【表紙】 令和3年4月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第523号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2021 5 No.523 職場ルポ 障がいのある社員同士「ともに助け合う」職場 富士ソフト企画株式会社(神奈川県) グラビア 「働きたい」職場へ 〜安心して長く働けるように〜 株式会社JTBデータサービス(東京都) 星 宏明さん 編集委員が行く 障がいが障害でなくなる職務創出を目ざして 大東コーポレートサービス株式会社、株式会社アーネスト(東京都) この人を訪ねて 居場所としての企業 〜子どもが遊んで育つ場所〜 一般社団法人ぷれジョブ 代表理事 西 幸代さん 「目指せ!パンダの飼育員」和歌山県・田中(たなか)遥姫(はるひ)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 5月号 【前頁】 心のアート 無題 けいご (特定非営利活動法人地域支援センターポレポレ) 素材:紙、糸、着物布/サイズ:約100〜200cm×30〜40cm  ポレポレでの機織(はたお)りは、経糸(たていと)に細く裂いた布を横糸として入れ、トントンと織っていくのですが、途中区切りとして厚紙を挟むことがあります。  最初は厚紙を挟んでいたのですが……けいごさんは写真を切って挟んだりレシートを挟んだり、挟む物に好きなフレーズを書くなどアレンジを楽しんでいるようです。  ついには、先日作品をなぜか洗濯機に入れ洗っていました。当然、紙も洗濯機のなかも無残な状態に。スタッフ→(泣)、本人→(笑)。  けいごさんの作品はアレンジそのものなんだと感じました。 (文:特定非営利活動法人地域支援センターポレポレ 菊 義典) けいご  38歳。石川県金沢市在住。自閉症がある。  生活介護事業所「それいけ仲間たちの家」を利用し、内職、清掃などのほか、機織り、絵画などのアート活動で幅広く活動している。 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2021年5月号 NO.523 心のアート 前頁 無題 作者:けいご(特定非営利活動法人地域支援センターポレポレ) この人を訪ねて 2 居場所としての企業 〜子どもが遊んで育つ場所〜 一般社団法人ぷれジョブ 代表理事 西 幸代さん 職場ルポ 4 障がいのある社員同士「ともに助け合う」職場 富士ソフト企画株式会社(神奈川県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 職場定着に役立つ「ピアサポート」とは 第2回 〜互いの障がいを理解し、支えあうことの重要性〜 JEEDインフォメーション 12 第41回全国アビリンピック/令和3年度「地方アビリンピック」開催地一覧/2021年度(令和3年度)職業リハビリテーションに関する研修のご案内 グラビア 15 「働きたい」職場へ 〜安心して長く働けるように〜 株式会社JTBデータサービス(東京都) 星 宏明さん 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 障害福祉サービスの現場から 第3回 社会保険労務士・行政書士 高橋 悠 編集委員が行く 20 障がいが障害でなくなる職務創出を目ざして 大東コーポレートサービス株式会社、株式会社アーネスト(東京都) 編集委員 八重田 淳 省庁だより 26 障害者に対する就労支援の推進〜令和3年度障害者雇用施策関係予算のポイント〜 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課/人材開発統括官 参事官室(人材開発政策担当) 研究開発レポート 28 企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)による支援の効果及び支援事例に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 表紙絵の説明 「私の夢は、大好きなパンダの飼育員になることです。将来、自分がパンダのお世話をしている様子を想像して描きました。パンダの毛並みを表現するのに苦労しましたが、パンダらしく描けて満足です。遠足でアドベンチャーワールドに行き、パンダを近くで見ることができて、うれしかったです」 (令和2年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-3】 この人を訪ねて 居場所としての企業 〜子どもが遊んで育つ場所〜 一般社団法人ぷれジョブ 代表理事 西 幸代さん にし さちよ 1961(昭和36)年、岡山県生まれ。1983年、岡山大学で中学校教諭免許取得。2009(平成21)年、岡山大学大学院で教育学研究科修士号取得。  特別支援学校の教諭だった2003年に「ぷれジョブR」を考案し、倉敷市立福田中学校での活動を皮切りに全国へと広める。2012年に「全国ぷれジョブ連絡協議会」を設立。2019(令和元)年には「一般社団法人ぷれジョブ」に移行し、代表理事を務める。https://www.purejob.net/ 「ぷれジョブR」のねがい ――西さんが考案した「ぷれジョブR」活動は2003(平成15)年に岡山県倉敷市でスタートし、いまでは全国各地に広がっています。内容についてあらためて教えてください。  「ぷれジョブR」は、さまざまな障害のある小学校5年生~高校3年生ぐらいまでの子どもたちが、週1回1時間、自分の住む地域で、ボランティアのジョブサポーターとともに仕事体験をする活動です。1カ所の職場で半年間続けた後、また別の職場で半年間と、最長8年間で16カ所の職場の仕事を体験できます。ジョブサポーターは一般の地域住民のみなさんで、私が倉敷市で始めたときは夜間補導員のボランティアの方たちに声をかけました。  受入れ先の職場では「きちんと挨拶ができるようになる」、「なにかを身につけさせる」といった目標設定などは一切ありません。じつは、たまに誤解されるのですが、「ぷれジョブR」は就労支援事業ではありません。私たちの活動の目的は、障害のある人とそうでない人が分断されることなく、お互いに顔見知りの関係で助け合えるような新しい関係づくりです。そして子どもたちにとっては、入り口は仕事体験なのですが、学校や家庭以外の社会のなかの"居場所づくり"なのです。一生懸命に自分の運命を背負ってがんばっている子がいるということを、地域の人たちに知ってもらうこと。また、障害のある子どもとの交流を通じて、大人側は失ったものに気づかされること。この「対等な相互承認」によって、自然に、みんなで共存していけるようになること。それが「ぷれジョブR」の理念です。  障害のある子どもたちを施設などで療育する「予防」ではなく、就労に向けた訓練のための「準備」でもなく、大人も含めてだれもがわけへだてなく参加できる「遊び」の場を、地域のなかに地域の人たちと一緒につくりたいと思っています。 ともかちゃんとの出会い ――子どもたちの活動の中心が、「仕事」というのも興味深いですね。  「ぷれジョブR」という呼び名には、仕事体験のほかに、「純粋な」という意味の英語「pure」も込めています。いわゆるお金を生み出す働きという狭義(きょうぎ)の仕事のほかに、「人にものを考えさせる」という内的生産性をもった仕事もあると考えているからです。  私が、この活動を始めるきっかけとなったのは、20数年前に特別支援学校に赴任したときに出会った、ともかちゃんという少女の存在でした。彼女は生まれたときから呼吸以外ほぼ自ら体を動かすことができず、学校の隣にあった重症心身障害児療育病棟から出たこともありませんでした。言葉を発せず、目は24時間開けたままの彼女でしたが、私がそばに来たのを感じると、大きな呼吸をして迎えてくれました。彼女の全身全霊の表現が、部屋のなかの空気を震わせながら波動のように伝わってきたのをいまでも覚えています。それから亡くなるまでの1年半、「息を交わすコミュニケーション」を続けました。  彼女の、与えられた命のかたちを、あるがまま引き受けて懸命に生きる姿に、私は「個の尊厳」について思いを深く巡らせました。あとになって気づいたのですが、彼女は私に「幸せに生きるとはどういうことか?」と考えさせるジョブをしていました。この大切な体験が「ぷれジョブR」への原動力になっています。実際これまで、活動にかかわる人たちに「考えさせるジョブ」をした子どもたちがたくさんいます。 居場所としての企業 ――この活動は、地域や企業でどのように受けとめられたのでしょうか。  企業の人たちには、1週間のうちの1時間、「子どもたちとどんなことをしようかな」などと考えてもらいます。一緒に過ごすというプロセス自体がゴールなので、評価もありません。子どもたちにかかわる大人が集まる月1回の定例会は、茶飲み会のような交流です。ジョブサポーターも企業の人も、かしこまらずに参加してくれることが大事です。  そんなゆるやかな活動を終えて企業の方に話を聞くと、一緒に作業しながら子どもが発した言葉に「ハッとさせられた」と明かした人や、半年間での予想外の成長ぶりに、障害というものについて「自分はまだ一部しか知らないことに気づかされた」とふり返る人もいます。社員のみなさんの気持ちが変わるなかで、「じつは私にも同じような障害のある家族がいます」とか「悩んでいる友人に教えてあげたい」という話も聞きました。  子どもたちが通う学校の先生たちからは、「実習などでは見せない輝くような表情を見た」といった驚きの声がよく上がってきます。「ぷれジョブR」が、自分の意思を出せる自由度の高い遊びの場、道草の場になっているのだろうと思います。  なにより子どもたちは、多くの職場でいろんな人とかかわることで、知り合いが増え続けます。こうして「他人を信じられる」ことを確認していけると、将来どこかでなにかによって傷ついても「こんなことばかりじゃないよね」と思えるレジリエンス(回復力)も知らぬ間に育ちます。保護者にとっても、ゆるく頼れるご近所さんが増えて、少しずつ地域社会に手渡しながら「子離れ」していく準備になります。  このようにして地域の人たちと、ゆるやかに長く続くつながりを得ることで、子どもたちが大人になったときにも、いろんな暮らし方(住み方・働き方・遊び方)を選べるようになります。 企業と直接マッチングも ――2019(令和元)年に連絡協議会を一般社団法人に移行させ、新しい動きも出ているそうですね。  これまで27都道府県で組織ができ、それぞれ自由に活動してもらっていましたので、いつの間にか消滅していたり、趣旨が変わってしまったりしたようなところもあります。活動のあり方に正解はありませんから、基本的にはそれぞれ試行錯誤をしていくのがよいと思っています。ただ基本理念だけは理解しておいていただきたく、一般社団法人として「ぷれジョブR」の理念をあらためて説明し、個人の意見が反映できる「賛同者個人登録」という形で手続きを進めています。  同時に、組織のない地域で、企業と子どもたちの直接的なマッチングも始めました。先日は、東京の代官山(だいかんやま)にあるアパレル企業から「やってみたい」と申し出を受けました。ちょうどその近隣に住む、恐竜の絵を描くのが好きな男の子が応募してくれました。ジョブサポーターはその企業の社員が担当し、交代しながら送迎などをしてくれています。  これまでは、組織が大きくなるほど決断するまでのハードルが高くなり、動きづらい点がありました。これからは、企業に直接手をあげてもらい、身軽に柔軟に活動していける新しい道筋もつくっていきたいと考えています。  今回、この記事を読んでいただき、受入れ企業として「一度説明を聞いてみたい」という方、受入れはできないが「運営経費の応援はできるよ」という方、「ホームページ作成の手伝いはできるよ」という方など、多くのみなさまにご参加いただけますと幸いです。 【P4-9】 職場ルポ 障がいのある社員同士「ともに助け合う」職場 ―富士ソフト企画株式会社(神奈川県)―  障がいのある社員が約9割を占める、ソフトウェア関連の特例子会社では、当事者の目線や経験を活かしながら助け合い、親会社のリワークも受け入れている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 富士ソフト企画株式会社 横浜オフィス 〒231-8008 神奈川県横浜市中区桜木町1-1 (富士ソフト株式会社 本社ビル内) TEL 0467-47-5944(富士ソフト企画株式会社 本社) Keyword:身体障がい、知的障がい、精神障がい、就労移行支援、委託訓練、ジョブコーチ、精神保健福祉センター、リワーク POINT 1 異なる障がいの社員が部署内で助け合うことで、個々の成長をうながす 2 親会社の休職社員の「リワーク」事業によって相乗効果も 3 メンタル面のサポートではアンガーマネジメントのほか、プライベートも含めた助言や情報共有を重視 約9割が障がいのある社員  ソフトウェア開発やシステム構築などで知られる「富士ソフト株式会社」(以下、「富士ソフト」)は、1970(昭和45)年の創業から昨年で50年を迎え、グループ全体の従業員数は計1万3千6百人を超える。  その特例子会社「富士ソフト企画株式会社」(以下、「富士ソフト企画」)が誕生したのは2000(平成12)年。社員12人、うち身体障がい者8人からスタートし、20年を経たいまでは、全社員260人の86%を占める226人が障がいのある社員だ。グループ8社全体の障がい者雇用率は2・51%(2021〈令和3〉年2月1日現在)。