【表紙】 令和5年6月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第549号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2023/7 No.549 職場ルポ 部品組立てから農作業まで柔軟にマッチング フジイコーポレーション株式会社(新潟県) グラビア 「オペレーター」へのチャレンジ 大山乳業農業協同組合(鳥取県) 編集委員が行く 120種類の石鹸 〜一人も取りこぼさない仕事づくりの実践〜 有限会社ねば塾(長野県) この人を訪ねて 「チョコレートな人々」が伝えてくれること 一般社団法人ラ・バルカグループ 代表 夏目浩次さん 「かっこいいカメラマン」愛知県・岡崎(おかざき)絢真(けんしん)さん 読者アンケートにご協力をお願いします! 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 7月号 【前頁】 心のアート 車 吉井一広 (しょうぶ学園) 素材:木/サイズ(ピンクの車):長さ約310mm×幅約90mm×高さ約120mm、サイズ(青い車):長さ約250mm×幅約85mm×高さ約100mm  木工房へ向かうと、工房の入り口から笑顔で迎える彼の立ち姿がいつもある。ハグのあいさつを交わすと自分のテーブルに向かい作業が始まる。  以前、車の雑誌を見て、器の材料を車の形へと彫刻し始め、できあがったのが車のオブジェ。なかでもお気に入りの車は「バス」。大胆な彫りの窓やフォルムは歪(いびつ)なはずなのに、自然とまとまりのある車へと変化していく。  迷いのない配色で完成した車たちは、彼のやさしく、おだやかで人なつっこい性格そのもののように感じる。仕上がると誇らしげな顔で手招きをし、雑誌の車と作品を見合わせる。そして、「よしよし」といった感じでうなずき、棚へ一つ、また一つと並べていく。 (文:社会福祉法人太陽会 しょうぶ学園 相良望人) 吉井一広(よしい・かずひろ)  1948(昭和23)年生まれ、1988年しょうぶ学園へ入所。  現在、同園グループホームにて生活し、日中は木工房で活動している。  聴覚障害があるため、職員とは手話やジェスチャーにて会話を行う。作業内容を伝えるとすぐに理解し、予測して必要な道具を準備するなど手伝ってくれる。時折見せるジェスチャーのジョークは場を和ませている。工房ではおもに長年つちかった技術で鑿のみと木き 槌づちを使い、大胆な彫りで器やカトラリーの制作を行っているが、2021(令和3)年より好きな車をモチーフとするオブジェの制作が始まった。 協力:社会福祉法人太陽会 しょうぶ学園 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2023年7月号 NO.549 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 車 作者:吉井一広(しょうぶ学園) この人を訪ねて 2 「チョコレートな人々」が伝えてくれること 一般社団法人ラ・バルカグループ 代表 夏目浩次さん 職場ルポ 4 部品組立てから農作業まで柔軟にマッチング フジイコーポレーション株式会社(新潟県) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ 10 障害者職業能力開発校の活用術 最終回 〜社員個々の能力を発揮して活躍してもらうには〜 JEEDインフォメーション 12 令和5年度 就業支援実践研修のご案内/令和5年度「地方アビリンピック」開催地一覧/障害者職業総合センター職業センター 最新の成果物のご案内 グラビア 15 「オペレーター」へのチャレンジ 大山乳業農業協同組合(鳥取県) 写真/文:官野貴 エッセイ 19 ろう者である想い 第4回 〜ろう文化〜 忍足亜希子 編集委員が行く 20 120種類の石鹸 〜一人も取りこぼさない仕事づくりの実践〜 有限会社ねば塾(長野県) 編集委員 三鴨岐子 省庁だより 26 令和5年度 障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート 28 発達障害者のワークシステム・サポートプログラム 発達障害者の強みを活かすための相談・支援ツールの開発 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 訪問型・企業在籍型職場適応援助者養成研修(9月期・10月期) 表紙絵の説明 「カメラで自然を撮るのが好きです。将来かっこいいカメラマンになりたいという思いを込めて描きました。カメラの細かい部分を描くのがたいへんでした。色を塗るのがむずかしかったけど、じょうずにできました。受賞を聞いて、みんなにもほめてもらえて、とてもうれしかったです」 (令和4年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 この人を訪ねて 「チョコレートな人々」が伝えてくれること 一般社団法人ラ・バルカグループ 代表 夏目浩次さん なつめ ひろつぐ 1977(昭和52)年、愛知県生まれ。2003(平成15)年、脱サラし愛知県豊橋市にパン工房(花園パン工房ラ・バルカ)開業。2012年、ラ・バルカグループを社団法人化。2014年「QUONチョコレート」事業を立ち上げ、全国57拠点(40店舗)まで拡大。2018年、同法人が「第2回ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞」受賞。2021(令和3)年放送の東海テレビ放送制作のドキュメンタリー番組『チョコレートな人々』が「2021年日本民間放送連盟賞番組部門テレビ教養優秀賞」受賞、映画化され2023年1月から公開。同年、英国フィナンシャルタイムズ「アジア太平洋地域における急成長企業TOP500社」に選定。 土木コンサル業界から脱サラ ――「QUON(クオン)(久遠)チョコレート」事業を始めた経緯を教えてください。 夏目 大学で土木工学を学んだ私は、土木コンサルタントの会社で駅や空港のバリアフリー化にたずさわっていました。しかし、当時はコスト優先で、ユーザー目線とはいえない整備方法に、職場で声をあげても「仕方ない」ですまされることが少なくありませんでした。  障害者をめぐる社会のあり方に疑問を抱き始めたころ、旧ヤマト運輸株式会社元代表取締役会長の小倉(おぐら)昌男(まさお)さんの本『福祉を変える経営〜障害者の月給一万円からの脱出』(日経BP社)を読み、働く障害者の賃金の低さを初めて知りました。地元の福祉施設等を回っても、やはり聞こえてくるのは「仕方ない」の言葉。「だったら自分が」と脱サラし、重度の知的障害のある女性3人と2003(平成15)年にパン工房を開業しました。  パン工房の運営はたいへんでした。焼き損じや売れ残りによる廃棄処分もあり、薄利多売の商売ですから経営は行きづまります。そんなときに異業種交流会で出会ったのが、ショコラティエとして活躍されている野口(のぐち)和男(かずお)さんでした。後に教えてもらったのは、チョコレート製品の基本的なつくり方は同じで、そこに素材を混ぜたりコーティングしたりすればバリエーションが無限に広がるということ。なにより、チョコレートは固まっても温めれば何度でもつくり直すことができるのです。私は野口さんの店で修業させてもらい、2014年にチョコレート専門店「QUONチョコレート」をオープンしました。 さまざまな背景を持つ人たち ――全国に広がる57拠点では、いろいろな方たちが働いているそうですね。 夏目 従業員約660人のうち、障害のある人が300人ほどいて、診断はないものの発達障害の悩みのある人が150人近くいます。このほかに子育て中の女性、引きこもり経験者、DV被害者、LGBTQなど、さまざまな事情や背景のある人たちもいます。  先日も地元で求人を出すと70人超の応募がありましたが、採用においては「本当に働きたいのか」という意欲を重要視します。障害のある人は特性などによって実習を行い、可能な支援も考えます。  2年前に応募してきた発達障害のある男性は、それまで数十社に勤め転職をくり返してきました。職場でトラブルが起きると「自分のせいじゃないか」と思い悩んで辞めてしまうのだと、面接で明かされました。そこで私は「自分を極端に否定しないこと」を条件に採用しました。週1日から始まった勤務は、いまではフルタイムになり、休まず続けています。彼は仕事と職場にうまくマッチしたのだと思いますが、採用後にうまくいかなかったケースも、もちろんあります。 自分たちのペースで作業 ――職場の様子を教えてください。 夏目 例えば豊橋市内のラボ(製造拠点)では、就労継続支援B型事業所から来た人や、子育て中の女性らが一緒に働いています。チョコレートづくりの全工程を黙々と1人でこなしたり、ペアを組んで互いに得意な作業をしたり、一見ゆったり進めているように見えますが、ここの売上げは年2億円以上。給料は全員同じで月17万円弱です。  2021(令和3)年には、重度の知的障害などがある20人が働く「パウダーラボ」を開設しました。おもな作業は二つで、まずは主力商品のテリーヌに混ぜ込むドライフルーツやナッツ類のカット作業。シートに描かれた規格サイズに合わせ、子ども包丁で刻みます。もう一つは150種におよぶテリーヌの味を決める食材のパウダー化作業です。手で石臼(いしうす)を回して挽(ひ)いていきます。以前は業者による機械作業でしたが、石臼に変えて味がまろやかになりました。機械を傷めるため廃棄されていた茶葉の茎もパウダー化でき、新たな味になりました。  パウダーラボに徒歩30分かけて通勤する、重い知的障害とダウン症のある男性は、ヘルパーの介助を受けながら一人暮らしをしています。また、重い自閉症のある男性は、最初は落ち着きなく動き回っていましたが、いまでは机に座って包装箱を素早く正確に組み立てています。  彼ら20人は「じっと作業し続けるのは無理」といわれながら、1カ月後には全員仕事ができるようになりました。おそらく、自分が必要とされる仕事や役割があり、稼ぐこともできるとわかったからだと思います。あらためて、働くことの大切さを実感しています。ここでは一日5時間働いて月給5万円ほど。愛知県の最低賃金の半分ほどの時給450円なので、時給を引き上げるため商品の付加価値を高める努力中です。 「思いの共鳴」を大事に ――いまも全国各地からフランチャイズ店のオファーが多いそうですね。 夏目 ここ数年は「お店を出したい」といわれても、最低1年は断り続けます。運営にかかわる数字やデータを示して事業のたいへんさを説明し、それでもやりたいのかをその間に冷静に考えてもらうのです。同時に私たちも彼らから「どういう思いで何をするのか」をじっくり聞き、「思いの共鳴」が確認できたら、実際にどんな運営ができるかを一緒に考えます。地域に根ざした商売ですから「週3日、数時間だけオープン」といった売り手都合ではなく、純粋にお客さんに通い続けてもらえる店を目ざします。  お店を開く人たちの背景はさまざまです。九州にある店は、引きこもりの若者をサポートしている小児科医がオーナーで、名古屋では医療ケアを受ける子どもの親たちが社会参加の場として出店しました。いまは、2年前から粘り強く熱意を示してくれた、ある精神科クリニックの患者3人が慎重に準備を進めているところです。 いろいろな凸凹があっても ――ドキュメンタリー番組『チョコレートな人々』(※)の反響は大きく、企業の見学者も少なくないそうですね。 夏目 企業の方は、さまざまな目的で見学にいらっしゃいます。みなさんそれぞれ何かを感じとったような表情で帰られますね。手作業が多い現場を見て「非効率か、そうではないか」と、とらえ方は自由ですが、私は、これまで合理性を追求してきた日本社会が、経済成長の代わりに置き去りにしてしまったモノがたくさんあると思っています。成熟した社会に移っていくためには、いままで「仕方ない」とフタをしてきたモノと向き合い、「多様な寄り添い方をしていく道もあるのではないか」と、一石を投じたいのです。  平等な社会をつくりたいとは思っていません。努力した人が報われる社会であるべきです。だからこそ、いろいろな凸凹があっても働くための環境や視点を変えることで、十分に能力を発揮できることを示していきたいのです。そしていずれ多様性や障害者雇用といった言葉が古臭くなり、「そんなのあたり前」と思われるような社会になることが、私の理想です。 ※チョコレートな人々.東海テレビ放送,2021年3月.(テレビ番組) 【P4-9】 職場ルポ 部品組立てから農作業まで柔軟にマッチング ―フジイコーポレーション株式会社(新潟県)―  農業機械の老舗メーカーでは、障害者雇用促進のモデル事業受託を機に、試行錯誤しながら業務のマッチングなどを進め、定着と戦力化を目ざしている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ フジイコーポレーション株式会社 〒959-1276 新潟県燕(つばめ)市小池285 TEL 0256-64-5511(代) FAX 0256-66-1026 Keyword:知的障害、精神障害、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、園芸、農業 POINT 1 ダイバーシティ経営を目ざす代表取締役の音頭で、雇用促進モデル事業を受託し本格的に取り組む 2 支援担当社員をフォローするため、定期的にカウンセラー派遣を利用 3 社有地などを活用し、園芸・農作業でも業務マッチング 農業機械や除雪機の老舗メーカー  洋食器や金物・刃物などが特産の「ものづくりのまち」で知られる新潟県燕三条(つばめさんじょう)地域。