【表紙】 令和3年1月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第520号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2021 2 No.520 特集 第40回 全国アビリンピック この人を訪ねて アビリンピックの実績、社内業務の拡大にも 愛知玉野情報システム株式会社(愛知県) 総務課主幹 橋本忠雄さん 編集委員が行く 各地の障害者就業・生活支援センターから見た、コロナ禍の障害者雇用 「ずーっと車屋さんではたらく」沖縄県・翁長(おなが)光舞(こう)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 2月号 【巻頭・巻末】 グラビア 第40回 全国アビリンピック 2020年11月13日(金)〜15日(日) 写真:官野貴・岩尾克治 写真のキャプション 前回に引き続き、全国アビリンピックと技能五輪全国大会が同時開催された 会場となった愛知県常滑市の愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo) 会場入り口では、手指の消毒や検温を実施 和田慶宏 当機構理事長の挨拶 会式は特設フロアで行われ、WEB配信された 技能五輪全国大会愛知県代表の水谷(みずたに)恭良(ちから)さん(左)と、全国アビリンピック愛知県代表の徳岡(とくおか)遥(はるか)さん(右)による選手宣誓 「電子機器組立」 「コンピュータプログラミング」 「フラワーアレンジメント」 「歯科技工」 「縫製」 「表計算」 6年ぶりに復活した「パソコン組立」 「家具」 「ビルクリーニング」 「喫茶サービス」 「DTP」 「義肢」 「機械CAD」 「データベース」 「ワード・プロセッサ」 14年ぶりの実施となった「写真撮影」 「ネイル施術」 「洋裁」 「製品パッキング」 「建築CAD」 「パソコン操作」 「オフィスアシスタント」 「ホームページ」 「パソコンデータ入力」 「木工」 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2021年2月号 NO.520 特集 第40回 全国アビリンピック 障害のある方々の職業能力の向上を図るとともに、企業や一般の方々に理解と認識を深めてもらい、雇用の促進を図ることを目的とした「第40回全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)」が、2020年11月13日(金)〜15日(日)に愛知県で開催されました。その様子をお届けします。 グラビア−−巻頭・巻末 写真:官野 貴・岩尾克治 アビリンピックルポ−−4 文:豊浦美紀/写真:官野 貴・岩尾克治 入賞者一覧−−12 この人を訪ねて−−14 アビリンピックの実績、社内業務の拡大にも 愛知玉野情報システム株式会社(愛知県) 総務課主幹 橋本忠雄さん クローズアップ−−16 活躍する障害者職業生活相談員 最終回 JEEDインフォメーション−−20 令和3年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ エッセイ−−21 あなたはどう思いますか?最終回 香川大学 教育学部 教授 坂井 聡 編集委員が行く−−22 各地の障害者就業・生活支援センターから見た、コロナ禍の障害者雇用 編集委員 武田牧子 ニュースファイル−−28 掲示板・次号予告−−30 読者の声 ※「心のアート」、「省庁だより」、「研究開発レポート」は休載します 表紙絵の説明 「車の名前を覚えることと、家族とドライブすることが好きなので、大きくなったら車屋さんで働きたいと思い、この絵を描きました。すらすらと一気に描きあげられました。さわやかな表情のある作品に仕上がったと思います。今回、このような全国的な賞をもらって、とても驚いています」 (令和2年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 中学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P4-11】 特集 第40回 全国アビリンピック 11月13・14・15日 「第40回全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)」が、2020(令和2)年11月13日(金)〜15日(日)、前大会に引き続き、技能五輪全国大会とともに愛知県常滑(とこなめ)市の愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo(アイチ スカイ エキスポ))で開催された。今回は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため初の「無観客」での開催となり、「障害者ワークフェア」(※1)も中止された。それでも全国から集まった330人の選手が技能競技25種目に出場し、会場は例年に負けない熱気に包まれた。今回は、ロシアで開催予定の第10回国際アビリンピック日本代表選手選考も兼ねた。 文:豊浦美紀/写真:官野 貴・岩尾克治 11月13日(金) WEB開会式  前大会と同様、技能五輪全国大会と共同開催の開会式は今回、会場内特設フロアで最小限の参加者によるWEB配信の形となった。オープニング映像では、コロナ禍(か)で細心の感染防止対策をしながら仕事に励み、それぞれの技能を磨いてきた選手たちの様子が映し出された。  アビリンピック大会会長である当機構の和田(わだ)慶宏(よしひろ)理事長は、挨拶で「新型コロナウイルス感染拡大のため中止も含め検討を重ねましたが、意欲ある選手に対して競技の機会を提供することを第一に考え、感染拡大防止策を講じたうえで、無観客での開催を決断しました」と経緯を報告。「競技に臨む選手の様子をWEB配信することで、応援に駆けつけられなかったみなさんにも競技の様子をリアルタイムでお届けすることが可能になりました」としたうえで、「国際大会に派遣する選手の選考でもあり、ハイレベルな戦いを期待しております」と締めくくった。  続いて各都道府県選手団の参加人数の紹介が行われ、合間には所属先の同僚や選手たちの動画メッセージも流れた。その後、愛知県立名古屋盲学校高等部専攻科の若渚(わかな)さんがビデオ映像で国歌斉唱を披露。田村(たむら)憲久(のりひさ)厚生労働大臣のビデオメッセージ、菅(すが)義偉(よしひで)首相からのメッセージ代読に続き、ビデオ映像で挨拶の言葉を寄せた大村(おおむら)秀章(ひであき)愛知県知事は、「コロナ禍で練習もままならないこともあったかと思います。今回は無観客開催となりましたが、カメラの向こうにいる家族や友人たちからの多くの応援を糧(かて)として、これまでの成果を遺憾なく発揮してください」と激励した。  最後は、全国アビリンピック愛知県代表で「木工」種目に出場する徳岡(とくおか)遥(はるか)さんと、技能五輪全国大会愛知県代表の水谷(みずたに)恭良(ちから)さんによる選手宣誓。「われわれ選手一同は、職場の指導者、仲間、そして家族への感謝を胸に、全国大会という晴れの舞台で、コロナ禍における逆境のなかでも、日々つちかった技能を最大限発揮し、職業や地域、障害の有無にかかわらず、お互いに競い合うことを誓います」と意気込みを表明した。 競技紹介 選手・同行者らの声 11月14日(土)  昨年に続き競技会場となった愛知県国際展示場の玄関口には、消毒液がいくつも置かれていた。さらに受付でも手指の消毒をうながされ、検温を行ったうえで、首からかけた許可証に確認シールを貼ってもらった。ホール内には、マスク着用やソーシャルディスタンスを呼びかける表示があちこちに設置されていた。換気のためホールの荷物搬入用扉が定期的に開け放たれたが、天候に恵まれたこともあり、気持ちのよい環境で競技が行われた。  今回の競技25種目のうち国際アビリンピック大会への派遣選手選考を兼ねているのは、「洋裁」、「家具」、「DTP」、「機械CAD」、「電子機器組立」、「歯科技工」、「ワード・プロセッサ」、「データベース」、「ホームページ」、「フラワーアレンジメント」、「コンピュータプログラミング」、「ビルクリーニング」、「ネイル施術」、「写真撮影」、「パソコン組立」、「縫製」、「木工」の17種目。過去の全国大会の金賞受賞者ら計28人も招へい選手として参加した。 ●ビルクリーニング/喫茶サービス/オフィスアシスタント/製品パッキング  今大会で最多となる38人が参加した「ビルクリーニング」の競技課題は、弾性床材清掃および机上清掃。16u(4m×4m)の模擬オフィスで掃き作業、モップによる床面の水拭き、机上の拭き作業、ゴミ処理を行う。2回目の全国大会出場という小島(こじま)希望(のぞみ)さん(埼玉県)は、勤務先では病棟の清掃業務などを任されている。競技後に「練習ではできていた部分が、緊張してうまくできませんでした。椅子やゴミ箱の位置をきっちり元に戻せたのはよかったですが」と残念そうな表情を見せていたが、結果は見事、銀賞を受賞した。  「喫茶サービス」(33人参加)は、チームに分かれ模擬店内での接客業務を競う。今回は急きょテーブルなどの消毒作業も加わったが、選手たちはしっかりと行っていた。競技中の笑顔が印象的だった山ア(やまさき)凌一(りょういち)さん(大分県)は全国大会初出場。決めていた三つの目標「相手の目を見ること、笑顔、テキパキ歩くこと」も自分なりにできたとふり返る。通っている多機能型事業所(※2)では農作業担当だが、忙しい日はレストランで石窯でのピザ焼きを手伝う。同行した指導員は「彼はピザを焼きつつ周囲の進み具合を見て、指示も出します。現場経験が競技に活きていました」と健闘をたたえていた。  「オフィスアシスタント」(28人参加)の今回の課題は、送付書類のピックアップ、文書の封入などの発送準備と郵便物仕分け作業。総合支援学校3年生の櫻井(さくらい)千紗(ちさ)さん(山口県)は、2019年の地方大会で銀賞だったものの、金賞受賞者の辞退でくり上げ出場となった。連絡が来たあとから特訓を再開。職場実習の合間を縫って課題に取り組んだ。すでにスーパー運営会社に就職が内定していることから「全国大会出場を機に、会社でこの業務も任せてもらえたらうれしいです」と意欲的に話していた。  「製品パッキング」(20人参加)は、商品梱包用の箱や緩衝材の組立てと、それぞれの組込み作業について時間とできばえを競う。飲料メーカーの特例子会社に勤務する釣井(つるい)一史(かずし)さん(兵庫県)は、3回地方大会に出場し、今回は初の全国大会出場。会社の先輩が相次ぎ出場する姿を見て挑戦を決めたという。コロナ禍で自宅待機が続いたため、会社側から緩衝材セットを自宅に送ってもらい、先輩とオンラインで練習を続けた。日ごろは清掃業務担当だが、「アビリンピック全国大会への出場が知られてからは、社内でも声をかけられ箱の組立て作業などを手伝う機会が増えました」と話してくれた。 ●ワード・プロセッサ/パソコン操作/パソコンデータ入力  「ワード・プロセッサ」(32人参加)は、文字入力の速さと正確性だけでなくワードの各種機能をいかに使いこなせるかが問われる競技だ。石川(いしかわ)千滉(かずあき)さん(栃木県)は、小学生のときからパソコンに馴染んでいたこともあり、高校2年生からアビリンピックに挑戦、全国大会は3年連続での出場となった。通信関連の特例子会社でホームページの作成などを行っている。2019年の大会では社長も応援に駆けつけてくれたが、今回は母親がそばで競技を見守っていた。競技の合間に石川さんは「和文課題の量が規定ページを超えてしまいました。得意の英文でがんばりたい」と笑顔で話していた。  視覚障害のある人が対象の「パソコン操作」(6人参加)は、エクセルを使ったデータ処理とインターネット検索を行う競技。岡澤(おかざわ)洋成(ひろなり)さん(栃木県)は、県立盲学校に在籍していた2019年の全国大会で努力賞。国立大学法人筑波技術大学に進学して再びの出場となった。大学では情報システムを学んでいる。「昨年は、最後のシートが技術的にできなかったので、スキルアップを図ってきました」と話す。結果は銅賞受賞と一つランクアップした。  「パソコンデータ入力」(21人参加)は知的障害のある人が対象で、競技課題はアンケートの入力、ワープロ文書の修正、帳票の作成を各30分以内に行うという内容。情報通信企業の特例子会社に勤める渡部(わたなべ)雄太(ゆうた)さん(東京都)は、2回目の全国大会。