【表紙】 令和5年1月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第544号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2023/2 No.544 特集 第42回 全国アビリンピック この人を訪ねて 従業員全員で「ともに成長する」職場を ちばぎんハートフル株式会社 取締役社長 斎藤千草さん 編集委員が行く 製造業の“障がい者雇用の質”について考えるヒント デンソー太陽株式会社(愛知県)、社会福祉法人太陽の家 愛知事業部(愛知県) 「ケーキ職人 パティシエ」愛知県・大村(おおむら)麻子(あさこ)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 2月号 【巻頭・巻末】 第42回 全国アビリンピック 2022年11月4日(金)〜6日(日) 写真:官野 貴・岩尾克治 写真のキャプション 会場となった「幕張メッセ」(千葉県日本コンベンションセンター国際展示場) 競技は、国際展示場9・10ホールで行われた 会場入り口。3年ぶりに有観客での開催となった 会場入り口で、体調確認書の提出や検温、手指の消毒が実施された 渡邉(わたなべ)諒(まこと)さん(右)が大会旗の旗手を務め、当機構の湯浅(ゆあさ)善樹(よしき)理事長が受け取った 選手宣誓を行う高久(たかく)美穂(みほ)さん。開会式はライブ配信形式で実施された 「電子機器組立」 「家具」 「オフィスアシスタント」 「パソコンデータ入力」 「義肢」 「写真撮影」 「データベース」 「コンピュータプログラミング」 「木工」 「表計算」 「ネイル施術」 「パソコン操作」 「喫茶サービス」 「パソコン組立」 「ワード・プロセッサ」 「ホームページ」 「歯科技工」 「縫製」 「建築CAD」 「フラワーアレンジメント」 「ビルクリーニング」 「製品パッキング」 「DTP」 「機械CAD」 「洋裁」 技能デモンストレーション「OA機器等メンテナンス」 技能デモンストレーション「物流ワーク」 隣接する会場で行われた「障害者ワークフェア2022」 選手らが一堂に会し閉会式が行われた 当機構の湯浅善樹理事長による主催者挨拶 金賞受賞者には、湯浅理事長から金メダルが手渡された 「パソコンデータ入力」入賞者のみなさん 各種目の金メダリストたち 閉会式終了後、種目別に講評が行われた 審査委員から個別に講評を受ける選手ら 講評は、次回の大会への貴重なアドバイスとなる 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2023年2月号 NO.544 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 特集 第42回 全国アビリンピック 障害のある人たちが日ごろ培った技能を互いに競い合うことにより、その職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害のある人に対する理解と認識を深めてもらい、雇用の促進を図ることを目的とした「第42回 全国アビリンピック」が、2022(令和4)年11月4日(金)〜6日(日)に、千葉県で開催されました。その様子をお届けします。 グラビア 巻頭・巻末 写真:官野 貴・岩尾克治 アビリンピックルポ 4 文:豊浦美紀/写真:官野 貴・岩尾克治 入賞者一覧 12 この人を訪ねて 14 従業員全員で「ともに成長する」職場を ちばぎんハートフル株式会社 取締役社長 斎藤千草さん クローズアップ 16 職場内の支援体制の課題と対応 最終回 〜本社が店舗の障害者雇用をサポート〜 JEEDインフォメーション 18 令和5年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ/障害者雇用納付金 電子申告申請システムが令和5 年度申告申請から新しくなります/障害者雇用納付金関係業務調査のごあんない〜障害者雇用納付金制度を支える仕組みです〜 エッセイ 21 発達障害と就労 第4回 〜企業担当者と支援者の連携〜 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺 副所長 砂川双葉 編集委員が行く 22 製造業の“障がい者雇用の質”について考えるヒント デンソー太陽株式会社(愛知県)、社会福祉法人太陽の家 愛知事業部(愛知県) 編集委員 清水康史 ニュースファイル 28 編集委員のひとこと 29 掲示板・次号予告 30 障害者雇用の月刊誌『働く広場』がデジタルブックでいつでもお読みいただけます! ※「心のアート」、「省庁だより」、「研究開発レポート」は休載します 表紙絵の説明 「以前から、菓子店のパティシエや、さまざまなケーキが並ぶところを描いてみたかったので、挑戦してみました。可愛くて華やかな美味しいケーキをつくるパティシエに、尊敬と憧れの想いを込めて描きました。作品のできばえに自信があったので、受賞できてうれしかったです」 (令和4年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P4-11】 特集 第42回 全国アビリンピック 11月4・5・6日  「第42 回全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)」が2022(令和4)年11月4日(金)〜6日(日)、千葉県千葉市美浜区の幕張メッセで開催された。全国から集まった選手375人が全25種目の技能競技と2職種の技能デモンストレーションに参加し、日ごろから磨いてきた腕を披露した。 文:豊浦美紀/写真:官野 貴・岩尾克治 11月4日(金) 開会式  第60回技能五輪全国大会との合同開会式は、You Tubeでのライブ配信形式で行われた。アビリンピック大会旗の入場で旗手を務めたのは「パソコンデータ入力」種目に出場する渡邉(わたなべ)諒(まこと)さん(千葉県)。さらに、メゾ・ソプラノ歌手の鳥谷(とや)尚子(しょうこ)さんによる国歌独唱、厚生労働省の奈尾(なお)基弘(もとひろ)人材開発統括官の挨拶に続き、当機構の湯浅(ゆあさ)善樹(よしき)理事長は「今回は幕張メッセに多くの観客のみなさまをお招きすることができました。会場の様子をウェブでも配信しますのでご家庭や職場からもあたたかい応援をお願いいたします」などと呼びかけた。アビリンピックの選手宣誓では、「オフィスアシスタント」種目に出場する高久(たかく)美穂(みほ)さん(千葉県)が、「私たちは、私たちを支え、励まし、指導してくださったすべての方々への感謝の気持ちを胸に、日ごろ職場や学校で培った技能を十分に発揮し、競技することを誓います」と表明した。  開会式後、渡邉さんは「名誉ある大役を悔いなく務めることができました。競技の方は、県大会での課題も克服し、攻めていくつもりです」と、高久さんは「何度も練習した宣誓がうまくできてホッとしています。全国アビリンピックは10年ほど前に出場した経験があり、今回もだれにも負けない気持ちでがんばりたいです」とそれぞれ気持ちを引き締めていた。 11月5日(土) 競技紹介 選手・関係者の声 ●ビルクリーニング/喫茶サービス/オフィスアシスタント/製品パッキング  「ビルクリーニング」の競技は、カーペット床の清掃(7分)、弾性床(だんせいゆか)の清掃と机上の清掃(10分)の2課題。齋藤(さいとう)友博(ともひろ)さん(福島県)は、勤務先である大手タイヤメーカーで緑化作業を担当。アビリンピック参加のために母校で練習を重ね、この日は社名入り制服を着て堂々と競技に臨む姿を見せていた。競技後には「会社の人も応援してくれ、練習をがんばってきました。最後まであきらめず、自分なりにやり切ることができました」とふり返っていた。  「喫茶サービス」は、会場内につくられた模擬喫茶店で、3〜4人のチームごとに接客サービスを提供する(約60分)。競技内容は@お客さまを席に案内する、A注文を受ける、B受けた注文を厨房スタッフに伝える、C注文に応じて必要な物を準備する、D注文の品をお客さまに提供する、Eテーブルの後片づけをする、という流れだ。大手ホテルで働く渡辺(わたなべ)大輝(たいき)さん(新潟県)は、日ごろは食器洗浄を担当。ホテル内レストランの接客を見て自分もやってみたいと挑戦し、地方大会4回目で金賞となり、今回が初の全国大会出場だ。職場では「すごい。今度から接客もしてみたら」と激励されたという。「最初は緊張しましたが、競技中にチームで声をかけ合い、だんだん楽しくなってきました。来年もがんばりたいです」と笑顔で話していた。  「オフィスアシスタント」の競技課題は、配布物の準備(20分)、発送書類の封入(30分)、社内便の仕分け(10分)の3課題。特別支援学校時代から出場している西川(にしかわ)陽規(はるき)さん(和歌山県)は、オフィスアシスタントに関連する仕事をしたいと地元銀行の特例子会社に入った。いまはパソコン業務を担当しているが、自宅で練習を続けてきたという。競技後、「今回は落ち着いてうまくできたと思います」と笑顔で語っていた西川さんは、念願の金賞に輝いた。  「製品パッキング」は、商品を梱包する箱や緩衝材(かんしょうざい)の組立てと組込み作業を競う。緩衝材の組立て・結束25セット(30分)、小箱・中箱・化粧箱・外箱の組立て・組込み・セットアップ梱包4梱包(60分)の2課題だ。畑本(はたもと)義晴(よしはる)さん(岡山県)は長年、就労継続支援A型事業所で紙器づくりに従事してきた経験を活かし、初挑戦で全国アビリンピックに出場。競技前は「ふだん通りにできそうです」と笑顔を見せた。同行していた事業所の運営代表者は「地域の人たちにも私たちの活動を知ってもらいたいとアビリンピックに挑戦しました。県大会では仕上がりのよさを評価されたのも自信になりました」と語っていた。同じく全国アビリンピック初出場の蜻(やなぎさわ)隆弘(たかひろ)さん(長野県)は、大手精密機器メーカーの特例子会社で働く。競技後に「会社の同僚たちが出場する姿が刺激になり、挑戦しました。全国大会のレベルは高いですが、またがんばりたいです」と話していた。 ●ワード・プロセッサ/パソコンデータ入力/パソコン操作/表計算  「ワード・プロセッサ」は、ワード2019を使い、和文文書の作成(80分)と英文文書の作成(60分)について作成見本と作業指示書を見ながら文書の完成度を競う。市役所に勤める相馬(そうま)伸映(のぶえ)さん(青森県)は、もともとワード関連の資格を持ち、通っていた就労継続支援B型事業所でアビリンピックへの挑戦をすすめられたという。「職場では集中しすぎて時間を忘れるので周囲に声かけしてもらっています。全国大会はレベルが高いと思いますが、競技を楽しみたいです」と競技前に笑顔で話していた。  知的障害のある選手が対象の「パソコンデータ入力」は、アンケートの入力、文書修正、帳票等の作成の3課題(各30分)で速さと正確さを競う。柳(やなぎ)綺佳(あやか)さん(山口県)は、情報システム関連会社に就職する前からアビリンピックに挑戦し、3回目の全国アビリンピックだという。「毎日自宅で1時間ほどタイピング練習をしてきました。職場でもアビリンピックのことを知ってもらい、応援してもらっています。今回の課題はむずかしい部分もありましたが、やり切ることができて悔いはありません。仕事にも活かしていきたいです」と話していた。  視覚障害のある選手が対象の「パソコン操作」は、パソコン画面情報読み上げソフトや画面拡大ソフトなどの支援機器を活用して、データの修正と加工、スライド作成、ワード文書の書式整え、インターネット検索によるデータ加工など5課題(90分)。木村(きむら)朱美(あけみ)さん(京都府)は、フリーで文字起こしなどの仕事を行って10年以上。競技後、「課題の内容はわかっていましたが、時間が足りませんでした。視覚障害者のなかでもアビリンピックを知らない人が多いので、出場者ががんばることでもっと認知してもらいたい。そして、道具を使えば視覚障害者でもしっかり仕事ができることを伝えていきたいです」と語っていた。  「表計算」の競技課題は、エクセル2016を使用し、表の装飾・編集、関数式による表の完成、データ処理およびグラフ作成等を行うというもの(75分)。IT企業に勤める西本(にしもと)康次郎(こうじろう)さん(富山県)は、総務関連の仕事をしている。職場では電話を取らずにすむよう配慮してもらっているそうだ。「初めてアビリンピックのことを知った同僚たちが応援してくれています。全国アビリンピックのレベルは高いですが、今後も挑戦していきたいですね」と意欲を見せていた。 ●DTP/ホームぺージ/データベース/コンピュータプログラミング  「DTP」の今回の課題は、地方自治体による「UIターン」の推進活動を周知喚起するための2種類のポスター制作(3時間30分)。