【表紙】 令和2年6月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第513号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2020 7 No.513 職場ルポ 不安を解消する工夫、能力を活かす多様な業務 パーソルチャレンジ株式会社(東京都) グラビア 地域の暮らしを支える物流センターで働く 株式会社CWS(奈良県) 編集委員が行く 地域に根ざした障害者雇用の推進力 〜世田谷区障害者雇用促進協議会の取組みを訪ねて〜 世田谷区障害福祉部、株式会社オオゼキ、世田谷区障害者就労支援センターしごとねっと(東京都) 私のひとこと 「親なきあと」問題とは 〜障害者が長く働くために〜 「親なきあと」相談室主宰/行政書士・社会保険労務士 渡部 伸さん 「働くぼく」福島県・深谷(ふかや)翔(しょう)さん 読者アンケートにご協力をお願いします! 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 7月号 【前頁】 「中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集」のご紹介  当機構では、事業所における障害者雇用と職場定着を進めるため、雇用管理や職場環境の整備などさまざまな改善・工夫を行った障害者雇用職場改善好事例を募集し、優秀な事例を表彰しています。  2019(令和元)年度は、中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例を募集しました。  このたび、入賞事業所の事例を「中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集」としてとりまとめました。障害者の雇用促進と職場定着のためにぜひご活用ください。 最優秀賞(厚生労働大臣賞)の株式会社シーエックスカーゴの事例から ※好事例集4ページから9ページ(デジタルブックでは6ページから11ページ)にかけて、「柔軟な勤務時間の設定」「障害者職業生活相談員とジョブコーチの連携」などの取組みを紹介しています。 この事例集は、当機構のホームページでもご覧いただけます。 職場改善好事例集 検索 事例集の送付を希望される方は、下記までお問い合わせください。 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9514 FAX 043-297-9547 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2020年7月号 NO.513 お知らせ−−前頁 「中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集」のご紹介 私のひとこと−−2 「親なきあと」問題とは 〜障害者が長く働くために〜 「親なきあと」相談室主宰/行政書士・社会保険労務士 渡部伸さん 職場ルポ−−4 不安を解消する工夫、能力を活かす多様な業務 パーソルチャレンジ株式会社(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ−−10 はじめての障害者雇用 第3回 JEEDインフォメーション−−12 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ/令和2年度「地方アビリンピック」開催地一覧/ 障害者職業総合センター職業センターで実施している職業リハビリテーション技法開発に関する報告書・マニュアルのご紹介 グラビア−−15 地域の暮らしを支える物流センターで働く 株式会社CWS(奈良県) 写真/文:官野貴 エッセイ−−19 第1回 重度障害とともに 〜ある日、突然の交通事故〜 『ママの足は車イス』著者/元幼稚園教諭・保育士 又野亜希子 編集委員が行く−−20 地域に根ざした障害者雇用の推進力 〜世田谷区障害者雇用促進協議会の取組みを訪ねて〜 世田谷区障害福祉部、株式会社オオゼキ、世田谷区障害者就労支援センターしごとねっと(東京都) 編集委員 朝日雅也 省庁だより−−26 令和2年度障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート−−28 調査研究報告書No.153「障害のある求職者の実態等に関する調査研究」 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門 ニュースファイル−−30 掲示板・次号予告−−32 第28回職業リハビリテーション研究・実践発表会(発表者募集のお知らせ) ※「心のアート」は休載します 表紙絵の説明 「自分が働いている姿を考えたとき、作業学習で清掃活動をしたことを思い出し、真剣に窓ガラスの清掃をしている様子が伝わるように描きました。版画なので、線を大切に彫りました。筆の勢いが表現できるように何度も重ね刷りをして、豊かな表現にしました」 (令和元年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(http://www.jeed.or.jp) 【P2-3】 私のひとこと 「親なきあと」問題とは 〜障害者が長く働くために〜 「親なきあと」相談室主宰/行政書士・社会保険労務士 渡部伸 「親なきあと」の課題は三つ  「親なきあと」相談室の渡部伸と申します。障害者の家族の不安や悩みが少しでも軽くなるように、講演会やメール相談、著書や雑誌の記事などでさまざまな情報をお伝えしています。  障害のある子の家族にとって「親なきあと」は共通の、そして永遠の課題です。ほとんどの親は、自分たちがいなくなったあと子どもの生活はどうなるのか、不安を抱いています。  ただ、その不安について、具体的に説明しづらい方が多いと思います。自分たちが面倒を見られなくなった、あるいはいなくなったあとのことなので、何から手をつければよいのかわからず、漠然とした不安を募らせているというのが多くの親たちの現状だと思います。  私自身も障害者の親なので、同じように不安は抱えています。でも整理してみると、それらは三つの課題に集約できることに気がつきました。  @お金で困らないための準備をどうするか  A生活の場はどのように確保するか  B日常生活で困ったときのフォローをどうするか  それぞれの課題について、利用できる行政の福祉サービスがあり、民間の法人などが提供しているサービスがあり、また地域独自の取組みがあります。課題が整理できて、それに対応する方法がいろいろあること、そして新しい制度やサービスもできていることを知れば、不安そのものは消えることはありませんが、自分たちがこれからやらなければいけないことが見えるようになるのです。 それぞれの課題に対応する制度や仕組み  障害のある子がいる親御さんの多くは、「親なきあと」も子どもが安心して生活していくためには、どのくらいお金を残せばよいのだろう、という不安を抱えているのではないかと思います。私も個別相談や講演会などで、よくこの質問を受けることがあります。  そういったときに、私はこのようにお答えしています。「お金は必要以上に残さなくても大丈夫。それよりも準備してほしいことがあります」  準備してほしいことというのは、残したお金が本人の生活のために使われる仕組み≠フことです。  知的障害のある40代の男性が、仕事帰りに数カ月間にわたりほぼ毎日、客引きにバーなどの飲食店に連れて行かれ、貯めていた1500万円を失ってしまった、という事件が報道されました。たとえお金があったとしても、それが安全に管理され、本人のために使われなければ意味がありません。  重要なのは、本人の将来の生活を支える仕組みです。お金の残し方と、そのお金の管理の仕方の両面から考えておく必要があります。  お金の残し方としては、相続で争いごとが起こるのを防ぐためにも、遺言を書いておくことが重要です。また、遺産相続により、障害のある子がいきなり慣れない大金を手にしてしまう事態を避ける方法として、信託(※)の活用があります。信託の仕組みを利用すれば、親が残したお金から定期的に一定額を子どもに手渡してもらうことができます。この信託の仕組みを手軽に利用できるものとして、信託と生命保険を組み合わせた商品も登場しています。  次に、そのお金をどう管理するのか。その主な仕組みとして成年後見制度と日常生活自立支援事業があります。  これらの仕組みを、本人の判断能力や家族の状況などに応じて、適切なものを組み合わせて利用することになります。  障害者が親と離れて生活する場合の住まいは、法制度の変化にともない、大規模な入所施設からグループホームでの地域生活へと変わってきています。さらに、福祉サービスなどを組み合わせて一人暮らしを選択するケースも少しずつ増えています。  日常生活のフォローについては、特に中度軽度の障害者を対象に、自立生活援助や就労定着支援といった、一人暮らしや就労している障害者を支援しようという新しい福祉サービスが2018(平成30)年からスタートしています。 本人を支えるのは地域のつながり  「親なきあと」に本人を支えるためには、親が元気な間に、お金のこと、住まいのことをしっかり準備することが大切です。しかし親が面倒を見られなくなったあと、一番大切なのは、地域とのつながりです。  障害者雇用を積極的に行っている企業の方にうかがうと、親が元気な間は安定して働いていた障害のある社員が、親が体調を崩して入院したり、亡くなったりして、生活の状況が変わってしまうと、定時に出社できなくなったり、結果的に退社してしまったりするケースは多いということです。こういったことを防ぎ、本人が「親なきあと」も働き続けるためには、周囲のサポートが重要になってきます。  障害者本人には多くの方がかかわっていると思います。行政の担当者や計画相談事業者、就労先の担当者や障害者就業・生活支援センターの担当者、移動支援やグループホームなど、利用している福祉サービスの支援者……成年後見制度を利用していれば成年後見人などもいます。もちろん、きょうだいなどの親族やご近所の方もいるでしょう。こういった方たちがチームで支える仕組みができると理想的です。普段は必要なくても、例えばグループホームに入居する、病院に入院または退院するなど、本人に関する重大な決定をする場合に、本人と本人にかかわる人たちが話し合う環境があればより安心です。こういったチームに、就労先である企業の方も何らかの形でかかわることが、本人の働き続ける大きな力になるのでは、と考えています。  会社はあくまで仕事の場です。本人のプライベートな部分にどこまでかかわってよいのか、判断がむずかしいこともあると思います。ただ、地域の支援機関と連携することで、本人の家庭の状況も把握でき、会社での不調にも対応しやすくなるのではないでしょうか。ぜひ無理のない範囲で、ご支援いただければと思います。 ※信託:契約などにより財産を信頼できる人に託し、受益者のために管理、運用、継承、処分などをしてもらう制度 渡部伸 (わたなべしん)  1961(昭和36)年生まれ、福島県会津若松市出身。  「親なきあと」相談室主宰。行政書士・社会保険労務士。「渡部行政書士社労士事務所」代表。「世田谷区手をつなぐ親の会」会長。主な著書に、『障害のある子の「親なきあと」〜「親あるあいだ」の準備』、『障害のある子の住まいと暮らし』(ともに、主婦の友社刊)、『まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活』(自由国民社刊)などがある。 ●「親なきあと」相談室 http://www.oyanakiato.com/ 【P4-9】 職場ルポ 不安を解消する工夫、能力を活かす多様な業務 ―パーソルチャレンジ株式会社(東京都)― 障害のある社員409人が働くのは、人材業界大手の特例子会社。事業拡大を図りつつ、現場の経験やノウハウを他企業への人材サービスにも活かしている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 (写真提供:パーソルチャレンジ株式会社) 取材先データ パーソルチャレンジ株式会社 〒108-0014 東京都港区芝5-33-1 森永プラザビル本館18F・19F TEL 03-6385-6142 FAX 03-6385-6143 Keyword:特例子会社、障害理解、精神障害、聴覚障害、ジョブコーチ、テレワーク POINT 1 グループ会社は「業務委託費」か「雇用管理費」を負担 2 事務系の業務100種、丹念にマニュアル化 3 「不安の解消」マネジメントで多面的な社員支援 障害者409人の特例子会社  グループビジョンの「はたらいて、笑おう。」を掲げるCMで知られる「パーソルホールディングス株式会社」(以下、「パーソル」)は、2020(令和2)年4月1日現在で国内外135社680拠点、連結従業員数5万774人を抱える人材業界の大手企業だ。  パーソルの特例子会社「パーソルチャレンジ株式会社」(以下、「パーソルチャレンジ」)が設立されたのは2008(平成20)年。当初は社員数10人、うち障害者7人(身体障害)でスタートしたが、いまでは社員数740人、うち障害者は409人(身体障害93人、知的障害37人、精神障害279人、2020年4月1日現在)、グループ全体での雇用率は2・21%(2019年6月1日現在)となっている。 事務系の受託業務  今回の職場ルポは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、職場訪問を断念した。代わりにパーソルチャレンジの3人の方に、ビデオ会議システムを使って3月下旬にインタビューさせてもらった。  「いまも年間80人の雇用目標で臨んでいます」と話すのは、パーソルチャレンジの代表取締役を務める井上(いのうえ)雅博(まさひろ)さんだ。  もともと外資系IT企業で人事業務にかかわり、2000年に中途入社したパーソルのグループ会社では人事分野を指揮してきた。パーソルチャレンジの前身である特例子会社「株式会社インテリジェンス・ベネフィクス」設立の中心人物でもある。まずは経緯から教えてもらった。  「ちょうど私が入社した年から2008年にかけて会社は急成長し、社員数が約400人から5000人超へと10倍以上に増えました。そのため3年間で100人以上の障害者を雇用する必要がありましたが、各部署ではなかなか進められずにいました。そこでまず人事部の直下に子会社をつくって取り組んでみようと提案しました」  井上さんは、特例子会社の運営が「多様な働き方」につながるとも見ていた。「労働環境に配慮が求められる職場ですから、一緒に働く社員も、時短勤務も含めた多様な働き方が可能になります。