【表紙】 令和4年7月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第538号 ISSN 0386-0159 職場ルポ 各拠点に支援体制、ナチュラルサポート移行も 株式会社アダストリア・ゼネラルサポート 群馬サポートセンター(群馬県) グラビア 店舗を支える戦力に 株式会社コネクト(東京都) 編集委員が行く 「社員は家族。ともに働き、幸せに生きる」 株式会社新陽ランドリー、株式会社加藤福祉サービス(宮城県) 私のひとこと 一見わかりにくい高次脳機能障害の特性と職場の理解促進 〜高次脳機能障害の職場復帰支援〜 京都文教大学臨床心理学部 教授・産業メンタルヘルス研究所 所長 中島恵子さん 「むしはかせになりたいな」鹿児島県・吉川(よしかわ)恵祐(けいすけ)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 8月号 【前頁】 心のアート 百花繚乱を愛でる 曽我部林造 (NPO法人石鎚スクエア 就労継続支援B型事業所Visee) 画材:画用紙、ペン/サイズ:1090mm×790mm  「第6回Art to You!東北障がい者芸術全国公募展」に出品し、山形県知事賞を受賞した作品です。キャンバスいっぱいに可憐な花々が、鮮やかな色彩をまとって配置されています。そんななかに昆虫が群れ、鶏が仲よくえさをついばんでいます。ヴィヴィッドで躍動感あふれる色彩に圧倒されるとともに、ほのぼのとした温かい人柄が伝わってくるようです。 (文:NPO法人石鎚スクエア 就労継続支援B型事業所Visee(ヴィセ) 管理者 篠塚忍) 曽我部林造(そがべ りんぞう)  1964(昭和39)年、愛媛県周桑郡(しゅうそうぐん)丹原町(たんばらちょう)(現・西条市丹原町)生まれ。知的障害があります。  幼少から中学生のころまで楠窪(くすくぼ)という山懐で育ちました。就労継続支援B型事業所に通いながら、そのころに慣れ親しんだ動物や色とりどりの花を主体にした、ユーモラスで温かみのある絵画製作に、約15年前から取り組んでいます。下書きなしのペン画で、迷いなく一気に描き上げる手法には、次々と湧いてくるエネルギーや生命力を感じます。定期的に個展を開催したり、公募展に応募したりしています。 協力:愛媛県障がい者アートサポートセンター 【もくじ】 目次 2022年8月号 NO.538 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 百花繚乱を愛でる 作者:曽我部林造(NPO法人石鎚スクエア 就労継続支援B型事業所Visee) 私のひとこと 2 一見わかりにくい高次脳機能障害の特性と職場の理解促進 〜高次脳機能障害の職場復帰支援〜 京都文教大学臨床心理学部 教授・産業メンタルヘルス研究所 所長 中島恵子さん 職場ルポ 4 各拠点に支援体制、ナチュラルサポート移行も 株式会社アダストリア・ゼネラルサポート 群馬サポートセンター(群馬県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 はじめての障害者雇用U 〜障害のある人が働きやすい職場づくり〜 第5回 精神・発達障害 JEEDインフォメーション 12 “事例で見る”“動画で見る”『障害のある方への合理的配慮の提供』/2022年度(令和4年度)就業支援課題別セミナー グラビア 15 店舗を支える戦力に 株式会社コネクト(東京都) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 多様でユニークな支援のあり方 第3回 問題行動と「才能」は、紙一重 Kプランニング代表 戸原一男 編集委員が行く 20 「社員は家族。ともに働き、幸せに生きる」 株式会社新陽ランドリー、株式会社加藤福祉サービス(宮城県) 編集委員 三鴨岐子 省庁だより 26 令和4年度 障害保健福祉部予算の概要(2) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート 28 障害者の週20時間未満の短時間雇用に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 読者の声 表紙絵の説明 「はじめてカブトムシのメスを手に乗せたときから昆虫が好きになりました。昆虫は種類が多く研究がおもしろそうで、虫博士になりたいと思って描きました。カマキリを細かく観察することや、カブトムシの角は突き飛ばす強さを、クワガタは挟んで投げ飛ばす鋭さを描くのがむずかしかったです」(令和3年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-3】 私のひとこと 一見わかりにくい高次脳機能障害の特性と職場の理解促進 〜高次脳機能障害の職場復帰支援〜 京都文教大学臨床心理学部教授・産業メンタルヘルス研究所所長 中島恵子 高次脳機能障害のある人の職場復帰で気をつけること  私たちは人生の途上で、ある日突然、思いがけない事故(交通事故、スポーツでの事故、転倒など)や病気(脳血管障害、脳炎、脳症、脳腫瘍術後の疾患など)が原因で、脳に損傷を受け、高次脳機能障害になることがあります。高次脳機能障害は、@目に見えない、A本人も自覚しにくい、Bある特定の状況や場面に現れるため、周囲から理解されにくい障害です。脳機能の障害が医学的にはわかりやすい病態の場合でも、一般の人には想像しにくく実感が湧かない症状であることが、理由にあげられます。外見は以前と変わらないため、本人も障害を実感しにくく、病気や事故以前と同じように仕事ができると思っている人が多いのです。同様に、周りの人も以前と変わらないと思ってしまいます。  しかし、職場に戻ってから以前のようには仕事ができないことが顕(あら)わとなり、トラブルになることもあります。本人は「職場の人が自分のことをわかっていない」ととらえ、職場の人は「注意しても自分のことがわかっていない」と考えるようになるためです。脳に損傷を受けたことで、脳の認知機能(注意、記憶、遂行機能、社会的行動)が低下し、日常生活を送るなかで意識せずに実行できている基本的な機能(注意する、記憶する、企画を立てて実行する、他者とのコミュニケーションを持つ、暗黙の了解、など)が損なわれるために、トラブルが起こるのです。  職場に復帰する際には、主治医や医療スタッフから高次脳機能障害についての説明を受け、「職場では具体的にどのようなことに気をつけると仕事が可能になるのか」、「どのような仕事であれば可能なのか」を、本人と職場の担当者が理解する必要があります。その人の高次脳機能障害の特性≠ノついて共通の認識を持ちながら、課題を解決していくことが求められます。 高次脳機能障害の特性  2006(平成18)年、厚生労働省は、高次脳機能障害の定義を「『高次脳機能障害』という用語は、学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる」と明示しました(※)。以下にそれぞれの症状を説明します。 失語 話す、聞く、読む、書くなどの言語機能がうまく働かなくなった状態。具体的には相手が言っていることは理解できるが、自分が伝えたいことが言えない(ブローカ失語)、相手が言っていることが理解できず、自分が言いたいことを言ってしまう(ウェルニッケ失語)、字が読めない、文字が書けない、などの症状。 失行 日常的な道具を使った簡単な行為(ハサミを使う、眼鏡をかける、お茶をいれる、など)がうまくできない症状。 失認 代表的な失認に視覚失認があげられる。視力や視野に問題はないが、見た物が何であるかがわかりにくい症状。触ったり、聞いたりすればわかる場合もある。 記憶障害  見たこと、聞いたこと、話したことを覚えられない、思い出せない症状。 注意障害  必要な情報を選択する(選択性注意)、集中力、二つ以上の情報の同時処理、必要に応じて注意を変換するなど、情報処理の基本的な機能がうまくいかない症状。 遂行機能障害  自分が立てた目標に対して効率的な計画を立て、計画通りに実行するという一連の行為がうまくできない症状。 社会的行動障害  自発性や意欲が低下したり、抑制が効かなくなったり、抑うつなどの精神症状などが現れる症状。 神経疲労  集中し続けると疲労しやすい症状。休憩を取りながらであれば続けることができる。 職場の理解促進  職場復帰は、高次脳機能障害のある本人の業務レベルに合わせることが重要です。業務レベルとは、任される仕事がどのくらいの情報量を処理しなければならない業務なのかを示すものです。事務職といっても、採用や人材育成など自分で計画して実施する仕事から、郵便物の仕分け・配布、会議資料の準備、データ入力、書類のPDF化、ファイリングなどまで、さまざまです。任せる仕事には、作業工程や注意点がどれだけあるかを確認する必要があります。例えば、Aという仕事は処理できても、業務の難易度が同じBへの応用はむずかしいことがあります。AができるのでBも可能と考えがちですが、新たな仕事や能力以上の仕事であった場合、本人は混乱し、ミスが多く出ることもあります。新たな仕事をお願いする場合は、事前に「業務分担表」を明示し、業務の分担について本人と話し合い、「業務分担表を改訂して関係者に周知する」とよいでしょう。  職場復帰の際には、本人がどのような仕事をするのかを事前に話し合い了解してもらうことが必要です。そのために、医療機関では、本人に障害への自己理解をうながすリハビリを実施し、職場では、一緒に働く人たちに障害の特性を理解してもらうことが必要となります。職場の理解を促進するために、医療機関で説明を受けた担当者が、復職する人の高次脳機能障害の特性について職場の人たちに前もって伝えることで、誤解やトラブルを防ぐ効果があります。  本人が職場にすぐ戻りたいといっても、配属部署、仕事内容など職場内での調整が必要となるため、本人と何度か話し合い、確認をとりながら、復職までのプロセスを進めていきます。事前の調整なく復職したことで「仕事ができない」、「疲れて休んでしまう」など、職場では思いもかけないことが起こる場合もあるので、十分な事前の調整が必要です。可能であれば、仕事の時間を段階的に増やして完全復帰へのプロセスを取ると、本人は集中力の回復が実感できるため自己調整ができるようになります。 ※ 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、国立障害者リハビリテーションセンター「高次脳機能障害者支援の手引き」平成18年 中島恵子 (なかしま けいこ)  京都文教大学臨床心理学部臨床心理学科教授。博士(健康科学)、公認心理師。  臨床神経心理学において、高次脳機能障害・認知リハビリテーション・復職支援を専門とする。2019(平成31)年より、京都文教大学産業メンタルヘルス研究所所長に就任。身体障害と異なり見えにくい障害といわれる高次脳機能障害者の就業について研究を進める。  おもな著書・監訳に「高次脳機能障害のグループ訓練」、「子どもたちの高次脳機能障害ー理解と対応」(以上、三輪書店)など。 【P4-9】 職場ルポ 各拠点に支援体制、ナチュラルサポート移行も ―株式会社アダストリア・ゼネラルサポート群馬サポートセンター(群馬県)― アパレル企業の特例子会社では、全国の各拠点に支援体制を整え、現場と連携しながらナチュラルサポートへの移行も図っている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社アダストリア・ゼネラルサポート 群馬サポートセンター 〒375-0017 群馬県藤岡市篠塚700-14 アダストリア藤岡DC2F TEL 0274-40-2060 FAX 0274-40-7872 Keyword:精神障害、知的障害、ジョブコーチ、定着支援、ナチュラルサポート、物流、店舗支援、アビリンピック POINT 1 全国7拠点にジョブコーチなどの支援担当者を配置 2 入社後は一定期間の定着支援を経て、ナチュラルサポートへ移行 3 柔軟な人事制度や褒賞金、復帰支援などで働き続けられる環境づくり アパレル企業の特例子会社  ファッションブランド「グローバルワーク」、「ニコアンド」などを展開するアパレル企業「株式会社アダストリア」(以下、「アダストリア」)は、2013(平成25)年に「株式会社アダストリア・ゼネラルサポート」(以下、「AGS」)を設立。翌2014年に、AGSは特例子会社として認定された。  複数の会社を吸収合併してきたアダストリアは、以前は全国各地でそれぞれ障がい者雇用を進めていたが、AGSの設立を機に、各拠点が連携しながら業務内容の強化と雇用拡大を図ってきた。東京都渋谷区にある本部をはじめ山形県、茨城県、群馬県、愛知県、大阪府、福岡県の全国7拠点を軸に、グループ会社への事務支援のほか物流現場や店舗での支援業務などを行っている。  