【表紙】 令和4年4月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第535号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2022 5 No.535 職場ルポ 一人ひとりに合わせた実習で、身につく自信 株式会社栄和産業(神奈川県) グラビア 習得した知識・技能を職場で活かす〜国立職業リハビリテーションセンター修了生の活躍〜 TAKEUCHI株式会社(東京都)、国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県) 編集委員が行く 「障害ではなく能力を見よ」 この人を訪ねて 働く障害者と、雇用側に求められるもの ソーシャルハートフルユニオン 書記長 久保修一さん 「かわいた大地に作物を育てるぞ」岐阜県・加藤(かとう)利和(としかず)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 5月号 【前頁】 心のアート 虫好き青年の心の灯 Konomi 文書作成ソフトMicrosoft Wordを使用して作成/サイズ:A3(297mm×420mm)  「一人で黙々と作業をしている所を、傍(かたわら)で照らし、見守っていてくれる光」をテーマに描いたイラストです。  虫が好きで、さまざまな虫モチーフの物をつくっている青年が、暗い部屋で、ランプをつけながら、ホタルのランプをつくっている所を、ドアの外から覗いて、見守っているような感じにしました。 (文:Konomi) Konomi(このみ)  愛媛県新居浜(にいはま)市在住。1997(平成9)年10月5日生まれ。自閉症とADHDがある。  不登校になった中学生のときに、母にワードイラストを紹介され、独学で技術を磨く。  高等部卒業後は在宅で作品を制作し、さまざまな公募に応募しながら、銀行や市役所などで展覧会も続けており、その回数は130回を超える。  自分のイラストを世界に広めて、みんなを元気にするのが夢。 協力:愛媛県障がい者アートサポートセンター 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2022年5月号 NO.535 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 虫好き青年の心の灯 作者:Konom この人を訪ねて 2 働く障害者と、雇用側に求められるもの ソーシャルハートフルユニオン 書記長 久保修一さん 職場ルポ 4 一人ひとりに合わせた実習で、身につく自信 株式会社栄和産業(神奈川県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 はじめての障害者雇用U 〜障害のある人が働きやすい職場づくり〜 第2回 視覚障害 JEEDインフォメーション 12 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ/令和4年度「地方アビリンピック」開催地一覧/作品募集 令和4年度 絵画コンテスト 働くすがた 〜今そして未来〜・写真コンテスト 職場で輝く障害者 〜今その瞬間〜 グラビア 15 習得した知識・技能を職場で活かす 〜国立職業リハビリテーションセンター修了生の活躍〜 TAKEUCHI株式会社(東京都)、国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 発達障害当事者の働きづらさのリアル 最終回 〜発達障害者が働きやすい職場とは?〜 姫野 桂 編集委員が行く 20 「障害ではなく能力を見よ」 MS&ADアビリティワークス株式会社(東京都) 編集委員 八重田 淳 省庁だより 26 令和3年 障害者雇用状況の集計結果A 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 研究開発レポート 28 第29 回 職業リハビリテーション研究・実践発表会Part2 パネルディスカッション T「メンタルヘルス不調による休職者への対応 〜職場復帰支援を考える〜」 U「職務創出とその支援 〜障害者雇用をしていくために〜」 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 表紙絵の説明 「乾いた大地で黙々と作物の世話をしている人の姿に強く心を打たれ、描いてみようと思いました。愛情を込めてていねいに作物を育て、やがて実ったら、どんなにうれしいだろう。働く人の腕をたくましく、力を込めて描きました。作物の葉の描写がむずかしかったです。最近は無理せずマイペースに楽しく作品を制作中です」(令和3年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-3】 この人を訪ねて 働く障害者と、雇用側に求められるもの ソーシャルハートフルユニオン 書記長 久保修一さん くぼ しゅういち 1965(昭和40)年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科中退。会社経営などを経て2014(平成26)年、障害者のための労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」を立ち上げ書記長に就任。NHKの福祉情報番組「ハートネットTV」の「障害者雇用」出演のほか、NHK福祉情報サイト「ハートネット」で「久保修一の『障害者雇用』スパルタ塾」を掲載中。おもな著書に『職場にいるメンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法』(日本法令)など。 障害者に特化した労働組合 −−障害者に特化した労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」の設立の経緯と、活動内容について教えてください。  きっかけは、私の知人から、知的障害のある息子さんについて相談を受けたことでした。働いている会社でひどい扱いを受けているようでしたが、とても個人で解決できそうにない状況でした。そこで私たち有志が集まり、一般の労働者のように団体交渉ができる労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」をつくることにしました。東京都労働委員会から資格適合認定を受けたのは、ちょうど日本が国連の「障害者の権利に関する条約」を批准し、効力を発生した2014(平成26)年2月です。知人の息子さんについては、私たちユニオンが間に入って交渉し、不払い分の賃金などを払ってもらった後、本人の希望で転職しました。  ソーシャルハートフルユニオンは、職種や雇用形態にかかわらず、働いている障害者であればだれでも加入できます。入会金3000円、会費は1カ月あたり1000円です。会員は現在500人ほどで、全国各地にいます。相談がある場合は、事務局のメールアドレスあてに個別で申し込んでもらうほか、月1回の労働相談会でも予約制で対応しています。 ボタンのかけ違いで負の連鎖も ――これまで、どのような相談に対応されてきたのでしょうか。  パワーハラスメントや不当解雇をはじめ、障害者差別や合理的配慮にかかわるものが多いですね。私たちは相談を受けるとまず、本人の行動によって解決できないかを一緒に考え、労働関係の法律の情報などを提供したりアドバイスをしたりします。職場での問題は、方向性を間違えると、かえって本人を取り巻く労働環境を悪化させかねません。必要に応じて、双方からていねいに話を聞きながら、慎重に解決策を見出していきます。  最近多いのは、コロナ禍での働き方をめぐる相談です。ある大手企業では、一般社員のテレワークや在宅勤務を進めているのに、障害のある社員については認めていませんでした。たまたま別の地方支社に勤める2人から相談を受け、私は本社の担当者に「本人の『安定して働き続けるために在宅勤務にしてほしい』という要望を、正当な理由なく認めない場合、何かあったら労災になりますよ」と伝えました。労働災害の予見可能なものを回避しないのは、雇用する企業側の義務違反にあたるからです。  私たちユニオンが交渉するときは法律的な面から詰めていきますが、いざ担当者とひざを突き合わせてみると、現場の本音が出てきます。今回の在宅勤務についての問題は、当初、「守秘義務や情報漏えいに課題がある」といっていたのですが、よく聞くと、じつは「テレワークでの社員の労務管理がむずかしい」ということでした。そこで私が「まず一度やってみて、課題をフィードバックすればいい」と提案したところ、予想以上にうまくいき、障害者雇用での在宅勤務が実現しました。障壁になっていたのは企業側の「できるわけがない」という固定観念だったようですね。  障害者雇用の現場では、ボタンのかけ違いも少なくないと感じます。あるとき、大手スーパーに勤める精神障害のある社員から「もっと仕事をがんばりたいのに、任せてもらえない」という相談がありました。人事担当者に聞いてみると「ゆくゆくは責任者に育てたいので、無理をさせたくなかった」とのことでした。せっかくの本人の向上心も、雇用側の配慮の気持ちも、かみ合わなければ、不当評価やパワハラといった負の連鎖を生んでしまいます。これは、早い段階から双方の意思疎通が図られていればすむ話でした。互いにいうべきことをいわず、聞くべきことを聞いていなかったのです。私は相談者にも厳しいアドバイスをしますが、職場では単に「合理的配慮をしてほしい」というのではなく「仕事をするうえでこういう支障があるから、こういう配慮をしてほしい」と具体的にいわなければ伝わりません 相談窓口の整備を ――障害者雇用に取り組む企業の方へアドバイスをお願いします。  いま障害者雇用率がゼロの企業は、ほとんどが一度も雇用したことのないケースだと思いますが、まずは失敗を恐れずトライしてほしいですね。ちなみに私は、初めて障害者雇用に取り組むような企業の担当者には、障害者職業生活相談員の資格認定講習で使われるテキストの熟読をすすめています。あのテキストは、本当によくできている内容だと思います。  すでに障害者雇用を進めている企業に対しては、きちんと機能する相談窓口の整備をおすすめします。これは労働基準法の安全配慮義務をはじめ、障害者雇用促進法、障害者虐待防止法を含めた法令順守(コンプライアンス)として必要だと思います。またこうした窓口がなければ、当事者の悩みの矛先が職場内の同僚や上司に向かうかもしれませんし、職場全体のパフォーマンス低下や企業の競争力低下にもつながりかねません。職場から独立して整備された相談窓口は、職場の社員全員を守ることになるのです。 人材育成のテーブルに載せる ――最後に、労働組合の立場から、障害者雇用のあり方について考えを聞かせてください。  みなさんご存知のように、障害者雇用促進法の第4条には、障害者である労働者は「自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、有為な職業人として自立するように努めなければならない」という一文があり、第5条では、事業者の責務として「能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない」とあります。  私自身も1種1級の身体障害者手帳を持っていますが、いまの社会では、障害があるということはどうしても不便です。その状況で健常者の5倍、10倍努力して働こうとしている障害者に対しては、雇用側もできるだけ健常者と同じように働ける職場環境を整えてこそ、労働契約が成り立つのだと考えます。  さらにいえば、障害者雇用促進法は2019(令和元)年に改正され、国の省庁や自治体など公務部門で障害者雇用を進めるうえで「活躍推進計画書」の作成が義務づけられました。法律上でも人材育成を求められるようになったわけです。これは、いずれ必ず民間部門にも適用されるでしょう。  企業は、雇用したからには障害者を人材育成のテーブルに載せていくことが、そして働く障害者も自分なりに努力していくことが、それぞれ求められているのだということを自覚しておく必要があると思います。 【P4-9】 職場ルポ 一人ひとりに合わせた実習で、身につく自信 ―株式会社栄和産業(神奈川県)― 障がい者雇用率が10%を超える鈑金工場では、養護学校や就労支援機関と連携しながら、一人ひとりに合わせた職場実習を中心にした人材育成に取り組んでいる。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社栄和産業 〒252-1125 神奈川県綾瀬市吉岡東4-15-5 TEL 0467-77-0878 FAX 0467-76-4706 Keyword:知的障害、精神障害、障害者就業・生活支援センター、職場実習、工場、ジョブローテーション POINT 1 職場実習は一度に2人まで、一人ひとりに合わせた柔軟な内容と期間で実施 2 障がいの有無に関係なく、入社後は全工程を2週間ずつ経験後に配属決定 3 入社後1年間は、「相談シート」や社長面談で個別にフォロー 障がい者雇用率10%超  1974(昭和49)年設立の「株式会社栄和産業」(以下、「栄和産業」)は、自動車の試作部品や建設機械部品などの加工・製作を手がける鈑金加工業として、県内外に13工場を展開している。  2021(令和3)年6月1日現在、全従業員162人のうち、障がいのある従業員が15人(身体障がい1人、知的障がい11人、精神障がい3人)で、障がい者雇用率は10.41%にのぼる。このほか外国人従業員39人、65歳以上のシニア従業員10人と、幅広い人材構成が特徴である栄和産業は、多様性を活かして付加価値を生み出す取組みが評価され、経済産業省の令和元年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれている。  2014(平成26)年から父・正士(まさし)さんの跡を継いで代表取締役社長を務める伊藤(いとう)正貴(まさたか)さんは「会社として障がい者雇用に取り組み始めたきっかけは、中途障がいのある社員が定年退職し、雇用率がゼロになったことでした。試行錯誤を経て、養護学校から職場実習生を受け入れたことで、大きくふみ出せました」と語る。 養護学校の先生に声をかけて  栄和産業で身体障がいのある社員1人が定年退職し、障がい者雇用率がゼロになったのは、約10年前のこと。このとき伊藤さんたちはハローワークに相談し、紹介された障害者就業・生活支援センター経由で、精神障がいのある社員を採用することができたという。