【表紙】 令和2年10月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第517号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2020 11 No.517 職場ルポ ペア作業で長所を活かし、独自の指導・支援で定着へ 日豊製袋工業株式会社(大分県) グラビア リス園へようこそ! 定非営利活動法人町田リス園(東京都) 編集委員が行く 仕事では全員が責任者(リーダー)自らの夢を実現した会社が取り組む障害のある人の雇用 株式会社インコムジャパン(福岡県) クローズアップ 活躍する障害者職業生活相談員 第1回 「伝えていきたい技」神奈川県・井上(いのうえ)浩之(ひろゆき)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 11月号 【前頁】 心のアート まっすぐに自分と向き合う象 加茂 賢一 画材:キャンバスにアクリル絵具/サイズ:縦910mm×横727mm 仕事終わりや休日の時間があるときに、おもに自宅で絵を描いています。 真っ白なキャンバスに筆を入れていくときは、すごく神経を集中させます。 あまり気が進まないときもありますが、絵ができあがっていくにつれ、だんだんと「描いていてよかった」、「また描きたい」という気持ちが湧いてきて、そんな自分に感動を覚えることがあります。 文:加茂賢一 加茂 賢一(かも けんいち)  1976(昭和51)年生まれ。佐賀県在住。  先祖から代々受け継がれた写真にインスピレーションを受け、太古の昔や未知なる事物に想いを馳せ、独自の画法で描く。  花の育苗(いくびょう)の仕事にたずさわっていたこともあり、美しい物に対する色彩感覚に優れている。  地元で働きながら作品制作を続けている。九州漫画会会員。 協力:SANC(Saga ArtBrut Network Center) 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2020年11月号 NO.517 心のアート−−前頁 まっすぐに自分と向き合う象 作者:加茂賢一 この人を訪ねて−−2 難病患者が働くためには NPO法人京都難病支援パッショーネ 理事長 上野山裕久さん 職場ルポ−−4 ペア作業で長所を活かし、独自の指導・支援で定着へ 日豊製袋工業株式会社(大分県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ−−10 活躍する障害者職業生活相談員 第1回 JEEDインフォメーション−−12 令和2年度就業支援スキル向上研修のご案内/障害者週間連続セミナー 「働く広場」公開座談会 発達障害者の雇用を促進するために〜若年求職者への支援を考える〜/第40回全国障害者技能競技大会のお知らせ グラビア−−15 リス園へようこそ! 特定非営利活動法人町田リス園(東京都) 写真/文:官野 貴 エッセイ−−19 あなたはどう思いますか? 第2回 香川大学教育学部 教授 坂井 聡 編集委員が行く−−20 仕事では全員が責任者(リーダー)自らの夢を実現した会社が取り組む障害のある人の雇用 株式会社インコムジャパン(福岡県) 編集委員 諏訪田克彦 省庁だより−−26 令和2年版 障害者白書概要@ 内閣府ホームページより抜粋 研究開発レポート−−28 就労困難性による障害認定や重度判定 〜フランスとドイツの取組 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 ニュースファイル−−30 掲示板・次号予告−−32 表紙絵の説明 「職人の高齢化が進み、失われる技術も少なくないいま、急速な時代の流れには逆らえないと感じ、この題材を選んだ。何十年ぶりに描いた水彩画にしては、かなり満足のいく作品になった。受賞を聞いて飛び跳ねるくらいうれしかった。」 (令和2年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.or.jp/) 【P2-3】 この人を訪ねて 難病患者が働くためには NPO法人京都難病支援パッショーネ 理事長 上野山裕久さん うえのやま ひろひさ 1967(昭和42)年、和歌山県生まれ。同県立古座(こざ)高校卒業、京都府内の会計事務所で10 年勤務。2003(平成15)年、35歳のときに指定難病の重症筋無力症を発症。2009年に「合同会社パッショーネ」を設立し、難病患者の就労を支援する活動もスタート。2011年に「NPO法人京都難病支援パッショーネ」を設立。2013年から就労継続支援A型事業も開始。http://npo-passione.org/ 35歳で難病と診断 ――35歳のときに国の指定難病「重症筋無力症」と診断されたそうですね。  ある日、なんとなく体が重いなあと思っていたら、自分で立ったままズボンをはけなくなりました。そして瞼(まぶた)も重くなってモノが二重に見え、顔の表情がつくれなくなりました。病院で働いている友人に相談したら「神経内科に行ったほうがいい」といわれ、そこで告げられた病名が「重症筋無力症」でした。これは体の筋力が弱くなってしまう自己免疫疾患の病気です。  おもな治療はステロイド薬の服用でした。当初は1カ月ぐらいで退院し、すぐに元の生活に戻れるだろうと思っていました。ところが病状は悪化し胸腺摘出手術も受け、退院は7カ月後でした。  それから自宅療養を経て、知り合いの会社で経理の仕事を始めました。週1日勤務から少しずつ増やし、2年後には週5日7時間勤務、たまに残業を含め10時間勤務をこなす日もありました。それが知らぬ間に負担になっていたのか、再就職から3年たらずで再発。勤務時間や日数を減らしても回復せず、再入院しました。ただこのとき幸いだったのは、万が一のときに備え、自分しか知り得ない情報をなくすため、ファイリングで「見える化」しておいたことでした。難病患者は、自分が突然いなくなることを想定しながら仕事をすることも重要です。結局、発症から6年間に3回入院し、3回目のときには会社も解散、41歳で無職になりました。 ――あらためての求職活動は、いかがでしたか。  10年ほど前は、私たちのような難病のある者が求職活動をしても、ほぼ門前払いでした。ハローワークで障害者求人担当の方が対応してくれましたが、企業にかけた電話で「重症筋無力症という難病患者で、障害者手帳は持っていません」というと、その場で断られてしまうパターンが20社以上にのぼりました。  指定難病には障害者手帳を取得できる場合もありますが、かなりかぎられています。私も一時、病状が悪化して車いすになったとき主治医に相談しましたが、「その状態が最低1年半以上続かないと認定されない」といわれ、諦めました。次第に私は、「企業にとって一般雇用しにくい人材であるならば、自分たちで組織をつくり、複数の企業から仕事を受注し、給料ではなく売上げを得るしかない」と考えるようになりました。  そして2009(平成21)年に、仕事仲間の9人で設立したのが「合同会社パッショーネ」です。会計業務を中心に請け負いましたが、難病患者は私だけだったので、治療面で仕事の融通も利きやすいのが大きな利点でした。ちなみに最初に契約できた取引先は、求職活動中に面接で難病を告げて不採用になった会社。ずっと気にかけてくれていたのが、ありがたかったですね。 Web制作やモノづくり ――合同会社設立の2年後にはNPO法人を立ち上げたそうですね。  合同会社を立ち上げたときから、私と同じような難病患者のための働く場をつくりたいと考えていました。そこで支援活動を行いやすいNPO法人の設立を目ざしました。  事業は、インターネット上のショッピングサイト運営やWeb制作から始めました。2013年には就労継続支援A型事業として「パッショーネ工房」の前身となるECサイト(※1)を立ち上げ、オリジナルのモノづくりに力を入れるようにしました。本格的な草木染めや“こぎん刺し”(※2)の小物、折り紙を加工したアクセサリー、京都を舞台にしたアニメ作品とのコラボグッズなどを手がけています。  メンバーは20代から60代までの37人で、健常者2人を除く35人が難病・身体障害・精神障害のある方たちです。難病や障害が重複している方が11人、在宅勤務者は16人です。メンバーの疾病も20種近くと多岐にわたります。 地元企業などと連携も ――難病患者の方が働くために、パッショーネで心がけていることは何ですか。  基本的には本人が「どれだけ主体的になって取り組めるかどうか」を考えています。やりたいことや将来像をヒアリングし、できるだけ具体的な仕事に結びつけていけるよう、最初の一歩をうながします。勤務時間や日数、働き方などは本人の状況に合わせてかなり自由に設定していますね。最近は、精神障害のある方が入社を希望してくるケースも少なくありません。働く場所も時間もフレキシブルな職場環境がマッチしているからなのでしょう。  5年ほど前からは、私が入会する京都中小企業家同友会のソーシャルインクリュージョン委員会の「求職困難者就労部会」が、地元の就労支援ネットワーク会議「いっぽねっと」や行政機関などと連携し、難病患者を含めたさまざまな境遇の人たちの就労支援を行っています。柱となる活動は、求職者と企業のマッチング。実習やトライアル雇用を実施しながら、雇用につなげていく取組みです。実際に雇用に至ったのは数人ですが、実習で自信をつけ、あらためて就活をして他企業に就職していく人たちは数多くいます。就労への後押しをするワンクッション的な機会になっていると実感しています。 フランクに話せる社会に ――難病患者の就労についての課題や展望についてお聞かせください。  国内の大局的な課題についていえば、やはり障害者手帳などを持てない難病患者を、少しでも障害者の法定雇用率に含めてほしいということになりますが、目下の課題は、一人ひとりが難病というハンデを超えるほどの能力を伸ばすことに尽きます。最初から「自分は難病だから」といって線を引いてしまうと、可能なチャンスも逃してしまいます。もちろん一般就労がすべてではありません。パッショーネではメンバーの副業もOKですし、個人事業主のように、事業所を活用して新しい取引先をつくったり、教室を開いたりして、スキルを仕事に結びつけてもらえたらいいなと思っています。今回のコロナ禍(か)は、あらためてパッショーネの運営方法や個々の就労のあり方を考える機会にもなりました。いろんな働き方で、その人らしい活躍ができるよう事業のすそ野を広げていきたいと考えています。  いま、国の指定難病は330疾病以上に増えました。企業のみなさんには、難病という言葉だけでひとくくりにせず、一人ひとりの状況や能力を見て、就労の間口を広げてほしいと思っています。世の中の理解もかなり進んできてはいますが、難病というぼやっとしたイメージで、それ以上聞くことを避けてしまう空気もあるようです。もっとフランクに話せるような社会になるといいなと思いますね。私たちも難病について少しでも知ってもらえるよう「難病カフェ」といったイベントや、漫画・動画配信などを積極的に行っていますので、ぜひパッショーネのホームページをのぞいてみてください。 NPOパッショーネ 検索 ※1 ECサイト:electronic commerce(電子商取引)の略。インターネット上で商品を販売するWebサイトのこと ※2 こぎん刺し:青森県津軽市に伝わる刺し子の技法の一つ。一般に青い麻布に白い木綿糸で刺す 【P4-9】 職場ルポ ペア作業で長所を活かし、独自の指導・支援で定着へ ―日豊製袋(にっぽうせいたい)工業株式会社(大分県)― 各種コンテナバッグなどを製造するこの工場では、50年以上前から障害者雇用を始め、障害者と健常者が一緒に作業しながら安定した生産と雇用を維持している。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ 日豊製袋工業株式会社 〒879-0101 大分県中津市今津1101-1 TEL 0979-32-0200 FAX 0979-32-5861 Keyword:知的障害、身体障害、精神障害、製造、ジョブコーチ POINT 1 ペア作業で仕事内容や職場ルールを身につけ、長所も活かす 2 家庭や地域の協力も得て、安定した就労のための生活環境を整える 3 一人ひとりの社会的自立を目ざした長期的な指導・支援体制 汚染土壌用フレコンなど開発・製造  大分県中津市にある「日豊製袋工業株式会社」(以下、「日豊製袋」)では、おもにフレキシブルコンテナバッグ(以下、「フレコン」)と呼ばれる袋状の包装資材の開発・生産や検査を行っている。物流や倉庫保管などに使われる一般用のほか、原発事故による汚染土壌用の特殊な製品も手がけてきた。  もともとは肥料袋の縫製事業を柱に、総合商社である兼松株式会社の子会社として1962(昭和37)年に設立されたが、その後に独立。