印刷デザインやホームページ制作などを手がける就労継続支援A型事業所に1年前から通う城間(しろま)海人(かいと)さん(沖縄県)は、「専門学校時代からDTP関連について学んできたので、すぐにアビリンピックにも挑戦しました。今日は、自分の課題を発見でき、あらためて制作意欲も出てきました。よい経験になりました」と満足そうな表情を浮かべていた。  「ホームページ」の今回の課題は、「住んでいる都道府県の郷土料理を紹介するホームページ作成」(4時間30分)。各選手は事前課題として作成・提出した作品に対して、当日課題で提示された新たな仕様に沿って制作する。道口(どうぐち)一行(かずゆき)さん(千葉県)は、物流サービス企業の特例子会社で働く。他種目も含め全国アビリンピックには複数回出場してきたそうだ。「仕事での向上心を維持するためにも、アビリンピックなどで意識的に刺激を受けながらスキルアップを続けたいと思っています」と話していた。  「データベース」の今回の課題は、架空の学校「アビリン高校」における入学試験の合否判定システムの作成(3時間)。情報処理サービス会社に勤めて10年以上になるという周祺(しゅうぎー)さん(広島県)は、システムエンジニアとして開発を担当している。「前回よりは緊張せずに取り組むことができ、想定通りの仕上がりでした。ただ、全国アビリンピックはすごい選手が多いですね。また挑戦します」と笑顔で語った。  「コンピュータプログラミング」は、ロボットの動きを指示するプログラムを作成し、動きの指示のしやすさや、ロボットを動かしたときの正確さや速さを競う(6時間)。競技内容のむずかしさもあるのか、出場者は今大会で全国アビリンピック出場10回目(他種目を含む)という田中(たなか)卓也(たくや)さん(神奈川県)1人だけだった。孤軍奮闘しながらも銀賞を受賞した田中さんは、「今回はロボットを使った作品を完成することができてよかったです。来年は金賞を目ざしてがんばります」と話した。審査委員を務める名古屋工業大学プロジェクト教授の水野直樹さんは、「希望者にはシミュレーションソフトを事前に提供するので、ノートパソコンさえあれば練習できます。技術指導に出向くこともできますので、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構都道府県支部の窓口に相談してみてください」と呼びかけていた。 ●建築CAD/機械CAD/パソコン組立/電子機器組立  「建築CAD」の課題は、集合住宅を目的とした鉄筋コンクリート造3階建てビルの図面(縮尺1/100の平面図、立面図、断面図)をA3用紙2枚に仕上げるというもの(3時間30分)。岡村(おかむら)昭子(あきこ)さん(栃木県)は、多機能型就労支援事業所の利用者として建築CADの仕事をしてきたが、2年前から正社員となり、指導する立場として経験を積むため出場したそうだ。事業所の運営会社の代表は「彼女のミスの少なさやセンスのよさを発揮してもらえたら十分です」と、コメント。岡村さんは「ほかの選手は仕事にしているだけあってすばらしいですね。次回は事業所の利用者さんを連れてきます」と笑顔で答えてくれた。  「機械CAD」の今回の競技課題は、3次元CADツールを使ってハンドプレスの部品図と組立図、軸測投影法による組立図と立体分解図の作成(3時間10分)。身体障害者向けのソフトウェア技術者育成センターでCADを学んでいるという竹林(たけばやし)優星(ゆうせい)さん(熊本県)は、初めての全国アビリンピック。競技後に「もう少し勉強しておけばよかったですね。センターで最後まで学び、CADを使える会社に就職したいです。アビリンピックにもまた参加できれば」と話していた。  「パソコン組立」は、組み立て済みのパソコンの指定された部品を取り外し、メンテナンス作業後に組み立て直して、各種ソフトウェアの設定を行うという競技内容(4時間)。市役所に勤める新家(あらいえ)克博(かつひろ)さん(石川県)は63歳。東京都で1981(昭和56)年に開催された第1回国際アビリンピックにも出場した経歴を持つ。パソコン組立種目には、昨年の東京大会から再び挑戦しているそうだ。職場ではいまもパソコンの修理やサーバー管理などを任されている。「今回は最後のつもりで来ました。やれるだけのことはやったと思います」と晴れやかな表情。結果は銅賞を獲得した。  「電子機器組立」の競技課題は、省エネコントローラーの組立(4時間)。見どころは、機器の耐久性を左右する、はんだ付け作業だ。自動車部品メーカーに勤める西尾(にしお)慎一(しんいち)さん(三重県)は、競技後に「練習ではミスをなくし、きれいな仕上がりを目ざしてきました。初めての全国アビリンピックで緊張しましたが、時間ぎりぎりで終わってホッとしました」と伝えてくれた。職場の関係者は「この競技のために短期的にチームを組みました。作業の流れを効率化する工夫は、仕事にも活かされます。彼は今年、社内で最多の改善提案をしました」と話していた。西尾さんは銅賞を受賞した。 ●歯科技工/義肢/木工/家具  「歯科技工」は今大会から、「ZBrush CoreMini2021」というソフトを使った中切歯と第一小臼歯のデジタルカービング(各2時間30 分)を行う競技内容となった。審査委員によると、デジタルカービングのスキルは将来必須とされ、先取りで競技への導入が決まったそうだ。総合病院に勤めて10年以上になる村上(むらかみ)祐太郎(ゆうたろう)さん(千葉県)は全国アビリンピック金賞受賞の経験もある。競技後、「産業界ではCADが主流となるので練習してきました。今回の競技に参加して他選手のレベルがわかったので、もっとがんばらなければと思いました」と話してくれた。  「義肢」の競技課題は、繊維強化プラスチック製の「下腿義足ソケット」の製作(4時間15分)。専門学校に通う大北(おおきた)康平(こうへい)さん(愛知県)は、生まれつき手の指に障害がある。いったん就職し、CADで自動車部品の設計などを手がけていたが、「幼少時からお世話になっていた病院職員の姿を見て、自分も直接人の役に立ちたいと装具士を目ざしました」と語っていた。卒業前の集大成として臨んだ今回は、出場者中最上位の銀賞を受賞した。  「木工」の課題は、「蓋(ふた)付き木箱」の製作(5時間)。競技後も審査委員から熱心にかんなの使い方を教えてもらっていたのは、家具製作所に勤める福島(ふくしま)大樹(だいき)さん(岩手県)。木工作業が好きで就職し、家具のパーツづくりを担当している。父親は「理解ある職場のみなさんから助言をいただいてきたようです」と話す。競技後に「少し時間はかかりましたが、ていねいに仕上げることができました」とふり返った福島さんは、努力賞を受賞した。  「家具」の課題は「花台」の製作(5時間30分)。今回の出場者は、聾(ろう)学校に通う石坂(いしざか)菜々子(ななこ)さん(愛知県)1人。同行していた学校の指導教員は、「別の聾学校は学科が閉鎖になったと聞きました。ある程度の技量が必要なので、当校も今年は1人しか出せませんでした」と明かす。競技後「2カ月間ほど練習してきました。最初から緊張しすぎて焦りましたが、午後からはスムーズに進められました」と話してくれた石坂さんは、銅賞を獲得した。 ●縫製/洋裁/フラワーアレンジメント/ネイル施術/写真撮影  「縫製」の課題は、エプロンの製作(4時間)で、配布された9枚のパーツをミシンやアイロンなどを使って完成させる。6回目の全国大会だという江頭(えがしら)礼奈(れいな)さん(佐賀県)は、特別支援学校で事務職員をしながら洋服づくりを続けているそうだ。競技後「今日はポケットのカーブ部分がうまくいきませんでしたが、またがんばりたいです」と笑顔で話していた。  「洋裁」の課題は、薄手ウールを使ったオーダー仕立てのオーバーブラウス製作(6時間)。作業は、裁断から芯貼り、印付け、本縫いミシン、アイロン、ロックミシンの順で進める。松本(まつもと)弥生(やよい)さん(熊本県)は、2011(平成23)年の国際アビリンピック出場者。競技後、「大会前に体調を崩してなかなか練習できなかったのが残念です。競技では衿(えり)つけがうまくいかなかった」と話し、結果は努力賞。「またリベンジしたいです」と気持ちを新たにしていた。  「フラワーアレンジメント」は花束(60分)、花嫁のブーケ(60分)、会場装飾(ワンサイドアレンジメント)(45分)の3課題。清水(しみず)大希(ひろき)さん(鳥取県)が通う職業訓練校の指導員によると「訓練生は毎年、好きなアビリンピック種目に挑戦します。短期間で目標に向け努力することが、ほかの訓練にも活かされています」という。競技後、「この種目に挑戦して、長時間でも集中力を維持できるようになりました。今日初めて時間内に仕上げることができました」と教えてくれた清水さんは、銅賞入賞を果たした。  「ネイル施術」は、ネイルケアとカラーリング(75分)、ネイルチップアート(70分)の2課題。一木(いちき)侑子(ゆうこ)さん(東京都)は、事務の仕事をしながら3回目の全国アビリンピック出場。夫によると「気持ちが沈んでいたころに手話のできるネイリストに出会い、変わりました」という。一木さんは銅賞を獲得し、「課題が変わりむずかしいと思いましたが、努力を信じてがんばってきました。さらに上を目ざしたいです」と語ってくれた。  「写真撮影」の今回の課題は、幕張メッセで開催されるアビリンピックをパンフレットやホームページ上で紹介することを想定し、外観やワークフェア出展ブースなどを撮影するという内容だ(4時間)。養護学校の先生からのすすめで参加し、前回は銀賞だった大塚(おおつか)弘也(ひろや)さん(鹿児島県)。母親は「よく絵の構図がうまいといわれましたが、絵の具の管理が苦手でした。そこで、気軽に撮れるデジタル写真ならと挑戦しました」と話す。地元スーパーで食品加工の仕事をしながら写真撮影を続けてきた。今回も銀賞を獲得した。 ●技能デモンストレーション物流ワーク/OA機器等メンテナンス  今回初めての実施となった「物流ワーク」は、当機構が運営する国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県)に通う4人が披露した。疑似倉庫の棚に並んだストック品を指示書通りに選び出し(ピッキング)、コンテナに詰め、納品物が伝票通りかを確認しながら棚に補充するという内容。担当者によると地方アビリンピック埼玉大会では数回、競技として独自に実施しているそうだ。「国立職業リハビリテーションセンターでは、販売・物流ワークコースを設け、商品管理などの訓練で就職につなげています」とのことだ。  前回に続いて披露された「OA機器等メンテナンス」。中古OA機器を扱う「リベラル株式会社」(東京都)で働く9人が、日ごろから従事しているコピー機の「リファイニング(清掃)作業」と「リペア(修理)作業」を行った。同社の担当者は「昨年参加した選手たちが、活き活きとした表情で取り組んでいたのが印象的でした。アビリンピックで観たという方や企業からも多くの問合せをいただきました」と反響ぶりを語っていた。 ●障害者ワークフェア2022  アビリンピックの一環として競技エリアに隣接するフロアで開催されたのは、「障害者ワークフェア2022〜働く障害者を応援する仲間の集い〜」。障害者の雇用にかかわる展示や実演などを通して来場者に理解と認識を深めてもらうことを目的に、約90団体・事業所が、「能力開発エリア」、「就労支援エリア」、「職場紹介エリア」、「特設コーナー」にそれぞれ出展した。特設ステージでは出展者の紹介や実演、セミナーなどがにぎやかに開催された。  フロアの一角で、おいしそうな蜂蜜やクッキーなどを販売していたのは「特定非営利活動法人はぁもにぃ」(千葉県)。地元の養蜂家と連携しながらミツバチの管理や蜂蜜の瓶詰作業などに取り組むほか、無添加・地元産にこだわったスイーツの製造、ジャム類の受託製造、カフェ運営等を展開している。関係者は「最近は地域の施設の屋上に巣箱を設置させてもらい、地域緑化につながる環境保全を含めた活動もしています。他団体と一緒にフェアトレードの店も運営し、地域の農産物や福祉施設の商品などを販売しています」と話していた。 11月6日(日) 閉会式  閉会式は3年ぶりに集合形式での開催となった。都道府県ごとに座った選手団を前に、大会主催者である当機構の湯浅善樹理事長が、アビリンピックのマスコットキャラクター「アビリス」とともに登壇。「今大会は3年ぶりに観客のみなさまを招いて開催し、多くの方に観覧していただくことができました。選手のみなさんは今大会で交流の輪を広げ、友情を育まれたと思います。これからも自信と誇りを持って、いっそう活躍されることを心から願っています。次回は愛知県での開催です。みなさんと会えることをアビリスとともに楽しみにしております」などと挨拶を述べた。  続いて成績発表と表彰式。競技種目ごとに努力賞・銅賞・銀賞・金賞の受賞者が発表されるたびに会場から歓声や拍手の音が響いた。