同行した母親によると、前回は確認を念入りに行いすぎて時間が足りず悔しい思いをしたという。会社では事務補助の仕事を担当しているため、自宅で練習を重ねてきた。渡部さんは「今回はスピードもうまくいきました」と満足そうに話し、結果も参加者で最高位となる銀賞に輝いた。 ●表計算/データベース/DTP/ホームページ  「表計算」(24人参加)では、75分以内に表の装飾・編集、関数式による表の完成、データ処理およびグラフ作成を行う。全国大会初出場の山やま名航(なこう)太郎(たろう)さん(宮崎県)は、化学メーカーの特例子会社でデータ入力やスキャニング作業などを担当し、過去にワード・プロセッサ種目にも挑戦した経験を持つ。「細かいミスがないよう確認しつつ、工夫すべきところがあればやっていきたいです」と話す山名さんに、同行した職場の同僚も「日ごろから真面目に取り組む彼に、この種目は合っているので、がんばってほしい」と激励していた。  「データベース」(9人参加)の今回の課題は、パラリンピック競技大会記録システムの作成で、競技時間は3時間以内だ。2回目の挑戦で全国大会出場を決めた伊藤(いとう)隆善(たかよし)さん(山形県)は、勤め先のアパレル関連会社で売上伝票のチェックやバックヤード業務を担当している。全国大会出場者が数人いるという職場で、上司からアビリンピック挑戦をすすめられたのがきっかけだ。競技後は「まだまだ練習が必要だと痛感しました」とふり返っていた。  卓上出版と呼ばれる「DTP」(17人参加)の今回の課題は、コロナ禍で「人前でせきやくしゃみがしづらい」と悩む花粉症患者が、周囲にアピールするための「花粉症ストラップ」のデザインと、利用促進のポスターの制作。宮ア(みやざき)菜摘(なつみ)さん(大阪府)は、2回目の挑戦で全国大会出場。会社には全国大会や国際大会に出場した先輩たちもいるそうだ。日ごろはデザインのほか社員の管理業務なども担当する。競技後に「時間不足でしたが、手描きの絵を入れるなど、やりたいことを貫きました」と満足そうに語っていた宮アさんは、銀賞受賞を果たした。  「ホームページ」(10人参加)の今回の課題テーマは「ある地方都市に所在する観光農園」。観光農園の魅力紹介、各種問い合わせフォームの作成などを盛り込んだ内容で、作成技術だけでなく独創性、芸術性、アクセシビリティなどの知識も求められていた。 ●電子機器組立/パソコン組立/コンピュータプログラミング/機械CAD/建築CAD  「電子機器組立」(11人参加)の課題は、夜間などの暗がりで人の動きに反応する「省エネコントローラー」の組立て。聴覚障害のある前田(まえだ)吉之(よしゆき)さん(神奈川県)は、2回目の全国大会。駐車場システムなどを手がける会社に勤め、精算機の部品組立などを担当している。同行した上司は「私たちの会社は以前から、アビリンピックに積極的に選手を出しています。ハンダ付けといった手作業は現場ではやっていませんが、組立の基本スキルなので、アビリンピックでの実績が社内的に認められる証(あかし)にもなります」と話す。競技後、前田さんに書面で感想をお願いしたところ「自分の持っている力をすべて出し切ることができました。最初に仕上げることができたので、入賞を期待しています」としたうえで、「大会で学んだことを仕事にも活かしていきたい」と書いてくれた。前田さんは期待通りの銅賞入賞となった。  6年ぶりに行われた「パソコン組立」(2人参加)は、デスクトップ型パソコンの中身を組立て、ソフトウェアのインストールや設定を行うという課題。赤地(あかち)和典(かずのり)さん(千葉県)も6年前に愛知県で開催された全国大会で銀賞を受賞して以来の参加。英文DTP種目では2003(平成15)年にインドで開催された国際大会への出場経験もある。日ごろは公立病院で設備品などの修理を担当し、忙しくてパソコン自体を触ることもままならなかったという。競技後に「僕なんてWindows 10も触ったことがないぐらい昔の人間です」と苦笑いしていたところ、競技スタッフが来て「途中であのコネクト、よく気づきましたね。私もやってみて苦労した部分です」などと盛り上がっていた。赤地さんは今回最高位の銀賞となった。  「コンピュータプログラミング」(4人参加)はアーム型ロボットを使って描画・立体図を作成する競技で、作業の進捗管理能力などシステムエンジニアとしての総合的な技量も含め、高度なプログラミング技術を競い合っていた。  「機械CAD」(8人参加)は、コンピュータ支援設計ツール(CAD)を使ってロボットハンドの部品図と組立図、軸測投影法による組立図と立体分解図を作成する。初挑戦で全国大会出場の岡本(おかもと)和大(かずひろ)さん(広島県)は、会社では新入社員向けのインストラクターとして製図の基礎などを教えている。大学院で情報系を学んでいたが、持病悪化を機に進路を変更、職業訓練校でCADを学び就職したそうだ。競技後は「自分の使っているCADと仕様が違っていたほか、仕事が立て込んで練習時間が確保できなかったのが痛いですね。次回も全国大会に出られるようがんばりたいです」とリベンジを誓っていた。  「建築CAD」(7人参加)の課題は、鉄筋コンクリート造3階建てビルの図面を3時間30分以内に仕上げる内容。建築の知識とCADシステム操作技術のほか、美的感覚なども求められていた。 ●木工/家具/縫製/洋裁  知的障害のある人が対象の「木工」(14人参加)は、のこぎりやかんな、のみなどの手工具を使った蓋付き木箱を製作する。中村(なかむら)健一(けんいち)さん(佐賀県)は、2回目の挑戦で全国大会出場を決めた。20年近く通う就労継続支援B型事業所では、保育園などからオーダーされた椅子やテーブル、棚をつくっている。同行した中村さんの指導員は「図面を渡せば一人でつくるほどの実力で仕事熱心。日ごろは機械作業なので、木工道具を使う特訓もしました」。競技後、競技スタッフからアドバイスを受けた中村さんは「自己評点は55点。競技スタッフさんから『手順が少し違っていたけど、よくがんばっていたよ』といわれました。これからもけがをしないようにして作品づくりを続けます」と話してくれた。  「家具」(4人参加)の競技課題は、手工具や木工機械を使っての花台製作。木工会社で働く高林(たかばやし)葵(あおい)さん(沖縄県)は、3年連続での全国大会出場だ。同行していた父親は「前々回は時間内に完成できず、前回は完成したものの穴をあける場所を間違えたことに後で気づいたそうです。勤務先での作業スピードも上がってきたようなので、今年はミスなく完成できたらいいなと思います」と見守っていた。  エプロンを4時間以内に仕上げる「縫製」(10人参加)は知的障害のある人が対象で、各パーツの仕上がり寸法の正確さ、アイロンとミシンの技法などを含め完成作品のできばえを競う。浅田(あさだ)美咲(みさき)さん(京都府)は職業訓練校で「縫製を学びたい」と希望し、そのままアビリンピックにも挑戦して3回目の全国大会。家族以外とは筆談でコミュニケーションを取っている浅田さんは、指導員ともスマートフォンのメモ機能を駆使しながら練習を重ねてきた。いまは地元の有名菓子店に就職し、お菓子の箱詰めなどを担当。職場でも筆談しながら無理なく働けているそうだ。同行していた指導員は「彼女はもともと筋(すじ)がいいというか、布の扱い方がうまいんですよ」と話す。競技終了後、浅田さんに書面で感想をお願いしたところ「休みの日などに個人で練習をがんばってきました。今回最後の全国大会になったけど、今回も仕上げることができてよかったです。仕事は縫製関係ではないけれど、これからも物づくりは続けていきたいです」と教えてくれた。  「洋裁」(7人参加)の競技課題は、薄手ウールを使ったオーダー仕立てのオーバーブラウスを6時間以内に製作するというもの。前回の全国大会で銀賞だった小M(おばま)望(のぞみ)さん(鹿児島県)は競技後、「今回はぜひ金賞をと思って臨みましたが、時間ギリギリでした。前回は、ボタンホールの縫い目が粗いところなどを注意されたので、そこを重点的に練習してきました」とふり返った。いまは歯科技工士として働き、仕事と両立させながら練習してきたという。結果は、銅賞入賞を果たした。 ●歯科技工/義肢/フラワーアレンジメント/ネイル施術/写真撮影  「歯科技工」(5人参加)は、硬質レジンジャケット冠と部分入れ歯を製作する。三津橋(みつはし)幸勇(ゆきお)さん(北海道)は、初挑戦での全国大会出場となった。歯科技工会社の同僚女性と2人で出場していたが、競技後は厳しい表情だった。書面で感想を求めたところ「泣きそうです。レベルを上げたいと思います」とだけ書いてくれたが、結果は出場者で唯一の受賞、しかも金賞に輝いた。  「義肢」(3人参加)の競技課題は、義肢を使うとき切断部分に装着するソケットの製作。小澤(おざわ)悠一(ゆういち)さん(鹿児島県)は、2019年の全国大会で障害者職業能力開発校から出場し銅賞だった。今春に義肢製作会社に入社し、2回目の出場を決めた。「普通は職業能力開発校修了で義肢装具技能士補の資格をもらえますが、アビリンピック全国大会で一定の成績をとると、技能検定2級の実技試験が免除になります。おかげでいまの会社に就職できました」と明かす。病気で無職だったころ、父親が脳卒中の後遺症で義肢をつくった。その製作過程を見て「人の役に立つ、ものづくりがしたい」と開発校へ。さらに小澤さんを支えてくれた女性と結婚するため就職を目ざしたという。就職と同時に入籍し、ますます仕事への意欲を強くしている。小澤さんは、出場者で唯一の入賞となる銅賞となった。  「フラワーアレンジメント」(8人参加)は花束(50分)、ウエディングブーケ(70分)、テーブル装飾(50分)の3作品で競う。招へい選手の田中(たなか)達也(たつや)さん(新潟県)は今回、地方大会を開催できなかった新潟県からの唯一の参加選手で、2016年の全国アビリンピック山形大会で金賞を取っている。学校の授業で習っていたときに先生の目に留まり、「アビリンピックに出てみたら」とすすめられたのがきっかけだ。日ごろは地域活動支援センターで軽作業を担当し、練習用で仕上げた作品を職場に飾ってもらうこともある。「久しぶりの競技で緊張しますが、自分の納得できる作品をつくりたいですね」と笑顔で話していた。甲斐(かい)絵美理(えみり)さん(宮崎県)は全国大会初出場。県大会でのデモンストレーションを見て興味をもち、挑戦を決めたという。IT関連企業の特例子会社に勤め、広告審査業務などを担当している。競技後は「ブーケづくりの時間が足りず急いで仕上げたのが反省点。花は見ているだけでテンションも上がるので、これからも続けていきたいです」と語っていた。  「ネイル施術」(3人参加)は、爪の長さや表面を整えてカラーを塗るベーシックマニキュア(45分)と、ネイルアートの基礎的な技術を施すネイルチップアート(70分)で競う。招へい選手の山下(やました)加代(かよ)さん(北海道)は、前回の全国大会で金賞を受賞。周囲の反響も大きく、大手航空会社の特例子会社関係者からも声をかけられ「採用試験を受けたところです」と明かしてくれた。山下さんは大会後、無事に採用が決まり、キャビンアテンダントら社員向けのネイル施術を任されることになるそうだ。  14年ぶりの実施となる「写真撮影」(6人参加)は、基本的な撮影技術やプリント仕上がりの総合的な構成力などを競う。今回の課題は、愛知県国際展示場をパンフレットやホームページで紹介することを想定した魅力的な写真作品。デザイン系の会社に勤める重水(しげみず)美雪(みゆき)さん(鹿児島県)は、写真加工を含めたグラフィックデザインを担当している。競技後に「やっぱり県内だけで見てきたのとは違い、全国から集まった人たちは、いろんな撮影視点を持っていて勉強になりました。自分のカメラで写真をもっと撮って、コンテストにも応募していきたいです」と抱負を語ってくれた。 WEB成績発表  11月15日(日)  今年は、閉会式に代わる「成績発表」もWEB配信となったが、展示ホールは、選手や同行者向けに巨大なモニター画面や椅子が用意されていた。  午前10時から始まった成績発表。「喫茶サービス」の発表時に、隣席の女性に小さなVサインを見せていた男性がいた。見事「喫茶サービス」で銀賞を受賞した坂田(さかた)舜介(しゅんすけ)さん(長野県)と母親だった。養護学校高等部3年生の坂田さんは「1年生のときから連続3回全国大会に出場してきて念願の入賞で、うれしいです」と笑顔がはじけた。今回の競技については「前回の大会後の講評で、『もう少し周りを見られるようになるといいね』とアドバイスしてもらい、今回は仲間を大事にして、どうしたらコミュニケーションがスムーズにいくか考えました。