【表紙】 令和2年1月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第509号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2020 2 No.509 特集 第39回全国アビリンピック愛知大会 この人を訪ねて トヨタの企業文化とともに トヨタループス株式会社 取締役社長 有村秀一さん 編集委員が行く 多様な働き方を選択できる仕組みづくり 株式会社リンクライン(神奈川県)、株式会社イーピービズ(東京都) 「可愛くて美味しいを創り出す」愛知県・大村(おおむら)綾子(あやこ)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 2月号 【巻頭・巻末】 グラビア 第39回 全国アビリンピック 愛知大会 写真:小山博孝・官野 貴 写真のキャプション 会場となった愛知県常滑市の愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo) 愛知県立松蔭高等学校和太鼓部の演奏が開会式を盛り上げた 大会旗を掲げる大村秀章愛知県知事 大会旗入場 選手宣誓をするアビリンピック愛知県代表の太田(おおた)賢人(よしひと)さん(右から2人目)と技能五輪愛知県代表の横谷(よこたに)快(かい)さん(右) 都道府県旗入場 大会会長の大村秀章愛知県知事 和田慶宏 当機構理事長の挨拶 「歯科技工」 「パソコンデータ入力」 「家具」 「洋裁」 新種目の「ネイル施術」 「データベース」 「機械CAD」 「製品パッキング」 「縫製」 「ビルクリーニング」 「DTP」 「建築CAD」 「喫茶サービス」 「表計算」 「オフィスアシスタント」 「ホームページ」 「電子機器組立」 「義肢」 「コンピュータプログラミング」 「フラワーアレンジメント」 「ワード・プロセッサ」 「木工」 「パソコン操作」 愛知県立名古屋聾学校の生徒による競技解説 デモンストレーション種目「理容」 デモンストレーション種目「フォークリフト操作」 メダルを掲げる「ビルクリーニング」入賞者たち 入賞に感極まる「電子機器組立」金賞の黒田朗史さん(三重県) 「ビルクリーニング」金賞の後藤梨佐さん(愛知県)(右)。同じ会社で銀賞受賞の新谷ちひろさん(愛知県)(左)とともに喜び合う 「ワード・プロセッサ」金賞の冨士原美朋さん(兵庫県) 「歯科技工」金賞の今野みよ子さん(神奈川県) 「喫茶サービス」入賞のみなさん 「フラワーアレンジメント」金賞の山口めぐみさん(愛知県) 「義肢」で金賞を勝ち取った太田賢人さん(愛知県) 受賞を喜ぶ「縫製」銅賞の石神花さん(愛知県)(左) 「表計算」の努力賞を受賞した藤田雄大さん(東京都) 各種目の金メダリストたち 次回の大会での活躍を目ざして、審査員からの講評に聞き入る選手や指導者 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2020年2月号 NO.509 特集 天皇陛下御即位記念 第39回全国アビリンピック愛知大会 〜その技に 誇りと感動 あいちから〜 障害のある方々の職業能力の向上を図るとともに、企業や一般の方々に理解と認識を深めてもらい、雇用の促進を図ることを目的とした「第39回全国アビリンピック愛知大会」が、2019年11月15日(金)〜17日(日)に愛知県で開催されました。その様子をお届けします。 グラビア−−巻頭・巻末 写真:小山博孝・官野 貴 アビリンピックルポ−−4 文:豊浦美紀/写真:小山博孝・官野 貴 入賞者一覧−−12 この人を訪ねて−−14 トヨタの企業文化とともに トヨタループス株式会社 取締役社長 有村秀一さん NOTE−−16 難病のある人と就労 Vol.3 免疫系の代表的な難病について インフォメーション−−18 事業主のみなさまへ 令和2年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ エッセイ−−19 第2回 発達障害とともに学ぶということ ― 特性を活かす覚悟 ― 内閣府地域働き方改革支援チーム委員(兼務 株式会社東レ経営研究所) 渥美由喜 編集委員が行く−−20 多様な働き方を選択できる仕組みづくり 株式会社リンクライン(神奈川県)、株式会社イーピービズ(東京都) 編集委員 武田牧子 霞が関だより−−26 令和元年 障害者雇用状況の集計結果@ 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 ニュースファイル−−28 掲示板・次号予告−−30 表紙絵の説明 「バレンタインシーズンのデパートで開催されていたチョコレートフェアで、可愛い動物チョコをつくっていたパティシエさんを描きました。このような大きな賞を取ったのは今回が初めてだったので、これを励みに、これからも好きなものを詰めこんだ絵を描きたいと思います」 (令和元年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp) 【P4-11】 「その技に 誇りと感動 あいちから」 第39回全国アビリンピック愛知大会 11月15・16・17日  天皇陛下御即位記念「第39回全国アビリンピック愛知大会」が2019(令和元)年11月15日(金)〜17日(日)、愛知県常とこ滑なめ市の愛知県国際展示場(Aichi(アイチ) Sky(スカイ) Expo(エキスポ))で開催された。「その技に 誇りと感動 あいちから」をスローガンに、382人が技能競技23種目に出場、2職種の技能デモンストレーションも披露され、各都道府県を代表する選手たちが磨き上げてきた技を競った。今年は技能五輪全国大会も同じ会場で行われた。 文:豊浦美紀/写真:小山博孝・官野 貴 11月15日(金) 開会式 愛知県国際展示場  名古屋駅から特急「ミュースカイ」で30分ほどの中部国際空港。そのそばに、2019(令和元)年8月にオープンしたばかりの愛知県国際展示場で、午後2時半から開会式が始まった。アビリンピック・技能五輪に出場する選手や関係者ら約5千人が参加。「技能を受け継ぐ“手”」をテーマにした映像と、愛知県立松蔭高等学校の和太鼓部による力強い演奏がオープニングを祝った。  大会会長の大村(おおむら)秀章(ひであき)愛知県知事は「2014(平成26)年に開催して以来の愛知大会です。メイン会場のAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)は延べ床面積9万uと、東京国際展示場に匹敵する規模です」と紹介しつつ、「この会場でみなさんは思う存分、力を発揮してください。ネバーギブアップです」などと激励した。大会旗・都道府県旗入場、国歌斉唱などに続き、主催者代表として当機構の和田(わだ)慶宏(よしひろ)理事長の挨拶、安倍晋三首相からの祝賀メッセージの紹介、愛知県議会議長の祝辞などが続いた。  最後に、アビリンピック愛知県代表で「義肢」種目に出場する太田(おおた)賢人(よしひと)さんと技能五輪愛知県代表である横谷(よこたに)快(かい)さんの両選手が選手宣誓。「われわれ選手一同は、職場の仲間そして家族への感謝を胸に、全国大会という晴れの舞台で日ごろつちかった技能を最大限発揮し、職業や地域、障害の有無にかかわらず、お互いに競い合うことを誓います」と決意表明した。  また開会式後には、別会場で都道府県選手団交流会も行われた。愛知県内の特産茶菓が用意され、愛知県立豊田高等特別支援学校合奏部の演奏などが盛り上げるなか、選手や関係者らが親睦を深めた。 競技紹介、選手・応援団の声 11月16日(土) ●オフィスアシスタント/製品パッキング/ビルクリーニング/喫茶サービス  競技とデモンストレーション、障害者ワークフェアの会場は展示ホールBとC。ホール同士がつながっており、一体感のある開放的な空間だ。ホールCでは技能五輪の競技の一部も行われた。  「オフィスアシスタント」では、A3判書類の片袖折り(※1)や冊子への正誤表挿入、送付書類のピックアップ、宛名ラベル貼り、封入封かん作業などを説明・練習時間を含めて120分で行う。2回目の全国大会という脇阪(わきさか)春香(はるか)さん(和歌山県)は、職場でも文書発送業務などを担当。「競技はあまり緊張せずに終えることができました」と語り、銀賞受賞を果たした。田中(たなか)明日香(あすか)さん(愛媛県)は、就職した新聞社で郵便物の仕分けなどをするようになり、競技に挑戦。自らデザインした社名入りポロシャツを着て臨み、「会社の人たちの応援が嬉しかったです」と笑顔で話していた。  「製品パッキング」の課題は、90分以内に緩衝材を組立て結束し、組み立てた小箱・中箱・化粧箱とともに外箱にセットして梱包するというもの。藤本(ふじもと)恵翔(けいしょう)さん(山口県)は特別支援学校時代から地方大会に挑戦し、3回目で全国大会に。会社では清掃が主な仕事のため資材を取り寄せ、自宅で練習を続けてきた。「最初で最後かもしれないので、力を出し切りたいです」。  今大会の種目のなかで最多となる46人が参加した「ビルクリーニング」は、カーペット床清掃(7分以内)と弾性(だんせい)床(ゆか)清掃および机上清掃(10分以内)の2課題。初出場の諏藤(すどう)優(ゆう)さん(北海道)は、特別支援学校を2019年に卒業し、飲食店で働いている。「本番では緊張し、やり忘れた作業があることに競技中に気づいてしまいました」と暗い表情だったが、応援していた友だちや学校の先生たちに「今後の仕事で活かしていこう」と励まされていた。  幅広い接客業務に通じる「喫茶サービス」(1人あたり60分程度)は、4〜5人程度のグループごとに実技。串田(くしだ)颯人(はやと)さん(新潟県)は、職場のカフェ店舗で試飲サービスやバックヤード作業などを担当。「競技では、周りの人たちの動きなども参考にして、自分の成長につなげていきたいです」と語ってくれた。 ●パソコンデータ入力/パソコン操作/ワード・プロセッサ/表計算  知的障害のある人が対象の「パソコンデータ入力」は、アンケートの入力・ワープロ文書の修正・帳票の作成(各30分)の3課題で、入力の速さと正確さを競う。追分(おいわけ)啓至(けいじ)さん(富山県)は3回目の全国大会。職場では、資材チェックや製品の積み替えなどを担当し、パソコンの練習は自宅で続けてきた。「今回はミスをせずスピーディーさを心がけ、やれるところまでがんばりたい」と意気込む。  視覚障害のある人が対象の「パソコン操作」(100分)は、Excelなどを用いた3課題。5回目の全国大会だという菅野(かんの)夏紀(なつき)さん(千葉県)は、就労継続支援B型事業所に長年通っていたが、30歳を過ぎて就職することを決心。2019年から医療機関で働き、会議の議事録のテープ起こしなどを担当している。「医療用語など少しむずかしいところもありますが、毎日忙しく充実しています」と話す。職場ではアビリンピックを知っている人がほとんどいなかったため、今年は大会の様子を動画に撮ってみんなに紹介するそうだ。  事務の現場で欠かせない「ワード・プロセッサ」の課題は、和文文書の作成(80分)と英文文書の作成(60分)の二つ。書式設定や作図・グラフィック活用などの機能を使いこなす技術が求められる。特別支援学校に通う鹿内(しかうち)翼(つばさ)さん(宮城県)は、小学校1年生のころからパソコンを触り「ゲーム感覚でタイピングを上達させました」という。昼休みや放課後のほか夜も自宅で練習してきた。「昨年は講評でスピードアップを助言され、そこをがんばってきました。入賞をねらいたいです」。  「表計算」(75分以内)は、表計算機能・簡易データベース機能・グラフ作成機能の3大機能の総合的なスキルを競う。地方大会初挑戦で全国大会出場を決めた松本(まつもと)司(つかさ)さん(福井県)は、職場では表計算も含めた事務を担当。「大会のレベルがわからず緊張しますが、つちかってきたものを全力で出したいです」と話す。 ●データベース/DTP/ホームページ/コンピュータプログラミング  システムエンジニア(SE)などとして活躍する9人が挑戦した「データベース」の課題(3時間以内)は、個人事業主における現金出納簿システムの作成。久恒(ひさつね)拓冶(たくや)さん(埼玉県)は、就職後に工事現場で脊髄損傷を負い、国立職業リハビリテーションセンターで訓練しながらアビリンピックに初挑戦したという。いまの職場ではWebサイトの保守管理を担当。両手にペンを固定させ、一つずつキーを押しながらパソコン操作する久恒さんに、サポート役の弟は「尊敬できる兄です。表彰台に上がってほしい」とエールを送っていた。  「DTP」の課題(3時間以内)は、中部国際空港(セントレア)の利用率向上を目的とするキャンペーンのシンボルマークとPRポスターの制作。プランニング力のほかタイトル、色彩、レイアウト、フォント指定などの知識が求められる。