【表紙】 令和5年7月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第550号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2023/8 No.550 職場ルポ 「学び合う」共生を目ざし、だれもが働きやすい職場に 株式会社共同(熊本県) グラビア 老舗旅館を支える 合資会社親湯温泉 創業大正十五年 蓼科 親湯温泉(長野県) 編集委員が行く 就労支援機関との連携を基にした企業の行う定着支援 株式会社スタックス、株式会社湘南ゼミナールオーシャン 宮崎台事業所(神奈川県) 私のひとこと 発達障害者の就労・キャリアアップの現状と課題 NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表 広野ゆいさん 「プロサーファーで金メダル」福岡県・岩ア(いわさき)翔琉(かいり)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 8月号 【前頁】 心のアート 無題 福満信夫 (しょうぶ学園) 素材:画用紙、筆ペン/サイズ:253mm×357mm  尊敬してやまない漫画家・井上(いのうえ)雄彦(たけひこ)氏のイラストが描かれたバッグに、スケッチブックとペンケースが入っており、毎日職場に持参する。制作時間は昼食後の休憩時間。お昼時はわりと静かな職員室中央の大きなテーブルの一角を作業スペースとし、声をかける職員と談笑しながら穏やかにペンを走らせる。  作品に使用するペンは、先が細いインク式のものを好む。作品はあらかじめ用意したり計画したりするものではなく、即興によるもので下書きは一切しない。好きな友人に、誕生日に、退職する職場仲間にプレゼントし、「だれかが自分の絵で笑顔になってくれることが喜びだ」と話す。 (文:社会福祉法人太陽会 しょうぶ学園 榎本紗香) 福満信夫(ふくみつ・のぶお)  1969(昭和44)年生まれ。  学校卒業後は地元の電気部品製造の下請けを行う工場へ就職。2013(平成25)年3月に会社を退職し、2014年4月から、しょうぶ学園のグループホームへ入居。入居後は、同法人の就労移行支援事業所にて、パン工房と花市場の業務を行い、2015年3月から「しょうぶ学園」に就職(障害者雇用)。現在は、しょうぶ学園の木工房に所属している。絵は中学校卒業後から本格的に描き始め、その年月は40年近くに至る。以前は泡のように湧き出てつながる点描画のスタイルが主だったが、最近では細かい線で空間をつなぐものが多い。とてもやさしく温厚な人柄で、周りをよく見ており、ほかの人の手助けをする姿を多く見かける。 協力:社会福祉法人太陽会 しょうぶ学園 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2023年8月号 NO.550 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 無題 作者:福満信夫(しょうぶ学園) 私のひとこと 2 発達障害者の就労・キャリアアップの現状と課題 NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表 広野ゆいさん 職場ルポ 4 「学び合う」共生を目ざし、だれもが働きやすい職場に 株式会社共同(熊本県) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ 10 障害者雇用担当者のモチベーションアップ 第1回 〜悩みを聞いてもらうことの重要性〜 JEEDインフォメーション 12 “事例で見る”“動画で見る”『障害のある方への合理的配慮の提供』/2023(令和5)年度就業支援課題別セミナーのご案内 グラビア 15 老舗旅館を支える 合資会社親湯温泉 創業大正十五年 蓼科 親湯温泉(長野県) 写真/文:官野貴 エッセイ 19 ろう者である想い 最終回 〜今後の希望と開拓〜 忍足亜希子 編集委員が行く 20 就労支援機関との連携を基にした企業の行う定着支援 株式会社スタックス、株式会社湘南ゼミナールオーシャン 宮崎台事業所(神奈川県) 編集委員 若林功 省庁だより 26 令和5年度 障害保健福祉部予算の概要(2) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート 28 就労困難性(職業準備性と就労困難性)の評価に関する調査研究 ―「就労支援のためのアセスメントシート」の開発― 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門・事業主支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 実践的な訓練環境で即戦力を目ざします 表紙絵の説明 「オリンピックで金メダルを獲ってみたいと思って描きました。もっとサーフィンが上手になって、技がたくさんできるように練習をがんばりたいです。水しぶきをきれいに表せるように、白いクレヨンを使ってがんばって描きました。夏休みにサーフィンの練習をする予定なので、楽しみです」 (令和4年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 私のひとこと 発達障害者の就労・キャリアアップの現状と課題 NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表 広野ゆい はじめに 発達障害と障害者雇用  昨今、「発達障害」という言葉がメディアで広く取りあげられるようになり、大人になってから診断される人の数は増え続けています。私自身がADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けた2003(平成15)年ごろは、発達障害という言葉はまだ一般的ではなく、診断ができる病院も数えるほどしかありませんでした。2004年に「発達障害者支援法」が制定(2005年に施行)されたことで「大人の発達障害」が注目されるようになりましたが、当初は発達障害の診断だけで障害者手帳を取得することはむずかしく、就労のサポートもなかなか受けられませんでした。その後、2010年に「障害者自立支援法」が改正され、発達障害が同法の対象となることが明確化、2018年に精神障害者が障害者雇用義務の対象に加わったことで、やっと障害者枠での就労が選択肢に入ってきました。つまり、大人になってから発達障害と診断された人たちの、障害者枠での勤続年数は長くても5〜6年ほどで、ここ数年でキャリアアップが話題にのぼるようになってきたという感じです。  発達障害者に対する支援でむずかしいのは、特性の強さ(凸凹の大きさ)と困難性が比例していないという点です。目に見えて特性が強くても、周囲の理解でうまく適応し能力の高い部分が活かされれば、会社にとってなくてはならない人材となることがあります。逆に一見普通にできそうに見えても、本人が特性を理解できておらず過剰適応状態であったり、二次障害の精神疾患が重複したりしていると、どんなに環境を整えても不適応を起こして仕事に支障が出ることがあるでしょう。同じ会社で仕事が続けられるのは、たいへん理想的なことですが、障害者枠で就労してもこのような理由で何度か離転職することは少なくありません。それでも数カ所目かの職場でとてもうまくいくこともありますので、必ずしも同じ会社に勤め続けることにこだわる必要はないと考えています。実際に当事者が二次障害から回復し、経験値を重ねることで客観的に自分のことがわかるようになり、人間関係や仕事がうまくいくようになるのは30代半ばぐらいであることが多いようです。 当事者の現状 キャリアアップのいろいろ  「NPO法人DDAC」(発達障害をもつ大人の会)は、おもに大人になってから発達障害と診断された本人が主体となって活動している当事者団体です。前身となる自助グループが活動を始めた20年以上前からいまに至るまで、当事者の生きづらさはさほど変わっておらず、仕事が続かないこと、家庭や職場の人間関係がうまくいかないことが悩みの中心です。変わったことは、ここ数年で障害者枠で就労している人が参加者の半数以上になっているということで、障害者枠がよいのか、一般枠がよいのかというのも大きなテーマになっています。現状では診断を受けたからといって全員が障害者手帳を取得するわけではなく、手帳を取得した人が必ずしも障害者枠で就労しているわけでもありません。  このような健常者と障害者の狭間にいる人たちにとって、転職がキャリアアップになることがあります。最初はうつや不安障害などの二次障害があって障害者枠での就労を望んでいても、数年経って症状が安定し、自分の特性への理解も進んで自分のできることがわかってくると、最低賃金かつベースアップもほとんどない待遇の場合、モチベーションを保つのがむずかしくなってくることがあります。また、症状が安定し、一人暮らしをしたり結婚をしたり、より充実した人生を歩みたいと思ったとき、現状では障害者枠の就労でも能力に応じてスキルアップやキャリアアップができるという企業ばかりではありません。その場合、もっと待遇のよい障害者枠の仕事に転職することや、得意分野を活かして再度一般枠の仕事にチャレンジすることがキャリアアップの手段になってくるのです。逆に仕事に慣れてもキャパシティオーバーになることを恐れて、「いまの待遇のままでいさせてほしい」、「キャリアアップはしたくない」という当事者も少なくありません。キャリアアップは大きなストレスにもなり得ます。大事なことは一人ひとり違うということ、そして本人のペースを尊重するということです。 「合理的配慮」ですべての人が安心して働ける社会へ  すべての人が安心して働ける社会はどうしたらできるのでしょうか。あらゆる違いや困難を抱えた人が一緒に働ける、多様な人材を活かせる環境を創ることは、これからの社会の課題です。最近では「グレーゾーン」といわれる人が増えています。基準をつくればその狭間にいる人が必ず出てきます。知的障害のグレーゾーンで、発達障害もグレーゾーン、精神疾患もグレーゾーンというような人は、支援も配慮も受けられず、不安定な非正規雇用の仕事を続けることを余儀なくされます。そして失敗し、傷つき、ひきこもる。人手不足が深刻になりつつあるなかで、そんな人たちが増え続けているのです。  「合理的配慮」は障害者だけのものではありません。今後は正社員か非正規社員か、障害者枠の雇用か一般枠の雇用かというような区別をせず、一人ひとりの状況に合った仕事や環境が、必要なすべての人に与えられる世の中にしていかなければなりません。個々の能力や特性、状況に合わせて仕事や環境を整えていく合理的配慮はすべての人に必要なのです。そして、そのノウハウは長年障害者雇用を続け、戦力化してきた現場にこそあるのではないでしょうか。  ところで、合理的配慮は英語で「reasonable accommodation」ですが、「accommodation」は「配慮」ではなく、「調整・変更・和解」という意味です。これまでのやり方に、配慮をして入れてあげるのではなく、違いのある者同士が、合理的な範囲で互いに調整し合い、新しいやり方に変更していく、新しい環境を創り出していくということが本来の「合理的配慮」の意味するところです。そんな合理的配慮でだれもが活き活きと、自分らしく働ける社会ができれば、発達障害がただの「違い」として受け入れられ、障害ではなくなる日が来るかもしれません。 広野ゆい (ひろの ゆい)  NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表。キャリアコンサルタント(国家資格)、公認心理師、ロゴセラピスト。  2002年よりADHDの自助グループを主宰、2008年に「発達障害をもつ大人の会」を設立し、リーダー養成講座、企業・一般向けの研修、講演を年に数十カ所で行う。また2009年から若者サポートステーションで就労困難な若者の支援を、2016年からは「株式会社Art of Life」を立ち上げ、人材活用・メンタルヘルスの企業向け研修プログラムを開発。多様な人材を受け入れ、活用できる組織づくりへのコンサルティングを行っている。  大阪府発達障がい者支援センター連絡協議会委員、大阪府発達障がい児者支援体制整備検討部会委員、兵庫県障害福祉審議会委員。 