【表紙】 令和元年9月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第505号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2019 10 No.505 職場ルポ ていねいなマッチングと支援により「職場点在型」を貫く 株式会社ツムラ(東京都) グラビア 「ハウステンボス」で働く ハウステンボス株式会社(長崎県) 松屋愛美さん 編集委員が行く 病院と取り組む地域共生型就労支援 〜久留米リハビリテーション病院との連携〜 かぶと山エム・エス有限会社(福岡県) この人を訪ねて ハードは変えられなくても、ハートは変えられる 株式会社ミライロ 代表取締役社長 垣内俊哉さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 10月号 キャプション 「みんなを助ける消防士」沖縄県・松村(まつむら) 義樹(ともき)さん 【前頁】 心のアート オニバスの上を飛行するゼロ戦 立石 大(特定非営利活動法人 アートキャンプ新潟)  新潟市内にある福ふく島しま潟がたという潟かたに浮かぶオニバス(※)を描き、同時期に作成していた日本軍のゼロ戦の背景にしてみました。この二つに関連性はありませんが、たまたまゼロ戦の背景にしてみたところ、自分で気に入ったため組み合わせて飾っています。プラモデルと絵画ではまったく違う作風ですが、これを一つの作品として見ると自分でも楽しい気持ちになります。 立石 大(たていし まさる)  1990(平成2)年9月28日生まれ、新潟市在住。統合失調症があります。  主にミリタリー系のプラモデルが得意です。市内ではプラモデルのライブアートや一般の方に向けて塗装のワークショップを行った経験もあります。繊細な作風で、多くの方から高い評価をいただいています。 文:立石 大 ※オニバス:スイレン科の一年生の水生植物 キャプション 画材:市販のプラモデル、プラモデル用塗料、紙、カラーペン プラモデルと絵を合わせたサイズ:170mm×400mm×220mm 【目次】 障害者と雇用 目次 2019年10月号 NO.505 心のアート−−前頁 オニバスの上を飛行するゼロ戦 作者:立石 大(特定非営利活動法人 アートキャンプ新潟) この人を訪ねて−−2 ハードは変えられなくても、ハートは変えられる 株式会社ミライロ 代表取締役社長 垣内俊哉さん 職場ルポ−−4 ていねいなマッチングと支援により「職場点在型」を貫く 株式会社ツムラ(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 NOTE−−10 働く障害者の高齢化 Vol.4 雇用継続への取組み事例(知的障害編) インフォメーション−−12 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」および「障害者職場実習支援事業」の活用事例/国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ グラビア−−15 「ハウステンボス」で働く ハウステンボス株式会社(長崎県) 松屋愛美さん 写真:小山博孝・官野 貴/文:小山博孝 エッセイ−−19 第3回「連携」の在り方に思う 神田東クリニック副院長 佐藤恵美 編集委員が行く−−20 病院と取り組む地域共生型就労支援 〜久留米リハビリテーション病院との連携〜 かぶと山エム・エス有限会社(福岡県) 編集委員 諏訪田克彦 霞が関だより−−26 ハローワークを通じた障害者の就職件数が10 年連続で増加 −平成30年度 障害者の職業紹介状況等− 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 研究開発レポート−−28 視覚障害者の雇用等の実状及びモデル事例の把握に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 ニュースファイル−−30 掲示板−−32 読者の声/次号予告 表紙絵の説明 「将来の夢が消防士なので、この題材を選びました。消防士になりたい理由は、かっこいいからです。消防士のイラストをインターネットで調べたり、図書館で消防士の本を借りたりして、いろいろイメージして描きました。受賞を聞いても、まだ実感がわきません」 (令和元年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp) 【P2-3】 この人を訪ねて ハードは変えられなくても、ハートは変えられる 株式会社ミライロ 代表取締役社長 垣内俊哉さん かきうち としや 1989(平成元)年、岐阜県生まれ。遺伝性の骨形成不全症により幼稚園児のころから車いすに乗る。2010 年、立命館大学経営学部在籍中に「株式会社ミライロ」を設立し、ユニバーサルデザインのコンサルティング事業を展開。2015年に「ダイバーシティ経営企業100選」受賞、2018年にJapan Venture Awards「経済産業大臣賞」受賞。 著書に『バリアバリュー 障害を価値に変える』(2016年、新潮社刊)。 バリアフリーと就労意欲 ――「株式会社ミライロ」は、ユニバーサルデザインにかかわる企業として有名ですね。  ありがとうございます。大学時代に同級生の民野(たみの)剛郎(たけろう)と設立しましたが、民野はアルバイトを続け、私もネットオークションで本を売ってやりくりするなど、最初の数年間は日々の食事にも困るほど苦労しました。最近は、大手IT企業や証券会社などからの転職希望者がくるまでに成長しました。「障害者のため」という人もいれば、「ビジネスモデルに興味を持った」という人もいます。私たちが「社会性と経済性の両輪あっての継続」を大切にしてきたことが、奏功(そうこう)したのかなと思っています。 ――幼稚園児のころから車いすユーザーの垣内さんにとって、日本社会のバリアフリー化はどのように映っていますか。  私の場合は、両親の努力もあり小学校から公立の通常学級に通いましたが、「難病児が小学校卒業」と新聞記事になるほど注目されました。また当時は、車いすで街中に出ると突き刺さるような視線を浴びたのを覚えています。しかし、最近では振り返られることも少なくなりました。スポーツなど各界で活躍される人も増え、心のバリアフリーはずいぶん進んだように感じます。  ただ、私たちが安心して街中に出ていくには、まだまだ十分ではありません。外出の不安があると、旅行や外食などの消費意欲が低下し、就労意欲に結びつかず、就学意欲にもつながりません。交通機関や飲食店、宿泊・商業施設などのバリアフリーを進め、実生活の成功体験を積み重ねることで「もっと働いて、やりたいことがある」と思えるような社会にしていくべきです。そして性別や年齢、障害の有無にかかわらず自由に人生をデザインし歩んでいけるような社会にする。これは私の夢でもあります。 ――街中のバリアフリー情報を見える化するために開発したのが無料アプリ「Bmaps(ビーマップ)」ですね。  はい。街中のバリアフリー情報をだれでも投稿・発信できる地図アプリです。例えば、店の入口の階段は、1段なら多少高くても車いすで上がれる場合もありますが、2段3段になるとむずかしい。また、店内で使える電源コンセントは、電動車いすユーザーにとっても必要です。電子マネー決済を歓迎している視覚障害者も多い。こうした生の声を投稿・共有し、店側にも発信してもらいます。情報が集まった結果、車いすで入店できる店が関東圏内に8千店以上あるとわかりました。手軽に情報が得られることで、障害のある方が外出することへのハードルも、ぐんと下がります。  また、障害者手帳の不便性を解消するため「ミライロID」という無料アプリも開発しました。障害者手帳のデータをスマートフォンに取り込めるので、手帳を持ち歩かずにすみます。必要なサポートなども登録できるので、公共機関や商業施設でスムーズにサポートを受けられます。 「ユニバーサルマナー検定」7万人 ――2013年から手がける「ユニバーサルマナー検定」も反響が大きいようですね。  検定のモットーは「ハード(施設)は変えられなくても、ハート(行動)は変えられる」です。障害者にかぎらず高齢者やベビーカー利用者、外国人、LGBTの方など、さまざまな立場の人の視点に立った「心づかい」を身につけてもらいます。当事者のプロ講師が講義を担当し、丸一日あれば3級・2級を取得できます。実施企業は600社以上、有資格者は7万人を超えました。ホテルや飲食店などサービス業で接客スキルを向上させたいという目的や、障害者雇用を進める現場の管理職や人事担当者に受けさせたいという企業が多いですね。中高・専門学校などの授業の一環として受講するケースもあり、若い彼らが社会に出たときが楽しみです。  また、バリアフリー化を目ざす企業には、障害のある登録モニター5千人へのアンケート調査などを活用し、当事者目線のコンサルティングをしています。例えば、あるホテルでは、もともと身体障害者向けの部屋をつくったのですが、そこらじゅうに手すりをつけて、まるで病室のようで、評判がよくありませんでした。一般客も泊まらないので稼働率が悪化。そこで相談を受けた私たちは、取り外し可能な手すりにするなど「だれでも泊まりやすい部屋」への改装を提案しました。一方、有名なラーメンチェーン店では、店員に簡単なサポート方法を学んでもらい、お客さんから高評価を得ることができました。これは「ハードは変えられなくてもハートは変えられる」、素晴らしい事例です。時間も予算もかぎられているなかで、取組みに優先順位をつけることも大事だと思います。 全盲の社員が戦力に ――障害者雇用の現場へも、アドバイスできることがあれば教えてください。  業務の内容や方法よりもまず、人としての向き合い方を考えてほしいです。例えば、面接や職場で「大丈夫ですか」と聞かれたら、だれでもつい「大丈夫」と答えてしまうでしょう。「お手伝いできることはありますか」と聞かれたら「じゃあ」と具体的な要望を伝えられるはずです。  それから、障害者雇用は「どれだけ事業やビジネスに活かせたか」という結果がともなわなければ、続かないと思います。「障害があっても」できる仕事は離職にもつながりやすい。一般に仕事を続ける主な理由は「人間関係、やりがい、お金」といわれますが、障害者にとっては「やりがい」が一番大きいと思います。企業側は、障害者雇用率の達成のためだけではなく「あなたにこの仕事を任せたいから採用する」というスタンスを大事にしていくべきです。  弊社にいる全盲の社員は、入社時はテレフォンアポイントメントの営業をしていましたが、相手の話を聞くスキルがとても長(た)けていました。ちょうどいい間合いで穏やかな話し方、リズムのよい会話をするので、アポ率(※)が非常に高い。これは大きな戦力です。本人が発揮できる能力を自覚し、企業も価値を認めていけるような採用・育成が大切なのだと改めて感じます。  彼らの能力は一緒に働いて初めてわかる部分も多いので、企業にはぜひインターンシップをすすめたいです。特に、障害のある学生はアルバイトの機会もかぎられるので、インターンの門戸を開いてほしいと思います。こうした経験は、社会全体で障害のある社員の離職防止にもつながると考えています。 ――最後に、来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会アドバイザーとしての抱負を聞かせてください。  私はボランティア向けのマニュアル作成などに協力していますが、東京五輪は2025年の大阪万博への助走だととらえています。1970年の大阪万博のときは、駅構内に点字ブロックやエレベーターが設置されて全国に広がりました。今回も東京五輪で機運をあげ、大阪万博でバリアフリー化の大きな流れをつくりたいと思っています。ぜひ、ハードでもハートでも日本の「おもてなし」を実感してもらえるイベントになるといいですね。 ※アポ率:アポイントメント(面接などの約束)を取る率 【P4-9】 職場ルポ ていねいなマッチングと支援により「職場点在型」を貫く ―株式会社ツムラ(東京都)― 障害のある従業員のうち、身体に障害のある従業員が多いツムラでは、ハード面の整備はもちろん、ソフト面の配慮や支援も欠かせないという。試行錯誤(しこうさくご)を重ねる現場を訪ねた。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社ツムラ 〒107-8521 東京都港区赤坂2-17-11 TEL 03-6361-7200(代表) Keyword:身体障害、精神障害、知的障害、聴覚障害、バリアフリー、正社員登用、マッチング POINT 1 「協働・対話・自立」をキーワードに職場点在型の雇用を進める 2 面接前のナビゲーションシートやテストで、マッチングを見極める 3 3段階の正社員登用制度で、無理のないキャリアアップをうながす 共に活きる、共に活かす  1893(明治26)年の創業から126年を迎える「株式会社ツムラ」は、漢方薬で知られる製薬企業だ。