周りの人と話をするうちに慣れてきて、自然と笑顔も出るようになりました」とふり返った。内定をもらっている就職先は接客業ではないが「アビリンピックでの達成感を胸に、自信をもって仕事をしていきたい」と力強く話してくれた。  最後まで会場に残っていたのは、総合支援学校3年生の高木(たかぎ)大和(やまと)さん(山口県)。初めての全国大会で「せっかくなので最後まで全部見ておきたかった」と来場した理由を話してくれた。出場した「ビルクリーニング」は惜しくも入賞を逃したが「細かい点も含めて、もっと努力していこうと思いました。また挑戦します」と決意を新たにしていた。 ※1 障害者ワークフェア:全国アビリンピックの一環として開催する、障害者の雇用にかかわる展示、実演、作業体験などの総合的なイベント ※2 多機能型事業所:障害者総合支援法および児童福祉法に基づく事業のうち、二つ以上の事業を一体的に行うもの 写真のキャプション 菅義偉首相からのメッセージを代読した厚生労働省の小林洋司 人材開発統括官 会場となった「愛知県国際展示場」 大村秀章 愛知県知事はビデオ映像でメッセージを届けた 会場入り口で行われた検温の様子 「ビルクリーニング」銀賞、小島希望さん(埼玉県) マスク着用やソーシャルディスタンスを呼びかける表示 「喫茶サービス」山ア凌一さん(大分県) 「ワード・プロセッサ」石川千滉さん(栃木県) 「製品パッキング」釣井一史さん(兵庫県) 「オフィスアシスタント」櫻井千紗さん(山口県) 「パソコン操作」銅賞、岡澤洋成さん(栃木県) 「データベース」伊藤隆善さん(山形県) 「表計算」山名航太郎さん(宮崎県) 「パソコンデータ入力」銀賞、渡部雄太さん(東京都) 「DTP」銀賞、宮ア菜摘さん(大阪府) 「ホームページ」銀賞、斉藤(さいとう)敦(あつし)さん(埼玉県) 「パソコン組立」銀賞、赤地和典さん(千葉県) 「電子機器組立」銅賞、前田吉之さん(神奈川県) 「機械CAD」岡本和大さん(広島県) 「コンピュータプログラミング」招へい選手の角田(かくた)智活(ともかつ)さん(青森県) 「家具」高林葵さん(沖縄県) 「木工」中村健一さん(佐賀県) 「縫製」浅田美咲さん(京都府) 「洋裁」銅賞、小M望さん(鹿児島県) 「フラワーアレンジメント」招へい選手の田中達也さん(新潟県) 「義肢」銅賞、小澤悠一さん(鹿児島県) 「歯科技工」金賞、三津橋幸勇さん(北海道) 「フラワーアレンジメント」甲斐絵美理さん(宮崎県) 「ネイル施術」招へい選手の山下加代さん(北海道) 「ビルクリーニング」に出場した高木大和さん(山口県) 「写真撮影」重水美雪さん(鹿児島県) 「喫茶サービス」銀賞、坂田舜介さん(長野県) 【P12-13】 第40回 全国アビリンピック 入賞者発表!  愛知県常滑市において2020(令和2)年11月13日(金)から15日(日)までの3日間にわたり開催した「第40回全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)」。全25種目の技能競技に45都道府県から330人の選手が集い、日ごろつちかった技能を競い合いました。  今大会は新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のため「無観客」開催となりましたが、開会式、競技風景や成績発表については、WEBでライブ配信されました。  また、今大会での入賞者は以下の通り決定され、金賞15人、銀賞24人、銅賞37人、努力賞10人の方々が受賞されました。 金賞 家具 伊藤(いとう)俊貴(としき) 愛知県 愛知県立名古屋聾学校 DTP 伊藤(いとう)まどか 広島県 株式会社JR西日本あいウィル 機械CAD 木村(きむら)信隆(のぶたか) 千葉県 三菱ケミカルエンジニアリング株式会社 電子機器組立 島田(しまだ)美穂(みほ) 三重県 株式会社デンソー 大安製作所 歯科技工 三津橋(みつはし)幸勇(ゆきお) 北海道 和田精密歯研株式会社 札幌センター ワード・プロセッサ 佐藤(さとう)翔悟(しょうご) 茨城県 株式会社日立パワーソリューションズ データベース 中山(なかやま)太郎(たろう) 熊本県 株式会社ソリッド・ネット コンピュータプログラミング 伊敷(いしき)学(まなぶ) 沖縄県 ソニービジネスオペレーションズ株式会社 ビルクリーニング 本田(ほんだ)駿斗(はやと) 神奈川県 和光産業株式会社 製品パッキング 山崎(やまざき)泰(ゆたか) 宮城県 セコム工業株式会社 喫茶サービス 加藤(かとう)みなみ 宮城県 服部コーヒーフーズ株式会社 オフィスアシスタント 狩野(かのう)大介(だいすけ) 東京都 株式会社シンフォニア東武 押上事業所 写真撮影 小島(こじま)未来(みき) 愛知県 トヨタループス株式会社 縫製 板垣(いたがき)美穂(みほ) 山形県 社会福祉法人山形県身体障害者福祉協会 山形県リハビリセンター 木工 地下(ぢげ)優輝(ゆうき) 鹿児島県 国立・県営鹿児島障害者職業能力開発校 銀賞 洋裁 藤澤(ふじさわ)勇慈(ゆうじん) 東京都 公益社団法人全日本洋裁技能協会 DTP 宮ア(みやざき)菜摘(なつみ) 大阪府 株式会社ウイルハーツ 機械CAD 植村(うえむら)晃(あきら) 愛知県 新東工業株式会社 電子機器組立 那須川(なすかわ)耀(よう) 愛知県 株式会社デンソー 高棚製作所 ワード・プロセッサ 山本(やまもと)巧(たくみ) 愛知県 トヨタループス株式会社 データベース 小松(こまつ)智和(ともかず) 東京都 ジョブサポートパワー株式会社 ホームページ 斉藤(さいとう)敦(あつし) 埼玉県 トランスコスモス株式会社 ホームページ 佐藤(さとう)知沙子(ちさこ) 愛知県 豊橋市役所 フラワーアレンジメント 藤澤(ふじさわ)一代(かずよ) 香川県 身体障害者福祉センターコスモス園 コンピュータプログラミング 田中(たなか)卓也(たくや) 神奈川県 ディー・ティー・ファインエレクトロニクス株式会社 ビルクリーニング 小島(こじま)希望(のぞみ) 埼玉県 アイル・コーポレーション株式会社 ビルクリーニング 谷口(たにぐち)湧真(ゆうま) 東京都 太平ビルサービス株式会社 東京支店 ビルクリーニング 下内(しもうち)寿也(じゅにや) 京都府 京都府立丹波支援学校 喫茶サービス 坂田(さかた)舜介(しゅんすけ) 長野県 長野県長野養護学校高等部朝陽教室 オフィスアシスタント 鈴木(すずき)真里子(まりこ) 神奈川県 株式会社日立ゆうあんどあい オフィスアシスタント 中村(なかむら)友美(ともみ) 福岡県 株式会社チャレンジド・アソウ 表計算 手島(てしま)拓身(たくみ) 東京都 株式会社日立ハイテクサポート ネイル施術 荒山(あらやま)美夢(みむ) 千葉県 エイジスコーポレートサービス株式会社 写真撮影 大塚(おおつか)弘也(ひろや) 鹿児島県 鹿児島県立武岡台養護学校 パソコン組立 赤地(あかち)和典(かずのり) 千葉県 地方独立行政法人総合病院 国保旭中央病院 パソコン操作 原(はら)真波(まなみ) 東京都 三井金属スタッフサービス株式会社 パソコンデータ入力 渡部(わたなべ)雄太(ゆうた) 東京都 NSWウィズ株式会社 縫製 苑田(そのだ)愛美(まなみ) 熊本県 社会福祉法人愛火の会 野々島学園 木工 宮ア(みやざき)裕史(ゆうじ) 熊本県 社会福祉法人アバンセ多機能型事業所カサ・チコ 銅賞 洋裁 首藤(しゅとう)悦子(えつこ) 大分県 一般社団法人服は着る薬 洋裁 小M(おばま)望(のぞみ) 鹿児島県 有限会社A・デンタル・ラボ DTP 大堀(おおほり)寛人(ひろと) 東京都 株式会社旭化成アビリティ DTP 橋(たかはし)卓哉(たくや) 山口県 社会福祉法人山口県コロニー協会 機械CAD 綱澤(つなざわ)槙太郎(しんたろう) 岡山県 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 建築CAD 佐藤(さとう)康太郎(こうたろう) 東京都 東京セキスイハイム株式会社 建築CAD 天野(あまの)寛隆(ひろたか) 愛知県 愛知玉野情報システム株式会社 電子機器組立 前田(まえだ)吉(よしゆき) 神奈川県 アマノ株式会社 義肢 小澤(おざわ)悠一(ゆういち) 鹿児島県 株式会社中礼義肢製作所 姶良工場 ワード・プロセッサ 前川(まえかわ)哲志(さとし) 長野県 信州ビバレッジ株式会社 ワード・プロセッサ 安達(あんたつ)芽衣(めい) 奈良県 なんとチャレンジド株式会社 データベース 小野田(おのだ)勝之(かつゆき) 愛知県 トヨタループス株式会社 データベース 石倉(いしくら)正史(まさふみ) 福岡県 化成フロンティアサービス株式会社 ホームページ 櫻井(さくらい)利彰(としあき) 宮城県 一般社団法人COM'S フラワーアレンジメント 兼松(かねまつ)利江(りえ) 静岡県 株式会社アイエスエフネットジョイ ジョイワークセンター浜松事業所 ビルクリーニング 田村(たむら)由紀枝(ゆきえ) 栃木県 栃木県立特別支援学校宇都宮青葉高等学園 ビルクリーニング 新谷(あらや)ちひろ 愛知県 コニックス株式会社 ビルクリーニング 西山(にしやま)恵李香(えりか) 大阪府 株式会社エルアイ武田 製品パッキング 吉井(よしい)秀一(ひでかず) 福岡県 サンアクアTOTO株式会社 喫茶サービス 細井(ほそい)日菜(ひな) 埼玉県 株式会社JALサンライト 喫茶サービス 山下(やました)優香(ゆうか) 和歌山県 公立学校共済組合和歌山宿泊所 ホテルアバローム紀の国 オフィスアシスタント 海野(うみの)弘樹(ひろき) 茨城県 株式会社日立ゆうあんどあい(大みか)郵便室 オフィスアシスタント 松浦(まつうら)章太郎(しょうたろう) 愛知県 トヨタループス株式会社 オフィスアシスタント 望月(もちづき)勇希(ゆうき) 兵庫県 株式会社川重ハートフルサービス KCT事業所 表計算 櫻井(さくらい)佑樹(ゆうき) 栃木県 株式会社バンダイナムコウィル 表計算 木下(きのした)勇気(ゆうき) 山口県 有限会社リベルタス興産 表計算 花山(はなやま)星太(しょうた) 愛媛県 就労移行支援事業所 フェローICT ネイル施術 一木(いちき)侑子(ゆうこ) 東京都 野村不動産ライフ&スポーツ株式会社 写真撮影 河野(こうの)仁志(ひとし) 北海道 和田精密歯研株式会社 札幌センター パソコン操作 岡澤(おかざわ)洋成(ひろなり) 栃木県 国立大学法人筑波技術大学 パソコンデータ入力 速水(はやみず)佑樹人(ゆきと) 栃木県 特定非営利活動法人ひとつの花 パソコンデータ入力 池(いけ)耕太(こうた) 京都府 京都市立白河総合支援学校 縫製 小村(こむら)侑大(ゆうだい) 佐賀県 社会福祉法人南高愛隣会 長崎能力開発センター 縫製 今原(いまはら) 飛翔(つばさ) 宮崎県 株式会社旭化成アビリティ 木工 若子内(わかこない)塁(るい) 岩手県 岩手県立盛岡峰南支援学校 木工 宮嶋(みやじま)和宏(かずひろ) 富山県 富山県立富山高等支援学校 木工 徳岡(とくおか)遥(はるか) 愛知県 愛知県立春日井高等特別支援学校 努力賞 家具 城間(しろま)羽夏(はな) 愛知県 愛知県立名古屋聾学校 DTP 大日方(おびなた)貴昭(たかあき) 長野県 社会福祉法人ながのコロニー 電子機器組立 中本(なかもと)高史(たかし) 大阪府 パナソニック交野株式会社 ワード・プロセッサ 森島(もりしま)章文(あきふみ) 静岡県 ビルクリーニング 藤原(ふじはら)拓巳(たくみ) 島根県 株式会社島根東亜建物管理 喫茶サービス 八役(はちやく)あゆみ 兵庫県 株式会社新保哲也アトリエ 西宮ファクトリー オフィスアシスタント 大古田(おおごだ)祐樹(ゆうき) 静岡県 矢崎ビジネスサポート株式会社 写真撮影 中垣(なかがき)良則(よしのり) 愛知県 トヨタループス株式会社 パソコン操作 小池(こいけ)正美(まさみ) 山形県 社会福祉法人山形県身体障害者福祉協会 パソコンデータ入力 清水(しみず)幹生(みきお) 長野県 社会福祉法人夢工房福祉会 LINK 【P14-15】 この人を訪ねて アビリンピックの実績、社内業務の拡大にも 愛知玉野情報システム株式会社 総務課主幹 橋本忠雄さん はしもと ただお 1970(昭和45)年、愛知県生まれ。1992(平成4)年に愛知玉野情報システム株式会社入社。プライベートでは車いすバスケや陸上競技に挑戦し、1999年にタイで開催されたフェスピック(アジアパラ競技大会の前身)には、1万mマラソン競技に出場し銀メダルを獲得。 