【P4-9】 職場ルポ 「学び合う」共生を目ざし、だれもが働きやすい職場に ―株式会社共同(熊本県)― 物流にかかわる配送準備や食肉加工などを行う現場では、大小さまざまな改善活動や従業員への細やかな支援で、だれもが働きやすい職場を目ざしている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社共同 〒861-1113  熊本県合志(こうし)市栄3766-24 TEL 096-248-1133 FAX 096-248-5880 Keyword:知的障害、精神障害、物流、食肉加工、障害者職業生活相談員 POINT 1 トップ自ら、共生社会を目ざす職場づくりを経営理念に掲げ続ける 2 全従業員の声を集めた改善活動で、だれもが働きやすい環境に 3 会長・社長も参加する月1回の会議で情報共有と細やかな対応 日々の物流を支える  九州の真ん中、熊本県合志(こうし)市に拠点を持つ物流企業「株式会社共同」(以下、「共同」)は、1971(昭和46)年の設立以来、トラック貨物輸送を中心に物流センターや食肉加工、レストラン事業などを多角的に展開してきた。  同社が組織的に障害者雇用をスタートしたのは2003(平成15)年。きっかけは、1999年から3代目社長を務めていた現会長の山下(やました)敏文(としふみ)さんが、地域で障害者雇用を進める印刷会社や社会福祉法人との夏祭りの共催を機に、障害のある人の働きぶりや、その一方で就労先が少ない状況を知ったことだったという。「物流の現場でも一緒に働けるはず」と、熊本障害者雇用支援センター(※)などと連携して障害のある人を雇用し始め、「共生社会づくり」を経営理念としてきた。  それから20年を経て、全従業員278人のうち障害のある従業員は36人(身体障害2人、知的障害20人、精神障害14人)まで増え、障害者雇用率は17.75%(2022〈令和4〉年6月30日現在)にのぼるという。2016年に「障害者雇用優良事業所厚生労働大臣表彰」を受賞、2018年に経済産業省「地域未来牽引企業」に選定、2020年には「熊本県リーディング企業」に認定されている。  これまでをふり返り山下さんが話す。 「職場では、健常者と呼ばれる人たちと障害のある人たちが学び合いながら、互いにフラットな関係が浸透することで職場風土も変わっていきます。効率一辺倒の時代ではありませんから、多様性を内包できるような組織が強いのだと実感しています」  現社長の山下(やました)海南子(かなこ)さんは、父親である敏文さんから2023年2月に、代表取締役社長を引き継いだばかりだ。大学の法学部を卒業して司法書士を目ざしていたところ、敏文さんと一緒にあるセミナーに参加し、初めて父の会社の障害者雇用の取組みについて知ったという。「こんなにも人とかかわって役に立つ仕事なら、自分も一緒に働きたい」と思った海南子さんは、2005年に共同に入社した。その後はおもに営業職として、取引先開拓や新規事業の提案などにまい進してきた。  続いて、現場で働くみなさんの様子を見学しながら、会社の取組みを教えてもらった。 いてもらわないと困る存在  2009年に開設された松橋(まつばせ)物流センター(熊本県宇城(うき)市)は、南九州に広がる取引先の量販店や外食・通販向けの物流拠点となっていて、取引先の商品管理、ピッキング、配送を一括受託しているのが特徴。ここで働く従業員約60人のうち20人が障害のある従業員だ。  とても広い倉庫の中で、スーパーの各店舗に配送される野菜入りの段ボール箱を車かごに積んでいたのは、中間(なかま)健太(けんた)さん(41歳)。以前は介護職だったが職場になじめず、就労移行支援事業所を経て2016年に入社した。いまの仕事について聞くと「箱を破損させずに積み上げることと、スピードのバランスを取るのがむずかしい」と明かす。完璧さを求めるあまり、一度積み上げたものを最初からやり直すこともあるようだ。  センター長の堤(つつみ)貴裕(たかひろ)さんは、「何より大事なのはミスなく確実に仕分けること。中間さんは自身の課題も自覚しながら真面目に取り組んでいます」とつけ加えた。中間さんも、「何ごともあきらめずスキルアップしていきたいです」と意欲を語ってくれた。  次に向かったのは、平均温度8℃のチルド室。ここでは「ハンディターミナル」と呼ばれる携帯端末を使った店舗向けの仕分け作業が行われていた。端末で商品のバーコードを読み取り、自動的にどの店舗に何箱配るかがわかる仕組みだ。  多くの従業員と一緒にせわしなく仕分け作業をしていたのは、西田(にしだ)夏寿真(かずま)さん(23歳)。以前は農業関連の仕事に就いていたが経営悪化などで続けられなくなり、就労移行支援事業所の紹介で2020年に入社した。初めてのピッキング作業で、当初は商品の箱を落としてしまう失敗もしたという。西田さんは「急ぐと頭が混乱するので、冷静さを心がけています」と話すが、堤さんは「いまはミスもほぼありません。確実に戦力になっていますから、ほかの業務にも挑戦していってほしいですね」とはっぱをかける。  少し離れた場所では、約5年前に導入した、手に装着するタイプの小型機器「ボイスピッキング」が使われていた。これは、バーコードを読み取ることで、そろえる商品の種類や個数などを自動的に音声で知らせてくれるシステムだそうだ。「音声で指示され、両手が空くため作業効率と確実性が上がります」と堤さん。音声を聞き慣れた従業員は、機器からの自動音声を4倍速で流しているそうだ。  ここでテキパキと仕分けを進めていた西村(にしむら)亘平(こうへい)さん(22歳)は、特別支援学校の先生からすすめられ、実習を経て2019年に入社した。ボイスピッキング操作にも慣れ、「いかに効率よく箱を積み入れるかを考えています。かごの中にピタッとはまると小さな達成感もあります」と笑顔を見せる。また「自分は仕事をパッと覚えられるタイプではなく心配性なので、気になることはすぐに聞くのですが、いつもていねいに教えてもらえるので安心です」と話してくれた。堤さんも「若いだけにデジタル機器への苦手意識がなく、今後の成長も楽しみです」と期待する。  あらためて、松橋物流センター全体で3分の1を占める障害のある従業員について、堤さんはこう話す。  「障害のある20人の従業員は、現場にいてもらわないと困る存在です。ただ、人によって『できること、できないこと』はあります。苦手な部分はあっても、どれだけ長所を伸ばして活かしてあげられるかが大事だと思っています」  例えば、数の計算は苦手でも力仕事に自信がある人と、体力は不安だが検品作業が得意な人が補い合えるようペアを組んでもらうといった具合だ。能力や相性を見きわめるためにも、日ごろから従業員一人ひとりと雑談を含めた会話を心がけているという。堤さんが続ける。  「口数の少ない従業員もいますが、調子が悪いときや悩みがありそうなときは、決まっていつもと違う動きをするので、声をかけると『じつは…』と話してくれます。解決できることはしますし、本人にも非があるときはきちんと納得してもらうよう説明しています」 「見える化」と改善活動  松橋物流センターは、数多くの取引先向けに多種多様な商品を扱う現場ゆえに、作業も複雑になりがちだ。従業員の負担を少しでも軽くし業務を円滑に進められるような改善活動にも積極的だという。主任を務める岡田(おかだ)裕介(ゆうすけ)さんが説明する。  「日ごろから社員やパート従業員からのちょっとした声を集め、作業の段取りやレイアウトなどを変えています。みなさんの協力なしに進められません」  最近も従業員からの提案で、飲料水など重量のある在庫商品を出荷のたびに移動させる負担と無駄を省くため、それらの保管場所を、出荷エリアにつくった鉄骨製の大きな棚に移したそうだ。  物流現場での工夫について、センター長の堤さんも「特に力を入れているのは、だれもがわかりやすい現場の『見える化』です」と説明する。例えば仕分け先のかごには、店舗名とともに黄色や赤色のテープが貼られていて、文字よりはるかに見分けがつきやすい。ほかにも毎日、出荷の時間帯になると多数のかごが並び立つエリアでは、作業に使う備品の箱にすべて大きな文字で中身が表示されている。繁忙期にどこからだれが応援に来てもわかりやすいようにしているそうだ。 食肉加工で「正社員を目ざす」  共同は2012年、食肉加工を手がける熊本ミートセンター(熊本県菊池市)を開設した。取引先から搬入された枝肉のカット(1次加工)から、精肉やハンバーグの製造(2次加工)、ハム・ソーセージなど加熱処理商品の製造(3次加工)まで行うワンストップサービス事業を支えている。ここでは障害のある従業員7人が働いている。  1次加工の現場では、大きな枝肉が手作業で部位ごとにカットされ、ビニール袋に入れられる。さらに真空包装をする機械に通すが、真空もれや金属などの異物混入があると、この機械が反応してエラー音が鳴る仕組みだ。  ここで大きな塊(かたまり)の肉が入った袋を手ぎわよく並べて機械を操作していたのは、熊本ミートセンター原料課に所属する入社12年目の村岡(むらおか)政彦(まさひこ)さん(29歳)。「機械でエラーが出たときは、異物の混入などを一つひとつ確認します。それでも原因がわからないときはすぐに上司に報告します」と説明してくれた。最近は精肉加工も担当するが、肉の繊維に合わせてスライサーの方向を調整するのに苦労したという。  「いまは毎日の作業にやりがいを感じます。職場で『次は脱骨作業も挑戦してみたら』とすすめられますが、まだ勇気がありません」と明かす村岡さん。これに対し、品質管理の主任を務める白石(しらいし)一夢(はじめ)さんは、「村岡さんは、新入社員や実習生たちへの指導がうまく、やさしくていねいに教えてくれています。計算も得意で、しっかり仕事をこなすので、スキルアップを目ざしてほしい」と激励していた。  次に見せてもらったのは2次加工の現場だ。ミンチ用の機械の組立てや操作、精肉用に細かく整えるカット作業は、専門的な技術が求められる。  ここのテーブルの上で肉を切り揃えていたのは、熊本ミートセンター加工課所属で入社12年目の内田(うちだ)麗王(れお)さん(29歳)。最初は加工補助を担当していたが、5年ほど前に、「自分も包丁を扱う作業をしてみたい」と手をあげたそうだ。「ハムをつくるための肉処理作業に苦労しています。分割して脂身をそぎ落とし、筋引きをするのがむずかしい」と話す一方で、「仕事に自信も出てきたので、正社員を目ざしています」と明かしてくれた。  ちなみに障害のある従業員はパート従業員と同じ時給制で、年1回の評価制度によって昇給していく。正社員への道も開かれており、過去に1人実現している。  内田さんは、先輩社員とペアで作業をし、指導を受けながら、ソーセージの腸詰め作業にも挑戦するなど着々とスキルアップを重ねている。白石さんも「2次加工は商品に合わせた仕様が複雑ですが、彼は注意点などをメモにまとめるなど向上心が高いですよ」と評価する。内田さんのメモを見せてもらったところ、驚くほど細かく書かれていた。 注意力が必要な金属探知機  2012年に開設された菊池ロジスティックセンター(熊本県菊池市)では、40社超の取引先や併設のミートセンターから出荷される商品の管理・発送を行っている。ここでは障害のある従業員6人が働いている。  現場の大きな冷蔵室を見学した。一角では、ミートセンターの加工商品を一つひとつ金属探知機にかける作業が行われていた。パート従業員の女性と一緒に次々とソーセージの真空パック商品を流していたのは、入社16年目になる荒木(あらき)優介(ゆうすけ)さん(36歳)。当初は発送準備をしていたが、5年ほど前から金属探知機の担当になった。探知機の反応だけでなく、自ら目で確かめて異物混入や真空もれ、ラベリングのミスを見つけ出す。  「繁忙期は扱う数がとても多いので、注意力と体力が必要です」と説明する荒木さんは、じつは昨年、勤務中にてんかん発作で倒れてしまったそうだ。「10年ぶりの発症でした。薬を飲みながら無理をしないよう健康第一で続けていきたい」と話す荒木さん。いまは職場でヘルメットを着用しているほか、車を運転して通勤していたのを家族の送迎に切り替えた。  「荒木さんは、ミスなどを見つけるのがとてもうまいので助かります」と話すのは、菊池事業部部長補佐を務める吉川(きっかわ)諒哉(りょうや)さん。  「現場では、障害のある人とない人がペアになるようシフトを編成します。いろいろな人と組むことになりますが、業務によっては得意、苦手という場合もあるので、互いに補い合えるよう配慮します」  さらに心がけているのは「配慮とわがままを見分けること」だという。相談や質問があるときは自分から来てもらい、「この作業はむずかしいからできない」といわれても、すぐに変えるのではなく、何がむずかしいのか、どこを工夫したらできそうなのかを一緒に考える。  