【表紙】 令和7年5月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第572号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2025/6 No.572 職場ルポ 包装ラインや準備の業務、特性を活かし活躍 株式会社松本パック(群馬県) グラビア 「ものづくり」が楽しい〜製造の現場で活躍する障害者〜 天伸株式会社(千葉県) 編集委員が行く 高次脳機能障害のある人への企業就労支援 −ジョブコーチや地域活動支援センターによる成果 特定非営利活動法人高次脳機能障害者支援「笑い太鼓」高次脳機能障害者サポートセンター笑い太鼓(愛知県)、西濃運輸株式会社大曽根支店(愛知県) 私のひとこと 失語症者との“会話のキャッチボール”を〜社会参加に向けて〜 NPO法人言語障害者の社会参加を支援するパートナーの会 和音 清水美緒子さん 「タイヤ交換」長野県・渡わた邉なべ佳那多(かなた)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 6月号 【前頁】 心のアート ねこ 辻 龍之介 (特定非営利活動法人障害者アート支援工房COCOPELLI) 画材:クレヨン、画用紙/サイズ:52cm×36cm  月に一、二度通う工房のワークショップでは、段ボールや画用紙にクレヨンやマーカーで猫の絵ばかり描いています。ペットの猫、母親の知り合いが飼ってる猫、写真の猫を、じっと眺めては、おもむろに描き出します。今年に入ってから、地元で保護猫活動に取り組んでいる方が来所された折、アトリエに積み重ねられた作品のなかから辻さんの猫の作品を見つけ、その場で、普及用グッズのイラストとして利用したいとの話が決定しました。好きだから描いてきた作品で困っている猫を救うお手伝いができるようになり、これからの創作活動もますます活気が出そうです。 (文:特定非営利活動法人障害者アート支援工房COCOPELLI(ココペリ) 米田(よねだ)昌功(まさのり)) 辻 龍之介(つじ・りゅうのすけ) 1996(平成8)年生まれ 2019(令和元)年 「ボーダレス・アートセッション in 勝興寺 和日・作美・素生の表現者たち」国宝勝興寺 2021年 個展「猫のいる風景」射水市大島絵本館 2023年 個展「NEKONEKOKONEKO KONOKOMONEKONE KONOKOMONE」富山県リハビリテーションセンターNANTANGギャラリー「NOMAMA to GAMAMA展」氷見市芸術文化館 2024年 「ART HUG. COCOPELLI」北日本新聞社ギャラリー 【もくじ】 目次 2025年6月号 NO.572 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 ねこ 作者:辻 龍之介(特定非営利活動法人障害者アート支援工房COCOPELLI) 私のひとこと 2 失語症者との“会話のキャッチボール”を〜社会参加に向けて〜 NPO法人言語障害者の社会参加を支援するパートナーの会 和音 清水美緒子さん 職場ルポ 4 包装ラインや準備の業務、特性を活かし活躍 株式会社松本パック(群馬県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 障害者雇用率向上へのヒント 第3回 すべての社員が力を発揮できる職場〜企業に求められる合理的配慮とは?〜 JEEDインフォメーション 12 令和7年度「地方アビリンピック」開催地一覧/障害者雇用を進める事業主のみなさまへ 就労支援機器をご活用ください!/国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター オープンキャンパスのご案内 グラビア 15 「ものづくり」が楽しい〜製造の現場で活躍する障害者〜 天伸株式会社(千葉県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 障害のある人の地域生活支援について 第2回 「弱さ」が社会を変える 日本社会事業大学社会事業研究所 客員教授 曽根直樹 編集委員が行く 20 高次脳機能障害のある人への企業就労支援 −ジョブコーチや地域活動支援センターによる成果 特定非営利活動法人高次脳機能障害者支援「笑い太鼓」高次脳機能障害者サポートセンター笑い太鼓(愛知県)、西濃運輸株式会社大曽根支店(愛知県) 編集委員 若林 功 省庁だより 26 令和7年度 障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート 28 「ワークサンプル幕張版(MWS)」新規3課題による効果的なアセスメント及び補完方法の獲得に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 JEEDメールマガジン登録受付中! 表紙絵の説明 「タイヤ交換を題材に選んだのは、中学部2年生のときにタイヤ交換を職場体験で行い、たいへんでしたが、やりがいを感じとてもよい経験をしたからです。この絵を描くにあたり、手やインパクトレンチを描くのがたいへんだったり、光の具合で変わる車体の色を表現するのにすごく苦労したりしましたが、自分が交換作業に集中して取り組んでいる様子をうまく表現できたと思います」 (令和6年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 中学生の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 私のひとこと 失語症者との“会話のキャッチボール”を 〜社会参加に向けて〜 NPO法人言語障害者の社会参加を支援するパートナーの会 和音(わおん) 清水美緒子  失語症は後天的な障害です。失語症は脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患や、事故による頭部外傷などで大脳の言語中枢が損傷を受けることによって、言語を操る能力に障害が残った状態をいいます。  失語症になると、程度の差はありますが、「聞くこと」、「読むこと」という理解に関する能力、「話すこと」、「書くこと」という表出に関する能力、そして「計算する能力」、「数字を理解し、表出する能力」に障害が生じます。  失語症というと、話せない障害と思われることが多いのですが、理解面、表出面それぞれに困難が生じるのが特徴です。そして現代の情報社会において、言語を操る能力を十分に発揮できないことは大きな痛手となり、本人を孤立させ、社会参加を非常に困難にさせます。  そんな失語症の人とどのように会話をし、意思疎通を図ればよいでしょうか。  会話はよくキャッチボールにたとえられます。ボールを投げるのが苦手な人には、受け取る人が上手に受け取る工夫をしたり、受け取るのが苦手な人には、受け取りやすいボールを投げてあげればキャッチボールは長く続きますね。  会話も同じです。 ・失語症の人が話すときは急(せ)かさず、本人がいうのをじっくり聞く ・ゆっくりと、簡潔に、2〜3文節程度の短い文で伝える ・指示を口頭で伝えるだけではなく、要点を単語や図を用いて簡略に書いて説明する ・数字は非常に間違えやすいので、日付、金額など数字は必ず紙に書いて伝える  このような配慮で、会話は進みやすくなります。  失語症の人の努力も必要ですが、相手の配慮や工夫により会話が行いやすくなる。これがすなわち言葉のバリアフリーの考え方です。  NPO法人和音ではこのような考え方に基づき、失語症の人と上手にコミュニケーションが取れる人材を育成してきましたが、これは、職場における失語症者との意思疎通にもあてはまります。  失語症の人はうまく話せない、理解できないことに負い目を感じています。みなさんが時間をかけてでも意思疎通を図ろうと歩み寄る姿勢を示すことが、大きな支えとなります。  発症する前と同じように働くのがむずかしいのは事実です。でも、失語症になっても記憶や社会性、礼節、その人らしさは変わりません。それまでの人生でつちかわれた知識や経験は本人のなかに残されています。失語症の人に残された言語能力、そしてそれ以外の保たれた能力を活かして働ける場はきっとあるはずです。  とはいえ、働ける場をみつけるのは簡単ではありません。脳卒中全般の復職率が45%(※1)なのに対し、失語症者の就業年齢における職業復帰率は10%以下(※2)といわれます。その理由はいくつかありますが、一つは職場では意思疎通・情報共有の正確さが求められるので、これが失語症の人だけの努力では対応しきれず、大きな壁となります。  また、失語症は身体障害者手帳の対象となりますが、等級が3級あるいは4級にかぎられます。軽度の失語症の人は手帳取得もかないません。障害者枠の雇用に該当しないので、就職がさらに困難になっています。身体障害者手帳にコミュニケーションの重要さが十分に反映されていないゆえに、公的な支援、経済的な支援を得にくいのです。  そして、それぞれの個人の示す「失語症」の症状が千差万別で、だれにでも適応できるフォーマット化された支援体制プログラムが存在しない、というのも理由にあげられます。失語症といっても症状は人それぞれで、失語症の人ならこれはできますと簡単に説明はできません。  雇用主側からは「リハビリで治してから会社に戻ってください」といわれることがあります。でも、脳に損傷があるので治してからというのはむずかしいのです。失語症は年単位で回復するといわれますが、完治は困難です。ですから、完治できなくても現在の能力を最大限発揮して行える仕事があるのではないか、できなくなった能力の代わりに何かしらの代償手段を用いたり、工夫をすることでこなせる仕事があるのではないか、雇用主のみなさんに考えていただきたいと思います。 本人の努力と周囲の理解と配慮という相互の歩み寄りが会話のキャッチボールを成立させ、就労への道につながります。みなさんにはその可能性を、失語症の人と一緒に探っていただきたいのです。  例えば、Aさんという失語症の人は言葉の思い浮かびにくさがあり、自分の考えをすらすらと話すことはできません。そのため会議で人前に立ち、業績報告を行うことはできないのですが、病前からの記憶や知識は保たれているので、売上げをみて会社の業績を判断することで会社に貢献しています。  Bさんは話したり、聞いたりすることはおおむね問題ありません。文章を読むこともできますが、文字を思い浮かべられず書くことができません。パソコンのキーボードも打てません。ですが、パソコンの音声入力機能を用いて基本となる文章を入力し、校正機能を用いて文章を作成し仕事を行っています。  簡単ではありませんが、右記のような働き方は失語症の人の努力と雇用主側の歩み寄りにより、可能となった例です。  失語症の人たちからは、責任を持って働くことで、さらに新しい仕事の可能性も広がり、言語の能力やコミュニケーション能力も向上したとの声が上がっています。  とはいえ、どのような配慮と工夫があれば復職できるのか、雇用主側と失語症の人だけで考えるのはむずかしいことです。その場合、リハビリテーション病院や地域障害者職業センター、就労移行支援事業所等を利用するとよいでしょう。その人の失語症状を評価し、できること、できないことを具体的にあげて雇用主側にもアドバイスしてくれます。就労後も職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業を利用し、実際の仕事のなかで支援やアドバイスをしてもらうのもよいでしょう。  言葉のバリアフリーという考えが世の中に広まり、失語症の人の活躍の場が広がることを願ってやみません。 ※1 杉本香苗,佐伯覚:脳卒中の職業復帰−予後予測の観点から−.Jpn J Rehabil Med 55: 858-864, 2018 ※2 種村純,総説 言語コミュニケーション障害者への医療福祉,川崎医療福祉学会誌 増刊,409-417, 2012 清水 美緒子 (しみず みおこ)  言語聴覚士として、リハビリテーション病院にて回復期病棟での言語聴覚療法や訪問リハビリテーションに従事。NPO法人言語障害者の社会参加を支援するパートナーの会和音の理事として、失語症サロンの開催や失語症会話パートナーの養成、働く失語症当事者グループの集会など失語症の人の社会参加を支援する活動を行っている。また一般社団法人千葉県言語聴覚士会作業部会に所属し、失語症者向け意思疎通支援者を養成する研修の運営にかかわっている。 【P4-9】 職場ルポ 包装ラインや準備の業務、特性を活かし活躍 ―株式会社松本パック(群馬県)― 食品加工の会社では、特別支援学校からの実習生受け入れを機に障害者雇用を続け、長く安定して勤める従業員たちは、特性を活かして活躍している。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社松本パック 〒379-2235 群馬県伊勢崎市(いせさきし)三室町(みむろちょう)6032-1 TEL 0270-20-8887 FAX 0270-20-8877 Keyword:知的障害、精神障害、製造ライン、特別支援学校、障害者就業・生活支援センター (写真提供:株式会社松本パック) POINT 1 特別支援学校からの実習生受入れが成功例となり、継続的に採用 2 本人の適性を見ながら、担当作業を柔軟に見きわめる 3 自由参加による定期的な集まりで、学び合いながら仲間意識も醸成 乾燥具材などの充填(じゅうてん)包装  1991(平成3)年設立の食品加工会社「株式会社松本パック」(以下、「松本パック」)は、おもに即席みそ汁やインスタント麺に入っている乾燥具材・粉末スープなどを充填包装する業務を手がけている。