【表紙】 令和7年10月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第577号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2025/11 No.577 職場ルポ 自動車整備の現場、働きながら資格も取得 山梨トヨペット株式会社(山梨県) グラビア 「工場長代理」としての誇りをもって 株式会社輝城(愛媛県) 編集委員が行く 相互理解と納得感、とことん話し合う文化 課題を「仕組み」で解決するシステム会社 有限会社奥進システム(大阪府) この人を訪ねて 難病者も「働きたいし、働ける」ことを知ってほしい 特定非営利活動法人「両育わーるど」理事長 重光喬之さん 「科学者 〜新しい薬をつくろう〜」 愛知県・伊藤(いとう)歩眸(あゆむ)さん 11月号 【前頁】 心のアート アトリエの窓の光 日下真由美 (就労継続支援B型事業所ポラリス) 画材:キャンバス、アクリル絵の具、筆/サイズ:M8号(455mm×273mm)  物心つく前から絵や文字を描いていたという日下真由美さん。事業所では火曜日と木曜日の午後にアート活動をすることが多く、職員と一緒に花や葉っぱに触れながら「これいいね、描いてみようか」とモチーフを探し、おもに自然のものを描いてきた。  事業所のアトリエが近所の昭和レトロな古民家にあったころには、決まって窓際の席に座り、窓から眺める庭の景色を描いた。窓から差し込む太陽の光と色とりどりの草花、庭に植えてあったキウイフルーツの木からもぎ取ったばかりの二つの実など、目の前に広がる自然を色でとらえた作品が多く残されている。職員によると「だんだんと細かく、はっきりとした色づかいをするようになってきた」そうで、何色もの絵の具をキャンバスに塗り重ね、数日おいてまた塗り重ね、数カ月かけて仕上げているという。 (文:NPO法人エイブル・アート・ジャパン、障害者芸術活動支援センター@宮城〈SOUP〉鎌田(かまた)貴恵子(きえこ)) 日下真由美(くさか・まゆみ) 1994(平成6)年5月生まれ 2015年・2023(令和5)年 「やまのもとのアート展」出展(宮城県/宮城県亘理郡(わたりぐん)山元町(やまもとちょう)内) 2017年 「Art to You!東北障がい者芸術公募展」入選(宮城県/せんだいメディアテーク) 2022年 「第4回きいて、みて、しって、見本市。ニューカマーセブン」出展(宮城県/せんだいメディアテーク) 「『みやぎ・やまがたニューカマー2022』展」出展(山形県/ぎゃらりーら・ら・ら) 2023年 「第45回山元町町民文化祭」出展(宮城県/つばめの杜ひだまりホール) 協力:NPO法人エイブル・アート・ジャパン、障害者芸術活動支援センター@宮城 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2025年11月号 NO.577 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 アトリエの窓の光 作者:日下真由美(就労継続支援B型事業所ポラリス) この人を訪ねて 2 難病者も「働きたいし、働ける」ことを知ってほしい 特定非営利活動法人「両育わーるど」理事長 重光喬之さん 職場ルポ 4 自動車整備の現場、働きながら資格も取得 山梨トヨペット株式会社(山梨県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 はじめての障害者雇用〜職場定着のための取組み〜 第3回 職場で起きた課題への対処 JEEDインフォメーション 12 2025(令和7)年度就労支援者向け研修のご案内/2025(令和7)年度新規開催「ステップアップ研修U」のご案内/「障害者雇用事例リファレンスサービス」を活用して「働く広場」の掲載記事が探せます! グラビア 15 「工場長代理」としての誇りをもって 株式会社輝城(愛媛県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 ITが切り開く、視覚障害者の新しい可能性 第2回 ITが拓くキャリアチェンジの道〜あるヘルスキーパーの挑戦〜 株式会社ふくろうアシスト 代表取締役 河和 旦 編集委員が行く 20 相互理解と納得感、とことん話し合う文化 課題を「仕組み」で解決するシステム会社 有限会社奥進システム(大阪府) 編集委員 金塚たかし 省庁だより 26 令和7年版 障害者白書概要@ 内閣府ホームページより抜粋 研究開発レポート 28 職場における情報共有の課題に関する研究 ―オンラインコミュニケーションの広がりなど職場環境の変化を踏まえて― 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 読者の声 表紙絵の説明 「病気を治してあげたいけど、手術をするお医者さんはちょっと無理そう。だけど薬を研究してつくる仕事なら座ってできるから、車いすでもできそう。そんなことを思いながら、科学者が使う道具を調べていろんな道具も描きました」 (令和7年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学生の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 この人を訪ねて 難病者も「働きたいし、働ける」ことを知ってほしい 特定非営利活動法人「両育わーるど」理事長 重光喬之さん しげみつたかゆき 1979(昭和54)年東京都生まれ。システムエンジニアとして民間企業に勤めていた2005(平成17)年に脳脊髄液減少症を発症。二度の退職と自宅療養を経て2012年に「特定非営利活動法人両育わーるど」を設立。2018年に立ち上げた「難病者の社会参加を考える研究会」は2021(令和3)年に「難病者の社会参加白書」を作成し全国の自治体などに配布。2022年にマニフェスト大賞(主催:マニフェスト大賞実行委員会)で優秀グッドアイデア賞受賞。 「療育は両育」 ――まずは「両育わーるど」の設立経緯から教えてください。 重光 そもそもの始まりは、大学2年生のときに音楽バンド仲間に誘われて始めた療育施設でのボランティア活動でした。知的障害のある子どもたちと過ごすなかで、自分自身の価値観が変わり、多くのことを教わった気がします。  その後、システムエンジニアとして就職しましたが、しばらくして首の痛みを覚え、あちこちで診察を受け2005(平成17)年末に脳脊髄液減少症と診断されました。原因不明で、当時は新しい病気だったこともあり健康保険が使えず医療費は全額自己負担でした(2016年から一部保険適用)。入退院をくり返し、休職と退職を2回ずつ経験。いまも体の痛みなどで一日の大半を横になって過ごす生活です。  それでも起業なら可能かもしれないと思い、ビジネススクールに通いました。授業でテーマを掘り下げるなかで、療育施設での支援経験自体に価値があることを再認識し、有志6人で2011年に立ち上げたのが「療育は両育プロジェクト」でした。内容は、療育現場で子どもと支援員に会社員が加わり、一緒に個別指導をするサポーター事業です。子どもは知らない人とチャレンジした自負を、支援員は子どもの新たな力の発見、会社員も違った視点からの気づきを得られます。翌年に「特定非営利活動法人両育わーるど」を設立しました。サポーター事業は、障害福祉と社会の接点を増やす「THINK(シンク)UNIVERSAL(ユニバーサル)」事業として引き継いでいます。 当事者エピソードを集めて公開 ――難病者のエピソードを公開したサイト「feese(フィーズ).jp」も立ち上げましたね。 重光 私が地域の障害福祉現場にもかかわるようになるなかで、「障害に対する理解や制度は進んでいるが、難病は認知もされていない」ことに気づいたのがきっかけです。私の病気は指定難病にも含まれていません。最初はWebメディアなどで発信し、SNSでの交流などを経て、「同じ病気の人がいる」と感じられるような情報提供を目的に、非交流サイト「feese.jp」を2017年に立ち上げました。20人ほどから集まったエピソードを公開したところ、ほかの難病者からも参考になったという声が多く届きました。病名が違っても、理解されない終わりのない難病であり、学校や仕事、恋愛や結婚、お金など悩むことは同じです。この当事者エピソードは、いまは「THINK(シンク) POSSIBILITY(ポシビリティ)」事業としてホームページで公開しています。 「難病者の社会参加白書」 ――2021(令和3)年には「難病者の社会参加白書」を発行し反響を呼びました。 重光 「feese.jp」を通して集まったのは、病名に関係なく「働きたい」というみなさんの思いでした。そこで知合いの先生や企業と「難病者の社会参加を考える研究会」を立ち上げました。  難病者の課題は、疾患の判断基準があいまいで、雇用機会が狭まっていることです。例えば、障害者雇用率に算定されるのは障害者手帳の所持者ですが、類似の状況で同様の困難を抱えていても手帳を取得できない難病者が多いのが現状です。  私たちが難病者の就労実態を調査し、まとめたのが「難病者の社会参加白書」です。全国の自治体など約2300カ所に配布しました。  このなかでは、働く選択肢を増やす手段としてショートタイムワーク、難病者特化型就労移行支援、プラットフォームモデルの三つの就労モデルを提示したほか、自治体の先進事例として兵庫県明石(あかし)市を紹介しています。ここは約10年前から「身体・知的・精神障害者、発達障害者並びに難病患者など」を対象に職員募集を開始し、実際に短時間勤務で働く方がいます。今年度は山梨県が初めて難病患者の限定枠で正規職員3人を採用し、今夏には千葉県も同様の採用枠導入を決めました。こうした動きが民間企業にも波及していくことが目標です。 就労のためのセルフコントロール ――難病者のセルフコントロール支援も始めるそうですが、どんな内容ですか。 重光 まずは働ける、働きたい難病者について認知してもらうため、私たちは「RD(※1)ワーカー」という呼び名をつくりました。RDワーカーには、指定難病や「難病者の社会参加白書」独自定義の難治性慢性疾患の人々も含みます。  そして、時間的な柔軟性や在宅勤務などを組み合わせたRDワーカーの新しい働き方を実現するため、日々の症状・稼働状況を可視化させるプログラムを開発中です。自身の主観的な症状を10段階で分類し、業務を負荷に応じて5分類し、生体データなども加味し「いつ、どのくらいの時間安定して働き続けられるか」という勘どころを明確にします。  難病者30人ほどのトライアルを分析し、RDワーカーを3タイプに分けました。「ゆるゆる変動(数週間〜数カ月単位など体調変動が緩やかでフルタイム勤務も可能)」、「そこそこ変動(数日単位の波があり半日勤務などが望ましい)」、「せかせか変動(1日のなかでも変動が大きく超短時間なら勤務可能)」です。難病の慢性症状は、心身のストレスでも変わります。トライアルからはストレスコントロール、例えば少し昼寝する、食事の量を少し減らすだけでも稼働時間を延ばせる当事者もいました。  可視化したデータを自分のトリセツ(取扱い説明書)に落とし込み、職場内で同僚同士で共有することで、難病者の復職や継続勤務に向けた支援などに活用できます。 700万人の潜在労働力 ――今夏には4年ぶりに白書を出されましたね。 重光 より多くの人や企業に協力してもらい、とても充実した内容になりました。コロナ禍を経て変化した就労環境もふまえ、企業や自治体、当事者へのアンケート調査、取組み事例、当事者エピソードなどを全244ページにまとめ、両育わーるどのホームページでも公開しています。  今回の調査で浮き彫りになった一番の課題は、みなさんがイメージする難病と、実態の乖離(かいり)でした。調査対象の企業や自治体のなかには、難病者の就労は、特別な支援と仕事内容でなければ無理だと思い込んでいるところもありました。今回はあらためて「難病の人は働きたいし、働ける」ことを知ってもらうために、白書の巻頭でRDワーカーの特集をしています。  国内には2025年現在、348種の指定難病患者約108万人を含め、難病者が約700万人(※2)いるという推計もあります。難病者の就業や社会参加を進めることは、労働力人口が減り続ける社会で、潜在労働力の活用につながることは間違いありません。子育てや介護、持病での定期的な通院などさまざまな事情がありながら働いている方が大勢いると思いますが、全員が無理をしてフルタイムで働く必要はあるのでしょうか。フルタイム以外の選択肢が広がることで、だれもが働きやすくなるのではないでしょうか。  さらに付け加えるならば、私は、難病者には効率的に働く人が多いように感じています。病状による制約があるから逆に創造的で、そこに可能性があると思います。そういう事例を増やしていきたいですね。 ※1 Rare Diseaseの略。英語で「希少疾患」を意味する ※2 希少疾患および指定難病医療費受給者証未所持の指定難病および難治性慢性疾患を含む。