【表紙】 令和7年9月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第576号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2025/10 No.576 職場ルポ バックオフィス業務、細やかな指導と工夫で能力発揮 株式会社北海道銀行(北海道) グラビア 「現代の名工」中澤昇一さん〜卓越した技能を持つ歯科技工士〜 和田精密歯研株式会社 東京営業所(東京都) 編集委員が行く 安心と成長を両立させる 障害のある社員が活躍できる企業内キャリアの道筋 第一生命チャレンジド株式会社(東京都)、株式会社キトー(山梨県) 私のひとこと 見えにくい困難に気づいてほしい〜LDなど発達障害のある人の現状〜 特定非営利活動法人全国LD親の会 副理事長 多久島睦美さん 「会議しよう!時代はハイブリッド」福岡県・廣滝(ひろたき)里緒奈(りおな)さん 10月号 【前頁】 心のアート アフリカのいきもの 本多 遼 (社会福祉法人太陽の丘福祉会仙台ローズガーデン) 画材:色鉛筆、水性ペン、コピー用紙/サイズ:A4(210mm×297mm)  幼いころから動物図鑑を毎日眺めて過ごしていた本多遼さん。「大好きな動物を描く楽しみがあれば一日が楽しく過ごせるのでは」と、母親が動物の絵描き歌で絵を教えるようになったことが絵を描くきっかけに。また、言葉を覚えるために使っていた「あいうえお表」に興味を示すようになり、いつの間にか五十音の単語でイラストを描き、オリジナルの「あいうえお表」をつくるのが画風となった。最近は、「動物」や「食べ物」、「植物」といったテーマにあわせて集めた単語でイラスト表をつくることも。絵を描くときは最初にマス目の横線から定規で引くのがルーティン。リビングのテーブルで、朝から晩まで没頭し、1日で5、6枚制作する日もあるという。 (文:NPO法人エイブル・アート・ジャパン、障害者芸術活動支援センター@宮城〈SOUP〉 鎌田(かまた)貴恵子(きえこ)) 本多 遼(ほんだ・りょう) 2005(平成17)年生まれ 2018年 「SHIRO Lab. 48時間デザインマラソン 東北楽天ゴールデンイーグルス編」デザイン&コンセプト賞受賞(宮城県/楽天生命パーク宮城) 2021(令和3)年 「(た)よりあい、(た)よりあう。」出展(福島県/はじまりの美術館 展覧会) 2022年〜 「Fujisakiday」メインビジュアル採用(宮城県/八木山動物公園フジサキの杜) 協力:NPO法人エイブル・アート・ジャパン、障害者芸術活動支援センター@宮城 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2025年10月号 NO.576 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 アフリカのいきもの 作者:本多 遼(社会福祉法人太陽の丘福祉会仙台ローズガーデン) 私のひとこと 2 見えにくい困難に気づいてほしい〜LDなど発達障害のある人の現状〜 特定非営利活動法人全国LD親の会 副理事長 多久島 睦美さん 職場ルポ 4 バックオフィス業務、細やかな指導と工夫で能力発揮 株式会社北海道銀行(北海道) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 はじめての障害者雇用〜職場定着のための取組み〜 第2回 職場定着のための基本的支援とその留意点A JEEDインフォメーション 12 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」の活用事例/国立職業リハビリテーションセンター国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ グラビア 15 「現代の名工」中澤昇一さん〜卓越した技能を持つ歯科技工士〜 和田精密歯研株式会社 東京営業所(東京都) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 ITが切り開く、視覚障害者の新しい可能性 第1回 私が視覚障害者向けITサポートを始めた理由 株式会社ふくろうアシスト 代表取締役 河和 旦 編集委員が行く 20 安心と成長を両立させる 障害のある社員が活躍できる企業内キャリアの道筋 第一生命チャレンジド株式会社(東京都)、株式会社キトー(山梨県) 編集委員 松爲 信雄 省庁だより 26 ハローワークを通じた「障害者の就職件数」が過去最高を更新 ─令和6年度障害者の職業紹介状況等─ 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 研究開発レポート 28 精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 障害者職業訓練推進交流プラザのご案内〜障害者の職業能力開発にかかわるみなさまへ〜 表紙絵の説明 「『何をしているのかが一目で伝わる絵を描きたい』と思い、在宅勤務の同僚とのリモート会議を題材に決めました。実際の仕事の場面を絵にしたので、そのときの緊張感や達成感などを思い出しながらリアルに描けたと思います。なによりも受賞したことを私よりも大喜びしてくれている家族の姿を見て『今年もがんばってよかったな』と心から思いました」 (令和7年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校生・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 私のひとこと 見えにくい困難に気づいてほしい 〜LDなど発達障害のある人の現状〜 特定非営利活動法人全国LD親の会 副理事長 多久島睦美 全国LD親の会とは  特定非営利活動法人全国LD親の会は、LD(Learning Disabilities:学習障害)など発達障害のある人の人権が守られ、活き活きと暮らすことのできる社会の実現を求め、教育・福祉・医療・労働などの問題について、関係機関・関係団体と交流・連携しながら、調査研究、社会的理解の向上、諸制度の創設・改善を働きかけるなどの活動に取り組んでいます。1990(平成2)年に発足し、現在は30都道府県の親の会36団体が加盟しています。LDだけでなく、ADHD(注意欠如・多動症)・自閉スペクトラム症などさまざまな発達障害のある仲間がともに活動しています。各地域の親の会には、学齢期から壮年期まで幅広い年齢の子どもをもつ会員が所属しており、青年本人の交流の場を設けて、同じ経験をもつ当事者同士が悩みや不安を共有し合えるピアサポートの場も提供しています。 LDなど発達障害のある人の現状  発達障害のなかでもLDは、知的な遅れがないにもかかわらず、読む・書く・計算するといった特定の学習に困難を抱える障害です。LDには、読むことに困難がある「読字障害(ディスレクシア)」、書くことに困難がある「書字障害(ディスグラフィア)」、数や計算に関する理解が困難な「算数障害(ディスカリキュリア)」などがあります。ひらがなや漢字の習得が困難だったり、漢字を読めても書けない、暗算ができないなど、人によって特性はまちまちです。また、読み書きに加え、コミュニケーションの苦手さや不注意で忘れ物やミスが多いといった困難もあわせもつ人がほとんどで、自閉スペクトラム症やADHDと読み書き障害の両方がある人もいます。仕事上だけでなく「契約書が読めない」、「公的手続きの申請書が書けない」、「交通案内の看板が読めない」など、日常生活でもさまざまな困難を抱えています。「自分は読み書き・計算が苦手」と自覚していても、それが障害だと気がついていない人も多いのではないかと思います。  近年、「大人の発達障害」が社会問題となっています。学生時代はなんとかやり過ごせても、社会に出てから仕事や人間関係で困難が生じ、障害が顕在化してきます。不適応を起こして抑うつ状態になり、医療機関を受診して30代・40代になって初めて発達障害と診断されるケースも増えています。子どものころからさまざまな困難を抱えていたにもかかわらず、親にも先生にも見過ごされ「努力が足りない」と叱責され、自己肯定感が低くなってしまったり、鬱(うつ)や不安障害などの二次障害を発症してより深刻化してしまうケースもあります。職場で「書類が読めない」、「報告書を作成できない」と自己申告するのは、かなり精神的負担が大きく、わかったふりをしてしまう場合もあるかと思います。全国的にLDの診断ができる医療機関が少ないことに加え、「読み書きが苦手」という理由で医療機関・相談機関に行くことがないことから、困難があるにもかかわらず、LDの診断を受けている人が少ないのが現状です。また、LDの診断だけでは、障害者手帳を取得できないため、一般就労している人のなかにも読み書きに困難を抱えている人が一定数存在していると推測されます。 発達障害のある人の就労状況 〜会員調査より〜  全国LD親の会では2025(令和7)年1〜3月に、18歳以上の子どもをもつ会員および本人を対象とした「教育から就業への移行実態調査X」を実施し、現在集計作業を行っています(2026年度に報告書を発行する予定です)。この調査は2003年から継続して実施しており、支援制度の利用状況や就労状況などについて調査しています(今回の調査の回答数は保護者411人・本人207人)。現在の就労状況は、一般就労19%、障害者枠での就労40%、就労継続支援事業所(A型・B型)14%、また障害者手帳の取得率は80%(学生を除く)となっており、軽い障害と誤解されがちな発達障害ですが、厳しい就労状況にあります。  全国LD親の会では、2019年度に厚生労働省の委託を受けて、「発達障害者の顕在化されにくい読み書き困難の現状」について実態調査を行い、報告書をホームページ(※)に公開しています。こちらもご参照いただけたら幸いです。 発達障害のある人が働き続けるために  LDなど発達障害のある人が働き続けるためには、合理的配慮が非常に重要です。読み書き障害のある人は文書の読み取りに時間がかかったり文書の作成がむずかしい場合があり、書類中心の業務では能力が十分に発揮できないこともあります。実務的には、音声読み上げや音声入力・スケジュール管理などICTツールを導入することも助けとなります。当事者からも「電話でやり取りしながらメモを取ることができない」、「パソコンで入力した文章を読み直しても、漢字の誤変換に気づけない」、「読み書きができないことで、職務能力を低く評価されてしまう」といった悩みも聞かれます。読み書きの困難さについて理解されず、叱責されることが続くと自信をなくしたり自己肯定感が下がったりして、ストレスを抱えることになってしまいます。本人が自分の得意・不得意を把握して、苦手な業務への対処法を工夫したり、困っていることを相談できる環境も必要です。  発達障害への理解は進んできましたが、一般社会ではまだまだ「努力不足」、「職場の困った人」と誤解されることも多く、同僚の障害理解も重要です。以前、当事者の方から「外国籍の人が多い職場なので、スケジュールや作業手順が、図や写真など視覚的にわかりやすく提示されているので助かっている」という話を聞いたことがあります。合理的配慮は、「特別扱い」ではなく「働きやすさの調整」です。業務内容を見直し、視覚的・構造的にわかりやすくするなどの合理的配慮によって、障害のある人だけでなく、だれもが働きやすいユニバーサルな職場になってほしいと願っています。 多久島 睦美 (たくしま むつみ)  特定非営利活動法人全国LD親の会副理事長、あいちLD親の会かたつむり副代表。  発達障害(LD・ADHD)のある次男の小学校入学を機に、親の会に入会。その後、愛知県の親の会の代表を10年ほど務める。次男が就職して20年目を迎え、職場でのサポートによって働き続けられていることに感謝の思いで、母として発達障害と向き合った経験をもとに、家族支援や啓発活動に取り組んでいる。  読み書きに困難がある人が身近にいることを知ってほしい…全国LD親の会では、公開フォーラムや特別支援教育支援員養成講座などを開催し、イベントや情報発信を通じて、発達障害のある人への理解を広げる活動に取り組んでいる。 ※https://www.jpald.net/book/index.html 【P4-9】 職場ルポ バックオフィス業務、細やかな指導と工夫で能力発揮 ―株式会社北海道銀行(北海道)― 銀行の事務センターでは、職場の意識改革を図りながら障がいのある職員への細やかな指導や工夫を重ね、さまざまな業務で活躍できる場を増やしている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社北海道銀行 本部 〒060-8676 北海道札幌市中央区大通西2-5 TEL 011-233-1005 FAX 011-221-4629 事務センター 〒003-0003 北海道札幌市白石区東札幌3条1-2-33 Keyword:身体障害、精神障害、知的障害、ジョブコーチ、ダイバーシティ、手話 POINT 1 ダイバーシティ推進室の開設を機に、フォロー体制を強化 2 障害者職業センターからのジョブコーチ派遣で、現場における対応を学ぶ 3 さまざまな特性を持つ職員が安心して働ける職場を目ざす 地域に根ざした銀行  「株式会社北海道銀行」(以下、「北海道銀行」)は1951(昭和26)年、道内の中小企業や商工会議所などからの要望のもと400人の発起人により設立された。地域に根ざした銀行として、道内を中心に144店舗を展開している。  