障害者雇用の推進が『働き方の多様化』への挑戦につながるということも、設立提案に盛り込んでいました」  というのも当時の親会社は、育休を経て復職する女性社員が、いきなりハードワークの環境に戻り、時短勤務も定着できない状況だった。能力があるのに、やむを得ず退職するケースも目(ま)の当たりにしたという。パーソルチャレンジでは、こうした育児や介護などとの両立が必要な社員を積極的に登用した。  手がける業務は、事務系を中心にすると決めていた。理由の一つは、グループ会社には契約社員やアウトソーシング向けのマニュアル化された仕事が多く、障害のある人も取り組みやすいのではないかということ。もう一つは、事務系の仕事でキャリアを積むことで、本人が将来転職したいと思ったときの選択の幅を広げやすいということだった。  「ここで働き続けてもらうことが一番ですが、少なくとも本人のキャリアステップになれば、結果として私たちの会社の存在価値にもつながります」 グループ会社から「雇用管理費」  請け負う業務の切り出しについては、もともと井上さんが「どこの部署にどんな人が何人いて、どんな仕事をしているか」を把握していたため、部署を直接回りながら業務の提案をしていったそうだ。  「仕事の切り出しを進めるときは、上層部と現場の両方にしっかりコミュニケーションをとって理解をしてもらうことも重要です。でなければ『絵に描いた餅』状態になってしまいますから」  また、初めの1年間は、委託元の部署から代金は受け取らず、費用は人事で負担する形をとった。あらかじめ事業計画で「障害者雇用促進費」を予算化した。  「最初から見積金額などのハードルを上げてしまうと期待値も高くなります。費用の負担がないとわかると、人手不足の現場から仕事が来るようになりました」  封入・封かん作業など単純な定型業務からスタートしたが、納期が遅れたり、納品物の品質が不安定になることもあったりした。「間に合わないときは私たちも休日出勤して作業のサポートをしたこともありました」と井上さんは明かす。そこで、作業のマニュアル化や納品前チェック体制を徹底させ、徐々に水準を上げていった。  満を持して、翌年度から委託業務に「課金」したところ、注文は半減した。そのため、もともと評価をしてくれていた部署に出向いて「仕事の深堀り」をするなどして業務を拡大。すると3年目には、半減分も解消するほどになったという。  パーソルチャレンジでは現在、請け負う業務については市場価格に沿った金額で請け負っている。ただし「グループ各社がすべき雇用を、特例子会社が進めている」という考え方のもと、2017年からは、本来の雇用率に満たないグループ会社に「業務委託費」もしくは「雇用管理費」を請求している。  「基本的には、各社で雇用に取り組むことが前提ですが、不足分を特例子会社が代わりに雇用促進するための費用として、雇用管理費を年度予算で提示し、特例子会社への業務発注額が増えると相殺される仕組みを導入しています」 ノウハウをもとにサービス提供  パーソルチャレンジは当初から、事務系の受託業務とともに障害者専門の人材紹介・雇用支援を事業の柱としてきたことも大きな特徴だ。  「私自身、設立したころは障害者雇用の知識がほとんどなく、ほかの企業も同じ課題を抱えているだろうと思っていました。人材業界の子会社として、自分たちの経験・ノウハウをもとにしたサービス提供にもつなげていこうと考えました」  実際に2009年に障害者の人材紹介サービス「doda(ドゥーダ)チャレンジ」が始まり、年間1万人の登録者をもつ大型事業に成長した。法人クライアントは2000社を超え、累計100社以上で特例子会社の設立から研修、採用代行・定着支援までと多彩なコンサルティングサービスも行っている。  また2012年から開設してきた就労移行支援事業所(2019年から「ミラトレ」と命名)は首都圏10カ所、関西2カ所まで増えた。2016年には発達障害のある学生向け「コミュニケーション・サポート・プログラム(CSP)」をスタート、2019年にはIT特化型の就労移行支援事業所「Neuro Dive(ニューロダイブ)」も開設。パーソルチャレンジが積み重ねた実績と、障害者雇用を取り巻く時代の流れに沿いながら、多様な事業を展開してきた。就労系障害福祉サービス機関や行政機関とも連携しつつ、年間1000人を超える障害者雇用にかかわるという。 事務系100種類の仕事  パーソルチャレンジの受託サービス事業部は全国に7拠点あり、在籍している約400人の障害者は業務内容によって7つのチームに分かれ、いまは全体で計100種類以上の業務を請け負っている(図1)。  東京都港区の田町にある受託サービス第二事業部で、社員数約200人(うち8割が障害者)を率いるゼネラルマネジャーの野原(のはら)斗夢(とむ)さんに話を聞いた。  「知的障害のある方は、軽作業系が中心ですが、最近はパソコン作業に従事する人も出てきました。全体的に、もっと自分のスキルを伸ばしたい、難易度の高い業務をやってみたいという社員が増えています」  現場では本人の仕事の様子を見ながら、エクセルのツール作成などの業務に挑戦してもらったり、教育研修の機会をつくったりしているそうだ。  順調に業務を拡大してきたゆえの苦労も明かしてくれた。  「属人化した業務の委託を提案されるようになり、いかに内容を精査・分解していくか工夫を重ねています。業務難易度が上がることで、本人にとって不安やストレスになるような判断事項の多いものについて、どう対応していくかも悩みどころです」  例えば最近では、派遣スタッフの職務経歴をシステム登録する業務を受託したが、経歴書の仕様や書き方がばらばらなので、ルールに沿った表記方法、パターン、判断軸を丹念にマニュアル化していった。  こうした全体のスキル向上や成果を、年1回のグループ全体の社員総会で発表することで、さらに認知度も高まった。ほかのグループ会社から「そんな仕事もできるのか」と驚かれ、新たな業務を任せられるそうだ。業務拡大によって、グループ会社に社員が出向したり、逆に受け入れたりといった人事も行われている。 不安解消マネジメント  障害者雇用において、パーソルチャレンジが行っている配慮事項は多岐にわたる(図2)。生産性向上に向けた取組みも多彩だ。なかでも現場で力を入れて工夫しているのは、「不安の解消」に向けた多面的なマネジメントだと野原さんは説明する。 @「見える化」  行動指針や判断基準、作業分担などを可視化し、情報を共有、チェックリストやトレーニングで不安を軽減する。 A「不安マネジメント」  仕事や人間関係など、どんな不安を抱えているのか本人自身が理解し可視化、個別面談などで現場リーダーも把握する。 B「メンタルレベルマトリクス」  メンタル状態を17項目4段階で評価し可視化。専門知識のない管理者でも状態を把握できる。  精神障害のある社員には体調の波が大きい人もいるが、なぜその不安が生じるのか、その引き金や原因になるものを把握することを心がけている。本人が登録している就労支援機関と連携し、主治医の意見も本人経由で聞いて対応している。  「自分で原因を認識していても、受け止め方を変えられず悩んでいる人もいます。現場のリーダー管理職たちは、根気よく、その人をしっかり見て向き合うようにしています。本人が、認められているという実感を持ってもらうことが大事だと思っています」  現場リーダーだけで解決がむずかしい場合には、社員の健康支援をする「人材支援グループ」が対応する。8人が在籍し、1人あたり40〜50人を担当。生活面や上司にいえないことなどの相談も受けている。その結果、1年以上の職場定着率は9割以上になっているという。 気持ちを包み込んでくれた  2015年に入社し、いまは人材支援グループに在籍する中津井(なかつい)亨(とおる)さんは、双極性障害U型の障害者手帳をもつ。インタビューでは、自身の経験をふまえ職場のあり方について語ってもらった。  中津井さんは大学卒業後、経営コンサルタント会社に新卒採用されたが、上司との関係に悩み、うつ病を発症して退職、何度か入院もしたという。その後、療養を経て再就職を目ざしdodaチャレンジに登録し、担当者の対応に好感をもったことから、パーソルチャレンジに自ら応募したそうだ。  入社後は、求人広告の原稿制作から担当。はじめは単純作業だったが、社内研修でエクセル関数を学んでマクロを組んだり、制作の進行管理を任されたりするようになった。かなり順調な仕事ぶりだが、その間にも「体調の波は激しく、プレッシャーが大きいと落ち込みも強かった」と明かす。  「ただ、そういうときも仕事の不安や悩みを、親身になって聞いてくれた上司の存在は、とてもありがたかったです。一番救われたのは、まず『それはたいへんだね』と寄り添ってくれて、自分の気持ちを包み込んでもらったと感じたときでした」  また体調不良で欠勤し、再び出社したときには「治ってよかったね」だけで終わらず、「理由や原因について掘り下げて聞かれたことが、むしろよかった」という。いろいろ状況を聞かれるうちに、自分では気づかなかった不安や悩みに気づけたからだ。  中津井さんは2年目にサブリーダー、3年目にはリーダーに昇格。現場のメンバーたちをサポートしたり面談を受けたりするような存在になったいまは、かつて上司が自分にとってくれた姿勢を見習っているという。  中津井さんは、中途入社メンバーのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や1〜3年後の研修の企画などを担当するほか外部講師も務めている。  いまも気持ちが不安定なときは、自分を客観視できるよう、気持ちや考えを紙に書き出すようにしている。これは闘病中に自分で考え出した方法で、症状が重いときは3〜4枚ぐらい書くそうだ。  精神障害のある人を採用するときのアドバイスももらった。  「例えば気分の浮き沈みが激しいといった『障害の中身』よりも、本人がしっかり『自己受容できているか』が重要だと思います。自分でメンタルフォローする方法を身につけているか、相談先はあるか、といった確認も大切ですね」  ちなみにパーソルチャレンジの職場内では、社員が自分の障害種別についてオープンにしていない。井上さんが説明してくれた。  「社員一人ひとりが、自分はこういう特性があり、こういう配慮が必要だと自己理解しているので、管理者が、それぞれ個性として受け止めていれば十分です。そして自己理解ができている社員は自然と、ほかの人を思いやる気持ちも出てくるようです。だからこそチームワークもしっかりできているように感じます」 「障害者雇用≠ニいう言葉がなくなるくらい」に  ほかに、障害のある社員2人の方から書面でコメントをもらったので紹介したい。  聴覚障害のある橋本(はしもと)涼子(りょうこ)さんは、2013年に入社。「もともと地元の仙台市で就職先を探していたので、パーソルチャレンジに長く勤めるつもりはなかったのですが、仕事やメンバーとのかかわりが楽しくなってきて勤め続けています」という。  メディア制作グループで求人原稿のリライト業務を担当している橋本さんは、取引先とのやり取りは、メールかSkype(スカイプ)を使っている。文字だけでは意思疎通が図れないこともあるが、「先方が事情を察して懸命にコミュニケーションをとろうとしてくれるときは、感謝の気持ちでいっぱいになります」。こうした積み重ねで信頼関係を築けたときに達成感を得るそうだ。  2014年入社の西郡(にしごおり)大(だい)さんは、新卒で大手外食企業に入社するも、オーバーワークから体調を崩し、精神障害の手帳を取得した。「体調の変化と向き合いながらも、自分の能力を活かせる場を模索した結果、障害者雇用という道を選びました」とふり返る。  メディア制作グループに在籍し、いまでは企業在籍型ジョブコーチ(職場適応援助者)として、メンバーの支援や研修の講師などを務める。チームリーダーとして、日ごろから自分の体調管理にも気を遣っているという。  「避けられない体調の波はあるので、その波を予知するためにも日々の睡眠や食事、意欲に関してこまめに記録をとり、客観的に自分を見つめるように努力しています」  仕事のやりがいや今後の目標について、西郡さんはこう答えてくれた。  「業務を切り出すというよりも、アウトソーシングビジネスとして利益を追求するために、試行錯誤しながら改善していく仕事のスタイルに、やりがいを感じます。大きな目標を語るとしたら、障害者雇用という言葉がなくなるくらい、あたりまえになる社会を実現することです」 テレワークを活用し地方雇用も推進  パーソルチャレンジは、当初の特例子会社としての設立目的から大きく変わり、グループ全体の人事や経理など基幹的な業務を丸々引き受ける「事務センター」へと成長した。  今後の課題は、業務内容に沿った人材を、引き続きいかに雇用していけるかだと井上さんはいう。  「近年は首都圏を中心とした人材獲得競争が激しくなっている一方、地方ではまだまだ働きたくても機会がないという状況です。私たちとしては、首都圏でやっている業務を、テレワークなどを活用しながら、どう推進していけるか考えています」  パーソルチャレンジは、2018年度に厚生労働省から「障害者のサテライトオフィス勤務導入推進事業」を受託。ほかの企業や自治体と連携して、テレワークを活用した障害者雇用における地方の人材活用のあり方などを探ってきた。パーソルチャレンジでも10人がテレワーク勤務をしているそうだ。セキュリティやオフィス勤務との情報格差、帰属意識などの課題を解決しながら、障害者雇用のテレワークはもっと進めていけるとみている。  こうしたICT(情報通信技術)の活用なども含め、障害者雇用の現場は、どんどん変わっていくだろうと井上さんは話す。  「働き方改革が推奨される日本ですが、企業によっては、既存の制度や就業規則を変えにくいとして、テレワークや時差出勤すらむずかしいという声も聞きます。障害者雇用の場というのは、独自に新しい働き方や制度を試すことができるチャンスです。障害者雇用の先に、働き方の多様化があり、企業や社会の成長があります。それを後押しするさまざまなチャレンジを、私たちは続けていきたいと思っています」 図1 会社案内資料「 業務内容」 (資料提供:パーソルチャレンジ株式会社) 図2 会社案内資料「主な配慮事項」 (資料提供:パーソルチャレンジ株式会社) 写真のキャプション インタビューはパソコンを使用したビデオ会議システムで行われた 代表取締役の井上雅博さん(写真提供:パーソルチャレンジ株式会社) ゼネラルマネジャーの野原斗夢さん(写真提供:パーソルチャレンジ株式会社) 作業手順を解説したマニュアルは、いつでも確認できるようにオフィスに設置されている(写真提供:パーソルチャレンジ株式会社) 「備品の配置・置き場所の見える化」も配慮の一環だ(写真提供:パーソルチャレンジ株式会社) 人材支援グループで働く中津井亨さん(写真提供:パーソルチャレンジ株式会社) 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用 第3回  これまで、障害者雇用の考え方や支援制度、雇用率の算定対象・方法などについて紹介してきました。  