【表紙】 令和2年7月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第514号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2020 8 No.514 職場ルポ 器具や手順を工夫、均一で高いレベルの清掃 株式会社ドコモ・プラスハーティ(東京都) グラビア アイメイトと、ともに働く 千葉県商工労働部 産業人材課(千葉県) 久我裕介さん 編集委員が行く 雇用の原点は「人」〜歴史をふり返る二人の知見と見聞〜 この人を訪ねて 「いい会社」とは何か 経営学者・千葉商科大学大学院中小企業人本経営(EMBA)プログラム長 坂本光司さん 「花火職人」沖縄県・知念(ちねん)秀昭(ひであき)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 8月号 【前頁】 心のアート なかまとほうおう 高橋百合子 (NPO法人サポートセンターどりーむ) 素材:紙、マジック/サイズ:縦600mm×横900mm 大切な仲間のそんざいという思いでほうおうがはばたいてくれるように動物とふれあってもらえるような作品です。 仲間とほうおうのようにふれあってくれることです! 高橋百合子(たかはし ゆりこ)  私はねこが大好きです。それと絵をかいているときが一番好きです。  細かい感じの作品をかくのが好き、色は明るい色、特にピンクや水色や黄色などが好きです。  私は15歳のときにいまの病気になりました。適応障害でストレスがたまると話ができなくなったり、くよくよしてぐったりすることもあります。そんな病気ですね。  いまだからこそ絵に出会えてもっともっと進化した作品やオリジナル性をもった作品をかいていきたいと思っています。作品をいろいろとかけるようになってすごくうれしいです。感謝です。これからもいろいろ挑戦していきたいです。目で見て感じて作品としてオリジナル性をもったものをかきつづけたいです。  可能性がひろがる世界でありますように……。 文:高橋百合子 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2020年8月号 NO.514 心のアート−−前頁 なかまとほうおう 作者:高橋百合子(NPO法人サポートセンターどりーむ) この人を訪ねて−−2 「いい会社」とは何か 経営学者・千葉商科大学大学院中小企業人本経営(EMBA)プログラム長 坂本光司さん 職場ルポ−−4 器具や手順を工夫、均一で高いレベルの清掃 株式会社ドコモ・プラスハーティ(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ−−10 はじめての障害者雇用 第4回 JEEDインフォメーション−−12 事例で見る∞動画で見る=w障害のある方への合理的配慮の提供』「障害者雇用事例リファレンスサービス」、「みんな輝く職場へ〜事例から学ぶ合理的配慮の提供〜」/ご活用ください! 障害者の職業訓練実践マニュアル グラビア−−15 アイメイトと、ともに働く 千葉県商工労働部 産業人材課(千葉県) 久我裕介さん 写真/文:官野貴 エッセイ−−19 第二回 重度障害とともに 〜子育てと講演活動から得た自信、そして生きがい〜 『ママの足は車イス』著者/元幼稚園教諭・保育士 又野亜希子 編集委員が行く−−20 雇用の原点は「人」 〜歴史をふり返る二人の知見と見聞〜 編集委員 樋口克己 省庁だより−−26 令和2年度障害保健福祉部予算の概要(2) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート−−28 気分障害等の精神疾患で休職中の方のための日常生活基礎力形成支援〜心の健康を保つための生活習慣〜 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル−−30 掲示板・次号予告−−32 読者の声 表紙絵の説明 「エイサー祭りの花火がキレイだったので、この題材を選びました。白い画用紙を黒く塗って、花火を綿棒と筆を使ってていねいに描きました。一生懸命に描いたので、選ばれてとてもうれしかったです。いまは小学校を卒業して中学生になったので、自分で制服を着るのがたいへんです」 (令和元年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.or.jp/) 【P2-3】 この人を訪ねて 「いい会社」とは何か 経営学者・千葉商科大学大学院中小企業人本経営(EMBA)プログラム長 坂本光司さん さかもと こうじ 1947(昭和22)年、静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院中小企業研究所所長などを歴任。専門は中小企業経営論、地域経済論、障害者雇用論。『日本でいちばん大切にしたい会社1〜7』(2008〜2020年、あさ出版)など著書多数。2010年に「人を大切にする経営学会」を設立、毎年「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を選定・表彰している。 独自の基準「五方よし」 ――2008(平成20)年に『日本でいちばん大切にしたい会社』を刊行して以来、数多くの著書で「いい会社」の独自の基準を示していらっしゃいますね。  私はこれまで約50年にわたり、8千社超の現地調査と企業研究を続けてきました。そのなかで、世間の好不況にかかわらず黒字経営を維持してきた「いい会社」というのは、総じて「人を大切にしている」ことがわかりました。人の活動には「目的・手段・結果」の三つがありますが、いちばん大事なのは「目的」です。では会社の目的は何でしょうか。それは業績ではありません。自分や周りの人を幸せにすることです。事業を行うときも「儲もうかるかどうか」ではなく「人を幸せにするか否か」で判断する。こうした経営理念を貫けば、おのずと業績もついてくるものです。  私は「いい会社」の基準として、いわゆる「(売り手・買い手・世間の)三方よし」ではなく「五方よし」を挙げています。  五方を優先順に並べると、@社員とその家族、A仕入れ先や協力企業などで働く社外社員とその家族、B現在顧客と未来顧客、C地域住民、とりわけ障がい者や高齢者などの社会的弱者、D出資者や関係機関。会社にかかわるさまざまな人たちを大切にする、となります。  私の本を読んだり講演を聞いたりした方たちからは、これまで多くの反響をいただいています。ある人は「自分の会社がうまくいかないのは、戦略や戦術ではなく、そもそもの会社のあり方に問題がありました」と直接メールをくれました。会社を倒産させてしまったという人からは「これまで何百冊という経営の本を読んで実践してきたつもりでした。でも先生の本を読んで、つぶれるべくしてつぶれたのだと納得しました」と。  ある母親から長文メールが届いたこともあります。「3人の子どもに障がいがあり、将来のことを思うと夜中に目が覚めて眠れないときもありました。でも先生の本を読んで、もしかしたら子どもたちも就職できるかもしれないという希望を持てるようになりました」と。私は涙が止まらなくなって、すぐに返信しました。一方で、九州に住む障がいのある女性からは「うちの会社にも来て、社長をほめてください」という手紙も来ましたね。 ――その後「人を大切にする経営学会」を立ち上げ、2010年からは毎年「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を選定・表彰しています。  私たちが表彰制度をつくったのは、世の中に「いい会社とは何か」を示すためでもあります。これまで世間一般に「いい会社」といわれてきた、いわゆる成長企業や好業績の企業というよりも、「正しいことを、正しく行っている会社」です。これを50項目の審査基準で可視化して、客観的に判断しています。実は応募するだけでもハードルは非常に高いんですよ。いずれも過去5年以上に渡って、「リストラ(人員整理)をしていない」、「仕入れ先などに一方的なコストダウンなどをしていない」、「営業利益・経常利益ともに黒字」などの六つの条件をすべてクリアしていることとしているため、かなり厳しい基準になっていると思います。審査も絶対評価です。  それでも応募数は年々増えていて、10回目となる今年は110社にのぼりました。社員やその家族、取引先からの応募が多く、よい傾向だと思っています。今年は表彰した企業も過去最大の20社にあがりました。  ちなみに私たちは、学会費や寄付などで運営をまかなっていますが、国などからの補助金などは一切もらっていません。「かぎりある血税は弱者のために」というのが信念です。私自身、全国各地の対象企業の現地調査にかかる交通費なども一切もらいません。毎年結構な負担ではありますが、限界になるまでずっと自費で行き続けるつもりですよ。 人にとって働く場とは ――応募資格にある六つの条件の一つには、障がい者雇用への取組みもありますね。  「障がい者雇用は法定雇用率以上である」という条件を挙げています。これには、二つのただし書きもついています。一つは、常勤雇用45・5人以下の企業で障がい者雇用をしていない場合は、障がい者就労施設などからの物品やサービスの購入など、雇用に準ずる取組みがあること。もう一つは、本人の希望などで障がい者手帳の発行を受けていない場合は実質で判断する、というものです。  会社の規模が小さいとか、諸般の事情があるというならば「間接雇用」や「みなし雇用」をするべきです。福祉作業所や就労支援施設に仕事を発注したり、そこから商品などを購入したりする取引を安定的に続けることです。  みなさんに考えてみていただきたい。人間の幸せというのは、人に「ありがとう」といい続ける人生ではありません。だれかに「ありがとう」といってもらえる人生です。「あなたのおかげだ」といわれる機会があるから、がんばれる。その機会が日常的に与えられるのが、働く場です。障がいがあってもなくても、働きたいと願うのは、幸せになりたいからです。会社を経営する人たちにはぜひ、こういう視点を持っていていただきたいと思っています。 ――現地調査をするなかで、「いい会社」だと感じるのはどんな職場ですか。  日々いろいろな企業を訪問していますが、いい会社かどうかというのは、会社に足をふみ入れたときに、半分ぐらいわかってしまいます。例えば、社内を流れる空気。いい会社はほんわかと温かく、そうではない会社は冷たい風が吹いている。これはプロではなくても感じると思いますよ。あとは社員の目つきや表情、社員食堂や休憩場所を見るとわかりますね。それから何といっても「いい会社」は、辞める人や転職していく人が圧倒的に少ないんですよ。職場環境を左右するのは経営者です。私は「経営者格差」といっています。  最近の話を紹介しましょう。コロナ禍(か)に陥ったとき、従業員50人ぐらいのある会社では、マスクと消毒液が配布されたのですが、それは社長さんの家族が一つひとつ、メッセージカードを添えて、ていねいに包装したものだったそうです。受け取った社員は「会社が私たちを守ってくれていると実感した」と話していました。彼らはきっと、「会社のために一層がんばろう」と思うでしょうね。 ――最後に、今後の抱負について教えてください。  これまで大学院などで数多くの社会人学生を受け入れ、学会や講演の活動を通じて全国各地に仲間が増えましたが、いい会社、いい経営者を増やすには、なにより教育が大事だと痛感しています。そこで今年度、千葉商科大学と「中小企業人本経営(EMBA)プログラム」を共同開講することができました。人を大切にする経営に関心のあるリーダーは、ぜひ応募してほしいと思います。今後は、「人を大切にする経営」をテーマにした月刊誌も発刊したいですし、人本主義(注)に立った新しい経営辞典もつくりたいと考えています。やりたいこと、やるべきことは、まだまだたくさんあります。 ※本誌では通常「障害」と表記しますが、坂本光司氏の要望により「障がい」としています (注)人本主義:業績や勝ち負けではなく、人をトコトン大切にする経営を基本にする思想 【P4-9】 職場ルポ 器具や手順を工夫、均一で高いレベルの清掃 ―株式会社ドコモ・プラスハーティ(東京都)― ドコモグループの特例子会社では、重度の知的障害のある社員たちが中心になって、感染防止も含めた高いレベルの清掃業務を行っている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 (写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ) 取材先データ 株式会社ドコモ・プラスハーティ 〒170-0013 東京都豊島区東池袋3-16-3 アーバンネット池袋ビル TEL 03-5954-7856 FAX 03-5954-8980 Keyword:特例子会社、知的障害、発達障害、清掃業務、ジョブコーチ、定着支援 POINT 1 重度の知的障害のある社員が取り組めるよう、清掃の器具や手順を工夫 2 安全に長く働き続けるために、学習支援やヨガを導入 3運営実績をフィードバックし、グループ各社の支援も ドコモグループの特例子会社  携帯電話サービスなど移動体通信事業で国内最大手の「株式会社NTTドコモ」(以下、「ドコモ」)グループが、障害者雇用を推進することを目的に2015(平成27)年に設立した「株式会社ドコモ・プラスハーティ」(以下、「ハーティ」)は、翌2016年に特例子会社として認定された。