いまではAGSの全従業員290人のうち、障がいのある従業員は212人(身体障がい46人、知的障がい51人、精神障がい115人)、6社のグループ適用による障害者雇用率は2.62%(2022〈令和4〉年6月1日現在の概算)だという。  今回は、AGSの拠点でもっとも規模が大きい群馬サポートセンターを中心に、職場での取組みなどを紹介していく。 各拠点にサポート体制  群馬サポートセンターに勤務する岩ア(いわさき)美恵子(みえこ)さんは、AGSの設立当時、唯一の定着支援担当者で、各拠点を巡回しながら定期面談や採用活動に関する対応を行っていた。「さらなる雇用の拡大と定着支援の必要性から、各拠点に定着支援担当として企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)の配置を提案しました」という。  現在はジョブコーチなどの資格を持つ定着支援担当者が各拠点に配置され、サポート体制を整えている。ちなみにAGSでは正社員は原則、障害者職業生活相談員の資格取得を推奨されているそうだ。  各拠点の「業務内容」、「障がいのある従業員数」、「支援関連の有資格者数」は次の通りである(2022年6月1日現在)。 〈山形サポートセンター〉主要経費(本部や店舗、国内外旅費精算等)のチェック、各種データ集計・分析、契約書の書類保管など ・身体障がい24人、精神障がい5人/ジョブコーチ1人、障害者職業生活相談員8人、手話通訳士1人 〈茨城サポートセンター〉パソコン入力作業(売掛や入金確認)、印刷関係、パソコンキッティングなど ・身体障がい11人、知的障がい5人、精神障がい12人/ジョブコーチ3人、障害者職業生活相談員9人、精神・発達障害者しごとサポーター6人 〈群馬サポートセンター〉事務支援:人事労務、福利厚生の申請チェック、書類のPDF化、物流支援:キズ物商品の検品・仕分け、販促品などの振り分け、店舗への発送、清掃、店舗支援:バックルームで商品の検品・仕分けなど ・身体障がい9人、知的障がい17人、精神障がい34人/ジョブコーチ3人、障害者職業生活相談員22人、精神・発達障害者しごとサポーター15人、メンタルヘルス・マネジメント○R検定U種3人 〈福岡サポートセンター〉返金処理、売掛金処理、直送伝票、全社安否確認訓練など ・知的障がい1人、精神障がい9人/ジョブコーチ1人、障害者職業生活相談員4人、精神・発達障害者しごとサポーター4人、雇用環境整備士1人 〈営業支援チーム(茨城・群馬・関東・東海・関西・九州)〉清掃、入荷商品の検品・仕分け、ストック整理、店頭品出しなど ・身体障がい2人、知的障がい28人、精神障がい54人/ジョブコーチ3人、障害者職業生活相談員14人、精神・発達障害者しごとサポーター7人、メンタルヘルス・マネジメント○R検定U種3人 ※このほか、本部に精神障がいのある従業員1人が配属されている。 定着支援からナチュラルサポートへ  採用は基本的にハローワークを経由して行っているが、日ごろから各地の就労移行支援事業所や特別支援学校などとの連携にも力を入れている。アパレルや物流の仕事に興味があるという利用者や生徒がいたら、そのつど紹介を受け、職場見学や実習などを積極的に受け入れている。  見学・実習を経て、入社後は各業務のチームに配属される。ジョブコーチなど定着支援担当者とチームリーダーが連携して、職場環境に慣れ、作業の習得ができるようにサポートしている。個々の特性を把握し、一人ひとりに合った指導を心がけ、作業の独り立ちを目ざしていく。また、一緒に働くチームメンバーの存在が大きく、仲間として快く受け入れてくれる。こうして現場では徐々にナチュラルサポートができていくそうだ。  社内には保健師による相談窓口も設置されており、だれでも、障がいについて質問したり、対処法などについて相談したりすることができる。そのうえで、岩アさんは「ナチュラルサポートを浸透させるために、現場の管理職やエリアマネジャーなど組織のトップにきちんと障害のある従業員の状況を理解しておいてもらうことが大切だと思います。私たちも日ごろから、会議などを活用して現状や方針などを継続して伝えてきました」と語る。  一方でサポート体制の充実を図るため、各拠点のセンター長や定着支援担当者、保健師らが毎月集まり「定着支援共有ミーティング」を開いている。個別事案などについて情報共有するほか、勉強会などを通して支援スキルの向上に努めているそうだ。 「バックルームの店長」  今回訪れた群馬サポートセンターは、おもに事務支援と物流支援、店舗支援の3業務を行っている。  このうち店舗支援業務については2019年、群馬エリアで初めて2人が2店舗に配属された。その1人が、2016年4月に入社した佐瀬(させ)博紀(ひろき)さんだ。勤務先は高崎市にある大型ショッピング施設内の店舗「グローバルワーク」。取材時、バックルームで商品の検品・仕分け作業をしていた佐瀬さんは、お店の雰囲気そのままのおしゃれな格好で迎えてくれた。  佐瀬さんは、大学時代の就職活動中に体調を崩して入院し、そのときに統合失調感情障がいと診断されたという。就労移行支援事業所に通い、埼玉県熊谷地方庁舎北部教育事務所での約9カ月間の有期雇用就労を経て、AGSに入社した。  入社後すぐは事務を担当していた佐瀬さんだが、慎重になるあまり、同じ作業について毎日確認せずにはいられなかったそうだ。そこで職場の上司と相談し、「わからないことをメモして、1日1回15分の質問タイムにまとめて聞く」というルールをつくったところ、作業効率がぐんとアップした。佐瀬さんは「少し時間を置いて、落ち着いて質問内容を整理することで、全体を見直せました」とふり返る。  現在、佐瀬さんの定着支援を担当する群馬サポートセンターの皆川(みながわ)聖成(せいな)さんは、「彼は向上心があるので、新しい仕事にどんどんチャレンジしてもらえるようにしています」と話す。佐瀬さん自身も、バックルームの環境整備に向けた改善策を店長に率先して提案するようになった。  日ごろAGSの事務所にいる皆川さんは、佐瀬さんとオンラインで面談するほか、業務改善の指導も行っている。事務所に“模擬バックルーム”をつくり、オンライン画面を通して「こんな整理方法がありますよ。試してみてください」などとわかりやすくアドバイスしているそうだ。  店長を務める山岸(やまぎし)勇太(ゆうた)さんは、「佐瀬さんがバックルームの業務をしてくれることで、私たちスタッフは接客などに集中でき、非常に助かっています」と語る。山岸さんは、佐瀬さんのことを「バックルームの店長」と位置づけているという。  「彼にとっては、店のスタッフが“お客さん”です。バックルームで商品をどう並べたらスタッフが見やすく手に取りやすいかなどを考えながら、業務のクオリティ向上を目ざしてもらっています」  佐瀬さんは入社翌年から毎年、地方アビリンピックのワード・プロセッサ種目やオフィスアシスタント種目に挑戦している。ある日、職場に掲示されていたポスターを見て「見学してみたい」と話したところ、周囲から「だったら出場しなよ」と背中を押されたことがきっかけだ。参加を重ねるなか、競技中に必要な仕事の段取りや確認作業などは、バックルーム作業と相通じるものがあると気づいたという。  「収納する商品が多くて心が折れそうになったとき、ふと『いまの状況、競技中に似ているな』と感じます。『まずは落ち着いて考えて、分類しよう』などと持ち直し、後になって『この作業の技はアビリンピックでも使えるかも』とうれしくなることもあります」  AGSでは、全国各地から毎年20〜30人が地方アビリンピックに参加しているほか、障がい者スポーツ大会にも数人が出場しているという。会社としても積極的に応援する意味を込めて、受賞者だけでなく参加者にも褒賞金を支給している。 物流拠点を支える  上信越自動車道の藤岡インターチェンジから車で5分ほど行ったところに、アダストリアグループの物流拠点「アダストリア藤岡DC」(以下、「藤岡DC」)がある。ここの2階に入っている群馬サポートセンターは、全国で唯一、物流支援業務を行っているのが特徴だ。センター長を務める下山(しもやま)貴男(たかお)さんは、「これまでも、少し離れたところにある事務所のスタッフが物流の繁忙期に藤岡DCへ単発的に手伝いに来ていたのですが、2021年に、群馬サポートセンター事務所が高崎から移転し、藤岡DCと同じ建物に入ったことを機に、日常的な支援が可能になりました」と説明する。  広い倉庫内の1階では、グループ会社「株式会社アダストリア・ロジスティクス」とAGSの従業員らが一緒になって、全国の各店舗に送る商品の分配作業を行っていた。この現場は知的障がいのある従業員が多いが、班長になってみんなをリードする従業員が数人いるそうだ。  別のAGSチームは、商品用の布サンプル整理や段ボール解体、清掃など軽作業を担当しているが、最近、メール便の仕分けや販促品のセット組み作業なども任されるようになった。経緯について岩アさんが話す。  「あるときチームの1人から、『仕事に飽きました』という声を聞いたのがきっかけです。意欲のある従業員を中心に新しい仕事にトライしてもらったところ、驚くほどスムーズにいきました。まず、任せてみることの大切さをあらためて実感しました」 B級品の社内販売業務  藤岡DCには、各店舗から返送されてくる商品もある。陳列中にキズなどがついたりして販売できなくなったものだ。こうした商品はこれまで費用をかけて処分していたが、2021年から、比較的状態のよいものを選び社内販売する新たな事業を始めた。下山さんは「もともと社内の割引制度はありますが、このB級品販売は、少しのキズさえ気にしなければ非常に安く購入できるため、グループ会社のみなさんにたいへん好評です」と手ごたえを語る。  商品の仕分けから撮影、従業員向けECサイト登録までを倉庫の一角で行っている。特設バーゲン会場のように、さまざまな洋服がハンガーにかけられて並び、脇には五つの撮影ブースとパソコンを設置。商品1点ごとに小さなキズなどがわかるよう数カット撮影され、1日300点ほどが登録されているという。この現場には障がいのある従業員6人が配属されている。  その1人、松井(まつい)映二(えいじ)さんは、事業立ち上げに合わせて2021年2月に入社した。松井さんは3年ほど前、転居で環境が変わったことから鬱(うつ)病をわずらい、病院で初めてASD(自閉スペクトラム症)と診断されたという。「それまで自覚がないままいろいろな仕事をしてきたのですが、長く安定して働き続けることを目標にしました」。就労移行支援事業所で就職活動をしたときも、「一般の職場だと自分の障がいについて知っている人がかぎられるケースが多いので、余計なストレスを抱えないよう、職場全体に理解のある特例子会社を探しました」という。  松井さんと一緒に働く群馬サポートセンターの小松(こまつ)愛子(あいこ)さんは、「一度に多くのことを指示すると『何からやればいいんでしたっけ?』と混乱する様子だったので、少しずつ伝えるようにしています。一方でパソコン操作が得意で、ほかの人に教えてくれて助かっています。今後はチーム内の管理業務もお願いしたいですね」と信頼を寄せる。  松井さん自身は「作業内容が突然変わると、ものすごく緊張するのですが、少しずつ鍛えられてきましたね。障がいを理解してもらえている安心感が大きいです。以前は“報・連・相”があまりできなかったのですが、ここではちゃんと反応してもらえるので、できるようになりました」と語る。  「今後は商品の撮影だけでなく、データ加工や備品管理なども覚えて、チームをフォローしていきたい」という松井さんは、早くも地方アビリンピックの表計算種目への挑戦を決めているそうだ。 拠点同士の人的補充も  群馬サポートセンター物流支援アシスタントマネジャーの内藤(ないとう)丘(たかし)さんは「障がいのある人もない人も一緒に働くうえで、いかに作業を簡素化するかが大事だと思っています。職場で掲示する文章をシンプルな表現にしたり、商品の処理コードを統一化したりするといった工夫も重ねています」と説明する。  「作業で本人があせるような状況にはしたくないので、仕組みのなかで効率を生み出しつつ、得意なところを伸ばせる適材適所を考えています。手先の器用な人、機械が苦手な人もいますから、チーム内での業務の切り分けやメンバー入れ替えも柔軟に行っています」  また下山さんによると、同じ倉庫内で物流支援と事務支援の2業務をになっていることから、それぞれの繁忙期に合わせ、互いに余裕のある従業員を補い合えるメリットもあるそうだ。人的な連携範囲は全国各地におよぶ。  「データ処理などパソコンを使った事務は、山形や福岡などの拠点にヘルプを頼むこともあります。業務の調整がしやすいよう、日ごろからセンター長の週次会議で予定などを情報共有しています」  最近は、アダストリアのシステムサポート業務への参画も検討されている。AGSの各拠点に、プログラミングなど専門スキルのある従業員が増えてきたからだ。下山さん自身、アダストリアのシステム部門に在籍していたことがあり、互いに相談しやすい環境も奏功している。下山さんは「システム支援業務が拡大すれば、『在宅勤務ならパソコンを使って働ける』という人も採用できるようになります」と先を見すえる。 