【表紙】 令和4年12月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第543号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2023/1 No.543 リーダーズトーク 多様性そのものが競争力の源泉 一人ひとりが能力発揮できる土壌を 株式会社三井住友フィナンシャルグループ 人事部ダイバーシティ推進室長 河渕千紗さん 職場ルポ 大学のキャンパスを拠点に、ごみ分別から建物清掃まで行う 株式会社立命館ぷらす(京都府) グラビア 食肉加工を通じて、地域とつながる 社会福祉法人白鳩会 第2花の木ファーム(鹿児島県) 編集委員が行く 「地域」とは、地元の関係者のつながりを深めてこそ「地域」になる 株式会社オート(長野県)、社会福祉法人夢工房福祉会 ハルル(長野県)、伸商機工株式会社(長野県)、長野県長野養護学校(長野県) 「東急バスで、はたらきたい」東京都・浅井(あさい)峻世(しゅんせい)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 1月号 【前頁】 心のアート 命 新たなる旅立ち 福島 綾美 (きらぼしアートセンター) 画材:厚紙、油性ペン、水彩絵の具/サイズ:790mm×1090mm  厚紙に黒の油性ペンで下絵を描いた。  11年間、自宅で飼っていたウサギが8月に息を引きとった。最期は自分の腕のなかで看取り、眠るようにして旅立ったという。思い出すとかわいそうで、1カ月は涙が出て、泣いていたそうだ。  ウサギも新しい世界で幸せになってほしいと思い、それを絵にしたのが「命 新たなる旅立ち」。学問と知恵の象徴のフクロウに生まれ変わり、未来へ飛び立つ姿を描いた。下絵に1週間、水彩で色つけに1週間。デザイン力と鮮やかな色彩、グラデーションの表現力が発揮され、完成度の高い作品に仕上がっている。 (文:一般社団法人岡山障害者文化芸術協会 荒木岳志) 福島 綾美(ふくしま あやみ)  1989(平成元)年生まれ、岡山県倉敷市在住。  幼稚園のとき折り紙に熱中し、蓮の花や箱を色紙1枚で折っていた。小学校では絵を描き、花や食卓の風景画などで賞をもらう。県立高校で美術の先生にデッサンを習う。卒業後に発達障害があることがわかり、治療を受けはじめる。  就労継続支援A型事業所で働き、2022(令和4)年から一般社団法人岡山障害者文化芸術協会「アート&ジョブセンター」の就労移行支援事業所を利用、アート班で絵画に取り組んでいる。丸、四角などのフォルムを組み合わせた抽象画や、黒を基調にした心象風景など、多彩な作品を生んでいる。同協会は病院の廊下や待合室などに絵画を展示するホスピタルアートを展開しており、彼女の作品は、岡山市、倉敷市、笠岡市内の病院のほか、岡山市北区幸町の「きらぼしアートセンター」で鑑賞できる。 協力:一般社団法人岡山障害者文化芸術協会 【もくじ】 障害者と雇用 働く広場 目次 2023年1月号 NO.543 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 命 新たなる旅立ち 作者:福島綾美(きらぼしアートセンター) リーダーズトーク 2 第6回 多様性そのものが競争力の源泉 一人ひとりが能力発揮できる土壌を 株式会社三井住友フィナンシャルグループ 人事部ダイバーシティ推進室長 河渕千紗さん 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 職場ルポ 6 大学のキャンパスを拠点に、ごみ分別から建物清掃まで行う 株式会社立命館ぷらす(京都府) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 JEEDインフォメーション 12 令和5年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ/「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない〜障害者雇用の専門家が企業のみなさまを支援します〜/第10回 国際アビリンピック 派遣選手決定! グラビア 15 食肉加工を通じて、地域とつながる 社会福祉法人白鳩会 第2花の木ファーム(鹿児島県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 発達障害と就労 第3回〜企業の雇用管理力をサポートする(2)〜 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺 副所長 砂川双葉 編集委員が行く 20 「地域」とは、地元の関係者のつながりを深めてこそ「地域」になる 株式会社オート(長野県)、社会福祉法人夢工房福祉会 ハルル(長野県)、伸商機工株式会社(長野県)、長野県長野養護学校(長野県) 編集委員 原智彦 クローズアップ 26 職場内の支援体制の課題と対応 第3回〜グループ企業の障害者雇用をサポート〜 研究開発レポート 28 高次脳機能障害者の復職におけるアセスメントの紹介 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 高障求メールマガジン好評配信中! ※「省庁だより」は休載します 表紙絵の説明 「運転手さんの姿と車内アナウンスがかっこよく、バスは窓がきれいだったのでこの題材を選びました。バスが力強くがんばって動いているイメージを描きました。コンクールでの受賞を聞いたときは楽しい思いがあふれました。最近は調理など美術以外の活動にも積極的に参加しています」 (令和4年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-5】 リーダーズ トーク Leaders Talk 第6回 多様性そのものが競争力の源泉 一人ひとりが能力発揮できる土壌を 株式会社三井住友 フィナンシャルグループ 人事部ダイバーシティ 推進室長 河渕千紗さん 河渕千紗(こうぶち ちさ) 2006(平成18)年、株式会社三井住友銀行入社。人形町法人営業部、外国業務部、東京中央法人営業第一部などを経て2011年から三井住友銀行(中国)有限公司の本店営業第一部に配属。2016年から人事部研修所、2021(令和3)年から人事部ダイバーシティ推進室長兼株式会社三井住友フィナンシャルグループ人事部ダイバーシティ推進室長。  メガバンク「株式会社三井住友銀行」(以下、「SMBC」)をはじめ、国内外60社超の子会社を持つ「株式会社三井住友フィナンシャルグループ」(以下、「SMFG」)は、ダイバーシティ&インクルージョン(※1)を「成長戦略そのもの」と位置づけ、多様な従業員が能力を存分に発揮できる企業風土の醸成を図っています。障がいのある人の活躍を含めたさまざまな取組みについて、ダイバーシティ推進室の室長を務める河渕(こうぶち)千紗(ちさ)さんにお話をうかがいました。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 「経営戦略と一体でダイバーシティ推進」 ――「ダイバーシティ推進室」は2008(平成20)年にSMBC、2017年にはSMFGにも設置されました。これまでの経緯について教えてください。 河渕 SMBCではもともと育児両立支援や女性キャリア支援に力を入れていましたが、「価値観や属性の似通った人材で構成される組織よりも、多様な人材がそれぞれのバックグラウンドを活かして活き活きと活躍できる組織のほうが、活力や革新性がある」との明確なトップコミットメントのもと、2014年に頭取を委員長とする「ダイバーシティ推進委員会」を、2017年にはグループCEOを委員長とするSMFG同委員会を発足させ、毎年度トップ主導でダイバーシティ推進に関する方針策定・進捗状況などを議論しています。  当初より取り組んでいる育児・介護との両 立支援や女性キャリア支援に加え、2015 年以降は働き方改革、LGBT(※2)の理解 促進や障がい者の活躍、健康経営にも力を入 れています。2020(令和2)年には、障 がい者の活躍推進に取り組む国際イニシアチブ組織「The Valuable(ザ バリュアブル)500」(※3)に加盟しました。 2021年の東京五輪・パラ五輪を機に変化 ――河渕さん自身が障がいのある従業員とかかわりを持つようになったのはいつですか? 河渕 2016年の人事部研修所着任時に手がけた、東京五輪・パラ五輪に向けたSMBCグループ所属の障がい者アスリートの応援企画が最初です。当時グループ内には、アスリート採用でSMBC日興証券株式会社に入社した従業員のほか、株式会社SMBC信託銀行や、SMBCの特例子会社であるSMBCグリーンサービス株式会社(以下、「グリーンサービス」)にも世界大会の代表選手に選出される従業員が在籍していました。私は企画担当者として、イベントや食事会などを通してアスリートのみなさんの人となりや日ごろから感じていることを、肌感覚で知ることができました。  特に印象的だったのは、セミナーの狙いについて議論した際、「困難を乗り越えていかに力を発揮するか」という案に対し、「障がいは生まれながらのもので、日常生活の一部となっているから、一度も困難だと感じたことはない」とフィードバックいただいたことです。それまでは、あらゆる場面で気を遣っていましたが、自分の勝手な基準・思い込みが根底にある「過剰な配慮」や「考えの押しつけ」をするのではなく、「何が相手にとって自然なのか」を考えるようになり、接し方も変わりました。競技の応援にもあちこち出向き、いまもアスリートたちと個人的な交流が続いています。頭の中で考えていたことを言語化して議論したことにより、お互いに気づきがあったと感じています。 特例子会社からSMBCへの出向 ――SMBCの障がい者雇用については特例子会社「SMBCグリーンサービス株式会社」が大きな役割をになっているようですね。 河渕 旧住友銀行時代の1990年に設立されたグリーンサービスですが、いまでは全600人、うち障がいのある従業員が460人という規模に成長しました。「銀行の重要なバックオフィス」として不可欠な存在になり、グリーンサービスはもはや「障がいのある従業員が在籍する特別な会社」というくくりではないと考えています。  以前、頭取がグリーンサービス本社を訪問した際、「ここはまさにダイバーシティ&インクルージョンが実践されている場である」と感銘を受け、「本店の従業員にも感じてほしい」と行内に発信しました。そこで始まったのが新たな人事交流です。グリーンサービスからSMBCに、これまで計9人が管理部・事務統括部・品質管理部などの複数部署へ出向しています。人事部でも2019年から2年間、木全(きまた)将(まさし)さんを迎え、企画グループおよびダイバーシティ推進室で勤務してもらいました。全拠点向けの人事規程照会窓口として頼られる存在となり、働き方改革関連のデータ分析業務にも積極的に取り組むなど、チャレンジ精神と真摯な姿勢がとても印象的でした。  銀行への出向期間中は、グリーンサービスの就業支援カウンセラーが面談を毎月実施して本人のキャリア展望などを聴き取り、意識の変化を客観的にフィードバックいただきました。一方通行ではなく、カウンセラーのアドバイスもふまえて多面的に業務アサイン・キャリア支援計画を立てることができ、感謝しています。  また、2022年11月まで大阪本店の管理部に出向していた梅内(うめうち)瑛都(あきと)さんは、行内に届いた郵便物の使用済み切手を認定NPO法人へ寄付して途上国の子どもたちへのワクチン支援をする社会貢献に資する企画を発案し、管理部メンバーが協力して東西4本部ビルに切手回収箱の設置が実現しました。  全員がそれぞれの持ち場で影響力を発揮し、一緒に働いた期間は私たちにとって何物にも代えがたいものです。 知識とリアルなコミュニケーション ――グループ全体として、障がい者の活躍に向けた理解を広めていくために、どのような工夫や取組みをされていますか。 河渕 全国に拠点がある金融機関では、インフラ面で障がいのある従業員と一緒に働く環境が整いにくい部署も少なくありません。部署によらず障がいについて考える機会や接点を持ってもらうため、グループ所属の障がい者アスリートの方々が全従業員向けのセミナーやイベントに登壇したり、全国の各支店を回り座談会を開催したりしています。