グループ全体の雇用率は2・38%だ(2019年6月1日現在)。  ハーティの大きな特徴は、重度の知的障害のある人を中心に雇用が進められたことだ。ハーティの全社員142人のうち障害者は97人(うち重度身体障害者2人)、このなかで70人は知的障害の重度判定を受けている(2020年4月1日現在)。手がけるおもな事業は、ドコモグループ自社ビル内の清掃業務と、グループ各社の障害者雇用・定着支援となっている。 1人の社員が会社設立に動く  ハーティの設立には、ある社員の熱意が大きくかかわっていたようだ。ハーティの事業運営部で業務推進部門担当部長を務める岡本(おかもと)孝伸(たかのぶ)さんである。  もともと岡本さんは、ドコモグループの人材派遣業務などをになう「ドコモ・サービス株式会社」に在籍していた。2009年のある日、岡本さんは新幹線で地方に向かう際、たまたま目にした本を買って車内で読んだ。その本というのが、ちょうど本誌「この人を訪ねて」のコーナー(今月号2〜3ページ)に登場する、坂本光司さんの『日本でいちばん大切にしたい会社1』だった。そこで紹介されていた、当時社員の7割が障害者だというチョーク製造会社「日本理化学工業株式会社」(神奈川県)のエピソードを読み、岡本さんは思わず涙があふれてきたという。  「実は、それまで障害者雇用というものをほとんど知りませんでした。私には娘がいますが、もし、娘に重い知的障害があって、でも本人が『働きたい』といったら、どうするだろうかと考えたのです」  それ以来、「障害者雇用のことが頭から離れなくなった」岡本さんは、自分の職場に障害者雇用の専門部署を立ち上げることを考えるようになったという。 だれが取り組んでも均一な清掃  まずは基本的なことから学んでみようと、岡本さんは、「東京中小企業家同友会」の障害者委員会(2017年に「多様な働き方推進委員会」へと名称変更)が開催していた自主勉強会に参加。そこで出会った福祉施設の関係者から、重度の知的障害のある人が取り組む清掃業務活動のことを聞き「これだ」と思ったそうだ。  その福祉施設で採用されていたのは「チャレンジドハウスキーピングシステム」という、障害者と健常者が一緒に作業を行う清掃方法だった。約30年前から医療環境整備に関する事業を手がける「東栄部品株式会社」(東京都)が開発し、全国各地の福祉施設(約40カ所)で導入されている。欧米などで使われている清掃器具を用いて、個々の力加減などに関係なく均一の清掃効果が期待できるという。薬剤は、人体に無害で高除菌力があるとされる製品を使用。「病院の手術室で行われるような感染防止を含めた高いレベルの衛生管理を、ハーティの清掃業務でも実践できます」と岡本さんは話す。  そして2012年、ドコモ・サービスはハーティの前身である「ハーティ推進担当」部署を設置し、ハローワークを通じて就労移行支援事業所から計6人を採用。自社ビルの事務室や休憩室の清掃業務を行うことにした。2015年にハーティとなってからは本格的に採用数を増やし、清掃箇所も食堂、廊下、トイレなどへと拡充し、清掃拠点も東京都・神奈川県・大阪府にあるドコモグループビル6カ所(各センター)に広がっている。  折しも、新型コロナウイルス感染症の問題が広がったいまは、この清掃方法に対する評価が一段と高まっているそうだ。  清掃業務の具体的なポイントを、列挙してみよう。  【失敗しない器具】…拭き掃除用の布生地は、雑菌が残りやすい綿ではなくマイクロファイバークロスを使用。クロスに薬剤を均等にしみこませるための専用の絞り機、拭き作業のときに手加減でムラができないハンドフレーム、高い場所も無理なく拭ける特殊なモップヘッドもある。イタリアから輸入されたカラフルな器具だ。  【効率的な機器】…面積の広いカーペット床用にはバッテリー式の掃除機を使用。操作性がよく、腰などへの負担も少ない。  【高品質の除菌洗剤】…おもな洗剤は、 今年3月に新型コロナウイルス感染症が拡大した「ダイヤモンド・プリンセス号」船内の除菌消毒にも使われた、カナダVIROX(バイロックス)社製の加速化過酸化水素含有除菌洗剤。除菌力が高く、人体に無害だとして国際宇宙ステーションでの使用も許可されているという。  【徹底した消毒区分】…ドアノブなど手の触れる場所は除菌洗剤で消毒、トイレの便器はバイオ消臭洗剤を使って臭いや雑菌繁殖を抑制。汚れ度合いに応じて3色のクロスを使い分ける。  【数値による品質管理】…トイレの見えない汚れを紫外線のブラックライトで確認。テーブルなどの拭き掃除後は、飲食店の衛生検査などで使用されるハンディ型の測定機器を使いチェック。「まな板以上」の数値を合格基準にしている。 「あせっちゃうんです」  ハーティを取材訪問したのは、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための外出自粛が解除されたばかりの6月上旬。再開したばかりの清掃業務は、この日は直接見学できなかったが、社員の1人、宮廻(みやざこ)高虎(たかとら)さん(22歳)に話を聞くことができた。  勤続4年目の宮廻さんは、実習で先輩たちにやさしくしてもらったことが好印象で、入社を決めたそうだ。「清掃の仕事は、最初からむずかしくありませんでした」とふり返る。朝は早いときは7時15分出社のため、起きるのがつらいときもあるが、「職場で仲よくなった同僚や先輩もいるので、助け合いながら、楽しく働いています。みんな明るくて、仕事熱心です」と笑顔を見せる。仕事上で気をつけていることについて聞くと「ぼくは作業しているとき、あせっちゃう癖があるので、注意しています。たまにコーチに声かけしてもらって直しています」と明かしてくれた。  「あせらない」、「あきらめない」、「あなどらない」  清掃業務は1チーム5〜6人で進めていくが、現場では、人によって苦手な作業があることがわかった。そこで、全員がひと通りの作業をやってみて、得意・不得意をチーム内でカバーし合えるような分担手順を考えた。岡本さんはいう。  「その一方では、ずっとできないだろうと思っていた作業が突然できるようになる人もいます。彼らの可能性や成長の兆しを、コーチも見逃さないようにしています。『重度の知的障害があるから、このぐらいまでしか無理だろう』という勝手な判断や安易な線引きをしないよう、行動指針もつくりました。キーワードは『あせらない』、『あきらめない』、『あなどらない』です」  コーチなど41人が環境衛生士と障害者職業生活相談員の資格を取得し、12人がジョブコーチ(職場適応援助者)でもある。さらにジョブコーチスキルを向上してもらうため、障害児者の学習指導専門家を招いた学習会を各センターで行っているそうだ。  最近は、知的障害のある社員から、チームのまとめ役ができそうな人や、事務的な仕事を担当できる人も出てきた。「今後は、清掃業務のリーダーになってもらったり、コピー機のメンテナンスや事務補助などの仕事をしてもらったりできるよう、職場環境を整えていきたい」と岡本さんは話す。 学習支援の導入  ハーティでは、2013年から、知的障害のある社員を対象に、勤務時間を使って公文式(くもんしき)学習を行っている。きっかけは、やはり岡本さんが個人的に参加していた勉強会だ。  「ある社会福祉協議会が、施設関係者向けに『働く力を向上させるためのセミナー』というのを開催していたので参加しました。そこで隣に座っていたのが公文の方で、知的障害者向けの就労移行支援事業所で、公文式学習を行っていると聞き、見学に行きました」  岡本さんは、障害者雇用を進めるなかで、「社員が一日でも長く、社会の一員として能力を最大限に発揮しながら働き続ける」ための効果的な支援方法も必要だと感じていた。特に重度の知的障害者にとっては、心身の老化・退行の防止や、言葉によるコミュニケーションの向上も重要だと考えていたそうだ。  公文式学習の科目は国語と算数で、午後の1時間をあてた。一人ひとりのペースに合わせて取り組み、コーチが採点役を務める。実際にやってみて、全体としてもっとも効果的だと感じたのは、メンタルケアだという。  「例えば、午前の業務中に、ちょっとした失敗をしたり、コーチから注意をされたりすると落ち込みますよね。でも午後にプリント学習に取り組み、コーチから赤ペンで100点と大きな〇を書いてもらって『がんばりましたね』と返されると、笑顔で一日を終えられます」  人によって、コミュニケーションがぐっと向上したケースもある。「音読によって滑舌がよくなったのか、いままで聞き取りにくかった単語が急にクリアになって驚いたことがあります。国語のプリントに取り組み続けた結果、日ごろの会話で語彙力(ごいりょく)が自然と増えた人もいて、社員たちの伸びしろを日々感じています」と岡本さんは手応えを語った。 ヨガで身体機能改善  身体的に長く働き続けるための取組みが、体操とヨガだ。  「社員のなかには、つま先があがらないとか前傾姿勢で歩くとか、体の使い方が偏(かたよ)ってしまっている人が少なくありませんでした。無意識に無理な動きをする人もいました。こうした動作を続けていると、第一にケガをしやすいですし、身体機能が衰えやすくなるといった不安がありました」  ハーティでは、専門家に依頼して、体幹を整えるオリジナル体操を開発。毎日、清掃業務の前後に行っている。さらに身体認知機能を向上させるヨガの指導を月4回ほど受けている。このヨガは、発達障害や協調運動障害のある人の療育や機能統合を目的とするもので、自分でイメージした体の位置や動き(自分の身体がどこからどこまであって、どう動かすか)が認知しやすくなるという。  「意識的に深呼吸をすることも、心身のストレス軽減にとても有効のようです」 グループ会社の支援  本社を含めたドコモグループ16社は、各社ごとに法定雇用率を達成することを目ざしている。そこでハーティは、グループ内の障害者雇用にかかわる採用・定着支援業務にも力を入れているという。  グループ各社で働く障害のある社員や同僚、上司からの仕事上の相談を一手に受けつける窓口を2016年に設置。障害者雇用にかかわる行政報告や申請などの事務処理も代行している。  相談窓口では精神保健福祉士や臨床心理士も常駐して対応しているが、設置当時から「窓口に来る時点で、すでに大きな問題になっていることが少なくなかった」そうだ。そこで、社員のメンタルの不調や悩みなどを少しでも早くキャッチして対応できるよう、職場での気分や体調、仕事やほかの人とのかかわりを毎日チェックする日報システム「就労定着支援システムSPiS(エスピス)」(※1)を導入し活用している。現在はハーティのみ遠隔での定着支援強化を図っているが、今後グループ各社で展開する予定だ。  グループ各社で進めている障害者雇用についても、人事担当者が異動しても現場支援がスムーズに引き継いでいけるよう、就労支援機関との顔つなぎや定期的な担当者との面談などでサポートしている。 コミックや動画の配信も  ハーティのホームページには、トップページに「障がい者情報サイト ハーティサロン」というコーナーへのリンクがある。ここには、障害者本人やその家族、関係者に役立つ、さまざまな情報が掲載されている。  例えば、障害者が自立して生活するために必要な福祉サービスや制度、実際にグループホームやシェアハウスを取材した様子などが動画でわかりやすく伝えられている。ほかにも、「一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会」常務理事兼事務局長の又村(またむら)あおいさんの動画による情報発信やコラムなど盛りだくさんだ。  なかでも目を引くのは漫画「ハーティ推進室の日常」。これまでハーティで実践されてきたことやエピソードをもとに、障害特性の理解や仕事でのトラブル回避、指示の伝え方などを1話ずつコミック形式で解説している。  「最初は、社員に理解を深めてもらうために社内配信していたものですが、広く一般にも公開することになりました。ストーリーを楽しみながら読める内容です。障害者の雇用環境を少しでも改善するのに役立ててもらえたらいいなと思っています」 在職中に発達障害と診断  ホームページには、漫画をさらに解説する「英(はなぶさ)社員のひとりごと」というコラムも掲載されている。“英社員”は「私には発達障害の自閉症スペクトラム(漫画のなかではASDアスペルガー症候群と表記)があります」と公表したうえで、漫画に出てくるさまざまな障害特性や、自身のこれまでの社会生活、職場生活について語っている。  