【表紙】 令和3年6月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第525号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2021 7 No.525 職場ルポ 「地方の人材」をテレワークで積極雇用 株式会社リクルートオフィスサポート(東京都) グラビア 3人の活躍が業務効率の向上に サントリービバレッジサービス株式会社 東京北支店(東京都) 編集委員と行く 地域を耕す就労支援 〜埼玉県越谷市の就労支援ネットワークをともに訪ねて〜 越谷市障害者就労支援センター、特定非営利活動法人障害者の職場参加をすすめる会「職場参加ビューロー・世一緒」、株式会社クリタエイムデリカ、株式会社スマートFun(埼玉県) この人を訪ねて 知的障害のイメージを変えたい 株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 松田崇弥さん 「水族館に見える サメと魚がみんないる」山口県・徳原(とくはら)望(のぞみ)さん 読者アンケートにご協力をお願いします! 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 7月号 【前頁】 心のアート 無題 陸畑和成 (特定非営利活動法人地域支援センターポレポレ) 素材:布、糸  陸畑さんの作品には、驚きに似たオモシロさがあります。  機織(はたお)りは通常、布や糸を少しずつ織っていくのですが、陸畑さんの場合、素材の布や糸を塊のまま丸ごと織り込んでいきます。  そのため、本来は平面的に仕上がる機織りも、陸畑さんの作品では立体的に仕上がっているのです。  陸畑さんにとって、創作するうえで重要なのは「こうあるべき」より「感性」のようです。 (文:特定非営利活動法人地域支援センターポレポレ 菊義典) 陸畑和成(りくはたかずなり)  31歳、石川県金沢市在住。自閉症がある。  生活介護・就労継続支援B型事業所「ぽれぽれ工房山の家&それいけ仲間たちの家」を利用。創作活動が大好きで、機織り以外にも絵画やチラシや新聞を使ったモニュメントも創っている。  しかし、完成すると機織り以外の作品はなぜか壊してしまいます。  理由は「やりすぎはよくない!」(本人談)とのこと……。 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2021年7月号 NO.525 心のアート 前頁 無題 作者:陸畑和成(特定非営利活動法人地域支援センターポレポレ) この人を訪ねて 2 知的障害のイメージを変えたい 株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 松田崇弥さん 職場ルポ 4 「地方の人材」をテレワークで積極雇用 株式会社リクルートオフィスサポート(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ 10 コロナ禍を乗り越えて〜新しい働き方を問う〜第2回 JEEDインフォメーション 12 令和3年度 就業支援実践研修のご案内/令和3年度「地方アビリンピック」開催地一覧/障害者職業総合センター職業センターで実施している職業リハビリテーション技法開発に関する報告書のご紹介 グラビア 15 3人の活躍が業務効率の向上に サントリービバレッジサービス株式会社 東京北支店(東京都) 写真/文:官野貴 エッセイ 19 障害福祉サービスの現場から 最終回 社会保険労務士・行政書士 高橋悠 編集委員と行く 20 地域を耕す就労支援 〜埼玉県越谷市の就労支援ネットワークをともに訪ねて〜 越谷市障害者就労支援センター、特定非営利活動法人障害者の職場参加をすすめる会「職場参加ビューロー・世一緒」、株式会社クリタエイムデリカ、株式会社スマートFun(埼玉県) 編集委員 朝日雅也/須田涼太(障害当事者・求職者) 省庁だより 26 令和3年度障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート 28 記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 表紙絵の説明 「いろいろな職業を見て、そのなかから絵の題材に選んだのが、この水族館の仕事です。多くの色を使って、種類や大きさが違う魚たちをたくさん描いて、すごいでしょう!最近は、作品制作の依頼を受けたり、作品展に向けた制作などで大忙しの毎日です」 (令和2年度 障害者雇用支援月間ポスター原画募集 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-3】 この人を訪ねて 知的障害のイメージを変えたい 株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 松田崇弥さん まつだ たかや 1991(平成3)年、岩手県生まれ。2014年、東北芸術工科大学卒業。小山薫堂さんが率いる企画会社「株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ」のプランナーを経て独立。2018年、「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット「株式会社ヘラルボニー」を双子の兄・文登さんとともに設立、クリエイティブを統括している。2019年、日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。2021(令和3)年、内閣府「第3回日本オープンイノベーション」で環境大臣賞を受賞。 「全日本仮囲いアートミュージアム」 ――株式会社ヘラルボニーは、知的障害のある作家によるアート作品を広める事業で注目を浴びていますね。  ありがとうございます。2019(平成31)年3月に始めた「全日本仮囲いアートミュージアム」はこれまで30カ所以上で実施されています。作品をデザインに落とし込んだ服飾品などを扱うブランド「HERALBONY(ヘラルボニー)」も、国内に常設1店・期間限定4店を展開し、オンラインサイトでは世界125カ国から購入できるようになりました。企業や自治体とのさまざまなコラボレーション事業も実現しています。 アール・ブリュットを知って ――会社を設立するまでの経緯を教えてください。  きっかけは僕が2017年に休暇で岩手県に帰省中、母に誘われ花巻市にある「るんびにい美術館」を訪れたことです。衝撃でした。わが家には4歳上の自閉症の兄・翔太(しょうた)がいて、僕と双子の兄・文登(ふみと)は幼少期から障害のある人たちとも交流してきましたが、こんなアール・ブリュット(※)の世界があるとは知りませんでした。一方で、日本ではまだアール・ブリュットは福祉領域にとどまっていると知り、すぐに「何かしたい」と文登を電話で誘ったら「いいよ」と、返事をもらいました。そして、2人で貯金の100万円を準備し、友人にも声をかけてアール・ブリュットをテーマにした「お楽しみプロジェクト」を計画しました。「売れなくてもいいから、いいものをつくろう」とみんなで話し合い、るんびにい美術館の障害のある作家の作品を用いた、シルク織りのネクタイをつくることにしました。  るんびにい美術館とのコラボレーションが決まったものの、実際につくってくれるところを見つけるのに苦労しましたね。「色が多すぎてむずかしい」、「コストが見合わない」などと次々に断られるなか、ある方が教えてくれたのが銀座の老舗洋品店「田屋」です。山形県の工房を見学し、銀座本店に企画書を持ち込んだところ、僕らの思いを汲んで快諾してくれました。ちなみに創業110年以上で初めて他社向けに織物を卸したそうです。作品の凹凸まで見事に表現されたネクタイの初期生産は、4種類120本。値段は1本、2万4千円超です。宣伝用にミュージックビデオを自主制作して配信し、メディアやSNSでも紹介され、無事完売できました。このアートネクタイは、いまも看板商品です。  プロジェクトの成功を機に、兄弟で会社を設立しました。社名の「ヘラルボニー」は、翔太が7歳のころ、何気なく自由帳に記した言葉です。言葉の響きなのか字面(じづら)なのか、心に引っかかるものがあったのでしょう。そんな“一見意味がないと思われるもの”を価値として創出したいという思いも込めました。  社員は昔からの友人や仕事で知り合った人、インターン経由の学卒者など12人で、そのうち5人ぐらいは知的障害のあるきょうだいがいます。しかし、家族に障害のある人がいるかいないかにかかわらず、社員はみな「障害や福祉に、支援や貢献ではなくビジネスとしてかかわること」に興味を持つメンバーたちです。  目ざすビジネスモデルは、アート作品それ自体だけではなく、デザインとして街のなかにしみ出していくこと。たとえば商品ラベルやオフィス内の壁紙、ノベルティグッズなどに展開できるのではないかと考えていました。ただ最初は、企業を回って説明すると「素晴らしい活動ですね」といわれるものの、事業は「(他企業の)先例がない」、「作品価値のものさしがない」などと難色を示されました。初めて商談が成立したのはパナソニック株式会社です。責任者の方が、ある講演会に参加していた僕を見て「新設オフィスの壁紙に使いたい」と提案してくれました。この取引が成功した前例によって、他企業との商談も一気に広がりました。 ミッション「異彩を、放て。」 ――会社や事業を運営するうえで、大切にしていることはありますか。  当社は「異彩を、放て。」というミッションを掲げていますが、意識したのは、福祉領域外での評価の向上に振り切ることです。当社のホームページには「“普通”じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う。」という一文も入れていますが、知的障害のある人も健常者も「みんな一緒に」というのではなく、知的障害があるからこそ描ける世界があるし、できる仕事があるはずです。違う部分を、逆に強化して発信することで、知的障害のイメージを変えていくことができると考えています。  実は以前、大手アパレルブランドと連携してハンカチを販売したとき、担当者から「知的障害を伏せてみましょう」と提案されました。結果は驚くほど売れましたが、購入者は知的障害について知らないままだという状況に「僕らのやりたいことは、これじゃない」と実感しました。魅力的なデザインとして認められるだけでなく、知的障害のある作家が描くアートに反応する社会を見たいのだと、あらためて思いました。 みんなが幸せになるかどうか ――いまでは全国各地の福祉施設とも連携しているそうですね。  国内の約30カ所の福祉施設などと連携し、契約作家は20代〜60代の100人ほど、対象作品も2000点以上になります。素敵な作品があっても販路などが不足している環境で、作家も家族も施設も社会に出ていくことを望む場合にかぎって連携させていただきます。僕らの参画によって、みんなが幸せになることが大切です。  作品のデータはアーカイブ化され、商品などに使った企業などが支払うライセンス料を作家に渡す仕組みです。すでに10人ほどに対して月5〜10万円ぐらいのライセンス料を支払っています。これから目ざすのは「作家さんがとんでもなく稼ぎ始める」段階です。いま進めている商社との取引では、作家の得るライセンス料だけで新卒社員の初任給を軽く超えるでしょう。今年4月下旬には盛岡市に作品を展示する「ヘラルボニーギャラリー」をオープンしました。きちんとした評価をもらうため、国内外のアートフェアにも出品していく予定です。 自閉症の兄について ――社名の名づけ親である翔太さんはどうしていらっしゃいますか。  兄は福祉施設に通い、空き缶をつぶす作業を行っています。兄については、母親が素晴らしい人で、自閉症教育について海外文献まで取り寄せて学び実践してきました。兄自身も懸命に努力した結果、電車を使って一人で通えるようになりました。とても大きな成長ですが、あくまで「できないことをできるようにする」ことの結果です。就労につなげようとすれば、さらに長い道のりでしょう。一方で僕は、本人がすでに持っているものを最大限に活かし、残りは周りが引き受けることで、みんなが幸せになれるのではないかと思っています。兄は、挨拶はできませんが多少の計算はできます。僕たちは今後、兄のような人たちも働いて稼いでいける形をもっと模索し、挑戦していくつもりです。 ※アール・ブリュット(Art Brut):既存の美術などとは無縁の文脈によって制作された芸術作品をさす。フランス語で「加工されていない芸術」という意味が語源。英語では「アウトサイダー・アート」ともいわれる 【P4-9】 職場ルポ 「地方の人材」をテレワークで積極雇用 ―株式会社リクルートオフィスサポート(東京都)― バックオフィス業務を担当する特例子会社では、テレワークによる在宅勤務制度の導入で地方在住の人材確保が可能となり、雇用の幅も広がっている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ 株式会社リクルートオフィスサポート 〒104-0054 東京都中央区勝どき3-13-1 FOREFRONT TOWERU TEL 03-5560-2151(代表) Keyword:テレワーク、在宅勤務、障害者就業・生活支援センター、精神障害、就労移行支援 POINT 1 社内のデジタル化に合わせた新たな業務の開拓 2 テレワークの環境整備により完全在宅勤務を実現 3 在宅勤務者専用サイトを中心に、遠隔でも細かな支援体制 グループ16社の一員として  情報サービス業界の大手「株式会社リクルートホールディングス」(以下、「リクルートHD」)には、3社の特例子会社がある。今回紹介する1990(平成2)年設立の「株式会社リクルートオフィスサポート」(以下、「リクルートオフィスサポート」)、事務処理業務を支える2000年設立の「株式会社スタッフサービス・ビジネスサポート」、紙すきやコーヒー豆の焙煎などを手がける2008年設立の「株式会社リクルートスタッフィングクラフツ」だ。  リクルートオフィスサポートは、「株式会社リクルート」(以下、「リクルート」)のグループ16社の一員として、バックオフィス業務などを担当している。