢者らが安全に歩行できるようにする目的で、単独自治体としては全国最多の50カ所に整備する予定だ。  具体的には、対応する信号機に近づくと専用アプリが自動起動し、交差点の名称や信号の色、青信号の残り時間などを音声や画面表示により伝えてくれる。青信号の時間延長を求める機能もある。県警は、東京五輪のサッカー競技会場となる宮城スタジアム周辺などから、整備していくことにしている。 長野 「林福連携」推進に乗り出す  長野県は今年度から、森林を管理する地域住民らと障害者就労支援事業所をマッチングさせる「林福連携」の推進に乗り出す。  第一弾として、長野市の住民らでつくる「あさかわの里山と森を守る会」と「社会福祉法人花工房福祉会」の連携事業がモデルケースとなる。県が認定した森林での伐採費の一部や器具購入などを補助する。今回は112ヘクタールが認定された。花工房福祉会が運営する就労継続支援B型事業所「炭房(たんぼう)ゆるくら」(長野市)では、以前から木を切り出して薪や炭をつくり販売している。森林の利活用と障害者の就労確保・拡大の取組みとして期待される。 生活情報 新元号「令和」の手話表現決まる  「社会福祉法人全国手話研修センター」(京都市)が、新元号「令和」の手話表現を発表した。  具体的な動作は「指先を上に向けて5本の指をすぼめた片手を、胸の脇に出し、前に動かしながら指先を緩やかに開く」というもの。花のつぼみが開いていくイメージだという。  同センターの手話研究・創造部門である「日本手話研究所」は、1979(昭和54)年から厚生労働省の委託を受けて新しい言葉の手話表現を考案している。今回は全国9ブロックから提案された表現案をもとに、手話通訳者や学識者ら6人による委員会で協議し、全員一致で決めた。同研究所のサイトで動画も公表している。 手話動画 令和 検索 建設現場「仮囲い」をアートに  企画会社の「株式会社ヘラルボニー」(岩手県花巻市)が、建設現場の「仮囲い」を利用した地域活性化企画「全日本仮囲いアートプロジェクト」を、東京都渋谷区の支援を受けて始めた。第一弾は、障害者と学生が共同で創作した「シブヤフォント」の作品が、2019年3月18日(月)から11月まで東京都渋谷区神南(じんなん)で公開されている。  ヘラルボニーは、2018年7月に双子の松田崇弥(たかや)さん・文登(ふみと)さんが設立。2人には自閉症の兄・翔太(しょうた)さんがおり、社名は翔太さんが7歳のときにノートに書いた言葉だという。ヘラルボニーは、知的障害のあるアーティストが描く作品をデザインに落とし込んだブランド「MUKU」も運営している。 群馬 視覚障害者の外出訓練  「群馬県視覚障害者福祉協会」(以下、「群視協」)(前橋市)は、県内の視覚障害者約4千人を対象に、買い物や通院など外出の練習をするための訪問型のサポート事業を始める。目的地までのルートや危険箇所を把握し、安全に外出できるよう支援する。  これまでは群馬県社会福祉総合センター周辺で外出訓練を行ってきたが、個人の生活状況に合った支援が必要と判断し、訪問型も加えることにした。1人につき3カ月間で最大10回実施。申込みやヘルパー登録などの問合せは群視協へ。TEL:027ー255ー6677 愛知 盲導犬と暮らせる特養ホーム開設  視覚障害者がこれまで連れ添ってきた盲導犬と一緒に余生を暮らせる全国初の特別養護老人ホーム「翠華(すいか)の里」が、愛知県新城市にオープンした。盲導犬を育成している「中部盲導犬協会」(名古屋市)が経営する。  鉄筋コンクリート3階建てで定員100人。うち20人が1階の個室で犬と同居できる。ベランダには犬用トイレもある。長年暮らしたペットの犬との入居も受け入れる。  引退した盲導犬が過ごせる「老犬ホーム」も併設。ドッグカフェやドッグランも設けて一般市民が触れ合える場をつくり、盲導犬への理解を広げる。入居希望などの問合せは「翠華の里」へ。 TEL:0536−32−2510 働く 埼玉 障害者施設がカレー商品開発  「社会福祉法人ウイング」が運営する埼玉県川島町の障害者福祉施設「Smile Cafe1/2」が、川島町の特産イチジクを使ったカレー「いちじくカレー」を開発し、販売を始めた。1食180g入り、580円(税込)。  レトルトタイプのいちじくカレーは、タマネギをじっくり煮詰めてイチジクのピューレをかけ合わせた。施設に通う障害者やスタッフらが試行錯誤を重ねたという。特産物の新商品開発支援事業を進める川島町からの補助金を活用した。商品の問合せは同カフェへ。TEL:049−299−1134 神奈川 横浜銀行が障害者雇用の子会社  株式会社横浜銀行は、障害者雇用を目的とした子会社「株式会社はまぎんビジネスチャレンジド」(横浜市)を4月1日に設立した。横浜銀行傘下の「横浜キャリアサービス」の社名を変更し、横浜銀行からの受託業務を始める。知的障害者や精神障害者を採用し、データ入力や印刷、発送業務などを行う。6人体制でスタートし、雇用を拡大しながら「特例子会社」の認定取得を目ざす。 滋賀 市民病院に障害者が働く食堂  高島市新旭(しんあさひ)町の「社会福祉法人虹の会」(以下、「虹の会」)が、高島市民病院内に食堂「COCCO(コッコ)たかしま」と売店をオープンした。それまで食堂と売店を運営していた民間業者の撤退を機に市民病院が公募し、虹の会が応募した。  