【表紙】 令和4年5月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第536号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2022 6 No.536 職場ルポ 個々の能力開発を図り、業務の幅も広げる 株式会社DTSパレット(東京都) グラビア お客さまを意識して、きれいにきちんと 株式会社JR 東日本グリーンパートナーズ 戸田事業所(埼玉県) 編集委員が行く 支援計画で課題を明確に メンタルのセルフケアを支援 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク、アクアクララ北大阪(大阪府) 私のひとこと 障害者のテレワークの現状と今後の見通しについて 障がい者総合研究所 所長 戸田重央さん 「絵を描く人」岐阜県・谷(たに)菜々美(ななみ)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 6月号 【前頁】 心のアート 祝 王子のパレード (春の便り) Mayutamago (社会福祉法人愛媛県社会福祉事業団ほほえみ工房ぱれっと道後) 画材:画用紙、アクリルスプレー、コンテ、ポスターカラーマーカー/サイズ:540mm×380mm  いろいろな画材(水彩、アクリル絵の具、コンテ、ポスターカラーマーカー、画用紙、キャンバスなど)を使い、自然をモチーフに抽象画を描くことが多くなっている。  最近は、和柄に興味を持ち、本人なりに試行錯誤しているようだ。長時間の活動はむずかしいので、朝の作業所の送迎バスが来るまでのわずかな時間を利用して描いている。  今後の目標は、絵だけでなく、体を動かすことにも挑戦したいと思っている。 (文:有重麻由・母) Mayutamago/有重麻由(ありしげ まゆ)  1993(平成5)年生まれ。愛媛県松山市在住。知的障害、言語機能障害がある。社会福祉法人愛媛県社会福祉事業団ほほえみ工房ぱれっと道後に所属。 ●経歴 2019・2020・2021年 「奈良県みんなでたのしむ大芸術祭」ビッグ幡in東大寺 2019・2020年 「ひみつジャナイ基地プロジェクト」(日比野克彦×道後温泉 道後アート) 2021年 「なんでそんなんプロジェクト」(ぬかつくるとこ) 2021年 「暮らしのなかの電気・灯り」(四国電力株式会社・四国電力送配電株式会社) 2021年 「障がい者芸術文化祭 〜愛顔ひろがる えひめの障がい者ART展2021〜」 (愛媛県障がい者アートサポートセンター) 協力:愛媛県障がい者アートサポートセンター 【もくじ】 目次 2022年6月号 NO.536 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 祝 王子のパレード(春の便り) 作者:Mayutamago(社会福祉法人愛媛県社会福祉事業団ほほえみ工房ぱれっと道後) 私のひとこと 2 障害者のテレワークの現状と今後の見通しについて 障がい者総合研究所 所長 戸田重央さん 職場ルポ 4 個々の能力開発を図り、業務の幅も広げる 株式会社DTSパレット(東京都) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 はじめての障害者雇用U 〜障害のある人が働きやすい職場づくり〜 第3回 聴覚障害 JEEDインフォメーション 12 2022年度(令和4年度)職業リハビリテーションに関する研修のご案内/令和4年度「地方アビリンピック」開催地一覧/障害者雇用を進める事業主のみなさまへ 就労支援機器をご活用ください! グラビア 15 お客さまを意識して、きれいにきちんと 株式会社JR東日本グリーンパートナーズ 戸田事業所(埼玉県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 多様でユニークな支援のあり方 第1回 「汗」と「才能」の世界 Kプランニング代表 戸原一男 編集委員が行く 20 支援計画で課題を明確に メンタルのセルフケアを支援 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク、アクアクララ北大阪(大阪府) 編集委員 阪本文雄 省庁だより 26 障害者に対する就労支援の推進 〜令和4年度障害者雇用施策関係予算のポイント〜 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課/人材開発統括官 参事官室(人材開発政策担当)/大臣官房人事課 研究開発レポート 28 調査研究報告書160「障害のある労働者の職業サイクルに関する調査研究(第6期)」 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 読者の声 表紙絵の説明 「美術の授業で『将来の夢』を考える機会があり、私は絵を描くことが好きなので、これからも絵を描き続けていきたいと思い、題材に選びました。机の木目を描くところをがんばりました。最近は、折り紙やアイロンビーズなどにも挑戦しています」 (令和3年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 中学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-3】 私のひとこと 障害者のテレワークの現状と今後の見通しについて 障がい者総合研究所所長 戸田重央  2020(令和2)年1月に、国内で最初の新型コロナウイルス感染者が報告されて以降、コロナ禍は3年目を迎えています。終息の期待も寄せられるなか、変異株の出現、それにともなう第6波、第7波への警戒が間断なく呼びかけられるなど、いまだその脅威は続いているように見えます(2022年3月執筆時点)。この間、社会生活のありようも大きく様変わりしました。  コロナ禍以前の社会では「テレワーク(場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)」という用語は一般になじみのないものでしたが、「緊急事態宣言」の発出により、感染防止の観点で出社せずに業務を続ける手段の一つとして、あらためて注目を集めるようになりました。  期せずしてテレワーク導入について全国的な検討を余儀なくされたわけですが、結果的にこれまでの社会通念・常識を大きく見直すきっかけになったと思われます。  すなわち、会社で働く必要性、出社(通勤)の必要性、また必ずしも1日8時間、週5日勤務を標準としなくてもよいのではないか、ということに社会が気づくきっかけになったということです。コロナ禍は間違いなく日本社会に大きな変化をもたらしました。  そこで障がい者総合研究所(※1)では、「コロナ禍とテレワーク」に着目し、この2年を通じて障害者が働く職場でテレワークがどれだけ普及しているか、その実態を知るべく調査を実施しました。 アンケートから見る障害者のテレワークの普及度合い  「コロナ禍とテレワーク」をテーマにした最初の調査は「勤務先における新型コロナウイルス(COVID−19)の対策に関する緊急アンケート調査(2020年2月28日〜2020年3月5日)」(※2)でした。  この時期は感染の広がりとともに、使い捨てマスクやアルコール消毒液が全国各地で品薄となり、全国の小中学校や高校に臨時休校要請が公表されるなど、先行き不透明な時期でした。  「勤務先で実施されている対策は?」との問いに対し、「在宅勤務の実施」と答えた方は全体の約21%とテレワーク導入率は低く、どちらかというと時差出勤や消毒薬の常設など、出社を前提とした感染防止対策が主流だったことがうかがえます。  それからしばらくして、2回目の緊急アンケート「外出自粛要請下における、就労状況の変化に関するアンケート調査(2020年5月15日〜2020年5月21日)」(※3)を実施しました。このとき日本は緊急事態宣言下にあり、現金10万円を支給する「特別定額給付金」の申請受付や、全世帯に布マスクを配る施策が開始されるなど、日々の生活を保障するための施策が打たれている時期でした。  「あなたの勤務スタイルに生じた変化を教えてください。」との問いに「在宅勤務(約40%)」、次いで「自宅待機(約23%)」と回答者全体の63%の職場で「出勤を回避する」ことに目を向けるよう変化したことがうかがえます。  最初のアンケート調査からおよそ1年後、「2度に亘る緊急事態宣言、障害者の仕事への影響度に関するアンケート調査(2021年1月19日〜2021年1月22日)」(※4)を実施しました。この時期は第3波が確認され11都府県で2回目の緊急事態宣言が発出されました(3月下旬まで続きました)。日常を取り戻す施策として、Go To EatやGo Toトラベルといったキャンペーンが打たれては停止、延期になるなど混迷をきわめる時期でした。  「2回目の緊急事態宣言が発出されました。あなたの職場ではテレワークやローテーション勤務は導入されますか?」との問いに、「はい」と回答した方が「前回宣言時から続いている」も含めて、全体の約57%となりました。  3回のアンケートをふり返ると、1回目の調査時(2020年2月)に約21%であったテレワーク実施率(導入率)が、3回目の調査(2021年1月)では約57%になるなど着実にテレワークが普及している様子がうかがえます。一方で2回目の調査時にテレワーク(自宅待機含む)の実施率が約63%とあり、普及が高止まりしている、ということもいえそうです。  こうしたテレワーク普及の動きは、私たち株式会社ゼネラルパートナーズが運営する「就労移行支援事業所(障害のある方の一般企業への就職をサポートする通所型の福祉サービス)」の就職実績でもうかがい知ることができます。  2020年4月から2021年12月までの20カ月で202件の就職実績がありましたが、そのうち約27%(54件)が「在宅勤務OK」という雇用条件でした。  さらに、WEBデザイン、システムエンジニアとしてのスキルを学ぶためのIT・WEBコースの就労移行支援事業所だけに絞ってみると、「在宅勤務OK」という雇用条件で就職された方はおおよそ40%にのぼります。  2020年以前の就職決定実績のうち、在宅勤務可能な求人で就職できた数が0であったことを鑑みると、在宅勤務の求人は着実に普及の方向に向かっていると実感します。 障害者のテレワークは今後広がっていくのか?  コロナ禍も3年目を迎えようとするなかで、コロナ前の日常を取り戻そうとする動きも見られますが、当面はコロナのない日常(アフターコロナ)を模索するというよりも、コロナ禍の日常(ウィズコロナ)をどう過ごすかという考え方で日常を構築していくことになるでしょう。  今回アンケート調査を実施してみて、障害者にとってテレワークに功罪があることが見えてきました。通勤や移動に困っていた肢体不自由の方にしてみれば「時差出勤」の要望が、そして既往症により免疫力が低いことなどを心配される難病・内部障害のある方には「在宅勤務・テレワーク」の要望があり、そうした方々にとってテレワークという選択肢が増えたことは福音といえるでしょう。  一方で聴覚障害のある方からは在宅勤務やテレワークの導入により対面のコミュニケーションが取れなくなり業務に支障が出ていることや、規則正しい生活を送ることで心身の安定を図っていた方にとっては、急な労働環境の変化(出勤していた日常から自宅待機を命じられるなど)により生活リズムが変わり体調を崩してしまったなどの声も聞かれました。  テレワークの功罪はこれからも論じられていくと思いますが、いずれにせよ働き方の選択肢となったことは画期的だと思います。  テレワークはウィズコロナの観点のみならず、「働き方改革」の一環として、または「SDGs」などといった文脈で、好むと好まざるとにかかわらずこれからも普及が進んでいくことは間違いないでしょう。 ※1 障がい者総合研究所:障害者の就労支援を中心にソーシャルビジネスを展開する株式会社ゼネラルパートナーズが運営する調査・研究機関。障害当事者や障害者を雇用する事業者へのアンケートを通じ、障害者の社会参加における課題や要望などを可視化し、広く社会へ発信している ※2 「勤務先における新型コロナウイルス(COVID-19)の対策に関する緊急アンケート調査」https://note.com/gp__info/n/n8298da357d3d?magazine_key=ma10bdc0e3f80 ※3 「外出自粛要請下における、就労状況の変化に関するアンケート調査」https://note.com/gp__info/n/n4c56c973bef7?magazine_key=ma10bdc0e3f80 ※4 「2度に亘る緊急事態宣言、障害者の仕事への影響度に関するアンケート調査」https://note.com/gp__info/n/ndb2bda6827a1?magazine_key=ma10bdc0e3f80 戸田重央 (とだ しげお)  障がい者総合研究所所長。  2015(平成27)年に聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと(現atGPジョブトレ大手町聴覚障害コース)」を開所、初代施設長に。2018年より「障がい者総合研究所」所長に就任。新しい障害者雇用・就労のあり方について実践的な研究や情報発信に努めている。その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査に関する取材を受ける。聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。 【P4-9】 職場ルポ 個々の能力開発を図り、業務の幅も広げる ―株式会社DTS パレット(東京都)― 情報サービスを提供する企業の特例子会社では、入社後に一人ひとりの能力が開花できる人材育成を実践しながら、100 以上の業務拡大につなげてきた。