リハビリを経て愛知玉野情報システムに就職 ――車いすユーザーの橋本さんが入社するまでの経緯を教えてください  私が勤めている「愛知玉野情報システム株式会社」(以下、「玉野システム」)は、「玉野総合コンサルタント株式会社」(以下、「玉野総合」)と愛知県、名古屋市の共同出資により第三セクター方式で、1987(昭和62)年に設立され、1989(平成元)年に玉野総合の特例子会社となりました。重度身体障害者の雇用モデル企業として誕生してから33年、現在は社員25人のうち障害のある社員は17人います。  私自身は、高校卒業後の19歳のときに交通事故にあい、1年ほど入院して、リハビリと生活訓練を行いました。病院の職員の方たちから「若いのだから働いていかないとね」と助言され、入院中に車の免許を取得しました。愛知県瀬戸市にある身体障害者向けの寮が完備された自動車教習所で、取得するまで約2カ月かかりましたね。  退院後は障害者職業能力開発校に1年通い、情報処理系を中心に学びました。ただ当時は、私のような車いすユーザーが働ける会社は、まだまだ少なかったのを覚えています。仕事そのものはできても、職場にバリアフリー設備がないから無理というケースばかりでした。玉野システムのような企業があって本当によかったと思いました。 通勤が健康につながる ――職場ではどのような仕事をしていらっしゃいますか。  おもに地図を書く作業を担当しています。なかなか現場には行けないので、玉野総合の社員が測量してきた結果をもとに、パソコンで製図しています。  これは業務課としての仕事ですが、私は昨年から総務課主幹の役職もつき、両方の業務を並行してやっています。ちなみに業務課の課長も、車いすユーザーです。当初は玉野総合や県などから出向してきた社員が管理職を務めていましたが、だんだん私たちだけで運営していけるようになっていると思います。2020(令和2)年6月には玉野総合の本社ビルに移転し、業務の打ち合わせも行いやすくなりました。  私は勤続28年ですが、社内では3番目ぐらいの古株になりました。重度の身体障害のある人は、加齢にともなう体力減退が早いのか、60歳になる前に退職を選ぶケースも少なくありません。会社では在宅勤務制度の導入を進め、最近も、通勤困難となった筋萎縮性側索硬化症の社員が、「それでも働けるうちは」ということで完全な在宅勤務に切り替えました。ほかにも週20時間以下の契約社員に切り替えた人もいます。  今回のコロナ禍(か)では、テレワークの推進により玉野総合も50%の出社率となりましたが、玉野システムでは80%の出社率でした。私たちにとっては「通勤することが健康につながる」こともあるからです。特に身体障害のある人の場合、在宅勤務が続くと逆に体力低下の恐れがあります。私自身も週2〜3日出勤しています。マイカー通勤なので移動中のリスクも低いのです。 何でもいい出しやすい職場環境 ――いまでは精神障害のある社員もいますね。職場で工夫されていることはありますか。  5年前から精神障害のある社員の採用が始まり、現在7人になります。受入れ側の職場では全体研修を行ったほか、新入社員には相談しやすい先輩社員を1人決めています。外部でカウンセリングを受けられる制度も新設しました。定期的に通院しなければならない社員向けの休暇制度もあります。これは特例子会社のよさだと思っていますが、就業規則を柔軟に変えられるので、必要だと思ったら職場内のみんなですぐに決めることができます。  また年1回、会社側が本人から、自分の障害について周りに知っておいてもらいたいことや配慮してほしいことなどを聞いて、みんなに伝えるようにしています。精神障害があり、「努力はしていますが、突然休んでしまうことがあります」と申し出た社員もいます。  実際に体調不良で急に休んでも、だれも気にしていないのではないでしょうか。というのも私たちの職場は、もともと小規模のうえに障害者が大部分を占めているので、この30年余りで、何でもいい出しやすい環境になっているのではないかなと思っています。 アビリンピック金賞で一躍有名に ――橋本さんは、全国アビリンピックで2014年は「表計算」、2016年は「建築CAD」で金賞を受賞され、今年も「ワード・プロセッサ」に出場されました。  アビリンピックは、2007年に静岡で国際大会が開催されたとき、会社の創立20周年記念の旅行を兼ねて視察に行き、初めて競技内容を知りました。さっそく翌年から県大会に出場することにしました。最初は「ワード・プロセッサ」に挑戦したのですが仕事であまり使っていないこともあり、なかなか成績が伸びませんでしたね。その後、追加された「表計算」に種目を変更したところ、2014年の全国アビリンピック愛知大会で金賞になりました。  驚いたのは、このニュースが社内報に掲載されて一躍有名になり、玉野総合から入力作業や報告書作成などの業務が舞い込むようになったことです。社員の人たちは「特例子会社って、どんな仕事ができるんだろう」と思っていたようです。アビリンピックは、社内にアピールする絶好の機会になりました。  2015年は国際大会があったため県大会・全国アビリンピックがなく、2016年の全国アビリンピック山形大会に出場し、「建築CAD」で金賞を取りました。このときは、職場では社内専用のCADを使っていましたが、一部の部署で競技用のソフトも使われるようになったこともあり、新たに勉強しました。再び社内報やホームページで紹介され、今度は建築関係の業務も増えました。  ちなみに2019年と2020年は再び「ワード・プロセッサ」で全国アビリンピックに出場しましたが、レベルが高いですね。「建築CAD」については、今回は玉野システムから3人が参加し、全国アビリンピックに3回目出場の天野(あまの)寛隆(ひろたか)君が銅賞を受賞しました。実は私が2018年の金賞受賞後、備忘録のつもりで競技課題の手順をなぞった3時間の動画を作成したのですが、それを天野君に渡してあったのが役立ったようです。彼も2018年の全国アビリンピック沖縄大会で銀賞を取って以来、仕事が増えました。今回受賞を逃した2人のために、同様の動画をつくるようアドバイスしています。 ――今後の抱負も教えてください。  やっぱりアビリンピックには出場し続けたいですし、国際大会も目ざしたいですね。アビリンピックに挑戦するというだけで自身のスキルアップになりますし、他社で同じように働く方たちと競い合うことで、客観的な視点で自分の実力を知ることができます。そしてある程度の成績を残せば、社内での業務の幅もぐんと広がっていきます。日々の仕事を続けていくうえでの大きなモチベーションにもつながるのは間違いありません。願わくば、私たちが挑戦できる種目をもっと増やしていただけたらうれしいですね。 【P16-19】 クローズアップ 最終回 活躍する障害者職業生活相談員 「障害者職業生活相談員」の活動を紹介するシリーズ。第4回は、経験豊富な障害者職業生活相談員の3人をお招きして座談会を開催し、参加者の経験に基づくノウハウや知見などをうかがいました。また、日々迷いながら、障害のある社員と真摯に向き合う思いはみなさん同じで、相談員同士の情報交換の場にもなりました。 障害者職業生活相談員の存在意義とは 内田博之(以下、内田) 今日は「障害者職業生活相談員として働く」をテーマに、経験豊かな3人の障害者職業生活相談員(以下、「相談員」)の方々の、日々のお仕事の様子などをお聞きしたいと思います。  まずは、「相談員の存在意義」について、二つうかがいたいと思います。一つめは、新たに障害のある人を採用するとき、相談員の存在や役割を説明していますか。二つめは、相談員の活動のなかで、ご自身や周りに何かよい影響がありましたか。 塩原麻里(以下、塩原) 見学会や入社のタイミングで、社内体制図を示して相談員がどこに配置されているかを説明し、「困ったことがあったら、この人に相談してね」と案内しています。障害のある社員には「だれに相談すればいいのか」がわかりやすく、「理解してくれる人が職場にいる」安心感につながっていると思います。 和田康延(以下、和田) 弊社では事務支援課に配属されたら、最初に必ず、相談員の資格を取得します。ですから、事務支援センターのセンター長をはじめ20人の社員全員が相談員の資格を持っています。  このため、ことさら「私は相談員の資格を持っています」という説明はせず、だれにでも相談できる体制をとっています。仕事のセクションを飛び越えて、「お気に入り」の相談員に、相談する人も多いです。 高田麻里子(以下、高田) 入社の際に、「業務のことは現場のリーダーである○○さんに、仕事以外の相談やリーダーにいいにくいことは私に相談してください」と説明しています。  障害のある社員が業務時間中でも気軽に相談に来て、最初は泣き顔だったのに、笑顔になって職場に戻っていく姿を見ると、相談員がいる効果を感じます。毎日、密接に関わるリーダーは変化を感じづらく、少し離れた位置から見る私の方が異変に気づきやすい側面もあり、こうした体制があることは社員に長く働いてもらうために重要なことだと思います。 内田 各社、人事体制と相談員の位置づけに多少差異があるようですが、それぞれよき相談相手として重要な役回りを務めていらっしゃいますね。 相談員になったことによる自身の変化 内田 相談員の活動を通して、みなさん自身に何か変化はありましたか。 高田 障害のある社員たちに支えられているように思います。社員は察知能力が高い方も多いので、元気がないと「笑ってないね」といわれたり、見破られることが多いですね。「そんなことないよ」といいつつ、自分の気持ちを高めることもあります。 和田 「相談員になってよかった」と思うところはたくさんあります。特に私の部署は「仕事を楽しむ」ことがモットー。自分自身のモチベーションの糧(かて)になっていると思います。 塩原 私は管理部門の相談員という位置づけで、現場では指摘しづらいことを伝えたり、現場での指導後にこちらがフォローしたりと、役割を分担しています。最終的に、本人の意欲につながるとうれしいです。そのバランスがうまく取れると、「この仕事をしてよかった」と思いますね。 内田 ご自身のメンタルケアなどはどうしていますか? 塩原 同僚と情報共有をして「がんばったね」とねぎらってもらうことがいちばんです。 高田 私は上司に報告して「その対応でよかったよ」と承認され、「あとはフォローしておくよ」といってもらうと安心できます。 和田 私もセンター長に相談します。一人で行き詰まったら、時間を取っていただいて、本音で話します。 内田 障害のある社員にとって、職場で相談できる人は欠かせない存在でしょう。また、「相談できる人がいてよかった」という言葉が、相談員自身のモチベーションにつながる好循環が生まれていると感じました。  そして、みなさんも日々のできごとを上司や同僚と共有することで、安心感につながっているのですね。 障害のある社員とかかわる秘訣とは 内田 次は、障害のある社員とかかわる秘訣を教えてください。ちょっとしたコツなど、だれにでも取り入れやすいものはありませんか。 高田 表情と言動をよく見て、「普段と違うな」と思ったら、すぐに声をかけるようにしています。ほかには、話をよく聞くこと。本人の誤解がもとで、感情がこじれていることがあるので、話をしながら一緒にお互いの真意を確認するように努めています。 塩原 私は、障害名でその人を見ないよう意識しています。とことん話を聞くことで、その人の特性や個性をつかんでいきたいと思っています。 和田 障害のある社員たちは、私たちの忙しい雰囲気を察知して気を遣い、相談はおろか、不調があっても変化さえ表さない人もいます。私たちが、いつでも余裕をもって、相談を受け入れるスタンスでいることが大事だと思っています。 高田 不調をすぐにいえるタイプの方と、声をかけても「大丈夫」というだけで本心をなかなかいえないタイプの方がいますね。いえない人には、「眠れている?」と質問を変えて聞いてみます。声をかけたほうがいいのか迷うこともありますが、「気づいてくれる人がいる」と感じてもらうことにも意味があると思っています。 和田 不調をいえる人といわない人、伝えることが苦手な人がいます。私たちがもっとも注意しなければならないのは、伝えることが苦手な人です。きちんと細かく表情や行動を見ていないと、不調に気づけません。  逆に、日ごろから注意して見ていると、気になる行動に気づき、「何かあるな」とピンときますね。 内田 本人自身が、不調を認識していないときもありますからね。