グラビア リワークプログラムで復職を支援する ピアスタッフ精神保健福祉士 社会医療法人智徳会 未来の風せいわ病院(岩手県) 取材先データ 社会医療法人智徳会(ちとくかい) 未来の風せいわ病院 〒020-0401 岩手県盛岡市手て代しろ森もり9-70-1 TEL 019-696-2055(代表) FAX 019-696-4185 写真・文:官野 貴  岩手県盛岡市にある「社会医療法人智徳会未来の風せいわ病院」(以下、「未来の風せいわ病院」)は、精神科スーパー救急病棟や地域移行強化病棟など全6病棟に加え、訪問看護ステーションや介護老人保健施設なども併設している。  また、外来受診や入院治療を受けた方の「これからの暮らし」を支援する取組みにも力を入れており、それぞれの専門分野のスタッフが、病院内外の施設や機関と連携を取りながら、社会復帰を目ざす患者さんが必要とするさまざまな支援を行っている。  未来の風せいわ病院は、デイケアの一環として行われるリワークプログラムやハローワークと連携した就労支援に積極的に取り組む、東北地方で数少ない病院の一つ。現在休職中で復職を目ざしている方を対象に、少人数のグループ活動を通して、職場復帰に必要な心と体のリハビリを行っている。  リワーク支援にあたる「リワーク室」は室長以下、精神保健福祉士、看護師、臨床心理士各1人で構成されている。チームの要となっているのが、精神保健福祉士の駿河(するが)孝史(たかし)さん(56歳)だ。精神保健福祉士としての専門知識を活かして、また、うつ病の当事者としてピアサポートを行うピアスタッフとして活躍している。  リワークプログラムでは、「社会生活技能訓練(SST)」や、「社会認知ならびに対人関係のトレーニング(SCIT)」などの専門的な社会心理療法により、病気や障害とうまくつき合う方法を学び、対人スキルの獲得、就労・復職準備などを目ざす。  駿河さんは、「利用者に対し、敬意を持って接することが大事です」と話し、自身が苦労した経験を活かし、利用者の復職を支援している。  未来の風せいわ病院では、事務や清掃、マッサージなどの各分野でも障害のある従業員が活躍しており、2024(令和6)年度には、障害者雇用優良事業所として、岩手県知事表彰を受けている。 写真のキャプション リワークプログラムの一つ「グループワーク」での一コマ。活動中の人間関係などを客観的に見つめ直すことで、コミュニケーションスキルなどが向上する グループワークで利用者にアドバイスをする駿河さん。精神保健福祉士として、ピアスタッフとして、同僚や利用者からの信頼も厚い 今回のグループワークでは、病院内のエレベーターに張り出す案内表示を利用者同士で話し合いながら制作する グループワークで制作された案内表示。さまざまな意見を反映し、わかりやすい案内表示が完成した 社会医療法人智徳会未来の風せいわ病院。地域生活支援を中心とした精神科医療拠点だ 個人面談に臨む駿河さん。自身が苦労した経験などを活かして、利用者の相談にのり、アドバイスなどを行う リワーク室の同僚との打合せ。駿河さんは、不調を押して無理に働こうとしてしまうこともあるため、室長が体調を判断し、休みを指示するという配慮も 「社会認知ならびに対人関係のトレーニング(SCIT)」での一コマ。ペープサート(紙人形)を使って、それぞれ性格の違う登場人物の思考や感情を表現する。ペープサートの絵柄は、絵の得意な利用者が制作したもの SCITで使用されたプリント。他罰的や自責的、お気楽な性格の登場人物の思考や感情を、利用者が考えて記入する 「社会生活技能訓練(SST)」では、実際の場面を想定したロールプレイングなどを通し、人との接し方などのトレーニングを積む 室長と看護師、臨床心理士とともにケース会議を行い、利用者についての情報共有やケアプランを検討する お昼休み、おいしいランチに笑顔の駿河さん リワークプログラムの合間に、パソコンで日報を入力する 利用者が記入したふり返りノートにコメントを書き込む ふり返りノートのコメントには、よかった点や改善点、アドバイスなどを記入している 利用者一人ひとりと言葉を交わし、ふり返りノートを返却する リワークプログラム終了後、学会発表に備え同僚とともに練習を行う 駿河さんは、「今後は若手の育成に努め、少しでも貢献できるかぎり働き続けたい」と話す。学会発表も若手育成の一環だ