【表紙】 令和3年11月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第530号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2021/12 No.530 職場ルポ 研修や人事制度改革で「社員が主体の会社」を目ざす SMBCグリーンサービス株式会社(千葉県) グラビア 多能工化でキャリアアップも。長く働ける職場へ 株式会社ダスキンプロダクト西関東(東京都) 編集委員が行く 協同労働という働き方 日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会(東京都) この人を訪ねて パラスポーツの祭典を終えて トヨタループス株式会社、柔道選手 半谷静香さん 「みんなでレッツクッキング!」島根県・赤江(あかえ)由衣(ゆい)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 12月号 【前頁】 心のアート 人間とケモノ 武富龍太郎 画材:画用紙、色鉛筆/サイズ:70cm×55cm 「生と死」を抱いて  彼の頭のなかには、どれだけのアイデアが詰めこまれているのだろう?  図鑑を参考にしたり、好きな画家に影響されたりしながら、いくつもの異なるシリーズを同時に進め、創作している。すべての作品の根底にあるのは「生と死」というテーマだろうか。  これまで各コンクールへの出品や、個展の開催などを行っている。 (文:TASCぎふ) 武富 龍太郎(たけとみ りゅうたろう) 2000(平成12)年生まれ。岐阜県各務原(かかみがはら)市在住。自閉症がある。 ●経歴 2017年 「岐阜県青少年美術展」(岐阜県美術館)入選・岐阜県美術館館長賞・ナンヤローネ賞受賞 2018年 「武富龍太郎 展」(KAKAMIGAHARA STAND/ 各務原市) 2019年 「tomoni アートのフェスティバル 花さき、誇れ!」(ぎふ清流文化プラザ)「骨格とホネ 金丸慎+武富龍太郎 二人展」(ぎふ清流文化プラザ) 他 協力:TASCぎふ(岐阜県障がい者芸術文化支援センター) 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2021年12月号 NO.530 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 人間とケモノ 作者:武富 龍太郎 この人を訪ねて 2 パラスポーツの祭典を終えて トヨタループス株式会社、柔道選手 半谷静香さん 職場ルポ 4 研修や人事制度改革で「社員が主体の会社」を目ざす SMBCグリーンサービス株式会社(千葉県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 コロナ禍を乗り越えて〜新しい働き方を問う〜 最終回 JEEDインフォメーション 12 障害者雇用を進める事業主のみなさまへ 就労支援機器をご活用ください!/障害者雇用のためのマニュアル・好事例集などのごあんない/令和3年度 職業リハビリテーションに関する研修のご案内 グラビア 15 多能工化でキャリアアップも。長く働ける職場へ 株式会社ダスキンプロダクト西関東(東京都) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 配慮は人のためならず 最終回 株式会社Ds'sメンタルヘルス・ラボ 代表取締役(精神科医・産業医) 原 雄二郎 編集委員が行く 20 協同労働という働き方 日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会(東京都) 編集委員 松爲信雄 省庁だより 26 令和3年版 障害者白書概要A 内閣府ホームページより抜粋 研究開発レポート 28 「企業と地域関係機関・職種の連携による難病患者の就職・職場定着支援の実態と課題」の概要 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 令和3年度就業支援スキル向上研修のご案内 表紙絵の説明 「コロナ禍でも行事を楽しんでいる子どもたちや、保育士さんが『こうやるんですよ』と教えている様子が伝わるように描きました。同じように見える色でも、輪郭や影に気をつけて描きました。細かいボタンや三角巾の柄など、見たままに描けて満足しています。最近は、お願いされたポスターの絵なども楽しんで描いています。職場の絵は任せてください!」 (令和3年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-3】 この人を訪ねて パラスポーツの祭典を終えて トヨタループス株式会社、柔道選手 半谷静香さん はんがい しずか 1988(昭和63)年、福島県いわき市生まれ。網膜色素変性症で生まれつき弱視。中学から柔道を始める。筑波技術大学保健科学部保健学科に入学後、2009(平成21)年全日本視覚障害者柔道大会に出場して優勝。2010年に初めて国際大会に出場し48s級7位入賞。パラリンピックは2012年ロンドン大会52s級7位、2016年リオ大会48s級5位。2018年IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)世界大会3位。2020年10月トヨタループス株式会社入社。2021年パラリンピック東京大会48kg級で5位入賞を果たした。 3回目のパラスポーツの祭典へ ――半谷さんは今年の東京パラ五輪で柔道48s級種目に出場し、惜しくも3位決定戦で敗れ5位入賞でした。大会をふり返っていかがですか。  昨年に大会延期が決まった後、試合に向けて準備を続けていたのですが、今回は過去に出場した2大会に比べてコンディションがよかったと思います。ただ初戦は唯一これまで対戦したことのない相手で、想定していた状態に持っていけませんでした。相手を見失わない工夫も積み重ねてきたのですが、試合では課題だった引き手の使い方が思い通りにいかず、自分の流れにできなかったのが反省点です。最後の3位決定戦も悔しかったですが、いまは全体を通して「やり切ったな」という気持ちに落ち着きました。 いろいろなパラ競技を知ってもらえた機会 ――今大会は自国開催ということもあり大いに盛り上がりましたが、選手としてどのように感じましたか。  今回は、応援の声を身近に感じることができて、「リアルタイムで観戦してもらっている」という実感が強かったですね。大会期間中はこれまで支えてくれた多くの方からたくさんの激励の声をもらったほか、地元の方たちがいろいろな形で応援してくれました。担架で運ばれた初戦の試合後には、選手村の店員さんやスタッフ、他種目の選手たちにも「首は大丈夫でしたか?」などと声をかけられ、こんなに多くの人が見てくれたのかと驚きました。  パラスポーツを広く知ってもらう意味では、今大会はテレビで広く放送してもらったこともよかったですね。私の両親は、それまでパラスポーツは柔道しか知りませんでしたが、テレビでほかの競技を観戦しながら盛り上がっていました。いろいろな競技を見て知って「自分もかかわってみようかな」と思ってもらえる機会にもなったように思います。  これを機に、障害のある人も一般の人たちと同じようにスポーツができる環境が整い、町道場やスポーツジムに行くと、障害のある人があたり前のように体を動かしている光景が広がっていけば、パラ競技の人口も増えて、全体のレベルアップにつながるのではないでしょうか。  私自身は中学校の部活動で柔道を始め、高校までは一般の大会に出ていました。大学入学後に初めて出場した視覚障害者柔道の大会で全国優勝しましたが、当時は世界大会では通用しないレベルでした。海外遠征を重ねながら、前回2016(平成28)年のリオ大会で、初めてメダル争いにもからめるようになりました。 競技人生後も働き続けられる会社 ――半谷さんは昨年、大会の延期が決まった後にトヨタループス株式会社に入社されたそうですね。どのような経緯だったのでしょうか。  前の会社との契約が、大会の中止・延期にかかわらず2020(令和2)年9月に切れることになっていました。  そこで、パラ柔道の大先輩である初瀬(はつせ)勇輔(ゆうすけ)さんが手がける会社で、障害者雇用の仲介などを行う「株式会社ユニバーサルスタイル」に紹介してもらい、トヨタループス株式会社(以下、「ループス」)に採用されました。「アスリートとして努力する姿は、社員の希望にもなる」と思ってくれたと、関係者から聞いています。  ループス入社後は、競技活動に専念させてもらうことができました。日ごろのジム利用費や体のメンテナンス費などをサポートしてもらうほか、遠征旅費の補助もしてもらえたので、安心して柔道に打ち込めました。  また、「競技人生が終わった後も働き続ける」ことを見越して正社員にしてもらえたことが、とても心強かったですね。これは、すべてのアスリートにいえると思いますが、大きな大会を目ざして強くなるためには、やはり企業の継続的なバックアップが重要だと感じています。  私はこの1年間のほとんどは、競技活動を行ってきましたが、そのかたわら講演を依頼されたり、ループスやトヨタ系列の会社で、開発協力も行ったりしました。視覚障害者としての意見やアドバイスを求められ、私なりに役に立ったのではないかと思っています。 自分なりにがんばれる環境づくり ――ご自身の今後について、考えていらっしゃることはありますか。  会社側からは、大会後も希望すれば競技を続けられるし、柔道を少し休んで仕事をしたければ働いていいといわれています。私は理学療法士とあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格を持っていますが、仕事にするにはまだ勉強不足だと思っています。  次のパリ大会を目ざして選手生活を続けるか、仕事を選ぶかはまだ決めていませんが、どちらに進んでも「無理せず、がんばれる環境づくり」が大事かなと思っています。この20年間、柔道に打ち込むなかで苦労も多かったのですが、特にこの1年は、コロナ禍でも自分なりにがんばれる環境があったからこそ、伸びることができました。何をするにも「自分なりに動ける環境」をつくることが必要だと実感しています。  そもそも視覚障害といっても、人によってできることは異なります。その多様性も含めて、いかに周囲に発信していけるかが、「自分なりに、無理せず、がんばれる環境づくり」にとって大切なのではないかと思っています。また、障害について周囲から結構かん違いされていたり、逆に私たちが周りを考えて動けなくなったりする場面が多いと感じています。  きっとだれもが、ほかの人の助けになりたいと思っているけれど、どうプラスに働いていけるか。私たち視覚障害者は見えていないからこそ、周囲に合わせたい気持ちもありますし、多くの人のために何かをしたいと思うのですが、その間にある、ちょっとした感覚の差のようなものをどう埋めていくか。まだきちんとした答えは出ていませんが、私はパラリンピアンとして得た多くの経験を活かして、いかに言語化し、発信していけるかを模索していきたいと考えています。 【P4-9】 職場ルポ 研修や人事制度改革で「社員が主体の会社」を目ざす ―SMBCグリーンサービス株式会社(千葉県)― メガバンクの三井住友銀行の特例子会社では、専門職を中心にした支援体制や研修、人事制度を整えながら、社員が主体の、働きがいがある会社を目ざしている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ SMBCグリーンサービス株式会社 〒260-0013 千葉県千葉市中央区中央4-8-1 TEL 043-201-8131 FAX 043-201-6550 Keyword:特例子会社、身体障害、知的障害、精神障害、専門職、社員研修、人事制度 POINT 1 専門職の「就業支援カウンセラー」を中心とした支援体制を整備 2 研修や職場ミーティングが、社員の主体的な活躍をうながす 3 人事制度改革などで、一人ひとりのキャリア支援も強化 全国8拠点で業務受託  国内メガバンクの一つ「株式会社三井住友銀行」(以下、「三井住友銀行」)の特例子会社「SMBC グリーンサービス株式会社」(以下、「グリーンサービス」)は、1990(平成2)年の設立から30年以上が経つ。