「働くからには成長してほしいので、安易に妥協してほしくありません。スキルアップや多能工化の可能性を少しでも広げていきたいですね」  職場全体でも、以前は配送荷物をピッキングするだけだったが、商品へのラベル貼り、ギフト箱へのセットアップなどの流通加工作業へと拡大してきた。  一方で繁忙期には、地域の福祉作業所など3カ所と連携して、ゼリー商品の包装や箱折りなどの業務を委託している。「忙しくない時期にも少しずつ依頼して練習を重ねてもらい、繁忙期には3カ所で力を合わせて作業してもらっています」という吉川さんは、福祉作業所にかかわる印象的な思い出も話してくれた。  「高校時代、通学電車で知的障害のある人をよく見かけていて、どこに通っているのかなと思っていました。すると入社後、その本人が福祉作業所から応援で職場に来ていて、ものすごく作業ができる姿に衝撃を受けました。そのとき『障害があるからといって仕事ができないと思ってはいけない』と実感したのです」  ちなみに吉川さんは入社1年目のときに、障害のある先輩従業員から冷凍品のピッキング作業などの仕事を教わったそうだ。 月1回の会議で全員分の情報共有  共同が障害者雇用を始めた当初からずっと続けているのが、月1回の職場定着推進委員会だ。会長をはじめ社長、各部署の所属長、就労移行支援事業所が参加する。ちなみに共同には現在、障害者職業生活相談員の資格を持った社員14人が各部署にいる。  吉川さんによると「毎回、全員分の報告書を出しますが、仕事面だけでなくプライベート面で気になったささいなことも書いていますので、『特になし』はありません」とのこと。最近も、職場で毎日4本ぐらい甘い缶コーヒーを買って飲む従業員がいたが、会社として注意をうながすことにしたそうだ。「本人は『さすがに会社からいわれたのなら』と襟(えり)を正し、購入本数が減っています」と吉川さん。  「特に会長は、全従業員のことを入社時から把握してくれているので、的確なアドバイスをもらえます。会議で直接相談できるのが何よりありがたいですね」  社長の海南子さんも「毎回欠かさず一人ひとりの状況を確認できることは何より安心できますし、それぞれ成長に向けて挑戦していることもわかります。場合によって産業医や指導員などからの助言もいただき、みんなで情報や思いを共有しています」 自然に交じり合う職場は「宝」  海南子さんは最近、共同が取り組んできた障害者雇用を再認識する機会があった。それは、同業他社を訪れて先駆的な管理体制などを学んだ際、その会社の社長から「効率を追求しているが、現場の雰囲気が少しギスギスしている。部下には『社員は機械じゃないのだから』と伝えている」と率直に明かされたことだという。  「私たちの会社では、そういう問題は起きていませんし、生産性も落ちていません。じゃあ何が違うのかと考えたら、障害のある従業員が多く、しかも一緒に働いていることだと気づきました。環境整備や配慮、理解も進み、全員の心理的な働きやすさも広がっているように思います。最近は、共生社会を目ざす会社の方針に共感して、入社してくる若い世代が増えていることも心強いですね」  海南子さんは、会長の敏文さんがこれまで社内で、「障害のある人も一緒に働くことで交流が生まれ、互いに学び合うことが大事だ」と伝え続けてきたことの影響の大きさをふり返る。  「さまざまな部署で、ごく自然に交じり合ってあたり前のように接している職場は、本当に私たちの会社の宝だなと感じています。そしてこれからも絶対に引き継がなければならないと肝に銘じています」 ※熊本障害者雇用支援センター:就職が特に困難な障害者の雇用の促進を図るために、県知事が指定する民法法人が運営していたが、現在は廃止されている 写真のキャプション 松橋物流センター 株式会社共同の会長を務める山下敏文さん 代表取締役社長の山下海南子さん 松橋物流センターで働く中間健太さん 野菜の仕分け作業を行う中間さん 松橋物流センターセンター長の堤貴裕さん 松橋物流センターで働く西田夏寿真さん ハンディターミナルで商品のバーコードを読み取る西田さん チルド室では、多くの従業員が仕分け作業を行っていた 松橋物流センターで働く西村亘平さん 西村さんはボイスピッキングでの仕分けを担当している 松橋物流センター主任の岡田裕介さん 熊本ミートセンター 熊本ミートセンター原料課で働く村岡政彦さん 真空包装機に袋詰めされた肉を並べる村岡さん 熊本ミートセンター品質管理主任の白石一夢さん 熊本ミートセンター加工課で働く内田麗王さん 内田さんは、肉の2次加工を担当している 菊池ロジスティックセンターで働く荒木優介さん 出荷する商品の異物チェックを行う荒木さん 菊池ロジスティックセンター 菊池事業部部長補佐の吉川諒哉さん 山下敏文さん(左)と山下海南子さん(右) 【P10-11】 クローズアップ 障害者雇用担当者のモチベーションアップ 第1回 〜悩みを聞いてもらうことの重要性〜  障害のある人の雇用と定着のために重要な役割を果たすのが、各職場で障害者雇用にかかわる担当者の方々。この連載では、初めて担当する方から専門的なキャリアのある方まで、担当者のみなさんがスムーズに業務を行えるよう、モチベーション維持とアップの方法について、ヒントを探っていきます。 【取材先プロフィール】 障害者就業・生活支援センター TALANTセンター長、特定非営利活動法人わかくさ福祉会理事長、精神保健福祉士 野路(のじ)和之(かずゆき)さん 障害者就業・生活支援センターTALANT (東京都八王子市)  精神障害者家族会「特定非営利活動法人わかくさの会」を前身とする「特定非営利活動法人わかくさ福祉会」が、厚生労働省と東京都から委託を受けて2008(平成20)年に開設。  企業と利用者の間に立って、障害のある人が安心して働き続けられるよう、おもに精神障害や発達障害、知的障害のある人への就業支援、就職前・就職後のサポートを実施している。  連載第1回は、企業の障害者雇用担当者と接することが多い「障害者就業・生活支援センターTALANT(タラント)」センター長の野路(のじ)和之(かずゆき)さんに、企業の障害者雇用担当者は、日ごろ、どのように業務にかかわり、また、どのようなことに負担を感じているのか、お話をうかがいました。 多様な業務をになう障害者雇用担当者  企業内の障害者雇用の推進において、重要な役割を果たすのが障害者雇用担当者です。障害者雇用に関連する業務には、一般的な人事総務の業務に加えて、障害のある社員一人ひとりに対する目配りや対応、さらに多方面からのさまざまな意見や要望の調整、予期せぬ問題への対応など、その範囲は多岐にわたります。  「障害者雇用担当者の多くは、『人の役に立ちたい』という、強い思いや志を持って仕事に取り組んでいます。しかし一方で、自分が実現したい『理想』と、社内での制度や現状といった『現実』との違いに、葛藤を抱える人も多いように感じます」と、野路さんは話します。  障害者雇用担当者がたずさわる重要な業務の一つに、障害のある社員の配属先の上司や同僚との意見調整があります。経営層から障害者雇用促進の方向性を示されても、配属部署や現場において、障害者雇用に対する理解が思ったように得られず、孤立感を抱くという担当者も珍しくありません。  「また、一般企業では、障害者雇用担当者がほかの業務と兼務しているケースが多く見られます。しかし、障害者雇用の業務では突発的な状況に、頻繁に対応しなければならないことも多いため、ほかの業務との両立は困難な場合があります。とくに、総務や人事担当の方は社内調整も必要ですし、ましてや現場で担当となっている方は、通常業務と雇用支援業務といった、心理的にも異なるベクトルの仕事を並行しているので、負担は大きく、余裕を失ってしまうこともあります。  さらに、2026年の7月までに、障害者雇用率が段階的に0.4%引き上げられること(※1)、2024年度から、就労困難な層といわれる週10〜20時間未満の短時間労働者(※2)が障害者雇用率の算定に含められることが決まっています。そのため、経営層は担当者任せにせず、担当者の人的強化と研修、また企業全体で取り組む姿勢や工夫が求められていきます」と野路さんはいいます。 自立のために伴走することが障害者雇用担当者の役割  それでは、障害者雇用担当者は、自身のモチベーションを維持するために、どのような姿勢で業務に取り組んだらよいでしょうか。野路さんは話します。  「担当者の業務の一つに、障害のある社員への支援があります。その目的は、障害者雇用促進法の第4条にあるように『障害のある労働者が職業人として自立する』ことをサポートすることです。担当者は、障害のある人の成長に寄り添い、伴走し、職場全体で自然なサポートが行われるようになること、最終的には特別な支援が必要ではなくなる状態を目ざします。しかし、熱心なあまり、転ばぬ先の支援≠ノなりすぎたり、担当者自身が疲弊してしまうケースもあります。  そのような場合には、支援の目的に立ち戻り、上司や周囲の社員、できれば外部の支援機関なども含めて、支援の方法を見直す必要もあるでしょう」 悩みをいえる場を整え一人で抱え込ませない  障害者雇用担当者が日々の業務でストレスを感じていても、それを話せる場がない場合、ストレスを増大させる原因になってしまいます。その対策の場について、野路さんが説明します。  「職場の上司や同僚に対してはもちろん、私どものような第三者の立場にある支援機関に対しても、自身の不安や不満はいいにくいと感じている担当者が多いと思います。担当者が悩みを抱え込むことのないように、一部の企業では、外部の『カウンセリングルーム』や『メンタルヘルスのクリニック』などを活用して、積極的に障害者雇用担当者のメンタル支援に取り組んでいる事例もあります。守秘義務が遵守され、人に相談しにくい悩みも安心して相談できる環境があることは、孤立しがちな担当者にとって心強いサポートとなるでしょう」  また、近年、障害者雇用の現場では、障害のある人同士の「ピアサポート(同じような立場の人による支え合い)」の重要性に注目が集まっています。それと同様に、障害者雇用の担当者同士が企業の枠を超えて連携し合い、情報交換をするピアサポートの仕組みの必要性も高まっている、と野路さんは話します。  「さらに障害者雇用が進むなかで、私たちTALANTでも、勉強会や交流会などを通じて、担当者同士のピアサポートを促進する機会を、これまで以上に積極的に創出したいと考えています」 モチベーションを保ててこそ質の高い雇用が提供できる  障害者雇用は人の未来≠ノたずさわる重要な仕事であり、障害者雇用にかかわる方はそれをモチベーションにあげる方も多いようです。就労が困難な状況にあった人が適切な支援を受けることで職場に定着し、「いろいろとたいへんなこともありましたが、支援してきた障害のある社員が成長して業務をこなせるようになりました。活躍する姿を見ることができてうれしい」といった企業の障害者雇用担当者の声を、TALANTのみなさんも聞かれるそうです。  「2022年の障害者雇用促進法の改正で、雇用の質≠フ向上が事業主の責務となりました。そのためには障害者雇用担当者が安心して業務を行い、健全なメンタルでモチベーションを保ててこそ、質の高い雇用が提供できるのではないでしょうか」と、野路さんは語ってくれました。 ※1 2023年度は2.3%で据え置き、2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7% ※2 週所定労働時間10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 ご活用ください! 地域障害者職業センターの支援  当機構(JEED)の地域障害者職業センターでは、障害者雇用担当者間の交流の機会として、「事業主支援ワークショップ」をはじめ、さまざまな支援を行っています。詳しくはホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer01.html 取材先では… 障害者就業・生活支援センターTALANTの取組み例 1.「支援スタッフ」へのメンタル支援  近隣のカウンセリングセンター『カウンセリングルームたま』(日野市)と提携し、「支援スタッフ」を対象にしたメンタル支援を実施。1回500円の自己負担金(法人の負担は5000円)で、臨床心理士のカウンセリングを受けられる制度を導入している。運営法人である「特定非営利活動法人わかくさ福祉会」の職員も含めると、10%ほどの支援スタッフに利用実績があり、その必要性と有効性が感じられている。 2.