人事制度も柔軟に  AGSでは、障がいのある従業員向けの人事制度も柔軟に変えてきた。以前は、時給制の有期雇用社員からスタートし、契約社員を経て正社員登用への道筋がついていた。だが、障がいのある正社員の就業規則などが一般社員と同じだったため、「登用されても、ほかの社員と同じように働くのではプレッシャーがかかる」といった不安の声があった。そこで3年前から、限定正社員制度を導入。転勤がなく、労働時間も一日6時間から勤務可能だ。育児休業や子育て期間の短時間勤務などの制度も利用できる。このほか有期雇用社員向けに皆勤賞(賞状と特別手当)もある。  近年は、休職からの復帰支援にも力を入れている。産業医と密に連携し、本人との面談を重ねながら、復帰に合わせて生活記録表などをつけてもらい、徐々に職場復帰できるようフォローしていくという。「職場に精神障がいのある人が多くなっており、休職するケースもありますが、職場復帰率はかなり高いと自負しています」と話す岩アさん。「せっかく縁あって入社してもらったのですから、どの従業員も、意欲的に長く働き続けられるような環境づくりに努めていきます」と力を込める。 インクルーシブ商品を開発  障がいのある従業員が一緒に働く職場が増えてきたアダストリアでは、商品開発でも大きな動きを見せている。その一つがインクルーシブファッションの発信だ。社内の公募企画をきっかけに2021年から「Play fashion! For ALL〜すべての人が、ファッションをもっと楽しめる社会を創る」という新しい理念を掲げ、車いすユーザーや低身長、入院中の人の視点をもとに、洋服やパジャマのデザイン提案を始めた。  AGSでは、障がいや持病のある従業員らが企画に参加し、モデルとしても協力した。完成したインクルーシブファッション商品は、アダストリアグループの公式WEBストアで昨年販売し、特設サイトで開発の経緯なども公開。いまはAGSで働く当事者の声をアンケートなどで集め、既存の商品のなかから「ウォッシャブル」などをテーマに、障がいや病気のある方にも着やすい服を提案している。今後もAGS従業員の声を商品開発に活かしていくという。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社アダストリア・ゼネラルサポート様のご希望により「障がい」としています 写真のキャプション 群馬サポートセンターで定着支援を担当する岩ア美恵子さん 店舗で働く群馬サポートセンターの佐瀬博紀さん バックルームで検品・仕分けを行う佐瀬さん 佐瀬さんが働く「グローバルワーク」の店舗 佐瀬さんの定着支援を担当する群馬サポートセンターの皆川聖成さん 「グローバルワーク」店長の山岸勇太さん 物流拠点の「アダストリア藤岡DC」 藤岡DCでの商品分配作業 群馬サポートセンター長の下山貴男さん 販促品のセット組み作業 藤岡DCで働く群馬サポートセンターの松井映二さん 撮影ブースに商品をセットし撮影を行う松井さん 松井さんをサポートする群馬サポートセンターの小松愛子さん 群馬サポートセンター物流支援アシスタントマネジャーの内藤丘さん 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用U 第5回 精神・発達障害 〜障害のある人が働きやすい職場づくり〜  これから障害者雇用に取り組もうとしているみなさまへの入門企画として、障害のある人が働きやすい職場環境を整えるために、どのようなことを行っていったらよいのか、取組み方法や事例を紹介します。第5回は、「精神障害・発達障害のある人」が働きやすい職場づくりについてお伝えします。 精神障害・発達障害の特性と配慮するポイント 〈精神障害とは〉  「統合失調症」、「そううつ病(「そう病」および「うつ病」を含む)」、「てんかん」などの精神疾患があり、生活に支障をきたしている障害のことです。統合失調症では幻覚や感情鈍麻、そううつ病ではそう状態とうつ状態がくり返し出現するなど、疾患ごとに症状が異なります。 〈職場における配慮事項〉  疾患が同じでも、症状の程度や特性は個人によってさまざまです。そのため、一人ひとりに合わせた配慮が求められます。「職務の設定」や「指示の出し方や教え方」のほかに、「コミュニケーション」、「健康管理」の配慮なども求められます。 〈発達障害とは〉  「自閉症やアスペルガー症候群、そのほかの自閉症スペクトラム障害」、「学習障害」、「注意欠陥多動性障害」、これに類する脳機能の障害のことです。対人関係やコミュニケーションに困難が生じる、強いこだわりがある、じっとしていられないなど、さまざまな特性があります。 〈職場における配慮事項〉  「業務の指示方法」や「作業環境」、「コミュニケーション」、「休暇・休憩」などへの配慮が求められます。すべての方に同じ配慮が有効とはかぎらないので、本人と話し合ったうえで、どのような配慮をするのが適切なのか、検討していく必要があります。 発達障害者のための就労支援機器の例 ●環境調整用具(パーテーション、ヘッドホン)  周囲の環境に影響を受けやすい方の視覚的・聴覚的な刺激を軽減するための用具。ヘッドホンは、装着したまま側面のスイッチを押すと周囲の音を聞くことができる。 ●コミュニケーションエイド  会話でのコミュニケーションが苦手な人のための機器。文字盤をタッチペンでタッチして語句をつくり発声する機能や、いま行う活動、次に行う活動など、見通しをたてるためのスケジュール機能、タイマー機能などがある。 事例 百五管理サービス株式会社(三重県津市) ◆事業内容  銀行文書の保管・管理業務、銀行用度品の取扱業務ほか ◆従業員数  54人(うち障害のある社員28人:知的障害21人、身体障害1人、精神・発達障害6人)  (2022年6月1日現在) 2018年から精神・発達障害のある社員を採用  株式会社百五銀行の特例子会社として、文書保管や用度品取扱などの親会社の後方支援業務をになう百五管理サービス株式会社では、2022(令和4)年6月1日現在、6人の精神障害・発達障害のある社員が働いています。  同社では、障害のある社員を「チャレンジド(=前向きに挑戦する人)」と呼び、ほかの社員とともに働ける環境を整えています。  「2016(平成28)年に障害者雇用に本格的に取り組み始め、特例子会社の認定を受けました。初めは知的障害のある社員5人の体制でしたが、銀行業務のペーパーレス化の流れを受けて、新規業務開発の必要性が高まり、それに対応できる人材を確保するために、2018年以降は、精神障害・発達障害のある社員の雇用にも、力を入れるようになりました」と、代表取締役の森永(もりなが)豊(ゆたか)さんは話します。  「そのきっかけは、交通事故で、高次脳機能障害を負ったAさんでした。短期記憶を保持しづらく、脳の疲労を感じやすいという特性がありましたが、能力が高く、パソコンのスキルをお持ちでしたので、支援機関のサポートを受けながら、環境を整え雇用に至りました。本人に合わせた配慮をすれば、障害のある社員が力を発揮できることがわかり、以降、精神・発達障害のある方に採用を拡げてきました」 ストレスなく業務が行える環境を整備  精神・発達障害のある社員の雇用にあたっては、障害特性に応じた配慮が求められます。森永さんは、「人によって特性は異なりますが、精神・発達障害のある社員には、疲れやすく集中力が途切れやすい、薬の副作用により眠くなることがある、家庭や友人など職場以外からのストレスや不安が仕事に影響を及ぼしやすい、などの傾向が見られます。また、発達障害のある社員は口頭での指示が理解しづらかったり、声が小さく、返事などの反応がわかりづらい、ミスをしたり対応がわからなくなった場合にパニックになるなどの様子が見られることがあります」といいます。  特性に応じ、例えばある社員には、専用の「作業日誌」を作成し、毎朝、体調や服薬状況、検温結果などを記入、その日の体調に合った業務内容と業務量を相談しています。また、日誌は各項目に〇をつける形式とし、記入するスペースもあまり広くせずシンプルにして、記入に負担を感じさせないよう工夫しているそうです。  「休憩スペースには、パーテーションを設置して、一人で気兼ねなく休めるように工夫しています。また、パソコンの入力作業の際に、周囲の社員の言動(独り言や貧乏ゆすり)が気になり、集中しにくい社員がいたことから、作業デスクを机上用パーテーションで囲って、集中しやすい環境を整えました。休憩や作業中のストレスが軽減されることで、業務に集中して効率的に取り組めるようになったほか、早退や体調不良による連続した休暇取得が少なくなるなどの効果を感じています」 障害者トライアル雇用制度やジョブコーチ支援を利用  障害のある社員の採用にあたっては、1〜2週間の職場実習で職場や業務との相性を見きわめたのちに、1年間ほどを養成期間としています。  「精神障害のある方は、季節ごとの体調の波が大きいので、1年を通じたコンディションの変化を見ることが大切だと感じています。その間に、四季を通じた様子を確認し、必要な配慮などを検討することができます」と森永さん。  また、「障害者トライアル雇用制度」(※1)を活用しながら、当機構の障害者職業センターのジョブコーチ支援(※2)もあわせて利用しているそうです。  「入社後3カ月から半年間、障害者職業センターのジョブコーチと当社に所属する企業在籍型ジョブコーチのペア支援により、職場への適応をサポートしています。精神・発達障害のある人の障害理解やサポートはむずかしい側面があるため、専門家の助言やサポートを受けられるのでとても助かっています」 定期的な面談で、メンタル面をサポート  社員には障害者就業・生活支援センターへの登録を入社時にすすめており、入社後は支援員に定期的に面談に来てもらっているそうです。また、その日の体調や悩みなどを日誌やノートに書いて相談できるようにしたり、役員が3カ月ごとに定期面談を行い、業務や職場の環境、体調についてヒアリングしたりして、個々の状況や要望に合わせて可能な範囲で対応しています。通院のために年に2日の特別休暇が取れる制度もあります。森永さんが語ります。  「障害のある社員の職場定着にあたっては、安心して働き続けられるような環境を整えた“居場所”とその人が活躍できる“出番”を提供することが大切だと思います。そのためには、コミュニケーションを通じて、相手をよく理解することと、ともに働く社員にも障害特性のことを知ってもらい、理解してもらうことが必須だと感じています」 ※1 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html ※2 https://www.jeed.go.jp/disability/person/job01.html 写真のキャプション 各項目に〇をつける形式の作業日誌 半個室の休憩スペース 障害のある社員の執務フロア内に設置された、半個室の休憩スペース。パーテーションの高さや位置は、社員が急に不調になることも想定して、管理者から様子が見えるように調整した データ入力作業に集中しやすいデスク環境 データ入力作業スペースにも、パーテーションを設置。作業に集中しにくい場合には、パーテーションに「声をかけないでください」と書かれた注意書きを掲示する 定期面談の様子 役員による面談を3カ月ごとに実施。状況や要望などをヒアリングし、必要な配慮などを検討している (写真提供:百五管理サービス株式会社) 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 『障害のある方への合理的配慮の提供』 ホームページで検索できます! ホームページ「障害者雇用事例リファレンスサービス」 JEED リファレンス 検索 QRコードはこちら  2016(平成28)年4月から、事業主には、障害者の募集・採用時および採用後に、障害の特性や本人の希望・ニーズに応じて個別に配慮する『合理的配慮の提供』が義務づけられています。  しかし、「どのような配慮をすればよいのかわからない」という事業主の方や、「企業から相談されたが、どのような支援を行えばよいか迷う」という支援機関の方もいらっしゃるのではないでしょうか。  当機構が運営するホームページ「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、実際に『合理的配慮の提供』を行っている企業の事例(合理的配慮事例)を紹介しています。また、そのほかにも、さまざまな創意工夫を行い障害者雇用に積極的に取り組んでいる企業の事例(モデル事例)を掲載しています。  今後も、企業や支援機関のみなさまに役立つ事例を追加掲載していきますので、ぜひご利用ください。 業種や従業員規模、障害種類別などの条件を設定して事例を検索することができます。 合理的配慮事例を検索する場合は、こちらのチェック欄を選択してください。 