デジタル技術の進歩とともに高度なオリジナリティが重視されているそうだ。  「ホームページ」は、ユニバーサルツーリズム(宿泊施設におけるバリアフリー情報発信)をテーマとする制作課題(3時間以内)。金田(かねだ)友貴(ゆたか)さん(大阪府)は、銀行の子会社で税務調査などに関するパソコン入力や点検業務を担当。以前、挑戦したときは地方大会のDTPで2位。「いろいろな種目に挑戦したい。毎回目標を立て、集中してスキルを磨いていけるよい機会になっています」。上司も「社内でも、出場する同僚に刺激を受けて新たに挑戦する社員が増えています」と話す。  IT関連業務の中核である「コンピュータプログラミング」は、ロボットに指示を出すためのプログラムを作成し実際に動かしたときの正確さや速さなどを競う(6時間以内)。伊敷(いしき)学(まなぶ)さん(沖縄県)は2回目の出場。「今回はコマンドエラー(※2)などに苦労しました。ロボットに描画させるところがむずかしいです」。職場ではパソコンの保守管理やプログラミング業務を担当し「仕事の上達のためにも、講評で助言をもらい再挑戦したい」と話した。 ●電子機器組立/機械CAD/建築CAD  毎年多くの大手企業から選手が出場する「電子機器組立」の課題(4時間以内)は、省エネコントローラー(夜間に人の接近を感知して機器の接続を制御する回路)の組立てだ。奥石(おくいし)拓斗(たくと)さん(京都府)は、会社では医療用の血液コントロール装置をつくっている。大会挑戦の理由を「社内に技能五輪に出場し金賞を受賞した同僚がいて、自分も技術を磨きたいと思い立ちました」と明かす。多くの同僚からの激励メッセージが書かれた応援幕を背に取り組んでいた。  「機械CAD」では、スターリングエンジン(排ガスの出ないクリーンな外部燃焼式エンジン)の部品図と組立図、軸測投影法(※3)による組立図と立体分解図の作成が課題(3時間10分)。花田(はなだ)諒太(りょうた)さん(広島県)は職業訓練校在籍中に全国大会出場が決まり、その後、建機会社に就職。競技終了後は「課題が二つあることに気づかず失敗しました」と沈んだ表情だったが、上司は「社内でもCADを使いこなす期待の星。競技はパソコンの仕様が違い戸惑う面もあったが、再挑戦してほしい」と肩をたたいて励ましていた。この競技は5人が挑戦したが、入賞者はいなかった。  「建築CAD」の課題(3時間半)は、鉄筋コンクリート造3階建ての集合住宅の図面。東(ひがし)信彦(のぶひこ)さん(熊本県)は会社で設備設計やソーラー機器の積算などのため建築CADを使っている。聴覚障害があり、試験に向けた準備は「妻のサポートなしにはできません」。隣で「今年こそ結果が出せるといいね」と発破(はっぱ)をかける妻に「完璧を目ざしたい」と応じた東さんは、今回最上位となった銀賞を受賞した。 ●縫製/洋裁/家具/木工  「縫製」の課題(4時間以内)は、エプロン。裁断済みのパーツをミシンやアイロン、目打ちなどの道具を使って製作する。縫製の仕事にはアパレルのほか寝具、インテリア用品、自動車用シート製造などもあり選手たちも幅広く活躍している。  6時間以内にウールのオーバーブラウスをつくる「洋裁」には4人が参加。初出場の首藤(しゅとう)悦子(えつこ)さん(大分県)は足に障害がある。ふだんは、デパートから洋服の補正業務などを請け負っているという。「私のように70歳を超えても現役で挑戦できることを示し、後輩たちにも続いてもらいたいですね」と話してくれた。  手工具を使いこなす技術が求められる「家具」の課題(5時間半)は花台。宮地(みやち)美月(みづき)さん(愛知県)は、2016年の国際アビリンピックフランス大会にも出場した。ろう学校で家具づくりに出会い、老舗和菓子店で菓子職人として働きながら腕を磨いてきた。「菓子づくりも家具づくりも、細かい手先の技術が必要です」。結果は今回最上位となった銀賞受賞だった。  知的障害のある人が対象の「木工」の課題(5時間半)は、蓋付(ふたつ)き木箱。大槻(おおつき)美稀(みき)さん(茨城県)は特別支援学校の木工コース3年時に全国大会初出場を果たした。就職したばかりの医薬品関連会社では、薬品の商品管理や棚卸しなどを担当している。学校で指導した先生は「道具の整理や作業の段取りなど、いまの仕事で活かされている部分も多い」と話す。今回は入賞に届かなかったが、本人は「講評を聞き、また挑戦したい」と決意を新たにしていた。 ●歯科技工/義肢/フラワーアレンジメント/ネイル施術  「歯科技工」(5時間)は、細かい特殊器具を使いこなす匠の技が見どころだ。箱石(はこいし)哲郎(てつお)さん(青森県)は歯科技工所の経営者。しばらく大会から遠ざかっていたが、3人の子どもが大学を卒業したのを機に、昨年から再挑戦。持病で松葉杖を使っていたが、高齢化にともない2年前から車いすユーザーになったという。「出場するため電車を乗り継いでくることで、車いすについて周囲に認識してもらうことも大事。大会で技術を客観的に評価してもらい、仕事につなげていきたいです」。今回は努力賞を受賞した。  「義肢」の課題(4時間15分)は下腿(かたい)義足ソケットの製作。内側のクッション加工など、繊細で的確かつ迅速な技術が求められる。専門学校で活躍中の先生と、職業能力開発校に通う学生が出場した。  来場者の目を楽しませていた「フラワーアレンジメント」の課題は花束(50分)、食卓テーブル装飾(70分)、花嫁の花束(60分)の三つ。用意された25種類の花材やリボンなどを使う。兼松(かねまつ)利江(りえ)さん(静岡県)は、就労移行支援事業所で指導員をしている。「かつて花屋に勤めていた経験を活かしました。事業所のみなさんに教えてあげられたらいいなと思います」。  今回から競技種目になった「ネイル施術」の課題は、ベーシックマニキュア(50分)とネイルチップアート(90分)の二つ。藤本(ふじもと)侑奈(ゆうな)さん(兵庫県)は、住宅リフォーム会社で事務をしているが、もともとネイルを学んでいたことから出場することに。会社側も「仕事のモチベーションにつながる」と全面的にバックアップ。女子社員らもネイルをしてもらい好評なことから、今後は福利厚生の一環として藤本さんが一役買うかもしれないという。「まずは楽しんでできるように」と笑顔で臨む。 ●技能デモンストレーション種目(理容/フォークリフト操作)  技能デモンストレーション種目として今大会初めて行われた「理容」には2人が参加。真鍋(まなべ)正博(まさひろ)さん(岐阜県)は35年前に理容師資格を取り、理容室を一人で切り盛りしている。聴覚障害があるが、店では簡単な筆談やジェスチャーでお客さんとヘアスタイルを相談する。「若い人たちに技術などを引き継いでいきたいですね」。もう一人の加藤(かとう)康宏(やすひろ)さん(千葉県)は「全国のろう学校では理容科の数も志望生徒も減っています。この機会に理容の仕事のよさをアピールし、アビリンピックの競技種目になったらいいなと思います」と笑顔で伝えてくれた。  もう一つの技能デモンストレーション種目は、2014年の全国アビリンピック愛知大会以来2回目となる「フォークリフト操作」。「株式会社豊田自動織機」の3事業部から聴覚障害のある社員3人が代表で出場し、同僚たちから熱いエールを受けながら腕前を披露した。同社にはフォークリフトの免許を保有する15人の聴覚障害者がいる。同社では毎年フォークリフト操作の社内競技大会も開催されているそうだ。 障害者ワークフェア2019  アビリンピックとともに開催される「障害者ワークフェア」は、障害者雇用にかかわる展示や実演などを通して来場者に理解と認識を深めてもらうイベントだ。今回は約140の事業所・団体が、〈職場紹介エリア〉、〈就労支援エリア〉、〈能力開発エリア〉、〈特設コーナー〉に分かれて出展した。各ブースでは障害者が実際に働いている職場や、仕事の様子をパネル・DVD、実演・体験などで紹介するほか、自社製品の展示・販売なども行っていた。手づくりのお菓子や雑貨、木工品なども販売され、盛況だった。  会場の一角で目を引いていたのは、ワインの試飲コーナー。社会福祉法人が運営する就労継続支援B型事業所「小牧ワイナリー」(愛知県小牧市)のブースだ。40人ほどの利用者たちがブドウ栽培からワインづくり、販売まで手がけているという。関係者は「2015年に本格オープンさせ、少しずつ畑も増やしてきました。平均工賃は月4万5千円ですが、目標は月10万円です。カフェも併設しているので遊びに来てください」と呼びかけていた。  大学の研究室もブースを出していた。「椙山(すぎやま)女学園大学」の生活科学部生活環境デザイン学科の滝本(たきもと)成人(なりひと)研究室は、ユニバーサルデザインに関する研究論文や車いすユーザー向けの観光マップ、補助器具などを展示。片手だけで指輪をはめたり、ネックレスをつけたりする器具について実演しながら説明してくれた女子学生は「手の不自由な私の祖母のためにと考案したものです。来場者から『売ってみたら』と助言されました」と手応えを感じていたようだった。  特設コーナーでは毎回恒例のビューティーアップセミナーやものづくり体験教室などのコーナーが賑わったほか、パラリンピック種目のボッチャ体験、聴導犬・介助犬の紹介イベントなども好評だった。 11月17日(日) 閉会式  アビリンピックの閉会式は、競技が続く技能五輪よりも一日早く行われた。アビリンピックの大会会長である当機構の和田慶宏理事長は挨拶で、「技能五輪と同一会場での開催となった今大会は、素晴らしい施設と心温まる応援のなかで技能を競う盛大な大会となりました。持てる力を余すところなく発揮し、取り組まれたみなさんのひたむきな姿は、多くの人々に大きな感動と勇気を与えました」と選手をねぎらった。  厚生労働省の定塚(じょうづか)由美子(ゆみこ)人材開発統括官の来賓挨拶に続き、成績発表と表彰式が始まった。種目ごとに努力賞・銅賞・銀賞・金賞が発表されるたびに会場のあちこちから歓声が起きた。ステージ中央の表彰台で大村秀章愛知県知事らが一人ずつメダルをかけた。また、今大会に参加した都道府県選手団のうち、女性選手の活躍が顕著だった愛知県・栃木県・宮城県の3選手団には、愛知県から「女性の活躍賞」が贈られた。  全国アビリンピックは来年も愛知県で開催される。アビリンピックの大会名誉会長である大村秀章愛知県知事が「今大会はすべての競技を一つ屋根の下、Aichi Sky Expoで行いました。来場者の多くのみなさんは、障害のある方の社会参加にかかわっていることを実感してもらえたと思います。来年もここでお会いできることを楽しみにしています」と挨拶を結んだ。 金賞受賞者たちの喜びの声  「お世話になった方たちに感謝したい」と喜びを語った「DTP」の海藤(かいとう)航貴(こうき)さん(山形県)は、幼少期からの車いすユーザー。地元情報誌づくりにもかかわり、街でバリアフリー状況を取材する。「社内で障害があるのは私だけですが、一緒に働くことで周りの人も気づきがあるようです。これからもいろんな場所に出ていきたいですね」と語ってくれた。  「電子機器組立」の黒田(くろだ)朗史(あきふみ)さん(三重県)は地方大会3回目の挑戦で全国大会初出場。名前が読まれた瞬間、上司とともに両手を突き上げながら喜びを爆発させていた。「私の夢を終わらせず、国際大会を目ざしてがんばります」。  「義肢」の太田(おおた)賢人(よしひと)さん(愛知県)は、障害のある学生が学ぶ専門学校の先生だ。「多くの人からアドバイスをもらいながら練習してきました。引き続き指導をしながら、学生たちにも大会出場をすすめていきたいです」。  「歯科技工」の今野(こんの)みよ子さん(神奈川県)は10年前の初参加以来、5回目の挑戦。「銀賞止まりだったので、長年の目標を果たせた達成感でいっぱいです。これからも努力を怠らず、精進していきます」。  「ワード・プロセッサ」の冨士原(ふじはら)美朋(みほ)さん(兵庫県)は、5回目の挑戦となる車いすユーザー。「本当に感激です。障害の進行もあり、参加自体がむずかしくなってきましたが、努力することをあきらめないでよかったと、心から思いました」と笑顔を見せた。  「データベース」の畠山(はたけやま)優(まさる)さん(高知県)は、静岡県で2007年に開催された国際大会の金賞受賞者。「ほかの種目にもトライしましたが結果が出ず、この種目に再出場できる資格を得て挑戦しました。年齢的に記憶力や集中力に不安がありましたが、職場でつちかってきた経験を活かし、使う側の身になってていねいに取り組めました」とふり返った。  「フラワーアレンジメント」の山口(やまぐち)めぐみさん(愛知県)は、職場では高級車のシート縫製作業を担当している。フラワーアレンジメントはろう学校1年時に金賞を取ったが、国際大会出場を逃していた。「再挑戦の資格を得て今回、一から基礎を学び直し臨みました。これからも技術を高めていきたいです」。  「ビルクリーニング」の後藤(ごとう)梨佐(りさ)さん(愛知県)は2回目の全国大会。