障がい者雇用については、直近で全職員(行員・契約社員・嘱託社員)2491人のうち障がいのある職員は54人(身体障がい34人、知的障がい1人、精神障がい19人)、「障害者雇用率」は2.77%(2025〈令和7〉年6月1日現在)という。2019年には「ダイバーシティ推進室」が新設されて就労後の支援体制が強化、定着と戦力化が図られている。  今回は、行内で障がいのある職員がもっとも多く配属されている事務センターを中心に、これまでの取組みや現場で働くみなさんを紹介する。 一筋縄でいかなかった苦労  総合事務部の事務センターは、おもに北海道銀行内のバックオフィス業務を担当し、職員80人と職員以外のパート勤務者などのスタッフ90人の計170人が働いている。このうち障がいのある職員は21人で、年齢層も20代から60代までと幅広い。  おもな業務は、振込や振替などの伝票処理から書類点検、データ入力、預金調査、各種税金のとりまとめまで多岐にわたる。分野によって15の係に分かれ、高性能なシステムや機器を駆使しながら大量の処理をこなしているそうだ。事務センターに12年以上在籍し、2022年から所長を務める部田(とりた)克人(かつひと)さんが説明する。  「それぞれ専門性は高いですが、定型業務などに絞って専念できるので、習熟しやすいと思います。ミスが許されない職場ですが、システムサポートや複数名によるチェック体制、マニュアルやルールの整備によって間違いが発生しづらくなっています」  一方で部田さんは「障がい者雇用にかかわる取組みは、ダイバーシティ推進室ができるまでは、一筋縄ではいかない苦労がありました」と明かす。  採用は、基本的にはハローワークを通じて応募してきた人を人事部の担当者が面談などを経て判断し、その後は、事務センターの配属先がそれぞれ責任を持って仕事の指導や配慮などを行ってきた。だが障がいのある職員が増えてくると、対応に苦慮する場面も増えてくるようになる。現場からは「仕事が回らない」、「どうしてここに障がい者を配置するのか」といったネガティブな意見も上がり、「本人が職場になじめないまま退職したケースもあった」と部田さん。  「職場全体の知見レベルが追いついておらず、適切な配慮や支援ができていませんでした。結果として本人も同僚も上司も、つらい経験をしたと思います」 ダイバーシティ推進室  北海道銀行において障がい者雇用の取組みが大きく前進したのは、「多様な人材一人ひとりの能力を発揮しやすい職場環境の整備」を目的として2019年6月、人事部内にダイバーシティ推進室が設置されてからだ。  当初配属されたのは、いまは総合事務部の部長を務める山内(やまうち)えり奈(な)さん1人だった。山内さんは「さまざまな人材の活躍を目ざす観点で障がい者雇用の推進もミッションの一つでした。ちょうど着任時に労働局から法定雇用率未達成の通知をもらっていたので、この推進室ができた意味もふまえて具体的な取組みを考えていきました」と話す。  山内さんは「障害者職業生活相談員」の資格認定講習を受けるなどして、必要な配慮や対応の仕方などを学んだほか、職場の障害のある職員にヒアリングも行った。「それまで採用後はフォロー体制ができておらず、外部の支援機関による定着支援もないまま本人は困っていることをいい出せなくて、周囲も事情がよくわからないまま悪循環に陥ることもあったようです」(山内さん)  その後うまく進むようになったのは、当機構(JEED)の北海道障害者職業センターの職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を利用したことだった。  きっかけは、療育手帳を持つ職員の採用だ。やはり療育手帳を持つほかの職員と同じ係に配属したが、現場から山内さんに思わぬ戸惑いの声が伝えられた。  「毎朝出勤すると、納得いくまで自分のデスクの上の拭き掃除をやめなかったり、フロア内に業務連絡の放送が流れるたびに作業が止まってしまったりする様子が目立ち、『どう指導したらよいか』と相談されました」と山内さんは話す。  本人は1人で就職活動をしてきて支援機関に登録していなかったが、ハローワークの担当者からジョブコーチの定着支援を受けられることを助言してもらっていた。山内さんは「さっそくジョブコーチに来てもらったところ、本人には発達障がいの特性もあることがわかりました。同じ療育手帳を持つ人でも一人ひとり違うのだと納得できました。ジョブコーチに支援してもらうなかで新たに学んだことも多かったですね」と語る。  いまではダイバーシティ推進室が中心となり、日常的に外部の支援機関と連携している。「先日も朝出勤してこない職員と電話がつながらず、心配になって支援機関に連絡したところ単なる寝坊でした。ちょっとのことでも頼れるところがあるのは大きな安心です」(山内さん)  ダイバーシティ推進室の人員も兼職ながら4人まで増え、今年7月からは3人の専任体制となった。その1人で調査役の佐伯(さえき)亜耶(あや)さんは、もともと人事部の採用担当だった経験と人脈を活かしながら、事務センター以外の本部セクションへの受け入れに力を入れている。  佐伯さんによると「このように対応すれば、ほかの人と変わらず働けます」、「何かあれば必ず私たちがフォローに入ります」などと直接説明し、安心して受け入れてもらえる体制づくりを心がけているという。「受け入れ部署も増え、最近は、前職の仕事を活かしビッグデータを解析する部署のサポートメンバーになっている人もいます」と佐伯さん。  将来的には、本部部署以外にも採用を広げていくことが目標だ。今年7月に営業店から異動し、ダイバーシティ推進室室長を務める眞鍋(まなべ)亜由美(あゆみ)さんは「以前から『地元に戻って働きたい、地元の営業店で受け入れてもらえないか』との相談もあり、職場の理解を得ながら、いろいろな場所でだれもが活躍できる職場を目ざしていきたいと考えています」と説明する。 何度でも同じ質問ができる環境  あらためて事務センターの職場を、部田さんたちに案内してもらった。ビル3階にあるフロアは、多数のパソコンが置かれているが、全体的に見通しがよく通路も広い。「書類などをワゴンに載せて移動するため、余裕のあるレイアウトになっており、車いすや杖を使う職員も動きやすい環境です」と部田さん。  その一角で数人の職員が、パソコン画面に映し出された手書きの伝票画像を何度も確認しながら手ぎわよく入力していた。嘱託社員2人から話を聞いた。  2021年入行の梅原(うめはら)美希(みき)さん(22歳)は下肢機能障がいがあり、部田さんによると「採用時に両親とも面談し、心配なことを伝えてもらったうえで、実際の仕事内容などを決めました」とのことだ。職場では、重い物を持つことや移動が多い作業への配慮をしてもらっている。  また、情報管理の厳しい事務センターでは出勤時間も厳密だが、杖を使って電車通勤をする梅原さんら数人にかぎり、15分早く出勤できる。多くの人で混み合う時間帯は、狭い雪道で人とぶつかるなどの危険性が高いためで「この15分の差が、とても大きいのです」と梅原さんはいう。  梅原さんはいまでは、行内インターンシップの職員に仕事を教える役も務め、「わかりやすい」と評判だそうだ。これについて梅原さんが「先輩からのていねいな指導のおかげです」と紹介してくれたのが、前田(まえだ)知恵(ともえ)さん。前田さんに指導で心がけていることを聞くと「何回同じことを聞いてもいいよ、と伝えてきたことです」と説明してくれた。  「じつは、以前勤めていた職場の上司が、仕事に厳しい一方で『わからないことをわからないままにされるほうが困るから、何回でも聞いてほしい』といってくれました。この言葉に救われ、安心して質問できたことが私のスキルアップに大きく影響しました」  部田さんも「障がいに関係なく、何度でも質問できるような環境が大切」だとして、全体会議などでくり返し紹介している。指導役を対象に、言葉遣いや教える姿勢などで気をつけるべき9項目のセルフチェック表も毎月提出してもらっているそうだ。  「安心して聞ける環境」は職場全体に浸透しているようで、眞鍋さんも「私が営業店にいたときに、事務センターに問い合わせると毎回ていねいに教えてもらえたことが、本当にありがたかったです」とふり返る。 自分に最適な方法で成長したい  下肢・体幹機能障がいのある嘱託社員の岩崎(いわさき)はぐみさん(22歳)は、高等養護学校在学中に市役所の職場実習を経験したことから「一般企業で障がいのない人と同じように働きたい」と、2022年に入行した。もともとは車いすユーザーだが、いまは職場では使っていない。「通勤で体力がついてきて、杖のほうが移動しやすくなりました」と岩崎さん。  配属先はさまざまな代理業務を行う係で、同じ入力作業でも覚えるべき手順やルールが多い。だが岩崎さんは当初、困っていることを伝えるのが苦手だった。「甘えだと思われないか、任される仕事を減らされるのではないかという不安があった」という。一方、指導役であり現場のリーダーを務める契約社員の工藤(くどう)七佳(ななか)さんは、「最初から『できる、できない』を決めず、まずやってみて、苦手なことを教えてもらえたら、できることも増やしていける」と背中を押し続けた。この言葉に岩崎さんも、自分から周囲に助言を求めたりサポートを受けたりできるようになったそうだ。例えば、手の小指が無意識に動くことで余計な入力をしてしまう課題を相談したときは、ほかの先輩がオリジナルの治具を手づくりしてくれて解消できたという。  現在はマイナンバーに関連する重要な業務も任されるようになった岩崎さん。工藤さんからの「私の業務を代行できるよう育成中です。期待しています」との激励に、「自分にとって最適な方法やスピードで着実にスキルアップしながら、障がいに関係なく評価されるようになりたいです」と語ってくれた。  岩崎さんは、職場の近くで一人暮らしも始めている。母校や特別支援学校などから職業講話を依頼されることも多く、会社で働くことや自立生活について後輩たちにアドバイスしているそうだ。 手話教室で距離縮まる  2022年から嘱託社員として働く長助澤(ちょうすけざわ)馨(かおる)さん(49歳)は、生まれつき聴覚障がいがありコミュニケーションはほぼ手話か筆談だという。札幌近郊に引っ越してきたのを機に「事務職に挑戦してみよう」とハローワーク経由で入行した。  担当しているのは振込の処理や管理システム業務などで、複雑な仕事内容を上司や同僚が根気よく筆談で指導し、長助澤さんも理解を重ねるごとに仕事のやりがいにつながっていったという。  同じ係に聴覚障がいのある職員が4人いることもあり、職場で細やかな工夫も重ねてきた。参事の田崎(たざき)浩子(ひろこ)さんによると「帳票ごとの複雑な手順や注意点がひと目でわかるよう、大判の単語帳のようなマニュアルツールを考案しました。複数の業務を組み合わせた日々の作業予定表も作成し、それをチェックしながら各自で仕事を進めていけます」とのことだ。  長助澤さんが仕事になじんできた昨年からは、職場での手話教室も始まった。経緯について、元行員で嘱託社員の森(もり)敏子(としこ)さんは「彼女たちが手話で会話しているのを見て、私たちも手話を少しでも使えたら、一緒に働くうえで、もっと気持ちの疎通ができるのではないかと感じていました。それで長助澤さんに頼んでみたら、快諾してくれました」と話す。  最初は森さんと田崎さんの2人が生徒だったが、いまは4人に増えた。毎日16時ごろから30分間ほど行っており、いまでは朝の挨拶のほか「トイレに行ってきます」、「お疲れさま」といった表現を、職場で交わし合うようになっている。手話教室の希望者は多いが、いまのところは生徒4人で、少しずつ広げていく予定だ。  長助澤さんに、手話教室についての手ごたえを書面で伝えてもらった。  「お二人から『手話を教えてほしい』といわれたことが、とてもうれしかったです。職場でも手話によるコミュニケーションを取り入れることで、仕事もスムーズになったと思います。手話が言語であることを理解してもらえ、本当に感謝しています。他チームでも手話で挨拶してくれる人もいて、今後さらに理解を広めて、手話で楽しい会話ができたらいいなと思っています」  長助澤さんは、11月に東京で開催されるデフリンピックも「ぜひ注目してほしい」と伝えてくれた。じつは、別の係にいる聴覚障がいのある職員の弟夫婦が、バドミントン競技の代表選手として出場する予定だ。この職員は大会期間中に1歳の甥の世話をすることになり、長期の有給休暇を取得することになっているという。 行内全体の顧客サービスにも  部田さんによると、最近の職場内アンケートでは「彼らが一生懸命なので、自分ももっとがんばらねばと思う」、「前向きな笑顔を向けられると、自分のモチベーションアップにつながる」といった好意的な声が増えたそうだ。  アンケートで管理職は「当事者からの『こうすればできる』、『こういうのは不得手』などの声はとても貴重。それが遠慮なくいえる雰囲気をつくることも大事」や、「仕事の枠組みを決めず、本人にとって少しだけレベルの高い仕事にもトライしてもらうことで自信とやりがいを持てるよう意識している」と答えるなど、活躍してもらうための工夫を実践している部署も少なくない。  「地道にがんばる職員たちの姿を見て、周囲の意識も変わっていったように感じます」と話す部田さんも、事務センター全体の意識改革に努めてきた。「Well-being(幸せ)な職場づくり」をモットーに掲げ、「個人の強みを発揮し、弱みは皆でカバー」との考え方をくり返し伝えている。障がいのある職員が配属されるときは「ハンディキャップがある」とだけ伝え、具体的な配慮や工夫は一人ひとりと話し合いながら決め、本人に確認したうえで同じチームの職員に必要な配慮を伝えるそうだ。  「ハンディキャップは、障がいのある人だけでなく体調不良者、子育て中の人や家族を介護している人にもあります。