おもな業務は、三井住友銀行からの受託で、@パソコンデータ入力(預金調査の回答作成・預金などの出入り表作成)、A各種書類の点検・保管、データスキャニング、B名刺・会議資料などの印刷、C行内メール便配送、D手形などの電話受付、E入金帳などの印刷・作成などだ。  現在は全国8拠点に社員678人、うち障害のある社員は467人(身体障害252人、知的障害91人、精神障害124人)にのぼる。4社をグループ適用し合算した障害者雇用率は2.67%(いずれも2021〈令和3〉年6月1日現在)となっている。  2018年にグリーンサービスに出向し、2020年から代表取締役社長を務める小野寺(おのでら)健(たけし)さんは、ここ5年ほどの大きな変化として「知的障害や精神障害のある社員が100人以上増えたこと」をあげ、「職場内の社員構成や、求められる業務スキルが変わりつつあるなか、さまざまな取組みを進めてきました」と話す。その軸となっているのは、2016年に定めた企業理念「CREDO(クレド:信条、約束の意味)」だ。  同社のCREDOには『私たちは、仕事を通じて成長することで自立を果たし、社会の一員として胸を張れるようになることを目指します。チャレンジとチームワークを重んじ、一人一人が考え、意見を出し合い、助け合って、働き甲斐のある職場を創ることが目標です』とある。  小野寺さんは、こう話す。  「社員一人ひとり、障害の内容も程度も目ざすところも違うと思いますが、それぞれ仕事を通じたステップアップをうながしていきます。働きやすいだけではなく、やりがいのある仕事ができる職場を目ざしています」  実際に現場では、これまで「就業支援カウンセラー配置」、「社員研修」、「職場ミーティング」、「人事制度改革」などが次々と実施されてきた。順を追って紹介していきたい。 就業支援カウンセラー  以前からグリーンサービスでは、役職者社員らに障害者職業生活相談員やジョブコーチの資格取得をうながしてきたが、2015年には新たに「就業支援カウンセラー」として専門職の採用を始めた。現在は臨床心理士5人、精神保健福祉士2人、社会福祉士1人、手話通訳士1人の計9人が、東日本と西日本に分かれて配置されている。これまで就労支援や福祉の分野で経験を積んできた人たちばかりだ。  就業支援カウンセラーは、採用面接や実習にかかわるほか、各拠点を巡回しながら社員面談や役職者とのミーティングなどを通じ、一人ひとりに目を向けた支援を行っている。小野寺さんは「つねに中立の立場でバランスをとりながら、会社と社員の間の、通訳のような役割を果たしてくれていると感じます」という。  2016年に入社し、東日本人事部に所属する臨床心理士の佐藤(さとう)雄太(ゆうた)さんも、こう話す。  「本人の言動の裏にある意図や状況、努力してきた部分について、そのつど役職者に理解してもらえるよう説明しています。また逆に、会社側が期待していることや職場の方針などを、本人や就労支援機関にも伝えています」  佐藤さんからのアドバイスを参考にしている1人が、取締役で東日本人事部の部付部長を務める金井(かない)隆(たかし)さんだ。2019年に出向してきた金井さんは「行員としての職歴が長すぎて、『行員の常識は、世間の非常識』を痛感します。社員のいい回しに疑問を持ったとき、『それは銀行員の目線ですよ』と指摘されて、初めて気づいたこともありました」と明かす。社員の労務管理などを担当しているが、職場では「何でも話しやすい、マイナスな情報ほどいち早く伝えてもらえるような雰囲気を心がけています」という。 社員の意識を変えた研修  グリーンサービスの就業支援カウンセラーは、メンタル面だけでなく、社員自身の目標設定や、チームのまとめ方など、キャリア面での支援も強化している。その土台となっているのが、5年前から本格的に始めた社員研修だ。小野寺さんは「じつは、それまで社員研修と呼べるものがありませんでした。不定期に新入社員が入ってきても就業規則などを1時間ほど説明するぐらいで、役職者も前任者から口頭で引き継いでいました」とふり返る。  前代表取締役社長の角(すみ)純平(じゅんぺい)さんが「社員主体の会社に変えたい」という方針を示し、「社員の成長なくして会社の成長なし」をスローガンに、2016年、「新入社員研修」と「新任役職者研修」、「ジョブリーダー・サブリーダー研修」をスタートさせた。  さらに2019年から実施している「コミュニケーションスキルアップ研修」は、役職がつかない中堅層の社員が対象だ。企画した佐藤さんは「本当の目的は、一人ひとりが働き方のセルフデザインをすることです」と説明する。研修では「現状の職場」と「よりよい職場」のギャップを縮めるために、自分ならどういう働き方をするか、何ができるか、という問いかけをし、自分らしい活躍を目ざすヒントを得る。  一連の研修を通じて、社員の意識が変わり、職場に予想以上の好影響が出ていると佐藤さんは話す。  「社員からの相談が、以前は対人関係をめぐるものが多かったのですが、最近は仕事のあり方や将来のキャリアについての内容がとても増えました。他人に向けたメンタル面での悪循環よりも、自身について考えられる環境になったことが、職場全体にさまざまなプラスの効果をもたらしていると実感しています」 職場ミーティング  2016年には「職場ミーティング」もスタートした。これは社長を含めた役員と4、5人の社員が会議室に集まり直接対話するというもので、全社員が必ず年1回参加する。「社長はどんな会社にしたいのかを聞きたい」、「経営陣のビジョンを語ってほしい」といった意見や、「もっと努力が報われるようにしてほしい」、「公平な評価がほしい」といった率直な要望もあり、突っ込んだ議論になることもあるそうだ。  役員が、自身の考え方や会社の方向性などを伝えるよい場になっていると感じる一方、社員も日ごろの思いを直接伝えられるほか、社員同士で「こんなことを考えていたのか」と刺激を与え合う場にもなっているという。 人事制度の改革  社員研修や職場ミーティングなどにより、社員主体の意識が浸透しつつあるなか、「社員主体で運営する会社にふさわしい人事制度とは、どういうものなのか」にスポットがあたるようになった。そこで、代表取締役社長の小野寺さんが陣頭指揮をとって進めたのが「人事制度改革」だ。  まず、以前からあった、障害のある社員向けの「ジョブリーダー」と「サブリーダー」という役職について、登用基準があいまいだったことから、2018年に全社統一の登用基準を設定。さらに2019年の人事制度改革では、業務を取り仕切る「ジョブグループ長」、銀行OB社員と同等の職責と権限を持つ「次長」や「副部長」、「部付部長」という役職を新設した。職能給等級による昇給制度、役職に期待されることなども明文化し、一人ひとりが目ざせるキャリアアップの姿を明示した。  リーダー以上の役職を希望しない社員には、等級制限のないサポート社員として、「ジョブスタッフ」や「指導員」(一人に対して期間は3カ月間)という役職もつくった。高い業務スキルを持ち、チームを支える役割だ。  この人事制度をしっかり運用するために、役員たちが年に2回集まって全社員の評価をしている。本人の勤怠状況や成長ぶりを協議し、その結果については担当部長が社員一人ひとりに面談でフィードバックする。小野寺さんは、「社員の将来像を明確に描くことで、『現在はここにいて、将来はこうなる』という道筋を示せたことに大きな意義がありました。面談でも、自分への評価や期待について建設的な話ができるようになりましたね」と手ごたえを語る。  現在はジョブスタッフ43人、サブリーダー38人、ジョブリーダー25人、ジョブグループ長7人、そして次長1人が、障害のある社員だ。 「仕事のやりがい」を語る社員  グリーンサービスの千葉業務部で働く社員3人にも話を聞くことができた。  2001年入社の張替(はりがえ)誠司(せいじ)さん(41歳)は、地元の聾(ろう)学校を卒業後、職業訓練校での面接会を経て入社。いまでは金融犯罪を防止するための業務にかかわるほどのベテランだ。職場には簡単な手話ができる社員も増えてきたが、張替さん自身は、唇や口の動きで読みとることに慣れていたため、あまり手話は使っていない。ただ最近のコロナ禍でマスクを着用するようになったため、口もとや表情を読みづらくなったことがつらいという。  「みんなが嫌がる仕事ほど、やりがいを感じます」と話す張替さんは、不得意なことでも、スキルアップにつながると思って引き受けているそうだ。手話通訳を介したインタビューのほかに、事前に書いてくれたメモも紹介したい。  「会社の方針に、『社員が主役』というのがあります。社内にはさまざまな障害のある社員がいますが、考えていることは同じだと思います。『かわいそうだとか特別扱いしないでくれ』と。長年、障害とともに生きていれば、それが普通になりますから。みんなが力を合わせてやっていくには、『相手の立場』になって考える、行動することが大事だと思っています。みんな違って、みんないい仲間です」  館野(たての)綾子(あやこ)さん(41歳)は、10年ほど前に脊髄小脳変性症を発症した。歩行時のふらつきなど運動機能に障害があるため、それまで働いていた都内の会社を退職。その後、2014年に車通勤ができるグリーンサービスに入社した。「『仕事を通じて成長することで自立する』というスローガンにも共感しました」と話す。  グリーンサービスには、車いすを利用する社員にも安全な通路幅と勾配角度を持った緊急避難用スロープが設置されている。車輪つきステッキを使って移動する館野さんは、東日本大震災時に都内で帰宅困難になった経験などから「緊急避難用スロープはとても安心できます」という。また、日ごろはデータ入力などを担当しているが、目が疲れやすいため、1時間に1回程度、休憩室などで休めるのも助かっているそうだ。  新入社員の指導員も務める館野さんは、「仕事のやり方は人によって違うので、自分のルールを押しつけないこと、メモを取る時間の確保、そして点ではなく線になる教え方を心がけています」と語る。自分が指導した社員が職場に定着して活躍する姿を見るのが、喜びとやりがいにつながっているそうだ。  湯浅(ゆあさ)麻寸美(ますみ)さん(46歳)は2017年、ハローワークで見つけた求人票をきっかけに入社した。希望していたパソコンの仕事ができること、すでに精神障害のある社員がいたことが決め手だった。また、お腹を壊しやすいことから、苦手な電車ではなく車通勤を許可されたこと、職場のフロアに個室トイレが五つあることも安心材料だったそうだ。  最初の3カ月間は館野さんが指導員としてつき、「ずっと隣の席にいてくれて、何でも聞きやすくて、本当に安心できました」とふり返る。また、毎日提出する日誌に役職者がコメントをつけてくれ、「自分のことをきちんと見てくれている人がいるのも、仕事のやりがいにつながっています」と話す。  これまで一番うれしかったのは正社員になれたことだという。グリーンサービスでは、入社時は全員が嘱託社員で、勤怠状況や仕事内容に問題がなければ1年後から正社員になる仕組みだ。 コロナ禍の苦労と対応  個人情報の取り扱いが厳しいグリーンサービスでは、コロナ禍でもリモートワークや在宅勤務が不可能だった。代わりに徹底した新型コロナウイルス感染防止策で乗り越えてきたという。