18人(うち障がい者11人)からスタートし、現在、従業員数は430人、うち障がいのある従業員は359人(身体障がい270人、知的障がい13人、精神障がい76人)、グループ適用での障がい者雇用率は2・55%(いずれも2020〈令和2〉年6月1日現在)となっている。 デジタル文化への移行  リクルートオフィスサポートがどのように雇用と業務拡大を進めてきたかについて、今回はコロナ禍のため、ビデオ会議システム(以下、「WEB会議」)を使ったインタビューを中心に取材した。  まず、現在手がけている多種多様なサポート業務をあげる。 ●総務事務  リクルートの全国拠点の入館権限の管理、社内免許や安否確認システム、電子デバイスなどの運用業務、ビルセキュリティの設計・管理など ●オフィス関連業務  コピー用紙やトナーなどの備品補充、拠点間の社内便の仕分け、会議室の管理、各種備品の貸し出し、中古事務用品のリユースコーナーやマッサージ室運営など ●事業関連業務  リクルートグループ全従業員の名刺作成、データ入力、大量コピー、販促物の発送 ●人事事務  リクルートグループ従業員のさまざまな人事情報にかかわる手続き事務、定期健康診断や社内研修の事務局運営 ●法務内部統制事務  契約書や申込書などの資料管理、従業員向けWEBテスト事務局運営、リクルート媒体への参画企業に対する掲載審査の代行業務 ●サイト情報審査業務  リクルートのWEB サイトの情報を、法令順守・ユーザーや企業の保護の観点に基づき確認 ●経理事務  リクルートグループ各社の経理業務にかかわる一般事務の代行。グループ各社から社外への請求や入金、従業員の経費精算などにかかわる取引伝票の管理  このように幅広い業務へと拡大していった経緯について、2002年に、リクルートからリクルートオフィスサポートに転籍し、経営企画部部長を務めている榎本(えのもと)智幸(ともゆき)さんは、こう話す。  「過去に、リクルートの総務・人事系の役員が弊社の社長を兼務していた縁もあり、その補助的業務をメインに請け負ってきました。ただ、ここ数年は職場環境の変化によって新しい業務を開拓する必要にも迫られました」  最も影響が大きかったのが「紙文化からデジタル文化への移行」だという。社内の紙文書廃止やネット環境の向上により、印刷業務やデータ入力作業などが大幅に縮小された。その一方で増えてきたのが審査系の業務だ。  さらに、これまで外部へ委託してきた人事系の業務も内製化を進め、人事情報にかかわる手続きや管理業務の代行、発送業務なども担当するようになった。コロナ禍で紙を扱う業務が縮小する一方、リクルートグループ全体のサポート業務が増えた。また、自社内の感染対策業務もになうことになったという。  全体として、難易度の高い業務も増えてきていることについて、榎本さんは「リクルートグループと伴走し、よりよいパートナーシップを目ざすなかで、業務と能力の幅を広げていくことが大事です」と話してくれた。 「できることを強みに」  リクルートオフィスサポートの本社で働く障がいのあるメンバー(以下、「メンバー」)2人に、文書で質問に答えてもらった。  人事部人材支援グループ兼広報グループの星野(ほしの)健悟(けんご)さん(45歳)は2012年に入社し、翌年に正社員となった。星野さんは双極性障がいがあることから、精神障がい者向けのトライアル雇用制度を利用した。1日6時間勤務からスタートし、1年かけて7・5時間勤務に延ばしたそうだ。星野さんはこう語る。  「精神障がいのある先輩社員がメンターとしてサポートしてくれたほか、部内で事前に障がいについての勉強会もしてくれていたようで、最初から安心して働くことができました」  最初の5年間は行政に提出する書類作成などを担当していたが、いまは社内報の作成や見学者対応、講演活動、新人研修の講師も任されている。星野さんにとっては「自分らしさを活かせる仕事」だという。  「仕事の幅が広がったのは、弊社の『できることを強みに』という社風のよさのおかげだと思っています。私の場合は、前職(塾講師)の経験から人前で説明するのが得意だということを上司が見出してくれました」と、星野さん。  その一方で自身が心がけているのは「障がいが悪化しないよう、自己管理を徹底すること」だ。入社後、たびたびメンタル面が悪化していたそうだが、榎本さんから「周りは変えられなくても、自分の姿勢や考え方は変えられるよ」などとアドバイスされてきた。  星野さんは、日ごろのタスク管理はもちろん、仕事の状況や体調を上司にこまめに報告し、周囲の力も借りながら適切な働き方を日々模索しているという。「おかげで8年目にして、障がい起因による急な欠勤をゼロにすることができました」と教えてくれた。  下肢に障がいがあり義足を使っている田澤(たざわ)隼(じゅん)さん(28歳)は、シッティングバレーボールの選手。もともとバレーボールの社会人チームに所属していたが、祖父母の営む農園で事故に遭い右足を失った。リハビリを経てシッティングバレーに転向、東京2020パラリンピック出場を目ざして活動支援企業を探し、同じチームの関係者からリクルートオフィスサポートを紹介してもらったという。  経営企画部アスリート支援グループに所属し、週の半分は多忙な部署に応援派遣されて勤務、残り半分は練習や遠征など競技活動にあてている。いまはWEB媒体の情報更新を担当しながら、練習に励む日々だという。田澤さんは、「同じ部署の人たちにはご迷惑をおかけしていると思うのですが、練習や合宿で抜けるときも気持ちよく送り出してくれますし、大会があると応援に来てくれます。競技だけでなく、仕事もさらにがんばろうと思えます。業務でのスキルアップはもちろん、目の前の仕事に真摯に取り組むことを心がけています」と、話してくれた。 テレワークで在宅勤務  リクルートオフィスサポートの大きな特徴は、5年前からテレワークによる「在宅勤務制度」を本格的に導入し、地方在住の障がいのある人の雇用を進めてきたことだ。その数は約90人に増え、いずれも北海道や沖縄県などを中心とした地方在住者だという。  導入の経緯について榎本さんは、「首都圏だけではなかなか雇用が進まない状況だったため、2014年ごろからIT業界の先例を参考に検討しました。ただ当初は、テレワーク向けの社会的インフラが不十分だったり、希望の人材も見つからなかったりして、いったん断念しました」とふり返る。  その後、北海道旭川市が実施した「UIJターン促進テレワーク調査・実証事業」に参加し、2016年にはトライアル雇用を経て4人を採用した。  「完全な在宅勤務で、予想以上の業務能力を発揮してくれました。地方には、力を十分に発揮できていない人が一定数いることもわかり、地方での採用を進めることになりました」と榎本さんは話してくれた。  採用については、まず面接とパソコンスキルの実技試験を行い、通過した場合は自宅を訪問して、仕事環境と、家族や支援機関など緊急連絡先の確認をする。採用基準について榎本さんは「自分の意思や体調などを隠さずきちんと発信できる、基本的なコミュニケーションがとれる人を重視します」と説明する。  待遇は、1日6時間勤務の契約社員として、東京都の賃金水準を参考にした時給制で、賞与もある。定期通院制度などを含め、福利厚生は正社員とほぼ同じだ。  またテレワークに必須のセキュリティ対策については、各自のパソコンでデータを保管することのないVDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ)という仕組みで対応。さらに24時間のログ管理によって、時間外労働や不正を防止している。 在宅勤務に合った職域  リクルートオフィスサポートでは当初、在宅勤務者には総務や経理の業務を担当してもらう予定だったが、個人情報の取扱いや業務の多さから、継続的な遂行がむずかしいことがわかった。そこで新たに探したのが、リクルートの不動産情報サイトの内容のチェック業務だ。リクルートからの評価も高かったことから、さらにほかのサイトをチェックする業務も請け負うことになった。  「審査系の業務は各自のペースで進められるため、在宅ワークに合う、しかも障がい種別にもそれほど左右されない業務として、新たな職域となりました」と、榎本さん。  審査系の業務を前提にした採用では、簡単な文章問題や計算問題など自社独自のテストも行っている。 専用サイトで労務管理  在宅勤務は9時半〜16時半、休憩1時間を除き、1日計6時間労働だ。出退勤は、チャット(Microsoft Teams)への書き込みで確認する。9時半からの朝会は約10人ずつのチーム別にWEB会議で行い、それぞれの体調や当日業務などの情報交換をする。  リクルートオフィスサポートは、在宅勤務者専用のポータルサイト「namara(なまら)」も立ち上げた。ちなみに「なまら」とは北海道の方言で「すごい」などの意味で、立ち上げにかかわったメンバーからの公募で決めたそうだ。メンバーは毎朝このサイトを開き、自分の体調を5段階で表示する。業務中に体調が悪くなったときはチャットで発信し、WEB会議で面談をしたうえで早退や業務調整を決める。榎本さんはいう。  「メンバーは各チームの進行担当の社員と日々、画面上だけのコミュニケーションになりますが、表情や声のトーン、話し方などの微妙な変化を見逃さないよう努めています」  業務終了後もメンバーはnamaraサイトに日報を書く。テキスト入力の形式で、本人と管理者側しか見ることができないため、日々の出来事について細かく書いている。面と向かっていいにくいようなことも安心して伝えられる場になり、そこでの文面の変化が、不調に気づくきっかけにもなるそうだ。  さらに月1回程度のリーダーとの面談、四半期に1回グループマネジャーとの面談も実施している。健康面などでアドバイスが必要なときや本人が希望する場合は、東京本社に常駐する3人の保健師とオンライン面談を行う。メンバーの支援にかかわる経営企画部の湊(みなと)美和(みわ)さんが話す。  「最近も、ある女性メンバーが、プライベートな悩みで体調が悪化するたびに保健師さんに話を聴いてもらい、いまはすっかり安定しました。離れていても細やかなサポートができるよう、今後も充実を図っていくつもりです」  障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所から定着支援を受けているメンバーについては、入社後1週間、2週間、1カ月のタイミングでリクルートオフィスサポート側と支援担当者が連絡を取り合い、状況確認や課題のすり合わせなどを行っている。  以前あるメンバーが、生活リズムが乱れてしまったことがあった。そこで、グループマネジャーが就労移行支援事業所に連絡し、支援担当者が毎日メンバーの起床時間に合わせて連絡を入れたことで、約3カ月後には生活リズムが整ったという。 キックオフミーティング  通勤者と比べて、完全な在宅勤務者が感じるデメリットの一つに、会社の業務や仕事に関する情報取得の機会が少なくなってしまうことがあげられる。そこでリクルートオフィスサポートでは半年に一度、WEB会議でキックオフミーティングを開催している。委託元であるリクルートの事業担当者が、事業方針を紹介し、依頼している業務がどのように役立っているかなどを話す。メンバーが会社との接点を実感できる場であり、感謝の気持ちを直接伝えてもらうことで、モチベーション向上の機会にもなっているようだ。  また季節に合わせた小さなイベントも、WEB会議で開催している。「ハロウィンのときには各自が仮装して勤務についてもらいました。日ごろ口数の少ないメンバーも奇抜な衣装を披露するなど、みんなで盛り上がります」と榎本さん。 チャットで励ましの言葉  2020年4月に入社し、在宅事業開発部口コミチェックグループで情報サイトの口コミの審査を担当している坪井(つぼい)勇一郎(ゆういちろう)さん(30歳)にも、文書で質問に答えてもらった。  広汎性発達障がいのある坪井さんは、以前は障がい者雇用枠で飲食店に勤めていたという。  「朝はラーメン店での麺打ち、午後からは蕎麦店の厨房でしたが、休みが不定期で急な出勤などもあり、心身ともに休まらないことが多かったですね」  そこで障害者就業・生活支援センターの担当者からリクルートオフィスサポートを紹介されて説明会に参加し、入社。働き始めてからは、上司や進行担当社員との距離感の近さに驚いたそうだ。  「僕は、自身の思いを伝えることが不得意で、自分も相手の言葉の理解に時間がかかります。弊社では進行担当社員が『わからないことはとことん聞いていいよ』といってくれ、日々の成果についてチャットで努力を認めてくれたり、励ましたりしてくれました。言葉の一つひとつが温かく、元気をもらっています。おかげで1年後には、1日の成果が当初の平均から3倍に伸びました」  坪井さんは、自己分析をしながら努力も重ねてきた。例えば、基準書を自分がわかりやすいようエクセルで独自に作成したり、審査件数のブレをなくすため細かな時間ペース配分も決めたりして、気づけるようにした。「1時間でこの件数」といった目安をつくったことで安定するようになり、いまは目標件数にほぼ毎日到達している。  審査件数が伸びず悩んでいたときには、「自分の弱さ」という言葉を吐露したこともある。当時のマネジャーから「弱さではなく、自分で判断できるよい審査者になるための過程として、ポジティブにとらえよう」との言葉をもらい、いまでも朝は必ずこの言葉を目にしてから仕事に臨んでいるそうだ。 課題と今後の展望  リクルートオフィスサポートでの目下の課題をたずねたところ、榎本さんは二つあげた。  一つは、今後も在宅勤務者の雇用を拡大していくために、どこでどれほどの人を確保できるかという採用戦略。コロナ禍で、労働市場も変化しつつあるため見極めが必要だという。もう一つは、在宅勤務者に任せる仕事の組み合わせ方だ。  「審査系業務にかぎらず、在宅で可能な業務のバリエーションを増やすことで、より個々の強みを活かした働き方を創出することを目ざしています」  現在の業務を細分して見直し、チームで最終成果を出せるように考えているという。また、ワークシェアの検討も始めており、そこから新たな在宅業務を発掘できる可能性もある。  今後の展望については、「進化」を求めるリクルートらしい話も出た。  「今期は『未来を創造する』がテーマです。