【表紙】 令和3年2月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第521号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2021 3 No.521 リーダーズトーク 顧客満足を支える社風、多様な社員の活躍と業務拡大の礎に 東急リバブル株式会社 代表取締役社長 太田陽一さん 職場ルポ 「人財開発室」を拠点に、細やかな支援と育成 東京都プリプレス・トッパン株式会社(東京都) グラビア マイスターを目ざして 伊藤忠ユニダス株式会社(神奈川県) 公開座談会 発達障害者の雇用を促進するために 〜若年求職者への支援を考える〜 「ぼくは白バイ隊員」鹿児島県・大澤津(おおさわつ)來斗(らいと)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 3月号 【前頁】 心のアート ひぜんこまいぬ 高井遵汰 (就労継続支援B型事業所ジーニアス) 素材:和紙、アクリル絵の具/サイズ:225mm×305mm 和紙に毛筆用の筆、アクリル絵の具で描いた『肥前狛犬(ひぜんこまいぬ)』。 「佐賀県に存在する珍種の狛犬『肥前狛犬』を描いてみよう」というテーマのもと、作者の持ち味である伸び伸びとしたダイナミックな線や、見る者の気持ちを明るくさせる独創的な配色が存分に活かされた作品。 「楽しんで描けました」と本人は満足気に語る。 (文:就労継続支援B型事業所ジーニアス 西村史彦) 高井 遵汰(たかい じゅんた)  1998(平成10)年生まれ。2020(令和2)年3月、就労継続支援B型事業所ジーニアスと出会い、アート活動に取り組むようになる。  中学生のころ美術部に所属していたという彼の魅力は、ダイナミックな配色と伸び伸びとした線。バスと電車とラーメンが大好き。 協力:SANC(Saga ArtBrut Network Center) 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2021年3月号 NO.521 心のアート−−前頁 ひぜんこまいぬ 作者:高井遵汰(就労継続支援B型事業所ジーニアス) リーダーズトーク−−2 第4回 顧客満足を支える社風、多様な社員の活躍と業務拡大の礎に 東急リバブル株式会社 代表取締役社長 太田陽一さん 職場ルポ−−6 「人財開発室」を拠点に、細やかな支援と育成 東京都プリプレス・トッパン株式会社(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 JEEDインフォメーション−−12 就労支援機器紹介シリーズ 第2回 障害のある社員の就労環境を支援する機器やソフトをご紹介します!/職業センターの支援技法開発をご紹介します/ 「読者アンケート」結果発表!! グラビア−−15 マイスターを目ざして 伊藤忠ユニダス株式会社(神奈川県) 写真/文:官野 貴 エッセイ−−19 障害福祉サービスの現場から 第1回 社会保険労務士・行政書士 高橋 悠 公開座談会−−20 令和2年度内閣府主催 障害者週間連続セミナー 発達障害者の雇用を促進するために 〜若年求職者への支援を考える〜 省庁だより−−26 令和2年 障害者雇用状況の集計結果@(令和2年6月1日) 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 研究開発レポート−−28 第28回 職業リハビリテーション研究・実践発表会特集 Part1 特別講演「障害者雇用の経営改善効果〜戦力化と相乗効果〜」 『働く広場』記事索引−−30 掲示板・次号予告−−32 ※「クローズアップ」、「ニュースファイル」は休載します 表紙絵の説明 「白バイに乗せてもらったことがきっかけで、白バイ隊員になりたいと思うようになりました。将来、街の安全を守っている自分の姿を想像しながら描きました。一筆ずつ色をつけていくのに苦労しましたが、道路や木、ガードレールを描き足していくと、だんだん本物のように見えて、自分でもよく描けたと思います」 (令和2年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-5】 リーダーズ トーク Leaders Talk 第4回 顧客満足を支える社風、多様な社員の活躍と業務拡大の礎(いしずえ)に 東急リバブル株式会社 代表取締役社長 太田陽一さん 太田陽一(おおた よういち) 1983(昭和58)年、東急不動産株式会社入社。 1995(平成7)年、東急リバブル株式会社出向、経営管理本部経営企画部長、流通事業本部副本部長、関西支社長、経営管理本部長などを経て、2019年4月より現職。  不動産流通業界の大手「東急リバブル株式会社」は、障害者雇用において2006(平成18)年にいち早く在宅勤務制度を導入、2013年にはダイバーシティ専門部門を立ち上げて積極的に業務拡大や働き方改革に取り組んできました。これまでの障害者雇用推進の背景や今後の展望について、代表取締役社長の太田陽一さんにじっくり語っていただきました。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 図面作成を在宅勤務でテレワーク推進賞受賞 ――東急リバブルは2006年、障害者雇用においてサテライト(在宅勤務)スタッフの採用を始めました。取組みのきっかけや経緯を教えてください。 太田 私は、当時は経営企画部にいて直接かかわっていませんが、その少し前に人事部で障害者雇用にもたずさわっていました。世の中で障害者雇用への取組みが広がりつつあるなか、東急リバブルではまだ採用方法も確立していませんでした。ちょうど私自身が社会保険労務士の資格を持っていたこともあり、仲間から助言をもらいつつ就労移行支援事業所などを回りましたが、思うようにうまくいきませんでした。というのも社内では、障害のある人が一緒に働くイメージをなかなか持てなかったのです。当社は売買仲介事業が柱ですから、対面による接客業が基本です。しかも宅地建物取引業というのは専門的な部分も多いので、障害のある人が働く場としては、かなり難易度が高いのではないかと思われていました。  少し脱線しますが、私の次男にも障害があります。知的障害をともなう自閉症です。私からすると彼は働いてもらうのがむずかしいタイプですが、就労も模索していました。障害者に関することについては、世の中はきれいごとだけでは進まないだろうという本音もあります。障害のある人が望む雇用とは何か、企業がどこまで応えられるのか、私なりの思いもあったのですが、具体案までは見い出せていませんでした。  ですから在宅勤務について聞いたときは、「そういうことから始められるのか」と感心しましたね。きっかけはやはり法定雇用率の未達成が続いたことでした。指導に入ったハローワークの人たちと一緒に「どんな仕事なら切り出せるか」を相談するなかで、ちょうど社内でパソコン作業化が進んでいたマップ・図面作成なら在宅でも可能ではないかという話になったそうです。以前から、身体障害のある方にイラストレーター(※1)のスキルを教えていた就労移行支援事業を行うNPO法人と連携し、図面を描く業務などを学んでもらい、手応えを得ました。また、特定の業務に特化したことで、障害があってもスキルを活かせる仕事を見い出すことができました。世の中ではサテライトやテレワークという言葉もまだ浸透していないなか、この取組みは2009年にテレワーク推進賞(※2)を受賞しました。  最初の数年は生産性にはつながりませんでしたが、いまでは逆に大きな戦力になっています。デジタル化できない図面のトレース作業を、ほかのグループ会社からも業務受託するようになりました。彼らから発案された、営業社員の似顔絵を描く仕事もありますよ。日ごろからチーム内で自主勉強会を開いて、スキルアップも図っているようです。 チャレンジスタッフ職場定着率は6年間で88% ――2013年に大手不動産流通会社として初のダイバーシティ専門部門を立ち上げ、翌年から通勤型の精神障害のある方の雇用(チャレンジスタッフ)を始めたそうですね。 太田 背景には、東急リバブルの成長とともに社員数も増え、法定雇用率達成へのハードルが高くなったことがあります。「これでは社会的責任を果たせなくなる」という危機感のもと、ダイバーシティ専門部門を立ち上げ、精神障害のある人の採用という取組みを始めました。  彼らは特性などに偏りがあるといわれますが、高度な能力を活かせる業務があれば、うまくやっていけます。一方では職場環境をしっかり整えないと体調が不安定になったり、二次障害を引き起こしたりすることもあるので、現場ではそこを一番フォローしました。しかも仕事と環境をマッチさせることで、一人ひとりが自立的に成長していく部分もあります。試行錯誤を重ねながら、全体的な底上げを図っていくことができました。  ダイバーシティ専門部門を立ち上げてからの職場定着率は、6年間で88%と高い実績が出ています。やはり効率よくみんなで業務を遂行していくには、能力をしっかり身につけた社員が、就業を継続していくこと、成長してくれることこそが大切です。これは一般の職場と同じですよね。 「会社への貢献を」スタッフも意欲わく ――フラワーアレンジメントなど新しい業務もつぎつぎと増えています。 太田 フラワーアレンジメントは、もともと営業部門で、成約したお客さまに贈っていました。これを障害のある人につくってもらおうと社員から発案されたのですが、クリエイティブな部分も多いですから、私は結構なチャレンジかもしれないと思いました。そのうえで私は一つシビアな要求をしました。それまでフラワーアレンジメントは外部調達で、結構な費用もかかっていたため「内製化するなら少しでもコストダウンにつなげてほしい。会社への貢献を明確化することで、本人の働きがいにもつながるはずだ」といったのです。  もちろん実際にスタートしてからは課題もたくさん出てきました。生産が安定しない、人によってできばえが違う、管理や場所確保の問題などです。一方で、伸びしろの可能性も感じていました。そこで、ダイバーシティの担当者に対しその点を本人たちに直接伝えるよう依頼したところ、彼らも会社に期待されていることを知って意欲がわいてきているのがわかりました。  彼らの仕事が会社の生産性アップにつながった場合は、それをしっかりと彼らに伝えてあげなければいけないと思っています。実際に数字もしっかり出しており、右肩上がりのグラフを彼らに示しています。いまは11人が担当するようになりました。  事務系の仕事を担当するチャレンジスタッフの定型業務は70以上に増え、単発的なものは300以上になります。スタッフのなかにはプログラミングが得意な人もいて、外部に委託していたアナログ業務をRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション、コンピュータなどによる業務自動化)に移行させるためのツール構築にたずさわってもらうなどしています。働き方改革が進むなかで、社員の業務効率化などに役立っていくと期待しています。 ベースにある社風により協力的だった各部署 ――これまで業務拡大が順調に推進されてきた理由は何だと思いますか。 太田 最初のころダイバーシティの担当者が業務の切り出しのため各部署に相談に行ったのですが、どこも予想以上に協力的だったことに驚きました。障害者雇用に対する意識が高い、というべきでしょうか。ベースにあるのは、これまで少しずつつくり上げてきた社風ではないかなと私は感じています。  東急リバブルは2010年からの社内議論を経て、「3つの業界ナンバー1」を目標に掲げています。@お客さまに評価されること=CS(顧客満足)、A社員が働きやすいこと=働きがい、B事業の生産性が上がること=事業競争力、です。本来は事業競争力の強化が一番わかりやすく納得感のある目標でしょうが、「何よりお客さまから評価されないと、働きがいもない」と私たちは考えました。働きがいがよい仕事につながり、お客さまの評価が高まり、競争力も上がる。循環しながらステージアップし、持続的に成長していく。この考え方が社内全体に浸透するまでは時間もかかりましたが、いまでは社員のアイデンティティになっていると確信しています。  実は2005年にも各部署で「7つの資質」というものを設定したことがあります。多すぎて浸透しなかったと反省していますが、社員のなかに何となく残っていたようで、数年後に現場サイドから「やっぱりCSは大事ですよ」という声が上がってきたのです。種をまいておくことで、そのあとのリーダーたちが形にしていくのだと実感しています。  ちなみに私が入社したころは、東急グループトップの五島(ごとう)昇(のぼる)の「失敗を恐れるな、向こう傷は問わない」という言葉を社内でよく聞かされました。私自身、上に立つ者として「とにかくさせてみる」ことを大事にしているつもりです。これは障害者雇用の場でも変わりません。そういう社風のなかで、障害のある人と一緒に働きながら一人ひとりの能力を見つけ、チャレンジしながら仕事をつくり出していく先に、事業全体の競争力強化もあるのだという考え方を、社員みんなが抵抗なく受け入れられるようになっていると思います。 