ここで農業機械や除雪機の製造販売を行っている「フジイコーポレーション株式会社」(以下、「フジイコーポレーション」)は、1865(慶応元)年に"千歯(せんば)"(※)の生産を始めて以来、創業158年になる老舗企業だ。近年は除雪機などの海外展開も活発で、2007(平成19)年には北欧フィンランドにある"サンタクロース村"から、フジイコーポレーションの機械がサンタクロースの除雪機として公認を受けた。そして現在、19カ国に輸出実績がある。  これまで商品・技術開発などの受賞歴を重ねてきた一方、高齢者や外国人、女性社員の活躍推進にも力を入れてきたフジイコーポレーションは、2014年に経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」(以下、「ダイバーシティ100選」)に選ばれた。そして同年から障害者雇用も推進し、いまでは全従業員124人のうち障害のある従業員が6人(身体障害2人、知的障害1人、精神障害3人)、障害者雇用率は4.84%(2022〈令和4〉年7月1日現在)だという。  どのように障害者雇用に取り組んできたのかを、当事者や支援者の声とともに紹介していきたい。 ダイバーシティ100選受賞を機に  「フジイコーポレーションが障害者雇用に本腰を入れることになった大きなきっかけは『ダイバーシティ100選』の受賞でした」と説明してくれたのは、総務部広報・システム管理の森田(もりた)理恵(りえ)さん。  「ダイバーシティ経営」が注目される以前からフジイコーポレーションでは、幅広い人材が働きやすいよう改善を進めてきた。まず、社内のトイレなど衛生面を含めた職場環境を整えた結果、2008年に女性社員が初めて入社。それから年々増えていった女性社員が中心となって、ホームページの刷新や英語版作成、小型農機の商品開発などに力を発揮している。2010年には定年後の再雇用の上限年齢を65歳から70歳に引き上げると同時に、製造現場で使う重い工具は天井から吊るし、荷台はすべてキャスターつきに変更、床の段差もなくすなどの設備改善を行った。また、2013年にはバングラデシュ人の留学生を正社員として採用した。この社員は商品開発部に所属し、電気設備の開発・設計などを担当している。互いに宗教や文化の違いなどを理解しながら、働いているという。  その末に受賞したのが「ダイバーシティ100選」だった。しかし、森田さんによると、藤井(ふじい)大介(だいすけ)代表取締役が受賞当時、ダイバーシティの一つである障害者雇用において、身体障害以外の障害のある人の雇用が、あまり進んでいないことに気づいたという。そしてさっそく、社内で取り組むための担当者などを選定し、社内の会議で「職場は、社会の縮図でもあるのだから、障害のある人もない人も一緒に働ける環境をつくっていこう」と宣言したそうだ。 モデル事業の受託  初めて本格的な障害者雇用に取り組み始めたフジイコーポレーションを後押ししたのは、新潟労働局が2014年度から2年間の予定で「精神障害者等雇用促進モデル事業」の実施企業を募集したことだった。  さっそくこのモデル事業を受託したフジイコーポレーションは、初年度に精神障害のある人を2人採用した。  採用に先立ち、当機構(JEED)の新潟障害者職業センターの事業主支援を利用して、幹部や支援担当社員らを集めた研修を行ったほか、県内で障害者雇用を進めている複数の企業を見学して回った。支援担当社員は、障害者職業生活相談員の資格認定講習を受講し、現在6人が資格保有者だ。  採用した2人は機械事業部に配属され、部品の袋詰め作業からスタートした。繁忙期には派遣社員が対応してきた業務だ。  当時から支援者としてかかわってきた機械事業部販売部業務グループ係長の山岸(やまぎし)広己(ひろみ)さんは「私も障害者職業生活相談員の資格を取りましたが、一緒に働いてみると、それぞれ特性なども違いますから、だれにどんな仕事をどれぐらい任せてよいのか、悩むことが多かったですね」とふり返る。  2人が通っていた就労移行支援事業所の担当者や、新潟障害者職業センターの職場適応援助者(ジョブコーチ)とも相談しながら慎重に仕事量などを決めていたが、1年経ってようやく慣れたころから、2人がかわるがわる急に体調を崩すようになった。「2人はそれぞれ、気がききすぎる、逆に気にしなさすぎるという両極端の特性があったため、互いにストレスになる部分もあったようです」と山岸さん。2人が一緒に働くことはむずかしいと判断し、1人は別の部署で、それまで外注していた部品組立て作業などを担当することになった。  こうした試行錯誤のなかで山岸さんの救いになったのが、新潟県臨床心理士会から月2回ほど有料で派遣してもらっていたカウンセラーとの面談だった。「こういうときはどう接したらよいか」といったケース相談をしていたほか、障害のある2人が職場側に直接いえないような悩みなどを、カウンセラー経由で伝えてもらっていたことから、対応策も一緒に考えることができたという。  「支援担当社員のなかには『特に相談することはない』という人もいましたが、私自身は、具体的な課題がなくても、話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になるようでよかったです」  カウンセラーの派遣は5年間続けられたが、支援担当社員たちもひと通り対処法などに慣れたため終了となった。いまは支援が必要な状況になったときに、連携先の障害者就業・生活支援センターなどに相談して対応にあたっている。  「面談がなくなった当時は『もう必要ないだろう』と思っていましたが、ある程度の経験を重ねてきたいまだからこそ、あらためて聞きたいこともありますね。3カ月か半年に1回ぐらい、気軽に情報交換できるような場があってもよいのかもしれません」と、山岸さんは話す。 「差別なく接してもらえる」  モデル事業期間に入社した精神障害のある40代の女性は、いまは週1回4時間の勤務で、おもに部品の袋詰め作業を担当している。  ハローワークからフジイコーポレーションを紹介される少し前に、障害者手帳を取得したという。この会社に入社してよかったことを聞いたところ、こう返ってきた。  「一人の人間として接してもらえることです。ほかの会社でトライアル雇用で仕事をしたときは、障害者として線を引かれていると感じました。ここでは差別なく接してもらえています」  女性は、体調のよいときは工場で部品を集める作業なども行っている。担当社員が最終確認をするが、それまでの作業を自分に任せてもらえることがうれしかったそうだ。  「もちろん間違っているときは注意してくれます。以前は、仕事を間違っても優しくいわれるだけだったり、担当者が代わりに作業したりすることがありました。気を遣われていることがわかり、ここにいてもよいのだろうかと不安になりました」  現在は監督者がつくことはなく一人で作業するときもあり、「信頼されていると感じます」。ゆっくりと、自分のペースで着実に成長していく日々だ。 緑化作業や園芸・農作業も  モデル事業のあと、2020年からは3年続けて障害のある人を1人ずつ採用した。最初の1人が阿部(あべ)達也(たつや)さん(39歳)だ。専門学校卒業後に溶接関連の会社に就職したが、職場になじめず1年ほどで退職。いくつか派遣の仕事をした後に、就労継続支援B型事業所に6年ほど通い、外部から受託した商品の袋詰め作業や清掃、農作業などにたずさわったそうだ。  試行錯誤の末、阿部さんは職業能力開発校の新潟県立三条テクノスクール(三条市)に入学し、職業訓練としてフジイコーポレーションに約2カ月間通った。当時の作業内容は「社内緑化作業と部品塗装作業」だったが、会社側は阿部さんが農作業を得意としていることを知り、その後おもな業務を「緑化作業や園芸作業ほか」と変更して阿部さんを採用した。「障害者雇用にかかわるグランドデザインの導入時は、昨年75歳で勇退されたシニアアドバイザーの清水(しみず)和夫(かずお)さんに指導してもらいました。職場での長年の経験を活かし、工夫を重ねてくださいました」と森田さん。  阿部さんがつけ加える。  「就労継続支援B型事業所に通っていたころ、畑を耕して野菜づくりをしながら『こういう仕事ができたらいいな』と話していたので、願いがかなってよかったです」  阿部さんの指導役を務めているのは、機械事業部販売部技術支援グループの高橋(たかはし)敏之(としゆき)さん。在職38年のベテラン社員だ。園芸や農業が趣味で、自発的に職場内の緑化活動もしていた高橋さんが、阿部さんの入社を機に、一緒に取り組むことになった。  「阿部さんは『対人関係が苦手』だと就労継続支援B型事業所から引き継ぎがありましたが、社会生活でコミュニケーションは大事ですから、職場の社員らに紹介し、なるべく仕事で人と接する機会をつくるようにしました」  阿部さんは記憶力がよく、人の名前と顔をすぐに覚えたそうで、「○○部の○○さんのところにこれを届けてください」などと、何かにつけて他部署に行ってもらっていたそうだ。  その効果もあったのか、「阿部さんは見違えるように変わった」と就労継続支援B型事業所の担当者も驚いているという。阿部さん自身も「この会社に入って、周りの人がよくしてくれるので変わったんですかね」と笑顔で話す。高橋さんは「仕事内容がうまくマッチしたことも奏功したと思います。いまは、わからないことがあれば積極的に聞いてきますし、私がいないときも、ほかの社員とうまくやっているようです」と成長ぶりに目を細める。 シャトル業務から野菜づくりまで  高橋さんや阿部さんたちは、朝8時15分の始業に合わせた職場の朝礼に参加したあと、天候を考慮しつつ、その日にできる作業に取りかかる。「広い敷地内にはやるべき作業が山ほどあるので、1年中困りませんよ」と高橋さん。あるときは社屋の外壁を長年おおっていた雑草を、高所作業機も駆使して取り除き、あるときは健康診断などで使う大集会場の床のワックスがけを数カ月間かけてやり遂げた。森田さんも「床がピカピカになっていて、本当に驚きました」と舌を巻くほどのできばえだ。また日常業務として1日3回ほど、2tトラックを運転し、事業部間で部品や書類などをやり取りするシャトル業務も請け負っている。  さらに、代表取締役所有の畑を借りてサツマイモや枝豆、タマネギ、イチゴなど多種多様な作物を栽培している。会社の敷地内には、商品の機械を試運転する場として使われている小さなリンゴ園などもあり、「カラスの被害がなかった年は収穫もできました」と高橋さん。  「周囲の市場価格に合わせた値段をつけて、職場内に無人販売所を設けて販売しています。その売上金で肥料などもまかなっています。将来的には地元の即売所で売れるようになったらいいですね」  会社敷地内の樹木の剪定(せんてい)作業や、自社商品の農業機械を使った草刈り作業も行い、集めた草は堆肥づくりに役立てている。社屋の周りにネットを張ってアサガオなどを育てる緑化活動も担当だ。「阿部さんが高所作業機を使いこなす様子は、会社のPR動画でも紹介しています」と森田さん。機械の扱いに慣れてきた阿部さんは、除雪機のメンテナンスができるよう勉強中だ。ちなみに天候の悪い日や冬場などは、拠点としている平屋の建物内で、部品のピッキング・袋詰め作業などを行っている。 体を動かし、健康管理に努める  阿部さんと一緒に働く精神障害のある20代の男性Aさんは、2021年に入社した。高校卒業後に電気工事会社に就職したが、1カ月半後の新人研修中に体調を崩し、復帰と休職をくり返して1年後に退職。通院しながら工場で働き始めたものの、人間関係や現場の臭いに悩まされ再び離職したという。  それから家族にすすめられ、Aさんは新潟障害者職業センターに通った。ピッキング作業のほかデータ入力など事務的なスキルを3カ月間学んだあと、同センターから紹介されたフジイコーポレーションの職場実習を、1週間受けた。「ここで初めて園芸や農業にかかわって、よい感触を得られました」と話すAさん。自分のペースで作業ができることや、体調が悪くなったときに遠慮なく申し出ることができる環境のほか、「体を動かし、一日の作業後に達成感を持てたのもよかった」そうだ。  いまも2カ月に1回通院し、「寝る時間と起きる時間は休日関係なく固定し、食事もしっかり摂る」など健康管理に努める。とはいえ、急な気温や気圧の変化で激しい頭痛に襲われることもあるという。いまのところ水曜日以外は半日勤務だというAさんは、「いずれはフルタイム勤務ができるよう努力していきたいです」と話してくれた。 ものづくりの現場でも  フジイコーポレーションの主要部署である製造の現場では、2022年に障害のあるシニアを採用した。フルタイム勤務の幸田(こうだ)昌徳(まさのり)さん(60歳)は、鋼材事業部でレーザー加工の補助作業を担当している。  幸田さんは前の職場で、人間関係のトラブルに遭い、自身の障害にも対処してもらえなかったため、障害者就業・生活支援センターとハローワークに相談し、フジイコーポレーションを紹介してもらったという。  いまも時々うつの症状が出るときは、電話で連絡をして休ませてもらったり、就業中は休憩させてもらったりするそうだ。  「前職の工場のラインで働いていたときは、人の多いところが苦手なため悩みました。この会社では、病気に対して配慮してもらえるので、集中して働くことができます」  1年半ほど働いてきたなかで「1日でどのくらいの仕事をこなせるか」が把握できるようになってきたそうだ。幸田さんは、「うまくできないときもあるが、目ざしていた仕事量をこなせると達成感があります」という。職場でも戦力となりつつあるようだ。 