内訳を見ると身体障がい44人、知的障がい28人に比べ、精神障がいのある社員が154人と、障がいのある社員総数の約7割を占めているのも特徴だ。  精神障がいのある社員を初めて採用したのは、2004年。きっかけについて、企画開発部長兼CSR統括責任者などを務める遠田(とおだ)千穂(ちほ)さんが説明する。  「当時すでに法定雇用率は達成していましたが、神奈川県精神保健福祉センターから『国立高等専門学校の教員で、統合失調症を患った人を採用してみないか』と提案されました。さらに翌年にはハローワーク経由で、うつ病と診断されていた元証券マンの方を営業職で採用したのですが、2人とも非常に活躍されたことから、その後も積極的に精神障がいのある人を採用してきました」  富士ソフト企画は、鎌倉市の大船本社をはじめ、横浜、秋葉原、長崎に営業所を持ち、グループ会社だけでなく一般企業からの業務も請け負う。1人1台のパソコンを持ち、DTP・デザイン、ホームページ制作・管理、各種印刷、データ入力、発送、サーバー管理のほか、保険代理店業務、障害者委託訓練事業、就労移行支援事業、英文翻訳など幅広く手がけている。社員はアビリンピックにも意欲的に挑戦し、2019年度の神奈川県地方大会ではDTP、ワード・プロセッサ、ホームページ、表計算、オフィスアシスタントの種目で6人が入賞した。  2016年10月からは、復興支援も含め福島県西会津町で菌床椎茸栽培を始め、現地での障がい者雇用も進めている。大船本社の社員によるIT技術を活用した生産管理で安定した高い生産性を上げ、全国サンマッシュ生産協議会主催の品評会では2015年から6年連続で「金賞」を受賞している。 障がいのある社員が助け合う  富士ソフト企画は、経営理念に「自立と貢献」を掲げる。現場では「自分たちのことは自分たちで考えて決める」というスタイルを貫き、業務マニュアルなども社員自らの手でつくるようにしてきた。遠田さんは、「職場ではつい、障がいのある人に『なにかしてあげなくては』と気負ってしまうかもしれませんが、『この仕事を一緒にやってもらおう』、『手伝ってもらおう』という姿勢で臨めば、肩の力も抜けます」と助言する。じつは遠田さん自身も、2008年にカウンセラーとして入社した当初、職場内で「なにかできることはないですか」とよびかけるなど、焦っていた。ところが、ある社員から「自分たちのほうが仕事に慣れているので、まずは黙って見ていてください」といわれ、気づかされたという。  同じ部署内にさまざまな障がいのある社員が混在していることも大きな特徴だ。  「職場では、互いの得意不得意を補い合い、助け合って仕事をしていくことをモットーにしています。管理職にも障がいのある方が就いています。当事者だからこそ理解できる悩みや苦しみもありますし、経験者だからこそ説得力のある乗り越え方・対処法を示すこともできます。こうした経験や強みを十二分に発揮できるような職場づくりも、企業の重要な役割だと思います」  また、避難訓練にも力を入れており、実際にこんな効果もあった。  「東日本大震災のときは、障がいの異なる社員同士がペアを組み、近くの小学校へ避難することができました。最初はおびえていた社員たちも、避難所に来た近所の方々への支援をするうちに落ち着いてきました。支援される立場から支援する立場になったことも、社員の自信につながったのだと思います」  社内では助け合うことによる相乗効果もあらわれている。身体障がいのある人が同僚をサポートするうちに運動能力が少しずつ上がり、知的障がいのある人は手伝いをしながら業務能力が、発達障がいのある人はコミュニケーション能力がそれぞれ上がり、精神障がいのある人は「夜よく眠れるようになった」、「服用する薬が減った」というケースも聞かれる。 障がいのある同僚を支えたい  富士ソフト企画に20年勤めるベテラン社員に話を聞いた。2001年入社の臼木(うすき)亮太(りょうた)さん(42歳)は、幼少期に、指定難病の網膜色素変性症と診断された。医師の助言で身体障害者手帳を取得し、神奈川障害者職業能力開発校を経て、富士ソフト企画に入社したそうだ。趣味のパソコンの腕を活かし、最初はシステム管理やパソコンサポート業務を担当。さらに総務系の管理業務も経験し、2019年から業務統括グループ横浜オフィス課長代理を務めている。視力については、いまのところ大きな支障はない。「たまにどこかにぶつかっても、気にしないでねといってあるぐらいです」と笑って話す。  早いうちからチームリーダーなどを任されてきたが、部下が増えるにしたがって、一人ひとりへの接し方を模索してきたと明かす。  「例えば1人に注意したとき、近くにいたほかの部下も一緒に萎縮してしまうことがありました。さまざまな特性のある同僚がいるので、より慎重な対応が求められるようになっていると思います」  一方で、顧客側から求められるレベルは高くなっているという。「以前は、障がい者雇用の場だからと守られていた部分もあった気がします。いまは純粋に業務内容を判断してもらっているので、私たちも力が入ります」と気を引き締める。  今後の目標についてたずねたところ、直属の上司にあたる課長さんを引き合いに出した。入社時は精神疾患のため障害者手帳を持っていたものの、その後に手帳を返上し、「就労が障がいを軽減させた」ことを、課長さんは自ら証明したのだという。  「上司のように、ここで働くことで障がいや病気を軽減させたり、能力を開花させたりする同僚がもっと増えてほしいですね。私自身は目を改善することはできませんが、同僚を少しでも支える役割を果たしていけたらと思っています」 国からの障害者委託訓練事業  富士ソフト企画は2005年から、国からの「障害者委託訓練」として精神障がいのある人のための就労支援プログラムを神奈川県や東京都内で展開している。期間は原則3カ月(平日)で、各種ビジネストレーニングからパソコン技能、情報リテラシー、ストレス軽減などセルフヘルピングまでを実践的に学んでもらう。講師役の社員が精神障がいの当事者であることも特徴だ。  このプログラムの第1期生だった高橋(たかはし)綾子(あやこ)さん(42歳)は、そのまま富士ソフト企画に入社した。高橋さんは、短大在学中に統合失調症を患い、やむなく退学。しばらくは薬の副作用で起きられないほど辛い日々もあったという。「それでも母がたまに外に連れ出してくれて、少しずつ回復していったと思います」と語る。デイケアに通った後、作業所でパンづくりをしていたが、母親が市役所で支援プログラムのことを知り、すすめてくれた。  「プログラムを修了したとはいえ、入社直後はわからないことだらけでした」とふり返る高橋さんは、10年以上にわたり採用業務を担当し、いまは企画開発部の採用チームサブリーダーを務める。実習生を受け入れたときは、視覚障がい者のフォローをしたり、不安にならないようランチを一緒に食べたりと「昔は気が回らなかったことも、いまは対応できるようになりました。まだまだですが」と語る。  月1回通院して薬を服用しているが、働き続けてこられたのは「忍耐力でしょうか」と笑って答える。  「私は被害妄想がありますが、社内でなにかいわれていると感じても、それに慣れるというか、引きずらないようにします。母に『気にしない、気にしない』と明るく励ましてもらったのもよかったと思います」  母親は2年前に他界したが、高橋さん自身は立派に自立しているようだ。早起きが苦手と明かすが「朝しんどいと思っても、なんとか始業時間の9時までに間に合わせる」という。「しっかり朝からフルタイムで働くことで達成感を得られ、体調も崩さないので、9時出勤を守っています」。休日も「だらだら寝続けないように」と、必ず予定を入れているそうだ。 双極性障がいからの再出発  高橋さんが「いろいろ相談に乗ってもらって頼りになる同僚」と紹介してくれたのが、2019年入社で、同じ採用チームの畑野(はたの)好真(このみ)さん(49歳)だ。もともと幼稚園教諭だった畑野さんは、15年前にうつ病と診断され、5年前に別の病院で「うつ病ではなく、双極性障がい」と診断された。3カ月ほど自宅療養していたとき、母親が就労移行支援事業所を見つけてくれて、そこに1年半ほど通った後、富士ソフト企画に採用された。  「就活中に複数の会社で面接を受けましたが、富士ソフト企画は、私の病気について症状や合理的配慮についてていねいに聞いてくれたので、安心しました」  入社後は業務部で封入封かん作業や経費計算などをしていた。しかし数字が苦手な畑野さんの様子を上司が感じ取ってくれ、2カ月後に採用チームへ異動。いまは採用の応募書類の整理や面接官としての立ち合い、新しい業務ができたときのマニュアル作成も担当している。  「面接担当は、人の人生を左右するのでプレッシャーもありますが、『この人いいな』と思った方が採用されるとうれしくなります。幼稚園教諭のころから人とかかわることが好きだったので、いまの職場は楽しいですね」  現在も体調の波はあるが、「落ち込み気味ぐらいなら思い切って出社し、本当に落ちたなと自覚したときは迷わず休みの連絡をします。一日出て、一日休んで、翌日は半日といった出勤日程を組んでもらうこともあります。柔軟に対応してもらえるので助かります」  療養中に始めた寺社の御朱印集めを、いまも続けている。体調と向き合いながら職場にも慣れ、嘱託社員になった畑野さんは、正社員を目ざしているそうだ。ちなみに富士ソフト企画の人事制度では、入社から3カ月が契約社員、その後2年間の嘱託社員を経て、一定基準を満たすと正社員になる道筋となっている。 ヘルスキーパーの活躍  親会社である富士ソフトの本社ビル内にある横浜オフィスでは、2015年から社員向けのマッサージ事業も行っている。ヘルスキーパー(企業内理療師)によるマッサージ、鍼(はり)、フットマッサージを1回40分、各2千円で受けることができる。チラシは外国人社員用に英語版も用意されている。  ここでヘルスキーパーを務める町田(まちだ)宣和(のぶかず)さん(44歳)は、2020年12月の入社だ。横浜訓盲学院理療科を卒業し、マッサージ・鍼灸師として長年働いてきた。しかし訪問型だった前の職場ではコロナ禍で仕事ができない状況となり、「新しい仕事を探してみよう」とハローワークに。そこで富士ソフト企画が、前任者の定年退職にともなう求人を出していたのを見つけた。町田さんは、面接のときの対応が印象に残っているという。  「会場内で移動するときに、すっと手を差し出して肘(ひじ)につかまるよううながしてくれ、『ここに椅子があります。背もたれもありますよ』などと細やかにいってくれたのが、とても自然で、ここなら安心して働けると感じました」  日ごろは、パソコン業務による肩こりなどを訴えてくる社員が多い。町田さんは「ここで他愛のない会話で気分転換したい人もいますし、静かにマッサージを受けたい人もいます。一人ひとりの様子を感じ取りながら、少しでも癒(いや)しの時間になるように心がけています。最後に『気持ちよかった』といってもらえるのがなによりです」と語ってくれた。  町田さんは毎月、親会社を含めた社内のイントラネットにコラムを載せている。イラストはDTPを担当する障がいのある社員が描いているそうだ。 メンタル面の支援  社内では障がいのある社員を含む6人の企業在籍型ジョブコーチ(職場適応援助者)が活躍している。今後はさらに、企業在籍型ジョブコーチを増やす方針である。定期的に行っているジョブサポート会議では、個別のサポート事案などをじっくり話し合い、検討している。さらに月1回オンラインでのカウンセリング会議には管理職30人ほどが集まり、社長も参加して情報共有をしている。同じメンバーで業務内容を確認する幹部会議も月2回行われ、互いに相談しやすい機会となっている。  職場全体での目下の課題について聞いたところ、「アンガーマネジメント(※)を含むメンタル面での支援」だという。遠田さんは「精神障がいのある方の場合は、薬の副作用による体調の波もありますが、日ごろから、いかに感情のコントロール法を身につけてもらうかが大事です」と話す。精神的に不安定になると、周りの人のことが気になってしまう傾向があるという。社員には「まず自分の体調を安定させること」、さらに「本能を抑え、理性をきたえる」ことをうながしている。  「人はだれしも心身のバランスが崩れると、本能が先に出て、例えばアルコールに依存したり食べ過ぎたり、朝起き上がれなかったりすることもあります。そこを『飲み過ぎたら明日の仕事に響く』とか『起きて電車に乗らないと働けない』といった理性的な行動に結びつけるよう努力してもらっています」  社員たちは朝礼や昼礼の際などに1分間スピーチで、その日の自分の体調や、自己コントロールのための工夫や情報も共有するようにしている。週末の過ごし方を日報に書いてくれる社員もいる。  「私生活が乱れると、どうしても仕事に影響が出ます。休日など勤務時間外の過ごし方によって勤務態度にも変化が見られるため、趣味や運動習慣などについて教えてもらい、プライベートも充実させるように働きかけています。また、薬の副作用と闘いながら通勤をしている社員もいるため、通院休暇を付与するなどの配慮もしています」  社員には、植物や動物を可愛がることもすすめている。職場でも、遠田さんが飼っている猫についての情報を紹介したり、アニマルセラピー協会から犬を派遣してもらったりして、ちょっとした癒しの時間をつくっているそうだ。 親会社の休職社員の「リワーク」事業も  富士ソフト企画は2013年から、親会社の社員を対象にした「リワーク」事業も始めている。これは、うつ病などで1年間休職した社員が復帰する前に、富士ソフト企画の職場で2週間ほど働いてもらうという内容だ。  「当時、親会社にはうつ病と診断された社員が100人近くいました。