私たちが目ざす共生社会の実現に向けて、従業員が家族や友人知人とも経験を共有することで、社会全体へと意識が広がっていくことも期待して企画しています。  またSMBCの各店舗では、障がいのあるお客さまや高齢のお客さまに安心して来店していただくためのユニバーサルデザイン化を進めていますが、「ユニバーサルマナー」の浸透を目的とした研修も行っています。知識習得と、リアルなコミュニケーションの両方の機会を持てる人が増えたらよいなと思います。 力を発揮できる働き方のオプションが必要 ――現在ダイバーシティ推進室で力を入れている取組みについて教えてください。 河渕 いまもっとも力を入れているのが、真のインクルージョンに向けた取組みです。人材が多様化しても、その方々が活躍できる土壌が整っていなければ、組織の力の最大化には至らないと感じています。  大きな柱は、働き方にかかわる環境づくりです。従来の日本の大企業の人事管理システムは、一律の制度で効率的に最大の成果を出すという世界観に基づいていた面もありますが、外部環境・ライフスタイルの変化に加え、仕事と育児・介護・治療などとの両立や、多様な就業観やキャリア志向を持つ人材が増えてきています。そのなかで、決められた制度に個人をあてはめるのではなく、いかに融通をきかせて個人が最大限に力を発揮できるかに焦点を当てて、ダイバーシティ経営の土台を強化することが、成長戦略であると考えています。 「ダイバーシティのなかには私も入っている」 ――ダイバーシティ&インクルージョンを進めていくうえで大事なことは何だと思われますか。 河渕 特に最近強く感じているのは、「ダイバーシティのなかには、私も入っているのだ」ということを、忘れてはいけないということです。別の世界のように切り出して考えるのではなく、自分もそのなかの一人として、ダイバーシティを自分ごと≠ニして考えられるような組織にしていきたいと考えています。  実際に私自身も、これまでさまざまな形でマイノリティの立場を感じてきました。例えば中国に赴任したときは日本人というマイノリティでしたが、一方でその職場では管理職の9割が女性でした。自分がいつどんな立場になるかはわかりません。立場が変わればマジョリティにもマイノリティにもなるのですね。  多様性のなかに、つねに自分もいるのだという感覚でいれば、その人の属性よりも、お互いがどのような考え方を持っているかに自然と焦点が当たると感じています。 ※1 ダイバーシティ&インクルージョン:ダイバーシティ(Diversity)は多様性、インクルージョン(Inclusion)は包括性のこと ※2 LGBT:セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称で、Lesbian・レズビアン(女性同性愛者)、Gay・ゲイ(男性同性愛者)、Bisexual・バイセクシュアル(両性愛者)、Transgender・トランスジェンダー(心と体の性が異なる人)の頭文字をつなげた略語 ※3 The Valuable 500:障がいのある人が社会、ビジネス、経済における潜在的な価値を発揮できるような改革をビジネスリーダーが起こすことを目的に、2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発足した国際的な企業ネットワーク。加盟企業は500社超、そのうち日本企業は約50社 SMBCに出向経験がある SMBCグリーンサービス株式会社 木全(きまた)将(まさし)さんより (出向先では)一人ひとりの問題点に対する会社全体の当事者意識が高く、建設的でポジティブな発言が多い職場で働けたことが、よい経験になりました。10年先の会社の在り方を考え、上下関係にかかわらず、気づいた点を自由に発信し、自分の思いや感じたことを遠慮なく素直に伝え合う職場風土はとても刺激になったと感じています。この経験をいまの職場で活かしていきたいと思います。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社三井住友フィナンシャルグループ様のご意向により「障がい」としています 写真のキャプション グループ所属の障がい者アスリートが全国の支店を回り、障がいについて考えてもらう機会をつくっている(写真提供:株式会社三井住友フィナンシャルグループ) 【P6-11】 職場ルポ 大学のキャンパスを拠点に、ごみ分別から建物清掃まで行う ―株式会社立命館ぷらす(京都府)― 大学を運営する学校法人の特例子会社では、キャンパス内のごみ回収・分別から建物清掃まで、ていねいな作業を心がけながら、従業員個々のスキル向上に努めている。 取材先データ 株式会社立命館ぷらす 本社 〒603-8353 京都府京都市北区平野上八丁柳町(ひらのかみはっちょうやなぎちょう)28番地 株式会社立命館ぷらす 衣笠(きぬがさ)事業所 〒603-8577 京都府京都市北区等持院北町(とうじいんきたまち)56-1 TEL 075-465-8182 FAX 075-465-8183(本社・衣笠事業所 代表) (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 Keyword:知的障害、精神障害、大学、特例子会社、清掃、ごみ回収・分別、研修 POINT 1 キャンパス内のごみ回収・分別を柱に、植栽美化や建物清掃など業務拡大 2 京都府の研修制度なども活用し、個々のスキル向上を図る 3 大学のボランティア実習やリサイクル研究に向けた連携も 大学のキャンパスが拠点となっている特例子会社  立命館大学など2大学、4中学校・高等学校、1小学校を運営する「学校法人立命館」(京都府)は、2016(平成28)年に子会社「株式会社立命館ぷらす」(以下、「立命館ぷらす」)を設立し、2017年に特例子会社の認定を受けた。  立命館大学の衣笠(きぬがさ)キャンパス(京都府)を拠点に、滋賀県草津市と大阪府茨木(いばらき)市にある同大学のキャンパスにも事業所を構え、おもに清掃や植栽美化、事務作業などを行っている。2022(令和4)年11月1日現在で従業員は47人、うち障害のある従業員(以下、「業務スタッフ」)は39人(知的障害27人、精神障害12人)。グループ3社の障害者雇用率は2.91%(2022年6月1日現在)だという。  立命館大学の職員として出向し、2018年から代表取締役を務める徳永(とくなが)寿老(としろう)さんに話をうかがった。  「2015年に『大阪いばらきキャンパス』がオープンしたのを機に、大学の人事部内に清掃部門をつくって本格的な障害者雇用を始めました。そこで組み立てた業務をモデルに、2016年から『びわこ・くさつ』と『衣笠』の両キャンパスの事業所でも業務をスタートしました」  もともと立命館大学内の警備・清掃・保守管理業務などは子会社の「株式会社クレオテック」(以下、「クレオテック」)が担当しており、その業務の一部を立命館ぷらすが請け負う形となったそうだ。 就労支援機関への訪問休暇も  立命館ぷらすでは、業務スタッフの採用にあたり、採用前に2〜3回、計3週間程度の実習を行っている。その後の選考試験の結果で採用となると、3カ月から半年間トライアル雇用を実施。勤続3年目からは全員が無期雇用に切り替わる。そして、定年60歳、65歳までの再雇用という制度になっている。週休2日制、実働1日7時間、月給制で、賞与は年に2回支給される。  年次有給休暇は入社1年目から10日取得できるほか、各自が登録している就労支援機関で面談などをするための訪問休暇が月1日、必要に応じて月1日の通院休暇や感染症罹患休暇(年1回5日以内)の制度もある。  職場側は、外部カウンセラーとして臨床心理士や産業医と契約し、定期的にアドバイスを受けている。徳永さんは「職場で体調不良になった従業員の受診や予防接種などを大学の保健センターでできるのも、キャンパス内に事業所があることのよい点です」と説明する。  各事業所には業務支援員が2人ずつ配置され、月1回、業務スタッフと業務支援員のマンツーマンの面談が行われている。就労支援機関からの面談報告をふまえ、仕事や生活についてざっくばらんに話す場となっているそうだ。業務支援員の1人で衣笠事業所長も務める鳥井(とりい)眞木(まき)さんが話す。  「業務スタッフが毎日元気に出社し仕事をするために、心身ともに健康的な生活が続けられるようアドバイスをすることもあります。逆に仕事の進め方について業務スタッフから提案を受けることもあり、職場のさまざまな改善につなげています」  鳥井さんは立命館大学の職員として40年働き、2022年3月に65歳で継続雇用満了後、4月に立命館ぷらすに再就職した。「以前はデスクワーク中心でしたが、いまは毎日のようにキャンパス内を歩き回るので体力がつきました」と笑顔で話す。前任者からは「業務スタッフと一緒に現場を見ながら動いてください」といわれ、「なにごとも同じ目線で業務を見渡せるよう心がけています」という。 京都府のオーダーメイド型研修も活用  仕事を通じて業務スタッフの職業的・社会的な自立をうながすために、立命館ぷらすでは外部講師を招いたパソコンスキル研修、清掃研修やソーシャルスキルトレーニング(SST)(※)なども積極的に行ってきた。2017年度からは京都府の障害者職業訓練制度における、事業主の要望に応じて講師を派遣するオーダーメイド型の訓練プログラム(在職者訓練)も活用している。今夏は「自立した社会人基礎力養成科」と題した研修を、2グループに分けて4日間(1日3時間)ずつ実施。職業人として求められることや、働く意味とキャリアデザイン、ストレスや負の感情とのつき合い方などをテーマに、ワークショップを交えた豊富な内容だ。  「職場に講師を招いて研修ができるのはありがたいですね。次は、調理実習を含めた食生活のスキルアップ訓練を考えているところです」と徳永さん。 ていねいなごみ回収・分別業務  取材に訪れた衣笠事業所は、2022年9月に1人が加わり業務スタッフ16人(知的障害12人、精神障害4人)が働いている。日々の作業スケジュールは8時50分〜15時50分までを5時限に区切り、ごみ回収や建物清掃、はき掃除、学生らが使うプリンターの紙の補充、教室のチョークの補充、シュレッダー作業などを手分けして行っている。  担当作業は毎日、1時限ごとに変わるシフト制で、事務所内にあるホワイトボードの当番表に掲示される。鳥井さんが話す。  「当番表を見て自分の担当を確認し、それぞれ自主的に動いています。作業そのものは私よりもよほどベテランですから、新しく入ってきた後輩にも彼らが仕事を教えてくれています」  ごみ回収作業の様子を見せてもらった。キャンパス内に点在する各棟内の各階の廊下には、4種類の分別ごみ箱(燃やすごみ、プラスチック、ビン・カン・ペットボトル、雑がみ)が置いてある。  大きめの袋がセットされたカートを事業所内から押してきた業務スタッフは、@箱のなかのごみ袋の中からごみを移しかえる、A袋の底に敷かれた水分吸収用の古新聞が汚れていたら取りかえる、B袋についた汚れは雑巾でふき取る。袋はなるべく再利用し、相当汚れた場合のみ取りかえるそうだ。ごみ箱自体の汚れも雑巾でふきあげる。一つひとつ、ていねいな作業に驚かされた。  毎回、原則一人から二人で1棟あたり平均15地点を回る。クレオテックと分担し、屋外広場も含め計30カ所以上を担当しているという。広いキャンパス内の場所や経路を覚えるだけでたいへんそうだが、徳永さんによると「最初は地図や建物平面図を含めた業務マニュアルを見ながら作業します。地図を覚えるのが苦手な人には、いくつか目印となる写真を示して『ここで右に曲がる』などと覚えてもらいます。2〜3カ月ほどでマニュアルなしで回れるようになります」という。  業務スタッフたちはカートを押して作業所に戻ると、プラスチック以外のごみ箱にプラスチックがまぎれ込んでいないか、あらためて手作業で仕分け直していく。京都市では事業者におけるごみの分別が条例で厳しく定められ、少しでもほかの物が混じっていると回収してくれないと徳永さんはいう。  「キャンパス内のごみ箱では分別しきれていないのが現状ですが、業務スタッフはまぎらわしいプラスチックなどの違いも瞬時に区別できるようになっていて、私も脱帽するほどです」  また、大学から出る機密書類の一部のシュレッダー作業も請け負っている。そのまま業者に引き取ってもらうと処分費がかかるが、シュレッダーにかけて資源ごみとして出せば少しの収益になるからだ。  