何か変化に気づいたら、その場で声をかけてみるのがいいかもしれませんね。 言葉で伝えることのむずかしさ 和田 ほめ方もむずかしいですよね。全員に業務終了ごとに「ありがとう」と伝えるようにしていますが、ほめられることを前向きにとらえる人と、一方で「これは仕事だからあたり前」、「なぜほめらるのか」といった受け取り方の人もいますので、それぞれの特性に合わせて対応しています。  しかし、例えば営業社員から「みなさんのおかげで契約が取れました」など、他部署からの感謝の言葉は、全員に伝えるようにしています。 高田 ほめ過ぎて失敗した事例があります。以前、「すごいね、うまいね」と障害のある社員を鼓舞することが上手なリーダーがいて、社員の一人がそのテンションに慣れてしまいました。彼は一生懸命、仕事に取り組んでいましたが、そのリーダーが異動になると、次のリーダーは「ほめてくれない」と落ち込んでしまいました。  他方で、叱ったわけではないのに、「怒られた」と誤解して、どんどん落ち込んでしまう人もいます。 塩原 たしかに、伝え方しだいで誤解を生むケースもありますね。「私自身は上司ではなく相談員であって、社員のみなさんが働きやすい職場をつくるために存在している」と伝えて、お互いに理解し合えるように心がけています。  また、業務上必要なことでも、現場でネガティブな指摘をしたときには、私にも一報をもらって、必要な場合は相談員がフォローしています。 和田 言葉はむずかしいですね。何気ない言葉でものすごく落ち込む人や、けんか腰になることもあります。 内田 受け止め方は人それぞれですから、いかに理解してもらうか、工夫が必要です。相談員として対応のコツをお聞きしましたが、ひと言ではいい尽くせませんね。基本的には一人ひとりと向き合いながら、本人に問いかけていくということでしょうか。 障害のある社員の可能性を引き出す 内田 2021(令和3)年3月から障害者の法定雇用率が0・1%引き上げられます。数の問題はもちろん、雇用の質も問われます。障害のある社員の強みや可能性を引き出すために、工夫していることを教えてください。 和田 だれかが抜けても交代のきく体制を構築するためには、新しい仕事にどんどんチャレンジしてもらうことが必要だと思います。弊社の7年目、8年目の社員はよく「新しい仕事にチャレンジしたい」といいます。「障害特性があるからできない」ではなく、「できないからこそ、できるように何をすべきか」を考えることが、相談員の仕事だと心しています。  そして、障害のある社員に「この職場は楽しいよね」、「働き続けられそうだな」と思ってもらうことが、私たちの仕事だと思って日々接しています。 塩原 「この人にこの仕事はむずかしい」と思ったとき、私たちがどう対処するかが工夫のしどころです。本人が「苦手だ」といっても、案外上手にできる人もいます。実際にやってみてフィードバックするなど、ていねいなフォローが大切だと思います。 高田 弊社では「会社は全員で協力する体制が大事なので、忙しいチームがあれば応援に行ってもらいます」と説明しています。自分の担当より、少しむずかしい仕事の応援をくり返すうち、できるようになる人もいます。携帯端末の分解作業担当からカフェに異動した人は、当初慣れない仕事に苦心していましたが、明るい性格を活かして、お客さまからの人気No.1になりました。 内田 仕事を任せるうえでの大前提として、「この障害だからこれはできない」と決めつけるのはいけませんよね。だれにでも可能性が潜んでいますから、それを見つけることも、相談員の仕事でしょう。 相談員として必要なこと 内田 今後、相談員として活動される方に向けて、必要な知識やスキル、心がけなどを教えていただけますか。 和田 相談員の資格認定講習などでベースの知識を得ることが大切です。そのうえで人として真摯に向き合って、取り組むことだと思います。  例えば、100人のうち99人が聴覚障害者で、残る1人が健常者の世界では、手話という共通言語を理解しない健常者は、障害者とみなされるでしょう。何をもって障害者とするかの定義は、存在しないのです。  障害を障害ととらえず、個性と考える。その個性を生かすも殺すも、相談員次第だと思います。  私は着任当初、「『障害があってかわいそうだから』ではなく、『ともに働く社員、仲間だから』サポートする気持ちを持ち続けて」という上司からの言葉を、いまも大事にしています。 塩原 「障害は個性」という言葉に共感します。相談員には、障害特性や個性についての知識は基本として必要です。そして、人の話をよく聞くこと。さらに、仕事を行う環境など、職場に関する理解も大事だと思います。  加えて、相談員は、障害のある社員が働きやすい環境をつくるのが仕事であり、それが会社にとっても大切な取組みだと思えることが、相談員としての活動には必要だと思います。 高田 基本的な知識はもちろん必要ですが、そこに縛られず個人の特性を理解することも重要だと思います。  プライベートで必要な措置があれば、支援者につなぎ、支援者と一緒に対応するようにしています。 社内外のネットワークの大切さ 和田 弊社では相談員全員で夕礼を行い、事例の対応や進捗状況を報告します。私自身が迷っている事例も、みんなの意見を参考に、対応を確認できる機会になっています。  また、こうした情報はケース記録としてデータ保存していて、必ず読むようにしています。例えば、業務中の態度に課題のある社員のケース記録を読むと、過去のいきさつや変遷などがわかり、いまの状況やなぜそのような態度をとるのかなどが理解できます。そうした理解の共有が、就労定着への指針にもなっています。 塩原 弊社でも全社員のケース記録を取っていて、いつ、だれが、どのように対応し、どんな反応があったかを追えるようにしています。  また、相談員の情報共有のため、週1回ミーティングを行うことにしました。情報共有するまでに時間的なずれが生じるため、よりよい方法を検討していくことが、今後の課題です。 高田 社内での情報共有はもちろんですが、社外の専門家や経験豊富な他企業の方とのコネクションを持つことが、今後の課題です。相談員同士で話せる場も必要です。みなさん、迷いながら日々がんばっていますから。 和田 弊社では職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修の見学を受け入れています。私はこのジョブコーチ養成研修を担当し、他企業の方と話すことでよい刺激を得ています。  他方、私自身も他企業を見学させていただき、そこでの取組み姿勢やアイディアを参考にしています。 内田 相談員として、基本知識を持つことはもちろん大切ですが、すべてを一人で抱え込むのはむずかしいと思います。何かあったときに、どこに相談すればよいのかを知っておくことも大切でしょう。そして、外部の方とのつながりも、必要なのではないかと感じました。  さて、いろいろうかがいましたが、今日の座談会はいかがでしたか。 高田 他企業の相談員同士で話すことがあまりないので、とてもありがたい機会でした。自分自身の疑問を話すことができ、情報交換できる場は大切だと思いました。 和田 情報交換の場がなかなかないので、貴重でした。また、相談員の重要性を再認識できました。 塩原 社外の人とお話しすること自体が稀です。相談員を会社として、どう機能させていくかを悩んでいたので、今日うかがった内容を今後の取組みの参考にさせていただきます。 内田 みなさんのお話から、相談員の重要性が本当によくわかりました。これから相談員として活動される方には、大きなヒントになったのではないかと思います。むずかしく考えず、障害のある社員が安心して働けるように、同じ目線で一緒に仕事をしていくことが第一歩だと思います。  本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。 当機構ホームページで、相談員の活躍事例や活動を紹介した動画などお役立ち情報を掲載しています。ぜひご参照ください。 JEED相談員 活躍事例 お役立ち情報 検索 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04/jirei.html 写真のキャプション ■座談会に参加された方々 (写真右から) 株式会社KDDIチャレンジド 事業企画部 高田(たかだ)麻里子(まりこ)さん リゾートトラスト株式会社 東京・横浜事務支援課 和田(わだ)康延(みちのぶ)さん 大和ライフプラス株式会社 ダイバーシティ推進部統括課 塩原(しおばら)麻里(まり)さん 進行役の中央障害者雇用情報センター 障害者雇用支援ネットワークコーディネーター 内田(うちだ)博之(ひろゆき)さん 株式会社KDDIチャレンジド 高田麻里子さん リゾートトラスト株式会社 和田康延さん 進行役の中央障害者雇用情報センター 内田博之さん 大和ライフプラス株式会社 塩原麻里さん 【P20】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 事業主のみなさまへ 令和3年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ 〜常用雇用労働者が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜 令和3年4月1日から同年5月17日の間に令和3年度分の申告と申請をお願いします。 前年度(令和2年4月1日から令和3年3月31日まで)の雇用障害者数をもとに、 ○障害者雇用納付金の申告を行ってください。 ○障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。 ○障害者の法定雇用率を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 *令和3年3月1日より障害者の法定雇用率は2.2%から2.3%へ引き上げになります。 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者特例調整金 特例給付金 申告申請の対象となる期間 令和2年4月1日〜令和3年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和3年4月1日〜令和3年5月17日 (注1、注2、注3) (注1)年度(令和2年4月1日〜令和3年3月31日)の中途で事業廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告申請(障害者雇用納付金の場合は、申告額の納付)が必要です。 (注2)障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金及び特例給付金は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できませんので、十分にお気をつけください。 (注3)常用雇用労働者が100名以下の事業主が、特例給付金の申請を行う場合の申請期限は令和3年8月2日となります。 *詳しくは、最寄りの各都道府県支部 高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。 JEED 都道府県支部 検索 常用雇用労働者が100人以下の場合は障害者雇用納付金の申告義務はありませんが、雇用障害者数が一定数を超えている場合は報奨金の支給申請をすることができます。 詳しくは最寄りの都道府県支部にお問い合わせください。 申告申請の事務説明会にご参加ください。 *全国各地で2〜3月に開催します。 *参加費は無料です。 *詳細は当機構ホームページをご確認ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/levy_grant_system_briefi ng-reiwa3.html 【P21】 エッセイ【最終回】 あなたはどう思いますか? 坂井聡 さかいさとし  香川大学教育学部教授、香川大学学生支援センターバリアフリー支援室室長、香川大学教育学部附属坂出(さかいで)小学校校長・附属幼稚園園長、言語聴覚士、公認心理師。  特別支援学校での進路指導の経験があり、現場をよく知る実践的な研究者。富士通株式会社やソフトバンク株式会社と産学官の共同研究も行っている。  新型コロナウイルス感染症の拡大は社会に大きな影響を与えている。新しい環境をどう受け入れていくのかと考えたとき、いまの状況を打破するための鍵となるのは、“アイデア”だと思う。