職場では法人ビル内の清掃を担当しているが、終業後に特訓を続けてきた。「前回ダメだったところを注意して取り組みました。この経験を仕事に活かし、後輩の指導にもあたりたいです」。  「製品パッキング」の菅沼(すがぬま)莉緒(りお)さん(栃木県)は特別支援学校の2年生。練習を積み重ね、今回が2回目の挑戦。「材料に傷をつけないよう注意して、あせらずていねいに取り組めたことがよかったのかなと思います。ほかの種目にも挑戦したいです」と語ってくれた。  「喫茶サービス」の細尾(ほそお)希良々(きらら)さん(岡山県)は、「通っていた学校で運営するカフェで、『あなたに接客してほしいから』といって来てくれた人がいて嬉しかったから」とカフェチェーン店に就職した。昨年は銅賞。「今回は、ほかの従業員役を務めた人たちと協力し、コミュニケーションをとれました。今後もお客さまに喜んでもらえる接客ができるよう、がんばっていきます」。  「オフィスアシスタント」の植喜多(うえきた)勝也(かつや)さん(静岡県)は、全国大会初出場で頂点に立った。「入社10年になる会社では清掃作業がメインですが、ラベル貼りなどの事務作業もしているので経験を活かせました。今後も職場でがんばっていきたいです」。  「ネイル施術」の山下(やました)加代(かよ)さん(北海道)は、ネイリストとしての経験は10年以上。「障害のある人も挑戦できたらいいのに」と思っていたところ、アビリンピックの競技種目になって嬉しかったという。「今後は福祉ネイリストの分野の勉強をして、福祉とネイルをつなげる活動をしていきたいです」と抱負を語ってくれた。  「パソコン操作」の竹内(たけうち)和沙(かずさ)さん(愛知県)は全国大会5回目で、努力賞・銅賞・銀賞2回とステップアップしてきた。「関数などを勉強したり読み上げソフトの速度を調整したりして練習を重ねました。社内では社員向けのパソコン講座で教えており、自分のスキルも磨かれていると思います」とふり返った。  「パソコンデータ入力」の秋田(あきた)拓也(たくや)さん(大阪府)は、2013年の第34回全国アビリンピックの「ワード・プロセッサ」で金賞を受賞し、2冠目。「練習記録を毎日つけて、がんばってきたので」と笑顔でふり返った。応援に来ていた父親は「集中力があります。幼少期からキーボードを触っていたことがよかったのかも」。職場でもパソコンを使った事務作業にたずさわる。「次は表計算に挑戦したいです」。  「縫製」の中村(なかむら)江里奈(えりな)さん(岩手県)は服飾関係の会社でアイロンがけや洋服の補正業務などを担当。2年前は銅賞だった。「今回はていねいにじっくり取り組みました。親孝行もできました」と喜びを語った。隣で目をうるませていた父親と「洋裁にも挑戦してみようか」と新たな目標を立てていた。  「木工」の森本(もりもと)常公(つねひろ)さん(熊本県)は、何度も全国大会に挑戦してきたという。「今回は落ち着いて作業できました。目標は国際大会です」。上司は「日ごろは折りたたみテーブルなどの木工製品づくりにたずさわり、特に糸ノコづかいは素晴らしい腕前です。これからもがんばってほしい」と激励していた。 ※1 片袖折り:ほかのページよりも大きなサイズの書類の片側を折りたたんではさみこむこと ※2 コマンドエラー:処理が正しく実行されないこと ※3 軸測投影法:傾斜させた状態の立体を正面から描く方法 写真のキャプション 選手団交流会では、選手が大会に向け抱負などを語った 大会会長の大村秀章愛知県知事 開会式 「ビルクリーニング」諏藤優さん(北海道) 「製品パッキング」藤本恵翔さん(山口県) 「オフィスアシスタント」田中明日香さん(愛媛県) 「オフィスアシスタント」で銀賞を受賞した脇阪春香さん(和歌山県) 「パソコンデータ入力」追分啓至さん(富山県) 「喫茶サービス」串田颯人さん(新潟県) 「ワード・プロセッサ」鹿内翼さん(宮城県) 「パソコン操作」菅野夏紀さん(千葉県) 「DTP」山根(やまね)和人(かずと)さん(岡山県) 「コンピュータプログラミング」伊敷学さん(沖縄県)は、昨年の全国アビリンピック沖縄大会に続いての出場 「ホームページ」金田友貴さん(大阪府) 「表計算」松本司さん(福井県) 「データベース」久恒拓冶さん(埼玉県) 「電子機器組立」奥石拓斗さん(京都府) 「縫製」炭田(すみた)大介(だいすけ)さん(宮崎県) 「機械CAD」花田諒太さん(広島県) 「建築CAD」東信彦さんは銀賞を受賞した(熊本県) 「家具」で銀賞となった宮地美月さん(愛知県) 「洋裁」首藤悦子さん(大分県) 「木工」大槻美稀さん(茨城県) 技能デモンストレーション種目「フォークリフト操作」中井(なかい)佑亮(ゆうすけ)さん(愛知県) 新たな競技種目「ネイル施術」の藤本侑奈さん(兵庫県) 「歯科技工」箱石哲郎さんは努力賞を受賞(青森県) 「義肢」で銅賞を獲得した小澤(おざわ)悠一(ゆういち)さん(鹿児島県) 技能デモンストレーション種目「理容」の真鍋正博さん(岐阜県) 「フラワーアレンジメント」兼松利江さん(静岡県) ワークフェア内「職場紹介エリア」のブース ステージで行われた介助犬のデモンストレーション 障害者ワークフェア2019の会場 閉会式 定塚由美子人材開発統括官 閉会式を終え、イメージキャラクター「アイチータ」と記念撮影 「歯科技工」金賞、今野みよ子さん(神奈川県) 「義肢」金賞、太田賢人さん(愛知県) 「電子機器組立」金賞、黒田朗史さん(三重県) 「DTP」金賞、海藤航貴さん(山形県) 「ビルクリーニング」金賞、後藤梨佐さん(愛知県) 「フラワーアレンジメント」金賞、山口めぐみさん(愛知県) 「データベース」金賞、畠山優さん(高知県) 「ワード・プロセッサ」金賞、冨士原美朋さん(兵庫県) 「ネイル施術」金賞、山下加代さん(北海道) 「オフィスアシスタント」金賞、植喜多勝也さん(静岡県) 「喫茶サービス」金賞、細尾希良々さん(岡山県) 「製品パッキング」金賞、菅沼莉緒さん(栃木県) 「木工」金賞、森本常公さん(熊本県) 「縫製」金賞、中村江里奈さん(岩手県) 「パソコンデータ入力」金賞、秋田拓也さん(大阪府) 「パソコン操作」金賞、竹内和沙さん(愛知県) 【P12-13】 第39回全国アビリンピック愛知大会 入賞者発表!  愛知県常滑市において2019(令和元)年11月15日(金)から17日(日)までの3日間にわたり開催した「第39回全国アビリンピック愛知大会」。全23種目の技能競技に47都道府県から382人の選手が集い、日ごろつちかった技能競技を競うとともに、ワークフェアやものづくり体験教室も行われ、盛大な大会となりました。  今大会での入賞者は以下の通り決定され、11月17日(日)「愛知県国際展示場展示ホールA」での閉会式において、金賞16人、銀賞23人、銅賞34人、努力賞16人の方々が栄えある表彰を受けました。 金賞 DTP 海藤(かいとう) 航貴(こうき) 山形県 株式会社アサヒマーケティング 電子機器組立 黒田(くろだ)朗史(あきふみ) 三重県 株式会社デンソー 大安製作所 義肢 太田(おおた)賢人(よしひと) 愛知県 学校法人珪山学園 専門学校 日本聴能言語福祉学院 歯科技工 今野(こんの)みよ子(こ) 神奈川県 エイライズ ワード・プロセッサ 冨士原(ふじはら)美朋(みほ) 兵庫県 ITキャリア加古川 データベース 畠山(はたけやま)優(まさる) 高知県 医療法人健会 高知検診クリニック フラワーアレンジメント 山口(やまぐち)めぐみ 愛知県 トヨタ紡織株式会社 ビルクリーニング 後藤(ごとう)梨佐(りさ) 愛知県 コニックス株式会社 製品パッキング 菅沼(すがぬま)莉緒(りお) 栃木県 栃木県立今市特別支援学校 喫茶サービス 細尾(ほそお)希良々(きらら) 岡山県 スターバックスコーヒージャパン株式会社 イオンモール岡山店 オフィスアシスタント 植喜多(うえきた)勝也(かつや) 静岡県 プライムアース EV エナジー株式会社 ネイル施術 山下(やました)加代(かよ) 北海道 パソコン操作 竹内(たけうち)和沙(かずさ) 愛知県 株式会社山田商会 パソコンデータ入力 秋田(あきた)拓也(たくや) 大阪府 株式会社ニッセイ・ニュークリエーション 縫製 中村(なかむら)江里奈(えりな) 岩手県 株式会社二戸ファッションセンター 木工 森本(もりもと)常公(つねひろ) 熊本県 社会福祉法人アバンセ 多機能型事業所カサ・チコ 銀賞 洋裁 小M(おばま)望(のぞみ) 鹿児島県 有限会社A・デンタル・ラボ 家具 宮地(みやち)美月(みづき) 愛知県 株式会社両口屋是清 DTP 又吉(またよし)李美(りみ) 沖縄県 障がい者ITサポートおきなわ 建築CAD 東(ひがし)信彦(のぶひこ) 熊本県 飯塚電機工業株式会社 電子機器組立 横内(よこうち)庄一(しょういち) 長野県 エプソンミズベ株式会社 電子機器組立 佐藤(さとう)駿一(しゅんいち) 愛知県 株式会社デンソー 幸田製作所 ワード・プロセッサ 森島(もりしま)章文(あきふみ) 静岡県 ホームページ 阪本(さかもと)祐介(ゆうすけ) 山梨県 NPO 法人バーチャル工房やまなし ビルクリーニング 新谷(あらや)ちひろ 愛知県 コニックス株式会社 ビルクリーニング 藤井(ふじい)優気(ゆうき) 京都府 京都市立鳴滝総合支援学校 製品パッキング 大沼(おおぬま)愛実(まなみ) 宮城県 セコム工業株式会社 喫茶サービス 加藤(かとう)みなみ 宮城県 宮城県立支援学校小牛田高等学園 喫茶サービス 日野(ひの)花音(かのん) 栃木県 栃木県立特別支援学校宇都宮青葉高等学園 オフィスアシスタント 入戸野(にっとの)伶(りょう) 神奈川県 株式会社日立ゆうあんどあい オフィスアシスタント 脇阪(わきさか)春香(はるか) 和歌山県 紀陽ビジネスサービス株式会社 表計算 小川(おがわ)裕太(ゆうた) 岐阜県 特定非営利活動法人ギフ福祉ネットワーク東部 ネイル施術 渡部(わたべ)伸子(のぶこ) 東京都株式会社ノンストレス パソコン操作 原(はら)真波(まなみ) 東京都 三井金属スタッフサービス株式会社 パソコンデータ入力 山田(やまだ)浩平(こうへい) 神奈川県 第一生命チャレンジド株式会社 パソコンデータ入力 村上(むらかみ)茜(あかね) 奈良県 株式会社三光丸 縫製 板垣(いたがき)美穂(みほ) 山形県 社会福祉法人山形県身体障害者福祉協会 山形県リハビリセンター 縫製 炭田(すみた)大介(だいすけ) 宮崎県 株式会社旭化成アビリティ 延岡営業所 木工 山本(やまもと)大瑶(たいよう) 静岡県 静岡県立あしたか職業訓練校 銅賞 家具 伊藤(いとう)俊貴(としき) 愛知県 愛知県立名古屋聾学校 DTP 田(たかだ)智愛(ちより) 栃木県 有限会社芯和(Cocowa) 建築CAD 天野(あまの)寛隆(ひろたか) 愛知県 愛知玉野情報システム株式会社 電子機器組立 渡邉(わたなべ)貴広(たかひろ) 愛知県 株式会社デンソー 幸田製作所 電子機器組立 中本(なかもと)高史(たかし) 大阪府 パナソニック交野株式会社 義肢 小澤(おざわ)悠一(ゆういち) 鹿児島県 国立・県営鹿児島障害者職業能力開発校 ワード・プロセッサ 安達(あんたつ)芽衣(めい) 奈良県 なんとチャレンジド株式会社 データベース 久恒(ひさつね)拓冶(たくや) 埼玉県 ANAシステムズ株式会社 データベース 小林(こばやし)隆誠(りゅうせい) 愛知県 中電ウイング株式会社 ホームページ 斉藤(さいとう)敦(あつし) 埼玉県 国立職業リハビリテーションセンター ホームページ 村上(むらかみ)駿斗(はやと) 神奈川県 トランス・コスモス株式会社 フラワーアレンジメント 笠井(かさい)友花(ゆか) 長野県 長野県長野養護学校朝陽教室 コンピュータプログラミング 田中(たなか)卓也(たくや) 神奈川県 ディー・ティー・ファインエレクトロニクス株式会社 ビルクリーニング 小谷(こたに)航(わたる) 東京都 ファースト・ファシリティーズ・チャレンジド株式会社 ビルクリーニング 有働(うどう)晟直(せいな) 熊本県 九州綜合サービス株式会社 製品パッキング 匂坂(さぎさか)まどか 愛知県 中電ウイング株式会社 製品パッキング 河野(こうの)員泰(かずひろ) 岡山県 パナソニック吉備株式会社 喫茶サービス 小林(こばやし)雪輝子(ゆきこ) 北海道 北海道小樽高等支援学校 喫茶サービス 千野(ちの)直之(なおゆき) 静岡県 静岡県立富士特別支援学校富士宮分校 喫茶サービス 高橋(たかはし)夏姫(なつき) 大分県 社会福祉法人博愛会 博愛会地域総合支援センター オフィスアシスタント 坂田(さかた)真由美(まゆみ) 富山県 富山県立高岡高等支援学校 オフィスアシスタント 田中(たなか)義博(よしひろ) 愛知県 トヨタループス株式会社 オフィスアシスタント 若松屋(わかまつや)翼(つばさ) 山口県 山口県立田布施総合支援学校 表計算 