障害者雇用担当者交流会  障害者就業・生活支援センターが開催している障害者雇用担当者の交流会はいろいろあるが、TALANTでも、「障害者雇用の事例の紹介」や「支援機関の利用の仕方」の勉強会、グループワークを通じた「他社の担当者との情報交換」などを行っている。会場への来場のほかに、Zoomを使ってオンラインで参加することも可能。 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 “事例で見る”“動画で見る”『障害のある方への合理的配慮の提供』 ホームページで検索できます! ホームページ「障害者雇用事例リファレンスサービス」 紹介ページはこちら JEED リファレンス 検索  2016(平成28)年4月から、事業主には、障害者の募集・採用時および採用後に、障害の特性や本人の希望・ニーズに応じて個別に配慮する『合理的配慮の提供』が義務づけられています。  しかし、「どのような配慮をすればよいのかわからない」という事業主の方や、「企業から相談されたが、どのような支援を行えばよいか迷う」という支援機関の方もいらっしゃるのではないでしょうか。  当機構(JEED)が運営するホームページ「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、実際に『合理的配慮の提供』を行っている企業の事例(合理的配慮事例)を紹介しています。また、そのほかにも、さまざまな創意工夫を行い障害者雇用に積極的に取り組んでいる企業の事例(モデル事例)を掲載しています。  今後も、企業や支援機関のみなさまに役立つ事例を掲載していきますので、ぜひご利用ください。 業種や従業員規模、障害の種類などの条件を設定して事例を検索することができます。 拡大 合理的配慮事例を検索する場合は、こちらのチェック欄を選択してください。 参考例 <利用者アンケートから> ・「募集・採用、定着までの経緯を知ることができた」 ・「障害者の担当業務を写真で知ることができた」 「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、よりよいサービスの提供のため、みなさまのご意見等をおうかがいしています。 ホームページからアンケートへのご協力をお願いいたします。 ホームページでご覧ください! 動画「みんな輝く職場へ〜事例から学ぶ 合理的配慮の提供〜」 紹介ページはこちら JEED みんな輝く 検索  「合理的配慮とは何か」、「どのように取り組めばよいか」と疑問をお持ちの事業主の方にもわかりやすく、『合理的配慮の提供』に関するポイントの解説などを紹介しています。  JEEDホームページでご覧いただくことができるほか、関連するDVDの無料貸出しも行っていますので、ぜひご活用ください。 【視覚障害】就労支援機器の活用 【精神障害】社内相談支援体制の整備 【発達障害】企業在籍型ジョブコーチの活用 障害別に取組みのポイントを専門家がわかりやすく解説しています。 ◆上記動画の内容およびDVD貸出し、「障害者雇用事例リファレンスサービス」に関するお問合せ 障害者雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 FAX:043-297-9547 中央障害者雇用情報センターにおける合理的配慮の相談  中央障害者雇用情報センターでは企業の規模・業種の特性に応じた雇用管理や『合理的配慮の提供』などに関する相談・援助を行っています。  また、就労支援機器の有効活用に関する情報提供、相談、機器の無料貸出しを行っています。 例えば… ・就業規則に対する障害特性をふまえた助言 ・募集時、採用後の合理的配慮に関する相談 ・障害特性に応じた就労支援機器活用の助言 など まずは中央障害者雇用情報センターにお問い合わせください。 TEL:03-5638-2792 E-mail:syougai-soudan@jeed.go.jp 紹介ページはこちら 2023(令和5)年度 就業支援課題別セミナーのご案内 受講料 無料  当機構(JEED)では、労働、福祉、医療、教育などの分野で障害のある方の就業支援を担当している方を対象として、新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上を図るための「就業支援課題別セミナー」を実施しています。  令和5年度のテーマは、「精神障害者の短時間就労について 〜週所定労働時間10時間から20時間未満の労働者の雇用に向けて〜」です。  みなさまの受講を心よりお待ちしています。 内容  精神障害のある短時間労働者の実雇用率の算定に関しては、短時間労働者を1カウントとする特例措置が設けられています。また、法改正にともない令和6年4月から週所定労働時間10時間〜20時間未満の労働者を雇用率の算定対象とすることとなり、近年その動向が注目されています。そこで、本セミナーでは次の内容について取り扱います。 ■「障害者の週20時間未満の短時間雇用に係る調査研究」について ■就労支援機関および医療機関における精神障害者の短時間就労に関する支援について ■精神障害者の短時間就労に関する雇用管理の実際 対象者 労働、福祉、医療、教育などの関係機関において就業支援を担当する方 日程 令和5年12月6日(水) 開催方法 オンライン形式による開催を予定しています。 定員 50名 お申込み ◎受講申込書・カリキュラム:JEEDホームページからダウンロードできます(9月に掲載予定です)。 ◎申込方法:「就業支援課題別セミナー受講申込書」に必要事項を記入し、申込受付期間内にメール(stgrp@jeed.go.jp)でお申し込みください。 ◎申込受付期間:令和5年9月27日(水)〜11月1日(水) ◎受講決定の通知:申込受付期間終了後、受講の可否についてメールにて通知します。 就業支援課題別セミナー 検索 URL:https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/kadaibetsu.html ◎お問合せ先 職業リハビリテーション部 人材育成企画課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 【P15-18】 グラビア 老舗旅館を支える 合資会社親湯温泉 創業大正十五年 蓼科 親湯温泉(長野県) 取材先データ 合資会社親湯(しんゆ)温泉 創業大正十五年 蓼科(たてしな) 親湯温泉 〒391-0301 長野県茅野(ちの)市北山蓼科高原4035 TEL 0266-67-2020 FAX 0266-67-3348 写真・文:官野貴  長野県茅野(ちの)市にある「合資会社親湯(しんゆ)温泉」が経営する「創業大正十五年蓼科(たてしな)親湯温泉」は、1926(大正15)年創業の歴史ある温泉旅館だ。以前は慢性的な人手不足に悩んでいたが、いまは、知的障害や精神障害のある社員4人が客室や共用部の清掃業務などで活躍し、老舗旅館を支えている。  客室の清掃やベッドメイキングなどを担当する北澤(きたざわ)慎介(しんすけ)さん(36歳)は、入社19年目のベテラン。かぎられた時間のなかで、忘れ物のチェック、ごみの回収、グラスなどの交換、掃除機がけと、スピーディーに作業を進めていく。北澤さんは「ほかのスタッフの邪魔にならないように、周りの動きをよく見て仕事を進めます」という。  客室清掃で肝となるのが「ベッドメイキング」だ。手際よく寝具を整え、しわひとつないベッドに仕上げる。北澤さんに仕事のやりがいをたずねると、「できる仕事が増えていろいろな仕事を覚えることができるから、嫌になりません」と教えてくれた。  蓼科ゆかりの文人らの書籍をはじめとする約3万冊の蔵書が並ぶラウンジで、モップがけをしていたのは、入社6年目の原(はら)明秀(あきひで)さん(48歳)。このラウンジは旅館の顔ともいえる場所であり、ていねいに磨きあげられた床は光り輝いていた。  原さんは、共用部の清掃以外にも、シーツやタオル、館内着などのリネン類の回収も担当している。「リネン回収では、タオルや衣類などをきちんと種類ごとに仕分け、回収用の袋に入れます。作業の時間配分を考え、自分のペースをつくるように気をつけています」と話す。  原さんは旅館で働きたいとの思いがあり、その念願がかなった職場だ。体調に不安がある日は、体調に合わせて勤務時間を短縮するなどの配慮を受けており、「とても働きやすい職場です」と話してくれた。 写真のキャプション 創業大正十五年 蓼科 親湯温泉 北澤慎介さん(左)、原明秀さん(右) 朝礼の一コマ。担当する部屋番号、連絡事項のメモをとる北澤さんと原さん スピーディーな動きで部屋のすみずみまで掃除機をかける北澤さん お客さまの忘れ物がないか、しっかりとチェック ベッドメイキング。シーツをピンと張り、しわを取り除く 布団からシーツやカバーを外す原さん 館内着やパジャマ、タオルなど種類ごとにカートに積み込む リネンをカートで運ぶ。館内は広く、ルート選びも重要 リネンを回収用の袋に詰め、保管場所に積む ラウンジやロビーの床にモップをかける 原さんの好きな作業の一つが「食器洗浄」。スピード感を大事にしているという 【P19】 エッセイ 最終回 ろう者である想い 〜今後の希望と開拓〜 忍足亜希子 忍足亜希子(おしだり あきこ)  俳優。1970(昭和45)年生まれ。北海道千歳市出身。銀行勤務を経て、1999(平成11)年、映画『アイ・ラヴ・ユー』で日本最初のろう者主演女優としてデビュー。同作で毎日映画コンクール「スポニチグランプリ新人賞」を受賞。以後、俳優業以外にも講演会や手話教室開催など、多方面で活躍中。  2021(令和3)年には、夫で俳優の三浦剛との共著『我が家は今日もにぎやかです』(アプリスタイル刊)を出版。  私は今後、どのように生きたいのか。未来のことはよくわかりません。  私は明日のことを考えるのではなく「いま」を大事にして、「いま」どのようにしたいか考えながら生きたいタイプです。もちろん、「いま」を生きながら未来をどのようにして楽しみたいかも考えてはいます。ただ、自分の人生は残り半分、何歳まで生きられるのかはわからないから、「いま」をわくわくしながら楽しみたいです。人生は一度きり、後悔しないように自分の命を大切に有意義に過ごしていきたいです。  最近、日本映画やアニメ、コマーシャルにも字幕がつくようになり、日本語を学ぶ外国の方、ろう者、耳が聞こえにくくなった方などが、目で見て楽しめるようになってきました。交通機関では、電光掲示板で運行状況などの情報を知ることができるようになりました。そして、聞こえる方との電話での会話も、手話通訳オペレーターが文字や音声を通訳してテレビ電話で即時に双方向につながることができる「電話リレーサービス」として普及してきています。  しかし、マイノリティ(社会的少数者)が抱えている社会問題、生きづらさ、不便さを感じることは、まだまだたくさんあります。さまざまな福祉サービスやユニバーサルデザインなどの普及により、少しずつ、だれもが利用しやすく暮らしやすい社会になっていますが、まだそれらを知らない人も少なくありません。だから、自分に必要なこと、必要なものは、きちんと「必要だ」と伝えよう。そうすれば、社会は少しずつ変えられるはずです。さまざまな人々が分け隔てなく暮らしていけることは、自分のためでもあるし、みんなのためでもあるのです。  来日する外国人観光客には外国語、ろう者には手話。コミュニケーション手段ですぐ対応できるように配慮することは必要だと思います。困っている人がいたら、知らないふりをせず、やさしく手を差し伸べよう。ひとりの人間として差別や偏見のない、だれも取り残さない、みんなで協力し合い、支え合い、共存できる社会に変えたいですね。そして、コミュニケーションに関しても、どんな場所でも臨機応変に対応できるようにしていきたいです。  社会では、人とのコミュニケーションにおいて、その方法が「人と違うから」と色眼鏡で見るのではなく、違っていても尊重することを大切にし、お互い歩み寄っていく。社会に出て働くようになるのはみんな一緒なのだから、同じ職場にいてもなじめずに、生きづらいと感じていると悲しくなってしまいます。だって、みんな一緒に楽しく仕事がしたい、会話を楽しみたいのです。  孤独にさせない、だれも取り残されない環境をつくることは、仕事を通じ、さまざまな個性を持っている方が、自分の好きなこと、やりたいことを心から楽しめるようにするために、とても重要なことだと思います。また、社会で生活するうえで、働く意識を持ち、楽しく過ごせる場をつくることはとても大事なことです。  「個性の尊重」とは、一人ひとりをかけがえのない存在として大切にするということで、相手を敬うこと、自分も相手も尊重する心の姿勢が大切だと思います。