【表紙】 令和4年10月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第541号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2022/11 No.541 職場ルポ 地域に根ざした事業と連携でノーマライゼーションを実践 株式会社テルベ(北海道) グラビア ものづくりをアシスト 〜期待を超える品質への挑戦〜 小林製薬チャレンジド株式会社(富山県) 編集委員が行く 思いは人へ、そして環境へ 〜人と地球にやさしい高品質な製品を提供する〜 株式会社丸和(和歌山県) クローズアップ 職場内の支援体制の課題と対応 第1回 〜職場内の人的な支援体制の構築に向けて〜 「いらっしゃいませ!!美味しい焼きたてのパンはいかがですか?」熊本県・松尾(まつお) 英昭(ひであき)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 11月号 【前頁】 心のアート 木登り大好き カグラタニ (きらぼしアートセンター) 画材:ケント紙、ペン/サイズ:275mm×275mm  ペンでケント紙に描いたモノクロのペン画。  猫は以前から好きだった動物で、好んで描いていたが、シリーズとして昨年から再開した。  毛並みを点描で描いた水彩画などにファンがついて、展示会に出すと必ず“売ってほしい”とオファーがある人気シリーズだ。  この絵の一番下には蟻の行列が描かれている。こちらも昨年から始まった蟻シリーズで、小さな表現にペン画のおもしろさが出ている。あっさりと描いているが、なかなか味わい深い作品に仕上がっている。 (文:一般社団法人岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄) カグラタニ  1971(昭和46)年生まれ、岡山県津山市在住。  幼少期より絵を描くことが好きだった。高校卒業後、電気関係の仕事にたずさわるが、統合失調症を発症する。  2007(平成19)年よりNPO法人の絵画集団で創作活動に熱中。常に自分の興味のあるものにアンテナを張り、形にしていきたいという思いは強く、油絵、水彩画、デザイン、オブジェなど、興味のおもむくままに作品をつくっていく。いくつもの作品が同時進行しており、アトリエには制作途中の絵画が数多くある。江戸時代の画家の伊藤(いとう)若冲(じゃくちゅう)が好きで、虫をよく描く。最近は蟻や猫などをシリーズで描いている。  2021(令和3)年から一般社団法人岡山障害者文化芸術協会の多機能型事業所アート&ジョブセンターの就労継続支援A 型事業所「アートカンパニー」を利用、「きらぼしアートセンター」に所属。作品は岡山県内の病院でホスピタルアートとして展示されている。 協力:一般社団法人岡山障害者文化芸術協会 【もくじ】 障害者と雇用 働く広場 目次 2022年11月号 NO.541 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 木登り大好き 作者:カグラタニ(きらぼしアートセンター) 職場ルポ 2 地域に根ざした事業と連携でノーマライゼーションを実践 株式会社テルベ(北海道) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 8 職場内の支援体制の課題と対応 第1回 〜職場内の人的な支援体制の構築に向けて〜 研究開発レポート 10 「障害者雇用及び雇用継続において事業主が抱える課題の把握方法及び提案型事業主支援の方法に関する研究」の概要 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 JEEDインフォメーション 12 令和4年度 就業支援スキル向上研修のご案内/『働く広場』公開座談会 視覚障害者の雇用は今!〜コロナ禍で変化している雇用環境に対する取組み〜/第42回全国アビリンピック開催のお知らせ グラビア 15 ものづくりをアシスト 〜期待を超える品質への挑戦〜 小林製薬チャレンジド株式会社(富山県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 発達障害と就労 第1回 〜働き続けるために必要なこと〜 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺 副所長 砂川双葉 編集委員が行く 20 思いは人へ、そして環境へ〜人と地球にやさしい高品質な製品を提供する〜 株式会社丸和(和歌山県) 編集委員 諏訪田克彦 省庁だより 26 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 実践的な訓練環境で即戦力を目ざします(国立職業リハビリテーションセンター/国立吉備高原職業リハビリテーションセンター) ※「この人を訪ねて/私のひとこと」は休載します 表紙絵の説明 「ある日、障害のある人の働く姿を追ったテレビ番組を見ました。健気(けなげ)に一生懸命働いている様子にとても感動しました。パン屋さんにかぎらず、いろいろな仕事で障害のある人が活躍することを願い、思いを込めて描きました。音楽を聴いたり絵を描いたりするのが以前から好きで、それを楽しみに毎日を過ごしています」 令和4年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞 ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-7】 職場ルポ 地域に根ざした事業と連携でノーマライゼーションを実践 ―株式会社テルベ(北海道)― 大手コンビニエンスストア、スーパーなどを展開するグループの特例子会社では、年間100トンを超える椎茸栽培を中心に、地域との連携によりノーマライゼーションの実践に取り組んでいる。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社テルベ 〒099-0876 北海道北見市富里222-1 TEL 0157-33-2211 FAX 0157-33-2215 Keyword:身体障害、知的障害、特例子会社、特別支援学校、農業、印刷、ノーマライゼーション POINT 1 北見市の誘致で福祉施設の隣地に拠点。シルバー人材もともに働く 2 グループホームなどの支援機関、家族を含めた4者面談で情報共有 3 企業や地域の小中学校を対象にノーマライゼーションの発信活動 セブン&アイ・ホールディングスの特例子会社  「緑の大地」を意味するフランス語から名づけられたという「株式会社テルベ」(以下、「テルベ」)は、北海道らしい雄大な緑に恵まれた場所にある。1994(平成6)年、当時のイトーヨーカ堂グループ(株式会社イトーヨーカ堂、株式会社セブン‐イレブン・ジャパンなど4社)と北見市の出資により、株式会社イトーヨーカ堂(以下、「ヨーカ堂」)の特例子会社として設立された。その後、2005年に株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下、「セブン&アイHD」)の設立にともない、セブン&アイHDの特例子会社として再認定された。  テルベが北見市に設立されたのは、資本構成の1%をになう北見市の誘致もきっかけの一つだったそうだ。障害者雇用率が未達成だったヨーカ堂が、1991年に「ノーマライゼーション推進プロジェクト」を発足させ、各店舗での直接雇用拡大と並行して特例子会社の設立を検討していたところだった。テルベは、地元の「社会福祉法人萌木(もえぎ)の会(当時の共同作業所「工房とみさと」)」(以下、「萌木の会」)が運営する福祉施設の利用者が一般就労できる受け皿としても期待され、隣地に建てられた。  事業所は現在、本社がある北海道北見市と東京都千代田区の2カ所。北見事業所は従業員34人のうち障害のある従業員が19人(身体障害6人、知的障害13人)、コピーセンターを運営する東京事業所は従業員6人(うち知的障害1人)で、グループ5社をグループ適用した障害者雇用率は2.98%(2022〈令和4〉年6月1日現在)だという。また、公益社団法人北見市シルバー人材センターの高齢者12人も一緒に働いている。ヨーカ堂から出向し、テルベ総務部のマネジャーを務める小林(こばやし)達也(たつや)さんは、「私たちは設立以来、ノーマライゼーションの実践企業として、ハンディのある人もない人も、若い人も高齢者も、それぞれの特色を活かして就業できる職場づくりを目ざしてきました」と説明する。テルベは2017年に公益社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(現・公益社団法人全国障害者雇用事業所協会)の「障害者活躍企業」第1号に認証され、さらに、2020年には若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況などが優良な中小企業として、厚生労働省の「ユースエール認定企業」にも認定されている。  テルベで手がけているのは、椎茸(しいたけ)事業と印刷事業の二つ。ちなみに北海道は、生椎茸生産量が徳島県に次いで全国2位の特産地でもある(※)。隣地の萌木の会と連携しながら、事業と雇用の安定を図ってきた。 特別支援学校の生徒を対象にインターンシップ  テルベでは設立時、萌木の会の利用者も含め障害のある従業員が20人近く入社し、その後は退職者が出るたびに採用してきた。地域の特別支援学校とも連携し、採用予定の有無にかかわらず職場体験・実習(インターンシップ)を毎年実施している。小林さんが説明する。  「まず本人に、何のために働くのかを含め、一般就労に対する意識を確認します。6~8週間の実習を通して、一つひとつの作業の理解、わからないことを質問する姿勢、基本的なマナーの実践もうながします。無理をして一般就労を目ざし、あとで本人がつらくならないよう見きわめることも大事です」  採用においては「グループホームへの入居」も重視している。地域の特別支援学校には道内から集まった寮生活者が多いため、就職後いきなり一人暮らしを始めるのではなく、グループホームで日常生活の支援を受けながら経済的・精神的自立につなげてもらう。現在は北見市内のグループホーム複数カ所から計8人が通うほか、今年7月からはグループホームを卒業して一人暮らしを始めた従業員も1人いるそうだ。 半年ごとに4者面談  入社後は、特に知的障害のある従業員一人ひとりに合わせたOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)を行いながら、ナチュラルサポートを図る。スムーズで細やかな支援に欠かせないのが、月1回の定着会議と、半年ごとに開催する4者面談だ。  定着会議は、テルベの管理職9人とセブン&アイHDの障害者雇用担当者のほか、東京駐在の代表取締役社長の藤本(ふじもと)圭子(けいこ)さんもWEB会議システムで参加し、各従業員の情報共有や配慮事項の確認などを行う。会議参加者11人中7人が障害者職業生活相談員で、うち総務部のアシスタントマネジャーを務める大石(おおいし)静(しずか)さんは、企業在籍型ジョブコーチと産業カウンセラーの資格も持っている。  4者面談は、テルベ側と支援機関(グループホームや就労移行支援事業所)、家族・親族、そして本人(ただし後半から参加)が一堂に会する。前半は、仕事面と生活面での状況報告や課題・悩みを3者で共有し、後半では、本人の希望や目標を確認しながら具体的な方針なども設定。大石さんは、「グループホームでの人間関係や私生活が業務に影響するケースも少なくないので、関係者が顔を合わせた意見交換はとても重要です。また家族にとっては、離れて暮らす本人の成長ぶりを知る貴重な機会となっているようです」と話す。 年間100トン超の椎茸生産  椎茸事業は、栽培から収穫、出荷までが一貫して北見事業所で行われている。本館と屋根つき廊下でつながっている冷暖房完備の栽培用ハウスは3棟。1棟(約250u)あたり2万個の菌床で育てた椎茸の生産量は、年間で計100トン超にものぼるという。