粘り強く支援を続けながら  モデル事業受託から9年。広報などの立場で見守ってきた森田さんはこう話す。  「会社で障害者雇用を進める前は、私自身も障害のある人と接する機会がほとんどなく、一緒に働くことはむずかしいのではないかという思い込みがありました。でも、同僚として彼らの働く姿を見て、話す機会を重ねるうちに、特別視することもまったくなくなりました」  一方で、総務部長として障害者雇用の推進を担当する小幡(おばた)高人(たかと)さんは率直にこう明かす。  「障害のある人たちは、精神的または身体的にデリケートな人が多いように思います。ちょっとしたことがきっかけで身体の不調を訴えるケースもよく見受けられます。私たちの職場でも過去に、職場に慣れ、仕事も覚えて、『さあ、これからだ』というときに突然不調になり、職場に来られなくなって残念ながら退職してしまった人がいました」  モデル事業の2年間に採用した3人のうち2人が、その後に退職したそうだ。小幡さんは「まずは定着までしっかりとケアをしていくために、外部機関による就労定着支援プログラムなどを活用し、気長にそして粘り強く取り組んでいくことが大切だと考えています」としたうえで、今後の方針についてこう話してくれた。  「ずっと補助的に同じ仕事をしてもらうのではなく、少しずつ仕事の幅を広げ、本人だけでなく周りで働く人たちも成長が実感できるようなレベルまで引き上げていきたいと考えています。『定着』の次に『成長』、そして『戦力化』を目ざしていくつもりです」 ※千歯:日本の古式脱穀用農具 写真のキャプション フジイコーポレーション株式会社が開発製造販売する除雪機 総務部広報・システム管理の森田理恵さん 機械事業部販売部業務グループ係長の山岸広己さん 精神障害のある40代女性は、部品の袋詰め作業などを担当している(写真提供:フジイコーポレーション株式会社) 緑化作業・園芸作業などを担当する阿部達也さん 製品の一つである草刈機で芝の手入れを行う阿部さん 機械事業部販売部技術支援グループの高橋敏之さん 阿部さんの指導にあたる高橋さん 外壁を長年おおっていた雑草(左)をキレイに取り除いた(右)(写真提供:フジイコーポレーション株式会社) シャトル業務の様子。部品が収められたカートをトラックに積み込む 園芸作業の一コマ。畑に肥料を散布する 社屋の壁面に設けられたグリーンカーテン(写真提供:フジイコーポレーション株式会社) 緑化作業・園芸作業などを担当するAさん 工場での組立て作業の様子(写真提供:フジイコーポレーション株式会社) 鋼材事業部でレーザー加工の補助作業を担当する幸田昌徳さん(写真提供:フジイコーポレーション株式会社) 総務部長の小幡高人さん(写真提供:フジイコーポレーション株式会社) 【P10-11】 クローズアップ 障害者職業能力開発校の活用術 最終回 〜社員個々の能力を発揮して活躍してもらうには〜  障害者職業能力開発校では、企業向けのセミナーや在職中の障害のある社員のスキルアップを目ざした訓練を行っているところもあります。最終回では、これらのセミナーや在職者向け訓練を中心に、障害者職業能力開発校で実施している企業向けの支援内容についてご紹介します。 企業担当者向けセミナーについて  国立職業リハビリテーションセンター(以下、「国リハ」)および国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(以下、「吉備リハ」)では、障害者向けだけでなく、企業向けにもさまざまな支援を行っています。まずは、採用準備などをサポートするためのセミナーについてご紹介します。  国リハや吉備リハで実施しているセミナーは、障害者の採用を検討中の企業や、すでに障害者を雇用している企業の担当者が、障害者の採用や雇用管理、職業訓練などについて理解を深めることを目的に開催しています。セミナーでは、実際の訓練の様子の見学や訓練生による職業訓練の取組み状況の発表、支援機関による障害者の雇用事例や接し方についての講演、企業担当者からの事例報告や企業担当者同士の意見交換会などを行っています。訓練生と企業担当者双方の生の声を聞くことができる機会となっており、訓練の内容や障害特性、就職に向けて取り組んでいることなどの訓練生の発表を聞いて、自社の仕事も任せられそうだと感じる企業担当者や、訓練生の技術の高さに驚く企業担当者もいます。また、発表を聞いたり、訓練を見学したりすることで、実際に働く姿や任せる仕事のイメージがわき、具体的な採用の相談につながることもあります。  令和5年度の開催日程は、決定次第それぞれのホームページ(※1)でご案内しますので、ぜひ参加してみてください。 在職者のスキルアップ訓練  次に、在職中の障害のある社員のスキルアップを目ざす訓練(以下、「スキルアップ訓練」)についてご紹介します。  在職者のスキルアップ訓練は、障害のある社員が、より広範囲で多様な職務内容の変化に対応できるよう職業技能のレベルアップを図るための訓練です。障害者職業能力開発校によってスキルアップ訓練の実施方法や訓練コースは異なり、国リハでは、おもにあらかじめ訓練日程や内容が定められているレディメイド型訓練、吉備リハでは企業のニーズに応じて訓練内容を設定するオーダーメイド型訓練を実施しています。  国リハのレディメイド型訓練では、パソコンの表計算ソフトやデータベースの活用、ネットワークの構築、簿記などの訓練コースがあり、2〜4日間程度のカリキュラムになっています(※2)。また、吉備リハのオーダーメイド型訓練(※3)は、6カ月以内の期間で、企業担当者や本人と相談しながら訓練内容や期間を設定します。  例えば、2次元CADの仕事をしている発達障害のある方が、3次元CADの技術の習得と精度の向上を目ざし、5日間のカリキュラムでスキルアップ訓練を受講したという事例があります。  ほかにも高次脳機能障害のある方が、営業業務から紙図面のデジタル化などの業務に配置換えするために、2次元CADでの電気回路図面トレース作業の訓練を受講した事例もあります。この事例では、リモートワークが予定されていたため、CADの技能だけでなく、リモートワークで必要なメールでのやり取りをはじめ、障害特性の一つである疲労への対応訓練として休憩の取り方なども盛り込み、2カ月半のカリキュラムで実施しました。  このように、企業や在職中の障害のある社員のニーズに応じて、訓練内容や期間を個別に調整できるのがオーダーメイド型の訓練の特徴です。これからの障害者雇用の視点で重要だといわれている「雇用の質」の向上に向けた取組みに、スキルアップ訓練を活用してみることをおすすめします。 企業向けの支援について  障害者職業能力開発校の利用方法を、企業が障害者雇用に取り組む段階に応じてご紹介します。  まず、「障害者雇用や雇用管理の知識や経験が少なく情報を得たい」、「障害者が自社で働くイメージを具体化させたい」という企業担当者は、職業訓練の見学をおすすめします。今回ご紹介したセミナーも、「参考になる情報が多い」という声が聞かれます。  募集から採用にあたっては、訓練生情報の提供を受けたり、訓練生向けの会社説明会を開催したりすることができます。また、国リハや吉備リハでは企業の仕事内容に即した訓練を企業と連携して実施しています。  採用後は両センターのフォローアップや、地域障害者職業センターのジョブコーチ支援を利用することにより、スムーズな職場定着へとつながります。  また、在職障害者のスキルアップに加えて、病気の進行や事故などで受障した社員が職場復帰を目ざす際も、復帰後の職務選定の相談や、復帰後の職務に合わせたオーダーメイド型の職場復帰訓練が利用できます。  このように、障害者職業訓練校では、障害者の採用からステップアップ、復職まで幅広い支援を利用できます。よりよい採用や職場定着、社員個々の能力を発揮して活躍してもらうために、障害者職業能力開発校に一度相談してみませんか。 ※1国立職業リハビリテーションセンターhttps://www.nvrcd.jeed.go.jp/ 国立吉備高原職業リハビリテーションセンターhttps://www.kibireha.jeed.go.jp/ ※2能力開発セミナー(レディメイド型訓練)https://www.nvrcd.jeed.go.jp/employer/seminar/index.html ※3在職者オーダーメイド型職業訓練https://www.kibireha.jeed.go.jp/business/person.html セミナー参加企業の声 訓練生の発表 ・いろいろな問題について解決策を試行錯誤している様子が伝わった。 ・車いすの方がどんな事で困り、どうすれば働けるようになるのかわかりやすい説明だった。 ・訓練生のレベルの高さに驚いた。次は上司を連れて参加したい。 企業の事例発表・意見交換 ・他社の受入事例を学んだことがなかったので参考になった。 ・同じ悩みを持った方が多くいらっしゃり、相談できたことがよかった。 訓練場面の見学 ・具体的な訓練内容を見学し、受入部署の検討に役立つ情報を得られた。 ・きめ細かいトレーニング、スキルアップに取り組んでいる様子を見られてよかった。 講演 ・具体的な取組事例があり、たいへん参考になった。 ・今までなかなか雇用の継続がむずかしかった理由が見えたと思う。 図 企業向け支援の流れ 企業の取組み 障害者雇用のイメージを持つ 職務選定 募集〜採用 受入れ体制の準備 職場定着 ステップアップ 社員の障害の進行や事故等により受障 休職 支援内容 ・セミナーへの参加 ・職業訓練場面の見学 ・相談 ・訓練生向け会社説明会の開催 ・訓練生情報の提供 ・企業連携職業訓練 ・社員向け研修 ・必要な支援機器やソフト導入の支援 ・フォローアップ(必要に応じて地域障害者職業センターのジョブコーチ支援) ・スキルアップ訓練 ・職場復帰訓練 写真のキャプション 職業訓練の見学の様子 令和4年度 吉備リハの「障害者採用準備セミナー」の様子 3次元CADソフトウェア 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 全国14エリアで開催します! 令和5年度 就業支援実践研修のご案内  当機構(JEED)では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当している方を対象に、就業支援の実践力を高めるための「就業支援実践研修」を、全国14エリアで開催します。  みなさまの受講を心よりお待ちしています。 受講料無料 対象者 労働、福祉、医療、教育などの関係機関の職員であって、2年以上の実務経験のある就業支援担当者 コース・カリキュラム 【障害別コース:3コース(各コース1日間)】 ■精神障害コース ■発達障害コース ■高次脳機能障害コース 【カリキュラム】 各コースとも実務経験をふまえた演習やグループ討議を主としたカリキュラムです。 科目名 実施内容 全コース共通講座 企業へのアプローチ 【講義・演習】障害者雇用の取組み、就業支援者に求めることなどの講義および企業の視点・ニーズをふまえたアプローチ方法 コース別講座 就業支援の実際 〜相談・アセスメント場面における支援技法の活用〜 【講義・演習】インテークやふり返り、職業生活上の課題の把握などの相談・アセスメント場面における障害特性などに応じた支援技法・ツールの活用方法 ケーススタディ 地域障害者職業センターの支援事例をもとにしたグループでの事例検討 エリア・時期・定員・申込方法等 ■開催エリア:  @北海道 A北東北 B南東北 C南関東  D北関東 E甲信越 F北陸  G東海  H近畿  I中国  J四国  K北九州  L南九州 M沖縄 ■開催時期:令和5年10月〜12月 ■日程・会場・定員・申込方法等:  詳細は、7月下旬にJEEDホームページに掲載しますので、ご確認ください。 ※お申込みが定員を超える場合は、人数の調整をさせていただくことがあります。 ステップアップ方式の研修体制となっています! 全国の地域障害者職業センター ステップ1 初めて担当する方 就業支援基礎研修 就業支援の基礎づくり ステップ2 2年以上実務経験のある方 今回ご案内している「就業支援実践研修」は、こちらです! 就業支援実践研修 アセスメント力と課題解決力の向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害 コース 全国14エリアの地域障害者職業センター ステップ3 3年以上実務経験のある方 就業支援スキル向上研修 障害特性に応じた支援スキルの向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害 コース 障害者職業総合センター(千葉県千葉市) 就業支援 課題別セミナー 新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上 障害者職業総合センター(千葉県千葉市) お問合せ先 職業リハビリテーション部人材育成企画課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 就業支援実践研修 検索 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/jissen.html ◆令和5年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催される予定です。