だれにでもやさしい社会、平等に暮らしやすい社会、そして、生きづらさや不便さを減らすために、工夫しながら少しずつ、生活しやすい環境をみんなで考え、お互いに協力し合ったり支え合ったりしながら、ともに生きていくことが大切です。  ひとりの人間として、俳優の仕事を通して自分の得意分野で仕事ができる喜びを感じながら、新たな出会いに感謝し、芸能界を少しずつ変えて開拓していこうと思っています。ろう者も聴者も一緒に仕事ができるように、ろう者の俳優がたくさん活躍できる場をもっと広げていきたい。また、ろうの子どもたちが自分が持っている可能性を見出し、夢や希望を実現するお手伝いをしたい。そして、だれもが過ごしやすい共生社会にしたいです。  そのためにも、俳優の仕事を通して、いろいろな場で、たくさん発信していこうと思います。 【P20-25】 編集委員が行く 就労支援機関との連携を基にした企業の行う定着支援 株式会社スタックス、株式会社湘南ゼミナールオーシャン 宮崎台事業所(神奈川県) 常磐大学 准教授 若林 功 取材先データ 株式会社スタックス 〒211-0011 神奈川県川崎市中原区下沼部(しもぬまべ)1750 TEL 044-433-1611(代) FAX 044-433-2218 株式会社湘南ゼミナールオーシャン宮崎台事業所 〒216-0033 神奈川県川崎市宮前区宮崎2-10-9オーミヤ宮崎台ビル301 TEL 044-873-8005 FAX 044-866-0881 編集委員から  今回の本コーナーのテーマは、「企業と就労支援機関との連携」とした。障害者雇用管理のノウハウのある企業において、どのように定着支援、雇用管理の工夫が行われているかが、好事例として示されることが多い。しかし、そのようなノウハウの導入や実施が、就労支援機関などの連携とどのように関係しているのか必ずしも示されているとはかぎらない。そこで、障害者を雇用する企業が行っている優れた定着支援の取組みを紹介するとともに、どのように、就労支援機関との連携によりそれらの取組みが始まり行われているのかについて、見ていくこととしたい。 Keyword:短時間雇用、セルフケア、就労支援機関、連携、定着支援、中小企業、特例子会社 写真:官野貴 POINT 1 就労支援機関や地域の団体との出会い・つながり 2 勤務時間の延長や支援ツールの導入・実行をするうえでの就労支援機関との連携 3 障害のある従業員の意識や気持ちを、会社としてきちんと把握する 株式会社スタックスを訪問して  今回は、神奈川県川崎市にある二つの企業について取りあげた。川崎市は障害者雇用に関して、例えば、「K−STEP(川崎就労定着プログラム)」という、セルフケアを実践しながら就労定着を図るためのプログラムの手法の普及を図っているなど、先進的な取組みが行われていることで知られている。  まず株式会社スタックス(以下、「スタックス」)を訪問した。私は、2022(令和4)年11月に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)障害者職業総合センター主催の「第30回職業リハビリテーション研究・実践発表会」で、パネルディスカッション「『同僚』のちょっとした理解とサポートが力になる 〜障害のある従業員が働きやすい職場づくりについて〜」(※1)に、今回訪問したスタックスの代表取締役社長の星野(ほしの)佳史(よしふみ)さんと一緒に登壇した。そのご縁をきっかけとして、今回、訪問をさせていただいたのである。  スタックスは障害者雇用の取組みについて、先述のパネルディスカッションやインターネットなどの媒体に何度か登場されているが、まずは会社の基本的情報を紹介したい。 ・事業内容としては製造業(精密板金業)であり、人工衛星やロケットなどの部品や医療機器筐体(きょうたい)どの製造を行っている。 ・今回訪問した川崎本社のほか、国内2カ所に拠点があり、従業員数は54人。うち3人の障害のある従業員を川崎本社にて雇用している。障害種別は、知的障害、精神障害、身体障害(高次脳機能障害もある)である(2023年6月現在)。 ・前社長(現会長)の「社会貢献をしたい」という思いから、障害者雇用の取組みが始まった。 ・現在雇用されている障害のある従業員のうち2人は、当初週10時間程度の短時間雇用から始まり、現在は各従業員の状況により勤務時間の延長がなされている。 ・障害のある従業員が従事している業務は、部品の検査や組立てなどである。 ・もともとは、仕事を「緊急性」、「重要性」の2軸でとらえて、「緊急ではないものの重要」という仕事を切り出して障害のある従業員に担当してもらっていた。その後、雇用している障害のある従業員の業務の幅はさらに増えている。  以上のような情報を把握していたものの、 ・どのように障害者雇用が始まり、さらには雇用管理のノウハウが入っていったのか ・短時間雇用から始めたとのことだが、どのように勤務時間を延ばしていったのか  ということについて把握したいと考え取材に臨んだ。 訪問してわかったこと  会社を訪問し、まずは星野さんからお話をうかがった。お話ではさまざまな内容に触れていただいたが、ここでは特に筆者が要点だと感じた二つのことについて記したい。 @障害者雇用を開始・進めるうえでの「人」との出会い  障害者雇用のきっかけは、前述の通り前社長の思いからとのことではあったが、具体的にはどのようなものだったのか。一つのきっかけはスタックスも加入している「神奈川県中小企業家同友会川崎支部」だった。この中小企業家同友会の講演で、川崎市にあり障害者雇用の分野で有名な、日本理化学工業株式会社(※2)の元会長の大山(おおやま)泰弘(やすひろ)さんのお話を前社長が聞いたことである。もう一つのきっかけは、別の地域団体である「一般社団法人川崎中原工場協会」で、前社長が就労移行支援事業所を経営する経営者と出会い、意気投合したことだった。なお、こちらの就労移行支援事業所から、1人目の障害のある従業員の方(現在も継続して勤務中)を採用した。  また、そのようなことがきっかけで、地域の障害者雇用に関する会合で事例の発表を行うことになり、そこから川崎市や障害者地域就労援助センターとの出会いもあり、精神障害や高次脳機能障害のある人の短時間雇用を開始することにつながっていった。  このようなお話を聞き、「人」との出会いや、その流れに沿って行動を起こすことの重要性、さらにはそのようなことが起こるタイミングの絶妙さを感じた。 A勤務時間延長を図るうえでの自己決定や支援機関との連携の重要性  短時間勤務から始め、その後勤務時間延長につながった従業員の方2人の状況についてもお話をうかがえた。  この2人については対照的であったとのこと。1人は当初1日2時間の勤務であったが、入社後2〜3カ月ほどで能力が高いことがわかってきたため、会社としては「もっと働いてほしい」と考え、勤務時間の延長を提案した。しかし、本人はなかなか自信が持てず、「夏場などの季節を乗り越えられるか自分でも確認したいので、それまで待ってほしい」という慎重な返事であった。本人の気持ちに合わせて、最終的には入社から1年後に延長を行ったとのことであった。なお、このような勤務時間延長を進めるにあたって、本人が利用していた就労支援機関とも相談するなど連携を図ったとのことであった。  もう1人の方も1日2時間から開始したが、入社当初から本人は「すぐにでも時間を延ばしてほしい」と希望していた。しかし、会社側から見るとまだ仕事のできる幅が十分ではなく、延長することができなかった。そうしたなかで本人に会社への不信感が芽生えることがあったが、会社と就労支援機関とで歩調(意見)を合わせて本人と接することで、「会社もセンターも同じことをいっているんだ」と納得するようになった。そして業務の幅も拡がり、現在は1日4時間以上まで延びているとのことであった。  このように勤務時間を延長して、より安定的な収入や社会保険などの保障につながったほうが望ましいのはたしかだが、そこには本人の気持ち(自分の状況についての認識や自信)や、会社側の見立て、さらには支援機関との連携も重要であることがうかがえた。 障害のある従業員の方からのお話と作業場訪問  障害のある従業員の方からお話をうかがうことができた。Aさん(20代)は、「いまは、検査補助や両面テープを使った組立てを行っています。勤務時間は、最初は1日2時間でしたが、いまは時間が倍になり、給与も増えました。ですが、お金よりは、体調のほうが大事だと思っています。就職してから、今年で7年目ですが、新しい業務もできるようになってきています。今後は、資格などを取って専門性を高めていくことにも少し興味を持っています」と話してくれた。  お話をうかがった後、作業場を見学させていただいた。会社の事務所の奥が作業場となっており、各個人がそれぞれ作業に従事するスペースが設けられている。町工場という雰囲気はあるが、プレス機などは別の工場にあるため、川崎本社の作業場は機械音などのない場所である。  そこで働く知的障害のあるBさん(20代)に、「ノギス」を使用して部品の寸法を計測する検査の様子などを見せていただいた。Bさんはたいへん手慣れており、また、快活に取材に対応していただいた。 小まとめ  スタックスは、中小企業に分類され、障害者法定雇用率でいえば1人の雇用義務があるが、「単に雇用すればよい」ということではなく、会社として必要な業務を障害のある従業員が担当していること(戦力化していること)、また必要な配慮を行いつつも、自然な形で障害のある従業員の気持ちやその周囲の従業員の気持ち(勤務時間の延長などについて)と寄り添いながら業務を進めているのが印象的であった。社長のフットワークのよさ、中小企業ならではの小回りが利くことに加えて、地域の団体とかかわり、市や支援機関との連携も、現状を支える重要な要素だと感じた。 湘南ゼミナールオーシャン 宮崎台事業所を訪問して  続いて、株式会社湘南ゼミナールオーシャン(以下、「湘南ゼミナールオーシャン」)の宮崎台事業所を訪問した。  湘南ゼミナールオーシャンは学習塾運営などを行っている株式会社湘南ゼミナールの100%出資の子会社として2012(平成24)年に設立され、2013年には特例子会社として認可されている。また、特に精神障害のある方を中心に積極的に雇用を進めているのが特徴的であるといえ、従業員数28人中、精神障害者20人(2023年1月現在)となっている。業務としては、設立当初はシュレッダー作業のみだったが、いまではデータ入力や名刺印刷、動画作成、学習塾の教材資料作成支援なども行っている。  湘南ゼミナールオーシャンも、先述のスタックス同様、各種のメディアで取りあげられている。またJEEDの「平成30年度障害者雇用職場改善好事例」では、優秀賞を受賞している。加えて、本誌の2019年11月号「職場ルポ」(※3)でも取りあげており、そこでは「チャンスノート」、「ありがとうカード」、「K−STEPシート」といったツールを使い、従業員を戦力化するために職場でさまざまな工夫を行っていることが紹介されている。  以上のような、特に精神障害のある人を多く雇用しているなかで優れた取組みを行っていることが把握できたが、 ・会社での雇用管理としてさまざまな手法が導入・実行され効果をあげているが、これらの導入・実行に就労支援機関とのかかわりは関係するのか。 ・これらのツールは職場定着のうえで、どのような意義があるのか。  といったことをうかがいたいと考え取材に臨んだ。 訪問してわかったこと  まず、湘南ゼミナールオーシャン宮崎台事業所所長の前山(まえやま)光憲(みつのり)さんからお話をうかがった。ここでも紙幅の都合上、うかがったなかで特に筆者が要点だと感じた二つのことについて記したい。 @セルフケアツール「K−STEP」の導入について  以前、前山さんが合理的配慮についてのセミナーに参加した際に、ある就労移行支援事業所の修了生らが夜7時くらいに集まってお話をしてくれたが、とても元気だった。彼らはK−STEPを使用しているという。そのことに感銘を受けたのが、K−STEPに興味を持ったきっかけだそうだ。前述の通り、K−STEPとは川崎市が普及を図っている手法で、「セルフケアシート」にいまの状態をチェックし、上司や同僚にシートの報告をすることにより、障害や配慮提供など職場の理解を促進するプログラムだ。そして前山さんはK−STEPの導入を考え、その開発元の就労移行支援事業所にも相談し、就労移行支援事業所向けの説明会に参加させてもらう機会があったとのことであった。  また、熱心な川崎市職員がいることや、市としてK−STEPを普及しているという地域柄も影響しているという。