省庁だより 令和7年版 障害者白書概要@ 内閣府ホームページより抜粋  障害者白書は、障害者基本法第13条に基づき、障害者のために講じた施策の概況について、毎年国会に報告しているものです。  今号と次号の2回にわたり、「令和7年版障害者白書」の概要を紹介します。 第1章 障害者に対する偏見や差別をなくすための取組について 1.経緯 〇1948年制定の旧優生保護法の施行から48年間、多くの方々が、同法に基づき、あるいはその存在を背景として、特定の疾病や障害等を理由に不妊手術等を受けることを強いられ、耐え難い苦痛と苦難を受けてきた。 〇2024年7月、旧優生保護法の規定を違憲とし国家賠償法上違法とする最高裁判決があった。政府としては、この判決を重く受け止め、岸田文雄内閣総理大臣が原告団等と面会して謝罪した。同月、その真摯な反省の下、「障害者に対する偏見や差別のない共生社会に向けた対策推進本部」(本部長:総理、構成員:全閣僚)を設置。同年9月30日には、原告団等との間で基本合意書を交わした。 2.障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画(2024年12月27日推進本部決定) 行動計画策定の経緯  推進本部の下に幹事会を設置し、旧優生保護法の被害者や障害当事者など多くの方々からヒアリングを実施。 行動計画の考え方  障害の「社会モデル」の考え方を踏まえ、「特定の疾病や障害を有する者に対する優生上の見地からの偏見と差別」や「障害のない人を基準とし障害のある人を劣っているとみなす態度や行動」との決別の決意の下、障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けて、政府一丸となって取り組む。 行動計画の概要 ・ヒアリングにおいて当事者の方々から示された主な問題意識の下、以下の取り組むべき事項を記載。  @子育て等の希望する生活の実現に向けた支援の取組の推進  A公務員の意識改革に向けた取組の強化  Bユニバーサルデザイン2020行動計画で提唱された『心のバリアフリー』の取組の強化  C障害当事者からの意見を踏まえた今後に向けた更なる検討 ・行動計画については、PDCAサイクルを回すべく、継続的にフォローアップ。  障害者政策委員会でも意見聴取し、次期障害基本計画に反映。 3.G7包摂と障害に関する担当大臣会合(TOPICS) 〇G7包摂と障害に関する担当大臣会合が2024年10月にイタリアで初開催。 〇三原じゅん子内閣府特命担当大臣は、閣僚会合等において、旧優生保護法に基づく不妊手術、人工妊娠中絶等が強制された事実を真摯に反省し、障害のある方に対する偏見や差別の根絶に向け強い覚悟で取り組むことを強調した。 4.旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律(令和6年法律第70号) 「補償金等支給法」について ・「補償金等支給法」(議員提案)が、2024年10月8日に全会一致で可決・成立し、同月17日公布された。 ※法律の主な内容 ・前文において、国及び政府が、悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪。 ・提訴していない方々も補償の対象。 ・旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた本人に対して1500万円、特定配偶者に対して500万円の補償金の支給を行う。 ・旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた本人で生存している方に対して320万円、人工妊娠中絶等を受けた本人で生存している方に対して200万円の一時金の支給を行う。 ・「補償金等支給法」の施行日である2025年1月17日には、石破茂内閣総理大臣が旧優生保護法国家賠償請求訴訟の原告団の方々と面会した。原告団の方々から、これまでの経験や思いなどを直接伺い、「補償金等支給法」に基づく新たな補償が被害者の方々に届くよう力を尽くしていくことを表明した。政府としては、引き続き都道府県等とも連携して、周知・広報に努めていくこととしている。 恒久対策等について 調査及び検証等  「補償金等支給法」において、国は、「旧優生保護法」に基づく優生手術等及び人工妊娠中絶等に関する調査その他の措置を講ずるとともに、当該措置の成果を踏まえ、当該事態が生じた原因及び当該事態の再発防止のために講ずべき措置についての検証及び検討を行うものとされた。今後、国会の調査にも協力しつつ、必要な対応を検討していく。 