【表紙】 令和2年3月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第511号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2020 4 No.511 職場ルポ OA機器修理までこなす「職人」を育てる リベラル株式会社(東京都) グラビア 最後の挑戦 〜銀賞の悔しさをばねに〜 株式会社U&U(山梨県) 阪本祐介さん 編集委員が行く 障がいのある社員の加齢問題への挑戦 株式会社富士電機フロンティア(神奈川県) クローズアップ はじめての障害者雇用 第1回 「うしのせわをしたいな」鹿児島県・須賀(すが)弘希(ひろき)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 4月号 【前頁】 心のアート さあ、手をつなごう! 世界は一つだ! 杉原将太 (NPO法人サポートセンターどりーむ) 素材:画用紙、色鉛筆 サイズ:257×364mm 僕は外国の人が大好きです。 ですから言語で世界をつなげたいです。 戦争や人種差別など、実にもったいないことだと思います。 そんな思いで、この絵を描きました。 「さあ、手をつなごう! 世界は一つだ!」 違う言葉だからこそ、可能性が広がるのです。 ともに生きよう! ですね。 杉原将太(すぎはら しょうた) 高校2年生ぐらいのとき、統合失調症と医師から診断されました。 出身は島根県出雲市で、1989(平成元)年6月1日生まれです。 その後8歳ぐらいまで広島県にいました。 生まれたときは未熟児で、保育器に入っていました。 島根県松江市の小学校時代、隣の組にテニスで有名になった錦織(にしこり)圭(けい)選手がいました。 いまとなってはいい思い出ですし、自慢話ですね。 昔、僕自身が統合失調症でつらい時期があったため、次の世代に命の大切さを伝えたいです。 趣味は体操、英語、外国語です。 文:杉原将太 【もくじ】 障害者と雇用 働く広場 目次 2020年4月号 NO.511 心のアート−−前頁 さあ、手をつなごう! 世界は一つだ! 作者:杉原将太(NPO法人サポートセンターどりーむ) この人を訪ねて−−2 CADに特化した就労支援で戦力化 株式会社白石設計 代表取締役 白石光廣さん 職場ルポ−−4 OA機器修理までこなす「職人」を育てる リベラル株式会社(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ−−10 はじめての障害者雇用 第1回 JEEDインフォメーション−−12 令和2年度 障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請が令和2年4月1日から始まります グラビア−−15 最後の挑戦 〜銀賞の悔しさをばねに〜 株式会社U&U(山梨県) 阪本祐介さん 写真:小山博孝・官野貴/文:官野貴 エッセイ−−19 第4回 発達障害を活かすということ −人と違う感性を強みに− 内閣府地域働き方改革支援チーム委員(兼務 株式会社東レ経営研究所) 渥美由喜 編集委員が行く−−20 障がいのある社員の加齢問題への挑戦 株式会社富士電機フロンティア(神奈川県) 編集委員 松爲信雄 省庁だより−−26 パワーアシストスーツの普及拡大が期待されます 特許庁総務部企画調整課 補足資料(編集部) 新たな技術が活用された「障害者就労支援機器」 研究開発レポート−−28 障害者雇用制度の改正等に伴う企業意識・行動の変化に関する研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 ニュースファイル−−30 掲示板・次号予告−−32 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 表紙絵の説明 「動物が好きで、大好きな牛に触ったり、えさやりをしたいと思って描きました。細かい部分の色塗りや、人の動き、特に手や指を描くのに苦労しました。受賞を聞いて、家族と一緒に大喜びしました。最近は、ボール運動が好きで、元気いっぱい活動しています」 (令和元年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp) 【P2-3】 この人を訪ねて CADに特化した就労支援で戦力化 株式会社白石設計 代表取締役 白石光廣さん しらいし みつひろ 1960(昭和35)年生まれ。1982年、大阪工業技術専門学校建築学科卒業。機械設計会社の勤務などを経て1997(平成9)年に有限会社白石設計を設立(2011年に株式会社白石設計へ変更)。2012年にNPO法人サスケ工房設立。福祉住環境コーディネーター2級、介護福祉士の資格も取得。2019年、サイバー大学IT総合学部卒業。 元同僚の退職で後悔 ――設計会社が就労継続支援A型事業所(以下、「A型事業所」)をつくったのは珍しいですね。  きっかけを与えてくれたのは、私が以前勤めていた会社の元同僚です。設計士の男性ですが、30代半ばで脳出血を発症し、歩行と会話に少し障害が残りました。仕事自体には影響は少なかったと思いますが、私が知らないうちに退職してしまったのです。その後、私が設計会社を立ち上げ、ハローワークでCAD設計士の求人票を出した際に、「身体障害のある人でよい人がいます」と紹介されたのが、その元同僚でした。  私は再会を喜び、彼の仕事ぶりも知っていましたから即採用しました。ところが1年ぐらいして依願退職されてしまったのです。通勤途中に転倒するなどの小さなトラブルもありましたが、それよりも本人は社内でコミュニケーションがうまく取れないことを気にしていたようでした。後になって、職場の社員たちも彼と一緒に仕事をすることに戸惑(とまど)っていたことを知りました。障害のある人を受け入れる職場環境について、もっと考えるべきだったという後悔だけが残りました。  しばらくして「就労移行支援」という言葉を初めて耳にしました。愛媛県松山市で就労移行支援事業を手がけるNPO法人から「図面作成の仕事ができる人を採用しませんか」と相談があったのです。このときは、わが社の主要業務である鉄骨製作図面が、その方の専門ではなかったためマッチングできませんでした。ただ同じころ、知り合いのIT関連会社でも就労移行支援事業を行っていると聞き、この二つの事業所を見学できました。そこで「障害があっても適切なバックアップをすれば十分働ける」ことを知り、白石設計のある新居浜(にいはま)市でも障害者の雇用支援にかかわる場所をつくろうと思い立ったのです。  就労移行支援事業所(※1)のほかに、就労継続支援事業所(※2)にはA型とB型があることも知り、関係者の人たちに相談したところ「設計業務を活かしてA型事業所として仕事をしてもらえばよいのでは」と助言されました。そして2012(平成24)年に設立したのが「NPO法人サスケ工房」です。 設計図チェック作業で実績 ――「サスケ工房」の運営はどのように進めていったのですか。  まずは会社の1階部分を事業所に改装し、利用者5人からスタートしました。30代から50代の身体障害や内部障害、精神障害のある方たちでした。設計関係にかかわっていたことがあるのは1人だけでしたが、パソコン操作に興味のある方ばかりでした。新聞記事を見てわざわざ今治(いまばり)市から新居浜市に引っ越してきた方もいましたね。  福祉分野での勤務経験がある人にサービス管理責任者として来てもらい、私が職場管理者としてCADの操作方法などを一から教えていきました。実務に直結するよう、建築法規や図面の基本知識なども学んでもらいました。  開所当初は、私が利用者の自宅訪問などをしながら連絡や連携が取りやすい環境づくりに努め、慣れてきたころから白石設計の社員が交代で指導に入るようになりました。いまでは完全に任せています。  実際にサスケ工房の利用者の方たちに取り組んでもらう業務は、鉄骨設計図のチェックです。早ければ1カ月ほどの研修で、仕事として任せられるようになる人もいます。細かい数字や図面の変更点を見つけるのが得意な人も少なくありません。また、工房で手が回らなくなったり、小さなトラブルが生じた場合、白石設計の社員たちでカバーできるという点は、運営を成り立たせていくうえで大きな強みです。実績が認められ、図面チェックを依頼してくる取引先も増えました。 ――CADを学ぶ人も、現在はずいぶん増えたそうですね。  いまでは同様のA型事業所が四国内7カ所に増え、利用者は約270人になっています。そのうち在宅ワークの方も50人弱います。もともと白石設計では設計業務の半分ほどを外注しており、在宅ワークの導入も早かったので、特に問題なく広げることができました。ただし、利用者のなかには1年かかってもCAD操作に慣れないという人もいるので、その場合はICT(情報通信技術)事業に関する業務をお願いしています。  勤務形態は1日4時間勤務の方が多く、工賃は月7万円前後です。8時間フルタイム勤務の方は月16万円ほどになります。また、キャリアを積んだ10人の方は指導員として雇用しています。給与形態は白石設計の社員と同じです。  近年はアビリンピックに挑戦する人も出てきました。挑戦経験のある人から「引き続き出場したい」との申し出があり、バックアップしています。2018年の全国アビリンピック沖縄大会には、表計算の種目に2人が出場し、全国の高いレベルを知るよい機会になりました。今後はCAD種目にもチャレンジできればと思っています。 ――新たに立ち上げた、就労移行支援事業所についても教えてください。  A型事業所はCADに特化した業務なので、ほかの仕事をしたいという人たちを就労に結びつけられるよう、2018年11月に「就労移行支援事業所サスケ・アカデミー新居浜」を開所しました。ここではおもにパソコンスキルの習得を目ざしています。ただ実際に立ち上げてみたら、予想していたほど需要がありませんでした。「地方では、就労移行支援サービスに対するイメージがよくないのかな」と感じています。「就労移行支援事業所は、特別支援学校からA型事業所やB型事業所などにつなぐだけでしょう」といわれることもあります。サスケグループのなかでも、雇用型であるA型事業所のほうが相変わらず人気で、いまも予約待ち状態です。  ちなみにサスケ・アカデミー新居浜では、1年ほどで5人の利用者が県庁や大手企業系列会社などに就職できました。このまま実績を上げていけば、理解がより広がるのではないかと期待しています。 社内の一部署のような存在 ――あらためて、障害者雇用についての考えをお聞かせください。  私が日ごろ実感しているのは、障害種別というよりも一人ひとり苦手なことや得意なことが違うのだということです。特にCAD・パソコン技術にかかわる専門職の仕事に関しては、感性や記憶力などで素晴らしい能力を見せてくれる方が多いです。福祉や医療面での適切なサポートがあれば、個々の能力を活かし、戦力として十分に活躍できると思っています。  一方、私たちのような設計会社は、どうしても取引先との関係が密になり、柔軟な対応が求められるため、負担が大きくなると予想されます。いまのように社員が業務を受けつける窓口となり、ワンクッション置いて、そこから仕事を割りふる方法が、結局は全員にとって無理がない方法かと思っています。社員とのやりとりも含めて、サスケ工房は社内の一部署のような存在になっていますね。  今春には、四国外にも就労移行支援事業所を立ち上げます。テレワーク業務を増やしながら、多くの利用者の働く意欲に応えたいですね。みんなで知恵や力を出し合いながら、障害のある方の雇用環境を少しでも充実させていけたらと考えています。 ※1 就労移行支援事業所:企業などで働きたい障害のある方が、就職するために必要なスキルや能力などを身につける場所 ※2 就労継続支援事業所:一般企業などの団体に就職することが困難な障害者に提供される仕事の場 【P4-9】 職場ルポ OA機器修理までこなす「職人」を育てる ―リベラル株式会社(東京都)―  「日本一きれいな中古OA機器」をスローガンに、10年あまりで躍進した特例子会社がある。大手メーカーもうならせる職人技が生まれた舞台裏を訪ねた。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ リベラル株式会社 〒134-0088  東京都江戸川区西葛西3-8-18 西葛西3丁目ビル2階 TEL 03-6744-8800 FAX 03-6744-8801 Keyword:特例子会社、知的障害、精神障害、ハローワーク、中古OA機器リサイクル・販売 POINT 1 既存業務からではなく、廃案となった新規事業案を見直し、業務を創出 2 本人の意欲と適性を見極めつつ、技術職の領域まで職域を拡大 3 「製販一体型」の職場で、社員の達成感も危機感も共有 4 障害者雇用は「のん気、根気、元気」の精神で 「勧告」から特例子会社設立へ  法人向けのオフィス情報化支援事業を手がける「ラディックス株式会社」(以下、「ラディックス」)は、2008(平成20)年に特例子会社「リベラル株式会社」(以下、「リベラル」)を設立した。  