人数は米国の希少疾病患法による疾患人口比率により算出 【P4-9】 職場ルポ 自動車整備の現場、働きながら資格も取得 ―山梨トヨペット株式会社(山梨県)― 自動車の販売会社では、各店舗の整備工場を中心に知的障害や精神障害のある従業員が配置され、国家資格取得も支援しながら戦力化が図られている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 山梨トヨペット株式会社 〒400-0815 山梨県甲府市(こうふし)国玉町(くだまちょう)238-1 TEL 055-235-0101(代表) FAX 055-237-2253 Keyword:知的障害、精神障害、特別支援学校、職場実習、資格、自動車整備士 POINT 1 職場実習した店舗にそのまま配属、転勤のない職場で安定して就労 2 自動車整備士の資格取得を奨励し、講習も勤務扱い 3 参加型の社会貢献活動や新入社員研修で、職場全体の意識向上も 県内9店舗で自動車販売  「山梨トヨペット株式会社」(以下、「山梨トヨペット」)は1957(昭和32)年にトヨタ自動車株式会社の販売店として設立され、2005(平成17)年には、地元で創業450年以上になるという老舗企業「株式会社吉字屋(きちじや)本店」のグループ会社になった。県内で新車・中古車を販売する9店舗を展開している。  これまで障害者雇用を継続して進めてきた結果、2017年に重度の知的障害のある男性を採用したことを機に、いまでは従業員190人のうち障害のある従業員は10人(身体障害3人、知的障害6人、精神障害1人)で、障害者雇用率は6.38%(2025〈令和7〉年6月1日現在)という。執行役員で営業部長と人事総務部長を務める小池(こいけ)隆考(たかなる)さんは「将来的には全店舗に障害のある従業員を配置するつもりです。それほど大事な戦力となっています」と説明する。  2021年度に「障害者雇用優良事業所」として、当機構理事長努力賞を受賞し、2025年度には「もにす認定事業主」(障害者雇用優良中小事業主)にも認定されている。  店舗に併設された整備工場で働く従業員を中心に、キャリアアップも含めた職場の取組みを紹介する。 「車が好き」だからこそ  山梨トヨペットでは10年ほど前まで、中途障害の従業員が1人いただけで、障害者の法定雇用率は長らく未達成の状態だったという。ハローワークからの指導を受けて合同就職面接会にも参加したが、なかなか採用に至らなかった。  それでもハローワークに求人票を出し続けていたところ、1人の紹介があった。重度の知的障害のある30代男性(以下、「Aさん」)で、「車が好き」ということを知り、採用してみることにしたという。  当時からかかわってきた人事総務部人事総務グループの別符(べっぷ)幸治(こうじ)さんによると、Aさん向けに最初に切り出した仕事は、中古車店舗での洗車業務だった。別符さんが当時のことを説明する。  「店頭に多くの車が並び、日ごろは営業担当者や整備士が仕事の合間をみつけて洗っていました。洗車のアルバイトを雇ってほしいとの声もあり、車が好きな人なら職場になじみやすいだろうとも考えました」  ただ、Aさんの雇用については店舗側からは「かえって自分たちがたいへんになるのではないか」という不安や抵抗の声があったのも事実だったという。人事総務グループの担当者が何度も店舗に出向いて「絶対に助かるはずだから」と理解を求めた。  Aさんが利用していた障害者就業・生活支援センターの担当者が支援する形で約1カ月間の職場実習と半年間のトライアル雇用を経て、2017年4月に入社した。「計算や覚えることが苦手ということでしたが、こちらの話している内容はちゃんと理解してくれて業務上の支障はありませんでしたし、洗車も一生懸命に取り組んでくれました」と別符さん。  一方で、Aさんは以前の職場を人間関係が原因で辞めたと聞いていたこともあり、人事総務グループの担当者がこまめに店舗へ足を運んだ。そうして様子を見聞きするうちにわかってきたのは、Aさんは日常会話に特に支障がないため、周囲もつい重度の知的障害があることを忘れて業務を任せてしまうことだった。Aさんから「できない仕事を指示されることがあり、辞めたいと思った」と明かされたこともあり、別符さんたちが障害の内容や特徴について同僚たちに説明をくり返したそうだ。  救いだったのは、職場に同じ車好きの同僚がいたことだ。休憩時間などに車部品の取りつけなどを一緒に楽しむ機会が増え、Aさんも「もう少しがんばってみようと思った」と話すようになった。そのうちAさんは「車好き」が功を奏する形で整備の補助的な仕事もできるようになり、「8年経ったいまでは、店長から『いてもらわないと困る』といわれるほどの存在になりました」(別符さん)という。 自動車整備士の資格取得  重度の知的障害のあるAさんの採用によって法定雇用率は達成したが、その後もハローワークに求人票を出し、2019年に採用したのが菅野(すがの)晃(あきら)さん(28歳)だ。4年制大学の機械科に入学するも中退。通院していた山梨県立北病院のデイケア部門や当機構(JEED)の山梨障害者職業センターの支援を受けたそうだ。最初のAさんと同じように職場実習とトライアル雇用を経て、本店に配属された。  配慮事項として伝えられていたのは「自分の思いを言語化することは苦手だけれども、まじめな性格なので、話しかければ気持ちを伝えることはできる。自由度の高い場面では漠然とした不安があるので、ある程度やることが決まっていると本人もスムーズに動ける」といったことだった。  やはり洗車業務からスタートしたが、マニュアルがあるわけではないので、それまで担当していた整備士の先輩がOJTの形で教え込んだ。菅野さんは当時をふり返り「まったく初めてのことばかりで、全然わかりませんでした。先輩のみなさんは仕事も早くて、その動きについていくのがたいへんでした」と話す。  それでも菅野さんは早いうちから整備補助という業務も任された。タイヤの空気圧の調整といった初心者向けの業務から始め、タイヤ交換時の準備など必要に応じて指示や指導を受けながら、できる作業も増えていった。  そうしているうちに職場の上司から「どうせなら、自動車整備士の資格を取ってみる?」と声をかけられた菅野さんは、「取れそうならやってみよう」と挑戦することにした。専門の学校を出ていない菅野さんに対し会社側は、勤務中に一般社団法人自動車整備振興会の技能講習所に半年ほど通えるようにした。  そうして2023年、国家資格である三級自動車整備士に一発合格。三級を取得すると、自動車のエンジンオイルやタイヤの交換をはじめ簡単な点検整備などを単独で行えるほか、上位者の指示に従い車の主要箇所の整備にもたずさわることができる。菅野さんも現在は、洗車と整備補助の仕事を半々ぐらいの割合で担当するようになった。今後は、二級取得にも挑戦する予定だという。  山梨トヨペットに入社するまで、アルバイトもほとんどしなかったという菅野さんは「ここで働き始めてから、人とのかかわり方など、できることが増えました。今後も自分なりにできることをして仕事を続けていきたいです」と語ってくれた。  整備工場のトップとして本店サービスマネージャーを務める小野(おの)和昭(かずあき)さんは、菅野さんの働きぶりについて「彼は作業がていねいで、全体的な品質のよさは間違いないです」としたうえで、今後は「さらに車に興味を持ってもらいながら、スキルアップですね。二級自動車整備士も目ざし、業務の幅を広げていってほしいです」と期待する。 特別支援学校からの実習生  山梨トヨペットでは、その後、山梨県立高等支援学校桃花台(とうかだい)学園(がくえん)(以下、「桃花台学園」)からの職場実習生を、継続的に受け入れることになった。同社の代表取締役社長を務める野(たかの)孫左ヱ門(まござえもん)さんが2015年の同校設立にかかわった縁がきっかけだそうだ。  桃花台学園は産業技術科(定員48人)のみが設置され、軽度の知的障害のある生徒を対象にした職業教育を行っている。同校では法定雇用率未達成の企業などを招き、学校見学や企業説明会を開催するなど採用につながる取組みも展開し、現在は卒業生の約9割が一般企業などに障害者雇用枠で就職しているという。  日ごろから学園祭なども見学に行っているという、人事総務部長の小池さんは「私たちも同校の企業説明会で山梨トヨペットの雇用事例を紹介するなど協力しています。また、先生方にも職場を訪問してもらい、『車好きの生徒がいたらぜひ紹介してほしい』と伝えています」という。2年に1回、1年生全員が参加する職場見学も受け入れているそうだ。  そうして初めて桃花台学園から職場実習生として受け入れたのが、2021年に入社した大柴(おおしば)翔(かける)さん(22歳)だ。竜王(りゅうおう)店に勤務し、持ち前の明るさですぐに職場になじんだという大柴さんは、年齢の近い先輩従業員と同じ趣味で意気投合し、休日になると一緒に旅行もするようになったという。小池さんは「仕事上でも互いに助け合っているようで、職場では予想以上の相乗効果を生んでいます」と目を細める。  こうした経緯には、店舗運営の工夫もあったようだ。山梨トヨペットでは10年近く前から店舗の休日を原則週2日とし、職場の全員が同じ日に休めるようにしたのだ。「同じ職場の仲間で遊びに行ったりイベントを催したりしやすくなり、職場全体のまとまりがとてもよくなったようです」と小池さん。  また、日ごろから店舗を回って従業員の様子も確認しているという人事総務グループ主任の田代(たしろ)晃太(こうた)さんは、「障害のある従業員は転勤がなく、職場実習時に通っていた店舗にそのまま配属されるので、最初から本人も職場側も慣れた状態でスタートし、安定して働き続けられている様子を実感できます」と話す。  人事総務グループでは年1回、従業員全員を対象にしたヒアリングも行うようになった。小池さんは「それまで私たちは障害のある従業員のために出向いて話を聞きに行くような形だったので、ある意味、特別扱いに映ってしまっていました。全員に話を聞くことで、それぞれの認識の差も埋まりやすくなり、細やかな対応ができるようになりました」と手ごたえを語る。 マンツーマン指導で合格  大柴さんも最初は洗車業務を任されていたが、やはり車好きだったことが手伝って、自分から車のカルテを確認し、整備に必要な工具などを事前に用意し並べるようになった。  そんな姿を見た小池さんたちは「興味や関心が強いなら、資格取得もがんばれるかもしれない」と、菅野さんと同じように三級自動車整備士の試験にも挑戦してみることを大柴さんに提案。「やってみたい」と意欲を見せた大柴さんは、技能講習所へ通っただけでなく、店長と一緒にマンツーマンで過去の試験問題を解くなど熱心にサポートしてもらった結果、3回目に見事合格することができた。「本人はもちろんですが、桃花台学園の先生方も『国家資格に合格した卒業生は初めてかもしれない』とたいへん喜んでいましたね」と小池さん。  山梨トヨペットでは、有資格者は正社員にするとの方針も決めている。現在パートタイム社員である菅野さんと大柴さんにも話をしているが、本人たちが「ほかの整備士と同じようにできるか心配だ」と迷っているそうで、少しずつうながしていく予定だという。 店全体のパフォーマンス向上  2025年3月に桃花台学園を卒業した小澤(おざわ)哉翔(かなと)さん(19歳)も、車が好きだったことから山梨トヨペットに入社したそうだ。「洗車業務は、汚れが残っていないかを確認をしながら、きれいに拭き上げることを心がけています。タイヤの準備もしていますが、車種によって違うので注意しています」と笑顔で話す。  「みなさんやさしくしてくれて、仕事はとても楽しいです」とつけ加えた小澤さんは、今後の目標について「(菅野)晃さんのやっている仕事も、もっと覚えて、少しでもステップアップできたらと思っています」  本店サービスマネージャーの小野さんは、小澤さんが加わった効果についてこう話す。  「いまは菅野さんの仕事を教わり引き継ぐことで、菅野さんは別の整備補助作業に手が回るようになり、ほかの整備士たちも専門作業に集中できるようになってきました。2人は全体を見渡しながら、それぞれの整備作業を並行して補助してくれています。同時に2人が休むことになれば、整備士たちは彼らの大事さを痛感するはずです」  さらに、本店の店長を務める小林(こばやし)義広(よしひろ)さんは、「ほかの整備士は飛び込みの仕事なども受けられるようになり、お客さまの満足度も上がっています。何より2人が一生懸命仕事に取り組む姿は、現場の雰囲気にもよい影響をもたらしていますね。店全体のパフォーマンスが上がっていると実感します」と教えてくれた。  小池さんは、いずれ小澤さんにも自動車整備士の試験に挑戦してもらいたいと話す。「1回は全員にトライしてもらって、それから先は、本人たちが希望すればずっとつき合うつもりです。整備士三級の学科試験は結構むずかしいのですが、こうやって2人の合格者が出たことで、ほかの障害のある従業員にも勇気を与えるはずです」 社会貢献活動や研修で意識向上  山梨トヨペットでは2017年6月に、長年の懸案事項だった法定雇用率の達成を機に、野さんの陣頭指揮のもと、インクルーシブ社会の実現を目ざしていく新たな社内組織「TREAM(トリーム)」を翌年に立ち上げた。