いまでは海外5カ国(ニュージーランド、中国、台湾、韓国、タイ)の企業とも提携しながら幅広く事業を展開している。  従業員60人のうち障害のある人は17人(身体障害4人、知的障害12人、精神障害1人。2020〈令和2〉年8月現在)。平均勤続年数は16年、長い人になると30年を超える。工場では、裁断のほか縫製補助、縫製、梱包、事務に分かれて全員が一緒に働いている。  障害者雇用を始めたのは、50年以上前にさかのぼるという。前社長の友松(ともまつ)研二(けんじ)さんが、会社敷地内のたき火にあたりに来ていた知的障害のある青年に雑事を頼んだところ、しっかりやり遂げる姿を見て「明日から君は社員だ」といって雇うことを決めたそうだ。それ以来、地元の中学校や特別支援学校、ハローワークなどから採用し続けてきた。  研二さんの長男で、代表取締役社長を務める三樹男(みきお)さんは、「子ども時代から、障害のある従業員が工場で働いていました。私にとっては、障害の有無に関係なく、どの従業員も親戚みたいな存在でした」とふり返る。三樹男さんは、三菱化成株式会社に就職し、研究員として染料の開発などを手がけていたが、10年ほど勤めたあと日豊製袋に入社した。  研二さんからは、工場長として障害者雇用の担当も命じられた。「社会人の一人として仕事ができるように育てる」という父の決意に沿い、三樹男さんもこれまで、会社独自のやり方で、障害のある人の雇用と自立支援に取り組んできた。まずは工場内の様子から紹介していきたい。 二人一組で支え合う関係  平屋の工場に入っていくと、さまざまな機械が稼働する音が聞こえてくる。あちこちにミシンが点在し、それぞれ二人一組で作業していた。一人がミシンに座って袋を縫う役、もう一人はミシンを挟んで立ちながら袋を動かす役のようだ。  日豊製袋では、障害のある従業員と健常者がペアになって作業することを基本としている。入社から3カ月は、指導係がマンツーマンで仕事を教えながら、本人の性格や得意なことを見極めたうえで「どの作業を、だれと組むか」を決める。指導役はおもに高齢従業員に任せていると三樹男さんが説明する。  「社員・社会人としての心得やルールなどを、親や祖父母のように親身になって教えてくれて、新人は自然と職場になじんでいきます。そして、障害のある従業員には体力のいる作業を任せるなど、互いに支え合う関係になっています」  予想以上にメリットを感じる出来事もあった。ある日、高齢の従業員が縫製用の糸を選ぼうとすると、知的障害のある若い従業員が、両手でそれを阻止した。高齢従業員のほうが「なにをするんだ」と怒り気味でいうと、その若い従業員は「違う」といって別の糸を指さした。「あ、糸の種類が間違っていたのか。ごめん、ありがとう」とあわてて謝ったという。  「袋の仕様は200種類以上になるので、どうしてもたまに糸の種類を間違えてしまうことがあります。ただこの知的障害のある従業員は、一度覚えたことは忘れないという長所がありました。ほかにも、同じ作業をくり返しても気を抜かず、ルールを守り通す従業員もいます。ベテランになってくると、健常者と同等かそれ以上の働きぶりなんですよ」と三樹男さんは話す。  ミシンの前で、袋を両手で上下左右に動かしていた高嶋(たかしま)信明(のぶあき)さん(42歳)はまだ入社して1年ほど。「仕事もずいぶん慣れました。ミシンの担当者がスムーズに縫えるよう心がけて、袋を動かしています」と話す。「みんなと楽しく働けて、しっかり時間内に作業が終わる職場です。休日は彼女と映画を観に行くのが楽しみです」と笑顔いっぱいで答えてくれた。  その彼女も、同じ職場内で働いている。勤続11年で、いまは梱包作業を担当している渡辺(わたなべ)悠希(ゆうき)さん(28歳)だ。三樹男さんは「渡辺さんと高嶋さんは、二人で貯金をするなど生活に張り合いが出ているのか、働きぶりも熱心です」と温かく見守っている。渡辺さんは「職場のみなさんが親切で、社長さん夫婦には親のようによくしてもらい、本当に感謝しています。いただいているお給料のぶん、しっかりていねいに仕事をしていきたいです」と答えてくれた。  高嶋さんのように縫製補助にたずさわっているのは8人だが、ほかに縫製作業や裁断を1人で担当している障害のある従業員も4人いる。その1人が2003(平成15)年入社の佐竹(さたけ)康則(やすのり)さん(58歳)だ。奥まった場所で、袋につけるベルトの裁断を1人で行っていた。「作業はもう慣れました」と手を休めることなく答える佐竹さんは、車も運転し、休日は釣りに行くのが楽しみだという。三樹男さんが「大きな魚を釣ったときは持ってきてくれて、私の缶ビールと物々交換するんですよ」と教えてくれた。  別の一角で、袋にベルトを縫いつける作業を1人で行っていたのは、岩久(いわひさ)茂史(しげふみ)さん(38歳)。中学校卒業後に入社し勤続23年になるベテランだ。使っている工業用ミシンは、障害のある人が1人でも扱えるようボタン調節機能などが独自に改良されている。三樹男さんが説明する。  「機械の改良は、障害者雇用を始めたころの補助金があったからこそ可能でした。その後は故障するたびに部品を調達したり、生産中止になったものは自分たちで代替部品を見つけて修理したりしながら延命させてきました」  それにしてもミシンを操作しながら袋を動かす岩久さんの手際のよさには驚かされる。1日100〜200枚分をこなすそうだ。岩久さんは「最初のころは縫い目の中心がずれるなどのミスもしましたが、いまはありません。ほかの人に作業を指導することもあります」と笑顔で話す。  岩久さんは遺跡が大好きで、休日には地元の遺跡調査や見学会を手伝うボランティア活動にも参加しているという。三樹男さんが「ボランティアの現場は高齢の人が多いので、みんなに子どもや孫のようにかわいがってもらい、大事な戦力にもなっているようです」と教えてくれた。  休憩中に三樹男さんに話しかけられていた、縫製補助担当の野田(のだ)貴洋(たかひろ)さん(43歳)は入社して19年。「ここは、いろんな仕事ができるので楽しい」と笑顔で答えてくれた。三樹男さんによると、野田さんは体格がよく力仕事も得意なうえに、職場外でも同僚がだれかにからまれているのを見つけると、すかさず間に入ってくれる兄貴的な存在だという。「従業員の間で仲間意識が強いのは、父の時代から、みんなで頻繁に社員旅行に行ったりマラソン大会に出たりして親睦を深めてきたからだと思います」と三樹男さんはふり返る。いまは会社が音頭をとらなくても、従業員同士で遊びにいくようになっているそうだ。 状況に応じて「社員寮」も  三樹男さんは2015年に社長になり、会長に退いた研二さんは2018年に93歳で他界されたが、経営理念とともに障害者雇用方針もしっかり受け継がれた。その柱となっているのが「障害者指導教育方針」だという。 【障害者指導教育方針】 ●会社的教育  @入社3カ月で自分の居場所づくり  A会社の仕事でなにができるか見極める  B工場のなかで仕事をする  C自分に合った指導者を決める ●家庭的教育  @自分のことは自分でできるようにする  A問題があれば家族と会社で話し合う ●外的要因  @職場の外に遊べる場所を提供  A集まる場所のチェック  Bお金の使い方のチェック  C社会的自立心を育てる  障害者雇用においては、あえて、家庭や外での生活までふみ込んだ指導を目ざしている。そこには、研二さんや三樹男さんたちの「彼らを社会的に自立できるようにする」という確固たる理念がある。  「特に、知的障害のある従業員たちのなかには、自覚なしに私生活が乱れてしまうだけでなく、家庭や第三者のトラブルに巻き込まれて、普通に働けなくなるケースもあります。安定して就労定着してもらうためにも、私たちができるかぎりの指導と支援をしています」  日豊製袋の敷地内には「社員寮」として簡易的な住居施設があり、知的障害のある4人の従業員がそれぞれ自炊生活をしている。「いずれも家族とは暮らせない、もしくは家族がおらず一人暮らしにリスクのある従業員のために、特例措置として住居を用意しました」と三樹男さんが説明する。  ある従業員は、給料があるはずなのに昼食を食べていないため事情を聞くと、母の死後に同居していた兄に、お金を取られていたことがわかった。三樹男さんはすぐに社員寮に引っ越しをさせ、兄に近づかせないよう手立てをしたという。別の従業員は、「住み込みの会社でリストラにあい、住む場所もお金もない」とハローワーク経由で相談され受け入れた。  なかには結構な金額の借金を抱えている従業員もいた。  「悪い連中に取り込まれ、知らないうちに障害年金や給料を取られていたことがわかりました。すぐに顧問弁護士に相談して法的措置を取り、相手には会社に立ち入らせない内容証明などを送り、関係を遮断させました」  その従業員もいまでは借金を清算し、貯金をするまでになっている。自己管理がむずかしいと思われる従業員の給料については、地元の社会福祉協議会と連携しながらある程度の管理をしている。  家計について考えられるよう、自分で買い物をすることもうながしている。自分の給料とモノの値段を比べて金銭感覚を養ってもらうためだ。幸いなことに、三樹男さんたちが同行しなくても、地域の人たちの目がある。  「彼らが遊びに行くのは近くの商業施設など、かぎられた場所ですが、たまに地元住民の方が『日豊さんとこの従業員さんが、変な人と一緒にいるよ』などと通報してくれます。地域社会のなかで、安全で安定した生活ができることで、本人たちの心身も落ち着き、結果的に職場の生産性の向上にもつながっています」  敷地内に住む従業員たちは、いまでは率先して作業の段取りをしてくれるなど大事な戦力になっていて「とても助かっています」と三樹男さんは頬(ほお)をゆるめる。 「お母さん的存在」の工場長  従業員の安定した就労を支えている取組みの一つに、日記もある。研二さんの時代に始めたものだ。形式は自由。「今日は○○の作業をやった」、「家で○○をした」といった日常記録のほか、「○○さんに怒られた」、「○○とケンカした」といった小さな出来事の記述もある。確認するのは三樹男さんだ。社長として多忙な業務の合間を縫って定期的に目を通している。  「書くこと自体が本人のストレス解消になっていますし、私たちの目の届かないところでのささいなトラブルなどを伝える手段にもなります。従業員が『絶対に聞いてほしい』というときは、最初から私の机の上に日記が置かれていますよ」と三樹男さんは冗談交じりに話す。  実際にときどき従業員同士のトラブルが起きたときは、三樹男さんの妻で工場長をつとめる美智枝(みちえ)さんや、営業を担当している次男・慶輔(けいすけ)さんの妻で総務担当の江利子(えりこ)さんが対応しているそうだ。  企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)の資格も持つ美智枝さんは、もともと三樹男さんと一緒に長年現場にかかわってきた。三樹男さんも「従業員の性格などを知り尽くし、公平な目で一人ひとりに親身になって向き合ってくれています」と頼りにしている。  雨の日にズボンやシャツを濡らして出勤してきた従業員には、美智枝さんのほうから「濡れていると風邪をひきやすいし、気持ち悪いでしょ」といって予備のシャツやズボンに着替えさせ、濡れた服を退勤時までに乾かしておく。日ごろから目を配りフォローする美智枝さんを、従業員たちはお母さんのように慕っているようだ。美智枝さんは「障害のある人もない人も、ここでは同じ従業員として、みんなで和気あいあいと楽しく仕事ができるよう気を配っているつもりです。あとは、悪いことは悪い、良いことは良いと、はっきり伝えることも大事ですね」と話す。  「長年一緒に働いているので、何かいつもと違うときは、顔色や言動ですぐにわかります。ネックになっているところを見つけ、それを回避できるようにし、通常の生活に戻れるようフォローするようにしています」 従業員の将来も見すえて  日豊製袋は、いまは学校などからの定期的な採用は行っていない。退職者が出ないことに加え、障害者雇用を進める地元企業も増えたからだ。「どうしてもここで働きたいという人が来たときだけ受入れを検討しています。今年も学校の実習生のなかで1人候補がいます」  その一方では一貫して、知的障害のある従業員の将来を見すえ、必要に応じて、生活指導から給料の管理までかかわってきた。実家から通っている従業員の親や家族にも、「いつかみなさんがいなくなり、本人も高齢化していよいよ働けなくなったときに安心して生活できるよう、できるだけ貯金をしておいてほしい」とくり返し話しているそうだ。こうした意識を持たせることで、実際に数百万〜1千万円以上を貯める従業員も少なくない。また、三樹男さんは、そうした従業員の将来を見すえ、社員寮とは別に生活施設のようなものができないか考えているという。  