【表紙】 令和2年12月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第519号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2021/1 No.519 リーダーズトーク 「YOUの視点」で幸せの量産を目ざす トヨタ自動車株式会社 サステナビリティ推進室 副CSO 大塚友美さん 職場ルポ ともに働き互いに成長する「やってみなはれ」精神 サントリービジネスシステム株式会社(東京都) グラビア 教育・医療の現場を支える 株式会社帝京サポート(東京都) 編集委員が行く 新型コロナウイルスの感染防止に対応し、新たな学びを得る 東京都立志村学園、株式会社パソナハートフル、経済産業省 経済産業研修所(東京都) 「ふねにのって大きなさかなをつりたいな」東京都・根岸(ねぎし)虎輝(たいが)さん 1月号 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 【前頁】 心のアート 好きなもの 江副朱華里 (障害者支援センターSAKURA) 画材:キャンバス生地、アクリルマーカー、クレヨン/サイズ:B2(515×728mm)  江副朱華里、初の大作。B2サイズは初めての挑戦なので、最後まで楽しく作業できるように、気分のよいときに描き始めることにしました。  ネコやウサギ、花など好きなモチーフを画面いっぱいにつめこんで、自由に描いています。好きな題材、好きなこと、好きな時間、いろんな「好き」を込めて、いっきに描き終えました。お気に入りのアクリルマーカーを使用して、細かい表現にも挑戦しています。 (文:アトリエサクラ 繻エ(くわはら)晴香(はるか)) 江副 朱華里(えぞえ あかり)  乙女な心を持った彼女が描く作品はとても可愛らしく、普段つけているヘアゴムの色や服の組合せも、たくさんの色や柄を豊かな色彩感覚でバランスよく配色し、毎日可愛く仕上がっている。作品制作においても、その絶妙な色のバランス感覚によるカラフルでグラデーション豊かな表現が見られる。色鉛筆や水性ペン、絵の具など、さまざまな画材を巧みに使い分け、時間をかけてていねいに彼女の世界を表現していく。大好きな動物を描くときには、とても楽しそうに説明しながら筆を走らせている。 協力:SANC(Saga ArtBrut Network Center) 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2021年1月号 NO.519 心のアート−−前頁 好きなもの 作者:江副朱華里(障害者支援センターSAKURA) リーダーズトーク−−2 第3回「YOUの視点」で幸せの量産を目ざす トヨタ自動車株式会社 サステナビリティ推進室 副CSO 大塚友美さん 職場ルポ−−6 ともに働き互いに成長する「やってみなはれ」精神 サントリービジネスシステム株式会社(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 JEEDインフォメーション−−12 令和3年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ/「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない〜障害者雇用の専門家が企業のみなさまを支援します〜/「障害者雇用事例リファレンスサービス」を活用して本誌「働く広場」の取材記事が探せます! グラビア−−15 教育・医療の現場を支える 株式会社帝京サポート(東京都) 写真/文:官野 貴 エッセイ−−19 あなたはどう思いますか? 第4回 香川大学 教育学部 教授 坂井 聡 編集委員が行く−−20 新型コロナウイルスの感染防止に対応し、新たな学びを得る 東京都立志村学園、株式会社パソナハートフル、経済産業省 経済産業研修所(東京都) 編集委員 原 智彦 クローズアップ−−26 活躍する障害者職業生活相談員 第3回 研究開発レポート−−28 発達障害者のワークシステム・サポートプログラム 問題解決技能トレーニングの改良 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル−−30 掲示板・次号予告−−32 ※「省庁だより」は休載します 表紙絵の説明 「家族で海に行って、祖父母や姉と船に乗って釣りをしたことから、漁師に興味を持ち題材に選びました。遊びの釣りと違って、仕事だとたいへんなこともたくさんあると思いました。描いていて、魚や自分、船とのバランスに悩みました。大人になった自分の姿を想像するのもむずかしかったです」 (令和2年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-5】 リーダーズ トーク Leaders Talk 第3回 「YOUの視点」で幸せの量産を目ざす トヨタ自動車株式会社 サステナビリティ推進室 副CSO 大塚友美さん 大塚友美(おおつか ゆみ) 1992(平成4)年、トヨタ自動車株式会社入社。初代ヴィッツなど国内向け商品の企画、ダイバーシティプロジェクトなどの施策企画・推進を担当。新コンセプト企画・海外営業などを経て、2017年8月からスポーツカー・モータースポーツを担当するGAZOORacing Companyを担当。2020(令和2)年2月より現職。  自動車業界をけん引してきたトヨタ自動車株式会社(以下、「トヨタ」)は2020(令和2)年、「SDGs(エスディージーズ)に本気で取り組む」と宣言し、注目を浴びました。SDGs(※1)の一つとされている障がい者雇用については、これまで特例子会社「トヨタループス株式会社」(※2)が大きな役割を果たしてきましたが、2019年に「サステナビリティ推進室」が新設され、トヨタ全体のダイバーシティを進める動きも加速しています。そこで、社内のリーダー役を務める副CSOの大塚友美さんに、新たな取組みや今後の方針についてお話をうかがいました。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 「サステナビリティ推進室」始動 ――2019年6月に立ち上がった「サステナビリティ推進室」は、2020年2月に早川(はやかわ)茂(しげる)代表取締役副会長がCSO(Chief Sustainability Offi cer:最高サステナビリティ責任者)、大塚さんが副CSOに就任しました。どのような取組みをされているのでしょうか。 大塚 メンバー10数人のサステナビリティ推進室は、これまで各部が取り組んできたSDGsのための活動・事業のスピードアップと拡大をうながしていく部署です。世の中のさまざまな方面からのトヨタへの期待値を受けとめ、応えきれていない現場があれば、上層部へのかけあいも含め必要な支援もします。 社長が宣言「SDGsに本気で取り組む」 ――2020年5月には豊田(とよだ)章男(あきお)社長が「SDGsに本気で取り組む」と宣言し、注目されました。 大塚 自動車業界はいま、「100年に一度の大変革期」を迎えています。そのなかでトヨタは、自動車製造業から人々にあらゆる移動の自由を提供する「モビリティカンパニー」に変わろうとしています。ただし、そのドライビング・フォース(推進力)は、儲けることではないと考えています。  トヨタには、創始者・豊田(とよだ)佐吉(さきち)の「利他の精神」があります。佐吉が、はた織作業に苦労する母親を助けるために自動織機を発明したように、「目の前のだれかを楽にするために努力する」という思いがトヨタのルーツにあります。そこに立ち戻れば、私たちの使命は車をつくるだけではなく、世界中の人たちが幸せになるような物やサービスを提供する、つまり「幸せを量産していく」ことなのだと、現代表取締役社長の豊田章男は表明しました。既存の枠にとらわれず「どうしたらそのような社会にできるのか」をみんなで考え、それが企業の成長にもつながる。それをあらためて「だれひとり取り残さないSDGs精神」に表現し直したのです。  トヨタのSDGs精神は、トヨタが目ざす「Mobility for All(すべての人に移動の自由を)」に沿った事業にも反映されています。国際パラリンピック委員会の元会長で、車いすユーザーであるフィリップ・クレイヴァン社外取締役も「障がいのある人がより社会に参加するためには、移動の自由がカギを握る」と助言してくれています。例えば、いまは高齢の方も含めてなんらかの身体的な障がいがあっても、「できることは自分の力で行い、自らの意思で動く」ことが大事になってきていますね。運転しやすい車があるだけで、生活も意欲もずいぶん変わってきます。これまで私自身も多くのプロジェクトにかかわるなかで「動く自由が、人間の尊厳にも深くかかわっている」ことを実感してきました。  これまでトヨタはウェルキャブ(福祉車両)の開発技術を一般車向けに活用してきましたが、近年は、生活支援ロボットや遠隔操作のヒューマノイドロボットなどの開発も進めています。そして2021年着工予定の実験都市「Woven(ウーブン) City(シティ)」(※3)でも、さまざまな「Mobility for All」の実現を目ざしていきます。 生産現場にも特例子会社の社員 ――SDGsの17の目標の8番目である「働きがいも経済成長も」に向け、障がい者雇用の新たな取組みも進んでいるようですね。 大塚 トヨタは生産系の職場が多く、以前の障がい者雇用は聴覚障がいのある社員が中心でした。2009(平成21)年には特例子会社のトヨタループス株式会社(以下、「ループス」)が事業を開始し、そこでは重度の身体障がいや知的・精神障がいのある社員を多く採用し、おもにオフィスサポート業務をになっています。2014年からはループス社員の10人が「トヨタ記念病院」で看護助手のサポート業務も始めました。創業当時28人だった障がいのあるループス社員は、289人(2020年6月現在)となっています。  さらに2020年、初めて生産現場にもループス社員が進出することになりました。愛知県みよし市にある「下山工場」にループスの分室が開設され、モノづくり事業を始めています。下山工場は、エンジンや燃料電池関係の部品をつくる従業員1750人超の大きな職場です。2019年秋からのトライアル期間を経て、2020年4月に本格稼働しました。いまは4人のループス社員(聴覚障がい1人、知的障がい1人、発達障がい2人・10月23日取材時)が、生産ラインなどで組立てに必要な部品を揃える「前段取り」業務を担当しています。 「時は命なり」の教え ――大きな生産現場に入っていくにはハードルもあったのではないですか。 大塚 そうですね、モノづくりということは、お客さまに届ける商品にたずさわるということですので、もちろん品質も大事になってきます。まずは、「どんな作業内容であれば安定した作業ができるのか」を一緒に考えることから始めました。トライを重ねるなかでトヨタの従業員も「障がいは個性なのだ」と理解し始め、障がいのある人それぞれの得意・不得意がわかってくると、それ以降の受入れは比較的スムーズに進みました。いまは、ほかの生産ラインからも業務の切り出しを進めています。また工場内は、有人・無人の搬送車が走行するなど特殊な条件もあるため安全管理にも力を入れました。周囲のトヨタの従業員も、日ごろから彼・彼女たちへ声かけし、また彼・彼女たちの「笑顔」から元気をもらっています。  実は下山工場の場合は、ほかの工場に先駆け高齢者や女性、妊婦さんたちが働きやすい生産ラインをそれぞれつくっていて、多様なメンバーに対する理解、一緒に働く風土が根づいていたことも大きかったようです。  下山工場で独自の職場環境がつくられたきっかけの一つが、ある女性社員の妊娠でした。当初、担当課長は、彼女の体を案じて生産ラインから外し、事務所内の仕事に切り替えました。しかし、もともと工場では事務所内の業務が限られることもあり、与える業務に思案するなかで、「これが本人や会社にとって本当にいいことなのか」と疑問に思ったそうです。  トヨタ社内には「時は命なり」という言葉があります。「トヨタ中興の祖」と呼ばれる豊田(とよだ)英二(えいじ)の「管理職は部下の時間を命だと思い、それを預かっているのだと思え」との教えで、社員にとって価値のある仕事、意味のある時間にするべきだということです。担当課長も「むしろラインで働き続けられる環境を整えるべきではないのか」と、みんなでアイデアを出し合いながら工程改善を重ねていきました。  