それまで行ってきた社会貢献活動を、さらに発展させてきたそうだ。パラリンピック選手など山梨県にゆかりのあるアスリートを招いた小学生対象の運動会をはじめ、山梨県立あけぼの医療福祉センターでの清掃活動や、山梨県肢体不自由児協会主催の在宅心身障害児療育キャンプへのボランティア参加などを行っている。  TREAM事務局を担当している人事総務グループリーダーの一瀬(いちのせ)裕香(ゆか)さんは「社外活動に参加する従業員が増えていくなかで、店舗や部署、年代も異なる従業員同士の横のつながりができ、仕事上の連携もスムーズになっているようです。なかには毎年参加すると宣言している人もいて、仕事のモチベーションにもなっているようです。自然と職場内のインクルーシブに対する意識向上にもつながっていると思います」という。  新入社員向けには、障害者雇用の理解をうながすための研修も始めている。障害者雇用促進法の説明をはじめ、山梨トヨペットの現状、ともに働く仲間としての心構え、大切な人財として全員の戦力化に取り組んでいることなどを話しているという。別符さんは「いずれ全店舗に障害のある従業員を配属する予定ですから、いまのうちから少しでも知っておいてもらえば、後で一緒に働くことになったとき、先輩たちが同じ仲間として接している様子を見ながら理解も進みやすいと思います」と語る。  最後に小池さんは「私たちは、障害の有無にかかわらず、最初から全員を大事な戦力として採用することを貫いてきました。今後も一人ひとりのキャリアアップをうながしながら、経営理念にもあるように、働く者にとって『やりがい』と『自己の能力向上』が実感できる企業を目ざしていくつもりです」と、意欲的に語ってくれた。 写真のキャプション 山梨トヨペット株式会社本店の整備工場 山梨トヨペット株式会社執行役員、営業部長、人事総務部長の小池隆考さん 人事総務部人事総務グループの別符幸治さん 山梨トヨペット本店の整備部門で働く菅野晃さん 菅野さんは、三級自動車整備士の資格を活かし、整備補助にあたっている 山梨トヨペット本店サービスマネージャーの小野和昭 山梨トヨペット竜王店で働く大柴翔さん(写真提供:山梨トヨペット株式会社) 小澤さんは、整備補助や洗車作業を担当している 人事総務グループ主任の田代晃太さん 山梨トヨペット本店の整備部門で働く小澤哉翔さん 山梨トヨペット本店店長の小林義広さん 人事総務部人事総務グループリーダーの一瀬裕香さん 【P10-11】 クローズアップ はじめての障害者雇用 〜職場定着のための取組み〜 第3回 職場で起きた課題への対処  障害のある人をはじめて雇用する企業にとって、雇用そのものの実現は大きな一歩です。しかし、障害のある人が「継続して安心して働き続けられる」職場づくりこそが、雇用の真の成功につながることはいうまでもありません。  そこで第3回は、「職場で起きた課題への対処」をテーマに、職場で改善すべき課題が発生したときの考え方や、原因の検討から改善策の立案・実施、その後の取組みまで、具体例を交えながら紹介します。 課題が起きたときの対処 解決に向けた流れについて  職場で改善すべき課題が生じたときは、課題の原因となった行動の背景と、障害のある人が置かれている環境の情報を集めて状況を把握することが解決への第一歩です。  職場で起こる課題は同じ内容にみえても個別性が高く、障害のある人の特性や職場の状況によってその原因は異なるため、一律の改善策はないといえます。だからこそ「問題となる行動と本人の置かれている環境の情報を集め、原因を考えること」が重要となります。そのうえで原因に対応した改善策を考え、望ましい行動を増やすための仕組みを整備していきます。  左の表は、障害のある人が働く職場での課題解決に向けたワークフローです。このフローは、本人の望ましい行動の継続や今後の目標の設定にもつながりますので、職場定着をうながす大切な取組みとなります。  なお、課題への対処について、本人を支援している支援機関がある場合には、本人の同意を得たうえで、対処に役立つ情報を収集することも有効です。また、課題が生じた原因に、本人の職場以外のふだんの生活やプライベートが関係している場合は、家族や生活面を支える支援機関と連携することも必要です。  次ページでは、具体例として二つのモデルケースを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。 就労支援機器を活用しよう!  障害のある人が仕事をする際には、さまざまな課題が生じることがあります。就労支援機器は、障害のある人が従事する作業を容易にし、効率的に遂行するために必要な機能を備えています。  例えば、印刷物をカメラで拡大して読みやすくする機器、遠くにいる相手の声をキャッチし、補聴器に声を送信する機器、パソコンのマウス操作を補助する機器、周囲の音を遮る機器など、さまざまな特徴を持っています。  障害特性や職務内容など本人の状況に応じた機器を導入することで、職場環境が整い、課題解決の一助となることもあります。  当機構(JEED)では「就労支援機器貸出・相談窓口」を設け、就労支援機器を展示しているほか、就労支援機器アドバイザーが、障害者の就労を支援する機器の紹介や活用方法に関する相談を行っています。就労支援機器を紹介するサイトもありますので、いろいろな機器を見ることができます。 おわりに  これまでご紹介した対応策は、本人が安心して取り組める職場づくりと、望ましい行動の定着につながります。企業の担当者と本人が協力し、改善のプロセスをくり返しながら、定着支援を充実させていくことが大切です。  次回は「職場定着のための人材育成とキャリア形成支援」をお届けします。 表 職場の課題解決に向けたワークフロー 1 問題となる行動と本人が置かれている環境の情報を集めて原因を考える  問題が起きたときの本人の気持ちや周囲の人の意見も聞きながら情報収集し、幅広い視点で原因を考えます。 ・どのような状況(場所、時間)で起きたか ・きっかけは何か ・具体的にどのような対応をしたか ・周囲の人とのかかわりはあったか など 2 原因に対応した改善策を考える(さまざまな改善策を組み合わせる)  その問題となる行動を止めさせようとするだけではなく、望ましい行動を増やすという視点で、原因に対応した改善策を考えます(本人と一緒に考える方法もあります)。改善策は、本人にも理由を説明して同意を得て実行します。 ・本人が取り組むこと ・企業の担当者等が取り組むこと ・改善につながる環境を設定すること など 3 改善に向けて取り組み、企業の担当者と本人とでふり返りを行う  改善に向けて取り組んだことについては、企業の担当者と本人とでふり返りを行います。 ・改善できたことや改善に向けて取り組んでいることを評価する ・大事なのは、企業の担当者と本人が、「これならできる、効果があった」などを感じられること 思ったような改善がみられないなどの場合は、1に戻って再度検討します。 「はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜」(JEED)をもとに編集部作成 https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003kesx.html 課題発生から事後対応、解決までのモデルケース  課題が発生したときの改善策を考える場合には、企業の担当者と本人を交えて一緒に考えるという方法もあります。その際は一方的な指示にならないように配慮し、本人に理由を十分に説明し、同意を得て進めることが大切です。 ケース1 パソコン入力作業で、その都度指示を受けて作業するが、ミスが多発 →「ミスしないで」と注意するだけではなく… 1 原因の例 本人 指示や手順が理解できていないが正しく作業していると思っている/作業量が多く処理できない/複数の指示があると混乱しやすい/集中が続かない 企業の担当者 作業リズムができていないのではないか/わからないときに質問できていないのでは/指示系統が統一されていない/説明が長いかもしれない 環境 雑音が多い環境なのがよくないかもしれない。 2 改善策の例(さまざまな改善策を組み合わせる) ・わかりやすい手順書やチェック表の作成。 ・指示を出す担当者を統一し、要点やポイントを強調して伝える。 ・質問できるように最初の言葉や合図などをあらかじめ決めておく。 ・小さな目標(時間や量)を設定して伝える。 ・耳栓などで集中できる環境を整える。 ・水分補給や肩回しなどの小休止を取り入れ、長時間作業の負担を軽減するなどリズムをつくる。 ケース2 部品の組立作業中、感情的になって部品を投げる →「投げないで」と注意するだけではなく… 1 原因の例 本人 手順がわからない/想定外のトラブルで焦った/寝不足や不安が影響している/嫌なことを思い出した 企業の担当者 うまくいかないときや失敗したときにイライラしやすいようだ 環境 周囲で急に大きな音がしたために驚いたのかも。 2 改善策の例 ・正しい手順や見本を示しながら説明する。 ・ミスしやすい箇所を写真やイラストなどでわかりやすく示す。 ・部品は会社の資産であり損失につながることを説明し、「部品を投げない」と目標化する。 ・イライラしたときの対処法(周囲に伝える・外に出て深呼吸などクールダウンをする方法)を助言する。 ・プライベートな要因や生活習慣などに原因があれば家族や生活面の支援機関に協力を依頼する。 「はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜」(JEED)をもとに編集部作成 参考! 就労支援機器の紹介サイト  障害のある人が業務をより容易かつ効率的に行うために役立つのが「就労支援機器」です。障害特性に応じて、例えば視覚障害者を対象とした拡大読書器や画面読み上げソフト、聴覚障害者を対象とした補聴システム(集音システム)など多様な機器があり、テクノロジーの進化とともに現場で活用できる製品も増えています。 障害者の就労を支援する機器を、製品ごとに写真などで紹介 https://www.kiki.jeed.go.jp/index.php 就労支援機器貸出・相談窓口 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer05.html 就労支援機器の地方説明会等 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/kiki_setsumeikai_chihou.html 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 2025(令和7)年度 就労支援者向け研修のご案内 受講料 無料  当機構(JEED)では、福祉、教育、医療等の分野にて、障害者の就業支援にたずさわる方を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や、障害者本人と企業双方に対して必要な就業支援に関する技術の習得と資質の向上を図る研修を実施しています。 職場適応援助者養成研修  職場適応援助者(ジョブコーチ)に必要となる専門的知識および支援技術を習得するための「職場適応援助者養成研修」を実施しています。 集合研修 ※全都道府県の方が対象です 時期 2月期 会場 幕張会場 日程 2026年2月3日(火)〜2月6日(金) 募集期間 2025年10月28日(火)〜11月21日(金)17時 【集合研修の実施場所】千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 障害者職業総合センター 実技研修 *各地域障害者職業センターにて実施します(4〜5日間程度)。 申込方法 募集期間に地域障害者職業センターあてにメールにて受講申請書をお送りください。 受講申請書はJEEDホームページに掲載しています。 職場適応援助者支援スキル向上研修  職場適応援助者として一定以上の支援経験を有する方に対して、支援スキルの向上を図るために必要な知識および技術を修得するための「職場適応援助者支援スキル向上研修」を実施しています。 第3回 実施方法 オンライン形式 日程 2026年1月20日(火)〜1月23日(金) 募集期間 2025年10月21日(火)〜11月28日(金)17時 申込方法 募集期間に職業リハビリテーション部人材育成企画課あてにメールにて受講申請書をお送りください。 受講申請書はJEEDホームページに掲載しています。 お問合せ先 職業リハビリテーション部 人材育成企画課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 各研修の詳細はJEEDホームページにてご確認ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html 【2025(令和7)年度新規開催】 「ステップアップ研修U」のご案内 受講料 無料  就労支援実務者を対象として、障害者および企業に対する専門的な知識やスキルを習得することを目的として「ステップアップ研修U」を実施します。 対象者 オンライン、集合形式のいずれも参加できる方。 