グラビア 「工場長代理」としての誇りをもって 株式会社輝城(愛媛県) 取材先データ 株式会社輝城(きじょう)本社 〒791-8031 愛媛県松山市北斎院町(きたさやちょう)480-1 TEL 089-973-1211(代) FAX 089-973-1222 写真・文:官野 貴  愛媛県松山市に本社を置く「株式会社輝城」は、テント・シート製品の卸売、大型テントの設計や施工、イベントの設営や運営などを手がけている。同社では、障害のある従業員の「できないこと」ではなく、「できること」に注目し、適性のある業務を割りふり、障害のある従業員の力を引き出している。  障害者雇用のきっかけは、2017(平成29)年に職業訓練校と就労支援施設の紹介で、2人の障害のある従業員が入社したこと。精神障害のある森田(もりた)将広(まさひろ)さん(32歳)は、職業訓練校で学んだ後、同社に入社。受発注業務などの顧客対応、事務作業、配送など外回り業務のほか、地鎮祭(じちんさい)の取り仕切りや設営などを担当している。森田さんは、「いろいろな仕事にチャレンジさせてもらえて、それがやりがいとなっています」と話す。  知的障害のある武智(たけち)寛(ひろし)さん(43歳)は、就労支援施設で学んだパソコンスキルを活かして、パソコンの入力業務や資料作成などを担当。森田さんに同行し、地鎮祭でのテント設営にもたずさわる。そして、建築資材などの出荷準備、工場でシートの加工作業も担当する業務の一つ。この日は、上司と協力しながら、超音波溶着機でトラック用幌ほろシートの溶着加工を行っていた。また、同社製品のハトメ加工のほとんどを武智さんが担当している。仕事に対する意識は高く、正式な役職ではないものの、同僚からは「工場長代理」と称されている。武智さん自身も、「工場長代理として恥ずかしくない仕事をするように心がけている」といい、作業に取り組む表情は真剣そのものだ。  同社では、従業員のアビリンピックへの参加を応援している。2人はそれぞれの得意を活かし、森田さんは「ワード・プロセッサ」種目に、武智さんは「パソコンデータ入力」種目にチャレンジしている。7月に開催された「えひめアビリンピック2025(第23回愛媛県障害者技能競技大会)」では、2人そろって銅賞を受賞、今後もチャレンジを続けていく予定だという。 写真のキャプション 株式会社輝城の倉庫。同社では、このようなテント生地を使用した建造物の設計や施工も手がけている 建築資材の出荷準備で、防湿シートを切断する森田将広さん。森田さんは若手のホープで、さまざまな仕事を任されている 森田さんは、フォークリフトや高所作業車の操作資格を取得し、業務に活かしている 防湿シートの出荷準備をする武智さん。切断したロールのバリを取り、梱包する ハトメ加工を行う武智さん。同社では、あえて自動加工機を導入せず、武智さんが一つひとつていねいに手作業で行っている ハトメ加工は、シートの材質や厚さなどに合わせて、ハトメの大きさや取りつけ位置が異なる。しっかりと確認したうえで作業を進めていく 上司と協力しながら、超音波溶着機での作業にあたる武智さん。加工位置をきちんと合わせ、足元のスイッチで装置を作動させる 地鎮祭で使用するテントの設営作業を再現してもらった。武智さん(左)と森田さん(右)が協力し、手際よくテントを組み立てていく 地鎮祭の参加者がお清めするための手水用具をそろえる武智さん 森田さんは、地鎮祭の受注から、各種手配、設営、取り仕切りなどまで担当。その仕事ぶりから、社内や顧客からの信頼も厚い 武智さんは、パソコンのスキルも高く、情報処理活用能力検定やマイクロソフトオフィススペシャリストなどの資格も取得している えひめアビリンピック2025で獲得したメダルを掲げる武智さんと森田さん。2人の輝くような笑顔が印象的だ