ステージに設けられた表彰台では金・銀・銅の受賞者が1人ずつメダルをかけてもらった。  閉会式終了後は、隣のフロアで種目別に審査委員による講評の場が設けられ、選手たちは自分の競技についてアドバイスをもらおうと列をつくっていた。 金賞受賞者たちの喜びの声  「DTP」の長ア(ながさき)和志(かずし)さん(長野県)は2回目の全国アビリンピックで、日ごろは店舗のチラシやポスターのデザイン業務を担当しているという。「事前の写真準備がよい結果につながりました。仕事でも活かしながら、次はほかの種目にも挑戦してみたいですね」。  「機械CAD」の足立(あだち)玄人(ひろと)さん(愛知県)は、「練習の甲斐がありました。技能は個人のものなので、どれだけ高めていけるかだと思っています。指導してくれた先輩方に恩返ししていくつもりです」と、感謝の気持ちを述べた。  「電子機器組立」の小林(こばやし)元気(もとき)さん(愛知県)は、自動車部品メーカーに勤めて11年目で全国アビリンピックは初出場。「苦手なところを何度も練習してきました。日本一になれて本当に感動しました。今後は国際アビリンピックにも選ばれるようがんばりたいです」。  「歯科技工」の吉田(よしだ)勇己(ゆうき)さん(東京都)は、5回目の出場で昨年は銀賞。「空き時間に練習に取り組んできました。金賞はとてもうれしいですが、まだまだがんばろうと思います。今後も多くの患者さんを幸せにしていきたいです」。  「ワード・プロセッサ」の安達(あんたつ)芽衣(めい)さん(奈良県)は地方銀行の特例子会社に勤務。「4年前の第38回全国アビリンピック沖縄大会に出場して以来、パソコン教室にも通って勉強してきました。今後はパソコンだけでなく、苦手なことにも挑戦していきたいです」。  「データベース」の石倉(いしくら)正史(まさふみ)さん(福岡県)は、「2年前に出場した第40回全国アビリンピック愛知大会では銅賞だったのですが、今回は胸を張って帰ることができます。会社の後輩にも、アビリンピックに参加して入賞できる喜びを教えてあげたいです」と笑顔を見せた。  「フラワーアレンジメント」の藤澤(ふじさわ)一代(かずよ)さん(香川県)は前回が銀賞。「今回は自分が楽しんで、いままでの力を発揮できるよう心がけました。これまで指導してくださった先生方や家族、みなさんに感謝の気持ちでいっぱいです」。  「ビルクリーニング」の壁谷(かべや)佳菜(かな)さん(神奈川県)は、全国アビリンピック初出場。「練習を2カ月間がんばりました。集中して、きちんと確認しながら競技ができたと思います。これからもすばやく作業できるようにしていきたいです」と元気に語った。  「製品パッキング」の日下(くさか)幸憲(ゆきのり)さん(宮城県)は、セキュリティ機器の開発関連会社で、製造の前加工や段ボール組立て作業を担当している。「職場の上司がぼくのために一生懸命に指導してくれました。支えてくれたみなさんに感謝したいですし、自分のこともほめてあげたいです。今後は初心に返ってがんばりたいです」。  「喫茶サービス」の山下(やました)優香(ゆうか)さん(和歌山県)は、地元のホテルに勤務している。「今日の競技は1回目が緊張しましたが、2回目で力を発揮できました。職場では宴会サービス担当なので、今後も笑顔を大切に接客していきたいです」。  「オフィスアシスタント」の西川(にしかわ)陽規(はるき)さん(和歌山県)は、「うれしいです。宛名ラベルをいかにすばやくスムーズに貼れるかを意識してがんばりました。今後もいろいろなことに挑戦していきたいです」と笑顔がはじけた。  「表計算」の石田(いしだ)雅則(まさのり)さん(長崎県)は、前回は障害者就労支援センターに通いながら銅賞。「普段から技能検定の過去問に取り組んできました。通所先でのパソコン指導はもちろん、就職の機会があれば活かしていきたいです」。  「写真撮影」の井門(いど)仁哉(じんや)さん(愛媛県)は、勤務先の放送局で出演者のスチール写真などの撮影を担当。「前回出場したときは入賞もできず悔しい思いをしたので、金賞はうれしいです。今後も仕事でがんばっていきたいです」。  「パソコン組立」の舘野(たての)裕太郎(ゆうたろう)さん(神奈川県)は、ソフトウェア関連会社で社内ネットワーク整備やパソコン構築などを担当。「前回は課題を読み間違えていたので、今回はそれに気をつけて早く組み立てられました。さらに技術の腕を磨いていきます」。  「パソコン操作」の北川(きたがわ)一朗(いちろう)さん(埼玉県)は、「目が見えなくなって国立職業リハビリテーションセンターに通いました。競技中は課題を音声で聞き逃さないよう気をつけました。結果に満足しています。今後の目標は就職ですね」。  「パソコンデータ入力」の城間(しろま)大雅(たいが)さん(大阪府)は、職場でもパソコン業務を担当。「半年間の練習の努力が実りました」と話すそばで、コーチング役の同僚が「誇りに思います。これからも自信を持って働いてほしいです」と語り、喜びを分かち合っていた。  「木工」の松内(まつうち)宏幸(ひろゆき)さん(熊本県)は、多機能型事業所に通い、昨年は銅賞だった。「削るところが、とても上手になりました。これからも出場したいです」とうれしそうに話してくれた。 写真のキャプション 会場となった「幕張メッセ」 旗手を務めた渡邉諒さん 選手宣誓を行う高久美穂さん(右)と、それを受ける湯浅善樹当機構理事長(左) 「ビルクリーニング」齋藤友博さん(福島県) 「喫茶サービス」渡辺大輝さん(新潟県) 「オフィスアシスタント」金賞、西川陽規さん(和歌山県) 「製品パッキング」蜻隆弘さん(長野県) 「製品パッキング」畑本義晴さん(岡山県) 「ワード・プロセッサ」相馬伸映さん(青森県) 「パソコンデータ入力」柳綺佳さん(山口県) 「パソコン操作」木村朱美さん(京都府) 「表計算」西本康次郎さん(富山県) 「DTP」城間海人さん(沖縄県) 「ホームページ」道口一行さん(千葉県) 「データベース」周祺さん(広島県) 「コンピュータプログラミング」銀賞、田中卓也さん(神奈川県) 「建築CAD」岡村昭子さん(栃木県) 「機械CAD」竹林優星さん(熊本県) 「パソコン組立」銅賞、新家克博さん(石川県) 「電子機器組立」銅賞、西尾慎一さん(三重県) 「歯科技工」村上祐太郎さん(千葉県) 「義肢」銀賞、大北康平さん(愛知県) 「木工」努力賞、福島大樹さん(岩手県) 「家具」銅賞、石坂菜々子さん(愛知県) 「縫製」江頭礼奈さん(佐賀県) 「洋裁」努力賞、松本弥生さん(熊本県) 「フラワーアレンジメント」銅賞、清水大希さん(鳥取県) 「ネイル施術」銅賞、一木侑子さん(東京都) 「写真撮影」銀賞、大塚弘也さん(鹿児島県) 技能デモンストレーション「物流ワーク」 技能デモンストレーション「OA機器等メンテナンス」 「障害者ワークフェア2022」 「アビリンピックの世界」をテーマに行われたカンファレンス 「特定非営利活動法人はぁもにぃ」のブース 「DTP」金賞、長ア和志さん(長野県) 「機械CAD」金賞、足立玄人さん(愛知県) 「電子機器組立」金賞、小林元気さん(愛知県) 「歯科技工」金賞、吉田勇己さん(東京都) 「ワード・プロセッサ」金賞、安達芽衣さん(奈良県) 「データベース」金賞、石倉正史さん(福岡県) 「フラワーアレンジメント」金賞、藤澤一代さん(香川県) 「ビルクリーニング」金賞、壁谷佳菜さん(神奈川県) 「製品パッキング」金賞、日下幸憲さん(宮城県) 「喫茶サービス」金賞、山下優香さん(和歌山県) 「オフィスアシスタント」金賞、西川陽規さん(和歌山県) 「表計算」金賞、石田雅則さん(長崎県) 「写真撮影」金賞、井門仁哉さん(愛媛県) 「パソコン組立」金賞、舘野裕太郎さん(神奈川県) 「パソコン操作」金賞、北川一朗さん(埼玉県) 「パソコンデータ入力」金賞、城間大雅さん(大阪府) 「木工」金賞、松内宏幸さん(熊本県) 【P12-13】 第42回 全国アビリンピック 入賞者発表!  幕張メッセ(千葉県千葉市)において、2022(令和4)年11月4日(金)から6日(日)までの3日間にわたり開催した「第42回全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)」。今大会は、3大会ぶりに有観客により開催し、全25種目の技能競技に47都道府県から375人の選手が集い、日ごろ培った技能を競い合うとともに、障害者ワークフェアも開催され、盛大な大会となりました。  今大会でも入賞者は以下の通り決定され、11月6日(日)の閉会式において、金賞17人、銀賞35人、銅賞33人、努力賞14人の方々が栄えある表彰を受けました。 金賞 DTP 長ア(ながさき)和志(かずし) 長野県 社会福祉法人ながのコロニー長野福祉工場 機械CAD 足立(あだち)玄人(ひろと) 愛知県 電子機器組立 小林(こばやし)元気(もとき) 愛知県株式会社デンソー 歯科技工 吉田(よしだ)勇己(ゆうき) 東京都 タクミオーデント ワード・プロセッサ 安達(あんたつ)芽衣(めい) 奈良県 なんとチャレンジド株式会社 データベース 石倉(いしくら)正史(まさふみ) 福岡県 化成フロンティアサービス株式会社 フラワーアレンジメント 藤澤(ふじさわ)一代(かずよ) 香川県 身体障害者福祉センターコスモス園 ビルクリーニング 壁谷(かべや)佳菜(かな) 神奈川県 株式会社日立ゆうあんどあい 製品パッキング 日下(くさか)幸憲(ゆきのり) 宮城県 セコム工業株式会社 喫茶サービス 山下(やました)優香(ゆうか) 和歌山県 公立学校共済組合和歌山宿泊所 ホテルアバローム紀の国 オフィスアシスタント 西川(にしかわ)陽規(はるき) 和歌山県 紀陽ビジネスサービス株式会社 表計算 石田(いしだ)雅則(まさのり) 長崎県 写真撮影 井門(いど)仁哉(じんや) 愛媛県 NHK松山放送局 パソコン組立 舘野(たての)裕太郎(ゆうたろう) 神奈川県 富士ソフト企画株式会社 パソコン操作 北川(きたがわ)一朗(いちろう) 埼玉県 国立職業リハビリテーションセンター パソコンデータ入力 城間(しろま)大雅(たいが) 大阪府クボタワークス株式会社 木工 松内(まつうち)宏幸(ひろゆき) 熊本県 社会福祉法人アバンセ 多機能型事業所カサ・チコ 銀賞 DTP 井門(いど)明日香(あすか) 愛媛県 株式会社愛媛新聞社 機械CAD 植村(うえむら)晃(あきら) 愛知県 新東工業株式会社 建築CAD 佐藤(さとう)康太郎(こうたろう) 東京都 東京セキスイハイム株式会社 建築CAD 天野(あまの)寛隆(ひろたか) 愛知県 愛知玉野情報システム株式会社 電子機器組立 小薗江(おそのえ)まゆみ 茨城県 株式会社日立ビルシステム 義肢 大北(おおきた)康平(こうへい) 愛知県 専門学校日本聴能言語福祉学院 歯科技工 宇都宮(うつのみや)真一(しんいち) 東京都 昭和大学歯科病院 ワード・プロセッサ 前川(まえかわ)哲志(さとし) 長野県 信州ビバレッジ株式会社 ワード・プロセッサ 武村(たけむら)俊明(としあき) 大阪府 株式会社ニッセイ・ニュークリエーション データベース 小林(こばやし)隆誠(りゅうせい) 愛知県 中電ウイング株式会社 ホームページ 東條(とうじょう)吉晃(よしあき) 大阪府 株式会社ウイルハーツ フラワーアレンジメント 田中(たなか)達也(たつや) 新潟県 地域活動支援センターなごみ コンピュータプログラミング 田中(たなか)卓也(たくや) 神奈川県 ディー・ティーファインエレクトロニクス株式会社 ビルクリーニング 川P(かわせ)栄大(えいだい) 東京都 東京都立港特別支援学校 ビルクリーニング 永瀬(ながせ)まゆ 岐阜県 岐阜県立岐阜清流高等特別支援学校 製品パッキング 大下(おおした)一太郎(いちたろう) 東京都 株式会社バンダイナムコウィル 製品パッキング 山本(やまもと)愛斗(まなと) 鳥取県 ヤマト運輸株式会社 倉吉営業所 喫茶サービス 佐々木(ささき)由美子(ゆみこ) 岩手県 株式会社一歩 カフェアンパス 喫茶サービス 石倉(いしくら)安七(あんな) 埼玉県 第一生命チャレンジド株式会社 オフィスアシスタント 福田(ふくだ)彩佳(あやか) 大阪府 株式会社旭化成アビリティ 大阪営業所 オフィスアシスタント 安藤(あんどう)美紅(みく) 岡山県 株式会社旭化成アビリティ 水島営業所 表計算 風晴(かぜはれ)岬(みさき) 青森県 株式会社みちのく銀行 表計算 山本(やまもと)勇(いさむ) 栃木県 株式会社栃木銀行 表計算 森岡(もりおか)大晟(たいせい) 大阪府 第一生命チャレンジド株式会社 ネイル施術 坂角(さかずみ)ゆかり 東京都 株式会社JALサンライト 写真撮影 大塚(おおつか)弘也(ひろや) 鹿児島県 株式会社エーコープ鹿児島 パソコン組立 柿木(かきのき)徹夫(てつお) 栃木県 レンゴー株式会社小山工場 パソコン操作 福士(ふくし)雅稀(まさき) 