ニュースファイル 国の動き 農林水産省 「ノウフク・アワード2024」選定  農林水産省は、農福連携の優れた事例に取り組む団体等を「ノウフク・アワード2024」として発表した。今回は応募があった205団体のうち22団体が受賞した。  グランプリに選ばれたのは2団体。@「株式会社菜々屋(ななや)」(徳島県徳島市)は、農業法人4社が共同して障害者就労施設を立ち上げ、県内の各農協と連携して県内全域の農家で施設外就労を行い、農業経営の効率化や規模拡大に貢献した。A「一般社団法人STEP(ステップ) UP(アップ)」(宮崎県宮崎市)は、障害者就労施設が農業生産法人を立ち上げ、障害者・刑務所出所者の就労や生活の安定に向けた支援を行うとともに認定農業者として地域の農業に貢献した。  準グランプリには、米の生産・加工・販売のほか企業や障害者就労施設等と連携したバウムクーヘンの開発・販売等を行っている「株式会社ココトモファーム」(愛知県犬山市)、障害者等の自立支援に向け、果樹栽培のほか商工農福連携の商品開発や販売に取り組む「株式会社八天堂(はってんどう)ファーム」(広島県三原市)、荒廃農地の活用や6次産業化、障害者・刑務所出所者の雇用、農業法人・JAや企業と連携した地域ぐるみの取組みを実施している「NPO法人熊本福祉会」(熊本県熊本市)の3団体を選定。このほか優秀賞に7団体、フレッシュ賞に3団体、チャレンジ賞に7団体が選ばれた。 https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kouryu/241121.html 内閣府 バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰  内閣府は、「令和6年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰(第23回)」の受賞者を発表した。  内閣総理大臣表彰(1件)は、「社会福祉法人埼玉聴覚障害者福祉会」(埼玉県入間郡(いるまぐん)毛呂山町(もろやままち))。1986(昭和61)年に、ろう重複障害者の共同作業所「どんぐりの家」を立ち上げ、1994(平成6)年に同福祉会を設立。障害者支援施設、特別養護老人ホーム、聴覚障害者情報提供施設、共同生活援助、放課後等デイサービスの経営等を行っている。  内閣府特命担当大臣表彰優良賞は次の2件。@只石(ただいし)幸夫(ゆきお)さん(北海道旭川市)は、「特定非営利活動法人カムイ大雪バリアフリー研究所」代表理事などを歴任。地域の異業種の企業と連携しながら街や施設のバリアフリー化・ユニバーサルなイベントの開催などを行ってきた。A公益財団法人兵庫県芸術文化協会の兵庫県立尼崎青少年創造劇場および兵庫県立ピッコロ劇団(兵庫県尼崎市)は、1978(昭和53)年に劇場を開館し、障害者が演劇公演を楽しめるような鑑賞サポートに力を入れている。  このほか内閣府特命担当大臣奨励賞には、「株式会社Halu(ハル)」(京都府京都市)と「みんなでつくる音楽祭 in 小平(こだいら)実行委員会」(東京都小平市)が選ばれた。 https://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/r06hyoushou/index.html 地方の動き 茨城 生活自立支援に向けた実証実験  つくば市と国立大学法人筑波大学(つくば市)、一般社団法人つくばスマートシティ協議会(つくば市)、関東鉄道株式会社(土浦市)、今川商事株式会社(つくば市)、株式会社日立製作所(東京都)から構成される「つくばハンズフリーチケッティング共同事業体」は、障害のある人の生活自立支援と安全安心な地方公共交通利用の促進を目的とした実証実験を実施した。  この実証実験は、つくば市の医療施設等に通う障害のある人を対象に、公共交通機関を利用する際にハンズフリーチケッティングサービスを利用してもらい、その有用性を検証するというもの。家族による送迎負担の軽減と利用者の安全の確保を両立し、利用履歴に基づく料金決済などで利便性を向上させるねらい。  参加者は目的施設まで利用するバスに、整理券の発券やICカードをタッチすることなく、バス降車時と施設利用時にスマートフォンアプリの画面を提示することで、乗車と施設利用の事後決済が可能になる。家族は、参加者のスマートフォンの無線装置の受信データによって移動位置を確認できるという。  実証実験の成果をふまえ、ハンズフリー乗車/決済の対象となる施設やサービス、公共交通機関を拡大し、利便性の高い交通サービスの実装を目ざす。 働く 広島 紳士服製造・販売会社が障害者雇用促進を目的に新会社を設立  衣料品販売を手がける「青山商事株式会社」(福山市)は、2025(令和7)年1月7日付で新会社「株式会社青山ストーリー」を設立した。新会社は今後、特例子会社の認定およびグループ適用の承認を目ざす。