【表紙】 令和2年9月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第516号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2020/10 No.516 職場ルポ 人材育成の環境を整え、職域拡大もはかる 東京海上ビジネスサポート株式会社(東京都) グラビア 接客が天職です〜「全国アビリンピック」金メダリストの活躍〜 スターバックス コーヒー イオンモール岡山店(岡山県) 細尾希良々さん 編集委員が行く 共生社会を目ざす企業家集団 〜中小企業家同友会 障害者問題委員会 活動の歴史〜 中小企業家同友会全国協議会 私のひとこと Inclusive Vocationの実現へ〜就労支援の40年からさらなる進展を〜 東洋英和女学院大学 人間科学部 教授 石渡和実さん 「初めての火の使い方」石川県・潟見(かたみ)武龍(たける)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 10月号 【前頁】 心のアート ブーツ 三原俊弘 (NPO法人サポートセンターどりーむ) 素材:30号画用紙、アクリル絵の具/サイズ:縦110p×横85.5p いつまでもこのブーツのように 履きつぶしたブーツのごとく 味がある人でありますように… 三原俊弘(みはらとしひろ)  1972(昭和47)年4月14日生まれ。  17歳で高校を中退、仕事を転々としました。現場作業員、スナックの店員、自衛隊を経験、21歳で統合失調症を患い、幻聴、幻覚にさいなまれました。その間、死も考えました。  そのとき、僕を救ってくれたのが音楽、ロック、パンクファッションでした。  その後、絵を描くようになり、生きる喜びを知りました。音楽と絵は私のなかで連動していて、いつも輝きを与えてくれます。  僕の人生は現在進行形であり、カラーです。輝くということは「己れは己れ」という気持ちを持ち続けること、流されない己れを信じていくことです。  私はロック好きで、ロック魂を持っているつもりです。ロックは反骨ですが、それは社会に対してではなく、自分へのアンチ、自分を裏切り続けることだと思っています。自分を裏切るのは常に己れに対して挑戦し続けることです。それは絵であり、アートだと自負しております。  私はまだ自分のことをアーティストだと思っておりません。挑戦し続け、「未完成の己れをさらけ出すことで、やがて本物のアーティストになれるのではないか」と思っています。アートも未完成です。だからこそいいのです。アートに挑戦することが、私の人生の仕事だと思っています。 文:三原俊弘 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2020年10月号 NO.516 心のアート−−前頁 ブーツ 作者:三原俊弘(NPO法人サポートセンターどりーむ) 私のひとこと−−2 Inclusive Vocationの実現へ〜就労支援の40年からさらなる進展を〜 東洋英和女学院大学 人間科学部 教授 石渡和実さん 職場ルポ−−4 人材育成の環境を整え、職域拡大もはかる 東京海上ビジネスサポート株式会社(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ−−10 はじめての障害者雇用 最終回 JEEDインフォメーション−−12 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」の活用事例/国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター訓練生募集のお知らせ グラビア−−15 接客が天職です〜「全国アビリンピック」金メダリストの活躍〜 スターバックス コーヒー イオンモール岡山店(岡山県) 細尾希良々さん 写真/文:官野貴 エッセイ−−19 あなたはどう思いますか? 第1回 香川大学 教育学部 教授 坂井聡 編集委員が行く−−20 共生社会を目ざす企業家集団〜中小企業家同友会 障害者問題委員会 活動の歴史〜 中小企業家同友会全国協議会 編集委員 三鴨岐子 省庁だより−−26 ハローワークを通じた「障害者の就職件数」が11年連続で増加 〜令和元年度 障害者の職業紹介状況等〜 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 研究開発レポート−−28 アシスティブテクノロジーを活用した高次脳機能障害者の就労支援 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル−−30 掲示板・次号予告−−32 読者の声 表紙絵の説明 「『わくワーク』という行事があって、この場面がすごく印象に残っていたので選びました。いろいろな物があって描くのがたいへんで、途中であきらめそうになりました。でも、美術の先生からアドバイスを受けて、直してみたり、塗ってみたりして、だんだん楽しくなりました」 (令和元年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 中学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.or.jp/) 【P2-3】 私のひとこと Inclusive Vocationの実現へ 〜就労支援の40年からさらなる進展を〜 東洋英和女学院大学人間科学部 教授 石渡和実 国際障害者年から40年「自立観」、「障害観」の変化  私が社会人となったのは1981(昭和56)年、国連が定めた国際障害者年という年です。「完全参加と平等」を掲げ、障害のある人も障害のない人と同様に「地域でのそれぞれの暮らし」を実現することが求められたのです。あれから40年、この「働く広場」も創刊から40年余りということですが、この間、障害者支援のあり方も大きく変化しています。  当時、脳性マヒなど障害が重くて働きたくても働くことができず、「社会のお荷物」などと呼ばれてしまうこともあった人々の意識が、大きく変わりました。アメリカの自立生活運動などの影響もあり、「自立とは働いて納税者になるだけではない。自分が決めた生き方を貫くこと、むしろ精神的自立だ」という考え方も広まり、「自立観のコペルニクス的転回」などといわれました。  そのころ私はリハビリテーションセンターに勤務し、「障害を克服」して障害がない人と同じように働くために、職業訓練などの「がんばり」を障害のある人に求めていました。しかし、いまは「障害があるままでも働ける職場環境の整備」の重要性が認識されるなど、障害者雇用に対する考え方も大きく変わりました。これは、2006(平成18)年12月に国連総会で採択された、障害者権利条約の「合理的配慮」を提供するということにもなり、「ともに働く」が確実に広がっています。条約の最大の注目点ともいわれる、長く定説とされてきた、障害は病気や外傷などから生じる個人の問題であり、医療を必要とするものという「医学モデル」から、障害はおもに社会によってつくられた状況に原因があるとする「社会モデル」への障害観の転換の成果です。  さらに最近は、歩けないなどの機能障害は欠陥ではなく多様性の一つ、とみなす「人権モデル」の障害観も注目されています。障害者が働けないことは本人の責任ではなく、社会のあり方が問われるべきであり、障害者を否定的に見る意識こそが問題なのだ、ということもできるでしょう。 ノーマライゼーションからインクルージョンへ  国際障害者年を機に、「障害のある人もない人もともに生きる」というノーマライゼーション(Normalization)の考え方が日本にも浸透したといわれます。しかし、障害者権利条約にはノーマライゼーションという言葉はまったく出てきません。代わって登場したのがインクルージョン(Inclusion)です。  インクルージョンとは、「include(包み込む)」の名詞形で、「exclude(排除する)」の反対語です。それまでの歴史では、障害のある人たちを地域から隔離した施設に「排除」してきました。しかし、このように障害者を地域から排除するのではなく、包み込んでともに暮らすというのがインクルージョンの考え方です。そのためには、障害による困難を社会が支え、合理的配慮を提供することが求められます。こうした支援が必要なのは、障害者だけではありません。お年寄りや子ども、文化や宗教が異なる外国から来た人にもいろいろな配慮や支援が必要となります。「健常者」といわれる人であったとしても、自分の力だけで生きていくことはできないのです。  このような考え方に早くから注目したのが、知的障害者の親の会の国際組織です。1995年には組織名を「Inclusion International(国際育成会連盟)」と改称し、「完全な市民権(Full Citizenship)」ということを強調しました。彼らは「重要なことは、単に場をともにするという物理的なことではなく、社会における地位(position)と役割(role)が保障され、関係性(relationship)が保てることで、これこそが真の共生、市民として尊重されていることだ」と主張したのです。私はこの三つのキーワードを、国内のさまざまな実践をふまえて、「居場所」、「役割」、「ささえあい」と紹介しています。  また、日本では、日本地域福祉学会が2006年6月の第20回年次大会で「これからの地域福祉の理念はインクルージョン」と宣言し、この理念を「障害のある人も、介護が必要なお年寄りも、小さな子どもも、外国籍の人も、すべての人が必要な支援を受け、地域に包み込まれて、役割をもって、活き活きと暮らす」としました。  前述の三つのキーワードに関連してご紹介したいのが、川崎市高津区にある「日本理化学工業株式会社」です。同社は、チョーク業界を牽引(けんいん)する会社として数々のヒット商品を生み出し、平成22年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰の内閣総理大臣表彰(内閣府)など、さまざまな賞を受けています。全従業員の7割以上が知的障害を有し、障害者雇用を先駆的に行ってきた会社としても注目されています。  昨年亡くなられた前会長、大山(おおやま)泰弘(やすひろ)氏の言葉は有名です。  「あるお坊さんが人間の『4つの幸せ』ということを言っていた。@人に愛される、A人にほめられる、B人の役に立つ、C人から必要とされる、である。企業で働くからこそ、4つの幸せのなかの、特にABCがかなえられる。このような幸せになれる機会(働くこと)を、知的障害者から奪うべきではない」  まさに、インクルージョンの「居場所、役割、ささえあい」を実現しているのです。 インクルージョンと就労支援  1960年制定の身体障害者雇用促進法から始まり、今日までに知的障害、精神障害と障害者全体へと支援の対象が広がりました。これは法律の改正にともなう変化です。さらに、高齢者、求職者も含めた支援へと拡大していくことは、「働くことを求めるすべての人」を対象とし、「だれ一人排除しない」というインクルージョン発想だと思います。「幸せ」、「生きがい」につながる居場所と役割を保障し、多様な人がともに働くからこそ「ささえあい」が生まれるのです。  文部科学省は「Inclusive Education(インクルーシブ教育)」(※1)をしばしば強調しますが、現実とのギャップは大きいと感じます。また、「Inclusive Vocation(インクルーシブ就労)」(※2)という言葉はあまり聞いたことがないのですが、40年余りの歴史で就労支援が果たしてきた役割は、まさに働くことにおけるインクルージョンの実現です。コロナ禍(か)で、すでに数多くの失業者が出ています。このような新しい課題も確実に受け止めて、就労支援の役割や意義をさらに広げていく「Inclusive Vocation」が私たちに求められています。 ※1 インクルーシブ教育:障害のある人とない人がともに学ぶことを通して、共生社会の実現に貢献しようという考え方 ※2 インクルーシブ就労:ここでは、障害のある人とない人がともに働くことを通して、それぞれが生きがいをもつとともに、共生社会の実現に貢献しようという考え方のこと 石渡和実 (いしわたかずみ)  1952(昭和27)年生まれ。現在の埼玉県深谷市出身。  1981年より、埼玉県や横浜市のリハビリテーションセンターで10年間、障害者の就労や福祉サービスの相談を担当。現在は東洋英和女学院大学教授で、専門は「障害者福祉論」、「人権論」。1997(平成9)年に「湘南ふくしネットワーク」のオンブズマンとなり、障害者、高齢者、児童など、多彩な権利擁護活動にかかわる。2016年、津久井やまゆり園事件の神奈川県検証委員長も務めた。  著書に、『Q&A 障害者問題の基礎知識』(明石書店)、『「当事者主体」の視点に立つソーシャルワーク はじめて学ぶ障害者福祉』(編著、みらい)などがある。 