具体的には、体力負荷の緩和策としてロボット導入や台車の電動アシスト化、からくりを使ってふり向き作業を低減、立ち作業の負荷を軽減するために床にやわらかいマットを敷設、女性ラインの作業台や部品シュートの高さ調整機能の追加、妊婦や下肢障がいのある人用の座り作業の切り出しといったものです。女性社員はこの経験を活かし、別のラインで高齢者や女性が働きやすい作業改善を重ね、作業効率も生産性も上がっていったそうです。 「トヨタ生産方式」と「YOUの視点」 ――社員の状況に合わせた職場改善が生産性に結びつくのは理想的ですね。 大塚 これは「トヨタ生産方式」の考え方に通じています。生産系の社員たちからおやじ≠ニ慕われる執行役員の河合(かわい)満(みつる)CMO(Chief Monozukuri Offi cer:最高モノづくり責任者)が、以前「トヨタ生産方式の取組みは、いろいろな効果がある」と話していました。「職場で事故が起きるときは、やりにくい作業がそのままになっていたり、決められた通りにできずスムーズにいっていなかったりする。やりにくいということは時間もかかる。そこを直せば安全になるし、生産性も上がる」と。  よくいわれますが、高齢者や女性、障がいのある人たちが働きやすい環境は、だれにとっても働きやすいはずですよね。下山工場でも「目の前にいる社員が幸せな、充実した時間を過ごせるように」と考えたことが起点でした。これはトヨタのSDGsの定義として章男社長が掲げている「YOUの視点」でもあります。「自分以外のだれかの幸せを願って何かをやる」というYOUの視点を持って行動できる人材を増やしていくことが、社会の役に立ち、企業の競争力にもなり、新しいビジネスを生んでいく力にもなると考えています。  最近では、合羽(かっぱ)メーカーとの連携が印象深いですね。その会社は、コロナ禍(か)で医療現場を助けたいという思いから、新たに防護ガウンの生産を始めましたが、政府の要望に生産が追いつかず、新聞広告で協業を呼びかけていました。それを見つけたある社員が生産調査部に相談、社員たちが社会貢献活動として出向きました。ガウンと自動車でモノは違えど同じモノづくり工程=A現場で一緒に改善を図ったところ、協力会社も巻き込んで生産量を100倍にも増やすことができました。同時に生産調査部の社員たちも「あらためてトヨタ生産方式を見直す機会になった」とふり返っていました。私も「こんな形の社会貢献もあるのだな」とうれしくなりましたね。 「ひとりの人として」向き合う姿勢 ――トヨタの障がい者雇用やダイバーシティ推進は、どのように進んでいくのでしょうか。 大塚 私たちは、障がいの有無にかかわらずともに働きともに生きる「共生社会」の実現のためにも、障がいのある社員とそうでない社員の接点をもっと増やしていきたいと考えています。すでに福祉車両やロボットの開発には障がいのある社員が積極的にたずさわったり、ループスの社員も参加しています。また社内で開催している「心のバリアフリー」研修では当事者のループス社員が講師をしてくれています。障がいの有無にかかわらず人はそれぞれ得手不得手や考え方や背景に違いがあって、お互いにそれを認め、活かし、補いながらともに働く、そういう職場をつくりあげていきたいです。  さらに今後はトヨタ本体で、事務系職場でも障がいのある社員を積極的に採用していきたいと考えています。みんなが一緒に働いていくためには、企業側で変えるべき部分も少なくないと思っています。例えば今回のコロナ禍も、社内の基本的な働き方が変わる大きなきっかけになりました。トヨタ社内では現地現物≠ニいって「その場にいなければいけない」という考え方が主流でしたが、必ずしもすべてがそうではありませんでした。「なにが生産性として高いのか」を考えながら、在宅勤務やテレワークを含め、働き方を根本から見直しています。概念も制度も、柔軟に大胆に変えていきたいと考えています。  目ざしているのは「新しい視点」がどんどん入ってくる職場ですね。章男社長もよく「周囲のさまざまな立場の人から意見を聞き、その影響を受けながら意思決定をしている」と話しています。さまざまな境遇にいる人のことを知って学び、自分たちも変わって成長するような企業風土をつくることが大切なのだと思います。トヨタは大きな組織なので、進めにくいこともあるかもしれませんが、「自分のチームメンバーは幸せかどうか」を軸にすることができれば、自然とダイバーシティも進んでいくでしょう。そして社員全員が、ひとりの人として「自分以外のだれかのために」、「世の中をよくするために」という姿勢で仕事に向き合うことが、トヨタのSDGsである幸せの量産≠ノつながっていくはずです。こうした企業風土の醸成に向け、全社で引き続き取り組んでいきます。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、トヨタ自動車株式会社様のご意向により「障がい」としています ※1 SDGs:持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)。2015年9月の国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目ざす国際目標。17のゴール・169のターゲットから構成される ※2 本誌2020年2月号「この人を訪ねて」のコーナーで、同社取締役社長の有村秀一さんの取材記事を掲載しています 働く広場 2月号 検索 ※3 Woven City:静岡県裾野市にある東富士工場跡地に建設する「コネクティッド・シティ(あらゆるモノやサービスがつながる実証都市)」 写真のキャプション トヨタループス株式会社の下山工場分室が開設され、組立て作業の準備など「モノづくり事業」がスタートした(写真提供:トヨタ自動車株式会社) 【P6-11】 職場ルポ ともに働き互いに成長する「やってみなはれ」精神 ―サントリービジネスシステム株式会社(東京都)― ダイバーシティ経営を目ざすサントリーグループは、障害のある社員を直接雇用し、社員と一緒に働きながら互いに成長できる職場づくりに取り組んでいる。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ サントリービジネスシステム株式会社 〒135-8631 東京都港区台場2-3-3 TEL 03-5579-1179 Keyword:知的障害、特別支援学校、直接雇用、無期契約、ダイバーシティ POINT 1 失敗を恐れず挑戦し「自立自走できるチーム」を目ざす 2 ランチ会やデリバリーなど「社員と接する機会」を増やす 3 「学び続ける機会」をつくり、長期雇用の環境も整備 ダイバーシティ経営に沿って  大手食品メーカーの「サントリーホールディングス株式会社」(以下、「サントリー」)は2010(平成22)年、ダイバーシティ経営に取り組むことを決め、四つの重点領域(国境を超える、性別を超える、ハンディキャップを超える、年齢を超える)を設定した。このうち「ハンディキャップを超える」にかかわる障害者雇用については、グループ各社でおもに身体障害のある社員がいたものの、法定雇用率は未達成の状態だった。  そこで2011年に「ダイバーシティ推進室」を人事部に設置。そのなかで障害者雇用の進め方を検討した結果、特例子会社はつくらず直接雇用していくことになったという。サントリー人事部の部長でダイバーシティ推進室長を務める千(せん)大輔(だいすけ)さんが説明する。  「私たちは、多様な一人ひとりの個性が発揮されて強くなっていく組織を目ざすうえで、ハンディキャップのある人もない人も一緒の職場で働くことが、お互いにとって成長の機会にもつながるはずだと考え、特例子会社という形態はとりませんでした」  地域の特別支援学校から実習生を受け入れ、2015年には知的障害のある社員4人を採用。サントリーの人事部フロアに席を並べ、サポート役のスタッフ社員(以下、「スタッフ」)1人とともに、各部署へのメール便配布やコピー紙補充などの簡易業務からスタートした。  その後、グループ各社の人事・総務・経理領域などのシェアードサービスを手がける「サントリービジネスシステム株式会社」(以下、「サントリービジネス」)が2017年に設立され、障害のある社員(以下、「メンバー」)も同社内の「コラボレイティブセンター」(以下、「コラボセ」)に2018年に移管した。  現在は、メンバーとスタッフ合わせて26人が在籍。2020(令和2)年6月1日時点でサントリーの障害者雇用数は107人(身体障害84人、知的障害16人、精神障害7人)、障害者雇用率は2・82%。2019年には「東京都障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を受賞した。設立5年で飛躍的に成長したコラボセの、現場の取組みを見せてもらった。 「作業から仕事へ」自立自走のチーム  お台場のりんかい線東京テレポート駅から歩行者専用橋を渡ったところにあるサントリービル。ここにはいくつものグループ会社が入っている。コラボセがあるフロアでは、午前9時からの朝礼が終わると、メンバーが2チームに分かれてパソコンを囲み、話し合いを始めた。  「今日の業務ごとのリーダーと担当者を決めているんですよ」と説明してくれたのは、コラボセの課長で、2016年からこの業務にたずさわっている、本誌の編集委員の平岡(ひらおか)典子(みちこ)さん。  この日の業務は、グループ4社の事業推進本部や広域営業本部、戦略量販グループなど7部署から依頼された案件。定例業務のメール便や経理伝票整理のほか、取引先店舗へのPOP手配や販促品の発送、文書印刷などが加わる。希望納期が書かれているので、優先順位を考えながら各業務の担当者を決めていく。  最初は平岡さんたちのようなスタッフが、一人ひとりの「業務スケジュール」を毎日作成し、メンバーにはあらかじめ業務を割りふっていた。徐々に業務が増えるなか、仕事の全体を知ってほしいと考え、「どの部署のだれからの依頼で、いつまでにやるどんな業務なのか」といった細かい情報も業務スケジュールに追加したところ、メンバーたちが「自分たちの仕事が、社内外のこういう部分で役に立っている」と自覚し、納期も意識するようになったそうだ。  サントリー人事部時代からメンバーと交流があり、いまはシニア社員としてコラボセの専任部長を務める杢谷(もくたに)一幸(かずゆき)さんが、これまでの成長ぶりを語る。  「チーム制に変えてから、彼らが自分たちでフォーマットをつくり、前日から別事業所への出張予定者を確認したり、メール当番を決めたりするようになりました。やはり仕事というのは、人からいわれるより自分たちでやる意識が出てくるとモチベーションも変わってくるのだなと実感しました」  スタッフは、業務の配分が偏ったり、なかなか決まらなかったりするときに助言したり、新規業務の手順整理などをする。平岡さんは「将来的にはそうした調整も含め、自立自走できるチームにしていきたい」と話す。  一人ひとりの自立と成長をうながすうえで大事にしていることは、「失敗を恐れないこと」だそうだ。「失敗は大歓迎だから」とくり返しつつ「ミスしたときこそ、次はどうしたらいいかみんなで話し合っていこう」と呼びかけている。  コラボセの課長代理としてスタッフ役を務める末木(すえき)恵(めぐみ)さんは「サントリービール株式会社」の社長秘書から昨年異動してきた。これまでとまったく違う環境で最初は戸惑ったが「みんながすごくフレンドリーで、すぐに打ち解けました」と語る。日ごろ心がけていることについては「メンバーになるべく自分で考える力をつけてもらうために、質問されてもすぐに教えず『どう思う?』と問いかけるようにしています」とのことだ。  チームでの業務分担を終えると、さっそくパソコンで入力業務を始めていた2016年入社の及川(おいかわ)翼(つばさ)さん(23歳)に、コラボセで働くことについて聞いてみると「毎日いろいろな仕事ができるし、依頼元の社員のみなさんにお礼をいわれるとうれしいです。仲間と協力しながら納期を守り、ていねいで正確な仕事をがんばりたいです」と返ってきた。少し離れた場所で同じようにパソコン業務をしていた同じく2016年入社の磯山(いそやま)翔(かける)さん(23歳)は、「入社してから、自分の得意なことをたくさん見つけられました」と話す。一方でいまも不得意なのは、業務に没頭して時間を忘れてしまうことだと明かしてくれた。「過集中防止のため、スマートフォンのアラームを使っています」と見せてくれた画面には、メール便のアラーム時刻が何十件も並んでいた。 「やってみなはれ」で業務拡大  業務のなかには、かなり高度なものもある。