いよいよ今回は、実際に雇用を進めていくうえで必要な、職務の選定や創出の方法、職場のバリアフリー化についての留意点やポイントを、実際に寄せられた相談ケースとともにまとめました。 (協力)中央障害者雇用情報センター 障害者雇用支援ネットワークコーディネーター 礒邉豊司さん、内田博之さん Q1 障害のある人に、どんな職務を任せればいいのかわかりません。 A 障害の種類や程度だけではなく、「一人ひとりの状況」に応じて決めることが重要です。  一般的には、各障害の特性によって不向きな職種もありますが、障害者一人ひとりの具体的な障害状況やスキルの習得状況、本人の希望・意欲などによっても異なってきますので、担当者は「障害者に向いている仕事、向いていない仕事というものはない」という考え方のもと、総合的に職務を決めていく姿勢が大事です。  雇用の第一歩として職場の配慮を検討するときには、まず障害ごとに一般的にいわれる特性を念頭に置くとよいでしょう。 ●肢体不自由  移動が少なく座って行えること ●視覚障害  視覚的判断や頻繁な移動の必要がないこと ●内部障害  長時間の残業や交代勤務がないこと ●知的障害  簡単な判断で行えること ●精神障害  対人対応が少なく短時間勤務が設定しやすいこと  はじめて雇用して就労が始まった現場では、「本人に手空きの時間をつくらない」ことに留意しましょう。現場の指導者からよく聞く悩みが「予想をはるかに上回る速さで作業を終わらせてしまい、手持(ても)ち無沙汰(ぶさた)になってしまった」というものです。あらかじめ、時間的に融通のきく作業の種類や量を多めに確保しておくことをおすすめします。  さらに仕事に慣れてくると、職場環境の改善や就労支援機器の導入、適切な教育訓練などにより、特性上は不向きだといわれていた職種に従事するようになる障害者も数多くいます。実際に、視覚障害者が「拡大読書器」や「画面読み上げソフト」を活用して事務をこなしたり、知的障害者がパソコン作業を行ったりしている職場も増えています。 Q2 専門職の多い職場なので、障害者が従事できる仕事がありません。 A 新たな職務をつくり出します。まずは現場の業務を細かく洗い出してみましょう。  どの職場にも、コピー・シュレッダー作業や、メール便などの仕分け・配送、資料のセット・封入などの作業があると思います。部署間で一緒にできる作業を一括することで、社内業務を合理化でき、社員が本来業務に専念できるメリットもあります。  まずは各部署に対し、業務把握をするためのアンケート調査の実施をおすすめします。社員に一日の業務スケジュールを細かく書き出してもらうことも有効です。仕事の棚卸しを行い、障害者が従事する職務を選定しましょう(図表1・2)。また、実際に従事するときのために、業務マニュアルの有無も確認しておきましょう。 ケース1 相談者:従業員500人弱の建設会社 相談内容:障害者に任せられる仕事がない。 改善策:現場を確認したところ、営業2部署で発注作業をする補助事務員が来客時のお茶出しも担当し、そのたびに作業が中断していた。そこで障害者(精神障害)を1人採用し、お茶出し・応接室管理や事務作業の後方支援を担当。結果として補助事務員の残業時間が大幅に減った。 ケース2 相談者:従業員300人規模の製造業の管理課社員 相談内容:直接雇用したいが、どのような仕事を準備したらよいか。 改善策:管理課で行う一日の作業を細分化し、作業時期、作業頻度、数量、所要時間、必要なパソコンスキルやソフト、難易度などを一覧として作成。また、年間の業務スケジュールに基づいた課内の作業量の繁閑も把握し、1人分の作業を選定した。 Q3 障害者のための職場のバリアフリー化が、どこまでできるか不安です。 A 職場のバリアフリー化には、さまざまな支援や工夫が可能です。  職場すべてのバリアフリー化は、現実的には困難なケースも多いと思われることから、緊急性などを考慮し、障害者本人ともよく話し合いながら改善を進めるとよいでしょう。バリアフリー化にこだわり過ぎて、障害者雇用が進まない事態は避けるべきです。ソフト面での解決策もありますので、柔軟に検討してみましょう。 ケース1 相談者:自社ビルを持つ従業員千人規模の会社 相談内容:会社の玄関入口と歩道の間に5センチ程度の段差がある。車いすの社員は自力で乗り越えられていたが、車いすの仕様を変えた途端に転倒の恐れが出てきた。スロープの設置を検討したが、公道にはみ出してしまい増設できない。 改善策:スロープを増設したり、段差を削ったりすることができないことから、車いすが通るときに社員がいつでも手伝えるよう、社員研修を行い、連絡体制を整えた。  また、バリアフリー化の経費は助成金の対象になる場合がありますので、当機構各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にご相談ください。 ◆障害者作業施設設置等助成金  スロープの設置、トイレの改造など、障害者の障害特性による課題に対応した施設または作業設備の設置・整備を行う費用の一部に対して助成 ◆重度障害者等通勤対策助成金  住宅の貸借、住宅手当の支払い、駐車場の賃貸など、通勤を容易にするための措置を行う場合に要する費用の一部に対して助成  中央障害者雇用情報センターでは、事業主などの方々に、視覚・聴覚障害などの障害特性に応じた就労支援機器の貸出しも行っています。最近は聴覚過敏のある方向けのヘッドフォン機器なども多く貸し出されています。ご利用ください。 【図表1】 既存の職務から従事する職務を選んだ事例 1 企業名 A社 2 業種 医療用機器の製造業 3 雇用事業所 製品の生産工場 4 従業員数 190人 5 障害者の雇用状況と経緯  法定雇用障害者数は4人。現在、経理部署に内部障害者(心臓機能障害3級)を雇用しているが、あと3人の障害者を工場で新規雇用することを目ざしている。  当初、事務部門で身体障害者の雇用を計画し、求人を出したが、適当な人材が確保できなかったため、ハローワークの助言で募集する障害者の範囲を知的障害者や精神障害者まで広げ、製造現場で雇用を目ざすこととし、職務を再点検した。 6 整理票の作成 作業名 内容 要件1(身体負担) 要件2(理解・判断) 要件3(コミュニケーション) 要件4(資格・スキル) 時間頻度 施設設備 適否 部品の検品 部品形状やキズの確認 普通 必要 必要 不要 終日 否 部品収納・ピッキング 数字・アルファベットを判読し、収納ピッキングを行う 負担やや大 必要 必要 不要 終日 否 配送用の段ボール準備 配送製品に合わせて段ボールを組立て 負担やや大 不要 不要 不要 随時 適 部品の組立て 5種類の製品の組立て 立ち作業 必要 必要 不要 終日 工具使用 否 輸入製品の開梱・ラベル貼り・箱詰め 100単位の製品を10個単位に詰め直す 負担やや大 不要 不要 不要 終日 適 指示書作成の数値入力 エクセル帳簿に商品aE個数・日付を入力 負担小 必要 必要 PC操作 随時 否 段ボールの解体・整理 段ボールと梱包用発泡スチロールを分別し、整理 負担やや大 不要 不要 不要 随時 適 7 職務の決定  知的障害者や精神障害者も含めて配置を考えていくことから、@判断要素が少ないこと、A納期に縛られないこと、B作業内容の変化が少なく恒常的に作業量を確保できることなどを選定ポイントにして、「輸入製品の開梱・ラベル貼り・箱詰め」に従事してもらうこととした。また、作業が確保できない日については、「配送用の段ボール準備」「段ボールの解体・整理」も補助業務として従事してもらうこととした。 【図表2】職務を創り出した例 工場での職務例(箱詰め・清掃) 1日のスケジュール 時間時間 作業内容 8:30 段ボール組立て 9:30 ラベル貼り・箱詰め 12:00 昼食 13:00 段ボール解体・整理 14:00 工場内清掃 16:00 ゴミ回収 17:00 終了 事務所での職務例(事務補助・清掃) 1日のスケジュール 時間時間 作業内容 9:00 事務所の清掃 9:30 会議室の清掃 10:00 パソコンデータ入力 11:00 社内メール仕分け 12:00 昼食 13:00 書類ファイリング 14:00 パソコンデータ入力 15:00 シュレッダー作業 15:30 ゴミ回収・運搬 16:00 終了 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています〜 入所日など  国立職業リハビリテーションセンター、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、障害別に年間約10回の入所日を設けています。応募締切日や手続きなどの詳細については、お気軽にお問い合わせください。 ○遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター  埼玉県所沢市並木4-2 職業評価課04-2995-1201 http://www.nvrcd.ac.jp/ 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター  岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課0866-56-9001 http://www.kibireha.jeed.or.jp/ 募集訓練コース 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査・物品管理コース 建築系 建築CADコース ビジネス情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース 会計ビジネスコース OAビジネスコース 職域開発系 物流・組立ワークコース オフィスワークコース 販売・物流ワークコース ホテル・アメニティワークコース 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 資材管理コース ビジネス情報系 OAビジネスコース 会計ビジネスコース システム設計・管理コース ITビジネスコース 職域開発系 事務・販売・物流ワークコース 厨房・生活支援サービスワークコース オフィスワークコース 物流・組立ワークコース サービスワークコース ○訓練の期間は……  「システム設計・管理コース」、「ITビジネスコース」(ともに国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は2年間、そのほかの訓練コースは1年間の訓練です。 ○対象となる方は……  「ビジネス情報系」の「視覚障害者情報アクセスコース」(国立職業リハビリテーションセンター)、「IT ビジネスコース」(国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は、視覚障害のある方を対象とし、「職域開発系」の各コースは、高次脳機能障害のある方、精神障害のある方、発達障害のある方、知的障害のある方を対象としています。そのほかの訓練コースは、知的障害のある方を除くすべての方が対象です。 事業主のみなさまへ  両センターでは、障害のある方の採用をお考えの事業主と連携し、個々の事業主の方のニーズや訓練生の障害特性などに応じた、特注型のメニューによる職業訓練を行っておりますのでご活用ください。ご利用いただく事業主の方には次のような支援も行っております。 ■障害特性に応じた特別な機器・設備の配備や作業遂行に関する支援方法のアドバイスなど、円滑な受入れに関する支援 ■雇入れ後の職場定着に向けた技術面でのフォローアップとキャリアプランづくりのための支援 詳細については…http://www.jeed.or.jp/disability/person/person07.html ◆令和2年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催されます。 詳細は、「地方アビリンピック」ホームページをご覧ください。 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更される場合があります。 都道府県 開催日 会場 北海道 10月3日(土) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬〜11月上旬頃 @青森職業能力開発促進センター Aホテル青森 岩手 7月19日(日) 8月2日(日) @岩手職業能力開発促進センター A岩手県立産業技術短期大学校 宮城 7月11日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 中止 山形 7月7日(火) 山形ビッグウイング 福島 11月7日(土)(予定) 福島職業能力開発促進センター 茨城 12月5日(土) 12月6日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月11日(土) 8月2日(日) @栃木職業能力開発促進センター A文星芸術大学 群馬 8月1日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 中止 千葉 11月28日(土) 千葉職業能力開発促進センター 東京 2月6日(土)(予定) @東京障害者職業能力開発校 A職業能力開発総合大学校 神奈川 10月29日(木) 10月31日(土)(予定) 神奈川障害者職業能力開発校(予定) 新潟 未定 未定 富山 7月11日(土) @富山市職業訓練センター A富山県技術専門学院 石川 10月18日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 中止 山梨 10月4日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 中止 岐阜 中止 静岡 中止 愛知 中止 三重 11月29日(日)(予定) 三重職業能力開発促進センター 滋賀 11月28日(土) 滋賀職業能力開発短期大学校 京都 1月30日(土)(予定) @京都府立京都高等技術専門校(予定) A京都府立京都障害者高等技術専門校(予定) 大阪 中止 兵庫 8月8日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 中止 和歌山 中止 鳥取 6月25日(木)(一部競技は別日開催) 鳥取県立福祉人材研修センター 外 島根 7月11日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 6月27日(土) 7月4日(土) @国立吉備高原職業リハビリテーションセンター A岡山職業能力開発促進センター 広島 12月〜1月頃(予定) 広島障害者職業能力開発校(予定) 山口 10月17日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月19日(土) @徳島職業能力開発促進センター A徳島ビルメンテナンス会館 香川 1月下旬〜2月上旬 @かがわ総合リハビリテーションセンター A香川県立香川中部養護学校 愛媛 7月11日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 7月4日(土) 高知職業能力開発促進センター 福岡 7月11日(土) 7月18日(土) @福岡県立福岡高等技術専門校 A福岡障害者職業能力開発校 佐賀 1月下旬(予定) 佐賀職業能力開発促進センター 外 長崎 7月11日(土)(予定) 長崎職業能力開発促進センター(予定) 熊本 中止 大分 10月24日(土) 大分東部公民館 宮崎 7月4日(土) 宮崎職業能力開発促進センター 鹿児島 7月19日(日)(予定) @鹿児島職業能力開発促進センター(予定) A鹿児島障害者職業能力開発校(予定) 沖縄 未定 未定 ※2020年6月11日現在 開催地によっては、開催日や種目などで会場が異なります 参加選手数の増減などにより、変更される場合があります 地方アビリンピック 検索 障害者職業総合センター職業センターで実施している職業リハビリテーション技法開発に関する報告書・マニュアルのご紹介 障害者職業総合センター職業センターは、これまでの支援技法では効果が現れにくい発達障害、精神障害、高次脳機能障害のある方に対する新たな職業リハビリテーション技法の開発と改良を行い、幅広く支援技法の普及を行っています。