毎日午前中に収穫された椎茸は、本館内の作業所に運ばれ、人の手でサイズや品質などにより10種に選別。パッキング加工され当日のうちに出荷される。  商品は、北海道内や首都圏のイトーヨーカドー、セブン‐イレブン各店舗のほか、青果市場を経由して北見市内のスーパーなどでも販売。2018年には、テルベの椎茸ブランド「てるべえ」の名前がついたキャラクターつきのパッケージデザインを導入した。小林さんは、「幅広い層のお客さまに認知いただけるよう、かわいらしいデザインにしました。自社ブランドを立ち上げたことで、責任と誇りをもって栽培、収穫することにつながっています」と話す。  規格外となったものはスライスして乾燥椎茸として商品化し、一般販売だけでなく、グループ会社の社員食堂や小中学校の給食用に卸したり、北見市ふるさと納税返礼品に登録したりしている。  2020年には、椎茸の菌床ブロック製造もスタートした。栽培ハウスの近くに作業棟を新設し、作業は萌木の会の就労継続支援B型事業所に委託している。北海道産のおが粉などでつくられた菌床ブロックは、2回の収穫後、萌木の会所有の畑で肥料として再利用されているそうだ。 「自分ができるようになれば」  椎茸事業部では、知的障害のある8人と聴覚障害のある3人、内部障害のある1人の従業員が、シルバー人材センターの高齢者12人とともに働いている。  さっそく栽培ハウスを見学させてもらった。7段の棚に菌床ブロックがびっしり並ぶなか、椎茸の間引きが行われていた。作業中の1人、櫻田(さくらだ)啓(ひろし)さん(53歳)は、勤続27年になるベテランだ。道内の特別支援学校を卒業後、木工会社を経て福祉施設で内職などをしていた櫻田さんは、「テルベでは毎日みんなと会話しながら仕事ができるのがうれしいです。体力を使う作業も多いのですが、持病の頭痛や腰痛にも気をつけながら、定年ぐらいまで元気に働き続けられるよう、がんばりたいです」と話す。  櫻田さんたちを指導するシニア社員の阿部(あべ)浩道(ひろみち)さんは、テルベ設立時からかかわり、定年後のいまは再雇用の社員として働いている。職場では「本人の得意・不得意をよく見ながら、一番力を発揮しやすい方法で作業できるよう工夫しています。ほかに気をつけているのは、全員に公平に仕事を分担させることです。仕事内容の違いなどをめぐって悩まないよう、一人ひとりへの声かけも大事にしています」という。  収穫された椎茸を選別・包装するのは本館内の作業フロアだ。大量の椎茸に一つずつ専用リングをあててサイズを測り、壁に貼ってあるポスターの写真を参考にしながら3段階の品質ごとに分けていく。  包装された商品を、手早く出荷用のかごに詰めていたのは、椎茸事業部のアシスタントマネジャーを務める米田(よねた)二無(ふたむ)さん(46歳)。以前は別の会社に勤めていたが、心臓の病気で内部障害となり、2015年にテルベに入社。すでに聴覚障害のある同僚3人がいたため、指導する立場として手話を覚える必要があり、「北見市の手話講座なども受けて、簡単な会話はできるようになりました」と笑顔で話す。日ごろ現場で指示するときは、全員が理解できるようわかりやすい言葉遣いを意識しているという。  最近うれしいこともあったそうだ。勤続10年の女性従業員が、エア噴射機で椎茸をきれいにする作業を「やってみたいです」と申し出てきた。米田さんは「むずかしいかもしれないと思っていたのですが、3カ月ほど練習をくり返して覚えてもらい、とうとう一人でも作業できるようになりました」と喜ぶ。本人が申し出た理由について米田さんは、「私の忙しい姿を見て、『自分も作業ができれば楽になるのでは』と思ったようです。その話を聞いて驚きつつもうれしくなりました」と教えてくれた。 本格的な印刷事業  椎茸事業とともに当初からスタートさせている印刷事業は、グループ会社内で使う帳票類やチラシ、ポスター、名刺、小冊子などを手がけるほか、北見市内の企業や施設、学校などからも注文を受けている。  現場は、椎茸の出荷作業が行われているフロアの隣。二つに分かれた広い部屋には、製本用機器からカラーデジタル複合機、本格的なオフセット印刷機まで揃う。現場を取り仕切るのは、印刷事業部のアシスタントマネジャーを務める川口(かわぐち)透意(とうい)さん。「私自身、入社時は先輩従業員のみなさんから教えてもらったことも多く、障害の有無はあまり意識していません。ただ体調などは本人が気づかないこともあるので、休憩時間に軽く話しながら様子を確認しています」と話す。指導する立場になってから心がけていることは、「(障害のある従業員に)同僚と比べることをさせない」、「作業のなかでミッションを達成できなかったときは、相手の目線に立って指導する」ことだそうだ。  デザイン制作などを担当する車いすユーザーの井下(いのした)正幸(まさゆき)さん(54歳)は、テルベ設立時に入社した。もともと木材会社で働いていた井下さんは、通勤中に交通事故にあい脊髄損傷を負ったそうだ。その後は不定期にパソコンなどを使った仕事をしていたが、テルベのことを市報で知り応募。「地元にテルベのような会社ができたのは幸運でした」とふり返る。入社後は、同僚に教わりながらデザインの仕事もできるようになったという。「職場内は車いすでも非常に動きやすく、和気あいあいとした雰囲気も含め、ハード・ソフトの両面でバリアフリーだなと感じています」と話す。  特別支援学校在学中に職場実習を経験し、2017年に入社した富田(とみた)雪乃(ゆきの)さん(24歳)は、最初は椎茸栽培にたずさわっていたが「出荷に間に合うよう収穫できるか毎日ドキドキでした」と明かす。いまは印刷事業部でさまざまな補助業務を担当し、「自分のペースで進められるので、合っていると感じます」という。今後について聞くと「グループホームの生活は楽しいですが、社内の先輩のように一人暮らしを目ざして貯金しています」と話してくれた。  その先輩というのが2013年入社の米澤(よねざわ)利昭(としあき)さん(30歳)だ。この9年間で順調にステップアップしてきたという。まず印刷の断裁作業からスタートし、入社6年目に、操作が複雑なオフセット印刷機の仕事を担当することになった。「自分に務まるのか不安でしたが、社員さんに教わり、なんとかできるようになりました」と話す。2019年にはテルベから初めて地方アビリンピック北海道大会のオフィスアシスタント種目に挑戦。同年、運転免許も取得しマイカー通勤になった。「どれも、職場の上司にすすめられたからこそ挑戦できました。少しずつ自信もついてきたと思います」と米澤さん。  8年目にはパートタイムの有期雇用から契約社員に登用され、10年目の今年7月からは念願の一人暮らしをスタート。「地元の公営住宅の抽選に何度も応募しました。自炊や家事は苦労もありますね。さびしくなったら、仕事を終えた後に差し入れを持ってグループホームに立ち寄ります」と笑顔で語ってくれた。 柔軟な働き方で高齢化にも対応  設立28年を迎えるテルベではいま、高齢化する従業員への対応も大きな課題のひとつになっている。「加齢により生産性は下がりますが、安易に事務や軽作業に変えるのも、本人のモチベーション低下の誘因になりかねません」と小林さん。  例えば知的障害のある50代の男性従業員は、30代で病気を患い、運動療法も兼ねて、軽作業から栽培ハウスでの作業に転向した。主治医からの「栽培ハウスで体を動かしているからこそ持病の悪化を防いでいる」とのアドバイスもあり、ハウスでの作業を続けている。  また別の知的障害のある50代の女性従業員は、担当する印刷業務が大好きで意欲的だが、数年前に体調を崩し入院。その後も体力が追いつかず、週末になると起き上がれなくなる状態が続いた。そこで水曜日も休日にして週4日勤務にしたところ不調がなくなった。大石さんは「元気そうな様子に周囲から『週5日に戻しても』という声が上がりますが、油断は禁物です。慎重に様子を見ながら、安定して働ける環境を整えることが大切です」と話す。一方で時折、椎茸事業の“応援”にも出向いてもらっている。「同僚の助けになっているということが、本人にとって新たなモチベーションになっているようです」 ノーマライゼーションの浸透に向けて  テルベでは、外部に向けたノーマライゼーション推進にも地道に取り組んできた。北見事業所では、年間500人超の見学者受入れのほか、企業や学校への出張講演などを実施。障害のある従業員が、テルベで働くことや社会生活の体験などを語りながら、ノーマライゼーションのあり方を伝えている。  セブン&アイHDの従業員向けには、広報紙「テルベ通信」を2009年から毎月発行している。最初のころは、北海道の美しい風景写真とともにテルベの存在を知ってもらう内容だったそうだが、近年は、従業員の働きぶりや事業内容などを積極的に紹介。その効果も出ていると大石さんが話す。  「創刊100号記念で、感想を送ってくれた従業員へ椎茸をプレゼントする企画を行いました。すると広島にいる聴覚障害のある従業員からメッセージが届き、それを機に『どうしたらノーマライゼーションが浸透するだろうか』と意見交換が始まりました。セブン&アイHDの障害者雇用担当者も加わり、どう進めていくか検討する小さな一歩をふみ出しています」  テルベの規模は設立時から大きく変わっていない。逆にここ数年は燃料高騰やデジタル化の波で、事業と雇用の維持が優先課題でもある。そのうえで、今後のテルベの使命について、小林さんは、「もともとテルベは障害者雇用率の達成が主目的ではなく、グループ企業にノーマライゼーションの理念を浸透させるためのノウハウなどを研究するために設立されたという経緯もあります。テルベのやり方をそのままグループ会社の直接雇用で実践するのは条件によってむずかしい部分もありますが、職場での工夫や改善点など、アドバイスできることも少なくないと思っています。30年近いテルベでの経験を活かした連携と発信に、さらに力を入れていくつもりです」と語ってくれた。 ※農林水産省「令和3年 特用林産基礎資料(特用林産物生産統計調査)」 写真のキャプション 総務部マネジャーで障害者職業生活相談員の小林達也さん 総務部アシスタントマネジャーの大石静さん 室温や湿度が調整可能な椎茸栽培用のハウス 包装された椎茸。「てるべえ」が描かれたシールが貼られている 椎茸は最適な栽培環境で育つ 選別と包装作業の様子 椎茸事業部で働く櫻田啓さん 椎茸事業部で指導にあたる阿部浩道さん 椎茸の選別などが行われる作業フロア 椎茸の間引きを行う櫻田さん 椎茸事業部アシスタントマネジャーの米田二無さん 椎茸を出荷用のかごに詰める米田さん 印刷事業部アシスタントマネジャーの川口透意さん 印刷事業部でデザイン制作などを担当する井下正幸さん パソコンで印刷物のデザインを行う井下さん 印刷事業部で働く富田雪乃さん 印刷事業部で働く米澤利昭さん オフセット印刷機の調整を行う米澤さん 富田さんは印刷物の梱包作業などを担当している 【P8-9】 クローズアップ 職場内の支援体制の課題と対応 第1回 〜職場内の人的な支援体制の構築に向けて〜  障害者雇用において、障害者が働きやすい職場環境づくり(物理的環境の整備と人的な支援体制の構築)は欠かせません。なかでも重要な「職場内の人的な支援体制」を構築するためには、どのようにすればよいのでしょうか。  この連載では働く障害者を支える支援体制づくりについてご紹介します。 障害者雇用における職場内の人的な支援体制構築の重要性  障害者雇用に取り組む企業にとって、障害のある社員の採用から職場定着まで、重要になるのが「職場内の人的な支援体制の構築」です。これから障害者雇用に取り組もうというとき、職場の施設や設備改善といった、ハード面に注目しがちですが、むしろそれ以上に、障害のある社員を受け入れる側の社員の意識づけがポイントになります。受け入れ部署の社員の理解はもちろんですが、それ以外の社員も含め、組織全体で意識することが、障害のある社員が働きやすく、定着する職場づくりへとつながっていきます。 ポイント @ 障害者雇用に適した組織づくり  障害のある社員の働きやすさは、障害に理解のある上司や同僚、人事担当者や有資格者といった「職場内の人的な支援体制」が大きく影響します(9ページ図)。障害のある社員が必要とするサポートや適切な配慮を、職場の社員全員が自然にできること、いわゆる「ナチュラルサポート」体制の構築が目ざすべき状態であり、障害のある社員が働きやすい職場であるといえます。  