定着と水準の向上 ――今後の課題と展望についてお聞かせください。 太田 私たちは、一人ひとりの能力を見きわめ、働きがいを持って仕事をしてもらうことで、会社の利益にもつながることを目ざしています。でもこの先は、業務のAIやIT化によってジレンマをともなうことが出てくるかもしれません。彼らの長所をどこで活かしていけるかを考え続けなければいけないですね。  そのためにも、障害者雇用による多様な人材の活躍をさらなるチャレンジの場にしたいと思っています。より多くの人数を採用するというよりも、いまの人材にしっかり定着してもらって、水準を高めていくことが目的です。実は以前から、社内向けの人材派遣を担当するグループ会社の業務が、チャレンジスタッフの業務と重なることが増えていたので、組織を一体化することで業務や管理の機能を高めていきたいと考えています。  正直にいうと、これまで少数のダイバーシティ担当者が奮闘しながら運営してきた部分もあり、現場ではもっと細やかなサポートが必要だとも感じています。チャレンジスタッフの雇用条件も東急リバブルの社内規定内で進めてきたので、もう少し配慮しやすい雇用体制を整備していきたいと思います。今後さらに、彼らの自立した生活を支えていけるようにしていくつもりです。 あまり深刻にならず折り合いをつけながら ――これから障害者雇用を進めていく企業へのアドバイスを教えてください。 太田 私の妻(太田由美さん)は15年ぐらい前から、東京都東村山市で障害児対象の学習サポート塾を運営しています。彼女の取組みを見守るなかで感じるのは、「なにごとも深刻に考えていたらきりがない」ということです。うちの会社でも、障害のある社員と一緒に働いている人も、あんまり深刻になっているような人はいないと思います。先回りして「自分たちとは違うから配慮しなければ」などと考えてばかりでは、かえって雇用推進がむずかしくなることもあります。みんな自然に、障害を気にしないような心持ちでいられる職場になれるといいですよね。そのうえで、「会社に貢献してほしい」という思いと、「結果をしっかり示して一緒に成長していこう」という考え方を大事にしていくといいかもしれません。  収益面については、会社それぞれの事業や文化のなかで、どのように折り合いをつけていくかを考える必要があります。100%売り上げに結びつけることが理想ですが、少しだっていいんです。最初から、素晴らしい実績の会社や環境が整った職場を目標にして挫折するよりも、「自分たちのやり方で、無理なく、いかに着実に進めていけるか」が大事です。その度合いをだれが判断しだれが進めるかを決めたら、少しずつよい方向に持っていけるよう一つずつ新たな目標をつくって達成していけばいいと思います。まずは、なにごとも失敗を恐れず、一歩をふみ出していっていただきたいですね。 ※1 イラストレーター:Adobe Illustrator。アドビ株式会社が販売する描画ツールソフト ※2 テレワーク推進賞:一般社団法人日本テレワーク協会が主催。テレワークの導入・活用または普及支援した全国の企業・団体による先進事例を表彰するもの 【P6-11】 職場ルポ 「人財開発室」を拠点に、細やかな支援と育成 ―東京都プリプレス・トッパン株式会社(東京都)― 28年前に設立された第三セクター方式の特例子会社では、各地に分室を増やしながら、業務拡大と"人財"育成に力を入れている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 東京都プリプレス・トッパン株式会社 〒174-0051 東京都板橋区小豆沢(あずさわ)1-16-2 TEL 03-3968-5800 FAX 03-3968-5858 Keyword:重度障害、知的障害、精神障害、ジョブコーチ POINT 1 通いやすく働きやすい充実した設備環境 2 グループ各社に分室をつくり業務を拡大 3 専門職常駐の「人財開発室」を拠点とした支援 都・板橋区との第三セクター  「東京都プリプレス・トッパン株式会社」(以下、「プリプレス」)は、印刷業界大手の「凸版印刷株式会社」が1993(平成5)年、東京都および板橋区と共同出資して設立した第三セクター方式の特例子会社だ。  事業内容は、凸版印刷からの委託を中心に、各種印刷物のDTP制作から自動組版システム設計・開発、WEBコンテンツ制作、オフィスサポート、紙すき事業までと多岐にわたる。社員120人のうち障害のある社員が91人(身体障害51人、知的障害24人、精神障害16人)、グループ適用の障害者雇用率は2・31%(2020〈令和2〉年6月1日現在)となっている。  凸版印刷グループ会社の社長などを経て2018年からプリプレスの取締役を務める一瀬(いちのせ)逸三(いつぞう)さんが、これまでの経緯について話す。  「重度障害者雇用モデル企業として、以前は肢体不自由など身体に障害のある社員が多かったのですが、2014年から本格的に知的障害や精神障害のある社員を採用してきました。特性も職務能力も多様化しているので、近年は、より細やかな合理的配慮や支援、そして"人財"育成に力を入れています」 設立時から充実の設備環境  都営地下鉄の志村坂上駅から徒歩10分ほど、印刷関係の事業所などが点在する一角に、プリプレスの本社がある。3階建てビルの地下と屋上には、平置き式の駐車場が計40台分確保され、交通機関での通勤が困難な車いすユーザーの社員が使っている。エレベーターは車いす4台分まで乗ることができ、廊下や業務フロアのデスク周りも、車いすがすれ違っても十分なほどの広さが確保されている。多目的トイレは男女それぞれ2カ所あり、内部障害者向けのシャワーも完備。トイレの使用状況は、業務フロア入口に設置された信号機のようなランプで確認できる。  業務フロアと同じ2階にある食堂は、車いすに合わせた高さの丸テーブルや自販機などがあるほか、奥には休憩室もあり、高さ40pほどの畳コーナーが設けられている。取材時も、休憩時間になると社員が訪れ、畳の上で体を伸ばすなどしてリフレッシュしていた。  こうした職場環境は、28年前のプリプレス設立当時から整えられていたそうだ。1999年入社で製造部IT開発担当の係長を務める谷島(やじま)慶彦(よしひこ)さん(45歳)も「入社当初から、とても働きやすい職場でした」とふり返る。谷島さんは中学生のころ筋肉の病気であるジストニアと診断された。「日ごろは松葉づえで移動していますが、職場内では動きやすさを実感しています。埼玉県の自宅から車で通勤できるのも助かります」と話す。  谷島さんは大学で法学部だったが、卒業後に障害者向けの就職セミナーを受けてプリプレスに入社。翌年から凸版印刷の本社に2年ほど出向し、研修を受けてIT系の担当になった。いまは国語辞典など分厚い印刷物の自動組版システムの開発をしている。  「文系の自分には畑違いの仕事でしたが、基礎のスキルをしっかり学ばせてもらえました。また本社の人たちと一緒に働くことで、その後の委託業務などの連携もスムーズにいきました。出向は、とてもよい機会だったと思います」 分室でオフィスサポート  プリプレスでは知的障害や精神障害のある社員を本格採用するにあたり、凸版印刷の本社に併設する形で「秋葉原分室」をつくった。おもな業務はシュレッダーやスキャニング、郵便物の封入封かん、データ入力、備品補充といったオフィスサポートだ。  しかし立ち上げてからしばらくすると、小さなトラブルが起きるなど順調にいかないことも増えたという。一瀬さんは「当時、障害のある社員を支援する指導員たちは、特別な研修などを受けていないながらも親のような気持ちでサポートをしてくれていました。ただ、よかれと思ってかけた言葉が逆効果だったり、必ずしも本人や職場のためになっていなかったりしたこともありました」と明かす。  そこでプリプレスは2018年、社会福祉士・精神保健福祉士の堀(ほり)千枝美(ちえみ)さんを採用。総務課に配属された堀さんは、それまで障害者雇用にかかわってきた経験を活かし、職場の支援体制の強化に力を入れてきた。  堀さんが最初に取り組んだのは、在籍する社員一人ひとりの障害特性に関する情報をまとめたフェイスシートづくりだったそうだ。  「採用時に本人から申請された内容だけでなく、複合的に重なる特性や病気などもありました。極めて個人的な情報でもあるので、現場サイドとは、実際に必要な合理的配慮のポイントについて共有したり、必要最低限の情報を上司に伝えたりしました」  その一方、監督的な立場にある社員に毎週集まってもらい「ラポール研修」を2年間に渡って行った。ラポールとは信頼関係のことを指す。堀さんによると「研修では障害特性について学ぶだけでなく、職場で支援する側が燃え尽き症候群(バーンアウト)にならないよう、お互いに仕事を通じ支え合う関係性の構築を目的としました」という。さらに指導員には、障害者職業生活相談員や企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)の資格認定講習なども受けてもらった。  一瀬さんは「一定の理解が進んだことで、現場でのコミュニケーションがずいぶん潤滑になったと思います。監督職がみな一緒に学ぶことで、それまで縦割り的だった部署間に横のつながりも生まれ、雰囲気が明るくなりましたね。もちろん、まだ不十分かなと感じる部分もあります。会社としての歴史が長いほど、現場を変えるのも簡単にはいかないと覚悟しています」と率直に話してくれた。 「ふり返り」で自覚と成長  分室は小石川、芝浦、板橋と順調に増え、いまでは計4カ所で指導員5人を含む計27人が従事している。  ここで社員向けに効果を上げているのが、毎週の「ふり返り」だ。社員一人ひとりにとって必要だと思われる「社会人としての基礎」と「業務遂行能力」について計20項目ほどの質問を表にし、自己評価をA(よくできた)・B1(もっと努力できる)・B2(できなかった)・C(反省をしている)の4段階で示す。隣の欄に上司の評価も同じように記入され、フィードバックのコメントとともに本人に返される。  質問は「指導員の話を理解した上で返事をすることができましたか」、「報告・連絡・相談はできましたか(良いことの報告だけでなく、間違いの報告こそ大切にできましたか)」、「紙類は大切にする等、ミスがないように丁寧な仕事ができましたか」といった一般社員も問われるような内容だ。質問項目は、本人たちの成長ぶりに沿って見直している。このふり返りを始めてから、現場はずいぶん変わったという。  「例えば、自閉症の傾向があり勤務中も独り言が多かった社員に、ふり返り項目で『仕事のマナーとして、独り言は控えましょう』と伝えたことで、本人も『仕事としての姿勢のありかた』を意識できるようになりました。ふり返りシートの項目は、指導と成長の指標にもなっています」と堀さんは話してくれた。  また分室では、堀さんが中心となって、定期的にグループワークによるソーシャルスキルトレーニングも行っている。「上司に話しかけるタイミング」、「仕事を通じたチームワークの形成」といったさまざまなテーマで学んでいる。  一瀬さんは「社員一人ひとりが社会人の自覚を持って、いきいきと働けるようになったと感じますね。最終的には、彼らが実社会での自立した生活につなげていきたいと思っています」と手応えを語る。  2014年入社で、秋葉原分室に所属している掃部関(かもんぜき)智樹(ともき)さん(29歳)は、地域の就労支援事業所の工場で働いていたところ「一般就労のほうが向いている」とアドバイスされ、板橋区障がい者就労支援センターでパソコンスキルなどを学んだ経緯がある。いまはパソコンを使った入力作業や、同僚が入力したデータの確認を任されているそうだ。  勤務中に気をつけていることについて聞いたところ、苦笑いしながらも「感情のコントロールがうまくできないことがあって、それを抑えることを意識しています」と返ってきた。堀さんによると職場で週1回、ふり返りシートを書くことで、自分の感情の起伏を客観的にとらえられるようになっているそうだ。毎回、指導員から「感情のコントロールができています」といったコメントがつくと自信にもつながる。「今後は、実習生や後輩たちにもっと仕事を教えられるようになりたいです」と抱負を語ってくれた。 紙すき工房で達成感  2019年には「紙すき」事業もスタートした。グループ会社のパッケージ印刷などで発生した損紙を再利用するための事業で、知的障害のある社員6人が従事している。  プリプレス本社3階の一角、「紙すき工房」という表札が掲げられたドアを開けると、部屋のなかでは防水エプロン姿の社員たちがテキパキと手を動かしていた。近くの人に何をしているのか声をかけると「これは乾いた紙をローラーにかけて、厚さが均一になるようにしているんですよ」とていねいに教えてくれた。  指導員を務める製造部紙すき工房担当の岡田(おかだ)和志(かずし)さんが、作業工程を説明してくれた。まず紙パックの表裏についた薄いフィルムを、カッターなどを使ってきれいにはがし取り、水と一緒に大きめのかくはん機に投入。4時間弱でトロトロになった液体を水槽に流し込み、網枠を使ってすいていく。木版に移しかえた紙を特殊な台に乗せ、バキュームで水分を取り、さらに棚の上で数時間から数日乾かす。大部分の工程が手作業だ。岡田さんによると「天候によって湿度も変わるので、でき上がりの紙の厚さも微妙に違ってきます」とのこと。