【P4-9】 職場ルポ 人材育成の環境を整え、職域拡大もはかる ―東京海上ビジネスサポート株式会社(東京都)― 障害のある社員190人超が働く特例子会社では、一人ひとりが指導員らとともに主体的に成長しながら働き続けられる職場環境の整備を目ざしている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ 東京海上ビジネスサポート株式会社 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-2-1 東京海上日動ビル新館12階 TEL 03-5223-0131 FAX 03-5223-0460 Keyword:知的障害、精神障害、特例子会社、事務、物流、カフェ、清掃、社内インターンシップ POINT 1 多岐にわたる業務を「社内インターン制度」で挑戦しやすく 2 多面的な人材育成の取組みで、主体的に働き続けられる環境づくり 3 定年後まで見据えた雇用条件の整備や社会的支援の情報共有も 10周年を迎えた特例子会社  損害保険グループで国内最大手の一つ「東京海上ホールディングス株式会社」は2010(平成22)年、業界初となる特例子会社として「東京海上ビジネスサポート株式会社」(以下、「TMBS」)を設立した。  34人からスタートした社員数は、この10年で約10倍の計336人に、うち障害のある社員も191人(身体障害5人、知的障害84人、精神障害102人)まで増えた。グループ適用5社の雇用率は2・4%(2020年6月1日現在)。東京本社をはじめ、名古屋・大阪・九州支社にも拠点を持つ大きな組織だ。  東京海上グループから請け負っているおもな業務は、@書類の作成・発送、Aデータ入力、B機密文書の回収・シュレッダー、C販促品のノベルティー作成・販売、D通販文具・コピー用紙などのあっせん販売、E印刷、F社内物流、G重要書類・帳票・文書保存箱の保管・管理、H総務代行、Iコーヒー販売、J清掃、と多岐にわたる。最初はデータ入力や封入といった業務だったが、実績を積み重ねながら少しずつ拡大してきたという。  TMBSでは、指導員の支援体制のもとで働く社員を「チャレンジサポーター」と呼んでいる。まずはチャレンジサポーターたちが働く現場を見学させてもらった。 社員食堂の一角にカフェ  TMBSの東京本社は、東京海上ホールディングス本社などが入る「東京海上日動ビル新館」にある。ビル内の社員食堂の一角にあるカフェでは、3人のチャレンジサポーターがフェイスシールドとマスクを着用しながらコーヒーなどを販売していた。  その一人、野坂(のさか)瞳(ひとみ)さん(22歳)は、特別支援学校の都立志村学園卒業後の2016年に入社。最初は印刷やデータ入力を担当していたが、2017年のカフェ業務スタートに合わせて異動してきた。もともと学校では食品コースを専攻し、校内カフェでの接客経験を買われたという。指導員を務める業務支援部第1グループ副主任の喜屋武(きやたけ)真由子(まゆこ)さんは「学校で身につけたていねいな言葉づかいや電話注文の受け方などは、見ていてとても頼もしく、安心して任せられます」と太鼓判を押す。  野坂さんは「常連のお客さんが私を名前で呼んで挨拶してくれるようになり、やりがいを感じています」と話す一方、仕事中は「一度に3杯以上を注文されると計算や伝達が混乱します。いったんメモに書いて、落ちついて計算し、メモは同僚に渡して間違わないようつくってもらっています」という。カフェ業務は、同じ新館9階と本館11階でも出張販売店を運営し、会議室などへの注文配達も行っている。 物流部門では特殊業務も  次に訪ねたのは、物流部新館分室。ここは、グループ各社に流通する書類の100近い部署への仕分けや館内デリバリー、郵便物の受発送などを担当している。この春に異動してきたばかりの矢津(やづ)航大(こうだい)さん(24歳)は、「最初は部署を覚えるのにも苦労しましたが、徐々にスピードも上がり順調です」と笑顔で話す。  いまは、特殊な「郵便料金計器」を使った郵便物発送も担当している。伝票に書き込む項目が多いうえに、「料金の請求先を部署別に打ち込まなければならないので、間違わないよう指差し確認をしています」と作業を見せてくれた。同じ職場の先輩社員は「矢津さんは毎回確認をおこたらずていねいなので、いままでミスはありません」と話す。  特別支援学校の都立南大沢学園を卒業後入社し6年目という矢津さんは、以前も特殊な業務を担当していた。東京海上日動火災保険に届く、どの部署宛てかわからない「不明郵便の特定作業」だ。郵便物の中身を確認し、部署につながる手がかりから探し出す。総務部に1人で出向し、「1日30件分を抱えるときもありましたが、あせらず指導員にアドバイスをもらいながら進めました。宛先が判明するたびに達成感がありました」とふり返る。矢津さんの実績のおかげで、TMBSが業務として請け負うことになり、いまは別の同僚に引き継いでいる。  矢津さんの異動は、「社内インターンシップ制度」によるものだ。自分の職場以外も体験してみたいと思う全社員を後押しするためのもので、所属上司の推薦と受入れ側の承諾があれば通年で1週間から3カ月間のトライアルを実施している。顧問の山下(やました)享子(きょうこ)さんが説明する。「新たな社内マッチングも進み、物流部でもチャレンジサポーターを無理なく増やすことにも成功しました。社内インターンシップからそのまま異動するケースが多いですが、なかには『カフェに行ってみたい』と挑戦してみたものの、『思ったよりたいへんだった』と元の部署に戻る人もいます」  また、物流部など一般社員も多い職場では、事前にチャレンジサポーターが自分のことを紹介する「ナビゲーションシート」を作成して、職場での配慮や理解に役立てているそうだ。 チーム全員で清掃業務の最善策をはかる  TMBSは2019年から、新たに清掃業務をスタートさせた。新宿区西落合に新しく研修所「東京海上キャリアデベロップメントセンター」が建てられたのがきっかけだ。宿泊設備や食堂もある6階建て延床面積9995uの研修所を、7人のチャレンジサポーターと指導員で日々清掃している。  指導員を務める業務支援部第2グループ副主任の長谷(はせ)慶一(けいいち)さんは、立上げからかかわった。清掃業務を手がけるグループ会社の「東京海上日動ファシリティサービス株式会社」に協力を仰ぎ、業務手順などの助言をもらったが、「学校で清掃業務を学んだり前職で経験したりしていたチャレンジサポーターもいて心強かったですね。みんなで一緒に最善のやり方を模索してきました」という。  業務は朝8時からスタート。正面玄関から外周、駐車場、公道を手分けして清掃し、カフェテリア・食堂は一斉に行う。休憩をはさみ階段、ホール、再びカフェテリア、トイレ、喫煙室、最後に庭木の水やりで午後4時に終了となる。  鴨下(かもした)海斗(かいと)さん(19歳)は、清掃業務を希望して2019年に入社した1人。特別支援学校の都立永福学園在学時に、「公益社団法人全国ビルメンテナンス協会」が開催するビルクリーニング技能競技会を見学して「こんなプロになりたい」と志したという。実際に働くようになってからは、「手順がたいへんなカーペット掃除から積極的に担当するなど、苦手な領域をなくしていくよう努力しました」と話す。「どうしたらもっと効率的に、しっかりと清掃できるかをチーム内で話し合うのもやりがいがあります。たまに意見が衝突すると、長谷さんが調整してよい解決法を提示してくれます」。  鴨下さんはビルクリーニング技能検定2級合格を目ざして独学で勉強しており、「来年はアビリンピックにも挑戦したい」と意欲的だ。プライベートでは小学4年生から始めた卓球で、全国障害者スポーツ大会の東京代表に2年連続で選ばれ、スペシャルオリンピックスのチームでも練習していた。上司が、東京海上グループの卓球部に所属できるよう交渉中だという。 常駐型のチームも誕生  TMBSは、清掃業務と同時に、もう一つ大きな業務委託も昨年スタートさせた。虎ノ門にある東京海上グループ本店損害第2部での事務業務だ。これまでと違うのは、4〜6人のチャレンジサポーターが指導員とともに一般部署内にチームで常駐するという点だ。現場を陣頭指揮してきた業務支援部長の伊原(いはら)裕(ゆう)さんが、経緯を説明してくれた。  「以前、先方の部長が、定期的に開催しているTMBS の職場見学に訪れてくれました。あるとき同部の派遣社員が不足したのを機に『こちらで一緒にできないか』という話が来たので、チャンスを逃すまいと、すぐに準備に入りました」  昨年4月から業務内容の打合せが始まり、具体的な計画や異動させるチャレンジサポーターの選定準備などを進めた。7月には指導員が1週間研修し、マニュアルを作成する一方、常駐先の社員を対象に6回に分けて勉強会も開催。「それまで社内で実施してきた『障がい理解推進勉強会』のプログラムを活用し、特性の理解やサポートについて説明しましたが、あまり身構えないようにとも伝えました」と伊原さん。  社内インターンシップ制度による候補4人がトライアル勤務を実施。9月から本格的な業務委託が始まった。請け負うのは、フォルダー仕分け・取寄せ・返却作業。具体的には、保険金の支払いにかかわる書類の番号を転記したり仕分けたりしてファイルにまとめるというものだが、複雑で確認事項が多いうえに、小さなミスが大きなトラブルに結びつきかねない緊張度の高い業務だ。  指導員を務める業務支援部第1グループ副主任の富永(とみなが)佳代子(かよこ)さんによると、業務を完全に任される形だったため、とにかくミスをしないよう二重三重のチェックを徹底したという。「カードの書き方も多岐にわたり、覚えるだけでたいへんです。毎朝クイズ形式で『このカードはどうだったっけ?』とみんなで確認しあったり復習したりしながら、実践で慣れていきました」とふり返る。  当初は、半日で500件こなすべき作業を1日で300件ほどしか終えられなかった。ただ先方もある程度時間がかかることを理解してくれていたので、あせらず手順や確認プロセスを見直し、3カ月後には1日かからずに1000件突破できたという。  グループ社員と同じフロアで勤務しているため、チャレンジサポーターが書類を持っていくこともある。毎朝、大きな声で「おはようございます」と挨拶して入ってくる姿に、社員たちからは「聞いていて気持ちがいい。自分たちが忘れていた姿勢だ」といった声が届いているそうだ。  現在は4人が常駐し、忙しい午前中だけさらに2人が加わっている。常駐メンバーの1人である安田(やすだ)尚弘(なおひろ)さん(27歳)は、横浜市立二つ橋高等特別支援学校在学中の職場実習を経て入社し9年目。もともと入力業務をしていたが、経験を買われ虎ノ門チームに推薦された。「わからないことはすぐ富永さんに聞き、直すべきところもすぐ実践するようにして慣れていきました」とふり返る。  富永さんは「安田さんは控えめな性格ですが、自分の作業が終わったあとも、ほかの人が遅れているのを見つけて手伝ったり、できていない作業に気づいて率先してやってくれたりします。後輩社員からも『お手本にしたい』といわれるようになりました」と明かす。安田さんは昨年末、常駐先の納会で社員100人ぐらいの前でギターの弾き語りを披露し、大いに盛り上げたそうだ。  虎ノ門チームの取組みは、社内で大きな反響を呼んだ。東京海上グループで毎年開催している挑戦推進大会の「グループ総合力の部」で見事に入賞。さらにグループCEO賞の受賞も決まった。  業務拡大の姿勢は、新たな受注先の開拓も呼んでいる。昨年、東京海上日動火災保険株式会社が東京都と連携して、訪日外国人向けの旅行保険つき乗車券を発売することになり、そのチケットなどを入れたパスポートキットの製作をTMBSが請け負うことになった。取引先がグループ会社ではない、初めての例だ。 主体的に働き続ける「成功循環サイクル」  TMBSでは、各部署・支社・拠点で働くチャレンジサポーター一人ひとりが「いきいきと主体的に働き続けるための成功循環サイクル」を目ざし、多面的な人材育成に取り組んでいる。「循環サイクル」は大きく四つの「質」に分かれる。 @関係の質…5人に1人の指導員体制で、日ごろの声かけ、毎月のふり返りシート共有(本人評価と指導員コメント)、定期面談(3カ月に1回)によって一人ひとりの考えや思いを理解。お互いに「人」として受け入れ合う。 A思考の質…チャレンジサポーターだけで完結できるような仕事の仕組み・マニュアルを指導員が作成し、作業の進捗状況やスケジュールの見える化、チームミーティングなどで、それぞれ主体的に考える環境をつくる。 B行動の質…グループ社員共通の行動指針「Our(アワー)8」をわかりやすくした「基本スタンス8項目」を記したカードを全員携行。業務上で成功したときや失敗したときに、どの部分でプラス・マイナスだったのかふり返る。また各部・支社では全社員向けにSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)研修を定期的に開催し、社内外のコミュニケーション向上に役立てる。 C結果の質…年3回の指導員との面接は、考課のためではなく、動機づけや課題認識を重視したコミュニケーションの場とする。考課については評価のばらつき解消のため「人事虎の巻」を作成。@の「関係の質」向上につなげる。  さらにTMBS社員全員のモチベーションを上げる取組みの一つに、『グッドジョブ賞』表彰制度がある。日々の業務上での工夫や新たに挑戦したことを各部・支社から選んでもらい、大賞1件と特別賞数件を表彰する。  2017年度からは、グループ会社で行っている「マジきら会」という社内意見交換会を、TMBSでも社内向けに企画している。日ごろは別部署のため顔を合わせないような社員同士が10人ほどのグループに分かれ、役員や部長をファシリテーターに迎え「真面目な話を気楽にする」という。事前に『働きやすい会社にするにはどうしたらいいか』といったテーマをいくつか用意し、役員らへの質問も受けつける。結論は求めない。  