永宮(ながみや)健史(たけし) 大阪府 SMBCグリーンサービス株式会社 備後町業務部 表計算 桐山(きりやま)尚之(なおゆき) 岡山県 株式会社ベネッセビジネスメイト 表計算 米田(よねだ)涼子(りょうこ) 福岡県 進和興産株式会社 ネイル施術 荒山(あらやま)美夢(みむ) 千葉県 エイジスコーポレートサービス株式会社 パソコン操作 村田(むらた)勇樹(ゆうき) 茨城県 国立大学法人筑波技術大学 パソコンデータ入力 近江屋(おうみや)直紀(なおき) 熊本県 株式会社熊本菓房 生産部 縫製 石神(いしがみ)花(はな) 愛知県 愛知県立春日井高等特別支援学校 縫製 梶谷(かじたに)愛斗(あいと) 岡山県 岡山県立倉敷琴浦高等支援学校 木工 桑田(くわた)翔太(しょうた) 岩手県 岩手県立盛岡峰南高等支援学校 木工 石井(いしい)颯(そう) 愛知県 愛知県立春日井高等特別支援学校 木工 鷹野(たかの)仁(じん) 鹿児島県 国立・県営鹿児島障害者職業能力開発校 努力賞 家具 内立元(うちたてもと)亮祐(りょうすけ) 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島聾学校 DTP 角地山(かくちやま)純子(じゅんこ) 青森県 合同会社ふれ愛プラザあおば 電子機器組立 福田(ふくだ)美智子(みちこ) 栃木県 富士通テレコムネットワークス株式会社 小山工場 歯科技工 箱石(はこいし)哲郎(てつお) 青森県 有限会社箱石歯科技工所 ワード・プロセッサ 國岡(くにおか)大祐(だいすけ) 大阪府 株式会社ニッセイ・ニュークリエーション ホームページ 佐藤(さとう)知沙子(ちさこ) 愛知県 豊橋市役所 フラワーアレンジメント 當山(とうやま)藤菜(ふじな) 沖縄県 沖縄県立中部農林高等支援学校 コンピュータプログラミング 中山(なかやま)太郎(たろう) 熊本県 株式会社ソリッド・ネット ビルクリーニング 白石(しらいし)愛花(まなか) 栃木県 栃木県立国分寺特別支援学校高等部 ビルクリーニング 徐(じょ)育和(いくわおか) 大阪府 株式会社エルアイ武田 製品パッキング 松井(まつい)貴志(たかし) 兵庫県 日本パーソネルセンター株式会社 喫茶サービス 赤平(あかひら)菜々美(ななみ) 沖縄県 沖縄県立沖縄高等特別支援学校 表計算 藤田(ふじた)雄大(ゆうだい) 東京都 楽天少額短期保険株式会社 ネイル施術 宮本(みやもと)麻莉乃(まりの) 和歌山県 和歌山県立和歌山ろう学校 パソコン操作 岡澤(おかざわ)洋成(ひろなり) 栃木県 栃木県立盲学校 パソコンデータ入力 速水(はやみず)佑樹人(ゆきと) 栃木県 特定非営利活動法人ひとつの花 【P14-15】 この人を訪ねて トヨタの企業文化とともに トヨタループス株式会社 取締役社長 有村秀一さん ありむら しゅういち 1959(昭和34)年生まれ。1982年トヨタ自動車工業(現・トヨタ自動車株式会社)入社、技術部門で車両開発にたずさわる。1997年から異業種合同ブランド「WiLL」の立ち上げや、トヨタ自動車名古屋オフィスがある「ミッドランドスクエア」(2006年竣工)の建築プロジェクトなどに参加。2008年にトヨタループス株式会社の常務取締役、2014年から取締役社長。「一般社団法人障害者雇用企業支援協会」理事。 地域とのつながりを大切に ――有村さんは、「トヨタループス株式会社」(以下、「ループス」)の立上げ時からかかわっています。当時の経緯から教えてください。  それまでトヨタ本社で進めてきた障害者雇用は、自動車産業の特徴でもありますが、聴覚障害のある方に偏っていました。時代とともに幅広い雇用の必要性が社内外で高まるなか、特例子会社が検討されました。トヨタ本社の広範な部署に配属するのは人事管理上の課題も多く、ある程度集約した職場のほうが環境を整えられるだろうとの考えでした。  ループスの業務は、本社総務部で担当していた印刷と社内便の二つをアウトソーシングする形でスタートさせました。もともと2業務を担当していた社員約50人に出向してもらい、身体障害と知的障害のある方を計28人採用しました。その後は新規採用に合わせ、出向社員を本社の別部署に戻していきました。  さらにオフィスサポート業務や名古屋・東京圏内の事業所への拡大も進め、いまでは全社員373人、うち障害のある社員は286人(身体障害108人、知的障害108人、精神障害70人、2019〈令和元〉年11月現在)まで増えました。 ――職場環境を整えるために、入念に準備されたそうですね。  社屋については設計段階から「ユニバーサルデザイン研究会」をつくり1年間かけて検討し、駐車スペースからエレベーター、トイレ、休憩スペース、表示板の色、緊急呼び出し機能を持たせた社員証まで、さまざまな配慮や工夫を実現させました。  ソフト面では、定着支援員として、地元の障害者支援施設から一名を2年間、さらに別の就労移行支援事業所からも一名を1年間、それぞれ出向扱いで来てもらい、障害のある社員への接し方など具体的な支援方法を、職場で実践的に教わりました。同時に、私たち企業側が求める人材について支援者側に知ってもらえるよい機会にもなりました。いまは複数の就労移行支援事業所と連携しながら、採用や定着支援に結びつけています。  企業が障害者雇用に取り組むうえで、やはり地域のつながりは大切だと思いますね。私は社長就任後に豊田市地域自立支援協議会の委員になった縁もあり、障害者雇用を希望する地元企業や就労移行支援事業所などに声をかけ、ループスに定期的に集まって情報交換をしています。豊田市と協力し、35カ所の事業所の活動内容や場所をわかりやすく示したマップも作成しました。特別支援学校などから採用するときは、就職後も支援を受けられるよう、いずれかの事業所に登録してもらうようにしています。 トヨタ本社の社員との交流 ――社員数の多い職場ですが、心がけていることはありますか。  日ごろから少しでも早く本人の変化に気づくことが大事だと感じています。例えば、社員たちには毎朝、職場の壁に貼ってある紙にその日の体調を「〇×△式」で記入してもらっていますが、把握しきれない部分もあります。管理者が常に現場を巡回しながら、声のトーンや表情が「いつもと違う」といった様子を見て声がけすることで、うまくフォローできた事例もあります。ループスでは臨床心理士、保健師、精神保健福祉士、社会福祉士、精神科医らがチームで定着支援にかかわってくれています。  それでも現在、休職者は10数人います。精神障害にかぎらず、身体障害のある方でも心身の不調をきたすことはありますよね。定期的に支援員が連絡をとってフォローし、復職は時短勤務を含めて柔軟に対応して、場合によっては配属も変えます。ループスでは、勤続5年目以降の休職期間の上限を2年間としています。  一方で、社員育成やキャリア形成についてはトヨタ本社に合わせています。本社で行う職層別の研修などに一緒に参加し、いろんな社員と交流しながら、トヨタの企業文化を吸収してもらっています。トヨタの一員としての自覚が持てるようになり、仕事のモチベーションアップにもつながっているのではないでしょうか。  近年は、トヨタの福祉車両の開発や評価部門にループスの社員が参加し、当事者目線を活かして力を発揮してくれています。また、本社の職層研修に「心のバリアフリー教育」を導入し、研修ではループス社員が講師役を務めています。ループスの認知度も上がり、本社側から新規業務を依頼されるケースが出てきたのも喜ばしい影響です。 ――アビリンピックにも、多くの選手を送り出していますね。  もともとトヨタ本社が技能五輪に出場していたので「同じように全国を目ざせるといいね」と、2011年ごろから挑戦し始めました。最初は製品パッキング、翌年にはオフィスアシスタントも加わり、2016年には全国大会で初の金賞受賞者が出ました。選手の活躍で周囲も刺激を受けて挑戦者が増え、今大会は3種目で4人が全国大会に出場しました。職場では練習用パソコンを置いたり、練習時間を設けたりもしています。アビリンピックに挑戦することで仕事への意欲が上がるだけでなく、日ごろの作業のやり方などが客観的に評価されてわかりやすくフィードバックできる効果もあるようです。 ――今後のループスの展望、障害者雇用の課題などについて考えをお聞かせください。  かつてトヨタ本社で採用してきた社員が軒並み高齢化し、毎年80人ぐらいが定年を迎えています。これは日本の大企業に共通する課題ですね。ループスではこの10年で障害者雇用の人数を大幅に増やしてきましたが、さらなる事業拡大は必須です。業務量の増大はもちろん、社員の多様性に考慮し、「障害のある人でもできる仕事」というくくりから、「この人だからこそできる仕事」という視点への広がりも必要だと考えています。社員一人ひとりの「これができる」という能力を発掘し、トヨタグループのなかで活かしていけるような職場環境もつくっていきたいですね。  国内全体の障害者雇用については、大企業と中小企業との雇用率の格差が開いています。個人的には、中小企業で障害者を雇用するための支援方法などを、もっと検討したほうがよいのではと思います。何かのきっかけで「最初の一歩」をふみ出せれば、「なんだ、結構いけるんじゃないか」と進めていけるはずです。また、障害者雇用にかかわる企業の多くは「うちでやっていることを、どんどんマネしていいよ」という姿勢で情報を開示してくれます。これから障害者雇用を始めようという方は、臆せず多くの企業を見学してください。もちろんループスも大歓迎です。 【P16-17】 NOTE Vol.3 難病のある人と就労 免疫系の代表的な難病について  前回に続き、難病のある人が就労するために必要な難病への理解と配慮すべき点について、この連載の監修者である河津(かわつ)博美(ひろみ)さん(北九州市難病相談支援センター 難病支援担当・保健師)が支援した事例などを交えて紹介します。今回は、免疫系の代表的な難病である「全身性エリテマトーデス」と「ベーチェット病」についてまとめました。 免疫系の代表的な二つの難病  「全身性エリテマトーデス」は、免疫機能に異常が生じ、自分自身の細胞を免疫系が誤って攻撃してしまい、全身にさまざまな症状が出る病気です。主な症状として、疲れやすさ、発熱、関節痛などがあります。薬物治療の継続が必要で、日によって体調が変わりやすいという特徴があり、精神的、身体的なストレスを避けることが重要です。  「ベーチェット病」は、口腔粘膜のアフタ性潰瘍(かいよう)、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の四つを主症状とする慢性再発性で、全身性炎症性の病気です。この病気は主症状が多様であるため、すべての病状に対応できる単一の治療があるわけではありません。個々の病状や重症度に応じて治療方針を立てる必要があります。日常生活においては、全身の休養と保温に気をつけて、ストレスの軽減に努めることが重要とされています。 免疫系の難病について配慮すべき点  事業者側が配慮すべき点として、「全身性エリテマトーデス」の場合は、過労や寒冷な場所での業務を避け、症状悪化の兆しがある場合は、早めに休息をとり受診することが大切です。また関節痛や筋肉痛が起きやすいため、業務内容や量、体調に合わせた業務時間の調整も必要です。受診日に確実に休みを取得できるような配慮も重要です。さらに、個々によって症状が現れる部位が異なり、症状に応じて配慮する内容も異なるため、主治医からの情報を参考にできるとよいでしょう。  また「ベーチェット病」の人は、体調の変化が外から見えにくいため、症状に関して本人への確認が重要になります。症状悪化の兆しがあれば休息をとってもらい、受診しやすくすることが大切です。また、眼や皮膚の病変が生じることや休憩を要することについて、同じ職場の方たちの理解も不可欠です。視力低下が著しい場合は、支援機器の必要性や利用についての検討も重要になります。 免疫系の難病の方の就労や復職に向けた取組み  免疫系難病の方の実際の就労状況について、今回のテーマの監修者である河津さんにうかがいました。  「全身性エリテマトーデス(40代女性)の方の事例ですが、症状が重いため、当初は就労をあきらめていたようです。しかし、ほかの難病の患者さんたちといろいろな話をして交流を深めたいという希望があり、北九州市主催の『難病カフェ』(難病のある方たちの交流会)を紹介しました。定期的に参加して、同年代の方たちと仕事についての話をするうちに、就労意欲が徐々に湧き『仕事をしてみよう』という気持ちになったようです。彼女は元々教員免許を持っていたこともあり、現在は学童保育所で体調を確認しながら働いています」  また、河津さんが現在支援しているベーチェット病の山本(やまもと)大輔(だいすけ)さん(40歳)の事例もお話しいただきました。  「山本さんは、障害のある方を支援する仕事を長くされていたのですが、数年前に突然発症しました。