【表紙】 令和2年5月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第512号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2020 6 No.512 職場ルポ 町工場でIT活用、ダイバーシティを実現 有限会社川田製作所(神奈川県) グラビア 憧れのトラックドライバー 〜物流をになう聴覚障害者たち〜 株式会社グンリック(埼玉県) 編集委員が行く 就労継続支援A型事業所から23人が製造現場へ一般就労 〜障がい種別の多様化に対応〜 オムロン京都太陽株式会社(京都府)、オムロン太陽株式会社(大分県)、社会福祉法人太陽の家(京都府・大分県) 私のひとこと 「発達障害だから働けない」という前に 発達障害の理解啓発に関する講師 笹森理絵 「畑作業」青森県・沼田(ぬまた)洋子(ようこ)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 6月号 【前頁】 国立障害者リハビリテーションセンター 国立職業リハビリテーションセンター 創立40周年記念式典開催  令和2年1月22日(水)14時45分より、天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、「国立障害者リハビリテーションセンター並びに国立職業リハビリテーションセンター創立40周年記念式典」が国立障害者リハビリテーションセンター(以下「障害者リハセンター」という。)学院講堂において盛大に挙行されました。  式典は、国歌斉唱の後、飛松好子障害者リハセンター総長による式辞が述べられ、天皇陛下よりおことばを賜りました。続いて、自見はなこ厚生労働大臣政務官が厚生労働大臣の挨拶を代読されました。その後、大野元裕埼玉県知事、石川准障害者政策委員会委員長から来賓祝辞が述べられました。  さらに関係者に対して感謝状贈呈が行われ、厳粛な雰囲気の中でつつがなく本式典は終了いたしました。  両陛下は障害者リハセンターをご視察された後、16時40分頃、関係者のお見送りを受けてお発ちになられました。 天皇陛下おことば  国立障害者リハビリテーションセンター並びに国立職業リハビリテーションセンターの創立40周年記念式典に、皆さんと共に出席できることをうれしく思います。  この2つのセンターは、障害のある方々が自立した生活を送り、社会に参加することができるよう、医療から職業訓練、就労支援までを一貫して行うことを目的として、昭和54年に設立されました。  近年は、科学技術の発展に伴い、再生医療を受けた人に対するリハビリテーションの手法の開発など、様々な新しい取組も進められていると聞いております。こうした取組の積み重ねや、情報通信技術の発達など、社会環境の変化を背景に、障害のある方々がその能力を活かして働くことができる社会が、一歩一歩実現に近づいていることを喜ばしく思います。障害者の自立と社会参加のために力を尽くしてこられた両センターの職員を始め、多くの関係者のたゆみない努力に対し、心から敬意を表します。  今年の8月から9月にかけて東京2020パラリンピック競技大会の開催を控えている我が国では、障害のある方々に対する理解が徐々に深まってきていることを感じています。今後、障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格や個性を尊重し支え合う「共生社会」が築かれていくことを切に願っています。  創立40周年を迎えた両センターが、それぞれの機能をより一層充実させ、今後も我が国のリハビリテーションの分野において大きな役割を果たしていくことを期待し、お祝いの言葉といたします。 【もくじ】 目次 2020年6月号 NO.512 お知らせ−−前頁 国立障害者リハビリテーションセンター 国立職業リハビリテーションセンター 創立40周年記念式典開催 私のひとこと−−2 「発達障害だから働けない」という前に 発達障害の理解啓発に関する講師 笹森理絵さん 職場ルポ−−4 町工場でIT活用、ダイバーシティを実現 有限会社川田製作所(神奈川県) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ−−10 はじめての障害者雇用 第2回 JEEDインフォメーション−−12 2020年度(令和2年度)職業リハビリテーションに関する研修のご案内/令和2年度「地方アビリンピック」開催地一覧/令和2年度障害者雇用支援月間 ポスター原画(絵画・写真)コンテスト「働くすがた〜今そして未来〜」 グラビア−−15 憧れのトラックドライバー 〜物流をになう聴覚障害者たち〜 株式会社グンリック(埼玉県) 写真/文:官野貴 エッセイ−−19 最終回 発達障害で活躍するということ −一人ひとりの個性を活かす− 内閣府地域働き方改革支援チーム委員(兼務 株式会社東レ経営研究所) 渥美由喜 編集委員が行く−−20 就労継続支援A型事業所から23人が製造現場へ一般就労 〜障がい種別の多様化に対応〜 オムロン京都太陽株式会社(京都府)、オムロン太陽株式会社(大分県)、社会福祉法人太陽の家(京都府・大分県) 編集委員 阪本文雄 省庁だより−−26 障害者に対する就労支援の推進 〜令和2年度障害者雇用施策関係予算のポイント〜 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課/人材開発統括官 参事官室(人材開発政策担当) 研究開発レポート−−28 就労に必要な移動等に困難がある障害者の実状等に関する調査 障害者職業総合センター 事業主支援部門 ニュースファイル−−30 掲示板・次号予告−−32 「合理的配慮」が学べるDVDができました! ※「心のアート」は休載します 表紙絵の説明 「一生懸命に働いている仲間の姿を見て、みんな仲よく働いている様子が表現できればいいなと思い、描きました。はじめはうまく描けなくて困っていましたが、絵の先生に指導を受けて、がんばりました。受賞を聞いて、うれしかったと同時に、次のコンテストにも出したいと思いました」 (令和元年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp) 【P2-3】 私のひとこと 「発達障害だから働けない」という前に 発達障害の理解啓発に関する講師 笹森理絵  私は、今年で50歳を迎える発達障害の当事者である。  学生時代は考古学者を目ざしたが、計算が苦手で測量ができず、遺跡の仕事を諦(あきら)めた。大学卒業直後に結婚して以来、整形外科やグループホームなど、医療・介護にかかわる仕事に就いていた。しかし、仕事、育児、社会生活などを通じてだんだんと社会不適応に陥(おちい)って鬱(うつ)病になり、それをきっかけとして32歳で発達障害と診断された。  その後、発達障害に関する啓発活動をスタート。再び四年制大学に進んで、精神保健福祉士や社会福祉士などの国家資格を取得した。以来、心理社会教育をベースにしたオリジナルの資料をつくり、日本全国津々浦々さまざまな人に向けて、各場面において「発達障害について、どのように理解・対応すればよいのか」を具体的に、わかりやすく、面白く解説する講師として14年間活動している。  また、8年前から神戸市より委託を受けて月に一回、発達障害の当事者や保護者を対象としたピアカウンセリング(※)のカウンセラー・相談員としても活動中である。途中、就労移行支援事業所で一年間、常勤の職業指導員も経験した。 努力だけではどうにもできない  ふり返って考えるに、私の過去の就労経験の「すべてがダメだった」わけではないように思う。  例えば、仕事の内容が理解しやすく、先の見通しが立ちやすく、ある程度自己の裁量を任され、かつ、周囲の人が私の長所を認めてくれている職場では、それなりに仕事ができることも多かった。仮に何か失敗したとしても、双方の関係構築ができていれば、そこまで問題にならずにやり直しもできた。そこは発達障害と診断される前も後も変わらない。  では、診断前後で違いがあるとすれば、それは何か。  診断前の私は、自分のうまくいかない部分について客観的になれず、卑屈になりやすかった。苦手なことの一部について、「個人の努力だけではどうにもできない」ということを知らなかったし、すべてが自分の努力不足と思うことも多く、不安だらけで弱かった。  周囲がよかれと思ってアドバイスしてくれても、それを素直に聞き入れる余裕もなく不安が増大し、信用してもらえていない気がして不満に思ったり、被害妄想的になったり、方策をシンプルに考えることもうまくできなかった。  周囲のアドバイスも的確ではないものが多く、私の特性を理解せず、いわゆる「根性論」的な話や説教など、納得がいかないこともあった。  しかし診断後は、自分が苦手としているもののなかには、個人の努力だけでは改善がむずかしいものもあるとわかり、少しずつ客観的に自分の身の丈で物事を考えることができるようになった。苦手なことにぶつかっても、以前と違い工夫することもできるようになり、素直に人に聞く、ツールを使う、だれかにお願いする……など、それまで不便だったことが、少しずつ軽減されてきた。 「逃げる」のではなく、「避ける」  一例をあげよう。私は計算が苦手なこともあり、そもそも式を立てること自体がむずかしく、計算機ですら答えを導き出せないことがある。こればかりは、どんなにがんばっても時間と労力の無駄遣いにしかならない。そういうときには状況を説明して、だれかに代わりをお願いする。もしくは計算をともなう作業は避ける。「逃げる」のではなく、「避ける」のである。  短期記憶・聴覚記憶が苦手で指示が一度で理解できないときや、出された指示の意図を察することがむずかしいときもある。その場合は先方に一つひとつ丁重に確認し直す。  「申し訳ありませんが、もう一度、念のため確認させていただいてよろしいでしょうか」、「ここはこういう理解でよろしいでしょうか」、「もし違っているところがありましたら教えていただけると助かります」などと声をかけて、聞いたことをあげながら一緒に確認することでミスは減らせる。  衝動的にまずい発言をしそうなときは、一呼吸置いて「沈黙は金」と頭のなかでくり返し、その場は黙ってやり過ごす。  自分の特性がわかってくると、前述した通り、一つひとつ対策を立てることができてくる。ただ、こういう対策も自分の努力だけでは成り立たないことがある。そのためにはやはり周囲の理解が大切だ。一生懸命お願いしたときに、先方に理解がなく、否定や叱責をされてしまうと、本来できることもできなくなる。さらに、苦手なことを無理にさせられると、長所を発揮できなくなり、戦力化できる部分があるのに、そこを活かされずに看過されてしまうこともあるかもしれない。 内側から変わろうとする力  就労や職場定着は、当事者本人の障害理解・自己理解の大切さにあわせて、周囲の人々の障害理解・他者理解との両輪が必要だ。  当事者・保護者・支援者としての視点で思うことは、特性を知って少し工夫することで、多くの人は充分に仕事をこなせるだけのスキルは持っている。ただ、「何が就労や職場定着をむずかしくしているか」といえば、マッチングなどの問題以上に、自己肯定感のなさから来る認知の歪みとレジリエンス(精神的回復力)の弱さではないかと考える。  幼いころから「失敗し、叱責を受ける」経験はたくさん積み重ねているが、生きるために必要な、それも本来の肯定的な社会経験が十分に積めていない。出生後、十数年から数十年かけて刷り込まれてきた負の思考癖≠ヘ、数日、数年で簡単に変更できるものではない。  本人を変えようと外圧を加えるより、本人の長きに渡る苦難の人生に思いを馳せながら、その人の障害の部分だけでなく、その人の個≠サのものにも心を寄せて、その温かみのなかで本人が「内側から変わろうとする力」が生まれることを信じて待ってほしい。 相互理解と安心  とかく障害者雇用や実習の場においては、短期間で評価を下す印象がある。  雇用者側の事情も承知のうえであえて書くが、当事者の真のポテンシャルが発揮されるのは、本人がある程度、仕事を理解して日々のペース配分を掴み、それなりに周囲との関係構築ができ、双方向のやり取りを「安心」してできるようになってからだ。まずは「安心」がキーワードである。  当事者は、まずは信頼されるために必要なあたり前のこと……実直、謙虚、誠意など、人間性を成長させる努力を怠らないことは大切で、「合理的配慮をしてもらってあたり前」ではないし、もし配慮してもらったときには感謝しつつ、その分得意なことを「がんばる」ことも、また私たちに与えられた責任なのだと思う。  社会はすべてがアンフェアなのではなく、やはりどこかでバランスをとろうとするものがあって、定型とされているなかにもさまざまな生きづらさを持って働く人も多くいる。