常務取締役で人事総務部長の石川(いしかわ)孝弘(たかひろ)さんも、この会を楽しみにしているという。「ざっくばらんとしたやり取りのなかで、思いがけず熱い思いを聞き、私が感動することもあります。会のあと、ある支社では、体調不良で欠勤している社員を心配した同僚たちが、自発的に集まり『なにかできることはないか』と議論しあったと聞きました。マジきら会が、社員同士の新しい交流や動きのきっかけにもなっていると感じています」  さらに全国に広がるTMBS各現場の情報や取組みを共有しようと、2017年にWeb媒体「JINKATSU NEWS」の配信をスタート。翌年には紙媒体の社内報「スクラム」も創刊し、年2回のペースで発行している。 特定従業員への退職金制度  チャレンジサポーターが長く働き続けていくうえでは、雇用条件の充実も重要だ。もともとTMBSでは、1年更新の有期雇用の契約社員からスタートし、行動評価・業務評価によって無期雇用の特定従業員になることができる。その後は一般従業員への登用もあり、現在31人が一般従業員となっている。  さらにチャレンジサポーター向けの新しいキャリアアップの道として、今年4月に「チームリーダー」と「マイスター」という新しい役職をつくった。  「一般従業員になると、人事評価もシビアにならざるを得ません。新たな役職は、チャレンジサポーターがキャリアを積み重ねていく目標にしてほしいと思っています」と山下さんは話す。  特別支援学校からの入社が多く、まだ社員の平均年齢も若いTMBSだが、長期的な視野に立った社員一人ひとりの課題についても検討を始めている。その一つが「チャレンジサポーターの親がいなくなった後の支援」だと石川さんが説明してくれた。  「昨年の議事外の取締役会で、特定従業員に退職金制度がないことが指摘され、話し合った結果、さっそく今年4月から新設できました」  役員会では、障害基礎年金の課題も出た。調査してみたところ、当時180人のチャレンジサポーターのうち受給者は60人ほどで、あとは「不明」、「未受給」だったという。ある支社で理由を調べたところ「そもそも申請していない」ケースがほとんどだった。そこで昨年、「知りたいこと勉強会」と称して社会保険労務士を招き申請方法について学んでもらったり、親や支援機関の関係者らを招いた懇談会で、「親なきあと相談室」を主宰する渡部(わたなべ)伸(しん)さん(※)に講演してもらったりしたそうだ。  「本人のプライベートな生活面のことなので、会社としてどこまでふみ込むべきか悩ましい部分もありますが、しかし、生活の安定は、就労の大前提でもあります。10年20年後のことを想定し、私たちができる支援も含め、本人たちが安心して働き続けられる職場環境を整えながら、今後も引き続き、東京海上グループを力強く支えていける組織にしていきたいと考えています」  できうるかぎりの取組みを進めてきたTMBSは、他企業や学校・支援機関などからの見学者を随時受け入れ、職場の工夫やアイデアを詳しく伝えている。 ※本誌2020年7月号の「私のひとこと」にご登場いただきました。当機構ホームページでご覧になれます 働く広場 2020年7月号 検索 写真のキャプション 社員食堂に併設されたカフェでは、会議室への配達なども行っている カフェで指導にあたる喜屋武真由子さん カフェで働く野坂瞳さんは入社4年目 清掃業務の指導にあたる長谷慶一さん 東京海上キャリアデベロップメントセンター 顧問(人材育成サポーター)の山下享子さん 郵便物を仕分ける矢津航大さん。郵便料金計器を使った郵便物の発送も担当する 虎ノ門のオフィスでは、チャレンジサポーター4人が常駐し、業務にあたる(写真提供:東京海上ビジネスサポート株式会社) 鴨下さんは、アビリンピック出場を目ざしている カフェテリアの消毒を行う鴨下海斗さん(左) 業務支援部長、オフィスサポート部長の伊原裕さん 虎ノ門のオフィスで指導する富永佳代子さん 虎ノ門のオフィスで働く安田尚弘さん 常務取締役、人事総務部長の石川孝弘さん TMBSの社内報「スクラム」 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用 最終回  障害者雇用に取り組む第一歩として押さえておきたい情報についての、事業主(担当者)のみなさまに向けた連載もいよいよ最終回です。これまで紹介したポイントを整理し、雇用計画から採用、定着までのステップごとに活用できる支援機関や制度、役立つ資料などを紹介します。 (協力)中央障害者雇用情報センター  障害者雇用支援ネットワークコーディネーター 礒邉豊司さん、内田博之さん はじめての障害者雇用の流れ  はじめて障害者雇用を進めていく際は、着実にステップをふむことが大切です。ステップごとの対処事項や相談・支援機関を図表1・2にまとめました。 障害者雇用に役立つ資料  当機構(JEED)では、事業主が障害者雇用を進めるうえで参考になる資料を、冊子や動画などにまとめ配布しています。ホームページからもダウンロードできますので、ぜひご活用ください。 問合せ先:雇用開発推進部雇用開発課 (電話043−297−9513) ホームページ検索は「JEED」→「障害者の雇用支援」→「各種資料」→「ハンドブック・マニュアル等」 おすすめ資料 @冊子「障害者の職場定着と戦力化障害者雇用があまり進んでいない業種における雇用事例」  障害者雇用があまり進んでいない業種(※1)に着目し、主に中小企業における障害者の職場定着と戦力化に取り組む14事例を掲載。企業トップが語る障害者雇用の経営上のメリットなどの紹介や、@社内の理解促進、A採用した障害者の戦力化、B職場定着について、直面した課題をどのように解決したかをまとめています。 A動画・DVD「みんな輝く職場へ〜事例から学ぶ合理的配慮の提供〜」  障害のある人が働くにあたり必要とされる合理的配慮とは何か、どのように取り組めばよいか悩む事業主の方にもわかりやすく、ポイントの解説や障害種別ごとの取組み事例を紹介しています。 B冊子「障害者雇用マニュアルコミック版」(No1〜6)  障害者雇用に関する問題点の解消のためのノウハウや具体的な雇用事例を、障害別(注)にコミック形式でまとめたマニュアルです。 (注)視覚障害者・知的障害者・聴覚障害者・精神障害者・発達障害者・高次脳機能障害者 C冊子「障害者雇用職場改善好事例集」  障害者の雇用管理や雇用形態、職場環境、職域開発などについて事業所が創意・工夫して実践している取組みを、テーマ別に紹介した事例集です。最新の令和元(2019)年度のテーマは、「中高年齢層の障害のある方の雇用継続」です。  最後に今回の連載に協力いただき、「迷ったときは中央障害者雇用情報センターに気軽にご相談ください」(※2)と話す障害者雇用支援ネットワークコーディネーターの礒邉豊司さんと内田博之さんに、障害者雇用に取り組むみなさまに激励メッセージもいただきました。 礒邉(いそべ)豊司(とよし)さん  障害者雇用にたずさわってきた経験のなかで、印象に残る二人の指導員のエピソードを紹介します。一人は60代のベテラン清掃員の女性です。普段は口下手ですが、草刈り鎌の使い方を間違った人に「ケガしてしまうよ!」と本気で叱っていました。彼女が用事で1週間不在にしたときは、メンバーが次々に休んでしまい、いかに彼女が信頼されていたかを知りました。  もう一人は、ある精神保健福祉士の指導員です。メンバー同士のトラブルに真正面から向き合っていました。ある日、知的障害のあるメンバーが自閉症のある同僚に大声で怒鳴り、その同僚が恐怖で体が硬直してしまうということがありました。指導員は怒鳴った彼を面談室に連れて行き、泣いて叱りました。感情的な叱咤(しった)はよくないことですが、その彼には「僕のために泣いている」という本気さが伝わったのでしょう。のちに200人以上いる障害のある社員のなかで数人しかいないリーダーに昇格しました。  障害者とともに働く人たちにお願いしたいのは一つ。「人対人として、本気でつき合ってほしい」ということです。 内田(うちだ)博之(ひろゆき)さん  「障害者雇用ができるのか不安だ」と相談に訪れる企業担当者の方たちには、いつも「むずかしく考えず、怖がらず、まずは一人、二人から採用してみてください」と話しています。  私が職場で障害者雇用に取り組み始めたときは、仕事がしやすくてできるだけ私の目の届く範囲で仕事ができるよう調整し、ワンフロアに30人ほど雇用しました。私自身の仕事を手伝ってもらったり、封入作業なども一緒に取り組んでいくことで、本人の特性や適材適所、支援・配慮すべきところが見えてきます。そして役所の仕事を請け負い、納期に間に合うようみんなで手分けをしながら作業して納品するという達成感のある仕事もしました。障害者雇用を進める担当者は、自分が体験することから始めるのが一番です。  そして日々心がけてほしいのは「声かけ」です。通りすがりでも「困ったことはないか」、「体調はどう?」と声をかけてください。本人にとって自宅以外の会社という居場所ができたのですから、「明日も行こう」と思えるような職場にしてください。職場の身近な人とのかかわりが大切です。 ※1 紹介業種…製造、情報サービス、道路貨物運送、卸売、小売、教育、娯楽、飲食など ※2 中央障害者雇用情報センター TEL:03-5638-2792 E-mail:syougai-soudan@jeed.or.jp 【図表1】はじめての障害者雇用の進め方 ステップ1 理解を深める おもな対処事項 ・雇用事例の把握 ・雇用制度の理解 ・支援機関の把握 ・経営者・社員の理解促進 具体的行動 ・障害者雇用事業所や特別支援学校の見学 ・障害者雇用事例リファレンスサービス等を活用した事例収集 ・ハローワーク等支援機関への相談 ・社員研修の実施 ・啓発資料の配布 ・障害者実習生の受入れ ステップ2 職務の選定 おもな対処事項 ・従事職務の選定、創出 ・配置部署の選定 具体的行動 ・社内での検討 ・支援機関への相談 ステップ3 雇用条件・採用計画の決定、受入れ態勢の整備 おもな対処事項 ・雇用形態、就業時間、賃金などの決定 ・職場環境の見直し ・教育訓練体制の整備 ・社内意識の向上 ・採用計画の作成 具体的行動 ・施設等の改造、ソフト面の解決策の検討 ・指導担当者の選任 ・就労支援機器貸出制度の活用 ・受入れ部署社員への研修 ・募集人数、採用時期、採用部署等の決定 ステップ4 採用活動 おもな対処事項 ・求人と採用 具体的行動 ・ハローワークへの求人申込み ・障害者就職面接会への参加 ・支援機関との連携 ステップ5 職場定着 おもな対処事項 ・職場での支援・雇用管理 ・必要な職場改善 具体的行動 ・支援機関との連携 ・ジョブコーチ支援の活用 【図表2】障害者雇用に関する相談・支援機関 機関名 主な業務内容 ハローワーク 職業相談・職業紹介/障害者向け求人の確保/雇用率達成指導/職場定着・継続雇用の支援 地域障害者職業センター(※当機構が各都道府県に設置) 職務の創出や雇入れ計画・雇用管理の助言/ジョブコーチ支援/リワーク支援 障害者就業・生活支援センター(※一般社団法人や社会福祉法人、NPO法人など) 就職に向けた準備支援/雇用管理の助言/本人の日常生活の自己管理、生活設計に関する助言/就業面・生活面での関係機関との連絡調整 障害者職業能力開発校 障害の態様などに応じた公共職業訓練/企業に雇用されている障害者に対する在職者訓練 就労移行支援事業所 一般就労などへの移行に向けた訓練、企業実習、適性に合った職場探し/就労後の職場定着への支援 当機構都道府県支部高齢・障害者業務課 障害者雇用納付金等の申告・申請受付/各種助成金の申請受付/障害者職業生活相談員資格認定講習の開催 ☆当連載の第1 回〜第5回は、当機構ホームページでご覧になれます 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」の活用事例  「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」は、事業主が障害者の雇用にあたって、施設・設備の整備や適切な雇用管理を図るための特別な措置を行う場合に、その費用の一部を助成することにより、事業主の一時的な経済的負担を軽減し、障害者の雇用の促進や雇用の継続を図ることを目的としています。  今回は、これらの助成金を効果的に活用した事例を紹介します。 事例1 〜新規採用者のために、障害者用トイレを新設〜 【障害者作業施設設置等助成金(第1種)】  電子部品等の販売・修理サービスを営むA社は、技術者として高い能力を持つBさん(車いす使用者)の新規採用を決定しました。ところが、工場には車いすのまま利用できるトイレがなく、採用後すぐに出勤できる状況にはありませんでした。  そこでA社は、助成金を活用してBさんのために急いで障害者用トイレを新設しました。トイレ完成までの間、Bさんは在宅就労により仕事をこなし、障害者用トイレ完成後、待ちに待った工場での勤務が始まりました。現在は、自身の高い技術力を活かして、工場で充実した仕事を続けており、A社の貴重な戦力となっています。 事例2 〜従業員食堂を利用する際の不便を解消〜 【障害者福祉施設設置等助成金】  車いすを使用するCさんにとって、職場での昼食は楽しみの一つでもありました。しかし、食堂までの廊下に段差があること、食堂の出入口の開き戸が自分で開閉することができないこと、食堂にある洗面台は下に空間がないために、車いすに乗ったままでは利用できないことに不便を感じていました。  