手紙やハガキ、封筒、名刺用に種類が分かれているため、それぞれ均一の厚さになるよう日々統計を取りながら調整している。立ち上げ1年の工房だが、岡田さんは「私も社員とともに成長していると感じます」という。  「当初は工程の担当を固定していましたが、1人に過度な負担がかからないようチームで目的を共有し練習したところ、全員ができるようになり、みんなで大きな達成感も得られました」  工房立ち上げと同時に入社した松田(まつだ)智浩(ともひろ)さん(23歳)は、「自分ですいた紙が、きれいな商品になるのを見るとやりがいを感じます。一方で、同じようにすいたつもりでも厚さが違うので、簡単にはいかないなと思います」と話してくれた。  紙すき工房で生き返った紙は、凸版印刷が運営する「印刷博物館」(東京都文京区)で、手紙セットなどとして販売している。地元の小学校などから子どもたちを招いて開催される「紙すき体験教室」も好評だ。 人財開発室を拠点に  プリプレスは2019年10月に「人財開発室」を開設した。室長となった堀さんは、日ごろは本社のほか分室も回り、社員との面談や研修などを通して社員や各拠点のジョブコーチと課題を共有し、育成に向けた環境調整などを重ねている。さらに凸版印刷グループ各社にも出向いて、障害者雇用を進めていくための社員研修やコンサルティング業務も手がける。  堀さんは「凸版印刷本社やグループ会社の障害者採用に立ち会ったり、社内で精神疾患のある方と面談し雇用条件を変えたりするなどの支援業務も増えています」と話す。最近も、精神疾患を機に、障害者手帳を取得して職場環境を整えてもらうことを選んだ社員がいるという。  一瀬さんは、「社内だけでなく凸版印刷本社とここまで連携ができているのも、専門職の堀さんが常駐して日々やり取りしているおかげです。私もわからないことは何でも聞いて、教えてもらっています」と絶大の信頼を置いている。  2020年に入社した田中(たなか)哲也(てつや)さん(31歳)は、堀さんの業務のサポート役として人財開発室で活躍中だ。田中さんは大学卒業後に体調を崩してしまい、病院で軽度の発達障害によるものだと初めて診断されたという。その後、就労移行支援事業所に通っていたときにプリプレスの秋葉原分室を見学、そこで堀さんに声をかけられたのを機に入社したそうだ。堀さんは「人財開発室で一緒に働く仲間を探していたところでした。彼は『人を支える仕事がしたい』と話していて、実際に、人の話を聞く姿勢もすばらしかったのを覚えています」と話す。  田中さんは大学で数学科を専攻していたこともあり、パソコン業務なども得意。ただ、物事の優先順位を決めるのが不得意だったり、何が大事な部分か混乱したりすることがあるため、堀さんが様子を見ながら助言しているという。  人財開発室では、パワーポイントなどを使った資料作成や電話対応、記録作成、社員の作文添削といったサポートも引き受ける。「今後は、もっと社内の同僚を支えていけるような存在になりたい」と話す田中さんは、堀さんと同じように精神保健福祉士の資格取得を目ざして勉強も始めているそうだ。 バリアフリー情報サイトも  プリプレスでは新規事業も続々と進みつつある。  まずは2021年春のWEB公開を予定しているバリアフリー情報サイト「らくゆく」。これはおもに車いすユーザーやベビーカー利用者向けに、車や電車を使って出かける目的地までの最適ルートマップや、途中で利用できるバリアフリートイレ・駐車場・施設、トラブル時の病院や避難先などの情報を提供するというものだ。  もともと社内の車いすユーザーから「自分たちが出かけるために本当に必要な情報を集めたサイトがほしい」という声が上がり、それをプリプレスの事業として立ち上げたという。作成にあたり、実際に社内の車いすユーザーたちが駅周辺の調査を行い、写真の撮影などをしている。先ほど登場した製造部の谷島さんもWEBコンテンツ制作でかかわっている。  「歩道の段差や道路の傾斜、トイレの様子などを調べて、マップと連携させて掲載しますが、スマートフォンで簡単に検索できるよう工夫しています。観光地などの360度バーチャルツアーも計画しています。多くの人たちに活用してもらえるような内容にしたいですね」  取材時は浅草、秋葉原、六本木などの外出スポット別の目的地情報が完成しており、まだまだ増やしていく予定だという。  さらに2020年のコロナ禍を機に、凸版印刷から「プリプレスでやれないか」と打診されたのが除菌作業だ。グループ会社も含めた各職場でニーズが非常に高いことがわかったという。一瀬さんたちはさっそく、クルーズ船での除菌作業を手がけた清掃専門の企業に相談し、ノウハウなどを学んでいるところだ。  社内では在宅勤務やテレワークなど場所にとらわれない働き方の導入についても検討を始めている。一瀬さんは「情報の扱いや雇用管理はどうするかといった課題もありますが、うまくいけば業務の幅も広げていけるかもしれません」と意気込む。「プリプレスの一人ひとりが積み重ねてきた経験や、まだまだ伸びしろのある能力を、もっと発揮できるような職場環境をつくっていきます。これは同時に、凸版印刷全体の社員の働き方改革にもつながっていくと思います。さまざまな取組みをモデルケースにして、凸版印刷のグループ会社にもどんどん波及させていけるよう、連携しながら業務内容や職場の拡大を図っていきたいですね」  2021年は、宮城県仙台市に新たな分室を立ち上げる計画を進めているという。プリプレスでつちかわれた実績が、さらに多くの職場や業務で活かされることが期待されている。 写真のキャプション パソコンを使用して印刷物のレイアウト編集(組版)を行う 東京都プリプレス・トッパン株式会社取締役の一瀬逸三さん 駐車場は車間が十分に確保されており、不自由なくドアを開閉できる フロアには段差がなく、車いす同士が余裕をもってすれ違える広さがある エレベーターは奥行きがあり、車いす4台を収容可能だ 人財開発室室長で社会福祉士・精神保健福祉士の堀千枝美さん 辞典などを効率的に制作するための自動組版システムの開発を行っている 製造部でIT開発を担当する係長の谷島慶彦さん パソコンでのデータ入力やデータの確認作業を担当している 秋葉原分室で働く掃部関智樹さん 毎週の「ふり返り」に使用されるシート 水槽やバキュームなどが設置された紙すき工房 紙すき工房で活躍する松田智浩さん バキュームを使用し、水分を素早く除去する フィルムをはがす工程を実演する指導員の岡田和志さん 網枠を使ってすいていく。仕上がりを左右する大事な工程だ 損紙が封筒や便箋などのステーショナリーに生まれ変わる バリアフリー情報サイト「らくゆく」 パソコン業務のほか、電話対応などを受け持つ 人財開発室で堀さんをサポートする田中哲也さん 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 就労支援機器紹介シリーズ 第2回 障害のある社員の就労環境を支援する機器やソフトをご紹介します! 株式会社インサイトの『comuoon(コミューン)』シリーズ 聴覚障害者向け 製品説明 「聴こえやすい」 を 、みんなのあたり前に ・comuoon(コミューン)は、話す側から聴こえの支援ができる対話支援機器です。難聴者の聴こえをサポートしコミュニケーションを円滑にします ・スピーカーを通して話す側の声を大きくするのではなく、聴き取りやすいクリアな音へ変換します ・comuoonは独自の卵形状で音の拡散を抑制し、話す側の声をまっすぐ届けます ※製品の詳細はホームページでもご覧いただけます https://www.s-insight.jp/experience02.html オープン価格 製品のお問合せ 株式会社インサイト(TEL:022-342-6801)まで 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 中央障害者雇用情報センターではcomuoonシリーズを無料で貸し出しています! 貸出しの対象となる事業主 障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主など ※国、地方公共団体・独立行政法人などは対象外です 貸出期間 原則、6ヵ月以内 ※職場実習やトライアル雇用の場合も利用できます そのほか、視覚障害者向け・発達障害者向けの就労支援機器もございます! まずは下記までお問い合わせください! 中央障害者雇用情報センター 〒130-0022 東京都墨田区江東橋2丁目19番12号 ハローワーク墨田5階 TEL:03-5638-2792 E-mail:kiki@jeed.or.jp ※令和3年4月1日から、E-mailはkiki@jeed.go.jpに変更となります 申請書の提出 申請書を記入し、メールまたは郵送でご提出ください。 ※申請書はホームページよりダウンロードできます 貸出し決定 決定内容を通知し、機器を配送します。 貸出しの終了・回収 当機構契約業者が回収にうかがいます。 就労支援機器をホームページでもご紹介しています。 https://www.kiki.jeed.go.jp/ 就労支援機器のページ 検索 職業センターの支援技法開発をご紹介します 障害者職業総合センター 職業センター  障害者職業総合センター職業センターは、これまでの支援技法では効果が現れにくい発達障害、高次脳機能障害および精神障害のある方に対する職業リハビリテーション技法の新たな開発と改良を行い、その成果について実践報告書などに取りまとめて、幅広く支援技法の普及を行っています。令和2年度の支援技法開発については、以下の3つの成果物を取りまとめているところです。 これまでの成果物の詳細は、ホームページをご参照ください。 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html 職業センター 技法 検索 ワークシステム・サポートプログラムによる発達障害者の支援技法開発  発達障害のある方を対象に、障害特性などのアセスメントや職場適応のためのスキル(作業遂行力、対人スキル、問題解決、ストレス対処など)向上に向けた支援技法と、事業主支援に関する技法の開発などを行っています。  令和2年度は、ストレス・疲労への気づきやストレス対処法の習得・実践をうながす「リラクゼーション技能トレーニング」について、身体感覚・思考・感情に関するセルフモニタリングの向上という観点から補完する3つの新規プログラムを開発しました。その内容、実施方法、留意点、支援事例などをまとめた実践報告書を作成します。  巻末には個別の支援で使用する教材を収録した記録メディアを添付します。 職場復帰支援プログラム、就職支援プログラムによる高次脳機能障害者の支援技法開発  職場復帰や就職を目ざす高次脳機能障害のある方を対象に、「障害認識の促進」、「補完手段の習得」の支援技法と、事業主支援に関する技法の開発などを行っています。  令和2年度は、高次脳機能障害者の支援課題として取り組む必要性の高い「記憶障害」に対する支援として、オーストラリアで開発された学習カリキュラムを参考とした「記憶障害に対する学習カリキュラム」の開発に取り組み、その内容や実施方法などをまとめた実践報告書を作成します。このカリキュラムは、記憶のメカニズムの学習や内的な補完手段、外的な補完手段の習得を含む包括的な構成が特徴です。  巻末にはカリキュラムで使用する教材を収録した記録メディアを添付します。 ジョブデザイン・サポートプログラムによる精神障害者の支援技法開発  職場復帰を目ざす気分障害等の精神障害のある方を対象に、職務および職場環境に対する適応性の向上を図るための支援技法と、事業主支援に関する技法の開発などを行っています。  令和2年度は、「ジョブデザイン・サポートプログラムのカリキュラムの再構成」に取り組み、開始から15 年以上の経過のなかで、さまざまな支援技法を開発・追加しながら変遷してきたジョブデザイン・サポートプログラムの全体像や構成要素をわかりやすく整理しました。各プログラムの具体的な内容や実施方法、実施上の工夫、支援事例などをまとめた実践報告書を作成します。 ※実践報告書は令和3年3月に発行を予定しています <お問合せ> 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 職業センター 企画課 TEL:043-297-9043 「読者アンケート」結果発表!! ご協力いただきありがとうございました  いつも『働く広場』をご愛読いただき、ありがとうございます。今年度実施しました読者アンケートでは、みなさまから多数のご意見・ご要望をいただきました。心よりお礼申し上げます。読者アンケートの結果の一部をご紹介します。今後の企画・編集の貴重な資料として活用させていただき、よりよい誌面づくりに努めてまいりますので、引き続きご愛読をよろしくお願いします。 【ご回答者の勤務先】 民間企業 64.1% 障害者福祉施設(就労支援機関含む)・団体 15.2% 学校・教育機関 7.9% 医療法人 4.0% 国・地方公共団体の機関 3.8% 個人 0.4% その他(※) 4.6% ※その他:生活協同組合、経済団体、社会保険労務士事務所 など 【「働く広場」は参考になっていますか?】 