前期はコロナ禍ということもあり守りに入ることが多かったのですが、これからは攻めに転じて、会社の未来像の設計に従業員一人ひとりが加わってほしいと思っています」  実は、現在の企業理念は、全従業員にアンケートを取り、そのなかの言葉を紡いでつくられたものだと、榎本さんは明かす。  「リクルートオフィスサポートは、従業員一人ひとりの熱い想いによって、進化・成長を遂げてきました。いまの企業理念が従業員の言葉でつくりあげられたと同様に、これからも従業員の想いをもとに未来を創造していく会社でありたいと思います」 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社リクルートオフィスサポート様の希望により「障がい」としています ★4〜9ページの写真提供:株式会社リクルートオフィスサポート 写真のキャプション パソコンを使用したビデオ会議システムでインタビューを行った(写真:官野貴) 経営企画部部長の榎本智幸さん 田澤さんはシッティングバレーボールの日本代表選手としても活躍 経営企画部アスリート支援グループで働いている田澤隼さん 人事部人材支援グループ兼広報グループで働く星野健悟さん 在宅勤務者専用のポータルサイト「namara」 自分の体調を5段階で表示できる。業務中に体調が悪くなったときなどはチャットで発信もできる 経営企画部の湊美和さん 東京の進行担当社員が朝夕2回、チーム全員の顔を見て体調などを確認する 半年に一度、メンバーがオンラインで一同に会すキックオフミーティング 在宅事業開発部口コミチェックグループで働く坪井勇一郎さん ハロウィンは、メンバーが思い思いの仮装をしてWEB会議を行う 【P10-11】 クローズアップ コロナ禍を乗り越えて 〜新しい働き方を問う〜 第2回  新型コロナウイルス感染症の流行により、障害者雇用の現場でも新しい勤務形態を模索する企業が増えています。今回は、コロナ禍で急速に普及した「テレワーク」を活用した障害者の新しい働き方の可能性について、「株式会社テレワークマネジメント」代表取締役の田澤由利さんにお話をうかがいました。 監修:本誌編集委員 松爲信雄(東京通信大学教授) 田澤(たざわ)由利(ゆり)さん  2008(平成20)年にテレワークのコンサルティング会社「株式会社テレワークマネジメント」を設立。企業などへのテレワーク導入支援や、国・自治体のテレワーク普及事業などを行っている。  2016年「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰」個人賞を受賞。 コロナ禍におけるテレワークの実施状況  新型コロナウイルス感染症の感染拡大から1年以上。感染症の拡大防止の観点から、職場へ出社するのではなく、いわゆる「テレワーク」という形で、仕事を進めていくことが求められる機会が増えました。図1のグラフは、常用雇用者100人以上の国内企業2122社(有効回答)を対象とした総務省による調査結果と、国内企業約12000〜約18000社(有効回答)を対象とした東京商工リサーチによる調査結果で、テレワークを実施している企業の割合の推移を表したものです。  テレワークという働き方はコロナ禍で急速に認知され、2020(令和2)年4月に発令された1回めの緊急事態宣言中では、約半数以上の企業がテレワークを実施していました。緊急事態宣言解除後はその数値が一気に下がり、テレワーク実施企業は、3割程度にまで落ち込みます。しかし、その後の動きをよく見ると、テレワーク実施企業の割合が、また少しずつ増加していることがわかります。株式会社テレワークマネジメント代表取締役の田澤(たざわ)由利(ゆり)さんは、「これは、一度テレワークをやめたものの、再び始めた企業があることを表します。緊急事態宣言中は、やむを得ない状況でテレワークを実施した企業がほとんどでしたが、そこで得た課題に改善策などを講じたうえで、再びテレワークを始めた企業があるということでしょう。社会全体が、少しずつテレワークに慣れてきた状況が現れていると思います」と話します。  「障害のある社員のテレワークにおいても同様の動きがあったと考えられますが、一般社員よりも、さらにむずかしい状況があったのではないかと思われます。在宅勤務といいつつも、実際には自宅待機になっているケースも多くありました。社会全体としてテレワークは増えていますが、現時点では、状況に慣れることで精一杯という企業が多く、それによる障害者の働き方や雇用のあり方の大きな変化までは、まだ、途中段階というのが現状だと思います」 障害者が活躍できるテレワークのあり方とは  一方で、ゆくゆくは、テレワークの普及が障害者雇用のあり方に変化をもたらす可能性は大いにあると考えられます。テレワークという働き方になんらかの手応えを感じた企業のなかには、テレワークによる障害者雇用に前向きな姿勢を見せる企業も少なくないそうです。  では、障害者をテレワークで雇用するために、企業は具体的にどのようなことを考え、取り組んでいったらよいのでしょうか。  「『テレワークでできる仕事はこの程度だろう』と決めつけていたのでは、障害者のテレワークの仕事は広がっていきません。『いまある仕事をどのようにしたらテレワークという形でできるようになるか』を考えていくことが重要です。そのために、まずは現在の業務をすべて洗い出し、それをテレワークで行うためにはどうしたらよいのか、どの部分の何を改善すれば可能になるのかを考えていきます。私たちはこれを『業務設計』と呼んでいます」  田澤さんは、例として、次のようなケースをあげてくれました(図2)。  「ある製造業の企業では、すべての部署の業務を細かく洗い出すと、重複している業務や、社員が負担に感じているルーティン業務がいくつもありました。それらをまとめると、2人分の業務量となり、テレワークで実施できるような環境を整えることで、2人の障害者を在宅で雇用できるようになりました。同時に、いままでその作業に時間を取られていた社員が本来の業務に注力できるようになったことで、会社全体の生産性が大きく向上する結果が得られました」  このように、業務のあり方を設計し直しテレワークとつなげていくことが、障害者の活躍するテレワークを実現するカギだといいます。例にあげた企業では、障害者のテレワークにより積み重ねたノウハウを活かし、コロナ禍におけるほかの従業員の在宅勤務への移行もスムーズに実施することができたそうです。 図1 テレワーク実施企業 出典:総務省「令和元年通信利用動向調査」、東京商工リサーチ「新型コロナウイルスに関するアンケート(第3回、第4回、第5回、第6回、第8回、第12回)」より、株式会社テレワークマネジメント作成 ※「コロナ前」は、総務省「令和元年通信利用動向調査」結果で調査対象が異なるが、参考値として記載している 図2 業務設計 出典:株式会社テレワークマネジメント作成資料 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 全国14エリアで開催します! 令和3年度 就業支援実践研修のご案内  当機構では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当している方を対象に、就業支援の実践力を高めるための「就業支援実践研修」を、全国14エリアで開催します。  みなさまの受講を心よりお待ちしています。 受講料無料 対象者 労働、福祉、医療、教育などの関係機関の職員であって、2年以上の実務経験のある就業支援担当者 内容 【障害別コース:3コース(各コース1日間)】 ■精神障害コース ■発達障害コース ■高次脳機能障害コース エリア・時期・定員等 ■開催エリア:  @北海道 A北東北 B南東北 C南関東  D北関東 E甲信越 F北陸  G東海  H近畿  I中国  J四国  K北九州  L南九州 M沖縄 ■開催時期:令和3年10月〜12月 ■日程・会場・定員等:  令和3年度の詳細は、令和3年8月頃に当機構ホームページに掲載予定です。 お申し込み ■申込方法:  申込用紙は、当機構ホームページからダウンロードできます。  希望するエリアおよび障害別コースの申込先の地域障害者職業センターあて、メールまたは郵便でお申し込みください。 ■申込受付期間・申込先:  エリアごとに申込先を設けておりますので、当機構ホームページをご確認ください。 ■受講決定:  メール、または郵便で順次連絡いたします。 ※お申込みが定員を超える場合は、人数の調整をさせていただくことがあります。  また、新型コロナウイルス感染症の影響により、エリアによっては、開催時期の変更等をする場合がありますので、ご了承ください。 ステップアップ方式の研修体制となっています! ステップ1 初めて担当する方 就業支援基礎研修 就業支援の基礎づくり 全国の地域障害者職業センター ステップ2 2年以上実務経験のある方 就業支援実践研修 アセスメント力と課題解決力の向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害 コース 全国14エリアの地域障害者職業センター ステップ3 3年以上実務経験のある方 就業支援スキル向上研修 障害特性に応じた 支援スキルの向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害 コース 障害者職業総合センター (千葉県千葉市) 就業支援課題別セミナー 新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上 障害者職業総合センター (千葉県千葉市) お問合せ先 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp URL:https://www.jeed.go.jp/ 就業支援実践研修 検索 ◆令和3年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催されます。 詳細は、「地方アビリンピック」ホームページをご覧ください。 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更される場合があります。 都道府県 開催日 会場 北海道 10月2日(土) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月29日(金) 11月3日(水) 青森職業能力開発促進センター/ホテル青森 岩手 6月27日(日) 7月11日(日) 岩手職業能力開発促進センター/岩手県立産業技術短期大学校 矢巾キャンパス 宮城 7月10日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月9日(金) 秋田市文化会館 山形 7月7日(水) 山形県総合運動公園 総合体育館アリーナ 福島 9月18日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月10日(土) 7月11日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月3日(土) 栃木職業能力開発促進センター/SHINBIデザインスクール 群馬 7月3日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月10日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月27日(土)(予定) 千葉職業能力開発促進センター 東京 2月19日(土)(予定) 東京障害者職業能力開発校/職業能力開発総合大学校 神奈川 10月下旬(予定) 未定 新潟 9月11日(土) 新潟市総合福祉会館/ホテルグローバルビュー新潟 富山 7月17日(土) 富山市職業訓練センター/富山県技術専門学院 石川 10月24日(日)(予定) 石川職業能力開発促進センター 福井 7月11日(日) 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 10月3日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月17日(土) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月3日(土) 10月12日(火) ソフトピアジャパンセンター(7月3日) 岐阜市文化センター(10月12日) 静岡 6月13日(日) 6月27日(日) 7月10日(土) 静岡市清水文化会館マリナート/静岡市東部勤労者福祉センター 清水テルサ/学校法人静岡理工科大学 静岡デザイン専門学校 愛知 6月6日(日) 6月19日(土) 6月20日(日) 7月3日(土) 7月10日(土) 愛知県立名古屋聾学校/大成今池研修センター/学校法人珪山学園 専門学校日本聴能言語福祉学院/中部職業能力開発促進センター 三重 6月26日(土) 三重職業能力開発促進センター 滋賀 11月27日(土) 近畿職業能力開発大学校附属 滋賀職業能力開発短期大学校 京都 1月29日(土)(予定) 京都府立京都高等技術専門校/京都府立京都障害者高等技術専門校(予定) 大阪 6月19日(土) 7月3日(土) 関西職業能力開発促進センター/社会福祉法人日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター/社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会 大阪市職業リハビリテーションセンター 兵庫 7月17日(土) 8月7日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 6月12日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 未定 未定 鳥取 7月1日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月10日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 6月26日(土) 7月3日(土) 