いまは60歳以上の職員も30人と多く、だれもが安心して働ける場にするには、やさしい職場でないと長続きしません」という部田さんは、「女性や障がい者、高齢者を活かせる職場運営が重要だという共通認識の広がりも感じています。今後は、事務センター内で各チームが重ねてきた工夫やノウハウを標準化させ、行内全体にも広げていきたいですね」と語る。  ダイバーシティ推進室では昨年度、同じ親会社を有する株式会社北陸銀行と連携し、障がいのあるお客さまへの対応についてまとめた冊子「ほくほくハートフルマニュアル」(全52ページ)を全営業店に配付した。「バリアフリーチェックシート」も作成し、ハードとソフトの両面で障がいのあるお客さまへの配慮すべき点を確認できるようにしている。北海道銀行では、今後も引き続き、多様な人材がそれぞれ能力を発揮して活躍できる場を増やしていく予定だ。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社北海道銀行様のご意向により「障がい」としています 写真のキャプション 事務センターが入る東札幌道銀ビル 株式会社北海道銀行総合事務部事務センター 株式会社北海道銀行総合事務部事務センター所長の部田克人さん ダイバーシティ推進室室長の眞鍋亜由美さん(左)と調査役の佐伯亜耶さん(右) 総合事務部部長の山内えり奈さん 事務センターで働く梅原美希さん 梅原さんは、手書き伝票の入力作業を担当している 梅原さんの指導にあたる前田知恵さん 事務センターで働く岩崎はぐみさん 岩崎さんは、マイナンバーに関連する業務を担当している 長助澤さんは、振込の処理などの業務を担当している 岩崎さんの指導にあたる工藤七佳さん 事務センターで働く長助澤馨さん 処理手順や注意点などが記載されたマニュアルツール 長助澤さんの指導にあたる田崎浩子さん(左)と森敏子さん(右) 職場の一角で行われる手話教室で、笑顔のみなさん 顧客への配慮すべき点を確認できるバリアフリーチェックシート 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用 〜職場定着のための取組み〜 第2回 職場定着のための基本的支援とその留意点A  障害のある人をはじめて雇用する企業にとって、雇用そのものの実現は大きな一歩です。しかし、障害のある人が「継続して安心して働き続けられる」職場づくりこそが、雇用の真の成功につながることはいうまでもありません。  そこで第2回は、「職場定着のための基本的支援とその留意点」の後編をお届けします。職場環境の見直しや日々の声かけ、社内支援体制についてなど、適切な支援について具体例をあげながら解説します。 長く働き続けられる土台づくりに必要な支援とは?  障害のある人が継続して働き続けるためには、第1回(※)でご紹介したように業務内容を習得するための説明や伝え方を工夫することはもちろんですが、本人が安心して働ける環境を整えて、業務上の戸惑いや孤立を防ぐことも重要です。ハードとソフトの両面から職場環境を整備し、適切な配慮と働きかけを継続的に行うことは、本人のやる気と能力を引き出し、長く働き続けられる土台をつくるためにも欠かせない支援です。以下、留意すべきポイントについて紹介します。 設備や業務改善などの職場環境を整備  障害のある人が働く職場では、その人の障害特性に応じた設備や環境の整備が必要に応じて求められます。身体障害のある人であれば、バリアフリーな通路やトイレの設置などが一例としてあげられます。また、視覚障害のある人には、音声案内や点字表示、手すりの設置などが役立ちます。  精神障害や発達障害のある人の場合は、例えば、集中しやすいように間仕切りを設ける、静かな場所を用意するなどといった対応があります。  また、これらのような設備の改善といった「ハード面」だけでなく、業務の流れを工夫したり、休憩の取り方を柔軟にしたりといった「ソフト面」の工夫も大切です。  そして、こうした配慮がほかの従業員から「特別扱い」と受け取られないようにするために、職場全体で障害理解を深める研修を行うことも大事です。「だれもが働きやすい職場」は職場全体の生産性向上や定着率向上をうながすという認識を、全社で共有しましょう。 本人の日々の状況を把握し継続勤務を支える  障害のある人にとって、日々の体調や気分の変化は仕事に大きく影響する場合があります。そのため、「今日は体調どうですか?」など、日常的に声をかけて体調等の変化を把握することが大切です。そしてそれは、本人にとっても「気にかけてもらっている」と感じられ、安心につながります。  精神障害や発達障害のある人の場合は見た目だけでは体調の変化や不調がわかりにくいこともあるため、表情や行動、話し方などの変化に気を配りましょう。また、本人からの訴えが少ない場合でも、業務の進み具合や周囲とのやりとりの様子を見て、必要に応じて個別に話す時間を設けることも有効です。  さらに、体調不良や不安が続くときには、業務の軽減や休憩時間の調整、勤務時間の短縮といった柔軟な対応も検討しましょう。その際、「まずは一緒に考えましょう」という姿勢が大切です。  また、あらかじめ相談できる担当者や体調不良時の対応ルールを決めておくことや、職場に産業医や保健師などの専門職がいる場合は、すぐに連携して支援できる体制をつくっておくこともいざというときに安心です。  障害のある人が安心して働き続けられるかどうかを定期的に確認することも、定着支援には欠かせません。体調の変化、本人の不安や気持ちなどを早めにキャッチし、必要な支援につなげることが重要です。  例えば、月に1回程度、上司や支援担当者と本人が面談を行い、「仕事に慣れてきましたか?」、「最近困っていることはありますか?」といったふり返りの時間を持つことが効果的です。このとき、あくまで評価ではなく、本人の気持ちに寄り添う対話を心がけましょう。  また、遅刻や欠勤が増えてきた、発言が少なくなったなど、行動の変化といった兆候を見逃さず、声をかけてみることも大切です。さらに、「別の部署のほうが合っているのでは」など業務内容や働き方の見直し、広い視点での検討も行うとよいかもしれません。 業務における指導・指示命令系統の整備  障害のある人が戸惑いやすいのが、指示や業務命令があいまいであったり、複数の人から異なることをいわれて混乱する場面です。こうした状況を防ぐために、「だれが」、「どのように」、「どの範囲で」指導や指示を出すのか、明確にしておくとよいでしょう。例えば、「日常の業務はAさんが教える」、「困ったことはB課長に相談する」と決めて、本人に伝えておくことで、本人も安心して働くことができます。  加えて、本人だけでなく指導にあたる社員や関係部署とのふり返りを行うことも大切です。「どんな指導が効果的だったのか」、「今後改善が必要なことは何か」などをふり返ることで、職場全体の支援力が向上していきます。 効果的な社内支援体制の構築  職場の支援体制を構築し、人間関係や労働環境の改善を図ると、より職場への定着が進みます。配属部署では担当者や管理者が相談窓口となり、必要な相談を行っていくのが望ましいでしょう。その際、担当者任せにせず、部署全体が一つのチームとして支える意識が大切です。人事担当部署は、教育や指導の負担が特定の社員に偏らないよう配慮し、必要に応じて調整します。  また、職場以外での事情が業務に影響している場合や社内だけでは対応がむずかしい場合には、外部の支援機関と連携することもありますが、これについては第5回で詳しくご紹介します。 おわりに  障害のある人が長く安心して働き続けるためには、「一人ひとりに合わせた支援」と「職場全体の理解と協力」が何よりも重要です。前回と今回でご紹介した視点を参考に、まずは一つずつ、できるところから取り組んでみてください。  次回は「職場定着のための課題への対処」をお届けします。 ※当連載第1回(2025年9月号)は、以下のJEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202509/index.html#page=12 参考! 障害者雇用に関する援助制度  障害のある人を新しく雇用したり、長く働いてもらうために必要な対応を行う事業主の方のために、助成金や税制上の優遇措置があります。利用する制度により窓口が違いますので、それらの内容も含めて各ホームページでご確認ください。 雇い入れた場合:「特定求職者雇用開発助成金」、「トライアル雇用助成金」など https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/intro-joseikin.html 施設等の整備や適切な雇用管理の措置を行った場合:「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html 障害者を雇用する企業に対する税制優遇制度 https://www.mhlw.go.jp/content/001140709.pdf ★助成金の活用事例を今号12〜13ページでご紹介しています。あわせてご覧ください 参考! 社内における支援体制強化のために  障害のある人を雇用したときに、その人の職業生活の充実を図る体制づくりを行うことが大切です。「障害者職業生活相談員」や「企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)」を配置し、すみやかに対応できる体制を整えることもひとつです。 障害者職業生活相談員 5人以上の障害のある人を雇用する事業所では、「障害者職業生活相談員」を選任することが義務づけられています。相談員は、その事業所に雇用されている障害のある人に対し、職業生活全般における相談や指導を行います。 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04.html 企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ) 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある人が職場定着のための支援を行う人のこと。企業在籍型ジョブコーチを養成するための研修が実施されています。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」の活用事例  「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」は、事業主が障害者を雇用するにあたって、施設・設備の整備や適切な雇用管理を図るための特別な措置を行う場合に、その費用の一部を助成することにより、事業主の一時的な経済的負担を軽減し、障害者の雇用の促進や継続を図ることを目的としています。  今回は、これらの助成金を効果的に活用している事例をご紹介します。 事例1 〜進行性難病による身体障害者の加齢にともなう運動機能の低下を克服するための階段昇降機の設置〜 【障害者作業施設設置等助成金(第1種中高年齢等障害者作業施設設置等助成金)】  A社で運行管理をしていたBさんは、筋ジストロフィーによる両上肢の機能障害および体幹機能障害があり、これまでは杖でかろうじて移動することができていましたが、加齢により症状が進行したことで、最近では段差があっても足が上がらなくなり階段などを利用できない状況にありました。  Bさんの就労場所である2階の執務スペースへの移動ができないことにより、就労の継続が困難となったことから、助成金を活用し、既存の階段にいす式階段昇降機を設置する改修工事を実施しました。いす式階段昇降機を設置したことにより、Bさんは一人で安全に階段を昇降することが可能となり、これまで通り業務を遂行できるようになりました。 事例2 〜加齢にともなう障害状況の変化により就労上の困難性が増した視覚障害者のための介助者の配置〜 【障害者介助等助成金(職場介助者の配置の中高年齢等措置に係る助成金)】  C社で経営企画の業務を行うDさんは、網膜色素変性症を発症し4年前に障害者手帳を取得しました。これまでは眼鏡型の拡大鏡を使用するなど自分なりに工夫して業務を行っていましたが、加齢にともない障害の状況が変化し、手帳の取得時よりも色の違いや濃淡を認識することがむずかしくなり、明朝体の印刷物や鉛筆書きの文字を判別できなくなったり、タイピングのミスが増えたりするなど、自身の工夫だけでは対処しきれず、業務に支障が出るようになりました。そこで、助成金を活用して職場介助者を配置し、判読が困難な文字・文書の代読や文書作成時のタイピング補助を行うことで、業務が円滑に行えるようになりました。 事例3 〜職場支援員の資質向上のために研修を受講〜 【障害者介助等助成金(介助者等資質向上措置に係る助成金)】  精神障害のあるEさんは、事務職に従事しています。F社は、Eさんに必要な支援ができるようGさんを職場支援員として配置しています。  F社は、Gさんの職場支援員としての資質向上のため、JEEDの職場適応援助者支援スキル向上研修の修了者を対象としたサポート研修(無料)を受講させました。研修受講後、Gさんは研修でつちかったノウハウなどを活かしながら、職場支援員としての業務を遂行しています。  研修受講の有効性を確認したF社は、以後も研修の受講料や研修受講者の受講中の賃金の一部を助成するこの助成金を活用しながら従業員の研修受講を推奨しています。Eさんも、職場支援員Gさんのよりよいサポートを受けながら業務に従事しています。 事例4 〜雇用率未達成事業主に対する雇用相談援助事業の実施〜 【障害者雇用相談援助助成金】  H社は、障害者雇用に課題を抱える事業主等に対して、障害者の雇用管理に関する相談援助事業を行う事業者として都道府県労働局長の認定を受けています。  