事業内容は、青山商事グループ内外の事務作業や清掃作業を予定している。  同社の2023年度末の障害者雇用率は3.03%で、障害者雇用数は129人。物流センターなどで、商品の検品や値付け・梱包などの業務に就いている。新会社では、障害者の働きやすい職場づくりに取り組み、安定した雇用につなげながら、個々の能力を十分に発揮し活躍できる環境整備をしていくとしている。 本紹介 『図解でわかる障害者雇用と就労支援』  京都文教大学臨床心理学部臨床心理学科准教授の二本柳(にほんやなぎ)覚(あきら)さんと、大阪大学大学院人間科学研究科助教の山やま下した朋と も美み さんが『図解でわかる障害者雇用と就労支援』(中央法規出版刊)を出版した。  障害者の就労にまつわる法制度や支援体制について、企業・支援者・本人に役立つ入門書としてわかりやすく解説。障害特性や合理的配慮から、就労を支援する機関、就労支援を取り巻く仕組み、各種の助成制度、現場実践の展開までをとりあげ、左ページは解説、右ページは図解で構成され、視覚的に理解できる内容となっている。障害者雇用における実践についても12の事例を紹介している。B5変型判218ページ、2420円(税込)。 『人と人のあいだを生きる 最終講義エイブル・アート・ムーブメント』  障害のある人による芸術表現活動に力を注ぎ、一般財団法人たんぽぽの家理事長などを務めた故・播磨(はりま)靖夫(やすお)さん(享年82歳)の生前の大学講義等をまとめた遺作「人と人のあいだを生きる 最終講義エイブル・アート・ムーブメント」(どく社刊)が出版された。  播磨さんは新聞記者を経て、障害のある人が生きがいをもって自立した生活を送る場として「たんぽぽの家」を立ち上げ、市民運動として展開。アートと社会の新しい関係をつくる「エイブル・アート・ムーブメント(可能性の芸術運動)」を提唱し、さまざまなプロジェクトにつなげてきた。2022(令和4)年度文化功労者(芸術振興)。  本書には、2023年に女子美術大学で行った講義を加筆修正したものを中心に、エイブル・アート・ムーブメントの思想、たんぽぽの家の草創期に執筆した原稿などが収録されている。哲学者の鷲田(わしだ)清一(きよかず)さんが解説。四六変型版200ページ、2750円(税込)。 作品大募集! あなたの力作がポスターになる! 令和7年度 「絵画コンテスト働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 募集期間(応募作品受付期間) 令和7年3月1日(土)〜6月16日(月)【締切・当日消印有効】 児童・生徒をはじめ社会人・一般の方もご応募いただけます。 絵画コンテストの応募は障害のある方が対象です。写真コンテストの応募は障害の有無を問いません。多くのみなさまからのご応募をお待ちしています。 シンボルキャラクター “ピクチャノサウルス” 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 JEED 絵画写真 検索 <過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます> 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) ミニコラム 第44回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は平岡委員が執筆しています。ご一読ください。 障がいのある人とともに生き、ともに働く未来を サントリービバレッジソリューション株式会社人事本部副部長 平岡典子  今回取材させていただいた株式会社リンクラインの神原様と青野様、株式会社ドコモ・プラスハーティの岡本様に共通していたのは、障がい者雇用を通して、目ざしたい世界観が明確であること。 「障がい者とともに働くことで、みんなが幸せになるという未来」 を描いている点だと思う。  また、自社だけの取組みにせず、その輪を外に拡げて、社会を変えようとしているリーダーであるということ。それは、障がい者の法定雇用率の達成のための障がい者雇用とは大きく異なる。障がいのある人々がイキイキと働く、そのことで周囲の人々が、大切なことに気づいたり、元気になったり、刺激を受けてこれまで以上の力を発揮できたりする。  そして、その職場は、全員がそれぞれにもつ力を発揮するのだから、組織として強くなり、成果を出せるのはあたり前だと思う。障がいのある人がイキイキと働く現場づくりはそんなに簡単なことではないかもしれない。  だから絶対に実現するんだという熱意が必要なのだ。あきらめずにやり続けることが大事なのだ。  世の中を見渡せば、障がいにかかわっている仲間はたくさんいる。もっと外にも目を向け、つながっていこう。そして社会全体を変えていこう。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、平岡委員の意向により「障がい」としています