売上げの95%超という医療用漢方製剤は、国内市場のシェア8割以上にのぼる。  ツムラはこれまで障害者雇用の方針として「共に活きる、共に活かす」を掲げ、特例子会社をつくらず、職場点在型の雇用を進めてきた。人事部人財育成センター人財企画グループのグループ長を務める児平(こだいら)雄平(ゆうへい)さんが説明する。  「点在型の雇用を実現するには、職場における従業員の自立が欠かせません。隣にずっとジョブコーチがいるわけにはいきませんから、同僚たちもOJTや日々の声かけを意識しながら業務を進めています。『協働・対話・自立』をキーワードに、ともに働くことを目ざしてきました」  障害のある従業員は、本社、研究施設(茨城県)、静岡工場、営業所など計22部署に1〜 11人ずつ配属されている。従業員数2475人のうち障害者は62人(身体障害47人、精神障害13人、知的障害2人)、障害者雇用率は2・85%〔2019(令和元)年7月現在〕にのぼる。 廊下には物を置かない  身体に障害のある従業員30人超が在籍する7階建ての本社ビルは、ハード面の環境整備を充実させてきた。1、2階に多目的トイレを備え、1階の受付脇のトイレにはオストメイトも完備。必要とする従業員の採用に合わせて追加で設置したものだが、訪問客も使用できる。  各フロアとも車いすで自由に移動しやすいよう、余裕のあるデスク配置と廊下になっているほか、「廊下には物を置かない」ことが鉄則だ。フリーアドレス(※1)を目ざしていることもあり、フロア全体が見通しのよい空間となっている。業務書類や備品などが入っているキャビネットの高さは低めに、分別ごみ箱もそれぞれ上下二段式にしてあるため、車いすユーザーも使いやすい。共有スペースにあるソファも、車いすから移動しやすい高さに設定されている。 一時は障害者雇用率が3・93%に  もともと障害者雇用率2・5%〔2010(平成22)年〕と、当時の法定雇用率1・8%を大きく上回っていたツムラだが、2012年には一気に3・93%まで伸ばした。「障害者雇用の推進に力を入れよう」とトップダウン式で取り組んだ結果、当時は身体に障害のある人が数多く採用された。各部署に幅広く配属された障害者の存在は、なによりもまず従業員の意識を変えることにつながったという。理事でありコーポレート・コミュニケーション室長を務める土屋(つちや)洋介(ようすけ)さんが振り返る。  「特にこの10年、職場に点在するかたちで障害者雇用を進めてきたことは大きな意味があったと思います。私も含め従業員たちは、いまでは街中で障害のある人を見かけても身構えることなく自然に接することができていると感じます」  ただ雇用状況としては、採用後に短期間で退職・転職するケースも少なくなかった。退職理由を調べてみると「体調不良」(39%)と「転職」(25%)が多い。  「身体に障害のある方は、通勤を含め働き続けるうちに、私たちが考えるよりも体力を消耗しやすく、多様なストレスにさらされます。周囲が気づかないうちに本人も無理をして、体調不良につながってしまったようです」と児平さんはいう。  本人と配属部署とのマッチングに、小さなずれが生じていた現場もあった。土屋さん自身も、過去の苦い経験として次のようなエピソードを明かしてくれた。  ある日、土屋さんの部署に初めて聴覚障害のある若い部下が配属された。日ごろのコミュニケーションは簡単な手話や筆談などで問題なかったが、本人には事務経験がほとんどなかった。そこで土屋さんが「これを読めばわかるよ」と本を渡したところ「無理です」と即答された。「幼少期から単語を中心に会話をしてきたので、長い会話や長文は理解できない」とのことだった。  「その後は、パワーポイントなどを活用して説明し仕事を覚えてもらいましたが、本人も周囲も、負担が大きかったと思います。バリアフリーの環境に整えているとか、障害種別を理解しているだけでは不十分だと痛感しました」  職場で働く障害者の実情がわかっていくなかで、ツムラはそれまでの雇用方針を見直した。本人と部署の体制・業務内容とのマッチングを見極める採用プロセスを重要視し、就業後のソフト面の支援などの改善にも努めた。 採用の判断は「その人の人生」にとってベストかどうか  ハローワークで通年求人募集をしているツムラでは、常に社内の就業可能部署の把握を行っている。  主な就業可能部署の条件は、@本人の小さな変化に気づけるような「ケアが可能か」、A心身のバランスを崩す理由になる「業務量の大きな変動がないか」、B職場の日ごろの「コミュニケーションが良好か」の三つだ。  ハローワークを通じた最初の面接会では、一人ずつ面接しながら職務経歴や資格、希望する配慮や自己分析内容などについて確認する。  一次面接では事前に渡した「ナビゲーションシート」と呼ぶ書類を提出してもらう。内容は作業面・対人面・思考や行動などについて、自身の「特徴」、「対処法」、「配慮を依頼したい事項」といったものだ。このシートを事前に提出してもらうことで、面接当日や就業後の配慮・配属先部署とのマッチングについてスムーズに検討できるという。  また近年はパソコンスキルのチェック項目も増やした。確認表(ワード・エクセル・パワーポイント)の提出と、エクセル(10分)・ワード(15分)のスキルテストを実施している。  最終面接では、人事部長と予定配属先の部門長がそれぞれ面談・面接を行う。最終的な採用判断ポイントは「その人の人生において、いま就職すべきなのか。当社がベストなのかどうか」だという。  採用段階のていねいなマッチングにより、配属された部署で存分に活躍してくれるようになり、周囲も本人も疲弊しなくなり、負担感が軽減したという。短期間で辞めてしまうケースもぐっと減ったそうだ。 通院のための無給特休も  就業後のソフト面の環境整備・支援も、現場の声を反映させながら充実させてきた。  社内には保健師が常駐し、産業医の2人も原則月1回来社する。本人が希望した場合、支援機関を含めた面談は段階的に行っている。面談時には、まず本人と支援機関の担当者が1時間近く話し、その後、支援機関と人事部担当者が15分ほど話す。  「会社側に伝えてもらいたいこと、そうではないこと」を分けて話してもらい、必要に応じて配属先の上長や健康管理・労務管理の担当者も加わる。「会議に参加すると体調への負担が大きいので、しばらくは出席禁止」といった“命令”が出されることもある。年1回、業務や人事とは切り離し、労務管理課による職業生活の相談も行っている。障害者職業生活相談員の資格を持つ社員10人ほどが相談にあたっているそうだ。  2016年からは「無給特休(無給の特別休暇)」も導入した。これは障害者手帳に記載された疾患について定期的な検査・治療が必要な場合に、原則月1回の特別休暇(無給だが、ボーナス出勤率には影響しない)を取ることができるというものだ。  「有給休暇を取って通院していた従業員からの『これだけで年12日を使ってしまってつらい』という声に応えた措置です。無給にすることで周囲の理解が得られ、休みやすくしました」と児平さんは話す。 道筋が整った人事制度  ツムラでは、障害者を採用する際は、必ず契約社員からスタートすることになっている。  「嘱託の正社員から始めていた時期もありましたが、正社員の就業規則に沿うと勤務時間などが柔軟性に欠けるため、人によっては負担になることがありました。そこで段階的な人事制度にしました」と児平さん。  契約社員から嘱託正社員、そして正社員への道筋は、採用時から本人に明確に示してある。まず契約社員として最低1年間(2期分)の評価と出勤率、上長の推薦があれば、嘱託正社員登用への試験(面接・適性検査・能力検査)を受けることができる。  嘱託正社員として最低2年間は一定評価、(上長やメンターの異動など)環境変化に問題がなければ、正社員コース登用試験の資格が得られる。試験内容は通常の正社員昇格試験と同じ「論文・業務記述書・面接」。毎年、障害のある方数人が正社員となっている。 急に休んでも大丈夫  上肢下肢(じょうしかし)リウマチによる障害がある太田(おおた)直子(なおこ)さん(47歳)は、5年前の2014年に入社した。配属先の生産本部購買部は、商品生産のために使用する包装資材などを調達・購入する部署。太田さんは、注文書の発行や数量・納期の変更処理、新しい品目の受入れに合わせた書類作成などを担当している。  太田さんは20代でリウマチと診断された後、無理のないようコールセンターなどで週3日のパートタイム勤務を続けていたが、事務所の閉鎖を機に「正社員で働く最後の機会かもしれない」とハローワークに行き、ツムラを紹介された。採用時の面接では「重い荷物は持てません」といった配慮を求めたが、週5日のフルタイム勤務は覚悟していた。だが人事部から「時短勤務も可能ですよ」と教えてもらい、9時〜16時勤務からスタート、一時は9時〜16時半まで延ばした。  「このままフルタイムへと思っていたのですが、知らぬ間に自分自身に負荷をかけてしまったようで体調を崩しました。職場の保健師さんに相談したところ『いますぐ帰宅しなさい』といわれ、そのまま3週間ほど休職しました」  復帰後は、時短の10時〜15時15分から再スタートし、いまは10時〜16時で勤務している。天候などによって体調に波が生じるため、午前中で早退したり、当日の朝に休暇申請することもある。休むときはメールで部員7人に一斉送信して伝えれば快く了承され、進行中の業務はメールなどで常に同僚と情報共有し、取引先との打合せも代わりに対応してもらえる態勢だ。書類にも、進捗状況がわかるよう「ここまで完了」などと付箋(ふせん)をつけている。こうした業務上の工夫は、コールセンターで日々引継ぎをしていたころの経験が存分に活かされている。  体調第一ということもあり、いまは契約社員のまま仕事を無事にこなしていくことを最優先にしているが、かつて上司からいわれた「だからといって正社員になることを諦めるのはよくないことだよ」という激励の言葉を心に留めている。体調維持のため、寝る前にストレッチなどをしながら体のセルフケアにも気をつけているそうだ。 車いすで7時半に出勤  もともと自衛隊職員だった皆川(みながわ)大樹(たいき)さん(25歳)は、転落事故で両脚を負傷し、車いすユーザーとなった。職業能力開発校に通っていたところ、ハローワークの合同面接会に参加し、2018年ツムラに入社。1年目は人事部付きで、さまざまな社内の業務運営にかかわり、2年目となる今年4月に嘱託正社員となった。いまは健康推進課の上司(保健師含む)3人とともに、健康診断やセミナーなどの運営を担当している。  通勤は、地下鉄2本を乗り継ぎ1時間半かかる。通勤ラッシュの時間帯を避けるため、勤務時間を7時半〜16時15分にしてもらっている。雨のときはカッパを着て通うが、雪の日などは本社前の長いスロープを自力で上がれないため、「同僚にヘルプの電話を入れて迎えに来てもらいます」。  普段から注意しているのは、やはり体調管理だという。「車いすユーザーの特性で、疲れやすく別の疾病にもかかりやすいので、日ごろから自分の疲労度を把握しておく必要があります。『どこまでなら無理がないか』と業務調整をし、休日を含めペース配分に気を遣っています」。皆川さんに、職場での1年余りを振り返ってもらった。  「ツムラは、各部署に障害者が混在している点がよいと思います。職場ではみなさんと同じように仕事を任され、自分のレベルアップのためにやりがいを持って取り組めます。5年後、10年後を見据えて、キャリアアップをしていきたいですね」 研究職として活躍  茨城県稲敷(いなしき)郡にあるツムラの生薬研究所で研究職として働く小関(こせき)雄太(ゆうた)さん(32歳)は、生まれつき聴覚障害がある。大学院での研究実績を活かし、ツムラでは生薬の品質管理のために使う標準物質(※2)の製造などにかかわっている。2年間の嘱託正社員を経て2014年に正社員となった。  面接時には聴覚障害によって「何ができて、何ができないか」を伝えたという。  「基本的な会話は問題ありませんが、私は補聴器をつけても100%聞こえるわけではありません。補聴器から得た音と、みなさんの口の動きによって言葉を推測しています。電話は、相手の口元が見えないので理解できません。大人数が集まる会議などでも、発言内容をすべて確認するのはむずかしいです」  グループ長の五十嵐(いがらし)靖(やすし)さんも、こうした事情を念頭に置いて「ミーティングはなるべく少人数で行います。会議でもパワーポイントを活用し、重要なことや複雑な話はメールなどの文章でも伝えるようにしています」と話す。その横で小関さんは「最近は同僚が、私の障害を忘れてしまうこともあります」と苦笑する。グループで会話しているとき、つい小関さんに口元が見えない立ち位置になることがあるそうだ。会議も長時間になると、目と耳に集中しなければならない小関さんにとっては体力的な負担も大きい。小関さん自身も「私にとって重要でなければ、そのまま流すこともあります。スムーズなコミュニケーションを含めた『いいあんばい』を考えながら対応します」と明かす。  小関さんはグループで一番の若手だが、同僚との研究成果を学会で発表したり、特許を取得したりするなど活躍しているそうだ。