発症当初は病名がわからず、診断がつくまで4〜5カ月かかったそうです。山本さんは『血管型ベーチェット病』という病名で、血管に炎症が起こり収縮する症状が生じ、両下肢は麻痺が残り、車いすが必要になりました。現在は休職中ですが、仕事を続けたい気持ちは強く、2020年5月からの復職に向けて準備を進めています。主治医と産業看護職の方、職場の人事の方、ご家族の協力も得て、具体的にどういった配慮が必要か検討しているところです」 在宅テレワークが就労の可能性を広げる  免疫系の難病の場合、免疫抑制をうながす薬物を使用するため、感染症にかかりやすいというリスクがあります。そのため就労に際し人混みなどはできるだけ避ける必要があります。現在、新しい就労形態として注目されている「在宅テレワーク」は、感染症にかかるリスクを軽減できるという利点があります。河津さんは最後にさらに別の事例を紹介してくれました。  「自己免疫疾患の一つである、自己免疫性肝炎の安東(あんどう)果琳(かりん)さん(30代)は、就労移行支援事業所のサービスを利用し、数カ月間の訓練を受けていました。通常の通勤がむずかしいことや、安東さん自身が在宅テレワークに関心を持っていたこともあり、在宅テレワークに特化した就労移行支援事業所を紹介し、数カ月間利用してもらいました。これがきっかけとなり、その後、この事業所を運営する『夢つむぎ株式会社』に在宅テレワークで働く正社員として採用されました。今後、こういった新しい就労のかたちが、さらに増えていくことが期待されます」  このように、通勤がむずかしい難病の方でも、在宅テレワークによって就労が可能になります。今後もこうした「新しい働き方」が普及することで、さまざまな難病の方たちの就労の可能性がさらに広がっていくことでしょう。 図表 疾患別の現在就労している職種の具体例(疾患名別・手帳の有無別の中の割合) 疾患名 現在、就労している職種の具体例(比較的多い職種) 全身性エリテマトーデス 手帳有 ・専門的・技術的職業従事者(製品開発、実験助手)(27.8%) ・一般事務従事者(総務、医療事務、顧客情報管理)(19.4%) ・様々な事務従事者(経理事務、入出荷事務)(11.1%) ・パーソナルコンピュータ操作員(11.1%) ・サービス職業従事者(生活支援員、喫茶店接客)(5.6%) 手帳有 ・一般事務従事者(総務事務、OA 操作)(23.8%) ・看護師(准看護師を含む)(6.3%) ・社会福祉専門職業従事者(保育士、ケアマネージャー)(4.2%) ・経理事務員(4.2%) ・様々なサービス職業従事者(理容師、給食調理)(3.7%) ベーチェット病 手帳無 ・あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師(38.9%) ・一般事務従事者(講習会の企画、医療事務等)(16.7%) ・管理的職業従事者(代表取締役、事務局長)(11.1%) ・販売従事者(レジ、保険業務のサポート)(11.1%) ・様々な専門的・技術的職業従事者(布教伝道者)(5.6%) ・様々な事務従事者(生産管理)(5.6%) 手帳無 ・様々な専門的・技術的職業従事者(水門の設計開発、システム運用開発、看護師、税理士、翻訳者等)(22.0%) ・様々な事務従事者(総務・人事、自営業の庶務・会計等)(10.0%) ・販売店員(園芸店、スーパー、書店等店員)(10.0%) ・管理的職業従事者(会社社長、農業団体役員等)(8.0%) ・その他の専門的職業従事者(塾講師、行政書士等)(8.0%) ・一般事務従事者(経理・求人面接、事務兼労務)(6.0%) 出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター調査研究報告書No.103「難病のある人の雇用管理の課題と雇用支援のあり方に関する研究」(2011年)より抜粋 写真のキャプション 現在、復職に向けて準備を行っている山本大輔さん 在宅テレワークで就労している安東果琳さん(画面)。「夢つむぎ株式会社」職業指導員の久留嶋(くるしま)理恵(りえ)さん(左)、生活支援員の丸下(まるした)和絵(かずえ)さん(中央)と、モニターを通して連絡を取り合う 【P18】 インフォメーション 事業主のみなさまへ 令和2年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ 〜常用労働者が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜 令和2年4月1日から5月15日の間に令和2年度分の申告と申請をお願いします。 前年度(平成31年4月から令和2年3月まで)の雇用障害者数をもとに、  ○ 障害者雇用納付金の申告を行ってください。  ○ 障害者の法定雇用率(2.2%)を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。  ○ 障害者の法定雇用率(2.2%)を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 【申告申請期間】 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者特例調整金 申告申請の対象となる期間 平成31 年4月1日〜令和2年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和2年4月1日〜令和2年5月15日 (注1、注2) (注1)障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できません。申請期限内の申請をお願いします。 (注2)年度(平成31年4月〜令和2年3月)の中途で事業廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告と申請が必要です。この場合も申請期限を過ぎた調整金等の申請に対しては支給できません。 *詳しくは、最寄りの各都道府県支部 高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。 JEED 都道府県支部 検索 常時雇用している労働者の総数が100人以下の場合は障害者雇用納付金の申告義務はありませんが、雇用障害者数が一定数を超えている場合は報奨金の支給申請をすることができます。 詳しくは最寄りの都道府県支部にお問い合わせください。 申告申請の事務説明会にぜひご参加ください (全国各地で2〜3月に開催します。参加費は無料です) JEED 納付金 説明会 検索 特に短い時間でしか働くことができない障害者を雇用する事業主のみなさまへの新たな給付金のご案内  障害者を週20時間未満労働(下限は週10時間)で雇用する事業主に対する支援として、新たに「特例給付金」が支給されることになりました。令和2年度の雇用実績をもとにした令和3年4月からの申請となります。  詳しくは申告申請の事務説明会で紹介します。ぜひご参加ください。 【P19】 エッセイ【第2回】 発達障害とともに学ぶということ −特性を活かす覚悟− 内閣府地域働き方改革支援チーム委員 (兼務 株式会社東レ経営研究所) 渥美由喜(あつみ なおき)  25年前からワークライフバランス(WLB:仕事と生活の調和)に着目した、ダイバーシティ、WLB分野の第一人者。これまでに海外10数カ国を含む、国内のダイバーシティ・WLB 先進企業1050社、海外の150社を延べ4000回、訪問ヒアリングし、約1万社の企業データを分析。  また、コンサルタントとして、実際に1000社以上の企業の取組推進をサポートする一方で、内閣府や厚生労働省などの官庁や自治体の委員を歴任。  前回、わが家に伝わる宮大工の教えを引用しながら、問題児だった私に親がどう接したかを述べた。今回は、小学校での恩師とのかかわりなどから、私がどう学んだかを述べたい。 発達障害者を活かす「加点主義」  小学校で最初の担任になったO先生が、私の生涯の恩師だ。私の問題行動は相変わらずで、2年生になっても友だちと教室で取っ組み合いをし、先生は「喧嘩をしたいのなら、外でやりなさい!」と激怒したことがあった。言葉の裏が読めない私は、「先生が外に行けって。砂場で決闘しよう」と渋る相手を引っ張っていき、しばらくやり合ったものの「観客がいないと、つまらないね。喧嘩はやめて、遊ぼうよ」といい出す始末。  大人になり、「小1プロブレム」(※)と聞くたびに、当時のわが身を思い出して、O先生に申し訳なくなる。ある日、算数の時間になっても国語の教科書を読むことに熱中し、最後まで読み切った私にO先生が近づく。「また叱られる」と身構えた私に、「昔だったら飛び級で2年生にしてあげたのに、残念ね」と、向日葵(ひまわり)のような笑顔。そしてO先生は私の母にも「好きなことへのバイタリティーと集中力はすごい。きっと将来、あの子は大成しますよ」といったのだった。  問題児の私が、親以外の人に認められた初めての経験だった。O先生の言葉と柔和な笑顔は、40年経ったいまでも昨日のように思い出す。問題児だった私を減点主義ではなく、加点主義で認めてくださったO先生には感謝の気持ちでいっぱいだ。 長所を伸ばす言葉がけは、「褒(ほ)める」だけではない  加点主義は、子育てでよくいわれる「褒めて伸ばすと同じ」とよく誤解される。しかし、安易に褒めて本人の自己肯定感ばかりが高まると、現実とのギャップの大きさで、かえって本人のためにならない面もあると思う。  その子の長所を認めることは大前提として、本人がその長所を伸ばせるような言葉がけは、必ずしも「褒める」だけではない。ADHD、アスペルガー症候群の私は、幼いころから整理整頓や人の気持ちを読むのが苦手な一方で、好きなアニメは最初から最後のセリフまですらすらと一言一句再現できた。時折、TVなどでそういう子を“天才児”と持ち上げる光景を見るが、わが家は違った。「そんなのは8oビデオだってできる。大したことない。どう活かすかだ」 発達障害とともに生きていく「覚悟」  映像記憶があるから勉強は得意か、というと違う。小学生時代の私の脳内は、宇宙創生期のビッグバン状態。関心範囲がすごい勢いで拡張していたので、ドラえもんの秘密道具『暗記パン』が何枚あっても、散らばって収集がつかない。だから、テストでまったく点が取れない。成績は伸び悩み、4年生の夏休みに、頭と心がパンクしそうになった。半日泣き続けたが、親は助けの手を差し伸べてはくれず、放っておかれた。自分の強みは何だろうと自問自答するなかで、「自分の居場所は自力で確保するしかない」と小さな悟りを開いた。発達障害の有無にかかわらず、周囲があえて手出しをせずに静かに見守る忍耐を持つことも大切だ。 ニューフロンティアに導くもの  以後、“ひたすら覚え込む”勉強ではなく、書いてあることを自分の頭で考えて、「何がわかって、何がわからないのか」を整理しながら、自分だけの百科事典を頭のなかにつくっていった。  そして脳内の百科事典の該当箇所に、いつでも瞬間移動できるよう、自ら特訓した。以降、百科事典を参照しながらテストを解くのでカンニングと同じ。成績は飛躍的に向上した。  周囲の理解とサポートはもちろん大切だが、本人が自らの特性と向き合い、活かそうという覚悟も必要だ。発達障害のある者をニューフロンティア(新しい開拓地)に導くのは「JFK3」、すなわち「J=自律」、「F=俯瞰(ふかん)する視点」、「K3=葛藤と、格闘し続ける、覚悟」と呼んでいる。 ※小1プロブレム:小学校に入学したばかりの1年生が、集団行動がとれない、授業中に座っていられない、先生の話を聞かないなど、学校生活になじめない状態が続くこと 【P20-25】 編集委員が行く 多様な働き方を選択できる仕組みづくり 株式会社リンクライン(神奈川県)、株式会社イーピービズ(東京都) 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 取材先データ 株式会社リンクライン 〒250-0053 神奈川県小田原市穴部547-2 TEL 0465-22-4217 ●親会社:コムテック株式会社  〒105-6791 東京都港区芝浦1-2-1 シーバンスN館10F 株式会社イーピービズ 〒162-0821 東京都新宿区津久戸町1-8 神楽坂AKビル4F TEL 03-5684-7879(代) ●親会社:EPSホールディングス株式会社  〒162-0821 東京都新宿区津久戸町1-8 神楽坂AKビル6F 編集委員から  障害者自立支援法の施行から10年以上が経過し、就労支援を行う福祉サービスの事業者数は軒並み増えた。テレビなどでも障害者雇用に関して目にする機会は格段に増えたが、残念ながら低きに流れる取組みも目にする。今回取材した2社が、これから障害者雇用に取り組む企業へのヒントになり、さらに多くの人が「喜びと生きがいを持って働ける社会」につながってほしい。 