群馬県伊勢崎市内に三つの工場があり、大手メーカーからのさまざまな注文にこたえている。  松本パックで障害のある従業員を雇用し始めたのは2005年。たまたま特別支援学校からの依頼で実習生を受け入れたのがきっかけだそうだ。その後も学校やハローワークなどから紹介を受けながら採用を重ね、いまでは従業員269人のうち障害のある従業員は15人(知的障害14人、精神障害1人)、障害者雇用率は7.32%(2024〈令和6〉年6月1日現在)だという。また松本パックは、2023年度、「障害者雇用優良事業所」当機構理事長表彰を受賞している。現場で働く従業員の活躍ぶりとともに、障害者雇用の取組みの経緯や工夫を紹介する。 職場実習の受入れを機に  松本パックの代表取締役社長を務める松本(まつもと)泰明(やすあき)さんは、障害者雇用の取組みについて「恥ずかしながら私よりも専務が、採用から日ごろの支援までほぼ取り仕切ってきました」と明かす。専務とは、泰明さんの妻である松本(まつもと)詠子(えいこ)さんのことだ。  詠子さんは「ある日、特別支援学校の先生から『そちらの近所に住んでいる生徒に、職場実習を受けさせてもらえないか』との相談を受けたことが始まりでした」とふり返る。  それまで松本パックに障害のある従業員はいなかったが、二つ返事で受入れを決めたのは、詠子さんの母親の影響が大きかったという。40年ほど前、群馬大学教育学部養護学校(現・群馬大学共同教育学部附属特別支援学校)の養護教諭をしていた母親が、「生徒たちは一つのことに集中して取り組めるんだよ」と長所をあげながら、「就職先がとても少ないのは残念」と話していたのを、詠子さんはずっと覚えていたそうで「職場実習受入れの話に、自分たちも役に立てるチャンスが来たと思いました」と話す。  初めての実習生は、当時高等特別支援学校2年生だった飯島(いいじま)憂巳(ゆうみ)さん(38歳)。事前に工場見学をした先生によると「こつこつまじめに取り組むことが得意な飯島さんに、ここの仕事は合っていると思いました」とのことだった。  一方で詠子さんは、「飯島さんにとって初めての働く機会だから、ここで何か嫌な思いをして『仕事って嫌だな、会社って怖いな』って思ってしまったら、その後の人生に大きな影響を与えてしまうかもしれない」と心配した。そこで従業員を集め「まずは飯島さんに、嫌な思いをしないで働いてもらいたい」と伝えたところ、みんなが協力してくれたそうだ。  工場内でのおもな業務は、包装業務ラインでの流れ作業だが、「飯島さんが流れについていくのはむずかしいかもしれない」と判断した現場の社員が、ラインのわきにテーブルを置き、飯島さんのペースでやってもらうことにした。  ところが始めてみると飯島さんは手ぎわがよかった。周囲の従業員たちも「これならすぐに一緒にできるかも」と驚いたそうだ。飯島さんは、高等特別支援学校2・3年次に毎回2週間の実習を計4回経験し、2005年に入社するころにはすっかり職場と仕事に慣れていた。  このときの成功を活かし、特別支援学校からの実習生には1年次の職場実習後、2・3年次に計8週間ぐらいの実習経験をしてもらっている。  「ある程度長い時間をかけて一緒に働けば、何より本人に自信がつきます。その間に親御さんとも情報共有をしながら協力関係を築くことができます」と詠子さん。  飯島さんは第1工場の製造2課で、ほかの従業員と一緒に包装業務ラインに立ち、勤続20年になる。仕事のベテランぶりについて詠子さんが語る。  「以前、繁忙期に私がヘルプでラインに入ったとき、隣の飯島さんよりも作業が遅くなっていました。気づくと飯島さんは、何もいわずにそっと私の分までやってくれていたんですよ」  飯島さんは恥ずかしがり屋さんということだったが、無理をいって少しだけインタビューに答えてもらった。仕事で心がけていることは「間違えないことです。やはり間違えることはあるので」とのこと。専務の詠子さんについて聞くと「本当に思いやりのある、やさしい人です」と即答してくれた。 次々とハローワークから紹介  飯島さんの成功例が関係者にも伝わり、その後すぐにハローワークなどからの紹介で、飯島さんが入社した翌年に2人が入社した。その1人が大橋(おおはし)祐介(ゆうすけ)さん(40歳)だ。  第2工場の製造1課に所属する大橋さんは、機械で具材が封入された大量の小袋を、組み立てた段ボール箱に入れて運び出す業務の担当をしている。「毎日300箱ほどを組み立てて、運んでいます。だれかにぶつからないよう、周囲に人がいないか注意しながらの作業です」と説明してくれた。  大橋さんについて、社長の泰明さんは「大きな戦力です」と断言するエピソードを紹介してくれた。以前、食品関連の大手企業から、商品のナポリタンにつける小袋入りの粉チーズを大量受注した。イタリアから送られてきた粉チーズは長期冷蔵の影響で固まっていたため、大きなざるを使って再び粉状に濾(こ)す作業が必要だった。それを大橋さんは1人で毎日ひたすらやり続けたそうだ。  「ほかの従業員さんも手伝いましたが、彼だけは最初から最後まで根気強く2年間ほど続けました。彼にしかできなかったと思います。あのときは本当に助かりました」(泰明さん)  そんな大橋さんは最後に、「マイカー通勤で、最近ガソリン代が高いですが、ここは給料がいいのでよかったです。長く勤められるようがんばります」と笑顔をみせてくれた。  大橋さんの職場では後輩も育っている。上原(うえはら)ガブリエルさん(21歳)は、特別支援学校での実習を経て2022年に入社した。大橋さんと同じように、段ボールを組み立てたり運んだりと、力仕事に励んでいる。職場では「ガブちゃん」と呼ばれ、かわいがられる存在だ。  上原さんは「最初は、積み上げた段ボールにラップを巻いたり、製品の名前を書いたりする仕事がたいへんだったけど、いまは大丈夫です。目標は遅刻しないことと、一生懸命にやることです」と話す。最近、詠子さんたちを驚かせたのが運転免許を取得したことだ。日ごろは自転車通勤だが、たまに母親を助手席に座らせて運転をしているという。 力を発揮できる分担作業  実習内容も含め入社後にどんな仕事をしてもらうかは、支援機関の担当者等と相談しながら、体力や手先の器用さ、性格なども考慮して配属先を決めているという。  ある知的障害のある女性は実習中、緊張すると手が震えてしまい、ライン作業がむずかしいとわかった。一方で、ライン用に具材を準備する仕事は難なくこなすことができた。「現場の担当社員とつねに相談しながら、違うかなと思えばどんどん変えて、本人が一番力を発揮できそうな担当作業をみつけていくようにしています。工場内はいろいろな分担作業がありますから」と詠子さん。  仕事内容などを覚えやすいよう写真つきのマニュアルも使っているが、「障害のある従業員のためだけではないんですよ」と詠子さん。というのも伊勢崎市には外国籍の人が多く住み、工場で働く従業員も2割程度が外国籍だという。工場内にある掲示も日本語、英語、タイ語、ベトナム語とともにわかりやすい写真やイラストがつけてあるそうだ。 ブルームの会  2019年、10人以上に増えていた障害のある従業員を対象に、月1回の集まり「ブルームの会」がスタートした。  きっかけは詠子さんが、群馬県障害者雇用ネットワーク登録企業が集まった会合で他社の事例を知ったことだった。「当事者による社内グループ活動で活き活きとしながら仕事への意識を高め合い、助け合える機会になっているとわかりました」(詠子さん)  ブルームという会の名前は、従業員が家族と一緒に考えて提案し、みんなで「かっこいいね」と決めたそうだ。  毎回自由参加で、就業時間後に集まり、詠子さんがテーマを提供して意見交換を行っている。「職場内でよくないことをした従業員がいたり、ちょっとしたトラブルがあったりしたときは、本人の名前はふせてケースとして紹介し、みんなで『どうするべきだったか』などと話し合います。逆に、よいことをした従業員がいたときは、本人のことをみんなに紹介する機会もつくっています」  クリスマス会やボーリング大会などのイベントも開催し、楽しみにしている従業員も少なくないそうだ。前出の大橋さんは「日ごろはみんな別々の場所で働いているので、たまに集まっていろんなことを話せるのが楽しいです」と教えてくれた。 障害者就業・生活支援センターに相談も  松本パックでは、詠子さんが障害のある従業員たちのサポートを行っているが、困ったことがあったときは、障害者就業・生活支援センターの担当者に力を借りているという。「自分たちだけで不安なときに、気軽に相談できる先があるのはとても心強く、センターのジョブコーチさんにもお世話になっています」(詠子さん)  なかには1年ほどかけて長期的に支援してもらったケースもある。 精神障害のあるシニア男性  2018年には、精神障害のある男性(66歳)も採用した。以前働いていた会社で精神疾患となり、就労移行支援事業所から紹介を受けたそうだ。男性は、仕事はしっかりやってくれているが、周囲の何気ない一言に傷ついてしまうことがある。そんなときは、詠子さんに「少し話したいことがあります」と内線電話がかかってくるという。  「話をすることで気持ちが楽になるようなところがあって、私も『大丈夫、〇〇さんはきちんと働いてくれていますよ』と声かけをすると、元気を取り戻してくれます」(詠子さん)  いまは2021年にできた新しい第3工場で、商品の検品作業などに従事しているという男性。自動化が進んでいる工場のため従業員が少なく、対人関係に悩まずにすんでいるようで、仕事上の相談はめっきり減ったそうだ。 緊張感と楽しみと  職業訓練を受けてから入社した従業員もいる。2021年に入社した戸部(とべ)隼勢(はやと)さん(26歳)は、高校卒業後に農業関係の仕事をしていたが、体力的に続けられず1年足らずで退職。それから産業技術専門校に入り、松本パックを紹介されたそうだ。  現在は、セットアップ作業のラインに充填包装された具材の供給作業を担当している戸部さんは、「仕事中は、7割の緊張感と、3割の遊び心を大切にしています」という。聞けば、自分の好きなマンガで出てきたセリフからヒントをもらったのだそうだ。「例えば扱う具材のロットについて、たまに違う日付のものが混じっているのを、間違い探しゲームのようにみつけることが小さな楽しみ」という一方、「たまに運んできた具材の種類が違っていたり、ロットを見落としたりすることがあるので、ミスをしないよう、焦らず確実に仕事をこなす方法をいつも考えています」とのことだ。  以前の職場は、人間関係も含めて苦労したこともあったが、「ここは心身に余裕を持って働きやすい職場だと感じます」と戸部さん。マラソン大会に出るなど運動も得意な戸部さんは、最近は休日を利用し、新幹線で遠方に行ったりするのが楽しみになっているそうだ。 正社員になった従業員も  松本パックでは、障害の有無に関係なく、1日8時間のフルタイム勤務をする条件で正社員となる。取材当時は障害のある従業員4人が正社員だった。  その1人が、2011年に入社した宮崎(みやざき)真之(まさゆき)さん(32歳)。特別支援学校時の職場実習を経て、入社後はセットアップラインに具材を補充したり段ボールを組み立てたりする担当などを経験。「ライン作業もやりましたが、ラインの流れ作業の動きに酔ってしまって、無理でした」とのことだ。  半年前からは第1工場内の2階建ての倉庫で、多種多様な具材などが入った箱を出し入れする作業を行っている。  この日も、倉庫内の専用エレベーターで降ろされてくる多数の箱を台車に載せてあちこち移動させていた。宮崎さんは「ここは先輩社員の運転するフォークリフトも動き回っているので、安全確認を怠らないよう気をつけて作業をしています」と笑顔で話す。一緒に働く先輩社員は「宮崎くんは、とにかくまじめです。力仕事を一生懸命やってくれているところがよいですね」と太鼓判を押す。  詠子さんによると、宮崎さんは初めての給料で、母親にピンク色のバッグをプレゼントしたそうだ。「とても喜んだお母さんが、私たちにバッグを見せに来てくれましたよ」と詠子さん。  さらに今春から正社員になったのが、2019年入社の近藤(こんどう)竣亮(しゅんすけ)さん(24歳)だ。職場実習を経て、入社後は戸部さんと同じく具材入りの袋を包装レーンに補充する業務を担当している。「わからないことがあるときなど、周りの人がみんなやさしく教えてくれるので、ここで働いてよかったなと思います」と近藤さん。  詠子さんによると、近藤さんから「社員になりたいです」と申し出たそうだ。近藤さんは「いまも、ほかの社員さんがいない場所で具材の補充をしたり、倉庫の人に頼んだりして、忙しくやっています。正社員になったので、さらに責任感を持って、仕事のことを考えていきます」と頼もしい言葉で意欲を見せてくれた。 「全員が大事な戦力」  社長の泰明さんは、同社の障害者雇用について「きっかけは専務の思いもありましたが、いまでは全員が、本当に大事な戦力になっています」と強調する。  「最初に入ってくれた飯島さんは20年、大橋くんも19年になりますが、みんなで若いときからずっと根気よく、仕事に取り組んでくれています。工場では、障害があるから、障害がないからという垣根はなく、それぞれやれることをやってもらい、うまくフォローしあえているのもよいのかもしれません」  今後も引き続き、特別支援学校などと連携しながら雇用していきたいという泰明さんは、「課題があるとすれば、専務の後継者となる人材育成です」と話す。「私と同様に専務も決して若くないので、これまで障害のある従業員をサポートしてきた役割を、そろそろだれかに引き継いでもらう準備をしていきたいですね」と、前向きに語ってくれた。 