継続的・定期的な協議について  2024年9月30日の「基本合意書」に基づき、優生保護法問題の全面的な解決に向けた施策等の検討、実施にあたって、優生保護法被害全国原告団等と関係府省庁との協議の場を設置し、継続的・定期的な協議を行うこととされ、2025年3月27日に「第1回旧優生保護法問題の全面解決に向けた協議」が開催された。 5.改正障害者差別解消法(「つなぐ窓口」)等 〇内閣府では、障害を理由とする差別に対する国の相談窓口として2023年10月から「つなぐ窓口」を試行的に設置。  ※令和7年度も継続して実施。 〇改正障害者差別解消法施行前後に、相談件数が増加。行政、医療・福祉、教育・学習支援の相談が多い。(2023年10月から2025年3月までで約4600件) 第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 〇全ての国民が、相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の理念の普及を図り、障害及び障害者に対する国民の関心と理解を一層深めることを目的として12月3日〜9日に「障害者週間」の取組を実施。 〇また、国や地方公共団体等の主催・後援等により、障害の理解のため「世界自閉症啓発デー」や「世界メンタルヘルスデー」など啓発行事等を実施。 第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 1.特別支援教育の充実 〇障害のある児童生徒は増加しており、特別支援学校・学級の児童生徒数はこの10年間で大きく増加。特に、特別支援学級の在籍者数、通級による指導の利用者数の増加が顕著。 〇こうした状況に対応するため、障害のある児童生徒の教科書・教材の充実、学校施設のバリアフリー化、通級による指導の担当教員の基礎定数化、発達障害に関する管理職をはじめとする教員の理解啓発等体制構築事業、医療的ケアが必要な子供に対する安心・安全な支援体制の整備を行っている。 〇また、2024年度より特別支援学校と小・中・高等学校のいずれかを一体的に運営する「インクルーシブな学校運営モデル事業」を実施し、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が共に学ぶための新しい授業の在り方等、実証的な研究を行っている。 2.障害のある人の高等教育等への修学の支援 〇障害を理由に高等教育への進学を断念することのないよう、修学機会を確保することが重要。障害のある学生の在籍者数は、ここ数年、大きく増加。精神障害・発達障害のある学生の伸びが特に顕著。 〇大学等や学生等からの相談対応や専門的知識を有する障害学生支援の人材育成等を通じて、高等教育機関全体における障害学生支援体制の推進を図る「障害のある学生の修学・就職支援促進事業」を実施。 〇2024年3月、障害のある学生の在籍者数の増加や、障害のある学生への合理的配慮の提供の義務化等を踏まえ、全ての大学教職員等が障害のある学生へ適切な支援を行うよう、具体的な支援内容等を盛り込んだ「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第三次まとめ)」をとりまとめ、周知等を行っている。 3.障害のある人の雇用の場の拡大 障害者雇用・就労の促進施策 〇民間企業の障害者実雇用率は、13年連続で過去最高を更新。ただし、障害者雇用の取組が遅れている企業も相当程度存在する。 〇このため、いわゆる「障害者雇用ゼロ企業」等を対象に、ハローワークが就労支援機関等と連携して行う「企業向けチーム支援」や、障害者の雇用の促進等の取組が優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)を実施。 〇2022年に改正した障害者雇用促進法では、 ・特に短い時間(週10時間以上20時間未満)で働く精神障害者や重度の身体・知的障害者も実雇用率に算定。(2024年4月1日施行) ・事業主の責務について、障害のある人の職業能力の開発及び向上に関する措置を追加。(2023年4月1日施行) ・企業が実施する職場定着等の取組に対する助成金措置を強化。(2024年4月1日施行) 自立及び社会参加の促進  身体障害者補助犬法では、2024年4月1日から、40人以上の事業所等においては、勤務する身体障害のある者の補助犬使用を拒んではならないこととされた。(第4章第1節) (次号では、第4章、第5章、第6章について紹介します) ★「障害者白書」は、内閣府ホームページに掲載しています。 https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html