例えば「スピリッツ販売枠移動」と呼ばれる業務は、「サントリースピリッツ株式会社」で取り扱う商品の需給を調整する内容だ。毎日のようにメールで届く「北海道から〇〇商品を10 ケース移動してください」、「名古屋で××商品が200本足りないので補てんしてください」といった注文を読み解き、全体数量の加減を計算しながら社内の専用システムに入力していく。聞いているだけでも複雑な業務だ。  メールを出す側の社員に、文章の定型化を図ってもらうなどの工夫もしたが、それでも最初はミスも少なくなかったという。「担当する6人のメンバーは、小さなミスが現場に大きな影響を与えてしまうことを経験し、責任の重さも実感しながら努力した結果、1年後にはほとんどミスもなくなりました」と平岡さんはふり返る。  担当者の一人、鈴木(すずき)颯太(そうた)さん(20歳)は2019年入社。「ミスしたときは依頼部署のみなさんが『大丈夫だから』と声をかけてくれました。いまは本数などを何度も確認し、少しでもわかりにくい内容はスタッフに聞きます」。実は鈴木さんは特別支援学校在学中から、作業時に手が震えてしまうことが悩みだったという。「仕事に自信が持てるようになってから、手の震えもなくなりました。会社に入って克服できたのがうれしかったです」と明かしてくれた。コロナ禍(か)のいまは、在宅勤務の担当者とオンラインでやり取りしながら業務を続けている。コラボセでは今後も一定のテレワークが続くことを視野に、在宅でもできるパソコン業務の拡大を図っている。  2018年入社の小倉(おぐら)毅之介(たけのすけ)さん(21歳)も、重要なパソコン業務を任されている一人。すでに後輩にパソコン業務を教える立場だ。最近も、売上データ更新など新しい業務が加わった。小倉さんは「将来は、どんな職場でも活躍できるようになりたいです。全国転勤も大丈夫です」と意欲的に語る。ちなみに小学校4年生から始めたピアノが趣味で、オンライン会議中に生演奏を聴かせるほどの実力だ。  コラボセの担当業務は、いまではグループ24社からの150業務以上にのぼる。順調に業務拡大が進んだ背景について平岡さんは、「サントリーグループで共有されてきた『やってみなはれ』精神がある」と話す。これは創業者の鳥井(とりい)信治郎(しんじろう)氏がよく口にしていた『やってみなはれ、やらなわからしまへんで』という言葉からきており、サントリーグループの根幹となる価値観に掲げられている。平岡さんはいう。  「失敗することも迷惑をかけることもありますが、それを成長のためのステップとして見守り、活躍の後押しをしてくれる企業風土のおかげです」 「社員との接点」を増やす  コラボセでは、グループ社内の後押しと業務拡大を図っていくうえで、積極的に「社員との接点をつくる」活動も行ってきた。  まずは「コラボセメンバーを知ってもらうため」のランチ会。メール便の業務などで訪れている部署やフロアごとに呼びかけて開催し、そこでコラボセメンバーが自己紹介する。社員と共通のゲームや趣味の話で盛り上がり、その後も社内で交流が続いているそうだ。  ここで一気に人脈を広げたのが2016年入社の武内(たけうち)秀徳(ひでのり)さん(23歳)。ほかの部署の社員たちから「ひで」と呼ばれ、朝の出社時も多くの社員と挨拶を交わしたり昼食を一緒に楽しんだりしているという。コミュニケーションの達者ぶりには杢谷さんも、「外国人の仕事仲間ともジェスチャーを織り交ぜながら会話しているのを見て、驚きました」と舌を巻くほどだ。  また、毎週水曜日に実施する定時退社をうながす社内アナウンスを、コラボセメンバーが交代で担当している。2017年入社の谷口(たにぐち)里佳(りか)さん(22歳)は、もともと人見知りで自分から話しかけるのが不得意だったそうだが、アナウンスに挑戦したあと、社内で多くの社員から「今日のよかったよ〜」とほめられたのが自信につながっているという。「次の順番が楽しみです」と笑顔で話す。  さらに、メンバーを輩出してきた特別支援学校についても知ってもらおうと、「カフェ企画」を定期的に開催している。校内で喫茶実習を行っている生徒たちが、ランチタイムに休憩スペースで、ハンドドリップのコーヒーと生徒手づくりのお菓子を販売。使う豆はグループ会社から提供されている。  最近新たに始めたのは、社員食堂のお弁当のデリバリーサービス「コラボDeli」だ。注文受付けから食堂への連絡、ランチタイムに合わせた各部署への配達、代金引き落とし処理までを一括して担当している。平岡さんは「メンバーの顔を覚えてもらうだけでなく、注文時のメールや電話が、ビジネス対応の練習にもなっています」と手応えを語る。 成果発表会をきっかけに  毎年12月にコラボセが主催する「成果発表会」もアピールの機会となっている。業務依頼元の部署やグループ会社、人事部、母校の先生、支援機関の関係者らを100人ほど招き、メンバー全員が一人ずつ「今年がんばったこと、できるようになったこと、来年がんばりたいこと」を発表。さらに、本人と接点のある社員からコメントをもらう。  2019年の発表会で、「挨拶ひとつ、一生懸命な姿勢ひとつが周りの空気を変えられるのだと実感した。全社員に聞いてもらいたい」という感想を寄せた京橋事業所の課長が、「うちの部署でも一緒に働いてほしい」と申し出て、現在2人のメンバーが交代で京橋事業所に出張している。2人が事業所内で「これからメール便に行ってきます」などというたびに、社員も「行ってらっしゃい」と返すようになり、部署全体での声かけ習慣が広まっているという。  さらに2020年1月には、世界中からマネジャー2千人が集まったサントリーグループ総合会議で、コラボセのセンター長を務める南部(なんぶ)有香(ゆか)さんが登壇した。会場で見守っていた平岡さんによると「発表のあと、大きな感動に包まれたような不思議な雰囲気になりました」という。その直後に挨拶に立った佐治(さじ)信忠(のぶただ)会長も、「今日の会議は、これまでで一番すばらしかった」と語ったほどのインパクトだったそうだ。  南部さんは「この会議での発表は、幅広い社員にコラボセの活動を伝える機会になりました。それでもまだ、メンバーと接点を持つ社員と持たない社員の間で、感度の差があると感じています。拠点を増やしながら、一体感のあるダイバーシティを熟成させていきたいと思っています」と語る。  その実践の一つが、コラボセによるグループ各社の障害者雇用支援だ。現場担当者への業務ヒアリングから、特別支援学校と連携しての実習・採用活動、入社後のフォローまでサポートする。  支援内容を知ってもらうため、まずは全国のグループ会社の人事担当者が一堂に集まる会議でコラボセについて紹介した。興味を持った10社ほどの人事担当者向けに、知的障害のある社員と一緒に働く「勉強会」を開催したところ、「こんなに多くの業務を任せられるのか」と驚かれたという。そこから採用に向けて動いた会社も少なくなかった。一緒に働いてみることが一番の近道ということで、メンバーのトライアル派遣も行っている。山梨県にあるグループ会社のワイン用ぶどうの収穫に出向いたこともあるそうだ。これまでサポートに入った会社では、すでに数人の新規採用が決まっている。 サポーターとの連携活動  コラボセは、メンバーのサポーター役である出身学校や支援機関、家庭との連携も重視し、情報交換や交流を続けてきた。毎年の恒例イベントとして、コラボセメンバーをはじめ関係者らを招いた、工場見学や美術館へのツアーも好評だ。  2020年は、特別支援学校の新任教員の実習受入れと、保護者を招いた職場見学・交流会の開催も企画した。平岡さんが話す。  「メンバーの働く姿を見ていると、経験を通してどんどん成長しますし、そのポテンシャルには限界がないと実感しています。保護者のみなさんには、ご家庭でもお子さんたちの可能性を信じて強みを伸ばし、さまざまなチャレンジができるようなサポートをしていただきたいと思います」 学び続けるための機会も  社内キャリア形成も含め、成長しながら長く働き続けていけるようにと、コラボセでは入社後も学び続ける習慣を持つ機会をつくっている。毎年1月にコラボセの全員が「学ぶテーマ」を決め、月ごとに進捗状況をフィードバックしている。ちなみにスタッフは英検やTOEICの点数アップ、メンバーは本の読破や漢検、英検への挑戦などを目標に掲げている。  2020年には「コラボセおもしろアカデミー」と称した社内講座もスタート。グループ会社の社員に依頼し、自由なテーマで話してもらっている。「エクセルの関数」、「ビールの基礎知識」、「外食チェーンを知る」といった仕事に関するものから、「インドを知る」、「中国を知る」といった視野を広げるものまで多種多様だ。コロナ禍でも月1回、オンラインで続けている。次回はオーストラリアに勤務する社員と結んで話してもらう予定だ。 長期雇用に向けた環境づくり  サントリー社内におけるコラボセの影響力について、千さんが「私自身も彼らに触発されて、部内で挨拶するようになった一人」と明かしつつ、あらためて語ってくれた。  「彼らの成長は、当初の予想をはるかに上回っています。個人差も、得意不得意の違いもありますが、全員が新しいことにどんどんチャレンジしていく様子に、周りの社員も刺激をもらい、勇気づけられ、人として成長する機会を与えてもらっています。日々、交わることで相互に成長しているなと実感しています。これは、本当にとても大きな影響です」  コラボセのような機能・拠点を全国各地に広げつつ、メンバーの長期雇用に向けた環境整備も進めている。  そのなかの一つが、無期雇用制度である。さらに、昇給やリーダー手当など役割に応じた給与制度も導入し、2020年に、勤続年数が丸5年経ったメンバー4人を無期雇用契約に切り替えた。千さんはいう。  「彼らを採用する以上、彼らの人生に責任を持つということをさらに明確に示していきたいですね。サントリーで働くことで幸せになれるよう、そして私たちも彼らに働いてもらうことで強くなる、そういう関係性を築きながら組織を大きくしていけたらと考えています」 写真のキャプション サントリーホールディングス人事部部長・ダイバーシティ推進室長の千大輔さん(写真提供:サントリービジネスシステム株式会社) サントリービジネスシステムのコラボレイティブセンターが置かれたフロア メンバーの働きを支えるコラボセの方々(左から)平岡典子さん、南部有香さん、末木恵さん、杢谷一幸さん 朝礼後に開かれるチームミーティングでは、メンバー同士で相談し合い一日の仕事の分担を決める 「スピリッツ販売枠移動」の複雑な業務をこなす鈴木颯太さん 手際よく業務を進める及川翼さん。「POPの封入・発送業務も好きです」と話す パソコン業務を担当する小倉毅之介さんは、急なポスター発送も要領よく対応していた 「初めての業務にもチャレンジしたい」と話す磯山翔さんは、書類のPDF化業務を行っている 値札のカット作業を担当した谷口里佳さん。ていねいな仕事を心がけている POPの封入を真剣に行う武内秀徳さんは、「いろいろな人と出会いたい」と語る グループ会社の社員が講師となる「コラボセおもしろアカデミー」の様子(写真提供:サントリービジネスシステム株式会社) 社内にお弁当を配達する「コラボDeli」は大好評。リピーターも多いそうだ 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 事業主のみなさまへ 令和3年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ 〜常用雇用労働者が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜 令和3年4月1日から同年5月17日の間に令和3年度分の申告と申請をお願いします。 前年度(令和2年4月1日から令和3年3月31日まで)の雇用障害者数をもとに、 ○障害者雇用納付金の申告を行ってください。 ○障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。 ○障害者の法定雇用率を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 *令和3年3月1日より障害者の法定雇用率 は2.2%から2.3%へ引き上げになります。 