支援や配慮といっても、障害のある社員を特別扱いするのではなく、障害特性や仕事の状況に応じて、適切な配慮が自然にできる職場を目ざして、障害についての基礎的な知識の習得や障害者雇用の意義の理解など、社員全体の意識の形成や職場の風土づくりが大切です。  それによって、障害者雇用についての組織全体の意識が底上げされ、受け入れ部署や上司、同僚といった働く仲間としての自然なサポートができる体制へとつながります。 ポイント A ポジションごとの役割分担と体制づくり  全体的な意識の底上げとともに、障害のある社員のサポート体制を機能させるためには、担当者を絞る必要もあります。障害のある社員の日々の業務について、仕事の指示や職場での困りごとの相談などは、状況や仕事内容を理解している上司や同僚がサポートにあたる場合も多いでしょう。障害のある社員が、だれの指示をあおげばよいか、だれに相談するのがよいのか、不安を払拭するためにも、身近で話しやすいメンター的な担当者≠決めておくことは有効です。  また、障害者雇用全般については総務や人事担当者の対応が必要なこともあります。制度利用や労働条件、就業規則、支援機関や医療機関との連携においては、これらの担当者が窓口になることが多いでしょう。 ポイント B 働く障害者を支える職場内の有資格者  職場内の支援者として、障害者職業生活相談員や企業在籍型ジョブコーチといった雇用支援に関わる資格を持つ有資格者の方がいる場合もあります。また、障害のある社員の支援を続けるうちに、支援技術について興昧をもったり、関連のスキルアップ講習を受けたりして、社員が支援に関する専門の資格を取得することもあります。そのほか、独自に精神保健福祉士や公認心理師などの精神保健福祉に関連する資格を取得することもあります。  障害のある社員を複数人雇用する会社では、有資格者を、支援業務の専任として雇用していることもあります。 ポイント C 地域障害者職業センターの活用  障害者雇用での課題については「地域障害者職業センター」(※)など、専門の支援機関を活用することをおすすめします。各都道府県にあり、障害者職業カウンセラーや配置型ジョブコーチなどの専門家に、支援体制づくりの相談などができます。また、ハローワークや障害者就業・生活支援センターといった支援機関とも連携しており、専門的なアドバイスを受けたり、社員研修の講師を派遣してもらったりすることもできます。さまざまな業種・事業規模の企業の事例やノウハウが蓄積されていますので、そうした情報に触れることができることも特徴です。相談会、研修、ワークショップなどがあるので、ぜひ活用してみてください。 支援体制の構築において企業が直面しやすい課題とは  人員体制に余裕のない企業では、障害のある社員への支援が特定の者だけに集中して、「その人にまかせておけばよい」といった雰囲気になってしまう場合もあります。そうなると、その担当者の負担は増すばかりで、ストレスなどで体調を崩すことになりかねません。支援は職場全体、組織全体で取り組む姿勢が欠かせません。 【代表的な課題】 ・相談できる相手がいないため、孤立しやすい ・本来業務と支援業務が重なり負担が大きくなっている ・専門機関などをどう利用してよいかわからないなど、外部の支援機関との連携不足  昨今では、企業内に「ダイバーシティ推進担当」の部署などが設置されていて、多様な属性をもつ社員への対応やだれもが働きやすい職場づくりに取り組む一環で、障害者雇用全般についての対応も行うケースが見受けられます。  次回以降は、職場内の支援体制構築に向けた、さまざまな企業の取組みの事例を紹介します。 ※ 詳しくは当機構ホームページをご覧ください。https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer01.html 支援体制図 職場内 有資格者 企業在籍型職場適応援助者 (企業在籍型ジョブコーチ) 障害者職業生活相談員 支援 支援 障害のある社員Aさん 支援 上司・同僚 支援 連携 総務・人事担当者 企業全体を支援 外部支援機関 支援機関スタッフ 【監修】 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構中央障害者雇用情報センター 障害者雇用に取り組む企業・組織の課題に応じて、職場の支援体制の構築に向けてさまざまなサポートを行っています。ぜひご活用ください。 〒130-0022 東京都墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 電話:03-5638-2792/FAX:03-5638-2282 メールアドレス:syougai-soudan@jeed.go.jp 開庁時間:月曜日〜金曜日、8時45分〜17時 ※土日祝日および12 月29 日から1月3日までは休み 【P10-11】 研究開発レポート 「障害者雇用及び雇用継続において事業主が抱える課題の把握方法及び提案型事業主支援の方法に関する研究」の概要 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 1 はじめに  2016(平成28)年4月から、雇用の分野における障害者に対する差別の禁止および合理的配慮の提供が義務づけられ、また、2018(平成30)年には精神障害者の雇用義務化、2021(令和3)年には法定雇用率が2.3%に引き上げられる等、障害者雇用に向けた事業主のさらなる取組みが求められているなか、支援機関には、個別の事業主の支援ニーズや課題を把握・共有したうえで、改善方策の検討・提案を行っていく提案型の事業主支援が求められてきています。そのため、本調査研究では、地域障害者職業センター(以下、「地域センター」)における提案型の事業主支援等での活用を意図したツールを開発するとともに、個別の事業主のニーズや課題に応じて作成した、事業主の障害者雇用の意思決定と企業内で障害者雇用を支える人材育成を図るための研修プログラムを活用した提案型事業主支援の試行に取り組むこととしました。本稿では、その一部(本調査研究を通じて作成した「障害者雇用のためのサポートツール」)について紹介します。 2 地域センターの実態をふまえたツールの作成について  ツールは、「これから障害者雇用に取り組む事業主やすでに取り組んでいる事業主」を対象に、「事業主が主体となって障害者雇用に向けた取組みを検討していただくなかで、地域センターの障害者職業カウンセラーと相談しながら」活用するためのツールとして作成しました。  ツールの作成プロセスは、次の通りです。 ●地域センターへのアンケート調査結果から障害者雇用に関する事業主の抱える課題を抽出するとともに、既存の資料等も参考にしながら障害者雇用の課題を円滑に把握するための「障害者雇用のための取組チェックポイント一覧」を試作 ●障害者を支援する機関の専門家から試作に対する助言を得て内容を修正 ●実際の事業主支援で試用し、企業の人事担当者からの意見をふまえてさらに修正を加え、完成  こうして完成したツールが、@「障害者雇用のためのサポートツール」(図1)とA「障害者雇用のためのサポートツール チェックポイント別  参考資料」(図2)です。@は障害者雇用を円滑に進めるためのヒントとなるような七つのチェックポイントを「障害者雇用のための取組 チェックポイント一覧(A3サイズ両面1枚)」としてまとめたもので、Aは@の七つの各チェックポイントについて、その背景等をわかりやすく説明した冊子です。  整理した七つのチェックポイントは、次の通りです。 ●経営者は障害者雇用の方針を広く社内に示していますか ●障害者雇用が社内に理解されていますか ●職務内容、配属部署は決まっていますか ●募集・採用の方法は決まっていますか ●上司や同僚は、障害者への関わり方を理解していますか ●社内のサポート体制はありますか ●障害者雇用をサポートする支援機関を利用していますか  ツール@は、事業主と支援者が同じツールをもとに話し合いながら課題を把握することができるよう、ポイントを押さえたわかりやすい言葉でチェックポイントを整理しており、七つのチェックポイントを上から下のように順序立てて一列に配置するのではなく、事業主の状況に応じて取り組みやすいものから始めることができるよう円環状に配置したことが特徴です。また、障害者の職務創出、採用や配置など、障害者の受け入れにあたって、事業主が悩みを抱えやすいポイントを整理するとともに、初めての障害者雇用にとどまらず、その後の職場定着も見すえて、障害者の仕事に対するモチベーションの向上、スキルアップ、戦力化を図る事業主の取組みを意識した内容としています。  ツール@をもとにヒアリングなどを行う際に、支援者がツールAによりチェックポイントの背景やより詳しい内容を事業主に情報提供したり、ツールAを事業主自身にお読みいただくことで、支援者の知識や経験に関わらず、ある程度、均質的な情報を収集することができ、また、事業主の課題を可視化して関係者間で課題を共有できるものと考えています。特に、初めて障害者雇用に取り組む事業主の方には、何から取り組めばよいのかを検討するための参考資料として活用いただけますと幸いです。 3 まとめ  本調査研究で作成したツールは、事業主支援の有効な手段であり、一定程度、事業主支援の質を担保するものとして作成していますが、実際の支援現場での活用を通じて、それぞれの実情に応じてカスタマイズを図っていただくなど、自由にご使用いただければと考えています。  障害者雇用における事業主支援の重要性が増し、多様な事業主のニーズや課題への対応が求められるなかで、本調査研究の成果が、今後の事業主支援の一助となれば幸いです。  本レポートでは紙幅の都合で触れなかった「個別の事業主のニーズ・課題に応じて作成した研修プログラムを活用した提案型事業主支援の試行」の内容を含め、本レポートのもととなる「調査研究報告書No.163」および作成したツールは、障害者職業総合センターのホームページからダウンロードしていただけます。 「調査研究報告書No.163」https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku163.html 「障害者雇用のためのサポートツール」https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai74.html ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図1 障害者雇用のためのサポートツール 図2 チェックポイント別 参考資料 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 受講料無料 令和4年度就業支援スキル向上研修のご案内  当機構では、労働、福祉、医療、教育等の分野で、おおむね3年以上の実務経験がある就業支援担当者の方を対象に、障害別(精神障害、発達障害、高次脳機能障害)の就業支援技術のさらなる向上や障害者の就業支援に必要なヒューマンスキルの向上を図るための「就業支援スキル向上研修」を実施しています。みなさまの受講を心よりお待ちしております。 内容 全コース共通講座 ■職業リハビリテーションにおけるヒューマンスキル (対象者と協同的な関係を築くスキルについての講義・演習) ■職業リハビリテーションに関する調査・研究の最新情報 (障害者職業総合センターにおける最新の調査・研究に関する講義) コース別講座 精神・発達・高次脳機能障害の3コースから選べます! ■就業支援の実際 (職業準備性の向上や職場定着に関する支援技法についての講義・演習) ■ケーススタディ (受講者の支援事例をもとにした事例検討)  ※演習や意見交換が中心となります。 対象者  次の@〜Bのすべてを満たす方が対象となります。  @労働、福祉、医療、教育等の関係機関の職員であり、障害者の就業支援の実務経験がおおむね3年以上の方  A希望するコースの障害種別の方に対する就業支援経験があり、当該障害種別の就業支援事例を提出できる方(事例提出必須)  B3日間のすべての課程を履修できる方 日程 令和5年1月18日(水)〜1月20日(金) 形式 オンライン形式 定員 精神障害コース25人、発達障害コース25人 高次脳機能障害コース15人 計65人 お申込み ◎申込方法  「就業支援スキル向上研修受講申込書」に必要事項を入力し、申込受付期間内にメールでお申し込みください。 ◎受講申込書・カリキュラム  当機構ホームページからダウンロードできます。 ◎申込受付期間  令和4年10月26日(水)〜12月2日(金) ※定員を超えた場合は、当初の予定より早く受付を締め切る場合があります。また、複数名の申込みをされた機関に対して受講者数の調整させていただくことがあります。あらかじめご了承ください。 お申込み・お問合せ先 職業リハビリテーション部 研修課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp URL:https://www.jeed.go.jp https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/skillup_seminar.html 就業支援スキル向上研修 検索 専門的! 実践的! 最新の調査研究に関する情報提供 ヒューマンスキルに関する講義・演習 障害別コースの支援技法演習やケーススタディ ステップアップ方式の研修体制となっています! ステップ1 初めて担当する方 就業支援基礎研修 就業支援の基礎作り 全国の地域障害者職業センター ステップ2 2年以上実務経験のある方 就業支援実践研修 アセスメント力と課題解決力の向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害コース 全国14エリアの地域障害者職業センター ステップ3 3年以上実務経験のある方 就業支援スキル向上研修 障害特性に応じた支援スキルの向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害コース 障害者職業総合センター 就業支援 課題別 セミナー 新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上 障害者職業総合センター 企業人事等担当者向け入場無料 『働く広場』公開座談会 視覚障害者の雇用は今! 〜コロナ禍で変化している雇用環境に対する取組み〜  昨年は、コロナ禍で生まれた新しい働き方を含め、今後の障害者雇用の可能性について考えました。  今年はその続編として、コロナ禍が視覚障害者の雇用環境に与えた影響について、日々行っている支援や雇用継続のために取り組んでいる企業等をパネリストに迎え、雇用促進・継続についてお話しいただきます。  終了後、視覚障害者用の就労支援機器の説明会を行いますので、あわせてご参加ください。 日時:2022年12月14日(水)14:00〜16:00 《座長》 石黒(いしぐろ)秀仁(ひでひと) JEED東京支部 東京障害者職業センター 所長 《パネリスト》(敬称略) 松本(まつもと)知之(ともゆき) アビームコンサルティング株式会社 人事総務グループ 人事ユニット マネージャー 福王(ふくおう)さやか アビームコンサルティング株式会社 人事総務グループ 人事ユニット シニアアソシエイト 井上(いのうえ)英子(えいこ) 視覚障害者就労生涯学習支援センター 代表 工藤(くどう)正一(しょういち) 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 総合相談室長 長谷川(はせがわ)秀樹(ひでき) 国立職業リハビリテーションセンター 職業訓練部訓練第三課 上席職業訓練指導員 《就労支援機器説明会》 視覚障害者用就労支援機器の説明会を行います(16:00〜16:30) 会場:東京障害者職業センター 2階会議室 東京都台東区東上野4-27-3 上野トーセイビル2階 JR山手線上野駅入谷口から徒歩5 分、正面玄関口(エレベーター有)から徒歩10分 東京メトロ日比谷線上野駅出口1から徒歩10分 定員:30名(企業人事等担当者の方) *入場には事前申込みが必要です。下記の内容をご記入のうえ、FAXまたはメールでお申し込みください。FAX番号、メールアドレスは間違いがないようご確認のうえ、送信してください。 *申込人数が定員を超えた等により、やむをえずご来場をお断りする方にはその旨のご連絡をいたします。ご来場いただける方には開催日のおおむね2週間前までに参加に係る諸注意事項をご連絡いたします。 *新型コロナウイルス感染症拡大等の影響により、状況に応じて変更または中止をする可能性がありますので、あらかじめご了承ください。 申込締切:2022年11月18日(金) (FAX:043-213-6556/E-mail:hiroba@jeed.go.jp) ご氏名(ふりがな) (              ) E-mail Tel Fax (ふりがな) ご所属 (企業名、所属部署など) 終了後の就労支援機器説明会 参加・不参加 【事前アンケート】視覚障害者の雇用に関して、ご意見や当日聞いてみたいことなどをお書きください。 ※障害により、配慮が必要な方はあらかじめお申し出ください。 ※この申込書により取得した個人情報は、当機構において適正に管理し、公開座談会の運営目的以外に使用することはありません。 ◎お申込み・お問合せ 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 企画部 情報公開広報課 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL:043-213-6200 FAX:043-213-6556 E-mail:hiroba@jeed.go.jp アビリンピック マスコットキャラクター アビリス WEB配信はこちら! 「Abilympics.jp」 −アビリンピック− 第42回全国障害者技能競技大会 同時開催イベント 障害者ワークフェア2022 〜働く障害者を応援する仲間の集い〜 入場無料 2022 11/5(土) 幕張メッセ 展示ホール9〜11 (千葉県千葉市美浜区中瀬2-1) 11/4(金) 開会式※ 11/5(土) 技能競技・障害者ワークフェア 11/6(日) 閉会式(成績発表) ※WEB 配信のみを予定。会場に参加いただく形式では実施しません。 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 千葉県PRマスコットキャラクター チーバくん 第A2688-1号 【P15-18】 グラビア ものづくりをアシスト 〜期待を超える品質への挑戦〜 小林製薬チャレンジド株式会社 (富山県) 取材先データ 小林製薬チャレンジド株式会社 〒939-2295 富山県富山市中大久保100-1(富山小林製薬株式会社内) TEL 076-415-3436 FAX 076-415-2727 写真・文:官野 貴  「小林製薬チャレンジド株式会社」(以下、「チャレンジド」)は、小林製薬グループの特例子会社(親会社は小林製薬株式会社)だ。2012(平成24)年に、富山県富山市で初めて特例子会社の認定を受けた。同グループ会社の「富山小林製薬株式会社」内に置かれたチャレンジドの本社では、障害のある社員23人が工場内の清掃や軽作業などの業務に就いている。  製品の品質管理をになうQC試験室では、品質検査に使用されたビーカーやピペット、保管容器などの洗浄作業をチャレンジドの社員が行っている。洗浄を依頼する試験室の社員が洗浄方法が記載されたカードを添付するなど、正しい作業方法がわかるように工夫している。入社6年目で、精神障害のある藤井(ふじい)久也(ひさや)さん(51歳)は、「働き始めた当初、洗浄作業は苦手でしたが、いまでは時間を忘れるほど夢中になって行っています。なおいっそう、仕事を好きになることが目標です」という。工場で使用される作業服や備品の発注、在庫管理なども藤井さんの仕事だ。  そのほか、チャレンジドの社員はさまざまな業務に就いている。生産準備作業では、原材料を指示書に従って倉庫から取り出し、パレットに積み込む。また清掃業務では、工場内の食堂やトイレなどの共有スペースの清掃を行っている。このように同社の社員が親会社のものづくりをアシストしているのだ。  作業は班単位で行われ、各業務をローテーションすることで、不公平感の払拭にもつながっている。また作業上の疑問点などは、その都度、班長に相談し解決していくという。また、日報でのふり返りを行うことで、同じ失敗をくり返さないように配慮している。  チャレンジドでは、全国の4事業所で46人の障害のある社員が活躍している。また、1年ほど前、「小林製薬中央研究所」(大阪府)内に新事業所を立ち上げるなど、業務拡大への挑戦も続いている。 写真のキャプション QC試験室での、ろ紙折り作業。角や折り目をつぶさないように作業する 洗浄する容器とともに、洗浄方法が記載されたカードも置かれている 器具の洗浄作業。壊れやすいものも多いため、細心の注意を払う エアコンフィルターの洗浄作業。フィルターを立てるための器具を自社設計し、作業効率が上がった 事務作業をする藤井久也さん。発注ミスなどを防ぐため、ダブルチェックを心がけているという 製品解体業務では、試作品や在庫品などの分別廃棄を行う 生産準備作業の1 シーン。固化した粉体材料を粗砕機に通し、ほぐす 材料をパレットに積み込み、ハンドリフトを使って工場へと運び込む 知的障害のある社員が、フォークリフトの免許を取得し活躍している 工場廊下のモップがけ。職場をきれいに保つ 【P19】 エッセイ 発達障害と就労 第1回 〜働き続けるために必要なこと〜 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺 副所長 砂川双葉 砂川双葉(すながわ ふたば) 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺・副所長。社会福祉士、介護福祉士。2013(平成25)年、特定非営利活動法人クロスジョブに入社。就労支援員としておもに発達障害のある人の支援、障害雇用を行う企業の支援を行う。2021(令和3)年、当機構の第29 回職業リハビリテーション研究・実践発表会で、就労移行支援事業所におけるASD(※1)者のアセスメントと支援についての実践報告を発表している。 はじめに  厚生労働省が公表した、2021(令和3)年度のハローワークを通じた障害者の就職件数は9万6180件であり、2020年度の8万9840件と比べ7・1%増となった(※2)。コロナ禍で厳しい雇用情勢が続いているが、働きたいという希望を持ち続けている人の多さがうかがえる。また、2018(平成30)年4月に改正障害者総合支援法が施行され、新たな障害福祉サービスとして「就労定着支援」が開始となり、就職件数だけでなく、働き続けるための支援、サポート体制の構築が必須課題になっている。定着支援の取組みについてはいろいろと議論されているが、このエッセイでは発達障害のある人が就職する前に取り組むべき、働き続けるために必要な対応について考えていきたい。 実体験とふり返り  発達障害は先天性の脳機能障害であり、外見からはその人の強みや弱み、日ごろから困っていることなどを把握することがむずかしい。それは周囲の人間だけでなく、発達障害のある人自身も気づきにくいことではないだろうか。支援の現場にいると、発達障害と診断されたとしても何が根拠になっているのか、いまひとつ理解できていない人に出会うことも多い。また、本人の理解が不十分な場合、「自分は努力をしているのに周りからの期待値に届かない」、「なぜか人間関係がうまくいかない」などの問題が生じやすい。これらにより鬱病(うつびょう)やほかの二次障害などにつながることは避けたいところだ。  彼らに対して支援者ができることは何か。特に就労移行支援事業所の場合にもっとも大切にしたいことは、本人の得手・不得手の整理である。作業プログラムの実体験を通じて、できたこと・むずかしかったことをふり返るのだが、単に「うまくいったからよし!」