毎年その成果物を発行しています。 ◎当機構研究部門ホームページに、開発の成果をまとめた実践報告書及び支援マニュアルを掲載しています。  全文やすぐに使える資料等がありますので、ダウンロードしてご活用ください。  URL http://www.nivr.jeed.or.jp/center/center.html 発達障害のある方への支援技法開発の成果 「問題解決技能トレーニングの改良」 実践報告書No.34(令和2年3月発行)  発達障害のある方を対象にこれまで主に集団トレーニングとして実施されていた「問題解決技能トレーニング」の改良に取り組み、個別相談やジョブコーチ支援などの個別の支援に活用できるよう技法の開発を行いました。その実施方法、留意点、支援事例などをまとめた実践報告書を作成しました。  巻末には、個別の支援で使用するシートや資料を収録したCD-Rを添付しています。 精神障害のある方への支援技法開発の成果 「気分障害等の精神疾患で休職中の方のための 日常生活基礎力形成支援〜心の健康を保つための生活習慣〜」 支援マニュアルNo.20(令和2年3月発行)  気分障害などの精神疾患のある休職中の方が復職準備の過程で適切な生活習慣を確立し、復職後も安定した職業生活を送るため、その生活習慣を維持する支援として「日常生活基礎力形成支援」の技法開発に取り組み、その支援の目的、内容、実施方法、留意点などをまとめた支援マニュアルを作成しました。  巻末には、支援者の方にわかりやすくご活用いただけるように、グループワーク場面の映像(DVD)、使用する配布資料などのCD-Rを添付しています。 高次脳機能障害のある方への支援技法開発の成果 「アシスティブテクノロジーを活用した高次脳機能障害者の就労支援」 実践報告書No.35(令和2年3月発行)  高次脳機能障害者の支援課題の一つである「補完手段の習得」について、高次脳機能障害のある方の状況やニーズをふまえ、携帯電話やスマートフォン、パソコンなどの機器を補完手段とする「アシスティブテクノロジー」を活用した支援技法の開発に取り組み、その内容などをまとめた実践報告書を作成しました。  別冊として、具体的な操作方法などを解説した「活用ガイドブック(DVD付き)」を添付しています。 【P15-18】 グラビア 地域の暮らしを支える物流センターで働く 株式会社CWS(奈良県) 取材先データ 株式会社CWS 〒632-0082 奈良県天理市荒蒔町(あらまきちょう)96-1 TEL 0743-68-3400 FAX 0743-68-3335 写真・文:官野貴  「株式会社CWS」は、「市民生活協同組合ならコープ」のグループ会社として奈良県を中心に事業を展開。ならコープのコールセンターなどのテレマーケティング業務、商品仕分けや配送といった物流センターでの業務、生協の宅配業務などを行い、地域の暮らしを支えている。同社では、障がいのある従業員35人(知的26人、精神8人、身体1人)が活躍しており、会社全体の障がい者雇用率は7・66%(2019年6月時点)。これまでに「障害者雇用優良事業所」として、2014(平成26)年に、当機構理事長努力賞表彰、2015年に奈良県知事表彰、2019年に当機構理事長表彰を受けている。  今回は、「ならコープ田原本(たわらもと)物流センター」で働く知的障がいのある2人を訪ねた。2人は、キャリア18年のベテランだ。物流センターでは、組合員からの注文に基づいた商品仕分けや各支所への配送などを行っている。冷凍部門で宅配商品のピッキングを担当する細川(ほそかわ)真一(しんいち)さん(36歳)は、「仕事はたいへんですが、楽しいです。今後も続けていきたいです」と話す。また冷蔵部門で、保冷容器の積みつけ作業と搬送作業を担当する森岡(もりおか)諒(りょう)さん(37歳)は、「職場では後輩もでき、一緒に働くことが楽しいです。今後も仲間と一緒に働いていきたい」と話してくれた。  人事教育グループでマネジャーを務める北村(きたむら)明生(あきお)さんは、「障がいがあることへのサポートは必要ですが、過剰なサポートをする必要はありません。個人として尊重することが大切です」と語る。同社では、2019年も障がいのある従業員5人を採用するなど、積極的な障がい者雇用が続いている。 ※本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社CWS様の要望により「障がい」としています 写真のキャプション 物流センター内の仕分けラインは室温7℃以下に保たれている 奈良県中部の田原本町にある「ならコープ田原本物流センター」 細川さんはデジタルピッキングを担当。ジャングルカート(左)に収められた商品のなかから、ランプの指示(中央)に従って商品を取り出し、保冷容器に収めていく(右) 細川さんは、仕分けの最終工程を一人で行っている。作業の遅れがライン全体に影響するため責任は重大だ 障がいのある従業員と職場のリーダー(中央)は、月例で面談を行っている。面談に立ち会う北村さん(右) 緊張しながらも、インタビューに応じてくれた細川さん(左)と森岡さん(右) 森岡さんは、宅配商品が収められた保冷容器をラインから取り出し(中段)、台車に積む「積みつけ」作業(右下)と、集荷場へ運ぶ「搬送作業」(左下)を担当している 集荷場で保冷容器をドライバーに受け渡す。ここから県内のならコープ各支所へ配送される 森岡さんはキャリアアップを目ざして、商品ラックへの補充にもチャレンジしている 【P19】 エッセイ*【第一回】 重度障害とともに 〜ある日、突然の交通事故〜 又野(またの)亜希子(あきこ) 『ママの足は車イス』著者/ 元幼稚園教諭・保育士  結婚2年目、28歳のときに保育園へと向かう通勤途中の交通事故により頸髄を損傷し、重い障害が残った。  生きる希望を失いかけたなか、2006年に新しい命を授かり、無事に第1子を出産。車いすで家事や子育てをしながら、全国で実体験に基づいた講演活動や、「埼玉県家庭教育アドバイザー」として子育て支援活動をしている。  著書に、『ママの足は車イス』、『ちいさなおばけちゃんとくるまいすのななちゃん』(ともに、あけび書房)がある  結婚して2年が過ぎた2004(平成16)年夏。保育園へと向かう通勤途中の交通事故により頸髄(けいずい)を損傷し、車いす生活を余儀なくされました。立つことも歩くこともできないばかりか、左手にたった2kgの握力が残されただけで、手にも麻痺があります。思いもよらぬ人生を歩むことになってしまった私は、絶望のあまり「この世から消えてしまいたい…」そんな思いに苦しめられていました。事故から16年が経とうとしているいま、あのころからは想像もできないほどの幸せを感じて生きています。講演活動や子育ての支援活動などの社会活動を行っている障害者の一人として、障害者が自分らしく輝ける社会を願い、自分の経験や思いを3回に渡り綴(つづ)らせていただきます。 二度にわたる頸椎(けいつい)大手術  二度の大きな手術を行いました。手術から目が覚めるとすぐに医師より説明がありました。頸髄を損傷していること、これからは歩くことや立つことはできないため、車いすを使って生活していくこと……。いったい自分に何が起こったのか、まったくわかりませんでした。  本当の意味で“生きるための戦い”が始まったのは、二度目の手術が終わってからでした。事故以来、薬の投与により意識が朦朧(もうろう)としていた私でしたが、それからは生きていくために体力を取り戻していかなければなりません。息苦しさ、めまい、痛み、心も身体も休まることはひとときもありませんでした。 現実を突きつけられた苦しいリハビリ  着替えや排泄、入浴、足となる車いすの操作など、いままで何気なくしてきたことのすべてを、リハビリによって習得していかなくてはなりません。  実際に車いすに乗ってリハビリが始まると、「私のこれからの生活は、こうなるのか」と現実を突きつけられた思いでした。特に、膀胱直腸障害により排泄が自分の意志でできなくなってしまったことは、28歳の私にとって一番辛く、リハビリするのも精神的にかなりの苦痛でした。この歳にもなって失禁をしている私を、夫はどう見ているのか……。夫への申し訳なさから何度も離婚を申し出ました。しかし、夫は話を聞いているのかいないのか、多くを語るわけでもなく、ただただ病院に来ては私の心に寄り添ってくれていました。  リハビリが始まったころは、「こんな私が自立なんて絶対にできるわけがない」と投げやりになっていました。しかし、人間とはすごいものです。不自由な体にも順応していきます。退院するころには、入院していた7カ月間の日々の積み重ねがしっかりと身について、身の回りのことが自分でできるようになっていました。そしてリハビリが終了するころには、車の運転や料理にも挑戦し、夫と過ごすこれからの生活が少し楽しみにもなってきました。 恐怖の退院  退院というと、一般的には喜ばしいことです。しかし、障害のある身体で社会復帰する私にとっては、恐怖でした。「社会に出たら、周囲の人は障害者の私をどのような目で見るのか」、「バリアがたくさんある社会に、車いすで本当に外出できるのか」と、いざ退院が迫ると、いつも先の見えない不安に襲われていました。「迷惑をかけるばかりでだれの役にも立てない私は、家族や友だち、社会のお荷物になってしまうのではないか」と、生きていくことに後ろ向きになってしまうほどでした。  しかし、退院すると夫はもちろん、友人が大きな支えになりました。「私は車いすだからみんなに迷惑をかけてしまう」……バリアを張っているのは私のほうでした。友人は「私たちの関係はいままでと何にも変わらないよ!!」と、いろいろなところへと連れ出してくれました。 (つづく) 【P20-25】 編集委員が行く 地域に根ざした障害者雇用の推進力 〜世田谷区障害者雇用促進協議会の取組みを訪ねて〜 世田谷区障害福祉部、株式会社オオゼキ、世田谷区障害者就労支援センターしごとねっと(東京都) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 取材先データ 世田谷区障害福祉部 障害者地域生活課 障害者就労支援担当(世田谷区障害者雇用促進協議会事務局) 〒154-8504 東京都世田谷区世田谷4-21-27 TEL 03-5432-2425 FAX 03-5432-3021 株式会社オオゼキ 本社・下北沢店 〒155-0031 東京都世田谷区北沢二丁目9-5 TEL 03-6407-2511(代表) FAX 03-6407-2520 世田谷区障害者就労支援センターしごとねっと 〒154-0004 東京都世田谷区太子堂2-15-1 野村三軒茶屋ビル8階 TEL・FAX 03-3418-1432 編集委員から  今回は、時代の要請に応えながら、地域に根ざした「ユニバーサル就労」の展開を目ざす「世田谷区障害者雇用促進協議会」の取組みを取材した。 写真:官野貴 Keyword:事業主団体主体の障害者雇用促進、地域就労支援ネットワーク、区市町村障害者就労支援センター、行政の役割、企業との連携、多様な働き方の追求 POINT 1 企業・支援機関・学校・行政が連携し、地域の協議会を設立 2 区行政のバックアップを受けながらネットワーク構成団体が連携 3 多様な就労を意図した活動を展望  障害者雇用の質的向上が求められるなか、地域の企業、産業団体、学校、支援機関、行政機関などが、「真」の連携を図りながら協働していくことが、その鍵を握っている。東京都世田谷区では、2003(平成15)年から障害者雇用・就労の促進に賛同する多くの機関・団体が参加して「世田谷区障害者雇用促進協議会」(以下、「協議会」)を創設。多様なプログラムや企画を実施しながら、世田谷区の地域特性を活かした障害者雇用・就労を推進している(23ページ表)。  また、同区では「せたがやノーマライゼーションプラン(世田谷区障害者計画)」のなかで、働きたくても働くことがむずかしい人のために、多様な働く場を創出する「ユニバーサル就労」の開発を計画しているが、そこでも企業と関係者との連携が大いに期待されている。今回は、時代の要請に応えながら地域に根ざした実践を展開している協議会の取組みを取材することにした。 世田谷区の障害者雇用・就労支援  小田急線・京王井の頭線下北沢駅から至近の区の施設、北沢タウンホールで、世田谷区障害福祉部障害者地域生活課障害者就労支援担当係長の八木(やぎ)早知子(さちこ)さん、同主任の林田(はやしだ)千春(ちはる)さんが出迎えてくれた。  まず、世田谷区の障害者雇用・就労の取組みについてうかがう。人口約92万人(2020年4月現在)の世田谷区は障害者施策全般においても先駆的だ。障害者の就労支援にたずさわり8年目の八木さんは、同区における取組みのキーパーソン。  