同じような疾患を抱えながら富士ソフト企画で働く社員の様子を見た人事部と産業医から相談されたのがきっかけです」と遠田さんが説明する。  リワーク中の社員は、自分のスキルを富士ソフト企画の社員や就労支援プログラムを受けている訓練生に教える。そうすることで以前の仕事の感覚やリズムを思い出し、富士ソフト企画の社員や訓練生たちは営業や開発の業務について学ぶことができるという。さらに、自分の人生についてパワーポイントなどを使い発表してもらう時間もある。富士ソフト企画の社員からいろいろな質問を受けながら自分を語ることで、カタルシス効果=心の浄化作用もあるという。遠田さんは「障がいのある社員たちが、とてもよく話を聞いてくれるのです。彼らは天性のカウンセラーだと思います」と明かす。  これまでに親会社の93人がリワークを利用し、62人が無事に復職を果たした。遠田さんは「リワーク事業によって、親会社と特例子会社の社員たちがお互いの現場のことを知り、相互理解を深める絶好の機会にもなりました。社内のダイバーシティが促進されていくきっかけにもなります」と手ごたえを語る。 海外からも見学者  コロナ禍の対応についても教えてもらった。富士ソフト企画では、2020年4月の1回目の緊急事態宣言で5割を在宅勤務にした。なかには体調を崩したり、パソコン環境が整わなかったり、家庭の事情で在宅勤務が困難になる人も出てきたりしたという。そこで今年1月の2回目の宣言時は、在宅勤務は、可能な人や基礎疾患のある人など、3割に減らし、感染予防対策を徹底したうえで7割が出勤となった。  「せっかく引きこもりから脱することができた人が、再び引きこもる恐れがあるので、慎重な対応が必要です」と遠田さん。いまは時差出勤も含め定期的に交代で週2回ほど出勤してもらうほか、通常勤務に戻ったときに通勤できなくならないよう、暴飲暴食や運動不足などについても注意をうながしている。  近年は、社員が外部の講演会などにも参加して経験を語り、障がい者雇用の理解を広げるために一役買っている。また、精神障がいのある人が多く働く職場ということで、JICA(国際協力機構)や外務省の紹介で中東諸国など海外からの見学者も増えているそうだ。戦争による身体の後遺症やPTSD(心的外傷後ストレス障がい)などに苦しむ人たちが働きやすい職場のためのアドバイスを求められるという。遠田さんが話す。  「精神障がいのある人は日本社会でも増えています。私たち企業側は、働き方改革も含め、障がいのある人もない人も長く安心して働き続けられる職場づくりを、さらに充実させていかなければと強く感じています。すべてお膳立てするのではなく、『自分たちの職場は自分たちが創る』という気概が職場定着にもつながると考えます。そのためにも障がい当事者の管理職を育成し、自分で考え、判断して動ける企業の風土づくりも大切だと考えています」 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、富士ソフト企画株式会社様の希望により「障がい」としています ※アンガーマネジメント:怒りの感情を適切にコントロールするための心理トレーニング 写真のキャプション 企画開発部長などを兼務する遠田千穂さん 横浜オフィスは、富士ソフト株式会社の本社ビル内に設置されている 企画開発部採用チームの高橋綾子さん パソコンでの業務も多いが、支援機器を用いずに対応できている 業務統括グループ横浜オフィス課長代理として同僚を支える臼木亮太さん 社外向けの障がい者雇用セミナーなどで講演する機会も多い 企画開発部採用チームの畑野好真さん サブリーダーとして、採用面接を行っている マッサージルームでの施術の様子。社員からの評判も高い ヘルスキーパーの町田宣和さん 多方面からの見学や講演、セミナーを受託している(提供:富士ソフト企画株式会社) 町田さんが毎月書いているコラム。DTPを担当する社員がイラストを描いている(提供:富士ソフト企画株式会社) 【P10-11】 クローズアップ 職場定着に役立つ「ピアサポート」とは 第2回 〜互いの障がいを理解し、支えあうことの重要性〜  当事者ならではの共感をベースとした「ピアサポート」について、第2回目は、実際にピアサポート的な活動を進めている職場の事例をご紹介します。  当事者による活動は、効果的な支援方法の一つとして、昨今、注目が集まっています。みなさんの職場でも参考にしてみてください。 【取材先プロフィール】 株式会社ニッセイ・ニュークリエーション (大阪府大阪市) ◆事業概要  日本生命保険相互会社の100%出資の特例子会社として、1993(平成5)年に創業。おもに、親会社である日本生命の生命保険関係事務の代行業務と、日本生命および関連会社などの印刷物の製作を行っている。  多様な障がい特性に対応した配慮・対策を充実させている点が評価され、「令和2年度障害者雇用職場改善好事例」で最優秀賞(厚生労働大臣賞)を受賞。 『お互いの障がいを理解し支えあう』 3つのポイント 1.組織横断的に活動する委員会制度があり、自分と同じ障がいのある人とつながれる 2.8人のジョブコーチと、63人の障害者職業生活相談員が在籍し、困ったときに相談しやすい環境がある 3.入社後3カ月間は、アドバイザーが1対1でサポート。安心して、会社生活をスタートできる 職場でひろがるピアサポート的な取組み  「ピアサポート」とは、一般に「同じような立場の人によるサポート」といった意味で用いられる言葉です。今回は、ピアサポート的な活動を職場で取り入れている事例として「株式会社ニッセイ・ニュークリエーション」(大阪府)の取組みを紹介します。  同社は、保険会社の日本生命が、障がいのある人を積極的に雇用するために1993(平成5)年11月に設立し、1994年3月に特例子会社に認定されました。社員数386人のうち、障がいのある社員は333人で、身体障がい、知的障がい、精神障がいなどの障がいのある人が協力しながら業務を行い活躍しています(2021〈令和3〉年4月1日現在)。その背景にあるのは、創業以来受け継がれてきた『お互いの障がいを理解し支えあう』ことを大切にする理念であり、障がいがあってもハンディキャップを感じることなく力を発揮できる環境があります。  ここでは、ピアサポートという言葉にも通じる「障がい者同士の支えあい」という観点から、同社で行われている3つの取組みを紹介します。 横につながる委員会活動  同社には組織横断的に編成された「委員会」と呼ばれる活動があり、会社を運営する機能の一部をになっています。すべての社員が委員会に所属しており、毎週水曜日の17時から30分間は、通常の業務を止めて委員会ごとの活動を行います。  委員会活動には、会社のホームページをつくる「HP委員会」、健康促進についての啓発や講座を開催する「健康促進委員会」、災害発生時の避難などについて検討する「危機管理委員会」、互いの障がいを理解するための体験研修などを行う「おもいやり委員会」などがあり、障がいのある社員がリーダーとサブリーダーを担当します。これらはすべて、社員が必要性を感じて立ち上げたもの。例えば、創業時から続いている「手話委員会」は、会議などの場面でコミュニケーションが取りにくい聴覚障がい者の困りごとを解決するために、すべての社員を対象に手話の勉強会を開催しています。  「委員会活動を通じて普段は発揮できない力が評価され、社員のモチベーションアップにつながることもあります。また、部署を超えて、自分と同じ障がいのある人とつながり、悩みなどを共有する機会が得られることも、私たち障がい者にとって心強い制度だと感じています。共感だけではなく、叱咤激励(しったげきれい)の言葉が待っていることもありますが、厳しい意見も同じ障がいの人にいわれると、受け入れやすい面があると思います」と、自身も身体障がいのある業務第一部部次長の中島(なかじま)信弘(のぶひろ)さんは語ります。 いつも身近にある相談の場  同社では、障がいのある社員自らが、「企業在籍型ジョブコーチ」や「障害者職業生活相談員」の資格を取得し、互いを支えあうサポート体制を築いています。現在、相談に対応しているのは、8人の企業在籍型ジョブコーチと、63人の障害者職業生活相談員です。主任以上の役職者の全員が、これらの資格を取得しています。  「直属の上司でなくても、自分が話しやすい人のところに相談に行くことが可能です。私自身も、毎日のようにいろいろな相談を受けています。何かあったときに、すぐに相談できる環境があるのは、大きな安心感につながっていると感じています」と、人材開発部課長代理で、自身も身体障がいのある山村(やまむら)武士(たけし)さんはいいます。 先輩社員とスタートする会社生活  毎年約30人の新入社員が入社している同社では、新入社員へのサポートとして、入社後3カ月間、入社2〜3年目の先輩社員が、専任のアドバイザーとして仕事や会社生活面のサポートを行う「アドバイザー制度」があります。  「日常の業務にあたりながらアドバイザーをになうのは、先輩社員にとっても負担を感じるはずなのですが、アドバイザーになることを目標にしている若手社員が多くいます。入社したころに自分のサポートをしてくれた先輩のようになりたいと考える社員が多いのだと思います」と、中島さんはいいます。  アドバイザーである先輩社員に対しては、困っていることを話し合う場を定期的に設けるなどしてフォローし、会社全体で新入社員がスムーズに職場や仕事になじめるように取り組んでいます。  このように、互いの困りごとを支えていこうという組織風土のなか、同社の年度始めの在籍数に対する年度末在籍数で算出した職場定着率は、97%という高い数値を示しています(2019年度)。最後に、山村さんはこう語ってくれました。  「障がいがあっても自分の能力を発揮できる環境があることが、社員の職場定着につながっていると思います。近年は、発達障がいのある人の入社が増えており、身体障がいとは違う形でのサポートが必要になっていると感じています。見た目にはわかりにくい障がいなので、互いの障がいを理解しあうことの重要性がますます高まってくるでしょう。当社の伝統である『お互いの障がいを理解し支えあう』文化を、若い社員にも引き継ぎながら、今後もすべての人が働きやすい新しい形での職場づくりに、力を入れて取り組んでいきたいと考えております」 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社ニッセイ・ニュークリエーション様の希望により「障がい」としています 写真のキャプション 互いの障がいを理解しあうための体験研修。お互いの苦労を実感する機会となっている 人材開発部課長代理の山村武士さん 業務第一部部次長の中島信弘さん いつも身近に相談のできる環境がある 先輩社員が、新入社員をサポートするアドバイザー制度 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 ◆令和3年度「地方アビリンピック」開催地一覧 ◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催されます。詳細は、「地方アビリンピック」ホームページをご覧ください。 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更される場合があります。 都道府県 開催日 会場 北海道 10月2日(土)(予定) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬〜11月上旬(予定) 青森職業能力開発促進センター(予定)/ホテル青森(予定) 岩手 6月27日(日) 7月11日(日) 岩手職業能力開発促進センター/岩手県立産業技術短期大学校 宮城 7月10日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月9日(金) 秋田市文化会館 山形 7月7日(水) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 9月頃(予定) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月10日(土) 7月11日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月3日(土) 栃木職業能力開発促進センター/SHINBIデザインスクール 群馬 7月3日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月10日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月頃(予定) 未定 東京 1月下旬〜2月中旬(予定) 東京障害者職業能力開発校/職業能力開発総合大学校 神奈川 10月28日(木) 10月30日(土)(予定) 神奈川障害者職業能力開発校(予定) 新潟 9月11日(土) 新潟市総合福祉会館/ホテルグローバルビュー新潟 富山 7月17日(土) 富山市職業訓練センター/富山県技術専門学院 石川 10月24日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 7月11日(日) 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 10月3日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月17日(土) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月3日(土) 