こうした計画を無理なく実行できるようにするためにも、「会社としての経営努力も気を抜けない」と三樹男さんは話す。現在、国内のフレコン市場は大部分が海外産で占められ、日豊製袋の取扱量も国産が3割、海外産が7割だという。少しでも国内の生産量を上げるため、新たなフレコンの開発にも力を入れている。その一つが海外企業とともに取り組んでいる「折りたたみ式水タンク」だ。災害時に大容量の水をヘリコプターなどで運ぶときに使えるもので、場所を取らずに自治体などに保管しておけるという。  「私たちは国内でも数少ない、UN規格(国際連合危険物輸送勧告)・JIS規格適合のフレコンの認定工場。これまで取得してきた特許も活用し、技術革新と商品開発を続けていくつもりです。大企業とも対等に渡り合えるだけの技術と信頼を武器に、従業員みんなの安定した雇用も守っていきます」と意欲的に語ってくれた。 写真のキャプション 代表取締役社長の友松三樹男さん 工場内には、工程ごとに大型のミシンが複数台設置されている 製品が大きいため、二人一組で息を合わせて縫製作業にあたる ベルトの裁断をしている佐竹康則さん 梱包作業を担当している渡辺悠希さん 入社して1 年の高嶋信明さん 勤続23年のベテラン、岩久茂史さん 縫製補助を担当する野田貴洋さん それぞれが仕事や私生活について自由に記載した日記帳 総務担当の友松江利子さん 工場長の友松美智枝さん 【P10-11】 クローズアップ 第1回 活躍する障害者職業生活相談員  障害者を雇用する事業所では、障害者職業生活相談員の方たちが、障害のある社員の相談や支援に取り組んでいます。相談員の方たちの「選任されたけれど何をすればよいかわからない」、「他社の相談員はどんな活動をしているのだろう?」といった疑問に応えるため、各事業所で活躍されている相談員のみなさまの取組みをシリーズでご紹介します。 【取材先プロフィール】 株式会社シーエックスカーゴ 尾道流通センター (広島県尾道市) ◆業種  一般貨物自動車運送業。 日本生活協同組合連合会の物流子会社で、全国に物流の拠点を展開している。 ◆従業員数  663人のうち、障害者は27人。  (肢体不自由2人、内部障害1人、知的障害7人、精神障害17人) ◆障害者職業生活相談員数  2人(会社全体では10人)。 はじめに 〜障害者職業生活相談員について〜  障害者を5人以上雇用する事業所では、障害者の職業生活の充実を図るため、障害者職業生活相談員(以下、「相談員」)を選任し、障害者の職業生活全般の相談・指導を行うことが「障害者の雇用の促進等に関する法律」で義務づけられています。  相談員の役割は、障害者一人ひとりの障害の状況によってさまざまですが、次のことについて必要な相談や支援などを行います。 @職務内容の選定、職業能力の開発向上 A障害に応じた施設設備の改善等、作業環境の整備 B人間関係や職場のルールの指導 C余暇活動 Dそのほか、職場適応の向上  では、職場のなかで相談員はどのように活動しているのか、連載第1回目は広島県尾道(おのみち)市の「株式会社シーエックスカーゴ尾道流通センター」で活躍する相談員の方をご紹介します。 現場の職務と相談員活動  株式会社シーエックスカーゴ尾道流通センターに勤務している大山(おおやま)淳子(じゅんこ)さんは、出荷用の蓄冷剤や保冷容器の供給を管理する、業務二課の班長として活躍しています。ここでは30人の班員中、知的障害のある社員が2人、精神障害のある社員が5人、大山さんとともに働いています。  大山さんは、現場で班長業務を行うかたわら、2018(平成30)年から相談員としての活動も行っています。  「はじめは『対処法が間違っていたらどうしよう』などと不安で、思いきって指導できませんでした。社員とのコミュニケーションが取れればこちらの指示も受け入れてもらえると思い、日常的に声かけをし、会話を増やすよう心がけています。ただ、その人に合わせたほどよい距離感を取ることは失敗しながら学びました」と話します。 新たな作業での戦力化  以前、大山さんの班では、一階から二階へ容器を搬送する作業は状況判断が必要なため、障害のない社員が受け持っており、定型的なほかの作業を障害のある社員が担当していました。しかし、障害のない社員の休暇中の業務をカバーできるよう、障害のある社員にも作業の幅を広げることが望まれたことから搬送の仕事の指導に取り組み始めました。  「しかし、実際に始めてみると課題にぶつかりました。容器を一階から二階に搬送する作業では、進行状況により二階に運べる量が変わってきます。二階に無線で連絡し、今搬送できる量と場所を確認しながら運ぶ必要があるのです。なかなかお互いのいいたいことが伝わらず、やり直しや、私が現場まで行って指示する必要がありました。また、休憩後の遅刻など、仕事に取り組む姿勢での課題も目につき悩みました」といいます。  そこで、大山さんは作業面と働くうえでのルールやマナーの二つについて、改善に向けた取組みを行いました。 ◆作業面での取組み @社員の報告を聞くとき、運べる量の認識がずれないように現場のスペースの写真を見ながら確認することにした。 Aわかりやすい手順書、ルールを掲示した。 B空いたスペースに対応する個数を足元に数字で表示し、搬送可能な容器数を数えなくてもわかるようにした。 ◆ルール、マナーの改善に向けた取組み  一方的な注意ではなく、障害のある社員が自分たちで解決策を考えるためのミーティングを実施。原因と解決策を話し合い、自分たちの決めたルールを守ってもらうことにした。テーマは次の通り。 @休憩の取り方  なぜ遅れるのか、どうしたら時間を守れるのか。 A作業手順  なぜ手順を守る必要があるのか。 B役割分担  自分が担当する作業は何か、それを認識できているか。 Cマナー  職場にふさわしい言葉遣いや態度をとれているか。  「毎日一緒に作業を行い常に状況を把握し、指示するときは混乱させないよう、作業などの流れをわかりやすく説明しました。障害のない社員とも相談し、協力しながら一つひとつ課題を解決していきました。いまでは搬送作業で欠かせない存在になっています」  大山さんは、ミーティングを開いても障害のある社員から意見が出ないのではないかと心配していました。ところが、「さまざまな意見が出ました。そこで初めて、いままで発信する機会がなかっただけだと気づきました。遅刻の理由も、アナログ時計が読めない、時計によって時刻が違うなどであることがわかり、基準の時計を決めることにしました。そのほか、ミーティングをきっかけにお互いが教え合うようになるなどの効果もありました」と話してくれました。 相談員へのサポート  障害のある社員はもちろん、現場で活躍する相談員へのサポートも重要です。尾道流通センターには、企業在籍型ジョブコーチが一人配置されており、大山さんの働くところと建物は別ですが、いつでも定着支援などの相談ができる体制が整っています。また、全国各地の事業所を結ぶ障害者支援担当者専用の電子掲示板があり、情報共有を行っています。相談員は、年2回は地域ごとに、数年に1回は全国の社内研修で悩みを話し合う機会も持っています。 ともに成長する  大山さんは、これまでの活動をふり返りながら、これからについて語ってくれました。  「できるようにする工夫をすれば、社員は劇的に変わっていきます。成長した姿を見ることが私の楽しみでもあるので、次の成長に向けてだれも取り組んだことのないことも試してみようと思います。そして社員には、自分がいなくても通用するようになってほしいと思います。楽しみながら、社員と一緒に私自身も成長していきたいです」 写真のキャプション 相談員の大山淳子さん 現場で作業の手順を説明する大山さん 足元の目盛で数がわかる 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 受講料 無料 令和2年度就業支援スキル向上研修のご案内  当機構では、労働、福祉、医療、教育などの分野で、3年以上の実務経験がある就業支援担当者の方を対象に、障害別(精神障害、発達障害、高次脳機能障害)の就業支援技術のさらなる向上や障害者の就業支援に必要なヒューマンスキルの向上を図るための「就業支援スキル向上研修」を実施しています。みなさまの受講を心よりお待ちしております。 障害別コースの支援技法演習やケーススタディ 最新の調査・研究に関する情報提供 ヒューマンスキルに関する講義・演習 実践的! 専門的! 内容 全コース共通講座 ■職業リハビリテーションにおけるヒューマンスキル  (対象者と協同的な関係を築くスキルについての講義・演習) ■職業リハビリテーションに関する調査・研究の最新情報  (障害者職業総合センターにおける最新の調査・研究に関する講義) コース別講座 精神・発達・高次脳機能障害の3コースから選べます! ■就業支援の実際  (職業準備性の向上や職場定着に関する支援技法についての講義・演習) ■ケーススタディ  (受講者の支援事例をもとにした事例検討)  ※演習や意見交換が中心となります。 対象者 次の@〜Bのすべてを満たす方が対象となります。  @労働、福祉、医療、教育などの関係機関の職員の方であって、障害者の就業支援の実務経験が3年以上の方  A希望するコースの障害者に対する就業支援経験があり、当該障害者の就業支援事例を提出できる方(事例提出必須)  B3日間のすべての課程を履修できる方 日程  令和3年1月26日(火)〜1月28日(木) 会場  障害者職業総合センター  (千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3) 定員  精神障害コース25人、発達障害コース25人、高次脳機能障害コース15人 計65人 お申込み ◎申込方法:  「就業支援スキル向上研修受講申込書」に必要事項を入力し、申込受付期間内にメールでお申し込みください。 ◎受講申込書・カリキュラム:  当機構ホームページからダウンロードできます。 ◎申込受付期間:  令和2年11月3日(火)〜12月7日(月) ※定員を超えた場合は、当初の予定より早く受付を締め切る場合があります。また、複数名の申込みをされた機関に対して受講者数の調整や本研修(職業リハビリテーションスキルアップセミナーを含む)の受講経験のない方を優先させていただくことがあります。あらかじめご了承ください。 お申込み・お問合せ 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.or.jp 就業支援スキル向上研修 検索 ステップアップ方式の研修体制となっています! ステップ1 初めて担当する方 就業支援基礎研修 就業支援の基礎作り 全国の地域障害者職業センター ステップ2 2年以上実務経験のある方 就業支援実践研修 アセスメント力と課題解決力の向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害コース 全国14エリアの地域障害者職業センター ステップ3 3年以上実務経験のある方 就業支援スキル向上研修 障害特性に応じた支援スキルの向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害コース 障害者職業総合センター 障害者職業総合センター 就業支援課題別セミナー 新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上 障害者週間連続セミナー 入場無料! 参加者募集! 『働く広場』公開座談会 発達障害者の雇用を促進するために 〜若年求職者への支援を考える〜  近年、高等教育機関や、若年者を対象とした就労支援機関において、発達障害のある方、診断はないもののその特性がうかがわれる方が増加しています。そのなかには、就職活動や採用後の職場でうまくいかず、悩みを抱えている若年求職者も少なくありません。  そこで今回は「発達障害のある若年求職者への支援」について焦点を当て、当事者自身の障害理解や気づき、専門的支援を受ける過程での大学側のサポート、また、職業選択や職場適応面の課題や対応等をご紹介し、今後の支援や雇入れ等の方策について参加者とともに考えます。 日時:2020年12月5日(土)14:00〜15:30 《座長》 眞保(しんぼ)智子(さとこ) 法政大学 現代福祉学部 教授 《パネリスト》 丸田(まるた)伯子(のりこ) 一橋大学 保健センター 教授 働く当事者 IT会社障害者枠勤務 小野寺(おのでら)十二(みつぐ) 東京障害者職業センター多摩支所 主任障害者職業カウンセラー(敬称略) 場所:有楽町朝日スクエア 東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11F 有楽町駅から徒歩2分(JR、有楽町線)/銀座駅から徒歩2分(丸ノ内線、銀座線、日比谷線) 定員:40名(新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、例年より定員数を減じて開催いたします) *入場には事前申込みが必要です。