【表紙】 令和元年12月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第508号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2020 1 No.508 リーダーズトーク 「一人ひとりの成長」が会社の付加価値に 株式会社王将フードサービス 代表取締役社長 渡邊直人さん 職場ルポ 「自分に合わせた働き方」ができる職場に 九州地理情報株式会社(福岡県) グラビア HAPPYを届けたい 株式会社Dreams ポップコーンパパ 天保山店(大阪府) 編集委員が行く 多様な人材活用力はダイソーの強み 〜未来進行形で障害者スタッフの力を引き出していきたい〜 株式会社大創産業、株式会社ダイソーウイング(広島県) 「一流のサッカープレーヤー」愛知県・齋藤 (さいとう) 聖也(せいや)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 1月号 【前頁】 心のアート ゆめの中に 周藤優子 (NPO法人サポートセンターどりーむ) 素材:紙、アクリル絵の具 サイズ:210×297mm 私にはゆめがあります。ゆめがあるから生きてこられたのです。 そのゆめを支えてくれたたくさんの人に感謝したいです。 その気持ちを込めてつくりました。 周藤優子(すとう ゆうこ)  1972(昭和47)年、誕生。1993(平成5)年、兵庫県姫路市の短大を卒業。いくつかの一般職に就くが長く続かず、周囲の人の言動を理解できなかったり、自分の言動を理解してもらえないなど、コミュニケーションがうまくとれず悩んでいた。2000年、母にすすめられて病院で検査を受け、統合失調症と診断される。2007年、父の死を経て、2012年「NPO法人サポートセンターどりーむ」のアート活動に参加するようになる。2015年、島根大学医学部附属病院で検査を受け、発達障害とわかる。 文:周藤優子 【目次】 障害者と雇用 目次 2020年1月号 NO.508 心のアート−−前頁 ゆめの中に 作者:周藤優子(NPO法人サポートセンターどりーむ) リーダーズトーク−−2 第2回「一人ひとりの成長」が会社の付加価値に 株式会社王将フードサービス 代表取締役社長 渡邊直人さん 職場ルポ−−6 「自分に合わせた働き方」ができる職場に 九州地理情報株式会社(福岡県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 インフォメーション−−12 事業主のみなさまへ 令和2年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ/「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない/ 障害者職業総合センター研究企画部 図書情報閲覧室からのお知らせ グラビア−−15 HAPPYを届けたい 株式会社Dreams ポップコーンパパ 天保山店(大阪府) 写真:小山博孝・官野 貴/文:官野 貴 エッセイ−−19 第1回 発達障害とともに生きるということ ―親の接し方― 内閣府地域働き方改革支援チーム委員(兼務 株式会社東レ経営研究所) 渥美由喜 編集委員が行く−−20 多様な人材活用力はダイソーの強み 〜未来進行形で障害者スタッフの力を引き出していきたい〜 株式会社大創産業、株式会社ダイソーウイング(広島県) 編集委員 大塚由紀子 NOTE−−26 難病のある人と就労 Vol.2 消化器系の代表的な難病について 研究開発レポート−−28 発達障害者のワークシステム・サポートプログラム 発達障害者のアセスメント 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル−−30 掲示板・次号予告−−32 表紙絵の説明 「サッカーが大好きです。プロのサッカー選手に憧れていたので、自分の未来の姿を重ねました。背景にあるスタジアムを描くのがむずかしかったです。最初はなかなかうまく描けなかったけど、描き始めたら夢中で制作していました」 (令和元年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 中学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp) 【P2-5】 リーダーズ トーク Leaders Talk 第2回 「一人ひとりの成長」が会社の付加価値に 株式会社王将フードサービス 代表取締役社長 渡邊直人さん 渡邊直人(わたなべ なおと) 1955 年大阪府生まれ。1979年、当社入社。 2004 年に取締役、2008年に常務取締役、 2013 年から代表取締役社長。  中華料理レストランチェーン「餃子の王将」で知られる「株式会社王将フード サービス」は、1967(昭和42)年の創業から2020(令和2)年で53年を迎え、お客様から「褒められる店」を創ろう! その実現に向けた努力こそが私達を成長させ、私達に幸せをもたらし、社会への貢献につながる原点である。≠ニいう経営理念のもと、国内外に約730店舗を展開し、業績を伸ばしてきました。  2017(平成29)年に設立された特例子会社「株式会社王将ハートフル」は、事業の核となる餃子の製造工程の一つを担当しています。  これまでさまざまな改革を進めてきた渡邊直人王将フードサービス代表取締役社長に、特例子会社設立の経緯やトップとして示した方針、具体的な取組みをふり返りながら障害者雇用のあり方について語っていただきました。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 「働く人の幸せがなければ企業の存在意義はない」 ――特例子会社「株式会社王将ハートフル」(以下、「ハートフル」)を設立した経緯について教えてください。 渡邊 私は2013年に社長に就任してから、「労働時間の短縮」や初めての「ベースアップ実施」といった改革を進めてきました。根底にあるのは「従業員の幸せの実現」でした。労働組合の委員長を8年ほど務めたなかで「働く人の幸せがなければ企業の存在意義はない」と思っていたからです。店舗の従業員の負担を軽減させるため、餃子を包む作業も工場一括にしました。同時に品質と生産性の向上を掲げ、お客様に「おいしい」と褒めてもらえる餃子をつくること≠経営理念としてわかりやすく示しました。  こうしたなかで障害のある方たちにも店舗や本部内で働いてもらっていましたが、あるとき障害者雇用の法定雇用率を達成できていない問題について人事部から報告を受け、特例子会社の設立を提案されました。当時は私自身も法定雇用率について詳しく理解していなかったので、どれぐらいの規模で何人雇用するべきか、外部のコンサルティング会社の助言などをもらいながら検討を始めました。 ――ご自身もかつて障害のある従業員と働いた経験があったそうですね。 渡邊 もう30年以上も前ですが、店長を務めていた東京都内の店に自閉症の従業員がいました。彼は特別支援学校から本社人事部を介して入社してきました。障害者手帳を持っていたかどうかはわかりません。当時は会社側も障害者雇用としてあまり意識していなかったと思います。彼は人前で話すのが苦手で周囲とのコミュニケーションも少しむずかしかったのですが、「朝〇時に来て、これとこれをやっておくように」と伝えると、きっちりこなしてくれました。そして一度も遅刻しませんでした。そのころから私は、「障害者と健常者ってどこで線を引くのかな」と思っていました。彼はいまも元気に働いてくれています。 慈善事業を目的にせず、必ず成果を出す ――ハートフル設立にあたり、社長として示した方針などはありましたか。 渡邊 単に雇用率をクリアするための数字合わせをするのでは意味がないと思っていました。人数で計算するような感覚も好きではありません。採用するなら、その人の人生にも責任を持たなければいけない。一方、結果として彼らのために会社が犠牲になってはいけないし、施しを与えるような姿勢はもっと失礼です。慈善事業を目的にするのではなく、将来的には必ず戦力になってもらう。きちんと仕事をして成果を出し、彼ら自身が達成感とともに堂々と胸を張って給料を受け取ってほしいと考えていました。  私は社内に「王将大学」(※1)や「王将調理道場」(※2)をつくり社員教育にかかわってきましたが、ずっと感じていたのは「みんな成長したいのだ」ということでした。だからこそ彼らは歯をくいしばって仕事を覚えてきたのだと思います。そんな過程を見てきた私は、障害のある人たちが、さまざまな理由で活躍する場が少ないのなら、ハートフルがその場を提供すればよいと考えました。そして、長く働き続けられる環境で徐々に生産性を上げてもらい、将来的に「みなさんの貢献で会社がよくなりました」という結果にしてほしいと、設立にかかわる社員たちにお願いしました。 ――「経営理念」の共有も大きな柱だったそうですね。 渡邊 親会社が全面的にバックアップするために示した大きな方向性が、「王将フードサービス」の経営理念でした。ハートフルはあくまで「王将フードサービス」の一員であり、障害の有無に関係なく同じ価値観を持って働くことを大事にしてほしかったのです。経営理念はわかりやすい文章ですから、行動指針である「王将10訓」も含めてハートフルの従業員全員に覚えてもらいました。現場では指導員たちが「小さいころから食べてきた餃子を、あなたがつくっているんだよ」ということを何度も伝えて意識してもらったようです。採用のポイントも、会社の理念やルールをしっかり守れる人かを重視しました。一方で、生産性については最初から結果を求めず、着実にステップアップをしていけばよいという思いでした。 大きな決断を担保するための緻密な準備 ――ハートフルの業務を、当初から事業の核である餃子製造にしたのも大きな決断でしたね。 渡邊 彼らには餃子をつくる工程で大事なキャベツの加工(芯取り、切断、検品など)を任せています。最近はニンニクの加工も加わりました。「餃子の王将で働いている」という実感が持てる現場です。  その一方で、製造現場における一番の不安要素は、働いている人たちと製品にかかわる事故です。これは社会に向けた大きな責任ですから、念入りに具体的な予防対策を詰めていきました。  経営者は、腹をくくって決断したら方向性を示し、会社を運営していくための仕組みづくりまでは責任を持って、一緒に考えていくべきだと考えています。そして大きな決断を成功に導くための担保が、緻密(ちみつ)な準備です。理念や精神的な支柱と相まって、計画的に進めていきました。この二つの両輪がうまくかみ合ったのだと改めて実感しています。  現場では初めて採用した従業員6人をマンツーマンで指導しながら、具体的にどのポジションでどの作業をするかを考えていきました。どの人にどんな作業上のリスクがあるかは、現場にいる人でないとわかりません。一つひとつのリスクを「こういうやり方・手順なら問題ない」というふうに解決していきました。