支援ツールが存在することは大前提であるが、そのツールとの「出会いの機会・場」も重要であると感じた。 Aセルフケアツールの意義について  K−STEPをはじめとした種々のセルフケアツールについて、興味深いお話をうかがうことができた。まずその効果として、使用する障害のある従業員たちは、ツールを使っているほうが状態の悪化が防げることを実感しており、継続使用を希望しているということであった。また、ツールの使い方については、会社側が一方的に指定・指示をするのではなく、会社とユーザーである障害のある従業員が一緒につくりあげていったそうだ。これらはあまりツールの使用に関して指摘されていないことだと思われるが、きわめて重要なのではないだろうか。ツールの使用について、「天下り式」、「上から指定」ではなく、使う側やその職場風土、その時々の状況に合った形で、かつ有効性を担保しつつ、ツールを導入・継続使用していくことの重要性をあらためて感じた。  また、これらのツールを使用することでセルフケアの力を育成する意味についても前山さんは語っておられた。一般に、障害のある従業員のスキルというと、作業遂行などのワークスキルやコミュニケーションスキルの方に注目しがちであるが、それはいわば氷山の一角、水面上に出ているものであり、水面下にあるセルフケアの力が重要なのではないかと考えているとのことであった。セルフケアの力というのは、業務遂行スキルなどと比べより基礎的な力であるが、会社としてそのような力を障害のある従業員につけてもらうことは、ある意味「初期投資」であり、本人たちの問題解決力の向上につながっていくという。また前山さんはこのようなことは、特例子会社だからできるということではなく、ほかの会社にも共通することであり、ぜひ多くの企業に知ってもらいたいと、おっしゃっていた。 障害のある従業員からのお話と作業場訪問  前山さんからお話をうかがった後、宮崎台事業所での業務の様子を見学させていただいた。  この日、障害のある従業員は、名刺印刷、学習塾新規入塾希望者への資料発送業務、データベースの作成業務などを行っていた。オープンスペースでの業務は、2019年の本誌掲載時(23ページ※3)と同様であるが、コロナ禍を経験し出勤が分散されるようになっていることや、金曜日に訪問したため通院の人が多く、前回の本誌掲載時よりは職場に出勤している人の数は少ないという。それでも従業員の方々は、それぞれの業務に黙々と取り組んでいた。  続いて従業員の方からもお話をうかがった。まずは酒井(さかい)哲生(てつお)さん(52歳)が、抱負などについて語ってくれた。  「ここで働いて11年目となります。現在、名刺印刷を担当しています。塾の先生などの名刺を印刷し、郵便で発送しています。仕事は一通りやらせていただいています。家庭の事情などでこれまで体調を崩すこともありましたが、現在は週5日働いています。名刺については塾の先生のお手元に届く商品になりますので、手書きのメッセージカードをつけたりしています。名刺を使っていただいた方にはうちのファンになっていただければと思っています。今後は、既存の仕事をさらにきちんとできるよう極めたいと思います」  次に、羽賀(はが)義成(よしなり)さん(51歳)が話してくれた。  「入塾を申し込んだ方のデータの管理や資料の発送などを行っています。3年くらい担当しています。朝が苦手なことがありましたが、現在は出勤・退勤時間を配慮してもらっており、生活リズム的に合うようになりました。以前、チームメンバーでミスが発生したことがあって、そういったミスを今後防ぐにはチームとしてどうしたらよいのかをみんなで考えて、実行しています。そうしたことにやりがいを感じています」 小まとめ  以上のように、湘南ゼミナールオーシャンでは、セルフケアなどの優れた定着支援の実践が行われている。湘南ゼミナールオーシャンの親会社は学習塾を経営している会社であり、教育業である。そのため「人を育てる」という意識がもともと組織風土としてあり、障害のある従業員についても育てていくという意識を会社が持ちやすいということが考えられるかもしれない。  ただしそれだけではなく、本来の「職業リハビリテーション」を会社の立場から実践しているとも感じた。「就労支援」という言葉ではなく「職業リハビリテーション」という言葉を使用することは、トラブルシューティング・問題解決をするだけではなく、「人を育てていく」という予防的・開発的側面が強調されるといえるのではないだろうか。またこのことは、今回強調されていた「セルフケア」(もちろんすべてセルフケアでカバーできるわけではなくサポートが必要な場合もある)とも通底するし、このような考え方もぜひ、さまざまな会社、支援者に普及するとよいと感じた。  そして、スタックスとも共通するが、就労移行支援事業所や市、障害者地域就労援助センターなどとの連携も、この優れた実践を下支えしていると考えられた。このような定着支援の実践には、熱量のある支援者・関係者との「出会い」も大いに関係していることがうかがえた。 おわりに  今回、二つの会社を訪問させていただいた。一つは小規模の企業であり、もう一つは特例子会社である。つまり障害者雇用という観点から見て、属性上は対照的であると思われるかもしれない。それでも二社に共通することは「障害のある従業員の意識や気持ちをきちんと把握すること」や「就労支援機関との連携が重要な意味を持っていること」があげられるように思う。  なお、前者に関係するが、障害のある従業員の気持ちを尊重するものの、製品や仕事への姿勢がいい加減なものは許さないということも、大前提として指摘できよう。一方、後者については単に就労支援機関と連携をするというだけでなく、「熱量」のある支援者との出会いも重要な要素であるように感じた。そうすると、就労支援者側から見て、今回のような会社とのかかわりはどう考えるのかなどについても気になるところであるが、これは今後の課題としたい。 ※1 JEEDホームページでご覧になれます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/30kaisai/panel1.html ※2 本誌2022年7月号「編集委員が行く」(大塚由紀子委員)でご紹介しています。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202207/index.html#page=23 ※3 JEEDホームページでご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_201911/html5.html#page=7 写真のキャプション 株式会社スタックス川崎本社(写真提供:株式会社スタックス) 株式会社スタックス代表取締役社長の星野佳史さん スタックスが手がける精密板金の一例(写真提供:株式会社スタックス) Aさんは、検査補助や組立て作業を担当している(写真提供:株式会社スタックス) Bさんは、部品の検査工程を担当している 湘南ゼミナールオーシャン宮崎台事業所所長の前山光憲さん 株式会社湘南ゼミナールオーシャン宮崎台事業所 複合機を使い、名刺印刷を行う酒井哲生さん オープンスペースでは、さまざまな作業が行われていた 羽賀義成さんは、資料の発送準備を行っていた 【P26-27】 省庁だより 令和5年度 障害保健福祉部予算の概要(2) 厚生労働省 障害保健福祉部 ※1章および2章の3までは、前号(★)に掲載しました 2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策等の推進 4 アルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル等依存症対策の推進【拡充】 @アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症対策の推進(一部再掲・2(2)参照) 8.4億円(9.5億円)  アルコール、薬物、ギャンブル等依存症をはじめとする依存症患者やその家族等が適切な治療や必要な支援を受けられるよう、全国拠点機関において、オンライン等を活用した依存症対策に携わる人材の養成や情報発信等に取り組む。  都道府県等において、依存症の治療・相談支援等を担う人材育成、依存症相談拠点、依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関の選定・設置を行うことにより、依存症相談支援・治療体制、各地域における包括的な連携協力体制の整備等を推進する。また、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。  さらに、相談支援や普及啓発等に全国規模で取り組む民間団体の支援や依存症の実態を把握するための調査を実施するとともに、広く国民一般を対象に依存症の正しい理解を広めるための普及啓発を実施する。 Aアルコール健康障害対策の推進 12百万円(19百万円)  アルコール健康障害対策基本法及びアルコール健康障害対策推進基本計画に基づき、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及啓発や、都道府県におけるアルコール問題に関する横断的取組を支援する。 5 高次脳機能障害及びその関連障害に対する地域支援ネットワーク構築の促進 【新規】1.5億円  高次脳機能障害の当事者への専門的相談支援及び医療と福祉の一体的な支援を普及・定着させるため、高次脳機能障害の診断及びその特性に応じた支援サービスの提供を行う協力医療機関(医療機関、リハビリ機関等)及び専門支援機関(就労支援機関、教育機関等)を確保・明確化する。さらに、地域の関係機関が相互に連携・調整を図り、当事者やその家族等の支援に資する情報提供を行う地域支援ネットワークを構築し、切れ目のない充実した支援体制の促進を図る。 6 てんかんの地域診療連携体制の整備 16百万円(19百万円)  てんかんの治療を専門的に行っている医療機関を「てんかん支援拠点病院」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援拠点病院で集積された知見の評価・検討を行うため「てんかん全国支援センター」を設け、てんかんの診療連携体制を整備する。 7 摂食障害治療体制の整備 19百万円(19百万円)  摂食障害の治療を専門的に行っている医療機関を「摂食障害支援拠点病院」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援拠点病院で集積された知見の評価・検討を行うため「摂食障害全国支援センター」を設け、摂食障害の診療連携体制を整備する。 8 こころの健康づくり対策等の推進 72百万円(76百万円)及び地域生活支援事業等の内数  精神疾患を有する方への早期の専門的対応を充実するため、かかりつけ医や精神保健医療福祉関係者への研修を実施するほか、うつ病などの治療で有効な認知行動療法の研修を実施し、治療の質の向上を図る。 9 公認心理師実習演習担当教員及び実習指導者養成講習会事業 【新規】33百万円  公認心理師の質の維持・向上のため、公認心理師となるために必要な科目を教授する実習演習担当教員及び実習施設において必要な科目を指導する実習指導者を養成するための講習会を実施する。 3 発達障害児者の支援施策の推進 1 発達障害児者に対する地域支援機能の強化 3.9億円(3.9億円)  発達障害児者の各ライフステージに対応する一貫した支援を行うため、地域の中核である発達障害者支援センター等に配置する発達障害者地域支援マネジャーの体制を強化することで、市町村や事業所等が抱える困難事例への対応促進等を図り、発達障害児者に対する地域支援機能を強化する。 2 発達障害の初診待機解消に関する取組の推進 93百万円(93百万円)  発達障害児者の診断に係る初診待機の解消を進めるため、発達障害の医療ネットワークを構築し、発達障害の診療・支援ができる医師の養成を行うための実地研修等の実施や医療機関におけるアセスメント対応職員の配置を進める。 3 発達障害児者とその家族に対する支援 1.6億円(1.6億円)  都道府県及び市町村において、同じ悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するピアサポートや発達障害児者の家族に対するペアレントトレーニング、青年期の発達障害者に対する居場所作り等を実施することにより、発達障害児者及びその家族の支援を推進する。 