パーティションや消毒コーナーの設置などの設備対策はもちろん、発熱や濃厚接触によりPCR検査を受けた社員がいたら、本人のいる職場を徹底的に消毒した。  また、職場内で1人目の陽性者が出たときは、周囲の席の社員を自宅待機させた。さらに備えとして、拠点の全社員用PCR検査キットも用意した。  そしてコロナ禍の当初から導入していたのが、基礎疾患や37.5℃以上の発熱があった社員を対象にした「無制限の特別休暇」で、すべて有給扱いだ。結果として、昨年1年間の出社率は平均7割だったが、なかには3カ月間休んだ社員もいた。小野寺さんは、「出社する社員が不公平感を抱くかもしれないと少し心配していたのですが、実際はそういう声がまったく出てきませんでした。基礎疾患のある社員のことをこんなに理解してくれていたのだと実感できました」と語る。現在は、特別休暇は年間20日間までと制限を設けている。今後の課題は、やはりテレワークのあり方そのものだと小野寺さんはいう。  「業務の性質上やむを得ないとはいえ、コロナが完全収束するかはわかりませんし、テレワークは時代の流れです。採用の幅が広がることも間違いありません。金融業界全体の課題として、他行とも情報交換しながら解決策を模索中です」 社員がパラ五輪で銅メダル  コロナ禍のなかで、うれしいニュースもあった。グリーンサービスの東日本人事部に勤務する村山(むらやま)浩(ひろし)さん(47歳)が、東京パラ五輪のバドミントン競技で見事、銅メダルに輝いたのだ。村山さんは8年前の2013年、ハローワーク主催の合同面接会を経て入社。バドミントンはプライベートで週末などに練習していたという。3年前に強化選手に選ばれたことから、グリーンサービスでは、勤務を週2日にし、遠征時の旅費などをサポートした。「職場全体で応援し、すごく盛り上がりました。村山さんが職場に銅メダルを持ってきてくれて、みんな首にかけてもらって『重いねえ!』などと喜びを分かち合いました」と、小野寺さんが話してくれた。 ダイバーシティ実践の場  グリーンサービスを取り巻く金融業界は、大きな過渡期にある。ペーパーレス化が加速度的に進むことで、業務内容も変わりつつあるという。ただ目下のところは、親会社の三井住友銀行から委託される業務量は増えている。理由は、三井住友銀行やグループ会社が組織変革などで人員を減らしており、その分の業務がまわってきているからだ。  グリーンサービスにとっての課題は、高いレベルの業務や、短い納期が設定されたものが増えていることへの対応だという。「難易度の高い業務を、いかに社員たちにフィットさせていくか。負担感を抱えこまないよう、バランスも考えながら試行錯誤していきます」と話す小野寺さんは、その先も見すえている。  「将来的には、三井住友銀行から出向してくる社員も減っていくと予想されます。そうなるとグリーンサービスの社員が、さらに主体的に業務を動かす組織が求められていくでしょう。社員の育成が、より重要になってきます」  一方で2017年からは、グリーンサービスの社員の三井住友銀行への出向も始まっている。同年から三井住友銀行の頭取を務める島(たかしま)誠(まこと)さんが、就任直後にグリーンサービスを見学し、「これこそダイバーシティ実践の場だ」と感銘を受けたのがきっかけだという。いまは身体障害のある社員2人がそれぞれ2年間の予定で出向中だ。就業支援カウンセラーが三井住友銀行側にフィードバックをしながら、障害者雇用やダイバーシティにかかわる考え方の共有も図っている。小野寺さんも、親会社の新任部店長向けの「ダイバーシティ・マネジメント研修」で、グリーンサービスの取組みなどについて話している。  三井住友銀行を中核とするSMBCグループは、2020年、障害者の活躍推進に取り組む国際ネットワーク組織「The Valuable 500」(※)に加盟した。ダイバーシティを推し進める実践現場の一つとして、グリーンサービスの取組みがますます期待されている。 ※ The Valuable 500:世界最大規模の障害者雇用促進を目ざす、企業および経営者のネットワーク組織 写真のキャプション 通路幅を広くとるなど、バリアフリーが考慮されたオフィス SMBCグリーンサービス株式会社代表取締役社長の小野寺健さん 就業支援カウンセラー(奥、佐藤雄太さん)によるミーティングの様子 取締役で東日本人事部部付部長の金井隆さん 東日本人事部、臨床心理士の佐藤雄太さん 張替さんは捜査機関からの口座情報の照会に対応している 千葉業務部の張替誠司さん 館野さんはデータ入力などを担当している 千葉業務部の館野綾子さん 国立職業リハビリテーションセンターを参考に設置された緊急避難用スロープ トイレ番号が点灯し使用状況を知らせる。これは不測の事態への備えにもなっている 社内での報告会で、同僚から祝福を受ける村山浩さん(写真提供:SMBCグリーンサービス株式会社) 千葉業務部の湯浅麻寸美さん 【P10-11】 クローズアップ コロナ禍を乗り越えて 〜新しい働き方を問う〜 最終回  新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちの働き方や労働環境は大きく変化しました。その波は、障害者雇用のあり方にも影響を与えています。  本連載の最終回は、これまでの6回の記事から見えてくる、コロナ禍における障害者雇用の課題と今後の障害者雇用のあり方について、本誌の編集委員で東京通信大学教授の松爲(まつい)信雄(のぶお)さんにお話をうかがいました。 監修:本誌編集委員 松爲信雄(東京通信大学教授) 詳細な「業務手順の分析」の有効性 −−コロナ禍により、障害者雇用にはどのような影響がありましたか? 松爲 新型コロナウイルス感染症の流行が拡大して約2年。この間は、感染拡大防止の観点から、テレワークを導入する企業が増加し、テレワークに対する認識が、いまだかつてないほど大きく変化したといえるでしょう。感染拡大の影響が長期化するにつれ、このような新しい働き方のあり方は、今後も定着していく可能性が高いと考えます。  社会全体が新しい働き方の導入へと大きく舵を切る動きのなかで、障害者雇用においても、この動きを無視できない状況にあることが、これまでの連載記事から読みとれます。  第2回に登場したテレワークのコンサルティング会社「株式会社テレワークマネジメント」によると、現在は、社会全体がテレワークでの就業と雇用管理へ慣れてきた状況にあり、将来的には、テレワークの普及が障害者雇用にも大きな変化をもたらす可能性が示唆されています。テレワークを実施するためには、現在の業務を洗い出し、それをテレワークで行うためにはどうしたらよいのか、業務のあり方を再構築する必要性があることも指摘されています。  第3回には、多くの精神・発達障害のある社員が活躍している「パーソルチャレンジ株式会社」経理業務グループでのテレワーク導入事例が紹介されました。ここでは、スムーズにテレワークが導入できた理由の一つに、障害者を雇用するうえでの工夫として以前より行われてきた、業務一つひとつを作業レベルに分解し、手順、判断基準などをマニュアルなどで見える化することが徹底されていた点があげられています。このような背景があることで、テレワーク実施時にも、業務手順を詳細に見直し修正することが可能になったと考えられます。 −−障害者雇用において重要とされる「業務手順の分析」といった考え方が、テレワークの実施にも役立ったということですね。 松爲 そうですね。詳細な「業務手順の分析」の有効性について、第1回でもご紹介した、企業における障害者雇用モデルの図を見ながら、もう少し詳しく考えていきましょう。この図は、障害者雇用におけるさまざまな業務の分類を表しています。このなかで一般的にテレワークが可能な仕事は、第1群や第2群の一部の仕事になり、第3群に相当する現場作業系の業務への適用はむずかしいと考えられているのが現状です。  どの業務が図のどのカテゴリーに当てはまるのか、しっかりと分類・分析し、それぞれに見合った人材の確保をすることが、障害者雇用における適切なアセスメントとマッチングを進めるうえで、重要なポイントとなります。コロナ禍においては、このような考え方で業務を整理していたことが、スムーズなテレワークの導入にも役立てられたということでしょう。 企業姿勢が問われる結果に −−清掃など、テレワークがむずかしい第3群の業務では、どのような工夫ができるのでしょうか? 松爲 第3群の業務に従事するのは、おもに知的障害のある人です。この分野は、現場での作業が多いため、一般的には、在宅勤務などのテレワークで実施することはむずかしいと考えられていますが、第4回に登場した「サントリービジネスシステム株式会社」の事例では、知的障害のある社員にも一般の社員と同じようにテレワークを実施した取組みが紹介されました。テレワークの実施にあたっては、全業務のなかから在宅でも可能な仕事を抽出したり、テレワークに対応できる新規業務を開拓したりするなどの工夫をしています。  第5回に登場した「株式会社ドコモ・プラスハーティ」では、自宅待機と出勤を織り交ぜ、1日、または1週間単位での交代制勤務を導入することによって、オフィスビル清掃の業務の継続と、自宅待機時の知的障害のある社員のモチベーションの維持や心身の健康管理などを両立する工夫をしています。ていねいなコミュニケーション機会を設定することで、自宅待機時の不安を軽減し、生活リズムを整えることも重要なポイントとなりました。  これらの事例に共通するのは、知的障害のある社員にも、テレワークや交代制勤務などの新たな経験にチャレンジさせようとする企業の姿勢です。障害者雇用に対する企業の姿勢が、このコロナ禍でより顕著に現れたともいえるでしょう。 今後、求められること −−変化する雇用環境のなかで、支援機関や障害のある人に求められることも変化しているのでしょうか。 松爲 第6回で登場した障害者就労支援機関「特定非営利活動法人さらプロジェクト」の事例からは、支援機関でもさまざまな模索をしながら、コロナ禍に対応している様子がうかがえました。就労支援においては、在宅で訓練を行うなどの工夫が必要になると同時に、テレワークを交えた働き方への支援も求められるようになってきています。そのようななか、精神障害や発達障害のある人にとっては、マイペースで業務にあたることができるテレワークにメリットを感じることも多いようですが、不安になったり、苦手と感じる人もいます。そのため、在宅時の生活リズムの整え方、環境整備の方法、メンタル面のサポートなども、重要な支援となってきています。  これまでの6回の連載を通じて、障害者雇用においても、テレワークなどの新しい働き方に対応せざるを得なくなっている状況が見てとれます。企業には、テレワークが可能な業務の切り出しのほか、テレワーク関連の新規事業を広く開拓することも求められるようになりました。そして、障害のある人も働き方の変化に対応することが必要となってきています。一方で、テレワークになじまない人に向けた新たな仕事を、どのようにしてつくり出していくかについても、今後の大きな課題となっています。  コロナ禍で得られた学びを、障害のある人の働きやすさやスキルアップにつなげていけるよう、企業と支援機関、そして障害のある人本人の努力と協力が、よりいっそう求められるようになってくると思います。 ※ 前回までの連載記事は、当機構ホームページでご覧になれます 働く広場 2021年6月号〜11月号 検索 図 障害者雇用モデルと求人者群 高 業務難易度 低 低 雇用吸収力 高 障害者雇用モデル 第T層 第U層 第V層 求人者類型 第1群 第2群 第3群 総合職 一般職 業務職 一般部署採用 軽作業 現業系 集合部署採用 監修者作成 写真のキャプション 本誌編集委員 松爲信雄(東京通信大学教授) 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 障害者雇用を進める事業主のみなさまへ就労支援機器をご活用ください! 