茨城県 国立大学法人筑波技術大学 パソコン操作 岡澤(おかざわ)洋成(ひろなり) 栃木県 パソコンデータ入力 藤田(ふじた)公孝(きみたか) 埼玉県 第一生命チャレンジド株式会社 パソコンデータ入力 石井(いしい)郁光(いくみ) 奈良県 テクノパークぷろぼの大和八木 縫製 澤(さわ)汐音(しおん) 茨城県 茨城県立水戸高等特別支援学校 木工 龍見(たつみ)勇斗(ゆうと) 群馬県 群馬県立高崎高等特別支援学校 木工 八木(やぎ)麻奈巳(まなみ) 静岡県 静岡県立あしたか職業訓練校 木工 平野(ひらの)敦(あつし) 鹿児島県 国立県営鹿児島障害者職業能力開発校 銅賞 洋裁 久田(くだ)大介(だいすけ) 広島県 株式会社 Asahicho 家具 石坂(いしざか)菜々子(ななこ) 愛知県 愛知県立名古屋聾学校 DTP 南(みなみ)大介(だいすけ) 大阪府 株式会社ニッセイ・ニュークリエーション 建築CAD 加賀(かが)啓一(けいいち) 愛知県 愛知玉野情報システム株式会社 電子機器組立 西尾(にしお)慎一(しんいち) 三重県 株式会社デンソートリム 義肢 大迫(おおさこ)俊司(しゅんじ) 鹿児島県 国立県営鹿児島障害者職業能力開発校 歯科技工 勝見(かつみ)聡(さとる) 大阪府 ワード・プロセッサ 山本(やまもと)巧(たくみ) 愛知県 トヨタループス株式会社 ワード・プロセッサ 眞鍋(まなべ)薫(かおる) 愛媛県 愛媛県東予地方局 データベース 若井(わかい)与一(よいち) 千葉県 株式会社データセンター ホームページ 高田(たかだ)麻衣(まい) 神奈川県 富士ソフト企画株式会社 フラワーアレンジメント 草間(くさま)陵太(りょうた) 長野県 長野養護学校高等部朝陽教室 フラワーアレンジメント 清水(しみず)大希(ひろき) 鳥取県 鳥取県立産業人材育成センター 倉吉校 ビルクリーニング 河野(かわの)雅也(まさや) 埼玉県 日東電工ひまわり株式会社 ビルクリーニング 池田(いけだ)航太郎(こうたろう) 京都府 京都市立鳴滝総合支援学校 ビルクリーニング 重政(しげまさ)遼太朗(りょうたろう) 山口県 株式会社ビークルーエッセ 製品パッキング 人見(ひとみ)光輝(こうき) 栃木県 栃木県立那須特別支援学校 製品パッキング 匂坂(さぎさか)まどか 愛知県 中電ウイング株式会社 喫茶サービス 小西(こにし)美咲(みさき) 兵庫県 日本パーソネルセンター株式会社 喫茶サービス 永瀬(ながせ)陽菜(はるな) 島根県 島根県立松江養護学校 乃木校舎 喫茶サービス 高橋(たかはし)夏姫(なつき) 大分県 社会福祉法人博愛会 オフィスアシスタント 松浦(まつうら)章太郎(しょうたろう) 愛知県 トヨタループス株式会社 オフィスアシスタント 中谷(なかたに)翠(みどり) 三重県 百五管理サービス株式会社 オフィスアシスタント 馬淵(まぶち)丈彦(たけひこ) 福岡県 西鉄ウィルアクト株式会社 表計算 赤津(あかつ)慶治(よしはる) 神奈川県 富士ソフト企画株式会社 表計算 屋形(やがた)彩花(あやか) 静岡県 遠州鉄道株式会社 表計算 山本(やまもと)真司(しんじ) 兵庫県 株式会社JR西日本あいウィル ネイル施術 一木(いちき)侑子(ゆうこ) 東京都 野村不動産ライフ&スポーツ株式会社 写真撮影 清水(しみず)武志(たけし) 千葉県 株式会社舞浜コーポレーション パソコン組立 新家(あらいえ)克博(かつひろ) 石川県 小松市役所 パソコンデータ入力 鈴木(すずき)満美(まみ) 愛知県 トヨタループス株式会社 縫製 田中(たなか)彩李菜(さりな) 北海道 就労継続支援事業所ポラリス 木工 木戸(きど)心愛(ここあ) 滋賀県 努力賞 洋裁 松本(まつもと)弥生(やよい) 熊本県 DTP 村田(むらた)美優(みゆ) 埼玉県 国立職業リハビリテーションセンター 機械CAD 村野(むらの)太一(たいち) 愛媛県 三浦工業株式会社 電子機器組立 森峰(もりほう)かおり 岡山県 パナソニック吉備株式会社 ワード・プロセッサ 鈴木(すずき)誉(ほまれ) 三重県 日東ひまわり亀山株式会社 フラワーアレンジメント 神田(かんだ)優花(ゆうか) 愛知県 デンソーテクノ株式会社 ビルクリーニング 太田(おおた)絵美里(えみり) 新潟県 老人デイサービスセンターやまびこ 喫茶サービス 海野(うみの)琉凪(るな) 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島高等特別支援学校 表計算 番(ばん)亮介(りょうすけ) 愛知県 ネイル施術 河村(かわむら)愛未(まなみ) 愛知県 写真撮影 木下(きのした)淳(じゅん) 岩手県 パソコン操作 出村(でむら)翼(つばさ) 福岡県 社会福祉法人小石原福祉会 縫製 箱岩(はこいわ)和樹(かずき) 福島県 有限会社オレンジパレット 木工 福島(ふくしま)大樹(だいき) 岩手県 株式会社青木家具製作所 【P14-15】 この人を訪ねて 従業員全員で「ともに成長する」職場を ちばぎんハートフル株式会社 取締役社長 斎藤千草さん さいとう ちぐさ 1965(昭和40)年生まれ。1988年株式会社千葉銀行入行。2014(平成26)年ダイバーシティ推進部長、2016年人材育成部長、2017年執行役員人材育成部長、2018年執行役員事務企画部長を歴任。2020(令和2)年から現職。 地方銀行初の特例子会社 ――株式会社千葉銀行が2006(平成18)年12月に設立し、2007年5月に特例子会社として認定された「ちばぎんハートフル株式会社」(以下、「ハートフル」)は、地方銀行の100%子会社では初の特例子会社だそうですね。  設立当時は社員7人でスタートし、現在は全61人、うち障害のある社員は40人(身体障害11人、知的障害23人、精神障害6人)まで増え、障害者雇用率はグループ適用で2.61%(2022〈令和4〉年6月1日現在)です。雇用形態は全員正社員で定年60歳です。定年後は65歳まで嘱託社員として再雇用しており、61歳の嘱託社員の方もいますが、意欲的に仕事に取り組み、全社員のロールモデルとして活躍してくれています。  業務は名刺・ゴム印や手形・小切手帳などの作成、送金データ入力や預金取引履歴調査、印鑑登録、社内メール便発送や契約書などの電子化、ノベルティ作成などを手がけています。  金額や記号など打ち間違えやすい業務は、必ず2人が別々に同じ作業をすることでミスを防いでいます。どちらかが間違えていれば確認時に判別できる仕組みです。また、この担当になった社員には、千葉銀行の支店や他行の金融機関コードを暗記してもらっています。コード表を見ながら打つよりも速いですし、読み間違いの確率も大幅に減ります。こうした工夫と本人たちの努力の結果、ミスはほとんどありません。 個人面談や研修、セルフケア支援 ――職場での社員へのサポートなどについて教えてください。  入社後、新入社員研修をはじめ、1年間は個人面談を毎週行っています。本人が担当する業務については「2年間で一人前」とし、一人ひとりに合わせたスキル習得の目標などを設定。個人面談でフィードバックしながら成長をうながします。その後は中堅社員研修、リーダー職階研修もあり、係長に昇進した社員が5人います。  また、今年から「セルフケア支援管理表」も導入しました。毎朝、睡眠時間や体調を記入、夕方は一日のふり返りや困りごとなどを自由に書きます。銀行から出向している管理者が目を通し、異変があればサポートに回ります。気づいたのは、意外と睡眠時間が取れておらず翌日の業務に影響していたことです。本人もいわれて初めて自覚することもあります。  年1回は「気づき・サインシート」も提出してもらいます。「調子を崩すきっかけになるかもしれないことは何ですか」、「これをすれば乗り切れると思うことはありますか」といった質問に答えてもらうことで、具体的なサポート内容を考えられるようになりました。 働く姿を見てもらうことで業務拡大 ――親会社の部署で働いている社員もいるそうですね。  千葉銀行の本店など外部の2拠点で働いています。最初はトレーニングとして社員を出向させ、業務遂行が可能だと判断してもらったうえで、業務受託の形で現場に残ります。事前に私たちが「この社員は能力があるので大丈夫です」といくらアピールしても、イメージできない場合もあるので、働く様子を見てもらうのが一番です。誠実に取り組む姿やミスの少ない仕事ぶりに「あの業務もできるかも」と話が広がり、業務拡大へとつながっています。  2022年10月からは千葉銀行の発送室業務を全面的に受託しました。ハートフルの管理者5人と社員5人で取り組んでいます。また、業務集中部では、ハートフルの管理者1人と社員5人で融資契約書などの電子化業務を行っています。  外部拠点での勤務について事前に社員へヒアリングをしたところ、半分ほどが「外で働いてみたい」と答えてくれました。ただ、現実的には想像と違うケースもありますから、ご家族も交えて相談しながらていねいにフォローしています。実際には、外部拠点に移って活き活きと働く社員が多く驚いています。 社内勉強会やアビリンピックへの参加 ――アビリンピックにも毎年のように参加されていますね。  2012年から延べ47人が挑戦してきました。パソコンデータ入力、ワード・プロセッサ、オフィスアシスタントの3種目で、今年度は地方アビリンピックに9人が出場し5人が入賞、全国アビリンピックにも1人が出場しました。先輩を見て「自分も」と手をあげる社員が多いですね。参加者全員に社長から賞状を渡すのが慣例で、私は「チャレンジそのものが大事」と激励しています。  競技用の特訓はしていませんが、社内勉強会として開催しているパソコン教室(初級・中級)が練習になっているようです。社内勉強会は勤務時間内の30分ほどを使い、ビジネスマナーやSST(生活技能訓練)、手話などをテーマに月1回行っています。聴覚障害のある社員の企画で始めた手話勉強会では、中級の腕前になった社員が増えました。配布した手話ブックを休憩時間に熱心に読む社員も見かけます。  ほかにもエクセルを使った業務当番表などを自主的に作成したり、「外部拠点で働く際の心構え」を自発的にまとめたりする社員もいます。同じ社員の目線でつくられているので、それらへの理解度も高いようです。先日は、当番表の欄外に「人が足りない場合は、いる人でテキパキと行動する!」などと書かれていたのを見つけ、とても頼もしく感じました。  社員参加の社会貢献活動にも力を入れています。当社は、2019年の台風被災地で使われたブルーシートをバッグとして再利用し復興支援にあてるプロジェクトに参加し、バッグの包装を担当しました。社会貢献への参画にやりがいを感じる社員が多かったですね。いまは、聴覚障害のある社員が講師を務める、聾学校向けのマネースクールを準備中です。 社員一人ひとりの「能力の見える化」も ――今後のハートフルの方針についてお聞かせください。  引き続き新規業務を獲得していくために、社員一人ひとりの「能力の見える化」がとても重要になると思っています。特にパソコン業務については、エクセルなどのスキルのレベルを表にして明確に提示しています。  資格取得奨励制度も設けています。「仕事に役立つものなら何でもOK」というスタンスで、漢字検定や英語検定、パソコンに関する検定を一覧表にして社員に配っています。仕事帰りにパソコン教室に通ったり、難易度の高い試験に挑戦し合格した社員もいます。会社が受検料を補助するほか、最初の合格者には記念品を贈り表彰しています。全員の前で表彰される様子を見て刺激を受ける社員もいます。このように、「自分も成長したい」と思える機会をなるべく多く提供したいですね。ちなみに管理者も、全員が「障害者職業生活相談員」の資格を、4割が「職場適応援助者(ジョブコーチ)」の資格を取得しました。さらに社会福祉士を目ざす者もいます。これからも、ハートフルの合言葉「ともに成長する」を、全従業員で実践していきたいと思っています。 【P16-17】 クローズアップ 職場内の支援体制の課題と対応 最終回 〜本社が店舗の障害者雇用をサポート〜  障害のある従業員が働きやすく定着しやすい職場となるためには、社内の支援体制づくりがポイントとなります。当連載の最終回は、従業員の相談窓口を設置し、地域の支援機関と連携しながら障害のある従業員の定着のサポートを行う「株式会社ヤマザワ」の取組みを紹介します。 監修:中央障害者雇用情報センター(★) 【取材先プロフィール】 株式会社ヤマザワ(山形県山形市) ◆事業内容  食品スーパーマーケットを核とする小売業 ◆店舗数(2022年12月現在)  60店舗(山形県内41店舗/宮城県内19店舗) ◆従業員数(2022年12月現在)  3896人(うち障害のある従業員117人:知的障害66人、精神障害19人、身体障害32人) ◆実績  2021年「障害者雇用優良事業所表彰(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞)」 障害のある人が職場にいることがあたり前の環境  食品スーパーマーケットを中心とする小売業を営む株式会社ヤマザワ(以下、「ヤマザワ」)。