自己紹介欄にある上半身のイラストは、キリっとメガネをかけた青年だ。実際に執筆しているのが、ハーティ社員の金山(かなやま)俊男(としお)さん、62歳と聞いて驚いた。「あのキャラクターは、私が希望して描いてもらいました。内容も、28歳ぐらいの自分を思い出しながら書いています」と笑って答えてくれた。  金山さんはもともとドコモ・サービスで岡本さんと一緒に働いていた縁で、ハーティ設立と同時に移ってきたそうだ。自身がASDの診断を受けたのは4年前。ハーティで障害者雇用のための資料をつくっているときに「あれ、これって自分のことじゃないか?」と気づいたのがきっかけだという。  「当時、ネット上で公開されていたASD判定チェックシートも試して、『いよいよそうかもしれない』と確信し、友人の紹介で精神科医に診断してもらいました。そのときに自分の半生をふり返って書いたメモを見てもらい、その分量の多さに、先生も納得されました」  金山さんにとって診断は「あくまで確認にすぎない」ものだったそうだ。ただし感覚過敏のため、仕事中は遮音するためのイヤーマフ(※2)を使用、部屋の明るさも調整してもらっている。配慮してもらえるようになったのは、日報のSPiSを通じて伝えたからだそうだ。岡本さんは「毎回、金山さんは2千字ぐらい書いてきます。長年同じ職場だったのに、そんなふうに感じていたなんて、まったく気づかなかったなと驚くことばかりです」と話す。  ハーティで働く知的障害のある社員たちにも、発達障害の特性を合わせ持つケースがあり、金山さんの解説やアドバイスがとても役立っているという。岡本さんは「金山さん自身、ハーティで文章を書く仕事が増えるようになってから、会社を休まなくなりましたね」とつけ加える。 「いつか、あたりまえに」  ハーティは、ホームページのなかで、障害者雇用を進めてきて気づいたことを記している。  「当初、私たちは障害の理解があれば、雇用定着につながるはずだと考えていましたが、いまでは、障害理解のみでは十分ではなく、本来多様である人間そのものを深く理解することこそが重要なのではないかと考えるようになりました」  そしてグループ各社に、これらの気づきをフィードバックしていくことで、「なぜ、多様性を受け入れていくことが経営上必要なのか」という問いに対する一つの回答を示すことになる、としている。岡本さんは次のように補足する。  「みなさんの職場でも、少しとんがっている部分があって、力を発揮できずに人間関係でつぶれてしまうような人が少なくないと思います。惜しい人材ですよね。多くの日本企業では、どうしても決まったルールやコミュニケーションを重視してきました。でも今後は、そういう環境に無理に合わせなくても能力を発揮していける職場がもっと増えていくはずです。職場環境を少し変えるだけで、会社にとってすばらしい働きをする人、イノベーションを起こす人も出てくるかもしれません。何か光る能力を持った人材を、いかに流出させずに活躍してもらう環境をつくっていけるか、ハーティでも引き続き模索していきたいと思っています」  インタビューさせてもらった会議室からガラス越しに見える事務フロアには、大きな字で書かれたコーポレートスローガンが掲げられている。 「わたしたちの 挑戦が いつか あたりまえになる その日まで 〜あせらず あきらめず あなどらず〜」 ※1 就労定着支援システムSPiS:精神障害などでメンタルケアが必要な方の特性に合わせ、評価項目を設定できる日報システム ※2 イヤーマフ:耳全体を覆う防音保護具 写真のキャプション 業務推進部門担当部長の岡本孝伸さん 専用の絞り機(ロールリンガー)を使用して、薬剤を均等にしみこませる(写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ) 薬剤をしみこませたクロスをハンドフレームに取りつけ、机の天板を拭きあげる(写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ) ドアノブなど、人の手指が触れる場所の消毒清掃が感染防止につながる(写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ) 真剣な眼差しでプリント学習に取り組む(写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ) 池袋センターで働く宮廻高虎さん 週1回のヨガを通して身体機能改善に取り組む(写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ) ハーティでは、SPiS と呼ばれる日報システムを活用している(写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ) 「障がい者情報サイト ハーティサロン」 https://plushearty-salon.com/ コーポレートスローガンが掲げられた事務フロア コラムを執筆する金山俊男さん 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用 第4回  全6回予定の第4回目は、雇用側の採用活動がテーマです。「どこに行けば人材を紹介してもらえるか」、「選考方法はどうするべきか」、「面接では何を聞けばいいか、採否のポイントは」といった、日ごろから多く寄せられている質問に応える形で、障害者雇用の関係機関や支援機関、面接時の留意点、採用判断のポイントなどをできるだけ具体的にご紹介していきます。 (協力)中央障害者雇用情報センター 障害者雇用支援ネットワークコーディネーター 礒邉豊司さん、内田博之さん Q1 どこに行けば人材を確保しやすいでしょうか。 A ハローワークを中心に、さまざまな支援機関と連携することをおすすめします。  障害者の支援を行っている機関は数多く、それぞれ特徴があります(図表1)。そして各機関を利用しながら就職を目ざしている障害者の多くは、ハローワークに求職登録しています。  ハローワークでは、トライアル雇用、職場適応のためのジョブコーチ支援などの活用と、さまざまな機関と連携した相談・支援なども行っており、求職者・事業主の双方にとって活用するメリットがあります。  ただし近年は"売り手市場"になりつつあるといわれ、ハローワークに求人票を出して待っているだけでは、なかなか紹介されにくい状況です。まず近くにどんな支援機関や特別支援学校があるかを調べ、実際に訪ねて担当者と情報交換するとよいでしょう。職場見学・実習などを行い、双方の直接的な連携を含めた能動的な採用活動が効果的です。 Q2 採用方法や面接時において、留意すべきことは何でしょうか。 A 障害特性を考慮しつつ、一般的な採用方法(面接・試験)で選考するとよいでしょう。雇用管理の配慮事項も確認しておきましょう。  障害特性や個々の状況について、事前に確認しておきます。一般的な配慮事項は次の通りです。 ◆視覚障害:試験場所までの移動手段やバリアフリーの状況の確認、試験用紙の点訳や拡大コピーの対応、読み取りに時間を要するため一般の募集より長い試験時間の確保など。 ◆聴覚障害:口話・手話・筆談のどの方法で面接するかの確認、聞き取りやすい場所の確保、説明事項の板書、手話通訳者の手配など。 ◆肢体不自由:試験場所までの移動経路やバリアフリーの状況の確認、車使用の場合は駐車スペースの確保、上肢や言語に障害のある場合の試験時間の配慮など。 ◆知的障害、精神障害:短い面接などだけで職務遂行能力などは把握しにくいため、一定期間の職場実習を実施してから採否を決める方法も考慮。  面接時は、支援機関の担当者の同席も有効です。求職者は就職したい気持ちが強ければ強いほど、無理をして話してしまうものです。また、緊張しすぎて思っていることを十分話せないこともあります。支援機関の担当者がかかわることで、本来の状況や病状を補足して聞くことができます。ただし、あくまでも面接の主役は求職者本人なので、後方で見守ってもらい、必要に応じて補足を求めるぐらいがよいかもしれません。 ●相談ケース  面接時に、本人の障害の状況などについて、どこまで聞いてよいか。また、聞いてはいけないことはあるか。 ●アドバイス例  一般的な面接と同様に、求職者に対しては、雇用した場合の配属先や担当業務の決定、研修方法や職場環境の整備のために、本人の状態を把握する質問をする必要があります(図表2)。「入社後に私たち雇用者側が、どんなところに気をつければよいかという観点からお聞かせください」という姿勢で臨みましょう。  もちろんプライバシーにかかわる質問については一定の留意が必要です。厚生労働省が『プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要―事業主の皆様へ―』というパンフレットを出していますので、ぜひ参考にしてください。 Q3 どんな点を基準に採否を決めたらよいでしょうか。 A 仕事への意欲、マッチング、協調性、障害の自己理解がポイントとなります。その前提として、障害種別を問わず「職業準備性(※)」の確認が重要です。  基本的には、一般社員の採否判断と同様に考えます。例えば@仕事への意欲、A職務経歴・スキル・職務遂行能力などによる職務とのマッチング、B周囲との協調性、などです。  障害については、その内容や程度に加え、障害を正しく自己理解し適切に対応できることが重要です。具体的には職場で「自分ができること・できないこと」、「サポートを受ければできること」などを説明でき、「困ったときに自分から周囲にサポートを依頼できる」ことです。  特に精神障害者の場合は、働く意欲満々という人ががんばり過ぎて突然体調を崩し、離職してしまうケースが少なくありません。「自分の病気を理解し、いまの自分を客観視できているか」、「自己コントロールができているか」が、採否判断の基準として重要となります。 ※職業準備性とは…どの職業にも共通して必要とされる、職業人としての基礎的な要件(図表3)。 【図表1】各支援機関で支援を受けている障害者の特徴 支援機関 障害者の特徴 地域障害者職業センター ○地域障害者職業センターで職業相談・職業評価・職業準備支援を受けている ○職業評価や職業準備支援などにより本人の人柄や能力は把握されている ○ハローワークにも求職登録をしている人が多い ○大都市圏では精神障害者や発達障害者の利用が顕著 障害者就業・生活支援センター ○就業上の支援、またはそれに加えて就業にともなう日常生活上の支援を必要としている ○知的障害者・精神障害者の利用が多く身体障害者は比較的少ない 特別支援学校 ○大半が高等部在学生 ○採用は3月の卒業後となる ○在学中、企業での職場実習を経験している生徒が多い ○在学時に職場実習生として実際に勤務してもらいマッチングの状況を把握することもできる 就労移行支援事業所 ○企業就職に必要な、労働習慣の確立、マナー・挨拶などの習得やパソコン操作・事務補助作業・清掃などの能力向上に向けた訓練(支援)を受けている ○知的障害者や精神障害者の人材は確保しやすい 障害者職業能力開発校 ○職業訓練を受けている ○身体障害者が中心であったが、最近は精神障害者や発達障害者も多くなっている ○経理、情報処理などの専門的な知識・技能を身につけている ※受講する訓練コースによる 【図表2】雇用管理のために把握しておく事項 障害関係 ○障害の状況 ○治療の必要性・内容、通院・服薬の状況 ○必要な支援内容 職務遂行関連 ○希望する仕事 ○仕事に関するスキルの習得状況 (専門知識、機器などの操作、パソコン操作、運転免許など) ○コミュニケーション方法 (メール・電話・会話、聴覚障害者の場合は口話・手話・筆談) ○出張、異動の可否 職場生活関連 ○通勤の方法 (自家用車・自転車・公共交通機関の利用) ○通勤経路と時間 ○職場内の移動方法 【図表3】職業準備性の具体的ポイント 障害・疾病管理に関する事項 ○障害(疾病)のことを正しく理解している ○障害(疾病)の自己管理ができる (治療や検査のための通院、定期的な服薬) ○障害(疾病)が悪化した場合、医師に相談するなど適切な対応ができる 日常生活技能に関する事項 ○規則正しい生活習慣が身についている ○身辺処理が自立している ○あいさつや返事ができる ○報告・連絡ができる ○わからないことには質問や相談ができる ○自分ひとりでできない場合は助けを求めることができる ○ミスした場合に謝罪できる ○感情的にならない ○周囲と協調できる 基本的労働習慣に関する事項 ○一人で通勤できる(代替手段がある) ○職場の規則を守る ○就業時間中、安定して仕事に取り組める ○危険を察知することができる(代替手段がある) 【図表1】〜【図表3】出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「はじめからわかる障害者雇用 事業主のためのQ&A集」より編集部作成 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 『障害のある方への合理的配慮の提供』 「障害者雇用事例リファレンスサービス」 ホームページで検索できます! 