中央障害者雇用情報センターでは、障害者を雇用している、または雇用しようとしているみなさまに無料で就労支援機器の貸出し を行っています。 「就労支援機器」とは障害者の就労を容易にするための機器のことで、例えば視覚障害者を対象とした拡大読書器や、聴覚障害者を対象とした補聴システム(集音システム)といったものがあります。 拡大読書器 ●書類や写真などを拡大表示する機器です。 ●コントラストや色調の変更も可能なためより見やすく調整することができます。 ●卓上型、携帯型など活用シーンに合わせて選択できます。 補聴システム(集音システム) ●マイク(送信機)が拾った音を直接、補聴器や人工内耳に届けるシステムです。 ●聞きたい音を大きくできるので就労のあらゆる場面で有効に使用できます。 ノイズキャンセラー パーテーション ●視覚的・聴覚的な刺激を低減させることで、周囲の状況に影響されずに集中できる環境を整えます。 ▲上記は一例です 貸出しの対象となる事業主 障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主など ※国、地方公共団体、独立行政法人などは対象外です 貸出し期間 原則、6カ月以内 ※職場実習やトライアル雇用の場合も利用できます 貸出しの流れ 申請書の提出 申請書を記入し、メールまたは郵送でご提出ください ※申請書は当機構ホームページよりダウンロードできます 貸出し決定 申請のあった事業主に対し、決定内容を通知し、機器を配送します 貸出しの終了・回収 当機構が契約している業者が回収にうかがいます お問合せ 中央障害者雇用情報センター 〒130-0022 東京都墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 TEL:03-5638-2792 E-mail:kiki@jeed.go.jp 就労支援機器を常設にて展示しているほか、導入に関する相談を行っています 就労支援機器は当機構ホームページで詳しくご紹介しています https://www.kiki.jeed.go.jp/ 就労支援機器のページ 検索 障害者雇用のためのマニュアル・好事例集などのごあんない  当機構ホームページでご覧いただけます。また、ダウンロードにより全文もしくは必要箇所を印刷することも可能です。ぜひご活用ください。 https://www.nivr.jeed.go.jp/manual.html NIVR マニュアル 事業主 検索 基本的 一般的 障害者雇用マニュアル コミック版1〜6 具体的な雇用事例や障害者雇用に関する問題点を解消するためのノウハウを障害別(視覚、知的、聴覚、精神、発達、高次脳機能障害)にコミック形式で紹介。 基本的 個別的 障害者の雇用ノウハウに関する動画・DVD  障害者雇用を積極的に進めている企業の取組みや雇用管理などに関するさまざまなノウハウを動画でわかりやすく解説。DVDを無料で貸出。 一般的 応用的 障害者雇用があまり進んでいない業種における雇用事例  障害者雇用があまり進んでいない業種に着目し、主に中小企業における雇用事例を掲載。経営者の声や障害者雇用のメリット、職場定着などを紹介。 個別的 応用的 職場改善好事例集  障害者の雇用管理や雇用形態、 職場環境、職域開発などについて、事業所が創意工夫を重ねて実践している取組みをテーマ別にまとめたもの。 令和2年度の募集事例は当機構ホームページ「障害者の労働安全衛生対策」で紹介しています。 アクセスはこちらから お問合せ先 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 FAX:043-297-9547 職業リハビリテーションに関する令和3年度研修のご案内 受講料無料  医療・福祉などの機関における障害者の就業支援担当者を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や、就業支援に必要な技術の修得、資質の向上を図る研修を実施しています。 職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成・スキル向上研修 ステップ1 入門編・実践編 職場適応援助者養成研修※1 ◎訪問型職場適応援助者養成研修  千葉市(幕張)年7回 大阪市 年4回 ◎企業在籍型職場適応援助者養成研修  千葉市(幕張)年7回 大阪市 年4回 養成研修修了者サポート研修 ※2 全国の地域障害者職業センター ステップ2 スキルアップ編 職場適応援助者支援スキル向上研修※2 ◎訪問型職場適応援助者支援スキル向上研修  千葉市(幕張)年2回 大阪市 年2回 ◎企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修  千葉市(幕張)年2回 大阪市 年2回 支援スキル向上研修 修了者サポート研修 ※2 全国の地域障害者職業センター ※1は職場適応援助者として援助を予定している方、※2は職場適応援助者として1年以上の実務経験がある方が主な対象となります。 ※回数は開催計画数です(令和3 年4月時点)。新型コロナウイルス感染症の影響により、予定が変更となる場合があります。 医療・福祉などの機関の就業支援担当者向けの研修 ステップ1 入門編 就業支援基礎研修 全国の地域障害者 職業センター各年1回以上 ステップ2 実践編 就業支援実践研修 ◎精神障害コース ◎発達障害コース ◎高次脳機能障害コース 全国14エリア各年1回 テーマ別 就業支援課題別セミナー ◎令和3年度テーマ「視覚障害者への就業支援の最前線」年1回 ステップ3 スキルアップ編 就業支援スキル向上研修 ◎精神障害コース ◎発達障害コース ◎高次脳機能障害コース 千葉市(幕張)年1回 ◎実務経験に応じて、講義・演習・事例検討などを組み合わせた、実践的なカリキュラムとなっています。 ◎研修の参加には事前のお申込みが必要です。受講料は無料です。 ◎今年度の申込受付はすでに終了している研修もあります。各研修の日程、カリキュラム、会場、受講要件など、詳しくはホームページをご覧ください。 お問合せ先 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業リハビリテーション部 研修課 E-mail:stgrp@jeed.go.jp TEL 043-297-9095 FAX 043-297-9056 JEED 就業支援担当者 研修 検索 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html 写真のキャプション 受信機 マイク送信機 【P15-18】 グラビア 多能工化でキャリアアップも。長く働ける職場へ 株式会社ダスキンプロダクト西関東(東京都) 取材先データ 株式会社ダスキンプロダクト西関東 〒192-0032 東京都八王子市石川町2968-13 TEL 042-643-6500 FAX 042-643-0030 写真・文:官野 貴  マットやモップなどの清掃衛生用品のレンタルと販売を手がける株式会社ダスキンは、「公益財団法人ダスキン愛の輪基金」の活動を通して、40年間にわたり障害者を支援する活動を続けてきた。株式会社ダスキンの子会社で、ダスキンのレンタル商品のクリーニング事業をになう「株式会社ダスキンプロダクト西関東」では、事業の拡大をきっかけに、1997(平成9)年から工場での障害者雇用を積極的に行ってきた。現在、従業員の約一割にあたる11人の障害のある社員が、入庫確認からクリーニング、検査や梱包作業、出荷の前作業などさまざまな業務に就き、大きな戦力となっている。  勤続年数が20年を超える社員が多い同社では、個人の能力や特性に応じて、複数の業務をになう多能工化によりキャリアアップを図っている。その一人で、勤続21年の井上(いのうえ)悟史(さとし)さんは、コンテナ管理を担当し、搬送リフト(15ページ)や洗浄機も使いこなしている。この日、モップの仕上げ工程を担当していた勤続20年の山本(やまもと)和幸(かずゆき)さんは、空気清浄機のフィルターやレンジフードのグリスフィルターの品質検査、組立て梱包作業も担当しており、「グリスフィルター品質判定能力ライセンス」という社内ライセンスを取得している。これはダスキンブランドの品質基準を守るという責任ある立場であり、その責任感が本人の働く意欲の向上につながっているという。  障害のある社員の指導においては、障害を個性と理解し、仕事が一人でできるようになるまで、職場作業員がつき添って指導を続ける。本人の好きなことや得意なことをほめて伸ばし、作業員のつき添いなくできるようになったら、その作業を任せることにより、障害のある社員の責任感や働く意欲を高めている。このような工夫や多能工化により障害のある社員が長く働き続けられる職場となっている。商品の受入れを担当する勤続20年の三上(みかみ)潤一(じゅんいち)さんは、「ここで長く働きたいです。定年まで働き続けたいです」と語ってくれた。 写真のキャプション 工場内には大型の洗濯機、乾燥機が立ち並ぶ 株式会社ダスキンプロダクト西関東が運営する「ダスキン東京多摩中央工場」 コンテナにモップ納品用の袋がけを行う井上悟史さん 洗浄を終えたコンテナを回収する コンテナ管理を担当する井上さんは、洗浄機も使いこなす モップを仕上げ機に投入する山本和幸さん。複数の業務を担当できる多能工として活躍している 仕上げ機のコンベアにモップをていねいに載せていく 山本さんは社内ライセンスを2016年に取得し、メンテナンス部門においてフィルターの洗浄加工と検査も担当している レンタル先から返却されたマットの検品、数量確認を行う三上潤一さん 三上さんは多種多様なマットを見分け、入庫を確認している マットの品番、数量をパソコンへ入力する マットの仕分けを行う小手森(こてもり)俊治(としはる)さん。検品前の重要な工程だ クリーニング後のマットをサイズや色ごとに仕分ける坂本(さかもと)和幸(かずゆき)さん(左)と、坂本(さかもと)博正(ひろまさ)さん(右) マットへの吸着剤の塗布工程で働く近藤(こんどう)裕史(ひろし)さん オーダーメイドマットを仕分ける中村(なかむら)龍太(りゅうた)さん マットの検品工程で活躍する中野(なかの)英夫(ひでお)さん 【P19】 エッセイ 配慮は人のためならず 【最終回】 株式会社Ds's(ディーズ)メンタルヘルス・ラボ 代表取締役 (精神科医・産業医) 原 雄二郎 原 雄二郎(はら ゆうじろう)  精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、日本医師会認定医。  金沢大学卒業後、東京女子医科大学病院、東京都立松沢病院、東京都立広尾病院勤務を経て、東京大学大学院に入学。卒業後、同大学院医学系研究科精神保健学分野客員研究員。同教室と連携し、鄭理香とともに「株式会社Ds'sメンタルヘルス・ラボ」を設立、代表に就任し、現在に至る。  臨床診療とともに、産業医・顧問医や研修講師として、職場のメンタルヘルス対策の支援を行っている。 合理的配慮  合理的配慮についてよく相談を受ける。会社側、障害者側の双方からである。障害者権利条約によると、合理的配慮とは、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とある。つまり、ある障害によって、その障害のない者との間に何らかの不平等が存在する場合、過剰な負担がなければ、その不平等を解消するようにするということだろう。  