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社DTSパレット 〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-22-11 八丁堀千島ビル4階 TEL 03-6262-8799 FAX 03-6262-8798 Keyword:特例子会社、内部障害、精神障害、知的障害、聴覚障害、障害者職業生活相談員、テレワーク POINT 1 個々にフォーカスした人材育成で多様な業務 2 テレワーク導入で、社員のスキルアップも 3 コロナ禍を機に、健康管理や相談体制を拡充 情報サービス関連企業の特例子会社  情報サービス事業などを手がける「株式会社DTS」(以下、「DTS」)は2011(平成23)年、特例子会社「株式会社DTSパレット」(以下、「DTSパレット」)を設立した。社名には「それぞれのカラーを活かし、新しいカラーを創り出すパレットのような会社を」との思いが込められているという。  当初8人だった社員は、10年以上を経て55人まで増えた。うち障害のある社員が49人(身体障害17人、知的障害7人、精神障害25人)、親会社であるDTSとDTSパレットを合わせた障害者雇用率は2.44%(2022〈令和4〉年2月28日現在)となっている。  2019年から2022年3月まで代表取締役とDTSの総務部長を兼務していた齋藤(さいとう)健(けん)さん(現在、DTS総務部担当部長)は、「当初はメール便や備品交換、会議室の清掃業務などを担当していましたが、業務拡大に務めるなかで、高度で複雑な仕事もかなり増えました」と話す。いまではDTSから発注されるさまざまな印刷関連業務のほか、セキュリティシステムのメンテナンスや給与計算、ホームページ更新、動画編集など100以上の業務を手がけている。 月2回の通院休暇や勉強会  DTSパレットが会社説明会などで使う資料では、社員の障害種別を詳しく紹介している。例えば、内部障害として水頭症や脳性麻痺、ジストニア、免疫不全症候群、血友病、膠原(こうげん)病のほか、精神障害として双極性障害や広汎性発達障害、統合失調症、注意欠如・多動性障害、てんかんなどだ。  定期的な通院が欠かせない社員も多く、設立当初から月2回までの通院休暇が取得できるよう制度化した。また免疫機能障害のある人の採用については、感染経路や病歴を質問しないことなどを徹底し、管理部門系の社員を集めて勉強会も開催。ここにはハローワークの雇用指導官と国立国際医療研究センター病院のコーディネーター(患者支援調整官)を招き、正しい理解をうながした。  全社員の半数を超える知的障害や精神障害のある社員については、月1回以上の面談のほか、就労移行支援機関の担当者との情報交換を積極的に行っている。現場の取組みについては、順を追って説明していきたい。 一人ひとりの能力開発を重視  DTSパレットの本社は、DTS本社から徒歩で2分ほど離れたビル内にある。ここに入っている第一事業推進部では、DTSなどからの委託業務を中心に、各種の印刷から文書データ化などのPCオペレーション、パソコン廃棄・データ消去、ウェブページの制作・管理などまで手広く行っている。  部長の寺村(てらむら)明(あきら)さんは、DTSパレット設立時に一般企業から転職してきた。「最初のころは、障害のある人にはハンディがあるというふうにとらえ戸惑いもありましたが、しばらくして、その認識が間違いだと気づきました」という。  知的障害のある社員の一人は、もともと社内メール便の配達業務を担当していたが、あるとき「パソコンを使った仕事もしてみたい」と本人からの申し出があった。むずかしいだろうと思いながらもお願いしてみたところ、すぐに問題なくできるようになった。いまはサブリーダー的な立場として、庶務的な業務も任せているという。  「いろいろな業務にトライしていくと、能力の幅が飛躍的に広がると実感しました。いまでは本人の苦手な部分ではなく、できる部分にフォーカスしていきながら、一人ひとりの能力開発を重視するようにしています」  寺村さん自身も内部障害があり、歩行時はステッキを使っているが、職場環境については「あえて配慮しすぎないようにしている」という。例えば精神障害のある社員向けには、一人になれる空間を用意する場所が取れないこともあり、自分なりに調整するよううながしている。「私たち障害のある社員は、健常者からの配慮を当然と考えず、自分から近づいていく努力も必要です」と話す寺村さんには、社員がどこに行っても活躍していけるように、という思いもある。  「それぞれ自己対処できるスキルや社会性を高めて、いつか『障害者雇用』という言葉もなくなる社会にしたいというのが私の持論です」  2015年にDTSから出向してきた管理部管理課の新出(しんで)真由美(まゆみ)さんによると、職場内では、何か困ったことがあるときや助けてほしいときは、自分から具体的に申し出ることになっているそうだ。「私たちが配慮を察するのを本人が期待するほうが、かえって気づまりするのではないかと思います。寺村さんからも『荷物を持ってほしい』といわれなければ、だれも手伝いません」と冗談交じりに説明する。  ちなみに新出さんは、DTSパレットに来てすぐに、障害のある社員からすすめられて障害者職業生活相談員の資格認定講習を受けたそうだ。「何も知らなかった者にとって、非常に勉強になった」と、その後は自らほかの社員に呼びかけ講習に参加してもらい、12人が相談員の資格を持つ。うち8人が障害のある社員だ。 職場内での会話を大事に  一方で寺村さんや新出さんたちは、職場での社員の様子を見ながらヒアリングを行い、気持ちを打ち明けてもらうようにしてきた。そして、そのやり方は臨機応変に変えてきたという。例えば、以前は、急に休んだ翌日などは必ずヒアリングを行っていたが、「理由を聞かれたくないこともある」との意見が出たことから、いまは必要に応じて実施。新出さんは、女性社員が生理などで休んだときにはさりげなく業務を調整するなど、細やかな対応にも気を配っている。  また、社員が互いを理解しやすい環境づくりにも努めている。まずは寺村さんが意識的に話しかけるが、雑談のなかで「あの人はこんな趣味がある」などとちょっとした情報を伝え、社員同士の会話がつながりやすくなるよう種をまいておくのだという。実際、それを機に職場内の会話が活性化しているそうだ。  職場での会話で、大きく人生が変わったという社員もいる。2018年入社の山本(やまもと)拓海(たくみ)さん(38歳)だ。「大学受験時に体調を崩し、それから12年ほど引きこもり状態でした」と明かす山本さんは、自宅で得たパソコン知識を活かし、就労支援団体の紹介で、パソコン教室の講師を週1回、半年間やり通した。その間に初めて自閉症スペクトラムの診断を受け、就労移行支援事業所に2年ほど通った後、DTSパレットに採用された。  当初は第一事業推進部イノベーション課でデータ入力などの業務を担当していたが、いまはDTSのパソコン管理業務なども担当。昨年は、社員5人でDTSパレットのホームページのリニューアルも手がけた。「チームで仕事を進めるのは初めてでしたが、たいへんながらも、やりがいがありました」という山本さんは、「自分が、こんなに話せる人間になるとは思いませんでした」とふり返る。  山本さんは、学生時代に自分から話しかけることはほぼなく、職場でも最初は相槌を打っているだけだったという。  「上司が昼休みに私のところにきて雑談するようになってから、会話に慣れていきました。素の部分を出すようになると周囲から話しかけられ、自分も話せるようになりました。いまは自宅よりも職場のほうが居心地がいいです」  最近は、得意の「整理整とん術」も発揮している。「物やデータの整理が苦手な人もいて業務に影響を及ぼすので、『この部分を整理したらもっとよくなります』と提案しています。みなさんも快く協力してくれて、業務の流れがずいぶんスムーズになりました」という山本さんは、「自分なりのスキルを活かして職場改善に貢献していけたらいいなと思います」と語ってくれた。 清掃の仕事から事務系に  DTS本社内にあるサテライトオフィスで働く社員にも話を聞いた。第二事業推進部ビジネスサポート課の二宮(にのみや)一起(いっき)さん(30歳)は、DTSパレット設立時に入社。高校卒業後いったん職業訓練校でパソコンスキルや簿記などを学び、ハローワークの合同面接会を経て採用された。職場ではおもにメール便の仕分けや配達、郵送準備などを担当している。各部署の郵便料金を集計するなど複雑な内容もあり、仕事の手順を覚えるのに苦労したが、メモを取るなどして乗り越えてきた。いまでは後輩に仕事を教える立場で、「少しでもわかりやすく伝えられるよう工夫しています。今後は、チームを引っ張っていける存在になりたいです」と話してくれた。また、鉄道ファンとしてつちかったカメラの腕前を活かし、社員証の写真撮影や登録作業も担当しているそうだ。  2014年に入社した第二事業推進部BPOサービス課の吉野(よしの)浩一(こういち)さん(41歳)は、以前はビル清掃会社のアルバイトとして10年ほど働いていたという。30歳を過ぎて「正社員になりたい」と思い立ち、地元の就労移行支援事業所を経てDTSパレットに採用された。入社後は、印刷物の検品などを担当していたが、3年前からはDTSの福利厚生関連の書類作成なども任されている。「必要に応じてエクセルやワードも自分で勉強していきました。少しずつ関数もわかるようになってきました」と手ごたえを語る。「むずかしい仕事ができるようになると楽しくなって、やりがいがあります。わからないことはすぐに上司に聞くようにして、うまくやれていると思います」と笑顔で話してくれた。  2人のインタビューを見守っていた第二事業推進部長の加賀(かが)康彦(やすひこ)さんに、職場で心がけていることを聞いた。「先日も、ある社員から『障害者の働く現場でどんなことに気をつけたらいいか』と聞かれましたが、決まった基準はありませんよね。やはり一人ひとりに合わせた対応に尽きると思います。あとは職場内で、だれからも不公平だととられないようにすることですね」としたうえで、こう語った。「社員たちには、『お金をもらって働いているのだ』ということも自覚してもらうようにしています。それまで家庭や学校にしっかり守られてきた社員も少なくなく、社会人として自立していく姿勢も育てていきたいですね」 テレワークで力を発揮  DTSパレットでは2018年、テレワークによる「在宅勤務制度」をスタートさせた。当時、下肢障害のある社員らが中心となって提案し、9カ月間の試行期間を経て、セキュリティの課題などもクリアし実現させたそうだ。  現在5人の社員が在宅勤務を主とした働き方をしている。その一人が2020年に入社した、聴覚障害のある三谷(みたに)清花(さやか)さん(28歳)だ。筑波技術大学でデザインを学び、別企業の特例子会社でウェブ広告のデザインなどを手がけていた。多くのことを学び成長できたそうだが、大きな職場で心身の疲れがたまり退職。1年ほど休養後、ハローワークで求人票を見つけ「在宅勤務可という条件を見て、働きやすいと感じ応募しました」という。  最初の3カ月間は職場の雰囲気などを知るために出社もして、自分の具体的な障害について理解してもらおうと、積極的に交流するようにしたそうだ。日ごろのコミュニケーションは、三谷さんがある程度発声できるほか、複雑な内容はスマートフォンの音声変換アプリやデジタルメモを活用してやり取りするなど、ほかの社員の理解のもと、努力している。  三谷さんは第一事業推進部イノベーション課で、DTSから依頼される印刷物などのデザインを担当している。前職での豊富な経験を買われ、いまはパソコンソフトのイラストレーターやフォトショップの操作スキルなども教える立場だ。テレワークが基本のため、チャット機能を駆使しながら業務を進めている。「チャット機能を使うほうが、正確に早く伝え合えますね。デザインの仕事も人に教えることも好きなので、いまの職場は、とてもやりがいを感じています」  ちなみに三谷さんは中学から大学までバレーボールを続け、過去には社会人チームで全国大会に出場し、ビーチバレーボールでは日本代表候補として活動した経験もあるそうだ。 電話相談窓口「みれろ」  東京都で最初の緊急事態宣言が出され た2020年4月以降、DTSパレット の社員も多くが一時自宅待機となった。 仕事への不安や体調の悪化などを訴える 社員の声を聞いた新出さんたちは、すぐ に電話相談窓口の設置を決めた。5月に 企画を立ち上げ7月からスタート。名称 は、mind(マインド) relaxing(リラクシング) room(ルーム)(心をリラックスさせる部屋、の意)の頭文字を取って「みれろ」とした。相談時間は平日9時半〜17時、1回40分で何回でも利用できる。窓口は新出さんが務めている。  また社員には、体調や不安事項などを記入する健康調査アンケートを週1回実施し、メールで新出さんあてに送ってもらっている。なかにはメールを送ったことのない社員もいたため、一人ずつ教えたが、思わぬ効果ももたらした。例えばある社員に「せっかくだからビジネス文体でメールを送ってみよう。自分でネット検索して作成してみて」とうながしたところ、驚くほど整った文章を送ってくるようになった。オンライン会議のやり方も学び、今春の年度末会議には初めて全員がオンラインで参加し、議決を採ったそうだ。  健康調査アンケートの提出が習慣化するなかで、各自の気持ちの波を把握しやすくなってきたという。新出さんは「社員によって長文を書いてきたり、『何もない』と書くのがSOSの意味だったり、突然送ってこなくなると鬱(うつ)状態だったりさまざまです。電話でもフォローしやすくなりました」と話す。「みれろ」の電話相談は月30件ほどにのぼるという。 より高度な業務を請け負う  DTSパレットでは、DTSなどから業務を請け負う際、通常の取引と同じように営業活動をしてきた。