ではなく、なぜできたのか、うまくいった背景を本人と支援者が一緒に探る作業が重要になる。例えば、「一つずつ指示を出してもらえて理解しやすかった」、「先にモデルを提示してもらえたので完成のイメージが持てた」、「静かな環境で指示を聞けたので、話の内容に集中できた」など、成功のエッセンスが隠されているはずなのだ。  また、ふり返りではよかったことだけでなく、むずかしかったこと・苦手だったことも一緒に確認する。うまくできなかったことは隠しておきたいのが人の性(さが)だが、発達障害のある人には支援者に安心して自分の気持ちを伝えてほしいと思う。成功のエッセンスがあるようにその逆も存在する。作業プログラムの様子は支援者も観察をしているので、他者の目線を通じた考察から「まだ気づいていない自分」を発見するためにも、自己評価と他者評価のすり合わせは大切にしてほしい。得手・不得手の整理や自己理解は、実体験と相談、ふり返りを一体的に、そして継続して行った結果に表れるはずだから。 なぜ離職したのか  それでもどうしても離職してしまう人もいる。職歴がある人の場合、離職理由のヒアリングとふり返りは必須である。漠然と「人間関係がしんどくて辞めた」、「職場の居心地が悪かった」と話をする人もいるが、その要因はどこから来ているのか。自己理解が不十分なために適職を選べなかったのか、それとも業務拡大やマルチタスクなど新しい作業が増えて徐々にしんどくなってきたのか。  支援者と一緒にこうした過去のエピソードをふり返る作業を進めることで、次の就職に向けて自分自身でがんばることと他者に頼ることが明確になる。離職歴をネガティブにとらえる必要はない。前職の経験があるからこそ考察できることがあるので、職業訓練のなかでは「なぜ離職したのか」の話し合いを大切にしてみてはどうだろうか。  働くためには検定や資格などが有利になる場合がある。企業にとっては発達障害のある人の作業遂行力を重視したいところだが、働き続けるためには、自分自身のことを建設的に整理できているかなど、作業遂行力以外の力が必要になる。職場における専門的なサポートが職場定着のカギになることもあるが、企業側のサポートと働く本人の自己理解は両輪で成り立つため、支援機関としては両者の橋渡し役になりながら、関係構築を支えることを重視したい。 ※1 ASD:自閉スペクトラム症 ※2 厚生労働省「令和3年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況等」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26200.html 【P20-25】 編集委員が行く 思いは人へ、そして環境へ 〜人と地球にやさしい高品質な製品を提供する〜 株式会社丸和(和歌山県) 武庫川女子大学 学生サポート室専門委員 諏訪田克彦 取材先データ 株式会社丸和 〒649-6112 和歌山県紀の川市桃山町調月1758-6 TEL 0736-66-1148 FAX 0736-66-2700 編集委員から  近年、関西圏でこのコーナーの取材を行っていない和歌山県での取材を思い立った。「障がいがあっても可能なかぎり当社で働いてもらい、その人が将来困らないようにしたい」という、取材先企業の代表の思いに触れ、障がいのある社員の仕事だけではなく、生活や人生にも寄り添って、信頼関係を構築している姿が印象的だった。そんな株式会社丸和を紹介する。 Keyword:リネンサプライ、障害者雇用優良事業所等表彰、就労継続支援A型事業所、ナチュラルサポート 写真:官野 貴 POINT 1 特例子会社ではなく自社で就労支援を行う 2 社会福祉の目的は、差別をしないこと、みんなで助け合うこと 3 会社は単に働く場を提供するだけではない はじめに〜取材のきっかけ  今回は、近年、関西圏で「編集委員が行く」の取材を行っていない和歌山県内での取材を思い立った。和歌山県の障がい者雇用の状況について、当機構の和歌山支部に問い合わせたところ、毎年実施している「障害者雇用優良事業所等表彰」について紹介してもらった。そのなかに、社員が数人「優秀勤労障害者」として表彰されている会社に目が留まり、そちらに取材をお願いすることにした。  その企業とは、和歌山県紀の川市にある「株式会社丸和」(以下、「丸和」)である。  突然の取材依頼を受けていただけるだろうかという不安もあったが、失礼を覚悟のうえ電話で取材をお願いした。対応してくださったのは総務部課長の中尾(なかお)正人(まさと)さん。今回の取材は、当機構和歌山支部の紹介があり、同社の障がい者雇用の取組みを紹介させていただきたいという趣旨などを説明すると、「それはたいへん光栄なこと」と快諾いただいた。  丸和は、和歌山市和田で製綿業を営む会社として1960(昭和35)年に創業、1990(平成2)年に株式会社丸和となり、寝具製造、販売、リース、リネンサプライと事業を拡げ、障がい者雇用に取り組んでいる。 株式会社丸和に、いざ訪問 (1)ロケーション  現在丸和の本社がある紀の川市は、和歌山県北部に位置し、約6万人が暮らしている。温暖な気候と紀の川がもたらす肥沃(ひよく)な土壌から、野菜、果物などが有名とのこと。丸和の本社までのアクセスは、「猫のスーパー駅長『たま』」で有名な和歌山電鐵(でんてつ)貴志(きし)駅から車で約15分。周りにいくつかの会社がある工業団地内の一角に構えている。  本社の受付ロビーで、中尾さんから、「暑いなかご苦労さまです。わざわざ当社を訪れていただき本当にありがとうございます」と笑顔のご挨拶をいただき、会議室に案内された。取材はかぎられた時間内でスムーズに進められるように、@会社説明、A株式会社丸和代表取締役挨拶、B社員インタビュー、C社内見学、というスケジュールが準備されていた。 (2)会社説明  会議室では、丸和について質疑応答形式で取材を始めた。中尾さんからの説明をまとめると、まず丸和の事業については「医療機関や福祉施設、宿泊施設で使用されている寝具、リネン、タオル、ユニフォームなどのメンテナンスつきリースを行う会社」とあり、企業理念については「創業以来、寝具やユニフォームを中心とした事業を展開してきましたので、『思いは人へ、環境へ』をスローガンとして『人にやさしい、地球にやさしい高品質な製品を提供する』ことをホームページにも紹介しています」ということだった。 1 会社組織  本社は六つの部署で組織されており、障がいのある社員はそのなかの生産事業部で働いている。また丸和グループの「社会福祉法人桃の木会」で就労継続支援A型とB型の事業所も運営し、障がいのある人の就労支援に取り組んでいる。 2 業務内容について  生産事業部は、毎日工場に運ばれてくるリネンやユニフォーム類の、@種分け、Aクリーニング、B乾燥・仕上げを担当する部署。この部署で10人の障がいのある社員が働いている。中尾さんによると、「全員まじめに仕事に取り組んでいる。障がいを感じることはない」とのこと。 3 社員の仕事ぶりについて  障がいのある社員は、生産事業部で実力を発揮しているという。「作業内容によっては、障がいのない人よりも仕事が早い人もいて、ほかの社員にとってよい刺激になっている」と、中尾さん。  採用後も定着率が高く、約半数は勤続10年以上、最長28年の人もいる。障がいのある社員のサポートや相談は生産事業部の係長が担当している。サポートといっても特別なことではなく、職場ではコミュニケーションを大切にしていて、出勤したら顔を見てあいさつすることから始めているそうだ。  人材募集やインターンシップは毎年行い、障がいのある人の雇用のほかに外国人技能実習生の受入れにも取り組んでいる。 代表取締役・丸山裕加さんにインタビュー  2020(令和2)年、代表取締役に就任した丸山(まるやま)裕加(ゆか)さんから次のような説明があった。 【株式会社丸和の歩み】 [1960年]製綿工場創業 [1964年]「有限会社丸和寝具」法人設立 [1990年]寝具製造・販売・リース・リネンサプライ部門を営業する株式会社法人に変更。このころから障がい者雇用の取組みが始まる [1994年]社会福祉法人桃の木会を設立 [2006年]本社および工場を現在の紀の川市に移転 【障がい者雇用のきっかけ】  丸山さんからは、「先代の社長が、シーツ、ユニフォームなどのリネン類を福祉施設に届けたときに、ある利用者さんから『運ぶのを手伝おうか』と声をかけられたことがあったそうです。その出会いから、働く能力や意欲を持っている障がいのある人がいることを知り、この人たちが働ける場を会社で提供できないものかという思いが募りました。その後一人、二人と雇用してきて現在に至っています」というお話をうかがうことができた。 【代表の思い、これからの目標】  工場で働く社員の姿を先代の社長と一緒に見ながら生活してきた丸山さんは、「ひたむきに働く姿を社員だれもが知っており、そこには、障がいの有無は関係ない」という考え方が自然と身についたとのこと。また、イギリスに留学していたときに、障がいのある人たちにだれもが自然に、あたり前のようにサポートする姿を見て、日本の障がいに対する理解や協力、社会福祉の考え方の違いをあらためて実感したという。「社会福祉の目的は、差別をしないこと、みんなで助け合うこと」と穏やかに語る社長と、しばし社会福祉の考え方について意見交換をするインタビューにもなった。  今後の目標についておたずねすると、「障がいがあっても可能なかぎり当社で働いてもらい、その人が将来困らないようにしたい」、「紀の川の野菜や果物づくり、それらを活かしたレストランなどへ雇用枠を広げていきたい」と語ってくれた。そのコメントからも、代表取締役としての熱意と人としてのやさしさが感じられた。 社員インタビュー  インタビューでは、障がいのある3人の社員と、社員の相談・調整役を担当している生産事業部係長の平野(ひらの)豊(ゆたか)さんに取材することができた。 高畑(たかはた)誠一(せいいち)さんにインタビュー 【入社したきっかけ】  高畑さんは、丸和で働く特別支援学校の先輩から声をかけられたことがきっかけで入社したという。クリーニング関係の仕事は初めてだったが、学校の先輩、周りの人たちに支えられ、今年で勤続25年のベテラン社員だ。 【現在の仕事】  工場に運ばれてくる洗濯物の機械への投入(現場では「さばき」と呼ぶ)を6人のメンバーと協力して担当している。「いまの仕事はいかがですか」とたずねると、「楽しく仕事しています」とすぐに返事が返ってきた。同席していた丸山さんから、「高畑さんはとてもまじめで入社以来欠勤なしです。家庭では73歳のお母さんと妹さんを守る大黒柱なんです」といわれると少し照れ笑いされたが、そこには働きながら家族を支えている自信のようなものを感じた。  また高畑さんは、「令和3年度 障害者雇用優良事業所等表彰(和歌山県)」の「優秀勤労障害者」として、和歌山県知事表彰を受けている。 山田(やまだ)暁(あきら)さんにインタビュー 【入社したきっかけ】  山田さんは高校在学中に丸和グループの社会福祉法人桃の木会が運営している就労継続支援A型事業所で実習をした際に、丸和のことを知って就職した。高校卒業と同時に入社して21年、高畑さんと同じようにベテラン社員の一人だ。 【現在の仕事】  入社後はいくつかの部門を経験しながら、現在は工場に運ばれてくる洗濯物(ユニフォーム)の検品(衣類についているタグの数字を機械で読み取る)を担当している。検品以外にもユニフォームのポケットの中の確認も担当し、忘れ物は、ボールペン、小銭が多いそうだ。この部門は5人の社員が働いており、山田さんはこのグループのリーダー。「リーダーとして困ったことが起きたらどう対処していますか」とたずねると、「やはり上司に相談します」と慎重な答えが返ってきた。丸山さんからの「山田さんはご結婚もされ、奥さんと娘さんと、奥さんのお母さんの4人で暮らしている頼もしいお父さんです」というコメントに、緊張気味だった表情がやっと笑顔になった。また山田さんも「令和元年度 障害者雇用優良事業所等表彰」の「優秀勤労障害者」で、厚生労働大臣表彰を受けている。 橋本(はしもと)候司(こうじ)さんにインタビュー 【入社したきっかけ】  橋本さんは小・中学生時代は地域の学校に通い、高校から特別支援学校へ。