結局のところ「相互理解なのだ」とわかれば、雇用する側・される側、それぞれがどう考えていけばよいか、自(おの)ずと見えてくるものがあるような気がする。 ※ピアカウンセリング:障害のある当事者同士が、情報を共有したり、互いを精神的に支え合うことで自立を目ざす、仲間(ピア)同士のカウンセリング 笹森理絵 (ささもり りえ)  1970(昭和45)年生まれ。32歳のときに発達障害の告知を受ける。40歳を過ぎてから精神保健福祉士・社会福祉士の資格を取得。  現在は、神戸市でピアカウンセラーのほか、全国で発達障害の啓発にかかわる講師、グループピアサポートのファシリテーターとしても活動中。  息子三人も発達障害の診断があり、長男は特例子会社で事務職を、大学生の次男はクローズドで飲食店勤務、三男は水産高校入学を目ざしてがんばっている。 【P4-9】 職場ルポ 町工場でIT活用、ダイバーシティを実現 ―有限会社川田製作所(神奈川県)― 従業員18人のうち障害のある人が6人、外国人が3人の“町工場”。そこでは従業員の苦手をカバーし、全体の生産性アップにもつながるさまざまな工夫があった。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ 有限会社川田製作所 〒250-0876 神奈川県小田原市中新田294-1 TEL 0465-48-8696 FAX 0465-47-3398 Keyword:知的障害、身体障害、発達障害、ハローワーク、地域障害者職業センター POINT 1 本人の苦手なことを補う工夫が職場全体の効率化に 2 目標と成果を「見える化」して意欲向上も 3 仕事ぶりで採用した結果、「ダイバーシティ経営企業」に 「ダイバーシティ経営企業」に  金属プレス加工やプレス金型製作を手がける「有限会社川田製作所」は、1969(昭和44)年の創業から51年が経つW町工場Wだ。自動車や産業用機械、OA機器などの部品を中心に、月あたり数百〜百万個単位で受注加工している。  従業員は18人。うち65歳以上の人が5人(最高齢76歳)、外国人が3人、障害のある人が6人(聴覚障害と内部障害が各1人、知的障害2人、発達障害2人)と、多様性に富んだ構成が特徴だ。  川田製作所は2017(平成29)年度、経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた。ここでいう「ダイバーシティ経営」とは、多様な属性の違いを活かし、個々の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目ざして、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組みをさす。  2019(令和元)年10月に会長の川田(かわだ)隆志(たかし)さん(80歳)から代表取締役を引き継いだ、息子の川田(かわだ)俊介(しゅんすけ)さんは、「ここ10年ほどの取組みが、結果として、ダイバーシティ経営企業に認められることになったのだと思います」とふり返る。 一般の求人票で募集  川田製作所には昔から、障害のある従業員が1人、2人いたそうだ。飛び込みで事務所に来た福祉施設職員に「働けそうな人がいるので雇ってみてもらえないか」と依頼されて軽作業を担当してもらったり、従業員が病気により内部障害を有するようになったりしたためだという。  俊介さんは、もともとシステムエンジニアとして他社で働いていたが、2010年に川田製作所に入社した。当時は、従業員14人のうち55歳以上が11人(うち障害者2人)と、高齢化に向かうなかで「10年後のことを考えると若い人材も必要だと思っていました」と明かす。  2014年ごろ、受注が増えてきたのを機にハローワークに一般の求人票を出した。仕事内容はプレス加工などだが、窓口の職員に「これは障害のある人でも可能ですか」と聞かれ、これまでのことを想定し「できます」と答えたという。  そこから話はトントン拍子で進んだ。すぐに障害者雇用担当者に「職場を見学させてほしい」といわれ、求人票を出した数日後には、ハローワークと就労移行支援事業所のジョブコーチの2人が職場見学に訪れた。  ほどなくして「推薦できる人がいるので実習させてほしい」と就労移行支援事業所から紹介されたのが、知的障害(中度)のある中武(なかたけ)矢輝(なおき)さん(24歳)だった。特別支援学校を卒業して半年ほど経っていた。実習では「いわれたことが守れるか」といった安全面のポイントを確認し、3カ月間のトライアル雇用に進むことになったという。  トライアル雇用に向けた顔合わせには、中武さんと母親のほか神奈川障害者職業センターからジョブコーチを含め3人、就労移行支援事業所から2人、ハローワークの担当者ら計8人が川田製作所に集まった。俊介さんがふり返る。  「最初の2週間は、就労移行支援事業所や職業センターの方がほぼ毎日、その後も週1回交代で来てフォローしてくれました。さらに2週間に1回、私と本人と支援者との三者面談を行い状況の確認やフィードバックができたので安心できました」  トライアル雇用期間中に中武さんに担当してもらった業務は、手動で1枚ずつ金属片を型にはめるプレス加工。「3カ月後までに、従業員の平均枚数の7割をこなす」という目標も決めた。「これは生産性を維持できる戦力として望むことでもありました」と俊介さんは説明する。  3カ月後、中武さんのこなせる枚数は5割ほどだった。だが、現場のリーダーから「途中までは集中力にムラがあったが、除々に数字も上がってきた。もう一度チャンスをあげてほしい」との申し出があった。穏やかな性格で周囲をなごませる中武さんを、何とか採用につなげたいという周囲の親心もあったようだ。俊介さんも、社会に出たばかりの若い中武さんの伸びしろに期待していた。ハローワークと相談し、もう3カ月だけトライアル雇用を延長した。「何とかして働きたい」と自覚した中武さんの意気込みは、勤務中の行動にも表れるようになり、結果として目標も無事にクリアできたそうだ。  見学させてもらった工場には、大小26種のプレス加工機械が所狭しと並んでいた。その一角で中武さんが、薄い金属部品を1枚ずつ点検しながら型にはめてプレス加工していた。働いていて苦労することはないか聞いてみた。  「数をこなすのが、とてもたいへんです。でも早くやり過ぎると失敗するので、ていねいに積み重ねていくようにしています。注意されることがたくさんありますが、ほめられることもあります」  今後の目標を聞くと「実習生が来たら、やさしくていねいに教えてあげられるようになりたい」と笑顔で話してくれた。  中武さんの指導役を務めるリーダーの成田(なりた)宗太郎(そうたろう)さんに、職場で心がけていることを聞いた。  「特に変わった教え方をしているわけではないですが、本人に向上心さえあれば、いくらでも面倒をみられると思っています。また、社長以下みんなを巻き込んで成長ぶりや課題を共有することも大事ですね」 「数字が苦手」からの管理改善  中武さんが本採用されてから初めてわかったこともあった。なかでも業務に支障をきたしたのが「数字を数えることが苦手」ということだった。  プレス加工では1人で1日数千個もの部品を手がけるが、加工途中でできた傷や変形といった不良品の数、クリアした良品の数などを記録しなければならない。中武さんの記録と実際の部品数を照らし合わせると、いつも合わなかった。  本人によくよく聞いてみると、本当は5ぐらいまでしか数えられないことがわかった。そこで俊介さんが思いついたのが、交通量調査などで使われている数取器(カウンター)だ。通販サイトで売っていた3000円ほどの卓上用カウンターを購入し、「かこうまえ(加工前)」、「ダコン(打痕)」、「キズ(傷)」、「へんけい(変形)」、「ほか」というシールを貼って、見つけるたびにカウンターを押し、最後に書き写すだけで済むようにした。  中武さんは数字を書くのも苦手で、判読できないことが多かったため、数字練習帳を渡して勤務時間外に練習してもらった。0から9までの数字の見本を本人の専用ファイルボードに貼って、忘れないようにした。  「カウンターについては、ほかの従業員からも『これは便利だ、自分たちも使いたい』といわれ、配りました。自分で数を数える作業だけでも、従業員みんなの小さなストレスだったのだと知りました」と俊介さん。 日報アプリの開発  ほかにも職場には「数のストレス」があった。日報だ。数種類の作業時間を合計して一日の労働時間を記入することになっていたが、「3時間35分」、「2時間55分」、「1時間20分」といった時間の合計は、少しおっくうな作業だ。終業時間になるとあちこちで電卓をたたく姿を見ていた俊介さんは、システムエンジニアの腕を活かして「日報アプリ」を開発した。  アプリを各自のスマートフォンに取り込んでもらい、作業書にあるQRコードを読み取ることで、具体的な作業内容と時間が自動的に入力される。一日分の合計が所定労働時間の480分(8時間)に達すると、画面右上の顔マークが笑顔に変わるというものだ。  このアプリは、工場全体の生産管理を大きく向上させることにもつながった。  「各部品の日々の実績データが細かく蓄積されることで、これまでより正確に進捗状況を把握・予測できます。受注内容にかかる経費なども計算しやすくなるため、営業活動での見積り提案もしやすくなりました」  一人ひとりの実績表ができたことで「成果の見える化」も実現した。さまざまな作業ごとに1時間あたりの加工実績が毎月集計され、あらかじめ決めておいた目標値に対する達成度が算出される。例えば、ある月のA部品の検査個数が計9時間で2万7000個。目標3万個に対し達成率90%といった具合だ。ただし、従業員のみなさんの実績表をちらっと見せてもらったが、達成率100%の数字はほとんどなかった。  「実は、過去実績の平均値が達成率67%になるよう目標値を決めているので、70%以上が上出来で、100%は出来過ぎです」  実績表は、本人だけに見せて、ほかには公表しない。給与にも影響はしない。自分の過去の実績と見比べてもらい、どれだけ成長できたか、逆に落ち込んだときには何が課題だったのかをフィードバックし、向上していくための指標としている。「実際には、本人のがんばりをほめて励ますための材料ですね。数字を見るだけで、やっぱり自分の仕事ぶりを気にするようになり、モチベーションにもつながります」と俊介さんは話す。 小さな工夫で苦手を補う  2016年に事務員として入社した佐々木(ささき)彩花(あやか)さん(22歳)は、新卒採用枠に応募してきた。それまで事務を長年担当してくれていた従業員が「もう70歳を超えたので、若い人に引き継ぎたい」と申し出たことから、ハローワークに一般事務の求人票を出していた。高卒や短大卒の応募者7人を面接し、1日職場体験も行った。佐々木さんは面接の場で、みずから発達障害があることを語った。「人との会話などで急な対応がむずかしい」ということで、障害者手帳も持っていた。  俊介さんは、最終的に佐々木さんを採用した理由について「仕事に対するひたむきさや真面目さを見て、彼女が一番活躍しそうなイメージがわいたからです」と話す。佐々木さんは「将来仕事に活かすために」と高校でパソコン部に所属し、ワードやエクセルの関連資格を取得するなど準備をしていたそうだ。  「いろいろとソツなくこなすよりも、少しずつでもいわれた仕事を着実に覚えてくれるタイプのほうが、うちの事務員として任せていけると思いました。事務は基本的に1人でコツコツやる業務ですから」  事務員としての大きな課題は、電話対応だった。だれなのかわからない相手からの電話は、戸惑って言葉がすぐに出てこないという。  俊介さんはまず、電話をナンバーディスプレイ式に変えてみることにした。  「社長や従業員、取引先などの電話番号を、彼女が自分で登録しました。電話を取る前に相手がわかるだけで、かなり精神的な負担が減ったようです」  一方で佐々木さんは自ら「電話対応マニュアル」をつくった。ネットで見つけたさまざまな会話集を編集し、プリントアウトしたものをくり返し音読した。  何枚にも増えたマニュアルを見せてもらうと、大事なところは蛍光ペンで下線が引かれ、新たに必要になった言葉もあちこちに書き加えられていた。同様に、支払い請求など少し複雑な作業も、マニュアルと細かいチェックシートをつくり、毎回ミスなくスムーズに行えるよう工夫している。 苦手を得意に変えて、戦力に  俊介さんは、佐々木さんと一緒に働き始めてから気づいたことがあった。  それは社内業務のなかに「いつまで、どこまで」やるのかがはっきりしないケースが多いということだ。コピー枚数では「5、6枚」、在庫管理では「なくならない程度に注文を」といった具合で、数やタイミングがはっきりしない業務が彼女は苦手だった。