参考例 <利用者アンケートから> ・「募集・採用、定着までの経緯を知ることができた」 ・「障害者の担当業務を写真で知ることができた」 「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、よりよいサービスの提供のため、みなさまのご意見等をおうかがいしています。 ホームページからアンケートへのご協力をお願いいたします。 “事例で見る”“動画で見る” ホームページでご覧ください! 動画「みんな輝く職場へ〜事例から学ぶ 合理的配慮の提供〜」 JEED みんな輝く 検索 QRコードはこちら  「合理的配慮とは何か」、「どのように取り組めばよいか」と疑問をお持ちの事業主の方にもわかりやすく、『合理的配慮の提供』に関するポイントの解説などを紹介しています。  当機構ホームページでご覧いただくことができるほか、関連するDVDの無料貸出しも行っていますので、ぜひご活用ください。 【視覚障害】就労支援機器の活用 【精神障害】社内相談支援体制の整備 【発達障害】企業在籍型ジョブコーチの活用 障害種類別の取組みを専門家がわかりやすく解説しています。 ◆上記動画の内容およびDVD貸出し、「障害者雇用事例リファレンスサービス」に関するお問合せ 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 FAX:043-297-9547 中央障害者雇用情報センターのご案内  障害者雇用に関する豊富な経験や知識を有する障害者雇用支援ネットワークコーディネーターが、企業の規模・業種の特性に応じた雇用管理や『合理的配慮の提供』などに関する相談・援助を行っています。 例えば…  ・障害者の従事する職務を用意するにはどうしたらよいか  ・賃金体系や就業規則、採用後の処遇、昇進昇格などはどのようにしたらよいか  ・採用後の職場定着、健康管理において配慮することは何か  ・特例子会社を設立したいが、どのように準備を進めたらよいか  ・障害者雇用を進めている他社の状況を知りたい など  まずは中央障害者雇用情報センターにお問い合わせください。 TEL:03-5638-2792 E-mail:syougai-soudan@jeed.go.jp 2022年度(令和4年度) 就業支援課題別セミナーのご案内 受講料無料  当機構では、労働、福祉、医療、教育などの分野で障害のある方の就業支援を担当している方を対象として、新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上を図るための「就業支援課題別セミナー」を実施しています。  令和4年度のテーマは、「中高年齢の障害者への支援」です。  みなさまの受講を心よりお待ちしています。 内容  日本は社会全体の高齢化が進んでおり、これにともない、中高年齢の求職者・在職者が増加することが見込まれています。障害者の就労場面においても、例外ではありません。在職中の障害者の加齢にともなう能力低下や仕事へのモチベーション低下等が報告されており、支援機関に対する支援ニーズは今後一層高まっていくことが考えられます。  そこで、本セミナーでは次の内容について取り扱います。 ■中高年齢障害者の職業生活の再設計について ■中高年齢障害者の多様な働き方について 対象者  労働、福祉、医療、教育などの関係機関において就業支援を担当する方 日程  令和4年11月2日(水) 開催方法  オンラインによる開催を予定しております。 お申込み ◎受講申込書・カリキュラム:当機構ホームページからダウンロードできます。 ◎申込方法:「就業支援課題別セミナー受講申込書」に必要事項を記入し、申込受付期間内にメール(stgrp@jeed.go.jp)でお申し込みください。 (※メールアドレスのドメインを変更しましたので、メールアドレスに誤りがないか、ご確認のうえ、送信ください。) ◎申込受付期間:令和4年8月24日(水)〜9月28日(水) ◎受講決定の通知:申込受付期間終了後、受講の可否についてメールにて通知します。 就業支援課題別セミナー 検索 URL:https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/kadaibetsu.html ◎お問合せ先 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 【P15-18】 グラビア 店舗を支える戦力に 株式会社コネクト(東京都) 取材先データ enherb(エンハーブ) ルミネ新宿店 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-1-5 ルミネ1 5F TEL 03-6302-0482 株式会社コネクト 〒105-0012 東京都港区芝大門2-8-13 サクセス芝大門ビル7F TEL 03-5472-2351(代表) FAX 03-5472-2358 写真・文:官野 貴  日本全国の百貨店や商業施設にある、ハーブ専門店「enherb(エンハーブ)」の運営を行う「株式会社コネクト」。同社では知的障害のある社員2人が活躍しており、全国の29店舗に発送する書類やPOPの制作、各店舗から送られてくる売上伝票の入力作業、衛生管理チェックシートの確認作業やPDF化などの事務作業を担当している。  塚本(つかもと)陽日(はるか)さんは、特別支援学校在学時のインターンを経て、2021(令和3)年4月に新卒採用として入社した。塚本さんは仕事について、「衛生管理チェックシートの確認作業で、店舗に電話をする際、緊張で何を話せばよいかわからなくなったことがあり、話すことをメモに書き出してから電話をするようにしています」と話す。関係企業から転籍してきた岩田(いわた)樹実果(きみか)さんは塚本さんと同期入社だが、実務経験があるため、先輩として塚本さんから頼られているそうだ。岩田さん自身も、後輩ができたことが成長の大きなきっかけとなったという。売上伝票の入力作業では、「お金にかかわることなので、ダブルチェックを行うなど確認作業を大事にしています」と話す。  日ごろ、本社での事務作業を通して店舗を支える2人だが、店舗のスタッフとしても働くことを目ざし、本社内のショールームなどでトレーニングを積んでいる。この日は、実際の店舗での作業を見学し、開店準備作業の一部にチャレンジした。塚本さんは、「笑顔を絶やさず、きびきびと働く店舗スタッフの姿にあこがれます」と話す。  現在、株式会社コネクトでは障害のある社員のサポートに専任の支援者はたてず、社員全員が支援にあたる体制をとっている。今後は、障害のある社員を増やし、チームとして店舗支援にあたる体制を整え、メンバーの育成と、孤立させない仕組みづくりを目標としている。 写真のキャプション 売上伝票の入力作業を行う塚本陽日さん(右)と岩田樹実果さん(左) 店舗で使用するPOPの切り出し作業 サンプル品の袋詰め作業 封をしたサンプル品に、内容表示シールを貼る 塚本陽日さん 岩田樹実果さん テレワーク中の社員と連絡をとる岩田さん ハーブの量、お湯の温度や量、蒸らす時間を、きちんと守ることが大事だという 来客にハーブティーを入れる塚本さん。店舗での仕事に向けての第一歩 実際の店舗で、試飲用のハーブティーを入れるトレーニング。試飲は、購入のきっかけとなるため、ていねいな仕事が求められる 店舗スタッフ(左)からハーブティーの説明を受ける。最初のステップは、ハーブに慣れ親しむことから まずは、ハーブティーをグラム単位で量りながら袋詰めをする。彼女たちのサポートにより、店舗スタッフが接客により集中できる 【P19】 エッセイ 多様でユニークな支援のあり方 第3回 問題行動と「才能」は、紙一重 Kプランニング代表 戸原一男 戸原一男(とはら かずお)  約13年前から「SELP 訪問ルポ」(日本セルプセンターWEBサイト)や『月刊福祉』(全国社会福祉協議会出版部)にて、290カ所以上の障害者就労支援施設の取材記事を連載する。施設職員を対象とした工賃向上研修会の講師実績も多数。  おもな著書として、『障害者の日常術』(晶文社)、『障害者アートバンクの可能性』(中央法規出版)、『パソコンで絵を保存しよう』(日本エディタースクール出版部)、『ブレイブワーカーズ』(岩波ブックセンター)、『はるはる日記』(Kプランニング)、ほか。 摩訶不思議な糸玉が、現代アート?  岩手県の「るんびにい美術館」には、優れた障害者アーティストが多数在籍している。その一人が似に里(さと)力(ちから)さんだ。たこ糸を一定の長さに切りそろえ、それを結び合わせることによって不思議なオブジェを生み出していく。もともと彼女は同美術館の草木染めグループに属していて、染めた毛糸を玉状に巻き取る担当だった。しかし職員の目を盗んでは毛糸をハサミで切ってしまい、それを結ぶという行為をくり返す。これでは商品にならないので何度も注意するのだが、彼女は悪戯(いたずら)をやめることはない。その姿がとても楽しそうなので、職員はあきらめて自由に糸結びをしてもらうことにした。  すると、まさに水を得た魚。思う存分に1本の糸を切ってはつなぐという行為を、延々とくり返すようになったのだ。そんな経緯で生まれたのが、「糸っ子」と呼ばれる作品である。じつに摩訶不思議(まかふしぎ)な形状のオブジェなのだが、ある職員がモノは試しと「岩手芸術祭美術展」に応募してみたところ、現代美術部門で優秀賞を受賞するという栄冠に輝いた。まわりにはほとんど理解してもらえなかった糸くずの塊が、美術館の立派なショーケースに展示され、アート作品として専門家から高く評価されたのである。それ以後ずっと彼女はひたすらオブジェをつくり続け、それが立派な仕事となっている。 解体マニアが、リサイクル現場で大活躍  山口県の社会福祉法人ふしの学園「ふしのエコ事業所」には、ネジ回し1本でどんなものでも解体できる能力を持った利用者さんがいる。いすやテーブルはもちろんのこと、たとえ大きな機械でも彼の手にかかるとあっという間に細かな部品に早変わり。地域から回収されてきた大型ゴミを分別・分解し、専門業者へと販売するリサイクル工場で大活躍の毎日だ。  いまでこそ彼は職場のエース格として信頼されているものの、この仕事に就く前は入所施設のあらゆる家電製品を分解してしまう問題児だったという。子どものころからこうした解体作業が大好きで、職員もその行動には手を焼いていた。転機となったのは、ふしの学園が新たにリサイクル事業を始めることになったときである。職場を異動してもらったところ、才能が一挙に開花したのだ。それまでは家電を分解すると怒られてばかりいた彼だが、職場ではまったく逆。「こんなにみごとに分解してくれた」と褒められ、お金までもらえるようになった。現場で彼は、だれよりもうれしそうに分解作業に勤(いそ)しんでいる。 職員に必要なのは、「才能」を見いだす能力  こうした事例から、支援者たちは何を学ぶべきなのだろうか。それは、障害のある人たちの潜在能力を見抜く技術を磨くことの大切さだと思う。たとえ一般的には評価されない行動であっても、切り口を変えるとまったく違った側面が見えてくることがある。  るんびにい美術館の似里さんも、ふしのエコ事業所の利用者さんも、素晴らしい職員との出会いがあったから、新しい世界が開けてきた。もしかしたら、みなさんがいまかかわっている障害のある人たちにも、とんでもない可能性が潜んでいるのかもしれない。そんな常識の枠にとらわれない発想が、就労支援の現場では求められている。  突きつめれば、支援者の「人としての器」が問われているわけだ。それが、障害のある人の未来を大きく左右することになるのだろう。 【P20-25】 編集委員が行く 「社員は家族。ともに働き、幸せに生きる」 株式会社新陽ランドリー、株式会社加藤福祉サービス(宮城県) 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 取材先データ 株式会社新陽ランドリー 〒981-3221 宮城県仙台市泉区根ねの白石判在家(しろいしはんざいけ)25-2 TEL 022-376-5511 株式会社加藤福祉サービス 〒981-3221 宮城県仙台市泉区根白石判在家25-2 TEL 022-352-7431 編集委員から  障害のある人が就労を継続していくには、職場環境の整備とともに、生活面の充実が重要だと感じる方は多いであろう。しかし、会社以外の生活時間にどのように働きかけるかはむずかしい面も多く、どこから始めてよいかわからず、まったく手つかずの企業もあるのではないだろうか。今回は社員寮の設置から始まり、グループホームの経営へ発展した事例を取材した。個人の領域を守りつつも、ともに楽しく過ごし、働いていくことについて考えていきたい。 Keyword:知的障害、グループホーム、生活時間、健康管理、スポーツ、就労継続支援B型事業所、地域貢献、SDGs 写真:官野 貴 POINT 1 企業が障害のある社員の生活と就労を支えるためにできること 2 グループホームを基点とした生活環境の充実 3 終身雇用とその後の生活 陽光あふれるクリーニング工場  取材当日は記録的な大雨のなか、株式会社新陽ランドリー代表取締役の加藤(かとう)幹夫(みきお)さんと取締役の小川(おがわ)真生(まき)さんが仙台駅で出迎えてくれた。