最初はルールを守り、安心安全を第一にしたスロースタートでした。  以前は障害のない方々が作業に入っていた現場であり、「暗黙の了解」も随所にありました。それらをなくすべく「だれでもわかる」手順書や掲示物を作成し直しました。また経営理念を基に、ルールを明確にした「ハウスルール」(※3)を作成しました。あるべき姿、目ざすべき形を明らかにすることで教え方が統一され、指導者側も混乱せずに進めていけたと思います。  また、彼らには「時間はかかるけれども、覚えたことはきっちりやる」という素晴らしい個性がありましたね。指導員が一人ひとりのよいところを顕在化させるために、時間をかけてアプローチしていったと思います。毎日少しずつ成長し、その実感を持つことでモチベーションが上がり、気がつけば目標を達成していたのです。スモールサクセスを積み重ねること、「やればできる」という経験がとても大事なのだと思います。  もちろん現場の試行錯誤も少なくなかったようでした。ストレス対処や表現が苦手な人もいますから、面談を重ねてその気持ちを「できる」へとつなげるサポートをしました。容易ではありませんが、それは指導員たちのやりがいにもなったようです。 労災無事故900日超、クレームも激減 ――ハートフルでは労災無事故900日を超えているそうですね。 渡邊 徹底した予防と細やかな指導を続けた結果、ハートフルでは、労災無事故900日超を更新中です。これは本当に素晴らしい記録です。しかも不安が払しょくされたばかりか、餃子の味がおいしくなったんですよ。「餃子の具にキャベツの芯が混じっている」というお客さまからのクレームが激減しました。それまでの担当者もしっかりやっていたとは思いますが、同じ作業をくり返していると、たまにぶれるんですね。でもハートフルの彼らは、ずっとぶれずに芯を取り除いてくれているのです。  労災無事故900日を祝って焼肉パーティーを開催したとき、従業員のみんなが私にネクタイを贈ってくれました。本当にうれしかった。給料で「親に財布を買ってあげた」、「家族で旅行に行った」という話も聞かせてくれて、頼もしく感じました。最近は「ほかの作業もやらせてください」、「リーダーになりたいです」と手を挙げる従業員もいます。実際に彼らのうち1人は、2019年6月に「チームリーダー」という役職に就きました。従業員たちの目標にもなるでしょう。「こうなりたい」と思えることが大事です。 ――ハートフルの従業員の成長ぶりがわかりますね。 渡邊 私は日ごろから「人の成長こそが会社にとって命だ」と伝えています。社員の成長のために会社としてどこまで投資していくのか、力を入れていくのか、覚悟を決める必要も出てきます。先を見て中期的な戦略として必要なことに取り組んでいけば、結果はついてきます。全従業員の成長こそが、会社の付加価値の幅につながるのだと実感しています。  実際に「餃子の王将」では、従業員の満足度が高い地域ほど業績が上がっていました。外部機関の調査で、従業員に「働くうえで一番満足していることは何か」について聞くと、「お客さまに褒められたとき」、「自分の成長を実感したとき」が多かった。23エリアに分けて前回調査と並べたところ、見事に業績アップとの相関関係が明らかになりました。私は、同じことがハートフルでも起こっていると思っています。 ――今後の課題や展望について、お聞かせください。 渡邊 人が一生働くなかで、さまざまなライフイベントがあります。よいことであればみんなで喜び拍手を送ります。問題は、悪いことがあったときです。どのように寄り添いサポートするのか、ハートフルはまだ3年弱と経験不足ですが、日々ていねいに取り組んでいくことを心がけています。  いま働いている従業員とともに10年、20年後を迎えたい。そのときに抱える悩みも支えられるように「何が必要なのか」を話す機会も増えました。例えば、組織の拡大にともなう規則の整備や福利厚生などです。現場でも「あったらいいな」、「こんなことがしたい」というふうに活発に意見を出し合っていってもらいたいですね。 障害者雇用は人材の掘り起こし ――これまでをふり返り、障害者雇用と企業のあり方についてどのように思われますか。 渡邊 私たちはハートフルを運営しながら、障害者雇用の本来の意味を実感してきました。たしかにきっかけは法定雇用率達成なのですが、あらためて法定雇用率というのは目的ではなく一つの副産物なのだと。潜在的に眠っている、社会貢献できる力を見つけ出し、安心・安全・健康を前提に、企業の生産性向上に活かしていくべきです。  日本の社会では少子高齢化による労働力不足で、海外から人を呼ばないと成り立たないと盛んにいわれていますが、本当にそうなのかなと思います。人をどうとらえるか視点を変え、視野を広げて個性に置き換え、「適材適所」で考えれば、まだまだ活かせる労働力が眠っています。一定の努力や工夫は必要ですが、その総和はたいへんな戦力になるのではないでしょうか。1社でも2社でも積極的に取り組む経営者が出てくれば、少しずつ社会全体の生産性も上がっていくでしょう。結果として「働く幸せな人」が増えることが、なにより素晴らしいことだと思っています。 ※1 王将大学:店舗のマネジメント力を向上させる社内教育機関 ※2 王将調理道場:調理技術や「王将の技」などを学ぶ社内教育機関 ※3 ハウスルール:特定の組織、団体などでのみ適用されるルールのこと 写真のキャプション 工場でのキャベツの加工作業(写真提供:王将ハートフル) 焼肉パーティーで渡邊社長を囲むハートフルのみなさん(写真提供:王将ハートフル) 【P6-11】 職場ルポ 「自分に合わせた働き方」ができる職場に ―九州地理情報株式会社(福岡県)― 30年前に第三セクター方式により設立された、重度障害者多数雇用企業。 時代の流れに合わせながら事業や採用を拡大し、職場環境の改善にも取り組んできた。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 九州地理情報株式会社 〒813-0025 福岡県福岡市東区青葉2-30-1 TEL 092-663-2111 FAX 092-663-2115 Keyword:身体障害、聴覚障害、精神障害、発達障害、重度障害者多数雇用企業、第三セクター POINT 1 平屋建てのオープンスペースに多様な工夫と配慮 2 だれの指示を受け、だれに相談するのか、「連絡体制」を明確に 3 日誌や面談をベースに、一人ひとりに合わせた働き方をうながす 第三セクター方式による重度障害者多数雇用企業  JR博多駅から25分ほど乗り継いだJR舞松原(まいまつばら)駅の周辺に広がるベッドタウン。建ち並ぶ一戸建住宅のなかに、「株式会社ワールドホールディングスグループ」(以下、「ワールドHD」)の特例子会社「九州地理情報株式会社」の平屋建て社屋がある。  九州地理情報は1990(平成2)年、福岡県内で初めての第三セクター(※1)方式による重度障害者多数雇用企業として設立された。出資元には福岡県や福岡市のほか九州電力、西日本銀行(現・西日本シティ銀行)、福岡銀行、西部ガス、NTT西日本といった大企業が名をつらねた。経営母体は地元の総合建設コンサルタント会社だったが、2008年に人材教育事業や不動産事業、情報通信事業などを手がけるワールドHDへと移った。  5年前から九州地理情報の代表取締役社長を務め、ワールドHDの経営政策本部長でもある三舛(みます)善彦(よしひこ)さんは、西日本シティ銀行からの転籍組だ。行員時代から九州地理情報とかかわってきたという。  「ワールドHDの伊井田(いいだ)栄吉(えいきち)代表取締役会長兼社長は、より多くの人々に生活を営むための環境と多様な働く場所を提供し『人が活きるカタチ』を創造する、との社会的使命を掲げています。これは九州地理情報のシンボルマーク『WITH』が象徴するように、『より多くの障害者が健常者とともに同じように働ける職場をつくる』との経営理念にも通じるということで、スムーズに引き継がれました」  設立時に11人だった障害のある社員は30年間で5倍の55人になり、全社員(89人)の6割を占める(2019〈令和元〉年10月1日現在)。55人の内訳は身体障害23人(肢体不自由10人、聴覚障害9人、内部障害3人、言語障害1人)、知的障害4人、精神障害28人(うち発達障害14人)。総務部と営業課を除く2部5課に、それぞれ障害のある社員が3〜22人配属されていることから、障害者職業生活相談員16人、企業在籍型ジョブコーチ4人がいて各課に配属されている。  ワールドHDの傘下に入ってからはグループ会社の規模に応じて社員数も増え、時代の流れに沿って精神障害のある社員の割合も高くなった。業務内容も、もともとの地理情報システム事業だけでなく、ワールドHDグループをサポートする幅広い事業が加わった。総務部長を務め、障害者職業生活相談員のM口(はまぐち)茂春(しげはる)さんが説明する。  「例えば、ワールドHDの人材派遣事業で大量に扱う契約書などの電子化、グループ社内の基幹システムの構築支援から運用保守、パソコンのキッティング(※2)などです。業務の間口が広がることで、採用時のスキル条件もゆるやかになりました」  採用は主にハローワークを通して行っている。一般常識と作文の筆記試験、適性検査、タイピングテストも行うが、重要視しているのは1次と2次の面接だそうだ。  「1次面接では一人あたり1時間ほどかけます。いろんな話をしながら、みんなと一緒に働いていけそうな方であるかを見ます。通常の入社面接と同様ですね」  面接を通過したら、トライアル雇用期間(3〜6カ月)を経て9割ほどが採用され正社員になっている。 ハード・ソフト両面で職場改善  さっそく職場を見学させてもらった。広いワンフロアにすべての課があり、端から端まで見通せる解放的な空間だ。案内をしてくれた総務課長で、企業在籍型ジョブコーチの下村(しもむら)和史(かずふみ)さんは、「社員の声を拾いながら、ハードとソフトの両面から職場環境の改善を進めてきました」と話す。ここ数年は、大幅に増えた精神障害や発達障害のある社員たちが働きやすいよう工夫を重ねたそうだ。  その一つが休憩場所。空いていた裏庭を整備してウッドデッキをつくり、ベンチやパラソルつきのテーブルなどを配置した。背景には緑が広がっており、気分をリフレッシュできると好評だ。社内の休憩室には、一つひとつ独立したテーブルとイスを置いて「おひとりさまスペース」を追加した。  「以前から休憩時間になるとトイレの個室が満室になるなど『一人になる空間』を望む社員が少なくないことに気づき、他社の事例も参考につくりました」  また業務の進め方の工夫として、資料の取扱いの際の混乱を防ぐため、仕分けボックスやラベル、インデックス、書式別の紙などを、パッと見てわかりやすいよう“色分け”している。あいまいな表現を極力なくした指示書や、イラストなどでわかりやすく説明した手順書、作業ごとに完結した箇条書きのチェックシートなどもつくった。  聴覚障害のある社員のための職場環境も、ソフトウェアの発達とともに充実してきたそうだ。