相手がグループ会社でも、ほかの業者から見積もりを取って比較されながら値段交渉し、初めて請け負う業務の場合は“お試し用”としてさらに低めの価格も提示している。  肝心の業務の中身は、予想を上回る成果を上げてきた。例えばパンフレットなどの印刷は、通常なら印刷の汚れや乱れをチェックするぐらいだが、知的障害のある社員が誤字脱字まで見つけだした。また、DTSから年賀状の宛名印刷を依頼されたときは、社員自らリストの住所や代表者の変更などを調べあげていたという。「彼らが自主的に契約内容以上の仕事をすることで、先方からの信頼も得ることができました」と新出さん。一方で寺村さんはこう話す。  「少しむずかしい業務に挑戦しながら、社員たちは急激にスキルアップしてきました。私たちも、彼らを育てていくという強い思いを持って取り組んでいます」  寺村さんの積極的な姿勢は、社長だった齋藤さんをも動かした。「寺村部長に相談すると、果敢に『やりますよ』といってくれるので、ハードルの高い仕事も思い切って任せられるようになってきました」。  また齋藤さんも、兼務していたDTSの総務部長として、積極的に業務の依頼を進めてきたという。DTSパレットは2年前から、DTSの年1回の統合報告書の編集担当として構成・レイアウト作業を行うほか、株主総会で流す動画制作も手がけている。最近では、DTSのコーポレートサイトを全面刷新するにあたり、その一部を担当して評価された。さらに、英語ができる社員がいたことから英語版の制作も全面的に請け負っている。  一方で、これまで齋藤さんが気をつけてきたのは、仕事ができるからといって頼り過ぎないようにすることだそうだ。「業務によっては納期が厳しかったり、修正のくり返しが常だったりするので、知らぬ間にプレッシャーが大きくなり、無理をして体調を崩す社員が出るかもしれません。DTS総務部の社員たちも、つい通常の外部委託のように頼ってしまうので、私が合間を見てペースを配分するよう注意をうながしています」という齋藤さんは、最後にこう語ってくれた。  「DTSパレットの社員たちは、驚くほどの高いスキルを持っていたり、以前は一般企業で活躍していたりした人もいて、一人ひとりの能力をいかんなく発揮させている職場だと強く感じています。今後も、パレットという社名にふさわしく、いろいろなカラーを持った個性を活かし合いながら、社員が活き活きと働けるような職場を目ざしていくつもりです」 写真のキャプション 株式会社DTSパレットのオフィス 代表取締役(取材時)、現在はDTS総務部担当部長の齋藤健さん 第一事業推進部長の寺村明さん 障害のある社員と面談を行う寺村さん 管理部管理課の新出真由美さん 第一事業推進部イノベーション課の山本拓海さん 山本さんは、パソコン管理業務などを担当する 第二事業推進部ビジネスサポート課の二宮一起さん 社員証の写真撮影を行う二宮さん 第二事業推進部BPOサービス課の吉野浩一さん 吉野さんは、福利厚生関連の書類作成も担当する 第二事業推進部長の加賀康彦さん 第一事業推進部イノベーション課で働く三谷清花さん 画面共有機能やチャットなどを活用し業務を行う三谷さん 業務用印刷機が並ぶDTSパレットの印刷室 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用U 第3回 聴覚障害 〜障害のある人が働きやすい職場づくり〜  これから障害者雇用に取り組もうとしているみなさまへの入門企画として、障害のある人が働きやすい職場環境を整えるために、どのようなことを行っていったらよいのか、取組み方法や事例を紹介します。第3回は、「聴覚障害のある人」が働きやすい職場づくりについてお伝えします。 聴覚障害の特性と配慮するポイント 〈聴覚障害とは〉  聴力になんらかの障害があるために、音が聞こえなかったり、聞こえにくかったりする状態のことです。障害の状態や程度は個人差が大きく、また、聴力を失った年齢や受けてきた教育の違いなどによって「発声・発語」ができるか、「読話」や「口話」、「手話」などの習得にも大きな違いがあり、適切なコミュニケーション方法や配慮事項は人によって異なります。 〈職場における配慮事項〉  聴覚障害のある人は、健常者に比べて、情報の入手方法が少なくなりがちですので、一緒に働く人たちには、どのような手段で情報を伝えるのが適切なのか、コミュニケーション方法を工夫することや、情報が伝わっているかどうかを確認することが必要です。  また、聴覚障害のある人は、業務時間を知らせるチャイムや緊急放送などの音による通知に気づかないことがあるので、合図や連絡、危険な場所や危険の発生を視覚で確認できるようにするなどの配慮も必要です。 聴覚障害者のための就労支援機器の例 ●電話関連機器  受話器に取りつけたり、電話機本体に接続したり、受話器ごと交換するなどして、音量の増幅や骨伝導により聴き取りやすくするための機器 ●磁気ループシステム  磁気誘導によって音声をテレコイル対応の補聴器などに伝達し、増幅して聴くことができる。また、マイクからの信号が直接ループに伝えられるため、周囲の雑音を押さえ、高音質を保つことができる ●屋内信号装置  離れた場所にいても、業務上の連絡事項や緊急時の連絡などの必要情報を送信し、光信号またはバイブレーション機能を持つ受信機で知らせるための機器 ●筆談支援機器  くり返し使用できる筆談ボード ●音声認識ソフトウェア  話した言葉を、パソコンの画面に文字で表示するツール ●文章音声化コミュニケーション支援ソフト  パソコン上の文章を、音声として読み上げるツール ●メール着信通知装置  メールの着信を、光と音で知らせる機器 事例 ウシオ電機株式会社(東京都千代田区) ◆事業内容  光応用製品事業ならびに産業機械およびその他事業 ◆従業員数  ウシオ電機本体  1707人(グループ計5053人)(2021年3月現在) 障害者雇用に関心のあるメンバーが取組みを牽引  ウシオ電機株式会社は、2017(平成29)年7月から「一人ひとりに焦点を当てた経営」のより一層の推進を目ざし、「ダイバーシティプロジェクト(2022年度に「ダイバーシティ&インクルージョンPJ」に改称)」を推進しています。その取組みの一つとして発足した「障がい者雇用分科会」(以下、「分科会」)では、だれもが安心・安全に活き活きと働ける職場づくりを目ざした活動を行っています。  「『ダイバーシティプロジェクト』の特徴は、人事部門だけではなく、一般の社員のなかからメンバーを募集し、当事者の声も取り入れながら活動していることです。『分科会』は、障害者雇用に関心があり、地域や所属部署が異なる7人のメンバーにより運営されています」と、分科会リーダーで人事部の伏見(ふしみ)さんは話します。  活動を始めるにあたって取り組んだのが、障害のある社員全員に対するアンケート調査の実施です。その結果からわかった聴覚障害のある社員の困りごとや意見をもとに、施設改善などに取り組みはじめたのが、マザー工場である播磨事業所でした。  「当社で働く障害のある社員のうち、もっとも人数が多いのが聴覚障害のある社員で、そのほとんどが、生産拠点のある播磨事業所に勤務しています。そのため、播磨事業所では、聴覚障害のある社員に対する取組みを中心に行ってきました。例えば、『見通しの悪い階段を昇ったり降りたりする際に、足音で人が来ることに気がつかずに、ぶつかりそうになることが多い』という声をふまえ、職場を巡視し、危ない場所にはミラーを設置するなどの改善策を講じています」と、分科会のメンバーで、総務部の香山(こうやま)さんは説明します。  また、「アンケートで、特に印象的だったキーワードが『孤立感』です」と、分科会のメンバーで、品質保証部の成田(なりた)さんは話します。  「以前は、朝礼や社内セミナーなどの際に、聴覚障害のある社員は、話の流れについていくのがむずかしいように見えましたが、当事者も周囲の社員も『仕方がない』と、あきらめていたと思います。そのような状況を改善するために、分科会では環境整備に取り組みました。例えば、『UDトーク』や『Microsoft Teams』の文字起こし機能などのリアルタイムで音声を文字に変換する機器や、手話通訳を利用できるようにしました。また、筆談用の電子メモパッドを聴覚障害のある社員に配布し、受付や食堂などの共有スペースにも設置するなど、筆談で会話をしやすいように環境を整えました」 社内の理解向上が取組みのカギに  同時に力を入れたのが、啓発活動です。播磨事業所には約1000人もの従業員が勤務しているため、ダイバーシティの取組みを推進させるためには、社内の理解をうながすことが必須だと考えたそうです。  「ダイバーシティプロジェクトでは、1カ月に一度のペースで社員向けのメールマガジン『ダイバーシティPJマガジン』を配信しています。そこに聴覚障害のある社員によるコラムを掲載するなど、当事者からの情報を発信しています。ふだんの業務でパソコンを使用していない社員も多いので、播磨事業所ではコラムをプリントアウトしたものを掲示板に貼って目につきやすいようにするなど、工夫しています」と、分科会のメンバーで、営業部の阪(さか)さんは話します。  ほかにも、社員食堂に手話の動画を投影したり、障害のある社員への理解を深めるための社内セミナーや手話勉強会を実施するなど、一般の社員が、障害者雇用や障害のある社員のことを自然に理解できるような取組みを続けています。 地道で継続した活動が必要  分科会の結成から5年目を迎え、社内における障害者雇用の認知度も少しずつ上がっており、障害のある社員に対する理解につながってきているそうです。  成田さんは、「まだまだわからないことや、とりかかれていないことばかりですが、当事者の視点に立って、いままで見過ごされていたような細かな点に目を向けることを大切にしたいと思っています。また、現在は、播磨事業所における聴覚障害のある社員に対しての活動が中心となっていますが、今後は、そのほかの障害のある社員に対する取組みも強化し、全社的に標準化した展開を目ざしていきたいと思っています」といいます。  伏見さんは、「障害者雇用や障害のある社員に対する理解は、一朝一夕に広められることではありませんが、一人でも多くの理解者、協力者を得られるように、地道な活動を続けていきたいと思います」と語ってくれました。 聴覚障害のある社員のコメント  播磨事業所での聴覚障害者を取り巻く環境は良くなってきたと思います。最近AED 講習会がありましたが、聴覚障害者だけの会を企画していただき、手話通訳者を通じて、ざっくばらんに質問ができ安心感がありました。他の事業所や会社全体にも、もっと理解が広まってくれればよいと思っています。 (製造部 中村(なかむら)さん) 写真のキャプション 聴覚障害のある社員が書いたコラムが掲載されている「ダイバーシティPJマガジン」を、だれでも読めるよう掲示板に掲示している 聴覚障害のある社員からの声をふまえ、通路にミラーを設置し、ヒヤリ・ハットを解消した 出退勤カードリーダー。音だけではなく光により、カードが読み取れているかを確認できる 聴覚障害のある社員に配布した筆談用のメモパッド (写真提供:ウシオ電機株式会社) 今号14ページで就労支援機器をご紹介しています。ぜひご覧ください! 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 2022年度(令和4年度) 職業リハビリテーションに関する研修のご案内  当機構では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当する方を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や技術の習得と資質の向上を図るための研修を実施しています。受講料は無料です。  各研修の詳細・お申込み先などは、当機構のホームページ(https://www.jeed.go.jp)のサイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 研修 日程 場所 就業支援担当者の方への研修 就業支援基礎研修 【対象】就業支援を担当する方 【内容】就業支援のプロセス、障害特性と職業的課題、障害者雇用施策、ケーススタディなど 各地域障害者職業センターのホームページなどで別途ご案内いたします。 ◯◯障害者職業センター 検索 ※◯◯には都道府県名を入力 各地域障害者職業センターなど 就業支援実践研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験2年以上の方 【内容】障害別のアセスメント、支援ツールの活用方法、ケーススタディなど 10〜12月に全国14エリアで開催します。 当機構ホームページなどで別途ご案内いたします。 