それを劇的に変えたのが、オリジナルの『お仕事カレンダー』だ。  まず、すべての業務を「いつ、何時に、どこまで」やるかを決める。毎月やるものは何日、毎週やるなら何曜日、毎日やることは時間にして決めてしまう。補充する数も「〇個以下になったら〇個補充。これは1〜2カ月分相当」といったことも一緒に決めた。いまでは70種以上に増えた業務を、パソコン上のタスクツールリストに登録して管理している。  「在庫管理の考え方などを最初に教え、あとはすべて自分なりに調べてつくってもらいました。それが仕事を覚えるうえで大事ですし、彼女も1人でできる能力がありますから」  佐々木さんは、42インチの大型ディスプレイに、受発注に関するファイルなどを4画面並べながら仕事を進めている。デスク回りには5種類のプリンターをはじめ、スキャナーやバーコードリーダーなども置かれている。電子化、システム化された業務が多くなっているためパソコンスキルがいかんなく発揮できる。  最近では、新たな業務も手がけるようになった。例えば、新入社員の社会保険の加入や年末調整などの手続きも、自分でネット検索して方法を学び、できるようになったそうだ。俊介さんは「以前は外部に委託していた業務までやってくれるようになり、予想以上の戦力です」と笑顔で話す。  コミュニケーションに特性がある人と一緒に働くうえで、職場全体に「理解を広げること」もやはり重要だ。佐々木さんが入社した翌年、業務連絡を行う職場のリーダー4人を対象に、定例会議を利用して数回にわたり勉強会を行った。俊介さんは、自治体などが公開している資料を参考に、職場での支援ポイントや、コミュニケーションで心がけることなどを伝えた。  「最初はみんな面倒がっていたのは事実ですが、結果として、それまで行き違っていたようなケースが減っていくのを実感してくれたのか、いまでは職場内のやり取りもスムーズになりました」  佐々木さんに、川田製作所で働いていてよかったことを聞いてみた。  「私のほかにも障害のある人が何人かいるおかげで、職場が全体的に働きやすいと思います。社長さんやみなさんが、一人ひとりに合わせて配慮してくれているのもうれしいです」 東南アジアの活気に注目  川田製作所では5年ほど前から外国人の従業員も働いている。第一号はフィリピン人の女性だった。ハローワークでいつものように求人票を出したら、たまたま日本人男性と結婚して小田原市に住んでいた女性が応募してきたという。  「元気がよくて仕事もすごくがんばってくれました。『必要なら友だちも誘います』というため、もう2人来てもらいました」と、俊介さん。  その後2人は夫の転勤で引っ越し、いまはフィリピン人の従業員は1人だ。  東南アジアの人たちの活気あふれる気質に注目した俊介さんは、ベトナムの技能実習生も受け入れるようになった。1期(3年)で2人ずつ、いまは3期目の2人が来ている。  「最初の1期生だけは言葉の問題もあり仕事を覚えてもらうまで苦労しましたが、彼らが引継ぎ時に2期生に母語でしっかり伝えてくれました。彼らは礼儀正しく能力も高い。大型プレス加工の自動機械など操作スキルが複雑なものも覚えが早かったため、いまでは彼らが専従でやってくれています」  ちなみに毎日の朝礼では、中武さんとフィリピン人の従業員に週替わりで司会を任せている。「簡単な台本に沿って話してもらうだけですが、2人のほんわかした雰囲気や明るい声で挨拶を始めてもらうと、みんなも自然と笑顔になれます。勤務中はそれぞれが黙々と作業することが多く、貴重な交流の場でもありますから」 人材を最大限に活かす企業  9年前に入社してからIT化とダイバーシティ化を進めてきた俊介さんを、父の隆志さんも「お前のやり方で」と見守ってきたそうだ。俊介さんは、  「障害者や外国人の雇用については、積極的に推進しているつもりは全然なくて、結果としてそうだったというケースばかりです。きちんと戦力になる人かどうかを評価しながら採用しています」という。  実際、トライアル雇用後に採用を断念したこともある。中武さんの前例があったので、また別の人を採用しようと思っていたが、現場のリーダーが精神的に疲弊(ひへい)していることを知ったからだという。  生産管理システムが向上して計画的な生産が可能となり、営業しやすくなったことから、昨年初めて営業社員を中途採用した。今春には品質マネジメントシステム規格の「ISO9001:2015」を取得予定。「受注する仕事が増えていけば、従業員も少しずつ増やしていけるかなと思っています」。  「IT活用やちょっとした工夫で、障害の有無にかかわらず人材を最大限に活かす中小企業がもっと増えてほしい」と考える俊介さんは、神奈川県の中小企業家同友会ダイバーシティ委員会の副委員長としても積極的に活動している。 写真のキャプション 代表取締役の川田俊介さん 川田製作所では、ステンレスなどの金属をプレス加工し、パソコンなどに使用される部材を製作している 入社6年目の中武矢輝さんは、プレス加工を担当している リーダーで指導役の成田宗太郎さん 製品や工程に合わせ、各種加工機械を使い分ける 日報アプリは成果の見える化にも貢献している 数字の見本が貼られたファイルボード 不良品の数を記録する数取器 事務を担当する佐々木彩花さんは入社5年目 電話対応マニュアルには、手書きの追記も見られる タスクツールには、その日に行う作業がリスト化されている 外国人女性も重要な戦力となっている 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用 第2回  前回は、企業が障害者雇用を考えるきっかけとなる近年の社会的背景や、取組みに向けた支援制度などを紹介しました。今回は、具体的な雇用計画を立てる際に必要な、障害者雇用率の算定対象・方法や、社内における把握・確認についての留意点などをまとめました。 (協力)中央障害者雇用情報センター 障害者雇用支援ネットワークコーディネーター 礒邉豊司さん、内田博之さん Q1  「障害者雇用率制度」の対象となるのは、どのような障害のある人でしょうか。 A  身体障害、知的障害、精神障害に区分され、障害ごとに確認方法があります。  当機構への問合せのなかには「障害者に該当するのはどのような場合か」というご質問もありますが、一番わかりやすい答えとして「原則として、障害者手帳を持っていること」と伝えています。  障害者雇用率制度の対象者は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」により、障害ごとに定められた障害者手帳の交付などの有無によって確認しています。障害者として雇用するのであれば、事業主は応募時に手帳などの所持の有無を把握し、障害者雇用率の算定対象であることを確認します。障害者であることの把握・確認を行う場合は、利用目的を明示し、本人の同意を得たうえで把握・確認します。把握・確認した個人情報は適切な保管・管理が必要です。  大まかな区分と手帳の種類は図表1の通りです。 Q2  障害者雇用率の算定方法がわかりません。 A  障害者雇用率は、「常用雇用労働者数÷身体障害者、知的障害者および精神障害者である常用雇用労働者の数」で算出します。  常用雇用労働者は、週所定労働時間により「短時間以外の常用雇用労働者」と「短時間労働者」に区分され、障害の種類や程度に関係なく、「短時間以外の常用雇用労働者」を1人、「短時間労働者」を0・5人として算定します。雇用障害者数は、障害種別や程度によって1人を0・5〜2人として算定します(図表2)。  雇用率の算出例は図表3の通りです。算定にあたっては、さまざまな留意点がありますので判断に迷ったら、まずは事業所所在地管轄のハローワークにお問い合わせください。  なお、障害者雇用納付金、障害者雇用調整金などの申告・申請にあたっては、当機構各都道府県支部の高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。 Q3  社内に障害のある社員がいるかもしれません。本人に手帳の有無を確認してもいいですか。 A  特定の人に限定して確認することは避けましょう。  職場における障害者の把握・確認については、2005(平成17)年に「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が策定されました。厚生労働省のホームページからご覧いただけますので参考にしてください。健康診断の結果や、上司や同僚の受けた印象、職場における風評などを根拠に個人を特定して照会することはできませんので注意してください。  障害者本人の意に反して障害者雇用率への適用などが行われることのないよう、ガイドラインでは、「採用後に障害の有無などを確認する場合には、雇用する労働者全員に対して、画一的な手段で申告を呼びかけること」を原則とするものとされています。申告を呼びかける際は、障害者雇用状況の報告などのために用いるという利用目的に加え、「業務命令として回答を求めるものではない」ことを明らかにしておきます。  ただし、障害者である労働者本人が、職場における雇用支援のための公的・社内制度の活用を求めて、自発的に情報を提供した場合は、個人を特定して障害者手帳などの所持を照会できます。 ●相談ケース  メンタルな問題によって、業務の進捗や周囲とのコミュニケーションに支障が出ていると思われる社員がいる。どのように対応したらよいか。 ●アドバイス例  症状や疾病に関することを専門家と同じ視点で判断することはできません。問題を感じた際には、業務上何が問題になって困っているかを確認しましょう。「職場を休んだり遅刻したりした回数」、「業務量の低下」など、具体的で客観的な事実を記録します。そうした事実を確認し、業務上どれくらい影響を与えているかを確認したうえで、明らかに問題があると思われた場合は、産業医などの専門家につなげるための方法と役割分担を検討します。また、本人と信頼関係のある上司を経由し、本人に対して客観的事実を伝え、「こちらとしても心配である」と専門家への相談を提案するのも一つです。  いずれにせよデリケートな内容なので、職場主導で判断していくのではなく、本人をサポートする形で問題解決への道筋を検討する必要があるでしょう。 【図表1】障害ごとの確認方法 【身体障害者】 どんな障害? まひ・切断などの肢体不自由、聴覚・言語障害、視覚障害、心疾患・腎臓疾患・呼吸器疾患・ぼうこう・直腸の疾患・HIVによる免疫不全・肝臓機能障害の内部障害など 確認方法 地方自治体から交付される身体障害者手帳 手帳の等級 1〜7級に区分される ※7級の単一障害の場合は、障害者雇用率の算定対象にならない 重度障害者 等級が1級または2級とされる方および3級に該当する障害を2以上重複して有する方 【知的障害者】 どんな障害? 理解力・判断力などの知的能力に課題がある障害で、金銭管理、読み書き、計算などに支障がでる 確認方法 地方自治体から交付される療育手帳(自治体によっては「愛の手帳」、「緑の手帳」などの名称) ※知的障害者判定機関(注)による判定書でも確認可能 手帳の等級 都道府県により名称・程度の表記が異なる (例)重度→A、A1、A2、1度、2度など 重度以外→B、B1、B2、3度、4度など 重度障害者 療育手帳で重度の障害程度とされる方 ※知的障害者判定機関で知的障害の程度が重いと判定された方 (注)精神保健福祉センター、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健指定医、地域障害者職業センター 【精神障害者】 どんな障害? 統合失調症、うつ病(そううつ病)、神経症などの疾病 ※精神疾患ではないが、てんかんも精神障害者として取り扱われる 確認方法 地方自治体から交付される精神障害者保健福祉手帳 手帳の等級 1〜3級に区分される 重度障害者 重度障害者の取扱いはない 高次脳機能障害と発達障害については、その主症状や状態により精神障害者保健福祉手帳の交付対象となる 【図表2】 障害者雇用率を算出する際の障害者の算定方法 雇用形態 障害の種類 障害の程度 算定数 短時間以外の常用雇用労働者 身体障害者 知的障害者 重度 1人を2人として算定 重度以外 1人を1人として算定 精神障害者 − 1人を1人として算定 短時間労働者 身体障害者 知的障害者 重度 1人を1人として算定 重度以外 1人を0.5人として算定 精神障害者 − 1人を0.5人として算定(注) (注)精神障害者である短時間労働者であって、新規雇入れから3年以内の者または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の者かつ、令和5年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得している者については、実人員1人をもって「1人」として算定を行う 【図表3】雇用率の算出例 @ 短時間以外の常用雇用労働者 200人 A 短時間労働者 50人 B 障害者数(重度以外・短時間以外) 1人 C 障害者数(重度以外・短時間) 1人 D 障害者数(重度・短時間以外) 1人 E 障害者数(重度・短時間) 1人 F 障害者数(短時間・精神障害) ※図表2の算定特例に該当しない方 1人 {B(1人)+C(0.5人)+D(2人(ダブルカウント))+E(1人)+F(0.5人)}÷{@200人+A(50人×0.5)}×100=2.22%<雇用率> 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 2020年度(令和2年度) 職業リハビリテーションに関する研修のご案内  当機構では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当する方を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や障害者の雇用支援に必要な技術の修得と資質の向上を図るための研修を実施しています。