筆談用の電子メモパッドをはじめ、朝礼などで使われる自動の音声変換入力、チーム内の連絡確認向けのチャットツールの活用が習慣化している。下村さんは、「ツールを駆使することで、手話ができなくてもコミュニケーションに困ることがほとんどなくなってきていると感じます。特に音声変換ツールは、会議や打合せで非常に役立っています。以前は用意したレジュメ以上の内容を、その場で把握するのはむずかしいようでしたが、いまでは話合いにも参加できるようになっています」と説明する。  フロアには、非常時を光の点滅で知らせるフラッシュライトを完備。さらに大型モニターが3台設置され、拡大文字や映像で社内用のお知らせを流している。「明日は一斉清掃日です」、「今日は○○社からの来客があります」など、忘れがちな情報も目につきやすく全社員に役立っているそうだ。  聴覚障害のある社員に話を聞いてみた。宮副(みやぞえ)由佳(ゆか)さん(25歳)は、大学卒業を前にハローワークを通じて2016年に入社。所属するシステムソリューション部システム運用1課では、データ入力などのパソコン業務を任されている。職場の工夫については「少しでも情報があった方が、こちらとしても助かります」という。九州地理情報での仕事もふり返ってもらった。「この会社では、さまざまな障害のある人とかかわることができますし、年齢の幅が広いので、人生の先輩ともいえる人たちと仕事ができます。私も助けてもらうばかりではなく、『できることはないですか』と、こちらから聞くようにしています」  ITクリエイト部ビジネスサポート課のデスクでパソコン操作をしていた車いすユーザーの沖(おき)里緒奈(りおな)さん(25歳)は、高校卒業後の2012年に入社した。通勤はバスと電車とバスを乗り継ぐため2時間近くかかるが「会社に行くのが毎日楽しいので、苦ではないです」と笑顔を見せる。通勤ラッシュと逆方向なのが幸いで、バスの運転手さんや電車の車掌さんとも顔なじみだそうだ。  仕事は、イラストレーター(※3)を使った名刺作成や地図作成、電子化された契約書の検査作業などを担当。最近は社内報に載せるイラストも任されるようになり、デザインの勉強もしているという。  「職場では、周囲の人たちがごく自然に、私のできないことをサポートしてくれるのがありがたいです。会社での一番の楽しみは、昼休みに仲よしの同僚と一緒に、お弁当を食べておしゃべりする時間です」  もう一人、車いすを利用する男性社員に話を聞いた。野中(のなか)鉄平(てっぺい)さん(41歳)は2010年、中途採用で入社した。もともと自衛隊員だった野中さんは、20年ほど前に交通事故で頚椎(けいつい)損傷の後遺症を負い、車いすユーザーとなったという。4年にわたるリハビリを経て福岡の実家に戻り、その後、地元の大手量販店の売り場案内係として5年ほど働いたが体調を崩し退職。次の仕事を探していたとき、九州地理情報が福岡県から委託されて行っていた、障害者向けの職業訓練に参加した。  「10カ月間の研修で、ビジネスマナーからワード・エクセルなどのパソコンスキル、業務上の応用技術までみっちり学べました」  システム運用2課で地図の編集作業などにたずさわっている野中さんは、「いまの職場は一人ひとりの状況に合わせた仕事の割りふりをしてもらえるため、とても働きやすい」と話す。野中さんは体温調節が困難なため、デスクまわりに小型の送風機を置いたりエアコンの調節をお願いしたりしているそうだ。今後の抱負について聞くと「ソフトウェアの進歩に立ち遅れないよう、しっかりついていきたいですね。体力の続くかぎり、働きたいと思います」と意欲的に語ってくれた。 明確な連絡体制、日誌と面談  仲(なかた)勝治(かつはる)さんが課長を務めるビジネスサポート課の業務は、グループ企業の契約書類などの電子化や、それにともなう各種確認など多岐にわたっている。課員25人のうち障害のある社員が22人(身体障害6人、知的障害2人、精神障害14人)と、障害のある社員が社内で最も多くいる部署だ。  「それぞれの性格や特性、技術レベルに合わせた『適材適所』を基本にしています。実際に業務を進めていく際は『ライン体制(連絡体制)』をしっかり機能させることを大事にしています。業務内容によって、だれとチームを組み、だれの指示を受け、困ったときにはだれに相談するのかを明確にしています。社員が『だれの指示を聞けばよいのか』と混乱するのを避けるためですね。3人がリーダーで、障害のある社員からサブリーダーを選出しています」  また、職場全体として気を遣っているのは配席だそうだ。  「人の動きが気になる人はなるべく奥の席に、音に敏感な人はなるべく静かな席で、さらに耳栓をつけてもいいことにしています。基本的には全員の顔がわかるように、オープンスペースを維持しながらできる範囲で配慮をしています」  そして、これまでをふり返り、対応に苦慮しながらも乗り越えた社員のケースについても話してくれた。  反復性うつ病性障害で転職をくり返していたという男性は、九州地理情報のトライアル雇用を無事に終えたものの、正社員になった途端に出社できなくなってしまったという。そこで3カ月間休職をしてもらい、紹介元のハローワークや就労支援機関、家族らのバックアップを得ながら1カ月間の療養後、ハローワークのリワーク支援を2カ月間受けてもらって徐々に出勤でるようになった。  「本人によると、仕事が嫌いなのではなく、仕事の仕方や生活リズムの取り方がうまくコントロールできなかったようでした。ハローワークの担当者だった精神保健福祉士の方の支援で、自分について知り、どういう行動をとれば働きやすくなるのかを学び『精神的にすっきりできた』と話していました」  復職後は6時間勤務から始め、これまで2年間ほぼ休まず通勤している。様子を見ながらフルタイムの8時間勤務に挑戦するつもりだそうだ。  「継続勤務が可能となったのは、彼が『自分に合わせた働き方』を見つけたことが大きかったと思います。これは障害に関係なく、だれにでも当てはまることですよね。どの社員にも、自分なりの働き方のペースを見つけるように伝えています。また、職場の配慮が必要であれば、可能なかぎり対応しています。会社側にバックアップのための理解があることも大きいですね」  また仲田さんは、日ごろから極力一人ひとりの話を聞くことを心がけている。コミュニケーションが苦手な社員から出てくる数少ない言葉を、こちらが勘違いして受け止めてしまうこともあるからだ。  「例えば『体調が悪い』といってきたら、具体的な症状はもちろん、昨日は何時に寝たのか、根掘り葉掘り聞いていくと、原因が別にあることもあります。毎日だれかと面談していますね。内容そのものを理解できなくても、すっきりしてくれる社員もいます」  もう一つ大きな役割を果たしているのが日誌だという。仲田さんは「交換日記のような感じでざっくばらんに書いてもらっています。文面や量を見るだけでも体調の変化が見てとれます」 1年で主任にキャリアアップ  大人になって発達障害の診断を受け、九州地理情報に転職した後、仕事の能力をいかんなく発揮している社員もいる。2017年に中途採用で入社した箱田(はこた)康輔(こうすけ)さん(40歳)は、もともと東京でIT関連の会社に一般雇用枠で勤めていた。ユーザーとのヒアリングから設計、インフラ構築、納品までを手がけるなど仕事は問題なくこなしていたが「勤務時間中に、やたらと眠くなる」のが悩みだったそうだ。会議中に話しながらガクッと寝落ちすることもあったという。休職し地元の福岡に戻って病院に行ったところ、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された。  「ふり返ると、極端な『先延ばしの癖』があったのも特性の一つだとわかりました。好きなことはぶっちぎりでやり通すのですが、好きじゃないことはどうしても手をつけられませんでした」  薬を服用しながら体調を回復させ、障害者手帳を取得して九州地理情報に入社。システムサポート課で、グループ会社からのITに関する問合せなどに対応している。薬の服用により睡眠障害が改善し、急な眠気もなくなったことで、以前は避けていた業務にも意欲的に取り組めるようになった。  「診断を受けたとき、自分の特性を知り、何が苦手で、どう対処すべきかなどを客観的に確認できたことが、よかったと思います。『自分が先送りしたがる癖は、こういうことだったのか』と納得したことで、日ごろの自分の行動や仕事との向き合い方も意識的に変えていけるようになりました」  箱田さんは入社から1年で主任に昇格した。社内には障害のある社員のなかに課長2人、主任5人、作業リーダー6人がいる。 テレワークのモデル事業も  三舛さんは社長として、一般企業と同じように利益追求につながる事業拡大に注力してきた。それが障害者の雇用拡大につながる一番の近道だからだ。  「もともと第三セクター方式のよさを活かして、自治体や出資企業からの仕事を請け負ってきましたが、出資した各企業でも障害者雇用を進めていたため、業務内容が被(かぶ)り、請け負う仕事が減ってしまうケースが出てきました。一方で、ワールドHDには数多くの関連会社があるため、『グループ内でのシステム運用保守』といった新たな業務をつくり出すことができています。いまでは『システム構築』など複雑な業務についても、外部の専門職スタッフらとともに取り組むなど、業務の幅が広がりました。請け負う内容に見合うように仕事の質を高めながら、雇用拡大につなげていくつもりです」  今後も事業と採用の拡大を図っていくうえで、視野に入れているのはテレワークだ。福岡県が2018年度に設置した「テレワークによる障がい者雇用促進検討会議」でも、三舛さんは民間企業代表として委員を務めた。  「テレワークには“在宅型”や“サテライト型”などがありますが、私たちはこのテレワーク機能を活かして、障害者の多様な勤務形態を実現していけたらと思います。社員の高齢化なども見すえ、さまざまな働き方改革にもつなげていけるのではないかと考えています」  実際に今年度から在宅テレワークのモデル企業4社の一つに選出され、動き出しているところだという。これまでの実績や経験を活かした新たな取組みに、周囲の期待も集まっている。  三舛さんはいう。  「将来的には、地元のほかの大企業だけでなく、中小企業も含めて連携しながら進めていくこともできるかもしれません。いまも私たちの会社を参考にしたいという企業の方がいたら、ぜひ気軽に見にきてください。いつでも大歓迎です」 ※1 第三セクター:国や地方公共団体と民間が合同で出資・経営する企業 ※2 キッティング:OSのセットアップや必要なソフトのインストール、ネットワーク接続など、コンピューターを利用者がすぐに使える状態にする導入作業 ※3 イラストレーター:アドビシステムズ株式会社が開発・販売しているグラフィックデザインソフト 写真のキャプション 代表取締役社長の三舛善彦さん 総務部長で障害者職業生活相談員のM口茂春さん 社員の憩いの場となっているウッドデッキ 総務課長で企業在籍型ジョブコーチの下村和史さん 休憩室の窓辺に設けられた「おひとりさまスペース」 インデックスで整理された資料が収められた仕分けボックス 社内は段差のない、広々としたワンフロア。