卒業後5年間は家にいたが、近所に住む人から丸和のことを教えてもらった。橋本さんは、「働いてみたいと思ったので、丸和に就職しました」という。働くことを初めて経験する橋本さんは、仕事を覚えていくなかで同僚や先輩から注意されることもあったが、なにごとも他人には負けたくないという性格から一つひとつ仕事を覚えていき、今年で入社17年目になる。 【現在の仕事】  橋本さんは、洗濯が終わったユニフォームをハンガーに掛ける業務を担当している。この部門は、3人から5人のメンバーがいて、1人で1日2000枚のハンガー掛けをこなしている。橋本さんは恥ずかしがりやの性格で、インタビューの初めのころは視線を合わせないようなところがあったが、同席していた丸山さんの声かけもあり、仕事以外のいろいろな話もしてくれた。毎朝6時には家を出て、約2時間かけて通勤している。趣味は旅行と貯金。政治への関心も深く、選挙が大好きとのこと。選挙期間中には、地域の議員さんや市長さんとも話をしたことがあるなど、政治の話を熱心に語る一面も見られた。  また、趣味の旅行も、今年は彦根城に行き、来年は広島を旅する予定だという。家族みんなで行く旅行を楽しみにして毎日の仕事に励んでいる。 生産事業部係長 平野(ひらの)豊(ゆたか)さんにインタビュー 【現在の仕事について】  平野さんは6年前に転職して、丸和に就職。障がいのある人と一緒に働くのは初めてで、入社当初は、障がいのある人が仕事をするというイメージを持っていなかったという。入社して1年半が経ったころ、生産事業部で働く障がいのある社員の担当になった。障がいについて専門的な知識や実務的な経験もなかったが、一人ひとりと話し合い、理解するように努力してきたそうだ。障がいのある社員からは、仕事の負荷がきつい、人間関係がうまくいかない、突然退職したいなどさまざまな相談があるという。平野さんが担当者として心がけてきたこととして「相談者が落ち着いて話ができるようにする」、「話を聞くことに徹する」、「決して感情的にならない、怒らない」、「相談があったその日に話し合い、解決策を一緒に考える」、「トラブルが起きると無用なうわさ話が社内に広がるので、正確な情報と早期解決が大切だ」と語ってくれた。 【障がいについて】  障がいのある人と一緒に働いて、障がいだけにとらわれず「人」として接していくと、成長している姿や、本人が家族を大切にしていることなどがわかったという。その思いは、丸和のホームページに掲載されているウェブマガジンにおける、平野さんのコメントにも表れている。  「彼らは日々の仕事をこなしていくなかで目標を見つけ、単純作業だけでなく、パソコン上のシステム操作など高度な知識や技術を習得し、生産事業部の中核をになっており、とても頼れる存在です」 社内見学  本社工場は、リネンサプライ事業を展開する中心的工場である。工場見学が始まった時間は夕方近くで、明日の朝搬送するリネン類のトラックへの積み込みが始まっていた。インタビューに応じてくれた3人がいる部門を工程順に見学した。  私は、クリーニングについて、商店街のなかにある家族が経営するクリーニング店をイメージしていたが、工場見学を始めると同時にすべて覆(くつがえ)された。トラックで搬入された大量のリネン類を機械が読み取って分類し、巨大な洗濯機群がそれらを洗浄し、洗濯後のしわ伸ばしと乾燥がすんだリネン類はベルトコンベアーで工場内を移動し、最後の仕上げが行われる。その人と機械が織りなす光景に圧倒された。高畑さん、山田さん、橋本さんは、インタビューのときと働いているときとでは違う表情を見せ、その一生懸命に働く姿から、人としての「誇り」が感じられた。  社内見学の終わりに、社会福祉法人桃の木会が運営する就労継続支援A型事業所も見学した。この施設は丸和の工場内に設置され、丸和と同じリネンサプライ業務を行っている。利用者は40人、作業内容は丸和の工場とほぼ同じだ。 取材を終えて  今回取材を終えて、これまでの取材と異なる点をあらためて確認すると「丸和が特例子会社ではなく会社のなかでの就労支援に取り組んでいること」、「障がいのある社員の定着率が高いこと」の二つが印象的だった。 (1)丸和の取組みから  これまでの障がいのある人への支援は、できないことをまず評価して、それに対して支援するということがあたり前だった。近年、特に「障害者差別解消法」施行後は、障がい当事者の「働きたい」という意思を尊重して、「できることを探す」、「働けるように支援する」ことが、障がいのある人の就労支援の基本に変わっている。丸和では、創業者の「障がいがあっても働ける」という思いが多くの社員に受け継がれ、会社組織のなかで「働けるようにする支援」のノウハウを蓄積してきたことが、10人の雇用と定着率の高さにつながっているのではないかと考える。  インタビューのときに、丸山さんが3人の社員のことをよく知っていて、家族のこと、生活や人生のことなど、互いにフランクに話し合っている場面がとても印象に残っている。「障がいのある人を働けるように支援する」とは、会社が単に働く場を提供するだけではなく、就職後の生活、人生、個々のニーズなどに対応しながら本人を支えていくことであり、その大切さを丸山さんの自然な対応から学んだ。 (2)定着率の高さ  障がいのある人の就労支援が雇用率だけで判断される傾向があるが、私は定着率も重要であると考えている。総務部課長の中尾さん、生産事業部係長の平野さんに丸和の定着率の高さについてたずねたが、「特別なことはしていません」との返事が返ってきた。しかし、前述の平野さんのインタビューで、担当者として心がけていると語った五つのポイントのなかにその答えが含まれている。五つのポイントは平野さんが日常行っている経験から得たものと推測できるが、特に「相談があったその日に話し合い、解決策を一緒に考える」は、障がいのある人の就労支援で取り組まれている「ナチュラルサポート」に通じる。障がいのある人の仕事ぶりがうまくいっている状態は、仕事内容や職場の配慮や本人の状態が絶妙に調整されていることが多い。しかし、ちょっとしたことで崩れてしまうこともあり、このような状況を防ぐ対応策として、就職後の本人と職場のタイムリーな相談対応が重要になる。このサポートが「ナチュラルサポート」である。  当機構障害者職業総合センター主任研究員の春名(はるな)由一郎(ゆいちろう)は「共生社会に向けた障害者就労支援ー分野横断的課題」(※)のなかで、「2009年の重度の聴覚障害者の調査データを見ると、聴覚障害の雇用の歴史は長いので、当然、職場で配慮がされているかと思いきや、実際は、『コミュニケーション』や『人間関係』に問題のあるまま働いている人の方が多いということが明らかになった」と報告している。  「定着率の高さ」は1回の取材だけで軽々と論ずることはできないが、「ナチュラルサポート」と「コミュニケーションや人間関係に問題があること」に、障がいのある人の雇用と定着率解決のヒントが示されていると考える。  丸和では、どんな障がいがあっても、本人の能力(強み)の発揮を支援しながら、働き方の個別性・多様性両面への支援をこれからも続けていかれることを期待したい。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社丸和様のご希望により「障がい」としています ※社会保障研究,2018,vol.2,no.4,pp.469-483. 株式会社丸和ホームページよりhttps://www.maruwa-wk.co.jp/company 写真のキャプション 株式会社丸和本社 総務部課長の中尾正人さん 代表取締役の丸山裕加さん 生産事業部で働く高畑誠一さん シーツを自動アイロン機に投入する高畑さん 生産事業部で働く山田暁さん 搬入されたユニフォ−ムのタグを読み取る山田さん 令和元年度の障害者雇用優良事業所等全国表彰式において、「優秀勤労障害者」厚生労働大臣表彰を受ける山田さん 生産事業部で働く橋本候司さん 洗濯を終えたユニフォームをハンガーに掛ける橋本さん 生産事業部係長の平野豊さん 工場内には、大型の乾燥機や洗濯機が立ち並ぶ 社会福祉法人桃の木会が運営する就労継続支援A型事業所 【P26-29】 省庁だより 令和4年版 障害者白書概要 内閣府ホームページより抜粋  障害者白書は、障害者基本法第13条に基づき、障害者のために講じた施策の概況について、毎年国会に報告しているものです。  「令和4年版障害者白書」の概要を紹介します。 第1章 障害を理由とする差別の解消の推進 ●「障害者差別解消法」の円滑な施行の推進 ・障害者の差別解消に向けた周知・啓発  「合理的配慮の提供等事例集」の作成・活用。2022年3月に「障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト」を設置 ・「障害者差別解消支援地域協議会」の設置等の促進  地域の関係機関が連携し、差別事案への効果的な対応や紛争解決の後押しを行えるよう、自治体における地域協議会の設置等を促進 ●「障害者差別解消法」改正法の公布  内閣府の障害者政策委員会による「障害者差別解消法」の施行3年後の見直しに関する意見書等を踏まえ、事業者による合理的配慮の提供の義務化等を内容とする同法の改正法が2021年6月に公布。施行期日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内 第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第1節 広報・啓発等の推進 ●「障害者週間」(毎年12月3日〜9日)における全国的な広報・啓発活動、国民への理解促進のための取組の推進 ●学校教育における理解促進等の取組  学校教育において、障害や障害者に関する理解を促進する取組を充実させるため、学習指導要領に基づいた交流及び共同学習の一層の推進等を進める 第2節 東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした取組とレガシー ●「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づく取組の推進  「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を基に共生社会の実現に向けた諸施策を推進する中で、障害のある人の視点を施策に反映させる仕組みとして「ユニバーサルデザイン2020評価会議」を開催 ●「心のバリアフリー」の拡大・向上  公共交通事業者による一定水準の接遇を確保するための「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」に加えて、「認知症の人編」と新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた「追補版」を作成。小学校で2020年度から中学校で2021年度から新学習指導要領を踏まえた授業を全面実施 ●ユニバーサルデザインの街づくり  2021度からの5年間を目標期間とする新しいバリアフリー整備目標を策定。