以下の研修のいずれかを修了し、かつ2年以上の就労支援の実務経験を有する支援者の方。 □障害者の就労支援に関する基礎的研修 □職場適応援助者養成研修 □障害者就業・生活支援センター就業支援担当者研修 ★2025年度は上記の研修が未修了の方も、3年以上の実務経験を有している場合は受講いただけます。 (注)企業の方は受講対象外となります。 内容 ★研修内容は企画段階のもので、変更となる可能性があります。 2026年2月16日(月) (オンライン形式) 科目1 「就業支援に関する最新情報」 調査研究報告書No.179「職場における情報共有の課題に関する研究 ―オンラインコミュニケーションの広がりなど職場環境の変化を踏まえて―」(2025年3月発行)の内容を紹介します。 (80分) 科目2 「就業支援に関する専門的な知識・スキル」 ※講師調整中 (120分) 2026年2月19日(木) (集合形式) 科目3 「障害者職業総合センター職業センターで開発した最新の支援技法の紹介」 2024年3月に発行した以下の支援マニュアル・実践報告書にまとめられた支援技法について紹介・解説を行います。 ・テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発 ・職場適応を促進するための相談技法の開発 ・高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材の開発 (300分) 2026年2月20日(金) (集合形式) 科目4 「ケーススタディ」 経験豊富な就労支援実務者をスーパーバイザーとして招き、事例検討を行います。 (270分) 【集合研修の実施場所】千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 障害者職業総合センター 申込方法 「JEED研修電子申請サービス」(※)より期間内に申請ください。 【申込期間】2025年11月18日(火)〜12月15日(月) ※「JEED研修電子申請サービス」は、株式会社NTTデータ関西が提供する「e-TUMO」を利用しています。 お問合せ先 職業リハビリテーション部 人材育成企画課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 研修の詳細はJEEDホームページにてご確認ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html 「障害者雇用事例リファレンスサービス」を活用して 「働く広場」の掲載記事が探せます! 障害者雇用を進めたいけれど、ほかの企業ではどんな取組みをしているんだろう? 「障害者雇用事例リファレンスサービス」をご活用ください! 障害者雇用事例リファレンスサービスとは  障害者雇用について創意工夫を行い、積極的に取り組んでいる企業の事例や、合理的配慮の提供に関する事例を紹介するJEEDのWebサイトです。 https://www.ref.jeed.go.jp アクセスはこちら! ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.ref.jeed.go.jpであることを確認のうえアクセスしてください。 「働く広場」掲載記事の検索 「障害者雇用事例リファレンスサービス」では、「働く広場」に掲載した「職場ルポ」、「編集委員が行く」の記事(注)を検索・閲覧することができます。 (注)取材先から、同サイトへの掲載許可が得られた記事にかぎります。 検索方法 1 「働く広場」の記事検索をする場合は、「モデル事例」をチェックしてください。 2 検索条件で、「働く広場」にチェックし、「業種」、「障害種別」、「従業員規模」、「フリーワード」等の条件を設定して検索ボタンをクリックすることで、探したい記事をピックアップできます。 3 クリックすると、該当企業の事例ページが表示されます。 4 該当記事のPDFファイルまたはデジタルブック★にアクセスできます。 ★2022年度掲載記事からデジタルブックで掲載しています。 JEEDホームページでも記事検索ができます! 「働く広場」の掲載記事については、「障害者雇用事例リファレンスサービス」で検索できるほか、JEEDホームページにて、バックナンバー(過去4年分)の記事索引の閲覧(※1)や、「グラビア」、「クローズアップ」などのコーナーも記事検索(※2)ができます。どうぞご利用ください。 ※1 各年度のバックナンバーのページ「記事索引一覧」 ※2 「働く広場」トップページ内「記事検索」 記事索引画面 クリックすると該当ページに移ります。 「働く広場」に関するお問合せ先 企画部 情報公開広報課 Email:hiroba@jeed.go.jp TEL:043-213-6200 FAX:043-213-6556 「障害者雇用事例リファレンスサービス」に関するお問合せ先 障害者雇用開発推進部 雇用開発課 E-mail:ref@jeed.go.jp TEL:043-297-9513 FAX:043-297-9547 【P15-18】 グラビア 「工場長代理」としての誇りをもって 株式会社輝城(愛媛県) 取材先データ 株式会社輝城(きじょう)本社 〒791-8031 愛媛県松山市北斎院町(きたさやちょう)480-1 TEL 089-973-1211(代) FAX 089-973-1222 写真・文:官野 貴  愛媛県松山市に本社を置く「株式会社輝城」は、テント・シート製品の卸売、大型テントの設計や施工、イベントの設営や運営などを手がけている。同社では、障害のある従業員の「できないこと」ではなく、「できること」に注目し、適性のある業務を割りふり、障害のある従業員の力を引き出している。  障害者雇用のきっかけは、2017(平成29)年に職業訓練校と就労支援施設の紹介で、2人の障害のある従業員が入社したこと。精神障害のある森田(もりた)将広(まさひろ)さん(32歳)は、職業訓練校で学んだ後、同社に入社。受発注業務などの顧客対応、事務作業、配送など外回り業務のほか、地鎮祭(じちんさい)の取り仕切りや設営などを担当している。森田さんは、「いろいろな仕事にチャレンジさせてもらえて、それがやりがいとなっています」と話す。  知的障害のある武智(たけち)寛(ひろし)さん(43歳)は、就労支援施設で学んだパソコンスキルを活かして、パソコンの入力業務や資料作成などを担当。森田さんに同行し、地鎮祭でのテント設営にもたずさわる。そして、建築資材などの出荷準備、工場でシートの加工作業も担当する業務の一つ。この日は、上司と協力しながら、超音波溶着機でトラック用幌ほろシートの溶着加工を行っていた。また、同社製品のハトメ加工のほとんどを武智さんが担当している。仕事に対する意識は高く、正式な役職ではないものの、同僚からは「工場長代理」と称されている。武智さん自身も、「工場長代理として恥ずかしくない仕事をするように心がけている」といい、作業に取り組む表情は真剣そのものだ。  同社では、従業員のアビリンピックへの参加を応援している。2人はそれぞれの得意を活かし、森田さんは「ワード・プロセッサ」種目に、武智さんは「パソコンデータ入力」種目にチャレンジしている。7月に開催された「えひめアビリンピック2025(第23回愛媛県障害者技能競技大会)」では、2人そろって銅賞を受賞、今後もチャレンジを続けていく予定だという。 写真のキャプション 株式会社輝城の倉庫。同社では、このようなテント生地を使用した建造物の設計や施工も手がけている 建築資材の出荷準備で、防湿シートを切断する森田将広さん。森田さんは若手のホープで、さまざまな仕事を任されている 森田さんは、フォークリフトや高所作業車の操作資格を取得し、業務に活かしている 防湿シートの出荷準備をする武智さん。切断したロールのバリを取り、梱包する ハトメ加工を行う武智さん。同社では、あえて自動加工機を導入せず、武智さんが一つひとつていねいに手作業で行っている ハトメ加工は、シートの材質や厚さなどに合わせて、ハトメの大きさや取りつけ位置が異なる。しっかりと確認したうえで作業を進めていく 上司と協力しながら、超音波溶着機での作業にあたる武智さん。加工位置をきちんと合わせ、足元のスイッチで装置を作動させる 地鎮祭で使用するテントの設営作業を再現してもらった。武智さん(左)と森田さん(右)が協力し、手際よくテントを組み立てていく 地鎮祭の参加者がお清めするための手水用具をそろえる武智さん 森田さんは、地鎮祭の受注から、各種手配、設営、取り仕切りなどまで担当。その仕事ぶりから、社内や顧客からの信頼も厚い 武智さんは、パソコンのスキルも高く、情報処理活用能力検定やマイクロソフトオフィススペシャリストなどの資格も取得している えひめアビリンピック2025で獲得したメダルを掲げる武智さんと森田さん。2人の輝くような笑顔が印象的だ 【P19】 エッセイ ITが切り開く、視覚障害者の新しい可能性 第2回 ITが拓くキャリアチェンジの道 〜あるヘルスキーパーの挑戦〜 株式会社ふくろうアシスト 代表取締役 河和 旦 (かわ ただし) 情報アクセシビリティ専門家、AI活用教育コンサルタント。視覚障害と肢体不自由の重複障害がある。東京都立大学卒業後、福祉情報技術コーディネーターとして独立。障害当事者向けのIT指導やサポートを行い、転職や自立につながった実績も多数。共著に『24色のエッセイ』、『本から生まれたエッセイの本』(みらいパブリッシング)がある。 https://fukurou-assist.net  前回は、私自身がITとの出会いで新たな可能性を見出し、起業に至った経験を述べた。ITは、障害によって閉ざされがちな道を切り拓く力を持つ。その信念のもと、私は視覚障害者が新たな挑戦に踏み出すためのサポートを行っている。本稿では、事務職への転職という大きな一歩を踏み出した、ある視覚障害者の事例を取り上げたい。 専門職からの新たな挑戦  30代の先天性視覚障害者であるAさんは、企業内で指圧を行うヘルスキーパーとして安定した職に就いていた。しかし、「ヘルスキーパーだけでなく、別の職能を身につけ、自分の可能性を広げたい」と考え、事務職への挑戦を決意した。  だが、その道には大きな課題があった。日常的にカルテ作成で表計算ソフトを使っていたものの、その操作は自己流に過ぎず、事務職で求められる専門的なスキルを欠いていた。 ITが生み出すビジネス現場での「武器」  当教室では、Aさんに事務職で必要とされる表計算ソフトやワープロソフトのスキルを指導した。  表計算ソフトではデータ集計や分析の基本操作を学び、ワープロソフトでは点字文化と墨字文化の違いを意識しながら、見た目にも配慮したビジネス文書の作成方法を指導した。適切な技術を習得することで、Aさんは視覚障害者であっても晴眼者と遜色ないスキルを身につけることができた。 スキルを実践につなぐ「架け橋」としての助言  スキルを習得しただけで満足してはいけない。スキルは実社会で活かされてこそ意味を持つ。そのため、私はAさんに就労移行支援事業所への通所をすすめた。  この助言が必要だった理由は三つある。第一に、企業で使用される業務アプリケーションの多くは、視覚障害者にとって十分なアクセシビリティを持たない。実際の職場に近い環境で訓練を積むことで、不測の事態に対応する力を養う必要がある。第二に、就労現場ごとに異なる環境に合わせて、最適な画面読み上げソフトを選定することが求められる。  そして第三に、JAWSのような高機能だが高額な画面読み上げソフトを導入する際、企業との交渉が重要である。当事者からの要求は「個人的な要望」と受け取られがちだが、ジョブコーチや就労移行支援事業所の専門家が介在し、客観的に必要性を説明することで、企業側も「業務遂行に不可欠な合理的配慮」として受け入れやすくなる。この交渉術についても具体的に助言を行った。 キャリアは「固定」されるものではない  こうしたプロセスを経て、Aさんは希望していた事務職への転職を果たした。この事例が示すのは、障害者のキャリアは一度決まったら固定されるものではないということだ。本人の意欲、専門的なIT教育、そして支援制度を活用する戦略が結びつけば、職種の壁を乗り越えることが可能となる。  企業の人事労務担当者に伝えたいのは、いまその人がになう役割だけで、その人の可能性を判断しないでほしいということである。適切な支援環境さえあれば、障害者は組織に新たな価値を生み出す存在になり得る。 さらに広がる可能性  AさんはITと社会制度を駆使してキャリアを切り拓いたが、ITの可能性はそれだけにとどまらない。  次回は、教育分野で先進的なツールを活用し、視覚障害者が新たな活躍の場を得た事例を紹介する。 【P20-25】 編集委員が行く 相互理解と納得感、とことん話し合う文化 課題を「仕組み」で解決するシステム会社 有限会社奥進システム(大阪府) NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 取材先データ 有限会社奥進(おくしん)システム 〒540-0027 大阪府大阪市中央区鎗屋町(やりやまち)2-2-4イチクラビル4F TEL 06-6944-3658 FAX 06-6944-3659 金塚(かなつか)たかし 編集委員から  有限会社奥進システム(2000年設立、大阪府)は、社員12人のうち10人が障害のある方という特徴的なシステム会社です。