ちなみに夏休みなど学生の長期休暇期間はごみの回収量がぐっと減るため、出勤者も減らし、お盆と合わせて夏期休暇を取れるようにしている。 互いに確認と提案をしながら  ていねいにごみ回収作業をしていた、業務スタッフの八木(やぎ)尚子(しょうこ)さん(45歳)に話を聞いた。八木さんは2016年、立命館ぷらす設立前に同大学人事課で採用された初期メンバーの1人。それまでの20年以上、就労継続支援B型事業所でパンづくりなどをしていたという。  「ここでの作業を覚えるのはたいへんでしたが、新しい仕事をできることが大きな喜びでした。ごみ回収作業などを時間内に終えるのはいまも苦労しますが、毎日ここに通えることが、なによりうれしいです」  休憩時間には、同僚たちと芸能人やゲームの話をするのが楽しみだが、「たまに私のいい方がよくないことがあって、ケンカになってこじれたときは業務支援員さんに相談します。頼りがいがあって、いろいろ話を聞いてもらえます」と明かしてくれた。  それに対して「個々の特性からくるちょっとした衝突もありますが、業務スタッフ同士で解決することも多く、そこはすばらしいなと感じています」と話してくれたのは、業務支援員を務める諸川(もろかわ)祐子(ゆうこ)さん。元々はクレオテックの社員として衣笠キャンパスの管理業務に従事し、今春に同社から出向してきた。クレオテック総務課勤務のころに障害者を雇用している業者と清掃業務でかかわった経験があるが、立命館ぷらすで業務スタッフと一緒に働くようになってから、気づいたことがあるという。  「作業について以前と違う方法を提示すると、『いままでとは異なりますが、それでよろしいですか』と事前に確認してくれるので、とても進めやすいと感じました。私も一方的な指示ではなく『ここは変えたほうがいいと思うけど、どう?』と提案するようにしています」と諸川さん。  職場では、注意深く見守りながら心がけていることもある。  「ちょっとした業務内容の変更があったとき、情報の上書きが苦手な人は、しばらくすると元通りになってしまうので、根気強く伝え続けるようにしています」 「デスクワークより軽作業が合っている」  キャンパス内に散在する桜並木のそばの一角では、業務スタッフ3人がほうきで落ち葉などのはき掃除をしていた。鳥井さんによると、「落ち葉清掃は9月ごろから毎日行っています。ピークになると、はいた先から葉っぱが落ちるので、『後ろはふり返らない。前だけを向いてはき続ける』ことにしています。逆に春から夏は除草・散水作業に追われますね。キャンパスはとても広いので、ほかの清掃業者とエリアを分担しています」とのことだ。  はき掃除をしていた1人、大澤(おおさわ)莞司(かんじ)さん(27歳)は2018年から働いている。京都府内にある大学に入学時、自閉スペクトラム症と診断され、学生支援センターのサポートを受けながら社会学などを学んだ。しかし、就職活動はうまくいかず、卒業後にアルバイトなどを転々としたそうだ。その後、就労移行支援事業所を経由して立命館ぷらすに入社した。自身の特性について、「一つのことに集中しすぎてほかのことを忘れてしまうことと、考えごとをしているうちに体が動かなくなってしまうことです」と説明したうえで、「緊張が続くデスクワークよりも、体を動かす軽作業のほうが自分に合っていると感じています」という。  たまに作業中のうっかりミスはあるが、同僚に指摘してもらいながらうまくいっているそうだ。一方で、「除草作業できれいに草を引き抜いたり、ごみを正確に仕分けたりするのは、自分は得意かもしれないです」と話してくれた。徳永さんたちも、大澤さんの実直な働きぶりに感心し、期待を寄せている。  本を読むのが好きな大澤さんは、職場にも分厚い世界史関連の本を持ってきて、休憩時間に読んでいるそうだ。 コロナ禍を機に業務見直し  衣笠事業所では2021年春から、建物の清掃も請け負い始めている。徳永さんによると、きっかけはコロナ禍だったそうだ。  「オンライン授業で学生が来ないためキャンパス内のごみ回収作業がほぼなくなり、約2カ月間の全日休業と、その後数カ月間におよぶ半日休業などを余儀なくされました。これを機に業務拡大の方針を決めて、建物清掃にふみ切りました」  業務拡大については、当初はパソコン研修の成果を活かして名刺入力やアンケートのデータ入力の仕事も請け負っていたが、名刺の需要や紙でのアンケート調査が激減。「書類や倉庫の整理といった単発作業も注文があればやりますが、そこを重視するよりも、清掃業務の習熟度を高めることの方が有益だと切り替えました」と徳永さん。クレオテックと相談し、いまは研究所や文化施設など3棟を担当。トイレ清掃や廊下はき、会議室の床や階段の日常清掃などを毎日行っている。  トイレを含む建物清掃は、一定のスキルが必要だ。衣笠事業所では、前述の京都府の障害者職業訓練制度により講師を派遣してもらい、「清掃実務実践科」の訓練を計24時間受講。その後の清掃業務に役立ててきた。また、現場で指導にあたる諸川さんによると、清掃方法については業務スタッフと一緒に改善もしたそうだ。  「特別支援学校時代にビルメンテナンスの授業を受けた業務スタッフの意見を参考にして、より合理的な方法に変更した例もありました」  今後は、機械を使ったワックスがけの技術も習得し、定期清掃業務もできるようになるのが理想だという。徳永さんは、アビリンピックへの参加も検討していると話す。  「以前、大会を見学に行ったことがあるのですが、ビルクリーニング種目なら挑戦できそうです。いろいろな機会を活用しながら個々のスキルを上げて、将来どこに行っても活躍できるようになってもらいたいと思っています」 ボランティア実習の場に  立命館ぷらすでは、大学の授業として学生を受け入れる機会も増えてきた。例えば「現代社会とボランティア」の授業では、実習として地域の清掃や園芸などのボランティア活動を行っているが、その一つとして「立命館ぷらすの清掃業務にも、実習として学生を参加させてほしい」と担当教員から相談され、2021年から学生の受け入れが始まっている。徳永さんが説明する。  「実習は、1期間が2週間にわたり、実習1回につき2人まで学生ボランティアを受け入れました。2022年は6月に実習を行い延べ40人ほどが参加しました。私からは授業で、障害者雇用やリサイクル問題などについての話をしました」  ゼミやサークルの学生たちが職場見学に訪れることもある。業務スタッフがごみを細かく仕分け直している様子を見て、捨てる側の分別が徹底されていないことを実感し、「改善策を考えたい」と課題を持ち帰ったそうだ。大阪いばらきキャンパスでは、ペットボトルの完全リサイクルを目ざしている研究室との連携も検討されているという。  「授業などで学生が業務スタッフと一緒にごみ回収の体験をするだけでも意義があります。大学という教育機関のなかに障害者雇用の場があるのは貴重だと思います」という徳永さん。立命館ぷらすの今後について、こう話した。  「大学本体でも事務職などで障害者雇用を進めています。職場のダイバーシティを推進するうえで、私たちが、これまでの経験や実績をもとに現場でアドバイスできることもあると思います。大学キャンパスのなかで活動している特例子会社だからこそできることを考えていきたいですね」 ※ソーシャルスキルトレーニング(SST):対人関係など社会で生きていくために必要なスキルを身につける訓練 写真のキャプション 代表取締役の徳永寿老さん 業務支援員で衣笠事業所長の鳥井眞木さん 滋賀県にあるBKC事業所での外部講師による研修の様子(写真提供:株式会社立命館ぷらす) 担当作業や時限などが掲示された当番表 燃やすごみなどのごみ箱とリサイクル用の雑がみ回収箱 手作業でのごみ分別作業 機密書類のシュレッダー作業 業務スタッフの八木尚子さん ごみを回収し、袋の汚れをふき取る八木さん 業務支援員の諸川祐子さん 業務スタッフの大澤莞司さん キャンパス内をはき掃除する大澤さん 水分補給や読書など思い思いに休憩時間を過ごす 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 事業主のみなさまへ 令和5年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ 〜常用雇用労働者の総数が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜 令和5年4月1日から同年5月15日の間に令和5年度分の申告と申請をお願いします。 前年度(令和4年4月1日から令和5年3月31日まで)の雇用障害者数をもとに、  ○障害者雇用納付金の申告を行ってください。  ○障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。  ○障害者の法定雇用率を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 【申告申請期間】 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者特例調整金 特例給付金 申告申請 対象期間 令和4年4月1日〜令和5年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和5年4月1日〜令和5年5月15日 (注1、注2、注3) (注1)年度(令和4年4月1日〜令和5年3月31日)の中途で事業廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告申請(障害者雇用納付金の場合は、申告額の納付)が必要です。 (注2)障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金及び特例給付金は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できませんので、十分にお気をつけください。 (注3)常用雇用労働者の総数が100人以下(申告申請対象期間に常用雇用労働者数が100人以下の月が8か月以上)の事業主が、特例給付金の申請を行う場合の申請期限は令和5年7月31日となります。 *詳しくは、最寄りの都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください(33ページ参照)。 JEED 都道府県支部 検索 常用雇用労働者が100人以下(申告申請対象期間に常用雇用労働者数が100人以下の月が8か月以上)の場合は障害者雇用納付金の申告義務はありません。 なお、雇用障害者数が一定数を超えている場合は報奨金の支給申請をすることができます。 詳しくは、最寄りの都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。 申告申請の事務説明会にぜひご参加ください。 *全国各地で2〜3月に開催します。*参加費は無料です。 当機構HP では、記入説明書・動画も掲載しています。 JEED 納付金 説明会 検索 「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない 〜障害者雇用の専門家が企業のみなさまを支援します〜 障害者雇用の課題に対応した経験をもつ、「労務管理」「医療」「建築」などさまざまな分野の専門家である「障害者雇用管理サポーター」が企業のみなさまの疑問や課題に対応いたします。 サポーターの活用例 相談内容  精神障害のある社員の職場定着に向けて、自社の取組みの参考とするため、ほかの企業が実際にどのように取り組んでいるのかを把握したい。 支援内容  相談企業が、障害者雇用管理サポーターが所属している企業(精神障害のある社員を複数人雇用)を訪問した。  サポーターから、「電話応対の可否など、精神障害のある社員一人ひとりの特性に合わせて、職務内容や配置場所を変えていること」、「管理者による体調管理ができるように、毎日障害のある社員から日誌の提出を求めていること」、「障害のある社員本人の了解のもとで周囲の従業員に障害の特性を説明し、配慮を求めていること」などについて説明した。  相談企業からは、配置場所や活用している資料等について実際に目にすることができ、わかりやすく勉強になったとの意見があった。 相談内容  初めて全盲の方を雇用するにあたり、職務内容や就労支援機器、職場環境の整備についてノウハウがないため、アドバイスがほしい。 