車いすユーザーもスムーズに移動しやすい システム運用1課でデータ入力などを担当する宮副由佳さん 沖 里緒奈さんはビジネスサポート課で、名刺作成などを担当している システム運用2課で地図の編集作業を行う野中鉄平さん ビジネスサポート課長の仲田勝治さん 面談を通して、しっかりとコミュニケーションをとる システムサポート課で主任を務める箱田康輔さん 【P12-14】 インフォメーション 事業主のみなさまへ 令和2年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ 〜常用労働者が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜 令和2年4月1日から5月15日の間に令和2年度分の申告と申請をお願いします。 前年度(平成31年4月から令和2年3月まで)の雇用障害者数をもとに、  ○ 障害者雇用納付金の申告を行ってください。  ○ 障害者の法定雇用率(2.2%)を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。  ○ 障害者の法定雇用率(2.2%)を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 【申告申請期間】 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者特例調整金 申告申請の対象となる期間 平成31年4月1日〜令和2年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和2年4月1日〜令和2年5月15日 (注1、注2) (注1) 障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できません。申請期限内の申請をお願いします。 (注2) 年度(平成31年4月〜令和2年3月)の中途で事業廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告と申請が必要です。この場合も申請期限を過ぎた調整金等の申請に対しては支給できません。 *詳しくは、最寄りの各都道府県支部 高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください(33ページ参照) JEED 都道府県支部 検索 常時雇用している労働者の総数が100人以下の場合は障害者雇用納付金の申告義務はありませんが、雇用障害者数が一定数を超えている場合は報奨金の支給申請をすることができます。詳しくは最寄りの都道府県支部にお問い合わせください。 申告申請の事務説明会にぜひご参加ください (全国各地で2〜3月に開催します。参加費は無料です) JEED 納付金 説明会 検索 特に短い時間でしか働くことができない障害者を雇用する事業主のみなさまへの新たな給付金のご案内  障害者を週20時間未満労働(下限は週10時間)で雇用する事業主に対する支援として、新たに「特例給付金」が支給されることになりました。令和2年度の雇用実績をもとにした令和3年4月からの申請となります。  詳しくは申告申請の事務説明会で紹介します。ぜひご参加ください。 障害者雇用の専門家が企業のみなさまを支援します 「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない 障害者の雇用にあたって    ・どのような配慮が必要かわからない    ・どのような設備改修が必要かわからない    ・特例子会社を設立したい       などの課題はありませんか? 障害者雇用に関し、労務管理、医療、建築など、さまざまな分野の専門家である「障害者雇用管理サポーター」が、企業のみなさまのご相談に応じ支援を行っています。 ご相談受付 障害者雇用管理サポーターによる支援をご希望の場合、次のどちらかの方法でご連絡ください。 ★中央障害者雇用情報センター(TEL:03-5638-2792 E-mail:syougai-soudan@jeed.or.jp)にご相談ください。障害者雇用支援ネットワークコーディネーターが障害者雇用管理サポーターと調整を行います。 ★障害者雇用管理サポーター検索サイト「障害者雇用支援人材ネットワークシステム」(http://shienjinzai.jeed.or.jp/)を通じて支援を受けたいサポーターを探すことができ、検索後、ご自身で直接連絡を行うことができます。 障害者雇用支援人材ネットワークシステム 検索 こちらのQRコードからもアクセスできます ※カメラで読み取ったリンク先が上記URLであることを確認のうえアクセスしてください 活用事例 車いす使用者が働きやすい職場環境の整備をサポート 電動車いす使用者を新規に採用するに当たって、どのような施設改修や配慮が必要となるのかアドバイスがほしい。 建築士の資格を持つサポーターが通勤手段と駐車場整備、工場内の移動の安全性の確保、自立使用ができるトイレの整備、介助負担の軽減方法、執務スペースの環境整備など、主に施設改修の観点から助言を行った。 視覚障害者の職場定着に向けた職場理解を支援 全盲の障害者を初めて雇用してから1カ月が経過したが、社内の移動などに関してどのように対応すればよいのか、支援方法などを教えてほしい。 サポーターが講師となり、職員向けの講義を実施。視覚障害に関する障害特性や配慮事項のほか、視覚障害者が安全に社内を移動できるように、周囲の者による支援の方法について説明を行った後、見本を見せながら受講者に移動の支援を体験してもらった。 <お問合せ>独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 TEL:043-297-9513 障害者職業総合センター 研究企画部 図書情報閲覧室からのお知らせ  図書情報閲覧室では、職業リハビリテーションに関する資料を中心に、医学、心理学、教育学、社会福祉学、社会学等の専門領域の図書、国内外の専門雑誌、DVD等を所蔵しています。 貸出しの多い図書をご紹介します。 貸出ベスト8(貸出期間:平成30年4月1日〜令和元年10月31日) 順位 タイトル 著 者 出版社発行年 1 詳説 障害者雇用促進法<増補補正版>新たな平等社会の実現に向けて 永野仁美/長谷川珠子/富永晃一 編著 弘文堂 2018 2 改訂版 障害者雇用の実務と就労支援「合理的配慮」のアプローチ 眞保智子 著 日本法令 2019 3 職業リハビリテーション学 キャリア発達と社会参加に向けた就労支援体系 改訂第2版 松為信雄/ 菊池恵美子 編集 協同医書出版社 2006 4 行動分析学入門 ヒトの行動の思いがけない理由 杉山尚子 著 集英社 2005 5 職業リハビリテーションの基礎と実践 障害のある人の就労支援のために 日本職業リハビリテーション学会 編集 中央法規出版 2012 6 はじめてまなぶ行動療法 三田村仰(たかし) 著 金剛出版 2017 6 発達障害のある高校生・大学生のための上手な体・手指の使い方 笹田哲 著 中央法規出版 2018 8 行動分析学 行動の科学的理解をめざして 坂上貴之/井上雅彦 著 有斐閣 2018 8 マンガでやさしくわかるアンガーマネジメント 戸田久実 著、葛城かえでシナリオ制作、柾(まさき)朱鷺(とき)作画 日本能率協会マネジメントセンター 2016 一般の方のご利用について ・ 閲覧は自由です。 ・ 図書の貸出しができます(貸出し・延長・返却は図書情報閲覧室のカウンターのみで受付)。 ・ 貸出冊数は5冊以内、期間は2週間以内です。 ・ 貸出しの際は、図書貸出カードの発行が必要です。 ・ 障害者職業総合センター1 階で受付をしてから、お越しください。 ※当機構のホームページから蔵書を検索することができます。  http://www.nivr.jeed.or.jp/books/booklibrary.html JEED 図書情報閲覧室 検索 所在地:〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 障害者職業総合センター7F 開室時間:月曜〜金曜 9:30〜17:00(貸出しは16:50まで) 休室日:土曜、日曜、祝祭日、年末年始、毎月の最終平日、その他(ホームページでご確認ください) 【P15-18】 グラビア HAPPYを届けたい 株式会社Dreams ポップコーンパパ 天保山店(大阪府) 取材先データ 株式会社Dreams 〒540-0005 大阪府大阪市中央区上町1-3-10 TEL 06-6761-4417 ポップコーンパパ 天保山(てんぽうざん)店 〒552-0022 大阪府大阪市港区海岸通1-1-10 天保山マーケットプレース3F TEL 06-6576-5739 写真:小山博孝・官野 貴/文:官野 貴  ポップコーンの製造・販売を行う「株式会社Dreams(ドゥリームズ)」が運営する「ポップコーンパパ」。「美味しいポップコーンでたくさんの笑顔とHAPPYを創りたい」という想いで、ポップコーン専門店第1号の「天保山店」が、1990(平成2)年にオープンした。大阪市にある水族館「海遊館」に隣接した商業施設「天保山マーケットプレース」の一角にあり、店内は多くの観光客で賑わっている。  一日に約800食分のポップコーンを製造する同店舗で働く沖田(おきた)悠樹(ゆうき)さん(23歳)には、発達障害がある。計算が苦手で忘れごとが多いため、仕事を一つひとつ区切ることで、失敗をなくすよう心がけているという。アルバイトを経て社員となった沖田さんは、「『つくる』ということが大好きなので、毎日が楽しい」と笑顔で話す。「障害に理解のある会社で、サポートもしてくれるので、働きやすいです。アルバイト中に障害があることを打ち明け、社員になりたいと社長に相談し、快諾してもらえた」と語ってくれた。  また、入社4年目の橋(たかはし)宏輔(こうすけ)さん(31歳)も、実習を経て社員になった一人だ。現在は、大阪市内の4店舗と倉庫の間を配送車で行き来し、材料などを運ぶルート配送を担当している。橋さんの配送がないと店舗は営業できなくなるほどの重要な役割だ。橋さんは、うつ病と広汎性発達障害があり、ストレスをためないよう無理をせず、健康管理に気をつけているという。「今後は、材料を運ぶだけではなく、材料の計量や混合など仕込みの分野でも活躍したい」と弾けるような笑顔で話してくれた。  ポップコーンパパUCW(ユニバーサル・シティウォーク)店(大阪市)の店長で、社内の人事も担当している中島(なかじま)一(はじめ)さんは、「障害者雇用のきっかけは、2013年に就労支援施設から実習を受け入れたことでした」と話す。当初は不安もあったが、整理・整頓・清掃の「3S活動」や、表示・標識に配慮し器具の配置や収納場所などを工夫した結果、障害のあるスタッフでも働きやすい職場となり、現在では社員・アルバイト55人のうち5人の障害者が活躍している。 