仙台駅から車で30分ほどの田園地帯に立地する新しい工場に到着するころには、すっかり雨もあがった。同社は1954(昭和29)年創業。社員数49人(うち障害者30人)と、グループ会社である株式会社加藤福祉サービスが運営する就労継続支援B型事業所の利用者は25人で、おもに仙台市内の医療機関のシーツや医療従事者のユニフォームのクリーニングを手がけている。  工場の一番手前の部屋では、おもに知的障害のある社員さんたちが、病院から回収されてきたユニフォームのすべてのポケットをチェックし、ペンや印鑑などが入っていないかを確認していた。近年は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、注意を要する作業だが、十分な対策をとり行っている。次の部屋には大型洗濯機があり、ここは衣類のICタグ管理や洗剤投入などの自動化が進められていて、だれが作業しても間違いが起こらない仕組みになっている。次は乾燥と畳みである。種類によって畳み方が違うのだが、機械では完璧にきれいには畳めないので、社員さんが確認しながら整えていく。手作業でアイロンをかけていく社員さんもいる。次の部屋は最終仕分け、納品用のパッキングである。どの工程も障害のある方が、指導する社員の見守りを受けながらテキパキと仕事をこなしていた。  工場内を案内してくださる加藤さんが、大きな声で全員に声をかけながら歩いていく。その声に答える社員さんたちの明るい笑顔が印象的だ。 はじまりは社長一家との同居から  加藤さんが大学4年生の冬に、創業者である父親が病で他界。生物学を専攻し、野球が大好きだった青年が教職を諦め家業を継いだ。つくりかけだった工場を完成させた1年後、知人から障害のある人の受け入れを打診される。大学では教員免許を取得し、野球部の選手兼監督でもあった加藤さんには、「教えればだれでも伸びる」という確信があり、受け入れを承諾。すると、やってきた4人は児童養護施設出身で、帰るべき家がなかったため、加藤さんの母、祖母とともに寝泊まりをするようになる(そのうちの一人は、いまも在職しており、今年還暦を迎える)。  人数が増えてくると、住んでいたマンションの同じ階に数部屋を借り、集団生活をするようになった。1991(平成3)年には工場近くの建物を社員寮とした。その後、寮としての運営より、行政による指導も入るグループホームの方が運営体制がしっかりすることから、2011年には株式会社加藤福祉サービスを設立し、2016年にグループホーム「ねのしんさか」を開設した。2017年には就労継続支援B型事業所「就労支援施設ねのわーく」を開設。会社よりも手厚い支援が必要な、「ねのわーく」の利用者25人が、別工場でクリーニング業務にいそしんでいる。そして近隣の土地を購入し、2019年に少人数ユニットの新ホーム「ねのがっこうまえ1」を建築、現在は36人が入居している。しかしいまでも、集団生活に不慣れな新入社員や特別な配慮が必要な社員は加藤さんの家族と一緒に生活し、慣れてからホームへ移行させていくという手厚さである。 グループホームの特色と運営のコツ  「共同生活の最大の利点は、『集団効果』です。仕事に行くのが面倒だと感じるときも、ホームのみんなで「さあ、行くぞ」と支度して一緒に出かけていけば、休むことはなくなりますよ」と、加藤さんは語る。ホームの責任者は加藤さんの奥さまの芳子(よしこ)さんで、常に社員の味方であり、困りごとは直接社長にかけあってくれる、社員の母的存在だ。一日の仕事を終え、自分が心から安心してくつろげる環境に帰れることは、社員にとって、このうえない幸せであろう。プライベートな空間はもちろん確保されているが、広いリビングダイニングで仲間とゆったり過ごすこともできる。  芳子さんが企画する誕生日会、ハロウィン、クリスマス、正月などの行事もたいへん充実しているそうだ。ほかにも定期的に映画を観に行ったり、屋外でのバーベキュー、また年に一度は社員の家族、出身学校や養護施設の先生も招き、ホテルでのクリスマス会で労をねぎらう。本当に家族のような雰囲気だという。  「土日も家には帰らないのが、ほかのホームと違うところでしょうか。家庭としてのグループホームは全体としては多くないと思うのですが、うちのように、家がない社員にはそれが必要なんですね」  今年6月に完成した新築のホームはユニットが小さく(定員4人)、少人数になるので、いまよりもさらに一人ひとりに目が届くようになる。「その代わり、誕生日会が少し寂しくなりますね」とたずねると、「全員が集まれる管理棟をつくったので、誕生日会は毎月合同でやりますよ!」とのこと。見守りは細やかに、楽しいことは大人数で。これが同社の社風であると再認識した。 地域の大学生とのつながり  現在、多くのホームでは夜勤要員の確保に苦労していると聞くが、同社では近隣の大学生40人ほどが交代でアルバイトに入っている。福祉系だけでなく、医学部やほかの学部、そして演劇部、将棋部、バンドなど、サークル活動も多様な学生たちだ。交通の便が悪いこともあるが、アルバイトの学生を大学まで車で送迎するというから驚いた。ときには休みの日に、学生が出演する舞台を数人の社員で観に行くなど、いつもとは違う世界に触れるきっかけにもなっている。同社の理念に共鳴し、卒業後に同社に就職する学生も出てきた。人手不足のいま、地域でよい循環が生まれている。 健康増進のための取組みとスポーツ活動  健康管理がうまくできない障害者には、食事と運動への配慮が重要である。ホームでは体操を日課とし、また工場まで歩くことがよい運動になることから、工場への送迎をやめた。また特筆すべき点はスポーツ活動がたいへん盛んであることだ。バスケットボール、卓球、フライングディスク、陸上、空手と多岐にわたる。工場2階には本格的な卓球場をつくり、パラ五輪のシドニー大会に出場するなど優秀な成績を収める選手も出ている。  取材は金曜日の午後だったのだが、加藤さんと小川さんとで、週末のバスケットボールの練習について話し合っていた。最近世間では、業務時間外に会社の人に誘われると、「飲み会でも残業手当は出ますか?」と質問してくる従業員がいると耳にする。こうした世相のなか、土日のスポーツなどの活動について社員のみなさんはどう考えているのか、加藤さんにうかがった。  「スポーツもレクリエーション活動も、参加を強制することはもちろんありません。断っても、まったく問題ありません。やりたい人だけが参加しています。断るときに、無理に言い訳を考えなくてもよくて、『なんとなく行きたくない』と素直にいい合える文化を大切にしています」  スポーツの効用は体力強化などたくさんあるが、ストレスを発散できることで、対人関係のトラブルなどが減るという「精神的安定への効果」も、大いに感じているそうだ。これから必ず訪れる老化をなるべく遅くするためにも、みんなが参加したくなる楽しい運動を続けていきたいという。 怒らない指導と反復練習  「野球の指導では、『判断を怒ってはいけない』というのがあります。ボールを取って、1塁に送球するか2塁に送球するか。その判断を間違えてうまくいかなかったときに、『あの判断は間違いだった』といくら怒っても、野球は上達しません。暗記ではなく判断する機会をたくさん与え、何度も練習することで上達します。私は28歳から9年間、高校の野球部の監督をしていました。公立高校ですから初心者も来ます。ボールを取れない生徒を、取れるようにしたいのです。反復練習、トレーニングが大切なのです」と、加藤さんが話す。  学生時代から野球を続けてきた加藤さんは、監督に怒られたことがなく、さらには父親からも怒られた記憶がないという。部活動のなかで、怒らない指導者と巡り合うのは珍しいことであり、加藤さんが社員の成長をじっくりと待てるのは、「怒らない」大人たちに育てられた経験から来ているのかもしれないと感じた。  「最近は世間で『ありのままの自分でよい』というメッセージが独り歩きしていることが気になります。できないことは、できるに越したことはない。できないならやらなくていいよ、ではなく、効果的なトレーニングでできることを増やすのが、その人の可能性を広げ、生活を豊かにすることだと思います。一人ひとりをよく見て、個別にきちんとした評価をすることがとても大事です」 支援する社員への社員教育  障害のある社員が活躍するには、業務をていねいに教えたり、苦手なことをサポートしたり、一緒に働きながら指導できる社員の存在が不可欠だ。同社には福祉を学んだ有資格者もいる。その福祉のプロともいえる人が、クリーニングの技術を学びプロになっていく。障害のある社員が6割を占める同社に、障害に対する理解・知識がない人が応募してくることはあまりないだろう。それでも、新卒で入ってくる社員などに、どのような社員教育を行っているのかをうかがった。  「障害者を支援する社員に対して、特別な社員教育は全然できていません。ただ、障害のある仲間に対して、『仕事でむずかしいことがあっても大丈夫だし、これから少しずつ覚えていこう、私もわからないからね、まず会社に慣れていこう』と、これがうまく伝えられれば、スタートできると考えています。障害のある人たちも、指導する社員をよく観察しています。ポイントは人間関係の構築です。仕事はいくらでも習得させることはできるのです。これから入社してくる若い人たちも、こういう仕事を面白がってくれたらいいと思います」 企業から福祉への移行の必要性  「例えばプロ野球選手は引退してから解説者になったり、自分の店を開いたり、いろいろな働き方ができる。でも障害のある人は、そう簡単には仕事を変えて働けないのです。クリーニング屋さんがダメになったからといって急にケーキ屋さんでは働けないでしょう。そうだとすると、雇用する企業はある程度、責任を持ってやらなくてはならないと思います。40年も働いてきたら、その後の職場を用意するために就労継続支援B型事業所が必要になる。60歳で定年になった人は、いずれB型に移ってもらうつもりです。私たちはB型をつくることができて幸せです」  障害によっては、通常よりも老化が早く、機能が低下していくケースもある。だからといってすぐに解雇もできないことが多くの企業で課題になっている。現在、福祉施設から、就労移行支援事業所を利用して、企業へ移行していく流れはあるが、就労継続が困難なときには、企業から福祉への移行をもっとスムーズにできる必要がある、と加藤さんは考えている。  「高齢になり、運転が危険になるので運転免許証を返上することと同じだと思います。いくら運転したいといってもリスクがあるのだから、そこをきちんと評価して、本人にも納得してもらって、福祉に移行するルートをつくる。この仕組みができていないから、理不尽と感じる辞めさせ方になるのではないでしょうか。高齢になればいままで実家でできていた生活面の整備が困難になり、実家からグループホームに入る必要もでてきますね」  社員の面倒を一生見る覚悟の会社であるから、高齢になって機能が低下した社員でも働き続けられる環境を整備している。老化を遅らせる体力強化に、本腰を入れて取り組むことも、すべてがつながっている。 課題は安定永続経営  加藤さんは5年前、東北大学の権奇哲(コンキチョル) 教授(東北大学大学院経済学研究科・経済学部経済経営学専攻地域政策講座前教授)との出会いがあった。地域イノベーション研究センターで、権教授がイノベーション塾を開催しており、加藤さんの長男の幹(かん)太郎(たろう)さんもそこに通って経営の勉強をした。  「当社は会議もミーティングも営業もノルマもないのに、利益を上げていることに権先生が非常に驚いて、そこから交流が始まりました。いまは定期的に訪問し、アドバイスをいただいています。また今回、土地を購入しグループホームを建設するのに、地元の銀行が融資の面で、手続きなども親身に対応してくださいました。ほかにも外部の方の協力をたくさんいただいており、当社が地域・住民に貢献したいと考える活動を応援してもらっています」  近年はSDGsが広く浸透したことも理由なのでは、と加藤さんは語っていたが、長年にわたり真摯な経営を行ってきたからこそ、地域から多くの応援・賛同を得られているのではないだろうか。  一方で、障害者が働く会社、作業所といえども、最近はコンプライアンスや品質管理が非常に厳しくなっていることも事実だ。万が一のミスを未然に防ぐチェック体制を構築し、地域社会の役に立ち、会社が成長し続けることで、はじめて安定雇用が実現する。現在はまだ同社に足りない評価制度、社員のキャリア支援などは外部の力も借りながら、進めていく計画だそうだ。加えて、加藤さんが考えるもう一つの課題は、「障害のある社員の職域拡大」である。  「例えば就労継続支援B型事業所の利用者は、いまはクリーニング業務だけですが、データ入力や請求業務など、いろいろな仕事を増やしていきたいです。ここ数年、優良企業の見学に行くことができなかったので、コロナが収束したら社員研修として全国のさまざまな企業に見学に行こうと思います。