参考になる 69.3% 非常に参考になる 21.5% あまり参考にならない 5.0% 参考にならない 0.2% 無回答 4.0% 本誌に対する評価  「『働く広場』は参考になる」と、90.8%の方から高い評価をいただきました。その理由に、「障害のある方の仕事、職場での配慮や工夫が具体的にわかる」、「他社の実践例が勉強になる」などの意見が多数ありました。  参考になった記事では、「職場ルポ」、「クローズアップ」、「私のひとこと」、「編集委員が行く」、「グラビア」の順で人気がありました。 参考になった理由(代表的な理由) 【職場ルポ】 ・障害者を雇い入れている取組みが具体的でよくわかる。 ・社内改善のヒントになる。 【クローズアップ】 ・さまざまなケースに対し、改善策が具体的に示されていて参考になった。 【私のひとこと】 ・今後における問題点が理解できた。 【編集委員が行く】 ・具体的な事例なので参考になる。 ・取材を通じた多様な事例をベースに、編集委員が掘り下げる形で紹介しており、参考になる。 もっと充実を図ってほしい記事や内容 【職場ルポ】 ・さまざまな会社の取組みが知りたい。 ・問題点をどのように解決していったのか、具体的な事例を紹介してもらえると、より興味深い記事になる。 【クローズアップ】 ・新たな職務の創出の詳しい方法を取り上げてほしい。 ・いろいろなケースがあると参考になると感じた。 【編集委員が行く】 ・先進的な取組みを各方面から伝えてほしい。 【ニュースファイル】 ・特に「国・地方の動き」の情報を増やしてほしい。 今後取り上げてほしい内容 ・働く障害者本人が抱える不安や悩みなど。 ・地方、地域の記事を増やしてほしい。 ・コロナ禍での取組みや新しい働き方(テレワーク含む)について。 ・中小、零細企業の取組み事例。 ・失敗事例やうまくいかなかったケース。 ・発達障害のある方の働く様子、定着できるまでの過程。 ・精神障害のある方の職場定着、受入れ後のフォローの方法や、その事例。 ・民間企業と各種支援機関の連携、協働のやり方。 ・通勤(移動)問題などの就労のベースになることや、配慮について。 ご意見・ご要望 ・7月号「私のひとこと」の「親なきあと」問題が興味深い。 ・企業側はどんな支援ができるか、企業に求めることなどがあれば聞きたい。 ・わかりやすい内容が増え、当社のような中小企業にも落とし込みやすい。今後も障害者を受け入れるといった例の企画があるとうれしい。 今年度本誌で取り上げた内容については、30〜31ページの「記事索引」をご覧ください。 また、興味・関心のあるテーマについては、当機構ホームページに掲載しているバックナンバーもご覧ください。 働く広場 バックナンバー 検索 【P15-18】 グラビア マイスターを目ざして 伊藤忠ユニダス株式会社(神奈川県) 取材先データ 伊藤忠ユニダス株式会社 〒224-0054 神奈川県横浜市都筑区佐江戸町683 TEL 045-931-3851 FAX 045-931-3856 写真・文:官野 貴  「伊藤忠商事株式会社」の特例子会社である「伊藤忠ユニダス株式会社」は、1987(昭和62)年に設立された。創業時から続くクリーニング事業は、さまざまな企業の単独身寮や首都圏を中心とした大型マンションの宅配クリーニングを引き受けている。また、名刺や封筒などの印刷を中心としたプリントサービス事業も、いまでは伊藤忠商事以外からの受注が大半を占めるなど、販路を拡大している。  クリーニング事業では、業務の各工程において「ワイシャツの仕上げを素早くできる」など具体的な目標を設定。達成するとポイントが獲得でき、「マルチプレイヤー」、「スーパープレイヤー」などに認定される『マイスター制度』を設けており、品質の向上を目ざしている。  注意欠陥・多動性障害(ADHD)のある宮田(みやた)拓実(たくみ)さん(24歳)は入社6年目で、クリーニング本部で働いている。入社当初は染み抜きの工程を苦手に感じていたが、上司の岡田(おかだ)真一(しんいち)さんの指導を受け、苦手意識を克服。現在では、染み抜きにやりがいを感じているという。宮田さんは「後輩にアドバイスできる存在になりたい」と話す。  入社2年目で軽度の知的障害のある新井(あらい)翼(つばさ)さん(20歳)は「さまざまな工程をこなす宮田さんは、あこがれの先輩です」と語る。  脳性麻痺により四肢体幹機能に障害のある松本(まつもと)浩(ひろし)さん(49歳)は、入社27年目のベテラン社員だ。プリントサービス部版下(はんした)課の課長代理として後輩の育成も行っている。松本さんは、「テクニックを伝えた後輩のステップアップがうれしい。自分自身のやりがいにつながっています」と語る。  社交不安障害のある冨澤(とみざわ)政太朗(せいたろう)さん(30歳)は入社2年目で、同部印刷課に勤務している。「ミスを防ぐために、判断に迷うことがあれば上司に相談します。ここは、気兼ねなく相談ができる職場です」と話す。  マイスターを目ざす彼らは、工夫や研究を怠らず、日々努力を続けている。 写真のキャプション 衣類の種類に応じて、大型洗濯機に投入する クリーニング工場内は、大型洗濯機やプレス機などが立ち並ぶ ワイシャツにアイロンをかける新井さん。ていねいさとともにスピードが求められる クリーニング本部 超音波洗浄機による染み抜き工程 宮田拓実さん 新井翼さん 師と仰ぐ岡田真一さん(左)に見守られながら、染み抜きを行う宮田さん(右) プリントサービス部 印刷室には、オフセット印刷機、レーザー印刷機などが設置されている 松本浩さん 冨澤政太朗さん 名刺の検品・梱包作業を行う冨澤さん パソコンを駆使して版下作業を行う松本さん 【P19】 エッセイ【第1回】 障害福祉サービスの現場から 社会保険労務士・行政書士 高橋 悠 高橋 悠(たかはし ゆたか)  行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立上げ・運営支援にたずさわった後、2016(平成28)年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上が介護・障害福祉サービス事業所である。また、「合同会社サニー・プレイス」を設立し、小規模保育事業所B型および企業主導型保育所を経営している。 障害者の雇用とは  みなさまは「障害者の雇用」というと、どのようなイメージを持たれるでしょうか?  ご自身のまわりやご家族に障害者がおられない方の場合、障害者の雇用というと「一般企業の障害者枠で働く障害者」の方をイメージされる方が多いのではと思います。  しかし、実際には一般企業の障害者枠で働いておられる障害者はどちらかというと少数派であり、また、障害の種別的にも身体障害の方が多いのではないかと思います。一般企業への就職が困難な障害者は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に規定される障害福祉サービスである、「就労継続支援事業所」において働いています。 ○障害者が「働く」場所の主な分類 @一般企業(障害者枠) A就労継続支援A型事業所(障害福祉サービス) B就労継続支援B型事業所(障害福祉サービス) C前述A、B以外の、日中活動支援サービス(例‥生活介護など)における生産活動(障害福祉サービス) ※前述の番号が若いほど賃金(工賃)水準は高いですが、その分求められるスキルや能力は上がってきますし、募集枠も狭まってきます。 ※就労継続支援A型・B型事業はともに障害者が利用者となって事業所に通所し、生産活動を通じて賃金(工賃)を得る機会を提供するというサービスですが、A型は事業者と利用者との間に雇用契約を結ぶのに対し、B型は雇用契約を結ばない(=利用者が通所し、働いた分だけ「工賃」として支払う)という点に違いがあります。 賃金向上のジレンマ  私は社会保険労務士という仕事を通じて、前述のA、Bのような「就労継続支援事業所」を経営する方々のお話を常日ごろからお聞きする機会が多いのですが、そのなかでも一番の悩みは、障害福祉サービスを利用する障害者の方に支払う「賃金(工賃)の水準をどう上げるか」というものです。  障害福祉サービスは厚生労働省の設定した基準に基づいたサービスですので、介護保険や医療保険におけるサービスと同様に、サービス提供の対価として国から給付費が支給されます。しかし、この給付費には「障害福祉サービスの利用者への賃金(工賃)」は含まれてはおりませんので、事業所の方々は利用者への賃金(工賃)を支払うため、例えばパンを製造するなど生産活動を自分で生み出し、あるいはほかの企業などから、例えばボールペンの組立てなどの作業を受託して収入を得るなどして、収入源を確保しています。  当然のことながら、障害者は就労継続支援事業所を選択する場合、賃金(工賃)水準の高い事業所を選択したいと思っていますので、就労継続支援事業所は自らの事業所を選択してもらえるよう、賃金(工賃)を少しでも向上させようと日々努力しています。  しかし、生産活動を自身で行うにしても受託するにしても、「収入の多い生産活動」はほとんどの場合「難易度の高い仕事」であり、さらに受託業務の場合は納期も堅守しなければなりません。  「利用者の賃金(工賃)は上げたい、しかしその日によって利用する障害者のメンバーが変わり、また障害の種別・程度もさまざまな状況で、難易度の高い業務を行うのはむずかしい」と、就労継続支援事業所の経営者は常にこのジレンマに悪戦苦闘しているのが現状となっています。  こうした課題を解決するため、各事業所では賃金(工賃)向上のための多種多様な施策を実施しています。次回からは、こうした事業所の取組みをご紹介しながら、課題解決のための糸口をお話しできればと思います。 【P20-25】 「働く広場」 公開座談会 この座談会は、2020(令和2)年12月5日(土)、「有楽町朝日スクエア」で開催された『働く広場』公開座談会の採録です。 令和2年度内閣府主催 障害者週間連続セミナー 発達障害者の雇用を促進するために 〜若年求職者への支援を考える〜 出席者 座長 眞保(しんぼ)智子(さとこ)さん 法政大学 現代福祉学部 教授 パネリスト 丸田(まるた)伯子(のりこ)さん 一橋大学 保健センター 教授 Sさん(働く当事者) IT企業 障害者枠勤務 小野寺(おのでら)十二(みつぐ)さん 東京障害者職業センター多摩支所 主任障害者職業カウンセラー 就職で苦労する、発達障害のある若者たち 眞保 法政大学現代福祉学部の眞保(しんぼ)智子(さとこ)と申します。近年大学では、学生生活のさまざまな場面で困りごとを抱えて、学生相談室に相談に来る学生が増えています。また、精神障害や発達障害のある学生も増えていて、診断がついている学生がいる一方で、発達障害の可能性が強く示唆される場合でも、さまざまな理由から診断に至っていないケースもあります。こうした学生は、就職における問題に直面することで初めて支援が始まり、非常に苦労することも少なくありません。本日の座談会では、このような学生をどのように支援したらよいのか、働くことにつなげていくために学生たちはどのようなことに向き合って受けとめていく必要があるのかを考えていきたいと思います。まずは丸田先生にお話をうかがいたいと思います。 丸田 一橋大学保健センターの丸田です。私からは、発達障害特性を有する学生の支援について、一橋大学での取組みをお話しさせていただきたいと思います。  アメリカでは大学入学前に発達障害の診断がついていることが多いのですが、日本では、大学1、2年生の時点で診断がついていることはまれで、就職活動につまずくことで初めて問題が顕在化する傾向があり、支援のスタートが遅れがちです。  学生たちの就職にまつわる課題は多岐に渡ります。医療機関を受診するまでに、1、2年経ってしまうことも多く、障害の受容までに時間がかかる傾向があります。障害者手帳を取得することに抵抗を感じたり、親御さんの理解が得られないこともあります。就職活動の場面でも、先輩に体験談などを聞くこともできないので、一人で悩みがちになり、障害者雇用の待遇の低さや将来の展望の見えにくさに、不安を感じることも多いです。また、障害者雇用の情報をそもそも得にくいといった問題もあります。そのため、発達障害の特性を有していても、一般雇用を目ざしたり、障害者枠に加えて一般雇用の就職活動を同時に進めていく学生がほとんどです。  一般雇用で入社しても、不適応 状態になって、2、3年で辞めて しまう学生もいます。就職や一人 暮らしを経験し、初めて問題が顕 在化する場合もあります。鬱うつや適応障害などの診断がつくこともあります。 障害と"向き合い""理解する" 丸田 一橋大学の学内には、さまざまな支援体制がありますが、この体制ができるまでには、たいへんな苦労がありました。特に苦労をしたのは、教職員の意識改革です。初めのころは、「発達障害のある者を支援をする義務が高等教育にあるのか」という声がたくさんありましたが、10年ほどの時間を経て、いまでは、障害のある人にも働いてもらうことが大事だという認識が広まってきています。  診断を受けた学生は、進学や卒業を目ざすための"修学支援"が受けられます。未診断でも利用できる学生相談もあります。カウンセリングを受けるうちに、自己理解を深めていき、自分の特性に気がつくこともありますね。