写真のキャプション ポップコーンをつくる沖田さん。「ポッパー」という装置にコーンとオイルなどを入れ(上)、攪拌(かくはん)しながら加熱すると(中)、香ばしいポップコーンが次々と弾けてゆく(下) 「キャラメライザー」という装置で、さまざまなフレーバーに味つけする 「彼らには、自分のペースで一歩ずつ成長していってほしい」と話す中島一さん 袋に詰め、密封する。ポップコーンは湿気を嫌うため、スピーディーな作業が求められる ポップコーンの製造から販売までを担当する沖田さん。同社に欠かせない社員だ 材料を天保山店に運び込む橋さん。朝6時に出社し、各店舗へ材料を届ける 他店舗での販売用のポップコーンを配送車に積み、笑顔で出発 配送車には、「ありがとう。おいしいよ!!」など、子どもたちからのメッセージとイラストが描かれている 【P19】 エッセイ*【第1回】 発達障害とともに生きるということ ―親の接し方― 内閣府地域働き方改革支援チーム委員 (兼務 株式会社東レ経営研究所) 渥美由喜(あつみ なおき)  25年前からワークライフバランス(WLB:仕事と生活の調和)に着目した、ダイバーシティ、WLB分野の第一人者。これまでに海外10 数カ国を含む、国内のダイバーシティ・WLB 先進企業1050社、海外の150社を延べ4000回、訪問ヒアリングし、約1万社の企業データを分析。  また、コンサルタントとして、実際に1000 社以上の企業の取組推進をサポートする一方で、内閣府や厚生労働省などの官庁や自治体の委員を歴任。  私は、発達障害の一種である「アスペルガー症候群」と「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」。物心がついてから、ずっと生きづらさを感じてきた。自らの生存圏を確保するため、社会人になってから二十数年、ダイバーシティ(多様性・多面性に富む人たちが活躍できる社会、職場づくり)を研究してきた。1200社・延べ4000回企業を訪問ヒアリングし、数百社をコンサルティングしてきた。  少しは世に知られるようになったのは、ひとえにマイノリティ当事者であるがゆえの説得力のほかに、発達障害のある者ならではの強みがあるからと考えている。今回は、親が私にどのように接してきたかをふり返りながら、発達障害のある者をどのように社会で活かしていくか、私見を述べたい。 問題児だった私に親は……  幼少期から「多動」で、よく問題を起こしていた。2歳下の弟の方が先に話し始めたぐらい言葉が遅いくせに、1秒たりとてじっとしていられない。3歳の朝、広大な青空に魅入(みい)られて、地の果てを見てみたいと思いたち、三輪車で旅立った。十時間後に12q離れた交番で保護された私を迎えに来た母は「うちのバカ息子がご迷惑をおかけして、すみません。ほら、おまえもお巡りさんに謝りなさい」と平身低頭。  外では厳しかった母だが、家ではちょっと違った。「おまえがすぐに体が動いてしまうのは生きる力があふれているから。決して悪いことではない。大人になるまでに一つでいいから好きなことを見つけなさい。それを仕事にすれば生きていけるよ」と大らかだった。  いま思うと、うちの母自身も周囲の空気が読めないKYタイプだったが、とびきり陽気な人柄を磨いて、小売店の販売員だったとき、接客コンテストの全国大会で優勝したという。その経験から、「一つのことを極めれば、世の中を渡っていける」という価値観を持っていた。 宮大工棟梁一族に伝わる「口伝(くでん)の教え」  大工の棟梁(とうりょう)だった父は、私に「生まれてくる時代と場所が違ったら、おまえはコロンブスになれたのにな」と笑った。実は、わが家は千年続いた宮大工の家系。現存する厳島(いつくしま)神社を鎌倉時代に再建した棟梁が先祖というのが最大の自慢だ。その末裔(まつえい)として、よく小さなトンカチで遊んでいたが、あまりに不器用で、いつも親指を青紫色に腫らしていた。見かねた父は、「おまえは別の道を歩め」と宣告。千年続いた家系を閉ざした“不逸材”ぶりだった。  わが家に伝わる口伝の教えの一つが、「よい社(やしろ)を建てるには山まるごと使え」。素人は南向き斜面ですくすく育った、見映えのよい木ばかりを使いたがる。しかし、日当たりが悪い北向き斜面で育ち、一見すると貧相な木こそ、実はぎゅっと年輪がつまっていて頑丈。「瀬戸内の荒波に立つ鳥居の土台には、そういう木が不可欠だ」と教わった。  父からは、「器用貧乏になるな。何でも平均以上にできる奴なんて使い物にならない」、「おまえの強みを磨け」、「中途半端にはみ出るから叩かれる、もっと突き抜けろ」、「人より抜きんでた専門家集団がいい建造物をつくる」といわれて育った。  職人さんのなかには、私と同じように発達障害の傾向がある人は少なくなかった。猪突猛進(ちょとつもうしん)に一芸を究める性向は職人に向いているからだ。棟梁である父は「あいつのカンナがけは天下一品」など、いつも褒(ほ)めていた。 ダイバーシティは、「適材適所」  私が研究するダイバーシティに関して、時折、「輸入された概念だから、同質化圧力の強い日本には馴染(なじ)まない」という人がいる。冗談じゃない。世界有数の木造建築物を建造した、選(よ)りすぐりのプロ集団がいちばん大切にしてきたのが「ダイバーシティ 適材適所」の考え方だ。「あらゆるタイプの木を適材適所で活かす」棟梁の知恵は、日本の社会にこそ必要であり馴染むと思う。 【P20-25】 編集委員が行く 多様な人材活用力はダイソーの強み 〜未来進行形で障害者スタッフの力を引き出していきたい〜 株式会社大創産業、株式会社ダイソーウイング(広島県) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 取材先データ 株式会社大創産業 株式会社ダイソーウイング 〒739-8501 広島県東広島市西条吉行(さいじょうよしゆき)東1-4-14 TEL 082-420-0100(代表) 編集委員から  いまや私たちの生活になくてはならないインフラである100円ショップ「ダイソー」は、障害のあるスタッフたちが、全国の拠点や店舗などで支えてくれている。笑顔と感謝の言葉が飛び交う職場で活躍するたくさんの障害者スタッフ、そして一緒に働く現場スタッフ、それを支える本社スタッフのがんばりをレポートしたい。 写真:官野 貴 Keyword:小売業、障害理解、知的障害、身体障害、精神障害、特例子会社 POINT 1 障害のあるスタッフが活躍できるよう働きやすい環境を整え、受入れ基準を見直す 2 生活や体調面のフォローは外部の支援機関を活用し、定着につなげる 3 多様な人材を柔軟に受け入れ、強みを活かして仕事を任せる 「お客さまとスタッフに喜んでもらえるのがうれしい」  広島県東広島市に本社を置く株式会社大創産業。「ダイソー」のブランドで展開する100円ショップは、国内に3367店舗、海外28の国と地域に2175店舗(2019〈平成31〉年3月現在)にものぼる。  ダイソーの「博多バスターミナル店」で働く西脇(にしわき)真司(しんじ)さん、永井よしこさんには知的障害がある。2人は入社して1年7カ月あまり。商品の品出し(陳列業務)を中心に忙しく働いている。商品回転率の高い食品関係の商品の品出しをすることが多いそうだが、実に手際がよい。  店内で作業をしていると、「あの商品はどこ?」とお客さまにたずねられることもあり、フロアの案内もできるようになったそう。「喜んでもらえるのでうれしい」という西脇さん。1000坪を超える広い店内で、7万アイテムにものぼる商品の場所を覚えるのはたいへんだったが、「がんばって覚えた」そうで、笑顔が印象的だ。  永井さんは入社以来毎日、業務日誌をつけている。スタッフの薦野(こもの)美香(みか)さんが業務日誌を確認し、コメントしたり、直接声をかけたりしている。  「一生懸命に仕事をして くれて頼もしいです。毎日のがんばりをしっかり確認すること、困っていることに気づいてあげることが私の仕事かな。業務日誌を見るのも楽しみの一つになっています」という薦野さん。  西脇さん、永井さんをはじめとして、全国のダイソー店舗で働く障害のあるスタッフは195人(2019〈令和元〉年11月現在)。身体障害37人、知的障害114人、精神障害・発達障害44人が活躍している。店舗という変化の激しい環境で、いかに障害のある人が働きやすく、生産性をあげられる仕組みをつくれるか、ということが課題だそう。今後は大型店を中心に、障害のあるスタッフを3〜5人のチームで採用し、これまで以上に多くの障害のあるスタッフを採用していく方法を検討中とのことである。 物流センターでも障害のあるスタッフが活躍  2019年6月から、中国・四国エリアの店舗へ商品供給を行う物流センター「広島RDC」では、新しい取組みがスタートしている。これまで広島RDCで受け入れてきた障害のあるスタッフは、「一般のスタッフと同様の仕事ができること」が条件であったが、その方針を見直した。職域をある程度限定したうえで、生産性を向上していくやり方に変えた。まず、「自動倉庫」と呼ばれる部門で2人の障害のあるスタッフを受け入れた。指導担当のスタッフが、一人ひとりの特性を理解して指導にあたっている。写真入りのマニュアルも障害特性に合わせて用意した。指導担当の横山(よこやま)恵美子(えみこ)さんは「最初は不安でいっぱいだった」と当時をふり返る。  「いまも『あれれ?』と思うこともあるけれど、そのことも楽しめる余裕が出てきた」と語る。  北海道内の店舗への商品供給を行う物流センター「北海道RDC」では、現在7人の障害のあるスタッフが就業中であるが、「広島RDC」と同様の方法に見直し中だ。これまで以上に働きやすい環境を整え、2019年から2020年にかけて10人を超える障害のあるスタッフを採用予定である。 働きやすい環境を広島本社でも  「配慮された環境と得意な仕事で会社に貢献してもらえるように」と、本社でも2019年6月より新しい取組みがスタートしている。全国の店舗の契約書類の電子化作業、郵便物の仕分け作業、商品サンプルの開梱作業などの仕事を、3人の精神・発達障害のあるスタッフと、1人の身体障害のあるスタッフで行っている。  障害のあるスタッフの体調管理や指導を担当するのは、人事・総務本部人事部人事・採用課の宮川美由紀さん。  「総務の仕事で入社したのに、『障害のある人のマネジメントをやってください』といわれて正直戸惑いました。でも、仕事はとても正確で、きちんと報連相≠烽オてもらえる。彼らのやる気と日々の成長に触れられて、とてもやりがいを感じています」と話す。  「彼らの仕事ぶりを見ているとこれまでの精神・発達障害者雇用のイメージを大きく変えられる」と話すのは、常務取締役で人事・総務本部長の小川(おがわ)金也(きんや)さん。  「一期生」として受け入れた障害者スタッフの仕事が社内で評価され、仕事はどんどん広がっているとのことである。