7人(うち障害のある人は5人)からスタートしたリベラルの従業員は、いまでは35人。そのうち障害のある人が26人(知的障害20人、精神障害4人、身体障害2人)で、グループ全体の障害者雇用率は3・49%(2019〈令和元〉年6月1日現在)になる。2017年に「東京都障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を受賞、2019年には厚生労働省「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰 キラリと光る取り組み賞」を受賞した。  「実は会社設立のきっかけは、ハローワークからの『勧告』でした」  ラディックスの人事総務部からリベラルに転籍し、クラフトマンシップ事業部管理課の課長を務める佐久間(さくま)賢(けん)さんが経緯を説明してくれた。  ラディックスが従業員300人を超えた2004年ごろ、ハローワークの障害者雇用担当者がラディックスの人事総務部を訪れた。当時の法定雇用率1・8%を達成できていなかったラディックスに対し、納付金を納める必要があることを説明されたという。  すぐに佐久間さんたちは民間の求人情報サイトに広告を出し、3人(身体障害2人、精神障害1人)を直接雇用したが、職場になじめず定着できなかった。そして雇用率0・5%となった2005年、ハローワークから「障害者雇い入れ計画作成命令」が出た。計画作成はしたものの数字はクリアできず、2007年10月にハローワークから呼び出しを受けた。佐久間さんと人事本部長、人事総務部長の3人が出向き、そこで勧告書を手渡され「このままでは社名を公表することになります」といわれたという。  ラディックス社内での直接雇用が行き詰まっていた状況から、特例子会社設立の検討がなされた。当時の従業員は約600人に増えていた。相談におもむいたハローワークでは「その規模の会社では、特例子会社をつくるのはむずかしい」といわれたが、アドバイザーとして同席した大手企業特例子会社の元社長は「若い君たちの熱意があれば大丈夫」と背中を押してくれたそうだ。  半年後の2008年4月の設立に向け、当時、事業企画室にいた取締役事業部長の上田(うえだ)庸司(ようじ)さんと、志望した佐久間さんの2人が担当となった。まずは業務を確保するため各部署を回り話を聞いたが、「メール便やシュレッダーの量はたかが知れている」とそっけなくいわれ、社内の既存業務からは仕事を切り出しにくいことがわかった。  そこで上田さんが、かつて事業企画室で承認されなかった新規事業案を見直してみた。そのなかにあったのが、中古OA機器の販売だ。  ハローワークに依頼して面接会を開催し、20人の応募のなかから20〜40代の知的障害のある5人を採用した。 中古のコピー機をクリーニング  佐久間さんたちはまず、コピー機の中古品を仕入れ、クリーニングをして再販売するという道筋を立てた。技術的な知識がないため、とりあえずホームセンターで清掃用品を買い集め、コピー機を可能なかぎり分解し、手さぐりで独自のクリーニング方法を考えていったそうだ。  同時に、採用した5人に仕事を教えたが、覚えてもらうまでは予想以上に試行錯誤したという。ある人は作業を一つ教えて「わかった?」と確認すると必ず「わかった」と答えてくれるが、実際はできなかった。また、作業中に作業がうまくいかずパニック状態になり、突然大声を上げる人や、ひらがなが読めない人もいた。それぞれマンツーマンで教えながらマニュアルを何種類もつくった。  リベラルは最初から「日本一きれいな中古OA機器をつくろう」というスローガンを立てていた。だれも目にしないような部分も、新品同様になるよう磨き上げる。汚れが落とし切れていなければ、佐久間さんが「こうすれば、こんなに変わるよ」とやってみせた。指示通り作業を続けることで、新品と見間違うほどに仕上がったが、最後は専門職によるメンテナンスが必要となったため、当時、同じビルに入っていたラディックス技術部門の社員にお願いした。  仕上げられたコピー機は3日に1台。しばらくは買い入れた中古品の大部分を、そのまま別の中古取り扱い会社に再度販売することで売上を確保した。自分たちで商品が出せるようになると、今度は顧客の開拓だ。会社の周辺の商店街でチラシを配ったり直接回ったりしながら販売網をつくった。  予想をはるかに上回るたいへんさに、佐久間さんは「最初の数カ月間は、終業後に上田と2人並んで座ったまま、小一時間ほど無言だった日もありましたね」と苦笑いしながらふり返る。  3カ月ほど経ったある日、立ち上げから相談していた就労支援事業所の担当者にSOSを出したことがある。飛んで来た担当者は「障害者雇用はね、のんき、根気、元気でいくんですよ」と助言してくれた。そのとき佐久間さんは肩の力がすーっと抜けたそうだ。「のんき、根気、元気」はリベラルで最も大切にしている合言葉となっている。 通算100回「目標達成パーティー」  半年ほど経つと、社員もひと通りクリーニング作業ができるようになったが、今度は分担がうまくいかなくなった。簡単な作業ばかりやりたがる人や、同じところをくり返し行う人もいた。そこで工程管理表を作成した。作業工程を表にして、終わったところにハンコを押す。仕事への向き合い方についても考えた。「仕事は時間じゃなくて、結果だよ」と伝えるために、1カ月の目標を設定した。  「1カ月でコピー機20台。それを超えた月は達成パーティーをしよう」  佐久間さんが自らたこ焼きをつくったり、商店街で焼きそばなどを買ってきて開く小さなパーティーだが、その日は午後を休みにした。これが明快なモチベーションとなって、飛躍的に生産性が伸びた。いまでは、月に電話機700台、コピー機60台を磨き上げる。目標値は年々上げ続けているが、一度も下回ることなく、2018年には通算100回目の達成パーティーを開催したそうだ。 メンテナンス業務へ拡大  クリーニング作業に電話機が加わり、コピー機の台数も順調に増加した。翌年にはラディックスから念願の技術職社員も異動してきたが、それでもメンテナンス作業が追いつかなくなるほどだった。そんなある日、仲二見(なかふたみ)友二(ゆうじ)さん(26歳)が「メンテナンスをやってみたいです」といってきた。母親からも「本人が希望するなら、時間外勤務となってもよいのでやらせてみてほしい」との話があり、技術職社員の山本(やまもと)憲二(けんじ)さんが指導してみることにした。  仲二見さんには学習障害があったが、漢字を読むことができた。そこで山本さんは、基本的な知識を教えたあとはサービスマニュアルだけで取り組むよう、うながしたという。  「うまくいかないときは、すぐに質問するのではなく『なぜそうなるのか』の答えを自分で導き出すことで、作業内容に対する理解が深まります。その結果、スキルが身につきやすくなるからです」  1カ月後には、ようやく1台のコピー機をメンテナンスできるようになり、半年後には出庫まで1人でできるようになった。いまでは山本さんの右腕的な存在だ。  そんな仲二見さんを慕って2018年に入社したのが磯崎(いそざき)直道(なおみち)さん(24歳)。母校である白鷺(しらさぎ)特別支援学校(東京都江戸川区)を卒業した先輩の働きぶりに感激したという。磯崎さんも漢字が読めたが、入社して1年はメンテナンス作業ではなく、必ずコピー機と電話機のクリーニングからスタートしなければならない。スキルが安定してくると、飽きっぽい性格が表れてきた。それを見逃さなかった山本さんは磯崎さんに、メンテナンス作業への挑戦を提案。「その前にクリーニングで結果を出そう」と発破(はっぱ)をかけ、磯崎さんも奮起したそうだ。  「気持ちを整理し、やるべきことをがんばろうと思えるようになりました。いまは尊敬する先輩と一緒に仕事ができて幸せです」  磯崎さんは休みの日などに自分が通っていた就労移行支援事業所に行き、就職活動中の利用者の相談に乗ったり、アドバイスをしたりしているそうだ。  2016年入社の江口(えぐち)剛(ごう)さん(22歳)も、白鷺特別支援学校での実習がきっかけとなりリベラルへの入社を希望した。ただし、だれもが希望したからといって入社できるわけではない。3カ月間のトライアル雇用の最後に、自分がチームのリーダーとなって先輩3人に指示を出しながら、コピー機3台のクリーニングを3日間で仕上げるという課題に取り組む。江口さんもしっかりこなし、いまではコピー機・電話機のクリーニングのほか、パソコンの解体作業まで担当している。「細かい汚れを残さないよう、ていねいに取り組むことを心がけています」と語ってくれた。  今後の目標は、母校の授業で、講師として後輩たちにしっかり仕事を教えられるようになることだという。リベラルでは、白鷺特別支援学校からの依頼で、クリーニング業務の一部を生徒に体験してもらう授業を続けており、佐久間さんらが週に1回講師として出向いている。江口さんも同行したことがあったが、帰り道で佐久間さんから多くのアドバイスをもらい、メモにしてブラッシュアップしているところだ。 「クラフトマンシップ事業部」  2014年度、親会社のラディックスから初めて業務委託を受けた。「コピー機の修理」だ。販売したコピー機のメンテナンスで必要になる部品ユニットの修理だが、通常ならメーカー研修を受講した技術者が行う、極めて専門的な作業だ。「戦艦大和のような難易度の高いプラモデルを、説明書なしで組み立てるようなものです」と佐久間さんは説明する。  山本さんたち技術職社員も、当初は「さすがに障害のある社員にはむずかしい」と首を横にふった。だが、せっかくの業務委託を断りたくないと、まずは技術職社員だけで細々と始めたところ、「僕もやってみたい」と手を挙げる社員がいた。設立時から勤務する園部(そのべ)豊(ゆたか)さん(31歳)だ。  園部さんは、ひらがなも数字も苦手だ。だがある日、複雑な機械から落ちた小さなネジをすぐに元の場所に戻せた様子を見て、佐久間さんは驚いた。  「本人の意欲があるなら、挑戦させてみよう」  山本さんがつきっきりで教えて1カ月で1セット。「これじゃあ無理か」と思っていたが、2カ月目は7セット。3カ月目には15セットまでこなせるようになった。そこで佐久間さんは「いけるかもしれない」と感じ、業務としてスタートさせた。同じように「やりたい」といった社員を集め、総勢8人となった。  もちろん、軌道に乗るまでのトラブルは数知れず。「小さなネジを1本でもなくしてしまったときは、それがいかに大事なものかわかってもらうために、2日間かけて探してもらったこともあります」と佐久間さんはふり返る。  園部さん自身も、職場で何度も泣いたそうだ。親から「帰宅後の表情が暗くなった。むずかしいことをさせないでほしい」といわれたが、佐久間さんたちは「もう少し見守ってほしい」と頼みつつ、職場でのフォローにも気をつけた。「注意したあとは必ずプラスになる言葉をかけて、前向きな気持ちで帰宅できるよう心がけました」と山本さんは明かす。いまでは園部さん自ら「弟子1号です」といえるほど、自信に満ちた仕事ぶりだ。  2019年度は、修理だけで年間7千万円弱の売上になった。見学に訪れた大手メーカーの役員が、彼らの作業の様子を見て「信じられない」と驚嘆し、それが縁で、メンテナンス保証つきで中古品を再販売できる唯一の取引先となった。OA機器の清掃からメンテナンス・修理までを手がけ、周囲から「職人」と呼ばれるようになった社員たちの部署名は2015年度、「リサイクル事業部」から「クラフトマンシップ事業部」に変更された。  ちなみに、リベラルでは採用当初から正社員雇用であり、勤務時間は9時から18時の実働8時間。年収は平均280万円(賞与など含む)ほどになるが、社歴や仕事内容によって昇給し、高い人は350万円を超えるという。  「それだけの仕事をしてくれていますから。見学に来る企業の方たちも、彼らの様子を見て『これほどやっているなら当然ですね』と納得されます」  昨年から今年にかけて7人の社員が勤続10年となり、顔写真が刻印された記念トロフィーが贈られた。リーダーも4人育ち、クリーニング3チーム、リペア1チームを率いる。  昨年は「会社参観日」を開催した。勤務時間内に見学に訪れた親や兄妹から「こんなにたいへんな仕事だったとは知らなかった」、「息子の成長ぶりが誇らしい」などの感想が聞かれ、大盛況だったそうだ。 精神障害のある人の採用  2014年から精神障害のある人の採用も始め、いまは4人に増えた。統合失調症、双極性障害、解離性障害、発達障害など、さまざまだ。電話機などのクリーニング作業から仕入れ業務・データ消去・キッティング、集計代行業務、広報業務と、それぞれの適性に合わせて業務を任せている。入社後に入退院をくり返したり、佐久間さんが定期的に主治医との面談に同行したりしたケースもある。  ただ最初からフルタイムという勤務条件で採用し、全員がほぼ貫いている。