【申告申請期間】 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者特例調整金 特例給付金 申告申請の対象となる期間 令和2年4月1日〜令和3年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和3年4月1日〜令和3年5月17日 (注1、注2、注3) (注1)年度(令和2年4月1日〜令和3年3月31日)の中途で事業廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告申請(障害者雇用納付金の場合は、申告額の納付)が必要です。 (注2)障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金及び特例給付金は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できませんので、十分にお気をつけください。 (注3)常用雇用労働者が100名以下の事業主が、特例給付金の申請を行う場合の申請期限は令和3年8月2日となります。 *詳しくは、最寄りの各都道府県支部 高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください(33ページ参照)。 JEED 都道府県支部 検索 常用雇用労働者が100人以下の場合は障害者雇用納付金の申告義務はありませんが、雇用障害者数が一定数を超えている場合は報奨金の支給申請をすることができます。 詳しくは最寄りの都道府県支部にお問い合わせください。 申告申請の事務説明会にご参加ください。 *全国各地で2〜3月に開催します。 *参加費は無料です。 *詳細は当機構ホームページをご確認ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/levy_grant_system_briefi ng-reiwa3.html 「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない 〜障害者雇用の専門家が企業のみなさまを支援します〜 障害者雇用に関して、労務管理、医療、建築などさまざまな分野の専門家である「障害者雇用管理サポーター」が企業のみなさまのご相談に応じ、支援を行っています。 サポーターの活用例 相談内容  精神障害のある社員の職場定着に向けて、自社の取組みの参考とするため、ほかの企業が実際にどのように取り組んでいるのかを把握したい。 支援内容  相談企業が、障害者雇用管理サポーターが所属している企業(精神障害のある社員を複数人雇用)を訪問した。  サポーターから、「電話応対の可否など、精神障害のある社員一人ひとりの特性に合わせて、職務内容や配置場所を変えていること」、「管理者による体調管理ができるように、毎日障害のある社員から日誌の提出を求めていること」、「障害のある社員本人の了解の下で周囲の従業員に障害の特性を説明し、配慮を求めていること」などについて説明した。  相談企業からは、配置場所や活用している資料等について目にすることができたので、わかりやすく勉強になったとの意見があった。 相談内容  初めて全盲の方を雇用するにあたり、職務内容や就労支援機器、職場環境の整備についてノウハウがないため、アドバイスがほしい。 支援内容  視覚障害者に対する支援の専門家である障害者雇用管理サポーターが、相談企業を訪問した。  サポーターから、企業の担当者と一緒に社内の作業動線を確認しながら、点字シールの活用や座席の配慮など環境整備、具体的な就労支援機器の紹介、職務の切り出し、障害特性をふまえたほかの社員とのかかわり方、通勤時の支援などの助言を行った。  相談企業からは、「専門家から具体的でわかりやすいアドバイスが得られてよかった」、「特に点字やトイレの整備、歩行訓練士など、知らなかった点や気づかなかった点について助言が得られてよかった」との意見があった。 ※上記のほか、特例子会社の設立や運営に関する助言も行っています。 ご相談受付 サポーターによる支援をご希望の場合は、次のどちらかの方法でご連絡ください。 ★中央障害者雇用情報センターにご相談ください。障害者雇用支援ネットワークコーディネーターが障害者雇用管理サポーターと調整を行います。 (TEL:03-5638-2792 E-mail:syougai-soudan@jeed.or.jp) ※令和3年4月1日から、メールアドレスはsyougai-soudan@jeed.go.jpに変更となります ★障害者雇用管理サポーター検索サイト「障害者雇用支援人材ネットワークシステム」で支援を受けたいサポーターを探すことができ、検索後、ご自身で直接連絡をとることができます。 障害者雇用支援人材 検索 こちらのQRコードからも「障害者雇用支援人材ネットワークシステム」にアクセスできます <お問合せ> 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 「障害者雇用事例リファレンスサービス」を活用して本誌「働く広場」の取材記事が探せます! 障害者雇用を考えたいけれど、ほかの企業ではどんな取組みをしているんだろう? 「障害者雇用事例リファレンスサービス」をご活用ください! 障害者雇用事例リファレンスサービスとは  障害者雇用について創意工夫を行い、積極的に取り組んでいる企業の事例や、合理的配慮の提供に関する事例を紹介する当機構のウェブサイトです。 https://www.ref.jeed.or.jp/ アクセスはこちら! ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttps://www.ref.jeed.or.jpであることを確認のうえアクセスしてください。 「働く広場 」掲載記事の検索 「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、「働く広場」に掲載している「職場ルポ」、「編集委員が行く」の企業等取材記事(※)を検索・確認することができます。 ※同サイトへの掲載許可が得られた記事 検索方法 1 「働く広場」の記事検索をする場合は、「モデル事例」をチェックしてください。 2 検索条件で、「働く広場」にチェックし、「業種」「障害種別」「従業員規模」「フリーワード」等の条件を設定して検索ボタンをクリックすることで、探したい記事をピックアップできます。 3 クリックすると、該当企業の事例ページが表示されます。 4 該当記事のPDFファイルにアクセスできます。 当機構ホームページでも記事検索ができます! 「働く広場」の取材記事については、「障害者雇用事例リファレンスサービス」で検索できるほか、当機構ホームページにて、バックナンバー(過去4年分)の記事索引の閲覧や、「グラビア」、「クローズアップ」などのコーナーも記事検索ができます。どうぞご利用ください。 記事索引画面 「働く広場」に関するお問合せ 企画部 情報公開広報課 TEL:043-213-6200 FAX:043-213-6556 障害者雇用事例リファレンスサービス」に関するお問合せ 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 FAX:043-297-9547 【P15-18】 グラビア 教育・医療の現場を支える 株式会社帝京サポート(東京都) 取材先データ 株式会社帝京サポート 〒173-0002 東京都板橋区稲荷台10-7 帝京大学 大学棟3号館 TEL 03-3964-1408 FAX 03-3964-1412 写真・文:官野 貴  学校法人帝京大学の特例子会社「株式会社帝京サポート」では、知的障害のある社員39人と精神障害のある社員2人が働いている。その業務は多岐にわたり、学内郵便物などの仕分け・配送、文房具など日用雑貨の配送、会議資料の印刷や廃棄文書の回収・粉砕などの事務サポート業務をはじめ、入院患者向けの投薬・注射薬などを積んだ薬剤カートの搬送、医療従事者のユニフォームの配達など附属病院内の業務、キャンパス内の緑地清掃などさまざまだ。  同社では、一週間ごとに業務内容が変わる「ジョブローテーション」を取り入れている。これにより、どの社員もさまざまな業務をこなせるようになり、だれかが病気などで急に休んでも臨機応変に対応できる。さらに、午前と午後に別の業務を行うなど、一日の勤務に変化をつけており、各社員の業務に対するマンネリ化を防ぎ、職場定着にもつながっている。  同社では、大学・附属病院宛の郵便物・物品受付も一手にになっている。これにより不特定多数が建物内に立ち入ることを制限でき、セキュリティの確保や感染症予防に有効だ。また、同社では設立以来、社員のマスク着用、手洗い、うがいを続けており、コロナ禍(か)により手指の消毒、検温を追加して感染症予防に万全を期している。職場の安全についても、事故やトラブルを未然に防ぐため、二人一組でカート搬送にあたり、「左に曲がります、左側OKです」、「後方もOKです」などと声をかけ合うことで、廊下を歩く患者や医療従事者にぶつからないよう配慮している。  薬剤カートの搬送やユニフォームの配達などの業務は、これまでは医療従事者が行ってきたものだ。それを帝京サポートの社員が請け負うことで、医療従事者は本来の業務に専念でき、負担軽減にもつながっているのだ。帝京サポートの社員の働きが、帝京大学本部・医学部とその附属病院における教育や医療の現場の一翼をになっている。 写真のキャプション 飯岡(いいおか)明彦(あきひこ)さん(22歳) キャンパス清掃 「キャンパス清掃では、通行の邪魔にならないように心がけています」と話す飯岡さんは、漢字検定2級を持っており、郵便物の仕分けに活かしている 中尾さんは入社1年目、仕事にも慣れてきたという 出発前に配達する白衣の数をチェックする小山さん 小山(こやま)一樹(かずき)さん(23歳) 中尾(なかお)開(はるき)さん(19歳) 医療従事者ユニフォームの配達 先輩の小山さんが周囲を確認しながら先導し、中尾さんが白衣の入ったカートを押していく。出入口付近は細心の注意を払う 薬剤カートの搬送 都田(みやこだ)恭祐(きょうすけ)さん(30歳) 長内(おさない)啓輔(けいすけ)さん(29歳) 薬剤師が準備した薬剤カートを薬剤部から各病棟へ搬送するのは、入社12年目で一期生の都田さんと、入社11年目の長内さんのベテランコンビ 郵便物の仕分け作業 山ア(やまざき)諒(りょう)さん(29歳) 入社11年目の山アさんは、後輩に「似た宛先が多いので、宛先と棚の表示を声に出して確認する」ことをアドバイスしている 【P19】 エッセイ 【第4回】 あなたはどう思いますか? 坂井 聡 さかい さとし  香川大学教育学部教授、香川大学学生支援センターバリアフリー支援室室長、香川大学教育学部附属坂出(さかいで)小学校校長・附属幼稚園園長、言語聴覚士、公認心理師。  特別支援学校での進路指導の経験があり、現場をよく知る実践的な研究者。富士通株式会社やソフトバンク株式会社と産学官の共同研究も行っている。 フェンスは何を意味するのか  YouTube(ユーチューブ)に、「Ian(イアン)」(※)というショートムービーが公開されている。  このショートムービーにはフェンスが出てくる。このフェンスが子どもたちの世界を分断している。一方は子どもたちが楽しく遊んでいる世界、もう一方は少し暗い寂しい感じの世界である。  車いすユーザーの少年が子どもたちの遊んでいる世界に行くのだが、そのたびにフェンスで隔てられたもう一方の世界に戻されてしまう。子どもたちが楽しく遊んでいる世界に留まることができないのである。もう一方の世界に戻されてしまうことを何度も経験し、つらい思いをしているであろうことは容易に想像できる。  どうなるのだろうと思って見ていたら、少し変化が見られるシーンがある。お母さんに車いすを押してもらっていた少年が一人で車いすを操作して、車いすに乗ったままフェンスに向かっていくシーンである。その表情からは相当な覚悟をしていることが読み取れる。  少年は車いすに乗ったままフェンスに激突する。すると少年はフェンスを通過し、ほかの子どもたちが遊んでいる世界に行くことができた。しかし、乗っていた車いすはフェンスを通過できず、フェンスの手前に残されてしまう。子どもたちが遊んでいる世界へは、車いすを持ち込むことができないのである。  少年は不自由な足で立ち上がろうとするが、立つことはできず倒れてしまう。それでもまた、立ち上がろうとするが、これまでと同様、フェンスで隔てられたもう一方の世界に戻されてしまいそうになる。  ところが今度は、これまでとは違う。ここからが、クライマックスである。遊んでいる子どもたちが、フェンスの向こう側に戻されそうになっている少年の手を取って、自分たちが遊んでいる世界に引き戻そうとするのである。