今後も積極的に採用を進め、広島本社で30人くらいの規模にまで増やしていく予定だ。 全国の店舗へ送る資材発送も担当  「株式会社ダイソーウイング」は、大創産業の特例子会社である。大創産業常務取締役の小川さんが、代表取締役も務めている。  ダイソーウイングの本社は、大創産業本社と道路を挟んだ場所にある。全国の店舗で使う包装資材、伝票類のピッキングと配送を、26人の障害のあるスタッフたちが担当している。「終わりました!」、「失礼します!」、「ありがとうございます!」と、活気のある言葉が飛び交う職場だ。  大創産業のモットーである「感謝」の言葉を書いたカードも手づくりで、包装資材などの発送時に荷物に同梱するのだそう。  店舗スタッフからは「感謝のカードが入っていることで、お客さまや仲間に対する感謝の気持ちを思い出す」と喜ばれている。 障害者雇用の考え方と方法  7年前から障害者雇用を担当する人事・総務本部人事部人事・採用課主任の泉(いずみ)敏夫(としお)さんに話を聞いた。  最初に取り組んだのは、全国で求人を出すことだったという。そして応募があったら、全国のどこにでも現地に足を運び、面接を行って採用を進めた。「ダイソーでは仕事の種類が豊富なので、やってもらう仕事には困らなかった」そうだ。  「ダイソーのスタッフはみんな人が好きですし、協力し合っていけばうまくいくと思い採用していったんです」  仕事自体は問題なかったが、それだけではうまくいかなかった。障害のある人が働き続けるには、生活基盤や体調の安定なども大きく影響していることを知らされる。  入社した障害のあるスタッフ本人からの相談も多く舞い込んだ。現場のスタッフからもさまざまなSOSがあったそうだ。  「プライベートな部分は企業がなかなか立ち入っていけない部分だった。残念ながら早期離職となった障害者スタッフもいました」と話す。  泉さんが、障害者就業・生活支援センターや、就労移行支援事業所といった支援機関の存在を知るのは、障害者雇用を担当して2年目だったそう。  「当社にかぎらず、社内に障害者雇用の経験者など、まずいませんよね。悩んでもどうすればいいか教えてもらえないんです。支援機関という存在があることを知っていたら、障害のある方も自分たちも、あんなに苦労しなかったかな。これから障害者雇用を始めようという企業の方は、まず支援機関と連携したほうがいいと思います」とアドバイスをしてくれた。  泉さん自身も勉強した。障害者職業生活相談員、企業在籍型職場適応援助者の講習も受けた。  現在の大創産業の採用の手順は次の通りだ。@障害のある求職者が活躍してもらえそうな仕事を切り出す。A切り出した仕事をベースに周囲の支援機関や特別支援学校などに働きかけ、実習に参加してもらう。B店長やリーダーの意見も尊重する。そのうえで面接をする。  また入社前には、本人や支援機関から障害の特性を聞き取り、配慮すべきことも周囲と共有する。マニュアル類も積極的に準備している。大創産業で働きたいという意欲は、これまで同様に絶対条件。そのうえで、自身の障害について理解できている人。勤怠の安定している人。必要な配慮が自分で発信できる人。周囲と協力して仕事をすることができる人、というのが採用の基準だ。  「当初の失敗が糧になって、いろんなやり方を試してこの方法に至りました。採用の手順を変えていってから、定着率が向上し、手ごたえを感じています」という泉さん。  今年から強力なメンバーが加わった。人事・総務本部人事部人事・採用課で課長を務める平(ひら)佑作(ゆうさく)さんだ。  「マニュアルも体調管理の仕組みづくりも、障害のある人のためだけではないですね。障害のある人が、安全で働きやすく、力を発揮してもらえる環境をつくるのは、すべての人にとっても、そのような職場となるきっかけになると実感しています」と平さんはいう。  「障害者雇用を単なるコンプライアンス課題にするのはもったいないです。現場に頭を下げて引き受けてもらうというのも違います。いろんな部門を巻き込んで、かかわる人達がすべてメリットを享受できる必要があります。そのことが継続性や再現性を高めていきます」との考えを持つ。  先進的に障害者雇用に取り組む企業の視察に行くときには、現場の責任者にも同行を働きかけている。 多様な労働力を活かす  「もともと当社は、パートやアルバイトなど、正社員でないスタッフ(パート社員)たちが会社を支えてくれています。なかにはパート社員の方が、店長や物流のリーダーとして数多く活躍しているんです。フルタイムではない働き方を希望する女性、高齢者、外国人など、多様な人材がいます。体力や労働時間、コミュニケーションなどにおいて、何らかの配慮が必要な人材たちです。そんな多様な人材を柔軟な発想で受け入れ、彼らが得意なことに着目して重要な仕事をどんどんやってもらっています。彼らのがんばりによって会社は成長してきたとさえいえます。本当に感謝です」と、小川さん。  それを裏づけるこんな出来事もあった。広島RDCでシステムトラブルが起きた際、「どんなに遅くなっても絶対に商品を出荷する。そうでないとお店が困る」と、トラブル対応の最前線でスタッフの指揮をしていたのは、パート社員のリーダーだったという。  小川さんのいう通り、「信じて任せる」ことでスタッフたちが主体的に仕事に取り組んでいる姿を目の当たりにしたエピソードだと感じた。  さらに小川さんは続ける。  「障害に対する配慮や環境づくりはしっかりしなければなりませんし、いままで以上に会社全体で進めていきます。でも特別扱いはしたくない。戦力と期待して任せていきたい。一緒に働く仲間として受け入れて、お客さまのために精一杯仕事に取り組んでもらう。それこそがダイソーのやり方です」  「採用にかかわった障害者スタッフに久しぶりに会うと、とてもいい表情で働いてくれている。一緒に働いているスタッフたちも『助かっている』といってくれるのがうれしい」と泉さんは語る。  「障害者雇用は労働力の確保という観点でものすごく有望なテーマだと気づいた。やる気があって大創産業のことを好きでいてくれる労働力をしっかりと採用し、育てていきたい」と話す平さんに続き、「中期的には障害者のリーダーも輩出したい。安心して将来を託せるような障害者雇用を実現していくのが自分の役割だ」と小川さんはいう。  会社の成長に比例して、障害のあるスタッフたちがあらゆる拠点にさらに活躍していくことが期待される。ダイソーの店舗に行く楽しみがもうひとつ増えた。 写真のキャプション 商品の品出しをする西脇真司さん 業務日誌の記入をしている永井よしこさん 薦野美香さんは、博多バスターミナル店で障害のあるスタッフのサポートをしている 中国・四国エリアの商品提供をになう「広島RDC」 商品の積まれたパレットが、台車で運ばれてくる「自動倉庫」 自動倉庫で使用される写真入りのマニュアル スタッフの指導にあたる横山恵美子さん(右) 本社の一角では、障害のあるスタッフ4人が働いている 宮川美由紀さんは、本社で障害のあるスタッフのサポートをしている 書類の電子化作業を行う本田(ほんだ)香菜(かな)さん 常務取締役で人事・総務本部長の小川金也さん 各店舗へ発送される荷物に同封される手づくりのカード 人事・採用課で課長を務める平佑作さん 人事・採用課主任の泉敏夫さん 【P26-27】 NOTE Vol.2 難病のある人と就労 消化器系の代表的な難病について  前回に続き河津博美さんの監修のもと、難病のある人が就労するために必要な、難病への理解と配慮すべき点について紹介していきます。第2回目の今回は、消化器系の代表的な難病であり、就労世代に多い難病として「潰かい瘍よう性せい大腸炎」と「クローン病」についてまとめました。 消化器系の代表的な二つの難病  「潰瘍性大腸炎」は大腸の粘膜に、「クローン病」は小腸と大腸を中心として、消化管のどの部位にも慢性の炎症や潰瘍が起こりうる、原因不明の病気です。主に消化器機能に症状(腹痛や下痢、血便など)が出ます。これら二つの病気は、薬物治療などの継続により普段通りの生活を続けることができますが、一時的に症状が悪化する場合があります。特に「クローン病」では、入院を必要とする場合もあります。一般に病気を理由に仕事を制限することはありませんが、過労や過度のストレスで症状が悪化することもあるため、疲れを残さないよう注意が必要です。 二つの病気について就労の状況  難病のなかでも「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」は若年層での発症例が多いこともあり、就労している方も多い病気です。腹痛や下痢、血便などの症状で入院し診断されることが多く、それをきっかけに自主退職する方もいます。しかし実際は治療により症状は数カ月で安定するため、就労継続の支援が重要です。腸を切除し人工肛門にする場合や、通常の栄養摂取が困難になった場合は、障害認定される場合もありますが、最近では多くの場合、内科治療により症状を抑えることができます。寛解(かんかい)(※)状態にまで回復することもありますが、症状が変動しやすいこともあり、突然の腹痛などに対応できるように、トイレに行きやすいデスクワークや専門職を仕事として選ぶ方が多いようです。また、腸からの栄養吸収の不足を補い、腸の炎症を抑えるために、仕事中に栄養剤を飲むことがあります。食事も消化のよいメニューを選びます。そのほか、事業者による配慮(後述)があれば、病気のことをあまり意識せず、仕事に集中できるようです。 クローン病の方の就労事例  では、実際の就労状況はどうなのでしょうか。クローン病の方の就労した事例について、今回のテーマの監修者である河津博美さんにうかがいました。  「当センターで相談を受けた方のなかに、クローン病の30代の男性がいます。消化器系の難病の場合、力仕事よりデスクワークが適していますが、この男性は、病院内にあるデイサービスで介護士の仕事に就いています。介護の仕事ですので、高齢者の方の入浴の介助など、体力を使う仕事もあるようですが、業務をこなしているようです。病院には看護師さんがいますし、雇用主は院長先生になるので、病気に対し配慮が行き届いていると聞いています。体調が悪いときには休めて、定期受診日にもしっかりと休暇を取得することができます。この男性は、決まった時間に栄養剤を飲んでいますが、勤務時間中にも服薬しやすい環境だと聞いています。このように病気に対する理解のある職場だと、難病の方でも安心して働くことができます」  さらにもう一人、別のクローン病の方の就労事例についてもお話を聞きました。  「40代の女性、山田(やまだ)貴代加(きよか)さんは、10代で発症しました。体調が悪いなか、努力して学校を卒業し、看護学校に入学。国家資格を取り、卒業後は看護師になりました。しかし、自身の体調を考え『看護師は厳しい』と判断し、現在は病院で医療事務の補助の仕事をされています。山田さんの場合、看護師になるまで病院付属の看護学校に通っていたため、学校でも配慮を得られました。入院中は病棟で勉強ができたり、試験を受けられるなどの環境を、先生方が整えてくださったようで、国家資格を取ることができたそうです。