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター/岡山職業能力開発促進センター 広島 12月〜1月頃(予定) 未定 山口 10月16日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月18日(土) 徳島職業能力開発促進センター/徳島ビルメンテナンス会館 香川 2月上旬(予定) 未定 愛媛 7月10日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 7月3日(土) 7月10日(土) 学校法人龍馬学園 国際デザイン・ビューティカレッジ/高知職業能力開発促進センター 福岡 7月3日(土) 7月10日(土) 福岡障害者職業能力開発校/福岡職業能力開発促進センター/福岡県立福岡高等技術専門校 佐賀 1月22日(土) 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月10日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月26日(土) 6月27日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月23日(土) 大分東部公民館 宮崎 7月10日(土) 宮崎職業能力開発促進センター/宮崎県ビルメンテナンス協会 鹿児島 7月10日(土) 鹿児島職業能力開発促進センター 沖縄 7月17日(土) 沖縄職業能力開発大学校 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ※2021年5月26日現在 開催地によっては、開催日や種目などで会場が異なります 参加選手数の増減などにより、変更される場合があります  障害者職業総合センター職業センターで実施している職業リハビリテーション技法開発に関する報告書のご紹介  障害者職業総合センター職業センターは、これまでの支援技法では効果が現れにくい発達障害、精神障害、高次脳機能障害のある方に対する新たな職業リハビリテーション技法の開発と改良を行い、幅広く支援技法の普及を行っています。毎年その成果物を発行しています。 ◎総合センターホームページ(NIVR)から、報告書全文のほか、すぐに使える資料等もダウンロードできます。  https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html 発達障害のある方への支援技法開発の成果 「リラクゼーション技能トレーニングの改良」 実践報告書No.36(令和3年3月発行)  発達障害のある方のストレスや疲労への気づき、その対処法の習得と実践についてまとめました。身体感覚・思考・感情の3つのアプローチによるセルフモニタリング機能の改良を行った「リラクゼーション技能トレーニング」の実施方法、支援のポイント、事例などをわかりやすく説明しています。 精神障害のある方への支援技法開発の成果 「ジョブデザイン・サポートプログラムのカリキュラムの再構成〜プログラムの具体的な内容と支援の実際〜」 実践報告書No.37(令和3年3月発行)  15年を超えて、各種支援技法の開発と改良を重ねてきた「ジョブデザイン・サポートプログラム」について、その全体像や構成要素を精査し、わかりやすく整理し直し、その内容、支援の実際、実施上の工夫や留意事項を活用しやすくまとめています。 高次脳機能障害のある方への支援技法開発の成果 「記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介」 実践報告書No.38(令和3年3月発行)  高次脳機能障害のある方の職場復帰や就職においてたいへん重要となる記憶障害に関する支援として、オーストラリアでの学習カリキュラムを援用し、新たに開発した技法について、実施方法、実践事例などを盛り込んで説明、解説しています。 ※今号の「研究開発レポート」(28〜29ページ)で、詳しく紹介しています <お問合せ>職業センター企画課調整係 TEL:043-297-9043 【P15-18】 グラビア 3人の活躍が業務効率の向上に サントリービバレッジサービス株式会社 東京北支店(東京都) 取材先データ サントリービバレッジサービス株式会社 東京北支店 〒174-0041 東京都板橋区舟渡3-15-7 TEL 03-3558-9471 FAX 03-3558-9067 写真・文:官野貴  サントリービバレッジサービス株式会社は、おもに自動販売機を通じ、飲料や食品などの販売を行っている。東京都板橋区にある東京北支店では、知的障がいのある3人の社員が、同支店の倉庫で自動販売機に補充する飲料を集めるピッキング作業を担当している。  同支店には配送ルートが約20あり、倉庫に置かれた在庫のなかから3人で手分けして商品をピックアップし、ルートごとのカートに積んでいく。飲料の入ったダンボールは一箱10kgを超えるものも多く、力任せに作業を行うと梱包が崩れて商品に傷がついてしまうため、ていねいな仕事が求められる。また、同じ商品名でも容量が違うものなどがあるため、注意して商品をピックアップしなければならない。  入社2年目の大津(おおつ)唯人(ゆいと)さん(21歳)は、「ピッキングした飲み物が、自動販売機を通じてお客さまに届くことをうれしく感じます。この作業の先にいるお客さまを意識して、ていねいな仕事を心がけています」と話してくれた。  支店長の栗本(くりもと)圭(けい)さんは、「3人のおかげで拠点がうまく回っています。彼らの働きが、ルートセールスの労働時間短縮にもつながっています」という。以前は、ルートセールスが補充を終え支店に戻ったあとに、翌日の補充分を自らピックアップし、トラックに積んでいた。いまでは、それを彼らが行うことで、ルートセールスの時間的余裕を生み、業務効率の向上につながっているのだ。  入社2年目の三野(みつの)響(ひびき)さん(21歳)は「体を動かす職場で働きたいと思っていました。この仕事を続けていきたいです」と話す。これは、彼ら3人に共通する思いだ。そして、入社3年目のア(たかさき)雄大(ゆうと)さん(22歳)は、「将来は、自動車の運転免許やフォークリフトの資格を取り、自動販売機の補充を行うルートセールスとして働きたいです」と夢を語ってくれた。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、サントリービバレッジサービス株式会社様の希望により「障がい」としています 写真のキャプション それぞれの仕事量を検討し、ピッキングリストを配布するア雄大さん(右から2人目) 商品をリストに従って在庫からピックアップし、カートへと積み込む 商品名と箱数が記入されたピッキングリスト 出荷数を差し引いた在庫数を管理簿へ記入する 1箱約12kgの商品を軽々と積み上げる三野響さん 崩れないよう注意しながらカートを押す大津唯人さん。カートに積まれた商品は300kgを超える 上段に積まれた商品は、担当社員に依頼しフォークリフトで下ろしてもらう 繁忙期など時期によっては、カートからトラックへの積み込みも彼らが担当する 支店長の栗本圭さん(右奥)と、休憩中の一コマ 職場で活躍する3人は、体を動かすことが好きで、働くことが楽しいという 【P19】 エッセイ【最終回】 障害福祉サービスの現場から 社会保険労務士・行政書士 高橋 悠 高橋 悠(たかはし ゆたか)  行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立上げ・運営支援にたずさわった後、2016(平成28)年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上が介護・障害福祉サービス事業所である。また、「合同会社サニー・プレイス」を設立し、小規模保育事業所B型および企業主導型保育所を経営している。  障害者の就労の場を提供している「就労継続支援事業所」においては、自らの事業所を選択してもらえるよう、各事業所において賃金(工賃)向上のための多種多様な施策を実施しています。  今回は、今年度に新たに示された改定(※)による、就労継続支援A型事業所の新しい方向性についてご紹介していきます。 就労継続支援A型サービスの新たな方向性  令和3年度の改定により、「就労移行支援」、「就労継続支援A型」、「就労継続支援B型」についてそれぞれ大きな見直しがなされることとなりました。そのなかでも、今回おそらく最も劇的に変化したのが「就労継続支援A型」です。  従来は利用者の「1日の平均労働時間」に応じて報酬を算定する体系となっていましたが、図の通り、今回の改定によってこの「1日の平均労働時間」に加え、「生産活動」、「多様な働き方」、「支援力向上」および「地域連携活動」の五つの観点からなる各評価項目の総合評価をもって実績とする方式(スコア方式)に見直されることとなりました。 就労継続支援A型の報酬体系の見直し 【スコア方式による各項目の評価要素】 @労働時間…1日の平均労働時間 A生産活動…前年度および前々年度における生産活動収支の状況 B多様な働き方…次のような取組み内容への評価 ・免許および資格の取得の促進並びに検定の受験の勧奨に関する事項 ・当該就労継続支援A型事業所の利用者を、職員(利用者を除く)として登用する制度にかかわる試験等の手続、対象者の要件および採用時期に関する事項 ・在宅勤務にかかわる労働条件および服務規律に関する事項 ・フレックスタイム制にかかわる労働条件に関する事項 など C支援力向上…次のような取組み内容への評価 ・職員の研修に関する計画に基づく障害者雇用、障害者福祉その他障害者就労に関する外部研修会等の参加または外部講師による内部研修会の開催状況 ・外部研修会等への講師派遣、学会等での研究発表または実践報告の実施状況 ・障害者就労にかかわる先進的な取組みを行うほかの事業所等への視察もしくは実習への参加またはほかの事業所等からの視察等の受入状況 など D地域連携活動…地元企業と連携した高付加価値の商品開発や販売の取組みの有無、施設外就労による地域での働く場の確保等地域と連携した事業や取組みの有無  これにより、いままでは利用者の労働時間が基本報酬の算定に大きく影響していましたが、今後は「多様な働き方」、「地域との連携」など、より多角的に利用者の職場環境を整えていく必要が生じました。  こちらも就労継続支援B型同様、新たに試みられることとなった内容であるため、まだ課題は残されていますが、利用者の賃金の向上はあくまでも「労働環境の一側面」における改善であり、働きやすい環境、やりがいのある環境をつくるためには勤務時間の柔軟化や研修の機会の確保など、賃金以外の部分における改善も重要である、という方向性を示した改定内容であり、非常に大きな意義があると考えて います。  全5回にわたり、おつき合いくださいまして誠にありがとうございました。  現在、障害福祉サービスの現場は大きな転換期にあります。今後、サービスを利用する障害のある方にとって、よい方向に変化していけばよいなと願っております。 ※詳しくは厚生労働省ホームページ「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定について」をご覧ください  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00007.html 図:就労継続支援A 型の基本報酬等の見直し 出典:厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(令和3 年2 月4 日)」 【P20-25】 編集委員と行く 地域を耕す就労支援 〜埼玉県越谷市の就労支援ネットワークをともに訪ねて〜 越谷市障害者就労支援センター、特定非営利活動法人障害者の職場参加をすすめる会「職場参加ビューロー・世一緒」、株式会社クリタエイムデリカ、株式会社スマートFun(埼玉県) 埼玉県立大学教授 朝日雅也/須田涼太(障害当事者・求職者) 編集委員から  今回は、当コーナーを「編集委員〈と〉行く」と題し、あえて私の勤務先である「埼玉県立大学」の立地自治体が取り組む障害者雇用の現場を、障害のある当事者とともに訪ね、従来の「編集委員が行く」とはまた違う視点、切り口での取材を行った。 取材先データ 越谷市障害者就労支援センター 〒343-0023 埼玉県越谷市東越谷1-5-6 越谷市産業雇用支援センター3階 TEL 048-967-2422 FAX 048-967-2433 特定非営利活動法人障害者の職場参加をすすめる会「職場参加ビューロー・世一緒」 〒344-0023 埼玉県越谷市東越谷1-1-7 須賀ビル101 TEL&FAX 048-964-1819 株式会社クリタエイムデリカ 株式会社スマートFun 〒343-0025 埼玉県越谷市大沢3271 TEL 048-960-5151 FAX 048-964-5720 写真:官野貴 Keyword:市町村障害者就労支援センター、地域就労支援ネットワーク、地域を耕す、地域適応支援事業、職場参加 POINT 1 「編集委員“と”行く」で、新たな視点を切り拓く 2 障害のある人が働くための地域の土壌づくりとネットワーク 3 共生社会を楽しむための職場づくり  今回は、従来の本コーナーとは異なる視点を提供したい。一つは、あえて筆者の勤務先大学の立地自治体を訪ねること。もう一つは「編集委員と″sく」を実現すること。  筆者が勤務する埼玉県立大学の開学は、1999(平成11)年。立地自治体の越谷市については障害者就労支援を含め、「越谷市障がい者計画」の策定などにもかかわらせていただいてきた。しかし、開学から22年の経過のなかで取材先にはなっていなかった。地元すぎるための遠慮もあったが、垣間見てきた同市の障害者就労支援の取組みを全国にも発信したい……、そんな思いに駆られた。後者もかねてからの願い。障害のある当事者とともに現場を訪ねることで、われわれ編集委員とは、また違う切り口を提供してもらえるのではないか。本誌編集委員会での賛同も得て、長年の「夢」が実現することになった。 地域障害者就労支援の中核的拠点  初夏を思わせる日差しが爽やかな日に、越谷市障害者就労支援センターを訪れた。