Keyword:特例子会社、職務創出、障害理解、就労移行支援事業所、農福連携、マッチング 写真:官野 貴 ★の写真提供:株式会社イーピービズ POINT 1 本気になって自分事として、障害者雇用に取り組む 2 高品質の商品追及により、誇りをもって仕事に取り組む 3 特例子会社単独での事業の黒字化と長く働くための仕組みを整える 株式会社リンクライン リンクラインの見学  小田原駅で伊豆箱根鉄道の大雄山(だいゆうざん)線に乗り換え、4駅先の穴部(あなべ)駅から歩いて2分、田園風景の広がるなかにある「株式会社リンクライン」を訪問させていただいた。  この日は多くの見学者があり、うかがったときも2組の団体に対して、リンクライン取締役会長の神原(かんばら)薫(かおる)さんと、代表取締役の青野(あおの)真幸(まさゆき)さんがそれぞれ、熱心に説明されていた。これから障害者雇用に取り組もうとする会社や、当事者のご家族など、全国からの見学者が毎日のように途絶えないという。私たちは、この日の最終見学(取材)で、神原さんと青野さん、社員のみなさんからお話をうかがい、素敵な石鹸づくりの製造現場を見せていただいた。 特例子会社設立の経緯  まずは、特例子会社設立の経緯について、神原さんと青野さんにお話をうかがった。  リンクラインの親会社である「コムテック株式会社」は、IT系を活用したアウトソーシングなどのサービスを提供する会社だ。コムテックでは以前、障害者の法定雇用率未達成企業としてハローワークからの指導が何度か入っており、いよいよ社名公表目前となったとき、同社の人事部長を務めていたのが神原さんだった。社名の公表は株価に影響する可能性もあり、社命として障害者雇用に取り組むことになった。障害者雇用について調べるうちに、1カ所で集中的な取組みができる「特例子会社」を設立することでもっとも早期に課題解決ができると結論づけ、特例子会社の設立を親会社の社長に進言し、青野さんを相棒にする了解も取りつけた。  しかし当時は、ほかの特例子会社のように親会社から切り出せる業務はほとんどなかったうえ、神原さんは障害者雇用の知識もなく、障害のある人と接したこともなかった。また、特例子会社で何の業務をするか、場所はどこにするか、何も決まっていなかった。そこで、全国各地のモデル的な取組みを学ぼうと、青野さんと2人の全国行脚が沖縄からスタートした。各地の取組みを見学し、静岡県の社会福祉法人を見学したときに、障害のある人が釜炊きの石鹸を黙々と製造する姿を見て、神原氏は「障害のある人も製造のにない手になれる」と衝撃を受けた。そして、長野県に障害のある人と石鹸づくりをしている師匠がいると聞き、青野さんと泊まり込みで石鹸づくりを学んだ。そこでは、障害のある人たちが目を輝かせて働き、自分たちの会社に誇りを持って働いていた。その姿を見て神原さんは「こんな会社にしたい」と思い、設立予定の特例子会社で扱う商品は石鹸にしようと決めた。設立場所は苦労の末、コムテック創業者の出身地でもある小田原に決まった。社名は、「心と心が点ではなく線でつながった関係」という想いを込めて、「リンクライン」とした。  いよいよ、特例子会社設立の目途もつき、「元気で明るい人大募集」と募集をかけたところ、行列ができるほどに応募があった。 設立後の厳しい数年間  設立してすぐ、「小春日和(こはるびより)」という自社ブランドで良質の石鹸製造を始めたものの、当初は月200個の製造販売で一人分の給与にもならず、他社ブランドの製造受託が中心だった。少しでも収益を得ようと、本社から清掃業務や一般事務(名刺作成など)を受注したり、農園での野菜栽培にも取り組んだ。2012(平成24)年には化粧品製造販売許可も取り、営業に駆けずり回る日々だったが、黒字化には程遠く、経営的には苦しい時期が続いた。  この厳しい3年間を支えたのは、自分たち2人を信じて熱心に製造に取り組み、ついて来てくれる社員たちの笑顔であった。現状を打開するために長野県の石鹸の師匠のところに行き、他社では決してまねのできない商品づくりの模索を続けた。 6年目にして単独黒字化を達成  創業当時から毎月売上目標を立て、社員と一緒になって売上目標達成に尽力してきた。一人ひとりが自分の仕事に責任を持ち、商品の品質管理と納期に間に合わせなければならない。「できない」のではなく、「どうしたらできるか」を社員と話し合った。そのために、本気で叱り、本気で褒めてきた。その積み重ねが実り、6年目に黒字化することができた。  社員の製造技術はどんどん進化していく。業務の中心をそれまでの他社の製造委託から、自社製品メインに切り替えるために、2016年には自社ブランド「lリィリィi'ili'i」を立ち上げた。いまではli'ili'iの商品は、全国の大手雑貨チェーン店や、雑貨ショップ、セレクトショップなどの店舗に置かれている。これが次々と好循環を生み、有名な観光地の土産物や世界的に有名なキャラクターなどとブランド契約もしている。  当初16人だった障害のある社員は、いまでは23人。年商は1億円を超えたが、まだまだ発展途上にあるとのこと。技術と手間は惜しまないからこそ、一つひとつのクオリティが高い。だからこそ機械ではつくれないし、誇りを持って仕事ができる。「社員は一人ひとりみんな違う、年齢もバラバラ。だから、垣根なんてなくていい」。そんなインクルーシブ(※1)で小さな会社を実現している。 まるでお菓子工場のような製造現場  1階にある石鹸工場では、社員のみなさんが作業服にマスクと帽子も着用し、真剣な表情で黙々とアートソープ製作に取り組んでいた。固まった石鹸を型から取り出し、バリ取り(※2)をしている。  アートソープ製作の現場は、まるでお菓子工場のように華やかで、甘くさわやかな匂いに溢れていた。キウイ、スイカ、オレンジ、バラなどの石鹸のほか、それぞれの果物を組み合わせてキャンディのように固める石鹸など、その種類は70種類にもおよぶ。これらの石鹸をプレゼントしたら、きっと笑顔が返ってくるだろう。  社員のみなさんにお話をうかがった。 「自分がつくった商品が、ショッピングセンターやデパートなどのお店で売られているとき、嬉しいし、誇らしく思う」、「見学のお客さんが商品を嬉しそうに買ってくださるのが嬉しい」、「徐々にうまくつくれるようになることが仕事のモチベーションになっている」と、商品に誇りを持ち、リンクラインの社員であることに誇りを持っていた。仕事のほか、「会社の運動会などのイベントに参加することも楽しみ」と話す人もいた。 親会社とリンクライン  リンクラインでの障害者雇用について、親会社であるコムテックでの評価をお聞きした。  最初のころは、親会社に石鹸の販売に行っても、「いいことをやっているね」という程度の認識で、自分たちには関係ないという空気が強く、商品すら買ってもらえなかったという。しかし、10年経ったいまでは、商品とその製造を行っている社員が注目を浴びるようになり、親会社内での認知度も高まっていったという。そして、親会社で行われる年間MVPの表彰にリンクラインの社員が選ばれるようになった。  「表彰のときのスピーチは、堂々としてかっこいいコメントを話すんです」と、神原さんが満面の笑みをたたえながら話してくださった。  この10年間の取組みは親会社でも高く評価され、神原さんは親会社の役員に抜擢された。リンクラインの代表取締役は相棒の青野さんに譲り、自らは会長となった。親会社の役員会では、機会があるごとにリンクラインの業績を報告しているという。ハローワークからの指導がきっかけで設立した特例子会社が、いまでは重要なグループ会社の一つとなっていると感じた。 これからのリンクライン  神原さん、青野さんは、いまをゴールととらえていないようだ。リンクラインで雇える社員にはかぎりがある。そのため、「もっといろいろな支援や働く場所が必要」と、就労移行支援事業所と就労継続支援B型事業も開始した。近い将来、社員の高齢化が課題になるのは明らかであり、「これからは、その課題に対応するためのグループホームも必要だ」と青野さんは語る。  当初はご多忙ということで、面談および見学時間は1時間30分の予定であったが、結局4時間があっという間に過ぎていた。社員のみなさんの誇らしい笑顔の根源は、何事も楽しみに変えてしまう神原さんと青野さんのたゆまない努力と、お2人のパートナーシップによるように思う。 株式会社イーピービズ 特例子会社設立の経緯  次に紹介するのが、特例子会社「株式会社イーピービズ」だ。親会社である「EPSホールディングス株式会社」は、1991年に臨床試験関連のソフトウェアの開発・販売を事業目的として設立され、医薬品・医療機器開発を幅広くサポートしている。11月取材時の社員数は約6千人、2年後には8千人になる見込みで、いまなお成長し続けている企業である。  EPSホールディングスのグループ会社のなかには障害者雇用未達成企業もあり、ハローワークから数年間指導を受けていたが、EPSホールディングスとして総合的に障害者雇用に取り組む必要性を認識し、2018年10月に既存のグループ子会社であるイーピービズで特例子会社認定を受けた。  EPSグループでは特例子会社設立以前から、全国の拠点やグループ会社各社で障害者雇用に取り組んでいた。その中心は、視覚障害者による社員向けのマッサージやオフィス内軽作業への配置だった。  特例子会社の設立によって、社員は東京の各拠点やグループ会社から転籍し、一社で集中して取り組むこととなった。そこで、「リラクゼーション」の部門に加えて「オフィスWorkサポート」と「農業事業」に取り組んだ。  「障害者雇用は社会的責任であり、使命であると考えています。障害者雇用を永続させるためには、補助金目的ではなく、持続可能な業務に取り組まなければならないと考えています。農業への取組みはその一つで、埼玉県熊谷市に事務所を構え、農福連携企業や農業法人のみなさんの協力を得て、玉ねぎや白菜の路地栽培のほか、ハウス栽培での育苗(いくびょう)、オリーブ栽培などを行っています。また関連事業として、オリーブオイルなど、収穫したオリーブを活用した商品づくりやノベルティ商品づくりなどにも取り組んでいます。今年は、酒米づくりも始め、11月10日に稲刈りを一緒に行いました。農地は3年後には3ヘクタールまで広げたいと計画しています」と、代表取締役社長の南(みなみ)丈裕(たけひろ)さんは話す。  イーピービズでの障害者雇用の取組みや計画は、親会社であるEPSホールディングスの経営陣にも役員会で発表しており、社内向けのポータルサイトでは逐次紹介している。「今後は飲食店にも取り組みたい」とも話してくれた。 リラクゼーション部門とオフィスWorkサポート部門  今回は埼玉県熊谷市での「農業事業」の見学はできなかったが、「リラクゼーション」と「オフィスWorkサポート」部門を取材させていただいた。  リラクゼーション部門は、東京に16人、大阪と名古屋にそれぞれ2人ずつ障害のある社員が配置されている。スタッフは定期的に集まって研修を行い、技術を高めている。  本社のあるビルにはグループ企業が集まり、東京に配置されている障害のある社員16人中15人が働いている。リラクゼーションルームに入ると個室が3室あり、予約した社員の方々が福利厚生の一環として施術してもらえる仕組みである。社員は1人月5回まで利用でき、1回あたりの個人負担額は200円とリーズナブルで、何ともうらやましいかぎりである。  篠田(しのだ)明(あきら)さんは、ヘルスキーパーとして勤続年数5年。「企業のなかでチームの一員として、みんなで協力しながら勤務できることにやりがいを感じている」と話してくださった。  矢部(やべ)美佳子(みかこ)さんは、ヘルスキーパーとしてのキャリアは5年あるが、イーピービズには5月に入社したばかりである。「お客さまがたくさんいらしてくださり、施術ができることが楽しい。施術する機会が多いので技術も身につく」と話してくださった。  オフィスWorkサポート部門では、パソコンの入力作業や、リラクゼーション部門のクリーニングされた施術着やタオルなどを整理していた。この部門には現在15人の障害のある社員が配置されていて、近隣のビルを含めて3拠点で働いている。  この部門で働く茂木(もぎ)元貴(もとき)さんは「シュレッダーやウォーターサーバーの取り換え、クリーニングされた施術着・タオルの整理などをやっています。9月に入社したばかりで、最初は緊張していましたが、だいぶ慣れてきたところです。期待されすぎるとプレッシャーになりますが、がんばりたい」と話してくださった。 支援者の声  リラクゼーションとオフィスWorkサポートのグループリーダーを務める植田(うえだ)敦子(あつこ)さんは、知的障害のある方を支援して約9年のキャリアがある。イーピービズでは、社員としてさまざまな障害のある方が働いているため、障害特性が一人ひとり異なり、「どこまでが合理的配慮か」と迷うことも多いという。