H社は、I社が障害者を雇用しているものの新たな雇入れが進まず、法定雇用率が未達成となっている状況をふまえて、助成金を活用して、I社の障害者雇用に関する社内体制づくりの支援に取り組みました。  H社の支援により、I社では、合理的配慮についての理解促進が図られ、障害者雇用担当者の選任をはじめとした障害者雇用推進体制が構築されたことで、精神障害のあるJさんの採用につながりました。  採用後についても、H社が実施した職場定着のアドバイスをもとに、I社が定期面談等に取り組んだ結果、Jさんは現在もI社で活躍しています。 事例5 〜職場に適応していくための企業在籍型職場適応援助者の支援〜 【企業在籍型職場適応援助者助成金】  精神障害のあるKさんは、特例子会社L社に勤務しています。勤務するなかで、コミュニケーション面で相手の気持ちを考えた行動や単純作業の持続に課題を抱えていました。  その課題を克服するためにL社は、必要な支援を常時できるよう企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)の資格を有するMさんを配置し、計画に基づきKさんの支援を始めました。  Mさんは、Kさんに対し、職場におけるコミュニケーションについてのアドバイスや、よくあるミスをチェックリスト形式で整理するといった支援を行うとともに、Kさんの業務担当者に対し、勤務に必要な支援などを随時共有しました。  Kさんは、Mさんの支援を受けながら自身の課題と向き合うことで業務に対する理解と習熟が進み、さらに生産性の向上が図られたことで、チームの一員として活躍しています。 事例6 〜聴覚障害者のための手話通訳者の委嘱〜 【障害者介助等助成金(手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金)】  機械器具製造業のN社では社員の入社時に、安全衛生、品質管理、防災管理、コンプライアンスなどについての研修を行っています。しかし、聴覚障害のあるPさんに対しては口頭による説明だけでは内容が十分に伝わらず、かといって筆談を交えると情報伝達に時間を要するという課題がありました。そこで、助成金を活用して手話通訳者を委嘱し、説明内容を通訳してもらうことで、Pさんは内容を理解し、その後の業務が円滑にできるようになりました。  また、業務以外でも、社外で行う定期健康診断受診の際、手話通訳者に同行してもらうなど、必要に応じて手話通訳者を委嘱し、雇用管理を行っています。 ●以下の助成金があります。詳細は、ホームページでご確認ください。 @障害者作業施設設置等助成金 A障害者福祉施設設置等助成金 B障害者介助等助成金 C職場適応援助者助成金 D重度障害者等通勤対策助成金 E重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 F障害者能力開発助成金 G障害者雇用相談援助助成金 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html ●助成金に関する申請手続き等については、JEED都道府県支部高齢・障害者業務課(東京、大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。 https://www.jeed.go.jp/location/shibu/index.html ●e-Gov電子申請を利用して申請できるようになりました。 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/e-shinsei/index.html 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に向けた職業訓練や就職支援を実施しています〜 募集訓練コース、募集日程 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース 訓練期間 メカトロ系 機械CADコース 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査コース 1年 建築系 建築CADコース 情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース ビジネス系 会計ビジネスコース OAビジネスコース オフィスワークコース 物流系 物流・資材管理コース 職域開発系 オフィスアシスタントコース 販売・物流ワークコース サービスワークコース 入所期 ハローワークへの申請書提出締切日 入所日 2026年1月入所期 2025年10月23日(木) 2026年1月14日(水) 2026年3月入所期 2025年12月19日(金) 2026年3月11日(水) 2026年4月入所期 2026年1月22日(木) 2026年4月16日(木) 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース 訓練期間 メカトロ系 機械CADコース 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 製造ワークコース 1年 ビジネス情報系 システム設計・管理コース※ 【視覚障害者対象】ITビジネスコース 2年 会計ビジネスコース OAビジネスコース オフィスワークコース 1年 アシスタント系 販売・物流ワークコース サービスワークコース ※令和7年度内入所の募集は終了しました。次回の募集は、下表の4月入所期となります。 入所期 ハローワークへの申請書提出締切日 入所日 2026年1月入所期 2025年10月30日(木) 2026年1月8日(木) 2026年2月入所期 2025年11月25日(火) 2026年2月5日(木) 2026年4月入所期 2026年2月5日(木) 2026年4月7日(火) ●遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。また国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 国立職業リハビリテーションセンター 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 職業評価課 TEL:04-2995-1201 https://www.nvrcd.jeed.go.jp 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課 TEL:0866-56-9001 https://www.kibireha.jeed.go.jp 写真のキャプション 視覚障害者の支援機器を活用した訓練風景 3DCADを活用した訓練風景 【P15-18】 グラビア 「現代の名工」中澤昇一さん 〜卓越した技能を持つ歯科技工士〜 和田精密歯研株式会社 東京営業所(東京都) 取材先データ 和田精密歯研株式会社 東京営業所 〒134-0091 東京都江戸川区船堀(ふなぼり)5-11-19 SSS船堀五丁目ビル TEL 03-5679-6640 写真・文:官野 貴  先天性感音性難聴のある中澤(なかざわ)昇一(しょういち)さん(59歳)は、筑波大学附属聾(ろう)学校歯科技工科(当時)で技術を学んだ。卒業後は、歯科技工所での勤務やトレーニングセンターでの研修を経て、和田精密歯研株式会社(以下、「和田精密歯研」)に入社。その後、ドイツ歯科技工マイスターのいる歯科技工所に転職してドイツ流の技術を学んでから、和田精密歯研に復帰した。キャリア37年のベテラン歯科技工士だ。  中澤さんは、天然歯に近い色や形を持つ歯科技工物の制作を手がけており、金属フレームに、セラミックの一種でポーセレンと呼ばれる陶材を盛り上げていく「ポーセレンワーク」を担当している。天然歯の構造に合わせ、陶材を使い分け、一層一層ていねいに積み重ね、焼成機(しょうせいき)で焼き固める。焼成時の収縮を予測し盛り上げるなど、経験やテクニックが求められる仕事だ。その技術力の高さから指名での依頼も多いという。  中澤さんは、全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)歯科技工種目への出場を重ね、2021(令和3)年の第41回大会において「金賞」を受賞。令和5年度には、「卓越した技能者(現代の名工)」障害者部門において、歯科技工士として表彰を受けた。また、「令和7年春の褒章」において、業務に精励し、他の模範となるような技術や業績を有する人に授与される「黄綬褒章(おうじゅほうしょう)」を受章している。  現在、中澤さんは定年を控え、後進の育成に力を入れている。職場で机を並べるのは、2023年にフランスで開催された、第10回国際アビリンピック歯科技工種目の金メダリスト、中川(なかがわ)直樹(なおき)さんだ。  聾学校の後輩である中川さんから、「現代の名工」中澤さんのもつドイツ流歯科技工の技術を学びたいとの申し出を受け、和田精密歯研への転職をすすめたという。聴者へも手振り身振りや筆談、実際に作業をやってみせることなどによりその技術を伝え、教え子が全国のラボ(営業所)で活躍しているそうだ。中澤さんは、「定年後も再雇用として、体力の続くかぎり歯科技工士として働き続け、後進に技術を伝えていきたい」と話す。 写真のキャプション 調合したポーセレンの粉末を蒸留水と混ぜ合わせる 「築盛(ちくせい)」と呼ばれる工程。筆でポーセレンを盛り上げていく 天然歯の構造に合わせ、調合乾燥後、焼成機に入れ、高温で焼成するを変え、色合いの違うポーセレンを盛り上げる 乾燥後、焼成機に入れ、高温で焼成する 焼成を終えた歯科技工物と色見本を見比べる 色見本や写真を参考に、周りの歯と自然になじむように表面の色を整える 回転切削器具で微調整を行う。より自然な仕上がりの歯科技工物を目ざす 完成した歯科技工物。インプラント治療で使用される 築盛の工程で使用するパレットや筆、鉗子(かんし)、ヘラ 第41回全国アビリンピックの金メダルを掲げる中澤昇一さん 中澤さんの全国アビリンピックへの初出場は2001年、以降5回出場し2021年の大会で金賞を受賞した 中川直樹さん(右)に、テクニックを実演してみせる中澤さん 中澤さんは、聴者への指導も担当。歯科技工士同士の共通認識などもあり、コミュニケーションに大きな問題はないそうだ 作業スペースは2カ所あり、隣り合うスペースと向かい合うスペースがある。どちらも手話でのコミュニケーションがとりやすい。中澤さんは、「互いに刺激し合い技術を磨いていきたい」と話す 【P19】 エッセイ ITが切り開く、視覚障害者の新しい可能性 第1回 私が視覚障害者向けITサポートを始めた理由 株式会社ふくろうアシスト 代表取締役 河和 旦 (かわ ただし) 情報アクセシビリティ専門家、AI活用教育コンサルタント。視覚障害と肢体不自由の重複障害がある。東京都立大学卒業後、福祉情報技術コーディネーターとして独立。障害当事者向けのIT指導やサポートを行い、転職や自立につながった実績も多数。共著に『24色のエッセイ』、『本から生まれたエッセイの本』(みらいパブリッシング)がある。https://fukurou-assist.net  私は未熟児網膜症と脳性麻痺による重度の視覚障害と肢体不自由を抱え、現在は視覚障害者向けのIT支援や福祉体験講座を開催している。日常では点字を使用し、外出時には車いすと介助者が必要な、身体障害者手帳1級の重複障害者である。  そんな私がなぜ、視覚障害者向けのITサポートという仕事を始めたのか。その原点には、私自身が経験した「希望」と「絶望」、そして「逆転の発想」があった。 ITが広げた新しい可能性  私にとってITとの出会いは、まさに革命であった。中学から大学まで一般の学校で学んでいた私は、ワープロソフトと点訳ソフトの組合せにより、普通文字(墨字(すみじ))で提出物を作成しつつ、自分用には点字で保管できるようになった。この瞬間、初めて「ほかの生徒と同じ土俵に立てた」という感覚を味わい、言葉にできない喜びを感じた。 社会が突きつけた「通勤」という壁  しかし、ITが可能性を広げてくれた反面、社会には別の大きな壁が存在していた。それが「通勤」という現実的な課題である。  就職活動の企業の面接でIT活用能力や学業成績を評価されても、「通勤はどうするのか?」という理由で不採用になることが続いた。当時、通勤のための公的な介護制度はなく、一人での通勤が困難な私にとって、この壁は大きな課題であった。何十社もの不採用通知を受け取るたびに、大学生活で築いた自信が揺らいだ。当時の社会は、まだ私たちの可能性を十分に理解していなかったのかもしれない。  現在は「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」などの制度が整備されつつあるが実施自治体が限定されているうえ、利用には申請手続きの複雑さがともなうなどの課題がある。だからこそ、企業側の柔軟な対応―例えばアクセシビリティを確保したうえでのリモートワークの導入―が、障害者雇用を成功に導く鍵となる。 絶望を希望に変えた「起業」という選択  通勤困難という「弱み」に直面し、何十社もの不採用通知を受け取るたびに、「自分には何ができるのか」と深く考えた。そして、自分自身がITを活用して困難を乗り越えた経験が、同じ課題を抱える視覚障害者の力になれるのではないかという思いに至った。このような経緯で「視覚障害者向けITサポート」という事業を立ち上げることを決意した。 現在の活動  現在、全国の視覚障害者に画面読み上げソフトの設定や、オフィスアプリケーションの操作支援などを提供し、一人ひとりのニーズに応えている。