ところが「当時の私には、どこに障がいがあるのか、まったくわからないほど順調に働いていたように見えたのですが、約1年後、急に体調を崩して離職してしまいました。その後もなかなか採用できず、一度、障害者雇用納付金を納めることにもなりました」と伊藤さんはふり返る。  そこで、障害者就業・生活支援センターなどから助言を受けて検討したのが、養護学校(特別支援学校)からの新卒採用だった。高卒採用のための学校関係者との情報交換会で、同席していた養護学校の先生に、在学生を対象とした職場実習の話をしたところ、「ものづくりの実習ができる場を探していたので助かります」と喜ばれ、すぐに職場の見学にも訪れたそうだ。  そして2014年、1人の実習生を2週間受け入れてみることにした。伊藤さんは、「職場実習にかかわることは何でも障害者就業・生活支援センターの担当者に相談しましたが、作業をうまくこなせるだろうか、危なくないだろうかと不安は尽きなかった」そうだが、実習生がスムーズに働く様子を見て、驚いたという。  「実習を始める前から、できないことや不安ばかりをあげていたことが、大きな間違いだったと気づかされました」  さっそく、同年のうちに本格的な在学生の職場実習をスタートさせたが、実習の質を落とさないため、一度の実習に2人までと決め、別々の部署で受け入れることにした。安全性については、「何か落ちてきても絶対に手を出してはだめ」と学校の先生が事前に教え込んでくれたことで、予想以上に徹底できたそうだ。  作業内容は先生と相談しながら、本人に合わせて柔軟に決めている。先生も、事前に工場を訪れて一日中作業を見学したり体験したりして、生徒たちの実習内容を考えるそうだ。具体的には、事務的な軽作業から溶接、レーザー、鈑金作業までと幅広い。実習期間は原則2週間だが、生徒によっては1〜3日のこともあれば、2週間を3回行うこともある。  栄和産業での職場実習は、就職への足がかりになるだけでなく「実習で自信をつけて、本人の自己肯定感が高まった」という話が先生たちの間で広まり、次々に申し込みが来たという。  これまでに栄和産業の職場実習には、就労移行支援事業所の利用者なども含め、110人以上が参加。このほかに、中学校の支援学級の生徒なども受け入れている。養護学校からは2016年に初めて卒業生1人を採用して以来、毎年採用を続けている。 配属前にジョブローテーション  栄和産業の新入社員は、障がいの有無に関係なく、原則として配属前に必ず2週間ずつ全工程をジョブローテーションする。プレス、レーザー、溶接、鈑金、仕上げ、検査、ベンダー(部品を曲げる)といった作業だ。4月の入社後6月末までに、本人から担当作業の第1〜第3希望までを出してもらい、得意不得意や特性を見ながら、現場の管理者と相談して配属先を決める。伊藤さんが説明する。  「特に障がい者雇用においては、何ができないかを見るのではなく、できることを認めることが大事だと思っています。その後は失敗してもいいから新しいことに挑戦し、できることを一つずつ増やしていきます」  配属時には「苦手なことはいったん棚上げにして、得意なことを先輩が見つけてくれるから、そこで勝負していこう」と激励する。そしてある程度の経験を積んだ後に、「不得手なこととあらためて向き合ってみたら、克服の方法も変わっているかもしれないよ」とうながしていくそうだ。  入社後1年間は、これも障がいの有無にかかわらず全員が、月に1回伊藤さんあてに「相談シート」を提出し、それをもとに社長面談も月に1回行っている。相談シートはアプリに入力する形で「不安なこと、不満があること、疑問に思うこと、うまくいかないこと、できるようになったこと、良い報告やうれしかったこと」などを記入するが、内容はプライベートなことでもかまわない。なぜなら以前、入社したての若い社員がプライベートな問題で離職したという、苦い経験があったからだと伊藤さんはいう。  「会社は基本的に、社員のプライベートには立ち入らない立場です。ただ、高校や養護学校を卒業したばかりの10代の社員は、まだまだ子ども。私も親や先生のような気持ちで『何でもいっていいよ』という場をつくりたかったのです」  相談内容は、職場・家庭内の悩みから異性関係までさまざまだ。伊藤さんは話を聞き、職場で対応できることは対応し、それ以外はアドバイスをする。  受け入れ先の部署には、当初は大まかに障がいがあることしか伝えていなかったが、いまでは本人の了解を得たうえで「アナログ時計が読めないのでデジタル時計に変える」、「漢字が苦手なのでふりがなをつける」といった具体的な配慮事項を伝えるようになり、現場のコミュニケーションも各段にスムーズになったそうだ。  コロナ禍で社会が不安定な時期には、社員からの相談も増えたという伊藤さん。障がいの有無にかかわらず、社員がだれでもいつでも相談できる窓口の必要性を感じ、昨年度から社内の環境づくりに乗り出した。  「具体的には、メンター制度のような体制をつくりたいと考えています。まずは外部の専門家に協力を仰ぎながら、社内で担当者を育てていく予定です」 新規事業も  2016年には、総務部から独立する形で企画部が発足。障がい者雇用をはじめ人事・教育・広報関連の業務を担当することになった。現在、部員9人のうち3人が障がいのある社員だ。  企画部で主任を務める伊田(いだ)一平(いっぺい)さんは、大学時代は映像分野を学び、障がい者雇用についての知識はほとんどなかった。入社後に、綾瀬市で実施している研修に参加したり、自分で本を読んで勉強したりしながら職場での支援や対応に活かしているという。伊田さんは、「職場では、本人と同じ目線に立ち、上からでも下からでもなく、フラットな関係性を心がけています。たまに気まずくなったら、無理になんとかするよりも、ほかの社員に担当を変わってもらうこともありますね」と話してくれた。  企画部では2017年、名刺事業を立ち上げた。きっかけは、同年に入社した重度の知的障がいのある20代の男性社員だ。入社当初は、荷札を折ってホッチキスで留める作業を担当していたが、伊藤さんが「本人が会社の売上げに直接貢献できるような仕事を考えてみよう」と企画部と相談。試しにラベルプリンターの作成をやってもらうと問題なくできたため、「名刺印刷の入力もできるかも」とパソコンに挑戦してもらったところ、これもクリアしたという。「彼はもともと、一つのことを練習し続けられる粘り強さがありました。入社後にその才能を開花させ、大きく飛躍しました」と伊藤さんは目を細める。  利益率を本業の製品と同じように計算して値段を決め、取引先などに営業をかけた。いまでは診療所の名刺や理容院のスタンプカード、社名入りの封筒の製作依頼も来ていると伊藤さんはいう。  「入社前まで長く福祉作業所に通っていた彼が納税者になり、社会に支えられる側から支える側になっています。『売り手よし、買い手よし、世間よし』の“三方よし”が整ったビジネスプランとして、周囲にも評価されました」  さらに障がい者雇用の拡大を目ざし、2018年には「バイオ事業部準備室」もつくった。いまは市販の栽培キットを使って、作業の抽出や収穫率の検証などを行っている。 アドバイザーが見守る  障がいのある社員は、7工場3部署に配属されている。そのなかの本社工場を見学させてもらった。ここでは44人の社員のうち7人が障がいのある社員だ。鈑金加工の作業をしていたのは、2016年入社の木村(きむら)拓也(たくや)さん(28歳)。以前は電気工事士だったが、職場の人間関係が原因で離職し、障害者就業・生活支援センターを経由して入社した。「職場の雰囲気がとてもよいです。担当している鈑金加工も、次の工程で組み立てられて重機の一部になっていくのがわかり、ものづくりを実感できます」と語る。業務内容を覚えるのが得意ではなく体で覚えるよう努力したそうだが、「いまは逆に仕事に慣れてきたので、作業で妥協しないよう、初心を忘れないようにしたいです」と気を引き締める。  木村さんが日ごろから「仕事で気を配ってくれたり、ちょっとした体調の変化にも気づいてくれたりして、何でも相談できる人です」と頼りにしているのが、現場でアドバイザーを務める佐々木(ささき)一照(かずてる)さん(64歳)だ。佐々木さんは、木村さんについて「もともと真面目な性格ですが、2年前に副主任という役職がついてからは責任感も出てきました。ほかの同僚を助けたり、面倒な下準備作業も率先してやってくれたりしています。難易度の高いことにもどんどん挑戦してもらっています」と期待を寄せる。  別棟にある溶接現場も訪ねた。ここで作業していた鶴田(つるた)恭平(きょうへい)さん(21歳)は、養護学校時代に実習を2回経験し、2019年に入社した。もともと趣味で溶接を含めたバイク修理をしているという経験も買われたようだ。苦労したことを聞くと「数字が入っている予定表などを覚えるのが不得意なので、まずは自分が担当する品番だけを覚え込んでいます」とのこと。心がけていることをたずねると、「溶接忘れと不良をなくすことです。細かい部分までしっかりチェックしています」と話してくれた。 ダイバーシティでチームワーク  2020年入社の牟田(むた)誠太郎(せいたろう)さん(24歳)は、仕上げ工程の納品検査を担当している。部品の溶接もれがないか確認し、バリと呼ばれる突起物があれば、削り作業も行う。この日も牟田さんは、手のひらで傷などを確認しながら、グラインダーという削り器具でなめらかな面に仕上げていた。  牟田さんは短大卒業後に発達障がいを診断され、就労移行支援事業所に通った。短大での溶接経験を活かし「実習で自信がつき、前向きになれた」という。入社当初は製品の型番を覚えることや、仕上げの合格ラインの見極めに苦労したが、失敗を経験するなかで判断基準を覚えたそうだ。「たまに別部署を手伝う機会もあり、それによって自信がつきました」と笑顔で話す。  同じ職場の吉嵜(よしざき)昌弘(まさひろ)さんは、牟田さんについて「最初は、仕事の流れをつかむまで苦労したかもしれませんが、いまは検査だけでなく商品の梱包や納品書の作成も担当してもらっています。また、ほかの作業にも協力的にかかわってくれています。大事な戦力です」と語る。  2人の上司で主任を務めるカンボジア人のサッ・ウェットさんは、同じカンボジア人の副工場長の紹介で2013年に入社した。社内で週1回開催している日本語教室で勉強しながら、職場の部下たちに仕事の指示や指導をしている。「牟田さんも吉嵜さんも、よくがんばっています。どこかでミスが出ても、チームで助け合うので大丈夫です」と話す。吉嵜さんは、「職場ではウェットさんたちから現地の挨拶やありがとうの言葉を教えてもらい、たまに使っています。ここは多国籍なので毎日楽しいですね。チームワークもよいんですよ」と語ってくれた。 学ぶ文化と働きがい  ダイバーシティが浸透する職場で生産性を上げてきた背景には、社内勉強会も一役買っているようだ。以前から、「職場で学ぶ文化をつくって人材を育てたい」と考えていた伊藤さんは、社長就任時から週1回のペースで社内勉強会を始め、続けてきた。勉強会では、伊藤さん自身が影響を受けた本などを参考に、仕事への向き合い方やチームワークなどさまざまなテーマで話す。なかでも社員に伝えたいことの一つが「働きがい」だ。  「彼らの仕事と、それが世の中の何に役立っているのかが結びつけば、働きがいややりがい、ひいては生きがいにつながります。溶接の仕事をしている人が、単に『自分の仕事は鈑金』と考えるのではなく、『自分が加工した部品がついたバスは、地域を走り、人々の生活になくてはならない存在。もっと社会の役に立てるよう技術を磨いていこう』と思えるかどうか。そういう姿勢を、社内だけでなく、ほかの職場や社会全体にも広げていきたいと思っています」と、伊藤さんはいう。  社内勉強会は、毎週火曜日に役職者と事務職を対象に行っていたが、年1回提出してもらう「社長への手紙」で、「勉強会に出ている〇〇さんが伸びているので、自分も参加したい」という声が届き、水曜日の始業前に、全社員を対象とした自由参加での勉強会も始めた。ちなみに参加者には30回出たら3000円分のクオカードを進呈している。コロナ禍を機にオンラインになり、1回5分〜8分ぐらいの伊藤さんの話を動画配信している。 実習受け入れ企業を増やしたい  伊藤さんは、自社だけでは養護学校在学生の実習の受け入れに限界があるため、もっと受け入れてくれる企業が増えてほしいと思っている。栄和産業では、神奈川県立藤沢養護学校の生徒たちが文化祭販売用につくったメモ帳を、これまでに1800冊以上購入し、個装する際に実習受け入れ企業を募集する紙を同封してもらって、取引先などで配っている。会社のカレンダーにも、各養護学校で制作しているものを、写真で紹介している。  「障がい者雇用にふみ出せない企業には、まずは実際に働く様子を見てもらいたいですね。うちの工場見学も大歓迎ですよ」  今後の目標は、障がいの有無に関係なく、ものづくりの現場を活かした教育の場をつくることだという。フリースクールも視野に入れて、社員と一緒に具体的な計画を練っているところだと伊藤さんは語ってくれた。  「例えば不登校で、ものづくりに興味がある子に来てもらって、実習を体験してもらう。もしそこで自信をつけたら、新たな夢に向かって義務教育の場に戻るかもしれません。ものづくりの実習の場が、日本の未来の労働人口を増やす土壌にもなるのではないかと思っています」 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社栄和産業様のご希望により「障がい」としています 写真のキャプション 株式会社栄和産業の本社工場 代表取締役社長の伊藤正貴さん パソコンを使用した名刺のレイアウト作業 企画部主任の伊田一平さん ハンマーを使い、製品の形を整える木村さん 鈑金担当の木村拓也さん アーク溶接で製品を組み立てる鶴田さん 溶接を担当する鶴田恭平さん アドバイザーを務める佐々木一照さん グラインダーを使い製品をなめらかに仕上げる牟田さん 溶接を担当する鶴田恭平さんアドバイザーを務める佐々木一照さん 主任のサッ・ウェットさん 牟田さんと同僚の吉嵜昌弘さん 出荷梱包担当の牟田誠太郎さん 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用U 第2回 視覚障害 〜障害のある人が働きやすい職場づくり〜  これから障害者雇用に取り組もうとしているみなさまへの入門企画として、障害のある人が働きやすい職場環境を整えるために、どのようなことを行っていったらよいのか、取組み方法や事例を紹介します。  第2回は、「視覚障害のある人」が働きやすい職場づくりについてお伝えします。 