10月頃(予定) ソフトピアジャパンセンター/県内施設(予定) 静岡 6月13日(日) 6月27日(日) 7月10日(土) 静岡市清水文化会館マリナート/静岡市東部勤労者福祉センター 清水テルサ/学校法人静岡理工科大学 静岡デザイン専門学校 愛知 6月6日(日) 6月19日(土) 6月20日(日) 7月3日(土) 7月10日(土) 愛知県立名古屋聾学校/大成今池研修センター/学校法人珪山学園 専門学校日本聴能言語福祉学院/中部職業能力開発促進センター 三重 6月26日(土) 三重職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 会場 滋賀 11月27日(土) 近畿職業能力開発大学校附属 滋賀職業能力開発短期大学校 京都 2月頃(予定) 京都府立京都高等技術専門校/京都府立京都障害者高等技術専門校 大阪 6月19日(土) 7月3日(土) 関西職業能力開発促進センター/社会福祉法人日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター/社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会 大阪市職業リハビリテーションセンター 兵庫 6月19日(土) 7月3日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 6月12日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 6月6日(日) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 7月1日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月10日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 6月26日(土) 7月3日(土) 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター/岡山職業能力開発促進センター 広島 12月〜1月頃(予定) 広島障害者職業能力開発校(未定) 山口 10月16日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月18日(土) 徳島職業能力開発促進センター/徳島ビルメンテナンス会館 香川 2月上旬(予定) 未定 愛媛 7月10日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 7月3日(土) 7月10日(土) 学校法人龍馬学園 国際デザイン・ビューティカレッジ/高知職業能力開発促進センター 福岡 7月3日(土) 7月10日(土) 福岡障害者職業能力開発校/福岡職業能力開発促進センター/福岡県立福岡高等技術専門校 佐賀 1月22日(土) 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月10日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月26日(土) 6月27日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月23日(土) 大分東部公民館 宮崎 7月10日(土) 宮崎職業能力開発促進センター/宮崎県ビルメンテナンス協会 鹿児島 7月10日(土) 鹿児島職業能力開発促進センター 沖縄 7月24日(土) 沖縄職業能力開発大学校 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ※2021年4月25日現在 開催地によっては、開催日や種目などで会場が異なります 参加選手数の増減などにより、変更される場合があります 2021年度(令和3年度) 職業リハビリテーションに関する研修のご案内  当機構では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当する方を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や障害者の雇用支援に必要な技術の修得と資質の向上を図るための研修を実施しています。受講料は無料です。  各研修の詳細・お申込み先などは、当機構ホームページ(https://www.jeed.go.jp)のサイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 研修 日程 場所 就業支援基礎研修 【対象】就業支援を担当する方 【内容】就業支援のプロセス、障害特性と職業的課題、障害者雇用施策、ケーススタディなど 各地域障害者職業センターのホームページなどで別途ご案内いたします。 ◯◯障害者職業センター 検索 ※◯◯には都道府県名を入力 各地域障害者職業センターなど 就業支援実践研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験2年以上の方 【内容】障害別のアセスメント、支援ツールの活用方法、ケーススタディなど 10〜12月に全国14エリアで開催します。 就業支援実践研修のホームページなどで別途ご案内いたします。 全国14エリアの地域障害者職業センターなど 就業支援スキル向上研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験3 年以上の方 【内容】障害別の支援技法、職リハに関する最新情報、ケーススタディなど 令和4年1月18日(火)〜1月20日(木) 千葉県千葉市 就業支援課題別セミナー 【対象】障害者の就労や雇用に関する支援を担当しており、障害者に対する就業支援の実務経験を有する方 【内容】令和3年度は「視覚障害者への就労支援の最前線」をテーマとします 令和3年11月4日(木)〜11月5日(金) オンラインによる開催を予定 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など (集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度) ※対象地域は以下のとおりです 東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山 西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 4月期 終了しました 東日本対象:令和3年4月20日(火)〜4月23日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和3年4月20日(火)〜4月23日(金) 大阪府大阪市 5月期 全国対象:令和3年5月18日(火)〜5月21日(金) 千葉県千葉市 6月期 東日本対象:令和3年6月8日(火)〜6月11日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和3年6月8日(火)〜6月11日(金) 大阪府摂津市 9月期 東日本対象:令和3年9月14日(火)〜9月17日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和3年9月14日(火)〜9月17日(金) 大阪府大阪市または摂津市 10月期 全国対象:令和3年10月26日(火)〜10月29日(金) 千葉県千葉市 12月期 東日本対象:令和3年12月14日(火)〜12月17日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和3年12月14日(火)〜12月17日(金) 大阪府大阪市または摂津市 2月期 全国対象:令和4年2月15日(火)〜2月18日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして一定の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど <第1回>令和3年5月25日(火)〜5月28日(金) 千葉県千葉市 <第2回>令和3年8月3日(火)〜8月6日(金) 大阪府大阪市 <第3回>令和3年10月12日(火)〜10月15日(金) 千葉県千葉市 <第4回>令和4年2月1日(火)〜2月4日(金) 大阪府内 <お問合せ先> 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 【P15-18】 グラビア 「働きたい」職場へ 〜安心して長く働けるように〜 株式会社JTBデータサービス (東京都) 星 宏明さん 取材先データ 株式会社JTBデータサービス 〒135-0042 東京都江東区木場2-17-16 ビサイド木場4F TEL 03-5646-6750 FAX 03-5646-6758 写真・文:官野 貴  JTBグループの特例子会社「株式会社JTBデータサービス」では、1992(平成4)年の設立時から、聴覚障害のある社員が顧客アンケートのデータ入力などの業務で活躍してきた。現在では、聴覚障害をはじめ、精神、知的、上下肢、内部などさまざまな障害のある社員が活躍している。  江東区にある木場営業部で働く星(ほし)宏明(ひろあき)さん(46歳)もその一人だ。聴覚障害のある星さんは、今年で入社24年目のベテラン社員。入社に向けての面接で、当時の社長から手話で挨拶をされたことに驚きを感じ「ここで働いてみたい」と思ったという。現在はオペレーション2課の課長を務め、同じく聴覚障害のある部下を束ねている。健聴者とのコミュニケーションでは、会話の見える化アプリである「UDトーク」や、筆談器として「ブギーボード」などを活用している。星さんは「若手に『ここで働きたい』と思われる職場、障害のある社員が安心して長く働ける職場をつくっていきたい」と語る。  JTBデータサービスの業務内容は、データ入力や名刺印刷などパソコンを使用した業務や、ギフト券ラッピング、発送業務など多岐に渡る。ラッピング業務は月平均4万個もの実績があり、発送業務では封入ミスを防ぐため、0・01g単位の計りを使用し、内容物の重さを計ることでミスを防いでいるという。  親会社であるJTBの本社や、その支店などに出向して業務を行う聴覚障害のある社員も多いため、その際は、本社に置かれた「定着支援課」がサポートを行っている。近ごろでは情報保障の一環として、JTB本社からグループ各社向けの動画に字幕入力を行っており、社員からも内容が理解しやすいと好評だという。また、「口を開けて、ゆっくり話す」、「同時にしゃべらない」などの「ユニバーサル会議」を提唱するなど、職場定着への取組みも行っている。 写真のキャプション 会議では社員による手話通訳やUDトークを活用し、コミュニケーションを円滑にしている UDトークは、音声認識により健聴者の発話を文字化し、スマートフォンなどに表示できる 打合せの場面では、筆談にブギーボードが活躍する ホワイトボードを使い、文字情報で課員との情報共有をする オペレーション2課課長の星宏明さん 定着支援課の社員が、動画編集ソフトを使用し字幕を制作する 社内の勉強会では、社員が手話通訳し情報保障を行う 始業時間などを知らせるため、フラッシュランプ(左上)が設置されている 朝礼での手話講座。この日のお題は「無料接種」と「ワクチン効果」 ラッピング手順を図解したマニュアル ラッピングは、正確さとスピード、そして美しさが求められる ギフト券の封入後に、内容物の重さを計り記録する JTBグループ各社から、アンケートやDMなどの発送業務を請け負う 内容物の過不足があれば、重さの表示で確認できる 【P19】 エッセイ【第3回】 障害福祉サービスの現場から 社会保険労務士・行政書士 高橋 悠 高橋 悠(たかはし ゆたか)  行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立上げ・運営支援にたずさわった後、2016(平成28)年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上が介護・障害福祉サービス事業所である。また、「合同会社サニー・プレイス」を設立し、小規模保育事業所B型および企業主導型保育所を経営している。  障害者の就労の場を提供している「就労継続支援事業所」、「就労移行支援事業所」においては、自らの事業所を選択してもらえるよう、各事業所において賃金(工賃)向上のための多種多様な施策を実施しています。  今回も、こうした事業所の取組みの一部をいくつかご紹介していきます。 就農支援や農作業による生産活動の機会の創出  近年、福祉業界では「農福連携」という言葉を耳にします。  「農福連携」とは障害者が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していくことを目的とした取組みのことであり、農林水産省が推進している事業をさします。  日本では、近年、高齢化と人口の減少によって農林水産業にたずさわる人が減少しており、耕作放棄地や農業のにない手不足といった深刻な問題を抱えています。一方、福祉分野でも、障害のある方々の働く機会が求められています。こうした双方の抱える問題を解決するため、農福連携は大きな期待を寄せられています。  就労継続支援事業所や就労移行支援事業所においてもこの動きは活発になってきており、特に地方で積極的に導入している事業所が多く存在しています。  農福連携を行うことで、「事業所」、「農家」、「利用者」、それぞれに次のような大きなメリットが存在します。 ◯事業所にとってのメリット ・農産物の加工・販売による工賃収入の確保ができる ・利用者の一般就労に向けた職業訓練を行うことができる ◯農家にとってのメリット ・遊休地となっている田畑の有効活用につながる ・農作業にあたっての労働力や従事者の確保につながる ◯利用者にとってのメリット ・農業活動に従事することで身体面や精神面にプラスとなる ・早寝早起きを習慣づけることで、生活習慣の改善につながる  農福連携といってもその事業展開の形態はさまざまで、例えば耕作放棄地や使われていない農地を有効活用する形で展開したり、過疎化が進む地方の地域で牧場やレストランを運営し、そのホールスタッフやビール製造、家畜の世話などを障害者に行ってもらったりするという形などが存在しています。  また、特に都市部においては農地確保がむずかしいため、LED照明を活用した水耕栽培の野菜を障害者が事業所内で育て、その野菜を併設のカフェレストランで素材として提供する、といった先進的な取組みが行われている事業所もあります。  農福連携は、新しい障害者の就労の形態であると同時に、特に地方において障害者が身近な存在であることを知ってもらうという意味で大きな意義があると考えます。  しかし、まだまだ農福連携の事例の周知や事業モデルの構築が必要であり、また障害福祉サービス事業所や障害者に農業を教えることのできる指導者などの人材の育成も必要であるなど、課題は多く存在しているのも現状です。  農福連携がより民間に周知されていき、また活用を行う就労継続支援事業所や就労移行支援事業所が増えていくことで、事業所の工賃収入確保のための新たな可能性となっていくことを個人的に期待しています。 【P20-25】 編集委員が行く 障がいが障害でなくなる職務創出を目ざして 大東コーポレートサービス株式会社、株式会社アーネスト(東京都) 筑波大学 准教授 八重田 淳 取材先データ 大東コーポレートサービス株式会社 〒140-0002 東京都品川区東品川2-2-8 TEL 03-6718-9300 株式会社アーネスト 〒100-0004 東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル2F TEL 03-5946-8995 編集委員から  今回、初めて「取材」というものをさせていただき、「これは思ったより楽しいな」と思った。コロナ禍で自宅にこもりがちな私にとっては、有能な企業人の方々とお会いできるだけでも刺激的であり、たいへんありがたいことである。障がいのある方の力を最大限に引き出すための工夫と、特例子会社と人材育成会社によるビジネスパートナーシップの仕組みについて学ばせていただいた。 写真:官野 貴 Keyword:ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、人材育成、ビジネスパートナーシップ、ピア型支援 POINT 1 ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を導入 2 システム開発技術の即戦力を育成 3 即戦力になる人材育成企業をビジネスパートナーに 高いビルを見上げて  2月初旬の寒い朝、私は東京モノレール天王洲(てんのうず)アイル駅近くにそびえ立つ高いビルを見上げていた。これから初めてお会いする二人の社長とうまく話せるだろうかと思いながら、そのビルに入りエレベーターのボタンを押した。  私がお会いしたお二人の社長とは、「大東建託株式会社」(以下、「大東建託」)の特例子会社である「大東コーポレートサービス株式会社」(以下、「大東コーポレートサービス」)代表取締役社長の福田(ふくだ)和宣(かずのり)さんと、そのビジネスパートナーであり、IT/WEB/RPA特化型の「就労移行支援事業所アーネストキャリア」(以下、「アーネストキャリア」)を運営する「株式会社アーネスト」(以下、「アーネスト」)代表取締役の水野(みずの)聰(そう)さんである。水野さんには、今回の取材のために天王洲アイルまでお越しいただいた。緊張している私に対し、お二人はとても人懐っこい笑顔で迎えてくださった。それにしても私は全員と初対面なので、最初は緊張していた。しかし、取材が終わるころには仲間意識が芽生えていた(少なくとも私のなかでは)。  今回、このお二人をご紹介いただいたのは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構である。あらためて感謝を申し上げたい。取材会場には、社長お二人のほかに、もう二人のご参加をいただいた。お一人目は、同社のシェアードサービス部RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)推進課長の西岡(にしおか)幸智(ゆきとも)さんである。西岡さんは、RPA開発部門を立ち上げた方だ。もうお一人の方は、大東コーポレートサービスの雇用推進室チーフである田中(たなか)淳子(じゅんこ)さんである。田中さんは広報ご担当で、ワーク・ライフ・バランスがとてもよい方だ。この四人の方々に対し、こちらはカメラマンと私の二人体制である。「シェアードサービス? ロボット? RPA?」というレベルの私に対し、多くのスライドをご用意いただき、ご説明をいただいた。ビル内の取材会場に来るまでの間の物理的な障壁の少なさも感じたが、取材会場のご準備を含め、情報提供に関する「合理的配慮」を感じないわけにはいかなかった。 大東コーポレートサービス  特例子会社である大東コーポレートサービスは、2005(平成17)年に社員8人でスタートした。親会社は、賃貸住宅管理戸数が24年連続1位(2020〈令和2〉年3月末時点)という、大東建託である。開設当時に雇用された障がい者は、5人(知的障がい4人、身体障がい1人)であった。彼らのおもな業務は、シュレッダー作業や、大東建託グループの名刺の作成などであったという。2005年当時の大東建託グループの障がい者雇用率は1・67%、現在のグループ全体の障がい者雇用率は2・98%(障がい者数519人)とのことで、この春から新たに設定された法定雇用率2・3%をクリアしている。社員の障がいを種別で見ると、精神障がい者235人、知的障がい者64人、身体障がい者220人となっている(2021年2月取材時)。現在、大東コーポレートサービスに勤務する社員約400人のうち、障がいのある社員は94人である。 「御社の理念とは何ですか?」  インタビューが始まり、いきなりちょっと不躾(ぶしつけ)かなとは思いながらも、社長の福田さんのお考えをストレートにお聞きしたかったので、私は会社の理念をたずねた。すると、「新しい仕事を創り出すことです」との明確な答えが返ってきた。業務創出。障がいのある社員の特性に見合った新しい仕事を創り出すという考え方は素晴らしい。「人材」というより、人は財産であるという「人財」というキーワードも、会社の理念の一つとされている。障がいの有無にかかわらず、「共に成長することで、豊かな人生を送りながら社会に貢献できる会社を目指します」という企業理念を教えていただいた。これを理念としている福田さんのお言葉を聞いただけで、私は「ああ、もう取材、十分達成かも」という気持ちになっていた。  業務創出。英語でいうとジョブデベロップメント(Job Development)だ。アメリカで障がい者雇用の支援をするジョブデベロッパーのなかには、経営学修士号(MBA)を持つ人もいる。こうしたプロフェッショナルは、「障がい者の仕事がないなら、それを開拓すればいい」という発想を持っている。「新しい仕事を創り出す」という理念は、仕事に人を合わせるのではなく人に仕事を合わせる、ということだ。まず「人ありき」。つまり「ピープルファースト」ということだ。障がい者(the disabled)ではなく、障がいのある人(people with disability)という表現だと、英語の並び方からしても「ピープル」が「障がい」よりも先にくる。障がいを見ずに、人を見る。もし障がいのある社員がうまくその仕事が「できない」のであれば、「できるようにする」。その工夫とは何だろうか。 「できるようにする工夫」  特例子会社である大東コーポレートサービスは、2016年にシェアードサービス業務を行う大東ビジネスセンター株式会社と合併した。この合併は組織的な工夫の例といえる。しかもかなり大きな決断を必要とする工夫である。福田さんは会社合併という決断についてふり返る。  「会社を合併することによって、グループ全体の生産性を高めていこうというのが当時の経営判断でした。障がいのある社員を雇用する場合、雇用というアウトカムだけに目を向けがちですが、雇用するためにはまず、業務の創出が必要です。人に合わせて仕事をつくるというのは、とても大切な考え方だと思っています。障がいのある方の雇用はできる、というのが大前提です。売り上げと利益は、もちろん企業の使命です。障がいのある社員とそうでない社員が、チームとしての成果を出す職場であり続けるためには、新たな業務を創出するという工夫をし続ける必要があります。仕事をクリエイトするというのは、とてもチャレンジングなことです。クリエイティブさを追求する業務創出というのは、障がい者雇用のプロセスのなかでも、極めて重要な視点だと思っています」  会社の合併は、すなわち障がい者雇用と一般雇用の合併という抜本的な改革といえるのではないだろうか。こうした合併の背景の一つには、次に挙げる定型業務の自動処理化(RPA)が含まれているようだ。 RPA  RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、「従来は人の手で行っていた定型業務を、ロボットに自動処理してもらう仕組み」のことである。情けないが、私はこのときまでRPAという言葉さえ知らなかった。「そんな便利なロボットがあるのですか? 高いのでしょうね?」くらいのレベルである。私のような素人は、人が手で行う定型業務をロボットがサクサクと代わりに「自動で」やってしまうと、人の仕事がなくなるのではないかと危惧してしまう。その反面、「RPAは人にしかできない仕事とは何かを教えてくれるのかもしれない」と思いを巡らせながら、さらにお話をうかがった。  RPAは、まず大東コーポレートサービスの親会社である大東建託によって導入された。RPAの導入に至るまでには、大企業として綿密で正確な業務分析や、業務のシステム化へのさまざまなテクノロジーと工夫があったものと推察するが、おそらく定型業務というのが「ミソ」なのではないかと思う。つまり、インプットからアウトプットまでの作業パターンが一度決まれば、あとはその業務の精度を高め、スピード化し、人の業務時間外でも稼働できるようなシステムをプログラミングし、「定型業務」として業務遂行のコマンドを出せばいいわけだ。といっても私は、実際のRPAの仕組みはまったくわからないので、具体的な定型業務とは何かについて続けてお話をうかがった。  RPA部門課長の西岡さんによると、定型作業には、例えば「データ収集」、「チェック」、「登録」などの業務があるという。これらの定型業務をロボットが自動的にやってくれるならば、かなりの時間が節約できる。私は自分の仕事で郵送調査や面接調査をよく行うが、代わりにロボットがデータを収集し、データ入力ミスの有無をチェックし、解析準備完了としてデータセットを自動的に「登録」してくれるなら、作業的な部分だけでも随分と楽になるのだろうと思う。それによって創出された時間をほかの業務(例えばデータ解析)に充てることができる。RPAによる定型業務処理のお話を聞くと、業務が格段に効率化され、余った時間を「人ならでは」という職務に充て、それが新たな職務創出につながるという仕組みが見えてくる。  では、RPAの導入で何が可能となったか。それは、「働き方改革」、「本社人員のスリム化」、「企画業務への集中」という3点だという。なるほど。ただ、「RPA開発には時間がかかる」、「RPA技術による生産性やシステム品質にバラツキが発生する」、「外部業者へRPA開発を依頼するにはお金がかかる」といった問題はあるという。これらの「人員的課題」、「技術的課題」、「コスト課題」といった課題を解決するための一手としてたどり着いたのが、『RPA開発専門部隊の結成』だ。専門部隊。つまり、スペシャリスト集団のチームである。そうした「スペシャリスト」は、通常、しかるべきトレーニングで徹底的に育成される必要がある。RPAのプログラマーのなかには、精神・発達障がいのある方がいらっしゃる。その人の「障がい」という特性を、逆に仕事にうまく活かすことができるならば、これは素晴らしいことだ。例えば、考えもつかない新しい発想でプログラミングできる発達障がいのある社員の存在は、企業にとって「人財」となり得るだろう。そんな能力のある人のことを、「障がい者」と呼ぶのは間違いだ。  RPAの運用では、知的障がいのある社員の業務も創出されているという。こうした人材(人財)の育成は、ある程度の社内研修は必要だと思うが、社内だけでどの程度まかなえるものだろうか。そこで、大東コーポレートサービスが、そうした「人財」をどこからどのように探しているのかについてうかがってみた。 人材育成の仕組みとビジネスパートナーシップ  大東コーポレートサービスのビジネスパートナーであるアーネストは、IT/WEB/RPA特化型の就労移行支援事業所であるアーネストキャリアを運営し、RPAの「人財」を開発している。アーネスト社長の水野さんは、大学と連携した「発達障がい学生支援プロジェクト」も立ち上げていらっしゃる。筆者の所属する筑波大学とも連携中で、無料のプログラミングスクールを開講されている。