障害者雇用事例リファレンスサービス 検索  2016(平成28)年4月から、事業主に、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置を講ずる「合理的配慮の提供」が義務づけられています。  しかし、「どのような配慮をすればいいのかわからない」という企業の方や、「企業から相談されたが、どのように助言すればよいか迷う」という支援者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。  「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、障害者の雇用に取り組んでいる企業の取組みを紹介しており、障害者雇用に関する全体的な取組みである「モデル事例」のほか、「合理的配慮の提供」に関する事例(合理的配慮事例)を掲載しています。  今後、企業や支援機関のみなさまに役立つ事例を追加掲載していきますので、ぜひご利用ください。 合理的配慮事例を検索する場合は、こちらのチェック欄を選択してください。 業種や従業員規模、障害種別などの条件を設定して事例を検索することができます。 参考:精神障害者の福祉施設における合理的配慮事例 みなさまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、「障害者雇用事例リファレンスサービス」のホームページからアンケートへのご協力をお願いします。 事例で見る∞動画で見る 「みんな輝く職場へ〜事例から学ぶ 合理的配慮の提供〜」 ホームページで見られます! JEED みんな輝く 検索  「合理的配慮とは何か」、「どのように取り組めばよいか」と疑問をお持ちの事業主の方にもわかりやすく、合理的配慮の提供に関するポイントの解説や障害種別ごとの取組み事例を紹介しています。  ホームページでご覧いただくことができるほか、DVDの貸出も行っていますので、ぜひご活用ください。 【視覚障害】就労支援機器の活用 【聴覚障害】さまざまなコミュニケーションの活用 【知的障害】目で見てわかる工夫 【精神障害】不安や緊張をやわらげる相談体制 【発達障害】スキル上達のための配慮 障害種別ごとの取組みを専門家がわかりやすく解説しています。 ◆DVDの貸出に関するお問合せ 中央障害者雇用情報センター TEL 03-5638-2792 FAX 03-5638-2282 ◆その他上記動画の内容と「障害者雇用事例リファレンスサービス」に関するお問合せ 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9513 FAX 043-297-9547 ご活用ください!障害者の職業訓練実践マニュアル  当機構が運営する国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県)、国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(岡山県)では、精神障害や発達障害、高次脳機能障害など、職業訓練上特別な支援を要する障害のある方(特別支援障害者)の受入れを積極的に行い、より効果的な職業訓練の実施に必要な指導技法などを、障害種別ごとにマニュアルとして取りまとめています。  このマニュアルは、当機構のホームページ(https://www.jeed.or.jp/)からダウンロードすることもできます。また、無料で配付をしていますので、お気軽にお問い合わせください! JEED 職業訓練実践 検索 NEW!! 令和元年度発行 職業訓練実践マニュアル 精神障害・発達障害者への職業訓練における導入期の訓練編U 〜対応法の習得に向けた具体的な取り組み〜  精神障害者や発達障害者などの訓練生の「困っていることや作業のやりにくさ」の把握から、訓練によるその対応法の習得に向けた具体的な取組みについて、以下の構成で取りまとめています。 @精神障害・発達障害者への職業訓練における導入期の訓練の意義 A対応法の習得の考え方と流れ B行動観察について C行動観察の結果から考察する D訓練生との相談で対応法を決定する E行動観察から対応法を習得するまでの支援事例  マニュアル本文および行動観察記録票等のツールは、巻末の付属DVDや当機構ホームページにも掲載しています。 マニュアルのおもな内容 行動観察から訓練生が対応法を自己決定するまでの流れについて 行動観察の結果から背景にある原因などを考察する手法について 付属DVD映像 こんな方におすすめ!  マニュアル巻末の付属DVDに映像を収録しています。  「行動観察や対応法の検討って具体的にどうすればいいの?」という方にも映像でわかりやすくまとめていますので、ぜひご活用ください。 (導入期の訓練での行動観察にあたって有効な課題例) 電池の仕分けと袋詰め作業を通して、訓練生の訓練場面での作業時の行動や動作を観察し、「困っていることや作業のやりにくさ」を見出します。 お問合せ 障害者職業総合センター 職業リハビリテーション部 指導課 TEL 043-297-9030 【P15-18】 グラビア アイメイトと、ともに働く 千葉県商工労働部 産業人材課(千葉県) 久我裕介さん 取材先データ 千葉県商工労働部 産業人材課 〒260-8667 千葉県千葉市中央区市場町1-1 TEL 043-223-2756 FAX 043-221-3730 写真・文:官野貴  千葉県商工労働部で働く久我(くが)裕介(ゆうすけ)さん(41歳)の通勤は、アイメイト(盲導犬)との共同作業だ。アイメイトは、横断歩道の手前で脚を止める。久我さんは、耳や感覚で車の流れを読みとって信号が青になったと判断し、アイメイトに前進の指示を出して横断歩道を渡り始めた。  久我さんは25歳のとき、網膜色素変性症により急激に視力が低下した。その現実に一時は絶望したが、前向きに自立を目ざし、わずかに残る視力で千葉県の地方公務員試験に挑戦、見事合格することができた。また就職する前に、日本視覚障害者職能開発センター(東京都)でパソコンのスキルや事務処理を学び、2008(平成20)年、千葉県庁に入庁した。そして2010年にはアイメイトを迎え、ともに働き始めることとなった。  現在、久我さんは、商工労働部の障害者就労支援班副主査として県内各地の企業支援員(障害者雇用アドバイザー)から提出される月報の集計や、データベース更新などを担当している。効率的に仕事を進めるために、マクロなどを使ったデータ処理の自動化や、月報のフォーマットの改善を行った。久我さんは視覚障害のある人に対し「パソコンのスキルや事務処理能力を身につけることで、仕事が楽しくなります」とアドバイスする。  久我さんは、千葉市内の小中学校で行われる福祉講座などに、アイメイトとともに積極的に参加している。そこで、視覚に障害のある人へのガイドヘルプ(移動介護)の方法や、「障害者が働くことが、当たり前になる社会」の実現への願いを次世代へと伝えている。「アイメイトは、自分の身体の一部です。一緒に歩くことが楽しい」と語る久我さんとアイメイトとの歩みは明日も続く。 写真のキャプション 久我さんのパートナーであるアイメイト(盲導犬)は、4 歳のラブラドール・レトリーバーだ アイメイトの待機スペースは、久我さんのデスクのすぐ隣 登庁前にアイメイトに排泄させ、飲み水を与える 久我さんは支援機器を駆使し、自身が持つパソコンのスキルを発揮している ハーネスを外され、待機スペースでリラックスするアイメイト 打合せなどでは、愛用の点字メモが活躍する 庁内の移動も、アイメイトがいれば自由自在だ 画面読み上げソフト「JAWS(ジョーズ)」を使用し、エクセルを使いこなす 久我さんのデスクには、各種支援機器が並べられている 触ってわかる目印として、キーボードに凸点シールを貼っている 画面読み上げソフトと併用する点字ディスプレイ 画面読み上げソフトの音声は、ワイヤレスの骨伝導イヤホンから再生される。耳を塞がないため周囲の音も聞き取れる 【P19】 エッセイ*【第二回】 重度障害とともに 〜子育てと講演活動から得た自信、そして生きがい〜 又野(またの)亜希子(あきこ) 『ママの足は車イス』著者/ 元幼稚園教諭・保育士  結婚2年目、28歳のときに保育園へと向かう通勤途中の交通事故により頸髄を損傷し、重い障害が残った。  生きる希望を失いかけたなか、2006年に新しい命を授かり、無事に第1子を出産。車いすで家事や子育てをしながら、全国で実体験に基づいた講演活動や、「埼玉県家庭教育アドバイザー」として子育て支援活動をしている。  著書に、『ママの足は車イス』、『ちいさなおばけちゃんとくるまいすのななちゃん』(ともに、あけび書房)がある。 不安だった外出先での排泄  退院して数カ月経つと、友だちとの外出が徐々に楽しめるようになってきました。しかし、外出時の排泄はいつも不安でした。自宅のトイレと高さや手すりの位置が少し違うだけで乗り移りが困難で、導尿(数時間おきのカテーテルを使った排泄)に時間がかかりました。友達を1時間も待たせてしまったり、床に落ちて抱き上げてもらったりしたこともあります。しかし、次第に排泄が自立してくると、外出に自信が持てるようになってきました。  いまでは、外出時のみ留置カテーテル(カテーテルの先につけた収尿器に尿がたまる仕組みになっていて、尿がたまったらトイレに流す)を使用しています。失禁の心配がなく、トイレがあるかないかを逐一確認しなくても長時間その場に滞在できることで、さらに外出が楽しいものとなりました。 母になる夢が叶って  たとえ障害があっても、いつかお母さんになることが夢でした。その日が思いがけず早く訪れ、ハイリスクな妊娠出産となる私は喜びと不安で胸がいっぱいでした。  出産の際も、頸椎(けいつい)の手術をした病院でお世話になりました。この病院には、ハイリスクの妊娠に対する医療や新生児医療を行うことができる総合周産期母子医療センターがあったからです。リスクの一つであった切迫早産の症状が現れ、出産前の4カ月間は車いすには乗らず、ほとんどベッドの上で生活していました。  出産は帝王切開で行いました。予定日より1カ月早かったものの、母子ともに健やかに2006(平成18)年5月2日、2306gの女の子を出産しました。周囲の協力を得ながら試行錯誤の育児。娘が幼いころは思うように世話ができず、母として挫折と葛藤の日々でした。しかし、親として人として私を成長させてくれている子育ては生きがいそのものです。早いもので娘はいま中学2年生です。 講演活動から得た自信とやりがい  車いすママの子育てとして、私生活がメディアで取り上げられるようになったことをきっかけに、講演の依頼をいただくようになりました。福祉や人権などをテーマにしたお話や、小学生から高校生までの学生を対象にした講演では、愛や命、人生などをテーマにお話しさせていただいています。その活動は全国へと広がりました。新幹線、飛行機、どこへ行くにも一人で出かけられるようになり、一人で宿泊することもあります。講演活動から得た自信は大きなものです。  以前の私は、健常者が一人前、障害者は半人前、私はどんなにがんばっても健常者のような一人前にはなれないと思っていました。障害者の私は「もうだれの役に立つこともできない」と自分が哀れでならなかったのです。そのようななか、戸惑いながらも引き受けた講演でしたが、次第に私だからこそできる講演という社会活動にやりがいを感じられるようになりました。講演が終わると、「これからもがんばってください」と励ましの言葉や「勇気と感動をありがとうございます」と感謝の言葉をかけてくださる方がたくさんいらっしゃいます。生きているかぎり、たとえどんなに小さなことでも人のお役に立てるということは、何よりの喜びと感じています。 (つづく) 写真のキャプション 講演活動の様子 【P20-25】 編集委員が行く 雇用の原点は「人」 〜歴史をふり返る二人の知見と見聞〜 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 編集委員から  新型コロナウイルス感染症の影響がこれほどひどいとは思いませんでした。2021年に延期された東京五輪・パラリンピックも開催できるかどうかの瀬戸際に立っています。日本で終息しても世界での感染が終息しないかぎりは、選手や観客の安全面などでむずかしい状況になるのではと心配されます。これを機に生まれた「新しい生活様式」への転換も、私たちに課せられた新しい挑戦ではないでしょうか。 