支援内容  視覚障害者に対する支援の専門家である障害者雇用管理サポーターが、相談企業を訪問した。  サポーターから、企業の担当者と一緒に社内の作業動線を確認しながら、点字シールの活用や座席の配慮など環境整備、具体的な就労支援機器の紹介、職務の切り出し、障害特性をふまえたほかの社員とのかかわり方、通勤時の支援などの助言を行った。  相談企業からは、「専門家から具体的でわかりやすいアドバイスが得られてよかった」、「特に点字やトイレの整備、歩行訓練士など、知らなかった点や気づかなかった点について助言が得られてよかった」との意見があった。 ※上記のほか、特例子会社の設立や運営に関する助言も行っています。 ご相談受付 サポーターによる支援をご希望の場合は、次のどちらかの方法でご連絡ください。 ★中央障害者雇用情報センターの障害者雇用支援ネットワークコーディネーターにご相談ください。  事業主のみなさまの相談内容に合わせて、サポーターと調整を行います。(相談・支援に係る費用は無料です。) TEL:03-5638-2792 E-mail:syougai-soudan@jeed.go.jp ★障害者雇用管理サポーター検索サイト「障害者雇用支援人材ネットワークシステム」により、ご自身でサポーターを検索し、直接連絡のうえ、支援の依頼についてご相談いただけます。(支援に関する費用はサポーターによって異なります。サイトのサポーター検索結果からご確認ください。 JEED 支援人材 検索 こちらのQRコードからも「障害者雇用支援人材ネットワークシステム」 にアクセスできます <お問合せ> 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 第10回国際アビリンピック 派遣選手決定! 2023(令和5)年3月22日(水)から3月25日(土)まで、フランス共和国メッス市にて開催される第10回国際アビリンピックの職業技能競技に派遣する選手30名を、以下の通り決定しました。 職業技能競技種目 氏名(ふりがな) 都道府県 家具(応用) 伊藤(いとう)俊貴(としき) 愛知県 家具(基礎) 深見(ふかみ)尚生(なおき) 神奈川県 洋裁(応用) 穴水(あなみず)洋美(ひろみ) 山梨県 山田(やまだ)美里(みさと) 東京都 洋裁(基礎) 北村(きたむら)重雄(しげお) 宮崎県 苑田(そのだ)愛美(まなみ) 熊本県 フラワーアレンジメント 田中(たなか)達也(たつや) 新潟県 山口(やまぐち)めぐみ 愛知県 歯科技工 中(なかがわ)直樹(なおき) 埼玉県 三津橋(みつはし)幸勇(ゆきお) 北海道 ネイリスト 荒山(あらやま)美夢(みむ) 千葉県 山下(やました)加代(かよ) 東京都 コンピュータ組立 赤地(あかち)和典(かずのり) 千葉県 コンピュータプログラミング 伊敷(いしき)学(まなぶ) 沖縄県 角田(かくた)智活(ともかつ) 青森県 職業技能競技種目 氏名(ふりがな) 都道府県 ホームページ作成 金子(かねこ)理沙(りさ) 広島県 佐藤(さとう)知沙子(ちさこ) 愛知県 データ処理 中山(なかやま)太郎(たろう) 熊本県 米田(よねだ)涼子(りょうこ)福岡県 電子機器組立 小倉(おぐら)怜(れい) 三重県 島田(しまだ)美穂(みほ) 三重県 機械CAD 木村(きむら)信隆(のぶたか) 千葉県 篠(しの)孝忠(たかのり)愛知県 写真撮影(屋外) 大塚(おおつか)弘也(ひろや) 鹿児島県 小島(こじま)未来(みき) 愛知県 ポスターデザイン 海藤(かいとう)航貴(こうき) 宮城県 英文ワープロ 佐藤(さとう)翔悟(しょうご) 茨城県 山本(やまもと)巧(たくみ) 愛知県 クリーニングサービス 下内(しもうち)寿也(じゅにや) 京都府 本田(ほんだ)駿斗(はやと) 神奈川県 (競技種目順/同一競技種目内は氏名五十音順)  今回、派遣選手として決定したみなさんは、2020(令和2)年に愛知県で開催された第40回全国障害者技能競技大会(アビリンピック)における成績優秀者から選出しました。同大会は、本フランス・メッス大会が代替したロシア大会に向けた選考会として、第36回から第39回の全国障害者技能競技大会金賞受賞者も招へいし実施されたものです。  みなさまの応援、よろしくお願いいたします。 国際アビリンピックとは  技能競技を通じて障害者の職業能力の向上を図るとともに、事業および社会一般の理解と認識を深め、さらに国際親善を図ることを目的として、1981(昭和56)年の「国際障害者年」を記念して、世界で初めて東京で開催されました。  以来、ほぼ4年ごとに開催されており、今回のフランス大会で第10回目を数えます。 <お問合せ先> 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部 雇用推進課 国際業務係 TEL:043-297-9536 FAX:043-297-9547 E-mail:kokusai2022@jeed.go.jp 【P15-18】 グラビア 食肉加工を通じて、地域とつながる 社会福祉法人白鳩会 第2花の木ファーム(鹿児島県) 取材先データ 社会福祉法人白鳩会(しらはとかい) 第2花の木ファーム 〒893-2501 鹿児島県肝属郡(きもつきぐん)南大隅町(みなみおおすみちょう)根占川北(ねじめかわきた)9445-2 TEL 0994-28-1011 写真・文:官野 貴  鹿児島県の大隅(おおすみ)半島を拠点に福祉事業を展開する「社会福祉法人白鳩会(しらはとかい)」は、関係団体と連携し、開放型福祉農園「花の木農場」を運営し、お茶などの生産や加工、豚の繁殖や肥育、食肉加工を行っている。農作物を生産する一次産業だけではなく、食品加工の二次産業、さらにサービスや販売などの三次産業を一体化して生産物の価値を高める「六次産業化」を通じて、障害者のほか、働きづらさや生きづらさを抱える人の居場所づくりと役割の多様化を目ざしている。  同法人が運営する多機能型事業所の「第2花の木ファーム」では、豚肉のハムやソーセージへの加工や、精肉などの食肉加工を担当しており、知的障害などのある利用者が、それぞれの特性を活かして働いている。ここでつくられた製品は、農場内のカフェや近隣の道の駅、個人商店などで販売され、通信販売も行っている。  精肉班で働く河野(こうの)志乃(しの)さん(32歳)は、スライサーでカットした豚肉のパック詰め、すじ切りやミンチ作業などを担当している。今後のステップアップを目ざし、ラップ包装作業、商品を計量しラベルを貼るなどの新しい業務にもチャレンジ中だ。また、週に一度、利用者の給食をつくる調理場で、調理補助や盛りつけなども担当しており、「失敗して落ち込むこともありますが、作業がうまくいくとやりがいを感じます」と語る。河野さんは、自身が生活する入所施設でも積極的に職員をサポートしているそうだ。「体を動かして働くことが好きなので、掃除や給食の配膳などを手伝っています。職員が喜んでくれることがとてもうれしいです」と笑顔で話してくれた。 写真のキャプション 花の木農場の全景。広大な敷地でお茶や野菜などを生産している(写真提供:第2花の木ファーム) 第2花の木ファーム。就労継続支援B型事業では28人が働いている 花の木農場の養豚場では、障害のある利用者が職員とともに白豚を育てている(写真提供:第2 花の木ファーム) 施設の清掃も利用者が行う大事な作業の一つだ 試験的に栽培した「えごま」の脱穀作業。手作業でていねいに行う 河野(こうの)志乃(しの)さん ラップ包装作業にチャレンジ中の河野さん(左)。破れないように、シワにならないように力加減が重要だ 農場内のカフェで販売されているハムやソーセージ 河野さんがパック詰めした豚肉も店頭に並ぶ 調理場で給食を盛りつける河野さん。今日のおかずは「ポークソテー」 利用者への配膳。利用者ごとに、食材のカット方法や量が異なるため注意が必要だ 【P19】 エッセイ 発達障害と就労 〜企業の雇用管理力をサポートする(2)〜 第3回 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺 副所長 砂川双葉 砂川双葉(すながわ ふたば) 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺・副所長。社会福祉士、介護福祉士。2013(平成25)年、特定非営利活動法人クロスジョブに入社。就労支援員としておもに発達障害のある人の支援、障害雇用を行う企業の支援を行う。2021(令和3)年、当機構の第29回職業リハビリテーション研究・実践発表会で、就労移行支援事業所におけるASD者のアセスメントと支援についての実践報告を発表している。 採用時、就職初期に必要なこと  前回(※1)は、身体障害があり複数の離職経歴を持つ人が、職場において不適切な行為が見受けられる事例を紹介した。  本事例の対象者は支援機関に所属せず単独で就職をしたケースであり、本人の自己理解の弱さや企業側もコミュニケーションがうまく図れず不適切な行為をする要因の把握ができていなかったため、職場内の歯車がかみ合っていなかった。  そうした状況を受けて特定非営利活動法人クロスジョブ(以下、「クロスジョブ」)が実施したことは、(1)本人のアセスメントを行う、(2)アセスメント内容を基に支援を実施する、(3)アセスメント・支援内容を企業に共有する、(4)今後の働き方・サポート内容を助言する、という4点であった。就労移行支援事業所などを通じて就職したケースであれば(1)と(2)については求職活動前に取り組むべき内容だが、障害者雇用の数の確保が優先されると、このフローがずさんになることも大いに考えられる。  クロスジョブは「大阪府障がい者委託訓練事業(障がい者の多様なニーズに対応した委託訓練)」に参画し、職場から離れた環境で自己評価と他己評価をすり合わせる場を提供してきた。採用時、就職初期の段階では、アセスメント・自己理解の量、そして内容が雇用の質に影響すると考える。そのため、支援機関が企業にできることはこれらの情報を提供し、企業と一緒に人材育成にかかる時間や期間、方針をともに検討していくことがあげられる。また、職場で問題が起こってから対処していくことはむずかしい面がある。企業と支援機関が早期に連携できていれば「違和感」の段階で情報共有することが可能になり、「これはどうなんだろう」と感じたことを継続的に伝えあえる。そのような関係性が重要だ。 職場全体で、「働く土壌づくり」を  支援機関が企業とやり取りをする際、その窓口は人事担当者やキーパーソンに限られることが多い。しかし、働く本人は先輩や同僚などほかの多くの従業員とも一緒に仕事をしているため、現場の理解を深め協力体制を構築することは必須だ。企業訪問の際は、職場内の人間関係、パワーバランスをアセスメントすることはもちろん、現場の方々がどれだけ障害者雇用について把握しているか、興味をもっているかを確認していくことが大切だ。  本事例では、訓練におけるアセスメントや今後の方針の共有の場に、管理職以外の従業員にも出席をお願いした。現場の声を聴き、その声に応えるためである。管理職や支援機関からいくらお願いをしても、現場の受入れ体制が整っていなければ支援の効果は発揮されない。雇用の質を上げていくためには職場全体で「働く土壌づくり」をしていくことが必要で、その過程で支援機関ができることは、管理職のリーダーシップを得ながら継続した対話の場をつくっていくことだ。「企業のマネジメントを支えるために支援機関が存在する」というイメージで、対話では管理職から伝える方が効果的か、または専門家である支援機関から伝える方がよりよい結果につながるかなど、役割を分担しながら協力体制を構築していくことも検討しなければならない。 今後、期待すること  厚生労働省は、企業等での働き始めに勤務時間を段階的に増やしていく場合や、休職から復職を目ざす場合に、その障害者が一般就労中であっても、就労系障害福祉サービスを一時的に利用できることを法令上位置づける障害者総合支援法等の改正法案を臨時国会に提出し、審議が行われている(執筆時点)。福祉から雇用への移行がしやすくなることや、福祉サービスを利用しながら短時間就労でステップアップを行うなど働き方の多様化が進みそうだ。それにともない今後期待したいのは、リワーク支援の充実である。