虹の会が運営する就労継続支援B型事業所「ドリーム・あんです」に通う障害者約20人がスタッフの支援を受けながら調理や接客、清掃などを担当する。メニューは麺類や日替わり定食のほか、ケーキやコーヒーもある。営業時間は平日午前10時〜午後3時。 本紹介 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD女性の発達障害〈就活/職場編〉』  発達障害の専門医である宮尾(みやお)益知(ますとも)さんが監修した『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD女性の発達障害〈就活/職場編〉』(河出書房新社)が出版された。  就活や職場内で起きるトラブルを減らすためには周囲の理解とサポートが必要。「面接に何度も落ちた」、「職場で孤立してしまう」、「一生懸命頑張るのにミスばかり」、「転職を繰り返す」など、働く発達障害の女性の心と行動を理解してサポートするために、専門医が職場の対応策をアドバイスする。B5判114ページ、1728円(税込)。 『ADHDと自閉症スペクトラムの自分がみつけた未来 親子でふり返った誕生から就職まで』  4人の発達障害の子を育てた堀内(ほりうち)祐子(ゆうこ)さんと、次男の拓たく人とさんが『ADHDと自閉症スペクトラムの自分がみつけた未来 親子でふり返った誕生から就職まで』(ぶどう社)を出版した。ADHDと自閉症スペクトラムであると診断された拓人さんの誕生から就職までの24年間を、親の目線と子どもの視点の両方からふり返った。祐子さんは自閉症スペクトラム支援士、特別支援士、傾聴心理士としても活躍。任意団体 「子育て ハート ぎふてっど」代表。拓人さんは2018年に大学を卒業し、母や兄とともに全国で講演を行っている。四六判152ページ、1620円(税込)。 作品募集! 障害者雇用支援月間 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 締め切りせまる!! 2019年6月14日(金) 【必着】!! 児童・生徒のみならず、社会人一般の方もご応募いただけます。 (写真の応募は障害の有無を問いません) 募集要項など詳しくは 月間ポスター原画コンテスト 検索 【P32】 掲示板 第27回職業リハビリテーション研究・実践発表会 (発表者募集のお知らせ)  職業リハビリテーション研究・実践発表会は、職業リハビリテーションに関する研究成果、実践報告の発表のほか、特別講演、パネルディスカッションなどを行うもので、毎年1回開催しています。昨年11月に開催した発表会には1,229人の方が参加されました。 (昨年度の概要は「職リハレポートNo.18」で確認できます。 → http://www.nivr.jeed.or.jp/vr/vrwebreport.html 職リハレポート 検索)  今年度の発表会は、令和元年11月18日(月)、11月19日(火)の2日間、東京都江東区有明の東京ビッグサイトで開催する予定です。現在発表者を募集しています。詳細は障害者職業総合センター研究部門ホームページをご覧ください。  なお、当日の参加者については、8月中旬にホームページなどで募集する予定です。 障害者職業総合センター 検索 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttp://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 EDITORS' NOTES 次号予告 ●この人を訪ねて  公益財団法人スペシャルオリンピックス日本 理事長で、元女子マラソン選手の有森裕子さんに、知的障害のある人たちの自立や社会参加についてお話をうかがいます。 ●職場ルポ  レンコン加工のパイオニア、株式会社マルハ物産(徳島県)を訪問。障害のある社員を多数雇用する現場と、地域との連携を取材します。 ●グラビア  木工家具の企画・製造・販売を行う社会福祉法人アバンセ カサ・チコ(熊本県)を訪問。全国アビリンピックで好成績を収める高い木工技術と、その現場に密着します。 ●編集委員が行く  阪本文雄編集委員が、NPO法人UNE(うね)(新潟県)を訪問。農福連携をすすめ、酒米生産などを通じた障害者の就労支援と、その取組みを取材します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 一般社団法人Shanti 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 株式会社ダイナン 経営補佐 樋口克己 東京通信大学教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 横河電機株式会社 箕輪優子 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発 行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ http://www.jeed.or.jp  メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821  FAX 03−5484−8822 6月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和元年5月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 「精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集」のご紹介  当機構では、事業所における障害者雇用と職場定着を進めるため、雇用管理や職場環境の整備などさまざまな改善・工夫を行った障害者雇用職場改善好事例を募集し、優秀な事例を表彰しています。  