視覚障害の特性と配慮するポイント 〈視覚障害とは〉  視力や視野に障害があり、日常生活や就労において不自由が生じる状態のことです。  視覚障害には「全盲」のほか、何らかの保有視力はあるが見えにくい「弱視」、見える範囲が限定されている「視野狭窄(しやきょうさく)」などがあり、人によってその症状はさまざまです。 〈視覚障害のある人が従事する職業〉  あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などが大部分を占めているのが現状ですが、IT技術や就労支援機器の発達と普及にともない、事務職に就く人も増えています。 〈職場における配慮事項〉  就労支援機器を活用するなど、業務を遂行しやすくするほかに、危険を避け、働きやすい職場環境に整えるための施設や設備の改善などが望まれます。  また、そのほかにも、「通勤方法」、「通勤時間」、「休暇」、「休憩」など、安全や健康上のリスクにかかわることについても、適切な配慮が望まれます。 視覚障害者のための就労支援機器の例 ●拡大読書器  ズーム式のカメラで書類などを写し取り、モニタ画面に拡大表示する装置 ●画面読み上げソフト  パソコン画面の情報を音声で読み上げるソフトウェア ●点字ディスプレイ  パソコン画面の情報を点字に変換して表示する機器 ●画面拡大ソフト  パソコン画面の一部または全体を拡大して表示するソフトウェア 事例 社会福祉法人北野会 特別養護老人ホームマイライフ徳丸(とくまる) (東京都板橋区) ◆事業内容  特別養護老人ホーム、グループホームなどの施設サービス、ショートステイ、デイサービスセンター、ヘルパーステーションなどの居宅サービス、地域包括センターの受託、居宅介護支援事業などの運営 ◆従業員数 123人(2022年3月現在) 視覚障害のある同僚を支えるために奮闘  「特別養護老人ホームマイライフ徳丸」では、視覚障害のある加藤(かとう)健慈(けんじ)さんが活躍しています。加藤さんはもともと、ショートステイの生活相談員として同施設に勤務していましたが、2014(平成26)年12月に、持病の心臓病が悪化し心肺停止状態になり、低酸素状態の影響により脳にダメージを受け、視覚に障害が残りました。  「視力の低下がわかったときは、絶望的な気持ちになりました。全体的にぼんやりと霧がかった見え方で、小さい文字などは読めません。4か月ほど入院した後に退院したものの、この先、仕事はどうしたらよいかなどの情報もなく、不安でいっぱいの気持ちでした」と加藤さんは話します。  そのような状況のなか、力になってくれたのが、職場の上司でした。  「何としてでも、加藤さんの職場復帰を支えたいという思いがありました。しかし、当法人では、これまでに視覚障害者を雇用した経験はなく、一体何をしたらよいのか、まったくわからない状態でした」と、管理部係長の廣崎(ひろさき)悦代(えつよ)さんはふり返ります。  何か情報を得たいと出向いた中小企業向けの障害者雇用フェアで、障害者職業センター(※)のカウンセラーから、視覚障害者就労生涯学習支援センターを紹介されました。そして、視覚障害のある人のための職業訓練があることを知り、まずは加藤さんに受講してもらうことにしたそうです。 支援機関も活用  職業訓練で加藤さんは、視覚障害者用の画面読み上げソフトや画面拡大ソフトを使用し、マウスを使用せずにキーボードのみでパソコンを操作する、パソコンスキルを身につけました。これにより、加藤さんは、視覚障害があっても、健常者と同じような事務の仕事ができるようになりました。しかし一方で、職場では加藤さんにどのような業務を担当してもらったらよいのか、まったく見当がつかなかったそうです。廣崎さんは、「業務の切り出しのためにお世話になったのが、ジョブコーチ支援(※)です。施設長の呼びかけにより、各部署にある事務作業を介護や看護のスタッフに提案してもらい、ジョブコーチにアドバイスをもらいながら、ひとつひとつ精査して、加藤さんに担当してもらう業務の内容を整えていきました」といいます。  画面読み上げソフトや画面拡大ソフトなどの業務に必要な機材は、当機構の中央障害者雇用情報センター(※)の就労支援機器貸出制度(※)を利用して、一定期間試用したのちに購入しました。  「本人は、会社に経済的な負担をかけることを気にしていましたが、貸出制度や助成金(※)を利用して購入することで、経済的な負担は最小限に抑えられました」  視覚障害のある人の雇用において課題となる、安全な職場環境の確保については、特別養護老人ホームという施設の特性上、手すりなどがすでに設置されていたため、足元に物を置かない、動線上に配線ケーブルを引かないなどの配慮で対応できました。 職域の拡大に向けて  現在、加藤さんは事務職として、各種データの集計や会議の議事録の作成などを担当しています。これらの業務は、もともと各現場の担当者が行っていましたが、加藤さんが担当することで、周囲の職員の負担が大きく減り、本来の業務に集中できる時間が増えたそうです。  「同僚から、『助かっている』と言葉をかけてもらえることに喜びを感じています。一方で、職場復帰から約6年が経ち、業務にも慣れているので、もっとさまざまな業務を行うことで、組織に貢献したいという思いもあります」と加藤さんはいいます。  廣崎さんは、「加藤さんの職場復帰の過程では、本人の努力やスタッフの協力はもちろん、支援機関など外部の力に助けられました。『もっといろいろな仕事をしたい』という加藤さんの思いに応えるためにも、ジョブコーチ支援などを再び活用する時期に差しかかっているのかもしれません」と語ってくれました。 ※当機構ホームページでご紹介しています。 jeed 検索 トップページ右上の「サイト内検索」をご利用ください 写真のキャプション 〈拡大読書器〉 卓上型 携帯型 加藤さん(左から2人め)は、施設内で開催されるすべての会議に出席して、議事録を作成している 業務中の加藤健慈さん。就労支援機器を利用することで、入力業務などが可能になった 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています〜 入所日など  国立職業リハビリテーションセンター、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、年間約10回の入所日を設けています。応募締切日や手続きなどの詳細については、お気軽にお問い合わせください。 ○遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター 埼玉県所沢市並木4-2 職業評価課 TEL:04-2995-1201 http://www.nvrcd.ac.jp/ 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課 TEL:0866-56-9001 https://www.kibireha.jeed.go.jp/ 募集訓練コース 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査・物品管理コース 建築系 建築CADコース ビジネス情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース 会計ビジネスコース OAビジネスコース 職域開発系 物流・組立ワークコース オフィスワークコース 販売・物流ワークコース ホテル・アメニティワークコース 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 資材管理コース ビジネス情報系 OAビジネスコース 会計ビジネスコース システム設計・管理コース ITビジネスコース 職域開発系 事務・販売・物流ワークコース 厨房・生活支援サービスワークコース オフィスワークコース 物流・組立ワークコース サービスワークコース ○訓練の期間は……  「システム設計・管理コース」、「ITビジネスコース」(ともに国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は2年間、そのほかの訓練コースは1年間の訓練です。 ○対象となる方は……  「ビジネス情報系」の「視覚障害者情報アクセスコース」(国立職業リハビリテーションセンター)、「ITビジネスコース」(国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は、視覚障害のある方を対象とし、「職域開発系」の各コースは、高次脳機能障害のある方、精神障害のある方、発達障害のある方、知的障害のある方を対象としています。 事業主のみなさまへ  両センターでは、障害のある方の採用をお考えの事業主と連携し、個々の事業主の方のニーズや訓練生の障害特性などに応じた、特注型のメニューによる職業訓練を行っておりますのでご活用ください。ご利用いただく事業主の方には次のような支援も行っております。 ■障害特性に応じた特別な機器・設備の配備や作業遂行に関する支援方法のアドバイスなど、円滑な受入れに関する支援 ■雇入れ後の職場定着に向けた技術面でのフォローアップとキャリアプランづくりのための支援 詳細については…https://www.jeed.go.jp/disability/person/person07.html ◆令和4年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催されます。 詳細は、「地方アビリンピック」ホームページをご覧ください。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月上旬頃 北海道職業能力開発促進センター(予定) 青森 10月下旬〜11月上旬 青森職業能力開発促進センター/ホテル青森(予定) 岩手 7月30日(土) 岩手県立産業技術短期大学校 矢巾キャンパス 宮城 7月9日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月15日(金) 秋田市文化会館 山形 7月6日(水) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月9日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月9日(土) 7月10日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月9日(土) 栃木職業能力開発促進センター/SHINBIデザインスクール 群馬 7月2日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月2日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月26日(土)(予定) 千葉職業能力開発促進センター(予定) 東京 2月中旬〜下旬(土)(予定) 東京障害者職業能力開発校/職業能力開発総合大学校 神奈川 10月15日(土()予定) 10月29日(土()予定) 神奈川障害者職業能力開発校、ほか 新潟 9月10日(土) 新潟市総合福祉会館、ほか 富山 7月23日(土) 富山市職業訓練センター/富山県技術専門学院 石川 10月中旬〜下旬(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 7月9日(土) 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 10月2日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月23日(土) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月2日(土) ソフトピアジャパンセンター 静岡 @6月26日(日) A7月2日(土) B7月3日(日) @静岡職業能力開発促進センター/A静岡市東部勤労者福祉センター 清水テルサ/B学校法人静岡理工科大学 静岡デザイン専門学校 愛知 @6月4日(土) A6月5日(日)、6月11日(土) B6月12日(日) C6月18日(土) D6月25日(土) @大成今池研修センター/A愛知障害者職業センター/B専門学校日本聴能言語福祉学院/C愛知県立名古屋聾学校/D中部職業能力開発促進センター 三重 6月25日(土) 三重職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 会場 滋賀 11月26日(土) 近畿職業能力開発大学校附属 滋賀職業能力開発短期大学校 京都 2月中旬 京都府立京都高等技術専門校/京都府立京都障害者高等技術専門校 大阪 @〜B6月18日(土) @7月2日(土) @関西職業能力開発促進センター/A社会福祉法人日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター/B社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会 大阪市職業リハビリテーションセンター 兵庫 6月18日(土) 7月2日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月23日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 6月5日(日) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月30日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月9日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 @6月25日(土) A7月16日(土) @岡山障害者職業センター/A岡山職業能力開発促進センター 広島 12月〜1月頃 広島職業能力開発促進センター 山口 10月15日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月17日(土) 徳島職業能力開発促進センター/徳島ビルメンテナンス会館 香川 2月上旬〜中旬(予定) 未定 愛媛 7月9日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 @7月2日(土) A7月9日(土) @高知職業能力開発促進センター/A学校法人龍馬学園 龍馬デザイン・ビューティ専門学校 福岡 @7月2日(土) AB7月9日(土) @福岡県立福岡高等技術専門校/A福岡障害者職業能力開発校/B福岡職業能力開発促進センター 佐賀 1月頃 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月9日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月25日(土) 6月26日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月1日(土) 大分東部公民館 宮崎 7月9日(土) 宮崎職業能力開発促進センター/宮崎県ビルメンテナンス協会 鹿児島 7月9日(土) 7月10日(日) 鹿児島職業能力開発促進センター 沖縄 7月頃 沖縄職業能力開発大学校 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ※2022年4月1日現在 新型コロナウイルス感染症の影響により、変更される場合があります 開催地によっては、開催日や種目などで会場が異なります 参加選手数の増減などにより、変更される場合があります 作品募集 応募者全員に記念品をプレゼント! 