元禄時代の作家、井原(いはら)西鶴(さいかく)の言葉といわれている「金がなければ知恵を出せ。知恵がなければ汗を出せ」というものがあるが、この言葉はいまでも通じるものだと感じる。 現場に足を運ぶ  私は、ICT(情報通信技術)の活用が、特別な支援を必要とする人たちの環境をこれから大きく変えていくであろうと考えている。それは、コミュニケーションの環境だったり、生活そのものの環境だったりする。私が取り組んでいるこれらの研究の領域は、「支援技術」といわれる領域である。そのため、ICT機器を操作したりプログラムを組んだりする技術が秀でていると思われがちなのであるが、実は私自身は、その道の専門家ではない。私自身は、もっぱらアイデアを出して、それをどのように活用すれば、利用する人たちの生活の質を高めることになるだろうかと考えるのみである。  私のアイデアは、大学の教育学部の技術領域の教員によって試作品となる。私はその試作品を実際に現場に持っていき、使ってもらいながら意見をまとめていく。このように、私のアイデアは試作品を経て、現場で使ってもらって、その人たちの意見を聞きながらブラッシュアップされるのである。そして、その道のプロである企業などと共同で、試作品を完成品にしていく。これが、私の研究のプロセスである。実践的な研究ということになるだろう。  実践的な研究をしていくのだから、実際に生活で使ってもらった感想や意見はどうしても必要である。机上でいくら考えても、所詮自分の頭の中から抜け出ることはできない。実際の生活場面では、机上で想定していたこと以上にユニークな使われ方がされることも多いからである。そのためには、現場に足を運んで、使っている人の意見を聞き、使っている人の使い方を観察し、使っている人の立場で考えていく必要がある。「このように使ってください」と指示するものではない。使う人が、自分の生活の質を高めることができるのであれば、その使い方は自由なのである。このようななかから、次なるアイデアを生むための情報を得るのである。現場に行って、一緒に活動することで得られたものからアイデアは生まれてくる。 アイデアを生み出すために  このように実践的な研究という観点から考えてみると、冒頭で述べた言葉は、私の場合は「知恵あるときは知恵を出せ、知恵なきときは汗を流せ」ということになるのではないかと思う。知恵があれば出せばよいのだが、その知恵がなかなか出てこない。アイデアを生み出すための知恵を得るためには、現場に出てともに汗を流し、アイデアの種を探すということが大切なのである。  これまでも企業などと共同でいろいろなものを形にしてきた。例えば、富士通株式会社と共同で完成させた「きもち日記」(※1)や、ソフトバンクグループ株式会社と共同で完成させた「アシストガイド」(※2)などである。いずれも、現場に足を運んで汗を流して得られたものをアイデアにし、企業と組んで完成させたものである。やはり、プロが完成させると中身も外見も違う。私たちのような実践的研究者ではつくり出せないものである。同じように使うのであれば、おしゃれでかっこいいものを使ってもらいたいと思う。だから企業と組むのは大切な方法である。  どちらも「知恵なきときは汗を流せ」の言葉を実行し、現場で得られた情報からつくったものである。これからも、現場に足を運びながら、知恵を出すことができるように汗を流したいと考えている。 ※1 きもち日記:https://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/education/school/support/kimochinikki/ きもち日記 富士道 検索 ※2 アシストガイド:https://www.softbank.jp/mobile/service/assistguide/ アシストガイド ソフトバンク 検索 【P22-27】 編集委員が行く 各地の障害者就業・生活支援センターから見た、コロナ禍の障害者雇用 相談支援事業所 Serecosu新宿 武田牧子 編集委員から  地域ごとの障害者就労現場を把握している「障害者就業・生活支援センター」の方々に、コロナ禍での障害者雇用の現状と今後の工夫について、WEB座談会を開催し、お話をお聞きした。 写真:官野 貴 Keyword:障害者就業・生活支援センター、在宅ワーク、ITリテラシー、WEB利用 ■座談会 県中地域障害者就業・生活支援センター ふっとわーく センター長 木村(きむら)美和(みわ)さん(福島県) WEL’S TOKYO 就業・生活支援センター センター長 堀江(ほりえ)美里(みさと)さん(東京都) 広島東障害者就業・生活支援センター 就業支援ワーカー 萬行(まんぎょう)裕紀(ひろき)さん(広島県) 障害者就業・生活支援センター ジョブあしすとUMA 理事長・第三事業部長 井原(いはら)佳代(かよ)さん(愛媛県) 障がい者就業・生活支援センター ティーダ&チムチム センター長 中村(なかむら)淳子(じゅんこ)さん(沖縄県) POINT 1 緊急事態宣言後、休業や勤務日数減少など就労状況が変化 2 各障害者就業・生活支援センターの支援方法は、電話やメールのほかWEBを導入 3 今後は、WEBの活用による新たなネットワーク構築へ はじめに  障害者相談支援事業所で計画相談にたずさわっていると、緊急事態宣言以降のコロナ禍で、障害者雇用の現場も大きな影響を受けていることが肌で感じられる。本稿取材時には感染拡大の第3波が全国各地に広がりを見せてきたことから、地域ごとの障害者就労現場を把握している「障害者就業・生活支援センター」(以下、「ナカポツ」)(24ページ図1参照)の方々に、現状とウィズコロナの状況下での各地の工夫をお聞きする目的で、WEB座談会を企画した。 WEB座談会参加者の地域の状況 武田 まず、みなさまの事業所の概要とアピールポイントをご紹介ください。 木村美和(以下、木村) 福島県郡山(こおりやま)市を中心に、広範囲の県中地域を担当しています。私がナカポツ以外の支援事業所の管理者も務めていることから、当センターで支援している人が福祉サービスを利用するなどの際は、事業所間でスムーズな引き継ぎが可能です。また、圏域内の基幹相談支援センターとの連携もスムーズに行えていることもアピールポイントです。 堀江美里(以下、堀江) 東京都千代田区を中心に担当しています。東京都は人口が多いため、国の障害者就業・生活支援センターと、市区町村の障害者就労支援センターが連携しながら日々障害者の就労支援を行っています。  コロナがいつ収束するかわからない、先が見えないなかでも変わらず、障害者の就労支援ニーズは高いので、まずは自分たちが感染しないよう細心の注意を払いながら、サービスを提供し続けることが重要だと思っています。特に知的障害のある方々は現場での仕事が多いため、ITリテラシーがおよばない方が取り残されないように心がけています。 萬行裕紀(以下、萬行) 広島市東部を中心に担当しています。当センター母体の「社会福祉法人つつじ」では、おもに発達障害のある方の、幼児期から成人期までの生活支援や就労支援に力を入れています。当センターと同じ建物に、発達障害のある方への支援に特化した就労移行支援事業所も併設しています。広島市障害者就労支援事業を利用し、さまざまな職場体験実習先を確保しているのが特徴です。 井原佳代(以下、井原) 担当圏域は愛媛県四国中央市の1市1圏域です。そのため、管轄のハローワークは1カ所で、行政や福祉サービス事業所との顔の見える関係が構築しやすいです。  市単独事業の実習支援制度があり、その運営を委託されています。担当圏域での就労支援は、その制度を活用した、実習から雇用への流れがスタンダードになっています。また、市の自立支援協議会主導のもと、障害者雇用啓発のための就職準備フェアを7年連続で開催しています。行政や福祉サービス事業所、相談支援事業所などと共同で運営しているため、よりよい連携につながっています。  愛媛県内では職場適応援助者(ジョブコーチ)支援の活用実績が、県庁所在地である松山市に次いで多い圏域でもあるのですが、訪問型ジョブコーチは圏域内に2人しかおらず、障害者職業センターとのペア支援に頼っている現状です。しかし、就労移行支援と就労定着支援を行う事業所がそれぞれ2カ所あり、就労定着支援事業の体制は整っています。 中村淳子(以下、中村) 当センターは沖縄本島北部に位置しており、担当圏域の人口は沖縄本島の約10分の1ですが、面積は本島の3分の2を占めており、広範囲におよびます。各関係機関とのネットワークは、人口が多くないこともあって、顔の見える関係が構築され、相談を受けた機関から、ハローワークやナカポツへつなげる流れができています。  2019(令和元)年度には、ハローワーク主催・ナカポツ共催で、企業を対象とした特別支援学校への授業参観を行ったのですが、その後、企業から特別支援学校に、実習生の受入れなどについての問合せが増え、好評でした。  また、当センターでは沖縄県単独事業である「障害者等雇用開拓・定着支援事業」で障害者雇用開拓・定着支援アドバイザーが1人配置されており、企業や福祉サービス事業所を訪問し、事業主と障害のある方双方に助言などを行っています。  当センターは開所から19年が経ちました。就労支援のプロセスを基本に支援を行うよう心がけており、地域の障害のある方が、地域の一員として生活設計できるように橋渡しができれば、と考えています。そのほか、在職者経験交流会ではビジネスマナーやサイバー犯罪防止、お金の使い方などの学習会を行っています。また、特別支援学校の保護者向けの講話も行い、保護者の協力がとても重要であることをお伝えしています。 緊急事態宣言後の雇用状況への影響 武田 相談支援のモニタリングでも、昨年4月の緊急事態宣言の発出後、就労している方に少なからず影響が出ていることがうかがえます。  在宅ワークになっても給与が全額保証される人、そうではない人、4月以降通勤抑制で週1日出勤となり、仕事がないままの在宅ワークという方もいますし、体調を崩される方も出ています。業種によっても対応が大きく異なっている印象を受けます。各地の状況はいかがでしょうか。 中村 担当圏域の沖縄県北部にはリゾートホテルが多く、宿泊業や観光産業を中心に、登録者36人が自宅待機や隔日勤務、時短勤務、在宅ワークとなり、1人が解雇となりました。介護事業所では、実習生の受入れが延期されたりしています。  また、例年4月は特別支援学校卒業生などに対して、ハローワークと調整をして就職先への訪問活動を行う時期なのですが、2020年は訪問できず、本人への聞き取りは電話や職場の外で行い、企業への聞き取りは電話で行ったため、3者で仕事の状況をすぐに共有することはむずかしくなりました。  そして、休業中ほとんどの方は、事業主への雇用調整助成金による休業手当や休業支援金の受給などがありましたが、なかには支給がなく生活維持が厳しい方もおり、転職支援を行いました。企業側も雇用を維持するために努力してもらってはいますが、今後の状況によってどうなるか、先が見えない状況が続いています。 井原 コロナ禍での生活様式の変化によるストレスや、職場の生産調整により休みが増えたことによる精神的な不安についての相談が増えました。  緊急事態宣言の発出により事業所が休業となり、4月に予定していた実習が2カ月延期になったこともありました。実習を経て企業が雇用を検討中だったケースでは、コロナの影響でいったんそれが見直しになり、結果的に就職にはつながったのですが、予定より入社時期が遅れました。  年間の実習件数も計画数は見込めるものの、就職のタイミングはずれこむ可能性があり、就職件数は不確定の状況です。  また、一般求人からの就職の流れが後退しており、見学〜実習〜就職という手順をふんでいる間に、一般の求職者が採用され、雇用に至らないケースが増えています。  担当圏域の業種は紙加工業関連業種が多く、コロナの影響により学校教育関係の紙製品は休校で需要が下がり、新規の雇入れがむずかしくなっています。逆に、衛生用品を取り扱う企業では需要の高まりに生産が追いつかず、「すぐに戦力になる方がほしい」との理由で、障害者雇用に消極的になっているのも現実です。 堀江 東京都内では雇用率を牽引(けんいん)してきた企業において、これまでの仕事が少なくなるなかで、どう仕事を切り出すかを検討しつつ、従業員の7割を在宅勤務にしたものの、9月以降から仕事そのものがなくなり、次年度の雇用契約がむずかしいという話も出ています。有期契約の方が多いので、このまま雇用契約がなくなることが心配です。  