しかし、彼らが力を合わせても引き戻すことができない。  次の瞬間、子どもたち全員がフェンスを通過して、もう一方の世界に入ってしまう。そこには、不安そうな顔で車いすに座っている少年がいる。どの子も不思議そうな顔をしている。  しばらくすると、子どもたちに少し笑顔が見えるようになる。するとどうだろう、フェンスが少しずつ消えてなくなっていくのである。フェンスが消えたところで、笑顔の子どもたちが少年の乗った車いすを押しながら、楽しく遊んでいた世界に一緒に戻っていくというものである。 この動画が考えさせるもの  いろいろと考えさせられるショートムービーである。まず、フェンスである。あのフェンスの正体は何か?きっと多くの人たちが持っているであろう、“障害があるかないか”で分けてしまう無意識的なモノを表しているのではないか。  ではなぜ、車いすはフェンスを越えられないのか。「訓練をして、歩けるようになった人だけが来てもよい」、「現状の社会に合わせることができる人のみが生活できる世界」があるということを象徴的に表しているのではないか。  一人で車いすを操作し、フェンスに向かっていっていくシーンは、自然と応援したくなる。しかしなぜ、覚悟を決めて向かっていかなければならないのか。子どもたちが手を引っぱって自分たちの遊んでいる世界に引き戻そうとするのはなぜか。  この子どもたちは「歩けることが当たり前」という価値観の世界で生活しているので、「なんとか歩けるようになってこっちの世界にいるのがよい」と純粋に考えてしまっているのではないか。大人が、そのように教えてきたことに原因があるのではないか。  私たちが、当たり前と考えていることは、本当に当たり前のことなのだろうか。無理なことを求めてはいないだろうか。「支援を受けながら生活しても大丈夫」といえるような社会を創らねばならないと、考えさせられるショートムービーである。 ※『イアン〜物語は動き始めた〜』(アビル・ゴールドファーブ監督、アルゼンチン、2018) https://www.youtube.com/watch?v=6dLEO8mwYWQ 【P20-25】 編集委員が行く 新型コロナウイルスの感染防止に対応し、新たな学びを得る 東京都立志村学園、株式会社パソナハートフル、経済産業省 経済産業研修所(東京都) あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 編集委員から  今回の取材をお願いしたのは、緊急事態宣言を受けて休校が続いたものの、ようやく学校が再開し、夏休みを短縮してこれから授業を充実させようとしていた時期である。そのため、訪問しての取材はむずかしいと思われたが、依頼先のみなさまには主旨をご理解いただき、快く取材にご協力していただいた。あらためてここに感謝を申し上げ、厳しい状況のなかでも新たな学びと雇用継続の工夫に取り組んでいることをお伝えしたいと思う。 取材先データ 東京都立志村学園 〒174-0045 東京都板橋区西台1-41-10 TEL 03-3931-2323 株式会社パソナハートフル 〒100-8228 東京都千代田区大手町2-6-2 TEL 03-6734-1093 経済産業省 経済産業研修所 〒189-0024 東京都東村山市富士見町5-4-36 TEL 042-393-2521 写真:官野 貴 Keyword:特別支援学校、職業教育、特例子会社、体験学習、学校との連携 POINT 1 外部講師とともに専門性を学ぶ 2 体験学習で社会を学び、自分を知る 3 在学中からの連携と育成の視点が定着を生む 部門併置のよさと多様性  「東京都立志村学園」は、2013(平成25)年4月に開校し、8年目を迎える。肢体不自由教育部門の小学部、中学部、高等部(全児童・生徒数98人)とともに、知的障害教育部門の専門学科である高等部就業技術科(1学年定員80人)を併置する学校である。東京都では2007年度より、知的障害教育における大規模な専門学科を順次設置し、現在都内には就業技術科が5校ある。また、小規模の専門学科(1学年定員20人)が3校設置されている。2021(令和3)年春には、中規模の専門学科(1学年定員40人)が開校する予定である。  志村学園は板橋区の高台にあり、高等学校の跡地に新設された特別支援学校である。校舎は自然の日差しを取りこむ明るいデザインで、就業技術科の生徒による清掃が行き届いているため、いまでも開校したてのような清新さを感じる。また、屋上からの眺めには開放感があり、都内のビル群の様子が見える。屋上緑化と窓の清掃も高等部就業技術科の生徒が中心となって行っているそうである。  また、肢体不自由教育部門の児童・生徒の通学のために、スクールバス14台と、医療的ケアを必要とする児童・生徒のための専用車両2台が運行しているが、高等部就業技術科の生徒は、全員が電車とバスを利用して通学をしている。障害種別を超えた部門併置は、児童・生徒および保護者、教職員にとって、日常生活のなかで多様性を理解し、お互いを大切に思う環境となっているように思われる。  訪問すると、副校長先生をはじめ先生方が迎えてくださった。校舎内の廊下や教室は新型コロナウイルス感染防止対策のため部門ごとにコーンやテープで区分けされており、児童・生徒および教職員の部門を越えた濃厚接触が起こらないよう配慮されている。諏訪(すわ)肇(はじめ)校長、阿出川(あでがわ)千賀子(ちかこ)副校長(高等部就業技術科)、深井(ふかい)敏行(としゆき)副校長(肢体不自由教育部門高等部)、二階堂(にかいどう)美保(みほ)副校長(肢体不自由教育部門小学部・中学部)、久田(ひさだ)美由紀(みゆき)進路指導主任の先生方から、学校概要の説明を受けたあと、授業の見学について打合せを行い、案内していただいた。 専門家との協同の授業で顧客意識・品質意識を学ぶ  東京都教育委員会では、2008年度より特別支援教育推進室を開設し、卒業後の就職先となる企業の開拓に力を入れてきた。翌2009年度には、「就労支援アドバイザー制度」を開始し、障害者雇用の経験がある企業などからの外部講師を配置し、特別支援学校の授業改善および進路指導の充実に取り組んできた。また、新たに開校した専門学科では職業教育の質を高めるため、特別専門講師を雇用し、教員とともに授業改善を行っている。  志村学園の高等部就業技術科では、流通・サービス系列として「流通・都市農園芸サービスコース」と「ビルメンテナンスコース」があり、家政・福祉系列として「食品加工コース」と「介護・コミュニケーションコース」を設置している。これらの4コースに、6人の特別専門講師(流通・都市農園芸サービスコースには流通で1人、ビルメンテナンスコースには清掃で1人、食品加工コースには接客と厨房で2人、介護・コミュニケーションコースには介護とホテル客室で2人)が配属されており、教員とともに専門性の高い授業を目ざしている。  最初に訪問したのは、「流通・都市農園芸サービスコース」の3年生の授業。流通加工の授業内容で、スーパーなどの店舗で使われる商品のトレイをラッピングの機械を用いて包装する学習であった。この日の授業は特別専門講師の小野(おの)博也(ひろや)さん(元大手スーパー特例子会社の取締役)を中心に行われており、商品を置く位置、ラップを張るコツ、商品を持ち上げて手前の電熱器カッターで切断し、最後にトレイの底面を圧着する、というポイントを見せてから、生徒一人ひとりに体験させていた。ここで注目したのは、作業スキルよりも、小野さんの穏やかなコミュニケーションのもと、ラッピングの良し悪しに気づかせ、考えさせる場面をつくっていることであった。生徒たちはお客さまの視点からきれいなラッピングの商品を買いたいと思い、そのためにはどうすればうまくできるかに注目するようになる。ここに顧客意識が生まれ、作業への品質意識が高まってくる。「もう一回」と要求する生徒たちの姿に自ら学ぶ意欲を感じた。一人ひとりを知っている教員が、そばで再度アドバイスする。仕事の専門家と生徒をよく知っている教員の協同が、専門性の高い授業を生む。  「介護・コミュニケーションコース」の3年生の授業では、筑波大学とサイバーダイン株式会社(茨城県)の共同研究で開発された「介護アシストスーツ」を用いた学習が行われていた。アシストスーツは神経の電気信号を感知し、人の動作を補助するもので、介護用のほか肢体不自由者の歩行アシストなどにも使えないか試行されているそうである。生徒は一人ひとりスーツを装着し、約20sの荷物を上げ下ろしして運ぶ体験をしていた。ここでも動作やスキルそのものよりも、介護の最先端技術を知り、どのように安全に物を運ぶのか、労働安全衛生にもつながる内容を体験し、学んでいた。生徒も教員も新鮮な驚きと学ぶ楽しさを共有している姿が印象的であった。  「食品加工コース」の授業では、3年生がお客さま役と接客担当に分かれて学ぶ様子を見学できた。以前にレストランを経営している企業の方から、「料理に加え接客がよくないと、後味の悪いお店になってしまう」と聞いたことを思い出しつつ、生徒が自ら考え工夫や改善をする力を引き出そうとする授業に感心した。また、志村学園では地域住民も自由に利用できるカフェ&レストランを運営しており、厨房ではフランス料理の特別専門講師が教えているそうである。2020年度は新型コロナウイルス感染防止のため事前予約制にし、時間帯をずらして利用してもらうなどの配慮をしていた。現在、カフェ&レストランは営業を見合わせているが、まもなく再開する予定だという。  「ビルメンテナンスコース」の授業は、時間の都合で残念ながら一部しか見学できなかったが、用具室では清掃資機材が整理整頓されており、モップやタオルなどの洗濯・消毒が行われ、衛生的に管理されていることがよく理解できた。感染防止対策のための除菌清掃も2020年度から行うようになった。  また、各コースとも近隣の企業の協力を得て、物流倉庫やスーパー、高齢者のデイサービスや有料老人ホームなどで実習を行っている。2020年度は老人ホームの利用者のみなさんとオンラインレクリエーションを試みているとのことである。  高等部就業技術科の授業の最後は、「事務・情報処理の学習」と「職業」の進路学習の授業であった。「事務・情報処理の学習」は就業技術科全コースの生徒が学ぶようになっており、データ入力や文書作成に加え、スキャナーによるPDF化作業、学校のホームページのブログの更新なども学んでいるそうである。受注による印刷製本も学習している。また、部活動の科学・パソコン部では、プログラミングを学ぶ。「職業」の授業では、3年生がこれからの採用選考について学んでおり、求人票から応募、学校推薦を受けて採用選考という道筋を復習しながら、いまの自分がどこの位置にいるのかを確認していた。2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、採用選考開始が、例年より1カ月遅れの10月16日になったことも生徒には身近な話題となっていた。  また、肢体不自由教育部門高等部の授業では、特別支援学校で行われる「自立活動」の授業を見学できた。上下肢訓練室で、一人ひとりの身体に応じたていねいな機能訓練が行われていた。また、高等部生徒は、自らの「進路新聞」をパソコンで作成しており、「一人で料理をしてみたい」、「スポーツを続けたい」などの将来の夢を新聞にしていた。近年、障害のある人の情報リテラシーが課題となっていることから、これらの情報やパソコンの授業がすべての生徒に行われていることは、長い成人期における将来の能力開発の土台となると思われる。  見学を終えて、最後に校長先生、副校長先生と話し合った。「どの授業でも、生徒と先生方との穏やかなコミュニケーションが見られ、学校全体が優しい雰囲気である」という感想を述べたところ、学校経営方針として「主障害はもとより、発達障害やメンタル系の障害、愛着障害など児童・生徒一人ひとりの障害特性をふまえた指導を充実させる」、「児童・生徒から相談されやすい雰囲気を醸成するとともに、教職員の相談技術向上に取り組む」ことを大事にしているとお聞きした。ここには、近年注目され始めたWHO(世界保健機関)が掲げる「ライフスキル」(※1)の教育と学びが意識されており、児童生徒が自己のよさに気づき、自己理解を深める環境を整えていることがうかがえた。 一人ひとりの才能を活かした障害者雇用を目ざして  「株式会社パソナハートフル」は、人材派遣のリーディングカンパニーである「株式会社パソナグループ」(東京都)の特例子会社である。