新型コロナウイルスの影響を受けて  当初、私の取材は4月を予定していたが、4月は新型コロナウイルス感染症の感染拡大がピークを迎え、全国的に、さらには世界的に感染者が増加の一途をたどり、日本でも全都道府県に「緊急事態宣言」が出されるなど、人の移動が厳しく制限され、取材どころではなくなってしまった。  加えて経済活動が低迷し、倒産する企業も多く出て「どうやって雇用を守るか?」に各社は必死の状況であった。現在もその流れは変わらず、世の中では「新しい生活様式」という言葉が定着しつつある。私の取材もこの影響を受け、企業の取材は現状では不可能と判断し、大きく方向転換した。  今回の「編集委員が行く」は、2020(令和2)年3月に『働く広場』を退任された元専門委員のお二人に、長年にわたる取材経験から得た知見と見聞をインタビューという形でおうかがいし、読者のみなさまに「雇用にはさまざまな形がある」ということを知ってもらいたいと思い、お集まりいただいた。  お一人はカメラマンとして『働く広場』の創刊直後からかかわってこられた小山博孝さん、もうお一方(ひとかた)は「職場ルポ」などのコーナーで取材を重ねてこられた、ルポライターの清原れい子さんである。今回は、小山さんの地元の岡山県でのインタビューとなった。 経験から得たものの大きさ  6月に入って、ようやくすべての都道府県で緊急事態宣言が解除(※1)され、油断はできないが、私も何とか新幹線で岡山県に来ることができた。しかし、小倉から東京行きの「のぞみ」に乗ったが、1車両の乗客は10人以下で車内はガラガラ。こんな光景は初めて見た。  日本中でいわれている「3密」状況は避けねばならず、部屋の換気やマスクは必需品となり、インタビューも一定の間隔を空けて行ったが、インタビュー中は、あえてマスクだけは取らせていただいた。 樋口克己(以下、樋口)当初4月を予定していたインタビューが6月になってしまいましたが、小山さんや清原さんは新型コロナウイルスの緊急事態宣言中はどうされていましたか。 小山博孝(以下、小山)家の周りで草取りや農作業をしたりと、2月以降は今日までまったく外出していませんね。  私の住んでいる岡山県津山市は感染者も少なく、町もお店などは普段と変わりありませんでした。 清原れい子(以下、清原)私は東京に住んでいるので、4月・5月で電車に乗ったのはそれぞれ1回だけ。もっぱら自宅の周りの公園を歩いてまわっていました。おかげで普段は気づかない町の風景や自然の多さが目に入り、新しい発見がいくつもありましたよ。  アウトドア大好き人間としては自粛生活はたいへんでしたけれど、時間だけはたっぷりあったので、「職場ルポ」の30年をふり返ってみるよい機会にもなりました。 樋口 さて、お二人は長年にわたって『働く広場』の専門委員として取材や編集にもかかわってこられましたが、そもそものきっかけは何だったのでしょうか? 小山 私はもともと「株式会社岩波映画製作所」にいましたが、岩波のグラビア雑誌『世界』で障害者を取り上げ、障害者用タクシーを取材したのが始まりです。それがきっかけで当時の『働く広場』の関係者の推薦で、1977(昭和52)年の10月から『働く広場』に加わりました。『働く広場』はその年の3月が創刊でしたから、ほとんど創刊と同時にかかわってきたことになります。  日本短波放送(現・日経ラジオ社)のディレクターであり、当時の障害者雇用の第一人者であった大野(おおの)智也(ともや)さんと「職場ルポ」に参加して、これから障害者雇用は重要になると感じましたね。それで岩波を退社してフリーになり、『働く広場』をお手伝いした次第です。それからですので43年にもなりました。 清原 私は1981年の国際障害者年に、ラジオの障害者雇用番組でレポーターの仕事を始めました。「職場ルポ」は1987年、大阪府の「パナソニック交野(かたの)株式会社(当時の交野松下株式会社)」への取材が最初です。当時は障害者など、いわゆる弱者(弱い立場の人)から社会を見ると、多くの矛盾が見えてきました。障害者を取り巻く状況がいまとはまったく違い、障害者が働くこと自体がマイナーな時代でしたね。現在は、大企業がCSR(社会的責任)や法定雇用率の関係で、障害者の雇用を行うのが当たり前ですが、昔は「働く」といっても、障害のある人を、「かわいそうだから」と中小企業が中心となって雇用していた時代でした。  長年取材を続けてこられたのは、障害者雇用と真摯(しんし)に向き合う事業主に「人間としての生き方」を教えられたり、障害のある人の仕事ぶりに脱帽したりと、多くの感動の出会いがあったからだったと思います。 樋口 過去をふり返ってみて、雇用の現場に行かれたときに感じたものは、どういうものだったのでしょうか? 清原 私が特に感銘を受けたのは、栃木県にある「JSPモールディング株式会社」を取材したときです(2004年7月号「職場ルポ」で取材)。発泡ポリプロピレンを原料にして断熱材、包装資材、車のドアパッドなど多くの製品をつくっているのですが、そこでは多数の知的障害のある人たちが働いていました。その人たちへの「工夫」がすごい。数えきれないほどの驚きがありました。人間関係を重視し、仲間意識の醸成によって生産性を上げていく。それによって重度障害のある人を一人前のワーカーに育てている。常にあらゆる可能性に挑戦し続けていました。健常・障害の区別なく、一人前の仕事ができれば一人前の給料を払う。あるとき、障害のないパートタイマーの従業員が「なぜ障害者より給料が安いのか」といってきたことがあったそうですが、「障害のある人たちの作業を見てくれ!」の一言で納得したそうです。  また、知的障害者が検査工程をになうと見落としがなくなり、品質管理も抜群によくなった。取引先からも絶対の信頼を得ている。工場長が話した「障害者と一緒に働くのが楽しい」という考え方、熱意に圧倒されました。  取材の際、私が基準としている障害者雇用の姿勢は「最低賃金の適用除外(※2)申請をしているかどうか」です。いくらカッコいいことをいっても、最低賃金の適用除外を申請していると、彼らを一人前として見ていないのではないかと思います。それは本当の雇用とはいえませんよね。取材先の企業が本気で真剣にやっているかの見極めも大事だと思います。 小山 障害者雇用は企業の理解力と協力があるかどうかですよ。そうなると最後は「人」にかかってきます。撮影を通じて印象に残っているのは、宮城県仙台市にある「六丁目農園(株式会社アップルファーム)」(2012年9月号「編集委員が行く」で取材)。ここはすごいですよ。障害のある人とそれを支えるスタッフの関係がよく、黒字も黒字、大黒字です。一時は「予約が取れないレストラン」としても有名になり、仙台市内の一流ホテルからも出店のリクエストが来たほどです。  また、福井県の「社会福祉法人 コミュニティーネットワークふくい」(2012年7月号「グラビア」で取材)。中学校の学校給食を知的障害のある人たちが、学校や町の指導者と一緒になってつくっている。そこは「いじめのない学校」として日本中の学校関係者が見学に来るほどです。『働く広場』で紹介して、さらに見学者は多くなったと聞いています。  岐阜県の「WSBバイオ」も素晴らしい取組みをしています(2012年6月号「グラビア」で取材)。ここは就労継続支援A型事業所ですが、知的障害のある人がワサビの栽培をバイオ技術を利用して行っています。普通は大学の研究室でするような仕事を知的障害のある人が行っている。バイオ技術の仕事は「ルール」が厳しく定められていますが、そのルールを堅実に守るのが知的障害のある人なんですね。昔は障害者のつくったものは「汚い・まずい・不良品が多い」という考えがありましたが、現在ではまったく違った「よい製品」となっています。  ものづくりといえば、大分県の「ソニー・太陽株式会社」でマイクロフォンをつくる車いすの「マイスター」の方も、すごい技術力を持っていましたね(2013年8月号「グラビア」で取材)。彼のつくるマイクは世界中のトップ歌手が使っています。  もう一つ、変わったところでいえば、世界に誇る日本の逸品をつくっている島根県浜田市の「社会福祉法人いわみ福祉会」(2004年10月号「グラビア」で取材)。石見神楽(いわみかぐら)の衣装をつくっているのですが、芸能人からも注文が殺到し、数カ月待ちの状態でしたね。伝統芸能を受け継ぐ地域貢献はすごいものがありました。 樋口 私も心に残った一カ所を。私のおすすめは「富士重工業株式会社」。いまはスバルですが、そこの群馬県太田市の工場を取材したときです(2003年9月号「編集委員が行く」で取材)。それまでは障害者の法定雇用率を下回り、たいへん苦慮していましたが、アメリカから帰国した当時の総務部長が、一人の車いすの女性社員を雇用し、彼女に工場すべてを車いす目線でチェックしてもらい、ユニバーサル化していったそうです。それを機にスバルは大きく変わった。通常の生産ラインもユニバーサル化を進め、重いエンジンミッションを女性でも簡単に取りつけられるように改良した治具(じぐ)などは、当時同じ自動車業界にいた私も驚きの連続でした。「障害者雇用のため」をきっかけに始めた治具開発が、障害者・健常者を問わず、だれもが使いやすい物へと進化していった素晴らしい事例でした。 『働く広場』の果たしてきた役割は大きい 小山 そういう人たちを取り上げてきたのが『働く広場』ですよ。ほかの人が知らない世界を紹介し、発掘してきたと思っています。 清原 特例子会社は障害者の雇用促進を目的とした制度ですが、その特例子会社をつくらずに雇用を拡大してきた企業も注目されます。例えば、東京都の「東京海上日動システムズ株式会社」(2018年4月号「職場ルポ」で取材)。フレックスタイム制の導入や、職制にかかわらない社内での「さんづけ」、社長室のドアはいつもオープンなど、会社としての「風通し」がいい。車いすの人たちがシステムエンジニアとして勤務していますが、知的障害のある人が働く「カフェ」もつくったんですよ。それも休憩スペースの中心に。カフェでは会議室へのデリバリーや職場へのワゴン販売もしています。なかでも目を引くのが、健常の社員に入社時と課長になるときには必ずこのカフェで1日店員を経験させていることです。その先生役は知的障害のある人。健常者の働く意欲向上にもつながり、よい結果を生んでいます。カフェの設置に合わせて社内の自動販売機を撤去しなかったのも、会社の本気度の現れでしょうね。 小山 もちろん、特例子会社があったから障害者雇用が進んだ面も欠かせません。見ているとベンチャー企業系の障害者雇用はスピードがありますね。若いから抵抗なしに進めていけるのではと思います。 清原 障害者が働きやすい職場は、だれもが働きやすい職場だと思います。障害者に遠慮するというか、腫物(はれもの)に触るような雰囲気を感じさせる職場はよい職場環境とはいえないですね。「サポートや配慮はするが、特別扱いはしない」と堂々といえる企業、職場環境を整えている企業、そういう現場に出会うと嬉しくなります。障害者雇用は、企業トップの理解、担当者の熱意がとても大切だと思っていますので、『働く広場』でそういう現場をお伝えして、障害者雇用を促進するヒントになればと考えてきました。 小山 一つに偏ることもない。伝達方法は紙でもITでも、やり方によっていろんな方法があっていいんですよ。それを紹介してきた『働く広場』の果たしてきた役割は大きいですね。 清原 2年前には国や自治体の障害者雇用率の水増しが大きな問題になりました。急遽(きゅうきょ)数千人あまりを雇用しましたが、大半は非常勤です。退職者も出ています。定着するために何をすべきか、どうすべきかを考えてほしいですね。 小山 障害の有無に関係なく生きていける世の中にしていきたいものです。結局は「人」が最大の問題なんです。すべて最後は「人」に落ち着くんです。 新型コロナ後の雇用はどうなる 樋口 今回の新型コロナウイルス感染症は、従来からの雇用のあり方を大きく変えようとしています。テレワークや在宅勤務の推奨などで、人との接触を避けようとする動きが加速していますが、すべての業種でできるとはかぎりません。進めやすい業種もあるとは思いますが、製造業や農業など現場で体を使う仕事はそうはいきません。また、新型コロナウイルスの影響で多くの人が職を失い、障害者雇用どころではなくなっている事業所もあります。そのようななかで、今後の障害者雇用はどうなっていくのか、どうあるべきかについてのお考えをうかがいます。 清原 今回の新型コロナウイルスで世の中がたいへんギスギスして、余裕がなくなっています。こういうときだからこそ、障害者雇用は形にはまったものではなく、融通の利く臨機応変な形であってほしいと思います。十人十色、一人十色。いろいろな人がいるのが社会であり、一人の人が多様な色を持ちながら、ともに生きる社会であってほしい。そのなかで、障害者雇用も進められればよいと感じます。 小山 いまは現場を知らない人が多い。大学の先生をはじめ障害者を送り出す方が、まずは現場を知ることが大切です。「雇用の原点は現場」だと認識し、いろんなケースを見て、いろんな雇用をしてほしいと感じます。 