会社側から受ける相談で多いのは、この過剰な負担がどの程度をさし、どの程度の配慮を講ずればよいのかということが多い。その会社の状況や必要な配慮によってケースバイケースとしかいいようがないのだが、その負担を金銭に置き換えることができる配慮であれば、検討がしやすい。例えば、車いす用のスロープの増設費用、聴覚障害用の音声入力システムの導入など具体的に必要な配慮にともなう費用は見積もりができるので、その数字をもとに社内で検討ができるだろう。  一方、精神障害の場合は様相が異なる。 精神障害者への合理的配慮  じつは、障害者側からの相談は精神障害のある人からが多い。その多くは、「私の状態を理解してほしい」という訴えである。これが、案外むずかしい。  例えば、うつ病の人の場合、ある人は「負荷が強まると不調になりやすい」といい、また別の人は「簡単な仕事をしていると必要とされていないと感じて不調になる」という。発達障害の人の場合は、ある人は「音が苦手で静かな環境がよい」といい、別の人は、「静かすぎてじっとしなければならない環境は苦手だ」という。  同じ診断名だったとしても、個人個人によって理解してほしい「自分の状態」は、千差万別である。このため、産業医あるいは精神科医として、一人ひとり、職場ごとにていねいに介入が必要だが、うまくいけば職場にとっても働く人にとってもハッピーな結果になるため、非常にやりがいがある。 合理的配慮はだれのため  一方で、企業側からすると、精神障害のある人の場合、金銭の出費をともなう配慮はほとんどない。上司などの対応を変えるといった「ソフト面での配慮」が主である。言葉を変えると、負担を金銭に換算することがむずかしく、目に見える形ではないため、その多くの配慮は、「講じることができる」または、「講じるべきだ」と社会からは見られる配慮といえる。このため、職場側には負担感が強いようである。  ただ、実際にアドバイスを行う内容といえば、 ・過重な負荷を避ける ・体調に留意して、こまめにコミュニケーションをとる ・強みを見つけて、強みを活かせるような業務を行わせる ・(発達障害の人にもわかりやすいように)具体的で明確な指示出しをする ・お互い助け合うような職場の雰囲気づくりをする  といった内容である。  障害への配慮とはしているものの、具体的な内容に落とし込むと、最終的にはごく一般的な「快適でストレスが少ない職場づくりのためのアドバイス」に似ることに気がつく。  結局、最後は「同じ人である」ということだろう。身体障害のある人への配慮も、年齢とともに低下する全身機能にとって、有益な配慮も多い。高齢労働者にとっては、つまり、いずれはすべての人が高齢になる以上は、すべての人にとって「自分事」なのだ。  配慮は人のためならず、である。 【P20-25】 編集委員が行く 協同労働という働き方 日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会(東京都) 東京通信大学 教授 松爲信雄 取材先データ 日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-44-3 池袋ISPタマビル7F TEL 03-6907-8040 ワーカーズコープ・センター事業団 東関東事業本部 松戸地域福祉事業所「あじさい」 〒270-2251 千葉県松戸市金ケ作203 ワーカーズコープ・センター事業団 東京中央事業本部 豊島地域福祉事業所「自立支援センターまめの樹」 〒170-0013 東京都豊島区東池袋5-50-6 栄第一ビル2F ワーカーズコープ・センター事業団 北海道事業本部 札幌地域福祉事業所「篠路まちづくりテラス和氣藍々」 〒002-8024 北海道札幌市北区篠路4条9丁目15-10 編集委員から  「協同労働」という新たな働き方は、「労働者協同組合法」の成立で脚光を浴びている。ワークライフバランスやディーセントワークを達成するための一つの方法として、その思想や原理・原則を企業文化にも取り入れることを望みながら取材をした。 写真:官野 貴 Keyword:協同労働、労働者協同組合法、ワークライフバランス、ディーセントワーク POINT 1 「協同労働」という新たな働き方を知る 2 障害のある人も含めた多様な人たちの協同参加 3 地域コミュニティの育成と併行させた活動  今回は、「協同労働」という、これまでとは異なる新たな働き方を紹介したいと思い、「日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会」専務理事の田嶋(たしま)康利(やすとし)さんにお話をうかがいました。また、同連合会に加盟する「センター事業団」の事業所を運営されている3人の方々に、WEB会議システムを使ったオンライン取材を受けていただき、その設立の経緯と現状についてうかがいました。 協同労働の意味と活動 松爲 「協同労働」とは何でしょうか。また、その活動の特徴はどこにあるのでしょうか。 田嶋 協同労働とは、市民や働くものが地域で協同・連帯しながら、人と地域に必要な仕事をおこし、よい仕事を行って、地域社会の主体者になる働き方をいいます。その目的は、働きたいと願うだれもが持てる力を発揮して、地域と生活に必要とされる仕事をおこし、安心して働くことができる、よい仕事へと高めることにあります。  この目的で設立されたさまざまな事業所が参集しているのが、協同労働の協同組合です。一般的には、「ワーカーズコープ」と呼ばれ、働く人や市民が協同で出資して、主体的に経営に参加し、生活と地域の必要に応える仕事を協同でおこす協同組合をいいます。 松爲 そうした働き方は、これまでの「雇用ー被雇用」という関係とはまったく異なることになりますね。 田嶋 その通りです。その意味で「第3の働き方」といわれています。ワーカーズコープは、@働く人が出資をして組合員になること、A組合員同士の話し合いを大切にして、よい仕事と仕事おこしを進めること、B組合員一人ひとりの人間的成長と発達、そして持続可能な地域づくりを目ざしてともに働くこと、をその原理・原則としています。  人間の主体性に信頼を置いて当事者性を尊重し、個人の多様性を認め合って協同し、社会連帯の思想を大切にして地域や社会の必要に応えて仕事をおこすのです。それによって、「よい仕事」を通して人間的に成長し発達する価値観を尊重しているのです。 松爲 なるほど。では、実際に協同労働で働いている人や活動の状況はどうでしょうか。 田嶋 実際の活動は、じつに多種多様です。またそこで働いている人も障害のある人にかぎりません。  日本労働者協同組合連合会では、約1万5600人が働いています。そのなかには、あらゆる障害種別の人はいうまでもありませんが、さまざまな社会生活のしづらさを抱えた人たちがいます。20〜30代の若者、生活保護受給者、精神障害のある人、ひきこもり経験者などに加え、高齢者、女性、専業主婦の方など、障害のない人も大勢います。こうした多様な人たちが、障害の有無、性別、年齢などの障壁を超えて、「協同労働」の理念に賛同して参加しているのです。  また、同連合会の事業規模は350億円程度ですが、そのうちの6割が「介護・福祉関連」と「子育て関連」の2大事業です。そのほかに、総合建物管理、公共施設運営、若者・困窮者支援、協同組合間連携、販売・売店、環境緑化関連、配食サービス、運輸・交通、建築・土木、食・農関連、廃棄物処理、講座関連、一次産業・循環関連などが全国の事業所で展開されています。 松爲 どうして、こんなに多様な事業が展開されているのですか。 田嶋 先ほど述べた協同労働の目的や原理・原則を大切に事業を広げてきました。協同労働という働き方に到達するまでに、40年にわたり試行錯誤を重ねてきた歴史が反映されています。  協同労働の初めは、1970年代の失業対策事業の後処理的な仕事から始まりました。1980年代に欧州からワーカーズコープの概念を導入するとともに、病院清掃や建物総合管理、生協や農協などの物流センターの仕事が取り入れられるようになりました。2000(平成12)年に介護保険制度が始まるとホームヘルパー養成講座や介護事業が起こされ、2003年の地方自治法の改正で指定管理者制度が導入され、民営化・市場化が推進されると、コミュニティ施設、学童保育や児童館、保育園などでの子育て事業や、高齢者・障害者などが利用する公共施設の管理運営が始まりました。その後、児童の放課後等デイサービスや就労支援事業所なども展開してきました。  さらに、2015年に生活困窮者自立支援制度が始まると、さまざまな社会的困難や生きづらさを抱えた人たちを対象として、病院清掃や物流現場、子育て支援から若者支援、高齢者ケアまで、あらゆる事業領域に「ともに働く」取組みを広げてきました。また、2011年の東日本大震災を契機に、被災地や被災者主体の仕事おこしなどの事業も展開してきました。 松爲 社会全体の動きと一体化して次から次へと新たな仕事(事業)を拡大してきているんですね。ワーカーズコープの姿がしだいに見えてきました。 労働者協同組合法の成立 松爲 そうした活動の歴史での最大のトピックが、2020(令和2)年12月に成立した「労働者協同組合法」ですね。 田嶋 まさに、その通りです。ワーカーズコープの目的や原理・原則が全面的に反映された、私たちにとっては待ちに待った法律です。  この法律の第一条で、「生活との調和」を図るワークライフバランスを保ちつつ、「意欲及び能力に応じて就労する」ディーセントワークの「機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ」たうえで、その解決に向けて労働者協同組合は、 @「組合員が出資し」(出資原則)、「それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ」(意見反映原則)、「組合員自らが事業に従事する」(事業従事原則)ことを基本原理とすること A「多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業」を推進して、「持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする」こと  とされています。 松爲 つまり、ワーカーズコープは、ディーセントワークやワークライフバランスの達成に向けて、障害を含む多様な背景のある人たちが参加するのですね。労働関係の諸法律のもとで権利が保護されつつ、自ら出資し、その主張・意見が十分に尊重されながらともに働き、持続可能な地域社会の構築・発展に貢献することを目的にした組合ということなのですね。 実際の地域事業所の活動 松爲 では、次に実際の活動の状況を、日本労働者協同組合連合会に加盟する「センター事業団」の事業所で働く3人の方におうかがいしたいと思います。コロナ禍の最中のため、WEB会議システムによるオンライン取材とさせていただきました。  最初は、センター事業団東関東事業本部の副本部長で、松戸地域福祉事業所「あじさい」元所長の小林(こばやし)文恵(ふみえ)さんです。 小林 私たちの事業所は、2006年に民家を活用した高齢者デイサービスを開所したのが始まりです。篤志家(とくしか)の方が個人的に始められたデイサービス事業を引き継いで、障害のある人、高齢の人、ニートや引きこもり経験のある若者が、それぞれ自分の役割を持って一緒に介護やデイサービスの活動を始めました。そうした仲間が組合員となって一緒に働いていくうちに、「介護の現場では、自分らしく働くことが、だれにだってできる!」ということに気づいたことから、2013年から精神障害のある人のために介護職員初任者研修を始めました。ですが、研修を修了して資格を取得しても、すぐに介護の現場では働けませんでした。一般就労がむずかしい現状を感じたことから、2015年に就労継続支援B型事業と自立訓練(生活訓練)事業をあわせ持った多機能型事業所を立ち上げて、そこで働いてきました。  