世田谷区では、障害種別に応じた三つの障害者就労支援センターを設置し、それぞれの専門性を活かしながら互いに連携して支援を行っている。障害者就労支援センターが区内の就労支援施設などとネットワークを組み、その中核として就労準備から定着支援、企業開拓まで一貫した体制をつくり、就労支援に取り組んでいるところも特徴である。  また、区内には二つの精神科病院があることから、さまざまな団体が精神障害者に対する先駆的な取組みを行い、就労支援において注力しているのも特徴的だ。  世田谷区では、知的障害者、精神障害者を区が短期間雇用するチャレンジ雇用や、一般就労へのステップアップを目ざす外郭団体による「保護的就労」と呼ばれる事業を実施。さらには、テレワークなどによる在宅就労や障害特性に応じた短時間アルバイト、地域住民とともに活動するメール便の配達など、雇用の可能性が広がっているなかで、「身近な地域での多様な働き方の拡大」が課題だ。「せたがやノーマライゼーションプラン」と「世田谷区障害福祉計画」では、就労支援のおもな事業展開として、就労支援ネットワークの強化、職場定着・生活支援の充実、「ユニバーサル就労」の開発など、地域特性をふまえた具体的な計画が提示されている。読み進めていくと「協議会」のくだりがある。「産業、教育、行政などが連携して、企業への障害理解と雇用促進に取り組んでいる」と明記。障害者、雇用者双方に対する支援の必要性が高まるなかで同協議会の活動に期待が寄せられる。 協議会の意義と区の役割  八木さんが「『協議会』設立呼びかけ」と題する2003年11月の文書を用意してくれた。呼びかけ4団体の代表である世田谷区長、東京商工会議所世田谷支部会長、東京青年会議所世田谷区委員会委員長、東京都立青鳥(せいちょう)養護学校(現在は特別支援学校)長の連名である。呼びかけ人代表の「決意表明」では、「企業と地域と行政のパートナーシップのもとに障害者雇用を推進すること」を力強く表明している。  障害者総合支援法に基づく地域自立支援協議会では、相談支援などと並んで就労支援部会を設置する自治体が多いが、世田谷区では、就労支援部会は設置していない。協議会の構成員としてかかわりながら、事務局をになうことで「公」の責任を果たす。それを基盤に事業主団体を中核に、支援機関や学校などとのネットワーク型で主体的な活動を進めている。 構成員である支援機関から見た意義  今回、協議会の取組みについてうかがうために同席してくださったのが、おもに精神障害者を対象にした「世田谷区障害者就労支援センターしごとねっと」センター長の湯浅(ゆあさ)順子(じゅんこ)さん。2010年からしごとねっとに加わり、その活動を通じて障害者雇用促進協議会に参加している。前任者を継いで、2019年度からセンター長を務める。支援機関としては協議会のプログラムに専門的な見地からかかわることが多いという。そんな湯浅さんから見て協議会によるネットワークの魅力は、青年会議所のような通常の障害者支援業務ではあまり縁のない人たちとの関係ができること。ユニバーサル就労の今後の展開に向けて、かかわりが持てることの意義が大きいという。もちろん、構成メンバーが広がれば広がるほど、一方で関係性が薄まっていくことには留意していかねばならないと強調する。  精神障害者支援の豊富な経験から、精神障害者の就職件数は伸びているが、それでも緒(しょ)についたばかりだという。障害者就労支援は、障害種別によってはある程度ノウハウが積み上げられ「パッケージ的」に提供できる状態にはなっている。ただし、精神障害者の就労支援については、一般論を伝え続けるだけでなく実際に「平場(ひらば)」で話し合っていくことの重要性を強調する。「平場」は個別の「職場」であることも少なくないだろうが、協議会もまた、そのような性格を帯びた舞台であるのかもしれない。 現会長の協議会とのかかわり  世田谷区の障害者施策と就労支援ネットワークを概観したうえで、協議会会長の石田(いしだ)彌(わたる)さんにご登場いただく。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から遠隔でのインタビューとなったが、実は、2017年2月に世田谷区が主催した「せたがや障害者・まち交流塾」のパネルディスカッションでご一緒させていただいたことがある。そこでは、パラリンピックを基軸に、協議会会長として障害の有無を超えた交流のまちづくりを熱く語っていた姿が印象的だった。  石田さんは、2016年まで、惣菜や弁当を製造・販売する会社「利恵(りえ)産業」の会長を努めていた。同社では1980(昭和55)年ごろに創業者の助川(すけがわ)貞三(さだぞう)氏が、社員の親戚に依頼されて知的障害者を雇用。当初は、社員は障害者の対応に自信がなく反対の意向だったが、創業者の熱意で実現した。石田さんは当時のことを「障害者のレベルに合った仕事と環境を整えることは、障害のない人の個性に合わせることと同じであり、雇用前に心配した苦労はほとんどなかった」とふり返る。  その後も肢体不自由や聴覚障害者など、紹介された障害者はすべて採用し、法定雇用障害者数を継続して達成。あえて一番苦労したことを挙げるなら、「障害者に接することを敬遠する障害のない同僚の意識を変化させることだった」と話す。  協議会については、発起人団体の一つである東京青年会議所世田谷区委員会から、石田さんに障害者雇用に取り組む企業のОBとして「障害者雇用の実態」の講演を依頼され、初めて協議会の存在を知ることになったという。2013年に前協議会会長が退任する際、後継者は、それまでの活動から期待が寄せられた石田さんに白羽の矢がたった。  「障害のある方とともに働くうえで、『特別な対応が必要であり、とてもむずかしくてできない』という風潮を感じ、その誤解を解く活動ができればとの気持ちで会長に就任させてもらった」と石田さん。常に他人と接するには「笑顔と笑い声」がとても重要と感じていることから、障害のある方とはそれが特に必要だと感じる経験をしたという。協議会の活動の場面では、「額に皺(しわ)を寄せて緊張している姿ではなく、仮に健常者しかいない場面でも、そばに障害のある方がいるつもりで『笑顔と笑い声』のある活動をしようと思った」と語る。  協議会の活動での手応えをうかがうと、「初めて障害者雇用に取り組んだ企業に事例発表をしていただくと、『障害者の指導やその働く姿を目にすることを通して健常者の仕事意識が向上した』と一様にいわれる。障害者雇用にたずさわってきて本当によかった」と協議会の意義を強く実感するという。  「企業が障害者雇用を行うなかで、まじめに取り組んでいただければ、トライ&エラーで構わないと思う。そのうえで課題や問題が発生したときは、障害者にその原因を見出すのではなく、一丸となって迅速かつ最善の取組みをすることが重要」。また、「障害者雇用を支援するうえでは、特に初めて障害者雇用に取り組む企業のハードルを低くすることを心がけている」と強調する。 モットーは「普段着の障害者雇用」  石田さんは協議会活動で、世田谷区の障害者雇用の担当者と議論するなか、障害者の少日数(週1日・2日)・短時間(1時間・2時間)勤務の実現に思いが至ったという。就労意欲があっても短時間や少日数しか働くことができない障害者がいるので、そのような障害者が働ける場所を提供したいという願いがある。また、それは障害者が働く姿を同じ地域のなかで見られる状況の実現であり、区民の多くが障害のある人の存在を身近に感じることができ、共生社会の発展にも寄与するというもの。「取組みはまだ初期段階だが、中小企業や商店が多い世田谷区の特徴を活かせると思う」と話す。石田さんは、これを「普段着の障害者雇用」と名づけている。かしこまった、ハードルの高い取組みではなく、地域のありふれた風景として障害者雇用が実現することへの熱い願いがこの表現に込められている。 協議会活動を通した自身の変化  「協議会活動を通して石田さんご自身に生じた変化は?」との問いかけに、石田さんは「当初は障害者雇用を普通の雇用と区別して考えていた。しかし中学校卒業者の70%が3年後には退職している現実を聞き、障害の有無にかかわらず、雇用・就労については個人に合わせた対応を考え、ていねいに取り組む必要があると思うようになった。特別な対応ではなく、普通の意識で障害者雇用がなされる社会にならなければいけない」とふり返る。  そのため、「数多くの企業が障害者を一人でもよいので雇用する社会の実現が望ましい」との思いが一層強くなったという。障害者と健常者が交じりあって働く職場が増えていくことを石田さんは展望する。  障害者に関して活動する団体の活動が雇用に直結しないものであっても、それらの団体の活動を協議会が知り、会員団体のそれぞれの立場から情報を収集・分析し、障害者の対応に知識と経験がない「雇用者」が障害者理解を深めることに役立てる。また、収集した情報は他の活動とも共有することで、それらの団体に障害者雇用の応援団になっていただく。このような段階をふみ、「普段着の障害者雇用」の実現に向かって進みたいと石田さんは想いを語ってくれた。 地域ネットワークの実践例を訪ねて  協議会の活動について理解したところで、世田谷区の障害者雇用を特色づける取組み事例についてうかがいたい……そんな願いに応えてくださったのが「株式会社オオゼキ」だ。世田谷区を中心に都内全域、神奈川県、千葉県に店舗展開する「町のスーパーマーケット」。1957年創業で、2018年度の世田谷区雇用促進フォーラムにおいて感謝状が贈呈された地元の有力企業でもある。  オオゼキは、各店長が独立した経営者として店づくりを行い、それぞれの売場担当が「顧客」ならぬ「個客」主義を徹底して追求した結果、自ずと品揃えや売り方が独自の進化を遂げていくという経営理念を有している。  また、「全ての従業員が一人ひとりのお客様に正面から向き合い、謙虚に教えを請い、全身全霊でお応えする」という姿勢が徹底されており、なるほど、北沢タウンホールから数分ほどの同社管理本部を訪れた私たちにも、社員のみなさんの精一杯の歓迎の挨拶が響いてくる。 地域ネットワークを背景に積極的にチャレンジ  1階がスーパーマーケットオオゼキ下北沢店であるビルの3階から、社員専用の階段を元気に降りて来られたのが、総務人事部採用課長の市川(いちかわ)秀哉(ひでや)さん。  市川さんは、採用担当として2013年から7年務めるベテランだ。オオゼキでは、前述の「個客」主義と並んで、本社から強い指示を出すのではなく、各店長が創意と工夫を凝らす「個店」主義が重視されているという。店長経験もある市川さんは、こうした個々の取組みをサポートしつつ、正規社員で1200〜1300人を有する同社の障害者雇用を進める責任者でもある。  さっそく、世田谷区の障害者就労支援のネットワークについてうかがうと、就労支援機関は「通訳のような存在」という。例えば、ある定着課題について、障害のある従業員にどのように伝えたらよいか迷ったとき、事業所と本人の間に立って伝えてくれる存在、すなわち通訳である。支援機関からは、「例えば『だいたい』とか『いつも通り』といった曖昧な表現はわかりにくいですよ」といった助言を得ることができる。  市川さんの職場定着の基本ポリシーは「一人ひとりに合わせていく」。その際に地域ネットワークに裏づけられたサポートが欠かせない。  市川さんが担当になって最初の障害者雇用は、湯浅さんの前任者、松田(まつだ)由紀子(ゆきこ)前しごとねっとセンター長への働きかけがきっかけだった。「障害者雇用をどうしたらいいか」という相談からのスタート。下北沢店での精神障害者の雇用第一号を皮切りに他の店舗へと広がっていった。その経緯からも、障害者雇用では世田谷区のネットワークとの関係が深いことを改めて実感させられる。 適切な支援を得て働く  市川さんの案内で管理本部の事務室を訪ねる。ここは全店舗の管理をになう重要拠点。6年目を迎える石橋(いしばし)洋晃(ひろあき)さん(40歳)は月曜日から金曜日まで1日5時間勤務する。体調の関係で休んでいたこともあったが、現在は元気に仕事をこなしている。  市川さんは、定着の決め手は「業務日誌」だという。日報として、例えばコピーの作業が困難だったいう課題が伝えられると、ただちに話し合い、問題解決を進める。個々の障害者の働きやすさを実現するための「一人ひとりに合わせていく」というポリシーがここでも活かされている。  仕事をするうえで、同僚から「助かったよ」と返されるのがとても嬉しいという石橋さん。  今度は、同じビル1階の下北沢店のバックヤードへ。配送された青果の袋詰めに取り組むのは、就職して1年ほどの鈴木(すずき)毅(たけし)さん(51歳)。月曜日から木曜日までの1日5時間勤務だ。手慣れた手つきで野菜を袋詰めしていく。人間関係や生活リズムの維持に注力しながら、重要な仕事をこなす。ほかの社員から「ありがとう」と声をかけられると「役に立っている」ことを実感できるという。  市川さんは、こうした定着支援のノウハウについて、就労支援機関からの適切な支援を受けるとともに、企業同士の支え合いの必要性についても強調する。障害者雇用に取り組む前は、たしかにハードルが高く感じることもあるが、同じ課題に向き合う企業同士が成功体験も失敗体験も共有しながらサポートを展開することでそのハードルを乗り越えていくことができる。協議会会長の石田さんの考えにも通じている。  さらに、今後の障害者雇用について、同社での実践をふまえ、次のような期待を抱く。せっかく働く意欲があっても、障害状況や体調の面から、1カ月80時間、すなわち週20時間労働ではハードルが高すぎる障害者が少なくないことを実感しているとのこと。障害者雇用率制度上は週20時間以上30時間未満の場合には0・5カウント(※1)になるが、「例えば、1カ月50時間労働で0・3カウントとするような工夫があってもよいのではないか」。事業所が障害者雇用を短時間で抑え込もうという意図はまったくなく、1カ月50時間であればチャレンジできる障害者に活躍してもらいたいという願いである(※2)。 多様な働き方への展望  障害者雇用現場の取材を終えて、再び世田谷区の八木さん、林田さんと今後の区の障害者雇用・就労の展望について意見交換をした。  区の障害者就労の課題は、「週20時間以上の求人条件では働くことのできない人や在宅勤務を希望する障害者の就労支援だ」と八木さんはいう。  世田谷区は、障害者のみならず、生活困窮者、生きづらさを抱えた若者に対してもそれぞれの働き方を目ざす多様な支援施策を展開している。こうした就労支援機関の充実の反面、複合的な課題のある方は複数の支援機関に登録していて、知らない間に就職(あるいは離職)していてもその情報が共有できない、そもそも支援対象者の特性により適切に対応できる機関や支援があるのではないか……といった課題が見えてきた。