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月中 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬〜11月上旬 青森職業能力開発促進センター ほか1カ所 岩手 7月29日(土) 岩手県立産業技術短期大学校 宮城 7月8日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月5日(水) 秋田市にぎわい交流館AU 山形 7月5日(水) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月8日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月15日(土) 7月16日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月8日(土) 栃木職業能力開発促進センター ほか2カ所 群馬 7月1日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月1日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月頃 千葉職業能力開発促進センター 東京 2月中旬〜下旬 東京障害者職業能力開発校 ほか1カ所 神奈川 10月21日(土) 10月28日(土) 関東職業能力開発促進センター ほか1カ所 新潟 9月9日(土) 新潟市総合福祉会館 ほか1カ所 富山 7月22日(土) 富山市職業訓練センター ほか1カ所 石川 10月22日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 7月8日(土) 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 9月30日(土) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月22日(土) 7月23日(日) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月1日(土) ソフトピアジャパンセンター 静岡 7月15日(土)ほか1日 静岡市東部勤労者福祉センター 清水テルサ ほか2カ所 愛知 6月24日(土)ほか4日 中部職業能力開発促進センター ほか3カ所 三重 7月1日(土) 三重職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 会場 滋賀 11月25日(土) 近畿職業能力開発大学校附属 滋賀職業能力開発短期大学校 京都 2月10日(土) 京都府立京都高等技術専門校 京都府立京都障害者高等技術専門校 大阪 6月17日(土) 7月1日(土) 関西職業能力開発促進センター ほか2カ所 兵庫 6月17日(土) 7月1日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月22日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 7月1日(土) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月29日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月8日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 6月24日(土) 7月1日(土) 岡山職業能力開発促進センター 広島 1月6日(土) 広島職業能力開発促進センター 山口 10月21日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月16日(土) 徳島職業能力開発促進センター ほか1カ所 香川 未定 未定 愛媛 7月8日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 7月1日(土) 7月8日(土) 高知職業能力開発促進センター ほか1カ所 福岡 7月1日(土) 7月8日(土) 福岡障害者職業能力開発校 ほか2カ所 佐賀 1月頃 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月8日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月24日(土) 6月25日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月14日(土) 大分職業能力開発促進センター 宮崎 7月8日(土) 宮崎職業能力開発促進センター ほか1カ所 鹿児島 7月8日(土) 7月10日(月) 鹿児島職業能力開発促進センター ほか1カ所 沖縄 7月1日(土) 7月15日(土) 沖縄職業能力開発大学校 ほか1カ所 ※2023年6月12日現在 詳細はホームページをご覧ください。 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ・開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります。 ・新型コロナウイルス感染症の影響などにより、日程や会場が変更される場合があります。 障害者職業総合センター職業センター 最新の成果物のご案内  当機構(JEED)の障害者職業総合センター職業センターでは、就労支援の現場で、発達障害、精神障害、高次脳機能障害の方々や事業主等に対しよりよい支援を提供するために、新たな職業リハビリテーション技法の開発と改良を行っています。令和4年度は、自己肯定感を持ちづらいといわれている発達障害者への支援技法の開発などを行いました。みなさま方の支援のヒントになれば幸いです。 支援マニュアルNo.22 発達障害者の強みを活かすための相談・支援ツールの開発  一般的にポジティブな自己概念や感情を持ちづらいといわれている発達障害者の自己肯定感を高めることを目的に、自らの「強み」に目を向け、それを日常的に活用できることを目ざした支援方法を紹介した支援マニュアルです。  自己肯定感を高めることで、自らのセールスポイントを的確に伝えたり、積極的な就職活動につなげることが期待できます。(令和5年3月発行) ※今号28〜29ページ「研究開発レポート」で、詳しくご紹介しています 支援マニュアルNo.23 仕事の取組み方と働き方のセルフマネジメント支援  うつ病などで休職中の方の職場復帰支援において、「健康的で安定した働き方」を目ざすための支援技法を紹介しています。  若年の休職者が取り組みやすいよう改良した「キャリア講習」、業務遂行力の回復につなげるための「社会人基礎力講習」、テレワークを行う復職者を支援する「テレワークのためのセルフマネジメント講習」を開発し、支援マニュアルとして取りまとめました。(令和5年3月発行) 支援マニュアルNo.24 注意障害に対する学習カリキュラムの開発  記憶、情報処理等すべての認知機能の基盤となる注意機能に着目した支援技法を紹介した支援マニュアルです。  高次脳機能障害のある方が、自らの注意障害の特徴を知り、それを他者に説明することが可能となること、注意障害を補う対処方法を習得すること、職場に求める配慮事項等の整理ができることなどを目ざしています。(令和5年3月発行) ◎障害者職業総合センター(NIVR)ホームページから、全文やすぐに使える資料等をダウンロードできます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html <お問合せ先>職業センター企画課調整係 TEL:043-297-9043 【P15-18】 グラビア 「オペレーター」へのチャレンジ 大山乳業農業協同組合(鳥取県) 取材先データ 大山(だいせん)乳業農業協同組合 〒689-2393 鳥取県東伯(とうはく)郡琴浦町大字保ほう37-1 TEL 0858-52-2211(代表) FAX 0858-53-1501 写真・文:官野貴  鳥取県東伯(とうはく)郡にある「大山(だいせん)乳業農業協同組合」(以下、「大山乳業」)は、県内の酪農家から集めた生乳から、牛乳や乳製品を製造しており、それらの商品は、鳥取県内はもとより、中国地方や近畿地方などでも販売されている。また、乳製品をふんだんに使用したスイーツやアイスクリームなども人気を博している。  大山乳業では、障害のある職員9人(身体障害2人、知的障害5人、精神障害2人)が活躍中だ。発達障害のある佐藤(さとう)大樹(たいじゅ)さん(23歳)は、デザート工場で菓子類の製造にたずさわっている。  取材時、工場では生クリーム入り大福の製造が行われており、佐藤さんは生クリームなどを包む「もち」などの加工と、包あん機への「あんこ」の補充を担当していた。補充が滞ると生産が止まってしまうため、ラインの流れを見ながら、作業を進めなくてはならない。生クリームの加工では、原料を計量し、かくはん機で生クリームを泡立てる。仕上げの際には、レシピ通りの泡立ち具合にするための微調整が必要だという。佐藤さんはほかにも、定期的に品質検査用のサンプル採取を行うなど、品質に直結する重要なポジションを担当している。  上司の方に話を聞くと、「佐藤さんは向上心があり、新しいことにチャレンジする意欲が強いです。将来はライン全体をコントロールする『オペレーター』を任せたいと考えています。作業者の管理も含まれるので、コミュニケーション能力も求められます」と語ってくれた。佐藤さんも、「これまでできなかったことにチャレンジして、できるようになると楽しいです。まだコミュニケーションが苦手ですが、積極的に話しかけるように心がけています」と話す。佐藤さんのチャレンジは今後も続いてゆく。 写真のキャプション 大山乳業農業協同組合の牛乳・ヨーグルト工場。乳牛のオブジェが置かれている デザート課の佐藤大樹さん 製造室への入室前に、衣服についた毛髪やホコリを吸引機で取り除く 吸引後さらに粘着ローラーがけを行い、製造室内に異物を持ち込まないようにする 作業後には機器の隅々までブラシをかける アルコール製剤での除菌。決められた手順でていねいに行う 生クリームの様子を見ながら、かくはん機を秒単位で動かし、生クリームの泡立ち具合を整える 計量カップに入れた生クリームの重量を量り、レシピ通りの重量となっているか確認する 泡立てた生クリームを包あん機へ補充する 「あんこ」の補充。異物混入に注意を払う 原料の袋やドアノブなどに触れた後は、手を洗い(右)、除菌(左)を行う 「もち」の原料を量り取る 原料を投入した蒸練機を作動させ「もち」をつくる できあがった「もち」の温度を測り、記録に残す 生クリームや「あんこ」が「もち」に包まれ、大福ができあがった 工場併設の直売所に並ぶ牛乳やスイーツ 生クリーム入り大福は、人気商品の一つだ 【P19】 エッセイ 第4回 ろう者である想い 〜ろう文化〜 忍足亜希子 忍足亜希子(おしだり あきこ)  俳優。1970(昭和45)年生まれ。北海道千歳市出身。銀行勤務を経て、1999(平成11)年、映画『アイ・ラヴ・ユー』で日本最初のろう者主演女優としてデビュー。同作で毎日映画コンクール「スポニチグランプリ新人賞」を受賞。以後、俳優業以外にも講演会や手話教室開催など、多方面で活躍中。  2021(令和3)年には、夫で俳優の三浦剛との共著『我が家は今日もにぎやかです』(アプリスタイル刊)を出版。  「ろう文化」とは、ろう者の文化であり、手話と視覚を中心にコミュニケーションする生活文化のことです。ろう者は聴力レベルが100dB(デシベル)以上の人が多く、音は聞こえず振動を感じるくらいで、そういう人を「ろう者」と呼びます。聴力レベルはそれぞれ違うので、補聴器をつけない人もいますし、音や声は判断できないけれど「音がある」のを知るために補聴器を使う人もいます。私は聴者の両親から生まれたので、小さいときから聴者の世界とろう者の世界の両方を行き来して生活していました。自分に必要なコミュニケーションは手話ですが、聴者社会では筆談で伝えるので書記日本語も必要になります。  「書記日本語」とは、聴者は聞き慣れないかもしれませんが、話し言葉と書き言葉はまったく異なるもので、「読み書き」というコミュニケーションのひとつです。日本人なのに日本語が苦手なろう者は少なくありません。日本で生まれ、日本で暮らしながら日本語の困難にぶつかることはよくあります。助詞の「てにをは」は、聴こえない人にとってはとてもややこしく、文章を書くのが苦手な人が多いです。格助詞の「のをにへと」や接続助詞、副助詞、終助詞など助詞の種類もたくさんあるので、これもまたややこしいのです。だから、聴こえない人は文章の書き方がわからず、つまずいてしまうことがよくあります。手話をそのまま書くろう者もいます。まだまだこちらは課題がたくさんあります。  手話はろう者にとって必要なもの。ろう者の意思疎通は手話が一番早く伝わります。その次に筆談があります。見える文字なので相手に伝える大事なコミュニケーションです。  ろうの世界の扉を開けると、そこは聴者の世界。手話がわからない人がほとんどなので筆談しないと意思疎通はできません。手話通訳を通じてコミュニケーションを取る方法もありますが、筆談の方が伝わりやすいですね。よく「人を呼ぶときはどうするのですか?」という質問をいただきますが、私は手を振る感じで手招きします。近くにいる人を呼ぶときには手を振ったり、軽く肩や腕を叩いたりもします。また遠くにいる人を呼ぶときは、テーブルを軽く叩いたり、床をどんどんふみ鳴らして振動で呼びます。大勢の人に呼びかけたいときは、電灯をつけたり消したりして光で知らせます。  