受講料は無料です。  各研修の詳細・お申込み先などは、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp) のサイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 ※新型コロナウイルスの影響により、変更する場合があります。 研修 日程 場所 就業支援基礎研修 【対象】就業支援を担当する方 【内容】就業支援のプロセス、障害特性と職業的課題、障害者雇用施策、ケーススタディなど 各地域障害者職業センターのホームページなどで別途ご案内いたします。 ◯◯障害者職業センター 検索 ※◯◯には都道府県名を入力 各地域障害者職業センターなど 就業支援実践研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験2年以上の方 【内容】障害別のアセスメント、支援ツールの活用方法、ケーススタディなど 10〜12月に全国14エリアで開催します。 就業支援実践研修のホームページなどで別途ご案内いたします。 全国14エリアの地域障害者職業センターなど 就業支援スキル向上研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験3年以上の方 【内容】障害別の支援技法、職リハに関する最新情報、ケーススタディなど 令和3年1月26日(火)〜1月28日(木) 千葉県千葉市 就業支援課題別セミナー 【対象】障害者の就労や雇用に関する支援を担当しており、障害者に対する就業支援の実務経験を有する方 【内容】令和2年度は「事業主支援」をテーマとする予定 令和2年11月5日(木)〜11月6日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など (集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度) ※対象地域は以下のとおりです 東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山 西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 4月期中止しました 6月期 東日本対象:令和2年6月9日(火)〜6月12日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年6月9日(火)〜6月12日(金) 大阪府内 9月期 東日本対象:令和2年9月15日(火)〜9月18日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年9月15日(火)〜9月18日(金) 大阪府内 10月期 全国対象:令和2年10月27日(火)〜10月30日(金) 千葉県千葉市 12月期 東日本対象:令和2年12月15日(火)〜12月18日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年12月15日(火)〜12月18日(金) 大阪府内 2月期 全国対象:令和3年2月16日(火)〜2月19日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして1 年以上の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど <第1回>中止 <第2回> 令和2年8月4日(火)〜8月7日(金) 大阪府内 <第3回> 令和2年10月13日(火)〜10月16日(金) 千葉県千葉市 <第4回> 令和3年2月2日(火)〜2月5日(金) 大阪府内 <お問合せ先> 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.or.jp ◆令和2年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催されます。 詳細は、「地方アビリンピック」ホームページをご覧ください。 ※新型コロナウイルスの影響により、変更する場合があります。 地方アビリンピック 検索 ※2020年5月11日現在 開催地によっては、開催日や種目などで会場が異なります 参加選手数の増減などにより、変更される場合があります 締め切り迫る! 応募者全員に記念品をプレゼント! 令和2年度障害者雇用支援月間 ポスター原画(絵画・写真)コンテスト 「働くすがた〜今そして未来〜」 6/15(月)消印有効  毎年9月1日〜30日は、「障害者雇用支援月間」です。国民のみなさまに障害者雇用への理解と関心を深めていただけるよう、障害のある児童・生徒や働く障害のある方々を主な対象に「働くこと」をテーマとする障害者雇用支援月間ポスター原画(絵画・写真)コンテスト「働くすがた 〜今そして未来〜」を実施しています。厚生労働大臣賞受賞作品は、障害者雇用支援月間ポスターに使用し、全国のハローワークなどに掲示します。  また、令和2年度より応募いただいた学校、事業主等の団体に対し、応募状況などを総合的に勘案して、当機構理事長団体奨励賞を差し上げます。 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 http://www.jeed.or.jp/disability/activity/contest/index.html JEED 原画 検索 ★過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます。 応募作品・テーマ (絵画の部)働くこと、または仕事に関係のあるもの (写真の部)障害のある方の仕事や職場にスポットをあて、撮影したもの お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9515 FAX:043-297-9547 シンボルキャラクター “ピクチャノサウルス” 【P15-18】 グラビア 憧れのトラックドライバー 〜物流をになう聴覚障害者たち〜 株式会社グンリック(埼玉県) 取材先データ 株式会社グンリック 〒335-0032 埼玉県戸田市美女木(びじょぎ)東1-4-9 TEL 048-422-0742 FAX 048-422-1209 写真・文:官野貴  深刻化する人手不足をものともせず、聴覚障害者が戦力となっている運送会社がある。関東圏を中心に、拠点間のトラック運送などを手がける「株式会社グンリック」は、社員154人のうち19人が聴覚障害のある社員だ。  障害者雇用のきっかけは、2015(平成27)年、大型トラックのドライバー募集の際、聴覚に障害のある人が応募してきたことだった。当時はまだ聴覚障害者を雇用した経験がなく、不安もあったが、「会社の戦力になるようにがんばれ」との社長の一言で採用が決まった。  しかし、同社には手話を使える社員がおらず、日々のコミュニケーションが問題となった。そこでスマートフォンのアプリを日常のコミュニケーション手段として活用することで、情報交換を円滑に行えるようにした。また、配送先でのコミュニケーションは、障害のあるドライバーの名刺の裏に「聴覚障害者であること」、「筆談や手話での対応を求めること」を記載し、電子メモパッドを活用することで対応した。配送先の理解もあり、聴覚障害者が安心して働ける環境となった。  現在では、聴覚障害者同士のつながりで、東北地方や東海地方からも応募があるという。未経験者の応募も多く、入社後に会社負担で大型免許を取得する人がほとんどだ。2019(令和元)年7月に入社した松江(まつえ)健太(けんた)さん(25歳)も、その一人。松江さんは「父親がトラックドライバーで憧れの職業でした。グンリックで働けてとてもうれしい」と話してくれた。  業務営業部部長の降旗(ふるはた)昌弘(まさひろ)さんは、「彼らは、目視による安全確認などに気を遣い、いつも安全運転を心がけています。トラックには、ドライブレコーダーやGPSによる動態管理装置を設置しています。今後は、聴覚障害のある社員にも管理者として活躍してもらうことを考えています」と前向きだ。  今日もグンリックで働く聴覚障害者たちが、日本の物流の一端をになっている。 写真のキャプション トラックの点検を行う及川(おいかわ)雄太(ゆうた)さん(23歳)。「荷物をきれいに積むことにやりがいを感じます」 電子メモパッドで筆談する堀畑(ほりはた)政男(まさお)さん(45歳)。「いまの仕事が楽しい、続けていきたい」 中型トラックで配送作業を行う伊藤(いとう)順平(じゅんぺい)さん(23歳)。「大型トラックへのステップアップが今後の目標です」 身を乗り出し車庫入れを行う大松(おおまつ)慎也(しんや)さん(42歳)。「トラックドライバーが夢でした。この仕事が好きです」 出発や到着の報告などに活用されるスマートフォンのアプリでのやり取り 名刺の裏には、聴覚障害標識とともに配慮を呼びかける記載がある 10トントラックを運転する松江さん。「将来は、障害者のリーダーとなってグンリックを盛り上げたい」 当初は筆談で行っていた社内研修も、現在では手話で行えるようになり、より効果の高いものとなった 「気をつけて」の手話でドライバーを送り出す降旗さん(右)。「健常者も障害者もみな同じです。意識しすぎないことを心がけています」 日本の物流を支える聴覚障害のある仲間たち。大松さん(前列右)は、「ここには仲間がいるので頼もしいです」と語った 【P19】 エッセイ【最終回】 発達障害で活躍するということ ―一人ひとりの個性を活かす― 内閣府地域働き方改革支援チーム委員 (兼務 株式会社東レ経営研究所) 渥美由喜(あつみ なおき)  25年前からワークライフバランス(WLB:仕事と生活の調和)に着目した、ダイバーシティ、WLB分野の第一人者。これまでに海外10数カ国を含む、国内のダイバーシティ・WLB先進企業1050社、海外の150社を延べ4000回、訪問ヒアリングし、約1万社の企業データを分析。  また、コンサルタントとして、実際に1000社以上の企業の取組推進をサポートする一方で、内閣府や厚生労働省などの官庁や自治体の委員を歴任。  最終回の今回は、「発達障害のある人が職場や社会で活躍するメリット」について述べたい。 「とっ+ぱぴぷぽ」力とは  発達障害の特性は人それぞれだが、私が懇意にしている発達障害のある人の多くに共通するのは、突破力、突飛力、突風力、とっぽい(どことなく間の抜けた)魅力だ。  まず、「アクリルの障害物」の例話を紹介したい。水槽のはしっこで餌を与えると魚たちが群がる。その間に、そっと水槽の真ん中に透明なアクリル板を挿入して、水槽を2つの領域に分断する。魚たちは真ん中のアクリル板に何度かぶつかると、板の手前で転回することを学習する。その後、再度、餌を与えている間に、そっとアクリル板を取り除いても、あたかも板があったときと同じように狭い範囲で泳ぎ続け、決して板で遮られていた向こう側に行こうとはしない。  では、魚たちを向こう側に泳がせるにはどうしたらいいか。「かつてアクリル板があったこと」を知らない魚を1匹水槽に放せばよい。その魚が見えない壁を突破し、後に続いてほかの魚も広い水槽を泳ぎ始める。  私を含めて、発達障害のある人の多くはKY(空気が読めない)なので、アクリル板が目に入らず、周囲とぶつかっても学習しない。これを私は「突破力」と呼んでいる。  日本社会、日本の職場には、いまも見えないアクリル板があちこちにある。