具体的にはワープロソフトや表計算ソフトの操作指導を行い、就労移行支援事業所と連携し転職につながった実績や、教員免許を持った全盲の方が一般の学校で授業を行えるよう支援した事例もある。  この活動を通じ、同じ課題を抱える人々にとっての希望となることを目ざしている。視覚障害者の就労は、適切な支援とITの活用により十分に可能であることを、日々の実践を通じて証明し続けている。 【P20-25】 編集委員が行く 安心と成長を両立させる障害のある社員が活躍できる企業内キャリアの道筋 第一生命チャレンジド株式会社(東京都)、株式会社キトー(山梨県) 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲 信雄 取材先データ 第一生命チャレンジド株式会社 〒114-0014 東京都北区田端(たばた)6-1-1 田端ASUKAタワー10F TEL 03-5814-2071 FAX 03-5685-9272 株式会社キトー 〒409-3853 山梨県中巨摩郡(なかこまぐん)昭和町(しょうわちょう)築地(ついじ)新居(あらい)2000 TEL 055-275-7531 FAX 055-275-6162 松爲(まつい)信雄(のぶお) 編集委員から  職業リハビリテーションの新たな定義や支援モデルをふまえると、持続可能で質の高い障害者雇用を形成するには、@事業所における「雇用の質」、A事業所と個人を媒介する「支援者の質」、B個人自身の「キャリア意識の向上」のそれぞれが効果的に機能するとともに、相互に作用しながら包括的に連携することが不可欠だと考えています。  今回は、そのなかの「雇用の質」について、特例子会社か否かという経営形態の異なる企業を比較しながら検討してみました。 写真:官野 貴 Keyword: 特例子会社、製造業、雇用の質、組織内キャリア、キャリアパス、モチベーション POINT 1 一貫した制度と多様な支援によって、障害者雇用の質が向上 2 さまざまな将来展望に応える、柔軟なキャリアパスの提供 3 現場と人事の密接な連携によって、安心して働ける環境構築の提供  障害者の雇用政策で提唱されている「雇用の質」を考えるために、特例子会社とそうでない企業を訪問して双方の人事労務管理の状況をみながら、障害のある社員が活躍できる組織内キャリアの道筋を検討しました。 第一生命チャレンジド株式会社の取組み  第一生命チャレンジド株式会社(以下、「第一生命チャレンジド」)は、第一生命保険株式会社の特例子会社として2006(平成18)年8月に設立されました。おもな業務は、事務サポート、印刷、書類作成・発送、清掃・整備、喫茶、ヘルスキーパーなどです。「認め合うから長所がいき、支え合いから仲間ができる」、「任されることでやる気が出て、チャレンジできることで成長できる」ことを価値観として大切にしています。2025(令和7)年6月1日現在の社員数は444人で、そのうち障害のある社員は328人、内訳は、知的障害75%、精神障害21%、身体障害4%、障害者雇用率は2.53%です。  東京都の田端本社におうかがいして、取締役の鈴木(すずき)敏邦(としくに)さん、企画総務部長の室井(むろい)謙一(けんいち)さん、人財育成部次長の梶野(かじの)耕平(こうへい)さん、ダイバーシティ推進部課長の齊藤(さいとう)朋美(ともみ)さんに人事労務管理の全体をお聞きし、書類発送グループリーダーの中村(なかむら)泰也(やすなり)さんには現場の状況についてお話をしていただきました。 1 採用の経路  障害のある人の採用は、特別支援学校の生徒の場合は、在学時から職場実習を受け入れています。中途採用の場合は、基本的に障害者雇用に関する支援機関に登録していただいたうえで、2週間程度の実習を経て採用します。採用後の最初の配属は、実習経験のある業務にしています。 2 職位と人事評価の制度  職位制度は、「一般社員→トレーナー→リーダー→主任→課長補佐→課長→次長→部長以上」と一本化されており、障害の有無にかかわらず、上位の職位を目ざせる制度になっています。障害があってサポートが必要な社員の場合は、入社後3カ月間の契約社員を経て、正社員として一般社員から処遇され、仕事をほかの社員に教えるレベルまで習熟すると、上位のトレーナーへ昇格します。2025年4月現在の職位の分布は、一般社員が全社員の58.4%(うち障害のある社員は261人、以下同じ)、トレーナーは12.3%(55人)、リーダーは17.0%(15人)、役付6.9%、管理職4.0%、役員1.3%です。役付以上には障害のある社員はまだいません。 室井謙一さん 「この体制は2011年からです。それ以前は、障害のある社員は一般社員とは別の処遇とされていたのですが、障害のある社員の動機づけを高めることを目的に一本化にふみ切りました。障害のある社員は一般社員からですが、障害のあるなしにかかわらずチームを任せられる社員はリーダーからの処遇となり、一本化という意味では完全ではないかもしれません。それでもリーダーになる障害のある社員も誕生し始めています」  ですが、最近の問題意識として、ほとんどの障害のある社員が一般社員の職位に長期に留まっていることへの対応があります。そのため、新たな処遇のあり方として、一般社員とトレーナーの職位をそれぞれ2段階に分けて、一般社員とトレーナーとの中間職位、トレーナーとリーダーとの中間職位を新たに設ける計画があります。 鈴木敏邦さん 「新たな職位を設けることは、障害のある社員の能力と力量を会社が認定することにつながります。そのことが、本人の仕事への動機づけを高めてキャリア意識を呼び起こすでしょう。他方で、障害のある社員のすべてが職位の上昇志向を有しているわけではないことも承知しています」  人事評価は、障害のある社員の場合には行動評定と業務遂行実績を基に総合評定します。行動評定はマナーや職務遂行にかかわる行動を、業務遂行実績は役割を遂行した実績をそれぞれ評価したうえで、それらを総合評定します。行動評定は自己評価と上司評価とのすり合わせで決定しますが、それによって自己理解が深まります。また、業務遂行評価は一人ひとりが目標設定をしたうえでその達成状況を評価します。目標設定は、年度始めの個別面談で確定し、年度中間に進捗状況を確認し、年度末にふり返り面談をします。  給与は、障害の有無による差はありません。職位や勤続年数で決定される基本給と職位給を基礎とし、それに総合評価による加算が行われます。  配置や担当替えなどの人事異動は、本人の希望や能力と上司の意向や組織ニーズの双方の事情をふまえて行います。障害のある社員には、将来的に希望する役割や業務あるいは自分に向いていると思う仕事などを定期的な面談で確認するとともに、ミスマッチを防ぐために社内トレーニー制度を活用して希望する部署で職場実習をして適性を判断します。 3 研修と自己啓発  社員の研修は会社の歴史とともに多様化されました。一般社員やトレーナー職には、新入社員研修、新任トレーナー研修、シニア向け研修、テーマ別研修があり、リーダー以上には、新任リーダー研修、職場定着スキル研修、外部主催研修(障害者職業生活相談員資格認定講習、職場適応援助者〈ジョブコーチ〉養成研修)、選抜社長塾などがあります。また、職位にかかわりなく受講できる社内トレーニー制度もあります。これは、本人の応募あるいは上司の推薦で他部署の業務体験をするものであり、自身のキャリア形成に向けた視野を広げるきっかけにしたり、他部署の社員との人事交流を深めることができるため、希望者は多いということです。  また、自己啓発の機会として、業務に役立つ資格取得を応援する指定社外資格取得奨励制度のほかに、外部主催セミナーやeラーニング受講の機会、さらには、障害者技能競技大会(アビリンピック)参加への支援なども行っています。  このほかにも、@社員の投票による毎月の表彰(社長賞)で、仲間から認められ喜んだり自分の長所を再発見したり、A各グループの取組みを年1回発表する好事例大会を通して、より高いレベルのサービスを目ざす人財を育成したり、B年度当初の面談による目標と希望をふまえてチームを編成し、個性を活かしつつ人間関係の絆を高める取組みを行ったりしています。 梶野耕平さん 「時間をかけて豊富な研修制度を構築してきましたが、最近は、障害のある社員が自分のキャリアを考えるプログラムも展開しています。そこでは、異なる職場に配属されている同期生が参集して交流を深めながら、近未来の展望を検討するグループワークを行っています」 4 現場の声  中村泰也さんは、特別支援学校を卒業後に一般社員として入社して12年になります。この間、一貫して書類発送業務に従事し、入社3年目にトレーナーに、8年目に9人の一般社員の部下を持つリーダーに昇格しました。障害のある社員のトップランナーとみなされています。 中村泰也さん 「一般社員のときには指示された内容を正確に実行するだけでよかったのですが、トレーナーになると、それに加えて社員同士の協力関係を維持するための心遣いや配慮が求められます。リーダーになるとますます組織マネジメントの能力が要求されます」  「将来は主任に昇格したいです。最初のころは他部署への異動を考えることもあったのですが、昇進するにつれて、組織内キャリアを真剣に考えるようになりました。同じ障害のある仲間とともに成長してきたことの安心感や楽しさがあることから、現在の事業所のなかで仕事を続けていくことが自分のキャリアであると考えています」 5 取組みの全体的印象  特例子会社として、在籍する大多数の障害のある社員のモチベーションの維持と向上に向けて、さまざまな取組みが行われています。職位制度を障害の有無にかかわらず一本化したうえで、さらに下位職位を細分化して、障害のある社員の働きがいと目標管理を高めることが計画されています。これらを通して、障害のある社員が組織内キャリアに見通しを持ち、チャレンジする機会と動機づけの維持・向上につなげていこうとしています。 株式会社キトーの取組み  株式会社キトー(以下、「キトー」)は、マテリアルハンドリング機器(巻上機およびクレーンなど)の製造、販売、アフターサービスを手がける国内随一の企業で、1932(昭和7)年に創業しました。働く喜びと人間的成長をうながすという企業理念のもとに、障害者の雇用は事業場内に自然に溶け込んでいく職場づくりを目ざしています。2025年6月時点の社員数746人のうち、障害のある社員は36人で、聴覚障害6人、肢体不自由6人、内部障害1人、知的障害15人、精神障害8人(うち7人が発達障害)と多様であり、障害者雇用率は7.48%。2011年の5カ年計画開始以降、法定雇用率の倍以上の障害者雇用を維持し続けています。  山梨県にある本社工場におうかがいして、経営管理本部人事部人事グループマネージャーの室井(むろい)利公(としあき)さん、主任の神谷(かみや)暁嘉(あきひろ)さん、坂本(さかもと)美和(みわ)さんに人事労務管理の全体をお聞きし、また、製造本部加工工程グループ表面処理班では班長の越水(こしみず)拓郎(たくろう)さんと丸山(まるやま)良一(りょういち)さん、組立出荷グループEH製品班では班長の歌田(うただ)秀樹(ひでき)さんと斎藤(さいとう)浩太郎(こうたろう)さんに現場の状況についてお話をしていただきました。 1 採用の経路と配属  障害のある人を採用する場合、本人の希望と会社側のニーズに応じて3職場ほど実習したうえで配属先を決めます。障害に対する配慮はするものの特別扱いはしないことを基本としています。 神谷暁嘉さん 「障害の特性により配属するのではなく、あくまで個人の特性に合わせ配属をします。実習先は特定の職場に偏らないようにして、現場リーダーが過重の負担にならないようにしています」  生産現場での障害のある社員の受入れに関しては、人事部門との緊密な協働のもとに、次のようなさまざまな対応を進めています。 @定例会の開催:生産現場の全役職者、グループのマネージャー、人事担当者が参集して毎月行われ、障害者雇用に特化した課題や解決策の情報を共有します。 A情報の共有:障害のある社員が配属される際には、本人・家族の同意のもとに職務遂行に必要な配慮事項が共有されるとともに、雇用にともない必要な改善を行います。 B聴覚障害のある社員への対応:手話通訳の社内講習会を開催するとともに、情報保障手段として、音声認識ソフト、電子メモパッド、腕時計型の屋内信号装置、手話ボード、光るチャイムなどを導入しています。 2 職位と人事評価の制度  職位制度は、契約社員から嘱託社員、正社員へという流れとなっています。障害のある社員はまず契約社員として処遇され、6カ月ごとの更新を継続します。その後、嘱託社員を経て、本人の希望と職場の推薦によって正社員登用の機会が与えられます。同試験は一般のキャリア採用の場合と同じです。受験の意思は半期ごとの定期面談で確認していきます。現在、障害のある社員のうち、契約社員は26人、嘱託社員が2人、正社員が8人です。 室井利公さん 「障害のある社員の全員が正社員を望んでいるわけではありません。正社員になれば評価基準も異なり、成果も求められ、給与も評価によって変動します。そのため、本人が希望しなければ無理にはすすめません」 坂本美和さん 「実際のところ、正社員を希望しない障害のある社員はたくさんいます。昇進よりも安定して長期的に働き続けることを求めています。ですから、契約社員は、働きたい意思を尊重しつつ次のキャリア段階を考えて将来を展望する場となっています」  人事評価は、障害のある契約社員の場合は、働く意欲や態度などの行動評価に基づく評価だけがあり、技能評価は含まれません。給与は時給月給制で、年2回の賞与において行動評価の結果に基づいた特別加算をします。  人事異動は、人事部門との個別面談や現場上司の行動評価時の面談などで本人の意思を確認します。