五十嵐さんは「今後は、ぜひドクター(博士課程)の取得も目ざしてほしい」と期待する。  ちなみに、小関さんはアスリートでもある。高校生のころ始めた陸上のやり投げ競技を、ツムラ入社後に再開した。「健康のためにも体を鍛え直そうと始めました」というが、全国障害者スポーツ大会などで記録を伸ばし、2015年に「第8回アジア太平洋ろう者競技大会」で銀メダル、2017年にはデフリンピック(聴覚障害者の国際スポーツ大会)にも出場した。いまも退勤後にトレーニングする日々だ。 「てみるファーム」との連携  ツムラではこの10年、社内の障害者雇用とは別に、漢方に欠かせない生薬栽培において、障害者の一般就労を図るべく設立された農業生産法人「株式会社てみるファーム」(北海道)との連携も進めてきた。  きっかけは、生薬栽培の主要地の一つである北海道に2009年「株式会社夕張ツムラ」を設立したとき、てみるファームから「生薬栽培に協力できないか」と打診があったことだ。薬用作物の国内栽培拡大を進めているツムラは、シイタケ栽培などを手がけてきたてみるファームの実績を評価し、委託栽培の契約を結んだ。いまは赤ジソと呼ばれる蘇葉(そよう)の生産を委託している。  「さまざまな障害特性のある20人ほどの方が、てみるファームで働いています。種まきから収穫まで1年ほどかかりますし、生薬の原料ですから厳しい栽培基準もあります。なかでも雑草取りがたいへんなのですが、集中力を活かして大きな戦力になっているようです。それぞれ担当があり、自分たちで工夫しながら作業を進めることに『やりがいを感じる』という声も聞きますね」と土屋さん。  さらに茯苓(ぶくりょう)(※3)の室内栽培に向けた共同研究も行っている。今後の取組みについて土屋さんが話す。  「障害者の法定雇用率というルールを守りながらも、一方ではそれに縛られず、こうした生薬栽培という分野などで障害者雇用に結びつく新たな可能性を広げていきたいと思っています。こうしたツムラの各事業が、国連の提唱するSDGs(持続可能な開発目標)(※4)の達成にも、幅広く貢献していけると考えています」 ※1 フリーアドレス:従業員が固定の席を持たず、業務や状況に応じて空いている席を使うワークスタイル ※2 標準物質:成分の含有量が明確にされていて、容量分析における標準溶液の力価を決定する基準となる物質のこと ※3 茯苓:サルノコシカケ科のマツホド菌の菌核を乾燥させ外皮を除いたもの ※4 SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称 キャプション 人財企画グループでグループ長を務める児平雄平さん オストメイト対応トイレは、荷物置き場なども設置され、使い勝手がいい オフィス内の廊下は広く、キャビネットの高さも配慮されている 上下二段式のごみ箱は、車いすユーザーのみならず、だれでも使いやすい高さだ コーポレート・コミュニケーション室長の土屋洋介さん 「ツムラは周囲の理解度が高く安心して働ける」と話す太田直子さん 標準物質グループのグループ長で薬学博士の五十嵐靖さん 健康推進課で働く皆川大樹さん。日々のお弁当販売の管理も行っている 五十嵐さん(左)と、口の動きを見ながら打合せをする小関雄太さん(中央) 茨城工場に併設された生薬研究所 障害者の雇用拡大を目ざす、「株式会社てみるファーム」と連携し、蘇葉を生産している(写真提供:株式会社ツムラ) 「第8回アジア太平洋ろう者競技大会」の「やり投げ」で銀メダルを獲得したときの小関さん(写真提供:小関雄太さん) 研究所の壁面には、小関さんが学会発表で使用したポスターが貼られている 【P10-11】 NOTE 働く障害者の高齢化 Vol.4 雇用継続への取組み事例(知的障害編)  前回、前々回から引き続き、高齢化した障害のある従業員の課題と、その対応を進める企業を取り上げていきます。  今回は「雇用継続への取組み事例(知的障害編)」として、「株式会社いくせい」(兵庫県神戸市)の事例を紹介します。 高齢化により、屋外の作業が厳しくなる  「株式会社いくせい」(以下、「いくせい」)は、知的障害者の雇用の場を確保し、自立した生活を送れるよう支援するために、1987(昭和62)年に兵庫県神戸市で設立されました。事業内容は、設立当時から主に屋外作業の園地管理・清掃業務です。現在は、リサイクルセンターの手選別作業、農業生産事業、さらには食品加工事業における弁当・焼き菓子製造、喫茶室運営、クリーニング業務、館内清掃などの屋内作業も含め、幅広く事業を展開しています。  知的障害のある社員の場合、加齢による体力低下が早くから見られ、40代後半から体力・気力が低下し、高齢化が一気に進んでいく傾向がみられます。そのため、園地管理・清掃業務の屋外作業では、夏の炎天下や冬の寒い時期は、高齢化が進んだ福祉就労社員(※)にとって、体力的に厳しい状況となり、同社の課題になっていました。  こうした課題を改善し、高齢化が進んだ福祉就労社員たちが一日でも長く働けるように、同社では「時短勤務導入」や「屋内作業への配置転換」を進めています。  屋内作業への配置転換の一環として、同社は2014(平成26)年に子会社の「KKいくせい株式会社」を設立。弁当・焼き菓子製造、喫茶室運営などの業務を委託しています。そして同社からKKいくせいに転籍する形で、高齢化した福祉就労社員が引き続き働くことができる仕組みづくりを行っています。両社の人数を合わせると福祉就労社員は234人で、全員が知的障害者です。 屋外作業から屋内作業に配置転換  いくせいが抱える課題とその解決策について、総務部総務課長の藤原(ふじわら)民子(たみこ)さんにお話をうかがいました。  「園地管理で働く福祉就労社員のなかに、『脚が痛い』、『腰が痛い』と話している社員が多く見受けられるようになりました。そこで配置転換に備え、転換後の業務に慣れるよう時間をかけて実習訓練を行っています。60歳以上の福祉就労社員で体力低下が著しい方は、弊社と子会社を合わせて6人ほどいます。フルタイム勤務は厳しいため、短時間勤務への移行や、屋内作業へ配置転換を行っています」  さらに具体的な事例も話してくれました。  「60歳の福祉就労社員で『園地管理の仕事はもう続けられないかな』と弱気になっていた社員がいました。ちょうどそのころ、子会社で新たにクリーニング業務を取り入れることとなり、配置転換を提案しました。屋内作業のうえ、彼女は以前にクリーニング業務の経験があったこともあり、すぐに元気を取り戻し、再び働く意欲がわき、重要な戦力となって働いてもらった経緯があります。自身の仕事がはかどれば、ほかの社員からも期待されます。また、少人数でやっていますので、『自分の担当分はやらなければ』という責任感も出てくるようです。自身の得意な分野で経験もあったので、より前向きに業務に取り組めたのだと思います」 配置転換により業務への意欲が増す  また、別の事例についてもうかがいました。  「以前、ケーキ屋さんでの就労経験があった福祉就労社員の事例です。弊社は3年前に『ボヌール・ヴェール』というカフェレストランを立ち上げました。その方の経験を活かそうと、彼が54歳のときに弁当製造からこのお店に配置転換してもらいました。現在、洗い物のすべてを担当するなど、活躍してくれています。彼は『ここの仕事が自分の天職だ』と、毎日活き活きと働いています」  さらに藤原さんは続けます。  「60歳を過ぎて園地管理の業務を行っている福祉就労社員がいます。彼は、就労時間が短くなったことで、たいへん元気になりました。また、転籍した職場では目的地まで車による送迎があるので、身体がとても楽になったようです。彼は『65歳を過ぎてもまだ働きたい』といっています」  このように、屋外から屋内作業への配置転換だけでなく、適材適所に配置転換することで、高齢化が進んだ福祉就労社員の労働意欲が刺激され、リフレッシュする場合もあるようです。  「弊社は、子会社も含めて事業所が23カ所あり、業種も多種多様です。就労している職場での勤務継続がむずかしい場合、ほかの事業所で経験してもらい、そこで適性が合えば転籍が可能です。事業所が多い分、選択肢も多様であるという利点があります」 ジョブコーチによる個別の支援が重要  同社は、就労業務に関する個別面談を定期的に行っています。高齢化による体力低下が顕著な場合、今後どのような業務に配置転換すべきか、本人の希望をヒアリングしながら、ご家族などにも来社いただき、三者面談を行っています。「就労状況はそれぞれですが、保護者やご家族の方の就労に対する理解と、精神的なサポ―トが必要不可欠となります」と藤原さんはいいます。  「現場には必ず福祉就労社員を支援する社員がついていますので、健康面のチェックはもちろん、精神面で不安定なときには相談に乗ってもらえます。また、数年前から同社では『ジョブコーチ制度』を取り入れています。支援社員がジョブコーチ(企業在籍型職場適応援助者)(※)を兼務していますので、声かけをしたり、業務や体調面について把握することが可能です」  福祉就労社員が一日でも長く働くためには、今後、ジョブコーチによる個別支援が重要な鍵となるようです。「ジョブコーチ制度」が障害者雇用の現場に広がれば、社員の高齢化が進んだ場合も適切な配置転換ができるなど、スムーズな対応が望めるのではないでしょうか。 ※福祉就労社員:株式会社いくせいでは、知的障害のある社員を「福祉就労社員」と呼んでいます ※企業在籍型職場適応援助者:企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう、さまざまな支援を行う人 障がい者雇用 自然と環境 地域共生 食と健康 知的障がい者が仕事を通じて社会と交流し、社会貢献していくことを目ざす同社のイメージ キャプション 神戸市にある「しあわせの村」では、ほぼ全域の清掃業務を請け負っている いくせい設立当初から受託している「須磨海浜水族園」の清掃業務 薬膳ランチが楽しめる「ボヌール・ヴェール」 いくせいが運営する「にこにこキッチン」。日替わり弁当などを提供している 【P12-14】 インフォメーション 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」および「障害者職場実習支援事業」の活用事例  「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」は、事業主が障害者の雇用にあたって、施設・設備の整備や適切な雇用管理を図るための特別な措置を行う場合に、その費用の一部を助成することにより、事業主の一時的な経済的負担を軽減し、障害者の雇用の促進や雇用の継続を図ることを目的としています。  また、「障害者職場実習支援事業」は、障害者を雇用したことがない事業主が、障害者雇用を進めるにあたり職場実習を受け入れる場合に、職場実習受入謝金などを支給することで事業主を支援します。  今回は、これらの助成金などを効果的に活用している事業主の事例を紹介します。 事例 1 〜直腸機能障害者のためにオストメイト対応トイレを整備〜  【障害者作業施設設置等助成金(第1種)】  情報サービス業のA社の人事部門で採用・教育研修業務などを担当しているBさんは、直腸の病気により人工肛門を造設することとなりました。このため、消化器症状が不安定になりやすく、また排せつ処理の際にトラブルが発生する可能性があることから、本人は不安を抱えながら業務を行っていました。  そこでA社では、助成金を活用して、ストーマ装具や汚れ物を洗うための「汚物流し」や、汚れた腹部を洗うことができる「水栓器具」などが装備されたオストメイト対応トイレを社内のトイレ内に整備しました。  オストメイトのバリアフリー設備が整備されたことにより、本人の不安が大いに軽減され、障害を抱えながらも、自身の能力を最大限に発揮できるようになり、貴重な戦力となっています。 事例 2 〜合理的配慮の提供に対応するため障害者相談窓口担当者を増配置〜 【障害者介助等助成金 障害者相談窓口担当者の配置助成金】  知的障害者・精神障害者を雇用しているC社では、2016(平成28)年に施行された、いわゆる合理的配慮指針(すべての事業主を対象に、募集や採用時に障害者が応募しやすいような配慮を、採用後は仕事をしやすいような配慮をすることを定めたもの)に規定する相談窓口として、総務部の職員を配置しています。  今回、相談窓口をより使いやすいものにするために、助成金を活用し、障害者職業生活相談員資格認定講習修了者のDさんを、障害者の合理的配慮に関する相談に応じる者として総務部の職員に加えて、新たに配置しました。 事例 3 〜職域の拡大が要約筆記者の委嘱により可能に〜  【障害者介助等助成金 手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金】  大学病院で働く両感音性難聴のE医師は、必要に応じてほかの医師などからの援助を得やすいように、病棟勤務をしていました。しかしながら、今回、外来診療を担当することとなり、患者とのコミュニケーション面で本人も周囲も不安な状態となりました。  