一方で、病院や物流に勤める方はむしろ忙しくなり、以前と変わらず出勤しがんばっていますが、これだけ市中感染が広がると、親御さんたちは「感染するのではないか」と通勤を心配されています。知的障害のある方のなかにはフェイストゥーフェイスでないと意思疎通がむずかしく、在宅ワークではうまくいかない事例もあります。  WEB実習も広がってきていますが、われわれが支援している方のなかには、ITリテラシーが高くない方々が多いので、求人や実習依頼があっても要請に応えられなくなっている面もあります。 萬行 2020年3月から、新型コロナウイルスの影響により勤務日数が減少したとの相談が少しずつ入るようになりました。4月には、当センターに登録されている在職中の方の約26%が、勤務日数減や休職、自宅待機になるなどの影響を受けました。なかには、業務内容の変更などにより、精神的にきつくなり休職に至った方もいました。5月に入り、自宅待機の方は少なくなったものの、勤務日数減の方は継続して日数が減少したまま、という状況がありましたが、6月には、ほとんどの方が通常勤務に戻りました。  圏域内に自動車メーカーの本社があるので、自動車関連の製造業が多いのですが、新型コロナの影響で自動車メーカー本社での製造ラインがストップしたため、それに関連する中小企業も製造がストップしました。その影響で4月〜6月は受注が減って生産量も減少したことで、勤務が不安定になった方が多いと感じました。  2020年3月に特別支援学校を卒業して就職した方からは、不規則な出勤や、業務の見通しが立たないことで「不安を感じる」、「生活リズムをつくりづらい」との相談がありました。また、4月〜6月の繁忙期が後ろ(7月〜9月)にずれたことで業務量が急激に変化し、暑さも相まって心身ともにストレスを感じる方もいて、職場訪問や来所面談でお話をうかがい、ストレスの解消方法などについてアドバイスしました。  特別支援学校を卒業し、ホテルの調理業務に内定された方は、就職日が4月1日から12月1日にずれたことで、先の見えない状況に精神面が不調となりました。その間、面談を重ね、精神面のケアを行っていました。 木村 福島圏内でのこれまでの影響は、職場実習が前年と同じ時期で17件マイナスとなり、広告代理店・ホテル・飲食業・カラオケ店・航空業では、減収や出勤調整がいまも続いています。  また、仕事が休みの日に体調管理やメンタル面の調整をしていたデイケアが、3密を避けるために人数を制限して使えない状況があり、不安定になる対象者が出てしまう事態も起こりました。 緊急事態宣言後の各ナカポツの支援方法の変化 武田 WEB実習のような新たな試みもされているようですが、感染予防対策も含めた新たな生活様式ならぬ、新たな就労支援様式を目ざしてどのような工夫をされていますか。 堀江 企業にも障害者にも感染予防の重要性を知ってもらわなければならないと、ガイドラインを作成しホームページで公開して注意喚起しました。また、当センターの支援員も法人指定のポロシャツを着用するなど、みんなで感染予防に意識を向けてもらうことを実施しました。 木村 予防対策では、障害のある方の感染予防意識レベルを上げていくために、直接お伝えした方がよりよい効果があります。密を避けるために大勢で集まってはいけないので、少人数ずつ集まってもらい、手洗い指導や免疫低下防止指導など、看護師の協力も得て勉強会を開きました。 井原 3月から6月までの間は、全国的な感染拡大から本人との対面による面談はむずかしくなり、継続的なアセスメントや課題の早期発見ができなくなるリスクが懸念されました。圏域では感染者が出ていなかったため緊急性の高い場合は面談を継続しましたが、非常時への備えも意識して、できるだけ電話やZoomを活用した面談や、メールでの状況確認に支援方法を変更しました。  しかし、対面であれば相手の理解具合い(非言語コミュニケーション)が手に取るようにわかっていたことが、画面越しだと情報量がかなり落ちることに気づきました。例えば、顔が一瞬くもった感じ、手の動き、入室したときの動き、姿勢、態度、目の動きなど、そうした情報が得にくいことが挙げられます。また、電波状況でタイムラグが生じ、こちら側から伝えたことと相手側の反応のタイミングが合わなくて、様子がわかりにくいというケースもありました。そして、そもそもZoomを使える人が少ないという課題や、自宅にオンラインの環境がない、自分の個室でも家族が気になってできないという人もいます。「傍受されているのでは」といった被害妄想を抱き、インターネットやZoomを信用していない方もいて、オンライン面談のむずかしさについて実感しました。  また、在宅ワークになった方に対しては、ほかの支援機関に定着支援の面談を増やすよう協力してもらいました。 武田 本誌を読んでくれている就労支援にかかわる方たちが、新しい生活様式の一つとして、就労定着支援が在宅ワークをよりよいものにしていくんだ、という使命感を持っていただけるといいですね。 萬行 担当地域に就労定着支援事業所が約20あります。事業所によって支援方法はさまざまであり、「支援計画書」や「業務内容ふり返りシート」を活用するなど、手厚く支援している事業所もあれば、それとは逆の事業所があるのも事実です。  こんなときだからこそ、新しい生活様式に絡めて、就労支援機関同士がボトムアップしていく必要があります。私たちナカポツが地域で支援するなかで、よりよい事業所同士のつながりを大切にし、仲間を増やすことが重要です。そのなかで就労定着支援事業所を利用し、働いているご本人の支援者が代わっても安心して働ける環境づくりをしていくことが大切だと思います。「3年半経ったら就労定着支援が終わります」ではなく、ナカポツと重なる感じで、終了の半年くらい前から就労定着支援事業所と一緒に数回顔合わせに行って、支援方法や職場環境などの情報を共有し、本人と企業が相談しやすい体制を整えています。一人ひとりのケースを積み重ねることにより、いまでは連携が取れるようになり、支援体制づくりが一歩一歩進んでいるように思います。 木村 就労移行支援事業の強みは、2年間じっくり支援できることです。就労定着支援は、就労移行支援事業所が継続して生活面の支援にかかわる姿がいいと感じています。企業訪問の際は当センターが同行したり、計画担当者も一緒に行ったりします。また、当センターは、企業での就労定着支援を引き継ぐ前から、定例で月一回、企業と支援方針を協議しています。そうすることで、3年半後に就労定着支援が終了しても、スムーズに当センターにつながります。 今後の障害者雇用推進の工夫 武田 今後、障害者雇用を進めるうえで、どんな工夫が必要でしょうか。 堀江 WEB会議を活用し、リアルタイムで企業の障害者雇用にたずさわる社員の人たちとやり取りできるようになりました。障害のある社員がコロナ禍でメンタル疾患にならないようにどうしたらよいのかを、経営陣だけでなく、みんなで一緒に考えていくことがポイントだと思います。すぐには障害者雇用につながらないかもしれませんが、健康経営として聞いてもらうことが、ひいては障害者雇用につながります。企業で障害者雇用の組織づくりをするためにWEB会議は有効です。 中村 コロナ禍で障害者雇用を進めるために、ハローワークが企業や関係機関など向けに「オンラインミニ説明会&面接会」を開催し、好評でした。オンラインを活用した新たな支援方法やネットワーク構築など、よりよい支援につながるように取り組みたいと思います。 木村 自粛期間中はいままでの支援の総点検として、地域に何が求められているのか、研修システムや勉強会の内容はこれでよいのかなどの見直しを迫られました。福島県は広域的なので、移動頻度がかぎられますが、移動制限がかからないWEBを活用するようになり、タイムリーに顔を見るやり取りが可能になったり、移動がないので現場の職員がWEB研修に参加しやすくなったり、新たな発見もたくさんありました。 萬行 みなさまのお話をうかがって、パソコンなどのIT機器の活用事例を知ることができました。新しい生活様式で何が正解かはまだわかりませんが、当センターでも新たな支援手段の一つとして、オンラインを活用していきたいと思いました。 井原 先ほど、オンライン面談のむずかしさについて実感したと話しましたが、これからの生活様式はその方向性に向かうのは間違いありません。そこで、在職者交流事業の一環で、障害のある方を対象にZoomの使い方講座を開催しました。最初、抵抗を示した人も意外と使えそうだという実感をもってもらえ、実際にZoom面談につながった人もいます。  WEB利用の研修しかり、感染予防対策しかりですが、障害のある方には、新しい生活様式をすぐに理解することがむずかしい方も相当数いらっしゃるので、噛み砕いて伝えることが重要だと思います。在宅ワークの過ごし方、会社に行けないときの過ごし方を、職場と連携を取ったり、福祉サービスの就労定着支援事業所と連携して、「わかっているだろう」ではなく、余暇の情報などを連携して情報共有していくことが求められると思います。  一方で、われわれ職員も出張研修がなくなり、学ぶ場が少なくなっていました。そこで、県内6センターが合同で3カ年計画として取り組んでいる「えひめ障がい者就労支援セミナー」を、オンライン形式で開催しました。各センターと、県外の講師をZoomでつなぐことで、交通費などもかかることなく、2年目の研修を実施することができました。 武田 コロナ禍でも障害者雇用を推し進めようとさまざまな工夫をしながら奮闘されているみなさまのお話は、本誌を読んでくださる読者にも役立つ情報としてお伝えできると思います。本当にありがとうございました。これからもご活躍を祈念しています。 おわりに(座談会を終えて)  コロナ禍で、通所系就労移行支援事業所も企業も在宅ワークが多くなった。就労されている方の一部ではいまだに在宅ワークと称して出勤要請がない方もいるなか、全国の障害者雇用への影響と、それを支えるナカポツの取組みが気がかりだった。私も以前、ナカポツにかかわっていたこともあり、仕事や研修などでご一緒させていただいた方々と久しぶりにお話ししたが、それぞれの現場で起こる現状に向き合いながら課題解決を試みられている様子をお聞きできた。  座談会では、地域の実情に合った新しい生活様式・新しい就労支援様式を工夫されており、そのなかで共通して見えてきたのが、WEB導入の試みであった。私自身のことでもあるが、福祉事業者は現場で利用者に向き合うことを是としており、ITリテラシーに関心が薄い。しかし、緊急事態宣言以降のコロナ禍で利用者の不利益を最小限にするための手段として否が応でもITリテラシーを高めざるを得ない局面となったが、なにぶんにも十分なテレワーク環境を整備していなかった。右往左往しているとき、事業継続緊急対策(テレワーク)助成金で整備できたこと、仲間からWEB会議の方法を教えてもらったことは、一歩前にふみ出すのに大きな励みとなった。  新しい生活様式での就労支援はハード面とソフト面、双方のサポートがないと、なかなか厳しいものになっていくだろう。そのときに、全国にネットワークを持つナカポツ同士でハードとソフト両面の助け合いをし、近隣の企業や就労移行支援事業者等との新たなWEBネットワークが形成されれば、就労支援環境が整い、地域のみならず日本国中とつながることができる。また、講師を全国から依頼することもできる。  感染拡大の第3波が猛威を振るうなかで、巷では暗いニュースが飛び交っているが、コロナ禍でたいへんな状況でも、障害者雇用を進めるための新たな様式を模索されている5カ所のナカポツの取組みが、少しでもお伝えできれば幸いである。 図1 障害者就業・生活支援センターとは 障害者就業・生活支援センター *都道府県知事が指定する一般社団法人もしくは一般財団法人、社会福祉法人、NPO法人など おもな業務内容  就業およびそれにともなう日常生活上の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問などを実施。 ◇ 就業面での支援  就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)、就職活動の支援、職場定着に向けた支援、障害者それぞれの特性をふまえた雇用管理についての事業主に対する助言、関係機関との連絡調整 ◇ 生活面での支援  生活習慣の形成、健康管理、金銭管理などの日常生活の自己管理に関する助言、住居、年金、余暇活動などの地域生活、生活設計に関する助言、関係機関との連絡調整 図2 各障害者就業・生活支援センターの支援規模 障害者就業・生活支援センター 対象エリア 登録者数 ふっとわーく(福島県) 12市町村 547人 広島東(広島県) 広島市3区と4町 273人 ジョブあしすとUMA(愛媛県) 1市 446人 ティーダ&チムチム(沖縄県) 12市町村 572人 ※WEL’S TOKYOのある東京都は人口が多いほか、市区町村の就労支援センターもあり、同列にできないため除外(出典:筆者作成) 図3 就労移行支援と就労定着支援 就労移行支援  障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつで、企業などへの就労を希望する人に対し、働くために必要な知識・能力向上、実習、職場探しなどを行う。利用期間は原則24カ月(2年)間。 就労定着支援  2018年4月から開始された改正障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつ。一般就労をしている障害のある人が長く職場に定着できるよう、生活面・就業面でさまざまなサポートを行う。利用期間は就職して6カ月後から最長36カ月(3年)間(※)。その後は、障害者職業・生活支援センター(ナカポツ)などが支援を引き継ぐ。 ※就職後6カ月間は、就労移行支援事業所などのそれまで利用した事業所による職場定着支援が行われる 写真のキャプション WEL’S TOKYO就業・生活支援センター センター長 堀江美里さん 県中地域障害者就業・生活支援センター ふっとわーくセンター長 木村美和さん インターネットを利用したWEB会議システムで、お話をうかがった 広島東障害者就業・生活支援センター 就業支援ワーカー 萬行裕紀さん 障がい者就業・生活支援センターティーダ&チムチム センター長 中村淳子さん 障害者就業・生活支援センタージョブあしすとUMA 理事長・第三事業部長 井原佳代さん 【P28-29】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 障害者雇用「もにす認定」に3事業者  厚生労働省は、2020(令和2)年度から実施している障害者雇用に関する優良な中小事業主への認定制度(以下、「もにす認定制度」)について、3社を初めて認定した。今回認定されたのは、特例子会社の「株式会社OKBパートナーズ」(岐阜県大垣市)と「はーとふる川内(かわうち)株式会社」(徳島県板野郡)、そして「有限会社利通(りつう)」(福島県会津若松市)。  認定されると、自社の商品・サービス・広告などに「認定マーク」を表示することができ、日本政策金融公庫の低利融資対象となるほか、厚労省ホームページにも掲載される。認定を希望する事業主は、必要書類を都道府県労働局またはハローワークに提出を。必要書類は厚労省ホームページからダウンロードできる。 生活情報 東京 視覚障害者・学習障害者に読書支援サービス  映像・音楽ソフトメーカーの「株式会社ポニーキャニオン」(港区)は、視覚障害者や学習障害者に向けた新しい読書支援サービス「YourEyes(ユアアイズ)」を発表した。  「YourEyes」は、本のページを読み取るOCR(光学文字認識)技術と、読み取った文章を読み上げるTTS(テキスト読み上げ)技術を組み合わせたもので、アプリをスマートフォンにダウンロードして本の書面を撮影することで、スマートフォンがその書面に書かれた内容を読み上げる。読み上げには、感情表現にも対応した最新の音声合成エンジンを採用。連続で本の書面を撮影することで、連続したページ読み上げも可能としている。サービス開始は2021年2月予定で、アプリ利用料は月額定額500円(個人)・2500円(法人・事業所)の予定。 働く 群馬 県内最大級の就労支援複合施設がオープン  「社会福祉法人久 きゅう 仁 じん 会 かい 」(沼田市)は、障害者 の入所・通所施設と、就労の場となる複数店舗 が一体となった複合施設「SONATARUE(ソナタリュー)」をオープンさせた。  約2千uの敷地に、就労継続支援やグループホームなどの事業所とレストランやカフェ、温泉施設、フィットネスジムを備え、中庭の公園を囲むように建物を配置。入所・通所している障害者は、適性などを考慮しながら接客やパンづくりなどを担当し、利用者との交流も図る。 埼玉 視覚障害者専門のナレーション事務所が開設  「合同会社ゆるり」(比企郡(ひきぐん)滑川町(なめがわまち))が、視覚障害者だけで構成されたナレーション事務所「みみよみ」を開設した。これまで能力があってもナレーションの仕事ができなかった視覚障害者ナレーターへのサポートを行う。視覚障害者にとってハードルとされてきた読み方の確認作業、音声編集、IT関連・事務手続きなどを代行し、音声コンテンツを必要とする企業をつなぐ。ホームページには、所属するナレーターの紹介や音声サンプル、料金などが掲載されている。 https://mimiyomi.audio 千葉 知的障害者が就労する「缶詰カフェ」オープン  障害者の多機能型事業所などを展開する「株式会社ベストサポートITSUMO(イツモ)」(千葉市)が運営する、最重度知的障害者向けの生活介護事業所「ITSUMO」は、利用者の就労の場として、缶詰や飲み物を提供する「缶詰カフェ」(千葉市)をオープンした。利用者は、缶詰を温め提供するほか、キッチンでの洗い物などを担当する。  缶詰専門店として全国展開する「mr.kanso(ミスターカンソ)」の協力のもと、一般店舗では見かけにくい八宝菜やお好み焼きなど、約200種類の缶詰を揃える。災害時には40人ほどを収容できる避難所にすることを想定し、カフェの缶詰を配るほか、井戸水や発電機、布団、非常食300食も用意。営業時間は11時〜17時(月〜金)。 http://itsumo-f.jp/ 電話:043―310―7970 大分 多機能型事業所とデザイン会社で新ブランド  障害者の多機能型事業所「一般社団法人DESIGNERS(デザイナーズ) COMPANY(カンパニー) Y.H2020(ユーツー)」(別府市)は、デザイン会社「株式会社コント」(大分市)とともに、障害者アートを展開するブランド「naNka(なんか)」を立ち上げた。企業や団体と協働しながら、グッズ開発やイベント開催などに取り組む。  このほど第1弾としてオリジナルの紙製マスクケースを製作。地元の観光業者が客に提供できるよう、別府タワーや別府湾、湯煙などをテーマに障害者が手がけた絵やオブジェをデザイン化した。抗菌加工の紙を使った4種類(二つ折・三つ折各2種類)がある。100枚入り3500円(税別)から。 http://nanka.jp/maskcase/ FAX:097−535−8081 本紹介 『発達障害・知的障害のための合理的配慮ハンドブック』  大阪大学大学院連合小児発達学研究科研究員の土橋(どばし)圭子(けいこ)さんと、精神科医で東京大学准教授の渡辺(わたなべ)慶一郎(けいいちろう)さんが中心となって、「発達障害・知的障害のための合理的配慮ハンドブック」(有斐閣刊)を出版した。  障害者差別解消法により、障害者に対する「合理的配慮」の提供が学校や職場、医療機関や福祉施設などにおいて求められているなか、判断がむずかしい発達障害・知的障害の事例に焦点をあて、法律的視点や医療・心理的視点、教育的視点から具体的に解説している。A5判262ページ、2600円(税別)。 2020年度地方アビリンピック開催予定 2月〜3月 東京都、香川県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *東京都、香川県以外の県は開催終了(開催中止含む) 地方アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 アビリンピック マスコットキャラクター募集中!! 2021年2月末まで くわしくはコチラまで 就労支援機器紹介シリーズ 第1回 障害のある社員の就労環境を支援する機器やソフトをご紹介します! 株式会社高知システム開発の『PC(ピーシー)-Talker(トーカー) Neo(ネオ) Plus(プラス)』視覚障害者向け 60,000円(税別) 利用期間5年 製品説明 「Windows が、いろんなことをしゃべりだす。」 ●Microsoft Windows 10 を音声ガイドするスクリーンリーダー ●高音質な音声エンジンを採用 ●Microsoft Offi ce(Word、Excel、Outlook、PowerPoint)に対応 ●ファイルを集中管理できる「MyFile」や拡大機能付きの音声エディタ「MyEdit」、音声電卓、音声時計などを標準で装備 ●1年に2回実施されるWindows 10の大型アップグレードに対応し、常に最新のソフトでセキュリティの強化された製品を提供 ※製品の詳細はホームページでもご覧いただけます(http://www.aok-net.com/) 製品のお問合せ 株式会社 高知システム開発(TEL:088-873-6500)まで 当機構では障害者を雇用している・雇用しようとしている企業にPC-Talker Neo Plus を無料で貸し出しております! 詳しくは、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 中央障害者雇用情報センター(TEL:03-5638-2792)、またはホームページをご確認ください(https://www.kiki.jeed.go.jp/)。 就労支援機器のページ 検索 写真のキャプション 東京都 香川県 【P30】 掲示板 読者の声 「藤田さん、連休取りましたか」 藤田(ふじた)雄大(ゆうだい)  全国アビリンピックに出場し、入賞経験のある者です。私は精神障害で手帳を取得していますが、そんな私が能力を発揮しつつ安心して働けるのは、上司のおかげです。  「だれかが仕事を休んでも、会社が回る仕組みを作るのが自分の仕事だ」、これが上司の口癖です。残業はするな、体調が悪いときは自分に言え等々、障害のある私に配慮してくれているのだと最初は思っていました。実際のところ、そうではないのです。なぜなら部の全員に言葉をかけ、気を遣ってくださるのですから。私が障害者だから特別対応しているのではなく、だれに対しても同じ対応だったのです。  障害者雇用においてはよく「支援」という言葉が使われますが、支援する・されるの関係が固定するようで、あまり好きではありません。ですが、「気遣い」という言葉なら。上司が私に気遣いをしてくださるように、私も上司に「何かお手伝いすることはありませんか」と気遣いができる。そんな双方向の関係が、私の職場には自然に生まれているのです。  いまの職場は障害者にとってだけではなく、だれもが働きやすい自慢の職場です。上司が示してくれた当たり前で特別な「気遣い」を、私も伝えていきたいと思っています。 次号予告 ●リーダーズトーク  東急リバブル株式会社(東京都)代表取締役社長の太田陽一さんに、同社における障害者雇用の取組みについてお話をうかがいます。 ●職場ルポ  凸版印刷株式会社の特例子会社、東京都プリプレス・トッパン株式会社(東京都)を訪問。従業員の職場定着と、職域拡大を進める現場を取材します。 ●グラビア  伊藤忠商事株式会社の特例子会社で、クリーニング業務やプリント業務を行っている伊藤忠ユニダス株式会社(神奈川県)を取材。ここで活躍する障害者スタッフをご紹介します。 ●「『働く広場』公開座談会」採録  2020年12月5日(土)に開催された公開座談会「発達障害者の雇用を促進するために〜若年求職者への支援を考える〜」の採録を掲載します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ※令和3年4月1日から、メールアドレスはhiroba@jeed.go.jpに変更となります ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 2月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和3年1月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【裏表紙】 マスコットキャラクター2021年2月末まで募集中! くわしくはコチラまで 令和3年12月17日(金)−12月20日(月) 東京ビッグサイト 2021 第41回全国アビリンピック 障害者ワークフェア2021 2月号 令和3年1月25日発行 通巻520号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)