希望しないかぎりは異動させませんが、希望する場合は社内実習を行ってから決めます。 3 研修と自己啓発  現場の生産工程にはさまざまな社内の資格認定基準があります。職場での必要性と本人の希望により社内認定を受けることができ、障害のある社員の高い動機づけにつながっています。また、生産現場のニーズと障害のある社員の希望が合致していれば、それに関連する社外の公的認定資格を取得するための支援も行われます。  そのほか、人事部門では、障害のある社員への相談支援体制を充実させるために、障害者職業生活相談員の大幅な増員を目ざして、障害者職業生活相談員資格認定講習の受講を積極的に進めています。また、障害理解のための社内研修会や社外研修への参加もうながしています。特に、社内研修会では聴覚障害のある社員が講師となって、手話学習会も実施されています。 4 現場の声  聴覚障害のある斎藤浩太郎さんは、ろう学校の在学時に先輩の話を聞いて入社を希望し、入社後は社内イントラネットに新聞を発行したり、社内提案制度にも頻繁に応募したりして活発な活動をしています。 斎藤浩太郎さん 「将来の夢は、この会社で仕事を続けて、契約社員から正社員になることです。正社員として働くことはたいへんなことだとは承知していますが、同じ職場だった聴覚障害のある先輩が正社員になってがんばっている姿は身近なキャリアのモデルになっており、モチベーションが喚起されます。スキルアップして自分も資格を取得し、後輩を指導していきたいと強く望んでいます」  斎藤さんの上司である歌田秀樹さんの班には異なる障害のある社員が5人いますが、配属前や配属後も人事部門と連携しながら、個別に対応しています。本人への指導で対応に困った場合には人事部門が積極的に介入してくれて助かるということです。  知的障害のある丸山良一さんは、普通高校を卒業して別会社に就職した後に転職してきました。入社の最大の理由は、給与も含めて将来的に安心して働けることだそうです。入社以来、部品熱処理作業の同一現場に10年以上勤務していますが、2年目にはクレ―ン操作資格を取得し、令和7年度優秀勤労障害者として当機構理事長努力賞を受賞しました。 丸山良一さん 「将来については、他部署への異動や転職は不安を感じるので、現在の安定した状況を維持することで安心感のある働き方をしたいです。正社員になることが唯一のキャリアとは思わないです。現在の担当作業では人に教えることができる技量はあると思いますが、正社員になるといまとは異なる技術が求められるので、その職位を遂行することはむずかしいのではないかと考えています」  彼の上司の越水拓郎さんは、丸山さんの入社時から指導してきており、彼自身が同僚と同じ仕事量をこなすことを目ざしてきたことでチームに受け入れられてきたといいます。会社の組織風土と人事管理のち密な支援があることで、本人が安定・安心感のあるキャリアを描いているのだということです。 5 取組みの全体的特徴  同社は、障害のある社員を障害特性にかかわりなく、現場のニーズに応じて配属してゆく過程で、さまざまな取組みを次第に増やしてきました。それらは生産現場と人事労務部門との緊密な連携によるところが大きいといえます。こうしたことを基盤に、障害のある社員は、職位を段階的に昇進するという組織内キャリアの道筋のほかに、現職場で安心して働き続けながら職務遂行能力を高めてゆく道筋を求める人も少なくないそうです。 まとめ  両社に共通する障害者雇用の質の向上に向けた方法は、@採用時からの職場実習や本人の希望をふまえた適性配置、A明確な職位制度と評価基準による公正な処遇、Bスモールステップや研修・自己啓発支援による能力開発、C現場と人事部門の緊密な連携、D昇進志向と安定志向の双方に応える多様なキャリアパス、E仲間との協働や承認を通じたモチベーション維持などが指摘できるでしょう。  これらの多くは、組織内キャリアの開発に関する「キャリアコーン・モデル」(シャイン〈Schein, E. H〉図)と一致することが少なくありません。 @組織内の縦の異動として職位を上昇させてゆく「地位・階層」では、第一生命チャレンジドの職位制度や、キトーの契約社員から正社員への昇格が相当します。昇進を目ざす社員には職位段階を明確にした公正な評価制度でモチベーションを高めています。 A組織内の横の異動として部署間の異動や特定の技能力を深めてゆく「職能・技術」では、第一生命チャレンジドの社内トレーニー制度や、キトーの他工程の実習と資格取得の支援が該当します。障害の有無にかかわらず能力発揮の場を広げる仕組みができています。 B専門性や技能を高めて部署内の中核としてリーダーシップを発揮する「中心性・部内化」では、第一生命チャレンジドのリーダーやトレーナーによるチーム運営と後輩育成、キトーの長期勤務による熟練技能の蓄積と社内資格取得などがあてはまります。部門内の核となりリーダーシップを発揮できています。  このように、多様なキャリアパスを提供することで障害のある社員が活躍できる場が確保され、そのことが社員の「安心と成長」を担保しているといえます。 参考文献:松爲信雄『キャリア支援に基づく職業リハビリテーション学−雇用・就労支援の基盤−』ジアーズ教育新社、2024年 図「キャリアコーン・モデル」 組織内キャリアのコーンモデル 地位・階層 中心性部内化 職能技術 中心性・部内化(部門内)の異動 (例)部門の末端から中核の職務へ 職能・技術(部門間)の異動 (例)製造―販売―マーケッティング 地位・階層(職位)の異動 (例)見習い―1級―2級―係長 写真のキャプション 第一生命チャレンジド株式会社は、親会社の事務サポートや書類作成、清掃などを手がける 第一生命チャレンジド株式会社取締役の鈴木敏邦さん 企画総務部長の室井謙一さん 人財育成部次長の梶野耕平さん 書類発送グループリーダーの中村泰也さん 中村泰也さんは書類発送を担当。リーダーとして9名の部下がいる 株式会社キトー本社 株式会社キトーは、巻上機やクレーンなどのマテリアルハンドリング機器の製造・販売を手がける 株式会社キトー人事グループマネージャーの室井利公さん 人事グループ主任の神谷暁嘉さん 人事グループの坂本美和さん 組立出荷グループEH製品班の斎藤浩太郎さん 斎藤さんは、電気チェーンブロックの製造を担当している 組立出荷グループEH製品班班長の歌田秀樹さん 製造本部加工工程グループ表面処理班の丸山良一さん 丸山さんは、部品の熱処理作業を担当している 丸山さんは、クレーンの操作資格を取得、業務に活用している 製造本部加工工程グループ表面処理班班長の越水拓郎さん 【P26-27】 省庁だより ハローワークを通じた「障害者の就職件数」が過去最高を更新 ─令和6年度障害者の職業紹介状況等─ 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課  厚生労働省は令和7年6月25日、令和6年度の障害者の職業紹介状況等の取りまとめを公表しました。  ハローワークを通じた障害者の就職件数は、令和5年度の11万756件から、11万5609件(対前年度比4.4%増)となり、就職件数が過去最高だった令和5年度実績を上回りました。 〈ポイント〉(第1表)  〇ハローワークにおける障害者の新規求職申込件数は26万8107件で、対前年度比7.5%増、就職件数は11万5609件で、前年度と比べ4.4%増となり、いずれも前年度を上回った。就職件数の増加要因として、前年度に引き続き、新規求職申込件数が増加するとともに、法定雇用率の引上げなどの影響で企業が障害者雇用に対してより積極的になっていることにより、求人数が増加したことが影響しているものと考えられる。 〇就職率(就職件数/新規求職申込件数)は43.1%で、対前年度差1.3ポイント減となった。 〇ハローワークに届け出のあった障害者の解雇者数は9312人(前年度2407人)となり、解雇者数が過去最高だった平成13年度実績(4017人)を上回った。 〈産業別にみたときの特徴〉(第2表) ○産業別の就職件数は、「医療、福祉」(4万5668件、39.5%)の割合が大きく、「製造業」(1万3417件、11.6%)、「サービス業(他に分類されないもの)」(1万2134件、10.5%)、「卸売業、小売業」(1万1587件、10.0%)が続いている。 〈職業別にみたときの特徴〉(第3表) ○職業別では、「運搬・清掃・包装等従事者」(3万5297件、30.5%)の割合が大きく、「事務従事者」(2万9390件、25.4%)、「サービス職業従事者」(1万6470件、14.2%)、「生産工程従事者」(1万2918件、11.2%)が続いている。 ★本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 第1表 ハローワークにおける障害者の職業紹介状況(令和6年度) @新規求職申込件数(件) 前年度比(%) A有効求職者数(人) 前年度比(%) B就職件数(件) 前年度比(%) C就職率(B/@)(%) 前年度差(ポイント) 合計 268,107 7.5 390,799 △3.9 115,609 4.4 43.1 △1.3 身体障害者 60,252 1.8 108,066 △10.6 22,704 △0.9 37.7 △1.0 知的障害者 40,385 7.7 54,684 △5.8 22,449 1.1 55.6 △3.6 精神障害者 153,223 11.1 211,942 1.2 65,518 8.1 42.8 △1.1 その他の障害者(注) 14,247 △4.0 16,107 △11.5 4,938 △2.1 34.7 0.7 (注)「その他の障害者」とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳等を保有しない者であって、発達障害、高次脳機能障害、難治性疾患等により、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者である。ただし、令和2年1月のハローワークシステム刷新により、障害者手帳を有する者も一部計上されている。 第2表 産業別就職件数(令和6年度) 産業 障害者計 (件) 前年度比(%) 身体障害者(件) 前年度比(%) 重度(件) 前年度比(%) 知的障害者(件) 前年度比(%) 重度(件) 前年度比(%) 精神障害者(件) 前年度比(%) その他の障害者(件) 前年度比(%) 合計 115,609 4.4 22,704 △0.9 8,559 0.9 22,449 1.1 3,445 3.5 65,518 8.1 4,938 △2.1 農林漁業 1,050 △4.1 162 △15.6 44 △24.1 231 △8.0 36 5.9 601 1.7 56 △8.2 鉱業,採石業,砂利採取業 39 2.6 15 △11.8 5 △16.7 4 △20.0 0 △100.0 19 35.7 1 △50.0 建設業 3,003 5.2 747 △5.2 247 △3.5 474 13.1 49 0.0 1,634 8.3 148 6.5 製造業 13,417 2.4 2,325 △3.8 875 2.0 3,417 △1.4 470 2.8 7,062 7.1 613 △1.4 電気・ガス・熱供給・水道業 139 △8.6 40 △24.5 19 18.8 11 △21.4 3 △25.0 88 14.3 0 △100.0 情報通信業 2,059 12.1 341 3.6 177 20.4 211 17.9 36 44.0 1,457 16.4 50 △35.1 運輸業,郵便業 4,575 2.1 1,279 △0.5 405 △0.2 899 △6.6 133 3.9 2,223 7.8 174 2.4 卸売業,小売業 11,587 △0.3 1,763 △8.8 622 △6.6 2,925 △6.8 436 △1.4 6,402 6.8 497 △11.1 金融業,保険業 1,363 12.4 352 △6.1 125 △10.7 129 18.3 18 28.6 852 21.7 30 3.4 不動産業,物品賃貸業 1,256 5.4 305 3.7 109 2.8 188 △2.6 30 △21.1 702 7.8 61 13.0 学術研究,専門・技術サービス業 2,589 8.9 455 6.1 174 14.5 318 15.2 53 12.8 1,691 8.8 125 5.9 宿泊業,飲食サービス業 4,911 11.2 1,015 3.7 351 △2.5 1,275 10.3 180 13.2 2,450 16.8 171 △7.1 生活関連サービス業,娯楽業 2,240 2.0 438 △6.0 140 △13.0 509 3.9 95 15.9 1,210 5.0 83 △5.7 教育,学習支援業 2,851 16.7 801 16.1 294 19.0 334 9.2 61 38.6 1,619 19.6 97 3.2 医療,福祉 45,668 3.4 7,623 △1.4 3,119 △1.8 8,552 2.7 1,393 3.3 27,382 5.1 2,111 3.0 複合サービス事業 938 18.1 191 44.7 66 69.2 213 7.6 26 △7.1 495 20.1 39 △25.0 サービス業(他に分類されないもの) 12,134 5.3 2,798 △1.3 1,018 0.8 2,381 1.1 385 △0.8 6,528 11.4 427 △9.3 公務・その他 5,790 9.9 2,054 4.5 769 13.3 378 7.1 41 2.5 3,103 15.6 255 △4.9 第3表 