全国14エリアの地域障害者職業センターなど 就業支援スキル向上研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験3年以上の方 【内容】障害別の支援技法、職リハに関する最新情報、ケーススタディなど 令和5年1月18日(水)〜1月20日(金) 千葉県千葉市 就業支援課題別セミナー 【対象】障害者の就労や雇用に関する支援を担当している方 【内容】令和4年度のテーマは「雇用継続支援」です 令和4年11月2日(水) オンライン形式 職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する研修 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など ※集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度 ※対象地域は以下のとおりです 東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山 西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 4月期 終了しました 東日本対象:令和4年4月19日(火)〜4月22日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和4年4月19日(火)〜4月22日(金) 大阪府大阪市 6月期 受付は終了しました 東日本対象:令和4年6月21日(火)〜6月24日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和4年6月28日(火)〜7月1日(金) 大阪府大阪市 8月期 東日本対象:令和4年8月23日(火)〜8月26日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和4年8月30日(火)〜9月2日(金) 大阪府大阪市 10月期 全国対象:令和4年10月18日(火)〜10月21日(金) 千葉県千葉市 12月期 東日本対象:令和4年12月20日(火)〜12月23日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和4年12月20日(火)〜12月23日(金) 大阪府内 2月期 全国対象:令和5年2月14日(火)〜2月17日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして1 年以上の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど 第1回 全国対象:令和4年5月31日(火)〜6月3日(金) 千葉県千葉市 第2回 全国対象:令和4年8月2日(火)〜8月5日(金) 大阪府大阪市 第3回 全国対象:令和4年9月27日(火)〜9月30日(金) 千葉県千葉市 第4回 全国対象:令和5年1月31日(火)〜2月3日(金) 大阪府大阪市 <お問合せ先> 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 各種研修の詳細はこちら https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html ◆令和4年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催されます。 詳細は、「地方アビリンピック」ホームページをご覧ください。 アビリンピック マスコットキャラク アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月1日(土) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬 青森職業能力開発促進センター/ホテル青森(予定) 岩手 7月30日(土) 岩手県立産業技術短期大学校矢巾キャンパス 宮城 7月9日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月15日(金) 秋田市文化会館 山形 7月6日(水) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月9日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月9日(土) 7月10日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月9日(土) 栃木職業能力開発促進センター/SHINBIデザインスクール 群馬 7月2日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月2日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月26日(土) 千葉職業能力開発促進センター 東京 2月中旬〜下旬(土)(予定) 東京障害者職業能力開発校/職業能力開発総合大学校 神奈川 @10月15日(土)(予定) A10月29日(土)(予定) @関東職業能力開発促進センター(予定) A神奈川障害者職業能力開発校(予定) 新潟 9月10日(土) 新潟市総合福祉会館/ホテルグローバルビュー新潟 富山 7月23日(土) 富山市職業訓練センター/富山県技術専門学院 石川 10月16日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 7月9日(土) 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 10月2日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月23日(土) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月2日(土) ソフトピアジャパンセンター 静岡 @6月26日(日) A7月2日(土) B7月3日(日) @静岡職業能力開発促進センター/A静岡市東部勤労者福祉センター 清水テルサ/B学校法人静岡理工科大学 静岡デザイン専門学校 愛知 @6月4日(土) A6月5日(日)  6月11日(土) B6月12日(日) C6月18日(土) D6月25日(土) @大成今池研修センター/A愛知障害者職業センター/B専門学校日本聴能言語福祉学院/C愛知県立名古屋聾学校/D中部職業能力開発促進センター 三重 6月25日(土) 三重職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 会 場 滋賀 11月26日(土) 近畿職業能力開発大学校附属 滋賀職業能力開発短期大学校 京都 2月中旬 京都府立京都高等技術専門校/京都府立京都障害者高等技術専門校 大阪 @〜B6月18日(土) @7月2日(土) @関西職業能力開発促進センター/A社会福祉法人日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター/B社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会 大阪市職業リハビリテーションセンター 兵庫 6月18日(土) 7月2日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月23日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 6月5日(日) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月30日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月9日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 @6月25日(土) A7月16日(土) @岡山障害者職業センター/A岡山職業能力開発促進センター 広島 12月〜1月頃 広島職業能力開発促進センター 山口 10月15日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月17日(土) 徳島職業能力開発促進センター/徳島ビルメンテナンス会館 香川 2月上旬〜中旬(予定) 未定 愛媛 7月9日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 @7月2日(土) A7月9日(土) @高知職業能力開発促進センター/A学校法人龍馬学園 龍馬デザイン・ビューティ専門学校 福岡 @7月2日(土) AB7月9日(土) @福岡県立福岡高等技術専門校/A福岡障害者職業能力開発校/B福岡職業能力開発促進センター 佐賀 1月頃 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月9日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月25日(土) 6月26日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月1日(土) 大分東部公民館 宮崎 7月9日(土) 宮崎職業能力開発促進センター/宮崎県ビルメンテナンス協会 鹿児島 7月9日(土) 7月10日(日) 鹿児島職業能力開発促進センター 沖縄 7月23日(土) 沖縄職業能力開発大学校 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ※2022年5月10日現在 新型コロナウイルス感染症の影響により、変更される場合があります 開催地によっては、開催日や種目などで会場が異なります 参加選手数の増減などにより、変更される場合があります 障害者雇用を進める事業主のみなさま へ 就労支援機器をご活用ください! 当機構の中央障害者雇用情報センターでは、障害者を雇用している、または雇用しようとしているみなさまに無料で就労支援機器の貸出し を行っています。 「就労支援機器」とは障害者の就労を容易にするための機器のことで、例えば視覚障害者を対象とした拡大読書器や、聴覚障害者を対象とした補聴システム(集音システム)といったものがあります。 拡大読書器 ●書類や写真などを拡大表示する機器です。 ●コントラストや色調の変更も可能なためより見やすく調整することができます。 ●卓上型、携帯型など活用シーンに合わせて選択できます。 補聴システム(集音システム) 受信機 マイク送信機 ●マイク(送信機)が拾った音を直接、補聴器や人工内耳に届けるシステムです。 ●聞きたい音を大きくできるので就労のあらゆる場面で有効に使用できます。 ノイズキャンセラー パーテーション ●視覚的・聴覚的な刺激を低減させることで、周囲の状況に影響されずに集中できる環境を整えます。 ▲上記は一例です 貸出しの対象となる事業主  障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主など  ※国、地方公共団体、独立行政法人などは対象外です 貸出し期間  原則、6カ月以内  ※職場実習やトライアル雇用の場合も利用できます 貸出しの流れ 申請書の提出 申請書を記入し、メールまたは郵送でご提出ください ※申請書は当機構ホームページよりダウンロードできます 貸出し決定 申請のあった事業主に対し、決定内容を通知し、機器を配送します 貸出しの終了・回収 当機構が契約している業者が回収にうかがいます お問合せ 中央障害者雇用情報センター 〒130-0022 東京都墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 TEL:03-5638-2792 E-mail:kiki@jeed.go.jp 就労支援機器を常設にて展示しているほか、導入に関する相談を行っています 就労支援機器は当機構ホームページで詳しくご紹介しています https://www.kiki.jeed.go.jp/ 就労支援機器のページ 検索 【P15-18】 グラビア お客さまを意識して、きれいにきちんと 株式会社JR東日本グリーンパートナーズ 戸田事業所(埼玉県) 取材先データ 株式会社JR東日本グリーンパートナーズ 戸田事業所 〒335-0021 埼玉県戸田市新曽847-5 TEL 048-446-1856 FAX 048-446-1857 写真・文:官野 貴  2008(平成20)年に設立された「株式会社JR東日本グリーンパートナーズ」(以下、「グリーンパートナーズ」)は、「東日本旅客鉄道株式会社」(以下、「JR東日本」)の特例子会社だ。これまで、JR東日本の社員が使用する2200種類もの制服を常時保管し、発送や使用済み制服の回収や分別を行う「制服管理事業」、JR東日本やグループ会社の名刺や氏名札、パンフレット、広報誌などの印刷や発送管理を行う「印刷サービス事業」などをになってきた。しかし、近年はJR東日本の業務改革や「持続可能な開発目標(SDGs)」への対応など、業務内容に変化が現れている。同社では、JR東日本の社員向けの事業だけではなく、お客さまなどが直接手にする商品の「ものづくり」に乗り出すなど、業務ニーズの変化に柔軟に対応している。  知的障害などの障害のあるスタッフ22人が働くグリーンパートナーズ戸田事業所では、新幹線の「グランクラス」でご希望のお客さまに提供される「木のストロー」制作、クルーズトレイン「TRAIN(トラン) SUITE(スイート) 四季島(しきしま)」で使用されるアメニティ用品の箱詰め作業などが行われている。だれもが同じ仕上がりにできることを目ざし、手づくりの道具や治じ具ぐ 、マニュアルなどが活用されている。  木のストローづくりを担当する須釜(すがま)康典(やすのり)さんは、ストローをまっすぐにカットするために、ハサミにL字型のアルミ板を両面テープで貼りつけ、目印をつけた道具を作成。「まっすぐ切れるんです」と名づけて活用し、品質向上に役立てている。また、木のストローを開発した東京都の住宅メーカーが作成した「専用マット」には、シートの置き方やカットする位置などが記載されており、つくり方が一目瞭然となっている。  グリーンパートナーズでは、各事業所の所長や就労定着支援事業所の担当者が一堂に会する「就労支援機関連絡会」を毎月開催して情報交換を行うなど、スタッフの定着支援にも力を入れている。 写真のキャプション 木のストロー作成 須釜康典さん @間伐材(かんばつざい)を鉋(かんな)で削った木材シートに、糊を均等に塗布する。