地方部を含めたハード・ソフト両面でのバリアフリー化をより一層推進 ●「共生社会ホストタウン」の取組  全国各地における共生社会の実現に向けた取組を加速し、東京パラリンピック競技大会のレガシーにもつなげていく「共生社会ホストタウン」の取組を推進 第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 第1節 障害のある子供の教育・育成に関する施策 ●障害のある児童生徒の教科書・教材の充実  拡大教科書など、障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等の普及を図ることに加えて、特別な配慮を必要とする児童生徒の学習上の困難の低減に資する学習者用デジタル教科書を、特別支援学校及び特別支援学級を含む全国約4割の小中学校等に、1教科分提供する事業等を実施 ●特別支援教育の推進  障害のある子供の就学先決定や学びの場の充実に関する「障害のある子供の教育支援の手引」を改訂・周知、特別支援学校設置基準の策定、特別支援教育を担う教師の専門性向上に関する取組等を実施 ●地域における療育体制の整備  医療的ケア児及びその家族に対する支援に関し、基本理念を定め、保育及び教育の拡充に係る施策その他必要な施策並びに医療的ケア児支援センターの指定等について定めた「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行 第2節 雇用・就労の促進施策 ●障害者雇用の現状  民間企業(43.5人以上規模の企業:法定雇用率2.3%)に雇用されている障害者の数(2021年6月1日現在、以下同じ)は597,786.0人で、前年同日より19,494.0人増加(前年同日578,292.0人)し、18年連続で過去最高  国の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の割合、勤務している障害者数はそれぞれ2.83%、9,605.0人で、全ての機関において法定雇用率達成 ●障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)  個々の中小事業主における障害者雇用の進展に対する社会的な関心を喚起し、障害者雇用に対する経営者の理解を促進するための制度。2021年12月末時点、全国で117事業主が認定 ●障害のある人への地域における就労支援  障害のある人の就労支援の充実と活性化を図るため、雇用・福祉・教育・医療の一層の連携強化を図り、ハローワークを中心とした関係機関とのチーム支援や、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進、障害者就業・生活支援センター事業、トライアル雇用などを実施 第4章 日々の暮らしの基盤づくり 第1節 生活安定のための施策 ●障害福祉サービスの計画的な基盤整備  地域共生社会の実現に向けた包括的な支援体制の構築、障害福祉人材の確保、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築、障害児支援の提供体制の整備 ●在宅サービスの充実  利用者の実態に応じた支援を行う観点から、利用者像やサービスの提供形態に応じ、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護及び重度障害者等包括支援を実施 ●発達障害者支援の推進  地域支援の中核である発達障害者支援センター等に発達障害者地域支援マネージャーを配置、ペアレントメンターの養成や活動の支援、青年期の発達障害者等の居場所作り等の支援などの実施 ●スポーツの振興 ・スポーツを通じた共生社会実現に向けた取組  パラアスリート等の学校での講演やパラ競技体験、東京2020パラリンピック競技大会に出場したパラリンピアンと児童生徒の交流、県民パラスポーツ大会や学校区、企業対抗等の様々なレベルでのパラスポーツの体験会・交流会の実施 ●文化芸術活動の推進 ・障害者による文化芸術活動の推進に関する法律及び基本的な計画  鑑賞の機会の拡大や、作品等の創造への支援強化、地域での作品等の発表の機会の確保等、障害者の文化芸術活動の充実に向けた各種取組を実施。地方公共団体における文化芸術活動の推進に関する計画策定及び取組の推進を支援 第2節保健・医療施策 ●障害のある人に対する適切な保健・医療サービスの充実  身体障害の状態を軽減するための医療及び精神疾患に対する継続的な治療を自立支援医療と位置づけ、その医療費の自己負担の一部又は全部を公費負担、2022年度の診療報酬改定において、入院医療における栄養管理に係る適切な評価及び精神疾患患者の地域定着の推進のための見直しを実施 第5章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策 ●移動等の円滑化の一層の促進 ・改正「バリアフリー法」の全面施行  2021年4月に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)の一部を改正する法律」が全面施行。公共交通事業者等に対するソフト基準適合義務の創設、優先席・車椅子使用者用駐車施設等の適正な利用や市町村等による「心のバリアフリー」を推進 ●建築物のバリアフリー化の推進 ・小規模店舗のバリアフリー化  建築物のバリアフリー化のガイドラインである「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」を改正。小規模店舗内部における入口の段差解消、可動式の椅子席の設置等のバリアフリー整備を進めるための考え方を追加したほか、備品による移動支援や接遇、従業員教育等のソフト面の工夫を充実 ●公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化の推進 ・全国の鉄道駅におけるバリアフリー化の加速  「第2次交通政策基本計画」が閣議決定、これを踏まえ、鉄道駅のバリアフリー化を進める枠組みとして新たな料金制度を創設、市町村が作成するバリアフリー基本構想に位置付けられた鉄道駅の施設整備に係る補助率を拡充することを令和4年度予算に盛込み ●防災、防犯対策の推進 ・「災害対策基本法」の一部改正  2021年5月に、個別避難計画の作成を市町村長の努力義務とすること等を盛り込んだ「災害対策基本法」の一部改正。これを踏まえ「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」に個別避難計画の作成・活用に係る具体的手順等を追加。また、福祉避難所への直接の避難が促進されるよう「災害対策基本法施行規則」等を改正 第2節 障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策 ●情報アクセシビリティの向上  「デジタル活用共生社会」の実現を目指すべきであるとしたデジタル活用共生社会実現会議の報告に基づき、各企業等が自社のICT機器・サービスについてアクセシビリティ確保を自己診断する取組等を推進 ●コミュニケーション支援体制の充実 ・手話や点訳等によるコミュニケーション支援  2020年に施行した「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」に基づき、「手話」や「文字」と「音声」とをオペレーターが通訳することにより、聴覚や発話に障害のある人とそれ以外の人を電話で双方向につなぐ公共インフラとしての「電話リレーサービス」が2021年7月から開始 第6章 国際的な取組 ●国際協力等の推進 ・日本のインクルーシブ防災の取組を世界に  JICA(独立行政法人国際協力機構)が、エクアドルへの技術協力を実施。日本のインクルーシブ防災の実践例を共有し、計画策定や合意形成に至るステップを学ぶ研修を行うことで、エクアドルにおけるインクルーシブ防災のモデルの検討や、研修後のアクションプランの作成を支援 「障害者白書」は、内閣府ホームページに掲載しています(★) ★https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html 【P30-31】 ニュースファイル NEWS FILE 国の動き 国土交通省 無人駅の障害者対応ガイドライン  国土交通省は、障害当事者団体や鉄道事業者との意見交換会の議論をふまえ、「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」を策定した。  国土交通省によると、無人駅は2019年度までに4564駅で総駅数の48.2%を占める。意見交換会で障害当事者からは、大きな要望として(1)障害当事者への適切な案内・情報提供、(2)駅の利用に関する事前連絡のあり方、(3)列車運転士等の乗務員による乗降介助の3点があげられた。  これを受けてガイドラインでは、障害特性(視覚・聴覚・車いす使用など)に応じた情報提供や、駅利用の際に事前連絡がなくても対応することの社内周知、乗務員による乗降介助の実施など、ハード対策・ソフト対策一体の環境整備を求めている。また、自治体や沿線施設・地元企業などとの連携、委託を通じた駅運営の取組みも有効とし、ハード整備・ソフト対応を含めた先行事例をあげている。  このうち情報提供については、緊急時はリアルタイムで適切に係員等とコミュニケーションがとれる環境整備が必要としている。連絡体制については窓口のワンストップ化やICTの活用、時間帯によって他駅からの係員等による巡回や見守りの実施、駅利用者への「声かけ・サポート」を求めている。介助については「事前連絡がない場合においても、可能なかぎり待ち時間が短くなるよう努めつつ対応を行うこと、また無人駅であることのみをもって駅の利用を断るような対応を行わないという姿勢が必要」としている。詳しい内容は国土交通省ホームページで公表している。 https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr2_000017.html 地方の動き 福岡 「読み上げアプリ」福岡市と携帯電話会社4社が導入支援  福岡市は、携帯電話会社4社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)と連携し、視覚障害者を対象に、印刷物の内容を音声で読み上げるスマートフォンのアプリ導入支援を始めた。市区役所や各社の一部店舗で、職員や店員が使い方などを無料で説明する。  福岡市では、新型コロナウイルスワクチン接種のお知らせなど、重要な通知やチラシなどの印刷物で音声コードが活用されているが、市内の視覚障害者のうち音声コードの認知率は約30%、実際の利用率が5%未満と低いことが課題だった。  音声読み上げアプリ「Uni-Voice(ユニボイス)」は「NPO法人日本視覚障がい情報普及支援協会」(東京都)が開発。印刷された音声コードに記録されている文字情報を、アプリが自動的に読み上げる仕組み。アプリの使い方については、福岡市公式のYouTubeチャンネルでも見ることができる。 https://www.youtube.com/watch?v=KOfqjCNI85c 鹿児島  県障害者芸術文化活動支援センター開設鹿児島県は、芸術文化活動を行う障害者やその家族、福祉施設、支援団体などを支援する拠点として「鹿児島県障害者芸術文化活動支援センター」を、鹿児島市の「地域生活支援拠点ゆうかり」内に開設した。運営は「社会福祉法人ゆうかり」(鹿児島市)に委託。  同センターでは月1回程度、芸術文化活動のワークショップなどを開催するほか、年1回の作品展覧会、地域の特性を活かした交流企画やイベント、演劇・映画などのバリアフリー芸術文化活動、情報発信などを行っていく予定。  また、障害のある人の芸術文化活動について、学芸員や弁護士による無料相談を電話や対面(リモートも活用)で対応する。受付時間は平日午前9時〜午後5時。 電話:080−8379−7852 生活情報 全国 レジに「耳マーク」指さしシート  「株式会社ローソン」(東京都)は、全国のローソン店舗(約1万4000店、ローソンストア100を除く)で、聴覚に障害のある人の買い物をサポートする「耳マーク」を表示した指さしシートをレジカウンターに設置した。コロナ禍でマスク着用が日常的になり、聴覚障害者が、店員の口元の動きを見てコミュニケーションを取ることがむずかしくなっていたことから導入された。  レジ袋やカトラリー、レンジでの温めの有無についてのイラスト入りシートが、レジカウンターに貼付され、「レジ袋購入します」、「(レンジで)温めてください」といった自分の希望を、指さしによって伝えることができる。  ローソンによると、聴覚に障害のある社員から提案を受け、実際に指さしシートに掲出する内容などについては加盟店オーナーや店員にも意見を聞いて絞り込んだという。耳が不自由な人への配慮を示す「耳マーク」は、「一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会」(東京都)が保有するマークで、交通機関や公共施設などで設置が広まっている。 本紹介 『発達障害の人が見ている世界』  精神科医で東京国際大学医療健康学部准教授の岩瀬(いわせ)利郎(としお)さんが、『発達障害の人が見ている世界』(アスコム刊)を出版した。