写真のキャプション 株式会社松本パックは、乾燥具材などの充填包装業務を手がける 株式会社松本パック 代表取締役社長の松本泰明さん (写真提供:株式会社松本パック) 専務の松本詠子さん 第1工場製造2課の飯島憂巳さん 飯島さんは、包装業務ラインでの作業を担当している 小袋の入った段ボール箱を保管場所に運び出す大橋さん 第2工場製造1課の大橋祐介さん 第2工場製造1課の上原ガブリエルさん 材料の入った段ボールを充填室に運び込む上原さん 工場内の注意書き。イラストによる図解やふりがながふられ、だれにでもわかりやすい ブルームの会で行われたボーリング大会での一コマ。月1回の集まりを楽しみにしている従業員も多い(写真提供:株式会社松本パック) 第1工場製造2課の戸部隼勢さん 材料の搬入に使用したパレットを整理する戸部さん 第1工場内の倉庫で働く製造2課の宮崎真之さん 宮崎さんは、倉庫での製品や材料の搬送を担当している 第1工場製造2課の近藤竣亮さん 包装ラインに乾燥具材などが入った小袋を補充する近藤さん 松本パックでは、障害のある従業員それぞれが、特性に合った職域で能力を発揮し、活躍している 【P10-11】 クローズアップ 障害者雇用率向上へのヒント 第3回 すべての社員が力を発揮できる職場 〜企業に求められる合理的配慮とは?〜  障害者の法定雇用率が引き上げられるなかで、障害者雇用は「採用する」時代から、「職場で活躍できる環境をいかに整えるか」が問われる段階へと移行しています。また法定雇用率の達成に加えて、人的資本経営やDEIの観点からも、合理的配慮や職場環境整備の面において、実効性ある取組みが企業に求められています。  そこで第3回では、松井優子さんの解説をもとに、組織に受け入れられる合理的配慮の進め方を実務的にひも解いていきます。 執筆者 障害者雇用ドットコム代表 東京情報大学非常勤講師 松井(まつい)優子(ゆうこ)さん はじめに  多様性を尊重し、だれもが能力を発揮できる職場づくりは、企業にとって不可欠なテーマとなっています。特に障害者雇用においては、採用にとどまらず「どのように職場環境を整備し、障害者が活躍できる場を提供するか」が問われています。その鍵となるのが「合理的配慮」と「職場環境整備」です。  障害者に対する合理的配慮の提供義務は、障害者雇用促進法と障害者差別解消法によって定められています。前者は雇用分野において、後者は雇用以外の分野が含まれます(図表1)。今回は雇用の現場で企業が果たすべき責任を明確にするため、障害者雇用促進法における合理的配慮に焦点をあてて解説していきます。 「障害者雇用促進法」における合理的配慮とは?  「障害者雇用促進法」による合理的配慮は、2016(平成28)年4月から障害者に対する差別の禁止とともに、事業所の規模や業種に関係なく、すべての事業主に義務化されています。合理的配慮とは、障害のある人がほかの人と平等に働くために、職場において必要な対応や調整を行うことです。合理的配慮は、本人の申し出(ニーズの表明)を起点とし、それに対して企業が可能な範囲で対応するという「双方向の対話と調整」によって進められるものです。  そして、このプロセスのなかでは、次の三つの視点が特に重要となります。 1.本人の困りごとや配慮の希望を明確に把握すること 2.業務内容や職場環境との整合性をふまえ、企業側の対応可能性を検討すること 3.現実的かつ実効的な着地点をともにみつけていくこと  本人からの申し出には、企業として対応がむずかしいと感じる場合もあります。そのようなときでも企業と本人の相互理解と調整のなかで、業務に支障なく配慮を実現する方法を検討することが求められます。また、障害の種類によっては、業務を遂行するうえでどのような支障があり、どのような配慮が必要なのかが、見た目だけではわからない場合があります。障害の種類や障害者手帳の等級が同じ場合であっても、一人ひとりの状態や考え方は違いますし、職場環境などによって求められる配慮も異なります。そのため、取るべき対応は個別性が高いものと認識しておくことが大切です。具体的にどのような措置をとるかについては、本人と企業側とで「対話」したうえで決めることが求められます。  なお、合理的配慮の提供は「過重な負担とならない範囲で」(※)行うものです。この「過重な負担」とは、企業にとって過度なコスト、著しい業務への支障、安全性の確保が困難になるなど、著しく合理性を欠く対応をさします(図表2)。合理的配慮についてはすでにたくさんの資料や事例がありますので、それらを参考にしながら、自社の合理的配慮を検討していくとよいでしょう(図表3)。 合理的配慮を組織として受け入れやすくするために  合理的配慮を考える際には、職場全体の最適化を考える職場環境整備もあわせて考えていきます。職場環境整備のベースには「ユニバーサルデザイン」の考え方である「多様性」を前提とすることにより、組織として受け入れやすくなります。特定のだれかに配慮するということではなく、障害の有無、年齢、性別、文化的背景などに関係なく、すべての人が使いやすく、働きやすい仕組みを最初から設計するというアプローチです。  聴覚障害のある社員に対して会議中に文字起こしツール等の「就労支援機器」を導入するのは合理的配慮ですが、すべての会議室にモニターや音声認識ツールを常設することは職場環境整備にもなります。こうした設計は、結果として企業全体の「働きやすさ」につながります。設備等のハード面だけでなく、ソフト面の働き方の柔軟さ(時差出勤、在宅勤務、短時間勤務等)も含めることができます。 合理的配慮の社内理解と風土づくり  合理的配慮は制度や設備を整えたとしても、実際に働く職場の人の「理解」がなければ実現しません。そのため周囲の理解を得られる環境をつくるために、社内全体への情報共有や社内研修が必要です。社内に「知る」、「考える」、「話す」場があることで、障害のある人への接し方に対する漠然とした不安が払拭され、自然な関係性を築きやすくなります。特に研修では、管理職やマネジメント層への理解を進めることが重要です。障害のある人を含めたすべての人材に対するマネジメントや人材育成の視点をもつことで、社内における理解が進みます。  合理的配慮を実施するうえで最も避けたいのが、「あの人は特別扱いされている」という誤解や対立の雰囲気です。これを防ぐには、「合理的配慮は特別ではなく、公平を実現する手段である」ことを、組織全体で共有しておく必要があります。また、障害者を含めた多様な人材を対象とした取組みは、全従業員にとって働きやすい職場づくりにつながります。 *****  次回は、「選ばれる企業」になるための障害者採用について解説します。 ※厚生労働省「合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000082153.pdf 図表1 合理的配慮の提供義務 法律名 対象障害者 合理的配慮の例 障害者雇用促進法 採用や雇用でかかわる障害者 ・業務指導の担当者、専任者を配置する ・作業指示や伝達に曖昧な表現をしない ・習熟度に応じて業務量を増やす 障害者差別解消法 商品やサービス等を受ける障害者 ・段差がある店舗にスロープ等を設置する ・セミナーや説明会で、手話通訳や筆談、音声ガイドを準備する 筆者作成 図表2 合理的配慮の“現実的な調整”で考慮する要素 【過重な負担の可能性のある要素】 事業活動への影響 費用負担 財務状況 実現困難度 企業の規模 公的支援の有無 ★合理的配慮は、企業にとって無理のない範囲で、本人との対話を通じて工夫や調整を行うことが基本とされています。本図表は、その際の判断の参考となる視点を整理したものです。 図表3 合理的配慮の参考資料 指針事例集 ●合理的配慮指針事例集【第五版】(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001230884.pdf 好事例集 ●障害者への合理的配慮好事例集(令和6年3月)(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001234010.pdf ●障害者雇用事例リファレンスサービス(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構) https://www.ref.jeed.go.jp/ Q&A集 ●障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001237499.pdf 筆者作成 「就労支援機器」とは?  就労支援機器とは、障害のある人が業務を行いやすくするための補助機器や技術です。視覚障害のある人には音声読上げソフトや画面拡大ツール、聴覚障害のある人には会話文字化アプリ、肢体不自由のある人には視線入力や電動昇降デスク、発達・精神障害のある人にはタスク管理アプリやノイズキャンセリング機器などがあります。近年では、ITやAIの進化により、こうした機能がアプリやクラウドサービスとして利用しやすくなっています。リアルタイム字幕生成、音声でのパソコン指示、スケジュールやタスクを自動調整するツールなど、汎用技術が支援機器として応用されるケースが増えています。 ★今号の「JEEDインフォメーション」13ページでもご紹介しています。ご参照ください。 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 ◆令和7年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催される予定です。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月4日(土) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬〜11月上旬(予定) 青森職業能力開発促進センター(予定) ホテル青森(喫茶サービス)(予定) 岩手 6月22日(日) 岩手県立産業技術短期大学校矢巾キャンパス 宮城 7月12日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月10日(木) 秋田市にぎわい交流館AU 山形 7月3日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月5日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月19日(土) 7月20日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月5日(土) 栃木職業能力開発促進センター 障害者スポーツセンター(わかくさアリーナ) 群馬 7月5日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月5日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 埼玉職業能力開発促進センター 千葉 11月29日(土) 千葉職業能力開発促進センター 東京 2月中旬〜下旬 東京障害者職業能力開発校 職業能力開発総合大学校 神奈川 11月8日(土) 11月15日(土) 関東職業能力開発促進センター 神奈川障害者職業能力開発校 新潟 9月6日(土) 新潟市総合福祉会館(予定) ホテルグローバルビュー新潟(予定) 富山 7月19日(土) 富山市職業訓練センター 富山県技術専門学院 石川 調整中(10月頃) 石川職業能力開発促進センター 福井 6月21日(土) 7月5日(土) 福井職業能力開発促進センター 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 10月5日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月12日(土) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月5日(土) ソフトピアジャパンセンター 静岡 7月12日(土) 静岡市東部勤労者福祉センター清水テルサ 静岡市清水文化会館マリナート 静岡職業能力開発促進センター 愛知 @6月7日(土) A6月8日(日) B6月15日(日) C6月28日(土) @大成今池研修センター A専門学校日本聴能言語福祉学院 B愛知県立名古屋聾学校 C中部職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 会場 三重 6月28日(土) 三重職業能力開発促進センター 滋賀 11月15日(土) 近畿職業能力開発大学校附属滋賀職業能力開発短期大学校 京都 1月31日(土) 京都府立京都高等技術専門校 京都府立京都障害者高等技術専門校 大阪 6月21日(土) 7月5日(土) 関西職業能力開発促進センター (社福)日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター 兵庫 6月21日(土) 7月5日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月19日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 7月5日(土) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月26日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月12日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 7月5日(土) 7月12日(土) 岡山職業能力開発促進センター 広島 7月19日(土) 広島職業能力開発促進センター 山口 10月4日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 6月28日(土) 徳島職業能力開発促進センター 徳島ビルメンテナンス会館 香川 2月頃未定 愛媛 7月5日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 @6月28日(土) A7月5日(土) @学校法人龍馬学園 龍馬デザイン・ビューティ専門学校 A高知職業能力開発促進センター 福岡 【北九州会場】7月5日(土) 【福岡会場】7月12日(土) 【北九州会場】福岡職業能力開発促進センター 【福岡会場】クローバープラザ 佐賀 1月頃 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月5日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月22日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月4日(土) 大分職業能力開発促進センター 宮崎 7月5日(土) 宮崎職業能力開発促進センター 宮崎県ビルメンテナンス協会 鹿児島 @7月7日(月) A7月12日(土) @鹿児島ホテル短期大学校 A鹿児島職業能力開発促進センター 沖縄 7月19日(土) 沖縄職業能力開発大学校 ※2025年5月9日現在 詳細は、ホームページをご覧ください。 