親会社であるパソナグループは人材派遣企業であり、雇用している派遣スタッフは派遣先企業で働くが、同社の常用雇用労働者数に含まれるため、多くの障害者の雇用が必要となる。1992年に障害者のアート分野における才能の発掘・育成や職域の拡大を目的に「アート村プロジェクト」を発足し、2003年にパソナハートフルを設立した。  同社は「才能に障害はない」というコンセプトのもと、障害のある人のそれぞれの強みに着目し、特別支援学校と連携しながら、採用を進めてきた。障害のある人が学校で学び、得意とする作業や才能を活かし、絵画制作に従事する「アート村」、縫製などによる手作り商品の企画・製作を行う「アート村工房」(全国4カ所)と「アート村ショップ」(全国3カ所)、農業による新たな就労の場を提供する「ゆめファーム」(全国3カ所、運営受託管理1カ所を含む)、無添加のパン・クッキー・パウンドケーキを製造販売する「パン工房」(全国3カ所)、パソナグループ各社から印刷製本、郵便物の受発送、パソコンによる社内文書作成などの業務を請け負う「オフィス業務」を行っている。  障害のある従業員数は、281人(身体障害59人、知的障害158人、精神障害64人・2020年10月現在)である。近年、特別支援学校や就労支援機関などでの事務分野での職業訓練が進み、オフィスでの職域に広がりがみられるため、「オフィス業務」では、「印刷業務チーム」、「生産管理・受発注チーム」、「文具管理チーム」、「メール室」などのチームに分かれている。  また、パソナハートフルは東京駅そばの大手町にあるが、パソナグループの拠点が新丸の内ビルディングにもあるため、パソナハートフルの社員は大手町と丸の内に分かれて勤務している。  パソナハートフルの特徴は、設立当初より特別支援学校との連携により、障害の特性を個性や強みとしてとらえ、リフレーミング(※2)をすることで社内の環境を整えて雇用をしてきたことである。現在では、管理統括部の社員が東京都教育委員会から「就労支援アドバイザー」を委嘱され、都内特別支援学校でビジネスマナー講座の授業や授業改善の助言などを行いながら、学校との連携をより深めている。さらには雇用した卒業生をメンターとして、出身校の授業などに派遣している点も優れた実践である。  取材当日は大手町にある管理統括部を訪ね、副社長の白岩(しろいわ)忠道(ただみち)さんと管理統括部の加藤(かとう)美侑(みゆう)さん、青木(あおき)実乃里(みのり)さんから会社概要についての説明をお聞きした。その後に、志村学園の卒業生が多く働いていることから、2019年度まで同校の進路指導主任をしていた小澤(おざわ)信幸(のぶゆき)先生にも加わっていただき、雇用されているみなさんの取材をさせていただいた。  石綿(いしわた)洵哉(じゅんや)さんは入社2年目、志村学園4期生だ。「文具管理チーム」の一員として、親会社の文具類の発注から納品までを担当しており、請求書の発送も行っている。また、パン販売から容器の洗浄も行い、後輩の指導をすることもある。サッカーが得意な石綿さんは、知的障害者の全日本メンバーで、ミッドフィルダーとして活躍するとともに、現在はキャプテンも務めている。アスリートとしての活動も大事に続けているという。  橋(たかはし)璃乃(りり)さんは入社1年目、志村学園5期生だ。納品書のパソコン入力をし、複合機で出力。臨機応変に業務に対応できる。  大前(おおまえ)星伍(しょうご)さんは入社3年目(中途入社)、志村学園1期生。漢字検定2級の実力があり、アンケートや研修資料などの原稿を校正している。  田中(たなか)雅人(まさと)さんは入社3年目、志村学園3期生である。「メール室」で、グループ会社の郵便物や宅配便の発送を受け、届いた荷物の配達を行っている。バスケットボールが得意である。  五十嵐(いがらし)彩夏(あやか)さんも入社3年目、志村学園3期生だ。新丸の内ビルディングで、アート村ショップを担当している。接客から会計までをこなす。  西塚(にしづか)広一(こういち)さんは入社2年目、志村学園4期生。広報を担当し、新聞や雑誌のファイリングを新丸の内ビルディングで行っている。  岡田(おかだ)航(こう)さんは入社2年目、志村学園4期生。総務チームの一員であり、この日は応援で、新丸の内ビルディングのパン工房でヘーゼルショコラの個包装を行っていた。個包装には熟練した技術が必要で、包装紙が破れないようにひねる方向がポイントとのこと。  梶原(かじわら)大輝(だいき)さんは入社2年目、志村学園4期生。捺印関係の書類のチェックと承認の業務をしている。PDF化の業務も行う。新しい業務として契約書の入力も担当し始めた。  猪熊(いのくま)祐希(ゆうき)さんは入社1年目、志村学園5期生。緊急事態宣言時は自宅でリモート勤務をした。6月からアート村工房のショップで働いている。  山本(やまもと)一真(かずま)さんは入社5年目、志村学園1期生。パソコンを2台並べてデータの照合作業をしている。パソコンが得意で、営業部の受注作業を行っている。  パソナハートフルが志村学園の卒業生をこれほど雇用できるのは、在学中から職業教育にかかわり、生徒の能力開発へとつなげることができているからである。体験学習と自己選択をくり返し、生徒の意思で入社してくる。入社すると一定期間はジョブローテーションを行い、配属先が決まる。自分の仕事が変わることは、自分のできることが増えることであり、会社全体の効率化とコスト意識にもつながる。長年かけてつくりあげてきた企業と学校の連携の形がここにはある。 公務部門における雇用と学校との連携  経済産業省の施設機関である「経済産業研修所」は、東京都東村山市の閑静な住宅街の一角にあった。迎えていただいたのは、管理課長の中尾(なかお)直子(なおこ)さん、管理課の障害者指導員(※3)の廣島(ひろしま)朋子(ともこ)さん、経済産業省大臣官房秘書課課長補佐の松村(まつむら)栄作(えいさく)さん、同じく大臣官房秘書課の障害者職場定着アドバイザーの市村(いちむら)たづ子さんであった。  すでに各省庁およびその関係機関では、障害者雇用が進められており、経済産業省と経済産業研修所でも障害者が雇用されている。なかでも、今回の経済産業省の採用は、高卒求人での特別支援学校からの雇用が特徴的である。いままでの取材でも述べてきたように、障害のある人のなかには就業体験があることで働くことへの理解が深まり、雇用関係を結ぶという双方にとって有効な機会となる場合も多い。2020年度に同研修所で採用された加藤(かとう)颯真(そうま)さん(志村学園5期生)も同様に就業体験を経て就職した。会計年度任用非常勤職員としての採用であるが、これから長く働く若い世代の人たちにとっては、キャリアアップの機会として考えられる。  民間企業も同様であるが、公務部門における採用後の研修は、職制上も社会の変化に対応するうえでも重要な役割を持つ。国民へのサービスの質を担保するために必要だからである。2020年度は新型コロナウイルス感染防止の新しい生活様式が求められるなかで、オンライン方式になった研修も多い。宿泊をともなわず参加しやすい半面、情報量の制約や個のネットワークをつくりにくいなど、課題も見えてきているのではないだろうか。経済産業研修所でもご苦労が多いそうである。  加藤さんについても採用当初は、週3日ほどはパソコンとスカイプによるテレワーク、週2日ほどは出勤しての作業とした。また、テレワークに向けては前日に課題を出すなどの配慮をして取り組んでもらった。テレワークをするためには、メールが必要であり、そのスキルとともに情報管理の重要性についての理解も必要となることから、日報やファイルについてもていねいに説明したそうである。  こうした配慮を加藤さんに合わせてできたのは、障害者指導員の廣島さんを雇用したことが大きい。廣島さんを通して、事務室の直属の上司や責任者である課長の中尾さんとの情報共有ができ、加藤さんへの周囲の理解が深まったと考えられる。出勤時はウォームアップの時間を取り、体調管理をするための報告機会を設けており、きめ細かな配慮をしている。事務室の加藤さんのデスクにはパーテーションが設置され、業務に集中できるように配慮されていた。  現在の業務は、午前中は会議室や講師控室などの清掃と消毒作業を行っている。また、約190室ある宿泊棟に関しては、ベッドとシーツや室内に置かれている扇風機、LANケーブルの清掃と消毒を行っている。椅子などは専用の機器を購入し、スチーム消毒をするようになった。清掃後は事務室内にあるコピー機の用紙の補充・在庫管理などのほか、書類のシュレッダーおよびごみの分別などの作業を行っている。  公務部門における採用は、民間企業と異なり、就労支援にかかわる制度やサービスが限定的となるむずかしさがある。そこで、外部から障害者指導員や職場定着アドバイザーなどの人材を採用することが有効となる。  経済産業省本省でも新規学卒の2人を採用している。在学中からの相互訪問や就業体験で、職場の理解促進と安心して働く環境を一緒に整えられる特別支援学校は、就労支援機関でもある。今回の雇用事例が今後、多くの公務部門における好事例となることを願っている。 おわりに  新型コロナウイルスの感染防止により、障害者雇用のあり方にも変化が見られ始めている。今回の取材を通して、こうした状況をネガティブにとらえるのではなく、むしろ新たな課題解決に向けて、新しい障害者雇用のあり方や障害のある当事者およびその雇用支援をする関係者の新たな学びを構築する機会としてとらえ直すことが求められているように思う。それぞれの取材先のみなさまには、むずかしい状況のなか快く取材を受けていただき、ご協力いただいたことに重ねて感謝申し上げたい。 ※1:ライフスキル:日常に起こるさまざまな問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するためのスキルと位置づけられ、WHOが1994年に、各国の学校の教育課程にその修得を導入することを提案した ※2:リフレーミング:ものごとを見る枠組み(フレーム)を外し、違う枠組みで見直し新たな視点を持たせること ※3:障害者指導員:障害者の業務に関して相談、指導を行う職員。障害者への指導経験がある人を採用している 写真のキャプション 東京都立志村学園 諏訪校長先生をはじめ、就業技術科や肢体不自由教育部門の先生方にお話をうかがった 介護アシストスーツを装着し、荷物の上げ下ろしを体験する生徒(中央) 生徒に手本を見せる特別専門講師の小野博也さん 発注書の確認作業を行う石綿洵哉さん パソナハートフルの障害者雇用の取組みについて説明する副社長の白岩忠道さん(左から3人目) 新丸の内ビルディングでショップ担当の五十嵐彩夏さん 田中雅人さんは、メール室で郵便物の発送作業を行っていた 漢字検定2級を活かして校正作業に活躍する大前星伍さん 橋璃乃さんは、複合機で納品書を出力していた 書類のチェックを担当する梶原大輝さん(左)に近況をたずねる小澤信幸先生 この日は応援でヘーゼルショコラの個包装を担当していた岡田航さん 西塚広一さんは、広報資料のファイリングを担当している コピー機に用紙を補充する加藤颯真さん 経済産業研修所 経済産業省での障害者雇用についてお話をうかがう 動画とリストの照合作業にあたる山本一真さん 猪熊祐希さんは、大手町のパソナ本部ビル「JOB HUB SQUARE」のショップで働く 【P26-27】 クローズアップ 第3回 活躍する障害者職業生活相談員  「障害者職業生活相談員」の活躍を紹介するシリーズ。第3回は、在籍する障害者のうち、発達障害の割合が高い部署で働く相談員の方に、発達障害のある社員とのかかわり方や、障害のある社員本人も気づいていない可能性を見出し、それを伸ばして業務に活かすまでのサポートについて、うかがいました。 職場のサポート体制  株式会社大京(だいきょう)には、同社および子会社の業務を支援する「ワークサポート課」があり、障害のある社員約50人と、サポート担当者6人が在籍しています。サポート担当者のうち、現在は4人が障害者職業生活相談員(以下、「相談員」)の資格を取得しており、ほかの2人も順次取得する予定です。なかでも、今回お話をうかがった青野康子さんは相談員の資格に加えて、企業在籍型ジョブコーチの資格も持つリーダー的存在です。  ワークサポート課は2011(平成23)年10月に、障害者の能力を活かしながら他部署の業務を支援するために発足しました。当初から発達障害のある社員が多く、いまは障害のある社員の約4割を占めています。 理由を伝え、納得すれば行動が変わる  発達障害のある社員Aさんには、仕事中に「顔にぶつかるくらいの勢いでペンを振る」、「目を強くこする」、「爪をかむ」などの行動が現れることがありました。  