現在、就労移行支援事業所におけるリワーク支援については市町村によって支給決定が認められないケースもあり、地域差がある。制度が整っていけばリワーク支援の充実や「大阪府障がい者委託訓練」のような取組みを拡大させていくことが期待できる(※2)。企業側が安定して障害者雇用に取り組めるよう国の動きにも注目していきたい。 ※1 当連載第2回(2022年12月号)は当機構ホームページでご覧になれます ※2【参考文献】砂川双葉:第27回職業リハビリテーション研究・実践発表会発表論文 「在職障害者の就労支援〜『大阪府障がい者委託訓練(在職者訓練)』から考える職業準備性と企業の雇用管理」 http://www.crossjob.or.jp/common/uploads/2019/12/74f46916171bb385dad530d2d9b75838_f8671fd4ff 3d3bc735b4f47656b7ef9d.pdf 【P20-25】 編集委員が行く 「地域」とは、地元の関係者のつながりを深めてこそ「地域」になる 株式会社オート(長野県)、社会福祉法人夢工房福祉会 ハルル(長野県)、伸商機工株式会社(長野県)、長野県長野養護学校(長野県) あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 取材先データ 株式会社オート 〒389-1104 長野県長野市豊野町浅野1928-1 TEL 026-257-4868 社会福祉法人夢工房福祉会 ハルル 〒382-0054 長野県須坂市高梨343-1 共生ビル TEL 026-248-3002 伸商機工株式会社 〒382-0024 長野県須坂市塩野1119-3 TEL 026-246-8899 FAX 026-246-2535 長野県長野養護学校 〒381-0041 長野県長野市大字徳間字宮東1360 TEL 026-296-8393 FAX 026-251-3177 編集委員から  長野県は日本アルプスを抱える有数の高山地帯であり、面積も広く、障害保健福祉圏域は10に分かれている。今回は長野圏域で障害者雇用を行っている企業と、その企業と連携をしている特別支援学校を取材させていただき、「地域」とは、そこに暮らし働く人たちのつながりをくり返しながら、新しい形を地域につくりだす営みであることをあらためて知ることができた。  今回の取材に協力していただいた長野養護学校の進路指導主事の小林弘明先生にあらためて感謝を述べたい。 写真:官野 貴 Keyword:特別支援学校、就労継続支援B型事業所、実習 POINT 1 地域で育つ、育てる 2 よい学びは成人期を豊かにする 3 良好なコミュニケーションは主体性を伸ばす 社員一人ひとりの特性とよさを引き出しながら育てる  株式会社オート(以下、「オート」)は、従業員23人に、派遣会社からの派遣社員5人を合わせた28人で、フォークリフトなどの油圧バルブの部品を製造している。28人のうち7人が障害のある従業員である。社屋は長野市の東側、山々が囲む千曲川(ちくまがわ)沿いの堤防近くにある。やがて信濃川へとつながる千曲川の川沿いの自然豊かな環境に工場もある。しかし、代表取締役社長の上原(うえはら)隆(たかし)さんによると、3年前の台風19号による河川の氾濫で、工場の1階部分が水没する被害を受けたという。社員総出でその災害から立ち直り、いまの工場での事業が継続しているとのことだった。  代表取締役専務の山田(やまだ)ゆかりさんにお話をうかがった。障害のある人の雇用を始めたのは14年ほど前。地元のハローワークの紹介で、高次脳機能障害で精神障害のある人を採用し、トライアル雇用から始め8年間働いてもらった。次に採用したのは、精神障害者保健福祉手帳を持つ2人であった。どの部署に配属し、どのような仕事をしてもらうかは、試行錯誤の連続だったという。  そうしたなか、山田さんと長野県長野養護学校の進路指導主事の小林(こばやし)弘明(ひろあき)先生が出会うことになる。出会いのきっかけは、地域にある中小企業家同友会の会合だった。会員企業による障害者雇用についての研究会があり、参加した特別支援学校の進路指導の先生方と山田さんは連絡を取り合うようになったという。会員の中小企業では、社会が大きく変化するなかで、人材不足と社員の高齢化の課題に直面していた。そのような状況を打開するべく、長野養護学校の在校生の職場実習が始まり、卒業生の雇用がスタートする。  山田さんによると、オートの業務内容は油圧バルブの部品製造であり、金属加工の精密さはミクロン(1000分の1o)単位で求められる。その分工程が多く、精巧な測定器を取り入れることで、品質の高い製品を製造できるようになった。障害のある従業員のそれぞれの適性や能力を見ながら、1年ほどをかけて一人ひとりの特性に合わせた作業工程を探し、担当してもらっている。そのために視覚的にわかりやすい作業マニュアル、手順書を作成し、だれもが使えるように標準化をしている点が優れていると感じた。人材不足が深刻化するなか、工程を細かく分けて作業を標準化することで、雇用する従業員の幅を広げ、定着を図ってきた実績がある。  5年ほど前からは、オートの近くにある社会福祉法人夢工房福祉会が運営する就労継続支援B型事業所「ハルル」から、施設外就労として利用者を受け入れている。ちょうど取材時にハルルの利用者たちが働いているところを見学できた。職員1人に利用者6人ほどのチームで、部品を入れる箱の油の拭き取りと洗浄を担当していた。山田さんによると、この作業があることで部品の品質が上がり、加えて作業マニュアルと作業手順書の蓄積により、ISO(国際標準化機構)の規格も取得してきた。製品を入れるケースを常にきれいにしておくことは必要な作業だが、人材不足のなかでは苦労が多かった。それを解決できたのがハルルのような地域の就労継続支援B型事業所との連携だったという。  小林先生の案内で、翌日にハルルを見学させていただくことができた。長野市の東側、須坂(すざか)市にある法人所有のビル(大型スーパーマーケットの空き店舗を改修)内には、1階に就労継続支援B型事業所ハルルと、法人事務局、相談支援事業所が、2階には、就労継続支援A型事業所、就労移行支援事業所、放課後等デイサービス事業所があるそうだ。また、要保護者および要援護者に対して、就労または技能の習得のために必要な機会や場所を提供する「須坂市福祉企業センター」も併設している。  社会福祉法人夢工房福祉会の常務理事・統括所長の小林(こばやし)珠美(たまみ)さんに施設内を案内してもらいながら、事業運営についてうかがった。大型店舗だった建物のよさは、作業活動に必要なスペース、製品や材料の倉庫を確保できることにある。また活動スペースを広く取ることができ、障害のある人の特性に合わせた環境を用意している。感覚過敏のある障害児・障害者に対して、周囲の騒音や会話による刺激、人や機械などの動きによる視覚的な刺激を避け、個別の空間を用意するなどの配慮ができている。ソーシャルディスタンスが必要な新型コロナウイルスの感染防止にも役立った。また、例えば段ボール工場の機械などを譲り受けてその製造を始めるなど、地域の企業や学校との連携により、さまざまな活動を行い、受注できている点もその特徴である。そのような運営方針から、オートをはじめとする「施設外就労」の取組みが生まれてきている。 スモールステップで担当する工程を増やす  伸商(しんしょう)機工(きこう)株式会社は、須坂市を流れる百々川(どどがわ)沿いの工業団地にある。精密板金製造業として、鋼材を使用し、板金技術である切断、曲げ、溶接を用いて、機械部品・カバー・フレーム・箱・ダクトなどを製造している。代表取締役の宮川(みやがわ)岳洋(たかひろ)さんにお話をうかがった。従業員は27人(インドネシアからの技能実習生4人を含む)で、長野養護学校の卒業生を1人採用している。その人が、2022年4月に入社した山本(やまもと)春太(しゅんた)さんだ。工場内には、タレットパンチプレスという型抜きの鉄板加工の大型機械が設置されており、さまざまな精密機械が並んでいる。山本さんは、製造された部品の面取り作業に工作機械で取り組んでいた。材質や深さを確認しながら、一つずつ正確に作業をしている。  宮川さんによると、学校での実習のときから少しずつ作業を覚え、就職後は山本さんが担当できる仕事も増えてきたそうである。しかし、いろいろな仕事を任せてうまくできたとしても、本人にとっては過度のストレスを感じてしまうこともある。そのことを経験している宮川さんは、現状維持からスモールステップで気長に能力を伸ばすことを試みてきた。それが定着支援につながり、今日の山本さんの自信につながっている。山本さんのできる仕事が増えるにつれ、ほかの社員はパソコンによる作業手配書の入力作業など、別の業務を担当できるようにもなった。同地域でも、この10年あまりで働き方が大きく変わってきたそうである。人材不足に加え、働き方改革があり、社員にとっても会社にとっても効率的で生産性の高い働き方が重要になっている。  宮川さんと長野養護学校の小林先生が出会ったのは、オート同様、地域の中小企業家同友会の「障害者問題委員会」だった。企業および事業主の方々と長野圏域の特別支援学校と障害者就業・生活支援センターが、地域の障害者雇用について考える研究会として立ち上げた。そのことがきっかけとなり、特別支援学校の実習生を受け入れることになった。受け入れにあたっては、従業員の障害のある人への理解と協力が必要である。学校の進路指導の先生が、生徒の特性をふまえて、担当できそうな仕事を一緒に考えてくれた。教え方やコミュニケーションの取り方も、実習を通して引き継がれていく。実習から採用につなげるためには、機械を安全に操作し、けがをしないような配慮、安全に通勤できる支援などの労働安全衛生の課題がある。それを解決するためには、生徒のできる作業や工程を、関係者が一つずつ確かめながら増やしていくことが必要となる。  長野県も含め、地方のおもな移動手段は自動車である。公共交通機関の利用だけでは、通勤範囲に限りがある。山本さんも工業団地の入り口まではバスで通勤し、そこからは宮川さんをはじめとして、従業員のみなさんが交代で送迎している。自転車での通勤も考えたものの、雪が降る冬の通勤はむずかしい。将来は普通自動車免許を取得することも考えられるが、本人の努力と関係者の協力が今後も必要となる。雇用を継続するためには、従業員の働く力を育成するとともに、安全に通勤できる環境の整備が大切であることをあらためて感じた。  最近、宮川さんは障害のある人の社会参加の場として、雇用だけではなく、地域の清掃や地域の子どもたちとの活動をつくり出す機会を考えている。その一つとして、アウトドア用品や日常のオリジナル用品を制作する事業を行う「まるのび商会」を立ち上げた。たき火台や薪ストーブ、バーベキューコンロなど、ロゴやイニシャルを入れて、オリジナルアイテムを制作している。「地域」のなかで障害のある人にかかわる人がつながり、新たな「地域」をつくり出す営みが生まれるかもしれない。 小中高の一貫した教育と特色ある分教室の「長野養護学校」  長野県長野養護学校の本校は、長野市の北東に位置し、山の中腹にある小高い丘の上に建つ。周囲は丘陵地帯であり、りんごなどの果樹園が並ぶ。本校には寄宿舎が併設され、児童生徒数が増えるごとに増築されてきた。しかし近年は小学部・中学部の生徒は地元の学校に通うようになり、寄宿舎利用者も減ってきているとのことである。  分教室は3校ある。「三輪(みわ)教室」は、長野地区特別支援教育相談センターが併設されており、小学部の児童が学んでいる。「朝陽(あさひ)教室」は、長野県長野盲学校に併設されており高等部の生徒が学んでいる。「すざか分教室」は、統廃合された高等学校の空き教室を利用して高等部の生徒が学んでいる。これら分教室を加え、同校全体で今年度は231人の児童生徒が学んでいる。創立は1961(昭和36)年で、長野県で最初の「養護学校」である。近年、ほかの自治体が「特別支援学校」と名称を変えているなか、こちらでは「養護学校」の名前を残している。  教育方針を『すべての子どもの人権が尊重され、子どもが主体となる教育をすすめる』とし、社会参加するうえで大切な「本人による本人のための権利擁護の意識」、すなわち「自分は自分でいいんだよ」を感じられる教育活動を中核とし、個々の可能性と能力を最大限に伸ばす教育を目ざしている。学校教育目標の「自分から 自分で めいっぱい」(長野養護学校全体の共通目標)は、児童生徒の目ざす姿を表している。  