そこでD社は、これらの問題を解消するため、助成金を活用して、廊下にスロープを設置し、食堂の出入口の開き戸を引き戸に交換、また、洗面台は、車いすに乗ったまま利用できる形状に交換しました。これらの改修により、従業員食堂の利用が容易となり、Cさんは今までにも増して昼食を楽しみながら、毎日の仕事に励んでいます。 事例3 〜業務をサポートする職場介助者の配置〜 【障害者介助等助成金 職場介助者の配置助成金】  E社で経理事務を担当するFさんは、両上下肢に障害があります。そのため、電話での会話はできますが、受話器の上げ下げやイヤホンをつけたり、話の内容をメモすることがむずかしい状態でした。また、キーボードやマウスの操作はできますが、資料のページをめくったりプリントした資料の受け取りなどは支援が必要で、昼休み中の食事の配膳や飲食の補助などの支援も必要でした。  そこで、助成金を活用してFさんの業務などを直接サポートする職場介助者を配置することにしました。その結果、Fさんは業務を行うなかで、自身の能力を発揮しやすくなりました。 事例4 〜住宅手当の整備で通勤を容易に〜 【重度障害者等通勤対策助成金 住宅手当の支払助成金】  人混みに強いストレスを感じ電車での通勤が困難なGさんは、職場であるH社へは時差出勤や土日の出勤等を試みましたが、それでも欠勤や体調の不調が多く、仕事では簡単なミスをしてしまうなど支障を抱えていました。  そこでH社は、Gさんの主治医とも相談し、会社へ徒歩で通える範囲の場所にGさんを転居させることにしました。その際、Gさんの経済的な負担が問題となったため、助成金を利用して通常の社員の住宅手当にプラスした手当を支給する仕組みを整備することにしました。通勤の問題が解決したGさんの就業環境は大きく改善され、安定して勤務しています。 ※支給に係る要件や申請の期限などの詳細は、都道府県支部高齢・障害者業務課(東京、大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。  機構ホームページでも情報提供しています。https://www.jeed.or.jp/disability/subsidy このような助成金があります @作業施設、作業設備などの整備を行う場合 ⇒ 障害者作業施設設置等助成金 A福利厚生施設の整備を行う場合 ⇒ 障害者福祉施設設置等助成金 B雇用管理のために必要な介助などの措置を行う場合 ⇒ 障害者介助等助成金 C通勤を容易にするための措置を行う場合 ⇒ 重度障害者等通勤対策助成金 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています〜 入所日など  国立職業リハビリテーションセンター、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、年間約10回の入所日を設けています。応募締切日や手続きなどの詳細については、お気軽にお問い合わせください。 ○遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター  埼玉県所沢市並木4-2 職業評価課04-2995-1201 http://www.nvrcd.ac.jp/ 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター  岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課0866-56-9001 http://www.kibireha.jeed.or.jp/ 募集訓練コース 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査・物品管理コース 建築系 建築CADコース ビジネス情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース 会計ビジネスコース OAビジネスコース 職域開発系 物流・組立ワークコース オフィスワークコース 販売・物流ワークコース ホテル・アメニティワークコース 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 資材管理コース ビジネス情報系 OAビジネスコース 会計ビジネスコース システム設計・管理コース ITビジネスコース 職域開発系 事務・販売・物流ワークコース 厨房・生活支援サービスワークコース オフィスワークコース 物流・組立ワークコース サービスワークコース ○訓練の期間は……  「システム設計・管理コース」、「ITビジネスコース」(ともに国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は2年間、そのほかの訓練コースは1年間の訓練です。 ○対象となる方は……  「ビジネス情報系」の「視覚障害者情報アクセスコース」(国立職業リハビリテーションセンター)、「ITビジネスコース」(国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は、視覚障害のある方を対象とし、「職域開発系」の各コースは、高次脳機能障害のある方、精神障害のある方、発達障害のある方、知的障害のある方を対象としています。そのほかの訓練コースは、知的障害のある方を除くすべての方が対象です。 事業主のみなさまへ  両センターでは、障害のある方の採用をお考えの事業主と連携し、個々の事業主の方のニーズや訓練生の障害特性などに応じた、特注型のメニューによる職業訓練を行っておりますのでご活用ください。ご利用いただく事業主の方には次のような支援も行っております。 ■障害特性に応じた特別な機器・設備の配備や作業遂行に関する支援方法のアドバイスなど、円滑な受入れに関する支援 ■雇入れ後の職場定着に向けた技術面でのフォローアップとキャリアプランづくりのための支援  詳細については…https://www.jeed.or.jp/disability/person/person07.html 【P15-18】 グラビア 接客が天職です 〜「全国アビリンピック」金メダリストの活躍〜 スターバックス コーヒー イオンモール岡山店(岡山県) 細尾希良々さん 取材先データ スターバックス コーヒー イオンモール岡山店 〒700-0907 岡山県岡山市北区下石井1-2-1 TEL 086-803-6218 FAX 086-803-6219 写真・文:官野 貴  明るく元気な声と笑顔でお客さまを迎え入れる細尾希(ほそおき)良々(らら)さん(20歳)は、スターバックス コーヒーイオンモール岡山店にアルバイト社員として入社して2年目のチャレンジパートナー(※)だ。発達障害のある細尾さんが同社で働くようになったきっかけは、通っていた高等特別支援学校が運営するカフェで「あなたに接客してほしいから」といってくれる常連になったお客さまと出会ったことで、接客の楽しさを実感したからだった。細尾さんは「接客にやりがいを感じています。お客さまから感謝を伝えられるととても嬉しいです。接客が天職です」と語る。  細尾さんは、2017(平成29)年、高校2年生のときに恩師のすすめもあり、アビリンピック岡山(地方大会)の「喫茶サービス」種目に初挑戦。なんと金賞を受賞し、全国大会へのキップを獲得した。そして出場した「第37回全国アビリンピック栃木大会」では入賞はかなわなかったが、翌年の「第38回全国アビリンピック沖縄大会」で再び挑戦し、銅賞を受賞。これらの経験を活かすべく、同社への就職を決めた。そして昨年の「第39回全国アビリンピック愛知大会」において、お店で磨いた接客スキルを遺憾(いか)んなく発揮し、見事、金賞に輝いた。「ほかの従業員役を務めた人たちと協力し、コミュニケーションをしっかりとることを心がけた」と話す。  細尾さんは現在、店内清掃や商品の陳列などの作業をはじめ、ドリップコーヒー用の豆の計量や、豆挽きの工程を任されており、レジ作業も担当している。ストアマネージャーの徳田(とくだ)敦之(あつし)さんは「細尾さんは接客のスキルも高く、元気な挨拶で店内の雰囲気も明るくなります。お店にとって欠かせないチャレンジパートナーです」と話す。  「これまでの経験を活かして、お客さまに喜んでもらえるような接客ができるようにがんばりたい」という細尾さんは正社員を目ざしており、“バー”と呼ばれるドリンクの準備工程を任せてもらえるよう、コーヒーテイスティングやレシピの勉強などを積極的に続けている。 ※チャレンジパートナー:スターバックスでは、すべての従業員を「パートナー」と呼んでいる。障害のあるパートナーのこと 写真のキャプション フードやコーヒー豆の陳列では、お客さまの目線に立ち、商品を選びやすいように並べる ドリップコーヒー用の豆を正確に計量し、専用の機械で挽く レジでは、笑顔でお客さまを迎える(上)。カスタマイズで悩むお客さまへの提案には、ストアマネージャーの徳田さん(下・左)とのテイスティングの経験が活かされている 2019 年の全国アビリンピック愛知大会には、お店の制服であるトレードマーク入りのグリーンエプロンで臨み(右上)、ついに念願の金賞を手にした 【P19】 エッセイ【第1回】 あなたはどう思いますか? 坂井聡 さかいさとし  香川大学教育学部教授、香川大学学生支援センターバリアフリー支援室室長、香川大学教育学部附属坂出(さかいで)小学校校長・附属幼稚園園長、言語聴覚士、公認心理師。  特別支援学校での進路指導の経験があり、現場をよく知る実践的な研究者。富士通株式会社やソフトバンク株式会社と産学官の共同研究も行っている。 このタイミングで  『働く広場』のエッセイの執筆依頼があったのは6月の中旬だった。第一回目の原稿締切りは7月末になっていたので、コロナ禍(か)と特別支援教育をテーマに書こうと構想を練り、少し余裕を持って寝かせていた。ところが、いざ書き始めようとすると、京都でALS(筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう))の女性の依頼に応じた医師2人が、薬を投与して死亡させたとされる事件が飛び込んできた。この事件についていろいろ考えていたら、「津久井やまゆり園」の事件からちょうど4年目を迎えることになった。この原稿が読者の元に届くのは10月号だと聞いているが、7月末に原稿を書こうとしている、いまの私の頭のなかは、コロナ禍における特別支援教育だけではなく、京都のALSの女性の事件、そして「津久井やまゆり園」の事件でいっぱいになってしまった。初期の構想はすべて白紙になり、原稿は一から書き直しである。 教育の現場で  私は現在、香川大学教育学部附属坂出小学校の校長と附属幼稚園の園長を併任している。大学生だけでなく、幼児、児童と直接かかわる現場にいるのである。特に小学校では、前記に示した三点については触れなければならないと思っている。  特別支援教育を専門としている私は、その三点についてどのように子どもたちに伝えればよいのだろうか。これから夢や希望をもって羽ばたいていく子どもたちへの教育はとても重要だ。なぜなら、目の前の子どもたちが大人になったときに、これらのことから学んだことを活かして、社会を創ってもらわなければならないからである。 社会を創る根底にあるのは教育である  私は、社会を創るのは教育であると確信している。それは日ごろ、幼児、児童と接しているなかで感じたことだ。無邪気に遊んでいる子どもたちが人間関係を形成し、社会性が養われていく成長の過程を見て感じるからである。この時期の学びが後に大人になったときに影響するであろうことは、想像に難(かた)くない。それゆえ、この時期の学びがとても大切なものなのであり、それが将来の社会に直接影響すると思うのである。  筋ジストロフィーがあり、生活のすべてに介助を必要とする詩人の岩崎(いわさき)航(わたる)さんが、詩集『点滴ポール』のなかで「貧しい発想」という詩を詠んでいる。  管をつけてまで/寝たきりになってまで/そこまでして生きていても/しかたがないだろ?/という貧しい発想を押しつけるのは/やめてくれないか/管をつけると/寝たきりになると/生きているのがすまないような/世の中こそが/重い病に罹(かか)っている(※)  この詩は、寝たきりの人たちが置かれている立場は社会がつくっていることを訴えている。貧しい発想を押しつける社会から、だれもが生きることに希望を見出すことができる優しい社会へと変えていかなければならないと思うのである。  人は、それぞれが助け合うことによって繁栄してきた動物だ。なぜなら、一人では生きていけないからである。相互に助け合い、重度の障害のある人も生きることができる社会をつくり上げようとする事実そのものが、人が繁栄してきた証なのだ。この繁栄の証をしっかりと子どもたちに伝えていく、これも大きな教育の使命だと感じる。人が繁栄する社会を子どもたちに残すためである。やはり社会を創るのは教育である。 だから何ができる  さて、ここまでいろいろ考えてきたのだが、いざ、子どもたちを前にしたときに本質を理解できるように伝えることができるだろうか。一回だけでは伝わるわけがない。大切なのは、私たち教育者が、事あるごとに伝え続けることだ。ということは、「事」を生じさせなければならないということでもある。メディアを賑(にぎ)わす事件ではなく、些細な事からでも考える機会を与え続けるということである。 ※岩崎航(著)、齋藤陽道(写真)『点滴ポール 生き抜くという旗印』(ナナロク社、2013年) 【P20-25】 編集委員が行く 共生社会を目ざす企業家集団 〜中小企業家同友会 障害者問題委員会 活動の歴史〜 中小企業家同友会全国協議会 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 取材先データ 中小企業家同友会全国協議会 〒102−0074 東京都千代田区九段南4-7-16 市ヶ谷KTビル3階 TEL 03-5215-0877 FAX 03-5215-0878 編集委員から  障害者を2.2%以上雇用する義務のある法定雇用率の、対象とならない中小企業の経営者たちが、40年以上も障害者雇用を学び実践している団体がある。全国47都道府県にある、「中小企業家同友会」だ。  義務ではなく、単なる社会貢献でもない。障害者とともに生き、働く仲間として歩むその経営者たちは何を考え行動してきたのかを取材した。 写真:官野貴 Keyword:中小企業、雇用率対象外、ともに生きる、地域課題 ■座談会 障害者問題委員会 委員長 比嘉(ひが)ゑみ子(えみこ)さん (沖縄同友会/有限会社やんばるライフ) 障害者問題委員会 副委員長 榎本(えのもと)重秋(しげあき)さん (神奈川同友会/ぜんち共済株式会社) 障害者問題委員会 副委員長 奥脇(おくわき)学(まなぶ)さん (大阪同友会/有限会社奥進システム) 障害者問題委員会 副委員長 橋(たかはし)正志(まさし)さん (岡山同友会/株式会社マスカット薬局) 中小企業家同友会全国協議会 事務局次長 池田(いけだ)泰秋(やすあき)さん POINT 1 40年以上前から障害者雇用を学び、実践する企業家集団 2 全国の会員が相互に学び合う仕組み 3 障害者雇用から共生社会へのひろがり 中小企業家同友会は経営者の「学校」  「中小企業家同友会」(以下、「同友会」)は、全国47都道府県にある経営者の団体である。1957(昭和32)年4月、東京で日本中小企業家同友会として創設され、その後全国に広がった。全国の会員は約4万7千人。この会には企業ではなく、経営者が個人として入会する。業種、企業規模、キャリア、会員歴にかかわらず、会員は平等であり、会費も一律。すべてをとことん話合いで決めていく「自主・民主・連帯」の文化がある。私が何の準備もないまま経営者になったとき、先輩会員から会社経営を一から学ばせてもらった「学校」でもある。ここにはいろいろな委員会や、実に多くの学びの場があるが、そのなかの四本の柱が経営理念を構築し実践する「経営労働委員会」、社員とともに学び成長する「社員教育委員会」、力を合わせて採用に取り組む「共同求人委員会」、そして「障害者問題委員会」だ。今回は「障害者問題委員会」の全国の正副委員長に、座談会というかたちで、活動の歴史と今後について語っていただいた。 障害者問題委員会「その名前こそが問題だ」  「障害者問題委員会」の発足の動きは、国際障害者年の前年である1980年に遡(さかのぼ)る。当時の青年経営者たちが障害者との交流を始め、「障害者を雇おう」という発想を持つのに時間はかからなかった。障害のある人たちを雇うには、何を準備し、どのような思想で取り組んでいくべきか。先輩経営者からの体験談を聞く「例会」を頻繁に開催し、雇用実践していくなかでの課題、困惑、迷いを語り合い、解決策を見出していく。もちろん一緒に働くなかで得られる喜びも共有する。1982年に「障害者問題委員会」が発足。この名称、いかにも障害のある人が問題であるかのように読めてしまうとの指摘もあったが、そうではなく、「障害者を取り巻く問題を解決する委員会」の意味である。  この委員会設立の動きは全国に広がり、1983年からは2年に一度、全国交流の大会が開催されている。昨年は「第20回 障害者問題全国交流会」(以下、「障全交」)が2日間にわたり滋賀県で行われ、全国から500人以上が参集した。 「僕を雇ってください」のメッセージ 三鴨岐子(以下、三鴨) 今日はあらためて障害者問題委員会の活動についてお聞きしたいと思います。まずは、全国で見ても活動が盛んな、沖縄同友会からお願いします。 比嘉ゑみ子(以下、比嘉) 私は16年前に、地元の就労支援を行う福祉施設の方たちが、行政を巻き込んで開催した就労フォーラムに参加しました。「参考にならなければ途中で帰ろう」くらいの軽い気持ちで参加したのです。そこで、特別支援学校の生徒が「企業のみなさん、僕は卒業したらお母さんを楽にさせたいので、僕を雇ってください」と大きな声で訴えたのです。その力強いメッセージに衝撃を受けました。彼らを、働ける人たちと見ていなかったことに気づきました。それまでは、「うちはサービス業だから」とお断りしていましたが、フォーラムの後すぐに、彼のような人を雇おうと思い、どんなふうに働けるのか、また就職状況はどうなっているのかを知るために、さっそく特別支援学校からの実習生を受け入れました。重複障害(身体と知的)の生徒さんが来て、まずは倉庫の整理から始めてもらいました。仕事のスピードはとてもゆっくりでしたが、新人さんはだれでもそうです。でも、彼のそのひたむきな姿勢に周りが動かされ、「座学にない社員教育があるのだ」と学びました。その後彼を雇い、一人では淋しかろうと、毎年複数人を雇用しました。  あまりにも得るものがあったので、それでは沖縄県にも同友会の「障害者問題委員会」のようなものをつくろうと、「健障者委員会」と名前をつけ活動を始めました。私が一番成長させていただいたなと思える委員会です。 岡山同友会 障害者問題委員会の立ち上げと故赤石義博氏 橋正志(以下、橋) 私が同友会へ入会したのは14年前です。入会後しばらくして岡山同友会に障害者問題委員会を立ち上げ、私が初代の委員長になりました。当時、わが社はまったく障害者の雇用にかかわっていなかったため、大阪同友会で積極的に障害者雇用に取り組んでいる奥脇学さんに岡山県まで来てもらって、障害者雇用について教えていただきました。特別支援学校の先生との連携が必要だということで特別支援学校に行き、子どもたちの素晴らしい挨拶に感動し、「こんなに一生懸命に勉強や実習をしているのに、なんで仕事先がないのだ」と気づいたのです。企業側に受入れ体制ができていないだけでなく、無関心なことがすごく残念でした。それからは、お互いを知ろうと特別支援学校の先生たちと定期的な勉強会などを行い、少しずつですが雇用する企業も増えていきました。  わが社は薬局を経営していますが、身体障害・精神障害・発達障害のある社員を雇用しています。つねに、どうやったら仕事を続けてもらえるかを考えています。また、薬局の待合室で障害のある人がつくった、さをり織りやネックレス、備前焼(びぜんやき)などの商品を販売しています。その売上げは、販売元の特別支援学校の子どもたちに現金で手渡しています。 三鴨 岡山同友会で障害者問題委員会を立ち上げた経緯が劇的で驚きましたが、よくつくられましたね。 橋 同友会全国協議会元会長の故赤石(あかいし)義博(よしひろ)(1933〜2016年)さんとの出会いが大きかったと思います。同友会理念は、「命の重さに重い軽いはない」という命の尊厳性が原点だと教えていただき、私の心に火がついたのです。同友会ができた1957年ころは「大企業ががんばっているから日本は発展している」といわれていましたが、それがいまではまったく変わって、「中小企業は社会の主役で、日本の経済を牽引する力だ」といわれるようになりました。これは、同友会の先人たちの努力のおかげです。その精神が、障害者問題委員会の根底にもあると思っています。赤石さんには「生産条件と生存条件」という言葉を教えてもらいました。「生産条件ばかりでなく、そこで働く人の命を守る生存条件にも目を向けなくてはいけない」という意味です。このような「人間尊重の経営」を謳(うた)う同友会で、社会的弱者の立場で考え行動するのが障害者問題委員会だと思います。 経営指針を学んだ先に 三鴨 奥脇さんは同友会に入られる前から障害者を雇用されていたのですか? 奥脇学(以下、奥脇) はい。創業2年で大阪同友会に入会しました。創業したときから障害のある人とかかわっていたので、そういった活動自体は以前からやっていました。同友会に入ってから、障害者のことを考える委員会があると聞いて、「1回入ってみたいな」と思ったのがきっかけです。大阪同友会の障がい者部で活動し始めて、2008(平成20)年4月に第1回の関西ブロックの交流会を大阪府で開催しました。そこから関西の活動が活発になっていき、それとともにのめり込んでいった感じですね。 三鴨 入会後、どんな学びがありましたか? 奥脇 同友会には、経営指針を学びたくて入りました。人を生かす経営とか、ともに生きるという文化。実は、そういう分け隔(へだ)てなく一緒に働いて一緒に生きることを体現しているところが「障害者問題委員会」なのではないかな、という感覚です。ここをきちんと勉強しないと、経営指針をやっていても、つながっていかないのだろうなという思いが、活動すればするほど強くなっていきましたね。 三鴨 「経営指針」という言葉が出てきました。経営指針を学んでいる人はたくさんいるはずですが、障害者雇用に結びつけている人は、そんなに多くないですよね。 奥脇 障害者雇用を結びつけているつもりはないですね。障害者という限定したくくりで活動するのではなくて、社員といかに幸せな道を探っていくかが、僕らの考える真髄(しんずい)なのかな、と思います。そこに障害の有無は関係なくて、いろんな社会環境で就労がむずかしい人たちに対して、中小企業家ができることは何だろうかと真剣に考えたときに、僕らにもできることがあるのではないか、そういうことを実現するというだけの話。だから、「障害者雇用をやったから偉いんだ」ではなくて、そこに至るまでの経緯とか、社会背景とかを考えるプロセスが重要なのではないか、という感覚を持っています。 神奈川同友会 全国大会の成功と自身の変化 三鴨 榎本さんは入会したばかりのときに、障全交の実行委員に抜擢されました。当時の感想や、いまの自分の活動にどういう影響を及ぼしているか教えてください。 榎本重秋(以下、榎本) 入会のきっかけは、「株式会社バニーフーズ」(神奈川県)創業者の故高橋(たかはし)良治(りょうじ)さんの例会報告を聞いたことでした。大企業ではなく、普通の中小企業で積極的に障害者雇用をしているバニーフーズという会社があるのだと知って感銘を受けました。そして「こういう人がいるなら」と、2011年9月に入会し、バニーフーズの高橋さんがいろいろ教えてくれました。その2年後、「障全交in神奈川」の開催が迫り、気づいたら分科会を受け持つことになっていました。障全交の実行委員会も最初は人が少なかったのですが、だんだん協力者が増えて、見事に700人近い方に集まっていただけました。入会早々、とてもよい経験をさせてもらいました。 三鴨 榎本さんは障害のある方向けの保険屋さんですが、同友会に入会して、経営が変わった部分はありますか? 榎本 それはありますね。私は保険会社のサラリーマン出身で、プライドも高かった。社員に対しても、「見てれば理解できるでしょ」なんていう態度でした。入会して、私もすぐに経営指針作成部会に参加し、自分の経営を見つめ直す機会を与えてもらいました。社内でトラブルがあると相手に責任があって、自分は悪くないと考えていましたが、学んでいくなかで、すべての間違いの根本は自分にあると気づかされました。そこから会社の立て直しに入れたので、同友会がなければ、いまのような会社にはなっていなかったですね。 知り合うこと、学び合うこと 三鴨 私は同友会での学びで、仲間との交流が大きな意味を持つと感じていますが、みなさんはいかがですか? 比嘉 私は障害者雇用に取り組みはじめたころから、「障害のある方と知り合う機会が少ない」と思うようになりました。だからもっと知り合うこと、学び合うことを続けていかなければいけないと思い、そのためにはどうしたらいいか、みなさんと話し合いました。私が初めて参加したような、支援者のみなさんが開催したフォーラムを、企業発信でやってみたらどうかという案を出したのです。全国のいろんな例も含めて、企業が障害のある人たちを雇用するための発信をしようと。そこで、地元の支援者の方、保護者のみなさんからご意見を聞きながらつくり上げていって、沖縄県名護市の市民会館に120人くらいが集まり、第1回目のフォーラムを開催しました。連携の必要性も感じたので、ハローワークや市の担当者などと一緒に私もパネリストで参加しました。まず、お互いの課題をテーブルに出し合うこと、そして、沖縄全島に根ざしていくために、毎年地域を変えてやっていこうということになり、ちょうど今年が15回目ですね。コロナの影響で延期になっておりますが、毎年ずっと続けてきました。いまは離島での開催でも参加者は100人を超え、本島でやれば300人は超えます。沖縄同友会は愚直に活動してきたことが功を奏したのかなと思っています。障害者を雇用する企業の割合が、年々増えていて、確実に壁が低くなっているのを感じます。 橋 岡山同友会の活動は特別支援学校に行ったり、障害者を雇用する企業をどうやって増やしていこうかということが中心ですね。同友会で大事にしているのは「自主・民主・連帯」の精神です。生きるとはどういうことか、暮らしを守る、人間らしく生きるとはどういうことかを学ぶ必要がある。赤石さんは「持続可能な社会、幸せの見える社会をつくりましょう」とずっといわれたんですけど、「どんな社会が幸せなのかなあ」と。広い視点で見ていかなければいけないなと思います。 