そこで、支援対象者を障害者、生活困窮者、生きづらさを抱えた若者と分けるのではなく、「働きたくても働きづらい方」として包括的に支援する考えに基づき、世田谷区版ユニバーサル就労の構築を目ざすことになった。2020年度から具体的な施策として「せたJOB応援プロジェクト」を開始し、求人情報の共有などにより連携した支援を行いながら、「ユニバーサル就労」の構築に向けて継続して検討を続けるという。同プロジェクトの概要は、図に示す通り。 協議会から見た多様な就労機会  実はこの世田谷区のプロジェクトへの期待は、協議会会長の石田さんのインタビューにも登場する。「世田谷区は居住地域であり、中小企業や商店街が多いなどの特徴があるので、例えば障害者雇用の広がりを法定雇用率達成義務のある企業で線引きすると、障害者雇用が地域に広がる状況にはならない。また居住地域としてはよくても移動が厳しい障害者にとっては近くに職場が少なく、テレワークを除くと就労としてはよい環境とはいえない」。世田谷区にある10近い商店街が、障害者との交流を持つ活動をしていることがわかったという。雇用に直結する活動だけでなくても、さまざまな団体の活動を知り、そのことを通して障害者理解を深めることができると石田さん。多様な障害のある人が「さまざまな働き方を通して仕事で社会とつながりを持って生きていくことで人生が豊かに感じられる」との考え方で障害者雇用をとらえてみると、「世田谷区は『普段着の障害者雇用』の実現にとってよい環境にある」。この共通の問題意識で、協議会の歩みはさらに力強くなるのだろう。 取材を終えて  新型コロナウイルス感染症拡大で、『働く広場』の取材も厳しい状況が予想されたなか、取材先のみなさまのご協力で、感染予防に最大限配慮しながら実現できた。協議会会長の石田さんとは、遠隔でのやり取りとなったが、地域に根ざして、あらゆる関係者を包み込む包括性の高いインクルーシブな働き方への確実な手応えを感じた。新型コロナウイルスによって人と人との距離が広がり、情報伝達も機械的になりがちであるが、方法や機会は変わっても、やはり、人と人、組織と組織をつなぐ思いと目標の共有化の重要性をかえって浮き彫りにしたともいえる。世田谷区の障害者雇用の推進に向け、地域に根ざした力強い活動は、未曽有(みぞう)の状況を乗り越えていくに違いない。 ※1:重度以外の身体、知的障害者および精神障害者の場合(精神障害者については特例措置の要件に該当しない場合) ※2:週10〜20時間未満で働く障害者を雇用する事業主の方へ支給される「特別給付金」という制度があります。詳しくは当機構HPでご覧ください JEED特例給付金 検索 表 世田谷区障害者雇用促進協議会の概要  世田谷区が障害者の就労支援を進めるなかで、地域における障害者の雇用促進を図るため、賛同する多くの団体との連携により2003年に設立。 ◆構成団体  地域の産業団体、特別支援学校、区、ハローワーク、関係機関、福祉施設ほか団体 ◆協議会の取り組み ・障害者雇用促進の啓発活動 ・障害者雇用に向けた事業者・施設・関係団体・行政の連携とネットワークづくり ・工賃アップに向けた取組み、支援 ◆協議会の活動 ・総会(年1回) ・雇用支援プログラム(年数回) ・雇用促進フォーラム(年1回) ・企業啓発(随時) ・常任幹事会(年3回程度) ◆障害者雇用支援プログラム  協議会、ハローワーク渋谷(渋谷公共職業安定所)、世田谷区の共催により実施している企業向け研修プログラム。  「障害者を雇用したいけれど、何から手をつければいいのか?」、「障害がどういうものか分からない」など、障害者雇用を考える企業の不安や疑問にこたえ、障害理解や障害者雇用を促進するため、障害者施設や特別支援学校の見学会、障害理解や障害者雇用制度に関する研修会などを、年間を通して実施。 出典:世田谷区ホームページ.世田谷区障害者雇用促進協議会(2019年8月1日最終更新)から筆者作成 図「せたJOB応援プロジェクト」の概要 せたJOB応援プロジェクト 事業の概要 障害者就労支援センターがその専門性を活かして区内企業等の開拓を行い、週20時間以上の就労以外の多様な働く場を創出。その条件で働きたい人をつないで継続的な就労を支援 対象者 就労意欲はあるが、一般的な求人等で就労することが困難で、区の障害者就労支援施設等に登録され、そこからの支援が受けられる人 切り出した業務を4つの働き方に分類 @通ってJOB:企業等で短時間で働く A自宅でJOB:内職やテレワークなど自宅で働く B集つどってJOB:みんなで集まって共同作業 C単発JOB:単発又は短期間の業務 ◆分類された業務は、就労支援ネットワークを通じて各就労支援施設等で共有 ◆就労支援ネットワークでマッチングができなかった場合には、障害者就労以外の分野の各支援機関等と一層連携して支援を行う ユニバーサル就労の実現をめざす 出典:世田谷区障害福祉部障害者地域生活課 八木早知子氏提供資料から筆者作成 写真のキャプション 世田谷区障害者就労支援担当係長の八木早知子さん 世田谷区の障害者交流イベントで講演する石田彌会長(写真提供:世田谷区役所) 世田谷区障害者就労支援センターしごとねっとセンター長の湯浅順子さん オオゼキの管理本部で事務作業を行う石橋洋晃さん 「株式会社オオゼキ」総務人事部採用課長の市川秀哉さん オオゼキ下北沢店 オオゼキ下北沢店のバックヤードで働く鈴木毅さん 【P26-27】 省庁だより 令和2年度 障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 1 障害福祉サービス等の確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進 2兆1304億円(1兆9795億円) ○障害福祉サービス等の確保、地域生活支援等 1 障害児・障害者に対する良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保 1兆5842億円(1兆4542億円)うち障害児支援関係3420億円(2810億円)  障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスや障害児支援を総合的に確保する。 2 地域生活支援事業等の拡充【一部新規】 505億円(495億円)  障害者の理解促進や意思疎通支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じ、事業の拡充を図る。 3 障害福祉サービス提供体制の基盤整備(社会福祉施設等施設整備費) 174億円(195億円)  障害者等の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、就労移行支援事業等を行う日中活動系事業所やグループホーム、障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備を促進するとともに、耐震化整備を進めることにより防災・減災対策を推進する。 (参考)【令和元年度補正予算案】 ○障害者支援施設等の非常用自家発電設備及び給水設備の整備等 83億円  災害時に入所者等の安全を確保するため、要配慮者の入所する障害者支援施設等の非常用自家発電設備及び給水設備の整備を進めるとともに、災害に備えるための大規模修繕等の防災・減災対策等を進める。 4 障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供 2604億円(2460億円)  心身の障害の状態を軽減し、自立した日常生活等を営むために必要な自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)や障害児入所施設等を利用する者に対する医療を提供する。また、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討する。 5 特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1724億円(1681億円)  特別児童扶養手当及び特別障害者手当等の支給を行う。 6 障害福祉の仕事の魅力発信【新規】 15百万円及び地域生活支援事業の内数  障害福祉分野における多様な人材の参入を促進するため、障害福祉の仕事の魅力を伝えるためのパンフレット・動画等の作成や、地域の関係機関等と連携し、障害福祉の現場を知るための体験型イベント等の開催を行う。 7 障害福祉分野におけるロボット等導入支援 52百万円(15百万円)  障害福祉の現場におけるロボット技術の活用による介護業務の負担軽減等を推進するため、ロボット等の施設・事業所への導入を支援する。 (参考)【令和元年度補正予算案】 ○障害福祉分野におけるロボット等導入支援 2・0億円  障害福祉の現場におけるロボット技術の活用による介護業務の負担軽減等を推進するため、ロボット等の施設・事業所への導入を支援する。 ○障害福祉分野におけるICT導入支援 2・0億円  障害福祉分野における生産性向上に向けた取組を促進するため、障害福祉サービス事業所等におけるICT導入を支援し、その効果を測定・検証するモデル事業を実施する。 8 障害児・障害者虐待防止、権利擁護などに関する総合的な施策の推進 @障害者虐待防止の推進地域生活支援促進事業のうち6・1億円(6・1億円)  都道府県や市町村で障害児・障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、専門性の高い職員による家庭訪問や相談等を行うとともに、地域の関係機関の協力体制の整備、関係機関職員への研修等の実施、障害児・障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制の強化を図る。 A障害児・障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 12百万円(13百万円)  国において、障害児・障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修等を実施する。 B成年後見制度の利用促進のための体制整備 地域生活支援事業の内数  成年後見制度の利用に要する費用の補助や法人後見に対する支援等を推進することにより、成年後見制度の利用を促進する。 9 重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 8・9億円(8・9億円)  重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行う。 10 障害児支援の推進 @障害児施策におけるインクルーシブな支援の推進【一部新規】 地域生活支援事業の内数  児童発達支援センターにソーシャルワーカーを配置し、子育て世代包括支援センター等や市区町村子ども家庭総合支援拠点等との連携を促進するとともに、発達の気になる子どもと家族の相談支援を実施する。  また、子育て親子等が集まる施設・場へ巡回し、障害の早期発見・早期対応のための助言や戸別訪問等による支援を実施する。 A医療的ケア児への支援の拡充【一部新規】地域生活支援促進事業のうち 1・4億円(1・3億円)及び54百万円(75百万円)  地域において、医療的ケア児を受け入れる体制を促進するため、医療的ケア児等コーディネーターの配置や医療的ケア児等への支援者の養成を行うとともに、地域で関係者が協議を行う場の設置や、医療的ケア児等に対応する看護職員確保のための体制構築、医療的ケア児等の家族への支援を行うなど、総合的な支援を実施する。  また、ICTを活用し、外出先でも適切な医療を受けられる体制の整備を図る。 B聴覚障害児支援の推進 ア 聴覚障害児支援のための中核機能の強化【新規】 地域生活支援促進事業のうち1・7億円  保健・医療・福祉・教育の連携強化のための協議会の設置や保護者に対する相談支援、人工内耳・補聴器・手話の情報等の適切な情報提供、聴覚障害児の通う学校等への巡回支援などを行う聴覚障害児支援のための中核機能の整備を図る。 イ 手話通訳等の体制整備 地域生活支援事業の内数  手話通訳者等の派遣などの意思疎通支援や手話奉仕員養成研修の実施など、引き続き市区町村における手話通訳等の体制整備を図る。 11 教育と福祉の連携の推進【一部新規】 地域生活支援事業の内数及び9百万円(3百万円)  市町村内における家庭・教育・福祉の連携促進及び地域支援対応力の向上を図るため、発達障害、医療的ケア児等について協議を行う場の設置や福祉機関と教育機関等との連携の役割を担う「地域連携推進マネジャー」を市町村に配置する。  また、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、発達障害における教育分野や福祉分野の情報を一元管理し、保護者等がその情報を活用しやすくするためのポータルサイトを構築する。 12 障害者施策に関する調査・研究の推進 4億円(5億円)  障害者施策全般にわたり解決すべき課題について、現状と課題を科学的に検証・分析し、その結果を政策に反映させていくため、調査・研究等への補助を行う。 ○障害児・障害者の自立及び社会参加の支援等 1 芸術文化活動の支援の推進 4・1億円(3・0億円)  障害者文化芸術活動推進法(平成30年6月施行)を踏まえ、芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)を通した障害者の社会参加を一層推進するため、地域における障害者の芸術文化活動への支援(相談、研修、ネットワークづくり等)を強化するとともに、全国に展開する。また、全国障害者芸術・文化祭開催県にコーディネーターを配置し、各地域でのサテライト開催との連携促進を図る。 2 障害者自立支援機器の開発の促進 1・2億円(1・2億円)  障害者自立支援機器の実用的製品化を促進するため、真に必要な機器のニーズ発掘のためのモデル事業を新たに実施することによる企業のシーズと障害者のニーズとのマッチング強化や機器の開発企業に対する支援を実施するとともに、特に障害者のニーズが高い製品を特定し、その開発に取り組む企業に対する支援を強化する。 3 視覚障害者等の読書環境の向上【一部新規】 3・0億円(3・8億円)及び地域生活支援促進事業のうち1・9億円  「視覚障害者等の読書環境の整備の促進に関する法律」(読書バリアフリー法)の成立(令和元年6月公布・施行)を踏まえ、障害者の読書環境の向上を一層推進するため、障害者が利用しやすい図書の製作やサピエ(※)を活用した提供を促進するとともに、新たに、点字図書館と公共図書館の連携強化や、肢体不自由等の障害や読字障害も含めた視覚障害者等の身近な地域における読書環境の整備等を推進する。 