職業別就職件数(令和6年度) 職業 障害者計(件) 前年度比(%) 身体障害者(件) 前年度比(%) 重度(件) 前年度比(%) 知的障害者(件) 前年度比(%) 重度(件) 前年度比(%) 精神障害者(件) 前年度比(%) その他の障害者(件) 前年度比(%) 合計 115,609 4.4 22,704 △0.9 8,559 0.9 22,449 1.1 3,445 3.5 65,518 8.1 4,938 △2.1 管理的職業従事者 63 △6.0 29 11.5 12 50.0 3 50.0 0 − 28 △20.0 3 △25.0 専門的・技術的職業従事者 7,872 △1.5 2,018 △11.2 900 △14.3 318 △6.2 41 24.2 4,997 4.4 539 △9.4 事務従事者 29,390 10.1 6,675 3.4 2,753 5.2 2,528 6.8 332 19.9 18,909 13.9 1,278 0.6 販売従事者 4,420 △2.8 662 △8.2 251 △2.3 1,190 △7.0 143 △13.3 2,370 2.8 198 △17.2 サービス職業従事者 16,470 11.7 3,118 2.5 1,064 5.9 3,750 11.5 521 7.2 8,858 16.0 744 5.7 保安職業従事者 1,557 10.7 645 7.5 196 23.3 165 19.6 12 9.1 673 12.7 74 4.2 農林漁業従事者 3,039 △4.5 377 △8.3 115 △17.9 864 △4.7 152 △14.6 1,680 △3.1 118 △9.9 生産工程従事者 12,918 0.1 1,952 △5.3 729 △5.4 3,259 △5.9 452 3.9 7,062 4.5 645 3.2 輸送・機械運転従事者 3,330 7.0 1,576 4.1 476 11.7 167 18.4 15 0.0 1,415 9.3 172 6.2 建設・採掘従事者 1,253 5.1 283 4.8 81 15.7 279 3.0 22 △24.1 641 9.0 50 △20.6 運搬・清掃・包装等従事者 35,297 1.1 5,369 △3.0 1,982 0.1 9,926 △0.1 1,755 3.2 18,885 3.4 1,117 △5.4 分類不能の職業 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 0 【P28-29】 研究開発レポート 精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門 1 調査研究の背景と目的 (1)背景  精神障害者保健福祉手帳(以下、「手帳」)は、障害の程度の重いほうから1級、2級、3級の等級があり、その判定は、「精神疾患(機能障害)の状態」と「それに伴う生活能力障害の状態」の両面から総合的に行われます(厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領」)。判定は就労場面における状態とは別の観点で行われるため、就労上の困難とどの程度関係するかは必ずしも明確ではありませんでした。  労働政策審議会障害者雇用分科会などでも、精神障害のある人の雇用の促進等を議論するなかで、手帳の等級と就労上の困難との関係がしばしば話題となっていましたが、参考になる資料は十分にない状況でした。 (2)目的  本調査研究(※1)は、このような状況をふまえ、精神障害のある人の手帳の等級と就労上の困難との関連を把握することを目的としています。就労上の困難は、アンケートで直接把握することがむずかしいと考えられたことから、事業主が雇用管理上の配慮・措置を実施しているかどうか、またそれがどの程度負担かという観点から把握することとしました。  また、「精神障害者の就労困難性と精神障害者保健福祉手帳の等級は必ずしも関係するものではない」(「労働政策審議会障害者雇用分科会意見書」)といった意見がすでにあることをふまえ、手帳の等級以外に配慮・措置の実施状況と、おもな疾患およびそのほかの要因との関連も検討することとしました。 2 調査研究の方法  本調査研究では、@企業調査、A現場調査、B障害者(当事者)調査という3種類のアンケート調査を実施しました。@は企業・法人全体に関する調査となるため、人事・労務の人に回答を求めました。Aは精神障害のある人を雇用する現場の事情のわかる人(現場担当者)、Bは雇用されている精神障害のある人にそれぞれ回答を求めました。有効回収数は、@2553社、A3638人、B2601人でした。 3 調査研究の結果 (1)企業調査  回答のあった企業・法人のうち、従業員規模が100〜299人の企業・法人が1133社(44%)で最も多く、次いで300〜499人の企業・法人が389社(15%)でした。企業・法人全体で実施している雇用管理上の配慮・措置は「障害特性に応じた配置先の決定、業務の選定・創出等」が79%で最も多く、次いで「通院・体調等に配慮した出退勤時刻、勤務時間、休暇・休憩など労働条件の設定・調整」(57%)、「定期的な面談による体調及び業務管理」(52%)などが多くなっていました。 (2)現場調査  現場調査で対象となった精神障害のある人(以下、「対象者」)のおもな疾患は、「気分障害」(27%)が最も多く、次いで多かった疾患は不明(17%)、「統合失調症」(14%)、「ASD」(14%)、「ADHD」(7%)でした。手帳の等級は、1級が3%、2級が42%、3級が49%でした。おもな疾患を手帳等級別に見ると、多くの疾患で3級が最も多いのですが、統合失調症と高次脳機能障害は2級が最も多くなっていました。対象者の就業上の課題を聞いたところ、「課題あり」または「やや課題あり」とされた対象者は「とっさの事態に対する判断力」が36%で最も多くなっていました。  個々の対象者に対する雇用管理上の配慮・措置で実施率が高い項目は、「本人の適性・能力に合った業務や配置部署を設定する(業務設定)」(76%)、「体調に変化があり、職務遂行や勤怠に影響する場合に対応する(体調変化)」(73%)、「業務指導や相談に関して担当者を決める(担当者)」(67%)、「上司や雇用管理担当者による定期的な面談を行う(定期面談)」(64%)などでした(図)。これらの配慮・措置の負担の程度については、「本人の障害特性に応じてマニュアル・工程表等を作成する(マニュアル等)」が46%、「本人の障害特性に応じて作業内容や作業手順を見直す(作業内容等)」が42%の対象者で負担があると回答されていました。負担の程度を手帳等級別に確認したところ、大きな違いは見られませんでした。 (3)障害者(当事者)調査  障害者(当事者)調査では、精神障害のある人(以下、「当事者」)のおもな疾患は、「気分障害」(28%)、「ASD」(21%)、「統合失調症」(20%)などが比較的多くなっていました。手帳の等級は、1級が2%、2級が45%、3級が51%でした。  当事者が会社から受けている配慮・措置は、「調子の悪い時に休みを取りやすくする」(63%)、「業務遂行の支援や本人・周囲に助言する者等の配置」(62%)、「業務実施方法についてのわかりやすい指示」(61%)などが比較的多くなっていました。 (4)配慮・措置の実施状況に関連する要因  現場調査の結果をもとに、対象者に対する配慮・措置の実施の有無や負担の程度に関連する要因を、一般化線形モデル(GLM)という統計学的な手法を用いて分析しました。その結果、配慮・措置の実施や負担の程度に手帳の等級が関連するとする積極的な証拠は得られませんでした。一方で、対象者の就業上の課題が大きくなること、対象者の日常的な体調把握の実施、企業・法人全体の配慮・措置の取組み、就労支援機関との連携などが一部の配慮・措置の実施を促進する可能性が考えられました。また、企業・法人全体の配慮・措置の取組みは、一部、個々の対象者に対する配慮・措置の実施の負担の程度を小さくする可能性が考えられました。 4 まとめ  本調査研究の結果からは、個々の対象者に対する配慮・措置の実施やその負担の程度について、手帳の等級との関連はほとんど見られませんでした。一方で、企業全体の取組みなどが配慮・措置の実施を促進し、部分的に負担の程度も小さくする可能性が示唆されました。本調査研究は、どのような取組みが、対象者への配慮・措置をうながし、また配慮・措置実施の負担の程度を小さくする可能性があるのかという点について、限定的ながら明らかにしました。その成果をふまえ、マニュアル(※2)も作成しました。調査研究報告書とあわせてご活用いただければと思います。 ※1 調査研究報告書No.182「精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関する調査研究」は、以下のホームページでご覧になれます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku182.html ※2 マニュアル、教材、ツール等No.85「精神障害者保健福祉手帳を所持する方の就業の状況と企業が取り組む職場の配慮・措置―『精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関する調査研究』の結果から―」は、以下のホームページでご覧になれます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai85.html ◇お問合せ先 研究企画部 企画調整室 (TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図 配慮・措置を実施した対象者数 実施した対象者数(人) 職場実習 1,730 援助者 943 担当者 2,445 定期面談 2,346 就業環境 1,232 休憩場所 1,210 照明等 613 業務設定 2,775 マニュアル等 1,088 作業内容等 1,732 機器提供 676 通院・服薬 2,139 体調変化 2,667 労働時間 2,163 休暇制度 1,997 コミュニケーション課題 2,231 配慮説明 2,163 教育訓練 402 目標決定 1,667 職場外課題 1,672 情報共有 624 産保活用 592 (配慮・措置は項目数が多く、また項目名が長いため略記としました。詳細は調査研究報告書No.182の64ページを参照してください) 【P30】 ニュースファイル 国の動き 内閣府 「手話施策推進法」施行  「手話に関する施策の推進に関する法律(手話施策推進法)」が2025(令和7)年6月25日に公布・施行された。概要は左記の通り。  手話施策推進法は、第一条で「手話がこれを使用する者にとって日常生活及び社会生活を営む上で言語その他の重要な意思疎通のための手段」であることから、「手話に関する施策を総合的に推進」することを目的としている。  基本理念は、@手話の習得・使用に関する施策について、手話の習得・使用に関する必要かつ合理的な配慮が適切に行われるために必要な環境の整備、A手話文化の保存・継承・発展、B手話に関する国民の理解と関心を深めるようにする、というもの。国・地方公共団体は、手話に関する施策を総合的に策定・実施する責務を有するとしたほか、基本的施策として、教育現場等における手話の習得支援や配慮、職場や生活環境における整備、手話に関する人材確保や調査研究の推進、手話に関する啓発活動や国際交流の支援などをあげている。 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jsl.html 働く 全国 ダイバーシティ就労支援実践研修  公益財団法人日本財団(東京都)が、働きづらさを抱えているすべての人の就労支援をめざすプロジェクトの一環として主催する「第4回ダイバーシティ就労支援実践研修」(後援:厚生労働省)の受講生募集を開始した。  研修期間は2025(令和7)年10月〜12月の3カ月程度で、オンデマンド配信による座学のほか、東京での演習がある(参加できない場合はオンデマンド配信)。各講義30分〜60分程度で、5択方式・5問程度の自己採点式確認テストがある。質問はメールで受けつけ返答する。受講費用は1万8千円(税込)、全課程修了者には日本財団会長名の修了証を発行する。  冒頭講義には村木(むらき)厚子(あつこ)さん(全国社会福祉協議会会長)、清家(せいけ)篤(あつし)さん(日本赤十字社社長)、朝日(あさひ)雅也(まさや)さん(埼玉県立大学名誉教授)、村木(むらき)太郎(たろう)さん(ダイバーシティ就労支援機構理事長)が登壇予定。このほか「態様の異なる就労・雇用の悩みを抱える人たちとの関わり方」、「就労支援・雇用支援のための真の支援力を高める」、「企業の視点に立った雇用・就労支援・自治体の取組み」、「就労・雇用支援の新しい動き」などをテーマに、各分野の最前線で活躍する専門家を講師に招いた講義となっている。申込みや問合せは、本研修を運営するダイバーシティ就労支援機構(東京都)のホームページから。 https://jodes.jp 高知 JA全農「ノウフクJAS認証」取得  全国農業協同組合連合会(JA全農)(東京都)は、施設園芸の実証農場「ゆめファーム全農こうち」(安芸(あき)市)について「ノウフクJAS」の認証を取得したと発表した。ノウフクJASは、農福連携の取組みによって生産された産品の規格。農林水産物の主要な生産工程に障害のある人がたずさわっていることや、外部からの問合せに応じて障害のある人がたずさわった主要な生産工程を回答できるなどの基準がある。  