理由について佐久間さんは「最初の1カ月間は知的障害のある同僚たちと同じクリーニング作業を担当してもらうことで、『彼らがこんなにやっているのだから、自分も』と人生観が変わるみたいです」と話してくれた。  「私もその1人です」と語る広報担当の武田(たけだ)牧子(まきこ)さんは、障害者採用で2016年に入社した。心臓を患った際に、精神的な病気にもなったという。  「病気になり、フルタイムで働くことができなくなったので、会社でもパート勤務に切り替えようと思っていました。そんなとき、縁あってリベラルに入社し、社員の働きぶりに驚き、感動しました」  武田さんは「リベラルの社員を、もっと知ってほしい」と自ら広報担当を希望し、ホームページを充実させ、さまざまな紹介動画や資料をリリースするなど大活躍している。 一緒に働いてこそ  リベラルが大切にしてきたことがいくつかあるが、なかでも佐久間さんは「製販一体型組織」を第一に挙げる。以前、職場が移転する際に、管理部門と生産部門を分けようという話が持ち上がったが、断固反対したという。  「クリーニングや修理を懸命にこなす社員を日々見ているからこそ、営業担当の社員も『彼らのがんばりを無駄にしたくない』と奮起します。そして目標を達成したときの喜びも、社員全員で分かち合えます」  収益は、初年度の2008年度から黒字、10年後には売上が5億円超の8倍にまで伸びた。売上が鈍化しそうになった昨年は、初めて全社員での会議も行った。営業先の開拓だけでなく、需要が見込まれる機器類をあらかじめ多めに仕上げるなど、まさに製販一体となって取り組んだそうだ。  リベラルの経営方針と今後について、佐久間さんに聞いた。  「特例子会社としての『事業性と社会性』を重視しています。雇用率にかかわらず採用を続けるべきですが、親会社に依存しない経営なので、常に危機感を持って臨んでいます。それがまた社員たちの力にもなっています」  リベラルではいま、品質管理の看板ともいえる「ISO9001」の取得を目ざしている。「特例子会社で中古OA機器のISO9001取得というのは、なかなかありません。社員もさらに誇りを持って仕事や営業ができると考えています」と佐久間さんたちは意気込む。  新規事業として同じような障害者雇用に取り組む国内の団体や企業との連携も広げている。また地元の就労継続支援B型事業所や特例子会社5カ所にもリベラルの業務を委託し、地域ぐるみでの底上げを目ざしている。  最後に佐久間さんは、長期的な課題として、社員のリタイア後の生活を挙げた。  「65歳の定年を迎えて『お疲れさまでした。はい、さようなら』とは、とてもいえません。ここまで家族のように一緒にやってきた社員たちが、その後も一緒に過ごせるような居場所づくりや生活支援のことも含め、会社としてどこまで何ができるか、しっかり考えていくつもりです」 写真のキャプション クラフトマンシップ事業部管理課長の佐久間賢さん 取締役事業部長の上田庸司さん(写真提供:リベラル株式会社) 工程管理表には、スタンプラリーの要領で達成感が得られる工夫も フロアでは、社員がコピー機や電話機のクリーニング作業に励む 社内で開かれる達成パーティーの様子。達成感がモチベーションアップにつながる(写真提供:リベラル株式会社) コピー機のメンテナンス作業に取り組む仲二見友二さん(写真提供:リベラル株式会社) 社員の技術指導にあたる山本憲二さん コピー機の分解作業をする磯崎直道さん ブラシを使い、電話機を隅々までクリーニングする江口剛さん 修理作業では、さまざまな部品を取り外し、正しい位置に組み直さなくてならない 園部豊さんは、専用剤を使い分け、パーツ一つひとつを磨き上げる クラフトマンシップ事業部で広報を担当する武田牧子さん 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用 第1回  今号から始まる連載では、これから障害者雇用に取り組もうと考えている事業主(担当者)のみなさんへの入門企画として、必要な準備や具体的なアプローチ法、おさえるべきポイントなどを、当機構「中央障害者雇用情報センター」への取材をもとに解説します。実際に寄せられた相談内容を元にしたQ&Aとともに、雇用主を支援する関係機関や制度、役立つ情報も紹介していきます。 (協力)中央障害者雇用情報センター 障害者雇用支援ネットワークコーディネーター 礒邉豊司さん、内田博之さん ※これまで連載していた「NOTE」のコーナーは、内容を充実させ、今号より「クローズアップ」というコーナーにリニューアルしました Q1 障害者雇用に関する理念(共生社会の実現、企業の社会的責任、ダイバーシティの実現)の話はよく聞きます。しかし、本気で障害者雇用を進めようと思えません。 A 事業主には障害者雇用の義務があるのはご存知かと思います。また、公共性の高い事業や取引先の方針で、障害者雇用の有無が問われつつあります。  「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、「障害者雇用率制度」を定めており、民間の事業主に対して常時雇用している労働者の2・2%以上の障害者を雇用することを義務づけています。事業主間の障害者雇用にともなう経済的負担の調整を図るため、法定雇用率未達成の事業主は、障害者雇用納付金(※1)の納付が必要となります。  また、当機構へのご相談のなかには、「公共性の高い事業の入札などにおいて障害者雇用の有無を問われ、雇用の必要性に迫られている」という企業の方もいらっしゃいます。障害者雇用の達成度が入札や取引に影響を与え得る社会的な流れが広がりつつあるといえるでしょう。 ケース1 相談者:自治体からの委託業務を中心に清掃請負業務を行う中小企業の営業部長および次長 相談内容:かつて契約していた自治体からの清掃請負業務について、「障害者雇用率が未達成」であるために落札できなかった。障害者雇用についてはそれまで納付金を納めていればよいという方針だった。しかし、「公共の仕事がなくなればわが社は潰(つぶ)れる」との考えから、社長の指示で即座に障害者雇用を進めることになった。 ケース2 相談者:大手ゼネコン企業 相談内容:市民病院の保守管理業務の入札において、「価格点」、「技術点」のほか「社会貢献点」が設定されていた。当社は障害者雇用が進んでおらず、「社会貢献点」で大差をつけられ落札できなかった。 ケース3 相談者:従業員100人規模の中小企業 相談内容:これまで障害者雇用は進めていなかったが、仕事の下請けをしていた大手企業担当者から「当社の上層部の方針で、障害者雇用をしていない企業とは契約しない方針となった」といわれた。早急に障害者雇用を進めたい。 Q2 障害のある人が働いている姿がイメージできません。 A 百聞は一見に如(し)かず。まずは障害者雇用事業所や特別支援学校を見学してみては。  障害者や障害者雇用にまったくかかわったことのない場合、障害者の具体的な就労スキルがほとんどわからず、現実よりもはるかに能力的に低い状態をイメージされていることもあります。「どのように接したらよいか」、「コミュニケーションが取れるのか」といったご相談も多くあります。  まずは、特別支援学校や、すでに障害者を雇用している事業所を見学してみてはいかがでしょうか。実際に働いている姿を見たり、意見交換をするなかで、具体的なイメージを持つことができます。ハローワーク、地域障害者職業センターなどが見学できる事業所情報を把握している場合もあります。  また、当機構ホームページの「障害者雇用事例リファレンスサービス」(図)では、業種や障害別に障害者雇用に取り組む全国の事例を検索することができますのでご利用ください。 Q3 障害のある人を雇用する金銭的、人的余裕がありません。 A 経済的負担の軽減などのためのさまざまな助成措置や支援制度があります。  まず、障害者雇用に関する事業主への助成措置の一部をご紹介します(※2)。  特定求職者雇用開発助成金 @特定就職困難者コース  ハローワークなどの職業紹介事業者等の紹介により、高年齢者や障害者などの就職困難者を、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して助成するもの。 A障害者初回雇用コース  障害者雇用の経験のない中小企業が、雇用率制度の対象となるような障害者を初めて雇用し、雇入れによって法定雇用率を達成する場合に助成するもの。 トライアル雇用助成金 (障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)  障害者に対して試行雇用(トライアル雇用)を行う事業主に対して助成するもの。  また、特に中小企業においては、障害のある人をどのようにサポートしたらよいかわからないという声も聞かれます。そうした際には地域障害者職業センターによる「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援」をご活用ください。障害のある人に対しては、職場の従業員の方とのかかわり方や、効率のよい作業の進め方などをアドバイスし、事業主に対しては、本人が力を発揮しやすい作業の提案や、障害特性をふまえた仕事の教え方などのアドバイスをします。  ハローワークや、地域障害者職業センターなどでは、採用から受入れ側の準備、就労後の定着まで、さまざまな支援を行っていますので、ご相談ください。 「中央障害者雇用情報センター」とは  特例子会社の経営などの経験のある障害者雇用支援ネットワークコーディネーターや、就労支援機器に関する資格を有するアドバイザーが、事業主の方に対して、障害者の雇用に関する各種相談や援助を行っています。 ●障害者雇用に関する専門的な相談・援助  来所(要予約)または電話、メールで次のようなご相談を受けつけています。 ・職域拡大や新たな職域での雇用 ・特例子会社の設立・運営 ・就業規則や賃金体系等の労働条件  など ●就労支援機器の展示・相談・貸出し  障害者の就労支援機器などの展示や導入に向けた相談のほか、事業主・事業主団体に無料貸出し(原則6カ月以内)を行っています。 ●DVDの貸出し  障害者雇用への理解を深めていただくためのDVDを無料で貸し出しています。社内啓発用の教材としてご利用いただけます。 【中央障害者雇用情報センター】 〒130-0022 東京都墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 電話:03-5638-2792 FAX:03-5638-2282 メール:syougai-soudan@jeed.or.jp ご利用時間: 月曜〜金曜8時45分から17時まで (祝日および12月29日から1月3日までを除く) ※1 障害者雇用納付金:常時雇用している労働者数が100人を超える障害者法定雇用率(2.2%)未達成の事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額5万円の障害者雇用納付金を納付しなければならないこととされています。詳細は「JEEDインフォメーション」(12ページ)をご覧ください ※2 掲載の助成金については、都道府県労働局、ハローワークにお問い合わせください 図 障害者雇用事例リファレンスサービス検索画面 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 令和2年度 障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請が令和2年4月1日から始まります ◆障害者雇用納付金の申告・納付、障害者雇用調整金および在宅就業障害者特例調整金の申請期限は令和2年5月15日です ◆報奨金および在宅就業障害者特例報奨金の申請期限は、令和2年7月31日です ※障害者雇用調整金や報奨金などは申請期間を過ぎた申請に対しては支給できません。十分お気をつけください 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 納付金部  障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理などが必要とされることも多く、経済的負担がともなうこともあるため、雇用義務を履行している事業主と履行していない事業主とではその経済的負担にアンバランスが生じることになります。  「障害者雇用納付金制度」とは、身体障害者、知的障害者および精神障害者(以下、「対象障害者」)を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任であるという社会連帯責任の理念に立って、事業主間の障害者雇用にともなう経済的負担の調整を図るとともに、障害者を雇用する事業主に対して助成、援助を行うことにより障害者の雇用の促進と職業の安定を図るため、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下、「法律」)に基づき設けられた制度です。 