筆者の「夢」を一緒にかなえてくれるのが須田(すだ)涼太(りょうた)さん(25歳)。実は須田さんは、埼玉県立大学社会福祉子ども学科を卒業した社会福祉士だ。車いすを巧みに操作しながら学業に励んでいたころの姿が蘇る。先天性の血友病で身体障害者手帳の交付を受けている。卒業後、社会福祉法人に就職、障害者就労支援にもたずさわってきたが、体調管理のこともあり退職した。体調が落ち着いた現在は求職中の身でもある。在学中から印象的な彼の笑顔が、今回の取材の緊張感を和らげてくれる。  越谷市障害者就労支援センターは2005年に開設。埼玉県内に41カ所ある市町村障害者就労支援センターの一つ。地域の障害者就労支援の中核的拠点である。国の機関であるハローワーク越谷が設置されるのを機会に、同じ建物のなかに設置することが実現した。東武スカイツリーライン「越谷駅」東口から徒歩で10分程度の好立地。市役所からも5分。開設当初から越谷市は三つの団体に運営を委託してきた。2020(令和2)年10月から受託しているのがウェルビー株式会社。就労移行支援事業等を全国展開する民間企業だ。センター長の佐々木(ささき)裕美(ひろみ)さん、同社のマネージャー竹内(たけうち)恭子(きょうこ)さんが出迎えてくれた。  ハローワーク越谷が入るビルの3階にある同センター前の多目的スペースで、さっそく取組みについてうかがう。ほどなく同センターを所管する越谷市福祉部障害福祉課の斉藤(さいとう)秀樹(ひでき)さん、丸岡(まるおか)龍介(りゅうすけ)さんが合流。さらには、ハローワーク越谷から所長の茂木(もてぎ)悦子(えつこ)さん、求人・専門援助部門統括職業指導官の熊谷(くまがい)真貴子(まきこ)さん、就労支援コーディネーターの風間(かざま)美雪(みゆき)さんが3階へと上がって来てくださり、ディスタンスを取りながらも、さながら就労支援ネットワーク会議の一部分が実現。当事者である須田さんもすでにその主要メンバーの様相を醸(かも)し出す。 地域で連携しワンストップの就労支援へ  就労支援の「理念」から切り込む。センター業務を受託してまだ半年ではあるが、センター長の佐々木さんは「真心をこめたあきらめない支援で、明るい未来を応援!」とスローガンを力強く返す。2021年4月現在の登録者数は1156人。障害種別では、精神障害542人、知的障害423人、身体障害173人、その他18人。知的障害および発達障害を含む精神障害の割合が大きいのは、県内・全国の傾向とも一致する。登録者のうち就労者数は568人(内訳は、知的障害263人、精神障害220人、身体障害82人、その他3人)。約500人の定着支援を展開する。運営はすべて、常勤職員の4人体制でになう。  「あきらめない支援」について、佐々木さんはさらに「登録者の就労への向き合い方については、ときに本人が定めるハードルが低すぎることもあるし、逆に高すぎることもある」と分析。あきらめない支援を進めるためには、いったん「ハードル」を棚上げして、じっくり相談するというスタンスだ。そしてスローガンは、支援を積み重ねるなかで、バージョンアップしていきたいという。佐々木さんの強い思いが話の端々に滲(にじ)みでる。  越谷市は人口約34万5千人(2021年2月現在)、埼玉県内で第四位の中核市である。委託元である越谷市福祉部の斉藤さんも、プロポーザル方式(※)で民間事業所が受託した同センターの展開に期待を寄せる。今日の障害者雇用・就労の課題は、労働と福祉のアプローチを地域において、いかに統合できるかである。元来、基礎自治体の庁内には、障害者雇用そのものを直接取り扱う部署はない。ハローワークと就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、それだけでなく、障害福祉サービスを提供するすべての福祉分野をいかに結びつけていくのか。市町村行政の手腕が求められる。  今年度から5カ年で展開する「第5次越谷市障がい者計画」の基本理念は、「障がいのある人もない人も分け隔(へだ)てられることなく、ともに育ち、ともに働き、ともに暮らすことのできる地域社会」。斉藤さんはあらためて「分け隔てられることなくともに働くこと」の意義を強調するが、同市の障害者就労支援の基本コンセプトということであろう。中核市の政策としての重みが基本理念にも響きわたる。 ハローワークとの密接なチームワーク  ハローワーク越谷の専門援助部門は、1階にある。就労支援機関とこれだけ近い立地は珍しい。まさに「地の利」を活かしたチーム支援がおのずと形成される環境。「事業所への障害者法定雇用率の達成『指導』は、企業『支援』があってこそ」と統括職業指導官の熊谷さん。流通団地など比較的規模の大きな事業所もある反面、中小企業における雇用率達成への向き合い方が鍵を握る越谷市の障害者雇用促進。事業所と求職者を結びつけるきめ細かな支援が求められる。精神障害と発達障害に焦点化したトータルサポートもまた、効果的な支援手段。就労支援コーディネーターの風間さんは、豊富な支援経験を活かした地域就労支援のまさに調整役をになっている。  「ただちに職業紹介に結びつくのがむずかしい課題をもっている求職者に対しては、窓口での相談に時間がかかるのでは」との問いに、熊谷さんは「ニーズによっては適切に、より適合するサービスにつなげることが大事ですが、まずは本人のニーズと受けられるサービスとの擦(す)り合わせをするのも窓口として重要です」とキッパリ。ワンストップの窓口としてまずは求職者のニーズを受けとめ適切な紹介を行うこと。1階のハローワークの窓口と3階の障害者就労支援センター、双方のスタッフが階段を行き交い支援内容の相談をすることも少なくない。  熊谷さんのお話をうかがうなかで、須田さんから「実は在学中に、ハローワーク主催の障害学生支援のプログラムに参加したことがあるのです」との発言があった。そして、「学生時代から、将来の進路について相談できる機会があると展望が開けますよね」と続けた。  もう一つ、今回の取材で避けて通れないのが、新型コロナウイルス感染症による影響。支援対象者のなかには、自分だけがリモートワークを余儀なくされているのではないかと不安を持つ人もいる。コロナ禍にともなう雇用状況の悪化に対して、どう向き合っていくのか、就労支援センターの支援力がさらに試されていく。  再び佐々木さんへ、就労移行支援事業を展開する法人が、市の就労支援センターを受託することについて、ズバリうかがった。  「たしかに受託法人の性格上、自社の就労移行支援事業に誘導するのではないかと心配する向きもあります。しかしながらセンターの使命は就労支援の核となり、市内の事業所の特徴を活かすこと。ここでは、法人としての定着支援の経験を軸に、公共の就労支援の役割をさらに徹底していきたいです」  その思いを具体化するのが、市内七つの就労移行支援事業所から構成される協議体である「就労支援ネットワーク」。定期的な会合を持ち、まさにそれぞれの特色を提供し合いながら登録者の多様なニーズに向き合っていく仕組みといえる。まずは就労移行支援事業所間のネットワークを固めていくことも特徴の一つなのだろう。 越谷市固有の取組み「地域適応支援事業」  障害者が働くことについて、多様な支援策や企業の理解が進む半面、なお労働か福祉かに分断されがちな今日の状況。障害のある人を労働と福祉に単純に振り分けるのではなく、基盤となる土壌を整備していくことが強く求められている。そのための取組みとして特筆できるのが「地域適応支援事業」である。  前述の「第5次越谷市障がい者計画」においても、第5章「雇用・就労の確保」の筆頭「総合的な就労支援の充実」のための取組みとして「障害者就労支援センターの充実」が掲げられ、「障害者地域適応支援事業(職場参加・職場実習)など障がい者の適性にあった就労支援を行います」と明記されている。ここからも同事業が越谷市の障害者就労支援の重要な推進力であることがわかる。越谷市福祉部障害福祉課の丸岡さんが、詳しい資料を用いてあらためて同事業の概要を説明してくれた(表)。  同事業は2003年度から開始。20年近い積み重ねがある越谷市独自の事業だ。2007年度からは障害者就労支援センターの事業として位置づけられている。2020年度はコロナ禍の影響で実施されなかったが、直近の2019年度には、参加施設が8カ所、参加した障害者は21人にのぼる。実習先は公的機関が多く、越谷市役所本庁舎内はもとより、地域の出先機関、社会福祉協議会の受託事業所などが目立つ。ハローワーク越谷も受け入れ機関の一つ。民間事業所ではスーパーマーケットや寺院などもある。  障害のある人が公的機関や企業など実際の職場で実習を行うことで、就労のための準備や地域で暮らしていくための適応力をつけることを目的としている。雇用を前提とせず賃金も発生しないが、ただちには一般雇用がむずかしい障害者を対象にしているため、所属する施設の職員などの支援を受けながら働くこと、すなわち雇用の是非にかかわらず「職場に参加する」ことがエッセンスである。障害のある人のなかには、学生時代からアルバイトなどで雇用された経験はおろか、職場に「働き手」として一度も入ったことのない人も少なくない。同様に各事業所でも障害のある人を迎え入れたことのないところも多い。  「地域適応支援」というと、障害者が社会生活にかかわる技能を得て地域社会に適応するイメージが持たれがちだが、職場を含む地域もまた障害のある人が働くことに適応していくことを目ざす仕組みである。  この事業は、すぐには障害者雇用の芽は出ないかもしれないが、障害者が働くことを受け入れ、育むための開墾(かいこん)的なプログラムである。2020年度は前述の通り中止され、佐々木さんをはじめ、現在のセンター担当職員も未経験。白紙の段階からの挑戦ゆえ新しい視点も期待したい。 地域を耕すことを通じた新たな就労支援の展望  須田さんが、本日の取材で実現した「ネットワーク会議」をふり返る。  「これまでお話をうかがったなかで、特に現在求職者としての立場にいると、自分の生活を見つめ直すことの重要性を実感していますが、先ほどから、強調されている『伴走型』の支援のあり方は、当事者として本当にうれしいかぎりです。決めつけられるのも主体性がないし、何かあれば遠慮なく申し出てといわれても、本当に困ったときは、支援者に発信することがむずかしいのです。一緒に課題を確認しながらスモールステップで進んでいくことは、当事者としても安心で、展望も開けてくる気がします」  地域適応支援事業によって地域を耕してきた取組みをベースに、労働分野のみならず、福祉や教育、保健医療といった関係機関、それに企業や障害当事者も含めたネットワーク会議の設定が望まれるところである。伴走者は、必ずしも障害者が利用する機関や事業所の職員でなくてもよい。場合によっては、福祉事業所の職員が企業で働く障害者の伴走者になる。逆に企業の社員がアフター5に、福祉サービス利用者とも交流する。それが地域全体で支える就労支援でありともに働く街をつくる原動力になるのではないか。 「職場参加」で「働く」を広げる  昼食を挟んで障害者就労支援センター近くの「職場参加ビューロー・世一緒(よいしょ)」を訪ねる。「特定非営利活動法人障害者の職場参加をすすめる会」の本部が設置・運営するフリースペースだ。  同法人は、前述の越谷市「障害者地域適応支援事業」に積極的に協力しており、また、越谷市障害者就労支援センターの開設時から約10年間、市から運営を受託した経緯がある。就労支援センターの利用者に対する「ピアサポート(障害当事者同士の支援)による就労支援」を充実させたいと、仕事帰りや仕事のない日に立ち寄れる場として支援センター外に、同法人が独自に負担して開設した。「当番」をになう障害者のほとんどは、離職中か未就労の就労支援センター登録者で、さまざまなかかわり合いのなかで、働くことの基盤をつくり上げていく活動だ。  ピアサポートのほかに「世一緒」をベースとして独自の活動も展開してきた。その一つ「仕事発見ミッション」は、障害当事者だけで市内の職場を訪問、実習や見学などを依頼する活動。事業所の理解を得るまでは軋轢(あつれき)もあるが、それを乗り越えてかかわり合いを築くという「職場参加」の理念を具現化するプログラムである。水曜日にあたる取材日、同所で開催された「すいごごカフェ」のプログラムに遭遇することができた。この日は、障害者生活支援センターの本田(ほんだ)勲(いさお)さんからお話があった。かかわり合いを持って暮らしていくなかで、働くことの意義を実感する。適切な支援によるマッチングも重要であるが、それ以上に「関心を寄せ合うこと」、ときに主張の違いから「ぶつかり合うこと」、それでも同じ地域という土俵で経験を「分け合うこと」。「世一緒」の活動には、漠然としてはいるが深淵(しんえん)な問いかけがあるように感じられた。同法人は、障害者就労支援センターが開設される以前から地域適応支援事業の立ち上げや実践にかかわってきた。障害のある人を、まずは職場にいるべき存在として位置づける。もちろん本人の希望もあるし、職場側の条件もある。それらをひっくるめてかかわり合う。ここもまた地域の耕し場だ。 地域ネットワークの実践例を訪ねて  越谷市の障害者就労支援の仕組みを確認し、実際の企業の取組みを訪ねたい……そんな思いで「世一緒」を後にして向かったのが、株式会社クリタエイムデリカの特例子会社「株式会社スマートFun」。  搬送用のトラックが出入りする工場の脇を通り、クリタエイムデリカの本社事務所へ。車いす利用の須田さんの姿を見るやいなや手際よく社員のみなさんがサポートに動く。  1948(昭和23)年に越谷市の隣、草加市で製麺業として創業した同社は、1963年に現在の越谷の地に移転。2018年に70周年を迎えたばかりだ。コンビニエンスストアの店舗拡大とともに製麺から調理麺業へと発展。一日約10万食の製造も可能な食品メーカーである。ざる蕎麦、かき揚うどん、冷やし中華、クリームパスタなどなど、お馴染みの麺製品が並ぶ。経営理念は「誇りの持てる会社づくり」。この歴史と理念が障害者雇用の基盤のようだ。環境保全にも注力し、消費期限の延長によるフードロス削減などの商品開発の工夫などの取組みが、「令和2年度彩の国埼玉環境大賞奨励賞」を受賞するなど社会への視野が広い企業である。従来から障害者雇用にも積極的に取り組んできたが、2018年5月に設立したスマートFunは、障害者雇用に特化して翌年には特例子会社としての認定を受けた。  