一方で、社会システムは大きな変革期を迎えており、実はもうすでにアクリル板がなくなっていることにだれも気づいていないケース、あるいは、かつては必要だったアクリル板を今後は取り除くべきケースが増えているように感じる。そんなとき、必要な存在は、「KY魚」だ。狭い範囲で周回している魚の群れにKY魚が混ざると、必ず壁を突破できるはず。 突飛なアイデアがイノベーションの源泉  また、世間の常識に縛られない発達障害のある人は、イノベーションの源泉になりえる。たまに「渥美さんは、WLB(ワークライフバランス)もダイバーシティも、先見の明がありますね」と褒められることがある。いいえ、私には先見の明なんてまったくない。KYだから、よかったのだ。私が上司に反対されても、あきらめずに有給休暇を使って自腹で海外への視察に行ったりしながら研究を続けてきたのは、両親から「一芸を極めるように」といわれて育ったことと、発達障害で「KY」だったことが大きかった。  さらに、無風のところに突風を巻き起こすことで、砂の下に隠された真実があらわになる。だれにも気兼ねせずに、「おかしいことをおかしい」と主張できる「KY力」は、不祥事を予防するうえで貴重な役割を果たす。炭鉱で働く人は有毒ガスの危険察知のため、カナリアを連れていった。コンプライアンスを重視する職場にとって、「KY力」は不可欠なカナリアだ。  最後に、人によって違うかもしれないが、私はKYなので、あまりめげない。私は大学入学時に1年浪人、卒業時に1年留年したが、「浪漫がある人は浪人する」、「一留は一流の証」とうそぶいて、同じ環境の友人から「ノーテンキなおまえと話すと、なんだか元気になるよ」といわれていた。私自身はさておき、発達障害のある知人たちには、「普通と違って面白い」、「とっぽい魅力を感じる」人が少なくない。 同質化圧力が強い日本の職場にこそ、発達障害者の活躍を  長らく日本企業では、日本人、男性、健常者、24時間365日働けるモーレツ型が「標準」で、標準から外れた人たちを活かしてこなかった。同質化圧力が、バブルの崩壊後に長らく続いた、日本経済低迷の一因だと思う。  発達障害をはじめとする、一人ひとりの個性を活かすことができれば、社会はもっと楽しく、よくなるはずだ。ぜひ、発達障害のある社員を活かす職場づくりにチャレンジしてほしい。 【P20-25】 編集委員が行く 就労継続支援A型事業所から23人が製造現場へ一般就労 〜障がい種別の多様化に対応〜 オムロン京都太陽株式会社(京都府)、オムロン太陽株式会社(大分県)、社会福祉法人太陽の家(京都府・大分県) 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 取材先データ オムロン京都太陽株式会社(1985年設立) 〒601-8155 京都府京都市南区上鳥羽塔ノ森(かみとばとうのもり)上河原87 オムロン太陽株式会社(1972年設立) 〒874-0011 大分県別府市大字内竈字(うちかまどあざ)中無田(なかむた)1393-1  両社は、「オムロン株式会社」と「社会福祉法人太陽の家」が共同出資したオムロンの特例子会社。制御機器、電子部品、健康機器などオムロン商品を製造している。  親会社のオムロンは、1948年に設立。制御機器、電子部品、社会システム、ヘルスケアなど多彩な事業を展開し、2018年度の売上は8,595億円(その6割は海外)。従業員数は国内1万1,365人、欧州などグループ全体で3万5,090人(2019年3月末時点)。 社会福祉法人太陽の家 (本部)〒874-0011 大分県別府市大字内竈1393-2 (京都事業部)〒601-8155 京都府京都市南区上鳥羽塔ノ森上河原37-2 編集委員から  ものづくりの会社が本来業務の製造現場へ障害のある人財≠投入する。いわば、技能労働者への能力開発のチャレンジ。障がい種別が多様化する特例子会社を取材した。 写真:官野貴 Keyword:就労継続支援A型事業所・B型事業所、特例子会社、製造業 POINT 1 就労継続支援A型事業所から一般就労へのステップアップを通じて雇用機会を創出 2 障がい者の能力開発を通じて、B型事業所−A型事業所・就労移行支援事業所−特例子会社のラインを実現 3 障がい者の就労拡大の根幹にあるのは企業理 企業の概要  京都駅で新幹線を降り、近鉄竹田駅下車、桂川沿いにある「オムロン京都太陽株式会社」を訪ねた。事務所、工場、宿舎、食堂が建ち並ぶ。工場は、1階が「社会福祉法人太陽の家 京都事業部」が運営する就労継続支援B型事業所(以下、「B型事業所」)でソケットや付属部品を、2階は「オムロン京都太陽株式会社 製造課」で光電センサー、タイマーなどを、3階は就労継続支援A型事業所(以下、「A型事業所」)で電源ユニット、血圧計などをつくっている。  ここを訪ねたのにはワケがある。2019(平成31)年4月、A型事業所から23人が、オムロン株式会社の特例子会社であるオムロン京都太陽へ一般就労したと聞いたからである。「どういう理由なのか」、「その背景は」、「何かを目ざしたチャレンジなのか」。いろいろ知りたかった。 オムロン京都太陽の取組み  応接室で、オムロン京都太陽の代表取締役社長を務める三輪(みわ)建夫(たつお)さんに会い、理由を聞いた。  「オムロンの特例子会社として製造力を上げたかったのです。ものづくりの会社の本来業務である製造部門を軸に、生産技術・品質を含めた生産力を高めることで、A型事業所からさらにB型事業所の方へと、また、身体にかぎらず精神・発達障がいのある方へと活躍機会を広げることにチャレンジしたい」と明確に話してくれた。  背景にあるのは「新たに就労してくる身体障がいのある人たちが減少していること。一方、精神・発達障がいのある方で就労を希望する人たちは年々増加しており、製造現場で働く障がい者も多様化しています」と、人事総務課課長の冨安(とみやす)秀樹(ひでき)さんは指摘する。  1976(昭和51)年、身体障害者雇用促進法で身体障がい者の雇用が事業主の義務になり、1997年に知的障がい者の雇用も義務化、2018年に精神障がい者が法定雇用率の算定基礎に加わったという経緯があり、早くから障がい者雇用に取り組んできた同社では、雇用対象が身体障がいがメインだった時代を経験しており、上述のチャレンジしたいという意図にもうなずける。  同社は就労する人の障がいに合わせて作業しやすい治具(じぐ)を考案し、作業に人をつけるのではなく人に作業をつけ、自社の技術力で障がい者の働きやすい作業現場をつくり、だれもが活き活きと働き続けられる現場を目ざしてきた。ただ、それでも同社が行うのは品質管理、生産管理、生産技術の開発が中心であり、製造の現場は、太陽の家が運営するA型事業所に製造委託していた。  昨今、日本の労働市場は人手不足が深刻化している。障がい者雇用においてはかつての身体障がい中心だった求職者が、知的・精神・発達障がいに拡大し、障がい種別が多様化するという構造的な変化の過渡期にある。同社では、多様な障がい者の活躍機会の拡大をミッションとし、品質、技術、管理の3部門に製造を新たに加え4部門へ人財≠受け入れている。しかも重度障がいのある人たちが多いB型事業所の利用者を、働く現場で能力開発を進めてA型事業所へステップアップさせ、一般就労へつなぐ取組みを始めていた。変化の過渡期に対して、よりよい社会づくりに向け、「世に先駆けて解決していくにはいまだ」と新たなチャレンジを決断したのだった。  同社では2016年に構想立案、2017年に準備着手、2018年に社員説明、2019年に実施。実施前から一緒に働いていた太陽の家の支援員・指導員もA型事業所の23人とともに、オムロン京都太陽の製造課へ移籍した。移籍と同時に障がい種別の多様化に対応し、製造課にジョブコーチ・精神保健福祉士を配置、職場内のコミュニケーションの円滑化のため相談・支援体制を充実させた。 一般就労した人たちの声  A型事業所から、オムロン京都太陽に一般就労した人たちの声を聞いた。  グループリーダーを務める本村(もとむら)智之(ともゆき)さん(41歳)は、「身体、聴覚、精神、発達障がいなど、多様な障がいのある人と健常者が協調して働くのが私のグループです。作業はハンダづけ、組立て、検査などですが、作業のレベルや特性に応じて、人財を適切に配置することで、作業者が協調し、集中して根気よく働き続けられるよう、各リーダーはラインを管理し、日々改善しています」と話す。  また、リーダーを務める田中(たなか)伸樹(のぶき)さん(55歳)は、「オムロングループの一員としてがんばりたいという気持ちで1年が経ちました。仕事上のルール、企業人として守ることなどをもっと勉強したいです」と語る。  同じくリーダーである北村ゆう子さん(48歳)は、「私はその日の仕事の割りふり、朝礼、日報、情報提供、作業指導などを行っています。同じラインの流れで仕事が進むので、情報がうまく伝わり、共有でき、行動できているかが、ポイントになります」という。リーダーたちは動画を導入したり、手話やタブレットを活用し、伝達、確認、改善、効率、相互理解の推進に懸命だった。  送り出す側である太陽の家の京都事業部本部長を務める佐藤(さとう)光博(みつひろ)さんは、「本人の希望を確認し、ていねいに面談をくり返し、採用試験に23人が合格しました。A型事業所の使命は一般就労へのステップアップです」と力強く話した。  同じ太陽の家の京都事業部事業・支援課で課長を務める西山(にしやま)英樹(ひでき)さんは、「障がい者の多様化に対応し、2020年4月に精神・発達障がい者を対象とした就労移行支援事業を立ち上げ、1年間で一般就労へつなげる多様なプログラムを始めます」と意欲的にチャレンジしている。  そのプログラムは、B型事業所、A型事業所から就労移行支援事業所へつなぎ、訓練を通して技能技術を身につける養成コースになっている。  社長の三輪さんは、「私たちの会社の使命は企業理念(★)に基づいた、職業的重度障がい者の雇用機会の創出です。同時に私たちは製造業者として、お客さまが満足する商品をつくり、お届けしなければなりません。事業を通じた障がい者の活躍機会の拡大にこだわって経営している特例子会社として、企業理念を実践すべく、今回の取組みにふみ切りました」と話す。  今後の人財確保について、人事総務課課長の冨安さんは、「太陽の家のB型事業所、A型事業所からステップアップして来る方たちを受け入れるのが基本。もちろん、就労移行支援事業も含まれます。障がい種別の多様化にもノウハウを積んで幅広く受け入れ、だれもが活き活きと働く職場をつくりあげていきたい」という。  オムロン京都太陽が主導し、太陽の家京都事業部と一体になったプロジェクトは2年目に入る。 創業者の想い  次に、太陽の家の創立者である故・中村(なかむら)裕(ゆたか)さんの取材で別府市へ飛んだ。  中村さんは、オムロン創業者の立石(たていし)一真(かずま)さんと出会い、大企業の生産工程へ障がい者就労の道を開いた方である。1951年、九州大学医学部を卒業し、身体障がいのある患者に手術、リハビリテーションを行う整形外科医であった。1960年、国立別府病院整形外科医長のとき、海外研修でイギリスに行った際、ストーク・マンデビル病院のグットマン博士から、脊髄損傷患者の85%が半年の治療、リハビリで再就職していることを学んだ。同院では手術後の医師の回診に理学療法士、作業療法士、ケースワーカー、就職あっせん担当者のチームが同行し、さらに機能回復のリハビリには水泳、卓球、車いすバスケットなどスポーツを導入していた。また、イギリスでは国の制度で企業には従業員総数の3%以上の障害者雇用義務があった。  中村さんは帰国すると、「大分県身体障害者体育協会」を設立し、国内初の障がい者スポーツ大会を開催した。翌年、当時世界で唯一の障がい者国際スポーツ大会だったストーク・マンデビル競技大会に卓球、水泳の2選手を連れ、選手団長として参加した。中村さんのそうした努力が実を結び、1964年の東京五輪開催後、11月にパラリンピックが開かれた。  中村さんはその1年前から運営資金を集め、各国に参加を呼びかけて招待状を発送し、通訳を確保するなど、開催準備に奔走(ほんそう)した。大会では21カ国から378人の選手、役員が参加し、アーチェリー、陸上など9競技が行われた。そのとき、中村さんは53人の選手とともに団長として入場行進した。  そして1965年には、障がい者の就労と自立を目ざし、「太陽の家」を開設した。当時は、授産施設で竹細工、木工品を手作業でつくっており、工賃はわずかであった。1971年、大企業に協力してもらおうと、京都府のオムロンの立石社長を訪ねた。熱意で押す中村さんに折れ、今度は立石社長が「本気でやりましょう」と切り出し、双方がお金を出し合って共同出資会社を設立することになった。1年後、ベルトコンベアの生産ラインに、作業服を着た障がい者が車いすで勤務、医療用具製造ラインなどが稼働。