山形県内や宮城県内で合計60店舗を展開し、2022(令和4)年12月現在、117人の障害のある従業員(知的障害66人、精神障害19人、身体障害32人)が活躍しています。  「地域のみなさまに親しまれるスーパーマーケットは、障害のある方の就労先として注目される機会も多く、以前から積極的に障害者雇用を行ってきました。障害者専用求人を出していなくても、地域の特別支援学校や就労支援機関から採用や職場実習に関する問合せを受けることがあり、その場合の窓口は人事教育部が担当しています。職場実習を受け入れる店舗は、職場実習希望者の通勤可能なエリアの店舗のなかから、人的な体制や従事可能な作業などの環境面をふまえ、人事教育部が支援機関と相談のうえ決定しています。採用は、基本的に店舗ごとに行っており、地域の特別支援学校からの実習生を受け入れた後に採用に至ったり、求人の募集に、障害者手帳を持つ人からの応募があり採用したりするなど、正社員、パートタイムやアルバイトなどさまざまな立場で、障害のある従業員が活躍しています」と、人事教育部教育企画の加藤(かとう)理(おさむ)さんは話します。  障害のある従業員が担当しているのは、おもに野菜や惣菜などを袋詰めして小分けする作業、陳列作業、チェッカー業務(レジ)などです。  「魚売り場などでは食品の加工が発生するなど、部門によって業務の内容に若干の違いがあるので、本人の希望や特性を見きわめたうえで配属先を決めています。採用後は、店舗の責任者や指導担当者が異動しても本人への対応が適切に引き継がれるよう、特性や支援のポイントなどを記載したものを用意しています。店舗の管理職クラスの従業員は、店長会議にあわせて人事教育部が開催する障害者雇用に関する講習会を受講しています。また、複数の部門のチーフ、接客担当者に対しても同様の講習会を実施しています。講習会の内容は、各店舗から相談を受けることがある精神障害や発達障害の特性と、職場での対応方法について理解を深めるもので、山形障害者職業センターに講師を依頼しました。一緒に働く従業員の多くは、障害者雇用に特別詳しいわけではありません。しかし、障害のある従業員と一般の従業員がともに働くことがあたり前の環境があるので、障害のある従業員にどのように接したらよいか、どのような配慮が必要かなどを、前の担当者から自然に見聞きして、引き継がれています」と加藤さん。 支援機関との連携と店舗の支援をになう『人事教育部』  加藤さんの在籍する人事教育部では、障害のある従業員の職場適応や定着にあたって、何か問題が起きたときに採用店舗の責任者から相談を受けつけています。加藤さんは、  「人事教育部では、人事、教育、福利厚生などのサポートを行っており、障害の有無にかかわらず、従業員の健康管理やメンタルヘルスなどについての相談を受けつけています。このような背景から、障害のある従業員についての相談も多く寄せられます」と話します。  特に多いのは、遅刻や欠勤などの勤務態度についての相談、合理的配慮を考慮した対応策や指示の出し方についての相談、従業員同士の人間関係についての相談などです。加藤さんが続けます。  「障害のある従業員の所属する部署の上司や同僚から、店舗単独では対応できない相談が寄せられることが多いです。このような場合、人事教育部では相談事に対して、上司や同僚、当事者からのヒアリングなどを行い、店舗内の支援体制について助言したり、また、必要なサポートを見きわめたうえで、障害者職業センターのジョブコーチや、そのほかの支援機関によるカウンセリングなどのサービスにつなげたりする役割をになっています」  また、発達障害者や精神障害者への支援体制を強化するため、14人いる人事教育部のメンバーのうち1人は、看護師の資格を持っており、必要に応じて、ジョブコーチ支援やリワーク支援などの支援場面に立ち会ったり、当事者との定期的な面談などを行ったりしているそうです。  「専門的な知識のあるメンバーはかぎられていますが、適切なタイミングで、適切な専門家につなぐことで、障害のある従業員の職場適応や定着の助けになっていると思います。当事者は、何か問題や不満を抱えていても、気持ちを言葉で表現するのがむずかしい場合がままあります。その人の状況や気持ちをすぐには理解できないこともありますが、できるかぎり寄り添った対応ができるように心がけています。最近は、障害者職業生活相談員資格認定講習を受けるメンバーもおり、人事教育部として、障害者雇用への理解をよりいっそう深め、採用している店舗のサポートをしていきたいと考えています」  最後に、加藤さんは、これから障害者雇用に取り組む企業の方、初めて担当になる方などに向けて、次のように話してくれました。  「障害のある人のことを理解しようと頭ではわかっていても、相手の立場や状況、気持ちなどを推し量り、本当の意味で理解することはなかなか困難なことです。でも、それをあきらめずに、理解しようという立場に立ち続けること、『自分の考えとは違うが、こういう考え方もあるのだな』と相手の考えを一度受け入れる頭のやわらかさが必要だと感じています。会社として『それは受け入れられない』、『実現不可能だ』と思う状況もあるかもしれませんが、はじめから『できない』と決めつけずに、どうすればできるのか、できることを一緒に探していく姿勢が大切だと感じています」  当連載では職場内の支援体制について、4回にわたりその重要性とポイントや事例をご紹介してきました。どの企業もそれぞれの特徴、物理的な環境などに応じた工夫をしながら職場内の支援体制を整備して取り組んでいることがわかります。人事担当のみなさま、どのような体制で取り組むとよいか悩まれたら、お近くの地域障害者職業センター(※)にどうぞご相談ください。 ★中央障害者雇用情報センター  https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer05.html <参考>「はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜」ウェブコンテンツ版「Q職場で改善すべき問題が起きたときはどのように対処すればよいですか?」  https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003lx83.html ※地域障害者職業センター  https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/index.html 「障害者職業生活相談員について」  https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04.html 写真のキャプション 山形市内にある、ヤマザワ松見町店(写真提供:株式会社ヤマザワ) 青果部門で25年間勤務している男性従業員。知的障害があり、おもに商品陳列を担当している(写真提供:株式会社ヤマザワ) 作業室で店頭に並べるいちごパックを準備している様子。店内放送なども担当し、売上向上の一助となっている(写真提供:株式会社ヤマザワ) 【P18-20】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 事業主のみなさまへ 令和5年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ 〜常用雇用労働者の総数が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜 令和5年4月1日から同年5月15日の間に令和5年度分の申告申請をお願いします。 前年度(令和4年4月1日から令和5年3月31日まで)の雇用障害者数をもとに、障害者雇用納付金の申告を行ってください。  ○障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。  ○障害者の法定雇用率を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 【申告申請期間】 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者特例調整金 特例給付金 申告申請対象期間 令和4年4月1日〜令和5年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和5年4月1日〜令和5年5月15日 (注1、注2、注3) (注1)年度(令和4年4月1日〜令和5年3月31日)の中途で事業廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告申請(障害者雇用納付金の場合は、あわせて申告額の納付)が必要です。 (注2)障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金および特例給付金は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できませんので、十分にお気をつけください。 (注3)常用雇用労働者の総数が100人以下(申告申請対象期間に常用雇用労働者の総数が100人以下の月が8カ月以上)の事業主が、特例給付金の申請を行う場合の申請期限は令和5年7月31日となります。 *詳しくは、最寄りの都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。 JEED 都道府県支部 検索 当機構ホームページにて、記入説明書および解説動画をぜひご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/levy_grant_system_about_procedure.html 申告申請の事務説明会にぜひご参加ください。 *全国各地で2〜3月に開催します。 *参加費は無料です。 JEED 納付金 説明会 検索 事業主のみなさまへ 障害者雇用納付金 電子申告申請システムが令和5年度申告申請から新しくなります URL:https://www.nofu.jeed.go.jp/Nofu_Densi/ 電子申告申請システム トップページ(画面イメージ) こちらからアクセスできます 最新情報は、当機構ホームページをご覧ください 新システムの特徴 1電子申告申請システム(WEB)上のフォームに情報を入力して、申告申請書の作成ができます  ※申告申請書作成支援シート(マクロ機能付きExcel)は廃止します 2過去の申告申請書のバックアップデータ(XMLファイル)やCSVファイルを取り込むことができます 3電子申告申請用ID・パスワードの発行・変更手続がWEBでできます 4添付書類(源泉徴収票や障害者手帳の写し等)の送信ができます 新システムの詳細および操作の流れ等については、当機構ホームページに掲載している「障害者雇用納付金 電子申告申請システム操作マニュアル」をご参照ください。 事業主のみなさまへ 障害者雇用納付金関係業務調査のごあんない 〜障害者雇用納付金制度を支える仕組みです〜  障害者雇用納付金制度の適正運営、経済的負担の平等性の確保などの観点から、障害者の雇用の促進等に関する法律第52条に基づき調査を実施しております。  実際に調査の対象となった事業主の方に対しては郵便、お電話にて事前にご連絡し、日程調整や用意いただく書類などについてご案内いたします。  ご協力をお願いいたします。 【対象となる事業主の方】  申告申請を行ったすべての事業主のうち、主として雇用障害者の種類および等級や程度を明らかにする書類などの添付書類の提出が義務付けられていない事業主から、毎年度、一定数の事業主を選定します。 【調査方法】  関係書類やヒアリングにより、常用雇用労働者の総数および雇用障害者数や障害の程度などが適正であることの確認を行います。 【申告申請額に誤りがあった場合】  調査の結果、申告申請内容に誤りがあった場合には、納付金の追加納付・還付、調整金などの返還を行っていただくことになります。  なお、納付金の追加納付が必要な場合には、その納付すべき額に10%を乗じて得た額の追徴金が課せられます。  申告申請書作成時に根拠とした書類は、調査時に確認しますので適切な保管をお願いします。  また、障害者の退職後も、障害者であることを明らかにする書類(手帳等の写し)を3年間保存する義務があります。ご注意ください。 本調査について、詳しくは当機構ホームページに掲載している「障害者雇用納付金等に関する事業所調査のごあんない」をご参照ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/noufukin_chosa.html 「障害者雇用納付金制度記入説明書」にも掲載されております。 