相手が認識してくれている場合、遠くにいるときは手話を大きくして伝えられますし、電車や車などに乗っているときは窓越しでも手話が見えるので会話ができます。手話が見えるように、振り向かせるためにいろいろ工夫しながらやっています。  ろう者にはろう文化があるように、聴者にも聴文化があります。音や言葉が街中で飛び交っていて音楽も生活の一部になっていますね。このようにそれぞれに異文化があることをまず知っていただきたいです。アメリカ人はアメリカ文化、フランス人はフランス文化がそれぞれあるように、生まれ育った環境によって文化は生まれます。聴者に「手話が世界共通になればいいのにね。そしたら世界中の人と話せるのに」とよくいわれますが、私は少し悲しくなってしまいます。なかには怒るろう者もいます。ろう者からすると「聴者の方こそ世界共通言語をつくればいいのに」と思う人もいます。しかし、そのむずかしさについてみなさんおわかりのように、手話も同じようにむずかしいのです。手話も言語なので世界各地それぞれの手話があります。コミュニケーション手段が違っていても工夫さえすれば会話はできます。ろう者も聴者もみんな違うからみんな違っていいんだと思います。違うということが恥ずかしいことではなく、こういう世界があるんだ、違うからおもしろい。だから、ろう者に対してもポジティブにとらえてくださればとてもうれしいです。そうすれば、コミュニケーションの壁はなくなり自由になれると思います。まずは少し勇気を出して話しかけてみてください。 【P20-25】 編集委員が行く 120種類の石鹸 〜一人も取りこぼさない仕事づくりの実践〜 有限会社ねば塾(長野県) 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 取材先データ 有限会社ねば塾 〒385-0016 長野県佐久市鳴瀬602-21 TEL 0267-68-4428 FAX 0267-67-1979 編集委員から  すでにある組織や仕組みのなかに、障害のある人を組み入れていくことは、「言うは易く行うは難し」であると感じている方は多いと思います。人と仕事を組み立てるときの工夫により、思いもよらぬ素晴らしい能力が発揮されること、また柔軟な発想が大事であることを実際に見せていただきました。 Keyword:工場、適材適所、心理的安全性、自閉症、知的障害、グループホーム 写真:岩尾克治 POINT 1 障害者を雇用する目的は、給与を払い障害者の生活を成り立たせること 2 どんな仕事ならできるかを考え、社員全員に仕事をつくる 3 能力を発揮してもらうために、真の効率を考える 人気商品をつくり続ける「小さな工場」  「有限会社ねば塾」(以下、「ねば塾」)を知ったのは、知人に同社の商品を紹介されたことからだった。長野県佐久(さく)市の小さな石鹸会社でつくられる石鹸が、高品質にもかかわらず、価格が手ごろであることもあって人気があり、化粧品通販サイトの売れ筋商品として不動の地位を築いている。じつは、そこで製造に従事しているのは、おもに障害のある人たちだと聞き、興味を持った。すぐに取材を申し込み、ご快諾いただいた。  北陸新幹線の佐久平(さくだいら)駅から車で20分ほど。緑広がるのどかな地域の一角に、幾棟かの石鹸工場がある。  代表取締役社長の笠原(かさはら)道智(みちとも)さんに出迎えていただき、通された事務所では、数匹の猫がのんびりくつろいでいる。奥の倉庫では数人の女性が忙しく出荷作業をしていた。 ねば塾創業者 先代笠原(かさはら)愼一(しんいち)氏の思い  現社長である道智さんのお父さま、愼一氏はサラリーマン時代に、友人に「知的障害者の施設に遊びに行かないか」と誘われ、滋賀県の一麦寮(いちばくりょう)(※)を訪れた。雪の日で、観光してから行ったら昼に着く予定が夜になってしまったが、なんとその一麦寮の子どもが、「お客さんが来るから」と朝からずっと外で待っていたのだ。愼一氏が「鼻水たらして汚いな」というと、「ずっとお前を待っていたんだぞ」と友人に注意された。そこでふと、「世の中で自分のことをこんなに待っていてくれる人はいないんじゃないか」と思い、そこからハンディキャップのある方たちに興味を持ったのだという。  道智さんが生まれる前の話、若き日の愼一氏が感じたことを道智さんはまるでその場で見聞きしたできごとのように話してくれた。生前、愼一氏が息子である道智さんに何度も何度も話してきたことなのだろう、と感じた。 「自分の力で働きたいよ、生きたいよ」の声にこたえて  愼一氏はサラリーマンをしながら、上田市で、土地を開墾(かいこん)して精神障害者施設を立ち上げる友人の手伝いを始めた。その施設で3年ほど勤めたが、当時その施設の子どもたちが、家族の結婚式にも呼ばれないのを知り、それは変だと強く感じるようになった。ほかにも「俺、税金で生かされているだけだ。自分の力で働きたいよ、生きたいよ」といった子どもがいた。もちろん、いきなり世の中に出ていっても受け入れてもらえないだろうが、だれかサポートする人がいれば社会参加できるのではないかと考え、施設にいた2人を自宅に呼び一緒に住みながら、安土倍組(あとべぐみ)という土木関係の会社にお願いして、愼一氏も一緒に3人で勤めさせてもらったのが1978年、ねば塾の始まりである。当時は、本当に開墾の手伝いばかりだったそうだ。 目的は、給与を払うこと  障害のある人に仕事をつくることを考え続け、まず手に入れたのは開墾しなければ使えない荒れた土地。障害のある人に土地の開墾を手伝ってもらい、工賃を渡す。この段階で収益はどこからも出ないので、資金は愼一氏がなけなしの私財から捻出していた。  数年間は便利屋や土木関係の仕事をしたが、本格的に仕事を始めるにあたり、愼一氏が選んだのは石鹸づくりだった。石鹸のつくり方は、高校1年生の化学の教科書に載っていた。愼一氏は化学が得意だったので、よく理解できた。また、仕事にするなら、消耗品でないと続かないと考えた。消耗品で、つくり方がわかるもの。そして当時、琵琶湖の環境汚染がすごく騒がれている時期だったので、環境にもよいと思い手づくり石鹸を選んだ。  土地を自分たちで開墾したのは前述の通りだが、工場建設も手づくりで行った。石垣から基礎まで自分たちでやり、建物を建て、愼一氏の同級生のお兄さんの板金屋さんに屋根をつくってもらった。  最近は特別支援学校を卒業してからくる人が多いが、昔はどこの作業所にも施設にも定着できず、「ねば塾さんでなんとかなりませんか」と見学に来る人が多かったそうだ。愼一氏は頼まれると断れない性格で社員はどんどん増えていった。 ●経営の特徴@  助成金に頼らない  ねば塾では現在32人の従業員が働いている(うち障害者手帳保持者は17人)。従業員全体の6〜7割が障害のある人だ。おもに知的障害や、自閉症の人が多く、精神や身体に障害のある人もいる。  驚くのは、ねば塾がこれまで行政の助成金をほとんど受けずに経営してきたことである。「(東京などと違い、地方では)障害者は福祉のなかに置くよりも、働く場を整えてなるべく自立をうながし、障害年金と自分で稼いだお金で暮らす方が、一人当たりにかかるお金(税金)が安くなる」という強い信念が、ねば塾にはあるからだ。  会社組織としての効率の前に、「社員に給与を払い、生活を成り立たせること」が会社設立当初からの目的なので、どんなに障害が重くても、最初は効率が悪くても、最低賃金除外申請は行わない。 ●経営の特徴A  社員寮・グループホーム経営  ねば塾の始まりが2人の障害者を自宅に呼び寄せ同居したことからもわかる通り、働く場を整え、社員が職場にきちんと向き合えるように力を注いできた。2人のほかにも、一緒に住む社員が増えていき、道智さんのお母さまが3人の子育てをしながら、石鹸工場の仕事と社員14人分のご飯をつくっていた時期もあったという。アパートを借りて世話人を置いていたこともあったが、手が回らなくなったときにグループホームの制度ができた。いまはこの制度を使い、敷地内に3棟のグループホームがある。そこに現在、18人の社員が入居している。 ●経営の特徴B  能力を仕事に必ず結びつける  どんなに小さなことでも、できることを見つけ出し、それが仕事にならないかを考える。「これならできるだろう」と仕事を与えても、まったく向いていない人もいる。そのときはまた、社内に合う仕事がないかを根気よく吟味していく。仕事に人をあてがうのではなく、その人ができる仕事を見つけ、なければつくり出す。 ●経営の特徴C  適材適所を必ず見つける  どこで、だれとなら安心して働けるのかを見きわめ、働く人の組み合わせや配置をつねに考えて修正していく。例えば一人になりたい人には、少し離れた作業小屋を用意している。 石鹸づくりの未来  道智さんに解説していただいた。 道智 世の中みんな忙しいから、泡立てなければ使えない固形石鹸の市場は、縮小してきているのかなと思います。いま日本では大手の石鹸屋さんが減っています。しかし、これから必要な時期が来るのではないかとも感じています。設備の維持もたいへんですし、油からつくるのは職人仕事なので一朝一夕でできるものではありません。  ただ、どこかが石鹸づくりをやめると、どこかに仕事が流れてくるので、がんばって続けていれば、将来の受注につながると思います。そうすると、もっと障害者を雇用できるのではと考えています。  また現在、大きな釜で炊く工場が減ってきています。戦後、釜を入れて石鹸をつくりはじめた工場は、いま老朽化が進んで交換する時期ですが、釜は大きいので建物を壊して入れ替えなければならない。でもいまは、固形石鹸はそこまでするほどの商材ではなくなってきているので、大手メーカーはそのタイミングでやめています。ですから、うちが釜炊きを続けていれば仕事が増えるかな、と思っています。うちでいま使っている釜は、あるメーカーの先々代から譲ってもらい、機械練りの装置も1台もらいました。そして、売り方などもいろいろ教えてもらいました。 小さなねば塾の強み 道智 なにか新商品をつくろうと考えるとき、うちのような小さなメーカーは少量から始められるので、「こういう商品つくれない?」という話をいただきます。新しい商品が生まれてくると、作業の種類も増えるので、障害者に任せられる作業も多くなり、とても助かっています。  原料については、オーガニックの農園の方も多いのですが、自分のところで育てた作物を石鹸や化粧品に入れたいという方も結構いらっしゃる。大手はちゃんと検査したものしか入れられないけど、うちはそれをどうやったら使えるかな、と考えていきます。例えばカビが出そうなものならまずエキスに抽出して、成分を使おうとか。お客さんが持ってきたものをできるだけ使ってみます。  大きすぎるロットは大手に回し、逆に大手で門前払いみたいなものはうちに連絡してもらうという、持ちつ持たれつでやっています。 寝ている人にも給料を払い続けた話 道智 先代が、「寝ている人にも給料を払い続けて、長く勤めてもらえば、スキルはだんだん伸びてくる」とよくいっていました。普通の人が1〜2カ月でできることが2〜3年かかることもあります。例えば、龍(りゅう)ちゃんという社員は10年近く寝てばかりいました。ずっとそのままにさせていたら、ある日突然、石鹸のシュリンクフィルム包装を始めたんですよね。急に興味を持って。いまは石鹸の袋入れをやるようになって、1日1200個の石鹸を入れます。龍ちゃんは、11時半になったら勝手にご飯を食べに行くし、みんながご飯に行っている間は一人で作業をしたりとか、自由に働いています。でも長く勤めてもらうと、やる気が出て楽しく仕事をすることもできる。スキルも伸びる。やっぱり続けていかないとむずかしいので。うちの社訓は「今日できることは明日やろう。失敗は他人のせい」。真面目な人が聞くと、怒りますが。 不思議な社訓は【心理的安全性】最先端の実践 道智 気持ちが豊かに大らかになっていないと、しんどいし、仕事が手につかなくなることってありますよね。少し心に余裕を持って働くと、明日につながる仕事になります。働きやすいので、本人も「ここ嫌じゃないよね」となれば、長く仕事ができる。そうすればスキルが上がってちゃんと会社に還元されます。  特に軽度の知的障害のある方などは、小さいころからよく失敗して周りから責められて萎縮してる方が多いのです。実習に来てもそうで、失敗しても報告しない。「俺、これもできるよ、これもできるよ」というのですが、実際はそうでもない。そうすると周りから「できない」といわれて、また萎縮してしまい、いづらくなってしまうことが多い。でも、その人のせいにしないで、「これは仕組みが悪いよね」、「このやり方がいけないよね」、「じゃあこうしようか」と話すと、自分のせいじゃないから、「これミスした、ごめん。でも、こうやれば俺、できるかも」と、いえるようになっていきます。 発想の大転換で新商品が誕生 道智 「白雪の詩」という石鹸があるのですが、機械でつくった石鹸のバリやごみを取って、チェックして袋に詰め、ラベルを貼るという作業をくみちゃんという社員が30年も続けてきたのに、作業がなかなかむずかしくなってきてしまいました。でも「もう上手にできなくなったから、この石鹸の仕事はできないよね」ではなくて、くみちゃんがつくった石鹸を新商品にしようと考えました。「バリがあるし、ラベルも曲がっているけれどごめんなさいね」と、ちょっと割安価格で。でも石鹸としては同じです。新商品として、買いたいと連絡が来た人だけに直接売っています。  30年近く行って覚えた仕事から、「新しいことを考えなくてもいいよね」、「ずっと続けられるよね」と、いままでの経験を無駄にせずにすむ。特に自閉症の人は同じ仕事でも、「明日は白衣を着て、向こうの建物で仕事ね」といったり、「石鹸が80gから100gになりました」というだけで、仕事ができなくなってしまう人が多い。