教職員や家族の方から相談されることもあります。留年や休学をした人や、就職後に離職してしまった人の支援も行っています。  保健センターでは、「個人カウンセリング」、「心理検査」、「教職員からの相談」、「専門医の紹介」、「医療との連携」などのさまざまな支援活動を行っています。ここ数年、特に力を入れているのは「グループワーク」という活動で、6人程度の学生を集めて、就労につなげるための社会性を育成するトレーニングを行っています。医療機関でも学生向けのプログラムはありますが、医療機関は対象者が患者にかぎられるのに対し、大学では、未診断の人も対象にしています。  若年者の就労移行支援は、いま、とても関心が高まっている分野です。諸組織が連携し、支援をしていくことが重要だと思います。 眞保 ありがとうございました。次に、当事者のSさんにお話をおうかがいしたいと思います。 S こんにちは。Sと申します。年齢は32歳で、IT企業の障害者枠で勤務しています。いまは、子どもにも恵まれて幸せな生活を送っていますが、大人の発達障害にかなり苦しんだ時期があります。「物の管理が苦手」、「パニックになってしまうことがある」、「高圧的なコミュニケーションを取られると頭が真っ白になってしまう」、「忘れ物が多い」など、いまでも日常生活の困りごとはとても多いです。  慶応義塾大学を卒業後、Uターン就職で、地元の大手企業に総合職で入社しました。ここまでは順調だったのですが、会社になじめず、社内の保健師に紹介された病院で発達障害の診断を受けました。自分を見つめていくうちに離職を決意し、障害者手帳も取得しました。その後結婚もし、一橋大学大学院の経済学研究科に進学しましたが、子どもがほしいと思い、障害者枠で就職することに決めました。  ふり返ると、診断を受けたときは、自分の将来を真っ暗だと感じました。大企業に就職して安泰だと思っていたのに、それが覆された感じでした。結婚できないかもしれないと、親にも申し訳ない気持ちで一杯でした。また、その職場には、障害への理解を示してくれる人もいましたが、ネガティブな発言をする人の声が気になり、だれの言葉も受け入れることができない状態でした。しかし、当時つき合っていたいまの妻が、私が発達障害であることを告白しても受けとめてくれたことをきっかけに、自分の障害を受け入れることができるようになりました。「そのような特性はだれもが持っていて、それがたまたま強いだけなんじゃないの?」という妻の言葉に、初めて自分の居場所が見つかったような気がしました。そして、診断から3年経った2016年に障害者手帳を取得しました。  一橋大学入学時の健康診断の問診で、発達障害であると記入したことをきっかけに、丸田先生とつながり、定期的なカウンセリングを受け、グループワークに参加させていただくことになりました。カウンセリングでは、学校生活のみならず、プライベートのことも相談に乗ってもらい、とても助けになりました。グループワークでは、同じように苦しんでいる仲間の悩みを聞くことで、プログラムの内容を受け入れやすかったと思います。同じ立場の仲間の存在は、非常に大事だと感じています。  大学院修了後の就職活動では、前職の一般雇用でうまくいかなかった経験から、障害者枠での就職を目ざしました。ただ、実際に求人を探してみると、正社員の募集は少なく、収入も低いといった現実もありました。  いまは、人事部の採用アシスタントをしています。業務の依頼は基本的にメールでもらっており、自分のペースで仕事を進めたい私にとっては助かっています。リモートワークも働きやすいと感じています。  パソコンにメモを残すなど、言語化をすることも大切にしています。ミスが多いという特性があるので、OneNote(ワンノート)やランチャーなどのアプリを使ったり、メールの定型文をストックできるツールを使うなどの工夫もしています。また、ジョブコーチには、業務の内外の悩みの相談に乗ってもらっています。 "働く"場面を支える 眞保 ありがとうございました。では、東京障害者職業センター多摩支所の小野寺主任障害者職業カウンセラーにもお話をうかがいます。 小野寺 みなさん、こんにちは。小野寺と申します。日ごろは障害のある方や企業、関係機関の方に対する助言や研修を行っています。  発達障害傾向のある方の相談は、働き方に関するものから、人間関係や職場のコミュニケーションの悩みまで、多岐に渡ります。相談者のなかには、大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークを通じて相談にいらっしゃる方、就職活動でつまずいてしまった方、さらにSさんのように、就職後にうまくいかない経験をしている方もいます。離職者の背景には、Sさんの例にありましたように、障害があることを伝えても、適切な理解や配慮が得られないといった実態もあるようです。  一方で、企業側にも、発達障害のある方を雇用するイメージやノウハウが不足していることが多く、発達障害の特性に応じた配慮自体を認識することがむずかしい実態があります。こういった状況に対し、障害者職業センターでは、障害のある方と企業双方への支援や助言、情報提供などを行っています。  一般的に、職業選択は、「自分の好きなこと、興味・関心があること」、「自分ができること」、「求められること、やらせてもらえること」のバランスを整えることが大切だといわれております。このバランスが取れないときには、興味のある分野の業界や企業を調べて視野を広げたり、学校や職業訓練校などでの学びや、職場実習の体験を通じて、自分ができることを増やしていったり、得意なことや苦手なことについて理解を深めていったりする姿勢が大切です。ただ、発達障害特性のある人の場合は得手不得手の差が出やすいともいわれていますので、スキルや仕事のマッチング、個別の事情を合わせたライフスタイルとのマッチング、経営理念や組織の運営方針などのビジョンとのマッチングが重要になってきます。これを実現するために、その人と企業に合った支援(支援の個別性)を、途切れなく(支援の連続性)、支援機関同士が連携して提供していくこと(ネットワークによる支援)がポイントです。 必要な人に、いち早く支援を始めるために 眞保 この後は、いまのお話をもう少し詳しくうかがいたいと思います。まずは、丸田先生のグループワークについて、具体的にどんなことをしているのかをお聞かせください。 丸田 グループワークの対象者に、大学入学以前から診断を受けていた人はほとんどいません。病院を予約しても、診断を受けるまでに時間がかかってしまうことも多いので、一橋大学では、学内で検査を一通り行って、その人の傾向を把握し、グループワークに誘導しています。病院の受診を待つよりも、必要とする人に早めに支援を提供することに意味があると思っています。  グループワークでは、まず始めにアイスブレイクなどを行い、その後に、その日のテーマとして、例えば挨拶の仕方や断り方、上司への話しかけ方などについて話し合います。もっともニーズが高いのは、ストレスコーピング(※1)やアンガーマネジメント(※2)です。自分では気づけないストレスの蓄積に気づいて、その対処法や、怒りのコントロール方法などについて学びます。 眞保 小野寺さんは、障害のある方本人の自己理解について、どのような支援をされていますか。 小野寺 言語表現が豊かな方も苦手な方もいらっしゃいますので、その方が得意とするコミュニケーションスタイルを重視しながら、対話をするように心がけています。例えば、文字や図示した方が受けとめやすい方については、そのような形で情報を整理します。また、知識を得ていくことと同時に、体験してみることもとても大切だと感じています。体験を通じて理解を深めていくことで、自分の苦手な部分についても実感を得やすいと思います。また、「どのような状況で、どんな風にアプローチしたからうまくいった」というように解説をしてくれる支援者の存在がとても重要だと思います。知識としてだけ障害理解をしていくのは、本人にとって非常に負担になりますので、むしろ、どんなところに悩んでいるのか、どうやったらそれを解決できるのかを一緒に考えていく過程で、自分に必要な工夫や支援はこういうものだと気づき、障害の特性についても理解を深めていくのがよいのではないかと思います。 眞保 現実に生じた課題のなかで考えていくことが有効だということですね。職場では、どんなことが課題となりやすいのでしょうか。 小野寺 大きくは、「業務遂行に関するもの」、「人間関係に関するもの」、「ご自身の健康管理も含めた日常生活に関するもの」に分けられます。  日常生活が職業生活に与える影響も大きく、その点については、例えばSさんのように、パートナーの理解は非常に重要です。障害のある方本人が家族にどの程度の援助をしてほしいと思っているかも影響します。生活面の支援を行っている支援団体もたくさんありますので、そういった団体のサポートを利用するのも一つの方法です。 発達障害のある方が働き続けるために 眞保 発達障害特性を有する方が働き続けるために何が必要かを議論していきたいと思います。Sさんは、普段どのようなことに気をつけて、仕事をしていらっしゃいますか。 S 「ミスをしやすく」、「締め切りを守るのが苦手」だという自分の特性を知っているので、失敗をくり返さないように意識しています。アプリなどのツールを使うことと、ちょっとしたつまずきでも、上司やジョブコーチに相談するようにしています。 眞保 キャリアという点では、考えていることはありますか。 S いまはアシスタント業務をしていますが、将来の展望は見えていないです。アシスタント業務には、いろいろな仕事を、ミスなく期限内にこなしていく能力が必要ですが、マルチタスクが苦手で不注意が多い私にとっては、自分の苦手分野だという意識があります。正直にいえば、この仕事を続けていて本当に自分に適したキャリアを積めるのか不安を感じています。発達障害は得意不得意の差が大きいため、自分の得意を活かしたい、能力を発揮したいという気持ちが強いです。私の場合は高いIQを活かした仕事がしたいと思いますが、未経験でそのような求人に応募することはむずかしいです。いまは資格などを取りながら、できることの可能性を広げていきたいと思っています。  職場の上司にも、自分の力で食べていけるようになりたいと伝えています。まずは目の前にある仕事の経験を積むことで、次のキャリアにつなげていきたいと思っております。 眞保 小野寺さんが支援されている企業のなかに、障害のある方のキャリア形成に力を入れている企業はありますか。 小野寺 そういった企業事例として、だんだんと仕事の難易度を上げていったり、職位としてグループのリーダーを任せていったり、社内資格のような形でステップアップに取り組んでいたりする企業もあります。業務集約型が多い特例子会社では、「この仕事をずっと続けるのは面白くない」と感じる障害のある方もいらっしゃいます。もう少しキャリアアップにつながるような働き方も含めて考えることはできないのかというご提案をさせていただくこともありますし、実際に、障害のある方の秀でているところを活かせるような職場、仕事の内容、待遇を用意されている企業もあります。将来設計を考えられるような待遇を確保しておかないと、優秀な人材がほかの企業に移ってしまいますので、ぜひ企業には、処遇の面も含めて考えていただきたいなと思います。 眞保 事前に集めたアンケートに、「発達障害傾向があるような方が、会社に後輩として入ってきたらうれしいですか」という質問があったのですが、Sさんはいかがでしょうか。 S 私は悩みを共有できる人が近くにいてくれたらうれしいです。同じ悩みを持つ後輩ができれば、経験を伝えるなど、ぜひとも力になってあげたいと思います。また、私と同様に総合職で入社しても、実は発達障害者だったという人も多くいらっしゃると思います。そういった人ともつながり、助け合えたらベストだと思います。話が変わりますが、精神的に落ち着いて長く勤めるために最も大切なことは、職場の雰囲気や上司の理解だと思います。実際に私が前職を辞めた大きな要因は、上司との関係がうまくいかなかったことです。 眞保 障害のあるなしにかかわらず、3年以内に3割辞めるのが新卒大卒の現状です。職場の風土や理解のある上司の存在がとても大事だと改めて感じました。  Sさんは、仕事をしてみてよかった、自分の障害を受容できてよかったと思うことはありますか。 S 障害がわかる前に、「なんでこんなことができないんだろう」と苦しんでいたことについて、「仕方ないな」と割り切ることができるようになりました。また、自分の特性を知ったからこそ、トラブルを起こさないように工夫をして、その後の生活がうまくできているのかなと思います。障害を受け入れることで、人間関係は回りやすくなったと思います。仕事をしてよかったことは、子どもを持てたことです。妻の収入の方が私より多いですが、育休や産休間の収入低下を考えると、私の就労なしでは子どもを持つことはできませんでした。 眞保 生きやすくなったという実感があるということですね。 大学でのさまざまな取組み 眞保 では、これからは会場のみなさんからのご質問を受けつけたいと思います。 質問者@ 一橋大学ではどのような形で、学生を保健センターにつなげているのか、そのシステムをうかがいたいと思います。 