また、地域の人たちが参加できるさまざまな講座やイベントも毎月開催しています。そうした地域とのつながりが契機となって、2017年からは松戸市の学習支援事業を皮切りに、2019年からは学童保育も請け負っています。また、千葉県から障害のある人の職業訓練講座を受託したり、暮らしのサポーター養成講座なども行っています。 松爲 高齢者デイサービス事業を皮切りに、多機能型事業所の運営を基軸としながらも、介護職員初任者研修、学習支援、学童保育などの事業を展開されてこられたのですね。そのなかで、障害のある人、高齢者、ニートや引きこもり経験のある若者などの働く場を確保するとともに、地域の社会的ニーズに応えるさまざまな事業を展開されてきたのですね。  次にお話ししていただくのは、東京都の豊島地域福祉事業所「自立支援センターまめの樹」生活支援員主任の佐藤(さとう)舞優(まゆ)さんです。 佐藤 私たちの活動は、2004年に東京都立中野養護学校(現東京都立中野特別支援学校)から進路相談を受けて、生徒・保護者・教員が受講するホームヘルパー2級(現介護職員初任者研修)の資格講座を学校で開講したことが始まりです。卒業後の働く場を確保することを模索しながら、東京都委託の職業訓練講座や居場所づくりに取り組んできました。障害のある人が地域で生活をしていくための相談や息抜きのできる場所として、2007年に開所しました。  現在、事業所は、大塚事務所(事務補助業務、清掃道具の受発注、製造・加工)、東池袋事務所(公園・施設の清掃業務、自主製品制作)、カフェ(喫茶店)、イベントスペース(イベントの準備・片付け、自主製品制作)、川越畑・鶴瀬作業場(野菜・花の栽培、自主製品制作)の5カ所にまで拡大しています。これらの事業のおもなものは、障害福祉サービスである就労継続支援A型・B型事業として展開しています。  また、これと併行して、カフェでは集いの場や子ども食堂、豊島区フレイル予防センターでは大人食堂、都内の特別支援学校では就労支援講座を開いています。ほかにも、大学生対象の福祉講座、小学生対象の学習支援、子どもの緊急電話相談、農場での農業体験、イベント会場での演奏会など、多彩な活動が毎月のように行われています。 松爲 立上げの契機は養護学校卒業生の進路相談だったのですが、進路先確保の流れが就労継続支援A型・B型へと発展し、併行して、地域ニーズに応じていろいろな催しを定期的に開催して今日に至ったということですね。  最後にお話しいただくのは、センター事業団北海道事業本部副本部長で、札幌地域福祉事業所「篠路(しのろ)まちづくりテラス和氣藍々(わきあいあい)」の石本(いしもと)依子(よりこ)さんです。 石本 2010年に札幌市の「篠路コミュニティセンター」の指定管理をセンター事業団で請け負ったのが始まりでした。その活動を通してつちかってきた地域団体や住民とのつながりを活かして、公的機関ではできないさまざまな活動を取り込んだコミュニティセンターの設立を目ざして、2017年にコミュニティカフェとしてオープンしました。設立に至るまでは少なからず苦労があり、地域の人たちに私たちの思いを理解していただくために、懇談会をくり返してきました。設立の翌年からは、札幌市の「障がい者協働事業所」に選定されて事業を展開しています。カフェでは、精神障害のある人などが働いています。  現在、さまざまな障害にかかわる課題や困りごとなどを、地域に発信して語り合うイベントを毎日のように開催しています。また、地域の居場所あるいは篠路の街の歴史を伝える拠点としても、さまざまな催しが行われています。地域のみなさんがやりたいと思う活動も、どんどん取り入れて、地域のどんな人でも活躍できる役割や出番をつくり、地域の課題を解決できるしくみと仕事を展開しています。 松爲 みなさんの活動をおうかがいすると、ワーカーズコープの事業所は、障害の有無にかかわりなく多様な人たちに仕事を確保しつつ、地域とつながるさまざまな取組みを併行していることがよくわかりました。  「あじさい」や「まめの樹」さんのように、仕事の確保を基軸として展開する場合や、「和氣藍々」さんのように、地域のコミュニティセンターとして機能するための拠点としてのカフェの開設など、設立の経緯や現在の活動内容に違いがあっても、ワーカーズコープの目的や原理・原則が活かされていることを実感しました。 まとめ  ワーカーズコープで働く人は、多様な就労の機会を生み出しながら、労働関係法規で権利保障されている労働者であることに加えて、出資者として事業運営にも参画します。そのうえ、持続可能で活力ある地域コミュニティの創出を目ざした活動を併行しています。  こうした新たな働き方が脚光を浴びている背景には、働くことを通して地域のなかで自分らしく生きてQOL(※)を向上させていく、ワークライフバランスやディーセントワークを志向する働き方の一つのモデルとなっているからでしょう。  協同労働の思想や原理・原則を、そのまま既存の企業運営に取り込むことはできません。ですが、持続性のある企業活動を目ざす企業文化を育成していくには、障害のある人を含めた多様な人たちに、「意義のある(と自覚できる)仕事を持ちながら地域にあって生活を享受できる働き方」を提供していくことが必要なのではないでしょうか。  ワーカーズコープは、こうした「働くことの意味」と、これを企業文化として根づかせることについて、あらためて考える機会となりました。 ※QOL:Quality of Lifeの略。「人生の質」や「生活の質」のこと 写真のキャプション 日本労働者協同組合連合会専務理事の田嶋康利さん 日本労働者協同組合連合会が入るオフィス 各地の事業所のみなさんには、オンラインでお話をうかがった ワーカーズコープ・センター事業団東関東事業本部副本部長、あじさい元所長の小林文恵さん 民家を活用した「あじさい」 あじさいでは高齢者デイサービスを実施している 自立支援センターまめの樹生活支援員主任の佐藤舞優さん まめの樹の事業の一つである清掃作業の様子 「Cafeまめのき」 (写真提供:自立支援センターまめの樹) 「篠路まちづくりテラス和氣藍々」 ワーカーズコープ・センター事業団北海道事業本部副本部長、篠路まちづくりテラス和氣藍々の石本依子さん 和氣藍々では音楽ライブなど、さまざまな催しが行われている(写真提供:篠路まちづくりテラス和氣藍々) 【P26-27】 省庁だより 令和3年版 障害者白書概要A 内閣府ホームページより抜粋  前月号に続き、今月号は、「令和3年版障害者白書」概要の第5章、第6章、第7章を紹介します。 第5章 日々の暮らしの基盤づくり 第1節 生活安定のための施策 ●障害福祉サービスの計画的な基盤整備  都道府県及び市町村では、「第5期障害福祉計画」及び「第1期障害児福祉計画」に基づく福祉施設の入所者の地域生活への移行、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築、地域生活支援拠点等の整備、障害児支援の提供体制の整備等の取組を実施  また、厚生労働省では、地域共生社会の実現に向けた取組、障害者の社会参加を支える取組などをポイントとする「第6期障害福祉計画」及び「第2期障害児福祉計画」の策定に係る基本指針を2020年5月に改正 ●2021年度障害福祉サービス等報酬改定  障害者の重度化・高齢化を踏まえた地域移行・地域生活の支援、相談支援の質の向上、効果的な就労支援、医療的ケア児への支援などの障害児支援の推進、感染症等への対応力の強化などの課題に対応 ●地域における発達障害者支援体制の整備  当事者同士のピアサポート、ペアレントプログラム・ペアレントメンターによる家族支援、発達障害者支援センターを中心とした相談支援、青年期の発達障害者等の居場所作り等の支援など、地域の支援体制・対応力の強化 ●スポーツの振興 ・スポーツを通じた共生社会実現に向けた取組  パラリンピアン等の学校での講演やパラ競技体験、ICT機器を活用したパラアスリートと児童生徒の交流、県民パラスポーツ大会や学校区、企業対抗等の様々なレベルでのパラスポーツ体験会等の実施 ●文化芸術活動の推進 ・「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」に基づく取組  障害者による文化芸術活動の幅広い促進、芸術作品等の創造への支援強化や、障害者による文化芸術活動に係る地域での作品等の発表等、障害者の文化芸術活動の充実に向けた各種取組を実施 第2節 保健・医療施策 ●精神保健医療福祉施策の取組状況  「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」(厚生労働省)が、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築には、障害者等の日常生活圏域を基本として、市町村などの基礎自治体を基盤として進める必要があるなどとした報告書を2021年3月に取りまとめ 第6章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策 ●移動等の円滑化の一層の推進 ・「バリアフリー法」の改正  2021年4月、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)の一部を改正する法律」が全面施行。公共交通事業者等に対するソフト基準適合義務の創設、優先席・車椅子使用者用駐車施設等の適正な利用、市町村等による「心のバリアフリー」を推進 ●ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進 ・「バリアフリー法」に基づく心のバリアフリーの推進  「バリアフリー教室」の全国各地での開催、鉄道利用者への声かけキャンペーン等の啓発活動の推進、障害のある人等が公共交通機関を利用する際等の支援・接遇を的確に行うためのガイドラインや研修モデルプログラムを交通事業者に向けて作成、教育・研修を促進 ●公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化の推進 ・鉄道におけるバリアフリー化  2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、バリアフリールートの複数化、エレベータの大型化やホームドアの設置等のバリアフリーの高度化を推進。新幹線においては、「移動等円滑化基準」を改正し、2021年7月以降に導入される全ての新幹線車両について、車椅子用フリースペースの設置が義務付けられた。  駅ホームの安全性向上については、ホームドア整備の前倒しや駅員による誘導案内などハード・ソフト両面からの転落防止対策を推進 ●安全な交通の確保 ・障害のある人等の利用に配慮した信号機等の整備の推進  音響により信号表示状況を知らせる音響信号機、青時間までの待ち時間及び青時間の残り時間を表示する経過時間表示機能付き歩行者用灯器等のバリアフリー対応型信号機等の整備の推進  Bluetoothを活用し、スマートフォン等に歩行者用信号情報を送信するとともに、スマートフォン等の操作により青信号の延長を可能とする「歩行者等支援情報通信システム(PICS)」の整備を推進 ●防災、防犯対策の推進 ・「災害対策基本法」の一部改正  2021年に、個別避難計画の作成を市町村長の努力義務とすること等を盛り込んだ「災害対策基本法」の一部改正が行われた。