とても楽しみです」 家業から企業へ  障害のある人は、その特性により日常生活において不便を抱えることや体調不良が多く、そのうえ、職場にも適応しなければならないのは、私たちの想像以上に努力を要することである。障害が比較的軽く、努力することができる人は、働くことができる。それでは、そうではない人の就労生活を成立させるのに、必要なことは何か。  新陽ランドリーグループは、この問題に向き合い、みんなでともに暮らしながら働くことを実践してきた。社長の家族が、障害のある社員と寝食をともにし、「家族」のように過ごすことから始まった取組みは、かなり稀(まれ)なケースであろう。しかしその後、組織の成長過程で、単なる一家族の活動ではなく、組織として社員全員が賛同・参画する社風に見事に進化している。なかなか真似できることではないが、この実践のなかに「障害者雇用」において大切なことのヒントがあるのではないか。  もちろん、問題はたくさんある。仕事の覚えが早くない人もいるし、同僚との人間関係を上手に築けない人もいる。それでもその「違い」を否定せず、仕事は環境を整備しながら少しずつ教え、いろいろと巻き起こる人間関係は、みんなで前向きに笑いに変えて解決していく。そのために、障害の有無とは関係なく、お互いをよく見つめ理解しようと努力する。  決して小さくはない組織体でありながら、家族のような愛情にあふれる、とても魅力的な企業で、そのエッセンスを大いに取り入れたいと感じる取材であった。 写真のキャプション 株式会社新陽ランドリー代表取締役の加藤幹夫さん 病院のユニフォームを専門に取り扱う「学校前工場」 異物の混入チェックを行う検品部門 工場内には大型の洗濯機が並ぶ 乾燥を終えたユニフォームが自動折り畳み機に運ばれる 機械で畳まれたユニフォームを社員が確認し形を整える プレス機にユニフォームをセットし、アイロンがけを行う 工場は、オートメーション化により品質の確保が図られている グループホーム「ねの がっこうまえ1」。学校前工場に隣接する 2016年に開設されたグループホーム「ねの しんさか」では、10人が共同生活を行う 「ねの しんさか」のリビングルーム 「ねの しんさか」の寝室 「ねの しんさか」の浴室。一人ずつ交代で利用する 「ねの しんさか」の洗面室 【P26-27】 省庁だより 令和4年度 障害保健福祉部予算の概要(2) 厚生労働省 障害保健福祉部 ※(1)は7月号に掲載しました 2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策、依存症の推進 1 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築 8.0億円(7.2億円)  精神障害者が地域の一員として安心して自分らしく暮らせるよう、住まいの確保支援を含めた精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。このため、障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、精神科病院、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築し、地域の課題を共有した上で、地域包括ケアシステムの構築に資する取組を行う。  また、精神疾患の予防や早期介入を図る観点から、メンタルヘルス・ファーストエイドの考え方を活用した「心のサポーター養成事業」を実施し、メンタルヘルスや、うつ病、摂食障害などの精神疾患に対する理解の促進及び地域や職場での支援を受けられる体制確保を推進する。 2 精神科救急医療体制の整備 17億円(17億円)  地域で生活する精神障害者の病状の急変時において、早期に対応が可能な医療体制及び精神科救急情報センターの相談体制を確保するため、引き続き地域の実情に応じた精神科救急医療体制を整備する。  また、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に資する精神科救急医療体制整備を推進するとともに、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。 3 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 183億円(187億円)  心神喪失者等医療観察法に基づく医療を円滑に行うため、引き続き指定入院医療機関を整備し、地域偏在の解消を進める。  また、指定医療機関の医療従事者等を対象とした研修や指定医療機関相互の技術交流等により、更なる医療の質の向上を図る。 【令和3年度補正予算】 ・心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関施設整備事業 0.8億円  心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関の医療観察法病棟について、防災・減災の観点から、必要な施設整備を実施する。 4 アルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル等依存症対策等の推進 @依存症対策の推進(一部再掲・2(2)参照)9.5億円(9.4億円)  アルコール、薬物、ギャンブル等依存症をはじめとする依存症患者やその家族等が適切な治療や必要な支援を受けられるよう、全国拠点機関において、依存症対策に携わる人材の養成や情報発信等に取り組む。  都道府県等において、依存症の治療・相談支援等を担う人材育成、依存症相談拠点、依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関の選定・設置を行うことにより、依存症相談支援・治療体制、各地域における包括的な連携協力体制の整備等を推進する。また、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。  さらに、相談支援や普及啓発等に全国規模で取り組む民間団体の支援や依存症の実態を把握するための調査を実施するとともに、広く国民一般を対象に依存症の正しい理解を広めるための普及啓発を実施する。 Aアルコール健康障害対策の推進 19百万円(19百万円)  アルコール健康障害対策基本法及びアルコール健康障害対策推進基本計画に基づき、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及啓発や、都道府県におけるアルコール問題に関する横断的取組を支援する。 5 てんかんの地域診療連携体制の整備 19百万円(18百万円)  てんかんの治療を専門的に行っている医療機関を「てんかん支援拠点病院」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援拠点病院で集積された知見の評価・検討を行うため「てんかん全国支援センター」を設け、てんかんの診療連携体制を整備する。 6 摂食障害治療体制の整備 19百万円(19百万円)  摂食障害の治療を専門的に行っている医療機関を「摂食障害支援拠点病院」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援拠点病院で集積された知見の評価・検討を行うため「摂食障害全国支援センター」を設け、摂食障害の診療連携体制を整備する。 7 こころの健康づくり対策等の推進 76百万円(76百万円)及び地域生活支援事業等の内数  精神疾患を有する方への早期の専門的対応を充実するため、かかりつけ医や精神保健医療福祉関係者への研修を実施するほか、うつ病などの治療で有効な認知行動療法の研修を実施し、治療の質の向上を図る。 【令和3年度補正予算】 ・新型コロナウイルス感染症に対応した心のケア支援 0.5億円  新型コロナウイルス感染症の長期化に伴ううつ病等に対する精神保健上の支援(心のケア)を実施できるよう精神保健福祉センター等への支援を行う。 3 発達障害児・発達障害者の支援施策の推進 1 発達障害児・発達障害者に対する地域支援機能の強化 3.9億円(2.7億円)  発達障害児者の各ライフステージに対応する一貫した支援を行うため、地域の中核である発達障害者支援センター等に配置する発達障害者地域支援マネジャーの体制を強化することで、市町村や事業所等が抱える困難事例への対応促進等を図り、発達障害児者に対する地域支援機能を強化する。 2 発達障害の初診待機解消に関する取組の推進 93百万円(93百万円)  発達障害児者の診断に係る初診待機の解消を進めるため、発達障害の医療ネットワークを構築し、発達障害の診療・支援ができる医師の養成を行うための実地研修等の実施や医療機関におけるアセスメント対応職員の配置を進める。 3 発達障害児・発達障害者とその家族に対する支援 1.6億円(1.6億円)  都道府県及び市町村において、同じ悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するピアサポートや発達障害児者の家族に対するペアレントトレーニング、青年期の発達障害者に対する居場所作り等を実施することにより、発達障害児者及びその家族の支援を推進する。 4 発達障害に関する理解促進及び支援手法の普及 1.3億円(1.4億円)  全国の発達障害者支援センターの中核拠点としての役割を担う、国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている「発達障害情報・支援センター」で、発達障害に関する各種情報を発信するとともに、困難事例に係る支援をはじめとする支援手法の普及や国民の理解の促進を図る。  また、「世界自閉症啓発デー」(毎年4月2日)などを通じて、自閉症をはじめとする発達障害に関する正しい理解と知識の普及啓発等を行う。 4 障害者に対する就労支援の推進 1 雇用施策と福祉施策の連携による重度障害者等の就労支援 7.7億円(7.7億円)  重度障害者等に対する就労支援として、雇用施策と福祉施策が連携し、企業が障害者雇用納付金制度に基づく助成金を活用しても支障が残る場合や、重度障害者等が自営業者として働く場合等で、自治体が必要と認めた場合に、地域生活支援促進事業により支援を行う。 2 工賃向上等のための取組の推進 6.7億円(6.4億円)  一般就労が困難な障害者の自立した生活を支援する観点から、就労継続支援事業所などに対し、経営改善、商品開発、市場開拓や販路開拓等に対する支援を行うとともに、在宅障害者に対するICTを活用した就業支援体制の構築や販路開拓等の支援等を実施する。  また、全都道府県において、関係者による協議体の設置により共同受注窓口の機能を強化することで、企業等と障害者就労施設等との受発注のマッチングを促進し、障害者就労施設等に対する官公需や民需の増進を図ることに加え、農福連携に係る共同受注窓口の取組を支援する。 【令和3年度補正予算】 ・生産活動が停滞している就労系障害福祉サービス事業所への支援 6.5億円  新型コロナウイルス感染症の影響により生産活動が停滞している就労系障害福祉サービス事業所(就労継続支援A型・B型事業所)に対し、新たな生産活動への転換や、販路開拓、生産活動に係る感染防止対策の強化等を通じて、事業所の生産活動が拡大するよう支援する。 3 障害者就業・生活支援センター事業の推進 7.9億円(7.9億円)  就業に伴う日常生活の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問等による生活面の支援などを実施する。 4 共同受注窓口を通じた全国的な受発注支援体制の構築 9百万円(16百万円)  都道府県域を越えた広範な地域から作業等の受注量を確保し、就労継続支援事業所の全国的な受発注を進めるため、各地域の共同受注窓口における取組事例や令和元年度及び令和2年度の事業成果を踏まえ、各地域の共同受注窓口の質の向上・機能強化をするための取組や、共同受注窓口間のネットワーク構築のための取組を実施する。 5 農福連携による障害者の就農促進プロジェクトの実施 3.4億円(3.4億円)  農業・林業・水産業等の分野での障害者の就労を支援し、障害者の工賃水準の向上等を図るとともに、障害者が地域を支え地域で活躍する社会の実現に資するため、障害者就労施設への農業等に関する専門家の派遣や農福連携マルシェの開催等を支援するとともに、過疎地域における取組を後押しする。 6 働く障害者の就労に伴う定着支援【新規】 16百万円  働く障害者の生活面の支援ニーズにより丁寧に対応できるよう、障害者就業・生活支援センターが就労定着支援事業所に対するスーパーバイズや困難事例への対応と事例収集に基づく他の就労機関への情報共有・啓発を行うことで、地域のネットワークの強化を図る。 5 東日本大震災等の災害からの復旧・復興への支援 1 障害福祉サービスの再構築支援(復興) 1.0億円(1.5億円)  被災地の障害者就労支援事業所の業務受注の確保、流通経路の再建の取組や障害福祉サービス事業所等の事業再開に向けた体制整備等に必要な経費について、財政支援を行う。 