丸田 入学時の健康診断で、「発達障害を疑われたことがある」と答える新入生が増えてきました。そういう学生に、「何かあったら、保健センターに来てくださいね」といっておくと、実際に来るのはたいてい数年後になります。本学の保健センターでは医療機関での経験があるカウンセラーを非常勤で雇用しており、むずかしいケースへの対応にとても有用だと思っています。年に数人くらいは教職員や学生相談室やキャリアセンターから紹介があります。グループワークには、年に6人〜12人の人数を受け入れていますが、実際にはもっとたくさんの学生が対象者に該当すると思います。 小野寺 学部にキャンパスソーシャルワーカーを配置して、日ごろの困り感をキャッチして学内の学生相談室やキャリアセンターにつなげていくなどの取組みをしている大学もあると聞いています。また、2020年に初めて、障害者雇用に関するガイダンスをオンラインで開催したところ、通常よりも多くの申し込みがあったという例も耳にしています。障害をテーマにしたイベントに参加しづらかった学生が参加しやすくなったのではないでしょうか。 眞保 どんな体制があるのかは、大学によっても違いそうですね。健康センターなのか、学生相談室なのか、キャリアセンターなのか、障害学生支援室なのか、どこが何をやっていくかということを組織として議論して、しっかりと考えていく必要があるのではないかと感じました。また、いまの質問で、支援を必要としている人たちに手が届かないという課題が改めて認識されましたが、そのあたりの解決方法について、丸田先生にお話をいただきたいと思います。 丸田 2年くらい前に、教職員を対象にアンケートしたところ、発達障害と思われる学生を見つけたときに、どのように対処したらよいのかを駆け込みで相談できるような場所があってほしいという声がありました。企業でもそうだと思いますが、現場で対応する支援者の即時の相談に乗ってくれる支援者が、組織に一人はいるとよいなと思いました。 質問者A 眞保教授にうかがいます。教授の講義では、発達障害の診断があるとボイスレコーダーが借りられて、授業を録音できる取組みをしていると聞きました。ぜひ、ほかの大学にも広めていただきたい取組みだと思うのですが、他大学でもそのような例はあるのでしょうか。 眞保 今年、大学でもオンライン教育が導入されるようになりましたが、例えばUDトークという音声認識ソフトを使うと、ウェブ会議システムのZOOMの画面にそのまま字幕を写すことができます。また、それを、学習支援システムにあげておくと、話を聞きながら書くことが苦手な学生さんにはたいへん好評だということです。コロナ禍(か)で、このようなシステムの利用は急速に進んだと思います。 眞保 最後に、まとめをさせていただきます。  大学という高等教育機関において、障害のあるなしにかかわらず、学生の社会性を育んでいく場をしっかりつくっていく必要性があると、今日のお話を聞いて強く感じました。一橋大学では、保健センターがその中心的役割をになっていますが、おそらく多くの大学では、それぞれの別の組織が、それぞれ悩みながら、どのような対応をとったらよいのかを模索していると思います。今後は、それぞれの持っているリソースを共有して、一人の学生のために個別的に、在学中の4年間を通じて計画的に支援していく場をつくっていくことが必要だと実感しました。  また、その次に、大学を卒業して就職した後の発達障害者のキャリアをどう保証していくのかという課題があげられると思います。2000年代から障害者雇用がたいへん進みましたが、精神障害や発達障害のある方の雇用が本格化したのはここ2年ほどです。まだ、ふさわしい仕事、ふさわしい処遇がどの辺りにあるのか、手探り状態だと思います。今後、各機関が連携・相談をしながら、新たな職域開発と処遇の検討が必要ではないかと感じました。本日はありがとうございました。 ※1 ストレスコーピング:日常生活においてストレスを感じたときに、そのストレスにうまく対処する技術・能力のこと ※2 アンガーマネジメント:怒りの感情と上手につき合うための心理教育、心理トレーニング 写真のキャプション 眞保智子さん 丸田伯子さん 小野寺十二さん 新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じ、定員を削減しての開催となった 【P26-27】 省庁だより 令和2年 障害者雇用状況の集計結果@ (令和2年6月1日) 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課  厚生労働省では、障害者雇用促進法に基づいて、障害者の雇用義務がある事業主などから、毎年6月1日現在の身体障害者、知的障害者および精神障害者の雇用状況について報告を求めています。  令和2年6月1日現在における同報告を集計し、その結果をとりまとめました。 1 ポイント ■民間企業(法定雇用率2・2%) ○雇用障害者数57万8292・0人と過去最高を更新 ○実雇用率2・15%、法定雇用率達成企業の割合は48・6% ■公的機関(同2・5%、都道府県などの教育委員会は2・4%) ○国:雇用障害者数9336・0人  実雇用率2・83% ○都道府県:雇用障害者数9699・5人  実雇用率2・73% ○市町村:雇用障害者数3万1424・0人  実雇用率2・41% ○教育委員会:雇用障害者数1万4956・0人  実雇用率2・05% ■独立行政法人など(同2・5%) ○雇用障害者数1万1759・5人、実雇用率2・64% 2 民間企業における雇用状況 ◎雇用されている障害者の数、実雇用率  民間企業(45・5人以上規模の企業:法定雇用率2・2%)に 雇用されている障害者の数は57万8292・0人で、17年連続で過去最高となった。  雇用者のうち、身体障害者は35万6069・0人、知的障害者は13万4207・0人、精神障害者は8万8016・0人と、いずれも前年より増加した。  実雇用率は、過去最高の2・15%、法定雇用率達成企業の割合は48・6%であった(第1表)。 ◎企業規模別の状況  企業規模別にみると、雇用されている障害者の数は、45・5〜100人未満規模企業で5万8350・0人、100〜300人未満で11万3199・0人、300〜500人未満で5万824・5人、500〜1000人未満で6万6588・0人、1000人以上で28万9330・5人と、すべての企業規模で前年より増加した。  実雇用率は、45・5〜100人未満で1・74%、100〜300人未満で1・99%、300〜500人未満で2・02%、500〜1000人未満で2・15%、1000人以上で2・36%となった。  なお、民間企業全体の実雇用率2・15%と比較すると、500〜1000人未満及び1000人以上規模企業が実雇用率を上回っている。  法定雇用率達成企業の割合は、45・5〜100人未満で45・9%、100〜300人未満で52・4%、300〜500人未満で44・1%、500〜1000人未満で46・7%、1000人以上で60・0%であった(第2表)。 【第1表】民間企業における雇用状況(法定雇用率2.2%) 区分 @企業数 A法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 B障害者の数 A.重度身体障害者及び重度知的障害者 B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 E.計A×2+B+C+D×0.5 F.うち新規雇用分 C実雇用率E÷A×100 D法定雇用率達成企業の数 E法定雇用率達成企業の割合 民間企業 企業 102,698 (101,889) 人 26,866,997.0 (26,585,858.0) 人 122,795 (121,377) 人 17,084 (16,845) 人 291,126 (278,430) 人 48,984 (45,159) 人 578,292.0 (560,608.5) 人 57,630.0 (62,015.0) % 2.15 (2.11) 企業 49,956 (48,898) % 48.6 (48.0) 注1 A欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数」とは、常用労働者総数から除外率相当数(身体障害者、知的障害者及び精神障害者が就業することが困難であると認められる職種が相当の割合を占める業種について定められた率を乗じて得た数)を除いた労働者数である。 注2 BA欄の「重度身体障害者及び重度知的障害者」については法律上、1人を2人に相当するものとしており、E欄の計を算出するに当たりダブルカウントを行い、D欄の「重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者」については法律上、1人を0.5人に相当するものとしており、E欄の計を算出するに当たり0.5カウントとしている。  ただし、精神障害者である短時間労働者であっても、以下の注4に該当するものについては、1人分とカウントしている。 注3 A、C欄は1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者であり、B、D欄は1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者である。 注4 C欄の精神障害者には、精神障害者である短時間労働者であって、次のいずれかに該当する者を含む。  @ 平成29年6月2日以降に採用された者であること。  A 平成29年6月2日より前に採用された者で、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること。 注5 D欄の精神障害者である短時間労働者とは、精神障害者である短時間労働者のうち、注4に該当しない者である。 注6 F欄の「うち新規雇用分」は、令和元年6月2日から令和2年6月1日までの1年間に新規に雇い入れられた障害者数である。 注7 ( )内は令和元年6月1日現在の数値である。  なお、精神障害者は平成18年4月1日から実雇用率に算定されることとなった。 【第2表】民間企業における企業規模別の障害者の雇用状況 区分 @企業数 A法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 B障害者の数 A.重度身体障害者及び重度知的障害者 B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 E.計A×2+B+C+D×0.5 F.うち新規雇用分 C実雇用率E÷A×100 D法定雇用率達成企業の数 E法定雇用率達成企業の割合 規模計 企業 102,698 (101,889) 人 26,866,997.0 (26,585,858.0) 人 122,795 (121,377) 人 17,084 (16,845) 人 291,126 (278,430) 人 48,984 (45,159) 人 578,292.0 (560,608.5) 人 57,630.0 (62,015.0) % 2.15 (2.11) 企業 49,956 (48,898) % 48.6 (48.0) 45.5〜100人未満 50,544 (50,055) 3,348,466.5 (3,316,709.0) 10,222 (10,237) 3,020 (2,935) 30,097 (28,881) 9,578 (8,779) 58,350.0 (56,679.5) 6,818.0 (6,927.0) 1.74 (1.71) 23,224 (22,796) 45.9 (45.5) 100〜300人未満 36,787 (36,578) 5,677,127.5 (5,646,290.5) 21,796 (21,816) 4,806 (4,811) 58,097 (56,463) 13,408 (12,444) 113,199.0 (111,128.0) 12,718.5 (13,627.5) 1.99 (1.97) 19,274 (19,041) 52.4 (52.1) 300〜500人未満 7,078 (7,031) 2,511,339.5 (2,492,011.0) 10,560 (10,538) 1,777 (1,682) 25,598 (24,629) 4,659 (4,025) 50,824.5 (49,399.5) 5,123.5 (5,727.5) 2.02 (1.98) 3,122 (3,087) 44.1 (43.9) 500〜1,000人未満 4,818 (4,820) 3,090,963.5 (3,099,057.0) 14,109 (14,124) 1,895 (1,927) 33,993 (32,903) 4,964 (4,723) 66,588.0 (65,439.5) 6,926.0 (7,675.5) 2.15 (2.11) 2,252 (2,115) 46.7 (43.9) 1,000人以上 3,471 (3,405) 12,239,100.0 (12,031,790.5) 66,108 (64,662) 5,586 (5,490) 143,341 (135,554) 16,375 (15,188) 289,330.5 (277,962.0) 26,044.0 (28,057.5) 2.36 (2.31) 2,084 (1,859) 60.0 (54.6) 注 第1表と同じ 【P28-29】 研究開発レポート 第28回 職業リハビリテーション研究・実践発表会特集Part1 特別講演 「障害者雇用の経営改善効果〜戦力化と相乗効果〜」  当機構では毎年、職業リハビリテーションに関する研究成果を周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を生み出すための機会として、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催しています。