下記の内容をご記入のうえ、FAXまたはメールでお申し込みください。FAX番号、メールアドレスは間違いがないようご確認のうえ、送信してください。 *申込人数が定員を超えた等により、やむをえずご来場をお断りする方にはその旨のご連絡をいたします。ご来場いただける方には開催日のおおむね2週間前までにセミナー当日の諸注意事項をご連絡いたします。 *新型コロナウイルス感染症拡大等の影響により、状況に応じて変更または中止をする可能性がありますので、あらかじめご了承ください。 申込締切:2020年11月16日(月) (FAX:043-213-6556/E-mail:hiroba@jeed.or.jp) (ふりがな) ご氏名 E-mail TEL FAX (ふりがな) ご所属 (企業名、所属部署など) 合計人数(本人を含む) 名 【事前アンケート】発達障害者の雇用に関して、ご質問・ご意見、ご提案、当日聞いてみたいことなどをお書きください。 ※障害により、配慮が必要な方はあらかじめお申し出ください。 ※この申込書により取得した個人情報は、当機構において適正に管理し、公開座談会の運営目的以外に使用することはありません。 ◎お申込み・お問合せ 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 企画部 情報公開広報課 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL:043-213-6200 FAX:043-213-6556 E-mail:hiroba@jeed.or.jp 第40回 全国障害者技能競技大会 (アビリンピック) あいち人材力強化プロジェクト イメージキャラクター アイチータ 令和2年11月13日(金)〜1月15日(日) 令和2年11月13日(金)技能競技会場下見 令和2年11月14日(土)技能競技 令和2年11月15日(日)成績発表(予定) ※新型コロナウイルス感染拡大防止策により、「無観客」で開催します。  また、選手が一堂に会する形での開閉会式(表彰式を含む)等の実施を取りやめることとしております。 開催場所 愛知県国際展示場 愛知県常滑市セントレア5丁目●中部国際空港駅より徒歩5分 アビリンピックとは? アビリンピックの正式名称は「全国障害者技能競技大会」です。「アビリティ」(ABILITY・能力)と「オリンピック」(OLYMPICS)を合わせて「アビリンピック」(ABILYMPICS)と呼んでいます。 新規種目登場! 第40 回全国アビリンピックでは、新規種目として「写真撮影」及び「パソコン組立」種目を実施します。全25種目の技能競技において、全国各地から集った約350人の選手たちが日ごろつちかった技能を披露し、競い合います。 国際アビリンピック 障害のある方々の“技能の世界大会(祭典)”である第10 回国際アビリンピックが、令和3年5月にロシア連邦において開催される予定です。 第40回全国アビリンピックは、第10回国際アビリンピック派遣選手選考のための大会も兼ねており、過去の全国アビリンピック金メダリストも参加します。 2年連続開催! 昨年度に引き続き、本年も愛知県国際展示場において、技能五輪全国大会と同時開催します。 また、今年度は全国アビリンピック初のWEB配信を行う予定です。 ※技能五輪のうち、一部の競技は別会場にて実施します。 お問合せ 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用推進課 TEL 043-297-9516  FAX 043-297-9547  MAIL koyousuishin@jeed.or.jp 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援(予定) 厚生労働省、内閣府、文部科学省、経済産業省、中央職業能力開発協会 アビリンピック 検索 写真のキャプション 歯科技工 フラワーアレンジメント 家具 電子機器組立 【P14-18】 グラビア リス園へようこそ! 取材先データ 特定非営利活動法人町田リス園 〒195-0073 東京都町田市薬師台1-733-1 TEL 042-734-1001 写真・文:官野貴  外周200mの広場に約200匹のタイワンリスが放し飼いにされ、餌やりなどを通してリスと触れ合うことができる町田リス園は、市民の憩いの場であるとともに、障害者雇用の場でもある。1988(昭和63)年12月に開園。「障害のある子どもたちに働く場を」という親たちの切実な願いを受けて、町田市が「これまでにない動物園の仕事を」と発案し、当時伊豆大島にあった「リス村」の全面協力のもと、授産施設としてスタートした。現在は、「特定非営利活動法人町田リス園」が運営する就労継続支援B型事業所として、障害のある利用者20人が働いている。  町田リス園の一日は、園内の清掃から始まる。朝9時にリス園へ出勤してきた利用者が、園長やスタッフの指導を受けながら、掃(は)き掃除、拭(ふ)き掃除を進める。その後は、ラジオ体操、朝礼と続く。朝礼では、利用者のなかから当番が前に出て、今日の目標などを発表する。開園時間を迎えると利用者は、放飼場出入口でのドアの開閉、リスやモルモットの餌(えさ)の販売、餌の選別や計量・袋詰め、動物用のカゴの洗浄などの持ち場に就き、笑顔で来園者を迎える。  園長の樋口(ひぐち)健治(けんじ)さんは、「おつりの計算や声かけができる人、できない人など、それぞれのレベルに合わせて担当を変えています。利用者は、向上心を持って仕事にチャレンジし、少しずつ前進、成長しています」という。開園当時から働く青井(あおい)由紀子(ゆきこ)さんは、近年、園内放送にチャレンジし、モルモットの大行進というイベントの告知が行えるようになったそうだ。「これはご両親も驚くほどの進歩です」と樋口さん。今日も、町田リス園には、彼らの笑顔が輝いている。 写真のキャプション 放飼場(ほうしじょう)では、約200匹のタイワンリスが飼育され、エサを与えることができる 各自の体力に合わせてラジオ体操を行う高橋(たかはし)洋子(ようこ)さん(50歳)は、清掃後、餌用の袋づくりを担当した。「破けてしまうので、糊(のり)のつけすぎに注意しています」 餌の販売を担当する小川(おがわ)真美(まみ)さん(32歳)。「おつりを間違えないように気をつけています」 野口(のぐち)松夫(まつお)さん(60歳)。「おつりが出ないよう、事前に両替をお願いしています」 桑原(くわはら)直也(なおや)さん(56歳)は、リスが逃げないよう、特に重要なドアの開閉を担当する 山口(やまぐち)昌幸(まさゆき)さん(49歳)。「お客さんがいっぱい来ると嬉しいです」 小島(こじま)正寿(まさとし)さん(33歳)。「きれいになっているか確認しながら作業します」 金子(かねこ)凌(りょう)さん(23歳)。「カゴの汚れがきれいに落ちると楽しいです」 リスへの餌やりの見本を見せてくれた前田(まえだ)元太(がんた)さん(39歳)は、餌の選別を担当。ひまわりの種からゴミなどの異物を取り除く 細谷(ほそや)英生(ひでお)さん(29歳)は餌の計量、袋詰めを担当。ひまわりの種を規定量ぴったりに計る 青井由紀子さん(51歳)。「まもなく、モルモットさんの大行進が始まります。ご覧になる方はモルモット広場に集まってください」園内アナウンスは好評だ 樋口園長(前列左から2人目)を囲んで、笑顔で楽しく働く仲間たち 【P19】 エッセイ【第2回】 あなたはどう思いますか? 坂井聡 さかいさとし  香川大学教育学部教授、香川大学学生支援センターバリアフリー支援室室長、香川大学教育学部附属坂出(さかいで)小学校校長・附属幼稚園園長、言語聴覚士、公認心理師。  特別支援学校での進路指導の経験があり、現場をよく知る実践的な研究者。富士通株式会社やソフトバンク株式会社と産学官の共同研究も行っている。 ユニセフのレポート  9月3日に国連児童基金(ユニセフ)が、新報告書『レポートカード16−子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か』を発表した。このレポートは、子どもたちの精神的、身体的な健康と、学力・社会的スキルについてランキングしているものである。  総合順位を見ると、日本は先進・新興国など38カ国中の第20位で、大体真ん中あたりに位置している。しかし、項目ごとの順位を見て驚いた。精神的健康度は38カ国中37位、身体的健康度は1位、スキルは27位という結果になっていたからである。このランキングから見えてくるのは、日本の子どもたちは、身体的には健康なのだが、精神的な健康については課題が多いということである。  身体的に健康であるのは、学校などでの健康指導が功を奏し、健康管理ができている結果だと考えることができる。これはとても喜ばしいことである。メディアでも健康の問題はよく取り上げられ、健康問題には多くの人が関心を持っている。また、学校給食など、日本の制度も大きな役割を果たしているのかもしれない。医療技術が発達しているという点も、高評価に影響を与えているのだろう。  一方、精神的な健康についてはどうなのだろうか。健康な身体に健康な精神は宿っていないという結果になっているのである。レポートでは、「家族からのサポートがより少ない子どもたち、いじめに遭っている子どもたちは、あきらかに、精神的健康がより低い結果となっている」と報告されている。 精神的健康度が低い原因は  しかし、原因はこれだけではないだろう。小学校の校長になって特に感じるのは、学校という世界は、行動はみんな同じようにしなければならないという「平均主義」と、成績はほかの人よりも秀でるのをよいとする「競争主義」が共存する、矛盾した世界なのである。特別支援教育に代表されるように、個人を大切にしなければならないとはいっているのだが、周囲の子どもの行動と比較して、逸脱していると考えられる行動は、強く修正するという雰囲気が学校にはある。一方、成績については、人よりも点が取れたことが評価されるので、個人の結果が大切にされている世界だということなのである。  この世界に馴染(なじ)むことができない児童は当然、自己肯定感が下がる。私がかかわってきた特別な支援が必要な児童は、どの子もこの学校世界への馴染みにくさを口にしていた。自己の能力が正当に評価されない世界だと感じるからであろう。このように精神的健康の低さは学校教育にも原因があると思うのである。 ユニークでも認められる社会を  特別な支援を必要としている子どもたちも大人になる。何らかの形で社会参加していくのである。現状では、精神的健康の課題は先送りされ、その負担は支援している人たちがになうことになる。自己肯定感が低いまま社会参加せざるをえない状況になっているからである。  先日、学校の朝礼で児童にこのような話をした。「この学校は困っていたり悩んでいたりする子どもがいたら、特別扱いをする学校です。みんなと同じでないといけないことはありません。校長先生は、担任の先生にそのように伝えています。だから、ずるいとか、不公平だとかいうことはありません」。いろいろな人がいて、自分はそのなかの一人であると意識させたい。この子どもたちが将来社会を支える働き手となるからである。「そうなんです。自分はちょっとユニークなんです。でも大丈夫なんです」と、自信を持っていうことができるような社会を創っていきたいからである。 【P20-25】 編集委員が行く 仕事では全員が責任者(リーダー) 自らの夢を実現した会社が取り組む障害のある人の雇用 株式会社インコムジャパン(福岡県) 武庫川女子大学 文学部心理社会福祉学科 准教授 諏訪田克彦 取材先データ 株式会社インコムジャパン 〒800-0213 福岡県北九州市小倉南区中曽根東1-2-1 曽根スカイマンション1F TEL 093-475-4547(代表) FAX 093-474-1370 編集委員から  障害者差別解消法の成立をきっかけにして、障害者雇用においても「合理的配慮」という新たな概念の具体化が、今後の社会福祉の大きなテーマになっていると感じる。障害のある人の立場やその視点に立ち、今回の取材を行った。 写真:官野貴 Keyword:印刷業、障害理解、職務創出、職場定着 POINT 1 足立学園での出会い 2 障害のある人とない人の「格差」 3 障害者の、本当の意味での「自立」に向けて 同じ釜の飯を食った友人との再会  私は3歳のときにポリオ(急性灰白髄炎)に感染して左足に運動機能障害が残り、現在も補装具を着けて何とか自分の足で歩くことができている。14歳(中学校2年生)のとき、両親にすすめられ、不自由な左足の治療を目的に「肢体不自由児施設足立学園(現在は北九州市立総合療育センター)」(以下、「足立学園」)に1年間入院した。