〈お問合せ〉 納付金部 調査課 TEL:043-297-9654 FAX:043-297-9657 【P21】 エッセイ 第4回 発達障害と就労 〜企業担当者と支援者の連携〜 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺 副所長 砂川双葉 砂川双葉(すながわ ふたば) 特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ堺・副所長。社会福祉士、介護福祉士。2013(平成25)年、特定非営利活動法人クロスジョブに入社。就労支援員としておもに発達障害のある人の支援、障害者雇用を行う企業の支援を行う。2021(令和3)年、当機構の第29回職業リハビリテーション研究・実践発表会で、就労移行支援事業所におけるASD者のアセスメントと支援についての実践報告を発表している。 企業と支援機関が事例を題材にともに学ぶ場  特定非営利活動法人クロスジョブ(以下、「クロスジョブ」)では、2019(平成31)年度から「企業連携会議」を定期的に開催している。会議にはクロスジョブの支援者をはじめ、体験実習や雇用先として連携している企業に参加していただいており、中小企業が多いことが特徴だ。企業だけの会議、支援者だけの会議は多く存在するだろうが、私たちの会議で大切にしていることは、障害のある人が「職場で活躍して働き続ける」を共通目標に、日々起こるさまざまな事例を題材に企業と支援機関が互いの立場から情報発信を行うことや、それらを通じてともに学ぶ場にすることである。企業には専門知識など、独学では習得する機会が限られるような情報を提供し、支援者には企業文化や雇用後に求められるサポートについて学んでもらっている。  クロスジョブ梅田(大阪府)をメイン会場に、オンラインにも対応しているため全国からの参加が可能だ。 ハミューレ株式会社の取組み  2022(令和4)年11月に開催された企業連携会議では、北海道に本社を置くハミューレ株式会社(以下、「ハミューレ」)の店舗運営部長の齊藤(さいとう)浩二(こうじ)さんより、クロスジョブ札幌との連携事例や障害者雇用についての発表があった。ハミューレは仕事用品や衣料品の店舗を展開しており、北海道障害者職業センターのワークショップに参加したことをきっかけに障害者雇用を開始。いままでに15人を採用している。クロスジョブとの出会いはクロスジョブの支援者からのアプローチだった。  ハミューレの障害者雇用の特徴は、障害のある人のためだけに社員教育や職場環境の整備を行うのではなく、企業内教育の大きな枠組みのなかで障害者雇用をとらえていることだ。チームビルディングに関する社内研修を多く設けており、相手のことを知る、相手の強みを活かすことを大切にしている。職場で働く人たちの活躍をみんなで考える風土が築かれており、一人ひとりの存在を大事にする環境のなかに障害のある人が含まれているのだと感じた。障害者雇用を行う各店舗の店長同士が障害者雇用について自主的に勉強会を開くなど、ハミューレの「考動原理」にある「私たちは常に相手の為に相手の立場で考動します」を軸にしたマネジメント力が、組織の大きな後押しとなっている。  障害のある人を特別視し、その人自身を変えるのではなく、障害があってもどうすれば職場で戦力になるのかを考える姿勢は、社会モデルの手本でもある。 話し合える関係をつくること  齊藤氏からは支援者に対して「課題に対してすぐに正解を出さなくてもいい。企業と同じ目線で悩んだり、話し合いができる存在でいてほしい」と伝えられた。支援者にとっても、障害のある人にとっても心強いメッセージだった。人が発達し、成長していくためには長い時間と良質な経験が必要になる。特に発達障害のある人が職場で活躍するためには企業の協力が不可欠であり、支援機関は建設的な対話を通じて両者の歩みをサポートしなければならない。企業に人を送り込むだけでは専門職の役割を果たしたとはいえない。  さらに「企業の問題には別の企業が相談にあたり、企業同士で育て合うことも手法である」という助言もあった。企業と支援機関の関係では立ち行かなくなることも、企業連携会議の場を使うことで新しいひらめきに出会えるかもしれないし、そのような場所にしていきたいと思う。だれもが働きやすい社会をつくっていくため、企業とともに学びを続けていきたい。 【P22-27】 編集委員が行く 製造業の“障がい者雇用の質”について考えるヒント デンソー太陽株式会社(愛知県)、社会福祉法人太陽の家 愛知事業部(愛知県) トヨタループス株式会社 取締役 清水康史 取材先データ デンソー太陽株式会社 〒443-0103 愛知県蒲郡市(がまごおりし)形原町(かたはらちょう)北浜28-1 TEL 0533-57-1636(代表) FAX 0533-57-1351 社会福祉法人太陽の家 愛知事業部 〒443-0103 愛知県蒲郡市形原町北浜28-1 TEL 0533-57-1611 FAX 0533-57-1606 編集委員から  私がデンソー太陽株式会社を取材しようと思ったのは、初めて工場を見学させていただいたときの感動を、みなさんにお伝えしたいと考えたからだ。最近「障がい者雇用の質」について思いをめぐらすことが多く、そのヒントとなるようなものを引き出せるよう、それぞれのインタビューを通して試みた。 写真:官野 貴 Keyword:製造業、特例子会社、合理的配慮、支援体制、就労継続支援A型・B型事業所 POINT 1 経営の質を高めるには合理的配慮を尽くして社内外の競争環境が必要 2 「No Charity, but a Chance!」を実践する人事制度と支援体制 3 競合他社に品質で勝ち抜く仕組みと人づくり はじめに  デンソー太陽株式会社(以下、「デンソー太陽」)は、1984(昭和59)年3月に設立され、同年6月に愛知県初の特例子会社として認定された。「生産事業を通して障がいのある人たちの自律を支援する」という企業理念のもと、さまざまな業務で社員一人ひとりに成長と自律の機会を与えている。母体となった社会福祉法人太陽の家(以下、「太陽の家」)は1965年に設立。これまでの経緯や今後の取組みについて、まずは太陽の家愛知事業部就労支援課課長の福澤(ふくざわ)真(まこと)さんにお話をうかがった。 太陽の家 福澤さんにインタビュー 清水 太陽の家とデンソー太陽との関係や役割をご紹介いただけますか? 福澤 太陽の家は、もともとは大分県別府市に拠点がある事業所で、整形外科医師の中村(なかむら)裕(ゆたか)先生がつくった施設・法人です。それがなぜ愛知県に来たか。ここ蒲郡(がまごおり)市で織布メーカーの社長を務められていた明石(あかし)六郎(ろくろう)さんが、私財を投げうって、地元蒲郡のために何かできないかと思い、障がいのある方の援護育成を目的に施設をつくることになりました。日本全国を探し歩いて、別府にある太陽の家がとても先進的な活動をしているので、ぜひ蒲郡にも同じ施設をつくってほしいとお願いしたのです。最初、中村先生はお断りしたようなのですが、明石さんの熱意に負けて「愛知太陽の家」の設立が実現に至ったのです。また当時、愛知県や蒲郡市など、この地域の方々が積極的に誘致活動を行いました。その後に就労を通じた自律支援の仕事の部分をどのように進めるかを考え、日本電装株式会社(現:株式会社デンソー、以下、「デンソー」)にお声がけをしてご賛同いただけた結果、デンソー太陽が誕生しました。障がいのある方の就労を通じた自律支援を目ざして両者が動きはじめ、地域の方からもその趣旨に賛同する声があがってから40年近くが経過しています。  両者の役割としては、設立した当初から工場の生産に関する部分は、ものづくりの得意なデンソー太陽が担当し、障がいのあるメンバーの健康管理や相談ごとの対応など、人的な管理は太陽の家が担当するという分担です。障がいのある人の自律支援をものづくりを通じてやろうとしているのがデンソー太陽で、そこに来る障がいのある人をサポートするのが太陽の家という関係なので、基本的には同じ理念のもとに一致した方向を向いています。仕事が安定的に供給され、社会人として自律していくメンバーを数多く目の当たりにできるのはうれしいですね。 清水 デンソー太陽との関係は具体的にはどうなっているのですか? 福澤 社会福祉事業の就労継続支援B型事業所(以下、「B型」)とA型事業所(以下、「A型」)と就労移行支援事業があります。就労移行支援は製造業に絞らず、いろいろなところでトレーニングを重ねたいという方向けに運営しており、就職先も外部の企業を含みます。B型とA型は、製造業を通じて自律していきたいという人たちの受け皿として運営しています。A型での中途採用では試験を行い、結果が厳しかったら、ご本人の希望に応じB型で受け入れるというスタンスです。また学生の場合は、実習を受けてもらった結果「A型からでもいけると思う」とか「B型のほうが結果としては長く働き続けられると思う」という提案などをして、希望するかしないかは本人に決めていただいています。  B型で基礎的な訓練を行い、一定の基準を超えた方はA型に移行しています。そして生活も健康管理も仕事も自律した方は、太陽の家の「公益事業」に籍を移して一般就労となり、デンソー太陽の班長たちの指揮命令下に出向します。出向中さらに専門的な知識・技能を高めて、認められた方は、デンソー太陽に採用されます。この流れを原則とし、社内では「ステップアップの仕組み」と呼んでいます。デンソー太陽の求人は太陽の家からのステップアップだけでまかなわれており、「太陽の家から安心していい人を採用できる」といっていただいています。それゆえ、みなが希望を持って目標に向けて取り組んでいます。 清水 B型からA型に移行するときには、標準的にどれぐらいの期間が必要ですか? 福澤 早い人で1年で移行した人もいますが、通常3年から5年ぐらいはかかります。移行した人たちを見ていると、"手本"が目の前にあることが大きな影響をおよぼしていると感じますね。目に見えないものではなく、「憧れの先輩たち」というモデルが目の前にあるのです。その存在により自律への気持ちを長く維持できることが、太陽の家の強みだと思っています。毎年3〜4人がB型に入り、1〜2人ぐらいがA型に移行します。先日、9年かけてA型に移行した人もいました。採用辞令をじっと眺めている目を見ると「これからだ」という強い決意を感じ、胸が熱くなりました。 清水 A型から公益事業への移行はどれぐらいかかりますか? 福澤 1年ぐらいですね。公益事業からデンソー太陽に入社することにも年数の制限は設けていません。1年に2回、7月1日と1月1日にステップアップのタイミングを設けています。「太陽の家はこの人を推薦します」、「デンソー太陽はこの人を採用したいです」という両方の希望をすり合わせ協議などを経て採用に至ります。 清水 「ステップアップの仕組み」はやる気を引き出す素晴らしい仕組みですね。その仕組みでステップアップした人に対して、太陽の家としてはどのように支援をされていますか? 福澤 太陽の家の本来の業務は障がいのある方の自律支援ですし、設立からの役割分担も相まって、支援や相談の役割は太陽の家がになってきました。数年前までは工場のフロアごとに担当の支援員・相談員を配置していましたが、デンソー太陽社長の大西さんの要望で、自分の「パートナー(支援員・相談員)」を社員が指名できるように変更しました。デンソー太陽の社員になるとうちの所属ではなくなりますが、太陽の家の支援が切れないように、社員になった後も気の合う職員をパートナーとして指名できるようにしています。そうすることで、社員はいろいろなことをパートナーに相談しやすくなります。職員は、何かあったときのために横で伴走しているようなイメージです。太陽の家から自律した人たちに「私のパートナーをお願いします」といわれることは、職員にとっても励みになっているようです。 清水 最後に福澤さんにとって障がい者雇用の質とは? 福澤 法定雇用率達成のためだけではなく、雇用方法や本人の活躍の仕方で社会が障がいのある人を受け入れていく仕組みや制度をつくる必要があると思っています。雇われる側は持っている能力に期待してほしいはずです。その期待に応えたいと思ってかんばるので、雇った側は、そのがんばりに感謝し、評価していく関係性が大事だと思います。折に触れ「共生社会の実現」と私も口にしますが、私たちはすでに共生しているわけで、その関係性の質をどのように高めていくのかということです。それはお互いに信頼し、必要としあうことではないでしょうか。支える側、支えてもらう側だと、早晩限界が来ると思います。障がいの有無にかかわらず、お互いの多様性を認めることが、障がい者雇用の質も高め、本当の意味での共生社会になると考えています。 