取材時、本校では午前中の授業が始まっていた。小学部では、「遊びの指導」が行われていた。配慮された環境や遊具があるなか、元気に自ら楽しんでいる子どもたちの姿は清々しく感じた。中学部では、朝の集会があり、身体全体を使う運動が行われていた。高等部も同様に、身体全体を使う運動として、朝のマラソンに取り組んでいた。コースは学校周辺のりんご畑を回る校外のコースになっており、景色は美しいがアップダウンのある約1qのコースであった。働く力の基礎となる体力とやり抜く心を育んでいる。  高等部の見学では、「作業学習」を見学した。各作業班は10月の文化祭(長養(ちょうよう)祭)に向けて製品づくりをしているところであった。木工班、陶芸班、クッキー班、手芸班、紙すき班、農耕園芸班の作業を見学した。クッキーづくりでは保健所の営業許可を取り、外部に販売している。紙すき班の名刺づくりは先生方からの注文が多い。学校周辺の農地を借りて作業をしている農耕園芸班の収穫作物は、コロナ禍前はJA(農業協同組合)の店舗でも販売していたそうだ。こうした、お客さまを意識し品質を大切にしながら、先生方の指導のもと真剣に取り組む生徒たちの姿に、日ごろの学びの成果が感じられた。 長野県長野養護学校高等部「すざか分教室」  長野駅から長野電鉄長野線に乗り、「須坂駅」で下車して程近くに「すざか分教室」の校舎はある。旧長野県須坂商業高等学校の空き教室を利用して開設した長野養護学校の分教室で、3学年32人が在籍している。すぐそばに長野県須坂創成(すざかそうせい)高等学校(商業科・創造工学科・農業科)があり、交流学習も行っている。分教室進路指導主事の頓所(とんどころ)洋(ひろし)先生にお話をうかがった。  高等部の教育目標は、「卒業後の社会人としての長い人生を『豊かに生きる力』や『社会生活や職業生活を営むための基礎となる力』を育て、地域社会で主体的に生きる生徒を育成」するとある。このことを目の当たりにした授業風景だった。  訪問した時間は作業学習が始まっていて、「手工芸」、「食品加工」、「農耕園芸」の各作業を学ぶ生徒が配置についていた。リーダーは3年生が受け持ち、てきぱきと指示をしている。  農耕園芸課の作業では、畑から収穫した野菜を整え、校門そばの無人販売所へ並べていく作業は担当の生徒が行い、見栄えよく並べる作業は上級生の役割であった。店の正面から販売所の状態を見て、野菜が見えにくければ並べ直し、納得した表情でまたほかの野菜を並べる。まさに「お客さま目線の動き」は堂に入っている。珍しい葉物を見つけたのでたずねると「金時草(きんじそう)」とのこと。美味しい食べ方を聞くと、おひたしか炒め物だという。そこへ早くも近所の方が訪れた。もう何回も買ってくださっているとのことで、お友だちも連れ立っての来店だった。無人販売所とはいえ、お客さまの顔を見たら作業服のままでもていねいに明るく接客する。教員は様子を見守り、ともに働いているという雰囲気である。校内にある農場は、もとはテニスコートだったそうだ。生徒と教師が一緒に開墾し、農地にした。近年この地域でも、高齢者の一人暮らしが増えているため、歩いてこられる無人販売所は好評とのこと。収穫した作物は、このほかに市内の飲食店に食材として販売している。  手工芸課では、須坂市の伝統産業である絹織物を扱う呉服店を窓口に、地域の方から不要になった着物をいただき、シルク・コサージュをつくっていた。製品の品質は高く、地域の観光交流センターをはじめ市内店舗などで販売している。食品加工課ではクッキーやパウンドケーキの製造をしており、先輩が後輩に教えながら、二人一組で一人ひとりがすべての工程をこなしている。これらの製品は、市内の店舗や長野県須坂創成高等学校と連携した総合技術高校販売実習の「創成フェア」で販売している。  これらの作業に加え、ビルメンテナンス(清掃)は、必修として全員が学ぶ。交番や幼稚園、自治会の集会所など地域の公共施設などの清掃を実施し、実践的に学んでいる。 長野県長野養護学校高等部「朝陽教室」  しなの鉄道北しなの線「北長野駅」から南東に「朝陽教室」はある。長野県長野盲学校の校舎内に併設されている。選抜制であり就労に向けたキャリア教育を進めている。生徒数は各学年定員8人で毎年8割以上が企業への就労を果たしているそうだ。  当日は文化祭準備で慌ただしいなかを訪問させていただいた。長野県長野盲学校高等部の生徒との合同プログラムの練習を見学でき、両校の絆を垣間見ることができた。普段の成果を多方面から発表する文化祭の前で、学習の様子は見学できなかったものの、作業室にはすでに生徒の作品や製品が展示されており、全国アビリンピックで入賞経験のある生徒のフラワーアレンジメント作品は見事だった。  普段は教科学習とともに作業学習を学んでいるが、高齢者施設への出張清掃や事務作業補助、野菜や花の栽培と地域での販売も行っているとのことであった。少人数の編成だが、むしろ先輩生徒から後輩への伝達がスムーズであり相互にコミュニケーション能力を発揮しやすい条件を整えているともいえる。校内実習では企業から仕事を下請けさせてもらうが、外部とのかかわりにおいても地域のなかで生活する力や人間関係を築く力の育成として生徒同士の細やかな関係が役立っていると思われる。  人を思いやりお互いに同世代の仲間と学びあう青年像を目ざしている姿は、卒業後の生活の向上に反映されることであろう。 おわりに  取材の最後に、長野県長野養護学校の藤澤(ふじさわ)里美(さとみ)校長と、あらためて進路指導主事の小林先生にお話をうかがった。本校および分教室の教育は、地域の産業や住民とのつながりを大切にしながら、時間をかけてつくりあげてきている。お2人はかつて長野養護学校で同僚として働いており、特別支援教育の長い歴史やその変遷も共有されていることを知った。小林先生は18年間も長野養護学校で勤務されている。本校での高等部の授業見学を案内していただくなかで、小学部および中学部の児童生徒に廊下で出会うと、それぞれの子どもに寄り添ったコミュニケーションを取る。一人ひとりの成長を把握し、子どもたちも先生方の気持ちに応える。学部を越え、学校全体の進路指導主事であることがこのやり取りからわかる。  管理職と教育現場のリーダーに専門性があると、学校経営は発展する。しかし同時に、作業棟の施設設備、教職員の会議室の確保も含め、教育環境の課題は多いと思われる。今後の教育の質を高めるためにも、人材の確保と施設設備の改善について、学校からの発信と自治体および地域からの理解と協力をさらに期待したい。 写真のキャプション 株式会社オート 株式会社オート代表取締役社長の上原隆さん(右)と代表取締役専務の山田ゆかりさん(左) 長野県長野養護学校進路指導主事の小林弘明先生 オートで油圧バルブ用部品の検査を行う長野養護学校卒業生 精巧な測定器でミクロン単位の検査を行う 写真入りでわかりやすくつくられた手順書 箱に付着した切削油や防錆油を拭き取り、洗浄するオート従業員 オートでは、ハルルの利用者が施設外就労を行う 社会福祉法人夢工房福祉会常務理事・統括所長の小林珠美さん 社会福祉法人夢工房福祉会 ハルルでは地域の企業から段ボールの製造を受注している 伸商機工株式会社 部品の面取り作業を行う山本さん 伸商機工株式会社代表取締役の宮川岳洋さん 長野県長野養護学校本校 りんご畑の間を駆け抜ける校外のマラソンコース 木工班の作業の様子。フラワースタンドや木製パズルを作成する 陶芸班では、成形作業を行っていた 紙すき班が作成した色とりどりの名刺や封筒 長野県長野養護学校高等部すざか分教室 リーダーの3年生が指示を出し作業が進められる 校内の農園で収穫された「金時草」 手工芸課が製作したシルク・コサージュ 新鮮な野菜が並ぶ無人販売所の「鮮菜屋(せんさいや)」 農耕園芸課は、植えつけのため畑を耕していた クッキーやパウンドケーキを製造する食品加工 分教室進路指導主事の頓所洋先生 公共施設での清掃活動。専用の機材を使いこなし高所の窓ふきを行う(写真提供:長野県長野養護学校高等部すざか分教室) 2022年11月に行われた第42回全国アビリンピックの「フラワーアレンジメント」種目に出場、銅賞を獲得した草間(くさま)陵太(りょうた)さん 長野県長野養護学校高等部朝陽教室 長野養護学校の藤澤里美校長 校内では文化祭の準備作業が進められていた 【P26-27】 クローズアップ 職場内の支援体制の課題と対応 第3回 〜グループ企業の障害者雇用をサポート〜  障害のある社員が働きやすく定着しやすい職場となるためには、社内の支援体制づくりがポイントとなります。当連載の第3回は、助言やコンサルティングを行い、特例子会社としての経験から得られたノウハウをグループ企業内で共有している「株式会社日立ハイテクサポート」の事例を紹介します。 監修:中央障害者雇用情報センター(★) グループ企業の障がい者雇用を支える『障がい者雇用支援センタ』  半導体検査装置などの先端技術分野で事業を展開する株式会社日立ハイテクの特例子会社として、人事、総務、財務、情報システム、製造などの業務支援サービスをグループ各社に提供している株式会社日立ハイテクサポート(以下、「日立ハイテクサポート」)。1987(昭和62)年4月に設立され、同年9月に特例子会社に認定されました。現在、従業員の約3割が障がいのある社員で、障がいの有無に関係なく社員が互いに連携して、日々の業務にあたっています。  同社では、自社内で障がい者が活躍する環境を整えるのと同時に、30年以上にわたる障がい者雇用への取組みで得られた知見を活かして、日立ハイテクグループの8企業を対象に、障がい者雇用に関する助言やコンサルティングを行うなど、グループの障がい者雇用に向けた中核的な役割をになっています。  「特例子会社というと、一般的には、障がいのある人を一カ所に集めて管理運営をしている企業が多いというイメージがあると思いますが、当社では、障がいのある社員とともに働く職場環境をつくることで、ほかの社員にも障がいのある人のことや障がい者雇用のことを知ってもらいたいと考えています。このような『ともに働く』という職場環境にグループとして取り組むダイバーシティ経営の定着に向けて、2017(平成29)年に日立ハイテクサポートの一部署として設立されたのが『障がい者雇用支援センタ』です。特例子会社で障がい者を雇用するだけではなく、グループ各社で法定雇用率よりも0.5%上の雇用率を達成することを目標に、親会社の株式会社日立ハイテクと共同でグループ企業の障がい者雇用をサポートしています」(障がい者雇用支援センタ採用・定着支援コーディネーター/工藤(くどう)庄(たいらか)さん) 職務とのマッチングを最重要視した採用活動と分業化  『障がい者雇用支援センタ』には、「企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)」や「障害者職業生活相談員」の資格を持つ社員を含む11人の社員が在籍しており、グループ各社の障がいのある社員の「採用」、「教育」、「定着支援」の三つの段階をサポートしています。  「『採用』に関しては、職務とのマッチングを最重要視しています。グループ各社の業務のどの部分で活躍してもらえるかを具体的に検討したうえで、特別支援学校などを訪問し、先に検討した職務に合う生徒を積極的に探して採用しています」(障がい者雇用支援センタ主任/柴野(しばの)陽子(ようこ)さん)  経費などの精算業務を例にすると、通常は、@「申請者から提出された書類のチェック」→A「システム上のデータとの照合」→B「書類やデータに不備があった場合の申請者への連絡」→C「計上伝票を立てる」といった一連の流れを、1人の社員が一貫して担当することが多いのですが、同社では、@は数字の照合に強い知的障がいのあるAさん、Aは集中力が高い発達障がいのあるBさん、Bは同僚のCさん、Cは管理職のDさんと、それぞれの特性や得意分野を活かして業務を分担しています。  「分業体制を整えた結果、以前より業務の効率が上がりました。グループ各社でもこのような考え方を適用し、障がいのある人を受け入れる予定のある職場に業務の一覧を作成してもらい、その業務内容を検証し、候補となる方を選んでいます。例えば特別支援学校からの採用には、二つのステップがあり、まずは当社における実習で適性を見きわめます。その後、実際の職場となるグループ企業での実習を経て本採用に至ります。