肢体不自由児施設とは、児童福祉法に基づく医療型障害児入所施設で、医師とコメディカルスタッフ(※1)、ソーシャルワーカー、支援員がチームを組み、リハビリテーション治療を展開する病院のことである。厚生労働省の「障害児入所施設の現状(平成31年3月26日時点)」によれば、全国に57カ所、2122人が施設を利用している。  私は足立学園で、脳性麻痺、二分脊椎症(にぶんせきついしょう)、脊髄(せきずい)損傷などを原因とする運動機能障害のある仲間たちと出会い、一緒に生活していくなかで、世の中にはポリオ以外にもいろんな障害のある子どもたちがいることを初めて知った。  今回訪れた「株式会社インコムジャパン」の創業者、藤井(ふじい)豊美(とよみ)さんとは、当時の足立学園で出会い、治療や勉強、遊びを共有した「同じ釜の飯を食った友人」である。足立学園を退院した後は、それぞれの人生の節目や同窓会などで再会し、ときどきメールや電話をしながら現在も交流が続いている。今回の取材も、久しぶりの連絡に「いいよ、いつ来る?」と、藤井さんの二つ返事で決まった。 他己紹介「藤井さん」 (1) 事故と足立学園の生活  藤井さんは小学校6年生のときに友人と遊んでいたボタ山(※2)で不慮の事故にあい、脊髄損傷による両下肢の運動完全麻痺、感覚麻痺、さらに排尿排便障害が残った。藤井さんは手記で、元気に走り回っていた自分が歩けなくなったことを受け入れられず、「なんで自分が」という怒りと、「自分の人生は終わった」とその複雑な心を綴(つづ)っている。  足立学園では両下肢装具と両松葉杖で歩行訓練に励んでいた姿が、いまでも印象に残っているが、藤井さんの部屋を訪ねると褥瘡(じょくそう)(床ずれ)の治療、排尿障害による腎不全の治療でベッドでの生活が長く続いていたこともあった。私は初めて脊髄損傷という病を知り、この障害について、藤井さんの生活を通して実感できたような気がする。  当時のことを藤井さんにたずねると、「そうね、あのときは健康面の不安や、思春期特有の抵抗や反発も重なり心が落ち着かない毎日やった。でも、足立学園の仲間たちとの共同生活は、同じハンディを持つ者同士の仲間意識や助け合うことの大切さを学ぶことができて、いま思えば学園生活は自分にとって居心地がよかったよ」と、当時の心境を語ってくれた。 (2)社会人第一歩  藤井さんは、足立学園を卒業して最初に障害者支援施設である大分県別府市の「社会福祉法人太陽の家」で就労した。その後、21歳で自動車運転免許を取得し、地元の北九州市に帰りタクシー会社に就職。仕事内容は、お客さんから電話を受け、無線でドライバーに連絡する配車係だった。配車業務以外にも、乗車日報、料金の確認、タコグラフ(※3)の交換などを一人で担当した。車いすで移動する藤井さんにとって会社内はバリアフルで、建物内は狭く、至る所に段差があって会社内の移動に苦労が多かった。なかでもトイレは、会社内に男女兼用の和式トイレしかなく、便座がないことから、自家用車のなかで行うことがほとんどで、失禁時の着替えも必要だった。  しかし、藤井さんは、仕事仲間たちとの交流を通して、障害に関係なく個人として対等につき合ってくれることを初めて実感できたそうだ。さらに、藤井さん自身が「障害者」というレッテルを貼り、いつまでも卑屈で哀れな存在としか思っていなかった自分を、「このままではいけない」と気づくきっかけにもなったという。  しかし、職場では障害のある人とない人の違いを感じたこともあり、それが藤井さん自身の人生に深く影響している。それは給料の「格差」で、ほかの従業員よりも給料が低く、どんなに仕事をがんばっても追いつくことができない現実に、藤井さんはあらためて障害のない人との間に高い壁があることを感じ、それを疑問に持ち始めるきっかけにもなったそうだ。 (3)社会人第二歩  そのころ、足立学園を卒園して印刷関係の仕事にたずさわっている友人2人と再会し、仕事の現状や悩みを何度も語り合った。そのなかで自分たちは同じ思いを持っていることがわかり、それぞれが抱いていた悔しさは、後に「障害の有無にかかわらず、同じ給料がもらえる会社を自分たちの手でつくろう」という、新たな目標に変わった。  1984(昭和59)年9月11日、3人は資本金400万円の「有限会社足立写植」を設立。社屋は民間アパートの一室を借り、写植機材とカメラ、仮眠用のベッドを用意して自分たちの夢「自分たちの稼ぎは自分たちの力で稼ぐ」を実現する仕事を始めた。  当時、文字組版や写真製版の世界で は、手動写真植字から電算写植へと変化を続けていた時期で、誕生したばかりの足立写植にとって、利益を上げるようになるまでの数年間は苦しい時期でもあったそうだ。そんなときには、会社名にした「足立」の由来を思い出し、会社から見える足立山(北九州市小倉北区にある標高597・8mの山)を眺めては、3人が一緒に生活した「足立学園」のことを思い出し、「自分たちの足で自立するためにがんばろう」と、それぞれお互いを励ましあうこともあったそうだ。  足立写植は、資料1の「組版(くみはん)」という工程を担当してきたが、工程作業の変化(手動写植から電算写植そしてDTP組版へ)とIT化が進むなか、お客さまに広く理解してもらおうと、2007(平成19)年、組織変更とともに社名を「株式会社インコムジャパン」に変更した。 株式会社インコムジャパン  株式会社インコムジャパンは、JR小倉駅で新幹線から日豊(にっぽう)本線に乗り換え、下曽根駅から歩いて10分、国道沿いにあるマンションの1階にある。本部(21人、介護事業等スタッフ含む)と、東京オフィス(3人)、熊本オフィス(18人)、北九州市内にある事業所二つと合わせて、43人の従業員が勤務している。会社組織は、デジタルコンテンツ企画制作事業部と医療介護福祉事業部に分かれている。  医療介護福祉事業部は、2002年に介護保険の訪問介護事業、2012年に小規模通所介護事業、2018年に居宅介護支援事業、2019(令和元)年に医療保険の訪問鍼灸(しんきゅう)事業を開設して、地域の福祉活動にも貢献している。今回は、デジタルコンテンツ企画制作事業部の取材をお願いした。 (1)デジタルコンテンツ企画制作事業部  会社に着くと、玄関で藤井さんから笑顔の出迎えを受けた。玄関で体温測定と手指消毒を済ませると、社長室に案内された。建物内に入ってまず圧倒されたのは、廊下の壁一面に陳列された、インコムジャパンが担当した漫画コミック本だ。まるでインターネットカフェのコミックコーナーや、まんが図書館のような雰囲気を感じた。  このコーナーを設置した理由を藤井さんにたずねると、現在、会社の主力業務になっている電子コミックのオーサリング(電子書籍化)の依頼を受けた作品を、データだけでなく本という形で残したいという思いから、藤井さん自らが本棚を作成して作品ごとに整理したとのこと。このコーナーの本は編集プロダクションや出版社から、オーサリング用として提供された底本(ていほん)(※4)だそうだ。  日本の漫画やコミックは、電子出版・電子書籍の普及により、紙媒体の漫画を電子データに変換・加工する作業が急務の課題となり、写真製版業界もこの需要に対応している。インコムジャパンは現在約70社からオーサリング受注がある。受注した作品の一つである漫画「カイジ」の作者の福本(ふくもと)伸行(のぶゆき)氏本人も会社を訪れ、感謝を込めたサイン入り色紙が贈られていた。 (2)車いすユーザーの葭原勝男さん  インコムジャパンには2人の障害のある人が勤務している。社長の藤井さんと、デジタルコンテンツ企画制作部DTP組版担当係長の葭原(よしはら)勝男(かつお)さんだ。  職場内は、飛沫が飛散しないよう、コロナ禍で材料が品薄でも創意工夫し、作業内容ごとにダンボールで仕切り、数人の机を一つのグループにまとめていた。21人の従業員がパソコンに向かってそれぞれの仕事に取り組んでおり、そのなかで、葭原さんは車いすに座り黙々と仕事をしていた。  葭原さんは21歳のときに交通事故で脊髄を損傷した。学校を卒業して希望の仕事に就き、社会人として順調なスタートを切ったばかりの事故だった。事故までは障害とは無縁の生活だったが、何が起きても引きずらない、何事も前向きに考える自分の性格から、事故後の自分を受け入れるショックや落ち込む時期は短かったそうだ。脊髄損傷の入院治療とリハビリテーションを終えると、自動車関係の事務職として再スタートした。しかし、その職場では残業しても手当がつかず、突然の職場内異動も重なり、藤井さんと同じ「高い壁」を痛感する。このままでは自分がダメになると転職を決意。まずは仕事に活かせる技術を身に着けようと、北九州市内にある福岡障害者職業能力開発校に入学して写植の技術を習得し、その後、足立写植に就職した。  葭原さんは足立写植の時代からすると30年以上印刷関係の仕事に従事してきた。「これまでの仕事を通して、出版業界のなかの変化に取り残されないよう、苦手なパソコンの理解と技術の習得に苦労しながら現在がある。インコムジャパンは以前の職場で感じた差別や格差もなく、働いたことの評価と報酬を得られることが何よりもうれしい」と語る笑顔のなかに、葭原さんの自信と満足感のようなものを感じた。 (3)デジタルコンテンツ企画制作部部長の湯朝健二さん  これからのインコムジャパンについて藤井さんの話を聞こうとすると、会社全体の業務管理を担当しているデジタルコンテンツ企画制作部部長の湯朝(ゆあさ)健二(けんじ)さんが藤井さんに呼ばれて私たちの取材に応じてくれた。  湯朝さんに、これからの障害者雇用についてうかがった。  「当社は創業以来、多くの障害者を雇用してきました。現在も求人をハローワークに依頼しており、今後も雇用は継続していきますが、なぜか応募者がない状況が続いています。また、就職しても短期間で辞めていく人もいて、今後は求人活動と並行して、地域の福祉関係団体との連携も視野に入れ、職場定着の取組みが会社として必要になってきたと考えています」と話してくれた。  これからのインコムジャパンについて聞くと、「電子コミックは、テレビなどでいろんな会社の宣伝が行われるようになりました。その需要は、今後日本国内にとどまらず海外も含めて増加し、それに応える人材の確保が必要になってきています。電子コミックのオーサリングはテレワークも可能であることや、仕事内容もこれまで以上に多様化していくことが予測されますので、障害者の働く場として、障害の特性などにかかわらず多くの障害のある人が働く可能性を見つけられると思います」という。  さらに、自社作品の電子コミック作成を次の目標にしているなど、その夢を実現する意気込みを熱く語ってくれた。 取材を終えて再び藤井さんと  藤井さんから、障害のある人の就労について、二つのテーマが投げかけられた。一つは「格差」。もう一つは「甘え」である。 (1)格差  藤井さんは、障害のある人とない人の「格差」を実感するのは、いまでも賃金格差だと力説する。藤井さんは前職のタクシー会社で、葭原さんは自動車関連の会社で、それぞれこの格差を経験したことが、現在の仕事につながるきっかけになっているが、この格差の現実に悩み、いまの仕事を続けるか転職するか悩んでいる友人が少なくないそうである。  賃金格差の実態についてあらためて調べてみると、厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査」では、資料2の通りであった。この調査では、障害内容別に1カ月の平均賃金が報告されていて、四つの障害内容で平均賃金が異なり、最も平均賃金が高いのは身体障害者で21万5千円、最も低いのは知的障害者で11万7千円となっている。障害者間の差額は9万8千円におよび、障害の特性が賃金の格差に影響していることをあらためて確認できる。さらに、四つの障害別で示された平均賃金を平均すると、14万6千円となる。  また、この全障害の平均賃金14万6千円を一般労働者の平均賃金と比較すると(資料3)、差額は男性で約19万円、女性では約10万円であり、障害のある人の平均賃金は、一般労働者の平均賃金に対し男性で約4割、女性で約6割しか得られていない現状がうかがわれる(※障害者の平均賃金は男女別に分けていないので共用)。  賃金は一般雇用枠での採用と同じく、会社の賃金体系をもとに労働条件と業務に合わせて決定される。しかし、藤井さん、葭原さんが一般企業に就職して働いていたのはおよそ30年前、当時の2人の賃金格差がどの程度のものか定かではないが、2011年の障害者基本法改正、2016年の障害者差別解消法施行など、障害のある人の人権擁護の法的環境は整備されているにもかかわらず、足元の重要課題、賃金格差は現在も続いているといえるだろう。  賃金格差の考え方として、日本大学准教授の山村りつ氏は、社会政策学会誌「社会政策第7巻第1号」(2015年、ミネルヴァ書房)の「基幹的能力の概念を軸とした障害者の賃金についての考察」で次のように述べている。  