令和4年度 絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜 写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜  毎年9月1日〜30日は、「障害者雇用支援月間」です。国民のみなさまに障害者雇用への理解と関心を深めていただけるよう、障害のある方々を対象に「働くこと」をテーマとする絵画を募集する「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」と、「障害のある方の仕事にスポットをあて、障害のある方が働いている姿を撮影したもの」をテーマとする写真を募集する「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」を実施しています。厚生労働大臣賞受賞作品は、障害者雇用支援月間ポスターの原画として使用し、全国のハローワークなどに掲示します。 絵画コンテスト ★募集作品  働くこと、または仕事に関係のある内容のもの ★応募資格  障害のある方(プロ以外であること) ★応募部門  小学校の部/中学校の部/高校・一般の部 写真コンテスト ★募集作品  障害のある方の仕事にスポットをあて、障害のある方が働いている姿を撮影したもの ★応募資格  障害の有無は問いません(プロ以外であること) ※部門の別はありません 賞・展示  部門ごとに選考を行い、厚生労働大臣賞1点、当機構理事長賞1点、理事長奨励賞数点をそれぞれ選出します。入賞作品は、全国5か所で開催を予定している展示会において展示いたします。 6月15日(水) 応募締切(消印有効) 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/activity/contest/index.html ★過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます。 JEED 絵画 写真 検索 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9515 FAX 043-297-9547 シンボルキャラクター“ピクチャノサウルス” (かおはカメラ、つのは絵筆をイメージしています) 【P15-18】 グラビア 習得した知識・技能を職場で活かす 〜国立職業リハビリテーションセンター修了生の活躍〜 TAKEUCHI株式会社(東京都)、国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県) 取材先データ TAKEUCHI株式会社 〒163-1008 東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー8F TEL 03-5322-1101 FAX 03-5322-1103 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 国立職業リハビリテーションセンター 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 TEL 04-2995-1711(代表) FAX 04-2995-1052 写真・文:官野 貴  首都圏を中心に、住宅リフォームやガス事業などを手がける「TAKEUCHI株式会社」は、障害者雇用に積極的に取り組み、さまざまな障害のある社員が働いている。なかでも、当機構が運営し、障害のある方々の自立に必要な職業訓練や職業指導などを体系的に提供している「国立職業リハビリテーションセンター」(以下、「国リハ」)において訓練を受けた修了生の活躍が目覚ましい。  精神障害のある岩渕(いわぶち)良(りょう)さん(48歳)は、2019(平成31)年に「建築設計科建築CADコース」を修了、TAKEUCHI株式会社に入社し、首都圏ソリューション事業部の設計積算チームの一員として活躍している。岩渕さんは仕事について、「設計担当者が手書きした図面を、CADソフトを使いパソコン上の図面に描き起こしています。訓練で多くの課題をこなした経験が活きています」と語る。  そんな岩渕さんが入社を決めたきっかけは、国リハの修了生が同社で多く働いていることだ。現在、岩渕さんと同じ部署にも修了生の先輩がいるため、心強さを感じているという。その先輩が、「建築CADコース」の前身となる「工業デザイン科インテリアデザインコース」を2013年に修了した大賀(おおが)博道(ひろみち)さん(44歳)だ。  大賀さんは、CADソフトを用いた図面の作成や現場調査などの業務を担当している。発達障害のある大賀さんは、「目の前のことに集中しすぎて、全体の進捗が滞ってしまわないように、リストをつくって流れをコントロールしています。国リハで学んだCADの作図技術を活かせることが、なによりのやりがいです」と語る。  人事採用担当チームの渡邉(わたなべ)和也(かずや)さんは、「人事メンバーと国リハの見学などに行き理解を深めています。国リハは教育体制とフォロー体制に安心感があります。今後も障害者雇用率の達成だけでなく、当社とマッチする人財がいれば、積極的にともに働く仲間となっていきたいです」と語る。 写真のキャプション TAKEUCHI株式会社 「CAD」は「Computer Aided Design」の略で、パソコン上で設計や製図が行える TAKEUCHI株式会社首都圏ソリューション事業部のオフィス 岩渕 良さん 岩渕さんは、「よりよい」図面を「より早く」仕上げることを目標にしている 大賀博道さん 大賀さんは、わかりやすい図面を作成するスキルと作画効率の向上を目ざしている 空調や給排水など建築設備の現地調査を行う大賀さん(右)(写真提供:TAKEUCHI株式会社) チェックリストを活用し、タスクを細かく分け進捗を管理することでミスを防ぐ 人事採用担当チームで働く渡邉和也さん(左)も、国リハ修了生の一人。修了生同士の結束は強いという 国立職業リハビリテーションセンター 岩渕さんが修了に向けて制作した総合課題のパネルが、見学者向けに展示されていた 当機構が運営する国立職業リハビリテーションセンター 図面を描くにあたって必要な知識を座学の訓練で身につける。実務でつまずきやすい部分を重点的に学ぶなど、実践的な訓練が行われている CADソフトの基本設定から操作までを学び、技術を身につける。カリキュラムは訓練生の状況や、学習・就労経験、得意分野などに合わせた個別のものが設定される 国立職業リハビリテーションセンターでは訓練生を募集しています。12ページをご参照ください 【P19】 エッセイ 発達障害当事者の働きづらさのリアル 最終回 〜発達障害者が働きやすい職場とは?〜 姫野 桂(ひめの けい) フリーライター。1987(昭和62)年生まれ。宮崎県宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブ媒体などで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ、など。おもな著書に『私たちは生きづらさを抱えている発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)などがある。  発達障害のある人は、仕事内容がなかなかマッチングせず、短期間で転職をくり返してしまう人が多いです。特に、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の特性がある人は、抽象的な指示が苦手です。  例えば、「この辺りを適当に片づけておいて」と指示されたとしましょう。定型発達(※)の人は、ある程度綺麗に片づけることができますが、ASD傾向のある人は言葉のまま受け取り、本当に適当に&ミづけてしまうのです。このようなすれ違いが起こり、発達障害のある人にとっての「働きづらさ」が発生してしまいます。  しかし、考えてみると定型発達の人にとっても「あれ」とか「あそこ」とか、抽象的な指示をされるより、きちんと「○○さんの手帳」とか「新宿駅の東口」といった的確な指示を出されたほうがわかりやすいですよね。しっかりと主語と述語を含んだ指示は発達障害のある人にとっても定型発達の人にとっても「働きやすさ」につながるのです。  また、発達障害のある人のなかには、ワーキングメモリが低い人もいます。ワーキングメモリというのは、頭のなかにあるメモ帳のようなもので、定型発達の人はこのメモ帳の容量が大きく、短期記憶ができるのですが、発達障害のある人はこのメモ帳の容量が小さく、話が長かったりすると、すぐに最初にいわれたことを忘れてしまいます。  例えば「営業部の山本さんのところに今月分の資料をもらいに行って、その後は経理部の中谷さんのところに行って、その資料を渡してください」と口頭で指示されたとします。定型発達の人は、この作業を難なくこなせますが、ワーキングメモリが低い人にとっては「えーと、営業部の山本さんのところに行ってその後は何部のだれのところに何をしに行けばよかったんだっけ……」と記憶がすり抜けてしまいます。  このワーキングメモリ不足によるミスを防ぐには、指示を可視化することが重要です。発達障害の傾向がある人は聴覚による情報処理が苦手な人も多いため、メールやメモなどで文書化して指示をすると、うまく記憶にとどめることができるうえ、何か問題が発生したときに、そのメールやメモで確認できたり証拠を残すことができます。これは、障害の有無に関係なく、どの人にとっても便利なのではないでしょうか。  実際、私もワーキングメモリがとても低いので、会社員時代に会議の議事録を取っていた際は、本当に必死でした。なんたって、聞いたことがするすると頭から抜け落ちていくのですから。  いまではライターという仕事で欠かせないICレコーダーというアイテムをインタビューの際などに使用し、後で文字起こしを行っています。ライターさんのなかには、インタビュー中にメモをたくさん取る人もいますが、私は特に印象に残った言葉だけをメモして、あとはICレコーダーに頼っています。ですので、会社員時代にICレコーダーを使っていれば、議事録の作成がもっと楽になっていたのではないかと思います。  最近ではスマートフォンにも録音アプリがありますし、上司や同僚がいったことをすぐ忘れてしまう人や、会議の長いメモを取るのが苦手な人は、ぜひ使ってもらいたいアイテムです。こちらももちろん、定型発達の人にも役立ちます。  そして最後に、発達障害のある人が働きやすい職場づくりについてお話ししたいと思います。発達障害のある人は、過去にたくさんの失敗を重ねて怒られてきて、非常に自己肯定感の低い人が多いです。それが故、「次はいつどんなことで怒られるのだろう」とビクビクして「報・連・相」ができない人もいます。報・連・相は仕事をするうえで重要なことです。ですので、高圧的な態度を取ったり、風通しの悪い雰囲気をつくったりせず、気軽に報・連・相ができる環境づくりをしてもらえると、発達障害のある人にはとてもありがたいです。  発達障害のある人が働きやすい職場は、定型発達の人が働きやすい職場でもあるのです。ちょっとした工夫で、だれもが働きやすい職場になるはずです。 ※定型発達:発達障害がないこと 写真のキャプション 姫野 桂 【P20-25】 編集委員が行く 「障害ではなく能力を見よ」 MS&ADアビリティワークス株式会社(東京都) 筑波大学大学院・人間総合科学学術院リハビリテーション科学学位プログラム 准教授 八重田 淳 取材先データ MS&ADアビリティワークス株式会社 〒104-0033 東京都中央区新川2-22-1 いちご新川ビル4階 TEL 03-3551-0263 FAX 03-3297-0156 https://www.ms-ad-abilityworks.co.jp 編集委員から  精神障がいのある方の雇用がまだまだ少ない現状をなんとかして変えたい。今回取材した特例子会社は、すべての人に多様な働き方をというDiversity & Inclusionの理念を実践されている。「能力を発揮させる場」を与え続けているMS&ADアビリティワークス株式会社における精神障がい者雇用と職場定着に関する工夫の一部をご紹介する。 写真:官野 貴 Keyword:特例子会社、精神障害、職場定着、雇用管理、認知行動療法 POINT 1 精神障がいのある従業員の能力を、仕事で発揮できる場を目ざす 2 FC(フェローカウンセリング)の面談や声かけなどによる、「自然な」雇用管理 3 個人の特性に応じた仕事ツールを活用し、職場定着につなげる はじめに  MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社の特例子会社であるMS&ADアビリティワークス株式会社(以下、「アビリティワークス」)は、2018(平成30)年6月に設立された。2022(令和4)年1月現在、社員数47人のうち、障がいのある従業員は全体の68%に相当する32人(精神障がい30人と知的障がい2人)である。残りの社員の内訳は、本社グループの主要2社である三井住友海上火災保険株式会社とあいおいニッセイ同和損害保険株式会社からの出向者7人、そして障がい者雇用の知見のあるマネージャー8人である。  