須釜さんは「お客さまの手に渡ることを意識して、きれいにきちんと作業しています」と語る A糊付けしたシートを緩まないようにしっかりと力をかけながら心棒に巻き取る B端をテープで止め、自作した「まっすぐ切れるんです」を使ってストローの端をカットする アメニティの箱詰 折り目をつけすぎると歪んでしまうため、きれいに仕上げるためには力加減が重要だ 苔玉作成 @観賞用の苔玉(こけだま)盆栽の芯となる部分を作成する。ていねいな作業が求められる A苗木の根を麻布で包み、麻ひもで均等に巻いていく Bできあがった芯(左)は、新潟県の農業生産法人に出荷され苔玉盆栽(右)となる 制服の管理 制服の回収作業では、ポケットの中身チェックも行われていた 氏名札の作成 氏名などを印字したカードに保護フィルムを貼りつける。目の前には作業のチェックポイントを書いたボードを置いている 傷がついたりホコリが入ったりしないように注意が必要。カードにフィルムを貼りつける道具もスタッフが工夫を凝らし自作している 戸田事業所で行われた就労支援機関連絡会。各事業所の業務状況やスタッフの健康状態などが報告された 就労支援機関連絡会のあとは、就労定着支援事業所の担当者(右)とスタッフ(左)との個人面談が行われる 【P19】 エッセイ 多様でユニークな支援のあり方 第1回 「汗」と「才能」の世界 Kプランニング代表 戸原一男 戸原一男(とはら かずお)  約13年前から「SELP 訪問ルポ」(日本セルプセンターWEBサイト)や『月刊福祉』(全国社会福祉協議会出版部)にて、290カ所以上の障害者就労支援施設の取材記事を連載する。施設職員を対象とした工賃向上研修会の講師実績も多数。  おもな著書として、『障害者の日常術』(晶文社)、『障害者アートバンクの可能性』(中央法規出版)、『パソコンで絵を保存しよう』(日本エディタースクール出版部)、『ブレイブワーカーズ』(岩波ブックセンター)、『はるはる日記』(Kプランニング)、ほか。 はじめに  私はこれまでに全国にある約290カ所の障害者就労支援施設を訪れ、障害のある人たちが働く現場を取材してきた。自分自身も若いころに約20年にわたって身体障害者授産施設(当時)で勤務してきた経験を活かし、さまざまな観点から優れた事例を紹介してきたつもりである。今回このような連載エッセイを書かせてもらう機会を得たので、私が考えてきた「障害のある人たちが働く意味と可能性」について、まとめてみようと思う。 障害のある人が働く職場のほとんどは労働集約型  現在、日本には約1万7300カ所の障害者就労支援施設(A型・B型合計)があるといわれている。その多くが、各種の製造工場、クリーニング、清掃作業、製菓製パン、部品組立などの下請け作業、農園作業などである。もちろん業種の差はあるものの、ほぼ労働集約型産業に集中している。  多くの人手を必要とするから、障害のある人でも雇用機会が失われない−−これが、昔から作業科目を選定するときの関係者の基本的な考えだった。IT革命が進む現代においても、その意識は変わっていない。それゆえに特別支援学校を卒業後の子どもたちの選択肢は少なく、似たような就労先になってしまうのが現実である。  しかしよく考えてみると、たいへん不思議なことでもある。障害のある人というのは、そもそも身体的・精神的要因でカラダの一部が機能しない人たちのことをさす。どこかの能力が弱っている人たちが、その身体を駆使して「労働」しているわけだ。当然ながら高い生産性は望めず、得られる収入もかぎられてしまう。これは、障害者就労支援施設の月額平均工賃が向上しない大きな要因の一つといってよい。 障害のある人たちに「才能」はないのか?  「障害のある人の就労の場として、まったく新しい分野を開拓できないのだろうか?」じつはこんな疑問を、約35年も前に提起する人物がいた。私の師匠でもあった故・剣持(けんもち)忠則(ただのり)氏(コロニープランニングセンター元所長)である。彼は労働集約型産業のことを「汗をお金に換える世界」と定義し、対局である「才能をお金に換える世界」への発想の転換をうながした。  世の中には、身体を使わなくても自身の才覚だけで生活できる人たちがいる。その仕事の多くは付加価値が認められ、高い収入も保証されている。本来は、障害のある人たちこそ、こんな世界をめざすべきではないか。非常に極端な考え方であることは十分承知のうえで、剣持氏は関係者に対して叱咤激励をくり返した。いまあらためて彼の主張を読み返しても、まったく古びていないことに驚かされる。 視点を変えて考えてみよう  もちろん才能にも、さまざまな種類がある。芸術活動に代表されるクリエイティブな才能はもちろんのこと、障害のある人がそれぞれ持っているユニークな個性もまた、才能といえるのかもしれない。通常のベクトルでは見逃されがちな彼らの個性をプラス視点で見直し、それを「仕事」にまで昇華できる発想こそが、いままさに障害者就労の現場で求められているはずなのだ。  はたして全国では、これまでにどんな才能が見いだされてきたのだろうか?  私が取材してきたなかでユニークな事例を紹介しつつ、理想的な支援のあり方について次回以降で考えてみることにしよう。 【P20-25】 編集委員が行く 支援計画で課題を明確にメンタルのセルフケアを支援 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク、アクアクララ北大阪(大阪府) 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 取材先データ NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 〒532-0011 大阪府大阪市淀川区西中島5-3-4 新大阪高光ビル801 TEL 06-6307-1616 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 新大阪アネックス 〒532-0011 大阪府大阪市淀川区西中島5-3-4 新大阪高光ビル902 TEL 06-6307-1717 (就労継続支援A型事業所)アクアクララ北大阪 〒567-0005 大阪府茨木市五日市1-6-17 TEL 072-624-3911 編集委員から  わが国では障害者雇用数が毎年増え、記録更新が続いている。実数では身体、知的障害者に及ばないが、対前年伸び率では精神障害者の職場進出が目覚ましい。職場へ送り出す就労支援事業所がどのように精神障害の特性を把握し、一人ひとりの働くための課題を明確にし、メンタルのセルフケアを可能にする支援を行っているのか、専門家集団の取組みを取材した。 Keyword:就労移行支援事業所、精神障害、発達障害、個別支援計画、基礎訓練、職場実習、就職活動 写真:官野 貴 POINT 1 精神・発達障害に特化した「NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク」における、メンタルのセルフケアを含めた支援計画 2 一般就労に向けた就労継続支援A型事業所「アクアクララ北大阪」での勤務を通じ、利用者の課題を明確化、ステップアップを目ざす 3 利用者のメンタル不調を把握するため「SPIS」を活用 JSN新大阪アネックス  新大阪駅から歩いて約10分、オフィス街のビルの中に「NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク(JSN)」の就労移行支援事業所JSN新大阪アネックスがあった。「おはようございます」とあいさつをすると、机が並びパソコンに向かっていた利用者が、入口に立つ私の方に視線を向け、あいさつを返してくれた。  ここは精神障害者、発達障害者に特化した就労支援事業所。定員20人に対し、利用者は21人。9割が発達障害、1割が精神障害、平均年齢37歳、男性が7割。相談所、若者サポートステーション、大学、精神科医などから紹介されて見学に来る。職員は5人で、精神保健福祉士などの資格を持つ就労支援員、職業指導員で構成され、就労支援に従事して5年前後の経験者だ。この日はジョブコーチ、精神保健福祉士の資格を持つ所長の橋本(はしもと)泰伸(やすのぶ)さんが取材に応じてくれた。  「まず、最初の個別支援計画で、利用者の特性を把握するために、医療機関、支援学校、就労支援機関、家族などから情報を多面的に収集し、利用者が働くためにどういう支援が必要か、達成すべき課題を明確にし、作成します。目標の達成まで1年から1年半をかけます。計画にしたがいステップアップしていけば就職活動へ進みます。ハローワークで求人票を見て、本人の希望する企業を見学、雇用前実習をして双方が合意すれば一般就労となります」  就労移行支援はまず、事業所内での基礎訓練から始まる。運動、軽作業、在宅での訓練プログラム、グループワーク、パソコン、IT事務、ビジネスマナーなど働くための体力、コミュニケーション能力、事務能力を学び、養い、身につける。これに2〜3カ月間。次のステップは企業実習。実習先としてこれまで利用者が就労している約500社が用意されている。実習は3社を経験することが基本。期間は一つの職場で1〜3週間。ここでの指導のポイントは企業で実際に働いてみて、自分が克服すべき課題は何か、その課題への対処を自分でできたか。多くの人たちと働きながら自分の言動について見直し、職場適応への自己分析をし、支援員は面談しながら評価し職場でのメンタルのセルフケアの実践をうながす。  「支援計画で把握した障害特性、長所、短所を本人にフィードバックし、克服すべき目標を示し、次の実習でチャレンジしていきます。精神障害や発達障害のある人も、訓練をこなし、自分でメンタルケアができる知識や工夫を一つでも獲得すれば、職場に適応しやすくなります」と橋本さんは話す。  基礎訓練や職場実習を通して、自分の障害を知り、ストレスを感じたときのセルフケアの体験を重ねて習得し、適応能力を身につけることに一貫して取り組む。  利用者に話を聞いた。中西(なかにし)将大(まさひろ)さん(27歳)は、奈良県から電車で1時間かけて通っている。大学で人間関係に悩み、自身に発達障害があることを知ったという。就労移行支援事業所で訓練を受け、特例子会社で事務職に就き11カ月間勤務。その後、二つの就労支援事業所を経て昨年5月、現在の事業所に。基礎訓練を終え、保険会社、鉄道会社、介護施設での職場実習も経験した。  「これまでは周囲の人たちの言動に敏感になり過ぎて、自分を追い詰めることが多かったのですが、この事業所でメンタルのセルフケアに取り組み、精神面は成長したと感じています。就職活動に進み、これから、雇用前実習を受けることになっています。企業から評価してもらえれば、就職が決まると思います」と胸を膨らませている。  就労支援員の大町(おおまち)誠吾(せいご)さんは「最初は、一緒に働く人たちとのコミュニケーションの取り方がわからないように見えましたが、いまは自分なりに考え対応することを実習のなかで学んだようです。落ち着いて働けるようになっています」という。 アクアクララ北大阪  新大阪駅からJR京都線に乗って茨木市にある就労継続支援A型事業所「アクアクララ北大阪」へ。  2014(平成26)年開所。定員20人に対し利用者は12人、8割が精神障害、知的障害と身体障害が各1割。「アクアクララ事業」は、飲料水の配送、ウォーターサーバーの管理業務を行う。「清掃事業」は区役所、公共施設管理センターの日常清掃業務。「ハートギフト事業」はワインボトル、グラス、コースターにハート、花柄、名前、年月日などの文字を彫刻したり焼きつけたりしてギフト商品にする業務などを行っている。  松浦(まつうら)慈英(じえい)さん(27歳)は、身体障害5級でハートギフト事業部に勤務している。手先が器用でボトルに「Happy Wedding」の文字とバラの花を刻み込み見事なアート作品に仕上げる。22歳から働き、5年間エッチングの腕を磨いてきた。レーザー加工機でコースター、木箱に絵を焼きつけるのも得意。自宅から自転車通勤し、休みの日は母親と貸農園で大根、ニンジン、ジャガイモなど無農薬野菜づくりを楽しんでいる。「モノづくりが好きなので、この仕事は楽しく、満足しています」と笑顔で話す。  尾関(おぜき)啓太(けいた)さん(38歳)は、高槻市から電車で通勤している。朝8時から8時間勤務。ウォーターサーバーを分解し、水あかや汚れなどを洗剤で手洗いする。洗い場での立ち仕事のため、暑い夏や寒い冬はこたえるそうだ。統合失調症だが、約8年間休んでいない。不調の波はなく、安定。パソコンで事務もこなす。休みの日は音楽教室に通ってピアノを習い、ソナタを弾く。パソコンで作曲もするという。「生活は安定し趣味のピアノも弾けるし、毎日充実しています」。  所長の柿原(かきはら)晋裕(しんすけ)さんは2人について、「仕事は任せて大丈夫、信頼しています。支援学校の生徒の実習受け入れも率先してやってくれています」という。  「就労継続支援A型事業所は仕事をして給料を得て生活も安定し、趣味の話も聞かせてもらえる。日々の暮らしも地域住民として心豊かに過ごしているようです。ただ、私たちの事業所は一般就労への通過型として位置づけています。ここで終わりではなく、もう一つステップアップできるよう支援する。それが本来の役割です」と説明する。  一般就労に備え、必要な体力づくりをするため、勤務時間は1日5〜8時間だが、多くを6時間を超えるように設定している。事業内容が多岐にわたるので、幅広く体験できるのもメリットだ。  同事業所勤務から一般就労へのステップアップは、3年間の勤務を経験することを一つの目処にしているが、早ければ1年でも就職活動を始める。「会社で働きたい」という本人の意思、意欲が基本。  そして同事業所では、毎年2〜3人が一般就労する。就労支援員は、希望者とハローワークへ行き、求人票を見て企業訪問や実習を支援し、一般就労へとつなげている。就職後のサポートとしては、ジョブコーチの企業訪問、定着支援を必要に応じて実施している。 精神・発達障害に特化した就労支援  2007年、NPO法人として大阪精神障害者就労支援ネットワークは発足した。