「労働能力の理解については、障害の社会モデルによって障害者自身ではなくその環境によって能力が規定されるという考えが広まっても、実際の就労場面では、この『障害のない者と同等の働き』という基準が概ね採用されているといえる。この『障害のない者と同等の働き』という基準は、同時に同等の賃金が支払われることを意味する。逆に言えば、同等の働きができない者には同等の賃金が支払われないということであり、時にはそれが労働基準法にのっとった雇用契約が結ばれない根拠にもなる」  これは障害の有無にかかわらず多くの人々が理解を示す考えであるが、資料3で算出した賃金の差額は、障害のある人が「同等の働きができていない」という結果として解釈してよいものか、今後の検証が必要と考える。 (2)仕事に対する評価と甘え  インコムジャパンの湯朝さんの話にも出てきた、「採用しても短期間で辞めていく人が少なくない」という現状について、藤井さんからもコメントがあった。  「特に短期間で辞めていく人に対する支援の在り方に苦労している。先日、障害者の就労支援を行う職業訓練校のスタッフに、会社で働いている卒業生の相談やサポートをお願いできないものか相談したが、就職するまでが学校の役割で、就職後は会社の方で何とかしてほしいと縦割り的な意見しか得られず物別れに終わってしまった」という。  また、北九州市内の特例子会社で障害者職業生活相談員として働いている藤井さんの知人からも、障害者雇用のむずかしさとして、@障害のある従業員に対する基本的な社会ルールの教育と、A障害のことを理解していない従業員に対する教育をどのようにすべきか、という相談があったそうだ。  @に関しては藤井さんの会社でも、社会人としての基本的なルール(遅刻や早退、欠勤、業務に関する報告・連絡・相談など)を遵守することを、従業員すべての業務評価項目としている。  しかし、採用後早期に退職した従業員のなかには、会社内の基本的ルールを守れず、その理由を自らの障害のせいにする人が多かった。このことは藤井さん自身が障害のある立場から考えてみても理由として認められず、厳しい言い方をすれば「甘え」とも感じられ、湯朝さん、葭原さんと相談しながら対応したそうである。  Aに関しては、障害のことを知らない人や、障害のある人をどう理解して、どのようにかかわればいいのかわからない人が多いことは、昔から変わっていないように私は感じている。  また、2016年に神奈川県で起きた「やまゆり園事件」から、障害のない人の障害に対する価値観の変化、多様化も危惧され、障害に対する理解は社会全体で取り組まなければならない重要な課題であると、藤井さんと私の意見が一致した。  一方、障害のある従業員は、就労についてどう感じているのかを最後に触れたい。2016年3月に東京都障害者社会参加推進センターが発表した「障害者就労実態調査アンケート結果」のなかで、「問19あなたは障害者が生きがいを持って働けるために、現在の職場に望むことは、次のどれだと考えますか。主なものを3つ以内で選んで下さい。(重複回答可)」の回答結果を紹介する。  多かったのが、「体の調子が悪い時に休みを取りやすくする」49人(20・6%)、「能力が発揮できる仕事への配置」が35人(14・7%)、「コミュニケーションを容易にする手段や手話通訳ができる者等の支援者の配置」が33人(13・9%)の順であった。これらの回答はいずれも、障害者にとって切実な願いと思われる。  また、雇用者がこれらのニーズに対して、適切な判断(障害に対する配慮ではなく、人としての配慮など)ができる基準と体制づくりを整えることも、障害のある人の雇用には必要であることを申し添えたい。 終わりに  藤井さんと私は、足立学園で出会い、その後も交流を続けていくなかで、お互いの障害は異なるが、ともに「障害者の自立」について意見を交わしてきた。  社会人になってからは、特に自立に必要な経済的基盤を整えるためには「就労」は必要不可欠で、障害者就労支援への取組みを目的とした「NPO法人ワーク北九州」の設立と運営にもかかわった同志でもある。  今回の取材を通して、読者のみなさんに伝えたいことを、以下の五つにまとめた。 1 障害のある人の就労は、雇用率以外にもさまざまな課題がある  →例えば職場定着率など 2 障害のある人の人権にかかわる施策や法律の整備が進んでいるが、賃金に象徴されているように、障害のある人と一般労働者の格差は現在も継続している  →障害者差別解消法の合理的配慮を基本とした賃金格差の検証 3 「働く」ということの評価、評価する人の育成が必要である  →障害に対する正しい認識・理解として、障害のある人が障害のない人と同等の働きをしたと判断できる基準づくり 4 障害の内容をふまえた仕事の創出を雇用者、従業員が一緒に考えていく  →障害のある人が行うことができる業務の組合せ 5 障害のある人の雇用を切り口にした自立生活実現を目的とした地域連携  →教育機関、企業、障害者福祉関係の事業所、行政の連携  障害者差別解消法の成立をきっかけにして、障害のある人の雇用において「合理的配慮」という新たな概念を、今後どのようにして具体化していくかが社会福祉の大きなテーマになっている。このコーナーでは障害のある人の雇用に取り組む企業ルポが中心だったが、今回の取材であらためて確認できた「障害のある人の格差と差別」、「自立を目的とした支援の在り方」について再考していくことが、今後も求められていると考える。 ※1 コメディカルスタッフ:医師以外の医療従事者。看護士、薬剤士、理学療法士、作業療法士など ※2 ボタ山:石炭などの採掘にともない発生する捨石の集積場 ※3 タコグラフ:運行時間や速度の変化などをグラフ化し、車両の稼動状況を把握するため自動車に搭載する運行記録用計器 ※4 底本:電子書籍の元となる紙の本のこと 資料1 基本の印刷工程 原稿・レイアウト入稿 組版(DTP) 校正・修正 版下データ 製版 色校正 刷版 印刷 製本 出典:筆者作成 資料2 障害内容別1カ月の平均賃金 身体障害 知的障害 精神障害 発達障害 平均賃金 215,000円 117,000円 125,000円 127,000円 ※平均賃金/労働時間30時間以上、20時間以上30時間未満、20時間未満の平均 出典:「平成30年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省)をもとに筆者作成 資料3 平均賃金比較 平均賃金 男性 平均賃金 女性 一般労働者 337,600円 247,500円 全障害者/平均 146,000円 146,000円 差額 191,600円 101,500円 出典:筆者作成 参考資料:「平成30年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)、「平成30年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省) 写真のキャプション 株式会社インコムジャパン 代表取締役社長の藤井豊美さん 社屋入り口の本棚には、電子コミックとなった底本が並べられている デジタルコンテンツ企画制作部部長の湯朝健二さん デジタルコンテンツ企画制作部DTP組版担当係長の葭原勝男さん モニターには東京や熊本のオフィスの様子が映し出されており、デスクはパーテーションで区切られている 【P26-27】 省庁だより 令和2年版 障害者白書概要@ 内閣府ホームページより抜粋  障害者白書は、障害者基本法第13条に基づき、障害者のために講じた施策の概況について、毎年国会に報告しているものです。今号と次号において、「令和2年版障害者白書」の概要を紹介します。 第1章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第1節 広報・啓発等の推進 ●障害者週間(毎年12月3日〜9日)における全国的な広報・啓発活動、国民への理解促進のため取組の推進 ●学校教育における理解促進等の取組  教育委員会が主体となり、学校において、障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒の交流及び共同学習の機会を設けることにより、障害者理解の一層の推進を図る取組等を実施 第2節 障害を理由とする差別の解消の推進 ●障害者差別解消法の円滑な施行の推進  ・合理的配慮の提供等事例集の作成、活用  ・障害者差別解消支援地域協議会の設置等の促進  地域の関係機関が連携し、差別事案への効果的な対応や紛争解決の後押しを行えるよう、自治体における地域協議会の設置等を促進 第3節 東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした取組 ●ユニバーサルデザイン2020 行動計画に基づく取組の推進  ユニバーサルデザイン2020行動計画を基に共生社会の実現に向けた諸施策を推進する中、障害のある人の視点を施策に反映させる仕組みとして「ユニバーサルデザイン2020評価会議」を設置し、取組を改善 ●心のバリアフリーの普及  一人一人の理解と行動を促す「心のバリアフリー」の研修教材を作成し、学校、企業、地域などで幅広く活用を促進 ●共生社会ホストタウンの取組  パラリンピアンとの交流を契機に、ユニバーサルデザインの街づくりと心のバリアフリーの取組を進める「共生社会ホストタウン」制度を推進し、取組の横展開を促進 第2章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 第1節 障害のある子供の教育・育成に関する施策 ●学習用デジタル教科書の活用  文字の拡大、音声読み上げ等の機能により、視覚障害、発達障害など紙の教科書での学習が困難な児童生徒のアクセシビィリティが向上 ●医療的ケアが必要な子供と家族を支える取組  学校において高度な医療的ケアに対応するため、看護師の配置や、医師と連携した校内支援体制の構築を推進  また、ケア児を支援する施設が親の就業も支援する等の民間の取組事例も紹介 ●難聴児の早期支援に向けた保健・医療・福祉・教育の連携プロジェクト  難聴を早期に発見し適切な支援を行い、難聴児の言語発達を促すため、難聴児支援に関する課題と今後取り組むべき方向性をとりまとめ 第2節 雇用・就労の促進施策 ●公務部門における障害者雇用について  公務部門において障害者雇用の不適切計上及び法定雇用率の未達成状況が明らかになったことを受け、政府一体でこの事態に対応するため、事態の検証等を踏まえて策定された「公務部門における障害者に関する基本方針」に基づき、法定雇用率の速やかな達成等のための取組を進めた。具体的には、各府省からの専門的・技術的な相談に対応する専門アドバイザー等の設置、障害者を雇用する際に必要な基礎知識や支援策等を整理したマニュアルの策定、各府省が行う特別支援学校等と連携した職場研修の実施支援や職場定着に関する相談窓口の設置等の取組を推進  また、公務部門における障害者の活躍の場の拡大に関する措置や、短時間であれば就労可能な障害者の民間における就業機会の確保の促進等のため、「障害者雇用促進法」を改正 ●障害特性に応じた雇用支援策の充実  ハローワークに配置した専門の相談員による求職者へのきめ細かな相談支援や事業主に対する支援、就職や職場定着のために必要な支援等の情報を共有するための「就労パスポート」の作成等 ●障害のある人への地域における就労支援  身近な地域での就業面及び生活面の一体的な支援の実施、福祉的就労から一般就労への移行等の支援 ●障害者の就労支援における農福連携  農業分野に取り組もうとする就労継続支援事業所等に農業分野の専門家を派遣し、農業に関する知識・技術習得や販売・加工の助言・指導等を実施  また、全国的な機運の醸成を図り、今後強力に推進していく方策を検討するため、「農福連携等推進会議」を設置し、「農福連携等推進ビジョン」を策定 第3章 日々の暮らしの基盤づくり 第1節 生活安定のための施策 ●障害福祉サービスの計画的な基盤整備  第5期障害福祉計画及び第1期障害児福祉計画に基づく、福祉施設の入所者の地域生活への移行、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築、地域生活支援拠点等の整備等、障害児支援の提供体制の整備等の推進 ●成年後見制度  成年被後見人及び被保佐人の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等に係る欠格条項その他の権利の制限に係る措置の適正化等を講ずるため、関係法律を整備 ●地域における発達障害者支援体制の整備  当事者同士のピアサポート、ペアレントプログラム・ペアレントメンターによる家族支援、発達障害者等青年期支援事業や発達障害者支援センターを中心とした相談支援など、地域の支援体制・対応力の強化 ●スポーツの振興  ・スポーツを通じた共生社会実現に向けた取組  パラリンピアン等の学校での講演や競技体験、県民パラスポーツ大会や学校区、企業対抗等の様々なレベルでのパラスポーツ体験会等の実施 ●文化芸術活動の推進  ・障害者による文化芸術活動の推進に関する法律及び基本的な計画  障害者による文化芸術活動の幅広い促進、芸術作品等の創造への支援強化や、障害者による文化芸術活動に係る地域での作品等の発表等を促進 ●福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援  ・障害者自立支援機器等の開発促進  企業等への開発助成や、支援機器に対する開発側のシーズと障害のある人のニーズとのマッチング支援 第2節 保健・医療施策 ●保健・医療の向上に資する研究開発等の推進  脳卒中後に併発する運動障害の個別化治療の実現に資する研究開発  (次号では、第4章と第5章について紹介します) 障害者白書は、内閣府ホームページに掲載しています。