そこで助成金を活用して要約筆記者を委嘱し、患者の話をパソコンで文字に要約してもらい、E医師に伝達することで円滑にコミュニケーションを図ることができるようになりました。  現在は、E医師の外来診療は不安なく行われています。 事例4 〜通勤を容易にする住宅の賃借〜 【重度障害者等通勤対策助成金 重度障害者等用住宅の賃借助成金】  F社で働くGさんは、勤務中に突然体に力が入らなくなり、転倒したため、病院で診察してもらったところ、進行性の病気であることが判明し、身体障害者手帳を取得しました。Gさんとの面談により、自宅から電車とバスを乗り継いで1時間の通勤をするのが困難であること、会社の近くへの引越しを希望していることがわかりました。  そこでF社は助成金を活用して、Gさんのために、事業所から徒歩1分の場所に、敷地内にも室内にも段差がないバリアフリー住宅を賃借しました。  その結果、杖で歩行するGさんの通勤の負担が解消されました。今後、病気の進行により車いす利用となった場合でも通勤が可能となり、雇用の継続が見込まれます。 事例 5 〜障害者の雇用を進めるために職場実習を実施〜 【障害者職場実習支援事業】  製造業を営むH社では、身体障害者の雇用実績はあるものの、精神障害者を雇用したことがありませんでした。障害者の雇用を進めるために支援機関に相談したところ、精神障害のあるIさんを紹介されたことから、勤務が可能であるか障害者職場実習支援事業を活用することとしました。  Iさんは、書類の仕分け、パソコンの操作などの事務を1日3時間30分、週に4日のスケジュールで1か月間職場実習を行いました。実習中の作業指導はH社の管理部門の社員が行い、実習半ばには、IさんとH社の間で意見交換を行いました。  職場実習を通じて、H社ではIさんの障害の特性に充分な配慮があれば職場の戦力として働けると判断し、Iさんの採用を検討しています。 ※支給に係る要件や申請の期限などの詳細は、都道府県支部高齢・障害者業務課(東京、大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。  機構ホームページでも情報提供しています。http://www.jeed.or.jp/disability/subsidy このような助成金等があります @作業施設、作業設備などの整備を行う事業主向けの助成金 ⇒ 障害者作業施設設置等助成金 A福利厚生施設の整備を行う事業主向けの助成金 ⇒ 障害者福祉施設設置等助成金 B雇用管理のために必要な介助などの措置を行う事業主向けの助成金 ⇒ 障害者介助等助成金 C通勤を容易にするための措置を行う事業主向けの助成金 ⇒ 重度障害者等通勤対策助成金 D障害者を雇用したことがない事業主向けの支援 ⇒ 障害者職場実習支援事業 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています〜 入所日など  国立職業リハビリテーションセンター、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、障害別に年間約10回の入所日を設けています。応募締切日や手続きなどの詳細については、お気軽にお問い合わせください。 ○遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター  埼玉県所沢市並木4-2 職業評価課 04-2995-1201 http://www.nvrcd.ac.jp/  国立吉備高原職業リハビリテーションセンター  岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課 0866-56-9001 http://www.kibireha.jeed.or.jp/ 募集訓練コース 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査・物品管理コース 建築系 建築CADコース ビジネス情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース 会計ビジネスコース OAビジネスコース 職域開発系 物流・組立ワークコース オフィスワークコース 販売・物流ワークコース ホテル・アメニティワークコース 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 資材管理コース ビジネス情報系 OAビジネスコース 会計ビジネスコース システム設計・管理コース ITビジネスコース 職域開発系 事務・販売・物流ワークコース 厨房・生活支援サービスワークコース オフィスワークコース 物流・組立ワークコース サービスワークコース ○訓練の期間は…… 「システム設計・管理コース」、「ITビジネスコース」(ともに国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は2年間、そのほかの訓練コースは1年間の訓練です。 ○対象となる方は…… 「ビジネス情報系」の「視覚障害者情報アクセスコース」(国立職業リハビリテーションセンター)、「ITビジネスコース」(国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は、視覚障害のある方を対象とし、「職域開発系」の各コースは、高次脳機能障害のある方、精神障害のある方、発達障害のある方、知的障害のある方を対象としています。そのほかの訓練コースは、知的障害のある方を除くすべての方が対象です。 事業主のみなさまへ  両センターでは、障害のある方の採用をお考えの事業主と連携し、個々の事業主の方のニーズや訓練生の障害特性などに応じた、特注型のメニューによる職業訓練を行っておりますのでご活用ください。ご利用いただく事業主の方には次のような支援も行っております。 ■ 障害特性に応じた特別な機器・設備の配備や作業遂行に関する支援方法のアドバイスなど、円滑な受入れに関する支援 ■ 雇入れ後の職場定着に向けた技術面でのフォローアップとキャリアプランづくりのための支援  詳細については…http://www.jeed.or.jp/disability/person/person07.html 【P15-18】 グラビア 「ハウステンボス」で働く 松屋愛美さん(長崎県) 取材先データ ハウステンボス株式会社 〒859-3292 長崎県佐世保市ハウステンボス町1-1 TEL 0956-58-0080 FAX 0956-27-0901 写真:小山博孝・官野 貴/文:小山博孝  長崎県佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」。中世オランダの街並みが再現され、多彩なエンターテインメントを楽しむ人たちでいっぱいだ。園内では20人の障害者が、車輌(しゃりょう)課(バス運転業務など)、アメニティ課(場内清掃、植栽管理など)、CS推進課(お問合せ電話の対応など)と、さまざまな職場で働いている。  聴覚障害のある松屋(まつや)愛美(まなみ)さん(23歳)は、園内にあるチーズ専門店「チーズの城」で働くワーキングマザーだ。  地域で開催された障害者就職面接会で、「ハウステンボス株式会社」の募集を知り、応募。2017(平成29)年11月に入社した。お子さんを保育園に預け、自宅からマイカー通勤をする松屋さんは、今年で入社3年目となる。  「職場のみなさんは、障害があっても平等に仕事を任せてくれますし、筆談や手話で積極的に接してくれるので、この職場が好きです。感謝しながら働いています。職場で少しずつ認められて、頼まれる仕事が増えるのが、いまはいちばんうれしい」と松屋さんは話す。  これからがんばりたいことについて聞くと、「せっかくハウステンボスに来られたお客さまに質問されても、聞き取りや口話があまりうまくないので、役に立てないことが悔しい。でも、少しずつ対応できるように努力しています」と、何事にも前向きに取り組んでいる。 キャプション 「今日もはりきって開店します!」 「チーズの城」店長の松尾(まつお)勇希(ゆうき)さんから指示を受ける松屋さん 「ここが私の職場“チーズの城”です」 試食品づくりの様子。休日などお客さんが多いときは、次から次へと大忙しだ 入荷した商品をチェックする 商品の賞味期限の確認も、大切な仕事 店内を回り、商品を整理して並べ直す 大きな塊のチーズから小分けして、量り売り用のチーズをつくる 入荷した商品の伝票をパソコンに入力する さまざまな商品のPOPづくり。絵を描くことなどが大好きな松屋さんの得意な仕事だという 【P19】 エッセイ*第3回 「連携」の在り方に思う 佐藤恵美(さとう えみ)  神田東クリニック副院長、MPSセンター副センター長。  1970(昭和45)年生まれ、東京都出身、北里大学大学院医療系研究科産業精神保健学修了。  精神保健福祉士・公認心理師。病院勤務などを経て現職。医療現場および社内のカウンセラーとして多くの労働者の悩みに向き合い、職場に対して健やかな職場づくりのための助言をしている。著書に『ストレスマネジメント入門』(日本経済新聞出版社)、『もし部下が発達障害だったら』(ディスカバー21)などがある。  昨今、親の手によって幼い子どもの命が奪われる痛ましい事件が続いている。報道では、虐待の詳細や親の素性などが盛んに流されるとともに、関係機関の対応の是非についても取り沙汰(ざた)されることになる。そこでしばしば指摘されるのは、関係機関の「連携不足」である。「情報が申し送りされていなかった」、「情報は伝達されたが、認識が甘かった」、「いった、いわない、聞いていない」など、どれを取っても「連携」が失敗したことに因(よ)るといえるだろう。もちろん、こうしたことは児童福祉領域にかぎった問題ではない。医療、保健、福祉、行政、一般企業、どこにおいても他者、多職種、他組織との連携は不可欠であり、不適切な対応は、ときに人の命や生活の危機、多大な損失、訴訟などにつながる大事件となる。  さて、医療における「連携」の重要性は、80年代ごろから注目されるようになった。ある医療文献検索サーチでは、70年代にわずか40件だった「連携」という検索キーワードは、80年代には200を超え、90年代にはその約10倍、2000年代にはさらに10倍で2万件を超え、ここ10年ではさらに4万件を超えている。まさに「連携」は、医療においてロングランな重要トピックであるといえるだろう。しかしながら、それらの文献における「連携」の中身を見ると、多職種が「協働」した場合や、他機関が相互に「情報の開示」をした場合、はたまた医師同士が「文書をやりとりしたのみ」なども含めて、すべて「連携」と称していることがわかる。つまり、「連携」の解釈はかなり幅が広く、個人、組織、職種、症例によって、そのとらえ方が異なるのだ。「連携して進めていきましょう」は、医療、保健、福祉分野の常套句(じょうとうく)だが、そのとらえ方が関係者間で異なることの無自覚は、重大な齟齬(そご)の温床となるだろう。  そもそも、言葉の定義としての「連携」は、「連絡提携」の意であり、「連絡を取り合い、同じ目的で物事にあたること」とある。この定義からもわかる「連携」の重要なポイントの一つは「目的を同じくすること」である。つまり、向かうべき方向や出したい結果を、関係者間で同じくしていなければ連携は成立しない。ここで落とし穴となるのは、特に医療、福祉分野などにおいては、その目的が「言わずもがな」になりやすいことだ。関係者それぞれが当たり前と思い込んでいる「望む姿」を、各々(おのおの)「言わずもがな」の支援目標にしていることで、関係者間に微妙な足並みのズレを生じさせたり、本質的な支援目標は何かを見失わせてしまう危険がある。何を目標とすべきか、それに向かうそれぞれの関係者の役割は何か、状況に応じて目標が再設定されているかなどを常に明確化し、関係者がベクトル合わせをしていく必要がある。  二つめのポイントは、連絡を「取り合う」という「相互関係」だ。一方的な伝達や、書類だけの通知は「取り合う」に当てはまらない。昨今、ルール通りに対応することや、それを書面に残していることが「適切な対応」の証明として優先され、生きた情報をやりとりすることが、おざなりにされていると感じることが少なくない。刻々と変化する対象者の状況をキャッチし、対象者の心情をくみ取りながら、本質的な支援目標を常に検証し、関係者がそれらを共有するためには、関係者間の即時的な「やりとり」が必要であることはいうまでもないはずだ。  昨今、どの分野においても、専門性やそれぞれの役割が細分化され、より高度な技術の提供が目ざされるようになっている。だからこそ、それらをつなぐ正鵠(せいこく)を射た(※)「連携」は、ますます不可欠になるだろう。不適切な「連携」が、不幸な結果を生まないために、いま一度その在り方を真摯(しんし)に見直すべきであろう。 ※正鵠を射る:物事の急所を正確につくこと 【P20-25】 編集委員が行く 病院と取り組む地域共生型就労支援 〜久留米リハビリテーション病院との連携〜 かぶと山エム・エス有限会社(福岡県) 武庫川女子大学 文学部心理社会福祉学科 准教授 諏訪田克彦 取材先データ かぶと山エム・エス有限会社 〒839-0827 福岡県久留米市山本町豊田1887番地 医療法人かぶとやま会 久留米リハビリテーション病院 〒839-0827 福岡県久留米市山本町豊田1887番地 TEL 0942-43-8033 FAX 0942-45-0388 編集委員から  昨今の高齢者福祉・障害者福祉では、何でも「介護」という箱にしまい込もうとする傾向に、違和感や危機感のようなものを感じている。  今回の取材では、交通事故により大きく人生が変わった中途障害者個人にスポットを当て、復職やそれに向けた支援のあり方をまとめた。 写真:小山博孝・官野 貴 Keyword:脊髄損傷、リハビリテーション、地域医療、就労継続支援B型施設 POINT 1 地域医療を発展させ、Hygge(ヒュッゲ)をコンセプトとした「久留米市やまもとのまちづくり」プランを立ち上げる 2 中途障害者の復職を、就労継続支援B型施設、リハビリテーションシェアハウス、病院と連携してサポート 3 障害の程度にとらわれず、その人自身の可能性に気づき広げていく社会福祉を目ざす 懐(なつ)かしい人からの取材依頼  元号が平成から令和に変わり、これからどんな時代になるのだろうと日々の生活を過ごしていた6月ごろ。私の携帯に、懐かしい人の声があった。  「元気にしてる? いま、うちの病院(久留米リハビリテーション病院)で面白いことを始めたんやけど、取材に来ない?紹介したい人もおるんよ」と九州弁で話しかけてくるその声の人は、2018(平成30)年5月号まで本誌編集委員を務められていた、齊場(さいば)三十四(みとし)さんだった。 水と緑の人間都市 福岡県久留米市へ  編集委員の先輩である齊場さんのお声がけで訪ねることになった久留米市は、福岡県南部にあり、今年で市制130周年を迎えた歴史ある市で、人口約30万人の市民が暮らす中核市だ。  今回の取材先「かぶと山エム・エス有限会社」は、久留米市の南東部にある山本町(豊田地区と耳納(みのう)地区からなる人口約3千人の町)にあり、J R久留米駅から車で約30分。緑豊かな住宅街のなかにある。かぶと山エム・エスはこれまで、隣接している「久留米リハビリテーション病院」内の売店運営と、駐車場管理を主な業務としてきた。かぶと山エム・エスの運営母体である当病院は、外来診療と一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病棟の3病棟体制で、山本町を中心とした地域医療の拠点病院だ。  今回、取材に協力いただいた「医療法人かぶとやま会」理事長で、「久留米リハビリテーション病院」院長の柴田(しばた)元(はじめ)さんが、診療の合間にインタビューに駆けつけてくれた。  柴田さんの専門は循環器だったが、いろいろな人たちとの出会いをきっかけに、リハビリテーション医学とかかわるようになった。リハビリテーション専門医師の資格を取り、研修会、学会に参加、そして齊場さんと出会い、デンマークでの海外研修も経験している。特に、交通事故による重度後遺障害者短期入院協力事業(国土交通省)の指定を受けてからは、リハビリテーション医療の重要性を強く感じるようになったという。近年は、その対象が交通事故障害者から高齢者にまで広がり、「退院させることだけが医療ではなく、患者、家族の心のケア、退院して家に帰る目的、働く場・社会に参加する場の確保、街の人たちの理解が不可欠であることを見逃さない医療を行うことが医師としてのやりがい、使命感につながる」と考えるようになった。  同病院では3人の障害者を雇用しているが、障害のある方の自立支援は病院だけでは背負えない課題であるため、リハビリテーションを中心とした地域医療の取組みをさらに発展させてきた。デンマークで学んだHygge(ヒュッゲ)(※)をコンセプトとした「久留米市やまもとのまちづくり計画」を立ち上げ、その具体的な取組みである五つの事業(左上資料)を、かぶと山エム・エスに委託している。 自立への歩み  病院に到着すると、そこには電動車いすに乗った齊場さんが、私たちを玄関口で出迎えてくれた。今回、齊場さんの紹介で取材させていただく井手(いで)公正(こうせい)さん(30歳)について紹介したい。  大学を卒業した井手さんは、東京都内の病院に作業療法士として就職。25歳のときに車で友人を空港まで送った帰り、交差点で信号待ちをしていた際、速度違反で交差点に進入してきた中型トラックに後ろから追突された。全身打撲と13本の骨折で救急病院へ搬送。2日間意識不明、3日目に意識を回復し奇跡的に一命は取りとめたが、脊髄(せきずい)損傷による両下肢機能全廃、身体障害者1種2級の重度障害者となった。  事故後5年が経過したが、いまも痛みと痺(しび)れは続いており、井手さんは「自分の体は胸から下がコンクリートに浸かっているような感覚」と語る。  現在は、車いすで自力移動でき、ADL(日常生活動作)もほぼ自立、自動車運転免許も取得し、愛車でのドライブを楽しんでいる。 大熊由紀子教授との出会い  25歳で交通事故に遭(あ)うまでの井手さんは、大病を患ったこともなく健康で、ごく普通の生活を送ってきた。井手さんの母親には軽い運動障害があり、子どものころから障害≠ニいう現実をそばで見てきたことから、「人の役に立てるような仕事に就きたい」と作業療法士の道を選んだ。その自分が交通事故により障害者となり、いろいろな人の支えを必要とする立場に変わってしまったのだ。  当初はやり場のない悲しみや苦しみでいっぱいだったが、生来(せいらい)の前向きな性格で、事故後2カ月も経たないうちに次のステップを考えるようになった。  また、「障害者となった自分の想いや考えをうまく他人に伝えることができない」という課題も見つかり、それを解決する手段として、マスコミ、特にジャーナリズムへの関心が深まっていったという。  井手さんは、とりあえずインターネットで「福祉・ジャーナル」というキーワードを検索してみた。すると「大熊由紀子」という名前が目に留まったという。  初めて見る名前だったが、国際医療福祉大学大学院の教授だという大熊さんに、自分の想いをまとめ、メールを送った。  数日後、大熊さんから「大学院に来て少し勉強してみないか」との返事があった。井手さんは、大熊さんから返事が来たことに驚いたものの、思いもかけない「大学院進学」という提案が、これまでのリハビリ中心の生活を卒業するきっかけになると思い、国際医療福祉大学の大学院へ進学を決意した。 デンマークへ留学  大学院では、作業療法士というリハビリテーションの専門職でありながら、社会福祉については何も知らなかったことに気づかされた。そこで、大学院在学中に1年間休学して、デンマークのエグモント・ホイスコーレに留学することにした。ここは、フォルケホイスコーレという、デンマーク特有の成人教育機関の一つである。  留学のきっかけは、大学院の講義でデンマークの話題が出たことと、井手さんの探求心旺盛な性格、そしてここでも大熊さんの「デンマークへ行ってみては?」というアドバイスに背中を押されてのことだった。  エグモント・ホイスコーレは、1970年の設立時から障害者と健常者を分けない統合教育を開始しており、学校は、障害者も健常者も支障なく暮らせるよう、設備もケアも整備されている。障害があり介護が必要な生徒には、健常者の生徒がヘルパーとしてつくことが可能である。これは無償ボランティアでなく、障害者が自分の介護に適(かな)った学生を雇うというシステムがある。デンマーク語も英語も話せなかった井手さんだが、このシステムを活用して、いろんな学生と触れ合うことを大切にした。  井手さんに「1年間の留学で得たものは?」と聞くと、次のように答えてくれた。  日本では、車いすで移動するとほとんどの人が車いすを避けて歩き、「やはり自分は障害者だな」と感じることが多かったという。しかしデンマークでは、行き交う人々は車いすを避けることなく自然に通り過ぎていく。ときには車いすの自分から道を譲らなければならないこともあって、その感覚が新鮮だったという。  また、消費税が25%、所得税52%のデンマークに比べて日本は税金が低いけれど、私たちの税金がどのように社会に還元されているのか、わかりにくい。一方デンマークでは、医療費・教育費が無料であり、子どもが産まれても、障害者になっても、高齢者になっても安心して暮らせるシステムとサービスが税金によって保証されている。両国のお金の使い方の違いは「生活の豊かさ」にもつながっていると痛感したそうだ。 現在の生活  デンマーク留学を終えて日本に帰国した井手さんは、大学院卒業後の就職は2〜3カ月休養してからゆっくり考えようと思っていたところ、再び大熊さんから「久留米リハビリテーション病院の齊場先生に、あなたの就職のことを相談している」と、突然の電話があった。そして、この新しいプロジェクトに参加することをすすめられた。  実家が福岡県にある井手さんは、両親と相談した結果、今年6月から久留米での生活を始めた。  大熊さんから紹介された齊場さんとは、このとき初対面。ちょうどだれかにこれからの生活や仕事のことを相談したいと思っていたので、車いすユーザーである齊場さんは、障害のある先輩として助言してもらえるのではと思い、二人の交流が始まった。  齊場さんは井手さんに、交通事故による中途障害を背負ったこと、大学院での社会福祉研究の学び、デンマークの海外留学の経験を活かして「障害」、「就労」、「自立」について、自身の考えを深めることから始めてみては、と提案した。  井手さんは、いまはまだ肉体的にも精神的にも余裕がなく、就職や復職をするには準備期間が必要と考えていたので、齊場さんの提案を受けることにした。  井手さんは今後について、作業療法士の資格を活かして当病院への就職も考えているが、かぶと山エム・エスへの就職も視野に入れている。現在は就労継続支援B型事業所「Symbi(シンビー)」を利用し、また、リハビリテーションシェアハウス「Grey(グレイ) Heron(ヘロン)」で管理業務のOJTを受けながら、これからの人生設計を模索している。 @就労継続支援B型事業所「Symbi」  「Symbi」ではこの日、野菜(オクラときゅうり)の選別と袋詰めの作業を行っていた。「Symbi」について井手さんの感想を聞くと、「車いすで手作業中心の仕事なので体幹を支えることがきついときもあるが、ほかの利用者やスタッフとの交流から就労について求めるものがそれぞれ異なること、また野菜の出来・不出来の見分け方など、いままで知らなかったことを多く学ぶことができた」という。  また、静寂ななかで作業が淡々と進む環境に、「利用者のリラックスを目的に館内でBGMを流しては」と提案。BGM導入により、作業の効率やほかの利用者、スタッフとのコミュニケーションもよくなったそうだ。 Aリハビリテーションシェアハウス「Grey Heron」  「Grey Heron」は、リビングと寝室、バス・トイレと三つのスぺースに分かれていて、室内を車いすで自由に移動できる。部屋の広さ、設備面ともに使いやすい設計になっている。  特におすすめの場所は、「ワンルームリフトケアシステム」の部屋と、2階のテラスだという。バリアフリー設計のハウス内を、井手さんの案内で見学した。  まず、「ワンルームリフトケアシステム」の部屋を見学した。「ワンルームリフトケアシステム」とは、齊場さんを中心に、久留米リハビリテーション病院と企業が連携して、在宅・家族介護の軽減、本人の自立度アップを目的に、リフトを活用した住宅研究を進めており、それをもとに設計された部屋である。そのモデルルームが「Grey Heron」に1部屋ある。井手さんの部屋と同じ三つのスぺース(リビング、寝室、バス・トイレ)を、すべてリフトによる移動と介助で行えるようになっている。  井手さんは、部屋に設備されているリフトを実際に試しながら、使いやすさや課題などを検証している。  次に、2階を見学した。そこには屋外型テラスがあり、そこからは緑豊かな山本町の自然、遠くに見える山々が一望できる。井手さんはここで、自然のリラクゼーションを利用した、さまざまな形の交流を考えていきたいと語った。  現在、このハウスの入居者は、井手さんだけである。井手さんは、今後入居してくる人たちとの新しい出会いを楽しみに待っている。 Bそのほかのプログラム  リハビリテーション:週2回、久留米リハビリテーション病院で外来リハビリを受けている。 ヘルパー:井手さんの障害支援区分は4。見守り、生活介護を中心とした居宅介護サービスを利用している。 レクチャー:齊場さんとの個別ミーティングや、外部の福祉関係の人たちとの話し合いに参加しながら、齊場さんから考えを深めることを提案された「障害」、「就労」、「自立」について、自分の考えを整理している。 取材を終えて  先日、齊場さんが交通事故後遺症のある65歳の患者さんのカンファレンスに参加した際、多くのスタッフが「障害の程度が重く介護がたいへんなので、退院後は特別養護老人ホームに」という結論になったそうだ。