株式会社クリタエイムデリカ代表取締役社長で、株式会社スマートFun代表取締役の栗田(くりた)美和子(みわこ)さんは、「設立のきっかけはパラスポーツでした」と述懐。会社の名刺のほか、活動される東京中小企業家同友会で構成し、副会長を務める「パラスポーツ応援プロジェクト」のカラフルなもう一枚の名刺もいただいた。食品製造業はいくらでも仕事はある。よりよい職場環境を目ざし、埼玉県内では26番目の特例子会社をクリタエイムデリカと同じ敷地内に設置した。  親会社からの委託業務は社内洗浄業務、物流コンテナ洗浄、社内バッカン洗浄、工場内環境整備業務などである。従業員各自の特性に合わせて、仕事の切り出し、作業の洗い出しを図るのが特徴。会社名の「スマート」は、だれもが共生する社会(会社)になり、「Fun」は働く人たちと業務を委託する親会社との双方が笑顔になり、それぞれの従業員の幸せになるという思いが込められている。社名を説明するにあたり、栗田さんの笑顔がさらにほころんだ気がした。  現在、知的障害のある従業員が5人、障害のない従業員が2人。雇用管理の中核をなすのが主任の斎藤(さいとう)今日子(きょうこ)さん。特例子会社の前は教育部門を担当。当時は障害のある人の力を十分には認識しておらず、ポジティブなイメージが描けなかったと率直にふり返る。しかしながら、「知的障害のある社員は、斎藤さんの笑顔を見極め、必ず力を発揮してくれるはず」との栗田さんの見立ては的中した。企業在籍型の職場適応援助者の資格を取り、障害者雇用に先行する企業でも研修を受けるなどの積み重ねで、同社の障害者雇用の牽引力そのものとなっている斎藤さん。もちろん、仕事をするうえでの対応においては厳しい評価も欠かさない。食品製造業だけに「衛生観念の理解と行動」は絶対条件だ。障害特性を理解しつつ、このハードルと加齢にともなう体力低下に向き合っている。  斎藤さんの案内で、工場内の物流コンテナの洗浄部門へ。洗浄・乾燥は機械で行われるが、投入と搬出を障害のある社員がになう。背丈以上の高さのあるコンテナの積み上げ、たしかに体力を要する仕事である。障害のある社員は、工場を動かす欠くことのできない存在。汗をかき合い、働き合う関係性。「親会社では、そこまでの向き合い方は実現できませんでした」と栗田さん。そして、越谷市障害者就労支援センターの登録者の社員もいる。特別支援学校、就労移行支援事業所との連携、生活への介入のむずかしさを理解しつつ、関係機関・関係者との連携によって課題解決を図る斎藤さん。この職場もまた、地域のなかで人を育てるフィールドだ。 工場移転にともなう新たな障害者雇用の夢  クリタエイムデリカとスマートFunは、2022年に食品工業団地に移転し、社名も「デリモ」に変更する。エレベータ、オストメイト対応のトイレの設置などをはじめ、食品工業の「命」でもある床・排水面の改善も進める。  「親会社から仕事を受託するだけでなく、商品を売りたいです」と斎藤さんの夢は広がる。栗田さんも、「いずれは水耕栽培業務も取り入れて障害のある人の働く場をさらに拡大したいです」と熱く語る。現在の仕事の切り出しを超えて新たな仕事の創出である。きっと地域に障害者雇用・就労の大きな花を咲かせるに違いない。 取材を終えて  須田さんと今回の取材をふり返る。「障害者雇用を進めるためには、畑を開墾することが必要であり、そのうえで種を撒き、水をやる。ときに自然災害にやられることもあるが、その過程を当事者も支援者もともにすることが鍵だと思いました。たしかにたいへんなことも多いかもしれません。でも、一緒に汗をかきながら、その機会を放棄することなく向き合う必要性を実感しました」  須田さんの抱いた思いは、そのまま障害のある人とともに働き合うこと、そのための地域を育てていくことへの展望につながっている。そして「あらためて障害者就労支援の仕事の魅力を再認識しました。これからの求職活動の支柱にしていくつもりです」と語ってくれた。  地域を耕す就労支援が、一人の当事者の心をも揺さぶった。 ※プロポーザル方式:業務の委託先などを選定する際に、複数の者に目的物に対する企画を提案してもらい、そのなかから優れた提案を行った者を選定すること 表 越谷市障害者地域適応支援事業の概要 【2015年度〜2019年度の実施状況】 年度 参加施設数 公的機関 民間事業所 延べ 箇所 人数 箇所 人数 参加人数 2015年度 11 17 17 4 4 21 2016年度 11 17 18 4 4 22 2017年度 10 13 13 3 3 16 2018年度 10 17 17 2 3 20 2019年度 8 15 17 3 4 21 ※参加施設数は、実習生の派遣元の数、2020年度はコロナ禍のため実施せず 【2019年度実習内容一覧】 実習先 公的/民間 障がい種別 実習内容 1 障害者福祉センターこばと館 公的 知的 事業受付補助 2 障害者福祉センターこばと館 公的 知的 事務補助、事業準備作業 3 成年後見センター 公的 精神 シール貼り、ファイリング、切手の仕分け 4 安全衛生管理課 公的 知的 ラベルシール剥がし 5 青少年課 公的 知的 資材の封入作業 6 越谷公共職業安定所 公的 精神 郵便物の開封、押印 7 社協地域福祉課 公的 精神 イベント準備、受付補助、駐輪場整理 8 老人福祉センターくすのき荘 公的 知的 受付補助、カラオケ進行補助 9 社協生活支援課 公的 知的・身体 シュレッダー 10 清掃業者 民間 知的・身体 清掃 11 スーパーマーケット 民間 精神 カート回収 12 相談支援センターしらこばと 公的 知的 シュレッダー、切手の切り取り、清掃等 13 障害福祉課 公的 知的 押印、シュレッダー 14 障害者就労支援センター 公的 知的 シュレッダー 15 障害者就労支援センター 公的 知的 シュレッダー 16 寺院 民間 知的 シール貼り、手紙の三つ折り作業 17 寺院 民間 知的 シール貼り、手紙の三つ折り作業 18 契約課 公的 知的 通知文書封入作業 19 シルバー人材センター 公的 知的 シュレッダー 20 生涯学習課 公的 精神 ポスター丸め 21 男女共同参画支援センター 公的 精神 図書整理、PC入力、ラベル貼り 出典:越谷市福祉部障害福祉課提供資料より著者改編 写真のキャプション 須田涼太さん ハローワーク越谷求人・専門援助部門統括職業指導官の熊谷真貴子さん 越谷市福祉部障害福祉課の斉藤秀樹さん(左)、丸岡龍介さん(右) 越谷市障害者就労支援センター長の佐々木裕美さん ハローワーク、障害者就労支援センターが入る越谷市産業雇用支援センター 株式会社スマートFunが入る株式会社クリタエイムデリカ本社工場 職場参加ビューロー・世一緒 地域適応支援事業所での様子(写真提供:特定非営利活動法人職場参加をすすめる会) 工場内や物流で使用されるコンテナの洗浄作業 主任の斎藤今日子さん 株式会社クリタエイムデリカ代表取締役社長、株式会社スマートFun代表取締役の栗田美和子さん 【P26-27】 省庁だより 令和3年度 障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 1 障害福祉サービス等の確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進 2兆2131億円(2兆1198億円) ○障害福祉サービス等の確保、地域生活支援等 1 良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保 @障害児・障害者に対する良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保 1兆6789億円(1兆5842億円)うち障害児支援関係3835億円(3420億円)  障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスや障害児支援を総合的に確保する。 A障害福祉サービス等報酬改定への対応  福祉・介護職員の人材確保・処遇改善にも配慮しつつ、感染症等への対応力強化等を踏まえ、改定率は全体で+0.56%とする。 ※うち、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価を+0.05%(令和3年9月末までの間)とする。 (改定の基本的な方向性) 1 障害者の重度化・高齢化を踏まえた障害者の地域移行・地域生活の支援、質の高い相談支援を提供するための報酬体系の見直し等 2 効果的な就労支援や障害児者のニーズを踏まえたきめ細やかな対応 3 医療的ケア児への支援などの障害児支援の推進 4 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの推進 5 感染症や災害への対応力の強化等 6 障害福祉サービス等の持続可能性の確保と適切なサービス提供 2 地域生活支援事業等の拡充【一部新規】 513億円(505億円)  障害者の理解促進や意思疎通支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じ、事業の拡充を図る。 3 障害福祉サービス等提供体制の基盤整備(社会福祉施設等施設整備費) 48億円(68億円)  障害者等の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、就労移行支援事業等を行う日中活動系事業所やグループホーム、障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備を促進する。 (参考) 社会福祉施設等施設整備費補助金(障害者支援施設等における耐震化整備等支援事業) (令和2年度3次補正予算案82億円の内数)  障害福祉サービス施設等の防災・減災対策を講じるための施設整備(耐震化整備、ブロック塀等改修、非常用自家発電設備の整備、浸水被害等に備えた改修等)に要する費用を補助するとともに、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、多床室の個室化に要する改修等の経費について補助する。 4 障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供 2587億円(2604億円)  心身の障害の状態を軽減し、自立した日常生活等を営むために必要な自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)や障害児入所施設等を利用する者に対する医療を提供する。また、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討する。 5 特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1749億円(1724億円)  特別児童扶養手当及び特別障害者手当等の支給を行う。 6 障害福祉の仕事の魅力発信15百万円(15百万円)及び地域生活支援事業等の内数  障害福祉分野における多様な人材の参入を促進するため、障害福祉の仕事の魅力を伝えるパンフレットや動画等を活用した広報を行うとともに、地域の関係機関等と連携し、障害福祉の現場を知るための体験型イベント等の開催を行う。 7 障害児・障害者虐待防止、権利擁護などに関する総合的な施策の推進 @障害者虐待防止の推進 6・2億円(6・1億円)  都道府県や市町村で障害児・障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、専門性の高い職員の確保や「虐待対応専門職チーム」の活用促進等を行うとともに、地域の関係機関の協力体制の整備、関係機関職員への研修の受講対象者の拡大、障害児・障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制の強化を図る。 A障害児・障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 12百万円(12百万円)  国において、障害児・障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修等を実施する。 B成年後見制度の利用促進のための体制整備 地域生活支援事業等の内数  成年後見制度の利用に要する費用の補助や法人後見に対する支援等を推進することにより、成年後見制度の利用を促進する。 8 重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 8・9億円(8・9億円)  重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行う。 9 障害児支援の推進 @医療的ケア児への支援の拡充【一部新規】 2・2億円(1・4億円)及び43百万円(54百万円)  地域において、医療的ケア児を受け入れる体制を促進するため、医療的ケア児等コーディネーターの配置を拡充し、相談体制の整備を進めるとともに、医療的ケア児等への支援者の養成、地域で関係者が協議を行う場の設置、医療的ケア児等に対応する看護職員確保のための体制構築、医療的ケア児等の家族への支援を行うなど、総合的な支援を実施する。 A聴覚障害児支援の推進 聴覚障害児支援のための中核機能の強化 1・7億円(1・7億円)  保健・医療・福祉・教育の連携強化のための協議会の設置や保護者に対する相談支援、人工内耳・補聴器・手話の情報等の適切な情報提供、聴覚障害児の通う学校等への巡回支援、障害福祉サービス事業所等への研修などを行う聴覚障害児支援のための中核機能の整備を図る。 10 教育と福祉の連携の推進 地域生活支援事業等の内数  市町村内における家庭・教育・福祉の連携促進及び地域支援対応力の向上を図るため、教育委員会や福祉部局、学校、障害児通所支援事業所等の関係者が障害児への切れ目ない支援について協議を行う場の設置や福祉機関と教育機関等との連携の役割を担う「地域連携推進マネジャー」を市町村に配置する。 11 障害者施策に関する調査・研究の推進 4億円(4億円)  障害者施策全般にわたり解決すべき課題について、現状と課題を科学的に検証・分析し、その結果を政策に反映させていくため、調査・研究等への補助を行う。 ○障害児・障害者の自立及び社会参加の支援等 1 芸術文化活動の支援の推進【一部新規】 4・6億円(4・1億円)  障害者文化芸術活動推進法を踏まえ、芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)を通した障害者の社会参加を一層推進するため、地域における障害者の芸術文化活動への支援のための都道府県センターの設置促進や障害者芸術・文化祭を開催する。 2 障害者自立支援機器の開発の促進 1・2億円(1・2億円)  障害者自立支援機器の実用的な製品化を促進するため、企業のシーズと障害者のニーズとのマッチング強化や機器の開発企業に対する支援を実施する。 3 視覚障害者・聴覚障害者等への情報・意思疎通支援の推進【一部新規】 4・2億円(3・7億円)  令和2年7月に策定された読書バリアフリー基本計画を踏まえ、視覚障害者等が読書に親しめる環境を整備するため、インターネットを活用した点訳・音声図書の提供等を推進する。  また、令和2年6月に公布された電話リレーサービス法を踏まえ、公共インフラとして着実な実施を図るため、手話通訳者等の養成の推進や、新しい手話表現の普及などの取組を促進する。 2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策、依存症の推進 222億円(223億円)(※地域生活支援事業計上分を除く) 1 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築【一部新規】 7・2億円(6・4億円)  精神障害者が地域の一員として安心して自分らしく暮らせるよう、住まいの確保支援を含めた精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。このため、障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、精神科病院、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築し、地域の課題を共有した上で、地域包括ケアシステムの構築に資する取組を行う。  また、精神疾患の予防や早期介入を図る観点から、メンタルヘルス・ファーストエイドの考え方に基づいた「心のサポーター養成事業」を実施し、メンタルヘルスやうつ病、摂食障害などの精神疾患に対する理解の促進及び地域や職場での支援を受けられる体制確保を推進する。 2 精神科救急医療体制の整備 17億円(17億円)  地域で生活する精神障害者の病状の急変時において、早期に対応が可能な医療体制及び精神科救急情報センターの相談体制を確保するため、引き続き地域の実情に応じた精神科救急医療体制を整備する。  また、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。 3 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 187億円(190億円)  心神喪失者等医療観察法に基づく医療を円滑に行うため、引き続き指定入院医療機関を整備し、地域偏在の解消を進める。  また、指定医療機関の医療従事者等を対象とした研修や指定医療機関相互の技術交流等により、更なる医療の質の向上を図る。 4 アルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル等依存症対策等の推進 @依存症対策の推進 9・4億円(9・3億円)  アルコール、薬物、ギャンブル等依存症をはじめとする依存症患者やその家族等が適切な治療や必要な支援を受けられるよう、全国拠点機関において、依存症対策に携わる人材の養成や情報発信等に取り組む。  都道府県等において、依存症の治療・相談支援等を担う人材育成、依存症相談拠点、依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関の選定・設置を行うことにより、依存症相談支援・治療体制、各地域における包括的な連携協力体制の整備等を推進する。また、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。  さらに、相談支援や普及啓発等に全国規模で取り組む民間団体の支援や依存症の実態を把握するための調査を実施するとともに、広く国民一般を対象に依存症の正しい理解を広めるための普及啓発を実施する。 Aアルコール健康障害対策の推進 19百万円(17百万円)  アルコール健康障害対策基本法及びアルコール健康障害対策推進基本計画に基づき、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及及びアルコール健康障害に関する予防及び相談から治療、回復支援に至る切れ目のない支援体制の整備を推進する。 5 てんかんの地域診療連携体制の整備 18百万円(15百万円)  てんかんの治療を専門的に行っている医療機関を「てんかん診療拠点機関」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各診療拠点機関で集積された知見の評価・検討を行うため「てんかん診療全国拠点機関」を設け、てんかんの診療連携体制を整備する。 6 摂食障害治療体制の整備 19百万円(12百万円)  摂食障害の治療を専門的に行っている医療機関を「摂食障害治療支援センター」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援センターで集積された知見の評価・検討を行うため「摂食障害全国基幹センター」を設け、摂食障害の診療連携体制を整備する。 7 こころの健康づくり対策等の推進 76百万円(70百万円)及び地域生活支援事業等の内数  うつ病などの精神疾患を有する方への早期の専門的対応を充実するため、かかりつけ医や精神保健福祉関係者への研修を実施するほか、うつ病などの治療で有効な認知行動療法の研修を実施し、治療の質の向上を図る。 ※( )内は令和2年度予算額 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 【P28-29】 研究開発レポート 記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介 障害者職業総合センター職業センター  障害者職業総合センター職業センターでは、休職中の高次脳機能障害者を対象とした職場復帰支援プログラムと、就職を目ざす高次脳機能障害者を対象とした就職支援プログラムの実施を通じ、障害特性や事業主ニーズに対応した先駆的な職業リハビリテーション技法の開発に取り組んでいます。  高次脳機能障害者の就労支援において、記憶障害にかかわる問題は取り組む必要性が高いといえます。職業センターでは、このたび、記憶のメカニズムや内的・外的な補完手段の学習を含む包括的な構成が特長の「記憶障害に対する学習カリキュラム」の開発を行いました。この学習カリキュラムは、オーストラリアで開発された記憶障害に対する学習カリキュラム「Making the Most of Your Memory」と、これに基づく医療機関Epworth Health Careにおける実践をもとに、職業センターがこれまでに開発した教材も活用して国内向けに作成したものです。学習カリキュラムの内容や試行実施の状況は、2020(令和2)年度末に、実践報告書38「記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介」に取りまとめました。以下にその概要を紹介します。 ●学習カリキュラムの構成  このカリキュラムは、1回120分、全6回のセッションで構成されます。全6回のうち、第1回〜第5回の各セッションは、「講義」、「記憶の補完手段」、「記憶に良い生活習慣」の三つのテーマで構成されます。第6回は第1回〜第5回の復習です。  「講義」は、記憶のメカニズムや脳の構造、ストレスが記憶に与える影響など記憶にかかわる知識を付与する心理教育的な内容です。「記憶の補完手段」では、記憶機能を補うための内的ストラテジー(※1)および外的補助具(※2)の紹介を行います。カリキュラムを通じて7種の内的ストラテジーと16種の外的補助具を扱います。「記憶に良い生活習慣」では、記憶機能に影響を与える睡眠や食事、運動といった生活習慣に関する工夫を学びます。さらに、各セッションには、学んだ知識や補完手段を実際の行動に反映させるための「練習」や訓練場面外で行う「宿題」が含まれます。また、受講者同士の「意見交換」や、具体的な場面での対処方法を検討する「今後の対策」というコーナーもあります。これらの要素がセッションの各回に混在する包括的な構成がこのカリキュラムの特長です(図1)。カリキュラムでは、さまざまな知識を学び、セッションのなかで練習を行い、自分の生活に関連した行動に反映させることを目ざしており、この包括的なアプローチが、個人の特性や生活環境によって異なる記憶障害に対するリハビリテーションとして有効であるとされます。 ●実施方法 @受講者・グループ規模  職業センターでは、記憶障害の診断の有無にかかわらず学習カリキュラムへの参加を希望した受講者を対象に、1グループ最大5人のグループワークとして実施しました。 A支援者  各セッションは、進行役、板書役、個別のサポート役の3人で進行しました。 B頻度・時間  試行実施では、週1回、全6セッションを6週間連続で実施しました。また、グループワークで行うセッションのほかに個別相談を週1回行い、セッションのふり返りや不明点の確認、学んだ補完手段の活用方法などについて相談しました。  1回120分のセッションのうち、半ばほどに休憩を取り(5〜10分程度)、そのほかに緊張をほぐして集中力を維持するために1〜2回ほど軽いストレッチの時間を設けました。 Cセッションの教材  セッションごとにパワーポイントで作成した教材のスライドを上映し、受講者にはスライドを印刷した資料を配付しました。図2は教材の一部例です。なお、実践報告書の巻末にはカリキュラムで使用する教材を収録した記録メディアを添付しています。 ●学習カリキュラムの効果  学習カリキュラムの効果測定について、客観的指標として日本版リバーミード行動記憶検査を、主観的指標として記憶の補完手段の利用状況等を把握するアンケート調査を受講者に対して実施しました。測定結果について、日本版リバーミード行動記憶検査では、学習カリキュラムの受講前後において検査得点の差は見られませんでした。一方、アンケート調査では、補完手段の利用頻度、使いやすさおよび効果に対する認識が受講者のなかで向上し、また、記憶障害に対する自己認識についても自己評価や理解度の向上が見られました。「スマートフォンを記憶の道具として使用したい」、「自分に合った方法でリマインダーを活用したい。名前を覚えるのが苦手なので関連づけで覚えるようにしたい」、「物を落としてしまうことがあったが、対処がわかった」といった感想があり、学習カリキュラムの多くの情報のなかから、受講者それぞれが自分に合った効用を実感した様子がうかがえました。また、実際の日常生活のなかでも、手帳などの紙媒体の外的補助具しか使っていなかった受講者が、スマートフォンの使用に新たに取り組む、補完手段として写真を使ってみるといった様子が見られました。カリキュラムに対する満足度も高く、すべての受講者が「このカリキュラムは記憶の向上に役立っている」と答えました。 ●まとめと課題  今回の試行実施を通じて、学習カリキュラムには補完手段の活用や記憶障害に対する自己理解を促進する効果があるとうかがえました。「講義」にあわせ「練習」や「宿題」といった訓練場面内外の実体験により補完手段の有効性を確認できること、また、多様なメニューがあるなかで自分が行いやすい補完手段等を選べる構成が有効であったと考えられます。また、小集団形式で実施することにより、当事者同士の意見交換のなかで動機づけが高まったり、ほかの受講者が補完手段を具体的に活用する場面を見る観察学習ができたことも効果を生む要因となったようです。ただし、客観的指標である神経心理学的検査においては記憶機能の明確な変化はなく、また、試行事例は小規模であり、確認された効果が長期にわたって維持されるかどうかについても、今後のさらなる検証が必要です。そのほか、この学習カリキュラムは1回120分のセッションが6回にわたり、情報量も多く、受講者や支援者にとって実施の負荷が比較的高いものとなっています。職業センターではカリキュラムの構成要素のモジュール化を行っており、試行実施後の実践のなかでは1回のセッションを二つに分けるなど柔軟に運営を変更しています。セッションを小分けにして実施する、必要なモジュールをピックアップして実施する、練習や宿題の内容を変更するなど、受講者や支援機関の状況、活用目的などにより適宜アレンジして活用を検討いただければ幸いです。  実践報告書38「記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介」は、障害者職業総合センター研究部門のホームページに掲載しています(★1)。また、冊子の配付を希望される場合は、下記にご連絡ください(★2) ※1 内的ストラテジー:言語的関連づけや視覚イメージの活用など、情報を覚えやすく、思い出しやすくするためのいわゆる記憶術といったもので、「内的戦略」、「内的対処手段」などと同義 ※2 外的補助具:メモリーノートやスマートフォンなどの道具を用いて記憶を補う方法で、「外的補助手段」、「外的記憶装置」などと同義 ★1 「実践報告書38」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/practice38.htmlよりダウンロードできます。また、今号の14ページでも紹介しています ★2 障害者職業総合センター 職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/center.html 図1 学習カリキュラムの構成 図2 教材の一部(例) 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長の公募  厚生労働省は、「独立行政法人等の役員人事に関する当面の対応方針について」(平成21年9月29日閣議決定)に基づき、公正で透明な人事を確保する観点から、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の理事長の公募を実施する。  