https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html 【P28-29】 研究開発レポート 就労困難性による障害認定や重度判定 〜フランスとドイツの取組 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門  障害者の就労困難性は、身体的・精神的な機能障害だけによらず、実際に就く仕事内容、職場の環境整備や配慮の状況、地域での専門的支援の利用等によって大きく異なります。職業リハビリテーションは、この事実に立脚し、仕事とのマッチング支援や、職場での合理的配慮ノウハウの普及、ジョブコーチ支援や就職後の生活・医療面の継続的支援等により、従来は一般就業が困難とされてきた多くの障害者の就業可能性を広げてきました。  その一方で、わが国の障害者雇用率制度では、障害者の就労困難性を、障害者手帳やその等級等により確認しています。たしかに、障害者雇用義務の対象範囲や企業負担の調整に関わる障害重度を確認するためには簡便かつ一律な方法であることが重要であり、仕事内容や職場環境等が就労困難性に影響しない程度ならそれでよいでしょう。しかし、わが国では、障害者の就労困難性による障害認定や重度判定について、以前から、本稿で紹介するような課題が認識されてきたところです。  本稿では、わが国と同様に、障害者雇用率制度を有し、職業リハビリテーションや障害者差別禁止・合理的配慮提供義務においても近年発展を続けているフランスやドイツにおける就労困難性による障害認定や重度判定の課題への対応状況について簡単に紹介します。詳しくは、「調査研究報告書bP54」(※1)をご覧ください。 1 「その他の障害者」の認定  わが国では、障害者手帳制度の対象ではないにもかかわらず、障害による就労困難性を有する人たちがおり、そのような人たちは職業リハビリテーションサービスや障害者差別禁止・合理的配慮提供義務の対象にはなりますが、障害者雇用義務(雇用率制度)の対象にはなりません。例えば本誌2018年10月号(28〜29ページ)(※2)で紹介したように、難病患者の就労困難性の大きな原因である「体調の崩れやすさ」は現在の身体障害認定基準に含まれていないため、就労支援ニーズのある難病患者の多くは障害者手帳制度の対象ではありません。また、読字障害や算数障害等のある人たちは、特定の職業では大きな就労困難性を経験する可能性がありますが、一般的な就労困難性は認められにくいという指摘があります。  フランスやドイツでは、わが国の障害者手帳制度に該当する障害種類・程度の人たちは、わが国と同様に医学的な認定基準により認定されますが、そのような認定方法では認定されない、より軽度の障害による就労困難性のある人を個別に認定して障害者雇用義務の対象とできる制度があります。そのポイントは、障害者本人の申請に基づき、具体的な就職活動や就業継続時の実際の困難状況や支援ニーズを職業リハビリテーションの専門職が支援の一環として確認するとともに、医学診断による疾病・変調・外傷・傷害等との因果関係を確認することです。具体的には、フランスでは多分野連携による総合的機関である「MDPH(県障害者センター)」の職業参入専門員と医師等による多分野専門家チームが審査に関わり「障害労働者認定」を行い、ドイツではわが国のハローワークと地域障害者職業センターをあわせたような「連邦雇用エージェンシー」が、現場の職業紹介や就業継続支援の担当者からの意見表明をふまえて「重度障害者と同等であることの認定」を行い、これによって障害者雇用義務の対象としています。 2 障害者雇用の困難性の判定  わが国では、身体障害者手帳の1級と2級の認定のある人は「重度障害者」として、雇用事業主にとって雇用率がダブルカウントされる等の優遇があります。しかし、例えば、身体障害1級である車いす使用者の方が、精神障害者より雇用の困難性が大きいということは一概にはいえません。  フランスでも2005年の法改正より前には、個人特性として就労困難性を3段階でカテゴリー化する制度がありましたが、現在では廃止され、障害重度は、実際の雇用事業主の経済的負担として個別・具体的に評価し補償するためのものと位置づけられています。  例えば、車いす利用者が事務職に就く場合、かつては最重度の認定でしたが、現在では重度認定されません。これは障害者差別禁止の考え方を反映しています。つまり、職場環境整備や人的支援等については当然、別途、助成金や専門支援が提供されますが、そのような合理的配慮が実施されていれば、多くの障害者は生産性の低下や職場での過重な負担のない有為な労働者であることが強調されているのです。  そのうえで、合理的配慮提供を前提としても、なお生産性の低下や職場で継続的な人的支援等の過重な負担がある場合に、当該障害者の継続雇用を希望する事業主は「重度認定」申請を行うことで、経済的支援を受け雇用継続を可能とする制度があります。具体的には、事業主はまず産業医による最適な職場配置や配慮等の勧告に応じた支援を実施する必要があり、それでもなお残る生産性の低下や経済的な負担等を申請し、「障害者職業参入基金管理運営機関(AGEFIPH)」が現地調査をふまえて審査し、障害者雇用義務に係る企業の拠出金を原資として、事業主は2段階の継続的な支援金を受けることができます。  ドイツでも2018年から「労働予算」の制度が始まり、合理的配慮確保のための各種助成金等とは別に、経済的に障害者の雇用継続が困難と考える事業主は、地域において障害者の社会参加や就労を支える「統合局」に申請し、専門的な事業主支援を受けた後になお生産性の低下や同僚等の従業員の継続的な負担が認められれば、負担調整賦課金(わが国の納付金に相当)を原資として、事業主は3段階の継続的な支援金を受けられるようになっています。 3 認定等の信頼性確保のための実務的課題  以上、フランスやドイツの就労困難性による障害認定や重度判定とは、障害者本人や雇用事業主からの申請により、専門的な障害者就労支援や事業主支援を前提として、実際の就職や就業継続の困難さや支援ニーズ、事業主の継続的な経済的負担を直接に評価するものです。  わが国の経験をふまえると、仕事内容や職場状況等の個別性・多様性は大きく、障害者本人、雇用事業主、多様な分野の支援者の間で障害者の就労困難性や就労支援ニーズの共通認識自体が困難であることが多いので、このような方法で公正さが確保できるのか、支援業務がかえって煩雑になるのではないかと心配になるところです。しかし、就労困難性は、医学的に障害者本人だけをみて認定するよりも、多職種が密接に情報交換し、障害者就労支援や事業主支援の専門ノウハウもふまえたケースマネジメントにより認定する方が信頼性ははるかに高く、また、支援と一体的に行われるアセスメントと別物ではないため業務的な煩雑さもないのです。ただし、その際に留意が必要な点(表)がいくつかあり、フランスやドイツではこれらを確実に実施できるように、現場向けのマニュアル等の整備や担当者の研修が課題になっています。 ※1 「調査研究報告書154」は、https://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/houkoku/houkoku154.htmlよりダウンロードできます ※2 当機構ホームページでご覧になれます nivr 調査 154 検索 働く広場 2018年10月号 検索 表 フランス・ドイツの就労困難性による障害認定・重度判定の留意点 ●就労困難性は、個別の仕事内容や職場等との関係での実際の障害者の就職活動や就業継続、あるいは企業の雇用継続の困難さにより認定(求職活動中か就業中にのみ認定可能。仕事内容や職場等が変われば要再認定) ●就労困難性の原因として、軽度であっても医師の診断のある疾病や変調、外傷、傷害等が確認できることが必要 ●障害者の就労困難性による障害認定は、障害者雇用義務や合理的配慮の結果として就労困難性が軽減・解消される場合でも、障害者雇用義務や合理的配慮が必要であること自体により該当 ●事業主の継続的な経済的負担による障害の重度認定については、産業医や専門の事業主支援による最適な配慮の実施によってもなお、継続的に生産性低下や企業の過重な負担が認められる場合にのみ該当 ◇お問合せ先:研究企画部企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp) 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 障害者雇用の認定マークと愛称決定  厚生労働省は、障害者雇用に関する取組みが優良な中小企業に付与する認定マークのデザインと愛称を公募し、東京都在住の金澤(かなざわ)怜奈(れな)さんの作品「もにす」に決定した。金澤さんは、このロゴは障害者を企業が丸くやさしく包み込み、「共に社会貢献をしていこう!」という想いを表し、愛称は「共に進む(ともにすすむ)」という言葉と、企業と障害者が共に明るい未来や社会に進んでいくことを期待して名づけたという。今後、障害者雇用促進法の認定を受けた中小企業は、認定マークを商品や広告、求人票、名刺などに表示できるようになる。 地方の動き 岐阜 感染時に職員の相互派遣  岐阜県は、高齢者や障害者施設で新型コロナウイルス感染者発生時の相互支援に関する覚書を事業者団体と締結した。  県は感染が発生した施設からの要請を受け、県老人福祉施設協議会や県知的障害者支援協会などの事業者団体に支援や調整を依頼。事業者団体は支援を行う登録施設と調整し、発生施設への職員派遣や食事の提供、デイサービス利用者らの受入れなどを行う。職員は、高齢者施設から障害者施設など分野を越えた施設への派遣も可能とした。 香川 県と障害者支援施設が新協定  香川県は、障害者支援施設で新型コロナウイルスの感染者が確認された場合に備え、香川県知的障害者福祉協会などと新たに「香川県相互支援システム(通称KSOS(ケーソスー))」に関する協定を結んだ。  県内の障害者支援施設で新型コロナウイルス感染者が確認され、施設運営の支援が必要なときに、ほかの施設から職員を派遣する。知的、身体障害者が生活する県内24施設が協力。運用する場合は、施設の状況などをふまえて県が必要性を判断し、派遣要請をする予定。 生活情報 宮城 グループホームなどの複合拠点を開設  仙台市青葉区の住宅街に、知的障害者向けのグループホームや飲食店などが集まる複合拠点「台の森」がオープンした。  約2000uの土地活用策を検討していた土地所有者に、住宅メーカーの「積水ハウス株式会社」(大阪府)が提案し、周辺住民と意見交換を重ねながら整備。建物は土地所有者が持ち、各テナントに長期契約で貸す仕組み。敷地内には「社会福祉法人なのはな会」(仙台市)が運営するグループホームのほか陶芸窯、ギャラリー、カフェ、イタリアンレストランなどがある。 東京 ダイバーシティ体感ミュージアム開館  暗闇や音のない世界を通じ、視覚障害者や聴覚障害者の日常を体感できる体験型ミュージアム「ダイアログ・ミュージアム対話の森=vが、複合施設「アトレ竹芝」(港区)にオープンした。  ドイツ発祥の暗闇エンターテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」と、静けさのなかで聴覚障害者とともに表情やボディーランゲージでコミュニケーションを楽しむ「ダイアログ・イン・サイレンス」の二つのプログラムを体験できる。ただしDIDについては、新型コロナウイルス感染防止として暗闇での密を避けるため、照明のある「ダイアログ・イン・ザ・ライト」にアレンジしている。事前予約制。  体験料金:大人3500円、中高生・学生2500円、小学生1500円(各プログラム)。