大阪精神科診療所協会理事で、くすの木クリニック医師の田川(たがわ)精二(せいじ)さんら、9人の開業医で立ち上げた。その数年前から、働きたいという患者の相談にこたえたいという思いがあったが、地域を見渡してみても就労支援の受け皿はなかったという。ではどうすればできるのかと勉強会を開いていたところ、2006年に障害者自立支援法が施行され、身体障害、知的障害、精神障害者の一般就労への移行を目的にする国の支援制度が始まり、精神障害者に特化した就労支援事業所を目ざすこととなった。  2007年5月、門真(かどま)市に同ネットワークを開設、次いで茨木(いばらき)市、新大阪(大阪市淀川区)と続き、東京都も加え、現在、就労移行支援5事業所(定員100人)と、就労継続支援A型1事業所(定員20人)を運営する。精神障害に特化していた支援対象に、発達障害を加えた。支援方法は実践を通して充実を図っている。  15年間の実績をまとめたパンフレットを見ると、「就職者600名以上」の見出しで「利用者の90 %が就職。職場での定着支援に力を入れ専属のジョブコーチを配置、70%の人が同じ職場で働き続けています」とある。  2021(令和3)年の厚生労働省の「障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業における雇用障害者数は、59万7786人。対前年比の伸び率は3.4%。障害別は身体障害者35万9067.5人(伸び率0.8%)、知的障害者14万665人(同4.8%)、精神障害者9万8053.5人(同11.4%)。働く障害者が増えていく伸び率は精神障害が最多。雇用障害者数の増加の大きな要因になっている。  2018年度から身体障害者、知的障害者に加え、精神障害者が障害者雇用率の算定対象になり、就労支援機関、精神科医療機関、企業などの支援と精神障害者らの努力で、年々一般就労する雇用障害者数は増加している。  しかし、精神障害者の就労には「勤務時間が短い」、「定着率が低い」という課題があり、このハードルをどう乗り越えるか、頭を悩ませる支援員は、いまなお多い。企業からは「精神障害は目に見えない」、「コミュニケーションが取りにくい」という難点が指摘されている。このような現状のなか、精神障害、発達障害に特化した専門家集団の取組みと成果は注目されている。 「SPIS」の開発、活用  就労支援の専門性の向上へどう取り組んでいるか、JSN副理事・統括施設長で本誌編集委員でもある金塚(かなつか)たかしさんに話を聞いた。  見えないといわれる精神障害特有の「不調」、「悩み」。コミュニケーションが不得手なケースも多く、伝達、把握も容易ではない。そこで、頭痛や不眠などの小さな不調を日報形式でパソコンに入力すると、グラフや表になって表示されるシステム「SPIS(エスピス)」を開発、活用しているという。  精神・発達障害のある人たちのメンタル不調を把握するため、個人の特性に合わせ「朝までぐっすり眠れた」、「頭痛」、「自分の気持ちを素直に表現できた」、「焦りを感じる」、「仕事でミスがないか、確認できた」、「休憩を申し出ることができた」など六つの評価項目が設定されており、1から4までの数字で評価を記入する。また当事者のコメント欄があり、例えばAさんは「午前中はがんばれたが、午後は初めての業務を教えてもらう場面で、一部理解できなかった。何度も質問しては悪いと思い、わからないまま退社し気分が重い」と記入している。  このように、その日の不調、悩み、精神状態、ストレスになっている仕事上のことが、具体的に把握できるようになっている。そしてAさんに対しては、企業の担当者、就労支援事業所の職業指導員らがコメント欄で「私が業務説明で理解度を確認しながら進めればよかったですね」、「理解できないまま仕事を進めるのは不安ですね。こまめに確認し休憩をとるようにしてください」と返していた。  「統計」をクリックすると、グラフ表示で体調や精神状態のアップダウンの波が一目瞭然だ。雨の日や悪天候の日は頭痛がして体調に影響することがわかる。本人と毎月のふり返りで確認しながら「涙が出たのはどうして」、「気持ちの焦りが続いたのは仕事で気になることがあるせいですか」と問題解決へ進むことができる。場合によっては臨床心理士、精神保健福祉士ら専門家がアドバイスする。  金塚さんは、「利用者が就労したシステム会社の社長さんとうちの支援員、会社の受け入れ担当者らが、こういうものがあれば精神障害者の不調、悩みが見える化できると考え、意見を出し合ってSPISができました。当初はコミュニケーションのツールとして定着支援に使っていましたが、不調の背景にある悩み、課題へのアプローチも可能になっており、いまは就労移行支援でも自分のメンタルの把握、そこから進んでセルフケアの進展状況のチェックなど幅広く活用しています。利用者へのプログラムと支援員へのプログラム、その二つが大切です」と話す。 利用者、支援員向けに二つの教育プログラムが必要  就労移行支援の最前線に立つJSN新大阪アネックス所長の橋本さんは、支援員、指導員への現場教育を重視する。いま取り組んでいる就労支援での人材育成のポイントについて聞くと、次のように答えてくれた。 1.法人全体で人材育成としての新人研修を実施 2.事業所で個別支援計画の作成にOJTを通して現場教育。支援対象者が働くために克服すべき課題を明確にする。そのために本人の特性の把握へ情報収集を医療、学校、相談所など幅広く徹底して行う。面談の仕方をみんなで議論しながら中身のあるものにしていくなど、個別支援計画を徹底し上司や先輩が新人や部下、後輩に計画策定の知識、技術を身につけさせる 3.精神科医を招いてケースカンファレンス。精神障害、発達障害の行動特性、医療サイドの対応を学ぶ 4.所長が指導員、支援員から個別に相談を受け、支援の質的向上へアドバイスをする  「支援計画はきっちりしたものをつくり、次に支援に必要なノウハウを教え、課題克服を進めます。計画の見直しも大事です。利用者と支援員の一体感も欠かせません。就労支援にかかわる人材育成には3年は必要です」という。  SPISは利用者へのプログラムとして大きな効果をもたらすだけでなく、支援員、職場の担当者をつなぎ、双方に効果が出ている。  また、利用者へ向けた具体的な行動指針が、掲示板に貼り出されていた。 【行動指針】 あいさつはされるものではない。 するものである。 失敗は恐れるな。 失敗は経験である。 一歩踏み出す勇気。 それが一番大事。 【スキルを効果的に使うポイント】 1 視線 2 表情 3 姿勢 4 ジェスチャー 5 声の大きさ 6 声の調子と話の滑らかさ 7 話の内容や言い方の工夫 【5W1H】  いつ、だれが、どこで、何を、どうして、どのように  コミュニケーションの基本はここから始まる。利用者が取り組むスタートラインのプログラムである。 長く働き続けるための支援へ  精神・発達障害者の雇用は数字のうえでは拡大の一途をたどっている。金塚さんは、「私たちの支援の取組みは、就職がゴールではありません。今後は、働き続けることが大事になります。そのための支援を充実させたいです。これまでの実践から、基礎訓練のほか、『スタッフと利用者の信頼関係』、『企業実習』、『ジョブコーチの定着支援』が企業支援につながる―この3点が、長く働き続けるための支援の柱になります。就職後の企業での支援も大事で、利用者だった人との信頼関係を継続し、定着支援のスキルを持つジョブコーチが役割を発揮すればよいと思います」と、これからの取組みの方向づけについて話してくれた。  精神・発達障害者の就労支援は、「就職する」ビギニング・ステージから、「長く働く」セカンド・ステージへと進んでいる。 写真のキャプション JSN新大阪アネックスが入居するビル JSN新大阪アネックス所長の橋本泰伸さん JSN新大阪アネックスでの訓練の様子 面談でのヒアリングを支援計画に活かす JSN新大阪アネックスで就労支援を受ける中西将大 訓練の一環で自己評価表を記入する中西さん 就労支援員の大町誠吾さん 就労継続支援A型事業所「アクアクララ北大阪」 ハートギフト事業部で手がける商品の一部 ハートギフト事業部で働く松浦慈英さん サンドブラスターでのエッチング作業を行う松浦さん アクアクララ事業部で働く尾関啓太さん ウォーターサーバーの分解洗浄作業を行う尾関さん アクアクララ北大阪所長の柿原晋裕さん JSN副理事・統括施設長の金塚たかしさん。本誌編集委員も務める 【P26-27】 省庁だより 障害者に対する就労支援の推進 〜令和4年度障害者雇用施策関係予算のポイント〜 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課/人材開発統括官 参事官室(人材開発政策担当)/大臣官房人事課 【施策の概要】  障害者雇用に関する状況を見ると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う経済活動の低下により、障害者雇用への影響が一定見られたが、ハローワークにおける就職件数は一定程度回復傾向にあり、引き続き、障害者の就労意欲の高まりが見られる。令和3年の障害者の雇用者数は、平成16年以降、18年連続で過去最高を更新し、実雇用率も2.20%と10年連続で過去最高を更新し、障害者雇用は着実な進展が見られる。一方で、障害者雇用率が令和3年3月に0.1%引上げられたこと等も踏まえ、中小企業に対するより一層の支援が必要である。  あわせて、就労を希望する障害者についても、多様化が進んできており、希望や能力に応じて、活き活きと活躍できる職場環境の整備など、雇用の質に着目した取組も必要である。  中小企業の中には障害者を全く雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)も多い状況にある。中小企業における障害者雇用が進み、身近な地域で働く選択肢が確保されることは、障害者が希望や特性等に応じた働き方を実現していくための重要な要素であると言える。  また、近年、雇用者数や就労希望者数が大幅に増加している精神障害者については、一般に職場定着に課題を抱えるケースが多く見られること等から、雇入れ支援に加えて、雇用された後の職場での定着支援についても求められている。  さらに、ICTを活用したテレワークについては、政府全体で導入の推進を行っているところであるが、障害者においても、多様な働き方の推進や通常の職場での勤務が困難な者等の雇用機会の確保の観点から、障害者の雇用を促進するためにテレワークの支援を行う必要がある。  なお、公務部門の障害者雇用については、雇用される障害者の職場定着支援や支援体制づくりのため、ハローワーク等に配置する職場適応支援者による定着支援を引き続き実施する必要がある。  右記の状況を踏まえ、令和4年度予算においては、 @中小企業をはじめとした障害者の雇入れ支援等 A精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援 B障害者の雇用を促進するためのテレワークの支援 C公務部門における障害者の雇用促進・定着支援 を主要な柱として、障害者に対する就労支援及び定着支援を図る。 令和4年度予算額 24、421(24、852)百万円 ※括弧書きは前年度(令和3年度)予算額 T 中小企業をはじめとした障害者の雇入れ支援等 1 ハローワークにおける「チーム支援」等の実施による支援の充実・強化 [予算額5、233(5、744)百万円] (1)障害者雇用ゼロ企業等に対する「企業向けチーム支援」の実施 [予算額 957(982)百万円]  ハローワークと地域の関係機関が連携し、障害者の雇用経験や雇用ノウハウが不足している障害者雇用ゼロ企業等を中心とする法定雇用率未達成企業に対して、企業ごとのニーズに合わせ、求人ニーズに適合した求職者の開拓等の準備段階から採用後の定着支援まで一貫した「企業向けチーム支援」を実施し、企業の障害者雇用を支援する。 (2)「障害者向けチーム支援」の実施等によるハローワークのマッチング機能の強化 [予算額1、745(1、923)百万円]  ハローワークが中心となり、地域の関係機関等と連携して、就職から職場定着まで一貫した支援を行う「障害者向けチーム支援」を実施し、障害者の就職を支援する。  また、就職準備性を高めることが必要な障害者を対象に、一般雇用に向けた心構え・必要なノウハウ等に関する「就職ガイダンス」や、管理選考・就職面接会を積極的に実施する。 (3)中堅規模企業における障害者雇用モデルの構築事業[新規] [予算額 37(0)百万円]  経営改善に資する障害者雇用の取組を進めるための支援を実施するとともに、対象企業における取組をモデル事例として取りまとめ、横展開を図る。 (4)福祉、教育、医療から雇用への移行推進事業の実施 [予算額 288(291)百万円]  福祉、教育、医療から雇用への移行を推進するため、福祉施設、特別支援学校、医療機関等の地域の関係機関や事業主団体・企業と連携しつつ、職場実習を総合的かつ効果的に実施する。特に、中小企業における職場実習の推進を図る。  また、就労支援セミナー、事業所見学会等の機会の充実、ハローワークが中心となった企業と福祉分野の連携促進事業の推進等を図る。 (5)障害者トライアル雇用事業の実施 [予算額1、269(1、600)百万円]  ハローワーク等の紹介により障害者を試行雇用(原則3か月。精神障害者については最大12か月。)する事業主に対して助成し、障害者の雇用の促進と安定を図る。 2 安心して安定的に働き続けることができる環境の整備 [予算額8、348(8、063)百万円] (1)障害者就業・生活支援センターによる地域における就労支援 [予算額7、988(7、907)百万円]  障害者就業・生活支援センターにおいて、未設置圏域にセンターの設置を進めるとともに、引き続き、地域支援機関のネットワーク拠点として障害者の就業面と生活面の一体的な相談・支援の推進を図る。 (2)障害者の正社員化等に取り組む事業主への支援の充実 [予算額302(98)百万円]  就業規則又は労働協約等に規定した制度に基づき、有期雇用労働者等である障害者を正規雇用、無期雇用に転換した場合に助成する。 (3)障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供に係る相談支援等 [予算額58(58)百万円]  障害者雇用に関する専門窓口を設置し、障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供について、個々の企業の実情に応じた対応への相談支援を行うとともに、障害者雇用に課題を持つ事業主に対する講習会等を開催する。 U 精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援 1 精神障害者等に対する就労支援の充実 [予算額 1、488(1、536)百万円] (1)ハローワークにおける精神障害者への専門的支援の推進 [予算額1、466(1、509)百万円]  精神障害者の安定した雇用を実現するための職場定着支援の観点から、ハローワークに、精神保健福祉士等の資格を有する「精神障害者雇用トータルサポーター」を配置し、精神障害者に対するカウンセリング、企業に対する精神障害者等の雇用に係る課題解決のための相談援助等の支援を行う。 (2)精神・発達障害者しごとサポーターの養成 [予算額22(27)百万円]  企業内の一般労働者を対象として、精神・発達障害者を温かく見守り、支援する応援者となる「精神・発達障害者しごとサポーター」を養成していくことで、就労の場面で、精神・発達障害者がより活躍しやすい環境づくりを推進する。 2 職業能力開発校(一般校)における精神障害者等の受入体制の整備 [予算額155(316)百万円]  精神障害者等の受入体制を整備するため、職業能力開発校において精神保健福祉士等を配置するとともに、精神障害者等の受入れに係るノウハウ普及・対応力強化に取り組む。 3 発達障害者、難病患者に対する就労支援 [予算額1、414(1、387)百万円] (1)発達障害者雇用トータルサポーターによる就職準備段階から職場定着までの一貫した専門的支援の実施 [予算額473(490)百万円]  ハローワークに、発達障害者の就労支援等の十分な経験を有する「発達障害者雇用トータルサポーター」を配置し、発達障害者支援センター等との積極的な連携を図りつつ、発達障害者に対するカウンセリングや就職に向けた準備プログラム、企業や支援担当者に対する発達障害者の雇用や定着に必要なノウハウの提供等を推進する。 (2)発達障害等のある学生等に対する専門的な就職支援の実施 [予算額 108(110)百万円]  大学等における発達障害者等の増加を踏まえ、就職活動に際して専門的な支援が必要な学生等に対して、大学等と連携して支援対象者の早期把握を図るとともに、就職準備から就職・職場定着までの一貫した支援を行う。 (3)難病相談支援センターと連携した難病患者への就労支援の実施 [予算額 217(220)百万円]  ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センター等と連携して、就職を希望する難病患者に対して、その症状の特性を踏まえたきめ細かな就労支援を行う。 (4)発達障害者・難病患者を雇い入れた事業主に対する助成の実施 [予算額 614(567)百万円]  発達障害者又は難病のある者を雇い入れ、適切な雇用管理等を行った事業主に対する助成を実施する。 V 障害者の雇用を促進するためのテレワークの支援 1 障害者の雇用を促進するためのテレワークの支援(一部再掲) [予算額 1、284(1、550)百万円]  障害者の雇用を促進するためのテレワークの推進を図るため、テレワークの導入に向けた具体的な取組の支援のための企業向けガイダンスや個別企業へのコンサルティング等を実施する。 W 公務部門における障害者の雇用促進・定着支援 1 公務部門における障害者の雇用促進・定着支援 [予算額 275(333)百万円]  公務部門における雇用する障害者の定着支援を引き続き推進するため、ハローワーク等に職場適応支援者を配置するとともに、厚生労働省においても、障害特性に応じた個別支援、障害に対する理解促進のための研修等を行う。 X 障害者の職業能力開発支援の強化 1 職業能力開発校(一般校)における精神障害者等の受入体制の整備(再掲) [予算額 155(316)百万円] 2 障害者職業能力開発校における特別支援障害者に重点を置いた職業訓練の推進 [予算額 4、613(4、671)百万円]  障害者職業能力開発校において、「職業訓練上特別な支援を要する障害者」を重点的に受入れ、障害特性に応じた職業訓練を実施するとともに、老朽化等により訓練生の安全や校舎の維持管理面で緊急性の高い施設整備を実施する。 3 障害者の多様なニーズに対応した委託訓練の実施 [予算額 1、479(1、440)百万円]  企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等多様な訓練資源を活用し、障害者が住む身近な地域で多様な職業訓練を実施する。 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 【P28-29】 研究開発レポート 調査研究報告書160「障害のある労働者の職業サイクルに関する調査研究(第6期)」 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 1 はじめに  障害者の職業生活については、長期にわたる就職、就業継続、離職の各局面での状況と課題を把握し、その結果に応じたきめ細かい支援をすることが必要になっています。  当機構の障害者職業総合センター社会的支援部門では、2008(平成20)年度の調査開始時に就業していた障害者を、40歳未満と40歳以上のグループに分けて、2年間を1期としてそれぞれ1回ずつアンケート調査を実施し、8期(16年間)にわたる追跡調査を実施しています。  本調査も、すでに15年目に入り、各グループで7期の調査を行いました。この期間には、障害者総合支援法の施行、障害者雇用促進法での合理的配慮提供や障害者差別禁止の義務化といった大きな制度の変化や、東日本大震災や経済的変化等のさまざまな出来事がありました。本稿では、このような長期追跡調査のうち、第6期(11年目・12年目)の調査結果をご紹介します。なお、第6期調査の段階では、視覚障害者105人、聴覚障害者217人、肢体不自由者231人、内部障害者110人、知的障害者270人、精神障害者110人、計1043人が対象となっています。回答は、597人(回収率57%)から得ています。 2 障害種類別の就労状況  回答者のうち正社員、パート等、派遣、自営業、内職、就労継続支援A型事業所で働いている者の割合を就労率として計算しました。どの障害でも就労率は75%以上でしたが、障害の種類によって就労率や就労形態に違いがありました。  図1に示すように、障害の種類別に就労形態の構成割合をみると、正社員は、身体障害では5割前後であるのに対して、知的障害は20%、精神障害は15%と少なく、パート等の仕事が比較的多くなっていました。視覚障害では自営等が21%と多く、また、知的障害では福祉(就労継続支援B型事業所等)の利用が10%、就労継続支援A型事業所の利用が8%とほかの障害より多くなっていました。また、現在仕事をしていないと回答した者は、肢体不自由で20%、精神障害で20%、内部障害で15%と比較的多くなっていました。 3 差別禁止と合理的配慮指針の把握状況と職場での話合いの機会の状況の変化  2016年には改正障害者雇用促進法が施行され、差別禁止と合理的配慮が事業主の義務となりました。そこで、2016年の第5期調査以降は、「雇用分野における差別禁止・合理的配慮の指針」の把握状況や、指針に沿った職場で支障となっていることの確認や話合いの機会の状況を追加して調査しています。第5期調査と第6期調査の結果を比較することで、法制度の変化が、実際の障害者の職場にどのような影響を及ぼしているかをうかがうことができます。  「雇用分野における差別禁止・合理的配慮の指針」を把握していると回答した障害者の割合は29%から30%とあまり変化がありませんでした。  一方で、図2に示すように、指針に沿った合理的配慮の具体的な取組みの第一歩である、職場で支障となっていることの確認や話合いの機会は、「今までと同じように確認や話合いの機会があった」と「新たに確認や話合いの機会があった」ものを加えると、全体で39%から52%へと大きく増加し、「確認や話合いの機会はまだない」が39%から24%へと大きく減少していましたが、依然として約4人に1人は話合いの機会を持てていないことがわかりました。 4 仕事をする理由と仕事の満足度の関係  本調査研究では、「仕事をする理由」として、「収入を得るため」、「社会とのつながりを持つため」、「社会の中で役割を果たすため」、「自分自身が成長するため」、「生きがいや楽しみのため」、「生活のリズムを維持するため」、「心身の健康のため」の7項目を調査しています。第5期と第6期のデータからは、障害の種類による違いを考慮しても、比較的一貫して、仕事の満足度が高い者は、「社会の中で役割を果たすため」や「生きがいや楽しみのため」を「仕事をする理由」として選択している者に多いことがわかりました。  本人が選択した仕事をする理由が仕事の満足度とどのように関連しているか、この分析だけからいえることはまだ多くはありません。このため、さらに分析を深めていく必要があると考えています。 5 おわりに  長期にわたり個人を追跡する研究方法は、欧米で1960年代後半から、日本でも1980年代後半から賃金、就業、家計などをテーマとしたさまざまな調査がありますが、障害者を対象とした就業に関する本調査研究は希(まれ)な取組みであり注目されています。障害者職業総合センターのホームページで、ぜひご覧ください(28ページ★)。 ★本レポートの元となる「調査研究報告書No.160」は、下記ホームページからご覧いただけます  https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku160.html ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図1 障害の種類別の就労形態 視覚障害(57人) 正社員47% パート等18% 自営等21% 聴覚障害(108人) 正社員56% パート等33% 肢体不自由(126人) 正社員47% パート等22% 仕事をしていない20% 内部障害(68人) 正社員54% パート等25% 仕事をしていない15% 知的障害(167人) 正社員20% パート等53% A型8% 20% 福祉10% 精神障害(71人) 正社員15% パート等54% 仕事をしていない20% 図2 職場で支障となっていることの確認や話合いの状況(第5期及び第6期ともに回答した者での比較) 全障害(411人) 第5期 今までと同じように確認や話合いの機会があった31% 新たに確認や話合いの機会があった8% 確認や話合いの機会はまだない39% よくわからない18% 無回答4% 第6期 今までと同じように確認や話合いの機会があった42% 新たに確認や話合いの機会があった10% 確認や話合いの機会はまだない24% よくわからない19% 無回答5% 視覚障害(44人) 第5期 今までと同じように確認や話合いの機会があった30% 新たに確認や話合いの機会があった7% 確認や話合いの機会はまだない36% よくわからない14% 無回答14% 第6期 今までと同じように確認や話合いの機会があった50% 新たに確認や話合いの機会があった0% 確認や話合いの機会はまだない27% よくわからない11% 無回答11% 肢体不自由(79人) 第5期 今までと同じように確認や話合いの機会があった29% 新たに確認や話合いの機会があった5% 確認や話合いの機会はまだない44% よくわからない16% 無回答5% 第6期 今までと同じように確認や話合いの機会があった47% 新たに確認や話合いの機会があった10% 確認や話合いの機会はまだない24% よくわからない14% 無回答5% 知的障害(114人) 第5期 今までと同じように確認や話合いの機会があった38% 新たに確認や話合いの機会があった4% 確認や話合いの機会はまだない24% よくわからない31% 無回答4% 第6期 今までと同じように確認や話合いの機会があった39% 新たに確認や話合いの機会があった9% 確認や話合いの機会はまだない12% よくわからない37% 無回答4% 聴覚障害(82人) 第5期 今までと同じように確認や話合いの機会があった43% 新たに確認や話合いの機会があった9% 確認や話合いの機会はまだない41% よくわからない6% 無回答1% 第6期 今までと同じように確認や話合いの機会があった48% 新たに確認や話合いの機会があった13% 確認や話合いの機会はまだない28% よくわからない7% 無回答4% 内部障害(48人) 第5期 今までと同じように確認や話合いの機会があった10% 新たに確認や話合いの機会があった8% 確認や話合いの機会はまだない67% よくわからない10% 無回答4% 第6期 今までと同じように確認や話合いの機会があった31% 新たに確認や話合いの機会があった6% 確認や話合いの機会はまだない42% よくわからない10% 無回答10% 精神障害(44人) 第5期 今までと同じように確認や話合いの機会があった23% 新たに確認や話合いの機会があった20% 確認や話合いの機会はまだない36% よくわからない18% 無回答2% 第6期 今までと同じように確認や話合いの機会があった39% 新たに確認や話合いの機会があった18% 確認や話合いの機会はまだない25% よくわからない18% 無回答0% 【P30】 ニュースファイル 地方の動き 石川 「障害について学ぼう!」