作業の正確性も高く、ほかの工場に負けない品質であり、1年目から黒字になった。これが社会的関心を呼び、経済界で注目され、1978年にソニー・太陽株式会社、1981年にホンダ太陽株式会社、1983年には三菱商事太陽株式会社、1984年にデンソー太陽株式会社、1985年にオムロン京都太陽株式会社、1992年にホンダR&D太陽株式会社、1995年に富士通エフサス太陽株式会社が設立された。  中村さんは、まず障がい者スポーツに取り組み、次に障がい者が働き、自立する施設づくりを行った。そして現在、太陽の家には障がい者1104人(身体80%、知的11%、精神9%)が在籍している。 太陽の家  「こんにちは」という元気のいい声。太陽の家理事長の山下(やました)達夫(たつお)さんに会った。  2018年、太陽の家で初めて利用者から理事長に就任した方だ。「1983年、三菱商事太陽の調印式のとき、初めて中村先生が声をかけてくれました。車の窓を開け、『君たちががんばらないとこの会社は成長しない』と。私はちょうど、オムロン、ソニー、ホンダとものづくりの生産工場から頭脳労働へ進出しようとするときの、業種転換の第1陣の社員だったので、はっぱをかけられたのでしょう。中村先生は陽気で前向き、行動力のある人でした。『これからは、一家に一台パソコンの時代になる。在宅就労ができるようになる』とおっしゃっており、時代の先を読んでいました」。  山下さんはプログラマー、システムエンジニアとなり、課長、部長を経験して2014年、三菱商事太陽株式会社の社長に就任。その後、太陽の家理事長に就いた。名刺の裏には「世に身心障害者はあっても仕事に障害はあり得ない。太陽の家に働く者は被護者ではなく、労働者であり、後援者は投資者である。中村裕先生遺訓」と刷ってあった。太陽の家の入口に額に入れて掲げられた基本理念である。創立者の中村裕さんは1984年に死去したが、中村イズムは継承されている。  法人理事で法人本部長を務める四ツ谷(よつたに)奈津子(なつこ)さんは、中村さんが亡くなる前、1年半ほど事務職員として勤務し、当時英語のできる秘書として仕事をしていた。「中村先生は、頭脳労働に向いた障がい者にコンピューター時代の仕事を、と必死で三菱商事にかけ合っていました」と思い出す。  私たちを案内してくれた太陽の家の総務課に勤務する徳田(とくだ)構一(こういち)さんは、1982年に授産施設の利用者として入所した。2度入院し中村さんの治療を受けた。  「どげんしたんか、と大分弁で話しかけてくれた。熱血漢で患者に寄り添うお医者さんでした」という。中村さんは整形外科医であり、東京パラリンピック選手団長を務め、太陽の家創立者として大企業の障がい者雇用に大きな道を切り開いたパイオニアだった。 オムロン太陽株式会社  最後に、オムロン太陽株式会社を訪ねた。国内2番目の特例子会社として50年近い実績があり、2018年度の売上は19億円、会社利益は2億円である。オムロン太陽の代表取締役社長を務める大前(おおまえ)浩一(こういち)さんは、「経営は順調です。障がいに合わせ治具を考案し、作業しやすいよう条件整備するので、35人の障がい者は技能労働者としてフラットに能力を発揮し、生産ラインで作業しています。賃金体系も同一です。私の前任者は三代続いて車いす利用者の社長でした」と語る。  太陽の家のB型事業所の施設外就労として勤務する岡村(おかむら)晴歌(はるか)さん(36歳)は、スイッチの導通状態を知らせるLEDランプ脚部の不良部分のカット作業を担当。  「キズを見つけるのに集中し、それをカットします」  B型事業所とはいえ、8時15分〜17時15分までフルタイム勤務をこなしている。可能な人は8時間労働に慣れる体力、気力を養い、一般就労に備えるという、中村イズムの一つを実践している。アパート住まいで趣味は料理という。  2007年に入社し製造グループのグループ長を務める笹原(ささはら)廣喜(ひろき)さん(46歳)は、「障がい種別が多様化しているので、みんなの意思疎通、相互理解を進めるよう呼びかけています」という。  実は笹原さんは、創立者の中村さんが始めた「大分国際車いすマラソン」2006年大会の、日本人初のフルマラソン優勝者だ。2008年北京パラリンピック銀メダリスト。中村さんがイギリスで学んだ「スポーツでリハビリ」を実践した人である。  3人から話を聞いた応接室の壁には、立石一真氏、中村裕氏の大きな写真が額に入り、その下に「No charity, but a Chance!(保護より機会を!)」という中村語録が掲げられていた。2人のパイオニアの志(こころざし)は、いまなお引き継がれている。 ※本誌では通常「障害」と表記しますが、オムロン株式会社様の要望により「障がい」としています 写真のキャプション オムロン京都太陽株式会社(左)と社会福祉法人太陽の家 京都事業部(右) オムロン京都太陽株式会社代表取締役社長 三輪建夫さん オムロン京都太陽株式会社人事総務課 課長 冨安秀樹さん 作業工程を説明するリーダーの田中伸樹さん(中央) 担当するラインを紹介するグループリーダーの本村智之さん オムロン京都太陽 製造課のフロアでは、タイマーなどの各種電子部品が製造されている リーダーの北村ゆう子さん 太陽の家 京都事業部本部長 佐藤光博さん 太陽の家 京都事業部事業・支援課 課長 西山英樹さん 「太陽の家」創設者の中村裕氏(写真提供:社会福祉法人太陽の家) 大分県別府市の社会福祉法人太陽の家 本館 ★オムロン企業理念(提供:オムロン株式会社) 太陽の家歴史資料館。現在は、太陽ミュージアムとして移転している 1964年東京パラリンピック開会式での選手宣誓。中央左が中村裕氏(写真提供:社会福祉法人太陽の家) 太陽の家 理事長 山下達夫さん 1972年に撮影された医療用具製造ライン(写真提供:社会福祉法人太陽の家) 写真パネルを解説する徳田構一さん 太陽の家 法人本部長 四ツ谷奈津子さん オムロン太陽株式会社代表取締役社長 大前浩一さん 大分県別府市のオムロン太陽社屋 オムロン太陽株式会社では、産業機器用の部品を製造しており、年間生産数は1000万個にもおよぶ B型事業所の施設外就労としてオムロン太陽で働く岡村晴歌さん オムロン太陽 製造グループ グループ長の笹原廣喜さん 【P26-27】 省庁だより 障害者に対する就労支援の推進 〜令和2年度障害者雇用施策関係予算のポイント〜 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課/人材開発統括官 参事官室(人材開発政策担当) 【施策の概要】  障害者雇用に関する状況を見ると、直近の平成30年度においては、ハローワークの新規求職申込件数、就職件数ともに過去最高となっており、引き続き、障害者の就労意欲の高まりが見られる。障害者の雇用者数も、平成16年以降、16年連続で過去最高を更新している。また、令和元年の実雇用率も2・11%と8年連続で過去最高を更新し、雇用の量的側面については着実な進展が見られる。  一方で、平成30年、公務部門においては多くの機関で障害者雇用率制度の対象障害者の不適切な計上があり、法定雇用率が達成されていない状況であったことが明らかになった。  こうしたことから、公務部門においては法定雇用率の達成に向け障害者雇用を積極的に推進する必要がある。  あわせて、就労を希望する障害者についても、多様化が進んできており、その希望や特性等に応じた働き方を実現していくためには、雇用の質に着目した取組も必要である。  具体的には、各府省等が法定雇用率を速やかに達成するために、障害者雇用に対する理解の促進や採用に向けたマッチング支援、今後特に重要となる職場定着への支援を一層推進していくことが必要である。  また、平成30年4月に、精神障害者の雇用の義務化に伴う法定雇用率の引上げが行われたところであるが、中小企業の中には障害者を全く雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)も多い状況にある。中小企業における障害者雇用が進み、身近な地域で働く選択肢が確保されることは、障害者が希望や特性等に応じた働き方を実現していくための重要な要素であると言える。  さらに、近年、雇用者数や就労希望者数が大幅に増加している精神障害者については、一般に職場定着に課題を抱えるケースが多く見られること等から、雇入れ支援に加えて、雇用された後の職場での定着支援についても更に充実・強化することが求められている。  上記の状況を踏まえ、令和2年度予算においては、  @公務部門における障害者の雇用促進・定着支援の強化  A中小企業をはじめとした障害者の雇入れ支援等の強化  B精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援の強化 を主要な柱として、障害者に対する就労支援及び定着支援の充実・強化を図る。 令和2年度予算額 27、102(26、996)百万円 ※括弧書きは前年度(令和元年度)予算額 T 公務部門における障害者の雇用促進・定着支援の強化 1 公務部門における障害者の雇用促進・定着支援の強化 [予算額 461(343)百万円]  公務部門における障害者雇用を推進するため、各府省等向けのセミナー・職場見学会等を実施するとともに、雇用する障害者の定着支援を一層推進するため、ハローワーク等に配置する職場適応支援者を増員し、支援体制の強化を図る。  また、厚生労働省においても、障害特性に応じた個別支援、障害に対する理解促進のための研修等を行う。 U 中小企業をはじめとした障害者の雇入れ支援等の強化 1 ハローワークにおける「チーム支援」等の実施による支援の充実・強化 [予算額 3、852(3、561)百万円] (1)障害者雇用ゼロ企業等に対する「企業向けチーム支援」の実施 [予算額 638(485)百万円]  障害者の雇用経験や雇用ノウハウが不足している障害者雇用ゼロ企業等を中心とする法定雇用率未達成企業に対して、企業ごとのニーズに合わせた支援計画を作成し、求人ニーズに適合した求職者の開拓等の準備段階から採用後の定着支援まで一貫した「企業向けチーム支援」を実施し、企業の障害者雇用を支援する。 (2)「障害者向けチーム支援」の実施等によるハローワークのマッチング機能の強化 [予算額 1、883(1、774)百万円]  ハローワークが中心となり、地域の関係機関等と連携して、就職から職場定着まで一貫した支援を行う「障害者向けチーム支援」を実施し、障害者の就職を支援する。  また、就職準備性を高めることが必要な障害者を対象に、一般雇用に向けた心構え・必要なノウハウ等に関する「就職ガイダンス」や、管理選考・就職面接会を積極的に実施する。 (3)雇用分野における農福連携≠フ推進 [予算額 43(5)百万円]  農業事業者等に対して、ハローワークによる積極的な求人開拓や障害者雇用に係るノウハウ提供の強化等のアウトリーチ型支援を展開するとともに、農業分野への就職を希望する障害者に対して就職から職場定着まで一貫した支援を実施する。 (4)福祉、教育、医療から雇用への移行推進事業の実施 [予算額 342(326)百万円]  福祉、教育、医療から雇用への移行を推進するため、福祉施設、特別支援学校、医療機関等の地域の関係機関や事業主団体・企業と連携しつつ、職場実習を総合的かつ効果的に実施する。特に、中小企業における職場実習の推進を図る。  また、就労支援セミナー、事業所見学会等の機会の充実、ハローワークが中心となった企業と福祉分野の連携促進事業の推進等を図る。 2 安心して安定的に働き続けることができる環境の整備 [予算額 9、714(10、020)百万円] (1)障害者就業・生活支援センターの機能強化 [予算額 8、375(8、349)百万円]  就業面と生活面の支援を一体的に実施する「障害者就業・生活支援センター」において、設置環境が整った地域において新たにセンターを設置するほか、引き続き、地域の支援機関等に対して蓄積したノウハウを提供するなど、地域の就労支援拠点の質的向上を図る。 (2)障害者の職場適応・定着等に取り組む事業主への支援の充実 [予算額 1、276(1、606)百万円]  雇用する障害者の職場定着のために、障害特性に配慮した雇用管理や雇用形態の見直し等の措置についての計画を作成し、当該計画に基づく措置を講じた事業主に対して助成を実施する。  また、職場適応援助者(ジョブコーチ)による職場適応援助を実施する事業主や、ジョブコーチの養成を行う事業主への助成を実施する。 (3)障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供に係る相談支援等 [予算額 63(65)百万円]  障害者雇用に関する専門窓口を設置し、障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供について、個々の企業の実情に応じた対応への相談支援を行うとともに、障害者雇用に課題を持つ事業主に対する講習会等を開催する。 V 精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援の強化 1 精神障害者等に対する就労支援の充実 [予算額 3、144(3、176)百万円] (1)精神障害者等就労パスポートの普及 [予算額 5(8)百万円]  企業や支援機関等が障害特性等の情報を共有し、適切な支援や配慮を講じるための情報共有フォーマット「就労パスポート」を普及し、雇い入れ時等における利活用を促進することにより、障害者本人・支援機関・企業の間の情報連携を進めるとともに、長く安定的に働き続けられるような職場環境整備を促進する。 (2)精神障害者等に対する総合的な就労支援の推進 [予算額 1、811(1、664)百万円]  障害者の安定した雇用を実現するための職場定着支援の強化の観点から、以下のとおり、精神障害者等に対する総合的な就労支援を実施する。 @ハローワークに、精神保健福祉士等の資格を有する「精神障害者雇用トータルサポーター」を配置し、精神障害者に対するカウンセリング、企業に対する精神障害者等の雇用に係る課題解決のための相談援助等の支援を行う。 A精神障害者の安定した雇用を実現するため、地域の精神科医療機関とハローワークの連携による就労支援モデル事業を実施するとともに、取組状況について普及・啓発を図り、地域における医療機関との連携を推進する。 (3)精神・発達障害者しごとサポーターの養成 [予算額 51(57)百万円]  企業内の一般労働者を対象として、精神・発達障害者を温かく見守り、支援する応援者となる「精神・発達障害者しごとサポーター」を養成していくことで、就労の場面で、精神・発達障害者がより活躍しやすい環境づくりを推進する。 (4)障害者トライアル雇用事業の実施 [予算額 1、277(1、446)百万円]  ハローワーク等の紹介により障害者を試行雇用(原則3か月。精神障害者については最大12か月。)する事業主に対して助成し、障害者の雇用の促進と安定を図る。 2 職業能力開発校(一般校)における精神障害者等の受入体制の整備 [予算額 318(338)百万円]  精神障害者等の受入体制を整備するため、職業能力開発校において精神保健福祉士等を配置するとともに、精神障害者等の受入れに係るノウハウ普及・対応力強化に取り組む。 3 発達障害者、難病患者に対する就労支援 [予算額 1、511(1、374)百万円] (1)発達障害者に対する総合的な就労支援の実施 [予算額 696(629)百万円]  近年、新規求職者が著しく増加している発達障害者の雇用の促進に向けて、個別性に対応した専門的支援を強化するため、以下のとおり、総合的な就労支援を実施する。 @ハローワークに、発達障害者の就労支援等の十分な経験を有する「発達障害者雇用トータルサポーター」を配置し、発達障害者支援センター等との積極的な連携を図りつつ、発達障害者に対するカウンセリングや就職に向けた準備プログラム、企業や支援担当者に対する発達障害者の雇用や定着に必要なノウハウの提供等を推進する。 Aハローワークにおいて、就職支援ナビゲーター(発達障害者等支援分)を配置して発達障害等の要因によりコミュニケーション能力に課題を抱えている者に対して特性に配慮した支援(若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム)を実施する。 (2)難病相談支援センターと連携した難病患者への就労支援の実施 [予算額 223(193)百万円]  ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センター等と連携して、就職を希望する難病患者に対して、その症状の特性を踏まえたきめ細かな就労支援を行う。 (3)発達障害者・難病患者を雇い入れた事業主に対する助成の実施 [予算額 592(551)百万円]  発達障害者又は難病のある者を雇い入れ、適切な雇用管理等を行った事業主に対する助成を実施する。 W 障害者の職業能力開発支援の強化 1 職業能力開発校(一般校)における精神障害者等の受入体制の整備(再掲) [予算額 318(338)百万円] 2 障害者職業能力開発校における特別支援障害者に重点を置いた職業訓練の推進 [予算額 4、839(4、966)百万円]  障害者職業能力開発校において、「職業訓練上特別な支援を要する障害者」を重点的に受入れ、障害特性に応じた職業訓練を実施するとともに、老朽化等により訓練生の安全や校舎の維持管理面で緊急性の高い施設整備を実施する。 3 障害者の多様なニーズに対応した委託訓練の実施 [予算額 1、588(1、399)百万円]  企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等多様な訓練資源を活用し、障害者が住む身近な地域で多様な職業訓練を実施する。 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 【P28-29】 研究開発レポート 就労に必要な移動等に困難がある障害者の実状等に関する調査 障害者職業総合センター 事業主支援部門 1 はじめに  四肢障害や視覚障害等により、自力での通勤のための移動や、職場内での移動の際に介助が必要な困難を抱える障害者(以下、「移動等困難障害者」)については、従来、雇用労働者として働くことに課題を抱えてきたといえます。  近年では、情報技術の進展や社会全体の働き方の多様化等にともない、当該障害者の働き方についても多様化してきたとの声が聞かれるものの、ノーマライゼーションの実現のためには、障害に関わらず、「ともに働くことがあたり前」の環境をさらに整備していくことが求められています。  こうした取組みに向けて、本研究は、移動等困難障害者の就労の状況等についての調査を行うとともに、支援のニーズに対応する社会環境の整備状況等について、その実状等を把握することを目的としました。  研究に先立ち、先行研究の知見を基に、移動等困難障害者を、「移動制約者」、「移動困難者」、「交通制約者」に分類しました(図1)。  研究活動においては、専門家ヒアリング、当事者に対するアンケート調査により、移動等困難障害者の就労の状況や、就労に関連する移動手段等の生活状況についての課題の整理を行い、その課題に対する支援方策等を、事例調査により整理、検討しました。  本稿では、25カ所の事業所を対象とした事例 調査で把握された移動等困難障害者に対する「就労における移動」のための支援を、@通勤に対する支援、A事業所内における移動に対する支援、B事業所外における移動に対する支援、Cその他の支援に分けて、移動制約者、移動困難者および交通制約者ごとに整理し、検討した結果を報告します(図2)。 2 通勤に対する支援  通勤に対する支援としては大きく分けて、三つの方法がとられていました。  一つ目は通勤手段の提供です。例えば、重度障害者等通勤対策助成金を活用した通勤バスの運行があげられます。ある地域の事業主団体では、3事業所に勤務する5名の障害者に対し、この助成金を活用し、通勤支援を行っていました。このように1事業所のみならず、事業主団体が地域ぐるみで交通空白地域等の通勤問題を改善していくことも一つの方法と考えられます。  二つ目に、職住接近も有効な支援方法としてあげられますが、これをさらに進めていくためには、バリアフリー住宅やグループホームといった社会資源の充実が必要との声も聞かれました。  三つ目は、広い意味でさまざまな移動の問題を緩和する手段として、在宅勤務やサテライトオフィス勤務への支援が行われていたことです。 3 事業所内の移動に対する支援  事業所内における移動に対する支援としては、主に職場環境のバリアフリー化や、レイアウトの工夫といったハード面の支援を行っている企業が多く見られました。これには障害者作業施設設置等助成金が多く活用されていましたが、自社の技術を活かし、本人のニーズを聞きながら、細部にまで配慮した環境整備を行っている事業所もありました。各事業所で非常に細かい配慮のもと、環境整備が行われていましたが、いずれの事業所からも聞かれたのは、ハード面の整備以上に重要なのは、ともに働く人々の心のバリアフリーであるという声でした。 4 事業所外の移動に対する支援  事業所外における移動で最も問題となっていたのが、自ら運転ができない障害者が、出張業務等で自動車にて移動する場合の支援でした。このような支援を事業主が行った場合に活用できる助成制度はなく、例えば、訪問マッサージに従事する視覚障害者を雇用した場合、施術のための移動に運転手の確保が必要となるため、事業主の経済的負担のみならず、支援を受ける側の精神的負担をもたらすことも少なくないとのことでした。そして、これらの負担の軽減、さらには移動等困難障害者の活躍の場の拡大のためにも、事業所外における移動に関する支援策の検討が必要との声が聞かれました。 5 まとめ  移動等困難障害者の抱える課題については、同じ障害であっても、住んでいる地域、勤務先の状況等により大きく異なっており、その個別性に応じた支援が必要となります。  移動等困難障害者の雇用・職場定着の促進を図るためには、今後、助成制度とともに、移動等困難障害者の地域生活、職業生活を支える社会資源の充実を図っていくことも重要と考えます。  また、移動等困難障害者の問題を、障害者だけの問題としてではなく、職場全体の問題、地域全体の問題として考え、解決を図っていくという視点を持つこと、十分なコミュニケーションをとりながら、障害者とともに働くことをあたり前と考える企業風土の醸成と心のバリアフリー化を図っていくことが重要であるというのが、本研究で得られた一番の知見と考えています。 図1 本研究における移動制約者・移動困難者・交通制約者の定義と関係 移動制約者 移動に際し、身体的・精神的な要因によって何らかの困難を伴うが、その困難性は個人要因・環境要因により変化し、一定の条件の下、特別な支援を必要とする移動等困難障害者 移動困難者 移動に際し、常に特別な支援を必要とする移動等困難障害者 交通制約者 地域特性等により移動手段が制約される移動等困難障害者(交通不便地域・空白地域に住み、自家用乗用車を利用できないために主として通勤に困難を抱える移動等困難障害者) 図2 移動等困難障害者に対する企業における移動支援の実際と課題 移動困難者 移動制約者 交通制約者に対する支援 ●企業における移動支援の実際 1.通勤に対する移動支援 移動困難者 移動制約者 交通制約者 ・通勤手段の提供等 移動困難者 移動制約者 交通制約者 通勤用バスの運行 移動困難者 移動制約者 交通制約者 タクシー通勤 移動困難者 移動制約者 交通制約者 上司や同僚による送迎 移動困難者 ヘルパー(雇用)による送迎 ・職住接近のための住宅の確保 移動困難者 移動制約者 交通制約者 バリアフリー住宅(肢体不自由者) 移動困難者 移動制約者 交通制約者 グループホーム(知的障害者) ・テレワークの支援 移動困難者 移動制約者 交通制約者 在宅勤務 移動困難者 移動制約者 交通制約者 サテライトオフィス勤務 2.事業所内における移動支援 移動困難者 移動制約者 ・ハード面の支援 移動困難者 移動制約者 施設内バリアフリー環境の整備 移動困難者 移動制約者 事業所内レイアウトの工夫 ・ソフト面の支援 移動困難者 移動制約者 心のバリアフリー 3.事業所外における移動支援 移動困難者 移動制約者 ・出張など自動車にて移動する場合の支援 移動困難者 移動制約者 専用ドライバー(雇用)による送迎 移動困難者 移動制約者 同僚による送迎 4.その他の支援 移動困難者 移動困難者 (生活介助のための)ヘルパーの雇用 重度障害者等通勤対策助成金 ・通勤用バスの購入 ・バス運転従事者の委嘱 ・駐車場の賃借 ・住宅の賃借など 通勤、営業活動は対象外 重度訪問介護 行動援護・同行援護 市町村事業の移動支援 障害者作業施設 設置等助成金 ・施設、設備の設置 ・施設、設備の賃借 ●課題 1.企業の課題や要望 ・通勤に係る費用(バス・タクシー運賃)の事業主負担  リース車両、タクシー通勤等に対する助成の要望 ・社会資源の不足  バリアフリー住宅、グループホームの需要に対する供給不足 ・在宅勤務における職務制限とコミュニケーション面の課題  情報技術の活用による職域拡大  コミュニケーションのあり方についての検討 ・事業所外移動(営業活動)の支援に係る事業主負担  雇用拡大のための支援策の検討が必要 2.