公式サイト https://taiwanomori.dialogue.or.jp/ 神奈川 パラトリエンナーレ開催へ  障害者≠ニ多様な分野のプロフェッショナル≠ノよる現代アート国際展「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」(主催:横浜ランデヴープロジェクト実行委員会、NPO法人スローレーベル、共催:横浜市)が、今年度は、新型コロナウイルス感染拡大をふまえ全面的に見直し、オンラインなどを活用した新しいプロジェクトとして開催することを決定した。  今回は「our curio City−好奇心、解き放つ街へ」がテーマ。コア会期11月18日(水)〜24日(火)に、オンラインと横浜市役所アトリウムで4プログラムを実施する。チケットは無料(一部有料)。公式サイト https://paratriennale.net/2020/ 働く 兵庫 商品開発から経理まで担当  「障害者の主体的な社会参加の促進」を目ざす川西市が、沖縄県で社会福祉事業所経営の実績がある「株式会社アソシア」を誘致し、就労支援事業所「アソシア・ジョブ川西」を開所した。  おもに精神や発達に障害のある人が対象。事業所独自のブランド 「Stoory(ストーリー)」を立ち上げ、かばんや弁当などの商品展開を予定。利用者は、企画から製造、広報、経理、販売までの業務全般をになう。 本紹介 『精神障害・発達障害のある方とともに働くためのQ&A50〜採用から定着まで』  障害者とともに働く職場づくりにかかわる企業の経営者や人事担当者、地域の就労支援をになう専門職や医師、研究者ら24人による本「精神障害・発達障害のある方とともに働くためのQ&A50〜採用から定着まで」(眞保(しんぼ)智子(さとこ)・編著、日本加除出版刊)が出版された。  おもに中小企業での採用、入社から定着に至るまで、雇用のさまざまな場面を想定し、留意すべき点や対応策などについて、実際の対応・対話例や就業規則の条項例も交えながら、具体的に解説する。A5判216ページ、2420円(税込)。 2020年度地方アビリンピック開催予定 10月下旬〜12月 青森県、福島県、茨城県千葉県、三重県、滋賀県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *  の県は開催終了(開催中止含む) ※全国アビリンピックが  11月13日(金)〜11月15日(日)に、愛知県で開催されます。 地方アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 青森県 福島県 茨城県 千葉県 三重県 滋賀県 〜65歳超雇用推進助成金のご案内〜 助成金制度にかかわる動画はこちら→ 65歳超継続雇用促進コース 65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施する事業主のみなさまを助成します。 主な支給要件 ●労働協約または就業規則で定めている定年年齢等を、過去最高を上回る年齢に引き上げること ●定年の引上げ等の実施に対して、専門家へ委託費等の経費の支出があること。また、改正後の就業規則を労働基準監督署へ届け出ること ●1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること ●高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置(※1)の実施 支給額 ●定年の引上げ等の措置の内容、60歳以上の対象被保険者数、定年等の引上げ年数に応じて5万円から160万円(ただし1事業主あたり(企業単位)1回限り) 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 高年齢者の雇用管理制度を整備するための措置(高年齢者雇用管理整備措置)を実施した事業主のみなさまを助成します。 措置(注1)の内容 @高年齢者の能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しもしくは導入 A法定の健康診断以外の健康管理制度(人間ドックまたは生活習慣病予防検診)の導入 (注1)措置は、55歳以上の高年齢者を対象として労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要。 支給額 支給対象経費(注2)の60%《75%》、ただし中小企業事業主以外は45%《60%》 (注2)措置の実施に必要な専門家への委託費、コンサルタントとの相談経費、措置の実施にともない必要となる機器、システムおよびソフトウェア等の導入に要した経費(経費の額にかかわらず、初回の申請にかぎり50万円の費用を要したものとみなします)。 【《》内は生産性要件(※2)を満たす場合】 高年齢者無期雇用転換コース 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した事業主のみなさまを助成します。 申請の流れ @高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置(※1)を実施し、無期雇用転換制度を整備 A転換計画の作成、機構への計画申請 B転換の実施後6 カ月分の賃金を支給 C機構への支給申請 支給額 ●対象労働者1人につき48万円  (中小企業事業主以外は38万円) ●生産性要件(※2)を満たす場合には対象労働者1人につき60万円  (中小企業事業主以外は48万円) 高年齢者雇用管理に関する措置(※1)とは (a) 職業能力の開発および向上のための教育訓練の実施等、(b) 作業施設・ 方法の改善、(c) 健康管理、安全衛生の配慮、(d) 職域の拡大、(e) 知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進(f) 賃金体系の見直し、(g) 勤務時間制度の弾力化のいずれか 生産性要件(※2)とは、『助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること(生産性要件の算定対象となった期間中に、事業主都合による離職者を発生させていないこと)』が要件です。 (企業の場合) 生産性= 営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課 雇用保険被保険者数 お問合せや申請は、当機構都道府県支部高齢 ・障害者業務課(東京、大阪支部は高齢・障害者窓口サービス課)までお願いします。そのほかに必要な条件、要件等もございますので、詳しくは当機構ホームページ (https://www.jeed.or.jp/)をご覧ください。 【P32】 掲示板 障害者雇用の月刊誌「働く広場」がデジタルブックでいつでもお読みいただけます! 本誌は当機構ホームページで、デジタルブックでも公開しており、いつでも無料でお読みいただけます(※)。  また、最新号は毎月5日ごろに当機構ホームページに掲載されます。掲載をお知らせするメール配信サービスもございますのであわせてご利用ください。 JEED 働く広場 検索 自由に拡大できて便利! 読みたいページにすぐ飛べる! ※2015年4月号〜現在まで掲載しています 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 次号予告 ●私のひとこと  横浜市内各区で精神障害者作業所、グループホームなどを運営する「社会福祉法人うしおだ」の理事長で、精神科医の野末浩之さんに、就労に向けた精神障害の理解や地域生活支援についてご執筆いただきます。 ●職場ルポ  建材・住宅機器メーカー株式会社LIXIL(東京都)の、LIXIL WING NIJIを訪問。積極的に障害者雇用を進め、従業員の職場定着を目ざす現場を取材します。 ●グラビア  公用語を日本手話と書記日本語(筆談)とするスープカフェSocial Cafe Sign with Me(東京都)を取材。ここで活躍する、聴覚障害のあるスタッフをご紹介します。 ●編集委員が行く  松爲信雄編集委員が、ご自身の研究や調査などを元に、現在の社会的状況を考察。コロナ禍における障害者雇用の現状と課題を執筆します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.or.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 11月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和2年10月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【P33】 障害者雇用支援月間(9月)における厚生労働大臣表彰などの表彰式が開催されました  9月15日(火)、東京都千代田区のMY PLAZAホールにおいて、令和2年度障害者雇用優良事業所等の全国表彰式が開催されました。  当日は、障害者雇用優良事業所と優秀勤労障害者の厚生労働大臣表彰36 件のほか、障害者雇用支援月間ポスター原画の厚生労働大臣賞および当機構理事長賞8件と、障害者雇用職場改善好事例の厚生労働大臣賞および当機構理事長賞6件の表彰が行われました。  最後に、「障害者雇用職場改善好事例」として厚生労働大臣賞を受けられた、株式会社ニッセイ・ニュークリエーション代表取締役社長余部(あまべ)信也(しんや)様が代表者挨拶を述べられました。 写真のキャプション 優秀勤労障害者の厚生労働大臣表彰受賞者 *赤い花の胸章をつけている方々が受賞者 障害者雇用優良事業所 厚生労働大臣表彰 株式会社中西様(愛知県) 優秀勤労障害者 厚生労働大臣表彰 佐々木新二郎様(東京都) 障害者雇用職場改善好事例 厚生労働大臣賞 株式会社ニッセイ・ニュークリエーション様(大阪府) 【裏表紙】 職業リハビリテーションに関する 令和2年度研修のご案内 受講料 無料  医療・福祉などの各機関における障害者の就業支援担当者を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や、就業支援に必要な技術の修得、資質の向上を図る研修を実施しています。 職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成・スキル向上研修 ステップ1 入門編・実践編 職場適応援助者養成研修 ※1 ◎訪問型職場適応援助者養成研修  千葉市(幕張)年6回 大阪市 年4回 ◎企業在籍型職場適応援助者養成研修  千葉市(幕張)年6回 大阪市 年4回 養成研修修了者 サポート研修 ※2 全国の地域障害者職業センター ステップ2 スキルアップ編 職場適応援助者支援スキル向上研修 ※2 ◎訪問型職場適応援助者支援スキル向上研修  千葉市(幕張)年2回 大阪市 年2回 ◎企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修  千葉市(幕張)年2回 大阪市 年2回 支援スキル向上研修 修了者サポート研修 ※2 全国の地域障害者職業センター ※1は職場適応援助者として援助を予定している方、※2は職場適応援助者として一定の実務経験がある方が主な対象となります。 ※回数は開催計画数です(令和2年4月時点)。新型コロナウイルス感染症の影響により、予定が変更となる場合があります。 医療・福祉などの機関の就業支援担当者向けの研修 ステップ1 入門編 就業支援基礎研修 全国の地域障害者 職業センター(各年1回以上) ステップ2 実践編 就業支援実践研修 ◎精神障害コース ◎発達障害コース ◎高次脳機能障害コース 全国14エリア(各年1回) テーマ別 就業支援課題別セミナー ◎令和2年度テーマ「事業主支援」 千葉市(幕張)(年1回) ステップ3 スキルアップ編 就業支援スキル向上研修 ◎精神障害コース ◎発達障害コース ◎高次脳機能障害コース 千葉市(幕張)(年1回) ◎実務経験に応じて、講義・演習・事例検討などを組み合わせた、実践的なカリキュラムとなっています。 ◎研修の参加には事前のお申込みが必要です。受講料は無料です。 ◎今年度の申込受付はすでに終了している研修もあります。各研修の日程、カリキュラム、会場、受講要件など、詳しくはホームページをご覧ください。 JEED 就業支援担当者 研修 検索 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業リハビリテーション部 研修課 TEL 043-297-9095 FAX 043-297-9056 11月号 令和2年10月25日発行 通巻517号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)