特例給付金のご案内 (令和2年4月1日改正令和3年度申請から適用※)  特に短い時間であれば働くことができる障害者を雇用する事業主に対する支援として、新たに「特例給付金」が支給されることになりました。 1.支給対象となる障害者  支給対象となるのは次のいずれも満たす障害者です(以下、「対象障害者」)。 ・障害者手帳等を保持する障害者 ・1年を超えて雇用される障害者(見込みを含む) ・週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者 2.支給額  支給額は申請対象期間に雇用していた対象障害者の人月数(注1)に次の支給単価を乗じた金額になります。  週所定労働時間20時間以上の労働者の総数が 100人を超えている事業主………7千円 100人以下の事業主………………5千円 (注1)申請対象期間に雇用していた週所定労働時間20時間以上の障害者数が支給上限人数となります。 ※原則として令和2年度の雇用実績を踏まえ令和3年度からの申請となりますが、令和2年5月から令和3年3月までの間に事業を廃止等した事業主については、廃止等の日から45日以内に申請することができます。 Q すべての事業主が障害者雇用納付金の申告・納付を行わなければならないのですか? A 障害者雇用納付金の申告が必要となるのは、常時雇用している労働者数が100人を超える事業主となります。  常時雇用している労働者数が100人を超える事業主は、年度ごとに翌年度の4月1日から5月15日までの間に本社の所在する各都道府県にある当機構申告申請窓口(注2)に障害者雇用納付金申告書を提出しなければなりません。  なお、この申告書は、年度ごとに、その雇用する対象障害者の人数が、基準となる障害者雇用率(2・2%。以下同じ)を達成している事業主も提出することとされています。  このうち、障害者雇用納付金の納付が必要となるのは、基準となる障害者雇用率を下回っている事業主となります。  また、この場合の障害者雇用納付金の額は、その基準となる障害者雇用率に不足する人数に月額5万円(注3)を乗じた額となります。 (注2)当機構各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は、高齢・障害者窓口サービス課)が申告申請窓口となります。 (注3)常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の事業主は、平成27年4月1日から令和2年3月31日まで障害者雇用納付金の減額特例が適用され、一人当たり月額「5万円」が「4万円」に減額されます。 Q 障害者雇用納付金の納付期限はいつですか? A 障害者雇用納付金の納付期限は、申告書の提出期限と同様に5月15日となります。  なお、納付すべき障害者雇用納付金の額が100万円以上となる場合は、3期に分けて延納することができ、各期の納付期限はそれぞれ次の通りです。 延納第1期分の納付期限:5月15日 延納第2期分の納付期限:7月31日 延納第3期分の納付期限:11月30日  また、障害者雇用納付金の納付については「ペイジー」をご利用いただけます。詳細については、裏表紙をご確認ください。 Q 障害者雇用調整金および在宅就業障害者特例調整金はどのような支給金ですか? A【障害者雇用調整金の支給】  障害者雇用納付金の申告が必要となる事業主のうち、年度ごとに、その雇用する対象障害者の人数が基準となる障害者雇用率を上回っている事業主に対して支給されます。 〈支給額〉「基準となる障害者雇用率を上回って対象障害者を雇用している人数」に「月額2万7000円」を乗じた額となります。 〈申請期間〉年度ごとに翌年度の4月1日から5月15日までです。 〈支給時期〉支給決定された年度の10月から12月末までに指定の預金口座に振り込みます。 【在宅就業障害者特例調整金の支給】  障害者雇用納付金申告または障害者雇用調整金支給申請事業主のうち、年度ごとに、在宅就業障害者か在宅就業支援団体(在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣に申請し、登録を受けた団体)に仕事を発注した事業主に支給されます。  なお、基準となる障害者雇用率が未達成の場合は、在宅就業障害者特例調整金の額に応じて障害者雇用納付金が減額されます。 〈支給額〉「事業主が当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額35万円で除して得た数」に「調整額2万1000円」を乗じた額となります。なお、各月において雇用している障害者数の年度間合計数に単位調整額2万1000円を乗じた額が限度額となります。 〈申請期間〉年度ごとに翌年度の4月1日から5月15日までです。 〈支給時期〉支給決定された年度の10月から12月末までに指定の預金口座に振り込みます。 Q 報奨金および在宅就業障害者特例報奨金はどのような支給金ですか? A【報奨金の支給】  常時雇用している労働者数が100人以下の事業主のうち、一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%相当数の年度間合計数または72人のいずれか多い数)を上回って対象障害者を雇用している事業主に支給されます。 〈支給額〉「一定数を上回って対象障害者を雇用している人数」に「月額2万1000円」を乗じた額となります。 〈申請期間〉年度ごとに翌年度の4月1日から7月31日までです。 〈支給時期〉支給決定された年度の10月から12月末までに指定の預金口座に振り込みます。 【在宅就業障害者特例報奨金の支給】  報奨金申請対象事業主のうち、年度ごとに、在宅就業障害者か在宅就業支援団体に仕事を発注した事業主に支給されます。 〈支給額〉「事業主が当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額35万円で除して得た数」に「報奨額1万7000円」を乗じた額となります。なお、各月において雇用している障害者数の年度間合計数に単位報奨額1万7000円を乗じた額が限度額となります。 〈申請期間〉年度ごとに翌年度の4月1日から7月31日までです。 〈支給時期〉支給決定された年度の10月から12月末までに指定の預金口座に振り込みます。 Q 調整金・報奨金申請時には添付書類が必要と聞きましたが、どのような書類が必要ですか? A 雇用する労働者数が300人以下で調整金や報奨金を申請する事業主は、雇用する障害者の障害の種類・程度を明らかにする書類と、その労働者の労働時間の状況を明らかにする書類を添付する必要があります。  具体的には、障害の種類・程度を明らかにする書類は障害者手帳などの写し、労働時間の状況を明らかにする書類は源泉徴収票(マイナンバーの印字のないもの)などの写しです。  なお、障害の種類・程度を明らかにする書類として、平成26年度以降の申請時に提出された雇用障害者について、障害の種類・程度の変更がなく、申請対象期間内に障害者手帳などの有効期限がきていない場合は、改めての提出は不要です。 Q 申告、申請関係の書類作成や手続きはパソコンでできますか? A 障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金および在宅就業障害者特例報奨金の申請にかかる申告申請書と各種届は、当機構ホームページ(http://www.jeed.or.jp/)の「障害者の雇用支援(障害者雇用納付金)」のコーナーに掲載していますので、ダウンロードしてパソコンで作成することができます。 ●「申告申請書作成支援シート(マクロ機能つき)」を活用していただくと、画面の案内に従って月別の常用雇用労働者数や障害者の雇用状況などを入力することにより、納付金額などが自動計算されるほか、エラーチェック機能が組み込まれており、比較的簡易に申告申請書を作成できます。 ●「申告申請書作成支援シート(マクロ機能つき)」により作成した申告申請データを、当機構ホームページを通じて送信し、申告申請の手続きを行うことができます(電子申告申請)。  なお、電子申告申請の場合も、常用雇用する労働者数が300人以下の調整金・報奨金申請事業主は、添付書類(障害者手帳や源泉徴収票などの写し)が必要となります。ただし、添付書類は電子送信することができませんので、当機構ホームページより所定の添付書類送付状をダウンロードして、必要事項を記載、添付書類を添付したうえで、各都道府県にある当機構申告申請窓口まで送付してください。  また、「電子申告申請」を利用するためには、電子申告申請用IDとパスワードが必要となるほか、ご注意いただく点がありますので、詳しくは、各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京、大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にご照会ください。 障害者雇用納付金制度の概要 障害者雇用納付金の徴収 不足する障害者1人当たり月額5万円(注) ★常時雇用している労働者数が100人を超える事業主は、 ●毎年度、納付金の申告が必要 ●法定雇用率を達成している場合も申告が必要 ●法定雇用障害者数を下回っている場合は、申告とともに納付金の納付が必要 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者雇用調整金の支給 超過1人当たり月額2万7000円 ●常時雇用している労働者数が100人を超えており、雇用障害者数が法定雇用障害者数を超えている事業主に対し、申請に基づき支給 報奨金の支給 超過1人当たり月額2万1000円 ●常時雇用している労働者数が100人以下で、支給要件として定められている数を超えて障害者を雇用している事業主に対し、申請に基づき支給 在宅就業障害者特例調整金の支給 ●在宅就業障害者に仕事を発注した納付金申告事業主に対し、支払った業務の対価に応じた額を、申請に基づき支給 在宅就業障害者特例報奨金の支給 ●在宅就業障害者に仕事を発注した報奨金申請対象事業主に対し、支払った業務の対価に応じた額を、申請に基づき支給 特例給付金の支給 NEW ●週20時間未満の障害者を雇用する事業主に対し、支給上限人数までの額を、申請に基づき支給 ※詳しくは当機構ホームページをご覧ください 各種助成金の支給 ●障害者を雇い入れたり、雇用を継続するために職場環境の整備などを行う事業主に対し、申請に基づき費用の一部を助成 法定雇用障害者数を下回っている事業主 法定雇用障害者数を超えている事業主 法定雇用障害者数 納付金 雇用している身体、知的、精神障害者の数 調整金 常時雇用している労働者数が100人を超える事業主 (注)常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の事業主は、平成27年4月1日から令和2年3月31日まで納付金の減額特例が適用され、不足する障害者1人当たり月額「5万円」が「4万円」に減額されます。 ※当機構ホームページ http://www.jeed.or.jp/ 本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています。 【P15-18】 グラビア 最後の挑戦〜銀賞の悔しさをばねに〜 株式会社U&U(山梨県) 阪本祐介さん 取材先データ 株式会社U&U 〒400-0032 山梨県甲府市中央2-9-20 タカオカビル1階 TEL 055-225-3262 写真:小山博孝・官野 貴/文:官野貴  2019(令和元)年11月、愛知県で開催された全国アビリンピックに、最後の挑戦として臨んだ選手がいた。大学在学中に統合失調症を発症後、独学でホームページ制作を学び、2009(平成21)年の全国アビリンピック茨城大会に初出場を果たし、挑戦を続けた阪本(さかもと)祐介(ゆうすけ)さん(35歳)だ。2014年の全国大会「ホームページ」種目で銅賞を受賞。2017年、2018年には、全国大会の同種目で銀賞を受賞するが、金賞には届かず悔しい思いをしてきた。  最後の挑戦として臨んだ2019年の全国大会。結果は「金賞の該当なし」のため、最上位となる銀賞を受賞した。「金賞が獲れなかったので素直には喜べないが、結果には満足している。今後はアビリンピックでの経験を活かして、仕事をがんばりたい」と語った。  阪本さんは、2018年5月に「株式会社U&U」に入社。当初は、データ入力作業などを行っていたという。「最初は遠慮もあった」というが、データ集計作業を工夫して、社内で簡単に情報共有ができるようにするなど、次第に持ち前のパソコンスキルを発揮した。2019年11月からは、クリエイティブ事業の立ち上げに参加し、甲府市内のレストランのホームページ制作などを担当した。ホームページ制作の技術は、独学で学んだということもあり十分な自信がなかったが、アビリンピックで認められたことで自信につながった。