大西さんにインタビュー「経営の質」  続いて、デンソー太陽の取締役社長を務める大西(おおにし)明彦(あきひこ)さんにお話をうかがった。 清水 社長を継承されて、最初に取り組まれたことは何ですか? 大西 デンソー太陽では品質・生産性を重視した工場運営の仕組みはほぼできあがっていたのですが、太陽の家の理念「No Charity, but a Chance!(保護より機会を)」に則った経営がしっかりできているかチェックしました。デンソー太陽のことを「デンソーがつくった会社だ」と思っている人が多いので、そうではなくて、地元の熱意でつくったという経緯についてもあらためて回帰しました。 清水 生産事業と障がい者の自律支援を両立させるために、どのようなご苦労をされたのですか? 大西 「自律支援」とはどういうことか。私は最終的には「社員が幸せになること」だと思っています。まずはこれを第一義に考えないといけない。第一義が社員の自律を支援し続けることなので、「社員一人ひとりに寄り添って、能力の維持と向上と自律をしっかりうながしてください」とつねに管理者にはお願いしています。  次に、会社として競争力を高めるために社員にも競争力を求めようと、実力ベースの人事制度に変えました。身体が悪くなってパフォーマンスが落ちた人は、評価が下がってしまうのですが、デンソー太陽では、いままで役職に就いていた人でも身体の機能が低下したりすると、その役割を後進に譲って「これからはついていくよ」というマインドがあります。そのため、年齢が高いからではなくて、できる人に役職に就いてもらうという合理的な考え方を取り入れました。年齢にとらわれることはなくなり、自分からどんどん発信していこうという気持ちに切り替わりつつあるので、こうした実力ベースの人事制度というのは、この会社に合っていると思いますね。  私は、太陽の家の理念の「No Charity, but a Chance!」を、「機会は平等だけど結果の平等は保証しない」ととらえています。合理的配慮という言葉がありますが、これは「機会の平等」のためと考えています。合理的配慮を尽くし、機会を平等にしたうえで、社員には「自分はこの仕事ではだれにも負けない」という感覚を持ってもらいたいと思います。社員同士お互いに切磋琢磨し、強くならないといけないと思ってほしいです。社員に競争力がつけば、会社の競争力も高まり、結果として社員が幸せになればよいと思います。公平な機会を与えられ、期待されると人はがんばります。実力ベースの人事制度も合理的配慮も、公平な機会の提供だと考えています。 清水 具体的にはどのように競争させていくのですか? 大西 競合相手となるデンソーの関連会社に勝って、デンソー太陽にビジネスをオファーしてもらうためにはどうすればよいか。それにはやはり"品質"で勝負ですね。お客さまのところに不良品を出荷したらたいへんなことになります。「デンソー太陽は品質で勝負している」、「品質は生命線」とみんなにいっています。だから絶対に不良品を出さないような業務の仕組みと検査体制の整備が重要です。品質を確保するために業務プロセスが一つ増えたり二つ増えたりすると、生産性が少し落ちることもありますが、品質で問題を起こして出荷が止められることを想定すると、業務プロセスを多少増やすことはいとわない。とにかく品質に投資していくというのがわれわれの戦略ですね。業務委託される側として、われわれが競争力を持つためにどうすればよいかと考えていくと、この方法になるのです。 清水 大西社長にとって、障がい者雇用の質とは? 大西 デンソー太陽の社員の多くは身体障がいのある人ですが、近年は精神障がいのある人の割合が多くなってきています。そのため、精神障がいのある社員一人ひとりに適切な配慮をし、機会の平等を保つという、とても大きな課題が残っています。また、管理者のマネジメントや、社員育成の質を大きく変える必要があると思います。私がいつも考えているのは「No Charity,but a Chance!」です。合理的配慮をして機会の平等は保つが、結果の平等は与えない実力主義で進め、デンソー太陽として競合に勝っていかないといけません。障がいのある人だけで勝てるという自信がつけば、障がいの有無に影響されずに質の高いパフォーマンスが発揮できるということを社会に発信できると思います。 清水 最初に工場見学で訪問したとき、なんとなく右脳感覚でイメージとして理解していたことが、今日お話をうかがって理解が進み、言語化することができました。 吉田さんにインタビュー「品質と人の質」  最後に、デンソー太陽のスマート班で班長を務める吉田(よしだ)裕(ひろ)さんにお話をうかがった。 清水 太陽の家でA型からお仕事をはじめたそうですが、どのような感想をお持ちですか? 吉田 高校生のときに初めて工場見学に来たときは「こんな会社と職場があるのだな」と、ただ思っていました。もともとは「自分で何でもやってみなければ物事は理解できない」という気持ちがあるので、見学の際に「何かやれそうなものはありますか?」といわれても「やってみなければわかりません」と答えていました。「この作業はできそうだけど、でも工夫すれば自分ならもっとうまくできそうだ」と感じたことを覚えています。私は生まれつき障がいがありますが、母は普通の学校に通わせようと考えて、一般の人と同じ学校で、友だちみんなと一緒に通常の授業を受けていたので、自分が障がい者という感覚はもともとあまりないように思います。 清水 A型に入ったときに、どういう配慮がありましたか? 吉田 やりにくい作業があると、素直に「やりにくい」といって「こういう配慮をしてもらえばできるのですが」と、自分から要望を伝えていました。例えば工具の位置を少し変えてもらうなどですね。自分はまったく左手が使えないわけではないので、特に補助治具が必要だということは一切ないです。左手でできないことを右手で補っている感じです。途中から障がい者になると、それまでできたことができなくなる感覚かもしれませんが、私の場合は、もともとできないものをできるようにしているだけです。 清水 何年ぐらい在籍してからデンソー太陽に入社したのですか? 吉田 A型は約4〜5年ぐらいです。結構長い間、センダ(ガソリンタンク部品のコイルの中に入る浮き輪)をつくるセンダ班にいました。自分も早く自律したいと思っていたので「一生懸命働きます」とアピールしました。自分の班の稼働が閑散期になったとき、ほかの班に応援に行って新たなスキルを身につけたり、またほかの班の繁忙期に応援に行っていました。 清水 デンソー太陽に入ってからはいかがですか? 吉田 上司から私のスキルアップへの期待をこめた班異動で、いまのスマートキーを生産する班に所属し、そのままデンソー太陽に入社しました。A型のとき、センダの仕事はできたのですが、もう一つ、車のコンビメーターの仕事では大きい部品を扱わなければならないうえ、落とすとたいへんな損失につながるので、手の都合上、「支えられるか不安だ」と相談しました。係長からは「たしかにむずかしいかもしれないね」と理解してもらい、スマート班の所属になりました。センダ班にいたときよりもできる作業が増えましたし、1〜2年の間で自分自身のスキルも上がりました。残業も休日出勤もありましたが、充実していました。この班のリーダーになってからは休日出勤を手伝ってくれる人たちの負担が軽くなるように「休日出勤があるから金曜日は定時で帰ろう」とか、休日出勤しない人に「残業を手伝ってもらえませんか」とお願いしたりしていました。そうして班長補佐を1年間にわたって務め、今年度になって正式に班長になりました。 清水 通常の作業者とラインリーダーや班長との違いはどういったところですか? 吉田 ラインリーダーは作業しているところから1歩外に出て、班長の補助として細かい手直しのほか、作業者に呼ばれたらそこに行って、質問を聞いて回答したりします。いまは私がラインリーダーも兼務しています。班長としては、係長の力を借り、現場を見ながら、忙しいときは係長にパソコン業務などをサポートしてもらっています。パソコン業務が苦手なわけではないですが、ずっと座り続けるのはあまり好きではないのです。だからしょっちゅう現場を見て、みんなが何をしているのかなとか、やりづらそうな仕事はないかなとかを見て回っています。 清水 ラインリーダーや班長をやっていて、たいへんだったことはありますか? 吉田 たいへんだったのは、初めて作業しているところから外に出て、人の管理をしなければいけないことでした。作業者がそれぞれどのような業務を遂行できるか理解したうえで、どういう組合わせでラインに配置するかを考えることが、すごくたいへんでしたね。人間関係を頭に入れながら、でも生産台数のことも考えなければならないし、いろいろ悩みました。 清水 班員一人ひとりを理解していくにあたって、意識されたことはありますか? 吉田 班員に声かけすることが増えました。いままでただの作業者だったときは、同じ班員だからといって、そこまで深くかかわる必要はないと思っていました。しゃべらない人がいてもしゃべる人がいても、特に気にならなかったです。でも班長になってからは、なるべくみんなと話をして、いまこの人はこんなことを考えているのだなとか、この人はこういう趣向があるのだなとか、プライベートな話もしたりして、積極的にコミュニケーションを取るようにしました。実は私はもともとすごく人見知りなので、コミュニケーションはたいへんでした。入社当時はだれとも会話できなくて、ずっと一人でいるという感じでした。いまは自分の立場だからというのはもちろん、特に品質確保の観点からも、班員一人ひとりと誠実に向き合っています。 清水 自分が作業をしていたときの品質に対する考え方と、ラインリーダーや班長になってからの品質に対する考え方はどう変化しましたか? 吉田 自分が組付け作業者だったときは、とにかく不良品を見逃さないようにするのが主でした。ライン全般を見るようになってからは、どうすればみなが不良品を見逃さないようになるか、見落として流れていかないようにできるかなどをチェックしています。また作業者が、自分で不良品をつくってしまったことを素直に打ち明けられる環境を整えたいと思っています。不良品をつくった人には「後工程に流れるほうがもっと周りに迷惑をかけるから、すぐに打ち明けてね」と伝えています。一番大事なことは、自分がミスしたことをきちんといえることです。 清水 吉田さんは後進を育てようと考えていますか? 吉田 はい、後進を育てたいと思っています。ただ、プレッシャーを感じすぎて気持ちが沈んでしまうタイプの人は、身構えて「やらなければ」と追い詰められてしまうので、その点に気をつけて日々の指導にあたっています。 清水 そういう思いやりや優しさが必要かもしれないですね。吉田さんを通してデンソー太陽のすばらしさが具体的にイメージできました。吉田さんにとって、働くこと、自律していくこととはどういうことですか? 吉田 高校を卒業したら働くようにと母にいわれていたので、自分でもそれがあたり前だと思っていました。でも、自律していくことは、むずかしいです。自分が自律している実感もあまりないです。班長になったときも、自分ががんばったからというよりも、周りの班員に認められたおかげかなと思っています。だからいまは、自分の班は自分で守ると心に決めています。班員に何か起こったとしても、絶対に味方になってあげようと。甘えさせるわけではないですが、悪いことが起こったとしても、怒るけど敵ではないことをみなにわかってほしいと思っています。 清水 謙虚ですね。班員にどう自律してほしいか、イメージはありますか? 吉田 班員のなかには、たまに人間関係で不満をいう人もいます。私は仕事としてとらえてほしいという思いを伝えます。さまざまな考え方の人々が集う場ですので、相性にとらわれず、自分のなかで折り合いをつけて仕事はきちんとやってほしいと話しています。 清水 最後に、これからの目標や夢はありますか? 吉田 当社には1年間がんばった班に表彰状がもらえる制度があります。ここ最近は賞が取れていないので、それに向けてがんばっていきたいですね。私が班員につねに朝礼で「忙しいときも、不良品を出したときも、みなでがんばりましょう。みなで乗り越えよう」といってきたので、形に残るものとして表彰状がもらえると全員喜んでくれると思っています。 清水 今日はいろいろとお話を聞かせていただきありがとうございました。