地方アビリンピック 検索 アクセスは こちら! ・開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります。 ・日程や会場については、変更となる場合があります。 障害者雇用を進める事業主のみなさまへ 就労支援機器をご活用ください!  当機構(JEED)の『就労支援機器貸出・相談窓口』では、障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主に無料で就労支援機器の貸出しを行っています。 「就労支援機器」とは障害者の就労を容易にするための機器のことで、例えば視覚障害者を対象とした画面読上げソフト、拡大読書器や、聴覚障害者を対象としたデジタル補聴システム等があります。 視覚を補助する機器 ●拡大読書器 据置型、携帯型、ポータブル型など各種取りそろえています。 見え方、作業環境、見る対象物などの条件に合わせて選択できます。 ●パソコン支援ソフト 画面読上げソフト(PC-Talker、JAWS)、画面拡大ソフト、文字認識(OCR)ソフトなどの貸出しを行っております。 なかでも、高知システム開発製のソフト(PC-Talkerなど)はソフト単体での貸出しも可能です。 聴覚を補助する機器 ●デジタル補聴システム 補聴器や人工内耳に送信機(マイク)が拾った音を直接届けることができるシステムです。職場では、会議や打合せの場面でとても有効に活用できます。音声認識アプリとの併用も検討できます。またリモート会議のパソコンなどAV機器への接続も可能です。 その他の機器 ●ノイズキャンセラー、イヤマフ ●パーテーション 聴覚的・視覚的な刺激を低減させることで周囲の状況に影響されずに集中して就労できる環境を整えます。 近年、急激に貸出し件数が増えている分野です。在庫を増強して対応しています。 ぜひ、お試しください。 人気機種を台数増強するとともに新機種も順次導入しています。 お気軽にお問い合わせください。 (新機種 例) <拡大読書器> ・ルナ6、クローバー6、クローバーブック ・アイ・ラビュー16プレミアム、ルビー10スピーチ など <点字ディスプレイ> ・ブレイルメモスマートAir32 <デジタル補聴システム> ・ロジャーオン3、ロジャーセレクト3 など 貸出しの対象 障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主 ※国、地方公共団体・独立行政法人などは対象外です 貸出し期間 原則、6カ月以内 ※職場実習やトライアル雇用の場合も利用できます (必要に応じて1回のみ、最大6カ月の延長可能) 貸出しの流れ 申請書の提出 申請書を記入し、メールまたは郵送でご提出ください。 ※申請書はJEEDホームページよりダウンロードできます 貸出決定・配送 申請のあった事業主に対し、申請内容を確認のうえ決定内容を通知し、機器を配送します。 貸出しの終了・返却 JEEDが手配した宅配業者が、回収にうかがいます。 ※申請前に対象機器の貸出状況等について下記までお問い合わせください お問合せ先 就労支援機器貸出・相談窓口 〒130-0022 東京都墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 TEL:03-5638-2792 E-mail:kiki@jeed.go.jp 就労支援機器アドバイザーが、就労支援機器の紹介や活用方法に関する相談を行っています。機器の展示コーナーも設けていますので、実際に手に取って試していただくこともできます。 就労支援機器はJEEDホームページで詳しく紹介しています https://www.kiki.jeed.go.jp 就労支援機器のページ 検索 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター オープンキャンパスのご案内 開催日程 ●国立職業リハビリテーションセンター 令和7年 6月18日(水) 7月16日(水) 8月8日(金) 9月24日(水) 10月22日(水) 11月19日(水) 12月17日(水) 令和8年 1月28日(水) 2月25日(水) 3月18日(水) 開催時間:13時15分〜16時40分 ●国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 令和7年 7月20日(日) 開催時間:午前の部 10時00分〜 午後の部 13時00分〜 訓練生募集中! プログラム内容 @全体説明(入所手続き、職業訓練、就職支援等について説明いたします) A訓練見学(実際の訓練の様子をご覧いただきます) B質疑応答 C職業訓練体験(ご希望される訓練コースの体験をしていただきます) 詳細につきましては、各職業リハビリテーションセンターのホームページでご確認されるか、下記お問合せ先までご連絡ください。 申込方法・申込期限 ●国立職業リハビリテーションセンター(申込期限:開催日の1週間前) @氏名(ふりがな) A障害名 B連絡先 C所属 D参加希望日 E同行者の有無 F職業訓練体験希望の有無 G宿舎見学希望の有無 を下記の問合せ先までメールまたは電話にてお申し込みください。 ●国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(申込期限:未定) パソコンおよびスマートフォンで下記の問合せ先の二次元コードまたはホームページアドレスから入力フォームにてお申し込みください。 詳細につきましては、令和7年5月下旬ごろ、ホームページへ掲載する予定ですのでご確認ください。 お問合せ先 国立職業リハビリテーションセンター 職業指導部 職業評価課 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 TEL:04-2995-1201 https://www.nvrcd.jeed.go.jp/person/visit/index.html 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 職業訓練部 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 TEL:0866-56-9003 https://www.kibireha.jeed.go.jp/index.html 【P15-18】 グラビア 「ものづくり」が楽しい 〜製造の現場で活躍する障害者〜 天伸株式会社(千葉県) 取材先データ 天伸(てんしん)株式会社 〒277-0042 千葉県柏市逆井(さかさい)442-1 TEL 04-7174-6571 FAX 04-7175-3155 写真・文:官野 貴  千葉県柏市にある天伸株式会社は、バネや金具といった金属製品の製造を手がける。同社では障害のある従業員が「ものづくり」の現場で活躍しており、従業員36人のうち、4人が障害のある従業員だ。  障害者雇用のきっかけは、特別支援学校の職場実習を受け入れたこと。特別支援学校在学中に二度の実習を行い、入社を決めたのが増山(ますやま)勝樹(まさき)さん(25歳)だ。当初は、加工を終えた部品を入れる箱の入れ替えなど、製造補助として簡単な作業を担当していたが、材料の交換や金型の取りつけをこなすなど予想以上の成長を見せた。現在では、プレス機の一種であるフォーミングマシンを複数台同時進行で動かし、バネ部品の生産を担当している。  増山さんの1年後輩で、同様に職場実習を経て入社し、フォーミングマシンのオペレーター業務をになっているのが松田(まつだ)侑大(ゆうた)さん(23歳)。取材時、金型の組立てや取りつけなど、バネ部品製造の準備を手際よく進めていた。松田さんは、「セッティングがうまくいき、きちんと部品ができあがるとうれしい」と教えてくれた。  入社3年目の佐藤(さとう)柾斗(まさと)さん(22歳)も同じ特別支援学校の卒業生で、実習時、2人の先輩がいることが安心感につながったという。現在は、2台のプレス機を操るオペレーターとして活躍しており、「今後はフォーミングマシンでの作業にも挑戦してみたい」と話す。  同社は、2020(令和2)年に、千葉県初の「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」(もにす認定制度)の認定を受けた。これを契機に、企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)を配置するなど、障害のある従業員が活躍できる環境づくりを進めている。彼らがさらに活躍できるように、それぞれの働きの質を高めるのが今後の目標だという。 写真のキャプション フォーミングマシンに金型を取りつける増山勝樹さん フォーミングマシンの送り込み装置に材料の板材をセットする フォーミングマシンで製造した部品の品質検査を行う。増山さんは、「判断に迷ったら確認する」ことを心がけているという 組み立てた金型をフォーミングマシンに取りつける 金型の組立てを行う松田侑大さん 製造したバネ部品を指で触り、不要な突起(バリ)の有無を確認する フォーミングマシンの稼働を見守る松田さん。「天伸は働き続けたい職場」だと話す プレス機でバネ部品を製造する佐藤柾斗さん。「機械に触れられる仕事が楽しい」という 拡大鏡でバネ部品をすみずみまで観察し、傷の有無を確認する 製造中は、機械の動作音や材料の残数などに気を配る 同じ職場で働く同窓生の3人。照れながらも取材に協力してくれた。3人は共通して「ものづくり」に関心があり、仕事が楽しいそうだ 【P19】 エッセイ 障害のある人の地域生活支援について 第2回 「弱さ」が社会を変える 日本社会事業大学社会事業研究所 客員教授 曽根(そね)直樹(なおき) 知的障害のある人の入所施設、障害児の通園施設、レスパイトサービス、障害者グループホームの職員を経験した後、障害者相談支援事業の相談員などを経て厚生労働省障害福祉課虐待防止専門官として5年間勤務。日本社会事業大学専門職大学院教授を経て定年退職後、現職。 レスパイトサービス※と医療的ケア  30年ぐらい前のことです。わたしは在宅障害児者のレスパイトサービスの仕事をしていました。わたしたちのレスパイトサービスは、公的な制度外の民間団体による自主的な取組みとして行っていました。対象は、おもに知的障害や重症心身障害のある人たちで、ご家族に代わって、職員がレスパイトサービス用の借家で一緒に宿泊したり、日中の外出のつき添いや自宅と外出先の送迎などをして、本人の日常生活を支えていました。理由を問わず、空いていれば利用できる柔軟性が受け入れられて、利用者は増えていきました。  レスパイトサービスの利用者に、経管栄養からの注入と痰の吸引が必要な重症心身障害のある小学生がいました。当時は、まだ介護職員の喀痰(かくたん)吸引研修が制度化されていなかったため、経管栄養の注入や痰の吸引は医療行為とされ、医師の指示を受けた看護師か家族しかそれを行うことが許されていませんでした。しかし、それではレスパイトサービスを利用している間、家族に一緒にいてもらわなくてはならず、利用する意味があまりありませんでした。 受診同行と主治医指示書  当時、東京都教育委員会では、経管栄養や痰の吸引について、児童・生徒や家族の同意書があること、医師の指示書があること、看護師など医療職から手技の指導を受けていることを条件として、学校の教職員が経管栄養や痰の吸引を行うことができるという、独自の取組みを行っていることを知りました。それで、東京都以外でも、その条件を整えることができれば、経管栄養や痰の吸引を行うことが可能になるのではないかと考えました。そして、その子の主治医に指示書を書いてもらうために、病院の受診日に同行させてもらうことにしました。地方には、重症心身障害の子どもをみる専門病院がなかったため、主治医の病院は、高速道路を使って車で1時間以上離れた都会にありました。 この子がわたしを連れてきた  診察室で事情を話したところ、主治医は指示書を書くことを引き受けてくれました。