全国へと広がる、幸せの追求 池田泰秋 私は2000年の5月に新潟県中小企業家同友会事務局に入局しました。新潟同友会の顧問には、渡辺トクさんがいました。3回ほど会ったことがあります。渡辺さんは障害者問題委員会のなかでも有名な方で、当時、リネン関係のお仕事をしていました。そこに親御さんが「働かせてくれ」と子どもを連れて来るのですが、雇い入れると、その後1度も会いに来なかった人もいたとか。だからその子たちのために寮を建て、最後は墓を建てて、墓碑には「捨てられしいのちかつぎて」と刻まれました。そんな渡辺さんは、福祉企業の母といわれています。  同友会が掲げる障害者問題委員会にかかわっていると、障害とは何かを考えさせられました。入局したてのころは、福祉的就労と一般就労の違い、福祉的作業なのか労働なのかの違いもわからないわけで、法律や憲法から、いわゆる労働権や、生存権の違いなど、そういうものを委員会のなかで勉強させてもらったと思います。  障害者問題委員会の活動も、この10年で東日本にも延びていき、全国に広がってきました。全国の定例委員会に50人くらい来るようになりましたし、障全交に500人が参加することも普通になってきましたよね。 三鴨 私が初めて参加した障全交は大阪府でしたが、固い勉強ではなくて、本当に楽しかったですね。 榎本 私は、障害者本人や特別支援学校の先生がいたり、お父さん、お母さんがいたり、地域に支援があるなかで、そういう人たちが一緒になって活動するスタイルの同友会が好きなんです。だから神奈川同友会でも例会をするときに、当事者本人や学校の先生に来てもらう例会を続けていくうちに、いろんな広がりができたし、それが同友会のよいところだと思います。 三鴨 外に出ていくことで盛り上がっていくのですね。 奥脇 同友会のなかで障害者問題委員会というのは、地域問題・地域課題をきちんと考えている。大阪府だったら児童養護施設とか、通信制の学校を訪問しています。中小企業の経営者って行動的な人が多いので、「そこが問題だ」と思ったら、わーっと行くじゃないですか(笑)。そういう機動性のよさと、地域に根ざした問題意識のとらえ方と、それをみんなで寄ってたかって「解決してやろう」という心意気。そういうところが障害者問題委員会の好きなところで、大事なところだと思います。そういう仲間がいっぱいいるというところが、ここの気持ちよさかなと思いますね。 三鴨 普通に考えると会社の利益には結びつかないのに、なぜそんなにみなさんが惹(ひ)かれていくのでしょう。 奥脇 人が幸せになっていくところを実感できて、「俺も真似したいな」と思うのは、みなさんあると思いますよね。本質的に「人間の幸せってどういうことなのかな」と考えて、「こんなことをやったら幸せになれる社会文化、企業風土をつくれるのではないか」と思うところが面白いですね。 三鴨 この委員会で学べることがいっぱいあるということですね。もっと増えてほしいですね。 これから目ざすもの 比嘉 障害者問題委員会の目的は、特別な委員会ではなくなることです。いろいろな方々を巻き込んでいかなければいけませんので、そのためにはしっかりと同友会の理念を実践していく。そして私たちが地域や社会に示していく、といったら大げさですけれども、仲間をお誘いして、活動してしっかりと経営していく以外ないと思います。特別な委員会ではなくなったときに、この委員会を継続しなくてもいい世の中になれば、と大きな理想と志(こころざし)を持っております。 橋 私も岡山同友会の代表理事になって、さまざまな経営者団体や銀行、教育機関と話をする機会が増えてきました。すると「障害者問題委員会って何をしているのですか?」と経済団体から聞かれることがあります。私は、「障害者も含め、すべての人が幸せで豊かな暮らしができる共生社会を目ざしている委員会です」と答えています。全国にはまだ障害者問題委員会がない同友会もありますので、全国に立ち上げ、同友会の活動の輪を広げたいと思っています。 奥脇 この活動を広げていくという考えでいうと、ここにいる人みんな、個性が違うじゃないですか。周りを巻き込んでやっていくのが得意な人もいれば、僕はそういうのが得意ではないので、自分の経営を突き詰めていく。企業の在り方、中小企業の存在意義をきちんと考えて活動・行動していく。それぞれ自分の得意な分野を活かしていけば、自然と世の中に広がっていくのではないかなと。そういうことをやり抜くことが、活動を広げることだと思います。 榎本 全国の会員数も、もう5万人が目前で、認知度が高まり、社会がわれわれを受け入れてくれる時代になってきたと思っています。また、この座談会の後に開催する障害者問題委員会では、厚生労働省の課長さんが来て、施策を語ってくださる場もあります。国からも注目されるようになってきたと思っているので、ぜひこの動きを広めてもらって、仲間がますます増えていけばいいなと思います。 まとめ  経営資源に恵まれているとはいえない中小企業が、大企業でも達成するのがむずかしいことを理想に掲げて活動しているのはなぜなのか。今回の座談会や赤石氏の著作などから、委員会の歴史をふり返るなかで気がついたのは、単にきれいごとを並べているだけではないということだ。自社が生きる地域の課題に目を向け、地域をよくしていかなければ、存続すら危うい歴史があった。戦争で個人が抑圧された体験を通し、ようやく手に入れた憲法によって保障された基本的人権、自由権、社会権を大切にしていく行動の先に、地域、社員と支え合い、幸せになろうという思いがあったのだ。  座談会では企業外の人々の名前が多くあがった。目を向けていく場所を変えさらに広げていくと、新たな視点や気づきを得られると実感できた。また、その後の委員会では、厚生労働省の小野寺(おのでら)徳子(のりこ)課長から、助成金や中小企業向けの施策についてお話があり、われわれ中小企業の可能性にも目を向けてくれていると感じた。  東京都や大阪府を基点としつつ、全国のいろいろな地域に集まることで交流を深めてきた委員会だが、最近はコロナの影響でオンライン開催になっている。時間と費用が節約できるなど、オンラインのよさもあるが、一日も早く、実際に集まり元気な顔をあわせられる日が来ることを心待ちにしている。 同友会の労使見解と全国協議会元会長の赤石義博氏  戦後、中小企業では、戦争の痛手や物資不足などの困難に加え、労使の対立問題が起こりました。しかし、労働者が大企業に対して労働条件の改善を求める「春闘」に代表される運動を中小零細企業にあてはめると、ひとたまりもありません。そのため、同友会は、「労働対資本」といわれる対立ではなく、「経営者と従業員は力を合わせていく仲間であり、経営者は全力で労働者を守る」という見解にたどりつきました。「人間も企業も生き残るという生存条件をどのように確かにするかが重要」と説いています。  赤石氏によれば、同友会の目ざすものは「人間的な尊厳、魂の自立、基本的人権をしっかり守ること」だといいます。この精神をふまえ、企業の利益の追求ばかりでなく、「人間らしく生きること」を重要とする同友会が、「障害があってもなくても働ける企業」、「人を生かす経営」を目ざすのは自然な流れとなって息づいています。 写真のキャプション 比嘉ゑみ子さん(沖縄同友会/有限会社やんばるライフ)提供写真 橋正志さん(岡山同友会/株式会社マスカット薬局)提供写真 奥脇学さん(大阪同友会/有限会社奥進システム) 榎本重秋さん(神奈川同友会/ぜんち共済株式会社) 池田泰秋さん(中小企業家同友会全国協議会 事務局次長) 座談会の後に開催された障害者問題委員会で、全国の委員向けにオンラインで行政報告を行った厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課課長 小野寺徳子さん 【P26-27】 省庁だより ハローワークを通じた「障害者の就職件数」が11年連続で増加 ─令和元年度 障害者の職業紹介状況等─ 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課  厚生労働省は6月22日、令和元年度の障害者の職業紹介状況をまとめました。  ハローワークを通じた障害者の就職件数は、平成30年度の10万2318件から伸び、10万3163件(対前年度比0・8%増)と11年連続で増加しました。 〈ポイント〉(第1表)  ○新規求職申込件数は22万3229件で、対前年度比5・7%の増加となり、就職件数は10万3163件で、同0・8%の増加となりました。このうち、精神障害者の新規求職申込件数は10万7495件で、対前年度比6・1%の増加となり、また、就職件数は4万9612件で、対前年度比3・3%の増加となりました。  ○就職率(就職件数/新規求職申込件数)は46・2%で、対前年度差2・2ポイントの減少となりました。 〈産業別にみたときの特徴〉(第2表) ○産業別の就職件数は、「医療、福祉」(3万5744件、34・6%)の割合が大きく、「製造業」(1万3418件、13・0%)、「卸売業、小売業」(1万2357件、12・0%)、「サービス業」(1万524件、10・2%)が続いています。 〈職業別にみたときの特徴〉(第3表)  ○職業別では、「運搬・清掃・包装等の職業」(3万4539件、 33・5%)の割合が大きく、「事務的職業」(2万4041件、23・3%)、「サービスの職業」(1万2639件、12・3%)、「生産工程の職業」(1万1894件、11・5%)が続いています。 第1表 ハローワークにおける障害者の職業紹介状況(令和元年度) @新規求職申込件数 前年度比 A有効求職者数 前年度比 B就職件数 前年度比 C就職率(B/@) 前年度差 合計 223,229(件) 5.7(%) 300,518(人) 10.3(%) 103,163(件) 0.8(%) 46.2(%) △2.2(ポイント) 身体障害者 62,024 1.3 98,683 6.3 25,484 △5.1 41.1 △2.7 知的障害者 36,853 2.9 50,211 7.0 21,899 △1.5 59.4 △2.7 精神障害者 107,495 6.1 132,942 10.8 49,612 3.3 46.2 △1.2 その他の障害者(注) 16,857 30.8 18,682 46.6 6,168 18.5 36.6 △3.8 (注)「その他の障害者」とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳等を保有しない者であって、発達障害、高次脳機能障害、難治性疾患等により、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者である。 第2表 産業別就職件数(令和元年度) 産業 障害計 前年度比 身体障害者 前年度比 重度 前年度比 知的障害者 前年度比 重度 前年度比 精神障害者 前年度比 その他の障害者 前年度比 合計 103,163(件) 0.8(%) 25,484(件) △5.1(%) 10,556(件) △4.9(%) 21,899(件) △1.5(%) 3,951(件) △11.6(%) 49,612(件) 3.3(%) 6,168(件) 18.5(%) 農林漁業 1,035 △10.1 201 △18.0 68 △15.0 280 3.3 45 4.7 481 △13.3 73 △8.8 鉱業,採石業,砂利採取業 27 △10.0 12 △20.0 2 △66.7 5 150.0 0 − 8 △20.0 2 △33.3 建設業 2,850 5.6 947 △5.8 346 △8.0 428 8.9 58 38.1 1,280 9.0 195 52.3 製造業 13,418 △7.5 3,009 △15.4 1,220 △14.7 3,844 △5.6 631 △16.1 5,690 △5.9 875 4.4 電気・ガス・熱供給・水道業 125 5.0 48 △15.8 20 △4.8 6 0.0 0 − 63 26.0 8 33.3 情報通信業 1,828 2.0 452 1.3 255 1.2 149 △2.0 40 △13.0 1,094 0.8 133 22.0 運輸業,郵便業 4,732 0.1 1,568 △5.9 584 0.9 1,016 3.9 152 △25.5 1,879 0.3 269 28.1 卸売業,小売業 12,357 △2.0 2,462 △8.8 993 △6.4 3,419 △1.0 587 △4.6 5,746 △1.2 730 15.0 金融業,保険業 1,187 △8.9 483 △24.5 211 △22.1 135 27.4 19 △5.0 518 △0.8 51 45.7 不動産業,物品賃貸業 1,156 0.1 342 △3.9 131 △1.5 205 1.5 41 △6.8 521 △3.3 88 51.7 学術研究,専門・技術サービス業 1,997 0.5 479 △13.1 224 △18.5 269 32.5 49 22.5 1,078 △1.9 171 27.6 宿泊業,飲食サービス業 4,296 1.0 984 △6.4 384 △10.9 1,300 4.0 230 △9.1 1,815 2.5 197 8.8 生活関連サービス業,娯楽業 2,365 △6.7 577 △7.2 217 △12.1 611 △8.8 117 △20.9 1,048 △5.8 129 △0.8 教育,学習支援業 2,426 17.9 827 14.7 356 23.6 