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、清水委員の意向により「障がい」としています 写真のキャプション 「愛知太陽の家」のエントランス 社会福祉法人太陽の家愛知事業部就労支援課課長の福澤真さん 「愛知太陽の家」設立に尽力された明石六郎さんの銅像 「愛知太陽の家」の一室には、中村裕先生の写真や理念などが掲げられている 就労継続支援B型事業所の生産ライン 「デンソー太陽株式会社」 デンソー太陽株式会社取締役社長の大西明彦さん 工場内で清水編集委員(左)を案内する大西さん(右) 働きやすい環境から、高い品質の製品が生み出される スマート班の班長吉田裕さん 吉田さんは班長として生産の管理やラインへの人員配置などを担当する 治具を活用した片手での組み立て作業 デンソー太陽で生産される「センダ」 デンソー太陽で生産される「スマートキー」 吉田さんは、班員とのコミュニケーションを大切にしている 【P28-29】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 障害者のコロナ入院時の付き添い容認を  厚生労働省は、特別なコミュニケーション支援が必要な障害児者が新型コロナウイルスに感染し入院した場合、ヘルパーや家族ら支援者の付き添いを認めることを医療機関にうながすよう協力を求める通知を全国の自治体などに出した。通知では「障害児者における支援者は、障害児者が医療従事者と意思疎通する上で極めて重要な役割を担っている」として、院内感染対策に配慮しつつ、可能なかぎり支援者の付き添い受け入れを検討するよう協力を要請している。  重度の障害で意思の疎通に支援が必要な人が入院する場合、重度訪問介護ヘルパーが付き添うことができるとし、「障害者ごとに異なる特殊な介護方法を、医療従事者などに的確に伝えることができ、適切な対応につながる」と伝えている。  また、実際に支援者の付き添いを受け入れている事例について10医療機関にヒアリングし、その対応例も示している。 文部科学省 「障害者の生涯学習支援活動」表彰  文部科学省は、障害者の生涯を通じた多様な学習を支える活動を行う個人や団体について、活動内容がほかの模範と認められるものについて功績をたたえる、令和4年度「障害者の生涯学習支援活動」にかかわる文部科学大臣表彰の受賞者56件(個人5件、団体51件)を発表した。文部科学省ホームページ内で活動内容を含めた被表彰者の一覧表を掲載している。 https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/mext_00002.html 地方の動き 東京 「補助犬」への理解を深める企画展  身体障害者補助犬の育成などを目的とする「身体障害者補助犬法」の施行から20年を経たことを機に、東京都は、企画展「いっしょに生きる 身体障害者補助犬法成立から20年」を「東京都人権プラザ」(港区)で開催している。  同法は、不特定多数の人が利用する施設で補助犬同伴の受け入れ拒否を禁止しているが、認知度が低く、補助犬ユーザーが入店拒否に遭うことも少なくない。企画展では、補助犬を取り巻く状況について解説するとともに、盲導犬、介助犬、聴導犬とユーザーの日常生活なども紹介し、幅広い世代に楽しみながら理解を深めてもらう。開催期間は2023(令和5)年3月30日まで(日曜・年末年始は閉室、祝日は開室)。開室時間は9時30分〜17時30分。入場無料。問合せは東京都人権プラザまで。 電話:03−6722−0123 働く 東京 身体障害者をドライバー採用  タクシー大手「日の丸交通株式会社」(文京区)が、2023(令和5)年から身体障害者を対象にした「Challenged Driver(チャレンジド・ドライバー)」採用を始める。  2018(平成30)年5月にダイバーシティ宣言をして外国籍やLGBTQの人材採用を進めてきた同社では、障害のあるドライバーも少数いるという。今後は本格的な採用に向け、営業所の環境整備としてバリアフリー化を進めるほか、障害者雇用に関する社員教育も検討。乗客にも理解してもらうため、ドライバーが障害者であることを示すステッカーを車両に貼りつけて周知する予定。手動でアクセルやブレーキの操作ができる補助装置を一部車両に取り付けることも検討する。 広島 ひろぎんHDの特例子会社認定  広島銀行などを傘下におく持株会社「株式会社ひろぎんホールディングス」(広島市)の子会社で、グループの事務支援をになう「ひろぎんビジネスサービス株式会社」(広島市)が、特例子会社に認定された。  ひろぎんビジネスサービスは、2022(令和4)年10月に「ハートフル事業本部」を新設した。自立度・熟練度に応じてステップアップできるよう、パソコンによるデータ入力などを担当する「フロンティア(豊かな可能性を開拓していく)コース」と、名刺印刷・ゴム印作成や事務作業をサポートする「スマイル(笑顔でやりがいを持って働く)コース」で、それぞれきめ細かい人事制度を導入している。 本紹介 『発達障害の人には世界がどう見えるのか』  国立障害者リハビリテーションセンター研究所脳機能系障害研究部研究員の井手(いで)正和(まさかず)さんが、『発達障害の人には世界がどう見えるのか』(SBクリエイティブ刊)を出版した。井手さんはこれまで研究と並行してアウトリーチ活動を積極的に行い、感覚過敏についての科学的な理解の啓発に取り組んできた。本書では、発達障害の人が抱える生きづらさは「自分が見えている世界がほかの人の見えている世界と異なることにある」として、知覚実験、脳科学などによる最新研究をもとに、発達障害のある人の苦しみを軽減するにはどうすればよいかを論じている。新書判、208ページ、990円(税込)。 『障がい者を生かすと会社が儲かる!〜AI社会で活躍する人材の発見〜』  障害者福祉施設特化型アウトソーシング事業「株式会社ミンナのシゴト」代表を務める兼子(かねこ)文晴(ふみはる)さんが『障がい者を生かすと会社が儲かる!〜AI社会で活躍する人材の発見〜』(ビジネス社刊)を出版した。兼子さんは、自身がうつ病のときの苦しい体験と、障害者のための就労継続支援事業所を増やさなければという使命感で、2013年に「株式会社未来福祉人材センター」を創業、現在は就労継続支援A型・B型事業所の運営なども展開している。本書では、動画編集や名刺管理、営業活動支援、洋服の値札づけとハンガー掛けなど具体的な仕事内容を紹介しながら、障害のある人の能力の活かし方についてアドバイスしている。四六判、216ページ、1650円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2022年度地方アビリンピック開催予定 2023年2月 東京都、京都府、香川県 *部門ごとに開催地・日時が分かれている県もあります *  は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、変更する場合があります。 東京都 京都府 香川県 ミニコラム 第21回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(22〜27ページ)は清水委員が執筆しています。  ご一読ください。 製造業の障がい者雇用の質≠ノついて トヨタループス株式会社取締役 清水康史  最近、私は障がい者雇用の質≠ノついて思いをめぐらすことが多いです。そのなかで、これはヒントとなると感じたのが、今回の訪問インタビューをさせていただいた「デンソー太陽株式会社」(以下、「デンソー太陽」)と、「社会福祉法人太陽の家愛知事業部」(以下、「太陽の家愛知事業部」)でした。  インタビューを通じて、私が感じたことは以下です。(1)デンソー太陽の取締役社長である大西(おおにし)明彦(あきひこ)さんには、「愛知太陽の家」創設者である明石(あかし)六郎(ろくろう)氏の思い「No Charity, but a Chance!(保護より機会を)」と経営理念のバランスをとった経営(経営の質)が、いかに重要でむずかしいものであるかということ。(2)太陽の家愛知事業部就労支援課課長の福澤(ふくざわ)真(まこと)さんには、障がい者の自律成長の仕組み(就労継続支援B型事業所→A型事業所→一般就労→デンソー太陽へのステップアップ)と、それを支える支援体制(人材育成の質)が障がい者の幸せに寄与していること。(3)デンソー太陽では、障がい者自身が自律・成長して現場リーダーになっていく心の成長過程を垣間見、その成長が企業競争力を支える品質に大いに寄与していること。どのインタビューもワクワクしてお話をうかがいました。  障がい者雇用の質≠ニは、なかなか単純なKPI(重要業績評価目標)では示しにくく、業種によってもさまざまであるため、みなさんにわかりやすく説明するのはたいへん困難ではありますが、この3人が教えてくれた3つの質「経営の質」、「人材育成の質」、「品質」が交わるところに存在しているのでは、と感じました。私も製造業の特例子会社の経営の一翼をになう立場として、今回の学びと気づきを自社でとり入れ試行錯誤しながら、さらに障がい者雇用の質について、今後明らかにしていきたいと思います。私の学びや気づきが読者のみなさまの障がい者雇用の質≠考えるヒントになるならば、嬉しいかぎりです。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、清水委員の意向により「障がい」としています 【P30】 掲示板 障害者雇用の月刊誌「働く広場」がデジタルブックでいつでもお読みいただけます!  本誌は当機構ホームページで、デジタルブックとしても公開しており、いつでも無料でお読みいただけます。  また、最新号は毎月5日ごろに当機構ホームページに掲載されます。掲載をお知らせするメール配信サービスもございますのであわせてご利用ください。 JEED 働く広場 検索 読みたいページにすぐ飛べる! 自由に拡大できて便利! ※2018年4月号〜最新号まで掲載しています 読者アンケートにご協力をお願いします! 回答はこちらから→ メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 次号予告 ●私のひとこと  環境問題などに障害のある人たちとともに取り組む、カエルデザイン合同会社(石川県)クリエイティブディレクターの高柳豊さんに、その活動や思いなどについてご執筆いただきます。 ●職場ルポ  関東地方でスーパーマーケット事業を展開する株式会社ヤオコー(埼玉県)を訪問。継続的に障害者雇用を行う同社の取組みや社員の意識改革について取材しました。 ●グラビア  2023(令和5)年3月23日(木)〜26日(日)に、フランス共和国メッス市において開催される第10回国際アビリンピックの出場選手を紹介します。 ●「『働く広場』公開座談会」採録  2022年12月14日(水)に開催された「働く広場」公開座談会「視覚障害者の雇用は今!〜コロナ禍で変化している雇用環境に対する取組み〜」の採録を掲載します。 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします @JEED_hiroba 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み  株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。  TEL 03-5484-8821  FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声―障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行―独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人―企画部長 飯田 剛 編集人―企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6216(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所―株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 2月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和5年1月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 トヨタループス株式会社 取締役 清水康史 武庫川女子大学 学生サポート室専門委員 諏訪田克彦 あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 准教授 八重田 淳 常磐大学 准教授 若林 功 【裏表紙】 ―アビリンピック― アビリンピックマスコットキャラクター アビリス 最新情報はコチラ! 「Abilympics.jp」 第43回全国障害者技能競技大会 障害者ワークフェア2023 〜働く障害者を応援する仲間の集い〜 2023/11/18(土) (11/17(金)〜11/19(日)) 愛知県国際展示場 (愛知県常滑市セントレア5丁目10番1号) 2月号 令和5年1月25日発行 通巻544号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)