その後は病院で働くことで、山田さんにとって、配慮を得やすい状況が整ったと思います。医療関係の学校や職場は、やはり理解されやすいように感じます」 事業者側が配慮すべき点や注意点  事業者側が配慮すべき点や注意点についてもお聞きしました。  「難病の方の仕事ぶりを見て、きっちり仕事ができると『もっとできるのでは?』と思ってしまうことがあります。そのため、事業所側は仕事を増やしてしまい、本人も期待に応えようと無意識のうちに無理を重ね、体調を崩してしまう場合があります。この点は、就労する本人の自覚と、事業者側の理解の両方が重要です」と河津さんは指摘します。  さらに日常的な注意点としては、消化器系の難病の方は頻繁にトイレに行く場合があるので、トイレに近い席にしたり、トイレに立つのが目立たない席や配置にするなどの配慮が必要です。また、ウォシュレットなどの設備が整っているとよいでしょう。このように、仕事量を一定以上は増やさないこと、職場における席の配置やトイレの整備など、配慮すべき点をクリアしていけば、消化器系の難病のある方もより働きやすく、業務に集中しやすい職場環境を整えることができます。それにより、難病のある方も社内研修への参加、資格取得へのチャレンジなど、キャリアアップの機会が広げられるようになります。 ※寛解:病気の症状が一時的あるいは永続的に軽減、または消失すること 図1 疾患別の現在就労している職種の具体例(疾患名別・手帳の有無別の中の割合 疾患名 現在、就労している職種の具体例(比較的多い職種) 潰瘍性大腸炎 手帳有 ・ 一般事務従事者(医療事務、電話応対事務処理)(40.0%) ・ 専門的・技術的職業従事者(看護師、安全衛生管理)(20.0%) ・ 様々な事務従事者(人材派遣業)(10.0%) ・ サービス職業従事者(訪問ヘルパー)(10.0%) ・ 保安職業従事者(夜間警備員)(10.0%) 手帳無 ・ 一般事務従事者(16.9%) ・ 様々な専門的・技術的職業従事者(弁護士、獣医等)(8.4%) ・ 分類不能の職業(4.5%) ・ 社会福祉専門職業従事者(保育士、社会福祉士)(3.9%) ・ 販売店員(3.9%) クローン病 手帳有 ・ 一般事務従事者(17.4%) ・ 様々な事務従事者(税務申告、内部監査サポート)(10.1%) ・ 情報処理・通信技術者(SE、ソフトウェア開発)(5.8%) ・ その他の専門的職業従事者(ジムトレーナー、不動産鑑定士)(5.8%) ・ 製品製造・加工処理従事者(金属製品)(5.8%) 手帳無 ・ 一般事務職(14.7%) ・ 様々な専門的・技術的職業従事者(研究者、臨床心理士)(6.4%) ・ 様々な事務従事者(3.8%) ・ 販売店員(3.8%) ・ 営業職業従事者(保険外交員、医療機器販売・技術支援)(3.8%) 出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター調査研究報告書No.103「難病のある人の雇用管理の課題と雇用支援のあり方に関する研究」(2011年)より抜粋 写真のキャプション 北九州市難病相談支援センター 難病支援担当、保健師の河津博美さん 独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院の医事課に勤務する山田貴代加さん 【P28-29】 研究開発レポート 発達障害者のワークシステム・サポートプログラム 発達障害者のアセスメント 障害者職業総合センター職業センター  障害者職業総合センター職業センターでは、発達障害のある方を対象とした「ワークシステム・サポートプログラム(以下、「WSSP」)」を実施しながら、発達障害の特性に応じたきめ細かな支援を行うための技法の開発を行っています。  発達障害の多様な特性をふまえた支援を実施するためには、個々の特徴を正確にアセスメントし、それに基づくきめ細やかな支援を実施することが必要となります。そこで、実際の支援現場で日常的に活用していただくことを念頭に、その目的、内容、実施方法、留意点、支援事例などを、支援マニュアル18「発達障害者のアセスメント」(図1)としてとりまとめましたので、使用方法、実施上の留意点などについてご紹介します。 〈アセスメント方法の紹介〉 ア 特性チェックシート  発達障害の障害特性の現れ方は個人差が大きいといわれています。そこで、障害特性の見逃しを極力減らすため、「広く、浅く」特性を収集できる「特性チェックシート」を開発しました。  このチェックシートは、本人や保護者など、記入者に発達障害の特性に関する特別な知識がなくても記入できるように、日常的な場面での出来事をイメージしやすい質問構成にしています。また、発達障害の診断を受けていない方などでも使用しやすいように、発達障害という言葉は使用していません。特性チェックシートには、生育歴・相談歴などを把握する「保護者用チェックシート」、コミュニケーションと気になる行動について整理する「保護者・支援者用チェックシート」、感覚・運動・不注意・学習スキル・自己理解・職業スキルなど、障害特性に関する全10項目について、当事者が自分でチェックできる「ご本人用チェックシート」があります。結果は集計表にまとめることができます(図2)。 イ 情報処理過程におけるアセスメントの視点(Ver.10)  発達障害者の職業上の課題については、見えている現象だけではなく、その背景について考えることが重要です。そのような考えのもとWSSPでは、これまで情報処理過程の枠組みに発達障害の障害特性を配置した「情報処理過程におけるアセスメントの視点(Ver.9)」によるアセスメントを実施してきました。今回の開発では、その内容を再検討し、より活用しやすく改善した「情報処理過程におけるアセスメントの視点(Ver.10)」を作成しました(図3)。情報処理過程シートは、@「情報処理の流れ(受信【入力】→【処理】→送信【出力】)」、Aそれに応じた「発達障害者の特徴を表す項目」、B「改善の必要があること、困っていること」で構成しています。  情報処理過程シートを用いることで、行動の背景には発達障害の特性が存在していること、その特性のさまざまな項目について確認でき、受講者の特性を一つのシートに図式化することができます。全体像が見える化されることで、すでに確認できていることと、まだ確認できてないことが整理されます。未確認の項目にはクエスチョンマークを書き込むなどして、未確認の部分に注目して対象者を見ていくと、より対象者理解が深まります。 ウ 行動/環境アセスメント  就労支援者は、職業上の課題改善のため「原因の推測」、「具体的な支援方法の検討」、「支援の実行」が求められます。そこで、問題の原因推定と具体的な支援方法を考えるための具体的なアセスメント方法として、「行動/環境アセスメント」を開発しました。このアセスメントは、「問題の原因は個人ではなく、個人と環境の相互作用のなかにある」という視点で問題をとらえ、望ましい行動を増やすにはどうしたらよいかについて考えることができます(図4)。  行動/環境アセスメントには、なぜそのような行動・思考をするのかをアセスメントするための「行動/環境アセスメントシート」、アセスメント結果に基づいて、どのような支援を行うのか整理するための「支援方法検討シート」、支援者の視点から支援状況を整理し、支援内容を振り返るための「支援者視点アセスメントシート」があります。 〈まとめ〉  アセスメントは、支援を必要とする発達障害者本人のことを、本人を取り巻く環境を含めて「理解」することを目ざしています。発達障害の障害特性は「生まれつきの特性」であり、それ自体によいも悪いもありません。「仕事をしたい」と考え、就職や復職をしようとしたときに障害特性が何らかの支障となる場合にのみ、支援や対処を行う必要が出てきます。そして、意味ある支援や対処を行うには、何が強みになるのか、どこが支障となるのか理解する必要があります。本支援マニュアルが活用され、発達障害の理解促進につながり、就労支援の充実が図られることを期待しています。  支援マニュアル 18「発達障害者のアセスメント」は、障害者職業総合センター研究部門のホームページに掲載しています(※1)。また、冊子の配付を希望される場合は、当職業センターに直接ご連絡ください(※2)。 ※1 支援マニュアルNo.18は、http://www.nivr.jeed.or.jp/center/report/support18.htmlからダウンロードできます ※2 障害者職業総合センター 職業センター TEL:043-297-9043 http://www.nivr.jeed.or.jp/center/center.html 図1 図2 特性チェックシート集計表 図3 情報処理過程シート 図4 行動/ 環境アセスメントシート 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 海上保安庁 チャットでも海の118番 聴覚障害者向けサービス開始  海上保安庁は、海の事故を通報する緊急番号として118番を運用しているが、聴覚や話すことに障害のある人が利用しやすくなるよう、スマートフォンなどでチャットが使えるサービス「NET118」を始めた。専用サイトで通報ボタンを押すと海上保安庁につながり、文字によるやり取りが可能になる。  チャット形式で利用するには事前に住所、氏名、障害の内容などの登録が必要で、通報時に通信料がかかる。なお、障害のない人には、通常の118番通報をするよう求めている。 地方の動き 宮城 障害者施設に県が名札作成発注  宮城県は、職員の名札作成について就労継続支援B型事業所「マルベリー工房」(仙台市)に発注を開始した。障害者の収入向上を目ざし、2020年3月末までの半年間の特定随意契約となる。県が福祉施設と継続的な契約を結ぶのは初めて。  採用や出向、破損などで新たに名札が必要になった分を取りまとめて月2回発注する。単価は1枚3500円(税別)。同工房は東京のNPO法人の支援を受け、パソコンとカード印刷専用のプリンターを導入した。20〜50代の5人が入力や印字、検品の業務を担当する。 滋賀 信楽(しがらき)「緋色(ひいろ)」の麻織物商品化  滋賀県が運営する産業支援施設「東北部工業技術センター」(長浜市)と、麻織物の業界団体「湖東(ことう)繊維工業協同組合」(東近江(ひがしおうみ)市)が、信楽焼の「緋色」をイメージしたバンダナやハンカチなどを共同開発した。製造は障害者福祉施設「信楽くるみ作業所」が手がけた。  価格はバンダナが1500円(税別)、ハンカチが1000円(同)。同組合の直営ショップ麻香(あさがお)(近江八幡(おうみはちまん)市)と県立陶芸の森陶芸館(甲賀市)で限定販売する。 徳島 鳥取 聴覚障害者団体 災害時の応援協定締結  徳島県と鳥取県の聴覚障害者支援団体が、災害時に手話通訳者と要約筆記者を派遣し合う協定を結んだ。  徳島県の社会福祉事業団と聴覚障害者福祉協会、鳥取県の聴覚障害者協会の3団体が締結。