制度面の課題 ・就労のための移動に係る移動支援制度の不足 …多くの移動支援制度は「通勤や営業活動などの通年かつ長期にわたる外出」は対象外  就労のための移動に対し、何らかの支援策の検討が必要 ・移動困難者の移動問題足 …ヘルパーが運転する自動車での移動は支援対象外  在宅勤務中の介助は対象外 →自宅の介助と職場の介助のかい離  自宅、移動、職場での一貫した支援を実現するための、シームレスな制度連携が必要 ※本研究「資料シリーズNo.102」は、http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/shiryou/shiryou102.htmlよりダウンロードできます ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp) 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 気象庁 津波警報「赤白格子(こうし)の模様」に  気象庁は、海水浴中の聴覚障害者らに津波警報の発表を知らせる旗のデザインを「赤と白の格子模様」に決定した。警報が出た場合は、海岸からライフセーバーらが旗を振ることを想定し、今夏から全国の自治体に使用を求める。  これまで国は省令で津波警報を「鐘やサイレン音で行う」と定めていたが、聴覚障害者のほか一般の海水浴客も波や風によって聞き取れないとの懸念があった。津波注意報や大津波警報も同じ旗を使う。 地方の動き 埼玉 ICT活用の定型業務チームを設置し障害者雇用  埼玉県は2020(令和2)年度から、県庁内の定型業務を一括して処理するため、障害者と健常者がともに働く「スマートステーション」(愛称・flat(フラット))を設置。各部局の会議録作成やデータ集計などの業務を集約し、ICT(情報通信技術)を活用して業務を効率化する。30人程度の職員を配置し、ICT導入で簡素化した定型業務にかかわる10人程度の障害者も採用し、アドバイザーによる職場定着支援も行う。  業務内容は、名刺や書類ファイルの作成、文書の発送など。AI(人工知能)で会議録の音声データをテキスト化し、職員研修などのアンケート調査はOCR(光学式文字読み取り装置)などでデータ化・集計する。 神奈川 木製ストローで環境保全  横浜市は、住宅メーカー「株式会社アキュラホーム」(東京都新宿区)と木製ストローを共同開発した。障害者雇用に取り組む日総工産株式会社(横浜市)の特例子会社「日総ぴゅあ株式会社」(同市)に製造を依頼し、月1万本程度の生産を目ざす。  ストローの商品名は「SDGs(持続可能な開発目標)ストロー・ヨコハマ」。長さ約20p、口径約5o。原材料は、横浜市が山梨県内に保有する水源林の間伐材(かんばつざい)。木材を薄い板状にスライスしてストロー状に加工した。  市内のホテル「横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ」のレストランなどで販売。1本55円(税込)。 滋賀 LINEで手話相談  大津市は、無料通信アプリLINE(ライン)のテレビ電話機能などを活用し、手話で聴覚障害者らの相談に応じるサービスを開始した。対象は聴覚障害者手帳を持つ1100人あまりの市内在住者で、利用には書類申請を通じた登録が必要。市障害福祉課にタブレット1台を配備し、聴覚障害者からのLINEを使った相談に、市職員の手話通訳者2人が対応する。  テレビ電話機能では、画面上で手話通訳者と手話を使って相談ができる。文字のやりとりも可能。対応時間は原則として平日の9時〜17時。 三重 カフェ新運営事業者を決定  障害者雇用への理解を深めるために、三重県総合文化センター男女共同参画センター(津市)内に設置したステップアップカフェの新たな運営事業者が、「株式会社OCK Ba-mi(オーシーケー バーミィ)」(尾鷲(おわせ)市)に決まった。店舗名は現在の「Cotti菜(こっちな)」から「だいだい食堂」に変更。  ステップアップカフェは2014(平成26)年に開店。これまでに14人の障害者が働き、うち5人が企業に就職した。新しい事業者は配食サービスを展開し、障害者を雇用する場として製麺工場やうどん店を経営している。「だいだい食堂」では障害者2人程度を採用する予定。 生活情報 視覚障害者の移動支援ロボットを共同開発  「三菱自動車工業株式会社」(東京都港区)、「アルプスアルパイン株式会社」(東京都大田区)、「オムロン株式会社」(京都府京都市)、「清水建設株式会社」(東京都中央区)、「日本アイ・ビー・エム株式会社」(東京都中央区)の5社が、「一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム」を設立した。  視覚障害者の生活の質の向上を目的に、AIを活用した移動やコミュニケーション支援のための統合技術ソリューションの開発と、実証実験などを実施。使用者を目的地まで誘導する「AI スーツケース」という、無理なく携行できるウェアラブルデバイスと、スーツケース型ナビゲーション・ロボットの開発に取り組む。視覚から得られる情報をAIとロボット技術で補完し、視覚障害者が自立して街を移動することを助ける。 京都 「白杖(はくじょう)」がスマート化  「京セラ株式会社」(京都市)は、駅のホームからの転落事故や交通事故を低減させるために視覚障害者向けの「スマート白杖」を発表した。RFID(無線自動識別)技術と振動や音声による情報伝達技術を組み合わせた。  RFIDタグを内蔵した白杖の先端がホームや車両に備えつけられた「RFタグ」と呼ばれるパーツに接近すると、振動で危険を知らせ、同時にスマートフォン経由で音声でも注意をうながすシステム。体験会などを経て改良を進め、3年以内の実装を目ざす。 群馬 学術手話通訳の育成強化  群馬大学(前橋市)が、学術手話通訳の育成強化とともに、聴覚と視覚の両方に障害のある人など、複数の障害のある人を支援する人材の養成を始めた。手話通訳技術を取得した学生に、さらに進んだ障害者支援の技術を身につけてもらう。  2020年1月に、手話言語の認知・言語発達の研究で国内聴覚障害者初の博士号取得者である中野(なかの)聡子(さとこ)さんが准教授として着任。高等教育機関における手話翻訳の支援態勢が不十分な国内で、手話指導と養成のためのテキストやカリキュラムの開発を進めている。自治体が取り組む手話通訳者養成研修で、受講者が効率よく技術を習得できる方法なども研究し、手話通訳養成環境の早期のレベルアップにつなげる。 大阪 発達障害者の意見を採用したノート  「大栗(おおぐり)紙工株式会社」(大阪市)は、発達障害者の支援活動をする「一般社団法人UnBalance(アンバランス)」と協力し、発達障害者約100人の要望を反映させたオリジナルノート「mahora(まほら)ノート」を開発した。感覚が過敏、集中力が途切れやすいといった特性のある発達障害者をはじめ、だれもが使いやすいユニバーサルデザインを目ざした。  特徴は、表紙や中頁から余計なデザインや情報を省き、中紙には反射によるちらつき、まぶしさをおさえた国産色上質紙を使用。セミB5サイズ(タテ252o・ヨコ179o)で、色はラベンダーとレモンの2種。1冊280円(税込)。http://og-shiko.co.jp/mahora/ 働く 山形 山菜風味の塩を商品化  障害者の就労支援事業所などを運営する「NPO法人なでらの森」(米沢市)が、山形県の山菜を乾燥させて塩と混ぜた「さとやまソルト」を開発した。知的障害、精神障害などのある利用者9人が山菜を洗ったり、商品の瓶詰めをした。  遊佐町(ゆざまち)で採った海水を煮詰めてつくった塩を使用し、味はヨモギやウコギ、コゴミ、クワ、ササ、月山筍(がっさんだけ)の6種類。各約20g入り450円(税込)。事業所やオンラインショップ「TOMO市(ともいち)」で販売する。問合せは「なでらの森」へ。 電話:0238−40−1391。 本紹介 『ADHDの人の「やる気」マネジメント「先延ばしグセ」を「すぐやる」にかえる!』  クリニックで発達障害を専門に治療を行っている司馬(しば)理英子(りえこ)さんが『ADHDの人の「やる気」マネジメント「先延ばしグセ」を「すぐやる」にかえる!』(講談社刊)を出版した。司馬さんは1983年に岡山大学大学院博士課程修了後、渡米し、現地で4人の子どもを育てながらADHDについて研鑽(けんさん)を積んだ。本書ではおもに「やる気があるのにできないADHDの人」について、やる気を行動に移すスイッチを上手に入れて持続させるマネジメント術などを、イラストや図解入りでわかりやすくアドバイスする。B20取、102頁、1400円(税抜)。 『一般企業への重度精神障害者の就職をどう支援していくか 包括的な支援のためにIPSを利用する』  長野大学社会福祉学部社会福祉学科准教授の片山(かたやま)優美子(ゆみこ)さんが『一般企業への重度精神障害者の就職をどう支援していくか 包括的な支援のためにIPSを利用する』(ミネルヴァ書房刊)を出版した。ソーシャルワーカーとして現場で働いていた著者が、これまで感じてきた問題点に真摯(しんし)に取り組んだ研究を紹介。重度精神障害者の就職・定着支援の一つのツールとして、米国で開発されたIPS(個別就労支援)を紹介し、実際の現場における有用性について検証。日本における新たな支援の可能性を明らかにする。A5判、216頁、6000円(税抜)。 【P32】 掲示板 「合理的配慮」が学べるDVDができました! 『みんな輝く職場へ 〜事例から学ぶ 合理的配慮の提供〜』のご紹介  事業主には、障害のある方が働くにあたって支障となっている事情を改善するため、必要な措置を行うこと(合理的配慮の提供)が法律によって義務づけられています。  このDVDでは、視覚障害、聴覚障害、知的障害、精神障害、発達障害のある方々への合理的配慮の提供事例について紹介しています。 ●DVDは中央障害者雇用情報センターで貸出しをしています。  【お問合せ】中央障害者雇用情報センター/ TEL:03-5638-2792 ●当機構ホームページで視聴もできます。  http://www.jeed.or.jp/disability/data/handbook/gouritekihairyo.html 『働く広場』読者のみなさまへ  2020年5月号(4月25日発行)は、新型コロナウイルス感染症拡大にともなう緊急事態宣言を受け、休刊となりました。ご購読いただいている皆様に大変ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。ご不明の点は当機構企画部情報公開広報課(電話:043−213−6216)までおたずねください。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える 人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 EDITORS, NOTES 次号予告 ●私のひとこと  「親なきあと相談室」主催者で、行政書士および社会保険労務士の渡部伸さんに、障害のある子どもの将来などについて、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  人材紹介、人材派遣、コンサルティングなどを行うパーソルグループの特例子会社、パーソルチャレンジ株式会社(東京都)を訪問。多くの障害者雇用の実績・経験を活かし、障害のある人の就労機会の拡大を目ざす現場を取材します。 ●グラビア  市民生活協同組合ならコープの子会社の、配送・物流システムやテレマーケティング業務を行う株式会社CWS(奈良県)で活躍する障害のある社員をご紹介します。 ●編集委員が行く  朝日雅也編集委員が、世田谷区障害者雇用促進協議会を訪問。地域に根ざした、障害者の就労支援ネットワークについて取材します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ http://www.jeed.or.jp メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 6月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和2年5月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 株式会社ダイナン 経営補佐 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【裏表紙】 6月号 令和2年5月25日発行 通巻512号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)