創業当初は障害者雇用を想定していませんでしたが、在宅勤務を契機に受入れを開始し、現在は身体・精神・発達障害の方が活躍しています。就業規則やITツールを活用し、相互理解と納得感を重視した運用を実現。課題解決に向けた仕組みづくりやツール開発にも力を入れ、社会全体への貢献を目ざしている姿を紹介したい。 Keyword:身体障害、精神障害、発達障害、システム開発、実習、在宅勤務、マネジメント、モチベーション、合理的配慮、戦力化 写真:官野 貴 POINT 1 年間約20人の実習生のなかから就職希望者が現れ、結果的にモチベーションの高い人材が集まる 2 システム会社の強みを活かし、雇用継続のためのツールをつくり活用。仕組みづくりとルールづくりで課題を解決 3 「障害プレゼン」を行い、自分の障害についてみんなに伝える。相互理解と納得感を重んじる社風 はじめに  私の地元、大阪で障害者雇用や就労支援活動に力を注ぎ、全国的にも知られている有限会社奥進(おくしん)システム(以下、「奥進システム」)代表取締役の奥脇(おくわき)学(まなぶ)さんに取材のご協力をいただいた。奥脇さんとは活動をご一緒する機会もあるが、今回あらためて取材を通じてお話をうかがうことで、働き方を支えるポイントを再確認することができた。さらに、奥進システムで働く障害のある社員5人にも取材をお願いし、実際に戦力として働き続けている仕組みを対話形式で紹介したい。 障害者雇用率110% 20年前から実習を受け入れ 金塚たかし(以下、「金塚」) 御社の概要について教えてください。 奥脇学(以下、「奥脇」) 設立は2000(平成12)年2月2日。役員が私ともう1人、社員が10人。計12人のシステム会社です。会社の理念は「私たちと、私たちに関わる人たちが、とても幸せと思える社会づくりをめざします」。経営理念は「進取・自立・奉仕」と掲げています。 金塚 設立時から障害者雇用を行っていたのですか? 奥脇 最初はまったく考えていませんでした。僕らは小さな会社なので、経営を続けていくことで手一杯。そのなかで「意識を持って“ついでに”できる社会貢献は?」と考え、小さい会社だからこそできることとして、障害者雇用を始めました。 金塚 現在、何人の障害のある方が働かれていますか? 奥脇 11人の構成員のうち、10人が障害のある方です(1人が役員)。うち2人は重度の方ですので、障害者雇用率は110%となります。割合としては身体障害のある方が3人、精神障害のある方が3人、発達障害のある方が4人です。 金塚 業務内容を教えてください。 奥脇 Webを利用したシステムを開発しています。もともとは中小企業の業務管理システムを手がけていましたが、最近は障害者雇用の人材管理ができるような仕組みを相談されることが多く、支援管理システムやリワークの管理システム、EAP(従業員支援プログラム)の管理システムを開発する機会が増えてきています。また、ホームページの制作も請け負っています。 金塚 どのようにして障害者雇用を進めてきましたか? 奥脇 僕がテレワークで仕事をしていたこともあり、業務が増えて従業員を雇用しようと考えたときに、テレワークや在宅勤務で働く人を採用していきたいと考えていました。在宅で働ける方を探す際に、シングルマザーや障害のある方の職業訓練施設などにアプローチをしました。そのなかの一つが大阪市職業リハビリテーションセンター(以下、「センター」)でした。最初の見学から3年くらい経ったころ、「重度身体障害のある方の実習をお願いしたい」と連絡がありました。 金塚 何年くらい前の話ですか? 奥脇 20年くらい前です。そのころは在宅勤務がそこまで一般的ではありませんでした。また、訓練施設に企業の人間が見学に行くというのは、とてもめずらしいことだったようです。僕のことを覚えてくれていたセンターの方が、「あの会社なら、重度障害のある方の在宅での実習を受け入れてくれるのではないか」と思い出し、声をかけてくれました。 金塚 そこから雇用へ? 奥脇 はい。実習後に雇用につながりました。もともとは採用が前提ではなく、実習だけの予定でした。重度の方でしたので、採用はむずかしいだろうと正直考えていました。しかしその方が「働いて社会とつながっていたい」というので、それならば「働くことの厳しさ」を知ってもらったら、あきらめもつくだろうと思い働いてもらったんです。すると、意外とできた。意外とできたんですよ。 金塚 イメージが変わったと? 奥脇 驚きました。手を動かせない方だったのですが、腕の力だけでキーボードを打つんです。僕らが出した実習の課題を3カ月間の期間中にちゃんとこなし、頭もいい。「これは仕事ができるな」と思い、採用に至りました。 金塚 一緒に働くうえで戸惑ったことはありませんでしたか? 奥脇 基本は在宅勤務なので、仕事のうえで困ることはありませんでした。週に1回、通勤してもらう際は介助することもありました。仕事はできるし戦力になってくれたので、マイナスのイメージはまったくありませんでした。 相互理解と納得感 とことん話し合う文化 金塚 その後、精神・発達障害のある方の雇用にも取り組まれます。 奥脇 2010年にNPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク(JSN)さんと知り合い、実習の受入れを打診されたことがきっかけです。当時は外国人や就労困難者などをすでに受け入れていたので抵抗はなく、すぐにOKしました。身体障害のある社員もすでに3人働いていました。 金塚 採用までの流れは? 奥脇 精神・発達障害のある方は就労移行支援事業所を通して、年に20人ほど実習生として受け入れています。そのうち毎年1人ほど、入社を希望する方がおられます。その場合は雇用前提の実習に切り換えて、少し負荷をかけつつ様子をみます。最終的には直属の上司となるおもに2〜3人の社員が、総合的に判断をしています。 金塚 具体的にはどのような合理的配慮をされていますか? 奥脇 就業規則や運用のルールを細かく決めて守っていただくことに加え、Web上でツールを使い活用しています。また、精神・発達障害のある方に対しては特に、ルールの運用に「迷いがない」ように決めています。例えば、変形労働時間制の運用も個人の裁量に任せている部分があるのですが、「ちゃんと全体に報告する」、「リーダーの許可を得る」、「残業は事前に申請する」など細かい決めごとを定めています。相互理解と納得感。これらをとことん話し合う文化が当社にはあって、一つのことがうまくいかなかったら、「だったらどうしようか?」と工夫するうちにこのような運用になりました。毎日の積み重ねのなかで新しいルールが加わったり、逆になくなったりするので、「すごいですね」といわれるのですが、僕たちはそんなに大したことをしているとは思っていません。 金塚 逆に失敗例などはありますか? 奥脇 よく聞かれるのですが、一般の企業でも独立や生活の変化などで退職することってあるじゃないですか。当社の例もほぼその範疇で、特殊だとしたら「病状の悪化」という理由。それは仕方ないことですし、これまでにその理由で退職した方は2人だけです。障害者雇用をしている企業だけが定着率にフォーカスされますが、一般の企業でも定着率が低いところはたくさんあるのではないのでしょうか。 金塚 精神・発達障害のある方の定着率は低いというデータをみますが、それに対してはどう分析しておられますか? 奥脇 企業側のノウハウが少ないこと。また、精神障害者が雇用率の算定対象となったのが2018年からで、「長く働いている」という実績が、まだ多く出てきていない点もあると思います。そのほかには「企業側が過剰に反応しすぎている」という点もあるのではないかと考えています。 戦力化できない原因はマネジメント側にある 金塚 当事者を戦力化するためのポイントは? 奥脇 当事者のマネジメントをする社員たちには「指示が通らないのはあなたの責任」と伝えています。例えば口頭で指示を出したことがうまく伝わっておらず、違うものが仕上がってきたとします。「いったことと違う!」と怒るケースは多いと思うのですが、それは理解できるような指示を出していないからです。次からはチャットで指示を出したり、タスク管理ツールで指示を出すなど、指示の出し方を工夫するようにしています。戦力化できていない原因の多くはマネジメント側にあると僕は思っています。 金塚 彼らを育成するポイントは? 奥脇 自分で考えて動いてもらう。「これをこうしなさい」と細かくいうと、人は伸びません。現在地と理想とするポイントを明確にして、その過程は自分なりに工夫して歩んでもらう。なので、指示が通らなかったとか、不具合が出たというときは成長のための一番のチャンスです。 金塚 社員のモチベーションを上げるために、工夫していることは? 奥脇 うちの社員はもともと、当社で働きたいといって来ているので、そもそものモチベーションが高い。それは障害者雇用をしてよかったと感じる点でもあります。もちろん、役職を希望するとかしないとか、それぞれがキャリアのなかで望んでいることを聞いて、フィットするような働き方をともに考えるようにはしています。年に一度の人事考課の際の面談時や、就労定着支援システム(以下、「SPIS(エスピス)」)での面談の際に、そのような話をします。 金塚 例えば仕事以外の面で落ち込んでいるときには、どういう場で共有しますか? 奥脇 基本的には会議のなかで共有します。もっとプライベートな話になると、個別に声をかけてもらって僕が面談をします。その結果、僕から部署に働きかけることもあります。最初は定期的に面談を設定するようにしていたのですが、いまは調子の悪いときだけ、2〜3カ月に一度くらいです。それも全員ではなく、SPISを利用している社員が、そのなかで発信してくるという形です。 仕組みづくりと運用ルール、ツールづくりで課題を解決 金塚 さまざまな方を受け入れることによって、会社はどのような影響を受け、変化してきたと感じますか? 奥脇 社員に対応力がついてくると実感しています。「同じように伝えても、こんなとらえ方をされた」とか、いろいろありますよね。特にマネージャークラスの対応力を磨くよい機会になっていると思います。 金塚 障害者雇用をしてきたうえで、「課題」と感じることはありますか? 奥脇 障害者雇用だから、という課題はほとんどありません。ただ、経営上の課題はいっぱいあります。営業力がないとか、そちらのほうが最重要課題です。 金塚 他社の障害者雇用の課題について耳にした際、奥脇さんはどのようにとらえていますか? 奥脇 「仕組みづくり」、「運用ルール」、「ツールづくり」。この三つを整えていれば課題は解決できると考えています。当社はシステム屋だからこそ、仕組みづくりが得意。SPISはその最たるものですが、そのほかにもさまざまなツール、例えばSkeBo(スケボー)(知的障害者の評価ツール、31ページ「編集委員のひとこと」で紹介)などをつくっています。 金塚 社内のことよりも、社会に対する課題を意識することが多い? それはまさに事業性と社会性の両立ですね。 奥脇 はい。「なんでこれをほかの会社ではできないんだろう」とふり返り、そこを解決するための方法を伝えたり、ツールを開発することが、当社の責務なのかなと思います。 「障害プレゼン」のおかげで何も隠さずに働ける Aさん 勤続年数:15年 所持手帳:精神障害者保健福祉手帳2級 障害種:非定型精神病 担当業務:技術部でプログラミングを担当  私はおもにプログラミングのバックグラウンドの部分を担当しています。入社前には、4年ほど働いていない期間がありました。「だれからも必要とされない」と感じていました。入社当時は体調も安定していなかったのですが、徐々に仕事を任せてもらえるようになり、できることが増えてきて、「社会に必要とされている」と感じるようになりました。  最初のころはできないことを抱え込んで、自宅に持ち帰ってしまっていました。休日明けがつらい・・・ということが入社3〜4年目まではありました。しかし当初から、例えばお客さまと接する仕事など苦手なことは担当しなくてよいように、配慮してもらっています。 Kさん 勤続年数:9年 所持手帳:精神障害者保健福祉手帳2級 障害種:広汎性発達障害 担当業務:技術部でWebシステムの作成を担当  わかりやすくいうと、色やレイアウト、表示の仕方などフロント部分の制作を担当しています。お客さまとの打合せにも参加し、ヒアリングや提案も行っています。  私は他社で働いていたときにうまくなじめず、くじけた経験が何度かありました。しかしこの会社では、最初に「障害プレゼン」を行い、自分の障害について話せる範囲でみんなに伝える機会がありました。それによって、何も隠さずに働ける安心感があります。  一度、電話でお客さまから強くいわれ、つらいと感じたことがありました。しかし、苦手な電話とメールを避けるよう配慮してもらったり、体調が悪い日は遅く出社して、その分は夜に仕事をしてもよいなど、調整してもらえるので助かっています。 