4 発達障害に関する理解促進及び支援手法の普及 1.3億円(1.3億円)  全国の発達障害者支援センターの中核拠点としての役割を担う、国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている「発達障害情報・支援センター」で、発達障害に関する各種情報を発信するとともに、困難事例に係る支援をはじめとする支援手法の普及や国民の理解の促進を図る。  また、「世界自閉症啓発デー」(毎年4月2日)などを通じて、自閉症をはじめとする発達障害に関する正しい理解と知識の普及啓発等を行う。 4 障害者に対する就労支援の推進 1 雇用施策と福祉施策の連携による重度障害者等の就労支援 7.7億円(7.7億円)  重度障害者等に対する就労支援として、雇用施策と福祉施策が連携し、企業が障害者雇用納付金制度に基づく助成金を活用しても支障が残る場合や、重度障害者等が自営業者として働く場合等で、自治体が必要と認めた場合に、地域生活支援促進事業により支援を行う。 【令和4年度補正予算】 ・就労の開始・継続段階の支援における地域連携の実践に関するモデル事業 0.4億円  就労を希望する障害者が、就労先や働き方をより適切に検討・選択でき、本人の特性を踏まえた就労支援の提供や就労を通じた知識・能力の発揮・向上につなげることが重要である。多機関連携の在り方などをはじめとした各地域の実情に応じた効果的な支援の実施方法等に関して、モデル的な取組を通じて課題やノウハウを収集する。 2 工賃向上等のための取組の推進 7.0億円(6.7億円)  一般就労が困難な障害者の自立した生活を支援する観点から、就労継続支援事業所などに対し、経営改善、商品開発、市場開拓や販路開拓等に対する支援を行うとともに、在宅障害者に対するICTを活用した就業支援体制の構築や販路開拓等の支援等を実施する。  また、全都道府県において、関係者による協議体の設置により共同受注窓口の機能を強化することで、企業等と障害者就労施設等との受発注のマッチングを促進し、障害者就労施設等に対する官公需や民需の増進を図ることに加え、農福連携に係る共同受注窓口の取組を支援する。 3 障害者就業・生活支援センター事業の推進 7.9億円(7.9億円)  就業に伴う日常生活の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問等による生活面の支援などを実施する。 4 農福連携等による障害者の就労促進プロジェクトの実施(再掲4(2)参照) 3.4億円(3.4億円)  農業・林業・水産業等の分野での障害者の就労を支援し、障害者の工賃水準の向上等を図るとともに、障害者が地域を支え地域で活躍する社会の実現に資するため、障害者就労施設への農業等に関する専門家の派遣や農福連携マルシェの開催等を支援するとともに、過疎地域における取組を後押しする。 5 働く障害者の就労に伴う定着支援 17百万円(17百万円)  働く障害者の生活面の支援ニーズにより丁寧に対応できるよう、障害者就業・生活支援センターが就労定着支援事業所に対するスーパーバイズや困難事例への対応と事例収集に基づく他の就労機関への情報共有・啓発を行うことで、地域のネットワークの強化を図る。 5 東日本大震災からの復旧・復興への支援 1 障害福祉サービスの再構築支援(復興) 57百万円(1.0億円)  被災地の障害者就労支援事業所の業務受注の確保、流通経路の再建の取組や障害福祉サービス事業所等の事業再開に向けた体制整備等に必要な経費について、財政支援を行う。 2 避難指示区域等での障害福祉制度の特別措置(復興) 15百万円(15百万円)  東京電力福島第一原発の事故により設定された帰還困難区域等及び上位所得層を除く旧緊急時避難準備区域等・旧避難指示解除準備区域等の住民について、障害福祉サービス等の利用者負担の免除の措置を延長する場合には、引き続き市町村等の負担を軽減するための財政支援を行う。 3 被災地心のケア支援体制の整備(復興) 被災者支援総合交付金(102億円)の内数  東日本大震災による被災者の精神保健面の支援のため、専門職による相談支援等を実施するとともに、自主避難者等への支援などを通じて、引き続き専門的な心のケア支援を行う。 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています ※( )内は令和4年度予算額 ★2023年7月号 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202307/index.html#page=29 【P28-29】 研究開発レポート 就労困難性(職業準備性と就労困難性)の評価に関する調査研究 ―「就労支援のためのアセスメントシート」の開発― 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門・事業主支援部門 1 はじめに  厚生労働省が2021(令和3)年6月に公表した「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会報告書」は、就労支援の現場で行われるアセスメント(就労能力や適性の客観的な評価を行うとともに、就労に関するニーズ、強みや職業上の課題を明らかにし、ニーズを実現するために必要な支援や配慮を整理すること)について次のように問題を指摘しています。「障害者にとってどのような福祉施策や雇用施策のサービス等がふさわしいかの判断が現場の個々の担当者に任せられているのではないか、そのため、障害者の就労能力や一般就労の可能性について、障害者本人や障害者を支援する者が十分に把握できておらず、適切なサービス等に繋げられていない場合もあるのではないか」。  本調査研究の目的はこのような問題認識のもと、障害者の支援ニーズや就労能力の現状等を把握して適切な支援につなげていくための新たな評価ツールを開発することでした。 2 「就労支援のためのアセスメントシート」の特徴・アピールポイント  開発した「就労支援のためのアセスメントシート」の特徴・アピールポイントは、以下の通りです。 ・支援者と支援対象者(以下、「対象者」)の協同評価方式の採用:支援者が対象者を一方的に評価するのではなく、対象者と支援者がそれぞれ評価の根拠となる具体的情報(作業場面や職場実習のどのような場面でどのような行動が観察されたか等)を明確にし、それを共有したうえで現状認識をすり合わせます。このような評価方法により、対象者が就労に関する自分の状況をより客観的に理解できるようになることが期待できます。 ・対象者のストレングスに着目する仕組みの導入:対象者の強みや長所に着目することにより、対象者や支援者が「自分(対象者)の力を発揮できる仕事や環境がどのようなものか」を理解することをサポートします。 ・就労継続を妨げる要因の発生予防を目ざした支援や配慮を検討する仕組みの導入:既存の評価ツールでは「就職した後にどのような問題が発生する可能性があり、その問題の発生を予防するためにどのような手立てが考えられるか」といった検討は対応範囲に含まれていませんでした。本調査研究では就労支援機関および企業を対象とした調査を実施し、就労継続を妨げる要因を把握しました。その結果に基づき、就労継続を妨げる要因の発生の可能性や対処の可能性を検討するための仕組みをツールに組み込むことで、安心して働き続けるために職場に依頼すべき支援や配慮を就職前の時点でも検討できるようにしました。 ・エビデンスに基づくツール開発:就労支援、障害者雇用、特別支援教育といった各分野の関係者から構成する研究委員会等における検討、就労支援機関および企業における調査、就労支援機関における評価ツールの試作版の評価などを経て改訂や修正を重ね、評価ツールとしての質を一定程度、担保しました。例えば、後述の「就労のための基本的事項」についての評価項目は、本調査研究が実施した企業調査において、回答企業の50%以上が障害者を採用する際に「チェックした・重視した」または「チェックした・(重視するかどうかは)対象者によって違った」と回答した項目を設定しています。 3 「就労支援のためのアセスメントシート」の構成  「就労支援のためのアセスメントシート」(Microsoft Excelで作成)は次の内容で構成されています。なお、本シートは就労の可否や就労可能性の高低を評価したり、特定のサービス等への振り分けを行うために使用するものではありません。 T.就労に関する希望・ニーズ(10領域33項目):過去の職業経験や希望する働き方等を聞き取ることを通して、就労に関する希望・ニーズを把握します。 U.就労のための基本的事項(3領域44項目):多くの職場において必要とされる基本的な作業遂行(例:指示された手順に従って作業する)、職業生活(例:職場の規則を守る)および対人関係(例:相手や場に応じた挨拶をする)に関する現状を把握します。評価項目のうち、17項目は上記の企業調査において回答企業の50%以上が障害者を採用する際に「チェックした・重視した」と回答した項目であり、すべての支援対象者のアセスメントに使うことを推奨する「推奨項目」としています。また、回答企業の50%以上が障害者を採用する際に「チェックした・重視した」、または「チェックした・対象者によって違った」と回答した27項目は、対象者の状況に応じて選択してアセスメントを行う「選択項目」としています。 V.就労継続のための環境(10領域53項目):就労継続を妨げる要因の見通しを発生予防的な観点から検討することで就労継続のための望ましい環境を明らかにします。チェック項目は上記の就労支援機関調査および企業調査で把握した「就労継続を妨げる要因」に基づき作成しています。具体的には、「職務への適応」、「労働条件の設定・変更」、「職場の人に障害のことを理解し配慮してもらうこと」、「職場の設備・機器等」、「職場のルールや指示を理解し守ること」、「職場での適応行動・態度」、「体調、疲労・ストレス、不安、感情コントロール等」、「症状の悪化・再発、二次障害」、「家族のサポート、家庭環境の変化、友人等との関係性」、「職場の人間関係」という10の領域から項目を構成しています。 W.アセスメント結果シート:上記TからVの三つのシートに入力したおもなアセスメント結果が自動表示されます。加えて、対象者の就労意欲、自分の特徴に関する対象者の理解の状況などを含む総合的な所見を中心に入力するための「総合協同所見」欄が設けられています。 4 最後に  本シートは一人でも多くの障害者が自らのストレングスに気づき、支援者とともに必要な支援や配慮を整理することにより、自分の能力が発揮でき、安心して働き続けることができる職場環境を構築するためのツールとして開発しました。本シート(※1)は、障害者職業総合センターホームページに公開していますので、ご関心のある方はぜひダウンロードしてご活用ください。  本レポートの元となる「調査研究報告書bP68」(※2)も同ホームページからご覧いただけます。 ※1 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai78.html ※2 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku168.html ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図1 「就労のための基本的事項」の記載例 図2 「就労継続のための環境」の記載例 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 宮城 ソーシャルファームのモデル事業  宮城県と公益財団法人日本財団(東京都)が、障害福祉サービス利用者を一般就労(雇用)に切り替える障害者就労モデルの取組みとして、ソーシャルファームのモデルとなる植物工場を設備する事業者を支援すると発表した。ソーシャルファームとは、自律的な経営を行いつつ、障害者ら就労に困難を抱える人を相当数雇用する企業や団体のこと。  この取組みでは、農産品を生産する実施事業者に対して日本財団が建物設備の整備費を支援し、県が運営費の支援を行う。障害のある人をはじめとする就労困難者などの雇用の場の創出や、働く障害のある人の就労機会の確保や経済的自立を目ざす計画。  今年度は、県内の社会福祉法人が障害者就労支援事業所を廃止し、新たに立ち上げた植物工場(遠田郡(とおだぐん)美里町(みさとまち))で障害のある人20人を雇用し、ホウレンソウの栽培を行う。 