書類ができるまで、お母さんとわたし、リクライニング式の車いすに座ったその子の3人で待合室で待っていました。少しして、お母さんが「なんで遠くの病院まで来てくれたのですか」と話しかけてきました。「なんで」と問われると理由を答えなくてはならないと思い、なんでだろうと考えていたときのことです。突然、車いすに座った重症心身障害のその子以外が視界から消えて、背景が真っ白になって、まるでその子が宙に浮かんでいるような不思議な視覚的体験をしました。そして、わたしが遠くの病院に来た理由がはっきりとわかりました。「この子がわたしをここに連れてきたのだ」と。 「弱さ」が社会を変える  重症心身障害のその子は、障害が重いため言葉で話すことができません。体を自由に動かすこともできないので、行動や動作でなにかを伝えることもむずかしい状態です。食事は口から食べることがむずかしいので、鼻から胃まで入れたチューブに、点滴のように栄養剤を注入し、痰がからむと吸引が必要になります。社会的には、弱い存在とされるでしょう。でも、言葉ではなにも伝えることができないその子の存在が、わたしを遠い病院まで連れてきたことを理解したとき、「弱い」とされている人の存在が放つエネルギーの大きさ、強さに圧倒される思いになりました。その子は、その存在で、家族を動かし、わたしを動かし、周りの人たちを動かしているのだ、と強く感じました。  そのあと、お母さんにどのように答えたかは覚えていませんが、そのとき受けた衝撃は残り続けており、当事者の存在が周囲を動かし、社会を変えているという、障害福祉を考える原点になっています。 ※レスパイトは「休息」の意味。障害のある人の家族が、一時的に介護などから離れて休息できるサービスとして始められたが、障害のある本人のいつも通りの生活を支援することが、結果として家族の休息につながると考えるようになった 【P20-25】 編集委員が行く 高次脳機能障害のある人への企業就労支援 −ジョブコーチや地域活動支援センターによる成果 特定非営利活動法人高次脳機能障害者支援「笑い太鼓」高次脳機能障害者サポートセンター笑い太鼓(愛知県)、西濃運輸株式会社大曽根支店(愛知県) 国際医療福祉大学 准教授 若林 功 取材先データ 特定非営利活動法人高次脳機能障害者支援「笑い太鼓」 高次脳機能障害者サポートセンター笑い太鼓 〒464-0083 愛知県名古屋市千種(ちくさ)区北千種(きたちくさ)1-3-9加藤ビル1F TEL 052-508-8751 西濃運輸(せいのううんゆ)株式会社 大曽根(おおぞね)支店 〒461-0045 愛知県名古屋市東区砂すな田だ橋ばし5-10-10 TEL 052-678-4307 FAX 052-721-7063 若林(わかばやし) 功(いさお) 編集委員から  高次脳機能障害というと、発達障害や精神障害と同様に認知能力面での障害ということになるが、ほかの障害とは異なる特徴も多く、さらには個人差も大きいということで、なかなか一筋縄ではいかない、対応がむずかしいと感じる企業担当者や支援者もいるだろう。しかしながら、高次脳機能障害のある人の企業就労支援に成果を上げている支援機関もある。  今回は高次脳機能障害のある人を専門的に、かつ地域活動支援センターという形態、ジョブコーチの手法を用いて就労支援を行うことで、企業側の障害に対する理解、企業就労、就労定着という成果を生み出している事例を紹介する。 Keyword:高次脳機能障害、ジョブコーチ、地域活動支援センター、障害福祉サービス、職業準備性 (写真)官野 貴 POINT 1 高次脳機能障害への専門性の高い支援機関 2 ジョブコーチの活用により企業に障害特性などを適切に伝達 3 一般就労後も地域活動支援センターを柔軟に利用 高次脳機能障害とは  高次脳機能障害とは、脳の器質的病変の原因となる疾病の発症や事故による受傷の事実が確認されており、現在、日常生活または社会生活に制約がある状態であり、この用語が用いられる文脈によって、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害に限定する場合と、失語、失認、失行を含む場合があるとされる。いずれも脳の病気や損傷により、記憶や注意等の障害が生じ、その結果生活上に制約が生じている状態であるといえる。  職業への障害の影響として「新しいことを覚えるのがむずかしい」、「新しいことや問題に直面すると混乱し、対応策が考えつかない」といった課題がある場合がある。また、感情面のコントロールを行うことがうまくできなくなり、対人関係に支障が出て、職業適応上の問題が出ることもある。  こうした課題のある高次脳機能障害のある人への就労を支えるためには、就職前に訓練を行って就職や就職後に備えるという方法では効果がかぎられることがある。その場合、就職先の企業現場においてのジョブコーチ(※1)による職場に適応するための直接的支援や、生活面の支援も視野に入れた就職後のアフターフォローといった継続的な支援が必要となる。このような支援は、直接的あるいは間接的な形で、それぞれの機関の役割のもと、労働行政側の機関である地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター等がになうこともあれば、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスがになうこともある。 障害福祉サービス事業を併用しながらの一般就労  ところで、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業所による就労支援プロセスのイメージとは、就職する前に障害福祉サービス事業所で「訓練」を受け、その利用者が企業に就職したらその障害福祉サービス事業所は「卒業」となるというものであろう。そして、就職後は就労定着支援・アフターフォローを受けることがあるにしても、基本的には障害福祉サービス事業所と企業とに同時に所属することはない、ということになると思われる。  一方、政策のうえで雇用と福祉的施策の連携が重視されるなかで、「一般就労中における就労系障害福祉サービスの一時的利用」というテーマの研究に筆者は近年たずさわってきた。そして、その研究のなかで、高次脳機能障害のある人に対し、障害福祉サービス事業所に所属・登録しながら一般就労をしている人の支援を行っている(一般就労と障害福祉サービスの併用をしている)障害福祉サービス事業所があるという情報を得て、いつか訪問をしてみたいと考えていた。  今回はその願いが実現し、本稿は、高次脳機能障害のある人の就労支援に関し、おもに就職前や就職時の支援を行った障害福祉サービス事業と、その高次脳機能障害のある人を受け入れた企業を訪問し、どのように就職(採用)や、職場定着に向けた活動が行われているのか、一つの例ではあるが、レポートするものである。なお、障害福祉サービスを利用しながらの一般就労という観点も交えることとしたい。 笑い太鼓  先述した、高次脳機能障害のある人の就労支援を行っている障害福祉サービス事業所として今回訪問したのは、特定非営利活動法人高次脳機能障害者支援「笑い太鼓」である。同法人は、愛知県内の豊橋(とよはし)地域と名古屋地域で事業を展開しており、そのうち今回は名古屋市にある「高次脳機能障害者サポートセンター笑い太鼓(以下、「笑い太鼓」)」を訪問した。同事業所は、障害者総合支援法上の位置づけでは「地域活動支援センター」、「相談支援事業所」となる。  地域活動支援センターとは、厚生労働省によると、障害者等を通わせ、創作的活動または生産活動の機会の提供、社会との交流の促進等の便宜を供与する障害者総合支援法上の施設である。また、地域の実情に応じ、市町村がその創意工夫により柔軟な運営、事業の実施が可能とされる。  就労支援分野でよく知られている、その日の利用者の利用状況にあわせて、国からの報酬が事業所に支払われるという就労移行支援事業、就労継続支援事業と比べて、利用の規制が比較的ゆるやかであるという側面がある。障害のある社員が一般企業に所属していても、出勤前や勤務後の夕方などに登録している地域活動支援センターにふらりと立ち寄るといったような利用方法も可能である。  今回、笑い太鼓の職員としてお話をうかがったのは、森下(もりした)園子(そのこ)さんである。じつは森下さんは、以前筆者が所属をしていた職場で同僚だった方である。ただ、笑い太鼓で活動をされているのを筆者は存じ上げず、本当に久しぶりに再会させていただくことになった。 高次脳機能障害者サポートセンター笑い太鼓  笑い太鼓は1998(平成10)年から、高次脳機能障害者とその家族が中心になり当事者と家族の居場所づくり、作業所の運営を始めたのが活動の始まりである。同法人はもともと豊橋市などで、高次脳機能障害のある人に対する就労移行支援や就労継続支援B型などの事業所を運営していたが、現在は豊橋市や名古屋市で地域活動支援センターや相談支援事業の運営が中心となっている。  なお、相談支援事業を行っている理由をたずねてみた。「高次脳機能障害のある人を、退院後の治療から適切な社会資源へとつないでいくことがとても重要であるから」とのことであった。  高次脳機能障害のある人に適した社会資源につなげないと、世の中に多く存在する、例えば統合失調症などの精神障害のある人や知的障害のある人を中心とする事業所を利用することとなり、結果的に本人の特性に合わない支援を受けることにつながってしまう。そのために、高次脳機能障害に専門性を持つ相談支援事業所を持つことによって、適切なサービスにつながるように心がけているとのことであった。  また、原因となる疾患が脳血管障害で、その発症された方が40歳以上の場合、介護保険の対象となる疾患(特定疾病)となる可能性がある。その方の発症後の支援によっては、障害福祉サービスではなく、高齢者の介護保険サービスにつながり、企業就労や職場復帰の可能性があっても、就労支援サービスにつながらない可能性が出てきてしまう。こうしたことから、地域の高齢者分野の相談窓口である「地域包括支援センター」とも連携をよく行っているとのことであった。 一般的な地域活動支援センターとは異なる就労を意識したかかわり  笑い太鼓の地域活動支援センターの活動について、お話をうかがった。基本方針としては、まずは、個別での対応が重要となるため、地域活動支援センターとして集団で作業をしているものの、利用者個人それぞれのやりたいことをやる、自分の意思でやるということを大事にしているという。そして、そのような本人の気持ちをベースに、技能や職業準備性等が向上するよう支援しているとのことであった。  利用者すべてが一般企業への就労を目ざしているわけではないものの、働きたいという人もたくさんいる。一般的には地域活動支援センターというと、「居場所を提供する」というイメージもあるが、ここではそれだけではなく、働くためにはどういうアプローチをするのか、また、どのような条件を整えなければいけないかなど、作業以外にも講座を開催するなどして、職業準備性を高めていくという。例えば金銭管理、時間管理、職場における挨拶の重要性などが扱われる。特に挨拶については講座だけでなく通常の作業場面でも徹底して支援するとのことであった。  そして、職業準備性の整った人については職員がハローワークに同行し、また、地域障害者職業センターなどとも連携しながらジョブコーチをつけて支援をするなど、個別の支援を重視しているそうである。森下さんによれば、高次脳機能障害のある人の就労支援にはジョブコーチは必須と考えているそうである。つまり外見的にはわかりにくい高次脳機能障害という障害を、企業の方に伝え、理解していただくための「通訳」としてのジョブコーチは重要とのことであった。  また、ハローワークの窓口へ利用者と一緒に相談に行き、窓口の方が就職希望の会社に電話をしたところ、その会社から、事前にその方の障害の状況を教えてほしい、その状況によっては受け入れを考えられるといわれた。それをきっかけに、「自己紹介シート」作成支援に取り組むようになったそうである。  「自己紹介シート」は自分の障害特性などを知ってもらうためのものであり、発達障害のある人の「ナビゲーションブック」(※2)と同様の機能を持つが、笑い太鼓オリジナルで作成したものとのことである。現在では就職を目ざす人には必ずつくってもらっているとのことであった。また、このシートで、例えば記憶障害を補完するために、メモを取ることの必要性を書いておくことで、本人たちも徹底するようにもなるし、採用する企業側にも配慮事項として理解してもらうことにつながると森下さんはおっしゃっていた。  自己紹介シートは、笑い太鼓の取材の後に訪問した西濃運輸株式会社のほか、さまざまな就職先でも活用しているそうである。 施設内の見学  その後、地域活動支援センター内を見学させていただいた。  まずコーヒースタンドおよび焙煎したコーヒー豆の販売を行う店舗部分を見学させていただいた。ここで作業を行う方たちも高次脳機能障害のある利用者さんたちとのことであったが、手順通りていねいに作業をされていた。なお、地域のコーヒー豆卸店店主からドリップの方法などご指導いただいたとのことであった。  続いて2階の作業所部分をみせていただいた。この日は箸を袋に詰める作業に取り組まれていた。時期によってはパソコンで同法人の季刊誌の編集作業などに取り組むこともあるとのことであった。現在は、これからすぐに一般企業への就職を考えている方はいらっしゃらないとのことであったが、それでも、利用者さんの様子やお話から、仲間と会う楽しみ、協働作業など、利用者さんがそれぞれ意義を感じながら通所をされている様子をうかがうことができた。 