その結果に齊場さんは「人生90年の時代に、その人のこれからの人生、個性や価値観、可能性までもが見落とされているのではないか。もっとこの人の可能性(再就職など)について検討すべきでは」と異論を唱えたが、スタッフからの反応はほとんどなかったという。  井手さんのプログラムは始まったばかりだが、当病院が取り組むこのプログラムは、就職に向けた知識と技術だけを身につけるものではなく、「人」の成長を包含(ほうがん)したものである。院長の柴田さんは、「働くこと」による社会参加の場の確保を目的とする医療を、また、同病院の福祉施設準備室長で、「久留米市やまもとのまちづくり計画」のチームに参加する齊場さんは、障害の程度にとらわれない、その人の可能性に気づき、広げていく社会福祉をと、それぞれの思いが井手さんのプログラムに込められていることを、今回の取材で強く感じた。  最後に、これからの目標について井手さんにたずねると、「多くの福祉プロフェッショナルの声や行動により、障害当事者が伝えたい声がかき消されることがあるので、それを社会に伝えられるようになりたい。そして山本町が、Hyggeの提唱する『誰もが、のんびり、ゆったり、気分良く』暮らしていける町になるように、自分の役割をここで見つけたい」という。この彼のコメントに、障害者としてではなく、一人の人≠ニしての言葉を感じた。 ※Hygge(ヒュッゲ):デンマーク語で「人と人の触れ合いから生まれる豊かな心地よい雰囲気」という意味 井手さんの一週間のスケジュール 月 午前 Symbi 午後 Symbi 火 午前 リハビリ 午後 Symbi 水 午前 (ヘルパ−) 午後 Symbi 木 午前 リハビリ 午後 レクチャ− 金 午前 Symbi 午後 Symbi 「久留米市やまもとのまちづくり計画」五つの事業 【Area(エリア)1 生活・交流支援棟】 1 地域コミュニティCafe 「Landsbyen(ランスビン)」  週2日(火、木曜日)営業、スタッフ4人。  病院関係者や利用者や家族だけでなく、地域の方々の利用も含めてさまざまな人たちの交流を目的とするカフェ。 *Landsbyen/ランスビン:デンマ−ク語で「村」という意味 2 リハビリテ−ションシェアハウス 「Grey(グレイ) Heron(ヘロン)」  Grey Heronは、就労継続支援B型事業所「Symbi」の利用者、久留米リハビリテーション病院の外来患者の社会復帰を支援することを目的に建てられた賃貸アパ−ト。全7部屋(1部屋はワンル−ムリフトケアシステム)、スタッフ1人(管理人)。特に、脊損、片麻痺など重度の障害のある人が利用できるよう、リフトや高さ可変キッチンなどの装置を備えている。永住型、終(つい)の棲家(すみか)とならないよう、利用期間を定めた契約型としている。 *ワンル−ムリフトケアシステムは、最重度の障害があっても他者に抱えられないで、リフトや高度意思伝達装置を使った自立生活を送り、本人が「できること」を広げることを目的にしている。 *Grey Heron/グレイヘロン:英語で「あおさぎ」という意味 【Area(エリア)2 就労・元気支援棟】 3 就労継続支援B型事業所「Symbi(シンビー)」  利用者登録10人、地元野菜の袋詰めなどの作業を実施。スタッフ4人。  久留米リハビリテ−ション病院との連携により、医学的リハビリテ−ションも含めた、就労に必要な知識・能力の向上を目的とした訓練やその準備、就職活動の支援を行っている。 *Symbi/シンビー:英語で「共生」という意味の「symbiosis」から 4 高齢者通所型元気施設「R」  介護予防・日常生活支援総合事業、スタッフ2人。  基本的に身体介護を必要としない、65歳以上の高齢者を対象に心身の機能低下防止、生活支援サ−ビス事業を主に提供している、介護予防型デイサービス。 5 地域交流活動「オリーブ」  多目的地域交流スぺース。 ※Area2就労・元気支援棟は、1フロア−を3つに分けて、3〜5の利用者や関係スタッフが自由に交流できるようにしているのが特徴 キャプション 久留米リハビリテーション病院 佐賀大学名誉教授で、久留米リハビリテーション病院の福祉施設準備室長を務める齊場三十四さん 医療法人かぶとやま会理事長で久留米リハビリテーション病院院長の柴田元さん 就労継続支援B型事業所「Symbi」 地域コミュニティCafe「Landsbyen」 リハビリテーションシェアハウス「Grey Heron」 ワンルームリフトケアシステムの部屋 自室での井手公正さん リハビリと就労に向けたトレーニングを行う井手さん 見晴らし抜群のテラス Symbiでのオクラの袋詰め 【P26-27】 霞が関だより ハローワークを通じた障害者の就職件数が10年連続で増加 ─ 平成30年度 障害者の職業紹介状況等 ─ 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課  厚生労働省は6月18日、平成30年度の障害者の職業紹介状況をまとめました。  ハローワークを通じた障害者の就職件数は、平成29年度の9万7814件から伸び、10万2318件(対前年度比4・6%増)と10年連続で増加しました。 〈ポイント〉(第1表) ○新規求職申込件数は21万1271件で、対前年度差9128件、前年度比4・5%の増加となり、就職件数は10万2318件で、同4504件、4・6%の増加となりました。  このうち、精神障害者の新規求職申込件数は10万1333件で、対前年度比8・1%の増加となり、また、就職件数は4万8040件で、対前年度比6・6%の増加となりました。 ○就職率(就職件数/新規求職申込件数)は48・4%で、対前年度差0・0ポイントとほぼ前年並みとなりました。 〈産業別にみたときの特徴〉(第2表) ○産業別の就職件数は、「医療、福祉」(3万5541件、34・7%)の割合が大きく、「製造業」(1万4510件、14・2%)、「卸売業、小売業」(1万2607件、12・3%)、「サービス業」(1万868件、10・6%)が続いています。また、「公務・その他」(対前年度比62・4%増)が平成29年度に比べて増加しています。 〈職業別にみたときの特徴〉(第3表) ○職業別では、「運搬・清掃・包装等の職業」(3万4845件、34・1%)の割合が大きく、「事務的職業」(2万2632件、22・1%)、「生産工程の職業」(1万2528件、12・2%)、「サービスの職業」(1万2439件、12・2%)が続いています。 第1表 ハローワークにおける障害者の職業紹介状況(平成30 年度) @新規求職申込件数 前年度比 A有効求職者数 前年度比 B就職件数 前年度比 C就職率(B/@) 前年度比差 合計 211,271(件) 4.5(%) 272,481(人) 6.6(%) 102,318(件) 4.6(%) 48.4(%) 0.0(% ポイント) 身体障害者 61,218 1.1 92,824 2.4 26,841 0.3 43.8 △0.4 知的障害者 35,830 0.2 46,928 2.5 22,234 5.9 62.1 3.4 精神障害者 101,333 8.1 119,983 11.1 48,040 6.6 47.4 △0.7 その他の障害者 12,890 5.9 12,746 13.8 5,203 3.9 40.4 △0.8 第2表 産業別就職件数(平成30年度) 産業 障害計 前年度比 身体障害者 前年度比 重度 前年度比 知的障害者 前年度比 重度 前年度比 精神障害者 前年度比 その他の障害者 前年度比 合計 102,318(件) 4.6(%) 26,841(件) 0.3(%) 11,096(件) 0.4(%) 22,234(件) 5.9(%) 4,471(件) 3.3(%) 48,040(件) 6.6(%) 5,203(件) 3.9(%) 農林漁業 1,151 △4.4 245 △10.3 80 △5.9 271 △2.2 43 △24.6 555 △6.4 80 31.1 鉱業,採石業,砂利採取業 30 30.4 15 25.0 6 50.0 2 △60.0 2 − 10 100.0 3 200.0 建設業 2,700 0.2 1,005 2.1 376 0.3 393 △0.8 42 △27.6 1,174 0.1 128 △9.9 製造業 14,510 6.7 3,557 △0.1 1,430 0.8 4,070 9.4 752 4.0 6,045 9.1 838 8.7 電気・ガス・熱供給・水道業 119 0.8 57 △8.1 21 △8.7 6 50.0 1 − 50 6.4 6 20.0 情報通信業 1,792 17.0 446 △11.2 252 △16.0 152 33.3 46 109.1 1,085 32.3 109 14.7 運輸業,郵便業 4,727 6.8 1,666 3.5 579 1.6 978 5.6 204 13.3 1,873 11.6 210 △0.5 卸売業,小売業 12,607 1.6 2,700 △6.1 1,061 △8.1 3,454 4.7 615 △0.6 5,818 3.4 635 4.3 金融業,保険業 1,303 3.0 640 △7.8 271 1.1 106 2.9 20 11.1 522 21.7 35 △10.3 不動産業,物品賃貸業 1,155 10.2 356 2.0 133 10.8 202 14.1 44 33.3 539 15.4 58 5.5 学術研究,専門・技術サービス業 1,987 4.4 551 △7.2 275 △3.8 203 △1.0 40 8.1 1,099 9.7 134 30.1 宿泊業,飲食サービス業 4,252 2.3 1,051 △0.9 431 6.2 1,250 1.9 253 0.8 1,770 5.1 181 △2.7 生活関連サービス業,娯楽業 2,535 3.4 622 △5.6 247 △9.9 670 1.1 148 △5.1 1,113 9.4 130 15.0 教育,学習支援業 2,058 23.2 721 13.4 288 17.1 276 27.8 75 63.0 952 29.5 109 29.8 医療,福祉 35,541 △0.1 8,213 △4.4 3,700 △4.9 7,153 3.6 1,529 1.2 18,431 0.5 1,744 0.6 複合サービス事業 1,061 1.5 297 4.6 113 2.7 229 △1.7 42 7.7 475 △0.6 60 20.0 サービス業 10,868 5.6 3,058 0.1 1,212 1.8 2,537 11.9 559 5.3 4,771 8.0 502 △8.4 公務・その他 3,922 62.4 1,641 72.4 621 88.8 282 12.4 56 16.7 1,758 73.7 241 20.5 第3表 職業別就職件数(平成30年度) 職業 障害計 前年度比 身体障害者 前年度比 重度 前年度比 知的障害者 前年度比 重度 前年度比 精神障害者 前年度比 その他の障害者 前年度比 合計 102,318(件) 4.6(%) 26,841(件) 0.3(%) 11,096(件) 0.4(%) 22,234(件) 5.9(%) 4,471(件) 3.3(%) 48,040(件) 6.6(%) 5,203(件) 3.9(%) 管理的職業 104 15.6 37 0.0 13 0.0 1 − 0 − 58 26.1 8 60.0 専門的・技術的職業 6,825 3.0 2,870 △0.6 1,509 △3.3 240 △10.8 39 △18.8 3,209 5.4 506 17.9 事務的職業 22,632 11.6 7,435 3.5 3,375 3.4 2,003 13.0 360 20.8 11,805 17.4 1,389 9.5 販売の職業 4,741 △0.4 957 △11.1 362 △9.5 1,340 4.6 194 △14.5 2,199 1.1 245 7.5 サービスの職業 12,439 5.4 3,108 0.2 1,080 △0.1 3,129 3.9 578 2.7 5,597 10.8 605 △4.9 保安の職業 1,238 15.4 625 11.0 203 23.0 107 32.1 7 △41.7 452 23.5 54 △14.3 農林漁業の職業 2,948 1.4 452 △9.1 174 4.2 858 8.5 188 10.6 1,477 1.0 161 3.2 生産工程の職業 12,528 △1.1 2,716 △7.8 1,095 △6.1 3,564 5.3 656 1.4 5,520 △1.7 728 1.4 輸送・機械運転の職業 2,960 8.6 1,707 6.6 505 2.2 104 △13.3 11 △15.4 993 14.4 156 15.6 建設・採掘の職業 1,058 △4.8 311 △5.2 106 △10.9 244 △3.9 21 △25.0 449 △8.2 54 35.0 運搬・清掃・包装等の職業 34,845 3.2 6,623 1.4 2,674 2.0 10,644 6.2 2,417 4.0 16,281 2.5 1,297 △2.4 分類不能の職業 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 【P28-29】 研究開発レポート 視覚障害者の雇用等の実状及びモデル事例の把握に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 1 問題意識  視覚障害者にできること、できないことは何か。