樋口 いろいろなお話をありがとうございました。お二人の「想い」が読者のみなさんに少しでも伝わればと思います。  日本の障害者雇用が本格的に始まったのは、1965年に大分県別府(べっぷ)市にある「社会福祉法人太陽の家」の創業者、中村(なかむら)裕(ゆたか)先生の提唱した「保護より機会を」が原点です。それから55年。いま、新型コロナウイルス感染症という新たな難題を抱えて、日本や世界の姿が大きく変わろうとしています。しかし、いかに世の中が変わっても、変わらないのは「そこには人がいる」という事実です。人がいるかぎり、知恵を出し合い挑戦を重ねていけば、解決できないことはないと信じています。 結びに  新型コロナウイルス感染症の影響で、今後は、従来とは違った「働き方」への移行が進むと予測される。  障害のある人のなかには変化に弱いといわれる人たちもいるが、これからどうやって乗り切っていくか。それは一人ではできないことで、多くの人たちの支援と協力がなければむずかしくなる。  今回のお二人のインタビューからいえることは、文中でも幾度となく申し上げてきたが、障害者雇用の原点は「人」である。  文明や科学がいかに進化しても、人を雇用するのは「人」であり、素晴らしいといわれる企業にはやる気と活力、そして周囲を引っ張って行く人が存在する。人には心がある。障害のある人を雇用して、彼らとともにどう成長し、どう実践していくかを決めるのは、そこにいる人たちである。歴史的に見ても、たしかにそうした人がいた企業は発展し、そこで育った人が次の世代をリードしてきたのである。そういった意味では、小山さん、清原さんのお二人も時代をリードし、その時々を見届けてきた証人であると強く感じる。  最後に、今回のインタビューに関して、岡山障害者職業センターの方々には会場をお借りするなど、たいへんご協力をいただきました。誌面を借りて御礼申し上げます。 (インタビュー写真:官野貴) ※1 2020年5月25日 ※2 最低賃金の適用除外:障害者雇用では、都道府県労働局長の許可を受け最低賃金を適用除外することができる 小山(こやま)博孝(ひろたか)さん 日本写真家協会会友。「株式会社岩波映画 製作所」の写真部を経て、独立。1977(昭和52)年から『働く広場』にたずさわり、「グラビア」や「職場ルポ」、「編集委員が行く」などのコーナーの撮影を担当。2020(令和2)年3月まで、本誌の専門委員として活躍した。 清原れい子さん ラジオ局アナウンサーを経て、フリーライター。1987(昭和62)年から『働く広場』にたずさわり、「職場ルポ」、「この人を訪ねて」などのコーナーの取材を担当。2020(令和2)年3月まで、本誌の専門委員として活躍した。 写真のキャプション インタビューは個人間に距離(ソーシャルディスタンス)をとって行われた。(左から)樋口克己編集委員、清原れい子さん、小山博孝さん 2004年7月号掲載 職場ルポ 「JSPモールディング株式会社」 2012年9月号掲載 編集委員が行く 「六丁目農園(株式会社アップルファーム)」 2012年6月号掲載 グラビア 「WSBバイオ」 2004年10月号掲載 グラビア 「社会福祉法人いわみ福祉会」 2018年4月号掲載 職場ルポ 「東京海上日動システムズ株式会社」 お二人のお話を聞く樋口編集委員 【P26-27】 省庁だより 令和2年度 障害保健福祉部予算の概要(2) 厚生労働省 障害保健福祉部 ※(1)は本誌7月号に掲載しました 3 発達障害児・発達障害者の支援施策の推進 4・2億円(3・8億円) (※地域生活支援事業計上分を除く) 1 発達障害児・発達障害者とその家族に対する支援【一部新規】地域生活支援促進事業のうち1・6億円(1・3億円)  都道府県及び市町村において、同じ悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するピアサポートや発達障害児者の家族に対するペアレントトレーニング等のほか、新たに発達障害者の青年期の居場所作り等を実施することにより、発達障害児者及びその家族の支援を推進する。 2 発達障害の初診待機解消 地域生活支援促進事業のうち82百万円(81百万円)  発達障害児者の診断に係る初診待機の解消を進めるため、発達障害の医療ネットワークを構築し、発達障害の診療・支援ができる医師の養成を行うための実地研修等を実施するとともに、発達障害のアセスメントの実施や医療機関におけるアセスメントに対応できる職員の配置などにより、診断を行う医療機関の負担を軽減することで、医療機関での診療にかかる時間の短縮を図る。 3 発達障害に関する理解促進及び支援手法の普及【一部新規】 1・4億円(1・4億円)  全国の発達障害者支援センターの中核拠点としての役割を担う、国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている「発達障害情報・支援センター」で、発達障害に関する各種情報を発信するとともに、困難事例に係る支援をはじめとする支援手法の普及や国民の理解の促進を図る。  また、「世界自閉症啓発デー」(毎年4月2日)などを通じて、自閉症をはじめとする発達障害に関する正しい理解と知識の普及啓発等を行う。 4 障害者に対する就労支援の推進 14億円(14億円) (※地域生活支援事業計上分を除く) 1 雇用施策と福祉施策の連携による重度障害者等の就労支援地域生活支援事業の内数  重度障害者等に対する就労支援として、雇用施策と福祉施策が連携し、職場等における介助や通勤の支援を実施するため、意欲的な企業や自治体について、障害者雇用納付金制度に基づく助成金に加え、自治体が必要と認める場合には、地域生活支援事業の新事業により各自治体が支援を行う。 2 工賃向上等のための取組の推進 地域生活支援促進事業のうち3・2億円(2・9億円)  一般就労が困難な障害者の自立した生活を支援する観点から、就労継続支援事業所などに対し、経営改善、商品開発、市場開拓や販路開拓等に対する支援を行うとともに、在宅障害者に対するICTを活用した就業支援体制の構築や販路開拓等の支援等を実施する。  また、全都道府県において、関係者による協議体の設置により共同受注窓口の機能を強化することで、企業等と障害者就労施設等との受発注のマッチングを促進し、障害者就労施設等に対する官公需や民需の増進を図ることに加え、農福連携に係る共同受注窓口の取組を支援する。 3 障害者就業・生活支援センター事業の推進 地域生活支援促進事業のうち7・8億円(8・1億円)  就業に伴う日常生活の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問等による生活面の支援などを実施する。  また、就労継続支援事業の利用から一般就労への移行や、加齢や重度化による一般就労から就労継続支援事業の利用への移行など障害者の能力に応じた就労の場に移行できるようにするための支援を行う。 4 農福連携による障害者の就農促進 @農福連携による障害者の就農促進プロジェクトの実施 地域生活支援促進事業のうち2・8億円(2・7億円)  農業分野での障害者の就労支援に向け、障害者就労施設等への農業の専門家の派遣による農業技術に係る指導・助言や6次産業化支援、農業に取り組む障害者就労施設等によるマルシェの開催等の支援を実施する。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に合わせて、都道府県単位のほか、ブロック単位でも開催できるよう、農福連携マルシェ開催支援事業を拡充する。 A林・水産業等向け障害者就労のモデル事業の実施【新規】 52百万円  農福連携をはじめとする産業・福祉連携を推進するため、農業以外にも林業や水産業等といった地域に根ざした第1次産業分野での地域課題解決型の障害者就労のモデル事業を実施し、ガイドブック(事例集・マニュアル)を作成するとともに関係者による農福連携等推進協議会を開催することにより、横展開を図る。 B農福連携に対応した地域関係者を結ぶ共同受注窓口の取組強化(再掲)  全都道府県において、関係者による協議体の設置により共同受注窓口の機能を強化することで、企業等と障害者就労施設等との受発注のマッチングを促進し、障害者就労施設等に対する官公需や民需の増進を図ることに加え、農福連携に係る共同受注窓口の取組を支援する。 5 工賃等向上に向けた全国的支援体制の構築 11百万円(12百万円)  全国の工賃・賃金向上の実事例を収集し周知するとともに、工賃・賃金の一層の向上を目指す就労継続支援事業所を支援するモデル事業を実施する。 5 アルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル等依存症対策等の推進 9・5億円(8・2億円) ●依存症対策の推進 9・3億円(8・1億円) 1 全国拠点機関における依存症治療・支援体制の整備 1・1億円(77百万円)  依存症者やその家族等が適切な治療や必要な支援を受けられるよう、アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症対策の全国拠点機関において、都道府県等の指導者の養成研修を実施するとともに、ICDー11に新たな疾患として位置付けられたゲーム障害にも対応できる指導者の養成研修を実施することにより、依存症に係る治療・支援体制の整備を強化する。 2 地域における依存症の支援体制の整備【一部新規】(一部再掲) 7・9億円(7・0億円) 依存症者やその家族等が地域で適切な治療や必要な支援を受けられるよう、引き続き都道府県等における人材養成、相談体制・医療体制及び包括的な連携協力体制の整備を推進するとともに、受診後の患者支援に係るモデル事業を拡充する。  また、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。  これらの他、ギャンブル等依存症対策推進基本計画を踏まえ、ギャンブル等依存症問題の実態把握に係る調査等を実施するとともに、依存症者やその家族等が地域の治療や支援につながるよう、依存症に関する正しい知識と理解を広めるための普及啓発を実施する。 3 依存症問題に取り組む民間団体の支援 @民間団体支援事業(全国規模で取り組む団体) 40百万円(29百万円)  アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症者やその家族等の支援について、全国規模で実施している自助グループ等民間団体における支援ネットワークの構築や相談支援体制の強化を図る。 A民間団体支援事業(地域で取り組む団体) 地域生活支援事業の内数  アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症者やその家族等の支援について、地域で実施している自助グループ等民間団体の活動(ミーティング活動や相談支援、普及啓発活動等)に関する支援を行う。 ●アルコール健康障害対策の推進 17百万円(17百万円) 1 アルコール健康障害対策理解促進事業 11百万円(11百万円)  アルコール関連問題啓発週間関係事業の開催やポスターの作成等により、アルコール健康障害に関する正しい理解の普及啓発を行う。 2 アルコール健康障害対策連携推進事業 3百万円(3百万円)  都道府県のアルコール健康障害対策推進計画の進捗状況の確認等を実施するため、有識者(アドバイザー)等派遣や担当者会議を開催し、都道府県のアルコール健康障害対策を推進する。 6 東日本大震災等の災害からの復旧・復興への支援 1 障害福祉サービスの再構築支援(復興) 1・5億円(2・1億円)  被災地の障害者就労支援事業所の業務受注の確保、流通経路の再建の取組や障害福祉サービス事業所等の事業再開に向けた体制整備等に必要な経費について、財政支援を行う。 2 避難指示区域等での障害福祉制度の特別措置(復興)15百万円(15百万円)  東京電力福島第一原発の事故により設定された帰還困難区域等及び上位所得層を除く旧緊急時避難準備区域等・旧避難指示解除準備区域等の住民について、障害福祉サービス等の利用者負担の免除の措置を延長する場合には、引き続き市町村等の負担を軽減するための財政支援を行う。 3 被災地心のケア支援体制の整備(一部復興) 3・5億円(3・9億円)及び被災者支援総合交付金(155億円)の内数  東日本大震災による被災者の精神保健面の支援のため、専門職による相談支援等を実施するとともに、自主避難者等への支援などを通じて、引き続き専門的な心のケア支援を図る。また、被災地の様々な心のケア活動に係る調査研究等を実施する。  さらに、熊本地震による被災者の専門的な心のケア支援を引き続き実施するとともに、平成30年7月豪雨や令和元年台風第19号等による被災者の心のケアに対応するため、市町村等が行う被災者の専門的な心のケア支援を引き続き実施する。 ※ 上記のほか、各自治体の復興計画で令和2年度に復旧が予定されている東日本大震災で被災した障害福祉サービス事業所等の復旧に必要な経費について、財政支援を行う。 (参考)【令和元年度補正予算案】 ○障害者支援施設等の災害復旧 15億円  令和元年台風第19号等により被災した障害者支援施設等の復旧に要する費用に対して補助を行う。 ○障害福祉サービス等の利用者負担免除の特別軽減措置 49百万円  令和元年台風第19号により被災した住民について、市町村等が障害福祉サービス等を利用した際の利用者負担額を免除した場合、その利用者負担相当額の全額を国が財政支援する。 ○障害者支援施設等の災害時情報共有システムの整備 1・1億円  災害時に障害者支援施設等の被害状況等を国や自治体等が迅速に把握・共有し、被災施設等への迅速かつ適切な支援を行うため、災害時の被害情報等を集約するシステムを整備する。 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 【P28-29】 研究開発レポート 気分障害等の精神疾患で休職中の方のための日常生活基礎力形成支援 〜心の健康を保つための生活習慣〜 障害者職業総合センター職業センター  障害者職業総合センター職業センターでは、職場復帰を目ざす気分障害等の精神疾患による休職者を対象とした「ジョブデザイン・サポートプログラム」(以下、「JDSP」)の実施を通じ、休職者の職場適応能力の向上やキャリアを再構築するための支援技法および事業主が労働環境整備を推進するための支援技法の開発、普及に取り組んでいます。  2018(平成30)年度からは、心の健康を保つために必要な睡眠、食事、運動などの日常生活での取組みを継続し、適切な生活習慣を確立・維持することが、復職後の安定勤務を支える大きな要素であるとして、これを「日常生活基礎力」と定義し、その向上を図ることを目的とした支援技法の開発に取り組んできました。そして、2019(令和元)年度末に、支援の内容や実施上の留意点などを、支援マニュアル20「ジョブデザイン・サポートプログラム 日常生活基礎力形成支援~心の健康を保つための生活習慣~」として取りまとめました。本マニュアルには、支援者の方にご活用いただきやすいよう、支援で使用する講座資料や記録用紙などを収録したCDと、支援場面の様子を再現したDVDを添付しています。 ●開発の視点  近年、睡眠や食事といった生活習慣がうつ病の発症リスクに関連することや、生活習慣の改善がうつ病の予防・改善、ストレスの軽減に有効であることを示す調査結果が増えています。  JDSPや地域障害者職業センターのリワーク支援の受講者においても、不調や休職の要因を分析すると、業務量の過多や人間関係といった職場で生じる問題以外に、慢性の睡眠不足や食事の不摂取による集中力の低下、肥満などの生活習慣病からくる不調など、生活習慣に起因する課題が見られることが少なくありません。また、企業の担当者や産業医からも、リワーク支援を通じて一時的には生活習慣の改善が図られたとしても、復職後に再び乱れが生じ、再発、再休職に至るケースがあるという話がしばしば聞かれ、ここからも生活習慣の管理が復職後の安定勤務の重要な要素であることが窺(うかが)えます。  これらをふまえ、休職者自身が生活習慣を改善することの必要性を認識したうえで、休職段階から適切な生活習慣を確立し、復職後も維持するための方策を検討しておくことが重要と考え、生活習慣改善の取組みをテーマとした技法の開発に取り組んできました。 ●日常基礎力形成支援の概要  日常生活基礎力形成支援は、生活習慣の改善に取り組むための導入としての2回の「講座」、受講者自身が取り組む行動目標を決め、その実施結果や効果を記録する「セルフモニタリング」、行動を継続するための動機づけや必要な軌道修正を行う「習慣化のフォローアップ(習慣化ミーティング、個別面談)」で構成されており、図1の流れで実施します。 ●講座 @「心の健康を保つための生活習慣」  生活習慣と心の病気の関連性や、睡眠、食事、運動、セルフケア(ストレス対処)についての基礎的な知識を付与します。そのうえで、受講者自身の生活習慣をふり返ってもらい、改善したいことについて整理します。 A「よい生活習慣を続けよう」  行動を習慣化するためのポイントや工夫について説明した後、受講者各々に、復職後の安定勤務のために自分が習慣化させたい生活習慣上の行動目標を一つ決定してもらい、ワークシートを用いて実行に向けた具体的な行動計画を立てていきます。 ●セルフモニタリング  講座Aで決めた行動目標に受講者が各自で取り組み、実施結果を「行動ノート」(図2)に毎日記録していきます。また、一週間の最後には、取組みによる心身の変化や習慣化の状況、得られた効果や次週に向けての改善点などを記録します。復職後も継続するための自己管理の仕組みとして、受講者自身が記録し、ふり返る方法を取り入れています。 ●習慣化のフォローアップ ・「習慣化ミーティング」  一週間の取組みについて、週に一回、グループで行動ノートを基に発表と意見交換を行います。グループでのふり返りには、互いにねぎらい励ましあうことで前向きな気持ちが生まれる、習慣化に役立つコツについて情報共有ができる、といった利点があり、行動継続のモチベーションの維持に効果的です。 ・「個別面談」  行動の継続が滞っていたり、目標を達成できていないことによる自責の念が見られる場合には、無理なく取り組める目標の再設定や、気持ちの切り替え方について個別面談で相談します。また、行動が習慣化できている場合は、復職後も継続するための方法について具体的に検討します。 ●実施上のポイント  生活習慣改善の取組みを継続するためには、受講者自身の目的意識や、行動への意欲が重要です。このことから本支援では、「行動変容ステージ」や「動機づけ面接法」を参考に、受講者の行動変容の準備段階に応じたかかわりを行うことや、受講者のなかから動機を引き出すことをポイントにしています。特に、「習慣化ミーティング」を運営する際には、取組みについてのねぎらいや共感を示しながら、できていることや行動に向かおうとする言動に焦点を当てたフィードバックを行い、受講者の自信やモチベーションを強化することを意識します。  また、支援を進めるうえでは、うつ病等の障害特性に配慮することにも留意します。受講者のなかには、症状による気持ちの落込みや無力感が見られたり、休職によって自信や自己効力感が低下し、行動を起こすことへの躊躇(ちゅうちょ)や不安が見られることがあります。そのため、取り組む行動目標は無理なく続けられるものを設定するよううながし、実行できた達成感を持ってもらうことや、気力や体力が低下したときでも取り組める目標を別に設けておくことを提案するなど、気分や体調の波を想定した目標設定ができるよう支援することが大切です。 ●日常生活基礎力形成支援の効果  受講者からは、取組みを通じて、「心身へのよい変化(睡眠の質の向上や疲労の回復等)を実感できた」、「行動を続けられたことが自信につながった」、「行動ノートへの記録や習慣化ミーティングにより、取組みの効果や達成感を感じることができ、『今後も続けたい』というモチベーションになった」との感想が聞かれています。今後は、プログラム終了後のアンケート等を通じて、受講者の復職後の安定勤務に寄与できたか等の効果をさらに検証するとともに、よりよい実施方法について検討を重ねていきます。 ●まとめ  生活習慣の改善は、休職段階から休職者自身が取り組むことができるものです。復職後の安定勤務の継続を目ざし、休職者が適切な生活習慣を確立、維持できるよう、本マニュアルをご活用いただければ幸いです。  支援マニュアル20「日常生活基礎力形成支援」は、障害者職業総合センターのホームページに掲載しています(※1)。また、冊子の配付を希望される場合は、当職業センターに直接ご連絡ください(※2)。 ※1 「支援マニュアルNo.20」は、https://www.nivr.jeed.or.jp/center/report/support20.htmlよりダウンロードできます ※2 障害者職業総合センター 職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.or.jp/center/index.html 図1 日常生活基礎力形成支援の 流れ 図2 行動ノート 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 「遠隔手話サービス」導入の経費を補助  厚生労働省は、都道府県に対しタブレット端末やスマートフォンを使った「遠隔手話サービス」の導入に関する経費を補助する。手話通訳をする人の新型コロナウイルス感染予防に配慮しながら、聴覚障害者の意思疎通支援体制を強化するもの。  聴覚障害者が新型コロナウイルス感染を疑い、帰国者・接触者相談センターに相談したり、医療機関を受診したりする場合を想定。専用アプリを使ったビデオ通話機能で手話通訳をする人とつなぎ、医師らとの意思疎通を仲介する。  医療機関を受診する際などに手話通訳者の同行が困難だったり、医師らがマスクを着用していると、唇の動きが見えず言葉を理解しにくかったりする場合があるとの声に応えた。 地方の動き 京都 就労支援施設で働く障害者の工賃補助へ  京都市が、就労支援施設で働く障害者の工賃を補助する独自の支援を行う。市内に166カ所ある就労継続支援B型事業所のうち、新型コロナウイルス感染拡大にともない、収入が減少し一定の工賃の支払いが困難な事業所が対象。B型事業所は、障害者と事業者の間に雇用契約がないため、国の雇用調整助成金の対象外となっている。4月1日から9月30日までの利用にかかる工賃が対象となる。 岡山 災害時の障害者「サポートブック」作成  岡山県は、災害時における障害者の避難プランとなる「サポートブック」を作成した。西日本豪雨の教訓をふまえ、避難のタイミングや方法、ルートなどを家族や身近な支援者と決めておくことで迅速な行動につなげる。  「いつ、だれとどうやって逃げるか、避難を支援してくれる人がいるか」などを記入。障害特性や個人情報、障害者手帳、処方箋のコピーなどの持ち出し品リスト、避難所で周囲に配慮してほしいことも書き込む。支援者向けに障害に応じた配慮点などをまとめた手引もつくった。ブック(A6判)は2千部、手引(A4判)は500部作成。障害者団体などに配布するほか、県のホームページからもフォーマットを入手できる。 生活情報 宮城 「指さし会話シート」が使いやすく  河北新報社(かほくしんぽうしゃ)(仙台市)は、災害時やマスク着用時の聴覚障害者の意思疎通を補助する「指さし会話シート」をリニューアルし、河北オンラインニュースで公開した。  シートは2枚。1枚目は避難の必要性など被災直後の対応をたずねる質問ごとに「はい」、「いいえ」の選択肢をつけた。あいうえお表には、小文字や記号を加えた。2枚目は「文字」、「手話」など障害によって異なる会話方法に応じた要望事項を記載。筆談用のスペースも設けるなど、使い勝手をよくした。「指さし会話シート」は左記からダウンロードできる。 https://www.kahoku.co.jp/special/spe1115/ 栃木 障害者が宿泊できる温泉旅館オープン  「社会福祉法人同愛会」(塩谷(しおや)郡塩谷町)は6月1日、障害者や高齢者が宿泊できる温泉旅館「なかが和苑(わえん)」をオープンした。  昨年に廃止された県障害者保養センター「那珂川苑(なかがわえん)」を県から購入し、客室やトイレなどを大幅に改修した。12室、宿泊利用定員52人で、客室や浴室など館内すべてがバリアフリーとなっている。  車いすの障害者と一緒に介助者も入浴できる大浴場や、ストレッチャーつきの浴室も整備し、日帰り利用客向けの休憩室も設置。施設内で障害者の就労支援や高齢者のデイサービス事業も始めた。 電話:0287−92−5511 千葉 障害者支援「キズナ」就労や住居で自活後押し  「合同会社KIZUNA」(長南(ちょうなん)町)は、障害者が就労するコーヒー豆販売店「キズナコーヒー」を茂原(もばら)市のJR茂原駅前にオープンした。同店では、コーヒー豆の焙煎(ばいせん)から販売、宅配サービスまでを手がける。さらに高齢者向け配食サービスや乾燥野菜の製造販売を事業化し、1年後には40人の障害者雇用を目ざす。  また、6月には障害者が入居するグループホームと、ペット共生型アパートが一体となった集合住宅「キズナホーム」を長南町に開設。4階建て計151室の1階が知的障害者のグループホーム、2階以上がペット共生型アパート。ユニットバスやミニキッチンのついたワンルームは月額家賃1万9千円。詳細はホームページで。 https://www.kizuna.fun/ 兵庫 障害者スポーツをみんなで支援県協会がガイドブック発行  「公益財団法人兵庫県障害者スポーツ協会」(神戸市)が、障害者スポーツを支える人を増やそうと「地域における障害者スポーツ振興へのガイドブック」を発行した。