そうした悩みがある一方で、できなかったことができるようになり、勤怠が安定してくると、仕事を楽しんでいる様子が見える。  「イキイキとした表情に変わっていく様子を、目の当たりにできる醍醐味があります」と笑顔で話してくださった。  職場内障害者サポーターの原田(はらだ)知子(ともこ)さんは、イーピービズが初めての支援現場で、勤めてまだ1年という。  「何もわからない、知らないからこそ、話をお聞きすることを大事にし、おやっ≠ニ思ったらどんな小さなことでも声をかけます。世間話を大事にして、会話のなかから少しずつ相手を知るように心がけています。話しているうちに見えてくることがあるし、もし話しかけた際に反応がなくても、続けることで違いがわかるようになるので、毎日新しい発見があります」と意気込む笑顔がすがすがしかった。  最後に、イーピービズの執行役員で、障害者雇用促進担当の田添(たぞえ)浩子(ひろこ)さんにお話をうかがった。実は田添さんは、前出のリンクラインの取材に同行していただいた。まだ設立間もないイーピービズにとって、リンクラインの取組みが参考になるのではと思い、お声がけした。  「今回、リンクラインの取材に同行させていただき、設立時より会社の舵を取ってこられた神原さんの『障害者(当事者)の親亡き後まで責任を負う覚悟』という言葉がとても印象的でした。こうした覚悟を持ったうえで、特例子会社の事業を行うことが事業を成功させるカギ≠フように感じました」と田添さんは話す。  また、イーピービズの今後については、「障害のある社員の能力アセスメントと、本人の希望をマッチさせるような働き方ができればと考えています。そのために、農業事業という選択肢も活かせるように、これからも取り組んでいきたい」と話してくださった。 2社の取材を終えて  相談支援専門員として企業の障害者雇用を支援するなかで、年金を受給されていない精神障害のある人が、「手取り10万円余りでは暮らしていけない」と離職されるところを目(ま)の当たりにしたことがある。障害のある人の就労を支援する制度は整ってきたものの、労働時間や賃金など、一人ひとりの障害特性やニーズに応じた働き方にはほど遠いと感じている。  「就労支援事業所は就職率を上げることのみに躍起(やっき)となり、障害のある人自身の望む働き方ができる企業開拓はできているのであろうか」、「企業は雇用率ありきで、障害者雇用率の算定基準ギリギリの労働時間・賃金に留まっているのではないか」などの疑問を感じることもある。  制度をうまく活用すれば、就労支援事業所などとの連携により、企業は収益性の高い事業と労働の質の向上を図ることができる。また就労支援事業所は「働きたい」という障害のある人と企業をマッチングし、働き出してから困ったことがあれば、企業と就労支援事業所が忌憚(きたん)なく意見交換できる仕組みや、就労定着支援の制度も整ってきているはずなのにである。  今回、このような疑問の解消や解決につながるのではないかという期待をもって、取材を行った。  「リンクライン」では、いろいろな作業種目と工程があり、障害のある社員の能力と本人の希望をうまく組み合わせて最適化を図っていた。また、「特例子会社で働くのは厳しい」という人のために、「すぐに雇用できないのであれば、戦力になれるように」と就労支援事業所を立ち上げ、一般就労に向けた支援も行っている。すぐに企業で働けない人も含めて「どうすればできるようになるか」を、スタッフみんなが本気で考えている。  「イーピービズ」では、本社でのオフィスワークやマッサージ業務がむずかしい人のために、農業≠ニいう新たな選択肢を設けている。障害のある社員の能力と、本人の希望を組み合わせた働き方ができるような仕組みにチャレンジ中である。  2社に共通しているのは、障害のある人の働き方は「一律ではない」という考え方であった。ゆっくり働きたい人にはそのような働き方を、給与で自分の生活を支えキャリアアップを図りたい人にはそのような働き方を模索している。さまざまな働き方を準備することで、多くの人が「喜びと生きがいを持って働ける」仕組みを常に考えている。  一人ひとりに合った働き方を見つけ、実現するためにどうすればよいか。答えは、リンクラインでお聞きした「障害のある彼らと向き合うことは他人事ではなく自分事。本気で取り組まなくては、力を発揮してくれない。できないと決めつけてあきらめない。自分がそうしてほしいから、彼らができるようになるまで全力で付き合う」という言葉にあると感じた。  理想かもしれないが、多様な働き方ができる企業がもっともっと増えてほしいと願う。同時に、就労支援事業所はそのような企業と連携し、マッチングを図り、企業の戦力となれる人材育成をしてほしいと願う。 ※1 インクルーシブ:社会的包摂、社会的包容のこと ※2 バリ取り:不要な突起を研磨する作業 写真のキャプション リンクライン取締役会長の神原薫さん リンクライン代表取締役の青野真幸さん 工場内で製造過程を説明する神原さん(左) まるでお菓子やフルーツのような自社ブランド「li'ili'i」の石鹸 固まった石鹸を慎重に型から外す 加熱された液体状の石鹸をシリコン型に流し込む 熊谷市で行われた田植えの様子(写真提供:株式会社イーピービズ) グループ企業が集まる本社のビルにあるリラクゼーションルーム イーピービズ代表取締役社長の南丈裕さん リラクゼーション部門で働く篠田明さん 武田委員をマッサージする矢部美佳子さん クリーニングされた施術着を整理する茂木元貴さん イーピービズ執行役員で障害者雇用促進担当の田添浩子さん 農業・工房グループの職場内障害者サポーターの原田知子さん リラクゼーションとオフィスWorkサポートのグループリーダー、植田敦子さん 【P26-27】 霞が関だより 令和元年 障害者雇用状況の集計結果@ (令和元年6月1日) 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課  厚生労働省では、障害者雇用促進法に基づいて、障害者の雇用義務がある事業主などから、毎年6月1日現在の身体障害者、知的障害者および精神障害者の雇用状況について報告を求めています。  令和元年6月1日現在における同報告を集計し、その結果をとりまとめました。 1 ポイント ■民間企業(法定雇用率2・2%) ○雇用障害者数56万608・5人と過去最高を更新 ○実雇用率2・11%、法定雇用率達成企業の割合は48・0% ■公的機関(同2・5%、都道府県などの教育委員会は2・4%) ○国:雇用障害者数7577・0人、実雇用率2・31% ○都道府県:雇用障害者数9033・0人、実雇用率2・61% ○市町村:雇用障害者数2万8978・0人、実雇用率2・41% ○教育委員会:雇用障害者数1万3477・5人、実雇用率1・89% ■独立行政法人など(同2・5%) ○雇用障害者数1万1612・0人、実雇用率2・63% 2 民間企業における雇用状況 ◎雇用されている障害者の数、実雇用率  民間企業(45・5人以上規模の企業:法定雇用率2・2%)に雇用されている障害者の数は56万608・5人で、過去最高となった。  雇用者のうち、身体障害者は35万4134・0人、知的障害者は12万8383・0人、精神障害者は7万8091・5人と、いずれも前年より増加した。  実雇用率は、過去最高の2・11%、法定雇用率達成企業の割合は48・0%であった(第1表)。 ◎企業規模別の状況  企業規模別にみると、雇用されている障害者の数は、45・5〜100人未満規模企業で5万6679・5人、100〜300人未満で11万1128・0人、300〜500人未満で4万9399・5人、500〜1000人未満で6万5439・5人、1000人以上で27万7962・0人と、すべての企業規模で前年より増加した。  実雇用率は、民間企業全体の実雇用率2・11%と比較すると、 *500〜1000人未満規模企業(2・11%)、1000人以上規模企業(2・31%)については実雇用率以上となった。 *45・5〜100人未満規模企業(1・71%)、100〜300人未満規模企業(1・97%)、300〜500人未満規模企業(1・98%)は下回った。  なお、法定雇用率達成企業の割合は、45・5〜100人未満規模企業で45・5%、100〜300人未満規模企業で52・1%、300〜500人未満規模企業で43・9%、500〜1000人未満規模企業で43・9%、1000人以上規模企業で54・6%であった(第2表)。 【第1表】民間企業における雇用状況(法定雇用率2.2%) 区分 @企業数 A法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 B障害者の数 A.重度身体障害者及び重度知的障害者 B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 E.計A×2+B+C+D×0.5 F.うち新規雇用分 C実雇用率E÷A×100 D法定雇用率達成企業の数 E法定雇用率達成企業の割合 民間企業 企業 101,889 (100,586) 人 26,585,858.0 (26,104,834.5) 人 121,377 (117,892) 人 16,845 (16,026) 人 278,430 (262,305) 人 45,159 (41,309) 人 560,608.5 (534,769.5) 人 62,015.0 (60,491.5) % 2.11 (2.05) 企業 48,898 (46,217) % 48.0 (45.9) 注1 A欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数」とは、常用労働者総数から除外率相当数(身体障害者、知的障害者及び精神障害者が就業することが困難であると認められる職種が相当の割合を占める業種について定められた率を乗じて得た数)を除いた労働者数である。 注2 BA欄の「重度身体障害者及び重度知的障害者」については法律上、1人を2人に相当するものとしており、E欄の計を算出するに当たりダブルカウントを行い、D欄の「重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者」については法律上、1人を0.5人に相当するものとしており、E欄の計を算出するに当たり0.5カウントとしている。  ただし、精神障害者である短時間労働者であっても、以下の注4に該当するものについては、1人分とカウントしている。 注3 A、C欄は1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者であり、B、D欄は1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者である。 注4 C欄の精神障害者には、精神障害者である短時間労働者であって、次のいずれかに該当する者を含む。  @ 平成28年6月2日以降に採用された者であること。  A 平成28年6月2日より前に採用された者で、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること。 注5 D欄の精神障害者である短時間労働者とは、精神障害者である短時間労働者のうち、注4に該当しない者である。 注6 F欄の「うち新規雇用分」は、平成30年6月2日から令和元年6月1日までの1年間に新規に雇い入れられた障害者数である。 注7 ( )内は平成30年6月1日現在の数値である。  なお、精神障害者は平成18年4月1日から実雇用率に算定されることとなった。 【第2表】民間企業における企業規模別の障害者の雇用状況 区分 @企業数 A法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 B障害者の数 A.重度身体障害者及び重度知的障害者 B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 E.計A×2+B+C+D×0.5 F.