今回、私はアビリティワークス取締役社長の菅谷(すがや)圭子(けいこ)さん、統括本部長の小島(おじま)元一(げんいち)さん、事業部長の成田(なりた)克彦(かつひこ)さん、シニアマネージャーで職場適応援助者、産業カウンセラーの遠藤(えんどう)貴子(たかこ)さん、健康管理推進室マネージャーで米国CCE.Inc認定GCDF-Japanキャリアカウンセラーの資格を持つ原田(はらだ)美緒(みお)さん、マネージャーで、以前は品川区の就労移行支援事業所長をされていた山下(やました)美穂(みほ)さん、マネージャーで精神保健福祉士の郭(かく)侑美(ゆうみ)さん、マネージャーで社会福祉士の佐々木(ささき)紗里(さり)さん、そして従業員の方々(飛松(とびまつ)潤(じゅん)さん、蓮田(はすだ)伸樹(のぶき)さん、岩ア(いわさき)廉嗣(きよし)さん、小針(こばり)奈々(なな)さん)を含む計13人から、バレンタインデーにたいへん貴重なお話をうかがうことができた。  コロナ禍と腰痛のため、一時はオンライン取材も検討させていただいたが、やはり直接お会いしてお話をうかがうことができてよかったと思う。今回の取材は、私が勤務する筑波大学リハビリテーション科学学位プログラムの社会人大学院生である山口(やまぐち)綾子(あやこ)さんから紹介をいただいて実現した。精神保健福祉士である山口さんは、少し前までアビリティワークスのシニアマネージャーとして勤務されていたため、事業部長の成田さんをご紹介いただくことができた。人のつながりには本当に感謝したい。  この2年間のほとんどをテレワークで過ごした私にとって、東京都中央区新川(地下鉄日比谷線八丁堀駅から徒歩5分)にあるこの会社に赴くというだけでも刺激的な一日となった。私自身は都内の郊外(ときどき狸が道を通るような場所)に住んでいるため、大都会にあるピカピカの一流企業というだけでも緊張してしまうのだが、取材に際して多くの方々に助けていただいた。感謝したい。 会社概要  特例子会社であるアビリティワークスは、「障がいのある人が持つ能力(アビリティ)を、仕事で発揮する(ワークス)」をその企業理念としている。親会社であるMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社は、「ダイバーシティ&インクルージョン」の理念を推進する国際的なリーダーとしても活躍する大企業である。例えば、女性管理職人数をみると、前年比+7.7%(2019〜2020年)で、グローバル人財比率は22.2%という実績を示している。グループ全体の障がい者数は893人で、障がい者雇用率は2.55%(2022年1月現在)であり、法定雇用率をクリアしている。アビリティワークス設立前の2017年時点におけるグループ全体の障がい者雇用率は2.39%だったという。  また同社設立前は、精神および知的障がい者の「雇用例」はあったものの、「雇用管理体制が十分ではなかった」ことと、障がいのある従業員の「能力が十分に発揮されていない」という課題に直面していたという。さらに「大都市圏では、働く意欲と能力のある身体障がい者はすでに雇用」されているという雇用市場の状況下で、アビリティワークスは、まだまだ全体的に雇用実績が少ない精神障がい者にターゲットを向けた。  そして、本当は高い能力を持っているのにもかかわらず、「精神障がい」という枠組み故に就職や雇用継続がうまくいかない多数の人々を、新たな「人財」として雇用し、彼らの能力を「開発」することを目ざしてきた。彼らの高い能力を引き出し、さらに伸ばす。これを競争的な一流企業の業務に組み込む。こうして、仕事ができるようになり、職業によって「精神障がい者」から「能力のある本来の自分」へと回復する過程を継続的に支援していく。これこそが、職業リハビリテーションである。  アビリティワークスは、自身の能力を仕事で発揮できる場を、MS&ADグループの事業展開に活かすために、本社グループからの出向者7人を配置している。この7人に加え、障がい者雇用に詳しいマネージャー8人がおり(前述)、ヒューマンサービスのプロとして、同僚として職場定着を支えている。社長の菅谷さん、統括本部長の小島さん、事業部長の成田さんは、口を揃えて、この8人のマネージャーたちの力量を讃えている。なんとも風通しのよい職場だ。 アビリティワークスの人財  社長の菅谷さんは、前取締役社長であった本島(もとじま)なおみさんの志を2020年の4月から引き継がれ、現在に至っている。4階の職場にある社長の机は、社員を見渡せる場所にはあると思ったのだが、パッと見てもどこに社長がいらっしゃるのか、教えていただくまでわからなかった。「溶け込んでいるなあ」と思いながら、菅谷社長にお話をうかがうと、「みなさんのそばで一緒に、気持ちよく、楽しくお仕事をさせていただいております」というお答えであった。芯のあるお考えが行動に現れているのだろう。実際にお話を始めると、「自然体で力まない方」という印象を受ける。カメラマンの官野さんが社長にカメラを向けたときには、「写真撮るなら、ちょっと整えてくるわ」と、同席していたマネージャーの女性の方々に優しい笑顔を向けながらドアに向かう。「いってらっしゃい」という感じで笑顔で見送る仲間。いい職場だ。  統括本部長の小島さんは、とても謙虚な方で「私には、障がいに関する知識が足りません。いつもマネージャーの方々に教えていただいております。みなさん、すごいです」と讃えておられた。ご自身は「知識がない」とおっしゃっていたが、そんなはずはなく、言葉の端々にキラリとした知性が輝く。静かな物腰、穏やかな口調で、アビリティワークスという組織について要点をまとめてお話をいただいた。  事業部長の成田さんは、今回の取材に快く応じてくださった方である。何といっても「熱い想い」をお持ちの方で、それはご本人の行動からも伝わってきた。特例子会社に傾ける情熱の強さは、おそらく社員の心にも響いているのだと思う。アビリティワークスをもっとよくしたいという成田さんの想いは、アビリティワークスの概要を明快に示すパワーポイントとプレゼンテーションにも伝わってきた。  成田さんに続いて、シニアマネージャーの遠藤さんからもプレゼンをいただき、同僚による自然な支援としてのFC(フェローカウンセリング:専任担当)の取組みや、定期的な面接により合理的配慮事項を確認されていることなどをお話しいただいた(詳細は後述)。みなさんの熱意に負けそうになりながら、必死にメモを取っていた。  この後、精神障がいがありながら働く、たいへん優秀な従業員の方々のお仕事ぶりを4階のオフィスで見せていただいた。さらにその後、別室で3人の方々との個別面談、社長との面談を経てから、最後に5人のマネージャーを含む全体意見交換会の場を設けてくださり、たいへん濃密な取材となった。 職場の様子  4階の職場には、3つの休憩室(ベッド、ゆったり座って眠れるソファがある部屋)と5つの個室(自分一人で集中できる仕切られた個別作業スペース)があり、体調がすぐれないとき、心身をリセットしたいとき、注意散漫になりそうなとき、シンプルに休みたいときは、いつでもだれでも使えるようになっている。ランチスペースも広く温かい雰囲気で、清潔感が漂う憩いの場となっている。現在の新しい職場には1年ほど前に移転したばかりだそうで、全体的に綺麗で洗練された明るい都会のオフィスそのものである。  アビリティワークスは事業部と管理部があり、事業部には専門知識と技能を活かした業務を担当する「デジタル戦略ユニット」、「映像関連制作ユニット」、「広報ユニット」と、グループ内の社員の出向の調整・支援や採用・人財育成を担当する「グループ会社支援室」と、保険代理店のホームページを点検する「代理店HP点検ユニット」があり、管理部にはおもに事務作業を担当する「総務ユニット」と、産業保健業務を担当する「健康管理推進室」がある。「広報ユニット」では、年2回の機関冊子『Semiannual Report』を作成し、アビリティワークスの概要、社員インタビュー、テレワークのトピックなど盛りだくさんの情報を取材され、それらを記事化し、センスある表紙とともに冊子デザインの作成をしておられる。今回の取材にあわせて、事前に3年間分の冊子を送ってくださり、たいへん助かった。  おもな受託業務としては、(1)書類PDF化やデータ入力などの「事務業務」、(2)システム打鍵自動化ツールやワンクリックツールなどの「ツール開発業務」、(3)映像製作や映像配信を行う「映像業務」がある。例えば、映像配信業務としては、動画の企画・撮影・編集を実施し、グループ主催の「コンテスト」の映像を配信するといったものがあり、精神障がいのある従業員がその能力を見事に遺憾無く発揮している後ろ姿に見入ってしまう。こうした能力開発は入社後にも行われると思われるが、アビリティワークスの「人財」採用活動が非常にシステマティックだと感じた。 採用活動と職場定着  アビリティワークスの採用活動は、(1)就労移行支援事業所との連携による「説明会」、(2)実際の業務を想定した実習や面談・自己理解ワークを実施する「実習」、(3)自己理解度と人柄を含めた総合的な職業適性・職場との相性・合理的配慮事項を確認したうえでの「採用」、(4)新人研修プログラムとOJTの「研修」であり、これら4つのステップがきちんとしているからこそ、その後の職場定着につながっているのだと思う。  採用後はFC(フェローカウンセリング)の担当者が体調や気分の具合、業務状況、つまずきの有無などを自然体で聞いて、相談しやすい雰囲気をつくっている。FC担当者と障がいのある社員のコミュニケーションツールである電子日報を使って、日々の体調報告をオンラインで行い、相互把握できるよう工夫をしている。さらに、定期的な面談で、合理的配慮事項が本当に共有できているか、齟齬(そご)はないか、新たな配慮は必要かなどについて確認し、入社時に把握した合理的配慮事項を最低年一回は更新することで、雇用管理につなげている。また、月一回は「定着支援面談」を実施しており、現在までの3年間で離職者ゼロという実績を残している。特に大切だと感じたのは、定期的な面談のほかに実施されるタイムリーな即時対応体制である。日々の困りごと、悩み、つまずき、働きづらさ、体調管理の不足などの事態を未然に防ぐための見守りと声かけを常に行っており、必要に応じて面談を即時に提供している。こうした日々の小さな積み重ねが「自然に」行われていることが、精神障がいのある従業員にとって、とても大切であると感じた。こうした見守り行動がやがて同僚であるピアに広がり、ピアによるナチュラルサポートがそれこそ「自然に」生成されていると感じた。 実際の業務運営  飛松(とびまつ)潤(じゅん)さん(39歳)は、管理部のサブリーダーとして、代理店移管書類のPDF化業務を担当されており、現在進行中で処理しなければならないダンボールの山を見せてくださった。この膨大な書類をPDF化できるものと、できないものに仕分ける作業を想像しただけでも目が眩(くら)みそうだ。お客さまであるグループ会社から届く書類を「仕分け・スキャニング・イレギュラー処理・報告」に分類し、まずは飛松さんご自身の基準で分類した後に、「チームタスクのため一人ひとりの考え・体調・特性に配慮して業務を進められるように、作業の分担などを決める」とのこと。また、毎朝の社内朝礼の際には、「仕分け作業でミスがあったことの共有・ルール変更の提示および指示」をチームメンバーに与えておられる。また、このコミュニケーションが一方通行にならないように、自分から意見を述べにくそうにしている社員の声を反映する努力をされている。ミーティングの場では、チームメンバーからの意見を求めるときに、「だれでも、といってもだれも手を上げてくれないので、名ざしで全員にうかがうように心がけています」とのことで、作業を「訓練ではなく、業務としてしっかり意識してもらうように」しっかりとしたプロ意識を根づかせるべく奮闘されているご様子がうかがえた。その傍らでは、24時間稼働しているパソコンが8台くらい並んでおり、まさにフル稼働という職場を見せていただくことができた。 個別面接取材  この後、別室で3人の社員の方々(蓮田さん、岩アさん、小針さん)にインタビューをさせていただいた。  まず1人目は、蓮田(はすだ)伸樹(のぶき)さん(49歳)である。蓮田さんは既婚とのことで、子どもが生まれたらご自身が学生時代の1年間を過ごされた中国の北京に連れて行ってあげたいとおっしゃっていた。「平常心を大切にしています」と、穏やかにおっしゃりながら、社内では「知的障がいのある社員2人の方を同僚として支えることにも働きがいを感じています」と熱意ある目で語っておられた。こうした社員同士によるナチュラルサポートがそれこそ「自然に」行われている様は、この会社の風通しのよさを示す一要因であると感じた。また、蓮田さんのご趣味は、大学時代の友人たちとのフットサルである。「コロナ禍前は、毎週土曜日に行い、汗を流しておりました。練習後、試合後の飲み会は、ストレス解消になっていました」。蓮田さんは、「これまでの自分の経験を活かし、オフィスチームのような若い方に教えていけるような仕事をもっとしていきたいと思っています。それは、実務だけでなく、仕事に対しての取り組み方などを含めてです。そして、会社にとって活躍できる人材を育てていきたいです。そのためには、サブリーダーになりたいと思っています」という今後の目標についても、活き活きと語っておられた。  2人目の岩ア(いわさき)廉嗣(きよし)さん(44歳)は、主治医に昨年8月から12月にかけて休職するように3回ほど指示されたという。しかし、アビリティワークスによるリワーク支援のおかげで、結局は休職せずに仕事が継続できているという感謝を述べておられた。瞑想して心を鎮めるマインドフルネスも必要なときは、毎日行っているという。業務中に手が震えたり、心が落ち着かなくなって困るときには、すぐに休憩室で30分ほど過ごして乗り切っているという。  3人目の小針(こばり)奈々(なな)さん(24歳)は、認定心理士の資格を持っている。将来は障がい特性などによって「困り」を抱えた方のキャリア支援をしたいとおっしゃっていた。「私はADHD(注意欠如・多動症)なので、それとうまくつき合うために、ヒヤリハットリストを使っています」という。自分の小さな失敗を省みて、そのとき自分はどのような状態で何を考え、何をしたのか、その結果どうなったか、といったことをメモに取り、それを日々更新していく。自身がこうした特性を把握し、それをマネージャーと共有し、自己理解と自己管理、業務管理に役立てているわけだ。自分ができること、得意なこと、つまずくことを職場で自然に分かち合えるようになりたいともおっしゃっていた。小針さんは、自分の言葉を選び、ていねいにしっかりと話すことのできる優秀な方である。