このプロジェクトの背景として水野さんが挙げたのは、全学生の就職率75%に対して、発達障がいのある学生の就職率が36%という事実である。発達障がいや精神障がいのある学生が、学校帰りに無料でプログラミングを習い、企業インターンシップを通してさらに学べる場があれば、彼らを就職前の段階から有能なプログラマーに育てることができる。そうすれば、発達障がいのある学生が、プログラマーとして就職できる可能性が大きく広がる。この人材育成の仕組みは、大東コーポレートサービスとアーネストキャリアに、相互のベネフィット(利益)をもたらす。このビジネスパートナーシップも、「できるようにする工夫」の一つである。  ただ、即戦力を持つスペシャリストになるのは、決して簡単なことではないだろう。このプログラミングスクールでは学生に、複数名の仲間(ピア)と連携し、チームワークでプログラミング課題に取り組むようにさせている。  そして、プログラミングスクールで学んだ障がいのある学生を企業での雇用につなげるうえで、大切な架け橋として活躍するのがスクール内の「コミュニティーマネージャー兼キャリアカウンセラー」である。障がいのある人のキャリアカウンセリングは、働いて幸せになることを目ざす職業リハビリテーションのなかで、極めて重要な学問的礎(いしずえ)の一つである。人と仕事をつなげる職業ガイダンスの父とも呼ばれるフランク・パーソンズは、1909年の『Choosing A Vocation』という著書で、「単に仕事を探すより、職業を選ぶ方がよい」としている。自分に合った職業を「選ぶ」方が、よりよいキャリア発達へとつながる可能性も高まる。この意味で、障がいのある人の職業選択肢の幅を広げるためにも、キャリアカウンセラーが果たす役割はきわめて重要といえる。  また、大東コーポレートサービスでも、スペシャリストになるための研修を行っている。そのプログラムは、体系的なスキルアップができるような流れとなっており、レベル1〜9までがある。例えば、レベル2は未経験者の人材育成として、「RPA教材の例題」に取り組み、基礎を学べる内容となっている。次のレベル3では、「手順を自分で考える課題」に取り組み、続いてレベル4の「RPAの運用とエラー対応」にステップアップする。このように、次々にエキスパートへの階段を上っていく。そして最終的には、RPA技術者検定(アソシエイト合格、エキスパート合格)まで達することができる仕組みとなっている。  アーネストキャリアが「ピア型プログラミングスクール」で人材を「かなりのハイレベル」まで養成し、企業インターンシップを通して卒業と同時にビジネスパートナー先の一つである大東コーポレートサービスへの就職につなげるという合理的な流れは、有効なビジネスモデルとして業績に反映されている。水野さんは、人材育成企業と特例子会社の橋渡し役としてバランス感覚の優れた田中さん、RPAのリーダーである西岡さん、たしかな理念を持つ福田さんと連携し、優秀な「人財」を提供することに情熱を傾けていらっしゃる。 職場の実際  四人のお話を聞いて、ようやく私にも全体の流れが見えてきたところで、最後に社員の方々が働いている現場を見せていただいた。まず、発達障がい・精神障がいのある社員四人がプログラミングを行っている部屋を見学した。そこは、人からあまり邪魔をされない「ソーシャルディスタンス」が確保された場所であり、穏やかな照明を使った、とても静かで優しい空間である。社員の方々は、黙々とパソコン画面に向き合って働いている。壁には、構造化された作業工程や、勤務日程などが細かく可視化されており、チームとして遂行すべき業務が確認できるようになっている。  別のフロアにある作業場はかなり広々とした空間である。大東コーポレートサービスは、大東建託グループと「分かち合う」オフィスサービスとして、高品質な事務業務を提供している(シェアードサービス)。オフィスサービスを集中化することによって、業務の効率化が可能となる。これらの業務には、口座振替依頼書の入力業務や、グループ各社の経費精算などがあり、人事、総務、経理、OA、営業支援といった幅広い領域をカバーしている。  整理整頓されたクリーンな社内は、人数が多い割に比較的静かで、落ち着いた空気を感じさせてくれる。こうした大企業でスマートに働くのは、楽ではないにしても、なんだか気持ちがよさそうである。障がいのある社員の方々も、たまたま障がいのない社員の方々も、ご自身の仕事に誇りを持って働いていらっしゃるといった空気感がじわじわと伝わってきた。 学んだこと  今回の取材で、二つのことを学んだ。一つは、精神障がいや、発達障がいのある方の力を最大限に引き出すためには、その個人が持つ「特性」を理解し、それを最大限に伸ばすために、労を惜しまず育成するという、本来あるべき「流れ」である。そしてもう一つは、特例子会社と人材育成会社によるビジネスパートナーシップによって「障がい」を言い訳にせずそれを逆手にとってチャンスにつなげるというビジネスの工夫と熱心さである。  障がい者雇用は初めから「障がい者」という枠で人を見ているようで、私は個人的にはあまり好きな言葉ではない。資質の高い能力を持った「人財」が会社やチームのなかにいて、あとで障がい者雇用枠であったことを知るとき、よく「障がい者なのにできるんだ」という偏見が露呈することがある。障がいのある人のなかにも、RPAにかかわるシステム開発が得意な方、即戦力となる方はたくさんいる。即戦力がないのであれば、その人材を育てればよい。仕事を創出する工夫をすればよい。そして、障がいを「障がい」と見るのではなく、「特性」と見て、その技能を最大限に伸ばし、活かす。これらを実現しているのが、大東コーポレートサービスと、そのビジネスパートナーであるアーネストである。  アーネスト(earnest)には、「本格的」、「真面目」、「熱心」、「ひたむき」という意味がある。なるほど、「本格的」というのはこういうことか、と思った。  コロナ禍のなか、今回の取材では、「熱心」で「ひたむき」な四人の方に直接お会いすることができ、「本格的」で「真面目」に働いている「アビリティのある労働者」、つまり「ディスアビリティではない労働者」の方々から発せられる熱意を肌で感じることができた。やはり対面はいい。 終わりに  福田社長、水野社長、西岡課長、田中チーフ、とても2時間では話し足りない内容であり、私の言葉が足りない部分が多くあると思いますが、ご容赦ください。このたびは、私の拙(つたな)い「初取材」に快くご協力いただき、誠にありがとうございました。「障がいが障害でなくなるような業務創出」を日々、実践されていることに対し、敬意を表します。  「障がい者雇用」という言葉をあえて使わなくてもいい日が、いつか来ますように。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、八重田淳編集委員の希望により「障がい」としています ★部署名、役職名は取材時のものです 写真のキャプション 株式会社アーネスト代表取締役の水野聰さん 大東コーポレートサービス株式会社代表取締役社長の福田和宣さん 大東コーポレートサービス株式会社雇用推進室チーフの田中淳子さん 大東コーポレートサービス株式会社シェアードサービス部RPA推進課長の西岡幸智さん 大東コーポレートサービス株式会社のオフィスでお話をうかがった RPA化の事例(資料提供:大東コーポレートサービス株式会社) 発達障がい学生支援プロジェクトの概要(資料提供:大東コーポレートサービス株式会社) ピア型のラーニングシステム(資料提供:大東コーポレートサービス株式会社) 壁面がホワイトボードとなっており、工程の目標や達成度が記入されている デスクは壁面に向け設置されており、作業に集中しやすい それぞれのデスクは、パーテーションにより仕切られブースとなっている 【P26-27】 省庁だより 障害者に対する就労支援の推進 〜令和3年度障害者雇用施策関係予算のポイント〜 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課/人材開発統括官 参事官室(人材開発政策担当) 【施策の概要】  障害者雇用に関する状況を見ると、直近の令和元年度においては、ハローワークの新規求職申込件数、就職件数ともに過去最高となっており、引き続き、障害者の就労意欲の高まりが見られる。令和元年の障害者の雇用者数も、平成16年以降、16年連続で過去最高を更新し、実雇用率も2・11%と8年連続で過去最高を更新し、障害者雇用は着実な進展が見られる。  一方で、障害者雇用率が令和3年3月1日に0・1%引上げられることを踏まえ、中小企業に対するより一層の支援が必要である。  あわせて、就労を希望する障害者についても、多様化が進んできており、希望や能力に応じて、活き活きと活躍できる職場環境の整備など、雇用の質に着目した取組も必要である。  中小企業の中には障害者を全く雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)も多い状況にある。中小企業における障害者雇用が進み、身近な地域で働く選択肢が確保されることは、障害者が希望や特性等に応じた働き方を実現していくための重要な要素であると言える。  また、近年、雇用者数や就労希望者数が大幅に増加している精神障害者については、一般に職場定着に課題を抱えるケースが多く見られること等から、雇入れ支援に加えて、雇用された後の職場での定着支援についても更に充実・強化することが求められている。  さらに、ICTを活用したテレワークについては、政府全体で導入の推進を行っているところであるが、障害者においても、多様な働き方の推進や通常の職場での勤務が困難な者等の雇用機会の確保の観点から、障害者の雇用を促進するためにテレワークの推進を図る必要がある。  なお、公務部門の障害者雇用については、全ての国の行政機関が法定雇用率を達成したことを踏まえ、今後は採用された障害者の職場定着支援や支援体制づくりのため、ハローワーク等に配置する職場適応支援者による定着支援を引き続き推進する必要がある。  右記の状況を踏まえ、令和3年度予算案においては、 @中小企業をはじめとした障害者の雇入れ支援等の強化 A精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援の強化 B障害者の雇用を促進するためのテレワークの推進 C公務部門における障害者の雇用促進・定着支援の推進 を主要な柱として、障害者に対する就労支援及び定着支援の充実・強化を図る。 令和3年度予算額 24、850(24、939)百万円 ※括弧書きは前年度(令和2年度)予算額 T 中小企業をはじめとした障害者の雇入れ支援等の強化 1 ハローワークにおける「チーム支援」等の実施による支援の充実・強化 [予定額5、744(5、129)百万円] (1)障害者雇用ゼロ企業等に対する「企業向けチーム支援」の実施 [予定額 982(638)百万円]  令和3年3月1日に引上げられる障害者雇用率を踏まえ、特に、障害者の雇用経験や雇用ノウハウが不足している障害者雇用ゼロ企業等を中心とする法定雇用率未達成企業に対して、企業ごとのニーズに合わせた支援計画を作成し、求人ニーズに適合した求職者の開拓等の準備段階から採用後の定着支援まで一貫した「企業向けチーム支援」を実施し、企業の障害者雇用を支援する。 (2)「障害者向けチーム支援」の実施等によるハローワークのマッチング機能の強化 [予定額1、880(1、883)百万円]  ハローワークが中心となり、地域の関係機関等と連携して、就職から職場定着まで一貫した支援を行う「障害者向けチーム支援」を実施し、障害者の就職を支援する。  また、就職準備性を高めることが必要な障害者を対象に、一般雇用に向けた心構え・必要なノウハウ等に関する「就職ガイダンス」や、管理選考・就職面接会を積極的に実施する。 (3)雇用分野における農福連携≠フ推進 [予定額 44(43)百万円]  農業事業者等に対して、ハローワークによる積極的な求人開拓や障害者雇用に係るノウハウ提供の強化等のアウトリーチ型支援を展開するとともに、農業分野への就職を希望する障害者に対して就職から職場定着まで一貫した支援を実施する。 (4)福祉、教育、医療から雇用への移行推進事業の実施 [予定額 291(342)百万円]  福祉、教育、医療から雇用への移行を推進するため、福祉施設、特別支援学校、医療機関等の地域の関係機関や事業主団体・企業と連携しつつ、職場実習を総合的かつ効果的に実施する。特に、中小企業における職場実習の推進を図る。  また、就労支援セミナー、事業所見学会等の機会の充実、ハローワークが中心となった企業と福祉分野の連携促進事業の推進等を図る。 (5)障害者トライアル雇用事業の実施 [予定額1、600(1、277)百万円]  ハローワーク等の紹介により障害者を試行雇用(原則3か月。精神障害者については最大12か月。)する事業主に対して助成し、障害者の雇用の促進と安定を図る。 2 安心して安定的に働き続けることができる環境の整備 [予定額8、063(8、438)百万円] (1)障害者就業・生活支援センターの機能強化 [予定額7、907(8、375)百万円]  障害者の身近な地域において就業面と生活面の一体的な相談・支援を行う「障害者就業・生活支援センター」において、引き続き、リモート面談等に必要なポータブル機器やWi-Fi環境の導入等設備面の整備を行うほか、地域の支援機関等に対して蓄積したノウハウの提供等を通じて就業支援の推進を図る。 (2)障害者の正社員化等に取り組む事業主への支援の充実[新規] [予定額98(0)百万円]  就業規則又は労働協約等に規定した制度に基づき、有期雇用労働者等である障害者を正規雇用、無期雇用に転換した場合に助成する。 (3)障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供に係る相談支援等 [予定額58(63)百万円]  障害者雇用に関する専門窓口を設置し、障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供について、個々の企業の実情に応じた対応への相談支援を行うとともに、障害者雇用に課題を持つ事業主に対する講習会等を開催する。 U 精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援の強化 1 精神障害者等に対する就労支援の充実 [予定額 1、536(1、625)百万円] (1)ハローワークにおける精神障害者への専門的支援の推進 [予定額1、509(1、574)百万円]  精神障害者の安定した雇用を実現するための職場定着支援の観点から、ハローワークに、精神保健福祉士等の資格を有する「精神障害者雇用トータルサポーター」を配置し、精神障害者に対するカウンセリング、企業に対する精神障害者等の雇用に係る課題解決のための相談援助等の支援を行う。 (2)精神・発達障害者しごとサポーターの養成 [予定額27(51)百万円]  企業内の一般労働者を対象として、精神・発達障害者を温かく見守り、支援する応援者となる「精神・発達障害者しごとサポーター」を養成していくことで、就労の場面で、精神・発達障害者がより活躍しやすい環境づくりを推進する。 2 職業能力開発校(一般校)における精神障害者等の受入体制の整備 [予定額316(318)百万円]  精神障害者等の受入体制を整備するため、職業能力開発校において精神保健福祉士等を配置するとともに、精神障害者等の受入れに係るノウハウ普及・対応力強化に取り組む。 3 発達障害者、難病患者に対する就労支援 [予定額 1、387(1、138)百万円] (1)発達障害者雇用トータルサポーターによる就職準備段階から職場定着までの一貫した専門的支援の実施 [予定額490(323)百万円]  ハローワークに、発達障害者の就労支援等の十分な経験を有する「発達障害者雇用トータルサポーター」を配置し、発達障害者支援センター等との積極的な連携を図りつつ、発達障害者に対するカウンセリングや就職に向けた準備プログラム、企業や支援担当者に対する発達障害者の雇用や定着に必要なノウハウの提供等を推進する。 (2)発達障害等のある学生等に対する専門的な就職支援の実施[新規] [予定額 110(0)百万円]  大学等における発達障害者等の増加を踏まえ、就職活動に際して専門的な支援が必要な学生等に対して、大学等と連携して支援対象者の早期把握を図るとともに、就職準備から就職・職場定着までの一貫した支援を行う。 (3)難病相談支援センターと連携した難病患者への就労支援の実施 [予定額 220(223)百万円]  ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センター等と連携して、就職を希望する難病患者に対して、その症状の特性を踏まえたきめ細かな就労支援を行う。 (4)発達障害者・難病患者を雇い入れた事業主に対する助成の実施 [予定額 567(592)百万円]  発達障害者又は難病のある者を雇い入れ、適切な雇用管理等を行った事業主に対する助成を実施する。 V 障害者の雇用を促進するためのテレワークの推進 1 障害者の雇用を促進するためのテレワークの推進(一部再掲) [予定額 1、550(1、240)百万円]  障害者の雇用を促進するためのテレワークの推進を図るため、テレワークによる勤務の理解促進・周知のためのフォーラムを開催するとともに、テレワークの形式で障害者をトライアル雇用する場合、最長6か月までトライアル雇用期間を延長可能とする。 W 公務部門における障害者の雇用促進・定着支援の推進 1 公務部門における障害者の雇用促進・定着支援の推進 [予定額 330(461)百万円]  公務部門における雇用する障害者の定着支援を引き続き推進するため、ハローワーク等に配置する職場適応支援者を配置し、各府省に出向き、職場適応に課題を抱える障害者や各府省の人事担当者等に対して、必要な助言を行う。  また、厚生労働省においても、障害特性に応じた個別支援、障害に対する理解促進のための研修等を行う。 X 障害者の職業能力開発支援の強化 1 職業能力開発校(一般校)における精神障害者等の受入体制の整備(再掲) [予定額 316(318)百万円] 2 障害者職業能力開発校における特別支援障害者に重点を置いた職業訓練の推進 [予定額 4、671(4、839)百万円]  障害者職業能力開発校において、「職業訓練上特別な支援を要する障害者」を重点的に受入れ、障害特性に応じた職業訓練を実施するとともに、老朽化等により訓練生の安全や校舎の維持管理面で緊急性の高い施設整備を実施する。 3 障害者の多様なニーズに対応した委託訓練の実施 [予定額 1、440(1、558)百万円]  企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等多様な訓練資源を活用し、障害者が住む身近な地域で多様な職業訓練を実施する。 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 【P28-29】 研究開発レポート 企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)による支援の効果及び支援事例に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 1 はじめに  企業に雇用される障害者が増加するなかで、障害者の職場定着を図るためには、企業自らが社内で障害者の定着を支援する体制を構築していくことが重要であり、企業在籍型ジョブコーチの配置は一定の効果があると考えられます。しかしながら、実際に企業在籍型ジョブコーチがどのような活躍をしているのか、その実態はあまり知られていないのが実状です。そこで、障害者職業総合センターでは、企業在籍型ジョブコーチの効果的な支援の進め方や課題解決のための条件整備等を検討することを目的として、企業在籍型ジョブコーチが所属する企業の管理職と企業在籍型ジョブコーチにアンケート調査および事業所訪問ヒアリング調査を行いました。  本稿ではその一部について紹介します。 2 調査結果の概要 (1)アンケート調査  2013(平成25)年度〜2017(平成29)年度にジョブコーチ養成研修を修了した企業在籍型ジョブコーチが所属する企業のうち、調査への協力が得られた355事業所の管理職および企業在籍型ジョブコーチ877名を対象に質問紙調査を実施し、事業所248社、企業在籍型ジョブコーチ570人から回答をいただきました。  事業所の管理職が回答した、企業在籍型ジョブコーチを配置する前と比べて配置後の効果がある(「とてもそう思う」と「ややそう思う」)の回答が最も多かった項目は、「障害者を雇い入れた際に、職場適応がスムーズになった」(81・1%)であり、次いで「障害者の職場定着が改善した」(78・7%)、「外部の障害者支援機関等との連携が円滑になった」(69・8%)でした(図1)。  企業在籍型ジョブコーチが回答した、実施している支援の頻度が最も多かった内容は、「人間関係、職場内コミュニケーション」(82・6%)であり、次いで「職務遂行」(76・6%)、「不安、緊張感、ストレスの軽減」(63・0%)でした(図2)。また、企業在籍型ジョブコーチとして業務に従事するなかで以前と比べて変わったこと(自由記述)として、「精神障害者や発達障害者の雇用が増えている」という記述が多く挙げられましたが、なかでも「仕事より、コミュニケーションやプライベート、体調に関する問題が多くなった」、「圧倒的に支援時間が多くなった」などの記述がありました。これらのことから、企業がさまざまな障害者を雇用するなかで、人間関係やコミュニケーションに関する支援の必要性が高くなっていることがうかがえました。 (2)事業所訪問ヒアリング調査  企業在籍型ジョブコーチによる効果的な支援やそれを支える条件等を把握するため、アンケート調査協力企業等から31社を選定し、ヒアリング調査を実施しました。  企業在籍型ジョブコーチの職務内容は、障害者社員の特性に応じた職務再設計、キャリア形成およびコミュニケーションに対する支援が多くなされており、精神障害者や発達障害者に対してはメンタル面への支援が重視されていました。また、職場の上司や同僚に対して障害者社員に対する理解の促進を図るとともに、障害者社員を職場で支援する社員へのスーパーバイズ等を通した人材育成をになっている事例も複数見られました。ほかにも、受け入れ準備段階における社内理解の促進から職場定着のための社内外の支援体制づくりに至るきめ細かな支援事例が多く見られました。  企業在籍型ジョブコーチを取り巻く課題については、企業在籍型ジョブコーチへの支援体制やキャリア形成に関することが挙げられましたが、これらの課題を解決している事業所に共通することは、企業在籍型ジョブコーチと人事総務等の協力体制が構築されていること、企業在籍型ジョブコーチや障害者職業生活相談員等が複数配置され相互に連携して支援していること、企業が障害者雇用に対する長期的なビジョンを描いていること等でした。 3 まとめ  企業在籍型ジョブコーチは、企業の社員であるという強みを活かし、障害者の職務内容を理解した的確な支援、課題の早期把握とタイムリーで切れ目のない支援ができる人材です。本調査研究から得られた企業在籍型ジョブコーチの配置効果と課題をふまえ、企業在籍型ジョブコーチがより効果的に活躍するためには、@企業在籍型ジョブコーチの役割の明確化、A企業在籍型ジョブコーチのキャリアアップの仕組み、B企業在籍型ジョブコーチを支える社内のチーム支援、C企業在籍型ジョブコーチの支援スキルのブラッシュアップ、などの条件を整備することが必要であると考えます。  本調査研究の成果として、企業在籍型ジョブコーチが活躍する企業の事例をまとめた事例集(※1)および企業在籍型ジョブコーチの配置を検討する企業向けのリーフレット(※2)を作成しましたので、ぜひご活用ください。 ★本調査研究報告書は下記ホームページからご覧いただけます  「調査研究報告書 No.152」https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku152.html ※1 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai66.html ※2 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai67.html ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図1 企業在籍型ジョブコーチ配置の効果(上位5項目) [n=248] (事業所の管理職が回答) 障害者を雇い入れた際に、職場適応がスムーズになった とても思う 35.1% やや思う 46.0% あまり思わない 10.9% 全く思わない 1.2% 無回答 6.9% 障害者の職場定着が改善した とても思う 34.3% やや思う 44.4% あまり思わない 14.1% 全く思わない 1.2% 無回答 6.0% 外部の障害者支援機関等との連携が円滑になった とても思う 36.7% やや思う 33.1% あまり思わない 21.8% 全く思わない 2.4% 無回答 6.0% 障害者の雇用管理体制が充実した とても思う 25.4% やや思う 44.0% あまり思わない 22.6% 全く思わない 2.4% 無回答 5.6% 障害者の体調不調がより早期に把握できるようになった とても思う 27.8% やや思う 39.5% あまり思わない 23.8% 全く思わない 2.8% 無回答 6.0% 図2 企業在籍型ジョブコーチが実施している支援内容(上位5項目) [n=570] (企業在籍型ジョブコーチが回答) 人間関係、職場内コミュニケーション 多い 82.6% 少ない 14.3% 実施していない 1.8% 無回答 1.2% 職務遂行 多い 76.6% 少ない 18.4% 実施していない 3.4% 無回答 1.6% 不安、緊張感、ストレスの軽減 多い 63.0% 少ない 31.3% 実施していない 4.4% 無回答 1.2% 職務内容の調整(仕事量・就業時間) 多い 62.4% 少ない 29.1% 実施していない 6.9% 無回答 1.6% 基本的労働習慣 多い 60.2% 少ない 32.1% 実施していない 6.1% 無回答 1.6% 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 林野庁 林野庁が木材製品の開発を支援  林野庁が、「林福連携」による地域材製品開発に関する事業を支援することにした。事業内容は、社会福祉法人などの福祉関係者、木工技術者などの林業・木材産業者、デザイナー、地域関係者などが連携し、優れたデザインやストーリーをもつ付加価値の高い地域材を開発し、地域材の魅力向上、障害者などの新たな活躍の場の創出を図るとともに、地域振興につなげるモデル的な取組みを支援するというもの。  具体的には「優れた地域材製品等の顕彰制度」、「木材利用の良さや意義を伝える普及啓発」、「職場を含むさまざまな場面での木育活動」となっている。