この問いに、本誌2018年2月号(※1)で視覚障害者の稲垣(いながき)吉彦(よしひこ)さんが「見えている人と同じ方法ではできないこともある」、「時間がかかることはあっても、できないことはない」と答えています。仕事で一定の条件を満たす結果が出せれば、仕事の方法は違っても人材として活用でき、職業能力を伸ばすことができるという考え方は合理的で、多くの事業主に受け入れられるように思われます。スクリーンリーダー(画面読上げソフト)の活用や通勤経路の変更は、そのような「違う方法」のひとつです。  しかしこれまでのさまざまな事例は、こうした合理的なやり方が職場にスムーズに受け入れられるとはかぎらないことを示しています。例えばスクリーンリーダーが仕事でどれだけ役立つのかは、実際に使ってみなければわからない面も多いものです。また、事業主によるスクリーンリーダーの購入とインストール許可、視覚障害者による操作方法の習得、通勤経路の確保など、事業主と視覚障害者の双方がそれなりの努力を払うことになります。さらに、眼疾患の進行や見えなくなっていく過程にある視覚障害者には、その心理にも配慮したいところです。研究の情報収集では、上司や同僚もそれにどのように接してよいかわからないという実状もありました。 2 事業主と視覚障害者は配慮事項について話し合っているか  厚生労働省の合理的配慮指針では、事業主は採用後の障害者に対して、職場において支障となっている事情の有無を確認し、配慮の内容を障害者と話し合うこととされています。2018(平成30)年10〜11月に全国調査を実施し、この「話合い」の実状を確認しました。  前年の2017年度の1年間に全国のハローワークを通じて視覚障害者を雇用した事業所は、全部で1,615所でした。調査時点ですでに離職していた視覚障害者もいましたが、採用後継続して雇用されていた視覚障害者のなかから所定の手続きで抽出された366人のうち、採用後に何らかの配慮を受けていた人は91・5%でした。その配慮の前段階となる事業主と視覚障害者との話合いの手続について訊(たず)ねると、職場において支障となっている事情の有無を視覚障害者に確認した事業主の割合は77・3%、職場において支障となっている事情の改善措置の希望を申し出た視覚障害者の割合は69・1%で、何らかの配慮を受けた視覚障害者の割合である91・5%よりも低い値であることがわかりました(図表1)。これらの確認や申出が契機となり、その後の十分な話合いが行われればよいのですが、以下に示すように、これは必ずしもそうとは言い切れない結果です。  障害のない人と同様に、働く視覚障害者が仕事を覚え、力量が上がれば、職務内容や配慮の必要性も変化します。事業主による再確認は必要に応じ定期的に行うべきことが指針にも示されていますが、一般的には、仕事の進め方の工夫や課題などは、仕事をしている本人にしかわからないことも多いものです。業務上必要な配慮に関する改善の提案は働く視覚障害者本人が主体的に考え、積極的に申し出た方がよいでしょう。このような採用後の話合いが継続的に行われていれば、事業主の確認や視覚障害者の申出の頻度は、実際に配慮が行われた頻度と同じか、またはそれ以上に多かったはずではないでしょうか。しかし結果はそうではありませんでした。  配慮の件数は多いのに、その前段階の事業主の確認や視覚障害者の申出が少ないのはなぜでしょうか。冒頭に挙げたスクリーンリーダーの導入例でも、専門家ではない視覚障害者と事業主が話し合っても、解決できるものではないと思ってしまうのかもしれません。  しかし、たしかに事業主と視覚障害者は専門家ではないかもしれませんが、事業主は経営者として、視覚障害者はひとりの働き手として、通常業務を行うのと同様にそれぞれ主体的に情報収集したり、考えたり、話し合って協力を得たりをくり返し、次々と発生する課題を何とか乗り越えようとすることが必要ではないでしょうか。後述するモデル事例はそのことを指し示すものです。 3 事業主と視覚障害者は支援を受けているか  民間企業に対しては、さまざまな課題の解決に向けて活用できる相談窓口、機器の無料貸出、助成金が設けられています。厚生労働省の合理的配慮指針では、障害者の意向確認がむずかしい場合には、就労支援機関の職員などに当該障害者を補佐することを求めても差し支えないとされています。実際の関係機関の活用状況はどのようになっているでしょうか。  全国のハローワーク544所のうち、所定の手続きを経て抽出された134所の視覚障害のある求職登録者1 174人のうち、ハローワークが支援困難・課題と感じた118事例のなかでは、障害特性の把握の困難さ、専門機関が不在であること、公共交通機関の沿線上に求人がないこと、眼疾患の進行にともない就労意欲が低下することがあること、仕事に必要なスクリーンリーダーの導入を事業主が認めないこと、などが指摘されました。視覚障害者の雇用に関係機関が関わっていたケースは少数でした(図表2)。 4 視覚障害者の雇用を一層進めるために  冒頭でご紹介した稲垣さんは、同じ記事で次のようにも述べていらっしゃいます。「目の見えていた当時の私は、視覚障害を想像するときに、“目をつぶって”見えないことを想像していた」、「この『視覚障害』というものは、目が見えている人からすると、想像しにくく、正しく理解することがむずかしい障害のように思う」  労働力の中心となる20〜50代の人たちにとって最も視覚障害の原因となりやすい3大眼疾患は、網膜色素変性症、糖尿病網膜症、緑内障です。いずれも関係者へのヒアリングや情報収集の結果では見え方や進行の仕方が多様で、本人にも説明がむずかしいようです。このような説明のむずかしさを克服し、視覚障害者の雇用を進めるため、これまでの調査研究でお会いした企業、視覚障害者、眼科医、関係機関、盲学校など関係者のみなさまからのご意見、ご協力を得て、150を超える事例のなかから、雇用を目ざす視覚障害者や、職場復帰を目ざす中途視覚障害者にとってモデルとなりそうな4事例をご推薦いただき、改めて取材のうえ、調査研究報告書bP49「視覚障害者の雇用等の実状及びモデル事例の把握に関する調査研究」(※2)に掲載しました。そこに共通するテーマは、視覚障害者の主体的な問題解決とキャリア形成に向けた十分な話合いです。  また、視覚に障害があるため通勤や仕事に支障を来している人が受けたい配慮について、会社との話合いなどに活用できるリーフレット「目が見えなくなってきた従業員の雇用継続のために(企業の人事担当者、管理者の皆さまへ)」(※3)を作成しました。会社の上司、産業医、眼科医、視覚障害者の就労支援機関やハローワークなど多くの関係者にご活用いただきたいと思います。  さらに、就労支援機関や眼科医が、視覚障害者と企業へ配慮の提案を行うために作成する自己紹介資料の様式「ブレークスルーカード」を考案し、職業リハビリテーション機関向けの視覚障害者の職業評価のポイントとあわせて、いずれも前述の調査研究報告書に掲載しました。こちらもご活用ください。 ※1「働く広場」2018年2月号は、当機構ホームページでご覧いただけます 働く広場2018年2月号 検索 ※2 調査研究報告書No.149は、http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/houkoku/houkoku149.htmlからダウンロードできます。 ※3 リーフレットは、http://www.nivr.jeed.or.jp/research/kyouzai/kyouzai62.htmlからダウンロードできます。 ◇お問合せ先:研究企画部企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp) 図表1 合理的配慮の手続の実施状況(採用後) 採用後に職場において支障となっている事情の有無を視覚障害者に確認した事業主 77.3% 採用後に職場において支障となっている事情の改善措置の希望を事業主に申し出た視覚障害者 69.1% 採用後に視覚障害に関わる何らかの配慮を受けた視覚障害者 91.5% 【「希望」の内容(多かった順に)】 「出勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮してほしい」 「ほかの従業員に対し、障害の内容や必要な配慮などを説明してほしい」 「職場内の机などの配置、危険個所を事前に確認させてほしい」 図表2 1,174人の視覚障害者(求職登録者)のうち関係機関と連携したケースの割合(複数回答) 障害福祉サービス機関 4.1% 障害者就業・生活支援センター 3.3% 盲学校・専攻科 2.5% 地域障害者職業センター 1.8% 地域独自の就労支援機関 1.1% 職業能力開発校(委託訓練含む) 1.0% 難病相談支援センター 0.1% 当事者団体、ボランティア団体 0.3% 病院・診療所 0.0% その他 0.3% 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 国会内のバリアフリー化  参院選で筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者と脳性まひで重度障害者の2氏が当選したことを受け、参議院議院運営委員会の理事会は国会内のバリアフリー化を協議し、介助者の本会議場入場や代理投票、パソコンなど必要機器の持込みなどを認めることで合意した。  本会議場では、入口から近く車いすのまま入れるよう議席を設ける。医療機器やパソコンのための電源も設置。また「記名投票」で筆記できないときは本人の意思を確認したうえで介助者による代筆を認める。押しボタン投票や起立採決の際の挙手での意思表示も介助者が代理で行うことを認める。上着・ネクタイの着用は求めない。このほか国会の中央玄関にスロープを設置し、多目的トイレの増設なども検討している。 「読書バリアフリー法」成立  障害者の読書環境を改善する「読書バリアフリー法」が衆議院本会議で可決、成立した。正式名称は「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」。視覚障害者や発達障害者、本のページをめくるのが困難な肢体不自由者らが図書を借りる権利と買う自由を担保することを目的に、図書館によるサービス提供体制の強化、電子書籍の販売促進など9施策を明記した。  借りる権利については図書館の点字図書などを充実させる。また、インターネットを活用した電子書籍を借りる仕組みの利用促進を図る。  出版社が視覚障害者らにデータ提供する際の漏えい防止策や、著作権に関する合意形成などを国が助言する。国による優良企業の顕彰(けんしょう)も想定している。地方自治体に対しては基本計画をふまえた計画策定を努力義務とし、国が国会図書館や出版社、障害者団体などによる協議の場を設けることも義務づけている。 農林水産省 農業で働く障害者支援「職場コーチ」創設へ  農林水産省は、障害者が農業の現場で働く「農福連携」を支援するため、障害者の特性などを就労先の農家などに助言する「農業版職場適応援助者(ジョブコーチ)」制度を2020年度にも創設する。研修用のカリキュラムを作成中で、受講者に修了証を渡すなど全国共通の運用を目ざす。  一部の自治体では独自に人材育成をしているが、研修内容に全国的な基準はないため、農林水産省は農業関係者に福祉の知識を、福祉関係者には農業の知識を身につけてもらう研修制度をつくる。都道府県や農協の職員らを対象に農福連携支援のための研修を行う予定で、そのカリキュラムを基に厚生労働省と協力する。必要な研修内容や日数など一定の基準をまとめるが、研修期間は座学や現場実習を合わせ一週間程度となる見込み。 地方の動き 千葉 聴覚・視覚障害者向けに災害時バンダナを製作 船橋市は、視覚や聴覚に障害がある市民向けに、災害時などに着用して周囲に障害を伝えるバンダナを製作した。縦横各80p。背中に羽織ると「目が不自由です」、「耳が不自由です」などと書かれた大きな文字が見える。両端にホックを取りつけて、文字がゆがみにくくなる工夫をした。  市内の金属工業会社から無償提供されたホックを使い、障害福祉サービスなどを行う市内の7事業所が生地の縫製などを手がけた。視覚・聴覚障害者に計2200枚を順次郵送し、避難所には約400枚を備蓄する。また、ストーマ(人工肛門や人工ぼうこう)の使用者で災害時に自宅持ち出しができなかった人のために専用装具を市立中学校27校に備蓄する予定。 