レストランのホームページは、クライアントの要望に応えつつ、使いやすいデザインを目ざして制作したという。また、同年1月からは、同僚向けに、MOS(※)資格を取得するための講座で、講師も務めている。  阪本さんは「講座で使用する資料も自作しています。教えるということは、自分の持つスキルの再確認にもつながり、より高いスキルを身につけることにつながります。やりがいのある仕事を任されて毎日が楽しいです」と語る。また、「いつもの仕事を“競技”として競い合うことは、とても刺激的な経験です。ぜひアビリンピックにチャレンジしてほしい。仕事も競技も生きがいになります」と、アビリンピックを目ざす後進にアドバイスする。 ※ワードやエクセルなどの利用スキルを証明する資格、マイクロソフト オフィス スペシャリスト 写真のキャプション これまでは、がんばりすぎて体調を崩すこともあった阪本さん(右)だが、現在は一日4時間勤務。「この働き方が合っている」と話す 同僚の木原(きはら)光正(みつまさ)さん(中央)は、阪本さん(左)が仕事の悩みなどを気軽に相談できる相手だ 毎週木曜日に行われるMOS講座では、受講者に寄り添った理解しやすい講義を目ざしている 講座で使用する資料は、飽きずに集中できるよう心がけて作成している 約20分の自転車通勤が、よい気分転換に 表彰式では、金賞が獲れなかった悔しさで、笑顔になれなかったという 2019年の全国アビリンピック愛知大会で、「ホームページ」種目に臨んだ 今後は、アビリンピックでつちかったスキルや経験を仕事で活かしていく覚悟だ 【P19】 エッセイ【第4回】 発達障害を活かすということ ―人と違う感性を強みに― 内閣府地域働き方改革支援チーム委員 (兼務 株式会社東レ経営研究所) 渥美由喜(あつみ なおき)  25年前からワークライフバランス(WLB:仕事と生活の調和)に着目した、ダイバーシティ、WLB分野の第一人者。これまでに海外10数カ国を含む、国内のダイバーシティ・WLB 先進企業1050社、海外の150社を延べ4000回、訪問ヒアリングし、約1万社の企業データを分析。  また、コンサルタントとして、実際に1000 社以上の企業の取組推進をサポートする一方で、内閣府や厚生労働省などの官庁や自治体の委員を歴任。  前回、発達障害者の特性ゆえ、上司のいうことを聞かずに職場ではよくトラブルになったと述べた。今回は、会社にとってなぜ発達障害者の活躍が重要なのかを述べる。 空気を読まずに周囲の怒りを買う  20代の半ばに思い立って、地域の子どもたちと週末に公園で遊ぶ「子ども会」のボランティア活動を始めた。冬のボーナスで、青いクマの着ぐるみを買った。当時は、まだ“ゆるキャラ”はなかったので、着ぐるみを着て公園に行くと大人気。しかし、この着ぐるみは、わずか5年で着られなくなった。別の公園で、リスの着ぐるみを着て少女をかどわかした悪い奴が捕まったからだ。当時、独身だった私に「あいつも怪しい」と厳しい目が注がれ、3回パトカーを呼ばれた。  職場で、トホホ話で笑わそうとしたところ、またもや上司から「警察沙汰だと!会社に迷惑がかかると困るから即刻やめろ。やめないと評価を下げるぞ」といわれた。平日の成績不良という理由ならともかく、週末の過ごし方で評価を下げられることを理不尽に思った私は、「そんなことで評価を下げられるものなら、下げてみればいいじゃないですか!」と反発した。  口は災いのもと。あっさり最低評価に下げられて、同期百数十人のなかで、私だけ最初の昇格が2年も遅れた。  毎年、行われる研修も二つ下の後輩たちと一緒。「上司に失礼な口をきくなんて、ダメな先輩だ」、「空気を読まずに周囲の怒りを買う発言をするアホな人」という蔑(さげす)みの目で見られた。 職場や家庭における、周囲からのサポート  以来、「専門分野には詳しいけれど、簡単な事務業務ができない」、「融通がきかず、予定を少し変えただけで、感情をそこねる」、「職場の飲み会を『つまらないから』といって出席しない」、「人の気持ちを逆なでしたり、人の話を聞くのが苦手で途中で遮(さえぎ)って怒らせる」といった言動で、職場や家庭で周囲を困らせてきた。これらの多くは、脳機能の偏りによる生まれつきの性格のような面があり、本人の努力で変えるのはむずかしい。  もし、私の親をはじめ、周囲が無理に直そうとしたら、精神的に負担になっただろう。いまも周囲は困っているはずだが、あきらめているようだ。「おまえがいうな」と思われるかもしれないが、「矯正(きょうせい)しようと躍起(やっき)にならない」のが接し方の基本だと私は思う。  よく、発達障害は「コミュニケーション力に欠ける」といわれる。しかし、安易に立場の強い人の言動に迎合しないのは、職業によっては強みにもなる。研究者やコンサルタントもその一つ。総じて年齢や立場が上の人はいろいろな常識に縛られ、新しい時流の変化には鈍感だ。そういう人たちのいいなりでは、陳腐な研究しかできず、組織を変革するコンサルティングなんてできない。  変わり者と評される私は、ネット検索の使い方も人と違う。通常の用途は、「わからないことを調べる」だが、私は「自分が思いついたことを、まだだれもいっていないか確認するため」に使う。例えば、2004(平成16)年に「イクメン」という言葉を思いついたときに、厚生労働省のデータから検索したらゼロだったので、この造語を使い始めた。  日本の労働者は、総じてまじめで従順なタイプが多い。このため、業務の「標準化」や「だれでもできる化」と親和性が高く、集団で労働生産性を高めてきた。しかし、時代は大きな変革期を迎えている。AI(人口知能)やロボット技術の進展の本質は、「模倣」だ。これまでは長所とされた労働者の特性ゆえ、今後はAIやロボットで代替されやすく、他社と差別化を図りにくくなる。逆に、模倣がむずかしいのは、「通常とは違う感じ方、考え方をするタイプ」。  今後、付加価値の高い商品・サービスを生み出すのは、発達障害者を含む、個性的な社員を活かせる職場だ。ダイバーシティは必要不可欠だ。 【P20-25】 編集委員が行く 障がいのある社員の加齢問題への挑戦 株式会社富士電機フロンティア(神奈川県) 東京通信大学 教授 松爲信雄 取材先データ 株式会社富士電機フロンティア 〒210-9530 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1-1 TEL 044-329-2380 FAX 044-329-2381 編集委員から  知的障がいのある社員の加齢にともなう作業遂行能力の低下は、企業の定着支援の対策でも重要になりつつあります。  今回、社員の加齢対策に取り組む「富士電機フロンティア」を取材しました。多面的な対策の詳細を見ていくと、働くことを含めたキャリア形成の過程を通して、生活の質(QOL)の向上を目ざす支援のなかで、障がい者の加齢問題への対応をとらえていくことが必要だと理解できます。 写真:官野貴 Keyword:特例子会社、加齢問題、早期老化予防、指導員採用、能力開発、技能検定、配置転換、工程改善、生活支援 POINT 1 早期老化予防のための具体的な取組みを実施…体力の維持に向けた筋力トレーニングやラジオ体操、計算問題や漢字書き取り、ヘルスチェックなど 2 雇用継続のための雇用管理を工夫…指導員の採用、親会社との緊密な関係、能力開発と技能検定、配置転換と工程改善など 3 雇用継続のための生活支援…生活相談、家族支援、働く意欲の醸成 企業の概要と経営理念 (1)企業の概要  「株式会社富士電機フロンティア」は、「富士電機株式会社」の特例子会社として1994(平成6)年に設立されました。全国に10事業所2分室を設け、全従業員202人のうち152人が障がいのある人で、その大半は知的障がいです。また、平均年齢は31・2歳です。  同社の業務は大きく三つに分けられます。 @オフィス関係…メール集配・郵便、製本・印刷PDF化、受付補助、資材発送、レイアウト設営。 A清掃関係…清掃(事務所、トイレ、風呂、介護施設、保育所、給茶機、コーヒーサーバーなど)、緑化・除草。 B製造支援…刻印、箱詰め・袋詰め、部品組込み、ネジ締め、組立、台車運搬、基板試験など。  そのほか、検収受付(フォークリフト作業含む)、環境測定、クリーニングなども行っています。 (2)障がい者雇用の理念と取組み  親会社の富士電機では、障がい者雇用の方針として、CSR(企業の社会的責任)の順守と社会貢献、ノーマライゼイションの実践、多様な人材の活用(ダイバーシティ)を理念として掲げています。  富士電機フロンティアも、この理念を踏襲(とうしゅう)して、障がいのある社員の職業人・社会人としての自立に向け、日々、育成・指導に取り組んでいます。具体的な取組みとしては、次の三つがあります。  第一に、目標管理制度の導入と資格などの取得を目ざすことがあります。個人目標の面談結果などから本人の意向をふまえて、現行の職種の経験を積んだ障がいのある社員に対して、新たな職域へのチャレンジなどのキャリアアップを進めています。  第二に、資格などの取得と実地訓練(OJT)があります。面談結果などをふまえて、例えば、印刷・製本の部署で作業経験を積んだリーダーを務める障がいのある社員に対して、さらなる印刷技術の習得などのキャリアアップを進めています。  第三に、リーダー制の導入や、障がいのある社員主体による業務の実施があります。現場に指導員を配置せず、一定のキャリアを持つ障がいのある社員からリーダーを選任し、リーダーが中心となり現場業務を管理する体制にしています。  こうした、親会社と特例子会社の障がい者雇用にかかわる基本的な理念や方針、あるいは具体的な目標を背景として、特に、知的障がいのある社員の加齢現象に対する予防と対策が進められています。  今回の訪問では、これらの点について、同社の代表取締役社長である小形(おがた)秀夫(ひでお)さん、管理部長の川田(かわだ)直幸(なおゆき)さん、川崎事業所業務課長の金田(かねだ)豊子(とよこ)さんにお話をうかがうことができました。 早期老化への予防と対策  同社で、障がい者雇用に取り組み始めた当初から指導員としてかかわってこられた金田さんによれば、設立から10年を経たころから、知的障がいのある人の加齢にともなう作業遂行能力の低下が問題視され始めたということです。例えば、30代で中途採用したダウン症の方の場合、本人自身の働きたいという強い要望を受けて採用したのですが、入社当初から徐々に体力的な低下が見られたということでした。そのため、体力・筋力の維持と回復運動を取り入れ始めたのが、加齢問題に対する最初の取組みだということです。  知的障がいのある人は一般的に、体力・知力の加齢による低下が健常者よりも早く表れ、また、表現の稚拙(ちせつ)さもあって、その兆候の発見が遅れがちであるといわれます。そのため、疾病の発見や健康管理に関しては、本人を支援するさまざまな関係者の注意や観察がたいへん重要となり、家族や支援者の日常的な経過観察が大切になります。同時に、事業所が、障がいのある社員の能力維持につながる活動に取り組んで、定年まで働き続けられるように支援することも重要です。  川田さんによれば、同社では、全員参加による筋力トレーニングやラジオ体操を続けており、「毎日のていねいな運動の継続こそ、障害のある社員の基礎体力面の維持には必要不可欠」ということです。  また、思考面の活性化や維持を図る活動として、毎日、簡単な計算問題や、漢字の書き取り、家計簿の記録なども継続して実施しています。就職後の長い職業生活を通し継続して学習することで、内容の理解が進み、効果が得られると期待しています。  さらに、睡眠や食事の内容などを記入する「生活ノート」を毎日提出してもらい、健康状態をチェックするとともに、体重・血圧の測定も毎週定期的に行っています。それによって、体重の増加などが観察されて生活の改善が必要な人は、本人の到達目標を明確に認識してもらうなど、障がいのある社員の健康管理に対する意識づけを図っています。また、個人データの継続的な蓄積によって、加齢による能力の変化を早期に把握するようにしています。 雇用継続に向けた雇用管理  富士電機フロンティアでの、加齢に対処し雇用を継続するための取組みは、「指導員の獲得と力量」、「親会社との緊密な関係の維持」、「能力開発と社内外の技能検定」、「配置転換と工程改善」が、相互に密接に関連しながら機能していることがわかりました。 (1)指導員の獲得と力量  社長の小形さんによれば、障がいのある社員以外のスタッフは、労務管理・渉外・相談業務のほか、現場で実際に業務指導と生活指導を担当しているそうです。  指導員は、親会社の業務に精通している管理監督者(製造分野であれば製造主任・作業長)や、ベテランの技能・技術者などのなかから、後進に道を譲る、あるいは定年退職のタイミングで、障がいについて理解のある人材の獲得を図っています。彼らは、技術指導のベテランですから、親会社の技能・技術者がになっている業務の一端を障がいのある社員に習得させることが可能です。