「これは、あくまでAさんの特性ですが、話をよく聞くと、必ず仕事以外のストレスや、眠れなかった、など何か原因があります。Aさん自身も困るし、周囲も気が散って仕事ができません。特に当社ではパソコンを共有しており、『爪かみ』があると、感染症のリスクがあることも説明し、どうしたらよいか一緒に考えました」  大切なことは、行動をコントロールする必要性について、必ず理由を含めて説明し納得してもらうことと、青野さんはいいます。  「『普通、こういうときにはこうすべきでしょう』といってしまいがちですが、じつは『普通』が一番むずかしいのです。『なぜならば』という根拠を、何も伝えていないからです」  青野さんは、くり返し指導し、その都度Aさんにメモを取ってもらいましたが、Aさんは声かけだけではなかなか自分の癖に気づけなかったそうです。そこで、青野さんは支援者に相談し、Aさんの承諾も得たうえで、「癖が出たら気づくように、Aさんの肩をトントンとタッチする」と約束事を決め、その通りに実行しました。  「しばらくすると、私が席から立ち上がっただけで、癖が出ていることに気づいてやめるようになりました。癖をなくすことはできませんが、納得すれば、コントロールすることはできます」 支援のポイント  発達障害のある社員の支援で、青野さんは次のようなことを心がけています。 1 職場のマナーの支援  「あいさつ、身だしなみ、物の受け渡しの動作などで目についたことがあれば、その都度、『そのときに相手はこう思う』ということを伝え、気づいてもらいます。人に迷惑をかけないためだけでなく、いままで本人もたくさん嫌な思いをしてきたと思うので、今後、そういうことがないようにしていってほしいという願いがあります」 2 注意は三段階で  「マナーは忘れる人もいますし、一度で身につくものではないので、@個別に注意、A勉強会の場などで一般論として伝える、というステップをふみます。それでもできなければ、Bこれまでの2回の指導場面をふり返ったうえで、なぜできないのかを考えてもらうことにしています」 3 感情的にならずに指導  「マナーのほか、作業のミスについても、ほかの人にも共有して役立ててほしい内容の場合は、みんなの前で伝えます。大勢いる場で指導するもう一つの大きな理由は、みんなに見られていることで、相談員自身が知らず知らずのうちに感情的になってしまうのを防ぐためです」 得意なことを見つけ、業務に活かす  発達障害のある社員は、苦手なことがある一方、仕事においては目を見張るようなスキルを発揮する人もいます。「日報を書くのが苦手でも、他部署で一度打ち合わせをしただけで、イラスト入りのわかりやすいマニュアル(図)をつくることができる人がいます。新しいことにチャレンジすると、失敗はあると思いますが、本人でさえ気づいていない得意分野を発見することもあります。こうした得意分野を業務につなげることが相談員の使命です」と、青野さんはいいます。 相談員としてのやりがいと自信の源  「生活のなかで必要な手続きができず、できるまで何度も細かく助言をしたこともありました。ですが、アドバイスを続けていたらその通りにしてくれて、社員からも『青野さんにいわれた通りにしたら、できました』といってもらえると達成感があります」と、青野さん。  これまで障害者職業生活相談員資格認定講習のほか、精神・発達障害者しごとサポーター養成講座や、ジョブコーチ(職場適応援助者)養成研修などを受け、他社の事例に触れることはとても勉強になったそうです。また、そういった積み重ねがなければ、自信を持って1対1で障害のある社員と向き合えなかったと、ふり返ります。  「いまでも、支援で迷うことがある場合は、不安を残したままでは動かず、支援機関の助言などを受けてから、支援するようにしています。石橋を叩いたうえで、しっかりと渡りたいです」  青野さんは笑顔で話してくれました。 【取材先プロフィール】 株式会社大京 (東京都渋谷区) ◆業種 不動産開発・販売、都市開発など ◆従業員数 (2020年11月1日現在) 591人のうち、障害者は51人(精神障害〈発達障害〉19人、身体障害13人、知的障害19人) ◆障害者職業生活相談員数 4人 図 障害のある社員が作成した「請求書並べ替え」マニュアル (提供:株式会社大京) 写真のキャプション 相談員の青野康子さん 個々の業務に、真剣に取り組む社員のみなさん 【P28-29】 研究開発レポート 発達障害者のワークシステム・サポートプログラム 問題解決技能トレーニングの改良 障害者職業総合センター職業センター  障害者職業総合センター職業センターでは、発達障害のある方を対象としたワークシステム・サポートプログラム」を実施しながら、発達障害の特性に応じたきめ細かな支援を行うための技法開発・改良を行っています。開発した技法の一つである「問題解決技能トレーニング」は、発達障害に起因する職業上の課題について、受講者自らが問題の発生状況や原因を把握し、現実的な問題解決策を選択できるようにすることを目的としたトレーニングです。トレーニングの詳細は、平成24年度支援マニュアルbW「発達障害者のための問題解決技能トレーニング」としてとりまとめ、全国の支援機関等に配布するなど、その普及に努めてきました。その結果、各地域障害者職業センターをはじめとする障害者就労支援機関での活用が浸透しつつありますが、支援マニュアルでは、集団場面(グループワーク)における実施方法を中心に紹介しているため、支援現場からは一対一の個別相談でも活用できるとよいという要望をいただくことがありました。そのため問題解決技能トレーニングを個別相談場面で活用できるよう改良を行い、実践報告書34「問題解決技能トレーニングの改良」としてとりまとめましたので、成果物の概要について紹介します。 【個別相談モデルの特徴】 ア 問題解決技能トレーニングの枠組み  個別相談モデル、集団場面での実施、どちらにおいても問題解決技能の枠組みは、米国で開発された発達障害者のためのSOCCSS(ソックス)法を援用しています。SOCCSS法は、状況把握、選択肢、結果予測、選択判断、段取り、事前試行の枠組みで構成されており(図)、社会的場面の因果関係の理解や、問題解決スキルの育成の手助けができるようになっています。 イ個別相談モデルにおけるSOCCSS法の援用  ほかの問題解決方法の中には、解決のイメージ(目標)を立てることで解決に向けた行動をうながすものもあります。集団場面で実施する問題解決技能トレーニングでも、複数の受講者がいて、解決する方向性を統一しないと議論が噛み合わなくなるため、テーマとする問題に対して解決のイメージや問題の原因を定める形式にしています。しかし、個別相談場面で対応する発達障害者のなかには解決のイメージを設定したり、問題の原因を検討することがむずかしい方も少なくありません。本来、SOCCSS法は、解決のイメージや問題の原因を事前に特定しなくても、起こった問題場面をもとに支援者とともに状況を分析しながら解決に向けて行動できる枠組みとなっています。個別相談モデルでは、より本来のSOCCSS法に近い形での活用を基本としています。 【実施方法の概要】 ア 導入  対象者と個別相談のテーマを共有し、SOCCSS法という枠組みを用いて相談を進めていくことを説明します。 イ 問題の明確化(状況の把握)  自然な会話の流れを意識しながら問題に関する情報(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ)を確認します。 ウ ブレインストーミング(選択肢)  明確化した問題に対して選択肢を出す段階です。集団場面とは違い他者の意見を参考にできないため、選択肢が出にくい場合は、対象者が過去に実際に行った方法を聞いて解決策のヒントにしたり、支援者が選択肢を提案するなどの工夫が必要です。 エ 解決策の決定 @結果予測・選択判断  選択肢を実行した場合、どのような結果になるかを予測し、効果と現実性の観点から順位をつけて実際に取り組む選択肢を選ぶ段階です。対象者の状況に応じて結果の予測や選択肢の評価について支援者の見解を伝えます。 A段取り:行動プラン  選んだ選択肢を実行する計画を立てる段階です。フローチャート形式で作成するなど計画の流れや方法をわかりやすくする工夫を入れます。 B事前試行の方法  考えた段取りに対して、さまざまな方法を用いて事前に試してもらう段階です。 C事前試行からの検討事項  事前試行の結果、気づいたことやわかったことを確認します。選択肢や段取りを修正・変更する必要があるか、別のよりよい方法があるかなどを検討します。 オ 実際の施行結果・その後の経過  選択肢の実行結果を確認します。問題が解決した場合はここで終了となり、解決しなかった場合は、問題の明確化の段階に戻ります。 【個別相談でSOCCSS法を活用する際のポイント】 ア 対象者の納得性・自発性の促し方  選択肢や段取りを考える過程で、対象者の出した意見を取り入れることが納得性や自発性の向上につながります。 イ 選択肢を出せない対象者への対応  基本的に支援者が選択肢を提案する形になりますが、対象者の障害特性や知識、経験などをふまえた実現可能性の高い選択肢を提案することが重要です。 ウ 解決策案を実行できない対象者への対応  段取りを細分化する、解決策の難易度を下げる、実行できないことをテーマにSOCCSS法を実施するなどの方法があります。 ア 注意欠如・多動性障害のある方への適用  思いついた選択肢をすぐに実行したい、すべての選択肢を実行したいという反応に対し、選択肢の効果と現実性を検討することで客観的に選択肢を選ぶことができました。また、選択肢を実行する前に頭の中でシミュレーションすることで、実行上の注意点や効果が出にくい状況を事前に把握することができ、よりよい解決策の発見へとつながりました。 イ 自閉症スペクトラム障害のある方への適用  選択肢は独力で出せるものの結果予測や選択肢を継続的に実行できそうか否かについてはイメージしにくかったり、具体的な段取りが考えられていませんでした。そこで、結果予測や段取りのステップにおいて支援者が質問や助言を行ったり、事前試行のステップにおいて自宅でのシミュレーションと家族への相談を行うことで、スムーズな解決策の実行と問題解決が実現しました。また、相談を通じて、「選択肢を選んだ結果をイメージしにくい→思いついた選択肢を次々に試す→うまくいかない状況が続く」という自身の問題解決行動パターンに気づくことができました。 【最後に】  問題解決の取組みは必ずしも一回で成功するとはかぎりません。しかし、戦略的な枠組みに沿って試行錯誤を重ねることで解決に近づけるという体験は、失敗に対する落ち込みや恐れの軽減にもつながると期待されます。本実践報告書が、就労支援の充実ひいては支援対象者の粘り強い問題解決の取組みにつながれば幸いです。  実践報告書34「問題解決技能トレーニングの改良」は、障害者職業総合センター(NIVR)のホームページに掲載しています(※1)。また、冊子の配付を希望される場合は、下記にご連絡ください(※2)。 ※1 「実践報告書No.34」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/practice34.htmlよりダウンロードできます nivr 実践 34 検索 ※2 障害者職業総合センター職業センターTEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 東京 「ヘルプマーク」多言語でも広報  東京都は、義足や人工関節の使用者、内部障害や難病のある人、妊娠初期の女性など、援助や配慮を必要としている人たちを対象に配布している「ヘルプマーク」の普及推進活動として、多言語版(英語、中国語、韓国語)のホームページとチラシを制作した。ホームページでは、ヘルプマークの概要やヘルプマークを身につけた人を見かけたときの対応をわかりやすく説明。チラシはホームページから自由にダウンロードできる。 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/helpmarkforcompany/pr/2020/202010.html 山梨 「農福連携」県がブランド化  山梨県は、農家と障害者がともに働く「農福連携」商品のブランドづくりを進めるために、専用のロゴマークを決めた。マークは、「農福」と書かれた文字のほか、無限の可能性がある農業と福祉をイメージしたクローバーと富士山がデザインされている。