西濃運輸大曽根支店にて  笑い太鼓に続き、西濃運輸(せいのううんゆ)株式会社(以下、「西濃運輸」)大曽根(おおぞね)支店を訪問した。対応してくださったのは支店長の藤田(ふじた)勝美(かつみ)さん、労務・総務係長の土井口(どいぐち)孝二(こうじ)さんである。またこちらの取材に、笑い太鼓の森下さんも同行してくださった。  西濃運輸は全国規模の運輸会社であり、拠点が全国に188カ所、従業員数は1万5687名となっている(2025〈令和7〉年3月現在)。取材時点では、法定雇用率を満たしているものの、今後の法定雇用率改正も考慮し、さらに障害のある人の採用を計画しているとのことであった。エリアによって障害のある人の数に多寡はあるものの、名古屋地域については十分な人数の障害のある人を採用しているそうである。ただし、今後も継続して採用していきたいとのことであった。  なお、西濃運輸の基本理念として、「労使協調体制」、「礼節中心主義」、「福寿草精神」(※3)の三つを「三つの宝」として掲げられている。  大曽根支店は、笑い太鼓サポートセンターから2qほどの場所に位置する。大曽根支店が現在の形に竣工されたのは1967(昭和42)年とのこと。  大曽根支店では現在、障害のある人を3人雇用しているが、いずれも高次脳機能障害のある人とのことであった。ただ、同じ高次脳機能障害という障害でも、個人による違いがあり、それぞれの特徴について、それぞれの支援者やジョブコーチにも助言を得るようにしているそうである。 雇用のきっかけ  大曽根支店では3年前から高次脳機能障害のある人の採用を開始したとのこと。ほかの支店での、高次脳機能障害のある人の採用がきっかけとなっている面もあるようである。そして、社会福祉法人名古屋市総合リハビリテーション事業団名古屋市総合リハビリテーションセンターや笑い太鼓といった支援機関からの説明を土井口さんは聞き、記憶などの障害を補うためにその都度ノートに書き、それを利用して思い出すということが必要であることを理解し、たいへんな障害ではあるが、一方でだれにでも起こりうる病気だとも感じたそうである。  そして、ジョブコーチなど支援機関、専門家の力を借りつつも、会社として高次脳機能障害のある従業員に向かい合っている。現在は、支店長の藤田さんをはじめとする職員の方たちがポジティブにかかわっていることがお話からうかがえた。 高次脳機能障害のある人の仕事ぶり  笑い太鼓の森下さんは、大曽根支店でジョブコーチとして、後述する長谷川(はせがわ)優(ゆう)さんを支援したそうである。当初はタイムカードを打刻してから仕事に入るという手順や、トラックへの荷物の積み込みにも支援が必要であったが、現在は完全にできるようになっているという。  先述した通り、大曽根支店では高次脳機能障害のある人を3人採用しているが、いずれの方も、会社からの評価は高いようである。トラックドライバーなど職場の同僚にもお客さまにも大きな声で挨拶をすることができ、作業をまじめに取り組むと評価されており、土井口さんによれば「どの人も明るくて元気で、素直で、礼節がしっかりされており、非常になくてはならない存在」であり、「今後も続けてここで働いていただきたいという思いが強い」とのことであった。先述した西濃運輸の理念として掲げられているうちの一つである「礼節中心主義」に沿っているということでも評価しているそうである。 障害のある従業員の方からのお話  働いている長谷川さんにお話を聞くことができた。長谷川さんは、大曽根支店に採用される前は、笑い太鼓に2年間弱通い、そして森下さんによるジョブコーチ支援を受けて、大曽根支店での採用・定着につながっている。現在は午後2時から午後8時までの勤務であり、特に夕方5時からのシューターという、商品を行き先ごとに自動で仕分けてくれる機械から流れてきた荷物を積み込むなどの作業で活躍しているそうである。  ご本人は「届いた荷物の仕分け作業や出荷作業をやっています。この会社で働いて2年ぐらいになります。仕事のほうはだいぶ慣れてきました。周りのみなさんに教えてもらいながら。まだわからないところがあったら、なんでも聞いてねと、いってもらってます」とのこと。  また現在も、月に1回程度、出勤前などに笑い太鼓に顔を出すこともあるとのこと。やはりこういった支援機関の就職後のかかわりはありがたいとのことであった。今後について、「今年40歳になります。親に迷惑をかけないよう、なるべく早く一人暮らしをしたいです」と今後の目標を語ってくれた。  もう一方の高次脳機能障害のある従業員である本田(ほんだ)俊治(しゅんじ)さんからもお話を聞くことができた。  本田さんは、名古屋市総合リハビリテーションセンターの支援を受けて就職をした。本田さんは、以前は建築関係の営業職をされていたが、くも膜下出血で倒れた。その会社は退職し、名古屋市総合リハビリテーションセンターの支援により、3年ほど前に大曽根支店に就職したとのこと。現在、朝8時から夕方5時まで場内整理の仕事をしている。  メモを取るようにうながされることもあるが、西濃運輸のスタッフの人たちが気をつかってくれるのを感じており、たいへんありがたいと思っているとのことである。現在は58歳で定年は65歳ではあるが、土井口さんによれば西濃運輸では70歳までアルバイトで働くことも可能とのことであり、それを聞いた本田さんは、「体が続くかぎりやりたいと思います」とおっしゃっていた。  事務室でお話を聞かせていただいたあと、長谷川さんの積み込み場での作業の様子を見学させていただいた。周囲の方とも大きな声やジェスチャーなどを用いてコミュニケーションを取りつつ、荷物を置くなどきびきびと動いていた。また出荷のための台車に荷物を積む様子も、無駄なスペースなくきちんと積むことができており、熟達した技に感銘を受けた。 まとめ  高次脳機能障害という障害の種類は、障害者就労支援のなかで多数派というわけではないものの、統合失調症や双極性障害などの精神障害、発達障害、知的障害とも異なる配慮が必要である。  そのため、就労支援を行うすべての障害福祉サービス事業所が高次脳機能障害のある人の支援について高い専門性を持つというのはむずかしいかもしれないが、笑い太鼓のような高次脳機能障害に高い専門性を持つ支援機関が、その地域に存在することは、当事者はもちろんのこと、企業やさらにはほかの支援機関にとっても非常に頼りになっていると思われる。  また、支援方法として、ジョブコーチによる個別的支援により障害のある人の職場適応支援や企業への障害特性などの説明をしていること、就職したあとも地域活動支援センターとして寄り添い続けていることも、効果を上げている要因であると考えられる。  受け入れ側である西濃運輸株式会社大曽根支店という、高次脳機能障害に理解を示していただいている企業・職場の存在も非常に大きい。このような理解には、森下さんなど支援機関の力に加え、西濃運輸にもともとあった理念やカラーと、障害のある人のスキル(今回の場合は挨拶が良好ということ)のマッチングという面も貢献しているように思われる。  本事例ではさまざまな効果的な歯車が組み合わさって現在の状況に至っていると思われる。ただし、それぞれの要素一つひとつも、企業や支援機関にとって大いに参考になるものであり、本稿の情報が他地域での、高次脳機能障害のある人の就労支援の進展に少しでも寄与することを期待したい。 ※1 ここでいう「ジョブコーチ」とは、国の職場適応援助者制度に基づくもののほか、ジョブコーチ的に就労支援担当職員が活動する場合も含めている ※2 障害者職業総合センター職業センター 支援マニュアルNo.13 「発達障害者のワークシステム・サポートプログラム ナビゲーションブックの作成と活用」 ※3 福寿草精神:西濃運輸株式会社の創業者・故田口(たぐち)利八(りはち)名誉会長の座右の銘は「踏まれても 踏まれても 強く野に咲く福寿草」であり、どんな試練にも耐えうる精神と同時に将来に向かって力強く進む不撓不屈の魂を表している(セイノーホールディングス・ホームページより) 写真のキャプション 高次脳機能障害者サポートセンター笑い太鼓 高次脳機能障害者サポートセンター笑い太鼓職員の森下園子さん 地域活動支援センター内のコーヒースタンド。利用者が店頭に立ち、作業にあたる 地域活動支援センター2階の作業所。利用者がそれぞれのペースで作業に取り組んでいる こだわりの抽出方法でコーヒーをドリップする 割り箸を箸袋に詰める作業。さらに100膳ごとにまとめ、ビニール袋に詰める 企画から取材、原稿依頼まで利用者が制作する「季刊誌 笑い太鼓」 西濃運輸株式会社大曽根支店(写真提供:西濃運輸株式会社) 西濃運輸株式会社大曽根支店支店長の藤田勝美さん 労務・総務係長の土井口孝二さん 大曽根支店で働く長谷川優さん シューターから流れてきた荷物を仕分ける長谷川さん 大曽根支店で働く本田俊治さん。荷物を作業用の台車に積み込む 【P26-27】 省庁だより 令和7年度 障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 1 障害福祉サービスの確保、地域生活支援などの推進 1 良質な障害福祉サービスの確保 1兆6531億円(1兆5651億円)  障害者が身近な地域等で暮らすために必要な障害福祉サービスに必要な経費を確保する(※障害児支援に必要な経費として、4871億円をこども家庭庁で計上)。 【令和6年度補正予算】 ・障害福祉分野における食材料費・光熱水費高騰への支援 重点支援地方交付金の内数  物価高騰により苦しむ障害福祉サービス事業所・施設等(補装具事業者を含む。)への、重点支援地方交付金の活用を促進する。  障害者就労施設については、障害福祉サービス施設等に対する物価高騰対策支援の活用と併せて、利用者が行う生産活動に係る光熱水費や原材料等の価格の高騰に対する支援として、中小企業等に対するエネルギー価格高騰対策支援についても、活用を促進する。 2 障害福祉人材確保・職場環境改善等に向けた総合対策 【令和6年度補正予算】 ・障害福祉人材確保・職場環境改善等事業 258億円  処遇改善加算を取得している事業所のうち、生産性を向上し、更なる業務効率化や職場環境の改善を図り、障害福祉人材確保・定着の基盤を構築する事業所に対する支援を実施する。 ・介護テクノロジー導入・協働化等支援事業 16億円  生産性向上・職場環境改善等に係る具体的なテクノロジーの導入への支援、経営等の協働化への支援、処遇改善加算の取得促進や人材確保対策等の事務体制のサポート支援を実施する。 ・障害者就労施設の生産活動の経営改善等の支援 9億円  就労系サービス(就労継続支援A型等)の経営改善に向けたノウハウの習得や、ICT機器等の導入による作業の効率化、専門家による助言等の支援を実施する。 3 意思疎通支援事業等による地域生活支援の推進 502億円(501億円)  意思疎通支援事業をはじめとする障害者等の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じ、事業の推進を図る。 注)地域共生社会の実現に向けた重層的支援体制整備事業の対応分を含む。  また、令和6年度予算額は、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定により障害福祉サービス報酬へ移行した分等を除く。 4 障害福祉サービス事業所等の整備等の推進 50億円(45億円)  障害者の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、地域移行の受け皿としてグループホーム等の整備を促進する。 【令和6年度補正予算】 ・社会福祉施設等の耐災害性強化等への支援 108億円(102億円)  「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づく障害者支援施設等に対する耐震化整備、非常用自家発電設備の設置、浸水対策等に要する費用の補助を行うとともに、自治体の整備計画に基づく整備を推進する。 ・障害者支援施設等の災害復旧への支援 6・4億円  災害により被害を受けた障害者支援施設等の速やかな復旧を図るため、障害者支援施設等における災害復旧事業に要する費用を補助する。 5 障害者の地域における相談支援体制等の充実 43百万円(43百万円)  基幹相談支援センターや地域生活支援拠点等の整備の推進や(自立支援)協議会の効果的な運営のため、国と自治体の間で意見交換等を実施するための会議の開催を行うとともに、都道府県による市町村に対する基幹相談支援センターや地域生活支援拠点等の設置・整備や運営に関する助言等の取組を促進する。 【令和6年度補正予算】 ・障害福祉分野における相談支援体制等強化事業 5・9億円  都道府県が実施主体である相談支援従事者養成研修及びサービス管理責任者養成研修等について、緊急に研修体制を強化するための費用を補助するとともに、国が実施する指導者養成研修(都道府県における研修の企画立案・運営の中心的な役割を担う指導者を対象)の拡充を図る。 6 障害者等への良質かつ適切な医療の提供 2666億円(2591億円)  心身の障害の状態を軽減し、自立した日常生活等を営むために必要な自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)等を提供する。また、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討する。 7 特別児童扶養手当、特別障害者手当等 2093億円(1977億円)  特別児童扶養手当及び特別障害者手当等の支給を行う。 