重野(しげの)孝明(たかあき)さん(35歳) 勤続年数:10年 所持手帳:精神障害者保健福祉手帳3級 障害種:自閉症スペクトラム 担当業務:技術部でプログラミングを担当  私は実習生の指導も担当しています。技術的な指導はもちろん、報告・連絡・相談に関するアドバイスや、「どうしたらよりよく働けるのか」という観点で、ふり返り面談なども行っています。私自身も初めは実習生としてこの会社に入りました。「実習は人生を動かす力がある」と感じ、自分から申し出て実習担当に就任しました。  この10年間のなかで印象に残っているのは、コロナ禍で完全在宅勤務になったときのこと。「困ったときにすぐに相談できない」という状況がしんどかったし、いつまで続くんだろう…という気持ちになりました。いまは在宅勤務の日はチャットで相談できますし、出勤の日は会議で確認しています。また一日2回、過集中を防ぐための10分間休憩があり、そのときは全員が作業の手を止めて雑談しています。 金田(かねだ)翔吾(しょうご)さん(40歳) 勤続年数:6年 所持手帳:精神障害者保健福祉手帳3級 障害種:双極性気分障害 担当業務:技術部でサブリーダーとして設計・開発・保守を担当  お客さまから要望を聞き、見積もりや提案から納品、社内の作業調整など一連の業務を担当しています。最初のころはお客さまと何を話してよいのかわからず、恐怖でしかなかったのですが、奥脇さんがフォローをしてくださり、経験を積むごとに成長できた実感があります。  この会社に入ってよかったな、と思うのは、調子が悪いときはすぐにサポートを受けられる安心感があることです。いまは特に配慮してもらっていることはないのですが、入社当初は「だれか相談できる方がいる体制にしてほしい」とお願いし、何度か一緒に問題を解決してもらったことがありました。 寺前(てらまえ)春加(はるか)さん(28歳) 勤続年数:1年9カ月 所持手帳:精神障害者保健福祉手帳3級 障害種:広汎性発達障害(ADHD) 担当業務:ホームページ部で制作を担当  お客さまから要望をヒアリングし、ほかの部署の方と協力しながらサイトをつくり上げていく仕事をしています。そのほか、講演会などで障害当事者として、自分の障害のことや働き方について、発表する役割もになっています。  私は特に冬場、通勤電車と外との気温差で呼吸が苦しくなることがあります。そのため、通常は8時半の出社時間を10時にずらしてもらい、助かっています。その分を在宅勤務の日に働くことで調整しています。また、以前の会社では人間関係がうまくいかず、人と接するのが怖くなり、友だちから誘われても断ってしまったり、家に閉じこもったりしていた時期がありました。しかしこの会社で働き始めてからは、アットホームな雰囲気でみんなが接してくれて話を聞いてくれるので、少しずつコミュニティーを広げていこうと思えるようになりました。 おわりに  インタビューのなかで、奥脇さんに「障害者雇用を始める、あるいは課題を感じている企業に対して、どのようなアドバイスをされますか」とたずねてみた。  すると奥脇さんは力強く次のように語られた。「企業向けの障害者雇用のノウハウを参考に他社の事例を見聞きし、情報交換を重ね、くり返し議論して原因を明確にして進めていけば、障害者雇用ができないことはありません。もし、そのうえで“戦力化できない”という課題が残るとすれば、コンセンサスや社内の仕組みのどこかに原因があるのではないでしょうか」  奥脇さんはスタッフが自ら育つ環境と、組織として育てる環境の両立を重視しておられるように感じた。ルールもまた環境であり、成長のきっかけととらえておられる。縛るためだけのものではなく、快適に働き、ステップアップできるように考えておられる。その独自ルールの一つが「30分ルール」である。これは、業務中に判断に迷うことや解決できない課題が生じた場合、30分考えても答えが出なければ他者に助けを求めるというルール。そして、助けを求められた人は必ず応える義務を負う。  奥進システムだからこそ実現できることだと感じられた方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に当事者のお話をうかがい、現場を見学させていただくなかで、多くの企業において参考となる点がたくさんあると感じました。もっと詳しく取組みをお聞きになりたい場合は、ぜひ、訪問していただければと思います。 写真のキャプション 有限会社奥進システム 奥進システム代表取締役の奥脇学さん 奥進システムは業務管理や障害者雇用の支援管理などに使用されるシステムの開発を手がける 奥脇さんと障害のある社員5人にお話をうかがった 重野さんは、プログラミングを担当している 技術部の重野孝明さん 金田さんは、サブリーダーとして設計や開発、保守を担当している 技術部の金田翔吾さん 【P26-27】 省庁だより 令和7年版 障害者白書概要@ 内閣府ホームページより抜粋  障害者白書は、障害者基本法第13条に基づき、障害者のために講じた施策の概況について、毎年国会に報告しているものです。  今号と次号の2回にわたり、「令和7年版障害者白書」の概要を紹介します。 第1章 障害者に対する偏見や差別をなくすための取組について 1.経緯 〇1948年制定の旧優生保護法の施行から48年間、多くの方々が、同法に基づき、あるいはその存在を背景として、特定の疾病や障害等を理由に不妊手術等を受けることを強いられ、耐え難い苦痛と苦難を受けてきた。 〇2024年7月、旧優生保護法の規定を違憲とし国家賠償法上違法とする最高裁判決があった。政府としては、この判決を重く受け止め、岸田文雄内閣総理大臣が原告団等と面会して謝罪した。同月、その真摯な反省の下、「障害者に対する偏見や差別のない共生社会に向けた対策推進本部」(本部長:総理、構成員:全閣僚)を設置。同年9月30日には、原告団等との間で基本合意書を交わした。 2.障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画(2024年12月27日推進本部決定) 行動計画策定の経緯  推進本部の下に幹事会を設置し、旧優生保護法の被害者や障害当事者など多くの方々からヒアリングを実施。 行動計画の考え方  障害の「社会モデル」の考え方を踏まえ、「特定の疾病や障害を有する者に対する優生上の見地からの偏見と差別」や「障害のない人を基準とし障害のある人を劣っているとみなす態度や行動」との決別の決意の下、障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けて、政府一丸となって取り組む。 行動計画の概要 ・ヒアリングにおいて当事者の方々から示された主な問題意識の下、以下の取り組むべき事項を記載。  @子育て等の希望する生活の実現に向けた支援の取組の推進  A公務員の意識改革に向けた取組の強化  Bユニバーサルデザイン2020行動計画で提唱された『心のバリアフリー』の取組の強化  C障害当事者からの意見を踏まえた今後に向けた更なる検討 ・行動計画については、PDCAサイクルを回すべく、継続的にフォローアップ。  障害者政策委員会でも意見聴取し、次期障害基本計画に反映。 3.G7包摂と障害に関する担当大臣会合(TOPICS) 〇G7包摂と障害に関する担当大臣会合が2024年10月にイタリアで初開催。 〇三原じゅん子内閣府特命担当大臣は、閣僚会合等において、旧優生保護法に基づく不妊手術、人工妊娠中絶等が強制された事実を真摯に反省し、障害のある方に対する偏見や差別の根絶に向け強い覚悟で取り組むことを強調した。 4.旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律(令和6年法律第70号) 「補償金等支給法」について ・「補償金等支給法」(議員提案)が、2024年10月8日に全会一致で可決・成立し、同月17日公布された。 ※法律の主な内容 ・前文において、国及び政府が、悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪。 ・提訴していない方々も補償の対象。 ・旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた本人に対して1500万円、特定配偶者に対して500万円の補償金の支給を行う。 ・旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた本人で生存している方に対して320万円、人工妊娠中絶等を受けた本人で生存している方に対して200万円の一時金の支給を行う。 ・「補償金等支給法」の施行日である2025年1月17日には、石破茂内閣総理大臣が旧優生保護法国家賠償請求訴訟の原告団の方々と面会した。原告団の方々から、これまでの経験や思いなどを直接伺い、「補償金等支給法」に基づく新たな補償が被害者の方々に届くよう力を尽くしていくことを表明した。政府としては、引き続き都道府県等とも連携して、周知・広報に努めていくこととしている。 恒久対策等について 調査及び検証等  「補償金等支給法」において、国は、「旧優生保護法」に基づく優生手術等及び人工妊娠中絶等に関する調査その他の措置を講ずるとともに、当該措置の成果を踏まえ、当該事態が生じた原因及び当該事態の再発防止のために講ずべき措置についての検証及び検討を行うものとされた。今後、国会の調査にも協力しつつ、必要な対応を検討していく。 継続的・定期的な協議について  2024年9月30日の「基本合意書」に基づき、優生保護法問題の全面的な解決に向けた施策等の検討、実施にあたって、優生保護法被害全国原告団等と関係府省庁との協議の場を設置し、継続的・定期的な協議を行うこととされ、2025年3月27日に「第1回旧優生保護法問題の全面解決に向けた協議」が開催された。 5.改正障害者差別解消法(「つなぐ窓口」)等 〇内閣府では、障害を理由とする差別に対する国の相談窓口として2023年10月から「つなぐ窓口」を試行的に設置。  ※令和7年度も継続して実施。 〇改正障害者差別解消法施行前後に、相談件数が増加。行政、医療・福祉、教育・学習支援の相談が多い。(2023年10月から2025年3月までで約4600件) 第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 〇全ての国民が、相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の理念の普及を図り、障害及び障害者に対する国民の関心と理解を一層深めることを目的として12月3日〜9日に「障害者週間」の取組を実施。 〇また、国や地方公共団体等の主催・後援等により、障害の理解のため「世界自閉症啓発デー」や「世界メンタルヘルスデー」など啓発行事等を実施。 第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 1.特別支援教育の充実 〇障害のある児童生徒は増加しており、特別支援学校・学級の児童生徒数はこの10年間で大きく増加。特に、特別支援学級の在籍者数、通級による指導の利用者数の増加が顕著。 〇こうした状況に対応するため、障害のある児童生徒の教科書・教材の充実、学校施設のバリアフリー化、通級による指導の担当教員の基礎定数化、発達障害に関する管理職をはじめとする教員の理解啓発等体制構築事業、医療的ケアが必要な子供に対する安心・安全な支援体制の整備を行っている。 〇また、2024年度より特別支援学校と小・中・高等学校のいずれかを一体的に運営する「インクルーシブな学校運営モデル事業」を実施し、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が共に学ぶための新しい授業の在り方等、実証的な研究を行っている。 2.障害のある人の高等教育等への修学の支援 〇障害を理由に高等教育への進学を断念することのないよう、修学機会を確保することが重要。障害のある学生の在籍者数は、ここ数年、大きく増加。精神障害・発達障害のある学生の伸びが特に顕著。 〇大学等や学生等からの相談対応や専門的知識を有する障害学生支援の人材育成等を通じて、高等教育機関全体における障害学生支援体制の推進を図る「障害のある学生の修学・就職支援促進事業」を実施。 〇2024年3月、障害のある学生の在籍者数の増加や、障害のある学生への合理的配慮の提供の義務化等を踏まえ、全ての大学教職員等が障害のある学生へ適切な支援を行うよう、具体的な支援内容等を盛り込んだ「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第三次まとめ)」をとりまとめ、周知等を行っている。 3.障害のある人の雇用の場の拡大 障害者雇用・就労の促進施策 〇民間企業の障害者実雇用率は、13年連続で過去最高を更新。ただし、障害者雇用の取組が遅れている企業も相当程度存在する。 〇このため、いわゆる「障害者雇用ゼロ企業」等を対象に、ハローワークが就労支援機関等と連携して行う「企業向けチーム支援」や、障害者の雇用の促進等の取組が優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)を実施。 