第28回となる令和2年度は、新型コロナウイルス感染症を考慮して、特別講演やパネルディスカッションなどの様子を動画で配信し、また、障害者雇用に取り組んでいる企業や支援機関による実践事例などの発表資料を障害者職業総合センター(NIVR)のホームページに掲載する形式で実施しました。ここでは、特別講演「障害者雇用の経営改善効果〜戦力化と相乗効果〜」の様子をダイジェストでお届けします。 中小零細企業における障害者の戦力化  登壇したのは、横浜市立大学都市社会文化研究科の教授で、CSR&サステナビリティセンター長の影山(かげやま)摩子弥(まこや)氏。「障害者雇用の経営改善効果〜戦力化と相乗効果〜」というテーマを掲げ、障害者雇用が企業の戦力になるだけではなく、健常者の労働生産性を上げることにつながった事例をあげ、そのためには企業を取り巻くネットワークが重要だという主張がなされました。  厚生労働省の発表では、2019(令和元)年6月1日現在の民間企業における障害者の実雇用率は、過去最高ではあるものの、2・11%と法定雇用率の2・2%を下回っており、法定雇用率を達成している企業の割合も全体の半分に満たない状況です。実雇用率も、1976(昭和51)年以降ほぼ一貫して上昇傾向を示していますが、これは企業側が上昇する法定雇用率を追いかけているとも考えられます。影山氏によると、日本企業はCSRを社会貢献ととらえる傾向や、コンプライアンスを重視する傾向があり、大企業を中心に義務として¥瘧Q者雇用が進められていることがデータに現れているといいます。  企業規模が小さくなるほど、雇用率の達成割合は低くなりますが、その背景には「障害者は力になりにくい」、「不測の事態があると困る」、「対応のノウハウがない」、「作業の現場の負担になるのではないか」などの不安があることは否めません。一方で、障害者雇用を実際に行っている中小零細企業では、多くの障害者が雇用されており、これは、「中小零細企業においても、障害者を戦力として、積極的に活用できているケースがある」ことを示唆するものだといいます。講演では、「マッチングでの相性の見極め」や「障害に合った仕事の割り振りの工夫」、「コミュニケーションの工夫」、「市場ニーズに合った製品品質の追求」などの配慮や工夫をして、障害者の戦力化を図っている企業の事例が紹介されました。 障害者雇用により、経営改善効果が見られた事例  また、障害者が健常者の社員にもよい影響を与えることで、正の相乗効果を生んでいる事例も紹介されました。例えば、「障害者を雇用したことで、人間関係が改善した」、「安全面への配慮などリスクマネジメントが進み、健常者も働きやすい職場になった」、「障害者が付帯業務をになうことで適材適所に基づく分業が進み、健常者の効率や生産性が高まった」などの例は全国に見られます。その結果、健常者の社員の業務パフォーマンスが改善し、業績にまで影響を与えるケースも少なくないといいます。  このような相乗効果が生まれる理由を、影山氏は、障害者に配慮された職場では安心して仕事をするための「心理的安全性」が生まれやすいためだと考察します。健常者のなかに障害者が一人入ると、健常者は、健常者と障害者を意識のうえで区別し、自己を健常者のグループの一員と認識します。この共通性の認識は、共同性の基盤になり、そのうえで、健常者は「障害者をサポートしなくてはいけない」という倫理観を持って、障害者に接しようとします。また、障害者を支えるために必然的に相互に協力しあって対応しようとする雰囲気も生まれます。障害者が活き活きと働く姿が見られると、モチベーションはさらに高まります。  このような集団では、健常者同士でも相互に配慮を行う雰囲気が生まれやすくなります。そのため、「障害者雇用が成功している企業は、人間関係が円滑で働きやすく、生産性の高い組織になる可能性がある」と、影山氏は指摘します。例え障害者雇用をしていても、障害者と健常者が別々に働き、接点のない職場では、このような効果は生まれないといいます。  障害者が職場に定着し、力を発揮するためには、職場における合理的配慮≠ェ欠かせません。合理的配慮を効果的に行えるような職場のあり方が、健常者同士にも、円滑な人間関係をつくり出し、業務全体の生産性を高めることにつながっていると影山氏は考えます。実際に、障害者が定着している企業は、社内の雰囲気がよいという声が多いといいます。 「地域ネットワーク」が心強い味方となる  障害者への合理的配慮を行うには、知識やノウハウが欠かせません。しかし、企業が自助努力によって経験を蓄積し、知識を身につけるまでには、多大な労力や時間がかかります。そこで重要になるのが、障害者就業・生活支援センターや地域障害者職業センター、医療機関、特別支援学校などの障害者を支援する組織との連携です。普段から地域ネットワークを築いておき、迅速で適切な対処をする体制を整えることで、障害者も安心して就労を継続することができるようになると影山氏はいいます。  講演の結びとして、影山氏は、「障害者雇用に関心を持つ企業は多いが、不安があり、ふみ出せないことが多いので、支援機関は、その背中を押すことが大切である」とのメッセージを伝えました。また、障害者雇用を進めようとしている企業には、「どの団体や機関も相談にのってくれるから、思い切って相談に行ってほしい」と述べました。さらに、「普段から相互のコミュニケーションをとることと、企業と福祉では発想が違うので互いの歩み寄りが必要であることを強調し、障害者がやりがいを持って戦力になることが社内に相乗効果を呼び、企業にとってもプラスになるため、前向きに障害者雇用に取り組んでいただきたい。また、障害者を支援する立場の方々も、障害者雇用に取り組む企業を支えるということが重要なポイントになる」と結論づけました。  次号では、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」のパネルディスカッションT「障害者を継続雇用するためのノウハウ〜企業在籍型ジョブコーチの活躍〜」、パネルディスカッションU「障害のある社員の活躍のためのICT活用」をダイジェストでお伝えします。 ※今回の特別講演の動画は、NIVRホームページ(https://www.nivr.jeed.go.jp/)にて視聴が可能です。また、講演の内容は、影山氏の著書『なぜ障がい者を雇う中小企業は業績を上げ続けるのか?〜経営戦略としての障がい者雇用とCSR〜』(中央法規出版)でも詳しく紹介されています 写真のキャプション 特別講演の様子 特別講演の講師 横浜市立大学都市社会文化研究科 教授 CSR&サステナビリティセンター長 影山摩子弥氏 【P30-31】 「働く広場」記事索引 2020年4月号〜2021年3月号 本誌2020(令和2)年4月号から今号までの記事一覧です。当機構ホームページからご覧に慣れます。 働く広場 バックナンバー 検索 月号 項目 【執筆者】/<取材先>タイトル 項目は特集記事 2020年4月号(No.511) この人を訪ねて <株式会社白石設計 代表取締役 白石光廣さん>CADに特化した就労支援で戦力化 職場ルポ <リベラル株式会社>OA機器修理までこなす「職人」を育てる クローズアップ はじめての障害者雇用 第1回 JEEDインフォメーション 令和2年度 障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請が令和2年4月1日から始まります グラビア <株式会社U&U 阪本祐介さん>最後の挑戦 〜銀賞の悔しさをばねに〜 エッセイ 【内閣府地域働き方改革支援チーム委員(兼務 株式会社東レ経営研究所)渥美由喜】第4回 発達障害を活かすということ −人と違う感性を強みに− 編集委員が行く 【松爲信雄】<株式会社富士電機フロンティア>障がいのある社員の加齢問題への挑戦 省庁だより パワーアシストスーツの普及拡大が期待されます/補足資料(編集部)新たな技術が活用された「障害者就労支援機器」 研究開発レポート 障害者雇用制度の改正等に伴う企業意識・行動の変化に関する研究 2020年5月号 新型コロナウイルス感染症拡大にともなう緊急事態宣言を受け、休刊となりました。 2020年6月号(No.512) 私のひとこと 【発達障害の理解啓発に関する講師 笹森理絵さん】「発達障害だから働けない」という前に 職場ルポ <有限会社川田製作所>町工場でIT活用、ダイバーシティを実現 クローズアップ はじめての障害者雇用 第2回 JEEDインフォメーション 2020年度(令和2年度)職業リハビリテーションに関する研修のご案内/令和2年度「地方アビリンピック」開催地一覧/令和2年度障害者雇用支援月間 ポスター原画(絵画・写真)コンテスト「働くすがた〜今そして未来〜」 グラビア <株式会社グンリック>憧れのトラックドライバー 〜物流をになう聴覚障害者たち〜 エッセイ 【内閣府地域働き方改革支援チーム委員(兼務 株式会社東レ経営研究所)渥美由喜】最終回 発達障害で活躍するということ −一人ひとりの個性を活かす− 編集委員が行く 【阪本文雄】<オムロン京都太陽株式会社、オムロン太陽株式会社、社会福祉法人太陽の家>就労継続支援A型事業所から23人が製造現場へ一般就労 〜障がい種別の多様化に対応〜 省庁だより 障害者に対する就労支援の推進 〜令和2年度障害者雇用施策関係予算のポイント〜 研究開発レポート 就労に必要な移動等に困難がある障害者の実状等に関する調査 2020年7月号(No.513) 私のひとこと 【「親なきあと」相談室主宰/行政書士・社会保険労務士 渡部伸さん】「親なきあと」問題とは 〜障害者が長く働くために〜 職場ルポ <パーソルチャレンジ株式会社>不安を解消する工夫、能力を活かす多様な業務 クローズアップ はじめての障害者雇用 第3回 JEEDインフォメーション 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ/令和2年度「地方アビリンピック」開催地一覧/障害者職業総合センター職業センターで実施している職業リハビリテーション技法開発に関する報告書・マニュアルのご紹介 グラビア <株式会社CWS>地域の暮らしを支える物流センターで働く エッセイ 【『ママの足は車イス』著者/元幼稚園教諭・保育士 又野亜希子】第一回 重度障害とともに 〜ある日、突然の交通事故〜 編集委員が行く 【朝日雅也】<世田谷区障害福祉部、株式会社オオゼキ、世田谷区障害者就労支援センターしごとねっと>地域に根ざした障害者雇用の推進力 〜世田谷区障害者雇用促進協議会の取組みを訪ねて〜 省庁だより 令和2年度障害保健福祉部予算の概要(1) 研究開発レポート 調査研究報告書No.153「障害のある求職者の実態等に関する調査研究」 2020年8月号(No.514) この人を訪ねて <経営学者・千葉商科大学大学院中小企業人本経営(EMBA)プログラム長 坂本光司さん>「いい会社」とは何か 職場ルポ <株式会社ドコモ・プラスハーティ>器具や手順を工夫、均一で高いレベルの清掃 クローズアップ はじめての障害者雇用 第4回 JEEDインフォメーション W事例で見るWW動画で見るW『障害のある方への合理的配慮の提供』 「障害者雇用事例リファレンスサービス」、「みんな輝く職場へ〜事例から学ぶ合理的配慮の提供〜」/ご活用ください! 障害者の職業訓練実践マニュアル グラビア <千葉県商工労働部 産業人材課 久我裕介さん>アイメイトと、ともに働く エッセイ 【『ママの足は車イス』著者/元幼稚園教諭・保育士 又野亜希子】第二回 重度障害とともに 〜子育てと講演活動から得た自信、そして生きがい〜 編集委員が行く 【樋口克己】雇用の原点は「人」 〜歴史をふり返る二人の知見と見聞〜 省庁だより 令和2年度障害保健福祉部予算の概要(2) 研究開発レポート 気分障害等の精神疾患で休職中の方のための日常生活基礎力形成支援 〜心の健康を保つための生活習慣〜 2020年9月号(No.515) 私のひとこと 【株式会社キズキ代表取締役社長、NPO法人キズキ理事長 安田祐輔さん】人間の尊厳を最大限守る支援を広げたい 職場ルポ <株式会社テセック>知的障害者を事務職で直接採用 クローズアップ はじめての障害者雇用 第5回 JEEDインフォメーション 令和2年度 就業支援課題別セミナー「事業主支援」のご案内/障害者職業訓練推進交流プラザのご案内/ご活用ください!