2018(平成30)年度は、精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例を募集しました。  このたび、入賞事業所の事例を「精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集」としてとりまとめました。障害者の雇用促進と職場定着のためにぜひご活用ください。 最優秀賞(厚生労働大臣賞)のトッパン・フォームズ株式会社の事例から この事例集は、当機構のホームページでもご覧いただけます。 職場改善好事例集 検索 事例集の送付を希望される方は、下記までお問い合わせください。 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9515 FAX 043-297-9547 【裏表紙P】 ジョブコーチの養成・スキル向上研修のご案内  当機構では、職場適応援助者(ジョブコーチ)に必要となる専門的知識および支援技術を習得するための「職場適応援助者養成研修」、「職場適応援助者支援スキル向上研修」を実施しています。  各研修の詳細・お申込み先などは、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp)のサイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 ジョブコーチの養成・スキル向上研修 ステップ1 入門編・実践編 職場適応援助者養成研修 ◆訪問型職場適応援助者養成研修 (年6回)※うち4回は東日本と西日本に分けて実施 ◆企業在籍型職場適応援助者養成研修 (年6回)※うち4回は東日本と西日本に分けて実施 ※職場適応援助者として援助を予定している方が主な対象となります。 講義風景 ステップ2 スキルアップ編 職場適応援助者支援スキル向上研修 ◆訪問型職場適応援助者支援スキル向上研修 (年4回) ◆企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 (年4回) ※職場適応援助者として一定の実務経験がある方が主な対象となります。 演習風景 ※申込期間終了分を除く 研修 職場適応援助者養成研修 【対象】 訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】 ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など(集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度) ※対象地域は以下のとおりです  東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山  西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 日程 8月期 西日本対象:2019年8月27日(火)〜8月30日(金) 場所 大阪府摂津市 日程 東日本対象:2019年8月27日(火)〜8月30日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 10月期 全国対象:2019年10月15日(火)〜10月18日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 12月期 西日本対象:2019年12月17日(火)〜12月20日(金) 場所 大阪府摂津市 日程 東日本対象:2019年12月17日(火)〜12月20日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 NEW 2月期 西日本対象:2020年2月18日(火)〜2月21日(金) 場所 大阪府摂津市 日程 東日本対象:2020年2月18日(火)〜2月21日(金) 場所 千葉県千葉市 研修 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして一定の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど 日程 <第2回> 2019年7月23日(火)〜7月26日(金) 場所 千葉県千葉市 日程 <第3回> NEW 2019年10月29日(火)〜11月1日(金) 場所 大阪府大阪市 日程 <第4回> 2019年11月26日(火)〜11月29日(金) 場所 千葉県千葉市 <お問合せ先> 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.or.jp 6月号 令和元年5月25日発行 通巻501号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)