これによって、親会社の信頼を得ることができ、職域の拡大につながります。  また、職場での就業面と地域での日常生活面の双方の支援を行っています。こうした支援は、本人や家族に有用なばかりでなく、現場の不安や負担の解消、雇用継続のための方法に関する相談など、重要な役割を果たしています。  こうした指導員による実際の支援によって蓄積されたノウハウは、研修を通して全事業所の指導員が共有する体制になっています。また、支援の記録は長期的に保存され、個々人の能力の変化を把握して、加齢による能力の低下や将来を見越したキャリア形成の支援に活用されています。 (2)親会社との緊密な関係の維持  親会社から指導員を受け入れて、業務の指導を受け、職域を拡大し、それによって社員の職場定着と長期雇用を確保していくことが、経営戦略の特徴となっています。  親会社には、まだ仕事を切り分けて委託する余地が十分にあると判断し、それらの仕事に熟知している人材とともに、仕事を提供してもらっています。しかし最近は、親会社の社員の高齢化と人員減少のために、こうした人材の提供がむずかしくなりつつあります。そのため、親会社の仕事のうち、障がいのある社員だけでも十分に対応できる業務を切り分けて特例子会社に回してもらうことで、業務受託を維持・拡大できるよう調整しています。 (3)能力開発と技能検定  川田さんによれば、現在も親会社からの業務委託ニーズはさまざまにあって仕事を依頼されるのですが、肝心の富士電機フロンティア自身に、それに応えるだけの受け皿が不足し、十分に対応できない場合もあるとのことです。そのため、社員の能力開発が重要な課題であり、その一環として社内外の技能検定制度を活用しています。  現場のラインでは、親会社の資格取得制度と同じ検定制度を採用して、親会社の水準に則した技術を獲得して、職域拡大の可能性を高めることを目ざしています。今後は、親会社の技能検定の種類に応じて、適性のある社員を動機づけして訓練し、製造現場に直接貢献できる人材の育成を目ざすということです。これらの対応により、親会社からの信頼を得て職域の拡大につながるとともに、親会社の生産工程の一翼をになえる社員には、継続的な雇用を担保しやすくなるため、配置転換などの加齢対策の選択肢を広げられることになります。 (4)配置転換と工程改善  障がいのある社員の職務は、実習期間中に本人の特性を見極め、実務を通じて早期に業務習得を図り、長期的には、難易度の低いものから高い作業へ、あるいは、判断をともなわないものから判断を要する作業へと配置転換を進めています。さらに、作業を細分化し、小集団で複数工程を担当したり、既存の機器の改善や新規設備を導入して、能力低下による業務成果への影響を最小限に押さえています。  それでも、作業速度や精度の低下が著しくなってきた場合には、ノルマや負担が少なく前後の工程への支障のない作業に配置換えをすることもあるということです。実際に、こうした仕事の再配分によって、十分に能力が発揮できるようになる従業員もいるそうです。  さらに、加齢による職務遂行能力の低下に対応できるよう就業規則を改定し、短時間勤務制度を設けています。ただし、現時点では、本制度の適用事例はまだないそうです。 雇用継続に向けた生活支援 (1)生活相談と支援  こうした雇用管理の取組みと並行して大事になるのが、生活支援の充実です。  一般的に、知的障がいのある人の多くは、日常生活面での継続的な支援を受けることで、職業生活が維持されやすくなります。そのため、家族や支援者が本人の生活自立をサポートし、それを維持する体制があると、企業は技能の習得に焦点を当てることができ、習熟期間を短縮し熟練技能者の業務の一部を担当できる能力を獲得できる可能性が高まります。それによって、企業の求める役割や技能を維持できる期間が長くなり、結果として、加齢にともなう能力低下を遅延させることにつながるからです。  川田さんによれば、長く在職してもらうためには、会社にいない時間をどう過ごすかが大切であり、どのような社会生活を送っているかが仕事の遂行状況に直接的に影響するということです。それだけに、本人の生活を支える家族の協力が不可欠なのですが、他方で、生活支援の領域に会社としてどこまでふみ込むべきかが課題になると指摘しています。  金田さんは、業務課長として日常的に支援しているなかで、会社も生活支援の領域にふみ込まないと、本人の加齢現象への本格的な支援はできないと感じています。また、就業後の生活においてストレスを感じていないかどうか、本音を聞き出すことが大切だそうです。そのため、本人の余暇を充実させることも生活支援では求められ、遊び方やショッピングの仕方を支援することも、ときには必要になるそうです。  しかし、企業としては、こうしたことはむしろ地域生活を支援するさまざまな機関や施設が、より積極的に取り組んでもらいたいと希望しているそうです。 (2)家族支援  また、親の元気なうちに、親なき後の対応としてグループホームに入所するような支援も行っています。候補となるグループホームの世話人の考え方や活動内容を保護者に伝え、親が安心して納得のできるホームに本人を入居させられるように支援しています。そのため、家族との面談は隔年で継続的に行っており、社員の個別人事記録にも残し、指導員が変わっても家族への相談支援を継続できるようにしています。  こうした家族支援も含めた生活支援に、どこまで会社がかかわるべきか悩ましいところだと思います。 (3)働く意欲の醸成  働く意欲を職場で醸成するには、さまざまな方法が考えられます。例えば、興味や関心のある作業への従事、新しい仕事やむずかしい仕事への挑戦、職場での役割遂行の重要性の十分な説明、社内での責任ある役割の付与、昇給などです。  川田さんや金田さんによれば、指導員は社員との定期的な面談を通して、本人の立てた年間目標の達成度を、半年ごとに本人とともに確認しています。また、その結果に基づいて賞与などで評価しています。さらに、関心を示したり難易度の高い作業への配置換えの申し出があった際は、可能なかぎり挑戦させたり、日常的に上司や同僚から言葉かけをするなど心理的な支援をすることで、本人に役割意識を持たせるようにしています。  仕事に対する目標を明確に意識させながら将来に向けた人生設計を支援することは、メンタルへルスの面でも、加齢に対する予防的な対策としても重要でしょう。 雇用継続の可能性の見極めと事前の対応 (1)雇用継続の可能性の見極め  知的障がいのある社員の加齢現象に対する重要な課題は、雇用継続の可能性の見極めとそれに向けた対処であることはいうまでもありません。同社では、体力面の低下が顕著になると作業能力の維持が困難になり、精神的なダメージを受けると作業能力が低下するという傾向が見られるようです。そのため、雇用継続の可能性の見極めは、年齢ではなく、本人の状態を基に判断することになります。  社長の小形さんは、本人が働き続けたいと希望するかぎりは、短時間就労の可能性も考えながら、可能なかぎりその意向に沿うように努力すると話します。他方で、本人の知力・体力低下にともなう技能水準の低下が顕著になれば、企業の経営や社員間の公平性の観点などからも、何らかの判断が必要になりますが、その見極めは今後の個別事例ごとに対応していくということです。  一般的には、退職に向けてのガイダンスの際は、企業側の評価内容(事実)を伝えて現実的な理解をうながします。また、企業からの退職は人生の次の段階に向かうためのステップであり、新たな社会参加を始めるという自覚をうながすことが大切でしょう。その過程を通して、個人の自発的な決定につなげることが望ましいと考えられます。  小形さんは、こうしたことをふまえつつも、雇用継続がむずかしいからただちに福祉の世界に移行させるという判断はしないということです。障がい者の法定雇用率がアップするなかで、障がい者雇用の拡充の必要性に迫られている企業も少なくないと思われます。小形さんは、「長年に渡って企業に貢献してきた社員だからできる仕事があるはず」と、可能性を探りサポートしていきたいそうです。  指導員の継続的な指導があれば、十分に仕事をこなせるだけの能力が残っており、指導を受けつつチームとして仕事をすれば、加齢化への対応は可能であると金田さんも指摘しています。そうした視点から、社員として在籍中に、就労支援機関と連携して今後の方向性を検討するとのことです。 (2)加齢問題への事前対応  企業における加齢問題を企業内部だけの問題としてとらえることは、必ずしも適切とはいえません。就職前の学齢期全体を通して、働くことの意義とそれに向けた人生設計について自覚をうながすとともに、それに向けた具体的な進路指導(キャリア教育)が不可欠です。  小形さんも、障がいのある人の加齢への対策は、入社してから始めるものではないと指摘しています。学齢期を通して学習して獲得してきた「知・情・意・体」の特性は、そのまま社会人としても意味を持ちます。ですから、例えば、学校で行う運動なども、適性に効果的に行うことが、最初に述べた早期老化への予防と対策にもつながるということです。 (3)これから目ざす方向  富士電機フロンティアは、今後の障がい者雇用の方針として、雇用の拡充に加えて「定着支援」にウエイトを置くことを目ざしています。そのために、@本人の成長、A保護者の障がい受容と本人の成長をうながす行動、B社会の障がい理解、の三つのポイントをふまえながら、「産学官連携」と「地域ネットワーク」の構築を目ざしていくとしています。 まとめ  障がいの有無にかかわらず、人は働くことを含めたキャリア形成の過程を通して生活の質(QOL)の向上を目ざすことでしょう。そのため、障がいのある人に対する支援のあり方は、その人生の時間軸に沿って継続性を持って行われなければなりません。家庭や学校での支援や教育のあり方が、社会人としての生活につながることを、あらためて確認することが重要です。  企業における障がい者の加齢問題もまた、そうしたなかでとらえることが必要となってきています。 ※本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社富士電機フロンティア様の要望により「障がい」としています 写真のキャプション 代表取締役社長の小形秀夫さん 管理部長の川田直幸さん 川崎事業所業務課長の金田豊子さん 体力づくりの一環として、毎朝、全員参加で体操を行っている(写真提供:株式会社富士電機フロンティア) 技術指導のベテランから親会社の作業行程を学ぶ(写真提供:株式会社富士電機フロンティア) 検定制度などを活用し、親会社の社員が行う行程をになえる社員を育成する(写真提供:株式会社富士電機フロンティア) さまざまな作業能力に適した職域を確保することで、社員のモチベーションアップにもつながる。右は、モップ切子取り作業の様子。左は、製造現場清掃作業の様子(写真提供:株式会社富士電機フロンティア) 【P26-27】 省庁だより 特許庁 ※「霞が関だより」のコーナーは、今号より「省庁だより」と名称を変更しました パワーアシストスーツの普及拡大が期待されます 特許庁総務部企画調査課  就労支援機器には、モーターの駆動力により日常生活や作業を支援する自律支援用機器があります。特許庁は、平成30年度に、このような自律支援用機器を含むパワーアシストスーツ全般の特許出願動向を調査しました。本稿では、「平成30年度特許出願技術動向調査―パワーアシストスーツ―」の調査報告書から、まずはじめに、用途(「リハビリ」など)、アシスト対象動作(「歩行」など)、アシスト対象部位(「下半身」など)に焦点を当てて、特許出願(※1)の動向を紹介します。  用途別に見ると、「リハビリ」、「自律支援」を用途にした技術の出願件数はともに増加傾向にあります(※2)(図1)。また、アシスト対象動作別に見ると、「歩行」をアシスト対象にした技術が最も大きく出願件数を伸ばしており、「立つ」、「持ち上げ」も同様の傾向にあります(図1)。アシスト対象部位別に見ると、「下半身」、「上半身」をアシスト対象にした技術はともに出願件数が増加しており、また「下半身」の伸び率がより大きいことを考えると、今後も「歩行」や「立つ」といった動作のアシストを目的とした技術の出願件数の増加が予測されます。  次に、自律支援機器を含むパワーアシストスーツの初期段階の普及にあたっては、低コスト化に注力することが重要です。そこで「コスト低減」に関する技術の出願件数を見ると、いまだ出願件数は多くはありませんが、日本国籍の出願人による出願件数が72件と全体の32・6%を占め、国別で見ると最も出願件数が多いことがわかります(図2)。 