これを踏まえ「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組方針」に個別避難計画の作成・活用に係る具体的手順等を追加 第2節 障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策 ●情報アクセシビリティの向上  「デジタル活用共生社会」の実現を目指すべきであるとしたデジタル活用共生社会実現会議(総務省)の報告に基づき、障害のある人や高齢者等がICT機器の利用方法を学ぶことのできる「デジタル活用支援員」の取組等を推進 ●社会参加を支援する情報通信システムの開発・普及 ・電子投票の実施の促進  自書が困難な選挙人の投票を容易にもするタブレット端末などの汎用機を用いた電子投票が実施できるよう電子投票システムの技術的条件の見直しを実施。地方公共団体に対して情報を提供 ●読書バリアフリー基本計画の策定  2019年施行の「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」に基づき、2020年7月に、アクセシブルな書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上等について取り組む「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」を策定 ●コミュニケーション支援体制の充実 ・公共インフラとしての電話リレーサービス  聴覚に障害がある人が家族などに頼らずに電話をかけられるよう、手 話通訳や文字通訳に対応するオペレーターを配置して支援する「電話リレーサービス」を推進。2020年施行の「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」に基づき、2021年7月からの公共インフラとしての電話リレーサービスの開始を目指し準備を進めている 第7章 国際的な取組 ●国際協力等の推進 ・障害者のエンパワメントと障害主流化促進プロジェクト  「JICA(独立行政法人国際協力機構)」の技術協力プロジェクトにより、南アフリカ共和国社会開発省が障害者に対する福祉サービスを地方行政レベルで実施するための指針(ガイドライン)を作成、2020年12月に公表 「障害者白書」は、内閣府ホームページに掲載しています(★) ★https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html 【P28-29】 研究開発レポート 「企業と地域関係機関・職種の連携による難病 患者の就職・職場定着支援の実態と課題」の概要 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 はじめに  近年、身体、知的、精神障害等について、効果的な職業リハビリテーションのあり方は「企業と地域関係機関・職種の連携による就職・職場定着支援」として総合化しています。難病の職業リハビリテーションは発展途上ですが、難病のある人、支援機関、事業主等への調査分析により、企業と地域関係機関・職種の連携による就職・職場定着支援の具体的課題が明確になってきています。一方、難病のある人の就労支援は、現在、障害者雇用支援分野だけでなく、難病の保健医療分野での就労支援や治療と仕事の両立支援の分野においても、新たな課題として取組みが発展しています。しかし、多分野間の支援目的や支援枠組等が異なるため効果的な連携はしばしば困難になりやすいといった課題が見出されます。  そこで、本研究は、難病のある人の就職・職場定着支援における多様な関係者の取組みの実態と課題を網羅的に把握し、それに基づき「関係者への情報提供ツール」として、多様な関係者の効果的な役割分担と連携を促進する見取り図となるパンフレット等(就労支援活用ガイド、リーフレット)および地域障害者職業センター等による難病のある人への職業リハビリテーションの実務マニュアルとして活用できるハンドブックを作成することを目的としました。 1.調査研究の方法  障害者職業総合センター(以下、「当センター」)では、従来から障害者雇用支援関係者だけでなく、難病の就労支援に関わる保健医療関係者にも、調査研究結果に基づく難病のある人の就労支援ニーズや効果的支援のあり方や障害者の雇用関係の制度の整備状況など、専門職研修で情報を提供してきました。本研究では、そのような専門職研修の後に、参加者から具体的な支援の実施可能性や実施課題等をアンケートで把握しました。  また、その他の難病の保健医療機関・専門職、障害者雇用支援関係者、難病当事者等の具体的支援ニーズをさらに把握するため公募によるワークショップを実施し、グループワーク等による地域での多機関・多職種の連携場面を模すことにより、多様な支援の実施可能性や実施課題等を参加者からアンケートで把握しました。  加えて、関係者への情報提供ツールは、これらにより明らかになった関係者の取組み意向や具体的な実務課題をふまえてその内容を具体化し、関係者の意見や内容の調整を経て完成させました。 2.調査研究の内容 (1)難病就労支援・両立支援の専門職研修や役割分担・連携ワークショップ  専門職研修やワークショップの参加者のアンケート回答の分析により、就労支援ニーズや効果的支援のあり方の情報を提供することで、保健医療分野を含む地域関係者の各専門性をふまえた役割分担・連携への取組みに関する意向を高めることができました。  しかし、より具体的な実務の場面においては多くの課題に直面することが想定されることが明らかになりました。具体的には、@保健医療分野の医療・生活相談場面において、難病のある人にとって、どのような状況が、就労支援や治療と仕事の両立支援につながるのかといった判断が困難になっていること、A保健医療分野から障害者雇用支援分野につないでも、障害者手帳のない難病のある人について、効果的な職業リハビリテーションサービスが実現されにくいこと、B今回のワークショップの場により、難病のある人の就労支援ニーズに対応できる地域の多分野の関係機関との役割分担・連携のあり方を検討できたが、実際の地域においては、今後、多様な関係機関・専門職と難病のある人とのコミュニケーションを促進する方法が課題となること等があげられました。 (2)関係者への情報提供ツールの作成  関係者への情報提供ツールは、前項で明らかになった関係者の取組み意向や具体的な実務課題をふまえ、課題解決に効果的になるよう、表の通り対象者と内容を整理して3種類としました。  具体的な内容は講義・講演で提供してきた当センターの先行研究の情報に加え、本研究での各機関・職種の取組み意向や課題認識、さらに各分野の実務経験者や政策担当者の意見と内容調整により作成しました。 3.おわりに  「企業と地域関係機関・職種の連携による就職・職場定着支援」が、効果的な職業リハビリテーションのあり方として明確になってきたことをふまえ、本研究においては、それを難病のある人の支援において、障害者雇用支援、難病の保健医療分野での就労支援、治療と仕事の両立支援の連携と役割分担により実現するための地域支援の実態と課題を明確にしました。  専門職研修やワークショップにおいて、難病のある人や難病のある人を雇用する事業主の支援ニーズに対応できる効果的な支援内容を当センターの実証研究に基づき情報提供することで、保健医療分野を含む地域関係者の各専門性をふまえた役割分担・連携への取組み意向は高まりました。  このような関係者を対象としたツールとして上記のような情報提供ツールを開発しましたが、今後、これらの情報提供ツールの普及と活用により、難病のある人が治療と両立でき無理なく活躍できる仕事に就き、職場での理解と配慮により必要な通院や体調管理を継続して働き続けることができるようにするために、地域の支援体制の構築や関係者の人材育成を進めることが重要と考えます。 ★調査研究報告書(No.155)および情報提供ツールは、下記ホームページからダウンロードいただけます https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku155.html ◇お問合せ先:研究企画部企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 表 難病の職業リハビリテーションの関係機関・職種別に見出された実務上の課題に対応できるようにするためのハンドブック等の開発 関わる機関・職種 障害者雇用支援の専門支援者 保健医療分野の医療・生活相談支援担当者 難病の相談支援に関わる幅広い関係者 取組み意向のある難病支援 保健医療分野での就労支援との連携の意向(軽症者、進行性、就業中) 軽症者中心に保健医療分野から適切な就労支援や両立支援につなぐ意向 難病のある人が無理なく治療と仕事の両立ができる就職先の開拓に企業啓発も含め地域全体で取り組む意向 実務上の主な課題 ●障害者手帳の有無にかかわらない職業リハビリテーション ●治療と仕事の両立支援との効果的連携 医療・生活相談支援場面での就労支援ニーズ対応 地域関係機関・職種の連携体制の構築 開発したハンドブック等 難病のある人の職業リハビリテーションハンドブックQ&A 難病のある人の就労支援活用ガイド 始まっています!難病のある人の就労支援、治療と仕事の両立支援 形式 100ページ弱の冊子 20ページのパンフレット 4ページのリーフレット 実務上の課題に対応するために必要な情報の整理方針 ●難病患者の支援に活用できる保健医療、障害者雇用支援、治療と仕事の両立支援の諸制度・サービスの整理・紹介 ●企業と地域関係機関・職種の連携による就職・職場定着支援のポイントの明確化 難病患者の就労支援ニーズと効果的支援のあり方についての、より個別的な情報提供 ●講義・講演のポイントの情報提供  −難病患者の就労支援ニーズと効果的支援  −保健医療、障害者雇用支援、治療と仕事の両立支援の制度整備状況 先行研究成果等の活用、関係者との調整の内容 ●アンケートにおいて地域支援者の取組み意向のあった具体的な支援内容の確認と調整 ●関係分野にわたる、具体的な連携実務の流れの整理と共通認識の確認 難病患者の実態調査の分析結果(難病の症状、仕事内容、職場配慮と就労支援ニーズの関係)のわかりやすい提供 ●講義・講演で提供してきた基本的情報の整理 ●関係分野の連携の全体像についての、関係部署との共通認識の確認 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 東京 施設のコロナ感染対策「事例集」  東京都が、これまでの新型コロナウイルスクラスター発生施設への支援事例などから、「高齢者施設・障害者施設の新型コロナウイルス感染対策事例集」を作成した。感染症がひとたび発生すると集団感染となる例も多いため、日ごろの感染対策や施設体制の整備をうながす。事例集では、誤った感染対策事例や正しい対策方法・解説などを、テーマごと(環境整備、医療廃棄物、手指衛生、個人防護服、管理体制、ほか)にイラストを用いてわかりやすく紹介。東京都福祉保健局のウェブサイトからダウンロードできる。問合せは、同局感染症対策部計画課まで。 電話:03−5320−4254 東京都 感染対策事例集 検索 生活情報 JR東日本が車いす利用者らの乗降アナウンス見直しへ  東日本旅客鉄道株式会社(東京都)が、車いす利用者や視覚障害者らの乗降時に流れるアナウンスの内容を一部見直す。障害者団体などから、痴漢やストーカーの被害につながっているとして改善を求める声が上がり、国土交通省が、鉄道事業者に別の方法を検討するよううながしていた。  アナウンスはもともと、乗務員らが乗車位置や降車駅情報を共有したり、乗降時に異常を覚知したりするために使用しているが、一部の路線で実施されているタブレット端末による情報共有の方法を拡大させ、将来的にはアナウンスをやめる方向で検討するという。 