〇2022年に改正した障害者雇用促進法では、 ・特に短い時間(週10時間以上20時間未満)で働く精神障害者や重度の身体・知的障害者も実雇用率に算定。(2024年4月1日施行) ・事業主の責務について、障害のある人の職業能力の開発及び向上に関する措置を追加。(2023年4月1日施行) ・企業が実施する職場定着等の取組に対する助成金措置を強化。(2024年4月1日施行) 自立及び社会参加の促進  身体障害者補助犬法では、2024年4月1日から、40人以上の事業所等においては、勤務する身体障害のある者の補助犬使用を拒んではならないこととされた。(第4章第1節) (次号では、第4章、第5章、第6章について紹介します) ★「障害者白書」は、内閣府ホームページに掲載しています。 https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html 【P28-29】 研究開発レポート 職場における情報共有の課題に関する研究 ―オンラインコミュニケーションの広がりなど職場環境の変化を踏まえて― 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 1 はじめに  職場における情報のやり取り(コミュニケーション)について、障害に起因する課題に直面している障害者は少なくありません。職場で共有される情報には、業務に関するものだけでなく、業界の動向や職場周辺のローカルニュース、趣味の話題など、直接業務にかかわらないけれど職業生活において有益なさまざまな事柄も含まれます。業務指示以外のものも含めた職場での情報のやり取りについて、障害種別を超えて全体的にとらえようとする調査は、職業リハビリテーションの分野では少なかったように思われます。  障害者職業総合センターでは、あらためて障害者が情報のやり取りについてどのような課題に直面し、どのような配慮を必要としているのかを明らかにするとともに、課題解消に向けた取組事例を把握するための調査研究を実施しました。本稿では、調査研究結果のなかから企業アンケート調査の結果の一部を紹介します。 2 調査方法  調査研究の一部として企業アンケートを実施しました。厚生労働省から提供を受けた令和4年障害者雇用状況報告(2022〈令和4〉年6月1日)において障害者を雇用していると報告した企業のなかから1万社を抽出し、人事・労務担当者または障害者の上司等、障害のある社員(職員)のコミュニケーションの状況を把握している方々へ回答を求めました(有効回答数は1217社、有効回答率は12.2%)。 3 調査結果からの抜粋  コミュニケーションについて課題が指摘されるおもな障害種別のなかでは、認知機能に障害のある障害種別(知的障害、精神障害、発達障害)と感覚機能に障害のある障害種別(視覚障害、聴覚・言語障害)で、実施されている配慮等に特徴の違いがありました。そこで、業務指示に関する情報のやり取りと、業務指示以外の内容を含んだ情報のやり取りのそれぞれについて、認知機能に障害のある障害種別と、感覚機能に障害のある障害種別の社員(職員)に対する企業の配慮を整理します。 (1)業務指示の伝達に関する取組み  企業アンケートで明らかになった、企業が業務指示の伝達に関して行っている配慮を見ると、認知機能に障害のある障害種別と、感覚機能に障害のある障害種別で、それぞれ多くの取組みが行われていることがわかりました(図1)。認知機能に障害のある障害種別では、企業は業務指示の伝達にあたり、伝達する情報を簡潔にあらためるほか、複数の指示を区切って順番に伝えたり優先順位を明確にしたりする配慮を行うことで認知的な負荷を減らし、指示役を固定化したり指示内容をその場で確認したりすることも含めて、指示内容が間違って伝わることを予防していました。  一方で、感覚機能に障害のある障害種別については、企業は見え方や聞こえ方に配慮したコミュニケーション手段を用いることで、業務指示が間違いなく伝わるようにしていることがわかりました。 (2)業務指示以外の情報のやり取りに関する取組み  職場においては、業務指示以外にもさまざまな通知、情報提供などが行われ、それらについても障害者が把握し、理解することが必要とされます。企業アンケートによると、認知機能に障害のある障害種別では、企業は業務指示以外の情報共有に関して、朝礼や定期的なミーティングの場で必要な情報を周知したり、上司等が必要な情報の把握状況を確認したりすることで、障害者に必要とされる情報が伝わるように配慮を行っていました。  視覚障害と聴覚・言語障害といった感覚機能に障害のある障害種別では、企業は業務指示以外の情報共有に関して、視覚障害者に掲示物などについて別途情報提供する、聴覚障害者に社内の放送等の内容を書面等で渡すなど、本人が受け取りやすい媒体・方法での情報共有を試みていました。そのほか、朝礼や定期的なミーティングの場で必要な情報を周知する、上司等が必要な情報の把握状況を確認するなど、必要とする情報が伝わるように配慮を行っていました(図2)。  また別の問いで、障害のある社員(職員)と上司や同僚との情報交換、交流をうながすために企業が行っていることを質問したところ、朝礼やミーティングの場での情報交換をうながすことや、歓送迎会や忘年会等の交流の機会の提供など、職場で一般的に行われる内容が確認されました。そのほかに、交流が苦手な社員には無理に会話に加わることをうながしたりせず一人で過ごせるよう配慮している場合もありました。 4 まとめ  企業アンケートの結果より、障害者が勤務する企業において業務指示やそのほかの通知などの情報が障害者に届くための情報保障と、情報を理解し対応できるような配慮を行っていることがわかりました。雑談やイベントなどの交流の機会に障害者も迎え入れ、一人の時間を大切にするという配慮を含め、さりげなくサポートしていることも明らかになりました。こうした取組みについて、調査研究のなかで実施した企業および障害者へのヒアリング調査で把握した事例を基に、マニュアルNo.83「障害者の働く職場のコミュニケーションに関するアイデア集」(※1)を作成しました。職場のコミュニケーションにおける配慮や工夫の参考としていただければ幸いです。  本稿の元となる「調査研究報告書179」(※2)はNIVRホームページからご覧いただけます。 ※1 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai83.html ※2 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku179.html ◇お問合せ先 研究企画部 企画調整室 (TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図1 企業が業務指示の伝達に関して行っている配慮 知的障害(n=322) 精神障害(n=216) 発達障害(n=39) 視覚障害(n=34) 聴覚・言語障害(n=78) 1:指示内容をシンプルにし、平易な言葉で伝える。 2:口頭での伝達が把握されにくい等の場合、手話や筆談、文字変換アプリなど、当該社員(職員)の理解しやすいコミュニケーション手段で伝える。 3:指示内容の正確な理解や定着のために、指示は口頭だけでなく、書面でも渡す。 4:指示を文書で示す場合、拡大印刷や電子ファイルなど、障害のある社員(職員)の見え方に適した形で提供する。 5:指示内容を把握しやすいように、図や絵を用いて伝える。 6:指示はメールやチャット、SNSなどで伝える。 7:指示役を固定化することで、情報の混乱を避けるようにする。 8:複数の指示を伝える際には、優先順位を明確にする。 9:複数の指示を伝える際には、区切って順番に伝える。 10:伝えた指示の内容を理解しているかを、その場で確認する。 11:指示伝達に当たり、障害に関連して特別なことは行っていない。 12:その他 13:無回答 注 折れ線は、同一傾向の障害種別を図示する意図で使用しており、変化量を示すものではない。 図2 企業が業務指示以外の情報共有のため行っている配慮 知的障害(n=322) 精神障害(n=216) 発達障害(n=39) 視覚障害(n=34) 聴覚・言語障害(n=78) 1:建物内の掲示物については、車いすの高さでも読みやすいよう留意している。 2:(視覚障害など)掲示物を読むことができない社員(職員)には、別途情報提供する機会を設けている。 3:(聴覚障害など)放送内容を把握できない社員(職員)に対しては、その内容を書面等で示すようにしている。 4:朝礼や定期的なミーティングの場で、必要な情報を周知するようにしている。 5:社員(職員)への通知はすべてメールやチャット、SNSなどで行っている。 6:必要な情報はすべてグループウェアに保存し、いつでも検索できるようにしている。 7:上司等が、障害のある社員(職員)が必要な情報を把握しているかを確認するようにしている。 8:業務指示以外の情報の共有について、特別なことは行っていない。 9:その他 10:無回答 注 折れ線は、同一傾向の障害種別を図示する意図で使用しており、変化量を示すものではない。 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 文部科学省 「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」  文部科学省は、障害者の生涯学習を推進する環境づくりの一環として、令和7年度「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」を2025(令和7)年10月末から2026年2月にかけて、全国14カ所で開催する。  障害者本人による学びの成果発表、学びの場づくりに関する好事例の共有など、障害者の生涯学習活動に関する実践交流や研究協議を行い、障害理解や関係者の学び合いを促進し、生涯学習を推進するにない手の育成、障害者の学びの場の拡大を目ざす。具体的な内容は各地で異なるが、パネルディスカッションやワークショップ、読書バリアフリー展示、参加者同士の交流など多様なプログラムを予定。  開催場所など詳細は、文部科学省が運営する障害者の生涯学習推進ポータルサイト「共生社会のマナビ」で公開している。 https://kyouseisyakainomanabi.mext.go.jp/conference/research_r7/ 文部科学省・厚生労働省 「読書バリアフリー」計画策定自治体は50%  文部科学省は、2019(令和元)年6月施行の「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)に基づく読書環境の整備について、厚生労働省とともに自治体の策定状況を調査し、公表した。  同法の規定では、地方公共団体は、基本計画を勘案して、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画策定に努めることとされている。今回の調査は、都道府県と政令指定都市、中核市の計129カ所から2025年2月時点の状況についての回答をまとめた。  これによると策定ずみの自治体は38都道府県、8指定都市、19中核市の65自治体で全体の50.4%にとどまっている。「作成する予定なし(未定も含む)」と回答したのは、都道府県ではゼロだったが、4指定都市、36中核市の計40自治体に上り、全体の31%だった。文部科学省は、都道府県における計画策定事例をポータルサイト「共生社会のマナビ」で公開している。 https://kyouseisyakainomanabi.mext.go.jp/reading-barrier-free/reading-barrier-free-local 地方の動き 千葉 県職員採用に「難病患者枠」新設  千葉県は2025(令和7)年度、障害のある人を対象とした千葉県職員採用選考考査において、新たに難病患者を対象とする区分を新設し、「障害のある方・難病のある方を対象とした千葉県職員採用選考考査」として実施する。同様の難病患者対象の県職員採用は、山梨県が2024年度から全国に先駆けて始めている。  県ではこれまで障害者手帳を持たない難病患者は対象外としていたが、新たな区分によって、障害者総合支援法の対象疾病の診断を受けている人も対象となった。より多くの人が受験可能となるよう、受験上限年齢を61歳未満(2025年4月1日時点)に引き上げた。採用予定人数は、障害者区分は一般行政や警察事務など計9職種で35人程度、難病患者区分は一般行政職で3人程度。試験内容は、第1次考査が教養(択一式)と作文で、第2次考査が口述(面接)となっている。なお今年度採用分の申込みは、9月12日で締め切っている。 https://www.pref.chiba.lg.jp/jinji/ninyou/press/2025/shougaisaiyour7.html 東京 「重度障害者就労サポート」開設  東京都は、重度の障害がある人が就労意欲を実現して社会参加の機会を広げることを目的に、必要な情報を提供する就労支援サイト「重度障害者就労サポート」を開設した。  