311 12.7 71 △5.3 1,159 21.7 129 18.3 医療,福祉 35,744 0.6 7,700 △6.2 3,449 △6.8 6,918 △3.3 1,357 △11.2 19,057 3.4 2,069 18.6 複合サービス事業 828 △22.0 214 △27.9 76 △32.7 208 △9.2 26 △38.1 366 △22.9 40 △33.3 サービス業 10,524 △3.2 2,721 △11.0 1,037 △14.4 2,407 △5.1 474 △15.2 4,785 0.3 611 21.7 公務・その他 6,268 59.8 2,458 49.8 983 58.3 388 37.6 54 △3.6 3,024 72.0 398 65.1 第3表 職業別就職件数(令和元年度) 職業 障害計 前年度比 身体障害者 前年度比 重度 前年度比 知的障害者 前年度比 重度 前年度比 精神障害者 前年度比 その他の障害者 前年度比 合計 103,163(件) 0.8(%) 25,484(件) △5.1(%) 10,556(件) △4.9(%) 21,899(件) △1.5(%) 3,951 (件) △11.6(%) 49,612(件) 3.3(%) 6,168(件) 18.5(%) 管理的職業 101 △2.9 45 21.6 24 84.6 4 300.0 1 − 50 △13.8 2 △75.0 専門的・技術的職業 6,911 1.3 2,567 △10.6 1,302 △13.7 245 2.1 39 0.0 3,509 9.3 590 16.6 事務的職業 24,041 6.2 7,510 1.0 3,354 △0.6 2,148 7.2 317 △11.9 12,677 7.4 1,706 22.8 販売の職業 4,769 0.6 880 △8.0 338 △6.6 1,405 4.9 222 14.4 2,162 △1.7 322 31.4 サービスの職業 12,639 1.6 3,016 △3.0 1,072 △0.7 3,088 △1.3 535 △7.4 5,824 4.1 711 17.5 保安の職業 1,256 1.5 587 △6.1 188 △7.4 124 15.9 13 85.7 471 4.2 74 37.0 農林漁業の職業 2,933 △0.5 422 △6.6 159 △8.6 885 3.1 169 △10.1 1,453 △1.6 173 7.5 生産工程の職業 11,894 △5.1 2,368 △12.8 1,004 △8.3 3,375 △5.3 590 △10.1 5,375 △2.6 776 6.6 輸送・機械運転の職業 2,929 △1.0 1,578 △7.6 526 4.2 111 6.7 8 △27.3 1,081 8.9 159 1.9 建設・採掘の職業 1,151 8.8 339 9.0 108 1.9 235 △3.7 27 28.6 507 12.9 70 29.6 運搬・清掃・包装等の職業 34,539 △0.9 6,172 △6.8 2,481 △7.2 10,279 △3.4 2,030 △16.0 16,503 1.4 1,585 22.2 分類不能の職業 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 【P28-29】 研究開発レポート アシスティブテクノロジーを活用した高次脳機能障害者の就労支援 障害者職業総合センター職業センター  障害者職業総合センター職業センターでは、休職中の高次脳機能障害者を対象とした職場復帰支援プログラム、就職を目ざす高次脳機能障害者を対象とした就職支援プログラムを実施しながら、障害特性に起因する職業的課題への補完行動の獲得による作業遂行力や自己管理能力の向上および職業的課題に関する自己理解の促進を図るための支援技法の開発を進めています。  高次脳機能障害者の就労支援において、補完手段の習得は、日常生活や職業生活における自立性を高めることにつながる重要な目標の一つです。プログラムにおいても、メモリーノート(※1)などの補完手段の獲得に向けた支援を行ってきましたが、こうした外的補助具を用いた補完手段は、対象者が自ら補完手段に気づくことができなければ活用できない、といったところにむずかしさがありました。  そこで、近年、普及・高性能化が著しい、携帯電話やスマートフォン、パソコンの基本的な機能を補完手段として活用することを検討し、2019(令和元)年度末に、実践報告書35「アシスティブテクノロジーを活用した高次脳機能障害者の就労支援」を作成しました。今回、その一部を紹介します。 ●開発の方法  アシスティブテクノロジー(以下、「AT」)を活用した支援に関する情報収集のほか、プログラムにおいて、ATをテーマとしたグループワーク、ATを活用した支援事例の収集を行い、支援の実施方法と実施上の留意点をまとめました。 ●ATを活用する意義 @視覚以外の感覚を使用できる  ATを活用することで、視覚情報(文字)を聴覚情報(音声)や触覚情報(振動)に変換することができます。複数の感覚に同時に働きかけることもできます。 A双方向性がある  補完手段から働きかけてくれる「通知」機能を使うと、対象者に次にやるべき行動を知らせることができます。「メモリーノートに書いたが、見るのを忘れる」といった方には有効です。 B身近な存在である  広く普及し、身近な存在になったパソコンやスマートフォンは、生活になじみやすいと考えられます。 ●支援の実施方法と実施上の留意点 @アセスメント  対象者の認知機能や困り感、受障前の生活様式(ATをどの程度活用していたかなど)を、神経心理学的検査や質問紙、情報収集、行動観察により確認します。  記憶障害があると、新たな行動を学習することに困難をともなうため、受障前の生活様式を活かす視点が求められます。また、職場復帰を予定している場合は、復職後に想定される職務内容や職場環境を確認しておくことも重要です。 AAT活用の提案と習得  アセスメント結果をもとに、どのような補完手段を活用するか検討します。ATの活用も選択肢の一つですが、さまざまな選択肢のなかから、予想される効果を理解したうえで、最終的には対象者が自分で選ぶことが大切です。  高次脳機能障害のある人が新たな行動を学習するには時間がかかります。プログラムでは、作業課題などに取り組むなかでATの活用をくり返し、効果を確かめます。状況によっては、補完手段の変更を提案することもあります。 B職場への移行  プログラムで確認できた障害特性や効果的な補完手段について、会社や支援機関、家族などと情報を共有し、ATの活用が継続するよう支援します。 ●グループワーク  ATへの関心を高め、活用のきっかけとするために、ATの活用をテーマとしたグループワークを実施しました。  グループワークでは、「AT活用に関するアンケート」による対象者のAT活用状況の確認、おすすめの機能や具体的な使い方の紹介や意見交換、新たに活用してみたい機能についての意見交換を行いました。  アンケートや意見交換では、携帯性が高いタブレットやスマートフォンは、日常生活上の困りごとに合わせた活用が進んでいることがわかりました。  グループワークでは、ATの活用を支援者が提案するのではなく、対象者同士で紹介する形をとりました。感想では、「使ってみたい」、「試してみたい」といった前向きな内容が複数みられました。 ●タッチキーボードを活用して漢字入力をした事例 ア 事例の概要  脳梗塞による高次脳機能障害(失語症) イ 職場復帰後に想定される職務  工事現場から送られてきた写真と作業日報書をもとに、報告書を作成する業務 ウ 対象者の困り感  ワークサンプル幕張版(以下、「MWS」)「文書入力」を行ったところ、見本文の漢字がほとんど読めず入力が困難でした。よみがなが振ってあれば、候補から正しい文字を選ぶことはでき、漢字の形は正しく認識できていると考えられました。  以上のことから、文字(特に漢字)入力の自立度を向上させることが課題となりました。 エ 提案した補完手段 (ア)ローマ字表の設置  作業スペースにローマ字・かな変換表を設置し、わからないときは随時確認することにしました。 (イ)タッチキーボードの活用  Windowsの標準機能(Windows8以降)のタッチキーボード(手書きパネル)を活用し、漢字を手書きで入力することにしました。 オ その後の経過  MWS「文書入力」を実施し、わからない漢字をタッチキーボードで入力する練習を行いました。自力で漢字を入力できるようになったことで、職場復帰への自信を高めました。  また、会社からは、「データ入力」も職場復帰後の職務に加えたいと申し出があり、仕事の幅を広げることができました。 ●別冊「ガイドブック」の作成  技法開発に取り組むにあたり地域障害者職業センターの意見を求めたところ、技法開発に期待する声と同時に「自分に知識がなく支援できない」といった意見もあり、ATの知識を対象者だけでなく、支援者にもわかりやすく情報提供することが必要と考えられました。  このため、別冊「高次脳機能障害者の就労に役立つアシスティブテクノロジー活用ガイドブック」を作成しました。ガイドブックには、AT活用の基本的な考え方や具体的な操作方法や困り感から役立つ機能を検索できる「キーワード検索」、「就労で困る場面一覧表」を掲載しました。また、活用頻度が高い「メモ」、「カレンダー」、「リマインダー」の操作方法を収録した映像資料を添付しました。 ●まとめ  今回の試行では、携帯電話やスマートフォン、パソコンの機能を補完手段として活用しました。メモリーノートなど従来の手法に加え、支援の幅を拡げるものとして活用を検討いただければ幸いです。  実践報告書35「アシスティブテクノロジーを活用した高次脳機能障害者の就労支援」は、障害者職業総合センターのホームページに掲載しています(※2)。また、冊子の配付を希望される場合は、下記にご連絡ください(※3)。 ※1 メモリーノート:予定やしなければならないこと、作業上の留意点、実際に行った行動などを記入し、記憶を補完するツール ※2 「実践報告書35」は、https://www.nivr.jeed.or.jp/center/report/practice35.htmlよりダウンロードできます nivr 実践 35 検索 ※3 障害者職業総合センター 職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.or.jp/center/index.html 図 タッチキーボードの画面 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 栃木 県がタクシー利用の半額を助成  栃木県は、コロナ禍(か)で外出しにくい状況にある障害者や高齢者を対象に、貸切タクシーを利用する場合に利用額の半額を助成する「貸切タクシー活用おでかけリフレッシュ促進事業」を8月から開始した。県内での旅行や買い物などに利用してもらう。1回1万円以上の利用が対象となり、助成額の上限は3万円。  期間は2021年2月末までの予定だが、予算額に達し次第終了する。対象者は県内在住で、障害者手帳を持つ人や満65歳以上の高齢者。タクシー1台に対象者が1人以上含まれていることが条件で、通院・通学には利用できない。 埼玉 薬膳パウンドケーキを産学官で開発  上尾(あげお)市と障害福祉サービス事業所「第2ぷちとまと」、日本薬科大学の3者がこのほど、産学官連携により「薬膳ジンジャーパウンドケーキ」を共同開発した。  市から業務委託されている地元企業OBの会「上尾・アブセック」が、就労継続支援B型事業所である「第2ぷちとまと」に新商品開発を提案。事業所併設のカフェの顧客にアンケート調査したところ、顧客の多くが女性で冷え性や整腸の悩みを抱えていることがわかり、市と相互連携を結んでいる日本薬科大学との連携が実現した。  「薬膳ジンジャーパウンドケーキ」は同大学薬学科の講師がレシピを監修。2種類のスパイスを配合し、クコの実をアクセントに入れ、薬膳の効能を活かした。「ぷちとまとアートカフェ」のほか、JR上尾駅東口の「あげお お土産・観光センター」、市役所1階の「ふれあいの店」で販売。価格は1カット230円(税込)、1本650円(同)。問合せは市障害福祉課へ。 電話:048−775−5315 石川 コースターに障害者アート  JR金沢駅西口に8月に全面開業した複合施設「クロスゲート金沢」の飲食店で、障害のある人たちの芸術作品が印刷されたコースターが使われ始めた。金沢市などが本年度から取り組む「アウトサイダー・アート・プロジェクト」の一環。コースターを飲食店に買ってもらい、その売上げから権利使用料が作家に入る仕組み。  知的障害や精神障害のある人の創作活動を支援する「金沢アート工房」と、市内のアニメスタジオ「トンコハウス・ジャパン」と市が連携。製作するコースターは計10種類で各5千枚。クロスゲート金沢2階のフードホールにある4店舗で、ドリンク提供の際に使われ、コースターは無料で持ち帰ることができる。 兵庫 障害者の農業参入を促進県がインターン助成  兵庫県は今年度から、農業を障害者雇用の場として活かす「農福連携」を進めるため、インターンシップを受け入れる農家への助成制度を設け、福祉事業所の農業参入をうながし助言する体制づくりを進める。  インターンでは、県内の農地30カ所で約1週間の就労体験を実施。