東京 障害者総合スポーツセンター改修終える  大規模改修を進めていた「東京都障害者総合スポーツセンター」(北区)がリニューアルオープンした。2017年から改修し、200mトラックなどを備えた屋外運動場やテニス場が完成し、全館が利用できるようになった。  ボッチャなどに使える多目的室やトレーニング室などを備えた2階建ての棟を増設し、アーチェリー場を国際大会と同じ70mに拡張した。テニスコートを3面に、異性の介助者とも利用できる家族更衣室を4室に増やした。運動場とテニスコートには夜間照明が新設され、午後8時20分まで利用可能になった。 生活情報 東京 指文字のフリーフォントを制作  博報堂DYグループ(港区)の特例子会社「株式会社博報堂DYアイ・オー」(江東区)が、社員と博報堂のデザイナーの協働により、指文字と文字を組み合わせたフリーフォント「指文字フォント」を制作した。  指文字(日本式とアメリカ式)とカタカナ・アルファベット・数字を組み合わせ、フォントとして使えるようにデザインした。作成した印刷物やデジタルコンテンツ・ソフトウェアについて非商用の範囲で自由に使用できる。 ダウンロードや詳細は、博報堂DYアイ・オーのホームページから。http://www.hio.co.jp/ 働く 茨城 イチゴ生産で特別支援学校と連携  外食チェーンの「株式会社坂東(ばんどう)太郎(たろう)」(古河市)が、地元の特別支援学校と連携しながらイチゴ生産に参入する。自社運営の店舗で提供するスイーツメニューで使うほか、店頭での販売も計画。1年目は約7tの収穫を見込む。今後はイチゴ狩りができる観光農園として整備し、地域住民や観光客の交流の場として活用していく予定。  本社に隣接する農地を借り、ビニールハウス3棟を組み立てる。2019年冬から翌年のゴールデンウィークころまでの収穫を予定。栽培には近隣の特別支援学校の生徒にも授業の一環として取り組んでもらい、希望者には将来の雇用も検討するなど、障害者の就労支援も図る。 東京 日立が障害者雇用の子会社を統合へ  「株式会社日立製作所」(千代田区)は、障害者雇用の促進を図る子会社を2020年4月に統合すると発表した。これまで会社によってオフィスの事務補助や部品の組立て・検査など事業内容が分かれていたが、1社に統合し幅広い業務を請け負う体制を整える。通勤などが困難な障害者向けにはIT技術を活かして在宅勤務も検討する。  統合するのは、特例子会社「株式会社日立ゆうあんどあい」(神奈川県横浜市)と「株式会社サンシャイン茨城」(茨城県笠間市)、「株式会社ビルケアスタッフ」(足立区)の3社。日立ゆうあんどあいを存続会社とし、日立製作所の100%子会社とする。従業員数約440人のうち約330人が障害者雇用となる見通し。日立グループ20社が、統合した新会社に仕事を発注する。  統合することで障害特性に応じた支援ノウハウが共有できるうえ、採用活動も強化できるとみている。定型業務を自動化するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を活用した業務の切り出しや在宅勤務なども推進する。 東京 LINEが障害者雇用にかかわる子会社設立  「LINE株式会社」(新宿区)が、完全子会社「LINEビジネスサポート株式会社」の設立を発表した。これまでLINEで展開されてきた、障害者が行う各種事務・配送・美化作業・マッサージルームの運営および障害者雇用などについてのサポート業務を承継する。LINEは企業の社会的責任の一環として障害者の雇用機会の拡大および安定した職場を確保し、その能力を十分に発揮しながら挑戦・成長できる就業環境をつくることを目ざしている。同社は新会社設立後に特例子会社の認定を申請する予定。 愛知 アイシン精機が特例子会社設立へ  トヨタグループの自動車部品メーカー「アイシン精機株式会社」(刈谷市)が特例子会社を設立する。新会社名は「アイシンウェルスマイル株式会社」。10月に設立し、2020年4月に営業を開始する予定。主な業務内容は、アイシングループ社内でのオフィスサポート(清掃や文書電子化)と障害者雇用支援(グループ各社への教育や採用活動)。  スタート時の従業員数は約20人で、うち10人が障害者になる見込み。5年後をめどに障害者70人を雇用する方針だ。 本紹介 手話でGO! GO! 合理的配慮  一般社団法人「全日本ろうあ連盟」が、このほど『手話でGO!GO! 合理的配慮 障害者差別解消法でやるべきことを考える』を刊行した。共生社会の実現に向け各地で手話言語に対する認知が深まってくるなか、「聞こえない人から相談が入った時はどうすればいいか」、「聞こえない人と一緒に働くにはどうすればいいか」といった「合理的配慮」をめぐる疑問や悩みなどに応える内容。聞こえる人も聞こえない人も、ともに学ぶための実践集となっている。A5判176ページ、900円(税抜)。 2019年度 地方アビリンピック開催予定 10月〜11月 北海道、福島県、千葉県、神奈川県、石川県、山梨県、三重県、滋賀県、山口県、大分県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *  の県は開催終了 ※全国アビリンピックが11月15日(金)〜11月17日(日)に、愛知県で開催されます。 地方アビリンピック 検索 北海道 福島県 千葉県 神奈川県 石川県 山梨県 三重県 滋賀県 山口県 大分県 【P32】 掲示板 心に響く歌声 合志(こうし)工業団地協同組合 中小企業診断士 吉良山(きらやま)健三  令和元年7月27日(土)、「第12回合志市人権教育研究大会」が合志市役所御代志市民センターで開催され、人権バンド「ホライズン」の語りと演奏を聴く機会を得ました。そのなかの一人の女性の歌声が、アビリンピック競技者を連想させてくれました。  彼女は同年者とは入学できず養護学校に通い、地元の小学校に転入し中学・高校を卒業、それから幾年が過ぎ、彼女のもとに同窓会の案内状が来たそうです。さらに友人からの誘いの電話で、「いつも一緒にはいられない、だから誰にでも頼めるように」と声をかけてくれた当時のことが蘇ったと話されました。  彼女が作詞した『同窓会のハガキ』という歌のなかで同じ年代の人たちと一緒に入学も卒業もできなかったけれど、同窓生のみんなが私にとっての本当の同級生(ともだち)、仲間がいたから卒業できた≠ニの一節があります。  友人のアドバイスに耳を傾け、「同窓生みんな」を同級生とみなし前向きに生きている彼女、誰にでも頼めるようになったいま、彼女の周りには多くの新たなともだちが集っています。  彼女の情愛あふれる歌声とアビリンピック競技者の輝く眼差しには、謙虚さや感謝や自立心が相まっているように思います。 EDITORS' NOTES 次号予告 ●この人を訪ねて  就労支援ネットワークONEの代表である中金竜次さんに、難病患者の就労支援についてご執筆いただきます。 ●職場ルポ  湘南ゼミナールの特例子会社、株式会社湘南ゼミナールオーシャン(神奈川県)を訪問。ピアサポートやチェックシートの活用など、積極的な障害者雇用と、その定着に取り組む現場を取材します。 ●グラビア  農業・福祉・医療の連携を行う「NPO法人えんしゅう生活支援net」が運営するLaLa Cafe(静岡県)で活躍する障害者をご紹介します。 ●編集委員が行く  松爲信雄編集委員が、株式会社全日警サービス長野(長野県)を訪問。難病がありながら、職場のサポートを受け就労する現場およびその支援の様子を取材します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 株式会社ダイナン 経営補佐 樋口克己 東京通信大学教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 横河電機株式会社 箕輪優子 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ http://www.jeed.or.jp メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821  FAX 03−5484−8822 10月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和元年9月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【裏表紙2】 第27回 職業リハビリテーション研究・実践発表会 令和元年11月18日(月)・19日(火) 東京ビッグサイトで開催! 入場は無料です! みなさまのご参加をお待ちしています  当機構では、職業リハビリテーションに関する研究成果を広く各方面に周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を行う場として「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を毎年開催しており、企業、福祉、医療、教育などさまざまな分野から多数のご参加をいただいています。この発表会では職業リハビリテーションに関する研究成果をはじめ、就労支援に関する実践事例や企業における障害者の雇用事例を紹介します。ぜひご参加ください。 参加申込みはWebからお願いします 職リハ発表会 検索 11月18日(月) 基礎講座 職業リハビリテーションの基礎的事項等に関する講義  「精神障害の基礎と職業問題」 「発達障害の基礎と職業問題」 「トータルパッケージの活用」 支援技法普及講習 職業センターで開発した支援技法の紹介 「発達障害者支援技法の紹介〜ナビゲーションブックの作成と活用〜」 「精神障害者支援技法の紹介〜アンガーコントロール支援〜」 特別講演 「中小企業だからこそ実現できる障害者雇用を考える〜障害者のキャリアラダーを検討する〜」 松原 未知 氏(ビルド神保町 社会福祉士/精神保健福祉士/キャリアコンサルタント) パネルディスカッションT 「障害のある社員が働き続けるために 〜障害の多様性と多様な働き方に向き合う中小企業〜」 ▲特別講演の様子 11月19日(火) 研究発表 研究者、企業関係者、支援者などが発表 【口頭発表】テーマごとに16分科会 【ポスター発表】発表者による説明・参加者との討議 パネルディスカッションU 「精神障害のある社員の職場定着を進めるための情報共有ツールの有効活用について」 ▲口頭発表の様子 事務局 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 研究企画部企画調整室 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 TEL:043-297-9067 E-mail:vrsr@jeed.or.jp http://www.nivr.jeed.or.jp 【裏表紙】 天皇陛下御即位記念 第39回 全国アビリンピック障害者ワークフェア2019 入場無料 令和元年11月15日(金)〜11月17日(日) 令和元年11月15日(金)開会式 令和元年11月16日(土)技能競技及び障害者ワークフェア 令和元年11月17日(日)閉会式 開催場所 愛知県国際展示場 愛知県常滑市セントレア5丁目 ●中部国際空港駅より徒歩5分 あいち人材力強化プロジェクト イメージキャラクター アイチータ 新規種目登場! 第39回全国アビリンピックでは、新規種目として「ネイル施術」種目の実施を予定しており、全23種目の技能競技と2職種の技能デモンストレーションにおいて、全国各地から集った約450人の選手たちが日ごろつちかった技能を披露し、競い合います。 イベント目白押し! 障害者ワークフェアでは約140企業・団体による出展を予定しており、今年は、特別企画として実施予定の「パラスポーツコーナー」や「アール・ブリュット展」などイベントが目白押しです。パラリンピアンによる座談会にも注目です! 過去最大規模での開催! 今大会は、完成したばかりの愛知県国際展示場に、技能五輪と全国アビリンピックを集約し同時開催します。過去最高に盛り上がること間違いありません。たくさんのご来場をお待ちしております。 ※技能五輪のうち、一部の競技は別会場にて実施します。 ネイル施術 フラワーアレンジメント ワード・プロセッサ 障害者ワークフェア お問合せ 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用推進課 TEL 043-297-9516  FAX 043-297-9547  MAIL koyousuishin@jeed.or.jp 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、愛知県 後援 厚生労働省、内閣府、文部科学省、経済産業省、中央職業能力開発協会 あいち アビリンピック 検索 10月号 令和元年9月25日発行 通巻505号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)