都が実施する「デジタル技術でつなぐ重度障害者の就労支援プラットフォーム事業」の一環。同事業では、本人と企業や就労支援機関、区市町村、医療機関等の支援機関をつなげ、一人ひとりにあったデジタル機器の選定や実際の業務内容の調整、就業後のサポートまで伴走するとしている。  同サイトでは、実際の就労事例をはじめ、本人の障害の状況に応じて就労を支援するデジタル機器(視線入力装置、あご先で操作するマウス等)を紹介するほか、就労を目ざす人に必要な制度・支援ツール、関連イベントなどの情報などを提供する。また企業側からも就労マッチングや機器導入支援などに関する相談を受けつけ、内容に応じて専門のコーディネーターが具体的な支援などの調整も行う。 https://www.fukushi1.metro.tokyo.lg.jp/judoshougai_shurousupport/ 働く 神奈川 生協と大学が包括的連携協定  生活協同組合パルシステム神奈川(以下、「パルシステム神奈川」)(横浜市)と、学校法人国際学園星槎(せいさ)大学(横浜市)が、障害者雇用推進に関する包括的連携協定を締結した。  パルシステム神奈川が障害者雇用を推進するなかで、支援担当者の専門性向上と就労継続につなげるための教育・研修などで連携。星槎大学が、特別支援教育などのノウハウを活かし、パルシステム神奈川の就労支援担当職員への教育や相談、研修の機会を設けるとしている。  パルシステム神奈川では現在、配送センターの倉庫業務や子会社が運営する就労継続支援B型事業所「ハートコープ湘南」などで21人の障害のある人が働いている。 本紹介 『戦力としての障がい者雇用 実践ハンドブック』  株式会社マイナビ(東京都)の特例子会社であるマイナビパートナーズ株式会社(東京都)の代表取締役を務める藤本(ふじもと)雄(たけし)さん、医師の佐々木(ささき)規夫(のりお)さん、弁護士の柊木野(ひらぎの)一紀(かずのり)さんの3人が共著で『戦力としての障がい者雇用 実践ハンドブック』(日本法令刊)を出版した。  障害のある人や障害者雇用が持たれがちな偏見をなくすことを目的に、特性に応じたサポートによってできる業務の量や幅を広げ、「戦力としての障がい者雇用」にこだわった同社のこれまでの取組みを中心に紹介。障害者雇用をめぐる現状から、実際の採用に向けた準備、面接や職場実習での留意点、業務の切り出し・担当業務・配置、合理的配慮、マネジメント、キャリア形成まで細かく網羅している。さらに産業医・弁護士の視点からの、精神障害者の雇用に取り組むうえで留意すべきポイントなども解説。A5判272ページ、3080円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2025年度地方アビリンピック開催予定 10月末〜11月 青森県、千葉県、神奈川県、滋賀県 *開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります *  は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※日程や会場については、変更となる場合があります。 ※第45回全国アビリンピックは10月17日(金)〜10月19日(日)に、愛知県で開催されました。本誌2026年2月号で特集します。 ミニコラム 第51回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は金塚委員が執筆しています。ご一読ください。 評価の見える化 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし  企業の障害者雇用において、精神障害や発達障害のある方々に対してキャリアアップや能力開発の機会を提供する取組みが進んでいます。能力を正しく評価し、それに応じて給与を引き上げる動きが広がっていることは、社会全体にとっても歓迎すべき変化といえるのでしょう。一人ひとりの成長を認め、待遇に反映させる姿勢は、当事者の自己肯定感を高め、多様性を尊重する社会づくりにもつながっていくと感じます。  その一方で知的障害のある方々の雇用現場には依然として評価についての課題が残されているように感じます。今回取材させていただいた有限会社奥進システム(以下、「奥進システム」)代表の奥脇さんは、その背景について分析されています。  「知的障害のある方々の能力向上を正しく測定し、それを給与に反映させるための明確な基準やツールが存在していないことです。これは深刻な課題であり、職業能力を客観的に可視化する仕組みがなければ、公平な評価と報酬の連動は実現できません」  このような問題意識から、奥進システムでは知的障害者の職業能力を適正に評価できる独自のツールを開発されました。この評価ツールは商用化を目的としたものではなく、社会貢献の一環として無料で提供されています。ホワイトボードや手書きでの予定管理は便利な一方で情報を残らず管理するのも大変です。SkeBo(デジタルツール)はそんな声から生まれたようです(※)。予定を簡単に見える化し、自然に情報が蓄積されていくことにより、無理なくDXの第一歩を踏み出せるようにと。  このツールを活用することで、従業員一人ひとりの成長を数値として把握でき、本人にとってはやりがいの実感が職場への定着につながることを期待したいです。 ※無料で使えるスケジュール管理システムSkeBo https://skebo.jp/ 【P32】 読者の声 掲示板 障がいのある社員の自立に向けて 新幹線メンテナンス東海株式会社 品川ファシリティ事業所 野呂(のろ)学石(がくせき)  当事業所は、東海道新幹線品川駅に隣接し、駅舎、ビル、設備の三つの職場で構成し、駅やビルを整備しています。  今回、ご紹介するのは、知的障がいのあるSさん(26歳、女性)の自立に向けた取組みです。Sさんは、2017(平成29)年4月にパートタイマーとして入社し、ビル整備に従事しています。当初は一人の社員がサポート役となり、二人で一つの担務に就いていました。  当社では、Sさんを自立(一人で作業)させることはできないか、体制づくりを進めてきました。まず、障害者職業生活相談員の資格を取得した社員が、Sさんと幾度となく面談を重ね、一人作業への不安や必要な配慮を確認し合いました。次に、何を基準に自立を判断するのか検討を重ね、「習熟度確認チェックシート」を作成しました。このシートでサポート役の社員が安全に作業ダイヤ通りできるかを判断し記録します。この試みには、総勢19人の職場の仲間全員が理解と協力を惜しみませんでした。当初は一つの担務から始め、1年をかけ担務数を徐々に増やし職域を拡大しました。  その結果、自立を果たして準社員として必要な作業を行えることが確認でき、2025(令和7)年4月1日、Sさんはパートタイマーから準社員へ雇用形態を変更するに至りました。  いまは、よりいっそうの責任感と仕事へ生きがいを感じながら日々の作業に就いています。私たちは、Sさんが活き活きと働く姿から、いつも元気をもらっています。 読者アンケートにご協力をお願いします! ※カメラで読み取ったリンク先が「https://krs.bz/jeed/m/hiroba_enquete」であることをご確認ください。 回答はこちらから→ 次号予告 ●私のひとこと  福井大学工学系部門工学領域知能システム工学講座教授の小越康宏さんに、IoTの活用による発達障害者の就労支援など、IoTを活用した障害者の就労支援の将来像についてご執筆いただきます。 ●職場ルポ  北陸三県と長野県を販売地域とする北陸コカ・コーラボトリング株式会社(富山県)とグループ会社のベネフレックス株式会社能登営業所(石川県)を取材。同社およびグループ会社の障害者雇用に対する取組みのほか、障害のある従業員の声などをお伝えします。 ●グラビア  秋田協同印刷株式会社( 秋田県) を訪問。製本の工程で活躍する障害のあるベテラン従業員2人と入社7年目の若手従業員の働く姿や、だれもが働きやすい職場づくりなどをご紹介します。 ●編集委員が行く  大野聡士編集委員が、楽天グループ株式会社の特例子会社、楽天ソシオビジネス株式会社(東京都)を訪問。同社のビジョンである「Make a Challenge挑み・成長し続ける会社」に基づくチャレンジや、「自立」、「共生」、「挑戦」、「成長」のサイクル目標について取材しました。 メールマガジン 好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 公式X(旧Twitter)はこちら! @JEED_hiroba 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 電話 043-213-6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●編集委託−株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 電話 03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 11月号 令和7年10月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 取締役 大野聡士 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 武庫川女子大学 准教授 増田和高 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田 淳 国際医療福祉大学 准教授 若林 功 【P33】 障害者雇用支援月間(9月)における厚生労働大臣表彰などの表彰式が開催されました  9月9日(火)、東京都千代田区の丸ビルホールにおいて、令和7年度障害者雇用優良事業所等表彰式が開催されました。  当日は、障害者雇用優良事業所および優秀勤労障害者に対する厚生労働大臣表彰16件と、障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテストの厚生労働大臣賞および当機構理事長賞8件の表彰が行われました。  表彰式の最後に、「障害者雇用優良事業所」とし て厚生労働大臣表彰を受けられた、株式会社サン アンドホープ常務取締役の大山(おおやま)康彦(やすひこ)様が被表彰者を代表して挨拶を述べられました。 写真のキャプション 障害者雇用優良事業所 厚生労働大臣表彰被表彰者 ※前列におかけになった方々が被表彰者 障害者雇用優良事業所 厚生労働大臣表彰 株式会社サンアンドホープ様(福岡県)による 代表者挨拶 優秀勤労障害者 厚生労働大臣表彰 阿部(あべ)剛(たけし)様(宮城県) 写真コンテスト 厚生労働大臣賞 丹野(たんの)麻衣(まい)様(京都府) 【裏表紙】 障害のある従業員のスキルアップや休職者の職場復帰をお考えの事業主のみなさまへ  JEEDが運営する障害者職業能力開発校では、在職中の障害のある方々がより職場で活躍できるように、次のような訓練を実施しています。 スキルアップをめざす訓練 職務内容の変化に対応できるようにするための新たな技能・知識を習得する訓練です。 レディメイド訓練 訓練コース 内容 期間 ワープロソフト基礎 ・事務文書の基礎知識と文書作成 ・基本的な社内・社外文書の作成 3日間 経理(日常業務) ・簿記の仕組み ・各種取引の仕訳と記帳(伝票を含む) 3日間 ネットワーク基礎 ・ネットワーク(LAN、WAN、インターネット)の知識とTCP/IP ・LAN構築実習 3日間 *国立職業リハビリテーションセンターにて実施した例です。 オーダーメイド訓練 企業のニーズに応じて訓練内容を設定 職種転換が必要な従業員に対して *2次元CADを使用した製図作業の訓練 *リモートワーク用ツールの活用訓練 *業務に適した休息の取り方に関する助言 上記を、6カ月の期間を設定して実施 *国立吉備高原職業リハビリテーションセンターにて実施した例です。 職場復帰に向けた訓練 *疾病、事故等により受障した休職中の方が職場復帰するにあたり、必要な技術を身につけるための職業訓練です。 *個々の希望、事情に合わせて訓練内容の調整が可能です(期間は6カ月以内)。 訓練場面の見学も可能です! まずは、お気軽にご相談ください。 アビリス アビリンピック (障害者技能競技大会) マスコットキャラクター お問合せ先 国立職業リハビリテーションセンター 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 TEL:04-2995-1135(スキルアップ) 04-2995-1201(復職) 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 TEL:0866-56-9003 ※このほかにも事業主の方向けの情報を、ホームページに掲載しています。ぜひご覧ください。 11月号 令和7年10月25日発行 通巻577号(毎月1回25日発行)