これまで1万人以上の発達障害のある人と向き合ってきた経験から、発達障害の特性を持つ人、とりわけADHDとASDの人が見ている世界≠紹介する。周りが理解に苦しむ言動も、本人たちが物事をどう受けとめ、感じているのか、つまり見ている世界≠理解し対応策へと導く。大人から子どもまで、身近にある32の困りごとを紹介し、理由と対応策を紹介。発達障害、グレーゾーン、定型発達といった診断的な面だけにこだわらず、さまざまなコミュニケーションにおける困りごとの解決を目ざす。A5判192ページ、1595円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2022年度地方アビリンピック開催予定 10月下旬〜12月 青森県、千葉県、神奈川県、滋賀県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *  は開催終了 ※全国アビリンピックは11月4日(金)〜11月6日(日)に、千葉県で開催されます。 地方アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 青森県 千葉県 神奈川県 滋賀県 ミニコラム 第18回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は諏訪田委員が執筆しています。ご一読ください。 編集委員として新たな決意、多様性への対応 武庫川女子大学学生サポート室専門委員 諏訪田克彦  今年の3月、5年間お世話になった武庫川女子大学を定年退職し、4月からは大学の学生サポート室専門委員の仕事を担当している。学生サポート室(以下、「学サポ」)は、何らかの障がいや病のある学生が、合理的配慮に基づく修学支援が受けられるようにサポートすることを目的として全国の各大学で取り組まれている。私が勤める学サポには、日々多くの学生や両親からのメールや電話、来室があり、対応に追われている。学生たちの障がいや病は、視覚、聴覚、肢体不自由などの身体障がい、自閉症スペクトラムなどの発達障がい、適応障がいなどの精神疾患など多様化している。  大学生の相談業務は初めての経験で、これまで経験した医療型障害児入所施設(旧肢体不自由児施設)における医療ソーシャルワーカーとしての相談業務とは異なる経験をしている。学サポでは、障がいや病により大学での学びが損なわれないように修学に関する配慮依頼を作成している。例えば、障がいや病が原因で授業を欠席した際に、何らかの課題を出してもらい、それを提出することで出席に替えてもらえるよう科目担当の教員に文書で依頼している。新型コロナウイルス感染症の影響から、大学では対面授業とネットワークを利用したオンライン授業を併用しているが、オンライン授業の弊害として友達ができないなど、人間関係の形成にも影響している。障がいの多様性は支援の多様性につながり、配慮の目的が学生の「修学の保障」にとどまらず「自立支援」に広がっている。  また、教員からも実験や演習など、科目の特性から課題が出せない場合どのように対応したらよいかなどの質問が寄せられる。学サポ専門員の仕事に就いて6カ月が経ったが、相談に訪れる人の障がいの多様性のなかで、あらためて「合理的配慮とは何か」を考え悩む毎日である。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、諏訪田委員の希望により「障がい」としています 【P32】 掲示板 実践的な訓練環境で即戦力を目ざします  当機構が運営する国立職業リハビリテーションセンターおよび国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、求職中の障害のある方々に対して就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています。また、休職中や在職中の方のための職業訓練も行っています。  なお、利用にあたり、年10 回程度の入所日を設けています。  募集コースや応募締切日、手続きなどの詳細については、下記までお気軽にお問い合わせください。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター 埼玉県所沢市並木4―2 https://www.nvrcd.ac.jp/ 【求職中、休職中の方】TEL:04―2995―1201 【在職中の方】TEL:04―2995―1135 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 岡山県加賀郡吉備中央町吉川 7520 https://www.kibireha.jeed.go.jp/ 【求職中の方】TEL:0866―56―9001 【休職中、在職中の方】TEL:0866―56―9003 両センターのホームページで求職中の訓練生情報を公開しております。 障害のある方向け 視覚障害者の支援機器を活用した訓練風景 読者アンケートにご協力をお願いします! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 次号予告 ●この人を訪ねて  東京学芸大学名誉教授の松矢勝宏さんに、今年1月に「第35回辻村賞」を受賞した経緯や想い、今後の活動についてお話をうかがいます。 ●職場ルポ  旭化成グループの特例子会社である株式会社旭化成アビリティ(宮崎県)を取材。障害のある社員がになう事務業務や印刷業務における、品質やコスト管理の面での取組みについてお伝えします。 ●グラビア  当機構の東京障害者職業センターを利用して障害者雇用に取り組む株式会社TBSスパークル(東京都)を取材。同社で活躍する障害のある社員を紹介します。 ●編集委員が行く  金塚たかし委員が「精神障害者の雇用と就労」をテーマに、日東精工株式会社(京都府)のほか、障害者雇用に関係する機関を取材します。 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 トヨタループス株式会社 取締役 清水康史 武庫川女子大学 学生サポート室専門委員 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 准教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林功 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 飯田剛 編集人−−企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 定価141円(本体129円+税)送料別 令和4年10月25日発行 無断転載を禁ずる 11月号 ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 障害者雇用支援月間(9月)における厚生労働大臣表彰などの表彰式が開催されました  9月13日(火)、東京都千代田区のイイノホールにおいて、令和4年度障害者雇用優良事業所等表彰式が開催されました。  当日は、障害者雇用優良事業所および優秀勤労障害者ならびに障害者の雇用の促進と職業の安定に貢献した個人に対する厚生労働大臣表彰21 件のほか、障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテストの厚生労働大臣賞および当機構理事長賞8件と、障害者雇用職場改善好事例の厚生労働大臣賞および当機構理事長賞6件の表彰が行われました。  最後に、「障害者雇用優良事業所」として厚生労働大臣表彰を受けられた、京丸園(きょうまるえん)株式会社代表取締役鈴木(すずき)厚志(あつし)様が代表者挨拶を述べられました。 写真のキャプション 障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテストの厚生労働大臣賞受賞者 ※表彰状を持っている方々が受賞者 障害者雇用優良事業所 厚生労働大臣表彰 京丸園(きょうまるえん)株式会社様(静岡県)による代表者挨拶 優秀勤労障害者 厚生労働大臣表彰 西畑(にしはた)智和(ともかず)様(和歌山県) 障害者雇用職場改善好事例 厚生労働大臣賞 有限会社西部産業(せいぶさんぎょう)様(岩手県) 【裏表紙】 令和4年度 職業リハビリテーションに関する研修のご案内 受講料無料 労働、福祉、医療、教育等の機関における障害者の就業支援担当者を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や、就業支援に必要な技術の修得、資質の向上を図る研修を実施しています。 医療・福祉等の機関で企業等への就職・定着に向けた就業支援を担当する方 ステップ1 初めて担当する方 就業支援基礎研修 就業支援の基礎作り 全国の地域障害者職業センター ステップ2 2年以上実務経験のある方 就業支援実践研修 アセスメント力と課題解決力の向上 発達障害/精神障害/高次脳機能障害 コース 全国14エリアの地域障害者職業センター ステップ3 3年以上実務経験のある方 就業支援スキル向上研修 障害特性に応じた支援スキルの向上 発達障害/精神障害/高次脳機能障害 コース 障害者職業総合センター 就業支援課題別セミナー 新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上 障害者職業総合センター 職場適応援助者(ジョブコーチ)を目ざす方・支援スキルの向上を目ざす方 ステップ1 養成研修修了者サポート研修 支援の実践ノウハウの修得 全国の地域障害者職業センター 職場適応援助者養成研修 ジョブコーチ支援をする際に必要な知識・技術の修得 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 全国の地域障害者職業センター ステップ2 支援スキル向上研修修了者サポート研修 困難性の高い支援の実践ノウハウの修得 全国の地域障害者職業センター 職場適応援助者支援スキル向上研修 ジョブコーチとしての支援スキルの向上 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 現在、受付中の研修、今後受付を開始する研修(令和4年11月1日時点) 研修 日程 受付期間 場所 就業支援スキル向上研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験おおむね3年以上の方 令和5年1月18日(水)〜1月20日(金) 令和4年10月26日(水)〜12月2日(金)(※) オンライン形式 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 2月期 令和5年2月14日(火)〜2月17日(金) 令和4年11月15日(火)〜12月9日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして1 年以上の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者の方 第4回 令和5年1月31日(火)〜2月3日(金) 令和4年10月25日(火)〜12月2日(金)(※) 大阪府大阪市 ※定員を超える申込みがある場合は、予定より早く受付を締め切ることがあります。 □実務経験に応じて、講義・演習・事例検討などを組み合わせた、実践的なカリキュラムとなっています。 □研修の参加には事前のお申込みが必要です。受講料は無料です。 □各研修のカリキュラム、会場、受講要件など、詳しくはホームページをご覧ください。 お問合せ先 職業リハビリテーション部 研修課 Email:stgrp@jeed.go.jp TEL 043-297-9095 FAX 043-297-9056 JEED 就業支援担当者 研修 検索 11月号 令和4年10月25日発行 通巻541号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)