4 障害児・障害者の社会参加の促進【一部新規】 27億円(26億円)及び地域生活支援事業等の内数  手話通訳者・要約筆記者・盲ろう者向け通訳・介助員養成の支援、身体障害者補助犬の育成等により、障害児・障害者の社会参加の促進を図る。 2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策の推進 216億円(214億円)(※地域生活支援事業計上分を除く) 1 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築【一部新規】 6・4億円(5・7億円)  精神障害者が地域の一員として安心して自分らしく暮らせるよう、住まいの確保支援を含めた精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。このため、障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、精神科病院、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築し、地域の課題を共有した上で、地域包括ケアシステムの構築に資する取組を行う。  また、新たに、精神保健福祉士等を精神科病院等に配置し、精神障害者の一般住宅での継続的な地域生活を実現するためのモデル事業等を実施する。 2 精神科救急医療体制の整備 17億円(17億円)  地域で生活する精神障害者の病状の急変時において、早期に対応が可能な医療体制及び精神科救急情報センターの相談体制を確保するため、引き続き地域の実情に応じた精神科救急医療体制を整備する。  また、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。 3 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 190億円(189億円)  心神喪失者等医療観察法に基づく医療を円滑に行うため、引き続き指定入院医療機関を整備し、地域偏在の解消を進める。  また、指定医療機関の医療従事者等を対象とした研修や指定医療機関相互の技術交流等により、更なる医療の質の向上を図る。 4 てんかんの地域診療連携体制の整備 15百万円(8百万円)  てんかんの治療を専門的に行っている医療機関を「てんかん診療拠点機関」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各診療拠点機関で集積された知見の評価・検討を行うため「てんかん診療全国拠点機関」を設け、てんかんの診療連携体制を整備する。 5 摂食障害治療体制の整備 12百万円(10百万円)  摂食障害の治療を専門的に行っている医療機関を「摂食障害治療支援センター」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援センターで集積された知見の評価・検討を行うため「摂食障害全国基幹センター」を設け、摂食障害の診療連携体制を整備する。 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています ※サピエ:視覚障害者等が、インターネットを活用して点字・音声図書をダウンロードできるシステム 【P28-29】 研究開発レポート 調査研究報告書No.153「障害のある求職者の実態等に関する調査研究」 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門 1 はじめに  障害のある求職者の実態については、精神障害者等に限定した報告はあるものの、障害のある求職者全体を対象にした全国的な調査結果は近年報告されていない状況にあります。  また、障害者雇用では、障害者の実態、希望に応じて安心して安定的に働き続けられる環境を整備していくことが課題になっており、障害のある求職者が職場でどのような合理的配慮や労働条件等を希望しているかを明らかにすることが課題改善のために必要となっています。さらに、職場での合理的配慮に関しては、求職者側だけでなく、受入れ側である事業所の課題認識や提供している合理的配慮についてもあわせて検討することが必要になっています。  この調査研究は、ハローワークに新規求職申込みを行った障害のある求職者の実態について全国調査を行い、あわせて厚生労働省が事業所を対象に実施した「平成30年度障害者雇用実態調査結果」データの二次分析を行うことで、障害のある求職者の実態や雇用する事業所側の合理的配慮等の現状を検討しました。 2 障害のある求職者の実態調査結果より  この実態調査は、ハローワークに新規求職申込みのあった障害のある求職者について、ハローワーク担当者が職業相談等において把握した事例情報を2回に分けて所定の調査票に入力することにより実施しました。調査内容は、求職者の基本情報(27項目)、前職の状況(22項目)、希望する労働条件等(19項目)および就職状況(25項目)から構成し、各項目には回答選択肢を設定しました。調査票は全国47都道府県のハローワーク417所から回収し、障害のある求職者4962人分のデータ(個人情報を除く)を収集しました。  求職者の障害状況を身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他の障害の五つで区分し、重複計上(重複障害のケースは該当する障害にそれぞれ計上)、重複なし(単一障害のみ)、重複障害で集計すると表1の通りとなりました。  就職にあたって必要としている配慮と就職後の職場での配慮を見ると、表2の通りそれぞれの障害により必要な合理的配慮は異なり、それぞれの障害特性を反映した結果となっています。表2の代表的な配慮項目とは、選択率が20%以上でかつ障害種類別のデータ分析において5%水準で有意に多いと判定した項目としました。  就職にあたって重視する労働条件等では、障害種類にかかわらず「職種・仕事の内容」が最も多く、次いで「障害への理解・配慮」となっています。 3 平成30年度障害者雇用実態調査データの二次分析結果より  障害者雇用について課題認識のある事業所が全体に占める比率は、実際に障害者を雇用しているかどうかにかかわらず、精神障害>知的障害、発達障害>身体障害という結果となりました。障害別に見ると、精神障害者の雇用に課題認識のある事業所が最も多いことが明らかになりました。  雇用障害者に対して何らかの配慮を実施している事業所が全体に占める比率は、身体障害>精神障害>知的障害>発達障害という結果になり、発達障害については配慮を実施している事業所が半数にも満たず、発達障害への配慮は実施されにくい現状が浮き彫りになっています。  実施している配慮の内容では、どの種類の障害者に対しても“配慮している”と回答した事業所に限定して障害別による実施状況を比較することにより、表3の通り障害別の代表的な配慮項目が明らかになりました。代表的な配慮項目とは、選択率が20%以上でかつ5%水準で有意差を認めた(複数の障害別の間で有意差を認めた場合は最上位の障害)項目としました。なお、発達障害については代表的な配慮項目を認めることができませんでしたが、この結果は上述のように発達障害の特性に応じた配慮を認識することが難しいという実態の反映ではないかと考えます。 4 おわりに  上記の調査結果から障害のある求職者が必要としている配慮と事業所が提供している配慮のそれぞれの状況を俯瞰(ふかん)すると、両者に共通して多いのは「能力が発揮できる仕事への配置」となっています。働く側にとっては能力が発揮できる仕事に就けるような配慮を必要とし、雇う側にとっては能力を発揮してもらえる仕事となるような配慮が必要であり、このような関係が職場での合理的配慮の基本となっていると考えます。  この調査研究報告書には、障害のある求職者の実態調査結果として、上記の五つの障害別のほか、さらに詳細な障害種類別(視覚障害・聴覚言語障害・肢体不自由・内部障害・気分障害・統合失調症・てんかん・高次脳機能障害・ASD【自閉症・アスペルガー症候群・広汎性発達障害】・ADHD【注意欠如・多動性障害】・難病)の93項目の集計データを掲載しています。 ※「調査研究報告書No.153」は、http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/houkoku/houkoku153.htmlよりダウンロードできます ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp) 表1 障害のある求職者の障害状況 障害名 重複計上 重複なし 身体障害 29.0% 27.4% 知的障害 13.1% 11.4% 精神障害 47.4% 42.4% 発達障害 12.9% 9.1% その他の障害 4.0% 3.2% 重複障害 6.4% ※重複障害:表中の5つの障害のうち2つ以上重複していること 表2 障害のある求職者が職場で必要としている代表的な配慮項目 障害名 [希望]必要としている配慮項目(選択率) [就職]職場での配慮項目(選択率) 身体障害 視覚障害 能力が発揮できる仕事への配置(43.2%) 移動のための配慮(21.6%) (5%水準で有意に多いと判定した項目がなかった) 聴覚言語障害 職場でのコミュニケーションを容易にする 手段や支援者の配置(50.0%) (5%水準で有意に多いと判定した項目がなかった) 肢体不自由 能力が発揮できる仕事への配置(37.1%) 能力が発揮できる仕事への配置(41.3%) 内部障害 通院時間の確保、服薬管理など雇用管理上の配慮(48.4%) 通院時間の確保、服薬管理など雇用管理上の配慮(43.8%) 調子の悪いときに休みをとりやすくする(44.5%) 調子の悪いときに休みをとりやすくする(36.3%) 短時間勤務など労働時間の配慮(23.5%) 知的障害 能力が発揮できる仕事への配置(49.5%) 能力が発揮できる仕事への配置(50.4%) 職場でのコミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置(37.3%) 職場でのコミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置(33.6%) 業務内容の簡略化などの配慮(33.8%) 業務内容の簡略化などの配慮(35.3%) 業務遂行の支援や本人、周囲に助言する者等の配置(28.4%) 業務遂行の支援や本人、周囲に助言する者等の配置(23.5%) 上司や専門職員などによる定期的な相談(20.2%) 精神障害 調子の悪いときに休みをとりやすくする(54.0%) 調子の悪いときに休みをとりやすくする(50.5%) 通院時間の確保、服薬管理など雇用管理上の配慮(37.1%) 通院時間の確保、服薬管理など雇用管理上の配慮(38.6%) 短時間勤務など労働時間の配慮(28.8%) 短時間勤務など労働時間の配慮(27.0%) 発達障害 能力が発揮できる仕事への配置(47.0%) 能力が発揮できる仕事への配置(48.9%) 職場でのコミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置(39.8%) 職場でのコミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置(43.5%) 業務遂行の支援や本人、周囲に助言する者等の配置(24.9%) 業務遂行の支援や本人、周囲に助言する者等の配置(34.8%) 業務内容の簡略化などの配慮(22.2%) 業務内容の簡略化などの配慮(33.7%) 上司や専門職員などによる定期的な相談(20.7%) 上司や専門職員などによる定期的な相談(25.0%) その他の障害 通院時間の確保、服薬管理など雇用管理上の配慮(48.9%) (5%水準で有意に多いと判定した項目がなかった) ※網掛け部分は両欄に共通している配慮項目を示す。 (注)重複障害による他障害の影響を除外するため、障害別の場合は単一障害のみのケースを対象に、身体障害種類別の場合は単一障害種類のみのケースを対象にデータ分析を行った。 表3 事業所で提供している代表的な配慮項目 障害名 配慮項目 選択率 身体障害 短時間勤務等勤務時間の配慮 51.5% 通院・服薬管理等雇用管理上の配慮 50.7% 配置転換等人事管理面についての配慮 48.0% 能力が発揮できる仕事への配置 47.9% 休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮 43.3% 職場内における健康管理等の相談支援体制の確保 36.0% 職場での移動や作業を容易にする施設・設備・機器の改善 28.4% 駐車場、住宅の確保等通勤への配慮 27.1% 知的障害 短時間勤務等勤務時間の配慮 50.0% 能力が発揮できる仕事への配置 46.6% 業務実施方法についてのわかりやすい指示 43.3% 工程の単純化等職務内容の配慮 42.1% 業務遂行を援助する者の配置 31.7% 関係機関等、外部機関との連携支援体制の確保 27.1% 精神障害 短時間勤務等勤務時間の配慮 52.8% 通院・服薬管理等雇用管理上の配慮 49.8% 能力が発揮できる仕事への配置 46.8% 配置転換等人事管理面についての配慮 45.6% 職場内における健康管理等の相談支援体制の確保 35.6% 関係機関等、外部機関との連携支援体制の確保 27.5% 発達障害 該当する項目なし 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 国土交通省 新幹線に車いす用フリースペース  国土交通省は、新幹線の新たなバリアフリー対策の基本方針を発表した。すべての新幹線に車いす利用者がグループで乗車できる「車いす用フリースペース(仮称)」を設けるほか、販売方法の改善も図る。JR各社とは既に基本合意しており、早期実現を目ざす。  車いす利用者らが参加する実証実験を通じて席数や車内のレイアウトを検討。既存の座席を取り外すなどして、グループで快適に利用できるスペースを設け、車いすのまま窓際まで移動できるようにする。夏ごろまでに省令やガイドラインを改正する方針。改正後に導入される新車両は設置が義務化され、既存車両は努力義務となる。  また、電話や窓口での事前申込みが必要だった車いす対応座席の販売方法も、インターネットでの申込みを可能にするほか、車いす対応座席を当日でも車いす利用者用に確保して、優先的に購入できるようにする。 地方の動き 山形 障害者が手がけた135品目カタログを配布  山形県は、県内の障害者就労施設の利用者がつくった製品を販売する「障がい者就労施設商品カタログ」を4500部作成した。26施設の135品目の逸品を写真つきで紹介し、商品の販路拡大を図る。  