詳細は左記サイトへ。  https://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/dokuhou.html 農林水産省 就農による障害者社会参画で協定締結  農林水産省は、障害者の就農を通じて社会参画をうながす「農福連携」の推進に向けて、全国農業協同組合中央会(JA全中)などと協定を結んだ。取組みの認知度の向上や、障害者が働きやすい環境の整備に関して協力を強め、参加する農家などの拡大を目ざす。  協定は農林水産省とJA全中、福祉事業者らでつくる日本農福連携協会の3者で締結。農家や障害者施設のニーズや、成功事例の情報共有を強化するほか、普及に向けたシンポジウムを共同で開催することなどを検討する。 生活情報 富山 障害者と高齢者の共生型デイサービス  知的障害者と高齢者がともに過ごす共生型デイサービス事業所「ぴーすあけぼの」が、小矢部市内に完成した。「社会福祉法人手をつなぐとなみ野」が運営する。同法人は、地元周辺で13カ所の知的障害者らの福祉作業所やグループホームを運営。利用者の高齢化に合わせ今回、共生型施設を設立した。  事業所は木造2階建て延べ660u。障害者と高齢者が通い、入浴や食事、レクリエーションなどを同じ空間で行う。大会議室は、災害時に約30人が過ごせる福祉避難所となる。2階には知的障害のある男性6人が入居するグループホームを併設した。 静岡 防災学ぶ「点字付きすごろく」  「NPO法人みらいネット浜松」(浜松市)が、防災について学べる「点字付きすごろく」を制作した。地震や台風などの発生時に支援が必要な「災害弱者」になりやすい視覚障害者に、遊びながら防災意識を高めてもらう。  2014(平成26)年に開発された「防災すごろく」は、ヘルメットや救急セットなど防災に役立つアイテムカードを集めながら、学校や施設で集団被災した場合と、一人でいるときに被災した場合のどちらかのコースを進んでゴールを目ざすという内容。今回制作された「点字付きすごろく」は、同市内の「NPO法人六星(ろくせい)」に点訳してもらい、台紙とアイテムカードに点字が刻まれた透明テープを貼った。すでに全国の特別支援学校などから購入希望が相次いでいるという。問合せは、みらいネット浜松事務局へ。  電話:053−570−8696 京都 「透明マスク」でコミュニケーション聴覚障害者らが開発  聴覚障害者や支援団体でつくる「あやべネットワーク」(綾部市)と、「住友理工株式会社」(愛知県)グループが共同で、口元が見える「透明マスク」を開発した。900枚を京都府内の関係機関窓口や、全国の聴覚障害者団体などに配布し、透明なマスクの普及を目ざす。  コロナ禍でマスク着用が一般化し、口の動きや表情が見えず、聴覚障害者はコミュニケーションが取りづらくなっている。そのため、あやべネットワークが、同社や「住友理工ホーステックス株式会社」(綾部市)の助成金事業に応募し、新たなマスクの開発を進めてきた。透明フィルムで鼻周りも含めて覆う構造となっており、前面のフィルムは曇らないよう工夫されている。あご付近には不織布を使い、呼吸しやすくなっている。 岡山 音声で生活情報提供  フリーペーパー『さりお』を発行する「山陽リビングメディア株式会社」(岡山市)と、「岡山放送株式会社」(岡山市)は、視覚障害者に音声の生活情報を届けようと、岡山県視覚障害者センター(岡山市)に同紙記事を音声データにして提供する取組みを始めた。  週1回発行される『さりお』から、コラムや料理レシピなどの記事を毎月3本程度選び、アナウンサーが読み上げた音声データを提供し、同センターがCDに収め、希望者や県立図書館、岡山市立図書館、倉敷市立図書館などに配る。 働く 京都 障害者が選別した厳選豆を使うカフェがオープン  障害者による接客を目ざすカフェ「フォーライフカフェ」が、宇治市植物公園内にオープンした。運営する「NPO法人京都フォーライフ」(久世郡久御山町)ではこれまで、「葉山コーヒー株式会社」(神奈川県)から仕入れた豆を障害のある従業員が選別し、通信販売などで販売してきた。  カフェの店内は22席、自家焙煎の豆を使う「フォーライフコーヒー」は380円(税込)から。ケーキセットや豆も販売する。徐々に障害のあるスタッフを増やし4〜5人が働く予定。地元の福祉施設・授産施設で障害者がつくる菓子などの販売も考えている。  営業時間は10時〜16時。公園と同じ月曜日が休み。問合せは、京都フォーライフへ。  電話:0774−66−3301 愛媛 カフェに障害者アート  障害者のアート作品を発表できる場として、伊予郡松前町(まさきちょう)で障害者就労支援事業所を運営する「NPO法人インクルーシヴ・ジャパン」と「凸版印刷株式会社」(東京都)が、松山市内にカフェ「ART CAFE Inclusive supported by NESCAFE」をオープンした。広さ約80uで、内装のデザインや施工は凸版印刷が手がけた。コーヒーマシンやコーヒーは「ネスレ日本株式会社」(兵庫県)が提供する。  インクルーシヴ・ジャパンが運営する就労支援事業所には、身体や知的、精神などさまざまな障害のある約60人が通所。絵画やししゅう、アクセサリーなどの作品をつくっている。カフェは現在、利用者を通所者や家族らに限定しているが、今後は一般開放して展覧会やワークショップを企画し、障害者アートに親しめる場を目ざす。インクルーシヴ・ジャパンと凸版印刷は今後、障害者アートをデジタルアーカイブ化し、企業にアート作品を活用してもらえるよう取り組んでいく。 ミニコラム 第3回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員と行く」(20〜25ページ)も朝日委員が執筆しています。  ご一読ください。 ともに働き合うことの実感を 埼玉県立大学教授 朝日雅也  「当社では障害のある方に一生懸命働いていただいています」……事業所訪問や記事のなかでよくうかがうコメントです。内容自体は有難いことですが、気になるのが「いただいています」。取材者側が障害者雇用を推進する立場であると、ついそのような表現になる背景も推察されます。  しかしながら、当該の障害のある人は「雇用」されている従業員であり、雇用契約に基づいて労働を提供している存在です。もちろん、そのような趣旨ではないと思いますが、社会の側がお願いして働かせていただいているわけではないことは、いうまでもありません。  障害者雇用率が連続して上昇する一方で、量的な側面のみならず、その質の確保・向上が一層問われています。その際の鍵は「ともに働き合う職場」の実現です。  障害についての「配慮」からていねいな表現になりがちのところもあるかと思いますが、それは取材時における顔写真の掲載などを含む個人情報の提供などの取扱いにもかかわってきます。これらについて、障害を理由として特別に「配慮」すること自体、ともに働き合う社会から障害のある人を遠ざけてしまうことになってしまうからです。  重要なのは、障害の有無にかかわらず当たり前に一緒に働き、そこでは障害の有無についてあらためて意識する必要のない職業世界を実現することです。当誌の趣旨に照らせば、もちろん「障害」に焦点を当てることは当然の使命ですが、この考え方に変わりはないはずです。  「当社では障害のある従業員が適切に持ちうる力を発揮しています」……当たり前の表現が通用する成熟した社会を目ざしたいものです。 【P32】 掲示板 受講者募集! 受講料無料 職業リハビリテーションに関する各種研修のご案内 訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 ◆訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修(第3回)  訪問型または企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)として1年以上の実務経験を有する方に対して、雇用管理やアセスメントに関する支援スキルの向上を図る研修を実施します。  講義・演習に加え、ケーススタディ、グループワーク、アクションプランの作成等実践的な内容が特長です。 ◆日程および会場  【第3回】<幕張会場> ※全国からお申し込みいただけます。  日程:令和3年10月12日(火)〜10月15日(金)  会場:障害者職業総合センター(千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3) ◆申込受付期間  令和3年7月20日(火)〜8月27日(金) ◆お申込み先  当機構ホームページに受講申込書および申込方法を掲載しています。 ◆お問合せ先  職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail : stgrp@jeed.go.jp 職場適応援助者(ジョブコーチ) ステップ1 ジョブコーチをめざす方 職場適応援助者養成研修 ジョブコーチ支援を行う際に必要な知識・技術の習得 障害者職業総合センター 全国の地域障害者職業センター ステップ2 ジョブコーチの実務経験のある方 職場適応援助者支援スキル向上研修 ジョブコーチとしての支援スキルの向上 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 「働く広場」読者アンケートにご協力ください。  本号に同封した「読者アンケート」用紙にご記入のうえ、当機構までFAXにてお寄せください。当機構ホームページからの回答も可能です。 ※カメラで読み取ったリンク先が、https://krs.bz/jeed/m/hiroba_enqueteであることをご確認のうえアクセスしてください。 次号予告 ●私のひとこと  ひきこもり当事者などを対象としたITスキル講座の運営や、スマートフォンアプリの開発などを行う株式会社ウチらめっちゃ細かいんで代表取締役社長の佐藤啓さんに、創業への経緯や想い、在宅雇用などについてご執筆いただきます。 ●職場ルポ  全国で自動車部品の検査・選別などを行う株式会社グリーンテック(愛知県)を取材。障害者専門部署を設置し、積極的に障害者雇用を進める同社の工夫や取組みについてお聞きします。 ●グラビア  東急株式会社の特例子会社株式会社東急ウィル(神奈川県)を取材。障害のある従業員が、清掃業務やクリーニング業務で活躍する姿をご紹介します。 ●編集委員が行く  樋口克己編集委員が、大分県の大分キヤノン株式会社と、キヤノンウィンド株式会社での就労について取材します。 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社廣済堂までご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部次長 五十嵐意和保 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社 廣済堂 〒105−8318 港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 7月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和3年6月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【P33】 「障害者雇用事例リファレンスサービス」を活用して 本誌「働く広場」の掲載記事が探せます! 障害者雇用を考えたいけれど、ほかの企業ではどんな取組みをしているんだろう? 「障害者雇用事例リファレンスサービス」をご活用ください! 障害者雇用事例リファレンスサービスとは  障害者雇用について創意工夫を行い、積極的に取り組んでいる企業の事例や、合理的配慮の提供に関する事例を紹介する当機構のウェブサイトです。 https://www.ref.jeed.go.jp/ アクセスはこちら! ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.ref.jeed.go.jp/であることを確認のうえアクセスしてください。 「働く広場」掲載記事の検索 「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、「働く広場」に掲載している「職場ルポ」、「編集委員が行く」の企業等取材記事 (※)を検索・確認することができます。 ※障害者雇用に取り組む企業の事例について、同サイトへの掲載許可が得られた記事に限ります。 検索方法 1 「働く広場」の記事検索をする場合は、「モデル事例」をチェックしてください。 2 検索条件で、「働く広場」にチェックし、「業種」「障害種別」「従業員規模」「フリーワード」等の条件を設定して検索ボタンをクリックすることで、探したい記事をピックアップできます。 3 クリックすると、該当企業の事例ページが表示されます。 4 該当記事のPDFファイルにアクセスできます。 当機構ホームページでも記事検索ができます! 「働く広場」の掲載記事については、「障害者雇用事例リファレンスサービス」で検索できるほか、当機構ホームページにて、バックナンバー(過去4 年分)の記事索引の閲覧や、「グラビア」、「クローズアップ」などのコーナーも記事検索ができます。どうぞご利用ください。 記事索引画面 ■「働く広場」に関するお問合せ 企画部 情報公開広報課 TEL:043-213-6200 FAX:043-213-6556 ■「障害者雇用事例リファレンスサービス」に関するお問合せ 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 FAX:043-297-9547 【裏表紙】 7月号 令和3年6月25日発行 通巻525号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)