なかには、1年生から3年生までの3年間実習をくり返す方もいます。その間、特別支援学校と情報を共有しながら候補者の成長を見守っています。採用活動は、3年後の当社における障がい者雇用のビジョンのもと行っており、マッチングに時間をかけて採用した方には、安心して長い期間働き続けてほしいと考えています」(柴野さん) 教育や定着もサポート  障がい者の採用にあたり、重要なことは、職場や同僚の理解です。同社では、グループ各社の社員に、障がい者や障がい者雇用に対する理解を深めてもらうための「教育」にも、力を入れて取り組んでいます。  「当社が提供している教育活動は、大きく2種類に分けられます。一つは、障がいのある社員に対する職場適応や生活管理のための教育、もう一つは、障がいのある社員の上司や同僚となる社員を対象にした教育です。特に後者については種類も多く(図)、『障がい者雇用に関する基礎的な知識の研修』、『業務の切り出しやコミュニケーション方法などについての研修』、人事・総務担当者などの『職場の障がい者雇用を支える立場の人に向けた研修』、また、実際に障がい者の受け入れ予定のある部署の従業員を対象にした『受け入れ社員の特性の解説』など、立場や状況に合わせた内容で実施しています」(障がい者雇用支援センタ/腰塚(こしづか)裕一(ゆういち)さん)  採用した社員が安心して長く働き続けることができるよう、「定着」については支援機関や家庭などと連携しながら対応しています。  「例えば、特別支援学校から新卒で入社した社員の場合は、職業生活上の課題が生じた際にスムーズに対応するため、登録している生活支援機関にかかわってもらっています。生活面のサポートは支援機関で、業務や就労については『障がい者雇用支援センタ』で、というように役割を分けながら、当事者の面談に同席し、職場からの相談に応じています。支援機関と当センタの二つの相談窓口があることは、障がい者雇用に不慣れなグループ企業にとって、心強い環境になっているのではないかと思います」(障がい者雇用支援センタ長/井上(いのうえ)謙(ゆずる)さん)  設立から約5年。『障がい者雇用支援センタ』では、これまでに幅広く実習を受け入れ、100人程度をグループ企業で採用してきました。離職率は低く、2022年3月末日現在、グループ全体の障害者雇用率は3.02%となっています。  「当センタが設立されて約5年が経過したいま、グループ各社からは、『障がい者雇用によって職場の雰囲気が明るくなった』、『障がい者の受け入れのために業務の分析をすることで、業務の効率化につながった』などの声も聞かれ、障がい者雇用に対する理解が深まっていると感じます。最終的な目標は、グループ各社が、当センタのサポートの手を離れて自立して障がい者雇用に取り組めるようになることです。また、ITなどの高度化する業務内容に対応するためにはより多様な人材の雇用が必要ですので、精神・発達障がい者の雇用や経験者採用などにも力を入れて取り組んでいきたいと考えております」(井上さん)  「多様な能力を持った人に当グループで働いてもらうためには、障がいのある人に選ばれる企業になることが大切です。そのためにだれもが働きやすく、笑顔があふれる職場づくりに努めていきたいと思います」(工藤さん) 【取材先プロフィール】 株式会社日立ハイテクサポート(東京都港区) ◆事業内容  人事、総務、財務、情報システム、製造などの各種業務のグループ企業へのサービス提供 ◆従業員数(2022年4月1日現在)  211人(うち障がいのある社員68人:知的障がい46人、身体障がい11人、精神障がい11人) ◆実績  1996年「障がい者雇用優良企業」都知事賞  1998年「障がい者雇用優良企業」労働大臣賞  2018年「平成29年度 東京都教育委員会事業貢献企業」表彰 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社日立ハイテクサポート様のご意向により「障がい」としています ★中央障害者雇用情報センター https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer05.html <参考1>「はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜」ウェブコンテンツ版「Q 障害者に対する人材育成等の視点を踏まえた支援について必要なことは何ですか?」 <参考2>資料シリーズ No.105 「障害等により配慮が必要な従業員の上司・同僚の意識に関する研究」 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/shiryou/shiryou105.html https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003lymk.html 図 教育体系図 (資料提供:株式会社日立ハイテクサポート) 写真のキャプション 障がいのある社員は、それぞれの特性や得意分野を活かして業務を行っている(写真提供:株式会社日立ハイテクサポート) 【P28-29】 研究開発レポート 高次脳機能障害者の復職におけるアセスメントの紹介 障害者職業総合センター職業センター  当機構の障害者職業総合センター職業センターでは、休職中の高次脳機能障害者を対象とした職場復帰支援プログラムと、就職を目ざす高次脳機能障害者を対象とした就職支援プログラムの実施を通じ、障害特性や事業主ニーズに対応した先駆的な職業リハビリテーション技法の開発に取り組んでいます。  高次脳機能障害者の職場復帰支援の課題点として、@症状や状態像の多様さや個別性、複雑さ、見えにくさ、A支援課題が疾病管理や健康管理など多方面にわたること、B休職期限までの限られた期間のなかで準備を整えなければならないことがあります。  職業センターでは、高次脳機能障害の障害特性や多面的な支援課題に関わる情報を収集して整理し、関係者間の情報共有や対象者の自己理解の促進、支援課題の明確化、支援方針の検討、また、事業主との連絡調整や支援で使用する支援ツールや支援方法等の技法の開発に取り組みました。  その成果を2022(令和4)年3月末に、実践報告書40「高次脳機能障害者の復職におけるアセスメント」に取りまとめました。以下にその概要を紹介します。 ●高次脳機能障害者の職場復帰支援の流れ(図1)  地域障害者職業センターを利用する対象者の多くは、受障後に治療や医学的なリハビリテーションを受け、在宅生活の安定が図られると、職業リハビリテーションの段階に入り、復職に向けた準備を整えます。一方事業主は、対象者と情報交換しながら、受入体制を整えます。支援者は、双方に支援します。対象者に対しては、@障害特性の整理と自己理解の促進、A職業準備性の向上、B対象者に合った対処策(補完手段)の習得、C作業遂行力の向上、D障害特性や事業主に依頼する配慮事項のとりまとめ等にかかる助言を実施します。事業主に対しては、@高次脳機能障害者の障害特性および対象者個人の特性と必要な配慮事項の解説、A対応しやすい職務内容や合理的配慮の考え方、復職事例の情報提供、B必要に応じて職員研修やジョブコーチ支援を実施します。 ●高次脳機能障害の職場復帰における支援ツール(図2)  本報告書でご紹介している支援ツールの一覧です。以下で簡単にご説明していきます。 ●アセスメントのための支援ツール 「特性チェックシート」(図6)  高次脳機能障害の障害特性を整理し、支援方法を検討するためのツールです。対象者に高次脳機能障害の特性が、自分にあてはまるかどうかを回答してもらい、自らの障害をどのように認識しているかを確認します。「あてはまらない」とチェックした項目についても、チェックした理由を聞くことで、アセスメントが深まることがあります。例えば「前職ではできていたから」との返答であれば、現在の状況についての認識が不十分であることがわかります。 ●支援方針の検討のための支援ツール  職業センターのプログラムでは、支援方針を検討する際、収集した多様な情報を統合しながら支援課題を明確化して介入方法を組み立てる、ケースフォーミュレーションの考え方を参考にしています。 @「情報整理シート」(図3)  アセスメントで得られた情報を項目ごとに取りまとめ、項目ごとの支援課題を明確にするツールです。 A「ケースフォーミュレーションシート」(図4)  情報整理シートで明確にした支援課題に影響を及ぼす要因に関する仮説を立てて、支援方針を組み立てるツールです。  担当者は「情報整理シート」と「ケースフォーミュレーションシート」を作成して、支援方針を検討するためのケース会議を実施します。両シートは、対象者を取り巻くさまざまな情報が図式化され、情報をまとめて整理してあるため、解決すべき支援課題や取り組むべき支援方針について具体的に意見を出し合い、検討することができます。 ●補完手段の検討のための支援ツール 「対処策リスト255」(図5)  主症状ごとに考えられる対処策(補完手段)を取りまとめています。支援者や対象者が障害特性に応じて取り組む対処策(補完手段)や職場に配慮を求めることを検討するときの参考となるように作成しました。 ●事業所との調整のための支援ツール @「リファレンスシート」(図7)  特性チェックシートなどの内容や職業前訓練の観察結果などをもとに、障害特性と対処手段(補完手段)、事業所に理解や配慮を求めることを取りまとめるツールです。リファレンスシートの項目は、「特性チェックシートで確認された特性」、「どの程度あてはまるか」、「会社に伝えるかどうか」、「対処手段」、「周囲に求める配慮、理解してほしいこと」です。特性チェックシートから特性を選択し、一つずつ検討することで、事業所に伝える情報の整理を構造的に行うことができます。 A「事業主のための職場復帰に関する参考資料集」  事業所と調整を行う際に、職場復帰支援に関する知識やノウハウをわかりやすく伝えるために作成しました。高次脳機能障害の特性や職業的課題、職場復帰支援のポイントなど、一連の流れを載せています。 ●まとめ  本報告書に記載してある一連の支援ツールを活用することで、高次脳機能障害者の職場復帰や職場適応が促進されることを願います。  実践報告書40「高次脳機能障害者の復職におけるアセスメント」は、障害者職業総合センター研究部門のホームページに掲載しています。また、冊子の配付を希望される場合は、下記にご連絡ください。 ★障害者職業総合センター 職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/practice40.html (図1)高次脳機能障害者の職場復帰支援の流れ (図2)高次脳機能障害の職場復帰における支援ツール (図3)情報整理シート (図4)ケースフォーミュレーションシート (図5)対処策リスト255の一部 (図6)特性チェックシート (図7)リファレンスシート 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 国土交通省 高次脳機能障害者に向けた「社会復帰促進事業」補助事業者決定  国土交通省は、自動車事故による高次脳機能障害のある人の社会復帰の促進を図る方策を検討するため、当事者が病院・事業者から地域への生活を円滑に移行するための取組みに対して補助を行う、社会復帰促進事業のモデル事業を実施する。2022(令和4)年度の公募による補助対象事業者として、自立訓練(機能訓練・生活訓練)を提供する障害福祉サービス等事業者を次の4者に決定した。  @社会福祉法人かがわ総合リハビリテーション事業団「かがわ総合リハビリテーションセンター成人支援施設」(香川県高松市)、A社会福祉法人千葉県身体障害者福祉事業団「千葉県千葉リハビリテーションセンター障害者支援施設更生園」(千葉県千葉市)、B社会福祉法人名古屋市総合リハビリテーション事業団「名古屋市総合リハビリテーションセンター」(愛知県名古屋市)、C社会福祉法人奈良県社会福祉事業団「奈良県障害者総合支援センター自立訓練センター」(奈良県磯城郡(しきぐん))。 地方の動き 埼玉 埼玉しごとセンターで分身ロボが接客  埼玉県は、障害者のある人が就労を通して社会参加ができるよう、小型分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を活用した就労支援をスタートした。