農福連携に取り組む福祉施設などにロゴマークのステッカーを配り、販路拡大などを図ってもらう。 岐阜 オンラインで「対面読書サービス」  岐阜県図書館(岐阜市)は、コロナ禍(か)で休止していた視覚障害者向けの「対面読書サービス」を、新たにビデオ通話アプリ「Zoom」を活用したオンラインで再開した。利用者が図書館に来館することなく自宅にいながら図書の音訳を聴くことができ、双方向のやり取りもできる。  また同図書館では「バリアフリーコーナー」も新設し、視覚障害者のほか活字が読みにくい発達障害者、高齢者、日本語の読書に困難のある人たちに幅広くサービスを提供している。絵や音で楽しめる本や拡大読書器、活字文字読み上げ装置などの読書支援ツールも揃えた。 鹿児島 「農福連携」サイトで農作物や工芸品販売  鹿児島県は、県内の障害者が生産にかかわった農作物や工芸品をインターネット販売するウェブサイト「農福オンラインマルシェ鹿児島」を開設した。障害者の就業機会確保や農業のにない手不足の解消、収入増などを目ざす。  例年は年2回、JR鹿児島中央駅前の広場でマルシェを開催していたが、今回は新型コロナウイルス感染防止のため、初のオンライン販売となった。県内の就労支援センターや障害者施設など24施設が参加し、白菜やサツマイモなど旬の野菜類や財布などを販売。利用者は会員登録なしで購入できる。「一般社団法人かごしま障がい者共同受注センター」がオンラインショップを運営。2021(令和3)年3月末まで。 https://noufuku-kago.shop-pro.jp 生活情報 東京 障害者も楽しめるスポーツパーク  「三井不動産レジデンシャル株式会社」(中央区)と「ナイキジャパングループ合同会社」(港区)は、子どもから高齢者、障害者まで多くの人が楽しめるインクルーシブデザインをコンセプトとしたスポーツパーク「TOKYO SPORT PLAYGROUND SPORT×ART」(江東区)をオープンした。入場は予約制で、無料。2021年9月20日(月・祝)までの期間限定施設となる。  1周280mの陸上トラックのほか、バスケットボールコートやスケートボード場、車いすのまま乗降して楽しめる遊具もある。トイレはすべて多目的トイレで、車いすで入れるシャワールームも整備。営業時間は平日午後3時〜午後9時、土日祝日は午前10時〜午後9時。 https://tokyo-sp.com/ 東京 音声デジタルウオッチ刷新  「セイコーウオッチ株式会社」(中央区)は、視覚障害者に向けた音声デジタルウオッチを、インクルーシブデザインに沿って、11年ぶりに刷新した。  今回は視覚障害者団体へのヒアリングを実施し、スポーツ時にも使いやすいモデルを加えた。音声デジタルウオッチは、ボタンを押すことで音声が流れて時刻がわかるほか、アラーム時刻、ストップウオッチの経過時間なども音声で通知。時刻修正を音声で案内する機能も備わっている。4時の位置に溝を設けてスピークボタンを判別しやすくし、それ以外のボタンにはガードを設けて誤作動を防止する仕様に改良した。価格は1万7千円(税別)。 東京 ANAとJALが接遇ガイドライン策定  「全日本空輸株式会社(ANA)」(港区)と「日本航空株式会社(JAL)」(品川区)は、高齢者や障害者など配慮を必要とする旅行者に向けた「新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた接遇ガイドライン」を、共同で策定した。  具体的には、車いすの移乗サポートや手引き誘導など、高齢者や障害者などの身体に触れる必要のある場合は、手指消毒・除菌を徹底するとともに、飛沫感染防止のため正面を避けて斜め前や横から案内を行う。また、視覚障害や聴覚障害などのため、周囲の感染対策状況がわからない場合やアナウンスの聞き取りがむずかしい場合には、要望に応じた適切な案内と情報提供を行うほか、介助支援ツールなどを活用した円滑なコミュニケーションを目ざす。 福岡 「対話できる」エコバッグ  福岡県久留米市在住で、聴覚障害のある漫画家の平本(ひらもと)龍之介(りゅうのすけ)さんが、耳の不自由な人の買い物を手助けするバッグ「エココミ」を考案し、販売を始めた。  店員の口元がマスクで見えなくても、簡単に意思表示できるように「ここで食べます」、「レシートください」、「(ポイントカードを)つかいます」など17の言葉がイラストつきで描かれている。エコバッグとコミュニケーションボードを組み合わせて「エココミ」と名づけられた。  サイズは縦36p×横29p(持ち手部分のぞく)、マチ幅19p。白が800円(税込)、黒・青が各1000円(税込)。問合せは平本さんのウェブサイトへ。 https://www.hiramotoryunosuke.com/ecocomi 働く 千葉 ドングリの焼き菓子を開発  国史跡として知られる加曽利(かそり)貝塚(千葉市)の名産品として、新しくクッキーとボーロが誕生し販売が始まった。原料には縄文人の主食とされていたドングリが使われている。通所型の市内福祉施設11カ所が連携し、ドングリ拾いや製造を担当した。  「加曽利貝塚ともに生きるプロジェクト」が福祉関係者に声をかけ2019年秋、同貝塚公園など市内の公園で障害者らがドングリを集めた。クッキーの製造は福祉作業所「おおぞら園」(千葉市)が担当。  クッキーとボーロ(各税込400円)は、市内のカフェなど7店舗や市美術館のショップで販売。問合せはメールで。 info@kasorikaizuka.com 鹿児島 障害者の就労支援に農福連携JAS取得  障害者就労継続支援事業所の運営や生活困窮者の就労準備支援を手がける「株式会社誠晃(せいこう)」(鹿児島市)が県内初の「ノウフクJAS」を取得し、JASマークを表示した農産物の出荷を開始した。  ノウフクJASは日本農林規格(JAS)の一つで、「農福連携」を社会に浸透させることを目ざし障害者が農産物や加工品の生産にたずさわったことを証明するマーク。基準を満たした出荷者は、JASマークのほか、ノウフクの文字と説明を商品に表示できる。  同社の就労継続支援A型事業所「障害者就労センターみなよし」(鹿児島市)ではビニールハウスでキクラゲやシイタケを栽培するほか、農地を借り受けてコメやミカンを生産。スーパーや直売所に出荷する。 本紹介『大志とともに自閉症の息子 就職までの道のり』  元青森県庁職員で障害者関連団体役員の貝吹(かいぶき)信一(しんいち)さんが、『大志とともに自閉症の息子 就職までの道のり』(風詠社刊)を出版した。自閉症の息子の誕生から就職まで、24年間の親子の歩みを、地元新聞に寄稿連載したものをまとめた。「自閉症ってなに? どうやって育てたらいいの?」、「どうしたら就職できるのか」などのテーマで、成長とともに子どもの自立に向けた訓練や挑戦を詳細に綴っている。四六判192ページ、1500円(税別)。 2020年度地方アビリンピック開催予定 1月〜2月 東京都、石川県、京都府、広島県、香川県、佐賀県 *部門ごとに開催地・日時が分かれて  いる県もあります *東京都、石川県、京都府、広島県、香川県、佐賀県以外の県は開催終了(開催中止含む) 地方アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 写真のキャプション 東京都 石川県 京都府 広島県 香川県 佐賀県 【P32】 掲示板 障害者雇用の月刊誌「働く広場」がデジタルブックでいつでもお読みいただけます!  本誌は当機構ホームページで、デジタルブックとしても公開しており、いつでも無料でお読みいただけます(※)。  また、最新号は毎月5日ごろに当機構ホームページに掲載されます。掲載をお知らせするメール配信サービスもございますのであわせてご利用ください。 JEED 働く広場 検索 自由に拡大できて便利! 読みたいページにすぐ飛べる! ※2016年4月号〜最新号まで掲載しています 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 次号予告 ●特集  2020年11月13日(金)〜15日(日)に愛知県常滑市で開催された「第40回全国アビリンピック」を取材。全国から出場した選手たちの活躍の様子をレポートします。 ●この人を訪ねて  これまで多くの社員がアビリンピックに出場している愛知玉野情報システム株式会社(愛知県)の橋本忠雄さんに、障害者雇用の取組みや、アビリンピックでの社員の活躍についてうかがいます。 ●編集委員が行く  武田牧子編集委員が、コロナ禍(か)における障害者雇用の現状と課題をテーマにオンライン座談会を開催。全国各地の障害者就業・生活支援センターとつなぎ、各センター長にお話をうかがいます。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 訂正とお詫び  2020年12月号「次号予告」(32ページ)において、内容に誤りがありました。「●職場ルポ サントリーグループの特例子会社サントリービジネスシステム株式会社(東京都)を訪問。」と記載しておりましたが、正しくは「●職場ルポ サントリービジネスシステム株式会社(東京都)を訪問。」です。  関係者のみなさまにはご迷惑をおかけしましたことを、お詫び申し上げます。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝/編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ※令和3年4月1日から、メールアドレスはhiroba@jeed.go.jpに変更となります ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS 館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 定価(本体価格129円+税) 送料別 令和2年12月25日発行 無断転載を禁ずる 1月号 ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu 新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【P33】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2020年12月25日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21 ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-front U 7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 事業主の方へ 指導者(障害のある方を指導する方)育成に役立つ 研修受講者募集 令和3年度コースは3月3日(水)より受付開始!!  職業能力開発総合大学校では、職業訓練や企業において教育・指導にたずさわる方々を対象とした研修を実施しています。実際に教育訓練を担当される方が指導するにあたって必要な知識および技能・技術を習得するための研修をはじめ、精神・発達障害への配慮や支援に役立つ研修もありますので、ぜひご利用ください。 【研修コースの例】  「一般校の指導員のための精神・発達障害に配慮した支援と対応」として、4部構成(「理解と接し方編」、「訓練の支援と支援体制編」、「メンタルの支援編」、「就職活動の支援編」)の研修コースを用意しており、段階的に受講することができます。 【研修期間・研修会場・受講料の例】 ・研修期間 1コース 2〜3日 ・研修会場 職業能力開発総合大学校など ・受講料 1コース 6,000円〜 ※研修期間、研修会場および受講料は、コースにより異なりますので、詳細は職業能力開発総合大学校研修部までお問い合わせください。 研修コースの内容や申込方法などの詳細はホームページで! 職業大研修 検索 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業能力開発総合大学校 研修部 〒187-0035 東京都小平市小川西町2-32-1 TEL:042-346-7234 FAX:042-346-7478 https://www.uitec.jeed.go.jp/training/index.html 1月号 令和2年12月25日発行 通巻519号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)