「通勤に片道2時間かかるのでたいへんですが、やりがいのある職場です」と話す。アビリティワークスでの仕事のやりがいについては、自分の「努力が実り、できる仕事の幅が広がることが喜びです」ととらえていた。そして、それは自分の「障がい特性を理解したうえで指導していただいているおかげです」と感謝の気持ちを忘れない。ご自身の特性については、「これまでのアルバイト経験では障がいを開示しておらず、特性上の苦手が怠けだと思われ常に心苦しかった」とし、障がいの開示によって得られる理解と安心感を語っておられた。反対に、職場でたいへんなことは、先に述べた「通勤」のほかに、「早寝早起きするための対策、生活リズムを保つこと、家事方法や土日の過ごし方について悩んでいます」とのことであった。業務的にたいへんなのは、「数的処理が特性上苦手なため、パソコンで膨大な件数を扱う情報処理に追われることがある」とおっしゃっていた。小針さんは、ご自身のこうした「特性」をしっかりと把握されていると感じたが、ご本人は、「うっかりミスや作業管理ミスが、仕事の未熟によるものなのか、それとも自身の特性によるものなのかわからず、落ち込むこともあります」という。でも、「ヒヤリハットリスト活用と週1回の面談でアドバイスいただけることで、少しずつできることが増えてきました」と素敵な笑顔を向けてくださった。ご自身が活用されている「ヒヤリハットリスト」は、常にアップデートされ、ご自身の能力を発揮するために活用されている様子がうかがえる。「仕事以外のご趣味は何ですか?」とたずねると、「いま、ダンス教室に通っていて、1人カラオケも好きです。ギターも始めました」とのお答えで、オフワークも充実しているご様子であった。これは仕事を続けていくためにも、人生を楽しむためにもとても大切なことであり、私は大きく頷きながらインタビューを終えることができた。 おわりに  アビリティワークスでは、職場定着のためにさまざまな工夫をされている。誌面の都合上すべてご紹介できないが、例えば、「仕事のための私ノート」といった自身と向き合うためのツールがあり、それらを個人の特性に応じて適宜有効活用されている。こうしたツールは、例えば、自分がどのような状況で自身の行動に気をつけるべきかを日々整理し、自身にフィードバックさせ、行動修正につなげていく認知行動療法のテクニックであると思うが、社員のみなさんはこうした仕事ツールをたいへんうまく使っている。  職業性ストレスはだれにでも起こり得ることだが、その対処法を「活用」レベルで実践している人は、実はそんなに多くないのではないか。もし職場で自分の考え方や行動を客観視し、俯瞰できるようになれば、落ち着いて仕事ができると思うし、それは自信につながる。「ああ、そうか、私はこうしたストレス状況下ではこんなふうに反応して行動しているのだ」という自己理解を高めていけば、「よし、次はもっとよい対処をしてみよう」といった正の行動修正につながる。私も「そんなふうに冷静に仕事をしなければなあ」と、インタビューをしながら、あらためて自身の働き方をふり返る機会をいただいたような気がする。  アビリティワークスのみなさんは、全員が個人の能力と行動を仕事としてプラスの方向に修正することを前提としていらっしゃるように感じた。これは、会社の理念である「能力を仕事で発揮する」ことを実現するためには、前提条件となっているのもしれない。いま一度、「アビリティワークス」の意味を英語で吟味するなら、おそらく「障害ではなく能力を見よ」ということになるのだと思う。いい換えれば、「障がいという考え方では機能しない。能力が障がいを超える」ということだ。Disability does not work,but ability works. ★本誌では通常「障害」と表記しますが、MS&ADアビリティワークス株式会社様と八重田淳編集委員の希望により「障がい」としています 写真のキャプション MS&ADアビリティワークスが入居するビル 取締役社長の菅谷圭子さん MS&ADアビリティワークスのオフィス (左から)マネージャーの郭侑美さん、佐々木紗里さん、シニアマネージャーの遠藤貴子さん 事業部長の成田克彦さん(左)、統括本部長の小島元一さん(右) 意見交換会の様子 成田さんによるプレゼンテーション 飛松さんは書類のPDF化業務を担当している 管理部サブリーダーの飛松潤さん ランチスペースは休憩やミーティングなどにも利用できる 横になって休むことができる休憩室 社内の一角が映像配信のための簡易スタジオとなっている 作業に集中するために設けられた個室 事業部の岩ア廉嗣さん 岩アさんは映像関連業務を担当している 管理部の蓮田伸樹さん アンケートの入力作業を行う蓮田さん 事業部の小針奈々さん 代理店のホームページ点検作業を行う小針さん 反省点と原因、解決策などが記入されたヒヤリハットリスト 【P26-27】 省庁だより 令和3年 障害者雇用状況の集計結果A (令和3年6月1日) 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 1 民間企業における雇用状況 ◎産業別の状況(第4表)  産業別にみると、雇用されている障害者の数は、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「複合サービス事業」以外のすべての業種で前年よりも増加した。  産業別の実雇用率では、「医療、福祉」(2.85%)、「農、林、漁業」(2.34%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(2.34%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(2.34%)が法定雇用率を上回っている。 2 国、地方公共団体における在職状況 (1)国の機関(第3表(1))  国の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は9605.0人、実雇用率は2.83%。国の機関は46機関すべてにおいて達成している。 (2)都道府県の機関(第3表(1))  都道府県の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は1万143.5人、実雇用率は2.81%。知事部局は47機関中43機関が達成、知事部局以外は113機関中100機関が達成している。 (3)市町村の機関(第3表(1))  市町村の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は3万3369.5人、実雇用率は2.51%。2477機関中1763機関が達成している。 (4)都道府県等の教育委員会(第3表(2))  都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.5%)に在職している障害者の数は1万6106.5人、実雇用率は2.21%(都道府県教育委員会は2.21%、市町村教育委員会は2.23%)。都道府県教育委員会は47機関中23機関が達成、市町村教育委員会は52機関中27機関が達成している。 3 独立行政法人等における雇用状況(第3表(3))  独立行政法人等(法定雇用率2.6%)に雇用されている障害者の数は1万2244.5人、実雇用率は2.69%。独立行政法人等(国立大学法人等を除く)は91法人中80法人が達成、国立大学法人等は89法人中70法人が達成、地方独立行政法人等は184法人中134法人が達成している。 【第3表】 国、地方公共団体等における在職状況 (1)国、地方公共団体の機関(法定雇用率2.6%) [ ]内は、実人数 @法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 国の機関 339,099.5人 (329,989.5人) 9,605.0人 [8,084人] (9,336.0人) 2.83% (2.83%) 46/46 (44/45) 100.0% (97.8%) 都道府県の機関 361,308.0人 (355,407.5人) 10,143.5人 [7,868人] (9,699.5人) 2.81% (2.73%) 143/160 (142/159) 89.4% (89.3%) 市町村の機関 1,329,895.5人 (1,301,788.5人) 33,369.5人 [25,829人] (31,424.0人) 2.51% (2.41%) 1,763/2,477 (1,741/2,465) 71.2% (70.6%) (2)都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.5%) @法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 都道府県等教育委員会 729,403.5人 (729,491.0人) 16,106.5人 [12,446人] (14,956.0人) 2.21% (2.05%) 50/99 (39/101) 50.5% (38.6%) (3)独立行政法人等における雇用状況(法定雇用率2.6%) @法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 独立行政法人等 455,189.5人 (446,151.0人) 12,244.5人 [9,489人] (11,759.5人) 2.69% (2.64%) 284/364 (279/354) 78.0% (78.8%) 注1 (1)(2)の各表の@欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数」とは、職員総数から除外職員数及び除外率相当職員数(旧除外職員が職員総数に占める割合を元に設定した除外率を乗じて得た数)を除いた職員数である。 注2 (3)の表の@欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数」とは、常用労働者総数から除外率相当数(対象障害者が就業することが困難であると認められる職種が相当の割合を占める業種について定められた率を乗じて得た数)を除いた労働者数である。 注3 各表のA欄の「障害者の数」とは、身体障害者、知的障害者及び精神障害者の計であり、短時間労働者以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については法律上、1人を2人に相当するものとしてダブルカウントを行い、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については法律上、1人を0.5人に相当するものとして0.5カウントとしている。  ただし、精神障害者である短時間労働者であっても、次のいずれかに該当する者については、1 人分とカウントしている。 @平成30年6月2日以降に採用された者であること A平成30年6月2日より前に採用された者で、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること 注4 法定雇用率2.5%が適用される機関とは、都道府県の教育委員会及び一定の市町村の教育委員会である。 注5 ( )内は、令和2年6月1日現在の数値である。  なお、精神障害者は平成18年4月1日から実雇用率に算定されることとなった。 注6 「独立行政法人等」とは、障害者の雇用の促進等に関する法律施行令別表第2の第1号から第8号まで、「地方独立行政法人等」とは、同令別表第2の第9号から第10号までの法人を指す。 注7 特例承認・特例認定や各機関における法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数の変化等により機関数は変動する。 【第4表】 民間企業における産業別の雇用状況 区分 @企業数 A法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 B障害者の数 A.重度身体障害者及び重度知的障害者 B.重度身体障害者および重度知的障害者である短時間労働者 C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 E.計A×2+B+C+D×0.5 F.うち新規雇用分 C実雇用率E÷A×100 D法定雇用率達成企業の数 E法定雇用率達成企業の割合 産業計 企業 106,924 (102,698) 人 27,156,780.5 (26,866,997.0) 人 124,508 (122,795) 人 18,003 (17,084) 人 304,060 (291,126) 人 53,414 (48,984) 人 597,786.0 (578,292.0) 人 55,081.0 (57,630.0) % 2.20 (2.15) 企業 50,306 (49,956) % 47.0 (48.6) 農、林、漁業 415 (364) 45,295.5 (41,662.5) 190 (181) 22 (26) 594 (542) 131 (80) 1,061.5 (970.0) 101.0 (112.0) 2.34 (2.33) 235 (211) 56.6 (58.0) 鉱業、採石業、砂利採取業 76 (75) 10,755.0 (11,253.5) 49 (48) 2 (2) 124 (117) 2 (4) 225.0 (217.0) 23.0 (12.0) 2.09 (1.93) 39 (39) 51.3 (52.0) 建設業 4,775 (4,398) 848,091.0 (822,754.0) 4,316 (4,160) 241 (217) 7,656 (7,179) 322 (283) 16,690.0 (15,857.5) 1,237.0 (1,166.5) 1.97 (1.93) 2,262 (2,125) 47.4 (48.3) 製造業 25,772 (25,113) 7,074,417.0 (7,090,293.5) 37,376 (37,047) 1,837 (1,667) 78,358 (75,760) 3,868 (3,850) 156,881.0 (153,446.0) 9,809.5 (10,688.0) 2.22 (2.16) 13,816 (13,801) 53.6 (55.0) 電気・ガス・熱供給・水道業 280 (261) 215,587.5 (217,474.5) 1,310 (1,301) 35 (39) 2,356 (2,358) 51 (46) 5,036.5 (5,022.0) 233.5 (261.0) 2.34 (2.31) 126 (127) 45.0 (48.7) 情報通信業 6,034 (5,634) 1,663,143.0 (1,597,679.0) 7,470 (7,193) 284 (277) 14,431 (13,466) 471 (392) 29,890.5 (28,325.0) 3,270.0 (3,104.5) 1.80 (1.77) 1,585 (1,554) 26.3 (27.6) 運輸業、郵便業 7,625 (7,379) 1,637,091.5 (1,630,362.5) 7,710 (7,617) 896 (826) 19,788 (19,242) 2,083 (2,036) 37,145.5 (36,320.0) 2,615.5 (3,306.5) 2.27 (2.23) 4,059 (4,032) 53.2 (54.6) 卸売業、小売業 16,445 (15,930) 4,354,457.0 (4,318,092.5) 15,896 (15,722) 3,092 (3,109) 48,441 (46,650) 10,895 (10,311) 88,772.5 (86,358.5) 8,448.5 (9,268.0) 2.04 (2.00) 6,099 (6,183) 37.1 (38.8) 金融業、保険業 1,447 (1,406) 1,166,607.0 (1,154,140.5) 6,474 (6,369) 256 (268) 12,224 (11,638) 377 (381) 25,616.5 (24,834.5) 2,031.0 (2,183.5) 2.20 (2.15) 563 (577) 38.9 (41.0) 不動産業、物品賃貸業 2,071 (1,993) 488,030.5 (481,513.0) 1,916 (1,858) 240 (237) 4,740 (4,517) 517 (502) 9,070.5 (8,721.0) 835.0 (980.0) 1.86 (1.81) 660 (684) 31.9 (34.3) 学術研究、専門・技術サービス業 3,446 (3,279) 1,205,918.0 (1,168,713.0) 5,161 (5,003) 672 (569) 13,174 (12,026) 1,942 (1,583) 25,139.0 (23,392.5) 2,436.5 (2,401.5) 2.08 (2,00) 1,143 (1,122) 33.2 (34.2) 宿泊業、飲食サービス業 3,123 (3,114) 762,022.0 (802,603.0) 2,664 (2,798) 1,017 (1,028) 8,308 (8,706) 3,302 (3,269) 16,304.0 (16,964.5) 1,532.0 (1,837.0) 2.14 (2.11) 1,441 (1,459) 46.1 (46.9) 生活関連サービス業、娯楽業 3,034 (2,942) 503,049.0 (521,018.0) 2,193 (2,251) 515 (581) 6,132 (6,325) 1,454 (1,453) 11,760.0 (12,134.5) 865.5 (1,251.0) 2.34 (2.33) 1,260 (1,251) 41.5 (42.5) 教育、学習支援業 2,323 (2,225) 503,449.0 (491,507.5) 2,054 (2,044) 253 (227) 4,220 (3,890) 502 (408) 8,832.0 (8,409.0) 985.5 (1,028.0) 1.75 (1.71) 836 (852) 36.0 (38.3) 医療、福祉 18,208 (17,225) 3,095,914.0 (3,000,281.0) 13,881 (13,886) 5,924 (5,375) 43,924 (41,190) 20,987 (18,259) 88,103.5 (83,466.5) 12,084.5 (11,626.5) 2.85 (2.78) 10,811 (10,693) 59.4 (62.1) 複合サービス事業 900 (906) 294,115.0 (299,335.0) 1,362 (1,404) 165 (163) 3,044 (2,975) 390 (367) 6,128.0 (6,129.5) 399.0 (478.5) 2.08 (2.05) 368 (396) 40.9 (43.7) サービス業 10,950 (10,454) 3,288,838.5 (3,218,314.0) 14,486 (13,913) 2,552 (2,473) 36,546 (34,545) 6,120 (5,760) 71,130.0 (67,724.0) 8,174.0 (7,925.5) 2.16 (2.10) 5,003 (4,850) 45.7 (46.4) 注 前号掲載の第1表と同じ 【P28-29】 研究開発レポート 第29回職業リハビリテーション研究・実践発表会 Part2 パネルディスカッション T「メンタルヘルス不調による休職者への対応〜職場復帰支援を考える〜」 U「職務創出とその支援〜障害者雇用をしていくために〜」  当機構では、職業リハビリテーションに関する研究成果を周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を生み出すための機会として、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を毎年開催しています。2021(令和3)年度は、新型コロナウイルス感染症対策を考慮し、規模を縮小して現地開催するとともに、動画等を障害者職業総合センター(NIVR)のホームページに掲載しました。  今号では、パネルディスカッションT・Uの様子をダイジェストでお伝えします。 パネルディスカッションT メンタルヘルス不調による休職者への対応〜職場復帰支援を考える〜  厚生労働省が実施している労働安全衛生調査の結果によると、近年、労働者のうち仕事や職業生活に関することで強い不安、ストレスを感じる方の割合は50%以上で推移しています。また、過去1年間にメンタルヘルス不調により休業した労働者がいる事業所の割合は、50人以上の事業所規模において約30%にのぼり、多くの企業がさまざまな課題に直面しながらメンタルヘルス不調による休職者の対応をしています。  パネルディスカッションTでは、東京障害者職業センター次長の佐々木(ささき)よしえ氏をコーディネーターとして、障害者職業総合センター研究員の村久木(むらくき)洋一(よういち)氏、大成建設株式会社管理本部人事部健康管理センター(EAP相談室)専任次長の片山(かたやま)雅裕(まさひろ)氏、東京ガス株式会社デジタルイノベーション戦略部デジタルイノベーション総務グループの長田(ながた)史江(ふみえ)氏をパネリストに迎えて、休職者が職場復帰に至るまでの対策、復帰後の対策などについて検討しました。  はじめに、村久木氏から、所属する研究部門が行った「職場復帰支援の実態等に関する調査研究」の結果より、企業におけるメンタルヘルス不調による休職者への対応の概況などが紹介されました。それによると、多くの企業にはメンタルヘルス不調をともなう私傷病に適用可能な休職制度等があり、休職中の措置として「診断書の提出の指示」や「定期的なコミュニケーション」などが、復職時・復職後の措置として「残業や勤務時間の制限」や「定期的な面談」などが実施されているとのことです。一方、休職制度等があると回答した企業のうち、医療機関、地域障害者職業センター、従業員支援プログラム(EAP:Employee Assistance Program)実施機関などの「事業場外資源」を利用した経験がある企業の実数は、全体の約三分の一にとどまるという実態も報告されました。  次に、各パネリストから、それぞれの企業内の取組み事例が紹介されました。  片山氏からは、本社の健康管理センターに産業医や保健師、専従の相談員などからなる「EAP相談室」を設置し、体調不良者への気づきから、休職、リハビリ出社、復職後のフォローまでを、社外のEAP実施企業の利用も交えながら、細やかに支援している体制が紹介されました。  長田氏からは、人事担当者が中心となり、休職者の上司、産業医、障害者職業カウンセラーなどと協力体制を築いて、「休暇」、「欠勤」、「休職」、「復職」の各期間のプロセスで必要な支援やスケジュールの管理を行い、地域障害者職業センターが提供する「職場復帰支援(リワーク支援)」も活用しながら、休職者の復職を支える取組みが紹介されました。  後半のディスカッションでは、「休職期間中の定期的なコミュニケーションなどを通じて不安や悩みを相談できる場が重要」、「復職に向けて休職者ご本人と課題を共有して認識を合わせること、そのために支援機関が関わることも有効」などの意見が出されました。 パネルディスカッションU 職務創出とその支援〜障害者雇用をしていくために〜  障害者雇用を進める際に、多くの企業が「会社内に適当な仕事がない」ことを課題としてあげています。一方で、適当な仕事があったとしても、社内の障害者雇用に関する取組み方針の検討や理解が十分でなかったり、業務内容と障害者本人の適性が合わなかったりすると、結果として職場定着につながりづらいという実態も見受けられます。障害者雇用を継続していくためには、「職務創出」のみに着目するのではなく、経営戦略のなかでどのように障害者雇用を位置づけていくのかを考えていくことや社内の理解促進も重要です。  パネルディスカッションUでは、当機構職業リハビリテーション部次長の古谷(ふるたに)護(まもる)氏をコーディネーターとして、コマツ本社人事部ビジネスクリエーションセンタ主査の坂田(さかた)修平(しゅうへい)氏、特定非営利活動法人WEL'S副理事/就業・生活支援センターWEL'S TOKYOセンター長兼主任職場定着支援担当の堀江(ほりえ)美里(みさと)氏、南東北グループ医療法人社団三成会新百合ヶ丘総合病院総務課課長心得の鈴木(すずき)崇志(たかし)氏、千葉障害者職業センター主幹障害者職業カウンセラーの市川(いちかわ)美也子(みやこ)氏をパネリストに迎えて、継続的な雇用に向けた職務創出について、企業と支援機関それぞれの立場から考えていきました。  はじめに各パネリストから、それぞれの取組み事例が紹介されました。  坂田氏からは、「自社内雇用」を基本方針として位置づけ、2008(平成20)年3月に本社人事部内に専門部署(ビジネスクリエーションセンタ:BCC)を設立し、支援機関と連携しながら全国の事業所へと雇用を拡大していったことや、坂田氏ご自身が郡山工場の総務に在籍していた際に職域拡大や仕事量確保の課題に取り組み、BCCの郡山分室を立ち上げたことなどについて紹介がありました。また、同社の支援にあたったWEL'S TOKYOの堀江氏からは、職務創出にフォーカスするだけでなく、企業側の不安に寄り添って支援を進める姿勢や、仕事をよく知る社内の方に業務を切り出す視点を身に着けていただくことで職域を広げていったという支援内容の紹介がありました。  続いて鈴木氏からは、障害者雇用に対する理解を促進するために、まずは総務課内に数人の障害者を配置することでモデルケースとし、それによりつちかわれた障害者の支援スキルをもって、総務課から病院内の別部署に障害者を派遣するなどして職務を拡大していった事例が紹介されました。  市川氏からは、地域障害者職業センターが新規の雇入れに不安を抱える企業に対して提案する職務創出モデルの紹介のほか、雇用から定着までの支援内容が紹介されました。また、その後の職場定着がうまくいくためには、「社内に受入れ土壌ができていることが重要」との認識が示されました。  後半のディスカッションでは、「職務創出には社内の理解や協力が必須。それを促進するトップの方針表明等が非常に重要」、「支援機関には、企業ごとの考え方や姿勢を踏まえて、社内の体制整備までを見据えた支援を行うことが求められる」、「個々人の特性や意欲を伸ばしていくことも大切」など、効果的な職務創出のあり方について活発な議論がなされました。 ★コーディネーターとパネリストの方々の所属先・役職は開催日時点のものです ★下記ホームページにて、パネルディスカッションの動画をご覧いただけます  パネルディスカッションT https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/29kaisai/panel1.html  パネルディスカッションU https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/29kaisai/panel2.html ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 写真のキャプション 佐々木よしえ氏 村久木洋一氏 片山雅裕氏 長田史江氏 古谷護氏 坂田修平氏 堀江美里氏 鈴木崇志氏 市川美也子氏 【P30】 ニュースファイル 国の動き 農林水産省 ノウフク・アワード2021  農林水産省は、農福連携に取り組んでいる優れた事例を表彰する令和3年度「ノウフク・アワード2021」受賞団体を発表した。グランプリには「京丸園(きょうまるえん)株式会社」(静岡県浜松市)と「さんさん山城(やましろ)」(京都府京田辺市)の2団体が選ばれた。  農産物の生産・販売を手がける京丸園は、障害者と健常者の垣根をなくしたユニバーサル農業の取組みと、農作業や施設環境における障害者目線での工夫が評価された。作業分解の視点で作業方法や治具、機械を工夫するとともに障害者の個性にあわせた農作業形態などを変更し、特例子会社や福祉施設と連携しながら労働力の確保と障害者・高齢者の雇用拡大を進めている。  さんさん山城は、農業や加工品の製造販売などを展開する就労継続支援B型事業所。地域特産・地産地消・6次産業・地域活性化の取組みを推進し、ノウフクJAS認証などの取得、京野菜の普及啓発や地産地消への貢献が認められた。聴覚障害者らが宇治茶の手摘みやエビイモの手掘りなどに従事し、併設のカフェではメニューづくりから調理、接客まで障害者が中心となって行っている。  このほか、審査員特別賞に「社会福祉法人ゆずりは会菜の花」(群馬県前橋市)、「特定非営利活動法人立野福祉会」(新潟県佐渡市)、「株式会社菜々屋」(徳島県徳島市)、「安芸市農福連携研究会」(高知県安芸市)の4団体、優秀賞7団体、フレッシュ賞6団体、チャレンジ賞6団体が選ばれた。