図1 用途(リハビリ、自律支援)、アシストする動作(歩行、立つ、持ち上げ)、アシスト対象部位(下半身、上半身)の特許出願件数推移(1997-2016年) 下半身(左軸) 上半身(左軸) リハビリ(右軸) 自律支援(右軸) 歩行(右軸) 立つ(右軸) 持ち上げ(右軸) アシスト対象部位(下半身・上半身)の出願件数 アシスト対象部位(下半身・上半身)以外の出願件数 図2 「コスト低減」の出願人国籍別の出願件数(1997-2016年) 日本国籍、72件 32.6% 米国籍、23件 10.4% 欧州国籍、20件 9.0% 中国籍、58件 26.2% 韓国籍、42件 19.0% その他国籍、6件 2.7% ※1 今回の寄稿では、特許出願の件数について共通の優先権を持つパテントファミリーを1件とカウントし、また、出願年は優先権主張年をベースにして計上しています。 ※2 各図は、特許庁「平成30 年度特許出願技術動向調査―パワーアシストスーツ―」に基づいて作成しています。また、2015年以降はデータベースの収録遅れ、PCT出願の各国移行のずれなどで全データを反映していない可能性があります。 補足資料(編集部) 新たな技術が活用された「障害者就労支援機器」  障害者が生活をするうえで、就労支援機器は欠かせない存在です。それらには新しい技術やユニバーサルデザインがとり入れられています。ここでは、そうした支援機器の事例をご紹介します。 1 肢体(したい)不自由者・難病患者向け支援機器  車いす製造を行う「有限会社さいとう工房」は、屋内・屋外で使用できる多機能電動車いす「レル・シリーズ」を開発しました。  この「レル・シリーズ」は、屋外などの不整地でも常に中輪駆動の6輪が地面に接地する特許技術の「CW機構」と、後輪キャスターを後方に伸ばすことで安定した姿勢を保ち、段差を越えるときに有利な特許技術の「REL機構」、段差での衝撃を吸収し、段差に車輪が斜めに進入しても車輪が横向きになりにくい「HBキャスター」を採用することで、走行時に高い安定性を維持し、さまざまな場所への移動がしやすくなります。 写真のキャプション 多機能電動車いす「レル・シリーズ」 ※写真はリクライニング状態です 詳しくはホームページをご覧ください http://www.saitokobo.com/ 2 喉頭(こうとう)摘出者向け支援機器  「株式会社電制」が開発した電気式人工喉頭「ユアトーン」は、喉頭がんなどの治療による声帯の摘出や、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、筋ジストロフィーなどにより声が出せなくなった方の発声を補助する器具で、口と舌を動かすことにより話すことができます。  同社は、音声に人の声のように細かな変化を起こし、より自然に聞こえる「ゆらぎ」をつける技術と、同音異義語の区別や語尾の疑問形が表現できる「高低(抑揚)」をつける技術で特許を取得しました。これらの技術で、コミュニケーションの精度をより高めることができます。現在、標準型の「ユアトーン」には「ゆらぎ」をつける技術を採用。高性能型には、音声に「ゆらぎ」と「高低(抑揚)」の両方をつける技術を採用しています。 写真のキャプション 電気式人工喉頭「ユアトーン」 詳しくはホームページをご覧ください https://dencom.co.jp/ 3 聴覚障害者向け支援機器  「ディー・シー・シー株式会社」は、聴覚器官の最終段階の部分、耳の奥にあるラセン神経節細胞に直接作用して、聞こえを補助する技術を使った「プレスティン・U(ユー)」を開発・製造しています。  この機器は、高度難聴の6割の方に有効と評価されています(東京大学名誉教授、日本耳科学会元理事長、加我(かが)君孝(きみたか)氏による評価)。  現在、「プレスティン・U」は、高度難聴対応の支援機器として商標登録されています。また「プレスティン・U」をベースに、就労中など長時間使用しても疲れない、新たな支援機器の製品化が進められています。 写真のキャプション 高度難聴対応のヒアリング・デバイス「プレスティン・U」 詳しくはホームページをご覧ください https://www.prestin.jp/ 【P28-29】 研究開発レポート 障害者雇用制度の改正等に伴う企業意識・行動の変化に関する研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 1 はじめに  2013(平成25)年の障害者雇用促進法の改正により、事業主に対し、雇用における障害者差別の禁止および合理的配慮の提供が義務づけられました。さらに法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加えられ、法定雇用率も引き上げられることとなり、企業は対応を迫られました。このような障害者雇用制度の改正が、企業においてどのように意識され、障害者雇用に関する行動にどのような影響をおよぼすかを明らかにし、有効な企業支援のあり方を探るために「障害者雇用制度の改正等に伴う企業意識・行動の変化に関する研究」を実施しました。  本研究では企業へのアンケート調査(電話・質問紙)およびヒアリング調査を行い、障害者雇用の現状、法改正(差別禁止、合理的配慮、法定雇用率見直しなど)の認知状況、法改正への対応、支援機関等の活用、本社と事業所の役割分担などについてたずねました。 2 調査の結果と考察  法改正の認知(企業の意識)については、企業規模が大きいほど、「よく知っている」企業の割合が高くなっていました。法定雇用率の見直し後の障害者雇用方針についても、大企業ほど積極的に雇用を進める方針であることが示されました。しかし、規模の小さい企業では認知度が低く、小規模企業や障害者雇用経験のない企業が障害者雇用を推進していくためには、これらの企業が幅広く情報と接する機会を設け、支援機関による、より積極的な支援を行っていくことが重要であることが示唆されました。  合理的配慮については、企業の約半数が「知らなかった」という結果でした。特に小規模企業ではほかの企業規模より大きく下回っていることも着目すべき点としてあげられます。規模が小さい企業は障害者を雇用している企業の割合も低い傾向にあることから、障害者雇用そのものへの関心が薄い企業も多いと考えられ、規模が小さい企業にも伝わるような方法で周知し、認知度を高める取組みが求められるでしょう。  法改正をふまえた対応(行動)については、情報収集や社内点検、責任者の周知、社会保険労務士等への相談などの対応を行った企業の割合は、大企業の8割が差別禁止や合理的配慮について、何らかの対応を行っているものの、企業規模が小さくなるほど、対応割合が低いという結果でした(図)。制度改正を認知していながら、特に対応を行っていない企業のなかには、内容を十分に理解できていない企業もあるものと思われます。  ヒアリングのなかでは、法定雇用率の見直しについては、これまでの経緯のなかで、当然実施されるものと認識されていました。法定雇用率未達成企業では、障害者雇用の実現に向けて、特例子会社の設立や人事担当部署の新設による雇用管理体制の充実、障害者雇用を進めるための管理職アンケートの実施に着手する企業などがありました。  差別禁止・合理的配慮については、ヒアリングを行った全企業において法改正に関して認識されていました。各企業の取組み状況はまちまちですが、障害に関する知識を有する社員の育成に力点をおいた研修の取組みや、イントラネットを活用した合理的配慮に関して支障となる事情の申出システムの構築などがありました。  精神障害者の雇用については、労働者確保の方策の一つとして障害者雇用に着目し、さまざまな支援機関を訪問し、見聞を深めるという具体的な行動を経て、雇用を実現する取組みを行っている企業もありました。 3 企業支援のポイント  今回の調査結果をふまえ、企業支援に向けて活かしていただきたいポイントをいくつかお示しします。 @認知度の低い中小企業に対する制度の周知と支援  中小企業において法改正の認知度が低かったことから、企業の責任ある立場に直接周知し、理解をうながすことや、ハローワークをはじめ地域の就労支援機関が一体的支援体制を構築し、気軽に相談ができる環境を用意するなど、きめ細かに対応することが求められます。 A企業が障害者雇用に着手しやすくなるための機会づくりと個別対応型支援  企業トップに対して、セミナーへの参加要請や個別相談による企業を取り巻く個別状況に合わせた助言・支援を行うことにより、企業の実情に応じた障害者雇用が実現できると思われます。 B企業の支援ニーズをふまえた地域密着型の広報活動・支援  さまざまな広報手段があるなか、企業の障害者雇用担当者に情報が届くよう関係機関が互いに協力し合って、分かりやすい広報活動に努めることが期待されます。 C企業のコンプライアンス履行のための就労支援機関による補完的支援  ハローワークをはじめ就労支援機関が、企業の合理的配慮の取組み状況の確認や、必要に応じて具体的なアドバイスを行い、制度を理解・浸透させていくことが必要です。 D企業が求める支援機関に対するニーズをふまえた支援  今回実施したアンケートでは、合理的配慮や差別禁止について知りたいという企業が多かったほか、障害者雇用企業では障害理解を深め特性に合わせた対応を進めていこうとする傾向があり、未雇用企業では、採用後に障害者となったケースが出た場合の対応に不安を抱えていると見てとれる結果でした。  企業支援については、こうした結果をふまえた対策を講じることが必要でしょう。 ※本研究「調査研究報告書No.143」は、http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/houkoku/houkoku143.html より」ダウンロードできます ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp) 図 制度改正をふまえた対応の有無(企業規模別) 障害者差別禁止 40〜49人 対応あり50.9% 対応なし45.3% 無回答3.7% 50〜99人 対応あり50.7% 対応なし44.9% 無回答4.3% 100〜299人 対応あり68.6% 対応なし29.1% 無回答2.3% 300〜999人 対応あり75.1% 対応なし23.0% 無回答1.8% 1,000人以上 対応あり83.0% 対応なし15.1% 無回答1.9% 合理的配慮提供義務 40〜49人 対応あり65.9% 対応なし28.6% 無回答5.6% 50〜99人 対応あり61.3% 対応なし36.1% 無回答2.5% 100〜299人 対応あり73.8% 対応なし22.4% 無回答3.8% 300〜999人 対応あり81.8% 対応なし17.6% 無回答0.6% 1,000人以上 対応あり89.1% 対応なし10.9% 無回答0.0% 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 長野 障害者に「やさしいお店」登録制度  長野市は、障害のある人が安心してサービスを受けられる飲食店や事業所などを、「やさしいお店」に登録する制度を始める。  「心のバリアフリー」などをコンセプトに、障害を理由に入店を拒否しない、合理的配慮に努めるなど、適切な対応ができる店舗や事業所が「やさしいお店」として登録され、リーフレットと掲示用のステッカーをもらう。ステッカーのシンボルマークは、地元の障害者施設の利用者がデザインした。問合せは長野市障害福祉課へ。 電話:026−224−5030。 生活情報 知的障害者や発達障害者向け「がん保険」  障害者向けの保険会社「ぜんち共済株式会社」(東京都千代田区)と、「東京海上日動火災保険株式会社」(同区)が、知的障害や発達障害のある人とその家族らをおもな対象とした「手をつなぐがん保険」の販売を始めた。  これまで既存の保険に入りにくかった障害者向けに、告知が不要で加入しやすくした。保険料を安く抑えるため団体保険とし、加入するには知的障害者や親、支援者らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」の会員となる必要がある。 宮城 仮囲いに障害者の絵画  NTT東日本仙台中央ビル(仙台市青葉区)で、解体工事現場の仮囲いを活用し知的障害者の絵画を紹介する「ソーシャル アート ミュージアム」が始まった。第1弾の展示は7月20日まで。通りに面した壁面に、宮城、福島両県のアーティスト4人による絵画5点を特殊フィルムに印刷して飾る。  NTT東日本宮城事業部が、障害者アートを活用する「全日本仮囲いアートミュージアム」の運営元である企画制作会社「株式会社ヘラルボニー」(岩手県花巻市)の協力を得て実施。解体工事終了後の8月以降は別作品を展示する。 兵庫 「ダイバーシティ」当事者ら企業にアドバイス  さまざまな障害のある人たちが、ハラスメント対策などに取り組む企業や経営者らにアドバイスする団体「ダイバーシティ戦隊・ヤルンジャーズ」(川西市)を設立した。元毎日放送ラジオ報道部長の大谷(おおたに)邦郎(くにお)さんが、取材などを通じて知り合った約35人と、それぞれの魅力を発信して多様性を受け入れる社会づくりを目ざす。  これまでに市民講座で手話を交えたパフォーマンスを披露し、自治体職員向けに「マタニティーハラスメント研修」を開催。