「ゆめファーム全農こうち」ではナスの大規模多収型施設園芸に取り組み、周年出荷を行っている。ナスの集荷・袋加工・出荷などの業務について農業・福祉事業所「一般社団法人こうち絆ファーム」(安芸市)と連携し、年間を通じて障害者の労働と就業機会の拡大を図っているという。今後は他地域の「ゆめファーム全農」にもノウフクJASを展開予定。 https://www.zennoh.or.jp/press/release/2025/105828.html  「ノウフクJAS」については、農林水産省ホームページへ。 https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/noufuku_jas.html 鳥取 大手コンビニ店を引き継ぎ働く場に  障害のある人などの就労継続支援事業などを行っている「特定非営利活動法人あかり広場」(以下、「あかり広場」)(米子(よなご)市)が、日南町(にちなんちょう)の唯一のコンビニエンスストア「ローソン日南生山(にちなんしょうやま)店」の運営を引き継ぐことになり、2025(令和7)年7月1日に町長らが出席した記念セレモニーが開かれた。  同店は、道の駅「にちなん日野川(ひのがわ)の郷(さと)」やホームセンターなどが並ぶ町有地に2015(平成27)年にオープン。前オーナーが契約期間満了に合わせて運営から退くことになったため、道の駅の清掃業務の受委託実績があるあかり広場に対し、町側が運営の引継ぎを打診していたという。  店の営業は6時〜22時。あかり広場で就労支援などを担当してきた職員が研修を受けて店長に就任し、アルバイトとともにあかり広場を利用する障害のある人3人が清掃や品出しなどの業務にあたる。店内には障害者アート作品も飾られ、自主製品の販売なども予定している。 生活情報 大阪 知的障害者向けの母子手帳  びわこ学院大学の藤澤(ふじさわ)和子(かずこ)教授(特別支援教育)と西南女学院大学の杉浦(すぎうら)絹子(きぬこ)教授(看護学)らでつくる研究班が、知的障害のある人の出産・子育てを支援するため、やさしい言葉やイラストを使った「わかりやすい母子健康手帳」(A5判、74ページ)を国の科学研究費で作成した。  これまで母子健康手帳の外国語版や点字版はつくられているが、知的障害者向けは初めて。国が定める様式に準拠した内容になっており、すべての漢字にふりがなをふっているほか、むずかしい用語はわかりやすい表現に変更している。視覚的に伝わりやすくなるようイラストも多く盛り込んだ。  社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会(大東市)のホームページから無料でダウンロードできるほか、希望する自治体には印刷したものを配布可能。詳細は同会ホームページで公開されている。 https://www.osaka-ikuseikai.or.jp 本紹介 『部下の発達特性を活かすマネジメント』  メンタルサポート&コンサル沖縄代表の佐藤(さとう)恵美(えみ)さんが『部下の発達特性を活かすマネジメント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)を出版した。佐藤さんは精神保健福祉士、公認心理師などの専門資格を持つ。長年職場のメンタルヘルス問題にたずさわってきた経験をふまえた著書『もし部下が発達障害だったら』(同社刊)を全面的に改訂し、事例を多数追加した。  発達特性の理解に基づき「なぜそうなるのか?」という疑問に答えつつ、職場でのコミュニケーションや業務遂行における具体的な場面で「どうすれば働きやすいのか?」を実践的なアドバイスを交えて解説している。四六判224ページ、1870円(税込) アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2025年度地方アビリンピック開催予定 10月〜11月 北海道、青森県、千葉県、神奈川県、石川県、山梨県、滋賀県、山口県、大分県 *開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります *  は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※日程や会場については、変更となる場合があります。 ※第45回全国アビリンピックは10月17日(金)〜10月19日(日)に、愛知県で開催されます。 写真のキャプション 北海道 青森県 千葉県 神奈川県 石川県 山梨県 滋賀県 山口県 大分県 【P31】 ミニコラム 第50回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は松爲委員が執筆しています。ご一読ください。 障害者雇用の進化と三位一体支援モデルの力 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄  本誌2025年1月号の新春特別対談(※)で「三位一体支援モデル」を提唱して以来、ずっとこのことを考え続けています。  このモデルは、持続可能で質の高い障害者雇用の形成について、@障害者雇用における環境(企業)の「雇用の質の向上」、A企業と個人の相互作用を促進させる支援者の「支援の質の向上」、B個人(当事者)の「キャリア意識の向上」の三者それぞれが、独立して向上すると同時に、互いに連携し、協働的な相互作用を活発化させることによってはじめて、「生活の質」や「ウェルビーイング」が進化していくと考えるものです。  その根底には、当事者は単に支援を受け入れるだけでなく、自らのキャリアを主体的に構築する能動的な存在であり、事業所も単に障害者を受け入れるだけでなく、多様な人材を活かすことで組織自身の生産性や創造性を高めて変革を遂げることができ、さらに、支援者は専門知識を一方的に提供する権威ではなく、当事者と事業所の対話を促進して両者の成長を側面から支えるファシリテーターとなることを意味します。  今回の取材では、特例子会社とそうでない企業の人事労務管理の状況を比較しながら、このモデルの主体の一つである「雇用の質」を考えてみました。 ※本誌2025年1月号、八重田淳編集委員との新春特別対談「これからの時代の障害者雇用とは」はJEEDホームページからもご覧いただけます。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202501/index.html#page=22 【P32】 掲示板 障害者職業訓練推進交流プラザのご案内 〜障害者の職業能力開発にかかわるみなさまへ 会場参加とオンライン参加を選べます。 参加費は無料です! 障害者職業訓練推進交流プラザ 検索 開催日時:2025(令和7)年11月7日(金) 10:00〜16:30 会場:障害者職業総合センター(千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3) ★内容およびお申込み方法については、確定次第JEEDホームページに掲載いたしますので、ぜひご覧ください。 【お問合せ先】 職業リハビリテーション部指導課広域係 TEL:043-297-9030 E-mail:ssgrp@jeed.go.jp 読者アンケートにご協力をお願いします! ※カメラで読み取ったリンク先が「https://krs.bz/jeed/m/hiroba_enquete」であることをご確認ください。 回答はこちらから→ 次号予告 ●この人を訪ねて  障害や難病のある人についての啓発活動等を行っている特定非営利活動法人両育わーるど理事長の重光喬之さんに、「難病者」が働くためにどのような取組みが必要かなどについてお話をうかがいます。 ●職場ルポ  甲府市に本店のあるカーディーラーの山梨トヨペット株式会社(山梨県)を訪問。各店舗で洗車や整備補助をしながら、自動車整備士へのキャリアステップも目ざせる取組みなどを取材します。 ●グラビア  テント・シートの設計や販売、イベント運営などを展開している株式会社輝城(愛媛県)を取材。アビリンピックに積極的に参加し、入賞もしている障害のある従業員が働く職場をご紹介します。 ●編集委員が行く  金塚たかし編集委員が、Webシステム開発をおもな業務として、多くの障害のある従業員が活躍し、みんなが働きやすい職場づくりを進めている有限会社奥進システム(大阪府)を訪問。精神障害のある人の雇用に向けた取組みについてお伝えします。 メールマガジン 好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 電話 043-213-6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●編集委託−株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 電話 03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 10月 令和7年9月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 取締役 大野聡士 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 武庫川女子大学 准教授 増田和高 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 国際医療福祉大学 准教授 若林功 【P33】 右下のホームページもしくは下の2次元コードから参加申込みをお願いします。 入場無料 第33回 職業リハビリテーション 研究・実践発表会  当機構(JEED)では、職業リハビリテーションの研究成果を広く周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を行う場として「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を毎年開催しています。  この発表会では「特別講演」、「パネルディスカッション」、分科会形式による「口頭発表」、「ポスター発表」を行います。ぜひご参加ください。 2025年 11月12日(水) 13日(木) 会場 東京ビッグサイト会議棟 (東京都江東区有明3-11-1) 事務局:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 研究企画部企画調整室 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 TEL:043-297-9067 Mail:vrsr@jeed.go.jp HP:https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/vrhappyou -index.html 11月12日[水] ◆基礎講座 職業リハビリテーションに関する基礎的事項等に関する講義 「精神障害の基礎と職業的課題」「『就労支援のためのアセスメントシート』を活用したアセスメント」 ◆支援技法普及講習 職業センターで開発した支援技法の紹介 「高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材」 「発達障害者の強みを活かすための支援」 ◆特別講演 「誰もが力を発揮できる職場づくり〜一人ひとりが生き生きと成長し、能力を発揮できる組織へ〜」 龍田久美氏(オリンパスサポートメイト株式会社 代表取締役社長) ◆パネルディスカッションT 「“働き続けたい”を支える〜高齢化する障害者雇用の今とこれから〜」 11月13日[木] ◆研究・実践発表(口頭発表・ポスター発表) 研究者、企業関係者などが研究成果や実践報告などを発表します。口頭発表は、障害者雇用に関するテーマを設定した 分科会ごとに登壇形式で行います。 ポスター発表は、テーマごとに発表者が自作のポスターを展示し、参加者と直接意見交換を行います。 ◆パネルディスカッションU 「“定着・活躍・成長”につながる障害者雇用×雇用の質を高めるための支援を考える」 【裏表紙】 第45回 全国アビリンピック 障害者ワークフェア2025 〜働く障害者を応援する仲間の集い〜 入場無料 2025(令和7)年10月17日(金)〜10月19日(日) 10月17日(金) 開会式 10月18日(土) 技能競技および障害者ワークフェア 10月19日(日) 閉会式 アビリンピック マスコットキャラクター アビリン 開催場所 愛知県国際展示場AICHI SKY EXPO 愛知県常滑市セントレア5-10-1 ●中部国際空港駅より徒歩5分 全国アビリンピック 第45回全国アビリンピックでは、全25種目の技能競技を実施します。全国各地から集った400人を超える選手たちが日ごろつちかった技能を披露し、競い合います。 なお、本大会は、第11回国際アビリンピック(2027年5月フィンランド・ヘルシンキにて開催)に向けた派遣選手選考会を兼ねて実施します。 障害者ワークフェア 障害者ワークフェアでは、「働く障害者を応援する仲間の集い」として、約100企業・団体による出展を予定しています(能力開発、就労支援、職場紹介の三つのエリアによる展示・実演のほか、ステージイベント、各種特設コーナーなど)。 当日はライブ配信も予定しています! アビリンピック 検索 主催(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)、愛知県 写真のキャプション 電子機器組立 喫茶サービス 障害者ワークフェア 成績発表 10月号 令和7年9月25日発行 通巻576号(毎月1回25日発行)