福祉事業所指導員が、障害者に仕事を依頼するときの注意点などを農家に説明し、受け入れた農家には3万円を上限に助成。また、障害者が農業に触れる機会を増やすため、福祉事業所も農業参入のための施策に取り組む。JAや農家、自治会、行政機関などでつくる支援協議会が、農地や販路の確保、農産物の選定に関する手法などを助言する。さらに、農業用機械の購入費などに上限200万円を助成し、農家の人を派遣する技術指導も行う。 生活情報 千葉 障害者のサッカー国内初の専用施設  腕や足に切断障害のある選手がプレーする「アンプティサッカー」の国内初となる専用施設「ACミランアカデミーパーク」が、佐倉市神門(ごうど)にオープンした。イタリアの名門サッカークラブ「ACミラン」の日本サッカー協会登録チーム「AC Milan Sakura」などを運営する「一般社団法人ゾナカルチョ」が、スポーツを通じた共生社会を目ざして整備した。  アンプティサッカーは7人制で、フィールドプレーヤーは下肢切断者が、ゴールキーパーは上肢切断者が担当する。フィールドプレーヤーはクラッチという杖を使ってプレーする。1998年からワールドカップが開かれ、日本代表も出場したことがある。 東京 障害者アートを飾る街中芸術祭  江東区の住民らでつくる市民団体などは11月、障害者が手がけたアート作品を街中に展示する芸術祭「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」を深川で開催する。富岡八幡宮の参道や商店街などに計約300作品を置いて、訪れた人が作品に触れられるようにするほか、公募展も開く。アドバイザーとしてファッションデザイナーのコシノジュンコ氏が参画する。  期間は11月15日(日)〜23日(月・祝)。街中に置くのは複製画で、作品データは「NPO法人エイブル・アート・ジャパン」が提供。公募展では心や体に何らかのハンディキャップのある人を対象に全国から作品を募った。作家の林真理子氏や俳優の別所哲也氏、イラストレーターの谷口広樹氏らが審査する。入選した百数十点は深川不動堂地下ギャラリーなどに屋内展示する。 大分 体験型資料館「太陽ミュージアム」開設  「社会福祉法人太陽の家」(別府市)が、障害者の生活や障害者スポーツを紹介する体験型の資料館「太陽ミュージアム No Charity,but a Chance」をオープンし、共生社会の拡大を目ざす。  「太陽の家」は「障害者スポーツの父」と呼ばれる故中村(なかむら)裕(ゆたか)医師が1965(昭和40)年に創設。「保護より機会を(No Charity,but a Chance)」を理念に、「障がい者が働ける場づくり」に取り組んできた。  ミュージアムは故中村医師の功績や施設の歴史を伝えようと開設された。資料やアーカイブの閲覧、障害者の生活をサポートする道具の見学、障害者スポーツの体験などができる。  展示室、ホール、屋外に「太陽広場」と体験ゾーンを整備した。全エリアが段差のないワンフロアでつながっている。車いすマラソンやボッチャの体験コーナーのほか、太陽広場では「運転補助装置自動車」の試乗も可能。開館時間は10時〜16時。日曜・祝日休館。入館料は大人300円、中高生100円、小学生以下無料。 電話:0977−66−0277 働く 新潟 DeNA子会社が新潟支社で障害者雇用促  IT大手の「株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)」(東京都)は、障害者雇用の拡大などを目的に、子会社「株式会社DeNAビジネスコミュニケーションズ」(東京都)を設立した。新潟市中央区に支社を設置し、県内の障害者手帳を持ち、基本的なパソコン操作ができる人を対象に、50人を雇用する予定。  同社は、DeNAグループの委託を受け、おもにサービス利用者のサポート業務などを行う。支社は新潟のみに設置し、業務の中心をになう。障害者が働きやすい環境や制度づくりに取り組み、DeNAとして初めての特例子会社認定を目ざす。 石川 レストラン買収で障害者就労支援  障害者の就労支援事業を行う「ヴィスト株式会社」(金沢市)は、同市内の「レストランMEGU(メグ)」を運営する「有限会社浅ノ川フーズ」を買収した。店舗や従業員などをそのまま引き継ぎ、障害者が働く場として活用する。  レストランの席数は最大130ほどで、現在は調理担当の2人とホール担当の5人が働いている。ヴィストは就労継続支援A型事業を展開しており、MEGUではホール担当など10人程度を受け入れる方針。  問合せは、就労継続支援A型「ヴィストジョブズ金沢入江」まで。 電話:076−256−2115 本紹介 『テレワーク雇用導入ではたらく人材が変わる・はたらき方が変わる』  障害者雇用にかかわる事業を展開する「パーソルチャレンジ株式会社」と、テレワーク専門のコンサルティングを手がける「株式会社テレワークマネジメント」が、障害者雇用とテレワークを経営視点から解説した『障害者雇用は経営課題だった!テレワーク雇用導入ではたらく人材が変わる・はたらき方が変わる』を出版した。障害者を対象にしたテレワーク導入を、障害者を戦力として活かす事業戦略としての経営課題ととらえ、導入を阻(はば)む誤解や問題点、解決策や導入成功事例を紹介している。A5判132ページ、1000円(税別)。 2020年度地方アビリンピック開催予定 10月〜11月 北海道、青森県、福島県、千葉県、山梨県、三重県、滋賀県、山口県、大分県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *  の県は開催終了(開催中止含む) ※全国アビリンピックが11月13日(金)〜11月15日(日)に、愛知県で開催されます。 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 地方アビリンピック 検索 写真のキャプション 北海道 青森県 福島県 千葉県 山梨県 三重県 滋賀県 山口県 大分県 【P32】 掲示板 読者の声 障害者雇用の拡大に向けて 公益社団法人全国障害者雇用事業所協会 福岡相談コーナー(厚生労働省委託) 西村和芳  私は特例子会社を退職後、現在は障害者雇用相談員(厚生労働省委託)を約4年間行っている。障害者雇用の促進を図るには、障害者を身近に感じていただくことが一番だ。障害を他人事と思うか、自分や身近な家族のことと思うかでは、大きく違う。一人ひとりが身近なことと気づくには少し工夫が必要なのかもしれない。  そのために、特例子会社在任中は、障害者が元気に働いている姿を多くの方に見学していただくことに重点を置いた。いまは、障害者の法定雇用率未達成の事業所へ障害者の就労実態を理解していただくことを一番の取組みとしている。障害者の就労現場の見学会や特別支援学校への見学も有効な手段である。  しかし、今回のコロナ禍(か)で障害者と採用側の距離が遠くなったように思う。  感染防止のために距離を取ることは必要だが、そのことにより採用や就活が滞ってはならない。私たちが毎年開催している『障がい者雇用特別セミナー』も、今年は、リモートセミナーへと変わる。障害者が働いている職場や特別支援学校等と障害者雇用を進めたい企業がオンラインで結ばれて、採用活動で距離を感じることなく障害者雇用が広がることを願う。 次号予告 ●この人を訪ねて  指定難病患者を対象に就労支援を行う「NPO法人京都難病支援パッショーネ」理事長の上野山裕久さんに、難病患者の社会復帰とその支援についてお話をうかがいます。 ●職場ルポ  包装容器と包装材料の製造・販売を行う日豊製袋(にっぽうせいたい)工業株式会社(大分県)を訪問。特性が活かせる職場配置により、障害のある従業員の職場定着を目ざす現場を取材します。 ●グラビア  NPO法人町田リス園(東京都)を訪問。開園前の清掃、チケット切り、餌詰め、餌の販売など、障害者らが仲よく、楽しく仕事をしている様子を取材します。 ●編集委員が行く  諏訪田克彦編集委員が、株式会社インコムジャパン(福岡県)を取材。同社での取組みと、委員自身が障害者雇用やその研究にかかわるようになったきっかけについて、紹介します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.or.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 10月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和2年9月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【P33】 第28回 職業リハビリテーション研究・実践発表会 12月中旬配信予定  当機構では、職業リハビリテーションに関する研究成果を広く各方面に周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流をさまざまな場で生み出すための機会として「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催しています。  今年は、新型コロナウイルス感染症への対応を考慮して、障害者職業総合センター(NIVR)ホームページで動画配信することなどにより開催することといたしました。特別講演、パネルディスカッションT、パネルディスカッションUの動画をはじめ、企業、教育、福祉などさまざまな分野の方の発表内容をNIVR ホームページに掲載いたします。動画などの配信は令和2年12月中旬を予定していますので、職リハ関係者の方は、以下のアドレスからアクセスいただくか、「職リハ発表会」で検索してください。 たくさんの方の視聴をお待ちしております。 障害者職業総合センターホームページ https://www.nivr.jeed.or.jp/ 職リハ発表会 検索 特別講演 「障害者雇用の経営改善効果 〜戦力化と相乗効果〜」 影山摩子弥 氏 ( 横浜市立大学 都市社会文化研究科 教授) パネルディスカッションT 「障害者を継続雇用するためのノウハウ〜企業在籍型ジョブコーチの活躍〜」 パネルディスカッションU 「障害のある社員の活躍のためのICT活用」 研究・実践発表 発表資料の掲載 ※例年同時開催しておりました「支援技法普及講習」につきましては、開催方法を検討中です。 事務局 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 研究企画部 企画調整室 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 TEL:043-297-9067 E-mail:vrsr@jeed.or.jp HP:https://www.nivr.jeed.or.jp 写真のキャプション 昨年度の特別講演の様子 【裏表紙】 第40回 全国障害者技能競技大会 (アビリンピック) あいち人材力強化 プロジェクト イメージキャラクター アイチータ 令和2年11月13日(金)〜11月15日(日) 令和2年11月13日(金) 技能競技会場下見 令和2年11月14日(土) 技能競技 令和2年11月15日(日) 成績発表(予定) ※新型コロナウイルス感染拡大防止策により、「無観客」で開催します。  また、選手が一堂に会する形での開閉会式(表彰式を含む)等の実施を取りやめることとしております。 開催場所 愛知県国際展示場 愛知県常滑市セントレア5丁目●中部国際空港駅より徒歩5分 アビリンピックとは? アビリンピックの正式名称は「全国障害者技能競技大会」です。「アビリティ」(ABILITY・能力)と「オリンピック」(OLYMPICS)を合わせて「アビリンピック」(ABILYMPICS)と呼んでいます。 新規種目登場! 第40回全国アビリンピックでは、新規種目として「写真撮影」及び「パソコン組立」種目を実施します。全25種目の技能競技において、全国各地から集った約430人の選手たちが日ごろつちかった技能を披露し、競い合います。 国際アビリンピック 障害のある方々の“技能の世界大会(祭典)”である第10回国際アビリンピックが、令和3年5月にロシア連邦において開催される予定です。 第40回全国アビリンピックは、第10回国際アビリンピック派遣選手選考のための大会も兼ねており、過去の全国アビリンピック金メダリストも参加します。 2年連続開催! 昨年度に引き続き、本年も愛知県国際展示場において、技能五輪全国大会と同時開催します。また、今年度は全国アビリンピック初のWEB配信を行う予定です。 ※技能五輪のうち、一部の競技は別会場にて実施します。 お問合せ 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用推進課 TEL 043-297-9516 FAX 043-297-9547 MAIL koyousuishin@jeed.or.jp 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援(予定) 厚生労働省、内閣府、文部科学省、経済産業省、中央職業能力開発協会 アビリンピック 検索 写真のキャプション 歯科技工 フラワーアレンジメント 家具 電子機器組立 10月号 令和2年9月25日発行 通巻516号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)