障害者の職業訓練実践マニュアルなど グラビア 令和2年度 障害者雇用支援月間ポスター原画(絵画・写真)コンテスト「働くすがた〜今そして未来〜」入賞作品 エッセイ 【『ママの足は車イス』著者/元幼稚園教諭・保育士 又野亜希子】最終回 重度障害とともに 〜さらにできることに挑戦してみたい!子育て支援活動への取組み〜 編集委員が行く 【大塚由紀子】<あいおいニッセイ同和損害保険株式会社>精神・発達障がいのある社員も、かかわる社員も「だれもが、楽しく、誇りをもって」 省庁だより 特別支援教育における就労支援の取組み 研究開発レポート 高次脳機能障害者の職場適応促進を目的とした職場のコミュニケーションへの介入 ーコミュニケーションパートナートレーニングー 2020年10月号(No.516) 私のひとこと 【東洋英和女学院大学 人間科学部 教授 石渡和実さん】Inclusive Vocationの実現へ 〜就労支援の40年からさらなる進展を〜 職場ルポ <東京海上ビジネスサポート株式会社>人材育成の環境を整え、職域拡大もはかる クローズアップ はじめての障害者雇用 最終回 JEEDインフォメーション 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」の活用事例/国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ グラビア <スターバックス コーヒー イオンモール岡山店 細尾希良々さん>接客が天職です 〜「全国アビリンピック」金メダリストの活躍〜 エッセイ 【香川大学 教育学部 教授 坂井聡】あなたはどう思いますか? 第1回 編集委員が行く 【三鴨岐子】<中小企業家同友会全国協議会>共生社会を目ざす企業家集団 〜中小企業家同友会 障害者問題委員会 活動の歴史〜 省庁だより ハローワークを通じた「障害者の就職件数」が11年連続で増加 〜令和元年度 障害者の職業紹介状況等〜 研究開発レポート アシスティブテクノロジーを活用した高次脳機能障害者の就労支援 2020年11月号(No.517) この人を訪ねて <NPO法人京都難病支援パッショーネ 理事長 上野山裕久さん>難病患者が働くためには 職場ルポ <日豊製袋工業株式会社>ペア作業で長所を活かし、独自の指導・支援で定着へ クローズアップ <株式会社シーエックスカーゴ尾道流通センター>活躍する障害者職業生活相談員 第1回 JEEDインフォメーション 令和2年度就業支援スキル向上研修のご案内/障害者週間連続セミナー「働く広場」公開座談会 発達障害者の雇用を促進するために〜若年求職者への支援を考える〜/第40回全国障害者技能競技大会のお知らせ グラビア <特定非営利活動法人町田リス園>リス園へようこそ! エッセイ 【香川大学 教育学部 教授 坂井聡】あなたはどう思いますか? 第2回 編集委員が行く 【諏訪田克彦】<株式会社インコムジャパン>仕事では全員が責任者(リーダー) 自らの夢を実現した会社が取り組む障害のある人の雇用 省庁だより 令和2年版 障害者白書概要@ 研究開発レポート 就労困難性による障害認定や重度判定 〜フランスとドイツの取組 2020年12月号(No.518) 私のひとこと 【社会福祉法人うしおだ 理事長・精神科医 野末浩之さん】精神障害のある方の就労 職場ルポ <株式会社LIXIL>就労センターを拠点とした多様な支援とキャリア育成 クローズアップ <JFEビジネスサポート横浜株式会社>活躍する障害者職業生活相談員 第2回 JEEDインフォメーション 障害者雇用を進める事業主のみなさまへ 就労支援機器をご活用ください!/障害者雇用のためのマニュアル・好事例集などのごあんない/今、手に取られている「働く広場」をデジタルブックでもお読みいただけます! グラビア <Social Cafe Sign with Me春日店>“話が見える”カフェ エッセイ 【香川大学 教育学部 教授 坂井聡】あなたはどう思いますか? 第3回 編集委員が行く 【松爲信雄】<一般社団法人障害者雇用企業支援協会>新型コロナウイルスによる障害者雇用への影響 省庁だより 令和2年版 障害者白書概要A 研究開発レポート 調査研究報告書No.150「発達障害者のストレス認知と職場適応のための支援に関する研究」 2021年1月号(No.519) リーダーズトーク 第3回<トヨタ自動車株式会社 サステナビリティ推進室 副CSO 大塚友美さん>「YOUの視点」で幸せの量産を目ざす 職場ルポ <サントリービジネスシステム株式会社>ともに働き互いに成長する「やってみなはれ」精神 JEEDインフォメーション 令和3年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ/「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない 〜障害者雇用の専門家が企業のみなさまを支援します〜/「障害者雇用事例リファレンスサービス」を活用して本誌「働く広場」の取材記事が探せます! グラビア <株式会社帝京サポート>教育・医療の現場を支える エッセイ 【香川大学 教育学部 教授 坂井聡】あなたはどう思いますか? 第4回 編集委員が行く 【原智彦】<東京都立志村学園、株式会社パソナハートフル、経済産業省 経済産業研修所>新型コロナウイルスの感染防止に対応し、新たな学びを得る クローズアップ <株式会社大京>活躍する障害者職業生活相談員 第3回 研究開発レポート 発達障害者のワークシステム・サポートプログラム 問題解決技能トレーニングの改良 2021年2月号(N520) 特集 第40回全国アビリンピック グラビア アビリンピックルポ 第40回全国アビリンピック この人を訪ねて <愛知玉野情報システム株式会社 総務課主幹 橋本忠雄さん>アビリンピックの実績、社内業務の拡大にも クローズアップ 活躍する障害者職業生活相談員 最終回 JEEDインフォメーション 令和3年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」申請のお知らせ エッセイ 【香川大学 教育学部 教授 坂井聡】あなたはどう思いますか? 最終回 編集委員が行く 【武田牧子】各地の障害者就業・生活支援センターから見た、コロナ禍の障害者雇用 2021年3月号(No.521) リーダーズトーク 第4回<東急リバブル株式会社 代表取締役社長 太田陽一さん>顧客満足を支える社風、多様な社員の活躍と業務拡大の礎に 職場ルポ <東京都プリプレス・トッパン株式会社>「人財開発室」を拠点に、細やかな支援と育成 JEEDインフォメーション 就労支援機器紹介シリーズ 第2回 障害のある社員の就労環境を支援する機器やソフトをご紹介します!/職業センターの支援技法開発をご紹介します/「読者アンケート」結果発表!! グラビア <伊藤忠ユニダス株式会社>マイスターを目ざして エッセイ 【社会保険労務士・行政書士 高橋悠】障害福祉サービスの現場から 第1回 公開座談会 令和2年度内閣府主催 障害者週間連続セミナー 発達障害者の雇用を促進するために 〜若年求職者への支援を考える〜 省庁だより 令和2年 障害者雇用状況の集計結果@(令和2年6月1日) 研究開発レポート 第28回 職業リハビリテーション研究・実践発表会特集 Part1 特別講演「障害者雇用の経営改善効果〜戦力化と相乗効果〜」 【P32】 掲示板 好評配信中!  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、当機構が全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に、みなさまに配信しています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える 人事労務担当者のみなさま、必読! 高齢 超高齢社会の人材確保 障害 障害特性に応じた配慮の方法 求職 ものづくり技術伝承や人材育成 みなさまの「どうする?」に応えるヒントが、見つかります! JEED メルマガ で 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 次号予告 ●私のひとこと  「弁護士法人ソーシャルワーカーズ」代表弁護士・社会福祉士の浦ア寛泰さんに、実際に相談が多く寄せられる障害のある人の家計の把握・管理などについて、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  ビルメンテナンス業務、公園の管理運営などを行う株式会社美交工業(大阪府)を訪問。支援機関などと連携した障害者雇用の取組みを取材します。 ●グラビア  SMBC日興証券株式会社の特例子会社で、おもに事務サポート業務を行っている日興みらん株式会社(東京都)を取材。障害のある社員の活躍をご紹介します。 ●編集委員が行く  平岡典子編集委員が、千葉県立特別支援学校市川大野高等学園(千葉県)と東京都立港特別支援学校(東京都)を訪問。知的障害のある方の就労に向けた取組みを取材します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.or.jp ※令和3年4月1日から、メールアドレスはhiroba@jeed.go.jpに変更となります ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 3月号 定価(本体価格129円+税)送料別 令和3年2月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 相談支援事業所 Serecosu新宿 武田牧子 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【P33】 令和2年度障害者雇用職場改善好事例の応募事例を当機構ホームページでご紹介します ◆令和2年度は「障害者の健康に配慮し、安心・安全に働けるように取り組んだ職場改善好事例」を募集し、全国69 事業所からご応募いただきました。 ◆応募事例のうち、他の事業所にも参考となる取組を当機構ホームページに掲載していますので、ぜひご活用ください。 掲載イメージ @目次ページ 「取組テーマ別」と「障害種別」で分類しています。 クリック A各取組の紹介ページ 「改善前の状況」「改善策」「改善後の効果」を掲載しています。 以下のリンクからご覧ください *機構ホーム>障害者の雇用支援>各種資料>ハンドブック・マニュアル等> 「障害者の健康に配慮し、安心・安全に働けるように取り組んだ職場改善好事例」 ※順次事例をアップします 過去の職場改善好事例もホームページでご覧いただけます JEED 障害者雇用の好事例 検索 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9514 【裏表紙】 作品募集! 令和3年度 「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 3/1(月)〜6/15(火) 締切・消印有効  毎年9月1日〜30日は、「障害者雇用支援月間」です。国民のみなさまに障害者雇用への理解と関心を深めていただけるよう、障害のある児童・生徒や働く障害のある方々を主な対象に「働くこと」をテーマとする「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」と、障害のある方の仕事や職場をテーマとする「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」を実施します。厚生労働大臣賞受賞作品は、障害者雇用支援月間ポスターに使用し、全国のハローワークなどに掲示します。 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/activity/contest/index.html JEED 絵画写真 検索 ★過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます。 令和2年度 障害者雇用支援月間ポスター原画コンテスト 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞 【絵画の部】中学校 「ずーっと車屋さんではたらく」 翁長光舞さん(沖縄県) 沖縄県立島尻特別支援学校3年 【絵画の部】小学校 「ぼくは白バイ隊員」 大澤津來斗さん(鹿児島県) 曽於市立末吉小学校5年 【写真の部】 「えーと あと幾つだっけ」 小仲邦生(熊本県) 【絵画の部】高校・一般 「伝えていきたい技」 井上浩之さん(神奈川県) 富士ソフト企画株式会社 ITサービスグループ 写真コンテストは、プロのカメラマン以外の方であればどなたでもご応募いただけます。 シンボルキャラクター“ピクチャノサウルス”(かおはカメラ、つのは絵筆をイメージしています) たくさんのご応募お待ちしています。 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9515 FAX 043-297-9547 3月号 令和3年2月25日発行 通巻521号 毎月1回25日発行 定価(本体価格129円+税)