働く 宮城 市施設にインクルーシブカフェ  介護・福祉施設などを運営する「東北福祉ビジネス株式会社」(仙台市)が、多様性を重んじるインクルーシブ社会をコンセプトにした飲食店「Keyaki no Mori CAFE & ARTS(けやきのもりカフェアンドアーツ)」を、日立システムズホール仙台(仙台市青年文化センター)内にリニューアルオープン。障害者の就労支援にも取り組む。  店では約80席を用意し、県産食材を使ったセット料理やパスタ、カレーなどを提供。11月からは就労継続支援B型事業を始め、利用者が清掃や食材準備補助などの作業に加わる。各地の事業所とも連携し、利用者が手がけた絵画やドライフラワーなども販売していく予定。営業時間11〜21時(日立システムズホール仙台の開館時間に準ずる)。不定休。 電話:022−343−9141 https://sver.info/keyakinomori_cafe/ 新潟 農家らと炊き込みご飯商品を開発  障害者就労支援施設「ワークセンターにしうみ」(糸魚川(いといがわ)市)が、市内のコメ農家らと共同で「炊き込みご飯の素(もと)」のセット商品などを開発した。にしうみでは、施設で飼育している地鶏「翠鶏(みどり)」を使ったスープを開発し、レトルト食品の製造機械も導入。セット商品は市内の生産者「お米の配達人」の協力で、ブランド米「新之助」を組み合わせた。炊き込みご飯の素セットは市内各所で販売するほか、一般サイトでも購入できる。一箱3900円(税込、送料込)。問合せは「お米の配達人」まで。 電話:025−556−7001 https://www.sonoda-t.com/ 石川 「地ビール」の新商品を発売  社会福祉法人佛子園(ぶっしえん)の障害者福祉施設「日本海倶楽部(くらぶ)」(鳳珠郡(ほうすぐん)能登町(のとちょう))が運営する地ビール工房が、新ビールとして自家栽培の島唐辛子を一緒に発酵させた「焼肉ピルス」と、自家焙煎のコーヒー豆を漬け込んだ「珈琲焙煎(ばいせん)ピルス」を開発した。1998(平成10)年から地ビール開発を始めた工房では、これまで「ダークラガー」、「奥能登伝説」などを販売、新商品の発売は15年ぶりとなる。通販サイトでも購入可能。3本セット2850円(税込)から。 https://beerclub.base.shop 長崎 企業とドレッシングを共同制作  「一般社団法人たまご」(長崎市)と、「チョーコー醤油株式会社」(同市)が共同制作したドレッシング「幸せ運ぶ白のまちドレ じゃがいもドレッシング」が発売された。  利用者20人らが、チョーコーのアドバイスを受けながら県産のジャガイモを使ったドレッシングのレシピを考案。すりおろしたジャガイモとタマネギに隠し味でベーコンエキスを入れ、イタリア産チーズも加えてコクを出した。長崎の出島やジャガイモ、ドレッシングのキャラクターを描いたラベルも利用者たちがデザインし、ラベル貼り作業を担当した。チョーコー醤油のオンラインショップなどで販売。1本200ml、561円(税込)。 https://chokoshoyu.shop/dressing/ 本紹介 『はるはる日記』  福祉事業者に向けた企画提案やサービスを展開する「Kプランニング」代表でライターの戸原(とはら)一男(かずお)さんが、知的障害者の日常を描いた漫画&エッセイ『はるはる日記』(文・戸原一男/絵・伊東(いとう)ぢゅん子)を自社発行した。戸原さんは障害者就労支援施設に長年勤務し、全国の就労支援施設270カ所以上を取材。本は6〜10コマの漫画50話と、漫画を解説したミニエッセイで構成され、知的障害者の「あるある話」や事業開発のヒント、支援のあり方、施設の好事例も掲載している。A5版、114ページ、2000円(税込、送料込)。「Kプランニング」ウェブサイトから注文可能。 https://www.kplanning.biz/ ミニコラム 第8回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は松爲委員が執筆しています。ご一読ください。 「リハビリテーションカウンセリングのあり方」 東京通信大学教授 松爲信雄  職業リハビリテーション分野の知識と技術の包括的な体系化を進めることは、長年の私の課題でしたが、コロナ禍で在宅就業が強要されたおかげで、集中的に執筆の時間を獲得できることになりました。  その結果、8月に「キャリア支援に基づく職業リハビリテーションカウンセリングー理論と実際ー」(ジアース教育新社)(※)を刊行しました。この過程で強く意識したのが、「人間と社会のための新たな学術体系」としてのリハビリテーションカウンセリングのあり方です。  社会的・個人的な実践で直面する個別的な課題を具体的に解決することを目ざす「新たな学術体系」は、「あるものの探究」(知の探求:認識科学)と「あるべきものの探求」(目的や価値の探求のための技術:設計科学)の統合が不可欠です。  そのため、リハビリテーションカウンセリングは、有限の資源のもとで、働くことを基軸とした社会参加を通して「生活の質(Quality of Life)」と「健康(Well-Being)」を追求しながら、人類の持続可能な社会の構築に向けた統合的システムの構築を目ざす設計科学であると位置づけ、認識科学としての「理論的基盤」と、技術の設計科学としての「個別支援の実際」、「雇用環境調整の実際」、「ネットワークと人材」の4部19章で構成しました。  これによって、リハビリテーションカウンセリングは、障害の有無にかかわらず、すべての人々の「生活の質の向上」と「健康の増進」を理解する一つの扉となることを願っていますが、まだ始まったばかりです。新たな学術体系に向けた試みはこれからも続くことでしょう。 ※本誌2021年11月号「ニュースファイル」の「本紹介」に掲載しています 2021年度地方アビリンピック開催予定 11月下旬〜1月 千葉県、新潟県、滋賀県、京都府、広島県、佐賀県、大分県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *千葉県、新潟県、滋賀県、京都府、広島県、佐賀県、大分県以外は開催終了 ※全国アビリンピックが12月17日(金)〜12月20日(月)に、東京都で開催されます。 地方アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 写真のキャプション 千葉県 新潟県 滋賀県 京都府 広島県 佐賀県 大分県 【P32】 掲示板 受講料無料 令和3年度就業支援スキル向上研修のご案内 ※オンライン形式(1日間)と集合形式(2日間)の合計3日間の日程です。全日程の参加が受講条件となりますので、ご了承ください。 内容 全コース共通講座 (オンライン形式) ■職業リハビリテーションにおけるヒューマンスキル (対象者と協同的な関係を築くスキルについての講義・演習) ■職業リハビリテーションに関する調査・研究の最新情報 (障害者職業総合センターにおける最新の調査・研究に関する講義) コース別講座 (集合形式) 精神・発達・高次脳機能障害の3コースから選べます! ■就業支援の実際 (職業準備性の向上や職場定着に関する支援技法についての講義・演習) ■ケーススタディ (受講者の支援事例をもとにした事例検討) 日程 (オンライン形式)令和4年1月14日(金) (集合形式)令和4年1月19日(水)、20日(木) 会場 障害者職業総合センター(千葉市美浜区若葉3-1-3) お申込み・お問合せ先 職業リハビリテーション部研修課 TEL 043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp URL:https://www.jeed.go.jp/ 対象者 次の@〜Bのすべてを満たす方が対象となります。 @労働、福祉、医療、教育等の関係機関の職員の方であって、障害者の就業支援の実務経験が3年以上の方 A希望するコースの障害種別に対する就業支援経験があり、当該障害種別の就業支援事例を提出できる方(事例提出必須) B3日間のすべての科目を履修できる方 お申込み 申込方法:「就業支援スキル向上研修受講申込書」に必要事項を記入し、申込受付期間内にメールでお申し込みください。 ※研修申込には「オンライン研修受講規約」に同意をしていただく必要があります。 受講申込書・カリキュラム:当機構ホームページからダウンロードできます。 申込受付期間:令和3年10月26日(火)〜12月2日(木) https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/skillup_seminar.html 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 次号予告 ●リーダーズトーク  株式会社ファミリーマート(東京都)の執行役員で管理本部長の垣見俊之さんに、同社が推進する障害者雇用の取組みや、今後の展望などについて、お話をうかがいます。 ●職場ルポ  物流システムの開発・設計・製造などを行う株式会社ダイフクの滋賀事業所(滋賀県)を取材。同社でのジョブマッチングにおける工夫などについてお伝えします。 ●グラビア  全国でビルメンテナンス業を行う太平ビルサービス株式会社の東京支店(東京都)を訪問。アビリンピックで活躍し、資格取得なども目ざす障害のある社員をご紹介します。 ●編集委員が行く  原智彦編集委員が、東京都多摩エリアの特別支援学校と、その卒業生が働く企業を取材。卒業生の活躍などについてお話をうかがいます。 公式ツイッター始めました! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします @JEED_hiroba 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 埼玉県立大学 教授 朝日雅也 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原智彦 ホンダ太陽株式会社 社友 樋口克己 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 東京通信大学 教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学 准教授 八重田淳 【裏表紙】 第41回 アビリンピック 全国障害者技能競技大会 開幕 アビリンピックとは? アビリンピックの正式名称は「全国障害者技能競技大会」です。「アビリティ」と「オリンピック」を合わせて「アビリンピック」と呼んでいます。 SNSはじめました! Twitter Instagram Facebook などなど Follow Me! アビリンピックマスコットキャラクター ライブ配信もやってるアビ! 東京ビッグサイト 東京都江東区有明3-11-1 全25競技+デモ競技2種目 選手約380名 Tokyo 技能五輪・アビリンピック2021 マスコットキャラクター わざねこ 令和3年12月 17日(金) 開会式 18日(土) 技能競技 19日(日) 技能競技 20日(月) 閉会式 アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、会場への入場は選手・関係者等に限ります。(事前登録が必要)式典(合同開会式、合同閉会式)は、オンライン開催とします。 ●主催 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、東京都 ●お問合せ先 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 TEL:043-297-9516 12月号 令和3年11月25日発行 通巻530号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)