災害時に被災県からの支援要請があれば相互に人材を派遣するほか、手話通訳の研修などを行う。  県レベルの聴覚障害者団体が、災害時応援協定を結ぶのは全国初。 生活情報 首都圏 居場所の早期発見支援サービス  地図や旅行ガイドブックの出版社「株式会社昭文社」(千代田区)は、自分の居場所がわからなくなった認知症の人や障害のある人、ペットなどの早期発見支援サービス「おかえりQR」を開始。首都圏の郵便局でサービスに必要なシールシートの発売を始めた。持ち物などに貼られたシールを発見した人が、スマートフォンなどでQRコードを読み取り、ブラウザ上で操作することで発見場所を家族へ知らせることができる。  シールシートの価格は1800円(税別)。サービスの利用は無料だが利用期限は1年間で、継続利用するにはシールの再購入が必要。 アシストスーツ活用でハイキング  旅行会社「KNTーCTホールディングス株式会社」(東京都千代田区)とパナソニックのロボット子会社「株式会社ATOUN(アトウン)」(奈良県奈良市)はパワーアシストスーツの活用で連携する。歩行に不安を抱える障害者や高齢者を対象に、今年度中にアシストスーツを身に着けハイキングなどを楽しむツアーを始める。  ATOUNが開発した試作機「HIMICO(ヒミコ)」を腰に巻きつけ両足とワイヤでつなぎ、内蔵センサーが腰の動きを感知しモーターがワイヤを伸縮させて足の動きを助ける。KNT−CTの傘下企業「近畿日本ツーリスト」と「クラブツーリズム」が今年度中にHIMICOを使った関西出発のツアーを催す。HIMICOは2〜3年内の商品化を目ざしている。 働く 岩手 障害者が働くワイナリーオープン  花巻市に、シードルやワインを醸造する新たなワイナリー「アールペイザンワイナリー」がオープンした。就労支援施設を利用する障害者5人が、原料となる果実の栽培からラベル貼りや販売など、さまざまな作業を担当する。  ワイナリーは、障害者就労支援施設などを運営する「社会福祉法人悠和会」(花巻市)が国や市などの支援を受けて整備。棚田の休耕田に建てられた2階建ての1階が醸造所で、2階のワインショップは、2020年2月オープン予定。 京都 障害者がコピー機再生、大学発スタートアップ企業  龍谷(りゅうこく)大学(京都市)発のスタートアップ企業で、靴磨きや靴修理などを行う「株式会社革靴をはいた猫」(京都市)が、知的・発達障害者らによるコピー機の清掃再販事業を始めた。コピー機の販売などを手がける「株式会社ウエダ本社」(京都市)などと販売やメンテナンス分野で連携する。メーカーが保有する中古のコピー機を仕入れ、研修を経た障害者がコピー機を清掃し販売する。 和歌山 県産素材を使用した自信のサブレ  障害者福祉事業所「第二なぎの木園」(新宮(しんぐう)市)が、南高梅や有田(ありだ)みかんなど和歌山県内産の素材5種を使ったサブレ「THIS IS WAKAYAMA SABLE」を開発し、販売を始めた。パティシエやデザイナーらと協力し、試行錯誤を重ねて商品化し、障害者が働く事業所でつくられた菓子のコンテスト「第11回スウィーツ甲子園」でグランプリを受賞した。  同園では20〜60代の通所者が事業所内に新設された工房で計量や袋詰め、密封などを担当する。10枚入り1200円(税別)。 電話:0735―22―5374 島根 「介護食カレーパン」商品化  「島根県立浜田水産高等学校」(浜田市)の女子生徒が介護食用に考案したサバカレーパンを、障害者就労継続支援B型事業所「プチマタン」(浜田市)が一般向けにアレンジし商品化した。事業所で働く障害者の工賃アップにつなげるねらいで、市内のスーパーで販売を始めた。  サバカレーパンは、同校が製造しているサバの缶詰と、カレーのルーをパン生地で包んだもの。  同事業所では20〜60代の知的障害者ら11人が働き、販売数量に応じて工賃が支払われる。全国の介護施設に向け、冷凍した商品の販売も予定している。1個180円(税別)。問合せはプチマタンへ。 電話:0855―42―2820。 徳島 障害者の作品展示販売所  障害福祉サービス事業所「グッドジョブセンターかのん」(鳴門(なると)市)に、利用者の作品を展示販売する店「かのん日和」がオープンした。既存の工房に鉄骨平屋10uを増築。藍染のスカーフや名刺入れ、大谷焼の置物、針金を使ったワイヤアートなど50種類以上の商品が並び、作者が接客する。  これまで県内の雑貨店やイベントで販売してきたが、制作に打ち込む知的障害者の姿や工房の雰囲気を知ってもらおうと販売店を設けた。収益は作者に支払う。営業時間は平日午前10時〜午後4時。問合せは同事業所へ。 電話:088―697―2121。 イベント 東京 「CEF2020〜質の高い障害者雇用を考える会議〜」開催  ジョブコーチ連絡協議会、全国就業支援ネットワーク、全国就労移行支援事業所連絡協議会、障害者雇用企業支援協会(SACEC)の4団体でつくる「CEF(Conference of Employment First)」は2020年3月6日(金)、7日(土)に「CEF2020〜質の高い障害者雇用を考える会議〜」を大妻女子大学多摩キャンパス(多摩市)で開催する。  本来一貫性が必要な就労支援・障害者雇用のプロセスを、共通の目標、大きな共通の傘の下で考えるために、当事者、企業、教育、医療などが結集。個人や組織が障害者雇用や就労支援のあるべき将来に向けてその本質を確認し、具体的な方法や技術について情報を交換しながら制度や施策について考える。問合せ・受付は「株式会社Noto カレッジ」まで。 E-mail:cef2020@notocolle.co.jp 電話:0584―77―7632 FАX:0584―77―7633 http://www.cef2020.com/ 2019年度 地方アビリンピック開催予定 1月〜2月 東京都、京都府、広島県、香川県、佐賀県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *東京都、京都府、広島県、香川県、佐賀県以外の県は開催終了 地方アビリンピック 検索 【P32】 掲示板 障害者雇用の月刊誌「働く広場」がホームページでいつでもお読みいただけます!  本誌は当機構ホームページで、デジタルブックでも公開しており、いつでも無料でお読みいただけます(※)。  また、最新号は毎月5日ごろに当機構ホームページに掲載されます。掲載をお知らせするメール配信サービスもございますのであわせてご利用ください。 JEED 働く広場 検索 自由に拡大できて便利! 読みたいページにすぐ飛べる! ※2015年4月号〜現在まで掲載しています 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttp://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 次号予告 ● 特集  2019年11月15日(金)〜17日(日)に開催された「第39回全国アビリンピック愛知大会」を取材。全国から参加した選手たちの活躍を紹介します。 ● 編集委員が行く  武田牧子編集委員が、石鹸製造・販売などを行う株式会社リンクライン(神奈川県)と、シェアードサービスを行う株式会社イーピービズ(東京都)を訪問。障害者の就労の現場、および支援の取組みを取材します。 ● この人を訪ねて  トヨタ自動車株式会社の特例子会社で、全国アビリンピック出場の常連企業でもあるトヨタループス株式会社(愛知県)取締役社長の有村秀一さんに、障害者雇用の取組みや、社員の活躍についてうかがいます。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごと などを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ http://www.jeed.or.jp  メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821  FAX 03−5484−8822 1月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和元年12月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 株式会社ダイナン 経営補佐 樋口克己 東京通信大学教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 横河電機株式会社 箕輪優子 【P33】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2019年12月25日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21 ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-front U 7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒780-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 事業主の方へ 指導者(障害のある方を指導する方)育成に役立つ 研修受講者募集 令和2年度コースは3月4日(水)より受付開始!!  職業能力開発総合大学校では、職業訓練や企業において教育・指導にたずさわる方々を対象とした研修を実施しています。実際に教育訓練を担当される方が指導するにあたって必要な知識および技能・技術を習得するための研修をはじめ、精神・発達障害への配慮や支援に役立つ研修もありますので、ぜひご利用ください。 【研修コースの例】  「一般校の指導員のための精神・発達障害に配慮した支援と対応」として、4部構成(「理解と接し方編」、「訓練の支援と支援体制編」、「メンタルの支援編」、「就職活動の支援編」)の研修コースを用意しており、段階的に受講することができます。 【研修期間・研修会場・受講料の例】 ・研修期間 1コース 2〜3日 ・研修会場 職業能力開発総合大学校など ・受講料  1コース 5,500円〜 ※研修期間、研修会場および受講料は、コースにより異なりますので、詳細は職業能力開発総合大学校研修部までお問い合わせください。 研修コースの内容や申込方法などの詳細はホームページで! 職業大研修 検索 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業能力開発総合大学校 研修部 〒187-0035 東京都小平市小川西町2-32-1 TEL:042-346-7234 FAX:042-346-7478 http://www.uitec.jeed.or.jp/training/index.html 1月号 令和元年12月25日発行 通巻508号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)