ルーティンがあるので。会社としてはそういったところも無駄にしないでいきたいと考えています。もちろんお客さまの理解は必要なのですが。それを発信したら、世の中には、「見てくれが完璧じゃなくてもいいよ、本当は無包装でもいいくらいだよ」などと、いってくれる人もいると思うのです。 変えることと変えないこと 道智 うちは「この人は何の仕事ならできるかな」と考えます。寝てるだけとか、力仕事だけとか、かなり特殊な人たちが多くて、「じゃあ、生きていくためにはこの人でもできる商材を考えなきゃ」と、その人に合った商材をつくった結果、いまでは120種類もの石鹸があります。なかには全然売れないものもありますが、それをやめてしまうとたずさわっている人の仕事がなくなってしまうので、商品の種類を減らせないのがむずかしいところです。  先代が「食べていければ、まあいいか」とよくいっていましたが、さすがにここ数年は、いろいろと考えていかなくてはならないことが増えました。それというのも、原材料費が2・5倍に跳ね上がっているのです。かなり値上げもしましたが、心がけていることは、「便乗して、値段を余分には上げないようにすること」です。お客さまに甘えず、まだまだ自分たちの努力で改善していけることもあると思います。  例えば、問屋を通さずにインターネット直販で売れば、利益が残るかもしれません。しかし、問屋には、いままでずっとお世話になっていたのですから、一気に変えるようなことはせず、少しずつ変化させていく。直販が増えれば発送などの工程で作業が増えます。私たちは「手をかける工程」があることが大事なので、働く人にとって作業の選択肢が増えるのもよいことだと思います。 ねば塾の名前の由来 道智 障害のある方が、健常者の社会で働くためには、健常者以上にがんばらねば、耐えねば、やらねば、〇〇せねばの【ねば】の精神が必要ということ。もう一つはここ、ねば塾が彼らの生活の根っこを張る場所。根場で【ねば】です。また、一麦寮の田村(たむら)一二(いちじ)先生は、障害のある人もない人もみんなが自分たちのできることをやって生活する理想郷「茗荷村(みょうがむら)」を構想し、小説として発表しました(後に映画化)。村ほどはできないけど、学習塾くらいならできるのではないかと考え「ねば塾」と名づけました。 まとめ  能力開発には、さまざまな手法があると思うが、ねば塾は一貫して何も強制しない。新しい仕事をできるようになれ、というメッセージは感じられない。あきらめているわけではなく、自然に任せている。10年間寝てばかりいた龍ちゃんは、ある日突然仕事を始めた。その日がいつ到来するかはわからないが、ねば塾が、「毎日過ごすのに苦にならない場所」であることが大前提である。働き出すのが10年目になるか20年目になるかはわからない。結果としてそうだった、というだけである。一方くみちゃんのエピソードにあるように、30年間続けてきた仕事を大切に守ってくれる。それまでの経験を絶対に無駄にしない。  結局、ねば塾が見つめているのは、徹底的に社員一人ひとりのことで、その集団のメンバー構成、現在保持する技能、市場のニーズを読みながら、新商品も開発し、石鹸を消費者に向けてつくり続けている。創業者の笠原愼一氏は本当に先見の明があった。  ねば塾の素晴らしさは愼一氏の思想を、寸分たがわず道智さんが受け継ぎ、時代に合わせて見事に進化発展させていることだ。  なにも強制されず、自由気ままに過ごしているようだが、ねば塾の名前の由来を聞くと、障害者が置かれた状況は、当然ながらそんなにお気楽なものではないと、ハッとさせられる。いわゆる健常者と比べれば、最初に背負った苦労の数は多いはずである。だからこそ、この会社のなかでは、ストレスを限りなく減らして、持てる能力を発揮してもらおうとの取組みだった。  経営者の思想、社員の動き、時代を掴んだ商材、消費者や取引先との関係性、不断の努力、限りない工夫のうえに現在のねば塾がある。つい、「笠原さんだから、ねば塾だからできたこと」といいたくなるが、「もう、実際に一緒にこうやって働いている場があるのだから、『できない』とはいえないですよね」と道智さんに、先回りして満面の笑みでいわれてしまった。  障害者が能力を発揮できる職場をつくり、自立を支えるために、ねば塾の実践から私たちは何を学びとれるだろうか。 ※一麦寮:1961(昭和36)年、滋賀県大津市に創立された知的障害児施設。設立者は戦前から、京都の小学校で特別学級の教師として知的障害児教育にたずさわった田村(たむら)一二(いちじ)。現在の施設名は一麦 写真のキャプション 有限会社ねば塾の社屋 ねば塾では、さまざまな種類の石鹸を製造・販売している 代表取締役社長の笠原道智さん ねば塾の事務所でお話をうかがった 現在、石鹸工場は改装され鉄骨2階建てとなっている グループホーム「蛍雪庵」 ねば塾では、社員のできることを見つけ出し、仕事に結びつけている 働く人の組み合わせや配置を工夫し、安心して働ける職場を目ざす 昭和20年代に製造された「製粉機」。取り扱いはむずかしいが、障害のある社員が「粉引き職人」として使いこなしている 工場に据えつけられた「釜」を使い、「釜炊き職人」である障害のある社員が生油から石鹸を炊き上げる 化粧石鹸などの製造に使用される「機械練り」の装置。障害のある社員が、操作やメンテナンスを担当している ねば塾の石鹸は手づくりのため、小ロットの生産にも対応できる 包装作業の様子。袋詰めし、ラベルを貼りつける バリ取りの作業を見学する三鴨委員(左) 障害のある社員が一つひとつ手づくりする透明石鹸(アートソープ) 商品ラベルの貼りつけには、手づくりの治具が活躍する 【P26-27】 省庁だより 令和5年度 障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 1 障害福祉サービスの確保、地域生活支援などの推進 1 良質な障害福祉サービスの確保 1兆4572億円(1兆3704億円)  障害者が身近な地域等で暮らすために必要な障害福祉サービスに必要な経費を確保する。 2 障害福祉の現場で働く人々の待遇改善に向けた業務効率化や負担軽減の推進 【令和4年度補正予算】 ・障害福祉分野におけるICT導入支援 3.4億円  障害福祉分野におけるICT活用により、業務効率化や職員の業務負担軽減を推進しながら安全・安心な障害福祉サービスを提供できるよう、障害福祉サービス事業所等におけるICT導入に係るモデル事業を実施する。 ・障害福祉分野におけるロボット等導入支援 3.4億円  障害福祉サービス事業所等におけるロボット等導入支援の実施により、介護業務の負担軽減等を図り、労働環境の改善、生産性の向上を通じて安全・安心な障害福祉サービスの提供等を推進する。 ・障害福祉サービス事業所等に対するサービス継続支援 36億円  新型コロナウイルスの感染者等が発生した場合でも、影響を最小限に留め、サービスの提供を継続するため、消毒や人員確保等の経費への支援を行うとともに、緊急時に備え、職員の応援体制等の構築を推進する。 3 地域生活支援事業等の着実な実施【一部新規】 507億円(506億円)  意思疎通支援や移動支援など障害者等の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じ、事業の拡充を図る。 4 障害福祉サービス提供体制の基盤整備(社会福祉施設等施設整備費) 45億円(45億円)  障害者の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、地域移行の受け皿としてグループホーム等の整備を促進するなど、自治体の整備計画に基づく整備を推進する。 【令和4年度補正予算】 ・障害者支援施設の対災害性強化等 99億円  「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づく障害者支援施設等に対する耐震化整備、非常用自家発電設備の設置、浸水対策等及び災害復旧に要する費用の補助を行うとともに、自治体の整備計画に基づく整備を推進する。 5 障害者等への良質かつ適切な医療の提供 2527億円(2535億円)  心身の障害の状態を軽減し、自立した日常生活等を営むために必要な自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)等を提供する。また、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討する。 6 特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1861億円(1787億円)  特別児童扶養手当及び特別障害者手当等の支給を行う。 7 障害福祉のしごとの魅力発信 15百万円(15百万円)及び地域生活支援事業等の内数  障害福祉分野における多様な人材の参入を促進するため、インターネットやSNSを活用した広報等を通じて障害福祉の仕事の魅力に関する情報発信を行うとともに、地域の関係機関等と連携し、障害福祉の現場を知るための体験型イベント等の開催を行う。 8 障害者虐待防止、権利擁護などに関する総合的な施策の推進 @障害者虐待防止の推進 6.2億円(6.2億円)  都道府県や市町村で障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、専門性の高い職員の確保や地域の関係機関の協力体制の整備、関係機関職員への研修、障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制の強化を図る。 A障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 12百万円(12百万円)  国において、障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者の養成研修を実施するとともに、虐待事案の未然防止のための調査研究を行う。 B成年後見制度の利用促進のための体制整備【拡充】  地域生活支援事業等の内数  「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(令和4年3月25日閣議決定)を踏まえ、成年後見制度の利用に要する費用の補助や制度の普及啓発等の取組を推進するとともに、新たに都道府県による法人後見の養成研修を実施する。 9 重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 12億円(12億円)  重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行う。 10 教育と福祉の連携の推進 地域生活支援事業等の内数  市町村内における家庭・教育・福祉の連携促進及び地域支援対応力の向上を図るため、教育委員会や福祉部局、学校、障害児通所支援事業所等の関係者が障害児への切れ目ない支援について協議を行う場の設置や福祉機関と教育機関等との連携の役割を担う「地域連携推進マネジャー」を市町村に配置する。 11 障害者施策に関する調査・研究の推進 2.4億円(3.4億円)  障害者施策全般にわたり解決すべき課題について、現状と課題を科学的に検証・分析し、その結果を政策に反映させていくため、調査・研究等への補助を行う。 12 障害者等の自立・社会参加支援の推進 @障害者の情報アクセシビリティ・コミュニケーション支援(一部再掲・1(3)参照)【拡充】12.8億円(11.2億円)及び地域生活支援事業等の内数  障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の成立等を踏まえ、手話通訳者をはじめとする意思疎通支援従事者の確保やICT機器の利用支援の取組、読書環境の整備の促進等を行う。 A芸術文化活動の支援の推進 3.7億円(3.7億円)  障害者文化芸術活動推進法に基づく第2期障害者文化芸術活動推進基本計画の策定を見据え、地域における障害者の芸術文化活動を支援する都道府県センターの機能強化を図るとともに、障害者芸術・文化祭を開催し、芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)を通した障害者の社会参加をより一層推進する。 2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策等の推進 1 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築【一部新規】 7.6億円(8.0億円)  精神障害者が地域の一員として安心して自分らしく暮らせるよう、住まいの確保支援を含めた精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。このため、障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、精神科病院、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築し、地域の課題を共有した上で、地域包括ケアシステムの構築に資する取組を行う。  また、市町村長同意による医療保護入院者等を対象とした実効的な支援のため、都道府県等において、訪問支援員が精神科病院へ訪問し、患者の話を丁寧に聴きつつ必要な情報提供を行う体制の構築を図る。 