同省ではホームページで受賞25団体の取組み事例なども紹介している。 https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kouryu/220208.html 文化庁 芸術鑑賞で障害への理解促進  文化庁は、演劇などの芸術鑑賞を通じて障害への理解を深めてもらうため、車いすダンスや障害者で構成する劇団の小中学校での公演を増やす取組みを、2022(令和4)年度から本格化させる。障害のある児童・生徒も楽しめる字幕などを活用した公演も増やす。  文化庁はこれまで行ってきた「文化芸術による子供育成総合事業」に「ユニバーサル公演」を加え、障害者団体による演劇や音楽、字幕や音声ガイダンスなどを備えた演目を対象とし、2021年度は約50公演を実施。2022年度は約100公演とする計画で参加団体を募る。 地方の動き 東京 「健康運動プログラム」動画配信  「公益社団法人東京都障害者スポーツ協会」(新宿区)は、障害のある人たちが自宅や施設などで気軽に取り組める運動プログラムを動画で作成し、WEB配信を開始した。  このプログラムは、障害特性に沿った配慮を行いながら、障害によって動かせる身体の範囲が異なることを想定し、部位別に作成。「目的別」(有酸素運動編、ストレッチ編、動作をスムーズにする運動編)、「部位別」(上半身、下半身、上肢)に分けて計8本で構成。視覚障害のある人向けには、言葉だけでイメージしやすい表現で解説し、聴覚障害のある人向けには、動きの要点を文字情報にて表示する。1本あたり約5〜15分。  福祉施設職員や障害者スポーツ指導員向けの「指導マニュアル」も作成。写真やイラストを用いて各運動の動き、身体の使用部位、身体の状態にあわせて配慮すべき事項などを記載している。 https://tsad-portal.com/movie-exerciseprogram/ 生活情報 視覚情報をスマートフォンで提供  「SOMPOホールディングス株式会社」(東京都新宿区)の子会社「株式会社プライムアシスタンス」(東京都中野区)が、視覚障害者向けのサービスとして、スマートフォンを通じて遠隔のコンタクトセンターから視覚情報を提供する「Eyeco Support(アイコサポート)」の販売を開始した。  アイコサポートは、スマートフォンで専用アプリを起動すると、遠隔のコンタクトセンターのオペレーターがスマートフォンのカメラ映像を確認し、利用者に対して周辺の視覚情報やGPS情報に基づく位置情報を知らせるというもの。利用例として目的地までの道案内、郵便物や書類の読み上げ、外出前の身だしなみチェック、自動販売機利用、分量計測の料理サポートなどをあげている。  利用時間は9〜17時(12月31日〜1月3日を除く)、利用料金は月額5500円(税込)、利用時間は毎月合計2時間まで。詳しくはウェブサイトで紹介している。 https://eyecosupport.prime-as.co.jp/ 本紹介 『発達障害に関わる人が知っておきたい「相談援助」のコツがわかる本』  「大阪・京都こころの発達研究所葉(よう)」代表で、京都光華女子大学健康科学部講師の浜内(はまうち)彩乃(あやの)さんが、『発達障害に関わる人が知っておきたい「相談援助」のコツがわかる本』(ソシム刊)を出版した。本書では、「子ども編」と「大人編」に分け、発達障害の人や保護者などからの「よくある相談のケース」をあげながら、具体的な対応の仕方や返答のポイントを解説する。相談内容は「教育・経済・生活・就労」に関する領域。なかでも大人に関する相談への対応では、「向いている仕事を教えてほしい」、「ミスを減らしたい」、「障害をオープンにしたい」、「障害があるのに対応してもらえない」、「お金の使い方があらい」といったケースを取り上げている。A5判、192ページ、1760円(税込)。 『ダウン症の子をもつ税理士が書いた障がいのある子の「親なきあと」対策』  「一般社団法人親なきあと相談室関西ネットワーク」代表理事で、税理士の藤原(ふじわら)由親(よしちか)さんが、『ダウン症の子をもつ税理士が書いた障がいのある子の「親なきあと」対策』(日本法令刊)を出版した。ダウン症のある子の親でもある藤原さんが、相続専門の税理士として、自身の経験もふまえた「親なきあと」の遺言や信託、利用できる制度、税金などの対策案をまとめた。「相続の基礎知識」、「対策の選択肢」、「対策のポイント」、「タイムリミットで考える子のライフステージ別にやっておくべき対策」などを、コラムも交えて詳しく紹介している。A5判、192ページ、1650円(税込)。 ミニコラム 第12回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は八重田委員が執筆しています。  ご一読ください。 テレワークとテレリハビリテーション 筑波大学大学院・人間総合科学学術院リハビリテーション科学学位プログラム 准教授 八重田淳  障がいのある人のテレワーク自体を、遠隔で支援するプロフェッショナルがいたらどうだろう。  テレワークに必要となる情報通信技術の準備をし、その使い方とテレワーク業務を教えながら援助し、テレワーク業務に関連する情報保障・安全保障・法令遵守等の疑問を解決し、専門的なコンサルテーションを事業所に提供できる人材。障がい特性に応じたテレワークの合理的配慮を定期的に確認修正し、雇用継続に必要な雇用管理業務を請け負う人材。  そんな人材がいたら助かるという事業所ニーズがあれば、それも一つのビジネスになり得るのではないか。「テレリハ・スペシャリスト」のような。情報通信技術に強い障害者職業カウンセラーやジョブコーチが遠隔で職業リハビリテーションサービスを提供できるという「遠隔職業リハシステム」が構築されれば、それも悪くない。アメリカやカナダの公認障害者雇用管理スペシャリスト(CDMS)の遠隔版というイメージだ。  こうして、思いつきで好き勝手なことを「編集委員のひとこと」として自由に呟いているわけだが、もし私が特例子会社の社長だったら、そんな便利な人材がいたら助かるだろうなと妄想させていただいた。テレワークとテレリハビリテーションの融合がいずれ当たり前になっている未来を想像しながら。  現在私が勤務する筑波大学は、Imagine the Future(未来を想え)という旗を掲げ、「開かれた大学」を目ざしているが、未来を「創造」するのはもっと楽しいかもしれない。ビジネス科学とリハビリテーション工学と遠隔職業リハビリテーションの掛け算で、Disabilityという言葉を無くしたい。そんな未来を想ってみたが、みなさんはいかがだろうか。 【P32】 掲示板 受講者募集! 職業リハビリテーションに関する各種研修のご案内 訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 受講料無料 ◆訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修(第2回)  訪問型または企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)として1年以上の実務経験を有する方に対して、雇用管理やアセスメントに関する支援スキルの向上を図る研修を実施します。  講義・演習に加え、ケーススタディ、グループワーク、アクションプランの作成など実践的な内容が特長です。 ◆日程および会場  【第2回】<大阪会場> ※全国からお申し込みいただけます。  日程:令和4年8月2日(火)〜8月5日(金)  会場:クラボウアネックスビル3階(大阪府大阪市中央区久太郎町2-4-11) ◆申込受付期間  令和4年5月10日(火)〜6月17日(金) ◆お申込み先  当機構ホームページに受講申込書および申込方法を掲載しています。 ◆お問合せ先  大阪障害者職業センター  TEL:06-6261-5215  E-mail: osaka-ctr02@jeed.go.jp  https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html 職場適応援助者(ジョブコーチ) ステップ1 ジョブコーチをめざす方 職場適応援助者 養成研修 ジョブコーチ支援を行う際に必要な知識・技術の習得 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 全国の地域障害者職業センター ステップ2 ジョブコーチの実務経験のある方 職場適応援助者 支援スキル向上研修 ジョブコーチとしての支援スキルの向上 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 次号予告 ●私のひとこと  障害者雇用の研究や情報発信などを行っている障がい者総合研究所(東京都)の所長を務める戸田重央さんに、障害者のテレワークの現状と今後の見通しなどについて、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  株式会社DTSの特例子会社、株式会社DTSパレット(東京都)を取材。障害のある社員の職場定着や、働きやすい職場環境づくりなどについてお話をうかがいました。 ●グラビア  東日本旅客鉄道株式会社の特例子会社、株式会社JR東日本グリーンパートナーズ(埼玉県)を訪問。東日本の鉄道運行を支える現場を紹介します。 ●編集委員が行く  阪本文雄編集委員が、NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク(大阪府)を訪問。地元企業や事業所との連携について取材します。 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 訂正とお詫び  2022年1月号「職場ルポ」(7ページ)において、内容に誤りがありました。「障害者雇用率は国内4社のグループ適用で」の記載は、「これを含むダイフク全体の障害者雇用率は」に訂正します。  関係者のみなさまにはご迷惑をおかけしましたことを、お詫び申し上げます。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 5月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和4年4月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 トヨタループス株式会社 取締役 清水康史 武庫川女子大学 学生サポート室専門委員 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 准教授 八重田 淳 常磐大学 准教授 若林 功 【P33】 令和4年度障害者雇用 職場改善好事例募集 企業のみなさまから障害者雇用における雇用管理の工夫や働きやすい職場にするための改善事例を募集します。 ◆募集テーマ◆ 中小企業における社内の支援人材の効果的な活用により障害者の職場定着の推進に取り組んだ職場改善好事例 募集期間 令和4年2月1日(火)〜5月20日(金)[必着] 募集事例 ・社内の支援人材や支援機関との役割分担を明確にしたことで、定着支援体制を構築した取組 ・社内外の研修機会の設定により支援人材のスキルアップを図りつつ、経営層や管理部門による支援人材へのフォロー体制を構築した取組 ・障害者に対する支援計画・目標を設定し、支援人材が障害者の個々の特徴に応じてきめ細やかにサポートを行った取組 ・新型コロナウイルス感染症拡大を契機として職務設定の見直しや在宅勤務の導入等の新しい働き方に対応するための支援体制を整備した取組 など 応募資格 (1)障害者を雇用している事業所(常用雇用労働者数300人以下の中小企業)。 (2)労働関係法令等に関し重大な違反がないこと及び社会通念上、表彰するにふさわしくないと判断される問題を起こしていないこと。 (3)応募事業所において障害者雇用に関する支援(障害者就労継続支援事業所を含む)・コンサルティングを主たる営業品目としていないこと、かつ自企業グループ内に障害者雇用に関する支援・コンサルティングを主たる営業品目とする企業がないこと。 賞 厚生労働大臣賞(1編) 優秀賞 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長賞(若干編) 奨励賞 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長賞(若干編) ※入賞事例は、令和4年8月末ごろにホームページ等で発表する予定です。 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援:厚生労働省 ◎応募方法  募集要項をご確認のうえ、指定の応募用紙に改善内容を記入し、郵送またはEメールにてご応募ください。募集要項、応募用紙はホームページからダウンロードできます。 募集要項、応募用紙等はこちら→ ◎応募先・お問い合せ先 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 E-mail:manual@jeed.go.jp Tel:043-297-9514 ※過去の入賞事業所などの取組を掲載した好事例集はホームページでご覧いただけます。 過去の好事例集はこちら→ 【裏表紙】 アビリンピックとは? 障害のある方々が日ごろ職場などで培った技能を競う大会です。障害のある方々の職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害のある方々に対する理解と認識を深めてもらい、その雇用の促進を図ることを目的として開催しています。 アビリンピック 第42回全国アビリンピックは、令和4年11月4日(金)から11月6日(日)に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催します! 地方大会 STEP UP! 全国大会 STEP UP! 国際大会 お問合せ先 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用推進課 TEL:043-297-9516 MAIL:koyousuishin@jeed.go.jp マスコットキャラクター 「アビリス」 アビリンピックHP 「Abilympics.jp」 5月号 令和4年4月25日発行 通巻535号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)