8 障害福祉分野における介護テクノロジーの導入支援や経営の協働化等を通じた職場環境の改善 【令和6年度補正予算】 ・障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業 9.4億円  「障害福祉分野のロボット等導入支援事業」、「障害福祉分野のICT導入モデル事業」の統合・支援メニューの再構築を行い、利用者の安心安全な生活の確保を図りつつ、職員の業務負担軽減や職場環境の改善に取り組む障害福祉事業者が介護ロボット・ICTを複数組み合わせて導入する際の経費等を補助する。 ・障害福祉分野における小規模事業所の協働化モデル事業 2.0億円  障害福祉分野の小規模事業所の人材の確保・経営の安定化、さらには地域の活性化に向け、障害福祉サービス間の協働だけでなく、同じ福祉分野である介護分野等との協働化(共生型)の取組や、さらには民間の他産業と協働化の取組について、モデル事業を実施することにより、取組の効果を把握するとともに、実施上の課題の把握や解消に向けた取組などを整理し、その内容を普及啓発することにより、障害福祉分野における協働化の取組を推進する。 9 障害者虐待防止、権利擁護などに関する総合的な施策の推進 @障害者虐待防止の推進 6.2億円(6.2億円)  都道府県や市町村で障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、専門性の高い職員の確保や地域の関係機関の協力体制の整備、関係機関職員への研修、障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制の強化を図る。 A障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 12百万円(12百万円)  国において、障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者の養成研修を実施するとともに、虐待事案の未然防止のための調査研究を行う。 B成年後見制度の利用促進のための体制整備 地域生活支援事業等の内数  「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(令和4年3月25日閣議決定)を踏まえ、成年後見制度の利用に要する費用の補助や制度の普及啓発等の取組を推進する。 10 重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 12億円(12億円)  重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行う。 11 重度訪問介護利用者の大学等の修学支援 89百万円(89百万円)  重度障害者が修学するために必要な支援体制を大学等が構築できるまでの間において、重度障害者に対する大学等の敷地内における身体介助等の提供を支援する。 12 障害者施策に関する調査・研究の推進 3.6億円(2.4億円)  障害者施策全般にわたり解決すべき課題について、現状と課題を科学的に検証・分析し、その結果を政策に反映させていくため、調査・研究等への補助を行う。 13 障害者等の自立・社会参加支援の推進 @障害者の情報アクセシビリティ・コミュニケーション支援 14億円(13億円)及び地域生活支援事業等の内数  手話通訳者をはじめとする意思疎通支援従事者の養成・派遣などの支援体制の構築を推進するとともに、ICT機器の利用支援の取組、読書環境の整備の促進等を行う。 A芸術文化活動の支援の推進 3.7億円(3.7億円)  第2期障害者文化芸術活動推進基本計画の策定を踏まえ、地域における障害者の芸術文化活動を支援する都道府県センターの設置や、障害者芸術・文化祭の開催による芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)を通した障害者の社会参加をより一層推進する。  特に芸術文化活動の普及が見込めるイベントと連携し、障害者による文化芸術作品等を創造・発表・鑑賞する機会を創出するとともに、国内外に向け広く発信する。 B特別支援学校卒業後における生活介護利用モデルの作成 【令和6年度補正予算】 ・特別支援学校卒業後における生活介護利用モデルの作成事業の実施 1.0億円  生活介護において、特別支援学校教員のOB等の雇用やICT機器の導入等により、生涯学習に取り組むモデル事業を実施する。 14 事業者・自治体間の障害福祉関係手続に関する共通システムの整備 【令和6年度補正予算】 ・事業者・自治体間の障害福祉関係手続の共通化に向けた要件定義等委託事業 88百万円  各自治体において整備されている障害福祉サービス等の事業所台帳管理システムと、その他の自治体・事業者間の手続に関するシステムの共通化に向け、実態調査や要件定義等を行う。 15 障害福祉関係データベースの構築 【令和6年度補正予算】 ・障害福祉関係データベース構築に関する事業 5.2億円  第三者提供に向けたデータ項目の加工処理の追加、受給者台帳等の受領データの退避処理等の機能改修等を行う。 16 障害者自立支援給付審査支払等システムの改修(自治体向け) 【令和6年度補正予算】 ・障害者自立支援給付審査支払等システム事業(自治体分) 40億円  就労選択支援の創設や報酬請求システムのサービスコード修正に伴う所要の改修及び精神障害者に対する旅客鉄道株式会社等の旅客運賃の割引に係るマイナンバー情報連携に伴うシステム改修に必要な経費に対して補助を行う。 2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策等の推進 1 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築 8.4億円(8.4億円)  精神障害者等が地域の一員として安心して自分らしく暮らせるよう、住まいの確保支援を含めた精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。  さらに、市町村等が実施する精神保健に関する相談支援について、精神障害者のほか精神保健に課題を抱える者も対象とされたことから、構築に資する取組について更なる推進を図る。  また、市町村長同意による医療保護入院者等を対象とした実効的な支援のため、都道府県等において、訪問支援員が精神科病院へ訪問し、患者の話を丁寧に聴きつつ必要な情報提供を行う事業を行うことができる旨が規定され令和6年4月より開始されたため、体制の更なる構築を図る。 〈2の後半と、3、4、5は次号で掲載します〉 ★本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています ※( )内は令和6年度予算額 【P28-29】 研究開発レポート 「ワークサンプル幕張版(MWS)」新規3課題による効果的なアセスメント及び補完方法の獲得に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門 1 本調査研究の背景と目的 (1)ワークサンプル幕張版(MWS)とは  「ワークサンプル幕張版(MWS)」とは、おもに精神障害や高次脳機能障害等のある人を対象とし、実際の職場で行われる作業に近い作業(ワークサンプル)を実施することで、その人の作業遂行力や作業を行ううえで必要となるスキルおよび環境条件を明らかにすることなどを目的として開発された職業リハビリテーションの支援ツールです(障害者職業総合センター、2004)。2007(平成19)年度より、物品請求書作成、数値入力、ピッキングなど13種類の課題が市販されてきました。  その後、2019(令和元)年度に、知的障害をともなわない発達障害や復職を目ざすうつ病等精神疾患のある人など、多様なニーズのある人への支援に資するため、より難易度を上げた「新規課題」として、給与計算、文書校正、社内郵便物仕分の三つの課題(以下、「MWS新規課題」)を開発しました。これは、2020年度末から市販されています。 (2)本調査研究の目的  MWS新規課題は、既存の課題に比べ、作業が複雑になっており、作業遂行力の高い対象者のアセスメントや就職・復職に向けた訓練における活用を想定しています。その一方で、作業が複雑になったことにともない、「MWS新規課題の実施手続きの理解」、「結果の処理に関する時間的コスト」など、支援者の負担が懸念されていました。  そこで、本調査研究(障害者職業総合センター,2024a)では、支援者がMWS新規課題を活用する際の負担軽減を目的として、MWS新規課題活用のイメージを提供する「ワークサンプル幕張版(MWS)新規課題活用ハンドブック〜MWS新規課題の効果的な活用に向けて〜」(障害者職業総合センター,2024b)を作成しました。 2 調査研究の方法  本調査研究は、@MWS新規課題が就労支援機関においてどのように活用されているのかを知るための活用状況質問紙調査、A@において協力いただいた機関のうち一部を対象とした活用事例を収集するためのヒアリング調査、Bハンドブック(素案)(以下、「ハンドブック(案)」)の試作、Cハンドブック(案)をMWSに関する知識を有する専門家に提示し意見をいただく専門家ヒアリング、D改良を加えたハンドブック(案)の有効性を就労支援機関で評価していただくための試用評価、の手順で進めました。 3 調査研究の内容 (1)地域障害者職業センターに対する調査  @地域障害者職業センターに対する活用状況質問紙調査では、最も活用されているのは社内郵便物仕分(75.3%が活用)、次いで給与計算(52.9%が活用)、最も活用が少ないのは文書校正(30.6%が活用)でした。A活用事例に関するヒアリング調査では、給与計算と文書校正は課題の理解力等について一定レベル以上の能力を有している人が対象とされていました。 (2)ハンドブック(案)の試作・改良・試用評価  以上の調査結果をふまえ、B使用する場面や目的、効果などを整理した活用モデルのほか、活用事例、MWS新規課題の概要や実施方法等に関する知識情報を掲載したハンドブック(案)を試作しました。試作したハンドブック(案)について、C専門家へのヒアリングを行った結果をもとに改良を行い、Dそれを3カ所の民間の就労支援機関の4人の支援者に使っていただきました。協力いただいた支援者には、改良したハンドブック(案)を読んだうえで、利用者に対してMWS新規課題を用いた支援を行っていただきました。その後、協力いただいた支援者に対する面接調査において、ハンドブック(案)が自分たちの行う支援にどのような影響を与えるかについて聞き取りを行いました。その結果を表1に示します。  支援者からは、「利用者の様々な側面を見ることができるということがわかった。今後も利用者にMWS新規課題を行う」、「MWS新規課題を使う職員が増える」といった意見がありました。 4 まとめ  これらの研究活動の結果、「ワークサンプル幕張版(MWS)新規課題活用ハンドブック〜MWS新規課題の効果的な活用に向けて〜」(以下、「ハンドブック」)を作成しました。表2にハンドブックの構成を示します。  表2上段の「新規課題について知りたい」では、MWS新規課題の特徴、実施方法等を知るための参考資料、MWS新規課題を使用する際の留意事項等を記載しました。表2中段の「活用方法について知りたい」では、MWS新規課題の対象者、使用する過程・場面、使用する目的や効果等を記載した活用モデルと、MWS新規課題を用いた支援の流れを把握するための資料として活用事例集を掲載しました。表2下段の「対象者への対応に迷った時は」では、MWS新規課題を実施するなかで発生する過集中などのさまざまな事例への対応方法をまとめました。  本調査研究の目的は、MWS新規課題を実施する際の支援者の負担を軽減することにあります。試用評価の結果からは、ハンドブックはMWS新規課題活用のイメージを提供するという点で、おおむね有効であったと考えられます。ハンドブックの活用を通して、これまでMWS新規課題を使った経験がある支援者はより有効に活用できるようになり、使ったことがない支援者も支援に活用する方法がわかるようになるなどの効果が期待されます。 引用文献 障害者職業総合センター(2004)「精神障害者等を中心とする職業リハビリテーション技法に関する総合的研究(最終報告書)」.調査研究報告書,No.57 障害者職業総合センター(2019)「障害の多様化に対応した職業リハビリテーション支援ツールの開発(その2)―ワークサンプル幕張版(MWS)新規課題の開発―」.調査研究報告書,No.145 障害者職業総合センター(2024a)「『ワークサンプル幕張版(MWS)』新規3課題による効果的なアセスメント及び補完方法の獲得に関する調査研究」.調査研究報告書,No.175 障害者職業総合センター(2024b)「ワークサンプル幕張版(MWS)新規課題活用ハンドブック〜MWS新規課題の効果的な活用に向けて〜」 ※引用文献は、障害者職業総合センターホームページでご覧になれます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/index.html ◇お問合せ先 研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 表1 協力いただいた就労支援機関の職員がハンドブック(案)を読むことによる支援への影響等 番号 意見 @ ●今後のMWS新規課題の活用について、こういうハンドブックが作られたことで、利用者の様々な側面を見ることができるということが分かった。今後も利用者には行ってもらおうと考えている。 A ●今後、MWS新規課題の活用の幅が広がると思う。