外出困難な障害のある人が、自宅などからインターネットを通じてオリヒメを遠隔操作し接客などの仕事をすることで、障害者の新たな働き方をモデル的に実証し、障害のある人の社会参加の方法の一つとして知ってもらう。  実施場所は、ハローワークと埼玉県の就職支援サービスが一体となった施設「埼玉しごとセンター」(さいたま市)。来所した利用者に向けて、検温・手指消毒への協力呼びかけや、利用目的に合わせた対応窓口の案内をする。またセミナーや企業面接会の参加者に対して、開始前の連絡事項の説明や終了後の施設の利用案内を行う。  操作をするのは、オリヒメを開発した「株式会社オリィ研究所」(東京都)の登録者で、筋萎縮症や強度のめまいなどの症状により外出が困難な障害のある人6人で、埼玉県在住者を含む。勤務は平日14時から15時まで(祝日・年末年始を除く)。2022(令和4)年10月からスタートし、2023年3月末まで予定している。 愛知 豊田市など「意思決定支援事業」  豊田市は、判断能力に不安のある障害者や認知症の高齢者などが、自らの意思に基づいた生活を実現できる環境を整備するため、一般社団法人日本意思決定支援ネットワーク(SDM-Japan)、公益財団法人日本財団(東京都)との3者で「障害者・認知症高齢者等の意思決定支援に関する協定」を締結した。  この事業は、豊田市が厚生労働省のモデル事業を受けて実施するもので、判断能力に不安のある人への意思決定支援の活動と、日常的な金銭管理などを支援する。  豊田市が事業の仕組みづくりや事業運営・各種調整など、SDM-Japanは意思決定支援に関する研修の実施や評価の仕組みづくり・効果測定など、日本財団はSDM-Japanの事業支援から全国展開支援、政策的啓発、政策提言などを行っていく。事務局は豊田市福祉部福祉総合相談課に置かれる。 働く 富山 障害者アートのカプセルトイ販売  富山県内で障害者の芸術活動を支援する団体「cotae(コタエ)ネットワーク」は、障害者のアート作品が入ったカプセルトイの自動販売機を、高岡市内3カ所に設置した。商品を手がけたのは、県内外の作家約50人。  このうち国宝指定の答申を受けた「勝興寺(しょうこうじ)」(高岡市)の自動販売機で購入できるカプセルトイには、高岡大仏や動物などが描かれた小さな絵馬が入っている。1個500円で、収益の一部が作家らに還元される。このほか、「道の駅雨晴(あまはらし)」(高岡市)と「高岡市美術館」(高岡市)に設置されたカプセルトイには、それぞれカルタと小さなかばん(サコッシュ)が入っている。 東京 障害者アーティストの絵画ギャラリー  人材派遣事業などを展開する「株式会社パソナグループ」(港区)の特例子会社「株式会社パソナハートフル」(港区)は、本社が入居するPASONA SQUARE(パソナ スクエア)2階に「アート村シーズンギャラリー」をオープンした。  パソナハートフルは、絵を描くことを業務とする「アーティスト社員」を2004年から採用し、現在24人が創作活動に取り組む。ギャラリーでは、アーティスト社員による絵画を季節ごとにテーマを変えて展示する。観覧は無料。ギャラリーが設置されている「アート村SHOP・青山」では、アーティスト社員のデザインによる各種グッズや、障害のある社員がつくった焼き菓子、有機野菜なども購入できる。ギャラリーとショップの営業時間は9時30分〜18時(土日・祝日を除く)。問合せは「アート村」まで(電話:03-6734-1093)。 本紹介 『異彩を、放て。「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える』  福祉施設に在籍する知的障害のある作家たちとアートライセンス契約を結び、新しい形の事業を展開する「株式会社ヘラルボニー」(岩手県)。経営者である双子の松田(まつだ)文登(ふみと)さんと松田(まつだ)崇弥(たかや)さんが『異彩を、放て。「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える』(新潮社刊)を出版した。重度の知的障害をともなう自閉症の兄と過ごした幼少時代から、アール・ブリュットとの出会い、ブランドの誕生、さまざまなプロジェクトの舞台裏まで、ヘラルボニーの原点と軌跡をたどる。四六判191ページ、1650円(税込) アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2022年度地方アビリンピック開催予定 1月〜2月 東京都、京都府、広島県、香川県、佐賀県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *  は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 ミニコラム 第20回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は原委員が執筆しています。  ご一読ください。 地域は「つなぐ・つながる」ことで「地域」となる あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすくセンター長 原智彦  今回の長野県の取材にあたって、久しぶりにお会いできた先生がいる。昨年度まで長野県長野養護学校の校長をされていた小林(こばやし)智明(ちあき)先生である。現在は、長野市の地域・市民生活部、人権・男女共同参画課の職員として、若穂隣保館(わかほりんぽかん)の館長として働いている。  先生との出会いは、2004(平成16)年10月に長野市で2日間開催された「ながの就労・雇用支援セミナー」だった。このセミナーは、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の助成事業として行われた。  初日の基調講演は、当時の大阪市職業リハビリテーションセンター所長の関(せき)宏之(ひろゆき)さん、パネルディスカッションのコーディネーターは、本誌の編集委員でもある松爲(まつい)信雄(のぶお)さんで、全国の就労・雇用支援をしている方々をパネリストとしてお呼びした。2日目は、県内のネットワークをテーマに、就労・雇用の取組みをされている方々をパネリストとしてお呼びした。小林先生も養護学校の進路指導主事として参加された。このセミナー後に特別講座として、小林先生がコーディネーターとなり、東京都の養護学校のネットワークと個別移行支援計画(後の個別の教育支援計画)を紹介してくださった。  今回の再会にあたって小林先生は、当時のセミナーの貴重な資料を持ってきてくださった。そこにはセミナー開催までの経緯が書かれており、「ネットワークは必要としている自分たちがつくっていくものなのです」という言葉があった。同様に、「地域」はそこに暮らす人が必要とする「つながり」をつくり出すことで、求める「地域」となるように思う。小林先生は、隣保館で陶芸を始めることで、地域の人たちが参加できる新たなつながりをつくり出そうとしている。 写真のキャプション 東京都 京都府 広島県 香川県 佐賀県 【P32】 掲示板 高障求 メールマガジン 好評配信中!  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に、配信しています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当者のみなさま、必読! 高齢 超高齢社会の人材確保 障害 障害特性に応じた配慮の方法 求職 ものづくり技術伝承や人材育成 みなさまの「どうする?」に応えるヒント、見つかります! JEED メルマガ で 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 次号予告 ●特集  2022年11月4日(金)〜6日(日)に千葉県で開催された「第42回全国アビリンピック」を取材。全国から出場した選手たちの活躍の様子をレポートします。 ●この人を訪ねて  今年度の全国アビリンピックでも活躍を見せた、ちばぎんハートフル株式会社(千葉県)を訪問。アビリンピックへ挑戦したきっかけやサポート体制、それらが選手や職場にもたらした効果などについてお話をうかがいます。 ●編集委員が行く  清水康史編集委員が、デンソー太陽株式会社(愛知県)を訪問。強いチームワークと目標達成に向けた取組みなどについて取材しました。 公式ツイッターはこちら 読者アンケートはこちら 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み  株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。  TEL 03-5484-8821  FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 飯田 剛 編集人−−企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 1月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和4年12月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO 法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 トヨタループス株式会社 取締役 清水康史 武庫川女子大学 学生サポート室専門委員 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 准教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林 功 【P33】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課所在地等一覧 ホームページはこちら  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2022年12月25日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内※ 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-front U 7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 ※2022年10月3日より、上記住所へ移転 【裏表紙】 事業主の方へ 指導者(障害のある方を指導する方)育成に役立つ 研修受講者募集 令和5年度コースは3月1日(水)より受付開始!!  職業能力開発総合大学校では、職業訓練や企業において教育・指導にたずさわる方々を対象とした研修を実施しています。実際に教育訓練を担当される方が指導するにあたって必要な知識および技能・技術を習得するための研修をはじめ、精神・発達障害への配慮や支援に役立つ研修もありますので、ぜひご利用ください。 【研修コースの例】  「一般校の指導員のための精神・発達障害に配慮した支援と対応」として、4部構成(「理解と接し方編」、「訓練の支援と支援体制編」、「メンタルの支援編」、「就職活動の支援編」)の研修コースを用意しており、段階的に受講することができます。 【研修期間・研修会場・受講料の例】 ・研修期間 1コース 2〜3日 ・研修会場 職業能力開発総合大学校など ・受講料  1コース 5,500円〜 ※研修期間、研修会場および受講料は、コースにより異なりますので、詳細は職業能力開発総合大学校研修部までお問い合わせください。 研修コースの内容や申込方法などの詳細はホームページで! 職業大研修 検索 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業能力開発総合大学校 研修部 〒187-0035 東京都小平市小川西町2-32-1 TEL:042-346-7234 FAX:042-346-7478 https://www.uitec.jeed.go.jp/training/index.html 1月号 令和4年12月25日発行 通巻543号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)