カタログはA4判カラー刷り20ページ。千円未満から3千円以上まで価格帯ごとに分けた。県産米粉と大豆粉でつくったクッキーや、無農薬栽培し加工した一味唐辛子のほか、ジャム、ワイン、巾着、木製三輪車など多彩な商品がそろう。商品カタログは県内のコンビニや各総合支庁の窓口などで無料配布。県のホームページでも閲覧できる。 静岡 農業で障害者雇用ジョブコーチ育成  静岡県は、農業分野での障害者雇用を進めるため、雇用する農業法人側と人材を供給する障害者施設側とのマッチングを行うワンストップ窓口を設け、「農業版ジョブコーチ」を育成する。「農福連携」推進事業として、農業分野の人手不足解消と障害者の雇用促進をねらう。  農業版ジョブコーチは農業法人と障害者の間に立って、作業内容の切り分けや業務指示の具体化などについてアドバイスする。さらにJAとハローワーク、県の関係機関が連携し、共同で「農福連携ワンストップ窓口」を設置。農業法人の求人情報を障害者施設に開示してマッチングを行うほか、農家と障害者との交流の場もつくる。障害者には農業分野で就労するだけでなく、積極的に地域活動にもかかわってもらえるよう必要な環境整備を行う。 福岡 共同オフィスでテレワーク後押し  福岡県は「テレワーク」(在宅勤務)による障害者雇用を増やそうと、支援員が常駐するコワーキングスペース(共同利用型の仕事場)の開設に乗り出す。民間企業が一定期間、低額で利用できるようにし、柔軟な働き方の導入を後押しすることで、企業の人手不足解消や障害者雇用率の上昇につなげる。  障害者の法定雇用率(2・2%)を達成できていない複数の企業の利用を想定し、10人程度が業務可能なシェアオフィスのイメージで、一般的なICT(情報通信技術)を利用できる作業環境も整える。利用する企業に対しては、専門家がテレワークに適した障害者向け業務の切り出しについて助言などを行う。労務管理や緊急時の対応のための支援員も常駐。事業は民間に委託し、利用料の2分の1を県が助成する。 生活情報 富山 スマートフォンで読み上げインテックが視覚障害者支援アプリ  システム開発大手の「株式会社インテック」(富山市)は、視覚障害者支援のスマートフォンアプリ「これなにメモ」を公開した。知りたいものにスマートフォンをかざすと、同社の画像処理技術で何を撮影しているかを音声で読み上げる。アップルのアプリ配信サービスで無償提供する。  例えば、クレジットカードなどを事前に撮影しアプリに情報を登録しておくと、利用者は次回以降にスマートフォンのカメラで写すだけで何のカードかわかるようになる。知りたいものの一部でもカメラでとらえれば画像を認識。机などを写すと低いゆっくりとした音を流し、カードやCDなどを写すと高く速い音を出して撮影を補助する機能も持たせた。 働く D&I、安城市と障害者のテレワークに関する包括連携協定締結  「株式会社D&I」(東京都千代田区)は、愛知県安城市(あんじょうし)と、テレワークする障害者の雇用に関する包括連携協定を締結した。また、安城市はハローワーク刈谷(かりや)と、安城市障害者雇用連携協定を締結した。D&Iが展開する障害者テレワーク雇用サービスを活用し、地域の障害者が地域の企業で活躍できる長期的視点に立った持続可能な町づくりをし、障害者雇用施策を一体的に推進させる。 大阪 サントリーホールディングスが大阪に障害者雇用拠点を設置  「サントリーホールディングス株式会社」(大阪市北区)は4月、これまで東京都だけに置いていた知的障害者などを雇用するための拠点を、新たに大阪市に設けた。大阪本社内に知的障害者と精神障害者の雇用と活用を目的とする部署「コラボレイティブセンター」を開設し、新たに4人の障害者を採用。  東京本社(東京都港区)にある同じ部署には16人の障害のある社員が在籍し、首都圏の事業所で人手が必要になった場合に、データ入力や販促物の作製などを担当している。社員全体の働き方改革にも効果が見込めたとして、このたびエリアを広げ、採用も増やした。 本紹介 『会社を変える障害者雇用人も組織も成長する新しい職場づくり』  身体障害者で、障害者雇用の啓発活動を行っている紺野(こんの)大輝(たいき)さん(※)が『会社を変える障害者雇用人も組織も成長する新しい職場づくり』(新泉社刊)を出版した。紺野さんは脳性麻痺による身体障害がありながら大学卒業後、大手企業で障害者の採用・教育にたずさわった。これまでの経験を活かし、障害者の採用・活躍・定着支援策を多面的に解説している。四六判256ページ、1800円(税別)。 『ひと目でわかる実用手話辞典 第2版』  「NPO手話技能検定協会」が監修した『ひと目でわかる実用手話辞典 第2版』が出版された。手話技能検定試験に対応する約7000(単語約3000+例文約4000)の表現を掲載。わかりやすいイラストとあわせて手話の語源を説明している。さらに一緒に覚えておくとよいプラスαの知識も掲載し、手話ならではの表現法、指文字、アルファベットなども解説した。A5判、599ページ、2200円(税別)。 全国14エリアで開催します! 令和2年度 就業支援実践研修のご案内  当機構では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当している方を対象に、就業支援の実践力を高めるための「就業支援実践研修」を全国14エリアで開催します。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 対象者 労働、福祉、医療、教育などの関係機関の職員であって、2年以上の実務経験のある就業支援担当者 内容 【障害別コース:3コース(各コース1日間)】 ■精神障害コース ■発達障害コース ■高次脳機能障害コース エリア・時期・定員等 ■開催エリア:@北海道 A北東北 B南東北 C南関東 D北関東 E甲信越 F北陸 G東海 H近畿 I中国 J四国 K北九州 L南九州 M沖縄 ■開催時期:令和2年10月〜12月 ■日程・会場・定員等:詳細は当機構ホームページをご確認ください。 お申し込み ■申込方法:申込用紙は、当機構ホームページからダウンロードできます。希望するエリア及び障害別コースの申込先の地域障害者職業センターあて、メール、または郵便でお申込みください。 ■受講決定:メール、または郵便で順次連絡いたします。 ■申込受付期間・申込先:各エリアで設定しています。当機構ホームページをご確認ください。 ※定員を超えた場合は人数の調整をさせていただくことがあります。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、エリアによっては、開催時期の変更や開催を中止させていただくことがありますので、ご了承ください。 ステップアップ方式の研修体制となっています! 全国の地域障害者職業センター ステップ1 初めて担当する方 就業支援基礎研修 就業支援の基礎づくり 障害者職業総合センター 就業支援 課題別セミナー 新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上 全国14エリアの地域障害者職業センター ステップ2 2年以上実務経験のある方 就業支援実践研修 アセスメント力と課題解決力の向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害 コース 障害者職業総合センター ステップ3 3年以上実務経験のある方 就業支援スキル向上研修 障害特性に応じた 支援スキルの向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害 コース お問合せ先 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.or.jp URL: http://www.jeed.or.jp/ 就業支援実践研修 検索 ※紺野大輝さんが執筆したエッセイを、本誌2019年3月号〜7月号に掲載しています 働く広場 2019年3月号 検索 【P32】 掲示板 第28回職業リハビリテーション研究・実践発表会 (発表者募集のお知らせ)  職業リハビリテーション研究・実践発表会は、職業リハビリテーションに関する研究成果、実践報告の発表のほか、特別講演、パネルディスカッションなどを行うもので、毎年1回開催しています。昨年11月に開催した発表会には1,228人の方が参加されました。 (昨年度の概要は「職リハレポートNo.20」で確認できます。 →http://www.nivr.jeed.or.jp/vr/vrwebreport.html 職リハレポート 検索)  今年度の発表会は、令和2年11月24日(火)、11月25日(水)の2日間、東京都江東区有明の東京ビッグサイトで開催する予定です。現在発表者を募集しています。詳細は障害者職業総合センター研究部門ホームページをご覧ください。  なお、当日の参加者については、9月初旬にホームページなどで募集する予定です。 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 障害者職業総合センター 検索 「働く広場」読者アンケートにご協力ください。  本号に同封した「読者アンケート」用紙にご記入のうえ、当機構までFAXにてお寄せください。当機構ホームページからの回答も可能です。 ※カメラで読み取ったリンク先が、https://krs.bz/jeed/m/hiroba_enqueteであることをご確認のうえアクセスしてください。 EDITORS' NOTES 次号予告 ●この人を訪ねて  『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者で、「人を大切にする経営学会」会長でもある経済学者の坂本光司さんに、障害者雇用についてお話をうかがいます。 ●職場ルポ  ドコモグループの特例子会社で、清掃業務などを行う株式会社ドコモ・プラスハーティ(東京都)を訪問。医療現場並みの消毒清掃を行う現場を取材します。 ●グラビア  25歳のときに視力を失い、現在は盲導犬とともに生活をする千葉県庁(千葉県)にお勤めの久我裕介さんをご紹介します。 ●編集委員が行く  樋口克己編集委員が鼎談(ていだん)を開催。今年3月に本誌を退任されたカメラマンの小山博孝さん、ライターの清原れい子さんに、長年の取材を通じて感じたことなどをお聞きします。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ http://www.jeed.or.jp  メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 7月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和2年6月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団専務理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【P33】 ジョブコーチの養成・スキル向上研修のご案内  当機構では、職場適応援助者(ジョブコーチ)に必要となる専門的知識および支援技術を習得するための「職場適応援助者養成研修」、「職場適応援助者支援スキル向上研修」を実施しています。  各研修の詳細・お申込み先などは、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp)のサイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 ジョブコーチの養成・スキル向上研修 ステップ1 入門編・実践編 職場適応援助者養成研修 ◆訪問型職場適応援助者養成研修  (年6回)※うち4回は東日本と西日本に分けて実施 ◆企業在籍型職場適応援助者養成研修  (年6回)※うち4回は東日本と西日本に分けて実施 ※職場適応援助者として援助を予定している方が主な対象となります。 講義風景 ステップ2 スキルアップ編 職場適応援助者支援スキル向上研修 ◆訪問型職場適応援助者支援スキル向上研修  (年4回) ◆企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修  (年4回) ※職場適応援助者として1年以上の実務経験のある方が主な対象となります。 講義風景 ※申込期間終了分を除く 研修 日程 場所 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など(集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度) ※対象地域は以下のとおりです  東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山  西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 9月期 東日本対象:令和2年9月15日(火)〜9月18日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年9月15日(火)〜9月18日(金) 大阪府内予定 10月期 全国対象:令和2年10月27日(火)〜10月30日(金) 千葉県千葉市 12月期 東日本対象:令和2年12月15日(火)〜12月18日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和2年12月15日(火)〜12月18日(金) 大阪府内予定 2月期 全国対象:令和3年2月16日(火)〜2月19日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして1 年以上の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど <第2回> 令和2年8月4日(火)〜8月7日(金) 大阪府内予定 <第3回> 令和2年10月13日(火)〜10月16日(金) 千葉県千葉市 <第4回> 令和3年2月2日(火)〜2月5日(金) 大阪府内予定 <お問合せ先> (千葉市で実施する研修)職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.or.jp (大阪府で実施する研修)大阪障害者職業センター TEL:06-6261-5215  E-mail:osaka-ctr@jeed.or.jp 【裏表紙】 7月号 令和2年6月25日発行 通巻513号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)