2 精神科救急医療体制の整備 18億円(17億円)  地域で生活する精神障害者の病状の急変時において、早期に対応が可能な医療体制及び精神科救急情報センターの相談体制を確保するため、引き続き地域の実情に応じた精神科救急医療体制を整備する。  また、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に資する精神科救急医療体制整備を推進するとともに、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。 3 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 192億円(183億円)  心神喪失者等医療観察法に基づく医療を円滑に行うため、引き続き指定入院医療機関を整備し、地域偏在の解消を進める。  また、指定医療機関の医療従事者等を対象とした研修や指定医療機関相互の技術交流等により、更なる医療の質の向上を図る。 【令和4年度補正予算】 ・心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関施設整備事業 4.0億円  心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関の医療観察法病棟について、防災・減災の観点から、大規模修繕に必要な施設整備を実施する。 〈2の後半と、3、4、5は次号で掲載します〉 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています ※( )内は令和4年度予算額 【P28-29】 研究開発レポート 発達障害者のワークシステム・サポートプログラム 発達障害者の強みを活かすための相談・支援ツールの開発 障害者職業総合センター職業センター  障害者職業総合センター職業センターでは、発達障害のある方を対象とした「ワークシステム・サポートプログラム」(以下、「WSSP」)の実施を通じて、発達障害の特性に応じた的確な支援を行うための技法開発・改良を行っています。  今回は、発達障害者の「強み」に着目しました。WSSPの過去の受講者アンケートでは、長所や苦手なことを書き出す課題に対して「苦手なことはいくつも書き出せたが、自分の長所を書き出すことは難しかった」など、自身の「強み」の見出しにくさを示す感想が散見されています。また、当機構(JEED)の地域障害者職業センター(※1)および広域障害者職業センター(※2)に対するアンケートでは、調査対象となった50センター中49センターから「自らの強みの認識が困難だったケースが認められる」との回答が得られました。そこで、発達障害者の自己肯定感を高めることを目的として、「WSSP版強み育成プロジェクト」と称し、発達障害者が自らの「強み」に着目し、それを活用するための相談・支援ツールを開発し、令和5年3月に支援マニュアル22「発達障害者の強みを活かすための相談・支援ツールの開発」にとりまとめました。以下にその概要について紹介します。 【WSSP版強み育成プロジェクトの概要】  プロジェクトの構成は図1の通りです。 【「強み」について】  プロジェクトで取り上げる「強み」の定義と構成要素は図2の通りです。  「強み」の種類は60種類あり、プロジェクトでは図3の通りピクトグラムを使用したカードで表現しました。 【プロジェクトの内容】  プロジェクトは、初回のオリエンテーションに続き、3回の講習と2回のホームワーク、振返りという流れになっています。  「強み」の講習@では「強み」の解説を行い、「強み」の講習Aでは「強み発見チェックリスト」を使って自らの「強み」を発見します。ホームワーク「強みの観察」では、自らの「強み」を日常場面において観察します。「強み」の講習Bでは、「強み」に対する理解を深め、ホームワーク「強みの意図的活用:行動実験」では自らの「強み」を意図的に活用します。最後に、支援者と振返りを行います。  講習・ホームワークの詳細は図4の通りです。 【プロジェクト実施上の工夫】 @ 受講者や支援者が取り組みやすい回数・時間を設定 A 受講者が理解しやすく親しみやすいようピクトグラムを用いた「強みカード」を使用 B ゲームや演習を多く導入 C ホームワークに取り組みやすくするためホームワークの様式を工夫  これらの工夫により、自らの「強み」に気づきにくい発達障害者でも参加しやすくなることをねらいとしました。  講習の中に取り入れたゲームの一部を紹介します。「他者の強み当てゲーム」(図5)です。  このゲームは「強み」の講習Bで実施します。他者の「強み」に注目することで、自らが選んだ「強み」以外へも目を向け、また、他者から「強み」を指摘されることで自らの新たな「強み」に気づくことを目的としています。 【事例の紹介】 「強み」の内容と活用上の留意点を復職時に会社の担当者と共有した事例  休職者のAさんは、臨機応変な対応が苦手など発達障害の特性を自覚し、復職に対して不安を感じていました。また休職前のエピソードから、仕事に一生懸命取り組むものの、予定通り進まないと焦りや不安につながっていたことが確認されました。  そこで、復職に向けた不安の軽減のため、WSSPで特性を整理しナビゲーションブックを作成することとし、そこに、プロジェクトを通して確認できた「強み」を反映することにしました。Aさんはプロジェクトで、「情熱」、「尽力」、「集中」などの「強み」を抽出し、ナビゲーションブックには長所として「粘り強く作業を続けること」などを記載しました。  Aさんには、「強み」を発揮しているときの「強み」の構成要素にも着目した助言を行いました。例えば、「尽力」という「強み」を発揮して一生懸命がんばっても予定通りに進まず疲れてしまったり、結果が伴わないときには、「強み」の構成要素のうち「活力感」があまりない状態といえます。そのようなときには、休息や周囲からの客観的な助言が必要であることを確認しました。また、このことは復職時に会社の担当者とも共有しました。  Aさんからは、自らの「強み」を見つけ、それを会社担当者に伝えられたことにより、「復職への不安が少し軽減された」との感想を得ることができました。 * * * *  支援マニュアル22「発達障害者の強みを活かすための相談・支援ツールの開発」は、障害者職業総合センターホームページに掲載しています(★1)。また、冊子の配付を希望される場合は、障害者職業総合センター職業センターに直接ご連絡ください(★2)。 ※1 https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/index.html ※2 https://www.jeed.go.jp/location/koiki/1.html ★1 「支援マニュアルNo.22」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support22.htmlよりダウンロードできます。 ★2 障害者職業総合センター職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/center.html 図1 プロジェクトの構成 WSSP版 強み育成 プロジェクトの構成 オリエンテーション 「強み」の講習@ 「強み」の講習A ホームワーク 「強みの観察」 「強み」の講習B ホームワーク 「強みの意図的活用:行動実験」 振返り 図2 「強み」の定義と構成要素 「強み」の定義 その人特有の思考・感情・行動に反映される力であり、その人にとって特別な意味を成す、生きる上で頼りになるもの 「強み」の構成要素 パフォーマンス 成功体験、頑張ったこと、苦労したが乗り越えられたこと 活力感 熱中できる、没頭できる、喜びや安らぎを感じられること 自分らしさ(意味付け) 生きる上で大切にしている、自分らしさを見出していること 図3 「強み」の種類(強みカード) 表面 裏面 図4 講習・ホームワークの詳細 目的 内容 期間 「強み」の講習@「強み」とは?(60分) ・「強み」に関する具体的なイメージを持つ ・「強み」を認識し活用することの効果、メリットを理解する ・リフレーミングの方法を理解し、物事のポジティブな側面を見つけやすくする ・「強み」とは何か? ・「強み」の構成要素 ・「強み」を認識し活用することの効果 ・リフレーミングとは? ・リフレーミング・ゲーム 「強み」の講習A「強み」の発見と再認識(60分) ・「強み発見チェックリスト」を使い、自らに該当する「強み」を認識する ・自らが選んだ「強み」を構成要素(3つの側面)から理解する ・「強み発見チェックリスト」 ・「強み」の構成要素のチェック ・ホームワーク「強みの観察」説明 ホームワーク「強みの観察」 ・自らの「強み」を見つける ・「強み」の講習Aで抽出した自らの「強み」の観察 ・表れていると感じた場面、行動、結果、感情を記録 ・1週間 「強み」の講習B「強み」の活用とは?(60分) ・様々な視点から自分の「強み」に対する理解を深める ・「強み」の活用に関する留意点を理解する ・ホームワーク「強みの観察」の感想共有 ・「強み」を様々な視点からとらえる ・「強み」の活用に向けて ・ホームワーク「強みの意図的活用:行動実験」説明 ホームワーク「強みの意図的活用:行動実験」 ・「強み」を活用する経験を積む ・自らの「強み」を意図的に活用する ・意図的に活用した場面を記録用紙に記録する ・1週間 ・必要に応じて継続的に実施 図5 他者の強み当てゲーム 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 群馬 パラスポーツとアート活動の支援センター  群馬県は、パラアスリートの活躍を後押しするため「ぐんまパラアスリート支援ワンストップセンター」を県庁のスポーツ振興課内に開設した。県ホームページの専用フォームからパラアスリートの相談を受けつけ、民間事業者や関係団体などとの連携により課題解決に向けサポートする一方、講演会や体験会などを希望する事業者・学校にはパラアスリートを紹介する。 https://www.pref.gunma.jp/site/paraonestopcenter/  また、障害者のアート活動支援に取り組む「群馬県障害者芸術文化活動支援センター」を「特定非営利活動法人工房あかね」(高崎市)の事業所内に開設した。関係者のネットワーク構築のほか、電話・FAX・メールで相談に対応する。また、障害福祉サービス事業所職員やアート活動支援者、学生などを対象とした人材育成事業(研修、交流会)をレベル別に実施。そのほか、事業所や企業と連携し展示会を開催するとともに、県内の活動団体や作家などの実態をデータベース化し、ホームページで障害者芸術文化に関する情報を発信していく。 https://www.pref.gunma.jp/site/houdou/202161.html 埼玉 重度障害者支援・あんしん宣言グループホーム  埼玉県は、重い障害のある人がグループホームに安心して入居できるよう「彩の国重度障害者支援・あんしん宣言グループホーム」登録制度を創設した。現在、登録基準に適合するグループホーム9法人(36住居)を登録している。  登録には、グループホームとして6年以上の運営実績のほか、職員の配置体制やバリアフリー、居室面積などの設備条件を一定以上満たすことが必要。登録施設には「あんしん宣言グループホーム」のステッカーが配布され、県のホームページ内で、登録施設の入居者支援のあんしん宣言や取組みなどを掲載する。 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0605/anshinsengen-grouphome.html 東京 「東京都パラスポーツトレーニングセンター」オープン  東京都は、都立初のパラスポーツ競技力向上の拠点として「東京都パラスポーツトレーニングセンター」を味の素スタジアム(調布市)内にオープンした。パラスポーツの競技団体などが計画的・安定的に利用できるほか、おもに障害者で構成される団体がスポーツなどに使用する場合、当面の利用料金を免除する。  センターは地下1階・地上1階で延べ床面積約6195u。体育室やトレーニング室、多目的室、集会室などを備える。練習可能なおもな競技はバドミントン、ボッチャ、ブラインドフットボール、ゴールボール、パワーリフティング、シッティングバレーボール、卓球、バレーボール、車いすバスケットボール、車いすフェンシング、車いすラグビー。障害のある人もない人もパラスポーツに親しめるような教室や体験会も開催予定。まずは利用の登録が必要で、申込みなどの詳細は施設ホームページに掲載。 https://tokyo-ptc.jp 生活情報 全国 盲導犬利用者45%が「受け入れ拒否」経験  公益財団法人日本盲導犬協会(神奈川県)は、盲導犬同伴での受け入れ拒否の実態について盲導犬ユーザーに聞き取り調査を実施し、結果を公開した。同協会所属のユーザーのうち218人が回答。調査によると2022(令和4)年の1年間に飲食店等で盲導犬同伴の受け入れを拒否されたユーザーは45%(100人)、さらに32%(71人)のユーザーが「障害を理由とする差別があった」と回答した。拒否の回数は延べ196件で、内訳は飲食店92件(47%)、宿泊施設25件(13%)、交通機関24件(12%)、ほかとなった。  同協会では、障害者差別解消法や身体障害者補助犬法などの周知を進め、視覚障害や盲導犬についての理解が深まるよう各種セミナーなどを実施。また法律の解説や盲導犬ユーザーが施設を利用する際の接客ポイントを紹介する動画なども公開している。 