2 避難指示区域等での障害福祉制度の特別措置(復興) 15百万円(15百万円)  東京電力福島第一原発の事故により設定された帰還困難区域及び上位所得層を除く旧緊急時避難準備区域等・旧避難指示解除準備区域等の住民について、障害福祉サービス等の利用者負担の免除の措置を延長する場合には、引き続き市町村等の負担を軽減するための財政支援を行う。 3 被災地心のケア支援体制の整備(一部復興) 54百万円(68百万円)及び被災者支援総合交付金(115億円)の内数  東日本大震災による被災者の精神保健面の支援のため、専門職による相談支援等を実施するとともに、自主避難者等への支援などを通じて、引き続き専門的な心のケア支援を行う。  さらに、熊本地震による被災者の専門的な心のケア支援を引き続き実施するとともに、令和2年度7月豪雨等による被災者の心のケアに対応するため、市町村等が行う被災者の専門的な心のケア支援を引き続き実施する。 ※右記のほか、各自治体の復興計画で令和4年度に復旧が予定されている東日本大震災で被災した障害福祉サービス事業所等の復旧に必要な経費について、財政支援を行う。 ※参考:「令和4年度 障害保健福祉部予算案の概要」 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています ※( )内は令和3年度予算額 【P28-29】 研究開発レポート 障害者の週20時間未満の短時間雇用に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 1 はじめに  本調査研究は、週所定労働時間20時間未満で就労しているまたは就労を希望している障害者およびこうした障害者を雇用しているまたは雇用することを検討している企業のニーズや実態を把握し、週所定労働時間20時間未満での就業実態、支援の現場における工夫や課題等から週所定労働時間20時間未満での雇用の可能性等について探り、そのために必要な支援や制度のあり方を検討することを目的として実施しました。本稿ではその一部について紹介します。 2 調査の内容 (1)就労継続支援事業所アンケート調査  就労継続支援A型事業所(以下、「A型事業所」)および就労継続支援B型事業所(以下、「B型事業所」)1万4882カ所におけるサービスの管理者を対象に、利用者の状況や週所定労働時間20時間未満の就職希望、一般就労移行者の状況等に関する郵送調査を実施し、7447カ所(A型事業所1734カ所、B型事業所5709カ所、無回答4カ所)から回答がありました。 (2)企業へのヒアリング調査  週所定労働時間20時間未満の障害者雇用の実態等を把握するため、週所定労働時間20時間未満で障害者を雇用している、または雇用した経験のある13企業にヒアリングを実施しました。 (3)就労継続支援事業所へのヒアリング調査  アンケート調査回答事業所のうち、2017〜2019年度の一般就労移行者のなかに「雇用契約時に労働時間が週20時間未満」の者がいると回答した就労継続支援事業所から10カ所を選定し、ヒアリングを実施しました。 3 調査結果の概要 (1)障害者の週所定労働時間20時間未満での就職希望およびその背景について  アンケート調査結果において、週所定労働時間20時間未満での就職を希望する利用者がいる就労継続支援事業所の割合は、A型事業所においては8.7%、B型事業所においては16.2%でした(図1)。  週所定労働時間20時間未満での就職を希望する利用者がいると回答した事業所の事例(1事業所5事例を上限に回答:A型事業所300事例、B型事業所2242事例)の障害種別は、A型事業所、B型事業所ともに「精神障害」がもっとも多く、次いで「知的障害」、「身体障害」でした。  週所定労働時間20時間未満での就職を希望する理由としてもっとも多く選択されたのは、「体調の変動・維持」(A型事業所63.0%、B型事業所70.9%)でした。また、事業所の種別と理由との関係を分析すると、A型事業所は「入院治療」、「家庭の事情」の理由が有意に多く、分析に耐えうる回答数が得られた障害種別(身体障害・知的障害・精神障害)と理由との関係を分析すると、A型事業所、B型事業所ともに「体調の変動・維持」は「精神障害」が有意に多く、「加齢に伴う体力・能力等の低下」はA型事業所では「知的障害」、B型事業所では「身体障害」が有意に多い状況でした。また、B型事業所では「その他」について「身体障害」、「知的障害」が有意に多い状況でしたが、「身体障害」については「少ない日数を希望」といった内容、「知的障害」については「他事業所やサービスと併用しながら短時間就労を希望」、「日中サービスの利用を週何日か続けたい」といった内容であり、いずれも本人の希望や都合によるものでした。ヒアリング調査においては、週所定労働時間20時間以上働くことがむずかしい障害者のなかには自分で時間の過ごし方を考えることがむずかしい者、環境の変化への対応がむずかしく、対人関係が苦手な者もおり、本人のストレスを受けとめる場として就労継続支援事業所が必要であるという意見が聞かれました。 (2)週所定労働時間20時間未満の障害者雇用の実態等について  アンケート調査結果において、一般就労移行時に労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した者がいる就労継続支援事業所の割合は、A型事業所においては2.4%、B型事業所においては6.0%でした(図2)。  労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した者がいると回答した事業所の事例(1事業所5事例を上限に回答:A型事業所57事例、B型事業所486事例)の障害種別は、A型事業所、B型事業所ともに「精神障害」がもっとも多く、次いでA型事業所は「身体障害」、B型事業所は「知的障害」でした。労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した理由としてもっとも多く選択されたのは、「体調の変動・維持」(A型事業所70.2%、B型事業所61.9%)であり、次いでA型事業所は「症状・障害の進行」(22.8%)、B型事業所は「その他」(26.7%)、内容としては求人内容や雇用形態など会社側の条件があげられました(図3)。 4 まとめ  本調査研究の結果からは、週所定労働時間20時間未満の雇用に対する障害者のニーズが少なからず存在することが把握されました。また、ヒアリング調査からは、障害者雇用率、障害者雇用にかかる支援制度等の該当の有無にとらわれず、障害者の力を職場で活かそうとする事業主の姿勢や、障害者雇用のためのテレワークやワークシェアリングの活用、職務の調整、職務創出その他障害特性等に対するさまざまな工夫や配慮により、週所定労働時間20時間未満の障害者の雇用が支えられている事例から、こうした働き方が事業主および雇用されている障害者双方に利益をもたらしていることが把握されました。  本レポートの元となる「調査研究報告書No.165」は、障害者職業総合センターのホームページからご覧いただけます(28ページ★) ★「調査研究報告書No.165」https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku165.html ◇お問合せ先:研究企画部企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図1 週所定労働時間20時間未満での就職を希望する利用者の有無 A型事業所(1,734事業所) いない 91.3% いる 8.7% B型事業所(5,709事業所) いない 83.8% いる 16.2% 図2 労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した者の有無 A型事業所(1,734事業所) いない 97.6% いる 2.4% B型事業所(5,709事業所) いない 94.0% いる 6.0% 図3 労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した理由 A型事業所(57事例) 症状・障害の進行 22.8% 体調の変動・維持 70.2% 入院治療 0.0% 家庭の事情 12.3% 加齢に伴う体力・能力等の低下 12.3% その他 10.5% 無回答 0.0% B型事業所(486事例) 症状・障害の進行 20.4% 体調の変動・維持 61.9% 入院治療 0.8% 家庭の事情 5.8% 加齢に伴う体力・能力等の低下 6.0% その他 26.7% 無回答 0.4% 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 国会 障害者の情報格差解消を目ざす新法成立  障害のある人が、日常生活や災害時にも障害のない人と同様に情報を取得・利用し、円滑な意思疎通ができるよう、国や自治体に対して施策などの策定・実施を求める「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が可決、成立した。  同法は国や自治体に対し、障害者が健常者と同じ内容の情報を時間差なく得られ、障害の種類や程度に合わせて手段を選べるよう、防災や緊急通報などの体制整備を義務づけた。情報取得に役立つ通信機器やサービスの開発、普及・利用の促進なども求めている。また事業者に対しては、国や自治体の施策に協力し、障害者が必要とする情報を十分に取得できるよう努めることを要請している。 生活情報 東京 「コロナ下の不便」をイラストで紹介  盲導犬(アイメイト)を育成する「公益財団法人アイメイト協会」(練馬区)が運営する子ども向けサイト「『もうどう犬』を知ろう!アイメイト・こどもサイト」で、コロナ下に視覚障害者が不便さを感じる事例について紹介を始めた。  「コロナ下でもうどう犬の使用者さんは、どんなことにこまっているの?」と題したコーナーで、アイメイトの使用者7人が、コロナ下の生活様式の変化にともなって感じる困りごとなどを語り合う形式。例えば「商店街に自転車を停める人が多くなり、道がさらにせまくなってアイメイトとならんでは歩けず、車道におりなくちゃいけない」といった実体験や、「買い物のレジ前などで、一定の間隔をあけるための立ち位置の印などがわからず、列に並べない」といった当事者の声を、わかりやすくイラスト入りで説明している。 https://www.eyemate.org/kids/special 京都 障害者の運転免許取得支援を拡充  福知山市は、障害者手帳を持つ人が就労などのために運転免許を取得した場合の費用の助成制度を拡充した。  市はこれまで身体障害者手帳を持つ人にかぎって最大16万円を助成してきたが、2022(令和4)年度から対象を療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を含めた3種類の手帳保持者に拡大。教習開始日において、3カ月以上引き続き福知山市に住所を有する人、第1種普通自動車運転免許に係る免許証の交付を受けた人などの要件を満たし、免許取得から40日以内に申請すると最大20万円を助成する。 問合せは、福知山市福祉保健部障害者福祉課へ。 電話:0773−24−7017 福岡 九州国立博物館でスマートフォン音声ガイド  「九州国立博物館」(太宰府市)は、来館者が自分のスマートフォンで音声ガイドを利用できる新サービス「ナビレンスdeきゅーはく」の提供を始めた。  スマートフォンで視覚障害者のための動線案内アプリ「Navilens(ナビレンス)」を起動させ、文化交流展示室や館内、館周辺にある専用の標識にカメラを向けると、作品ガイドや動線の案内音声が自動再生される。貸出し用の端末やイヤホンもある。  また文化交流展示室では作品横のQRコードをスマートフォンで読み取ると詳しい解説がウェブページとして表示される「QRdeきゅーはく」のサービスも始める。 働く 神奈川 就労支援B型の古民家レストラン  スイーツ菓子製造・販売で障害者就労を支援するチョコレート工房「CHOCOLABO(ショコラボ)」(横浜市)の運営母体「一般社団法人AOH(エーオーエイチ)」が、新たに就労継続支援B型事業所として古民家レストラン「久右衛門邸(きゅうえもんてい)」(横浜市)を開所した。利用者がレストラン、カフェ、ショップ、庭園などで就労スキルを磨き、一般就労を目ざす。  幕末に建てられたという久右衛門邸を、所有者の協力を得て3年がかりでバリアフリー仕様に改装した。母屋をメインのレストランとして活用する。客席数は40席でスタートし、障害者3人を含む10人体制で運営。ショコラボの商品も販売するほか、納屋カフェや全国の福祉事業所から商品を集めたセレクトショップの展開なども計画している。営業は火曜日〜日曜日・祝前日・祝日の11時半〜15時(ラストオーダー14時)、17時〜21時。