子ども向けウェブサイト開設  石川県は、児童・生徒を対象に、障害についての理解促進のためのウェブサイト「障害について学ぼう!」を公開した。県内の小中学校でタブレット端末が1人1台配布されていることから、校内の総合的な学習の授業や自学教材に活用してもらうことを目ざす。  サイトは小学校高学年以上を対象に、クイズ形式の解説も取り入れながら、障害に対する理解を深め、必要な配慮や工夫についてわかりやすく主体的に考えることができる内容。街なかにある障害者への配慮を見つけながら学べるイラストつきのページや、県立ろう学校の生徒による手話動画で基礎から手話を学べるページなどがある。障害者スポーツの紹介なども含め、障害について総合的に学べる。 http://www.pref.ishikawa.jp/fukusi/manabu/ 三重 施設外就労の導入支援マニュアル  三重県は、地域の企業と就労支援事業所が連携して施設外就労に取り組む、施設外就労「M.I.E(みえ)モデル」について導入支援マニュアルを発行し、県のホームページで公開している。  M.I.Eモデルは、直接雇用後に障害者の即戦力化が見込めるなどの施設外就労のメリットに加えて、地域の企業群と複数の就労支援事業所が連携することで企業・障害者・就労支援事業所にWin・Win・Win≠フ関係をもたらす「良質な施設外就労」。同モデルの普及啓発により、企業の労働力不足解消や障害者の職場定着につなげることがねらい。県では今後、企業と就労支援事業所の意見交換会も予定している。問合せは三重県雇用経済部雇用対策課へ。電話:059−224−2510 https://www.pref.mie.lg.jp/KOYOU/HP/m0139400215.htm 生活情報 愛知 中部国際空港に障害者用スペース  中部国際空港(常滑(とこなめ)市)の第1ターミナル国内線出発エリアに、発達障害、知的障害、精神障害などのある人が、搭乗する前に心を落ち着かせるための「カームダウン・クールダウンスペース」が設置された。国内では成田国際空港や羽田空港などに続き4カ所目。  スペースは約3u(幅1.3m×奥行き2.4m×高さ2m)で、他者からの視線や外部の音、光をできるかぎりさえぎるよう間仕切りされ、中にはいすが三つ置かれている。地元産の木材を使用し、農林中央金庫・愛知県森林組合連合(名古屋市)が寄贈した。  当事者と付き添い者が予約不要・無料で使える。今後は国際線搭乗ロビーへの設置も検討するという。 障害者が幅広く対象「がん保険」  「東京海上日動火災保険株式会社」(東京都)と「株式会社ミライロ」(大阪府)、知的障害者ら向けの保険を扱う「ぜんち共済株式会社」(東京都)は、身体・知的・精神障害者を対象とした専用がん保険「ミライロ保険」を共同開発し、発売した。障害者手帳の機能を持たせたスマートフォンアプリ「ミライロID」と連携し、ミライロID利用者が加入できる。  ミライロ保険は、障害者全般の専用がん保険とすることで、服薬や通院歴などがあっても、審査のハードルを下げ、加入しやすくなっている。医師の診査は不要で、簡単な健康状態の告知のみで申し込める。また障害者(被保険者)の家族や成年後見人、施設職員などが本人の健康状態を確認したうえで、代理で手続きや告知ができる。 本紹介 『SDGsの推進・合理的配慮提供のための「やさしい日本語」』  「一般社団法人PORO(ポロ)」代表理事の堀(ほり)清和(きよかず)さんらが『SDGsの推進・合理的配慮提供のための「やさしい日本語」〜教育・福祉・就労の場で活用できる実践的コミュニケーション〜』(晃洋書房刊)を出版した。  「やさしい日本語」は、これまで外国にルーツのある人の防災・医療で用いられてきたが、本書では、わかりやすく伝えるための「やさしい日本語」を、意思疎通がむずかしい人へのインクルーシブな支援にも応用し、教育や福祉・就労の場で活用することを提言する。SDGs推進の観点から、あらゆる場面で合理的配慮を提供することを、研究者や支援者、障害のある当事者やその家族などが執筆。コミュニケーションという切り口から支援方法、障害特性、留意点を解説している。B5判182ページ、2200円(税込)。 【P31】 第30回職業リハビリテーション研究・実践発表会 発表者募集のお知らせ  当機構では職業リハビリテーションの研究成果を広く周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を行う場として「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を毎年開催しています。  今年度は、2022(令和4)年11月15日(火)、11月16日(水)の2日間、東京都江東区有明の東京ビッグサイトで開催する予定です。5月末ごろから発表者を募集しますので、詳細は当機構障害者職業総合センター(NIVR)ホームページをご覧ください。  なお、当日の参加者については、8月末ごろにホームページなどで募集する予定です。 ※新型コロナウイルス感染症への対応等により、開催等に変更が生じる場合があります。 障害者職業総合センターホームページでは、昨年度までの開催内容を掲載していますので、あわせてご覧ください。 NIVR 検索 〈お問合せ〉研究企画部 企画調整室 TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp ミニコラム 第13回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は阪本委員が執筆しています。  ご一読ください。 ノーマライゼーション 岡山障害者文化芸術協会代表理事 阪本文雄  1981(昭和56)年の「国際障害者年(IYDP)」をご存じだろうか。41年前、国連が世界の人々に、障害者が社会に完全に参加することを求め、宣言した。  テーマは「完全参加と平等」。目的として身体的、精神的社会適応への援助、訓練、指導を行い雇用の機会を提供、交通システム、施設を利用しやすく改善し障害者が経済的、文化的活動に参加できるようにする義務を負う、など5項目を挙げ、各国政府に行動計画の立案と実行をうながした。  「完全参加と平等」の理念の中心にいたのが、「ノーマライゼーション」を提唱したデンマークのバンク・ミケルセンだ。政府の障害者福祉担当の役人だった。  「障害者は施設を出て、地域で暮らす。施設の役割は地域で暮らす障害者をサポートすることだ」と唱えている。  障害があるからといって就学免除になることもなく、施設へ入ることもない。小学校へ入学し教育が終われば就労し、地域で暮らし文化、芸術を楽しむ。健常者と同じライフステージを地域で歩む。  日本では2006(平成18)年、障害者自立支援法が施行され、障害者が訓練、指導を受けて働く就労支援制度ができた。ノーマライゼーションの最終ゴールが就労支援であり、アート支援だと考えている。 【P32】 掲示板 読者の声 私の仕事について 石井(いしい)寿一(としかず)  私の仕事内容は、おもにパソコンを使った作業です。月初めは、計算ソフトに数字を入力して、請求書や給与計算書を作成します。ほかにも、文書作成や備品の整理などを行っています。最近は、同じ母屋にある系列会社の手伝いで、書類整理などをしています。  8時45分〜仕事開始(メールのチェックやその日の仕事の段取りや優先順位の確認)、9時〜事務作業(請求書や給与計算書、文書作成など)、13時20分〜日報の作成というスケジュールです。以前は4時間勤務でしたが、仕事に慣れてきたことと、体調が良くなってきたことを病院の先生に相談して、1時間延長できるようになりました。  私は広汎性発達障害があり、同時進行やコミュニケーションが苦手です。上司からは、一つの仕事が完了してから次の仕事を振ってもらったり、コミュニケーションに関してはなるべく自分から話しかけるようにしたり、悩みごとも大きくならないうちに話を聴いてもらったりしています。  これからの目標は、4年目に突入したので、自分から進んで仕事を探したり、まだやったことのないことに挑戦して、日々成長できるような人間になりたいです。 次号予告 ●この人を訪ねて  分身ロボット「OriHime」を開発する株式会社オリィ研究所(東京都)代表取締役CEOの吉藤健太朗さんに、障害のある人が社会に参加できる未来について、お話をうかがいました。 ●職場ルポ  総合建設業の清水建設株式会社(東京都)を取材。ダイバーシティー推進室の新設や、障害者雇用の取組みの工夫などについてお伝えします。 ●グラビア  参天製薬株式会社の特例子会社で、おもに各工場で使用される作業着などのクリーニングを行う株式会社クレール(滋賀県)を訪問。障害のある人が活躍する現場を紹介します。 ●編集委員が行く  大塚由紀子編集委員が、日本理化学工業株式会社(神奈川県)を訪問。企業の取組みや、障害のある社員が活躍できる仕組みについて取材します。 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み  株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。  TEL 03-5484-8821  FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 6月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和4年5月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO 法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 トヨタループス株式会社 取締役 清水康史 武庫川女子大学 学生サポート室専門委員 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 准教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林 功 【裏表紙】 ジョブコーチの養成・スキル向上研修のご案内  当機構では、職場適応援助者(ジョブコーチ)に必要となる専門的知識および支援技術を修得するための「職場適応援助者養成研修」、「職場適応援助者支援スキル向上研修」を実施しています。  各研修の詳細・お申込み先などは、右記のQRコードなどから当機構のホームページ(https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html)にアクセスいただき、サイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 ジョブコーチの養成・スキル向上研修 ステップ1 入門編・実践編 職場適応援助者養成研修 ◆訪問型職場適応援助者養成研修  (年6回)※うち4回は東日本と西日本に分けて実施 ◆企業在籍型職場適応援助者養成研修  (年6回)※うち4回は東日本と西日本に分けて実施 ステップ2 スキルアップ編 職場適応援助者支援スキル向上研修 ◆訪問型職場適応援助者支援スキル向上研修  (年4回) ◆企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修  (年4回) ※職場適応援助者として1年以上の実務経験のある方が対象となります 感染症対策を行い研修を開催しています 研修 日程 場所 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など(集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度) ※対象地域は以下のとおりです  東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山  西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 8月期 東日本対象:令和4年8月23日(火)〜8月26日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和4年8月30日(火)〜9月2日(金) 大阪府大阪市 10月期 全国対象:令和4年10月18日(火)〜10月21日(金) 千葉県千葉市 12月期 東日本対象:令和4年12月20日(火)〜12月23日(金) 千葉県千葉市 西日本対象:令和4年12月20日(火)〜12月23日(金) 大阪府内で 開催予定 2月期 全国対象:令和5年2月14日(火)〜2月17日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして1年以上の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど <第2回> 令和4年8月2日(火)〜8月5日(金) 大阪府大阪市 <第3回> 令和4年9月27日(火)〜9月30日(金) 千葉県千葉市 <第4回> 令和5年1月31日(火)〜2月3日(金) 大阪府大阪市 ※申込期間終了分を除く <お問合せ先> (千葉県で実施する研修) 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp (大阪府で実施する研修) 大阪障害者職業センター TEL:06-6261-5215 E-mail:osaka-ctr02@jeed.go.jp 6月号 令和4年5月25日発行 通巻536号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)