https://www.moudouken.net/news/article/page_995.php 新潟 聴覚障害者のためのデイサービス施設  聴覚障害のある高齢者が通えるデイサービス施設「宅ろう所太陽と月」が、柏崎市西山町に開所した。運営は聴覚障害者の支援などに取り組む「株式会社Deaf(デフ) Heart(ハート)」(柏崎市)で、ノーマライゼーションの理念を実現した施設を目ざす。施設は2019(平成31)年3月に閉鎖された認知症高齢者グループホームの未利用施設を改装した、木造平屋建て約660u。定員19人で、手話のできる職員や耳の不自由な職員らが対応する。 福岡 視覚障害者の歩行支援アプリ  ベンチャー企業「株式会社コンピュータサイエンス研究所」(北九州市)などが、視覚障害者歩行支援アプリ「Eye(アイ) Navi(ナビ)」の無償提供を開始した。  アプリは、GPS(衛星利用測位システム)とAI(人工知能)により歩行者や車止めなどの障害物や歩行者信号の色などを音声で知らせる。また目的地までの経路の概要、交差点の有無、施設の情報などを事前に確認でき、自宅や目的地の登録が可能。自動車のドライブレコーダーのように、歩行時の映像を自動で保存する機能も搭載している。 https://eyenavi.jp 本紹介 『「良かったこと探し」から始めるアクセシブル社会 障害のある人の日常からヒントを探る』  公益財団法人共用品推進機構の専務理事を務める星川(ほしかわ)安之(やすゆき)さんの『「良かったこと探し」から始めるアクセシブル社会 障害のある人の日常からヒントを探る』(小学館刊)が出版された。  同機構は1999(平成11)年に設立され、2012年に公益財団法人化した。共用品・共用サービスの開発と普及のために多角的な活動を行い、活動成果を情報発信している。これまで障害者に対し、日常生活で感じている「不便なモノやコト」、「良かったモノやコト」について行った調査のなかで寄せられた多くの声を紹介。その結果として、シャンプー・リンス・アルコール飲料などの触覚記号(容器のギザギザ)などが導入されてきた経緯なども伝えながら、「共生社会」の実現に向けてできることを考える。四六判160ページ、1760円(税込)。 ミニコラム 第25回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は三鴨委員が執筆しています。  ご一読ください。 相手の個性を大事にできる自分になるために 有限会社まるみ取締役社長 三鴨岐子  長い間、画一的であることがよしとされてきた日本社会でしたが、表面上だけでなく本当の意味で個性的な人やその活動が、評価されるようになってきました。個人だけではなく企業もそうで、以前は売上・利益至上主義ではない会社は存在意義を疑われましたが、最近は別の目的を掲げる会社も珍しくなくなりました。今回取材した有限会社ねば塾は、そのなかでもかなり個性的な企業でした。  社員の能力開発を考えたときに、きちんとした目標設定と、到達までの道筋を示した方がよい人もいれば、示した途端に、その職場が嫌になる人もいます。どちらが正しいかはその人次第、ということなのでしょう。ねば塾は「機会を与えて自然にまかせる方針」でした。  ねば塾がつくりだす「自然体でいてもよい雰囲気」は、社長をはじめとする障害のない社員たちが準備していることは間違いありませんが、そこに支援者・被支援者の区別は色濃くはありません。社員みんながとても自然体でした。  障害の有無に関係なく、人はだれでも自分の感じ方・考え方があり、それを相手と分かち合えないとストレスを感じます。そのストレスこそが、仕事がうまく回らない原因だと、笠原道智社長は力を込めて話していました。  個性的であることは素晴らしいとわかりつつも、相手の個性と自分の考え方との折り合いをつけることに、私たちはまだまだ慣れていません。自分と違う相手を認められない、ときには嫌だとさえ感じる心の動きは、いったいどんな理由から生まれるのか。そしてそれをどう消化すればよいのか。  個性的な人たちを上手に束ね、どんな状況でも自然体で笑顔で乗り切る道智社長の頭の中に、そのヒントが詰まっているような気がしました。 【P32】 掲示板 受講者募集! 職業リハビリテーションに関する各種研修のご案内 訪問型・企業在籍型職場適応援助者養成研修(9月期・10月期) 受講料 無料 ◆訪問型・企業在籍型職場適応援助者養成研修(9月期・10月期)  訪問型または企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行ううえで必要となる知識および技術を習得するための研修を実施します。 ◆日程および会場 【9月期】<大阪会場> ※西日本地域(静岡を除く東海、富山を除く北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄)の方が対象です。 日程:令和5年9月26日(火)〜9月29日(金) 会場:シキボウホール7階(大阪府大阪市中央区備後町3-2-6) 【10月期】<幕張会場> ※東日本地域(北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山)の方が対象です。 日程:令和5年10月3日(火)〜10月6日(金) 会場:障害者職業総合センター(千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3) ◆申込受付期間(9月期・10月期とも共通です)  令和5年7月11日(火)〜8月4日(金) ◆お申込み先  ホームページに受講申込書および申込方法を掲載しています。 ◆お問合せ先  職業リハビリテーション部人材育成企画課(TEL:043-297-9095) E-mail:stgrp@jeed.go.jp https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html 職場適応援助者(ジョブコーチ) ステップ1 ジョブコーチをめざす方 職場適応援助者 養成研修 ジョブコーチ支援をする際に必要な知識・技術の習得 障害者職業総合センター 全国の地域障害者職業センター ステップ2 ジョブコーチの実務経験のある方 職場適応援助者 支援スキル向上研修 ジョブコーチとしての支援スキルの向上 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方 ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 次号予告 ●私のひとこと  NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)(大阪府)理事長の広野ゆいさんに、障害者雇用における就労とキャリアアップをテーマに、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  物流サービスと食肉加工の事業を行う、株式会社共同(熊本県)を訪問。職場定着に向けた取組みを積極的に行う現場の様子を取材しました。 ●グラビア  「蓼科親湯温泉」などの温泉旅館の経営を行う合資会社親湯温泉(長野県)を取材。清掃業務などで戦力となっている障害のある従業員を紹介します。 ●編集委員が行く  若林功編集委員が、川崎市で精密板金加工などを行う株式会社スタックス(神奈川県)と、オフィスサポート事業を行う株式会社湘南ゼミナールオーシャン宮崎台事業所(神奈川県)を訪問。障害者雇用を進めるための、社内における理解と配慮の工夫などをお伝えします。 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林功 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 飯田 剛 編集人−−企画部次長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6526(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 7月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和5年6月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 読者アンケートにご協力をお願いします! いつもご愛読いただき、ありがとうございます。 「働く広場」では、よりよい誌面をつくるため、読者アンケートを実施しています。 ぜひみなさまの声をお聞かせください。 お待ちしています! 回答方法 今号に同封した「読者アンケート」用紙にご記入のうえ、FAXにてお寄せください。 FAX番号はこちら→043-213-6556 Webでの回答も可能です。 コードはこちら ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://krs.bz/jeed/m/hiroba_enqueteであることを確認のうえアクセスしてください 【令和4年度アンケート結果の一部より】 ご回答者の勤務先 民間企業59.2% 障害者福祉施設(就労支援機関を含む)・団体20.0% 学校・教育機関6.2% 医療機関4.2% 国、地方公共団体の機関3.4% 個人1.4% その他5.6% ※その他:介護福祉施設、社会福祉協議会、事業主団体 など 「働く広場」は参考になっていますか? 非常に参考になる26.2% 参考になる62.5% あまり参考にならない5.1% 参考にならない0.3% 無回答5.9% ご意見 【職場ルポ】各企業の事例から学ぶものが多い。/実際の対応や苦労された点がわかりやすい。 【グラビア】障害者の方の雇用の参考になる。/実際に従事されている様子が見られる事で就労状況がイメージしやすい。 【編集委員が行く】実際の現場を詳しく説明しているため参考になる。/事業所での障害者の働き方が分かりやすく説明されている。 企画部 情報公開広報課 TEL:043-213-6200 月刊誌『働く広場』読者アンケート 日ごろから『働く広場』をお読みいただきありがとうございます。 本アンケートは、同一の事業所内の複数の方からもご回答いただけます。 より多くのみなさまのご意見・ご要望を誌面に反映するために、アンケートにご協力をお願い申し上げます。 以下のいずれかの方法でご回答いただきますようお願いいたします。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス Fax 043-213-6556 本紙にご記入いただきFaxでお送りください。 Web ※表示されたページがhttps://krs.bz/jeed/m/hiroba_enqueteであることをご確認のうえアクセスしてください 左のコードを読み込むと表示される「読者アンケート」ページからもご回答いただけます。 [お問合せ] 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) TEL:043−213−6200 ご回答者についてお教えください Q1.所属先の所在地【     】都道府県 Q2.所属先について、該当する番号に○をつけてください。  @民間企業  A障害者福祉施設(就労支援機関を含む)・団体  B学校・教育機関  C医療機関 D国、地方公共団体の機関  E個人    Fその他(               ) Q3.Q2で「@民間企業」とお答えいただいた方のみ、該当する番号に○をつけてください。 (1)ご回答者のお立場  @経営者・取締役(役員含む) A人事総務部門責任者・担当者  Bその他の管理監督者(例:工場長、支店長、管理職など)  Cその他(具体的に:         ) (2)所属先企業規模(常時雇用している従業員の数)  @ 43.5人未満  A 43.5〜99人  B 100〜299人  C 300〜999人  D 1,000人以上 『働く広場』についてお教えください Q 4.『働く広場』は参考になっていますか。  @非常に参考になる    A参考になる    Bあまり参考にならない    C参考にならない 「@非常に参考になる」、「A参考になる」を選択された方は、特に参考になったコーナー名と理由をお教えください。 「Bあまり参考にならない」、「C参考にならない」を選択された方は、理由をお教えください。 コーナー名・理由 Q5.『働く広場』をどのような場面で活用されているか具体的にお教えください。 例:●月号の「職場ルポ」に掲載されている企業の取組みが参考になる内容であったため、社内会議で共有した。 Q6.さらに充実を図ってほしいコーナー名と理由をお教えください。 コーナー名・理由 Q7.今後取り上げてほしい内容、取材先、執筆者などについて、具体的なご希望があればお教えください。  また、その他『働く広場』に対するご意見、ご感想をご自由にご記入ください。 今回の読者アンケートを機に、年1回程度、アンケートなどによって直接ご意見をうかがいたいと考えておりますので、差し支えなければご連絡先をご記入ください。 お名前: ご所属(会社名・部署): ご連絡先(住所):[〒  -     ] (メールアドレスまたは電話番号): *このアンケートでご記入いただいた内容は『働く広場』制作の参考にさせていただきます。また、取得した個人情報については、上記目的以外には使用いたしません。 【裏表紙】 7月号 令和5年6月25日発行 通巻549号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)