うち新規雇用分 C実雇用率E÷A×100 D法定雇用率達成企業の数 E法定雇用率達成企業の割合 規模計 企業 101,889 (100,586) 人 26,585,858.0 (26,104,834.5) 人 121,377 (117,892) 人 16,845 (16,026) 人 278,430 (262,305) 人 45,159 (41,309) 人 560,608.5 (534,769.5) 人 62,015.0 (60,491.5) % 2.11 (2.05) 企業 48,898 (46,217) % 48.0 (45.9) 45.5〜100人未満 50,055 (49,370) 3,316,709.0 (3,275,003.0) 10,237 (9,985) 2,935 (2,864) 28,881 (28,006) 8,779 (8,174) 56,679.5 (54,927.0) 6,927.0 (6,838.0) 1.71 (1.68) 22,796 (21,794) 45.5 (44.1) 100〜300人未満 36,578 (36,173) 5,646,290.5 (5,582,387.5) 21,816 (21,207) 4,811 (4,496) 56,463 (54,188) 12,444 (10,847) 111,128.0 (106,521.5) 13,627.5 (13,696.5) 1.97 (1.91) 19,041 (18,127) 52.1 (50.1) 300〜500人未満 7,031 (6,965) 2,492,011.0 (2,469,779.5) 10,538 (10,226) 1,682 (1,538) 24,629 (23,052) 4,025 (3,670) 49,399.5 (46,877.0) 5,727.5 (5,307.5) 1.98 (1.90) 3,087 (2,795) 43.9 (40.1) 500〜1,000人未満 4,820 (4,720) 3,099,057.0 (3,036,954.5) 14,124 (13,852) 1,927 (1,792) 32,903 (30,719) 4,723 (4,386) 65,439.5 (62,408.0) 7,675.5 (7,339.5) 2.11 (2.05) 2,115 (1,895) 43.9 (40.1) 1,000人以上 3,405 (3,358) 12,031,790.5 (11,740,710.0) 64,662 (62,622) 5,490 (5,336) 135,554 (126,340) 15,188 (14,232) 277,962.0 (264,036.0) 28,057.5 (27,310.0) 2.31 (2.25) 1,859 (1,606) 54.6 (47.8) 注 第1表と同じ 【P28-29】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 障害者雇用に「就労パスポート」  厚生労働省は、障害者の就職や就職後の職場 定着をうながす情報共有ツール「就労パスポート」を作成した。雇用事業主や就労支援機関が、障害者の働くうえでの特徴やアピールポイント、希望する配慮などの情報を共有することで、障害者の望む働き方とのミスマッチを防ぐ。  パスポートの使い方を解説した手引きも「障害者向け」、「事業主向け」をつくり、パスポートの様式とともにホームページに掲載、自由にダウンロードして使える。障害種別は問わず、使用するかどうかは本人の自由としている。パスポートの記入項目は「職務経験」、「体調管理と希望する働き方」、「コミュニケーションの特徴」、「作業遂行面の特徴」に分け、選択肢のなかから自分に当てはまるものに印をつけるほか、自由記述もできる。 農林水産省 障害者が生産にたずさわった食品を認証する「ノウフクJAS」スタート  農林水産省は、農福連携推進の一環として農業分野において障害者が生産にたずさわった食品を日本農林規格(JAS)として認証する「ノウフクJAS」をスタートさせた。  登録認証機関「一般社団法人日本基金」(東京都)により第1号として4事業者が認証を受けた。「株式会社ウィズファーム」と「株式会社ひだまり」(いずれも長野県)はリンゴやリンゴジュースなどの生産加工、「山城就労支援事業所さんさん山城」(京都府)はお茶やえび芋などの生産加工、「特定非営利活動法人すまいる」(愛知県)はナスやオクラなどの生産を行っている。 地方の動き 東京 「ソーシャルファーム」創設促進条例施行  障害者などの就労支援を話し合う東京都の有識者会議(座長・白木(しらき)三秀(みつひで)早稲田大学教授)は、就労がむずかしい人の雇用に積極的な企業「ソーシャルファーム」の認証を含めた企業への財政支援など、支援の方向性をまとめた報告書を小池百合子知事に提出。2019(令和元)年12月、都議会でソーシャルファームの認証制度の創設などを盛り込んだ条例が成立、施行された。  ソーシャルファームとは、企業活動をしながら障害者や生活困窮者などの就労支援に取り組む社会的企業を意味する。1970年代に誕生し、欧州を中心に浸透している。 静岡 障害者アートを企業に貸出し  静岡県は、障害者が制作したアート作品を企業や行政機関に有料で貸し出す「まちじゅうアート」をスタートさせた。レンタル料の一部を作者に還元し、障害者の社会参加促進や制作意欲の向上につなげる。事業は委託先の「特定非営利活動法人アートコネクトしずおか」(静岡市)が障害者アートの作品を募集・発掘するほか、企業などへの作品展示を働きかける。  レンタル料は、絵画1枚につき1カ月3千円(税込)、複製画は1カ月8千円(税込)に設定。作者の報酬は30%で、1枚ごとに毎月900円(複製画は2400円)が還元される。 大分 障害者の芸術文化活動を支援  大分県が事業費を負担する「おおいた障がい者芸術文化支援センター」が大分市にオープンした。創作や発表、鑑賞機会の提供を通じて、障害者の芸術文化活動の普及に向けた拠点づくりを目ざす。県内では「第18回全国障害者芸術・文化祭おおいた大会」を開催した成果を継承し、センターを整備してきた。障害のある人の芸術作品の展示会企画や活動支援に必要な知識を学ぶ講座の開催などを予定している。 生活情報 東京 ユニバーサルデザインの新国立競技場が完成  東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる「新国立競技場」(新宿区)が完成した。障害者や子育て中の人たちの視点に立ったユニバーサルデザイン(UD)を目ざす工夫が施されている。  工事にあたり、障害者や子育てグループなど、計14団体とワークショップを開き、当事者の意見を聞いた。さまざまな利用者を想定した5種類の個室トイレや、知的・精神・発達障害の人が気持ちを落ち着かせるための休憩室「カームダウン・クールダウン」もつくられた。車いす用トイレのボタンの位置や視覚障害者に配慮した色、ひらがな表記など細かなニーズも反映した。 東京 タクシーでの車いす対応改善を国土交通省に要望  車いすのまま乗車できるユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)を巡り、障害者団体「DPI日本会議」(千代田区)は、国土交通省に顧客対応の改善を求める要望書を提出した。DPI日本会議が昨年10月に実施した実態調査で、参加した延べ120人の3割が「乗車できなかった」と答えていた。  国土交通省は、東京五輪・パラリンピックを見据えUDタクシーと福祉タクシー計4万4千台を普及させる目標を掲げ、事業者に乗車拒否しないよう求める通達も出している。車両導入で補助金を受ける条件として、乗り降りする際にスロープを設置するなどの研修を条件として設けた。しかし事業者や地域によって対応の差が大きく、研修を受けていない運転手もいた。「電動車いすは乗車できない」、「乗るには30分以上かかる」などの誤った認識も見受けられたとして研修や指導の徹底を求めた。 働く 東京 IT特化し障害者の就労支援  障害者雇用支援事業を手がける「パーソルチャレンジ株式会社」(港区)は、IT特化型就労移行支援事業所「Neuro Dive(ニューロダイブ)」を開設した。人工知能(AI)や機械学習、データサイエンスなどの先端IT領域で障害者の職域拡大を目ざす。ニューロダイブでは、オンライン学習サービス「Udemy(ユーデミー)」などを活用し、IT領域のスキルを学習。国家資格を保有したキャリアコンサルタントとITに詳しいスタッフを配置し、特性に沿った支援も行う。 島根 障害者施設にポップコーン工房  障害者就労継続支援施設「レッツビギン」(江津市(ごうつし))に、ポップコーンを製造販売する工房がオープンした。ポップコーンはスタッフが調理し、軽度の知的障害などがある市内の20〜60代の利用者7人が袋詰めやシール貼り、計量などの作業を担当する。味はキャラメル、チョコレートなど約30種類で、工房や県内のスーパー、道の駅、病院などで販売する予定。 本紹介 『職場のあの人、もしかして発達障害?と思ったら』  発達障害者専門キャリアカウンセラーの木津谷(きづや)岳(たかし)さんが『職場のあの人、もしかして発達障害?と思ったら』(秀和システム刊)を出版した。「部下の能力が極端に凸凹だ」、「同僚から『実はADHDなんだ』といわれた」、「障害者雇用の進め方を知りたい」といったさまざまな職場での悩みに答え、上司や同僚、人事・採用担当者の立場から、発達障害の人や発達障害かもしれない人と上手につき合い、ともに働くためのアドバイスをする。  著者の木津谷さんは、東京都産業労働局所属。一般企業で障害者雇用にたずさわったのち、行政の立場で障害者雇用の促進にかかわっている。B6変形判184ページ、1000円(税別)。 イベント 東京 「就労に向けた障害のある学生支援」講演会  目黒区と「特定非営利活動法人目黒障害者就労支援センター」が「目黒区障害者就労促進フェア」を2月28日(金)13時から「めぐろパーシモンホール」(目黒区八雲1−1−1)で開催する。  今年度のテーマは「就労に向けた障害学生の支援」。障害のある学生の進路が多様化するなか、大学における学生支援体制、特別支援学校や家庭での就労に向けた取組みなどについて、現場でかかわる3人が講演。就労支援センターが支援して就職・定着に至った実際の事例なども交えて紹介する。参加費は無料(申込制。定員になり次第締切)。申込・問合せは、目黒障害者就労支援センターへ。 電話:03−5794−8180 E-mail:meguro-s@01.246.ne.jp 2019年度 地方アビリンピック開催予定 2月 東京都、京都府、香川県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *東京都、京都府、香川県以外の県は開催終了 地方アビリンピック 検索 【P30】 掲示板 好評配信中!  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、当機構が全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に、みなさまに配信しています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当者のみなさま、必読! 高齢 超高齢社会の人材確保 障害 障害特性に応じた配慮の方法 求職 ものづくり技術伝承や人材育成 みなさまの「どうする?」に応えるヒントが、見つかります! ※カメラで読み取ったリンク先がhttp://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 次号予告 ●私のひとこと  ICTと福祉の研究をされている関西学院大学教授の生田正幸さんに、障害者の社会参画に向けたICTの活用などについてご執筆いただきます。 ●職場ルポ  大丸や松坂屋などの百貨店事業を展開するJ・フロントリテイリング株式会社の特例子会社、株式会社JFRクリエ(大阪府)を訪問。雇用管理で工夫されている事例を取材します。 ●グラビア  就労継続支援B型事業所などを運営するアクティブ から・ころ(山形県)の、「謙信せんべい」の製造所で活躍する障害のある方をご紹介します。 ●「『働く広場』公開座談会」採録  昨年12月5日(木)に開催された公開座談会「精神障害者雇用は今! 〜雇用継続のヒントを探る〜」の採録を掲載します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■ 声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ http://www.jeed.or.jp メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 2月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和2年1月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 株式会社ダイナン 経営補佐 樋口克己 東京通信大学教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 横河電機株式会社 箕輪優子 【裏表紙】 第40回全国アビリンピック 障害者ワークフェア2020 令和2年11月13日(金)−11月15日(日) 愛知県国際展示場(中部国際空港徒歩5分) 2月号 令和2年1月25日発行 通巻509号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)