担当は、林野庁林政部木材利用課消費対策班。 文部科学省 「碍」は常用漢字表に追加せず  文部科学省の文化審議会国語分科会国語課題小委員会は、社会生活で漢字を使う際の目安として国が定める常用漢字表に「碍(がい)」を追加するかどうか検討していたが、「社会で広く使われておらず、直ちに追加はしない」とする考え方をまとめた。  「障害者」の表記に「害」の字を用いることを 問題視する指摘があり、東京五輪・パラリンピック開催を前に、国の法令などで「障碍者」と表記できるよう国会が検討を求めていた。同委員会は、常用漢字表の改定は社会での使用実態を反映させるもので、「検討過程にある課題を周知したり、問題提起したりする目的で選定するものではない」と指摘。引き続き世論調査などで動向を注視するとした。 地方の動き 福岡 アート作品を有料レンタルし制作者に還元  福岡県は2021(令和3)年度から、障害者が制作した絵画を企業や行政機関に有料で貸し出し、レンタル料の一部を制作者に報酬として還元する事業を始める。障害者にとっては芸術活動への参加や自立支援、貸出先の企業などは社会貢献活動につながり、県は双方に積極的な活用を呼びかけていく。事業は障害者アートの商品化に取り組むNPOなどに委託。障害者が描いた絵画の展示用レプリカを1枚につき1カ月3千円で貸し出し、料金の30%は制作者の報酬になる。貸出先は企業や自治体の公共施設、学校などを想定している。4月から委託先公募などの準備を進め、9月にもレンタルを始める方針。2022年3月末までに50件程度の利用を目ざす。 生活情報 東京 オンラインで視覚障害者向け美容セミナー開催  「株式会社資生堂」(港区)は、大阪市内で視覚障害者向けのオンライン美容セミナーを初めて開催した。新型コロナウイルスの影響でソーシャルディスタンスの確保が求められているため試験的に実施。5月以降、本格展開する考え。30〜50代の女性が参加し、60分間で顔のたるみを防ぐエクササイズやスキンケアを学んだ。講師は指導にジェスチャーを使えないため「手をグーにして指の方を内側に」などと動作を言葉で細かく伝えた。 福島 「VR美術館」で障害者らの作品紹介  「福島民友新聞社」(福島市)や県などは、障害のある人たちの芸術活動を紹介する「とりどりのアート」事業を開始した。障害や多様性の理解促進を図りながら芸術文化の奥行きを広げるのが目的。第1弾としてホームページを開設し、インターネット上で作品を鑑賞できる「VR(仮想現実)美術館」を公開した。猪苗代町(いなわしろまち)の国指定重要文化財「天鏡閣(てんきょうかく)」を美術館に見立て、ネット上で館内を巡りながら作品を鑑賞することができる。県内外の作家の作品を紹介し、作品を見た人の感想を動画で紹介する「こころが動く」も掲載。 https://toridoriart.sakura.ne.jp/ 働く 千葉 就労支援事業所と連携し「たい焼き店」が再開  千葉県銚子市の銚子電気鉄道の犬吠(いぬぼう)駅で、休業していた「たい焼き売店」が、障害者就労支援事業所の協力を得て再開した。障害のある人がたい焼きづくりから販売までたずさわることを目ざす。  たい焼き売店は1976(昭和51)年に観音駅で開業した。その後犬吠駅に移ったが、焼き手不在で昨年から休業していた。そこで、就労継続支援B型事業所などを手がける「株式会社ここ」(銚子市)が業務を受託。スタッフが店頭に立ち、障害のある人が包装紙や箱づくりで協力する。再開初日は、鉄道ファンらが列をつくった。たい焼きはあんとクリームの2種で、1個120円(税込)。当面は木〜土曜日の11〜15時に営業する。 長野 就労継続支援A型事業所がマフィンの缶詰を開発 障害者が働く就労継続支援A型事業所「Jumpin,(ジャンピン)」(諏訪郡(すわぐん)富士見町)が、常温で3年間保存できるマフィンの缶詰を開発した。手軽に栄養補給ができるよう甘味を強くし、カロリーを高くした。保存期間だけでなく、おいしさも追求。パサつきを減らすため、マフィン内部に水分が残るよう焼き方を工夫している。  同事業所は2016(平成28)年からパンの製造と販売を続けており、今回は災害時にも安心して食べられるものをつくろうと開発。缶の上部には大きく賞味期限を表示した。缶詰を入れる段ボールは特注で、持ち運びや開封がしやすい構造にしている。同事業所の利用者がマフィンづくりや封入、納品までたずさわる。1缶2個入り550円(税込)で注文販売。 問合せは同事業所へ。 電話:0266−78−8823 本紹介 『発達障害のある生徒・学生へのコミュニケーション支援の実際〜修学から就職後の支援まで』  国立富山大学で発達障害のある学生の支援に取り組む、アクセシビリティ・コミュニケーション支援室長の西村(にしむら)優紀美(ゆきみ)さんらが、『発達障害のある生徒・学生へのコミュニケーション支援の実際〜修学から就職後の支援まで』(金子書房)を出版した。発達障害のある学生の特性が大学在学中や就職後にどのように表れるかを整理し、当事者、支援者とのかかわり方と場面対応のイロハがわかる。富山大学における発達障害学生支援や高校生に対する大学体験プログラム、学生同士のコミュニケーション支援、芸術活動を通したコミュニケーション支援、就職活動、卒業後のコミュニケーション支援、就職活動支援からフォローアップ支援などをわかりやすく紹介。 B5版・174ページ、3080円(税込) 新コーナー ミニコラム 第1回 編集委員のひとこと 今号より編集委員による「ミニコラム」を連載します。 コロナ禍に立ち向かう障害者雇用 東京通信大学教授 松爲信雄  障害者雇用に関する広報誌として国内で最大部数を発行する本誌は、1977(昭和52)年の創刊以来、通巻523号になりました。そうしたなかで、編集委員一同は、みなさまに知っていただきたい想いや目ざしている社会のあり方などをお伝えして、「ソーシャルディスタンス」を縮めたいとの願いを込めて、このコラムを設けました。  さて、新型コロナウイルス禍は、わが国の働き方改革を加速させているようです。企業はこれを契機として働き方を全面的に見直したり、メンバーシップ型から成果に対して報酬を支払うジョブ型へと人事制度を移行させる方向に進んでいます。  そうしたなかにあって、障害者雇用も、出勤とテレワークを組み合わせたハイブリッド型の働き方を模索していくことになるでしょう。ですが、「テレワーカー」になれる人は、かぎられた幸運な人たちともいえそうです。障害のある人の多くの職場は、まだ、集団的作業がおもな仕事形態だからです。  そうなると、今後の障害者雇用の現場は、どのように展開していくのでしょうか。いささか先行きに不安を感じることもあります。  その一方で、コロナ禍のさなかにあっても障害のある人の離職を最小限に留めようと努力されておられる事業主の方々が、技術革新のなかにあって新たな仕事のあり方を開発し、それらの情報を公開していただける時期も遠くはない、と期待しているところです。 【P32】 掲示板 受講者募集! 職業リハビリテーションに関する各種研修のご案内 訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 受講料無料 ◆訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修(第2回)  訪問型または企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)として1年以上の実務経験を有する方に対して、雇用管理やアセスメントに関する支援スキルの向上を図る研修を実施します。  講義・演習に加え、ケーススタディ、グループワーク、アクションプランの作成等実践的な内容が特長です。 日程および会場 【第2回】<大阪会場> ※全国からお申し込みいただけます。 日程:令和3年8月3日(火)〜8月6日(金) 会場:クラボウ本社ビル(大阪市中央区久太郎町2-4-31) 申込受付期間 令和3年5月11日(火)〜6月18日(金) お申込み先  当機構ホームページに受講申込書および申込方法を掲載しています。 (訪問型)https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/skill_training01.html (企業在籍型)https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/skill_training02.html お問合せ先 職業リハビリテーション部 研修課(TEL:043-297-9095) 職場適応援助者(ジョブコーチ) ステップ1 ジョブコーチをめざす方 ジョブコーチ支援を行う際に必要な知識・技術の習得 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 全国の地域障害者職業センター 職場適応援助者 養成研修 ステップ2 ジョブコーチの実務経験のある方 ジョブコーチとしての支援スキルの向上 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 職場適応援助者 支援スキル向上研修 次号予告 ●私のひとこと  若年性認知症に関する知識の普及や、デイサービス、家族会支援などを行う特定非営利活動法人若年認知症サポートセンター理事長の宮永和夫さんに、若年性認知症の支援などについて、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  電気に関する幅広い事業を展開する日本テクノ株式会社(東京都)を訪問。沖縄県のサテライトオフィスや、障害のある人が働きやすい職場環境づくりについて取材します。 ●グラビア  ポラス株式会社の特例子会社ポラスシェアード株式会社(埼玉県)を取材。データ入力業務などを中心に行う渡辺啓仁さんの活躍をご紹介します。 ●編集委員が行く  阪本文雄編集委員が、岡山県の多機能型事業所スピカ、滋賀県の社会福祉法人共生シンフォニーの事業所などを訪問。地域の就労支援ネットワークについて取材します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部次長 五十嵐意和保 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−ー株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 5月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和3年4月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 作品募集 令和3年度 応募者全員に記念品をプレゼント! 「絵画コンテスト働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」  毎年9月1日〜30日は、「障害者雇用支援月間」です。国民のみなさまに障害者雇用への理解と関心を深めていただけるよう、障害のある児童・生徒や働く障害のある方々を主な対象に「働くこと」をテーマとする「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」と、障害のある方の仕事や職場をテーマとする「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」を実施します。厚生労働大臣賞受賞作品は、障害者雇用支援月間ポスターに使用し、全国のハローワークなどに掲示します。 6/15(火) 応募締切(消印有効) 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/activity/contest/index.html JEED 絵画写真 検索 ★過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます。 応募作品・テーマ (絵画コンテスト) 働くこと、または仕事に関係のあるもの (写真コンテスト) 障害のある方の仕事や職場にスポットをあて、撮影したもの お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9515 FAX 043-297-9547 シンボルキャラクター “ピクチャノサウルス”(かおはカメラ、つのは絵筆をイメージしています) 【裏表紙】 アビリンピックとは? 障害のある方々が日ごろ職場などでつちかった技能を競う大会です。障害のある方々の職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害のある方々に対する理解と認識を深めてもらい、その雇用の促進を図ることを目的として開催しています。 第41回全国アビリンピックは、令和3年12月17日(金)から12月20日(月)に東京ビッグサイトで開催します! 地方大会 STEP UP ! 全国大会 STEP UP ! 国際大会 お問合せ先 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用推進課 TEL:043-297-9516 MAIL:koyousuishin@jeed.go.jp ↑令和3年3月よりアドレスが変更になりました。 アビリンピック 検索 アビリンピックの情報を随時配信! ▲アビリンピックHP▼ 5月号 令和3年4月25日発行 通巻523号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)