生活情報 全国 日本図書館協会が読書バリアフリー法の資料公開  日本図書館協会(東京都)の障害者サービス委員会が、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」に関する資料として、「地方公共団体において『視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画』を策定するための指針」と「図書館利用に障害のある人々へのサービス(障害者サービス)評価シート公共図書館編」を公開した。  同指針は、地方自治体による読書バリアフリー基本計画の策定をうながすことと、今後の改定の参考となることを目ざしている。また同評価シートは、過去に同委員会が作成したガイドラインやチェックリストをふまえ、図書館の規模ごとに具体的にどのような取組みが必要かをまとめた。評価シートを活用して職員、予算、研修、設備、サービス、広報、連携などについてチェックし、障害者サービスの改善につなげてもらう。 http://www.jla.or.jp/portals/0/html/lsh/index.html 大分 障害者対象のフットサルリーグ開幕  「NPO法人知的障がい者フットサルクラブENTRADA(エントラーダ)」(大分市)が、障害者のフットサルリーグ「えん(縁)・ジョインリーグ2023」を立ち上げ、大分県でリーグ戦をスタートさせた。障害のある人を対象にしたフットサルリーグの開催は、全国で初めて。  2020(令和2)年に発足したエントラーダには現在、知的障害や精神障害などのある中学生から40代の14人が在籍し、大分県フットサルリーグ4部で一般のチームと対戦している。  新リーグに参加するのはエントラーダ、大分支援学校スポーツ部のほか、宮崎県や熊本県の計5チーム。障害種別が異なっていても同じチームで出場できる。リーグ戦の会場は大分市や速見郡(はやみぐん)日出町(ひじまち)のフットサル施設で、12月まで5回にわたり開催し優勝を争う。観戦は無料。  詳しくは、左記のエントラーダのホームページで。 https://ooitafc2020.1net.jp/65380/ 働く 愛媛 サッカースタジアム施設内に障害者施設  「社会福祉法人来島会(くるしまかい)」(今治(いまばり)市)は、サッカーJ3リーグ「FC今治」の専用スタジアムとして2023年1月にオープンした「今治(いまばり)里山(さとやま)スタジアム」(今治市)の敷地内に、障害福祉サービスを提供する複合福祉施設「コミュニティビレッジきとなる」を開設した。木造平屋420uに2事業所が入り、障害児者が地域と交流しながら社会生活のスキルを学ぶ。  自立訓練と就労移行支援を行う「ジョブサポートセンターここすた」は、18歳以上を対象に各定員10人。体力づくりや健康管理、家事など自立生活に必要な力を身につけ、職場体験などを通じて就職することを目ざす。  また、放課後等デイサービスと保育所等訪問支援を行う「らびっつ」では、ボルダリングや里山体験などで心身のバランス感覚を養い、コミュニケーション支援などを行うほか、小学校や児童養護施設なども訪ねて子どもたちをサポートする。 本紹介 『障害から始まるイノベーションニーズをシーズにとらえ直す障害学入門』  九州大学の田中(たなか)真理(まり)教授や横田(よこた)晋務(すすむ)准教授ら28人による共著『障害から始まるイノベーションニーズをシーズにとらえ直す障害学入門』(北大路書房刊)が出版された。  アクセシビリティを高める支援技術を解説し、福祉社会学や工学などさまざまな専門分野からみたユニバーサルデザインの研究知見を紹介。D&Iを社会的課題にとどめず、イノベーションにつなげる実践のヒントを提供する。テーマを「障害の社会モデル(「障害」とは何か)」、「社会的バリア」、「アクセシビリティ向上のための支援技術」、「専門分野からみたユニバーサルデザインと学際知(福祉社会学からみたユニバーサルデザイン)」の四つに分け、全22章で構成。A5判208ページ、2970円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2023年度地方アビリンピック開催予定 7月末〜9月 岩手県、新潟県、山梨県、徳島県 *開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります *  は開催終了 ※全国アビリンピックは11月17日(金)〜11月19日(日)に、愛知県で開催されます。 地方アビリンピック 検索 ※日程や会場については、変更となる場合があります。 ミニコラム 第26回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は若林委員が執筆しています。 ご一読ください。 研究の俎上(そじょう)に載せにくくも大事なこと、そしてジレンマ 常磐大学准教授 若林功  今回の「編集委員が行く」では、川崎市にある「株式会社スタックス」と「株式会社湘南ゼミナールオーシャン宮崎台事業所」を訪問させていただいた。それぞれ、障害のある社員についての就労定着を目ざした企業として素晴らしい実践を行っておられた。そして、そのようなノウハウの導入や、そもそもの姿勢として障害者雇用に積極的に取り組んでおられる要因として、取材はできなかったものの、自治体や就労支援機関の職員の方々の存在や、おそらくそれらの職員が持っておられる専門性と熱意が大いに関係していると感じた。  特に私としては、関係者の方々の「熱意」に注目したい。おそらく「熱意」は伝搬・伝染し、障害のある方を雇用している、あるいは雇用しようとしている企業の方々にも、「こうするとよい」といった情報だけでない、モチベーションのような、何か伝わるものがあったのではないかと考える。  また、さらにお話をうかがうなかで、「雇用管理や定着支援の情報を得たい」という気持ちを持って活動された企業の方と、就労支援にたずさわる関係者の「出会い」も、障害者雇用を進めるうえでの大事な要素となっているのではないかと感じた。  ところで、一応私も研究者の端くれであるが、なかなかこのような「熱意の伝搬」や「出会い」というものは、研究対象となりにくいと考える。しかし、このような研究の俎そ 上じょうに載せにくいものの重要な要素を、何とか扱ってみたいと夢想している。  一方、研究の俎上に載せるということは、知識・情報の明確化を目ざすということになる。試行錯誤的に行われてきたことが明確化され、マニュアル化されることにもつながるだろう。そしてマニュアルを見て、企業を含む後継の就労支援関係者が「こういうふうにやってさえいればいいんだ」ととらえてしまうことにより、標準化はされるが、何か大事なものが失われるということになるのかもしれない(考えずにマニュアル通り実施してしまう、想定外のことが発生した場合の解決力など)。  研究として曖昧な現象を扱い、明確化していくということには、このようなジレンマもありそうだが、障害者雇用・就労という当分野の発展には、そうしたステップが必要とも感じる。 【P32】 掲示板 実践的な訓練環境で即戦力を目ざします  当機構(JEED)が運営する国立職業リハビリテーションセンターおよび国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、求職中の障害のある方々に対して就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています。また、休職中や在職中の方のための職業訓練も行っています。  なお、利用にあたり、年10回程度の入所日を設けています。  募集コースや応募締切日、手続きなどの詳細については、下記までお気軽にお問い合わせください。 お問合せ オープンキャンパスや個別の見学会も開催しています。 国立職業リハビリテーションセンター 埼玉県所沢市並木4―2 https://www.nvrcd.jeed.go.jp 【求職中、休職中の方】TEL:04―2995―1201 【在職中の方】TEL:04―2995―1135 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 https://www.kibireha.jeed.go.jp 【求職中の方】TEL:0866―56―9001 【休職中、在職中の方】TEL:0866―56―9003 障害のある方向け 基盤設計の様子 視覚障害者の支援機器を活用した訓練風景 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 次号予告 ●私のひとこと  東洋大学福祉社会デザイン学部人間環境デザイン学科教授の池田千登勢さんに、インクルーシブデザイン・コラボレーションのプロセスとその効果についてご執筆いただきます。 ●職場ルポ  地域密着のカーディーラー、秋田ダイハツ販売株式会社(秋田県)を訪問。資格取得に必要な実務経験など、キャリアアップに取り組む現場の様子を取材しました。 ●グラビア  「令和5年度障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテスト」入賞作品をご紹介します。 ●編集委員が行く  大塚由紀子編集委員が、全国で「スシロー」などのフードサービス事業を展開する株式会社FOOD & LIFE COMPANIESの特例子会社、株式会社F&LCサポート(大阪府)を訪問。障害者雇用を進める現場の様子や、定着の工夫などをお伝えします。 『働く広場』読者のみなさまへ  2023年9月号は、「令和5年度障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテスト」入賞作品の公表日の関係から、お手元への到着が通常よりも数日遅れることが見込まれています。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。ご不明な点は、JEED企画部情報公開広報課(電話043-213-6526)までお問い合わせください。 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 境 伸栄 編集人−−企画部次長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6526(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 8月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和5年7月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林功 【P33】 読者アンケートにご協力をお願いします! いつもご愛読いただき、ありがとうございます。 「働く広場」では、よりよい誌面づくりを目ざし、読者アンケートを実施しています。 ぜひみなさまの声をお聞かせください。 お待ちしています! 回答方法 Webにてお寄せください。 コードはこちら ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://krs.bz/jeed/m/hiroba_enquete であることを確認のうえアクセスしてください 【令和4年度アンケート結果の一部より】 ご回答者の勤務先 民間企業59.2% 障害者福祉施設(就労支援機関を含む)・団体20.0% 学校・教育機関6.2% 医療機関4.2% 国、地方公共団体の機関3.4% 個人1.4% その他5.6% ※その他:介護福祉施設、社会福祉協議会、事業主団体 など 「働く広場」は参考になっていますか? 非常に参考になる 26.2% 参考になる 62.5% あまり参考にならない 5.1% 参考にならない 0.3% 無回答 5.9% ご意見 【職場ルポ】各企業の事例から学ぶものが多い。/実際の対応や苦労された点がわかりやすい。 【グラビア】障害者の方の雇用の参考になる。/実際に従事されている様子が見られる事で就労状況がイメージしやすい。 【編集委員が行く】実際の現場を詳しく説明しているため参考になる。/事業所での障害者の働き方が分かりやすく説明されている。 企画部 情報公開広報課 TEL:043-213-6200 【裏表紙】 ※この作品は、国立職業リハビリテーションセンターで訓練生募集のために作成されたポスターです 8月号 令和5年7月25日発行 通巻550号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)