体を動かす楽しさを伝える障害者スポーツ指導員の資格の取得方法や、県内の指導員らの先行的な取組み事例などを紹介している。  競技別に県内の活動団体や練習場所をまとめた2017年版の続編。「(選手を)支える側」への参加をうながそうと関連情報を収録。障がい者スポーツ指導員の受講資格の解説や、スポーツ教室を開く際の施設点検、用具の整備などの注意点を紹介。ウェブサイト「ひょうご障害者スポーツサイト」からダウンロードもできる。 働く 静岡 遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)でマスクを地元で生産する仕組みづくり  遠州綿紬を使った「SABA(サバ)のマスク」を製造販売するバッグ・小物ブランド「SABASABA(サバサバ)」(焼津(やいづ)市)が、就労継続支援A型事業所を運営する「株式会社GR静岡事業所」(静岡市駿河(するが)区)との協働によるマスク生産を始めた。藍染の麻素材のマスクなど、特色ある商品を地元で生産する仕組みづくりを目ざす。  静岡新聞の記事で布マスクの生産体制をつくるSABASABAの試みを知ったGR静岡事業所が、協働を申し出た。「全国から注文の問合せが多数あり、1人での生産に限界があった」と同ブランドの實石(じついし)知之(ともゆき)代表。今後は市場ニーズに合ったほかの製品でも協働を視野に入れるという。詳細はSABASABAのホームページで。 広島 障害者作業所の「おやつBOX」オンライン販売  障害のある人たちが作業所などで手がける焼き菓子が、新型コロナウイルス感染防止にともなうイベント自粛で販路を失ったため、障害者福祉施設の製品を扱う「ふれ愛プラザ」(広島市中区)が、お菓子の詰合せ販売に乗り出した。  ふれ愛プラザでは、障害のある人たちが在籍する18事業所のお菓子75種類のうち、おすすめを詰め合わせた「おやつBOX」をファクスやメールからの注文で販売する。価格は税込み千円を基本に、1500円、2千円のセットもある。送料別。詳細はホームページで。 http://fureai-plaza.com/ 大分 冷凍キクラゲ製造し全国へ  キクラゲの菌床(きんしょう)栽培に取り組んでいる障害者就労継続支援B型事業所「ジョイファーム大分」(大分市)が、キクラゲの冷凍販売を始めた。  事業所では、利用者27人がイチゴやナシなど季節の農産物の生産、加工、販売に取り組んでいる。通年出荷を目標に昨年からハウス1棟で黒と白のキクラゲ計2千株を栽培。利用者は収穫や石づき除去、袋詰めなどを行う。  これまで生キクラゲは賞味期限が3〜4日と短く、販路がかぎられるのが課題だった。そこで「公益財団法人ヤマト福祉財団」(東京都中央区)の助成を受けてアルコール冷凍機を導入。真空パック後に瞬間凍結し、食感と味を保ったままの流通が可能になった。  生、乾燥、冷凍ともに黒キクラゲ450円、白いキクラゲ550円(いずれも100g、乾燥のみ18g)。問合せはジョイファーム大分まで。 電話:097−578−8705 2020年度地方アビリンピック開催予定 8月〜10月 北海道、青森県、岩手県、栃木県、群馬県、神奈川県、石川県、山梨県、兵庫県、山口県、徳島県、大分県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *  の県は開催終了(開催中止含む) ※全国アビリンピックが11月13日(金)〜11月15日(日)に、愛知県で開催されます。 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 地方アビリンピック 検索 写真のキャプション 北海道 青森県 岩手県 栃木県 群馬県 神奈川県 石川県 山梨県 兵庫県 山口県 徳島県 大分県 【P32】 掲示板 障がい特性への理解を N・N(神奈川県横浜市)  発達障がい(自閉症スペクトラム)の娘(21歳)が、現在、就労移行支援事業所(以下、「事業所」)から紹介を受け、トライアル期間を経てパート本採用間近まできています。そのなかで、強く思う事があります。障がい者雇用を進める機関を国として作っていただいておりますが、中身はこれからだなと感じています。  事業所の支援者が、一般企業に「障がい者の特性」、「働き方の理解」を促しても、なかなか理解していただけず、娘は進んでは悩み、気持ちを取り戻してはまた立ち止まりと、苦労している現状です。  事業所の方々のご苦労、利用者への理解、就労に向けての取組みは、頭の下がる思いです。  しかし、支援者の方から企業に働きかけていただいても、利益のこともあるのでしょうが、なかなか障がい者の生きにくさを理解し、当事者が無理なく働ける環境になれておりません。  仕事内容に興味がありここまできましたが、働き方が、障がい者の娘には辛いようです。優良企業とされている小さな会社ですが、少ない人数で機械を止めないように指示があり、障がいの特性で疲れやすい娘には辛いようです。また今、仕事が少ない間に、国から補助金を貰(もら)うために教育訓練を詰め込まれ、言葉での理解が困難な娘は疲弊し、仕事を数日休み、「また就活は辛いから」とふらふらになりながら出勤していきました。保護者としては大変辛い現実です。  時間をかけて、社会が変わっていくことだと思いますが、企業の理解が進み、ジョブコーチの輩出を強く望みたいと思います。私も、可能であれば保護者としてジョブコーチの学びをして、社会に貢献出来る日が来ることを望んでいます。 次号予告 ●私のひとこと  中退・不登校者向けの学習塾などを運営する株式会社キズキ代表の安田祐輔さんに、発達障害などのある方への就労支援をテーマにご執筆いただきます。 ●職場ルポ  半導体検査装置の設計開発・製造販売などを行う株式会社テセック(東京都)を訪問。支援機関と連携し、障害のある従業員の職場定着を目ざす現場を取材します。 ●グラビア  「令和2年度障害者雇用支援月間ポスター原画コンテスト」入賞作品をご紹介します。 ●編集委員が行く  大塚由紀子編集委員があいおいニッセイ同和損害保険株式会社(東京都)を訪問。発達障害のある人の雇用の取組みを紹介します。 <働く広場の読者のみなさまへ>  2020年9月号は、「令和2年度障害者雇用支援月間ポスター原画コンテスト」入賞作品の公表日の関係から、通常よりも数日遅れてお手元に届くことが見込まれています。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いします。ご不明の点は、当機構企画部情報公開広報課(電話043-213-6216)までおたずねください。 本誌を購入するには―― 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ●インターネットでのお申込み 富士山マガジンサービス 検索 ●お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.or.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821  FAX 03−5484−8822 8月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和2年7月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 山陽新聞社会事業団 専務理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【P33】 第28回 職業リハビリテーション研究・実践発表会 入場無料 令和2年11月24日(火)・25日(水) 東京ビッグサイト で開催! みなさまのご参加をお待ちしています。  「職業リハビリテーション研究・実践発表会」は、職業リハビリテーションに関する研究成果の発表をはじめ、就労支援に関する実践事例や企業における障害者の雇用事例を紹介し、参加者相互の意見交換や情報共有を図るものです。昨年は1,228人の方が参加され、参加者相互の意見交換や情報共有が行われました。  今年は以下の日程で開催します。 11月24日(火) ●基礎講座  職業リハビリテーションに関する基礎的事項に関する講義「精神障害」「発達障害」「高次脳機能障害」 ●支援技法普及講習  職業センターで開発した支援技法の普及講習 ●特別講演  「障害者雇用の経営改善効果 〜戦力化と相乗効果〜」影山 摩子弥 氏(横浜市立大学都市社会文化研究科 教授) ●パネルディスカッションT  「障害者を継続雇用するためのノウハウ〜企業在籍型ジョブコーチの活躍〜」 11月25日(水) ●研究発表(口頭発表)  テーマごとに分科会を設定 ●研究発表(ポスター発表)  発表者による説明・参加者との討議 ●パネルディスカッションU  「障害のある社員の活躍のためのICT活用」 研究発表の内容  障害者職業総合センターの研究成果の発表に加え、企業や教育、福祉、医療、研究機関など、さまざまな分野の方々が発表をします。昨年は「障害者雇用制度の改正等に伴う企業意識・行動の変化に関する研究」「就労に必要な移動等に困難がある障害者の実状等に関する調査−ヒアリング調査結果から−」「支援困難と判断された精神障害者及び発達障害者に対する支援の実態に関する調査」など114題の発表が行われました。  過去の論文集は、 職リハ発表会 検索 でご覧いただけます。 参加者の募集などについて  参加者の募集とプログラムの詳細は、9月初旬ごろ下記ホームページなどでご案内する予定です。 ※新型コロナウィルス感染症の影響により、変更する場合があります。 事務局 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 研究企画部 企画調整室(千葉市美浜区若葉3-1-3) TEL:043-297-9067 E-Mail:vrsr@jeed.or.jp HP:https://www.nivr.jeed.or.jp/ 写真のキャプション 特別講演の様子 ポスター発表の様子 【裏表紙】 職業訓練を受けている障害者の採用をお考えの事業主のみなさまへ 国立職業リハビリテーションセンター(中央障害者職業能力開発校)および国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(吉備高原障害者職業能力開発校)では、障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しており、訓練生の採用をお考えの事業主のみなさまに次のような取組みを行っています。 詳細についてはホームページをご覧ください。 訓練生情報の公開 *訓練生(訓練修了者と修了予定者のうち掲載希望者のみ)の情報をホームページで公開しています。 国立職業リハビリテーションセンター(毎月1日、15日に情報更新) http://www.nvrcd.ac.jp/employer/trainee/index.html 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(毎月15日に情報更新) http://www.kibireha.jeed.or.jp/kyushoku/info.html 企業連携職業訓練の実施 *障害者の雇入れを検討している企業との密接な連携により、特注型の訓練メニューによるセンター内での訓練と企業内での訓練を組み合わせた採用・職場定着のための支援(企業連携職業訓練)を実施しています。 国立職業リハビリテーションセンター http://www.nvrcd.ac.jp/employer/support/index.html 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター http://www.kibireha.jeed.or.jp/business/company.html このほかにも疾病、事故等により受障した休職者の方が、職場復帰するにあたり必要な技術を身につけるための職業訓練も実施しています。 お問合せ先 国立職業リハビリテーションセンター 職業指導部 職業指導課 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 Tel:04-2995-1207 Fax:04-2995-1277 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 職業評価指導部 職業指導課 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 Tel:0866-56-9002 Fax:0866-56-7636 8月号 令和2年7月25日発行 通巻514号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)