今後は一見してわかりにくい障害のある顧客に応対する接客研修も企画。問合せはヤルンジャーズ(nrn59240@nifty.com)へ。 働く 東京 野村ホールディングス傘下会社が特例子会社に認定  「野村ホールディングス株式会社」(中央区)の100%子会社「野村かがやき株式会社」(千代田区)が「特例子会社」として認定を受けた。  2019年10月に設立。社員43人のうち障害のある32人が、東京都内の拠点で障害特性に応じた各種業務に従事している。おもな業務内容はビルメンテナンス、コンピュータの保守メンテナンス、情報処理サービス、印刷および製本や事務処理。 神奈川 障害者アートで活動支援  横須賀市佐島(さじま)に、障害者が手がけた絵画を展示・即売するスペース「チャレンジド・アート・ギャラリー」が誕生した。  ギャラリーは、シニア向け住居を備える複合施設「マゼラン湘南佐島」内のレストランや通路の壁に設けられた。芸術活動に励むアーティストを広く紹介し、収益は全額アーティストに渡され、活動費に活用してもらう。作品は2万円台〜100万円超の大作まであり、ポストカードも販売されている。問合せはマゼラン湘南佐島まで。 電話:046−855−3071。 富山 北陸電力、障害者雇用拡大へ新会社設立  「北陸電力株式会社」(富山市)は、障害者雇用の拡大に向け100%子会社の「北陸電力ウィズスマイル株式会社」(同市)を設立すると発表した。新たに雇用する障害者5人を含む10人体制で、7月から業務を開始する。  おもな業務は、社内便の集配や書類の電子化など、北陸電力のオフィスサポート。将来的にはグループ会社にも業務受託などの範囲を広げる方針。 岡山 中学校跡地で「バナナ栽培」障害者らの農業研修に  2014年に閉校した吉備中央(きびちゅうおう)町の中学校跡地でバナナの栽培がスタートした。手がけるのは、国産バナナを栽培する農業法人「株式会社D&Tファーム」(岡山市)のグループ会社「幸福産業株式会社」(吉備中央町)。  町から借り受けた1万350uのグラウンドに土を入れ、ビニールハウス11棟(計6500u)を建設した。計画ではバナナ1千株を植え、今春から研修生として障害者や高齢者を優先的に受け入れて栽培法を指導する。7月には観光農園をオープンする予定。町内でコーヒーやパパイアなど熱帯作物の農園計100ヘクタールも整備するという。 本紹介 『農福連携が農業と地域をおもしろくする』  全国の障害者施設、就労支援施設の経営改革に関するさまざまな提案を行うことを目的に2012年に創刊された雑誌「コトノネ」編集長の里見(さとみ)喜久夫(きくお)さんと、農林水産政策研究所・企画広報室長の吉田(よしだ)行郷(ゆきさと)さんが『農福連携が農業と地域をおもしろくする』(株式会社コトノネ生活刊)を出版した。  農福連携によって、地域の障害者だけでなく高齢者や引きこもりの人、シングルマザーも働ける場となったとして、農福連携のこれまでの取組みや先進事例を紹介しながら今後の方向性などを示している。B6判268ページ、1980円(税別) 募集 令和2年度 障害者雇用職場改善好事例 障害者の健康に配慮し安心・安全に働けるように取り組んだ職場改善好事例 募集期間 令和2年4月1日(水)〜5月20日(水) 募集要項・応募用紙はホームページからダウンロードできます 職場改善好事例 検索 作品募集! シンボルキャラクター“ピクチャノサウルス” 令和2年度 障害者雇用支援月間 ポスター原画(絵画・写真)コンテスト 「働くすがた〜今そして未来〜」 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 募集期間(応募作品受付期間) 令和2年4月1日(水)〜6月15日(月)【消印有効】 児童・生徒のみならず、社会人一般の方もご応募いただけます。 (写真の応募は障害の有無を問いません) 募集要項など詳しくは JEED 原画 検索 【P32】 掲示板 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ  当機構が運営する国立職業リハビリテーションセンターおよび国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、求職中の障害のある方々に対して就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています。また、休職中や在職中の方のための職業訓練も行っています。  なお、利用にあたり、年10回程度の入所日を設けています。  募集コースや応募締切日、手続きなどの詳細については、下記までお気軽にお問い合わせください。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター 埼玉県所沢市並木4―2 http://www.nvrcd.ac.jp/ 【求職中、休職中の方】TEL:04―2995―1201 【在職中の方】TEL:04―2995―1135 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 http://www.kibireha.jeed.or.jp/ 【求職中の方】TEL:0866―56―9001 【休職中、在職中の方】TEL:0866―56―9003 『働く広場』読者のみなさまへ  2020年5月号は、大型連休の関係から、お手元に届く日程が通常よりも数日遅れることが見込まれています。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いします。ご不明の点は当機構企画部情報公開広報課(電話:043−213−6216)までおたずねください。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える 人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 EDITORS' NOTES 次号予告 ● 職場ルポ  精密プレス加工・金型製作などを行う有限会社川田製作所(神奈川県)を訪問。障害者や高齢者などが活躍する現場を取材します。 ● グラビア  トラック運送事業や流通加工、倉庫業務を営む株式会社グンリック(埼玉県)で働く、聴覚障害のあるドライバーをご紹介します。 ● 編集委員が行く  阪本文雄編集委員が、オムロン株式会社の特例子会社、オムロン太陽株式会社(大分県)と、オムロン京都太陽株式会社(京都府)を訪問。障害のある社員の一般就労へのステップアップについて取材します。  本誌カメラマンとして活躍されている小山博孝さんは、今月号をもって退任されます。40年以上にわたり、熱いまなざしで数多くの「働く現場」を取材していただきました。これまでの多大なご貢献に心より感謝申し上げます。(編集部一同) 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ http://www.jeed.or.jp メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 4月号 定価(本体価格129円+税) 送料別 令和2年3月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 株式会社ダイナン 経営補佐 樋口克己 東京通信大学教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 横河電機株式会社 箕輪優子 【P33】 2020年度(令和2年度) 職業リハビリテーションに関する研修のご案内  当機構では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当する方を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や障害者の雇用支援に必要な技術の修得と資質の向上を図るための研修を実施しています。受講料は無料です。  各研修の詳細・お申込み先などは、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp)のサイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 研修 日程 場所 就業支援基礎研修 【対象】就業支援を担当する方 【内容】就業支援のプロセス、障害特性と職業的課題、障害者雇用施策、ケーススタディなど 各地域障害者職業センターのホームページなどで別途ご案内いたします。 ◯◯障害者職業センター 検索 ※◯◯には都道府県名を入力 各地域障害者職業センターなど 就業支援実践研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験2年以上の方 【内容】障害別のアセスメント、支援ツールの活用方法、ケーススタディなど 10〜12月に全国14エリアで開催します。就業支援実践研修のホームページなどで別途ご案内いたします。 全国14エリアの地域障害者職業センターなど 就業支援スキル向上研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験3年以上の方 【内容】障害別の支援技法、職リハに関する最新情報、ケーススタディなど 令和3年1月26日(火)〜1月28日(木) 千葉県千葉市 就業支援課題別セミナー 【対象】障害者の就労や雇用に関する支援を担当しており、障害者に対する就業支援の実務経験を有する方 【内容】令和2年度は「事業主支援」をテーマとする予定 令和2年11月5日(木)〜11月6日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など (集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度) ※対象地域は以下のとおりです 東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山 西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 4月期 東日本対象:令和2年4月21日(火)〜4月24日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年4月21日(火)〜4月24日(金) 大阪府内 6月期 東日本対象:令和2年6月9日(火)〜6月12日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年6月9日(火)〜6月12日(金) 大阪府内 9月期 東日本対象:令和2年9月15日(火)〜9月18日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年9月15日(火)〜9月18日(金) 大阪府内 10月期 全国対象:令和2年10月27日(火)〜10月30日(金) 千葉県千葉市 12月期 東日本対象:令和2年12月15日(火)〜12月18日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年12月15日(火)〜12月18日(金) 大阪府内 2月期 全国対象:令和3年2月16日(火)〜2月19日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして1年以上の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど <第1回> 令和2年5月26日(火)〜5月29日(金) 千葉県千葉市 <第2回> 令和2年8月4日(火)〜8月7日(金) 大阪府内 <第3回> 令和2年10月13日(火)〜10月16日(金) 千葉県千葉市 <第4回> 令和3年2月2日(火)〜2月5日(金) 大阪府内 <お問合せ先> 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.or.jp 【裏表紙】 障害者雇用納付金は、「振込み」による支払いはできません。 ※1 「ペイジー」への対応や、インターネットバンキングの操作方法については、ご利用の金融機関へお問い合わせください。 ※2 確認番号が付番されていない事業主の方は、確認番号を当機構納付金部(TEL:043-297-9651)までお問い合わせいただくか、金融機関の窓口での納付をお願いします。 インターネットを利用して、障害者雇用納付金申告及び障害者雇用調整金等申請の手続きをお手元のパソコン上で行うことができます!! 利用時間 9:30〜17:00(土・日・祝日、年末年始12月29日〜1月3日を除く) 4月号 令和2年3月25日発行 通巻511号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)