原則月曜日は定休。 電話:050−5493−4937 本紹介 『精神・発達障害がある人の経済的支援ガイドブック:障害年金と生活保護、遺言、税などのしくみと手続き』  日本福祉大学福祉経営学部医療・福祉マネジメント学科教授で精神保健福祉士でもある青木(あおき)聖久(きよひさ)さんらが、『精神・発達障害がある人の経済的支援ガイドブック:障害年金と生活保護、遺言、税などのしくみと手続き』(中央法規出版刊)を出版した。  精神障害や発達障害などで生活のしづらさを抱えている人の暮らしを支えるために欠かせない経済的基盤の整備に向け、その大きな柱である障害年金などの仕組み、制度との関係、利用する際の留意点や支援者の視点などを、支援の最前線にいる弁護士や税理士、社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー、ソーシャルワーカーといった専門家が執筆。精神・発達障害がある人の暮らしの特徴と経済的支援、経済的支援の理解と実際について解説し、さらにQ&A方式で障害年金をはじめ生活保護、雇用保険、労働者災害補償保険、高額療養費、心身障害者扶養共済制度、遺言、税金と控除まで、その仕組みと手続きの仕方を紹介している。A5判316ページ、3520円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2022年度地方アビリンピック開催予定 7月末〜9月 岩手県、新潟県、徳島県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *  は開催終了 ※全国アビリンピックは11月4日(金)〜11月6日(日)に、千葉県で開催されます。 地方アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 ミニコラム 編集委員のひとこと 第15回 ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は三鴨委員が執筆しています。  ご一読ください。 正直な気持ちと合理的配慮 有限会社まるみ取締役社長 三鴨岐子  私が働く有限会社まるみでは、現在12人の社員と数人の外部スタッフで日々仕事に取り組んでいる。お客さまとの連絡はメールだけで完結するケースも多く、長年お世話になっているお客さまの「声を聴いたことがない」ことも多々ある。メールで注文すれば、正確に商品が届く。なんら問題はない。でも、本当にそうだろうか。それだけでいいのだろうか。いつもモヤモヤした思いが頭をめぐる。  仕事をしていてうれしいことは、お給料をもらうこと、自分なりに納得した仕事に満足できること、正確にミスなく納品できること。加えて、だれかに喜んでもらえることだろう。お客さまから直接お声がけいただく機会はなかなかないが、どんな人たちが働いているかを感じていただきたく、ウェブサイトに全員のイラストを載せている。  昨日、一人の社員から「イラストを削除してほしい」と申し出があった。理由は、「自分の外見が嫌いだから、見たくない」。それは困ります!だって、会社の雰囲気をお伝えするイラストから君を削除したら、存在が消えてしまうではないですか!  それでも、写真に写るのが苦手な人もいるし、感じ方は十人十色。障害があるとかないとか関係ない。困った挙句の折衷案として、彼を感じられる「何か」を描き足すことで話がまとまった。もちろん、描くのはいい出した本人が担当。  お気に入りのイラストなので、削除するのはとても残念だが、自分が「不快に感じた」ことを、正直に話してくれたことはとてもうれしいことだった。さまざまな人が一緒にいれば、感じることはいろいろある。じっと我慢するのではなく、変えてほしいと思うことを発信し、みんなで話し合う。そしてちょうどいい妥協点を見つけていく。合理的配慮とは、そのような文化のことだと感じた。  さて、どんな「何か」が描き足されるのか。楽しみに待とう。 【P32】 掲示板 読者の声 これまで見えていなかったことが見える楽しみを追い求める 合志(こうし)工業団地協同組合 中小企業診断士 吉良山(きらやま)健三(けんぞう)  長年、妻とは働く時間帯が異なっていましたが、最近は一緒に出かけることが多くなりました。ある日のこと、パン屋さんの駐車場で60歳代くらいのご主人さまが奥さまを車から車椅子に移るのを介助されていました。年齢的にも私たちと近そうだったので、心に残る何かを感じるものがありました。  これまで、どちらかが車椅子を使われているご夫婦を見かけてはいましたが、妻を介護することは考えず、妻から介護してもらいたい(もらうもの)と身勝手なことを考えていましたので、気にとめることはありませんでした。  若いころ、身体に障害のあるお子さまのご両親と話をしているなかで「大変ですね」といったことがあります。するとそのご両親は、「子供のおかげで、これまで見えていなかったことが見える楽しみがあります」といわれました。心の貧しさゆえに、大変失礼なことを申し上げたと後悔したことを思い出しました。  パン屋さんでの出来事があってから、介護側と被介護側の立場について考えるようになりました。今は、いずれの立場に置かれたとしても、前述のご両親のように現実をしっかりと受けとめ、これまで気づくことができなかったことを見いだせるような人間性を、醸成したいと思っています。 次号予告 ●この人を訪ねて  和食ダイニング「わっ嘉」(千葉県)のオーナーシェフ・金子淳一郎さんに、ご自身が車いすユーザーになって感じたこと、飲食店を開業した背景や今後の展望などについて、お話をうかがいました。 ●職場ルポ  ワークウェアの企画・製造販売を行う株式会社Asahicho(広島県)を取材。創業80余年、常識にとらわれない柔軟な企画力とチャレンジ精神はどのように生まれるのか。独創的な企業文化と障害者雇用の取組みについてお伝えします。 ●グラビア  「令和4年度障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテスト」入賞作品をご紹介します。 ●編集委員が行く  若林功委員が、筑波技術大学(茨城県)の「障害のある大学生への就職・キャリア支援」に関する取組みを紹介します。 <働く広場の読者のみなさまへ>  2022年9月号は、「令和4 年度障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテスト」入賞作品の公表日の関係から、お手元への到着が通常よりも数日遅れることが見込まれています。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。ご不明な点は、当機構企画部情報公開広報課(電話043-213-6216)までお問い合わせください。 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み  株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。  TEL 03-5484-8821  FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 飯田 剛 編集人−−企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 8月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和4年7月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 トヨタループス株式会社 取締役 清水康史 武庫川女子大学 学生サポート室専門委員 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 准教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林 功 【P33】 障害者雇用のご担当者様必見! 雇用管理に役立つ刊行物を新たに発行しました! 令和4年2月発行! はじめての障害者雇用 〜事業主のためのQ&A〜 こんな方に読んでほしい! ・「障害者雇用はどのように進めればよい?」 ・「障害のある方にどのような仕事を任せればよい?」  本書では、障害者雇用を進めるにあたって直面する職務の選定や労働条件の検討、職場環境の整備などに不安や悩みを抱える企業の方に向けて、具体的な方策や関連情報をQ&A形式で解説しています。  当機構ホームページでも具体的な方策や関連情報を公開しており、全文をダウンロードすることができます。  障害者雇用の経験がない企業の方、障害者雇用に本格的に取り組もうとしている企業の方は、書籍版、Web版ともにご活用ください。 書籍版(A5サイズ) 障害者の労働安全衛生対策ケースブック こんな方に読んでほしい! ・「障害者に配慮した職場改善はどのように進めたらよい?」 ・「他の企業の工夫や取組みを知りたい」  本書では、「障害者の健康に配慮し安心・安全に働けるように取り組んだ職場改善好事例」をテーマに全国から募集した事例を取りまとめ、各事業所で障害のある社員に配慮した職場における安全衛生に関するさまざまな取組みを紹介しています。  各事業所で創意工夫された具体的な事例を多数掲載していますので、社内の労働安全衛生対策の見直しや障害のある社員も健康で安心・安全な環境で働けるような取組みの参考としてぜひご活用ください。  当機構ホームページでも本書のすべての内容をデジタルブック版として掲載していますので、書籍版とともにご活用ください。 書籍版(A5サイズ) 今回紹介している刊行物の他にも障害者雇用に関するマニュアル・好事例集等は、当機構ホームページでも紹介しています。右記QRコードから簡単にアクセスできますので、ぜひご活用ください。 NIVR マニュアル 事業主 検索 https://www.nivr.jeed.go.jp/manual.html QRコードはこちら <お問合せ先> 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 【裏表紙】 職業訓練を受けている障害者の採用をお考えの事業主のみなさまへ 国立職業リハビリテーションセンター(中央障害者職業能力開発校)および国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(吉備高原障害者職業能力開発校)では、障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しており、訓練生の採用をお考えの事業主のみなさまに次のような取組みを行っています。 詳細についてはホームページをご覧ください。 訓練生情報を公開しています! *訓練生(訓練修了者と修了予定者のうち掲載希望者のみ)の情報をホームページで公開しています。 国立職業リハビリテーションセンター(毎月1日、15日に情報更新) 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(毎月15日に情報更新) 企業連携職業訓練を実施しています! *障害者の雇入れを検討している企業との密接な連携により、特注型の訓練メニューによるセンター内での訓練と企業内での訓練を組み合わせた採用・職場定着のための支援を実施しています。 ※このほかにも事業主の方向けの情報を、以下のページに掲載しております。ぜひご覧ください。 国立職業リハビリテーションセンター http://www.nvrcd.ac.jp/employer/index.html 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター https://www.kibireha.jeed.go.jp/business/index.html アビリンピック(障害者技能競技大会) マスコットキャラクター アビリス 在職中の障害のある方を対象とした職業技能のレベルアップのための職業訓練や、疾病、事故等により受障した休職者の方が職場復帰するにあたり必要な技術を身につけるための職業訓練も実施しています。 お問合せ先 国立職業リハビリテーションセンター 職業指導部 職業指導課 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 Tel:04-2995-1207 Fax:04-2995-1277 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 職業評価指導部 職業指導課 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 Tel:0866-56-9002 Fax:0866-56-7636 8月号 令和4年7月25日発行 通巻538号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)