社内郵便物仕分以外の課題についても活用してみようと思う。活用方法としては、対象者の職種や可能性などについて、アセスメントというよりも、イメージを持ってもらったり作業体験として使うという方法もあるかもしれないと思った。 B ●法人の中で、MWS既存課題は以前から使っており、MWS新規課題を2年間くらい使っている。しかし、職員全員がMWS新規課題を使えるかというとそうではない。慣れていない職員がどうやって使ったらいいかという場合に、ハンドブックがあると使いやすくなるのではないか。 C ●こういったハンドブックがあることで他の職員にも説明ができると思う。また、MWS新規課題を使う職員が増えるということも考えられる。自分にとってもMWS既存課題よりも難しいので、こういったエラーをどうとらえたらいいか、こういう相談の対象者に使えるかという場合も、ハンドブックの事例を見ることで考えやすくなったかと思う。 ●MWS新規課題を行う際には、サブブックを見てくださいという指示、言い方になり、質問があっても同じ返し方になる。しかし、ハンドブックがあることで何のためにMWS新規課題を行うのかを説明しやすくなるのは良いと思う。 表2 ハンドブックの構成 「新規課題について知りたい」 ●新規課題とは ●新規課題の特徴 強化された機能/課題の発見と対策/既存課題よりも高い難易度の設定 ●実施方法を知るための参考資料 新規課題の概要を動画により確認したい/新規課題の実施手続きについて知りたい/新規課題の概要を対象者に簡潔に説明したい/対象者への簡易版の教示や対応等を支援現場で確認したい/エラーの内容や補完方法を確認したい/ワークサンプル幕張版で採用されているABA法について知りたい/ワークサンプル幕張版の背景理論が知りたい ●新規課題を使用する際の留意事項 課題の難しさとストレス/新規課題を複数組み合わせて使用する/作業の概要を十分に説明する/既存課題を活用する/新規課題を活用する目的を対象者と共有する/簡易版を活用する際の留意点/簡易版と訓練版の使い分け方 ●対象者の理解力に応じた作業指示 「活用方法について知りたい」 ●活用モデル 簡易版活用モデルと訓練版活用モデルの共通事項/@簡易版活用モデル/A訓練版活用モデル ●活用事例集 補完方法の必要性を認識した事例/自身の特性理解と就職への希望を整理した事例/補完方法への自信を深め就職につながった事例/復職に向けて疲労・ストレスへの自覚を持った事例/効果的な支援方法を確認した事例/作業遂行力の向上と補完方法の習得により自信の獲得につながった事例 「対象者への対応に迷った時は」 ●支援の開始時 @過集中傾向が見られる/A課題への違和感を訴える/B課題への理解が進まず時間が経過する ●訓練時 Cエラーのフィードバックにより不安感を強くした/D訓練版への移行の判断に迷う/E補完方法の提案を受け入れてもらえない ●結果のフィードバック時 Fネガティブな感想が聞かれる/G振り返りが深まらない/H結果の受け入れで不安定になる 【P30】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 視覚障害者の同行援護サービス 提供責任者の要件緩和  厚生労働省は、視覚障害児者の移動を支援する「同行援護」の質の向上とサービス提供責任者の人材確保を図るため、2025(令和7)年4月から、同行援護従業者養成研修の一般課程を修了した者についても、視覚障害者等の介護の実務経験を積んでいることを条件に、サービス提供責任者に従事できるよう要件を改正した。  現行のサービス提供責任者の要件は、介護福祉士や実務者研修修了者などで応用課程を修了した者となっているが、改正後の要件に@同行援護従業者養成研修(一般課程)を修了し、3年以上視覚障害者の介護等の業務に従事した者、A同行援護従業者養成研修(応用課程)を修了した者(相当する研修課程修了者を含む)を追加した。 地方の動き 東京 「バーチャルスポーツ」促進動画を公開  東京都は、障害のある人が自宅や施設などで気軽に運動を楽しめるよう、家庭用ゲーム機器等で体を動かして行う「バーチャルスポーツ」を活用した取組みの一環として、障害特性に合わせたバーチャルスポーツの楽しみ方の解説動画と、パンフレット「Smileパラスポ〜見つけよう、私らしいスポーツStyle〜」を作成した。  障害種別ごとに、おすすめの種目(ソフト)やプレイする際の工夫、得られる効用・効果等を体験者の声を交えて紹介。福祉施設や特例子会社などでの導入についても実事例をふまえて解説している。「肢体不自由編」は、座ったままでできる種目や腕にコントローラを固定してプレイする工夫など、「知的障害編」は自分のペースでできる種目や一人ひとりの状態に合わせてルールや遊び方を変える工夫など、「視覚障害/聴覚障害編」は、音声や字幕での情報保障が充実した種目や、コントローラの振動により操作のタイミングを把握できる種目などを紹介している。動画とパンフレットは東京都のスポーツ情報サイト「スポーツTOKYOインフォメーション」に掲載されている。 https://www.sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/suru/smile_paraspo.html 京都 求職者の適性と企業のマッチング支援ツール  京都府は、企業が障害のある求職者を募集する際に、自社の職場環境や募集する業務に必要となる適性を可視化できる「障害者雇用環境アセスメントツール」を、京都大学村田(むらた)淳(じゅん)准教授の監修のもと開発した。障害のある人の雇用や実習を検討している企業が対象で、利用は無料。  ツールは事務、作業、販売・サービスの3職種に分かれ、エクセルシートにチェックを記入する形式。企業担当者が職場環境や業務に必要となる適性に関する設問に回答し、その回答結果を求人票や職場実習の募集と一緒に公開することで、適性に合う障害者やその支援者とのマッチングをサポートする。質問や当事者への配慮例は、精神障害・発達障害・知的障害の特性に基づき設定し、障害特性や配慮方法を理解し、雇用環境の改善に役立つ働きやすい職場づくりのロードマップにもなるとしている。ツールは京都府の運営サイト「京都ジョブパーク」で公開されている。 https://www.pref.kyoto.jp/jobpark/sksc/kasika.html 働く 全国 発注・雇用の協力企業を表彰  全国社会就労センター協議会(セルプ協)は、令和6年度の「協力企業・団体・官公庁等感謝」企業等を発表した。長年にわたり障害者雇用や社会就労センターの仕事の確保に協力してきた功績の顕著な企業等に感謝の意を表する目的で実施しているもので、今年度は7件。  特別感謝(発注)表彰は「デンソー太陽株式会社(愛知県蒲郡(がまごおり)市)」で、1984(昭和59)年から40年にわたり自動車用小物部品の加工・梱包作業を発注しているという。このほか感謝(発注)表彰は「南な ん富ぷ フーズ株式会社(北海道空知郡(そらちぐん)南富良野町(みなみふらのちょう))」、「株式会社小山商会 宇都宮配送センター(栃木県鹿沼市)」、「介護老人保健施設あじさい(福井県福井市)」、「株式会社アビヅ(愛知県名古屋市)」、「有限会社三和コミュニティー(大分県大分市)」の5件、感謝(雇用)表彰が「株式会社ギケン(福井県坂井市)」だった。詳しくは左記ホームページで。 https://www.selp.or.jp/thanks_page/2024/index.html 全国 職場に配慮要請「経験ある」23%  デロイトトーマツグループは、デロイトが日本を含む世界20カ国のさまざまな組織に所属する1万人の障害・慢性疾患・神経多様性のある人を対象に実施した世界調査レポートの日本版を発表した。  日本版レポートは、調査対象のうち日本で働く500人から回答を得た。それによると、企業による措置が義務化されている合理的配慮について、職場で配慮を要請したことがあると答えた人は23%。配慮を要請しない理由について「配慮不要と思うため」(40%)という回答に続き、「扱いにくい従業員だと思われることを心配したため」、「必要な配慮をしてくれると思えないため」(22%)という回答が同率で多かった。  要請した配慮としてもっとも多いのは「必要時の在宅勤務」(68%)で、常時または部分的に在宅勤務の実施を認められていると回答した人は69%だった。詳しい調査結果は左記ホームページで。 https://www2.deloitte.com/jp/ja.html 本紹介 『詳説 障害者雇用促進法・障害者総合支援法 ―多様性社会の就労ルールをひもとく』  上智大学法学部教授の永野(ながの)仁美(ひとみ)さんらが、「詳説 障害者雇用促進法・障害者総合支援法―多様性社会の就労ルールをひもとく」(弘文堂刊)を出版した。  障害者雇用促進法は、「障害者差別禁止」と「合理的配慮提供義務」を軸に事業者に対し実効的な対応を義務づけ、障害者雇用の前進を図り、障害者総合支援法は、障害のある人が基本的人権のある個人としての尊厳にふさわしい社会生活を営むことができるよう、必要な福祉サービスにかかわる支援を定めている。  本書では、多様性社会の基本法をなすといっても過言ではない2法の条文に沿った解説を両輪としつつ、障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法といった関連諸法をも含めて体系的に整理・解説している。A5判、342ページ、3520円(税込)。 締切迫る! あなたの力作がポスターになる! 令和7年度 「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 応募締切 令和7年6月16 日(月) 【当日消印有効】 児童・生徒をはじめ社会人・一般の方もご応募いただけます。 絵画コンテストの応募は障害のある方が対象です。 写真コンテストの応募は障害の有無を問いません。 多くのみなさまからのご応募をお待ちしています。 令和7年度 シンボルキャラクター “ピクチャノサウルス” 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 JEED 絵画写真 検索 <過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます> 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 【P31】 ミニコラム 第46回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は若林委員が執筆しています。ご一読ください。 職業リハビリテーションの専門性の「見える化」と検定の創設 国際医療福祉大学 准教授 若林功  今回「編集委員が行く」で訪問した高次脳機能障害者サポートセンター「笑い太鼓」は、高次脳機能障害のある人の支援にかなり高い専門性を有している。単に作業を集団形式でするというだけでなく、講座を開催し職業準備性を高めることや、ジョブコーチという個別での就労支援にも注力をしていた。さらには企業へのアプローチ、ほかの専門機関との連携など非常によい実践をされているようにうかがえた。  現在のところ、このような障害者就労支援に関するその支援機関の専門性を具体的に把握するのは、簡単ではない。同業者であれば気づく面もあるかもしれないが、就労支援サービスのユーザーである、障害のある人や企業にとっては簡単なことではないことが多いだろう。結果としてクチコミや実際にそうした支援を受けてみて実感してみるということになる。  このような状況を改善するためには職業リハビリテーションの専門性の「見える化」が必要なのではないだろうか。いまのところ、職業リハビリテーション、就労支援の実際やそれを支える哲学・理念・技術というものは、なかなか初めてこの分野にかかわる人にとってはわかりにくい面もあるかもしれない。  ところで、厚生労働省では、この障害者就労支援分野に関して、「障害者就労支援士検定(仮称)」を検討しているようである※。これまで、障害者就労支援に関し研修はあるものの、検定や資格制度等はなかったので、もし実現すれば一つの変化となる可能性がある。これがきっかけとなり、障害者就労支援の専門性のさらなる「見える化」につながり、本分野がより活性化し、結果として専門性の高い支援が障害のある人や企業に対し提供されることにつながるのを期待したい。 ※厚生労働省「『職場適応援助者の育成・確保に関する作業部会』取りまとめ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_53314.html 【P32】 掲示板 JEEDメールマガジン 登録受付中!  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、JEEDが全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当者のみなさま、必読! 高齢 定年の延長や廃止・再雇用 障害 障害のある従業員の新規・継続雇用 求職 ものづくり技能開発・向上の手段 みなさまの「どうする?」に応えるヒントが見つかります! JEED メルマガ で 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 読者アンケートにご協力をお願いします! ※カメラで読み取ったリンク先が「https://krs.bz/jeed/m/hiroba_enquete」であることをご確認ください。 回答はこちらから→ 次号予告 ●この人を訪ねて  東京福祉大学教授で、社会福祉法人わかぎり理事長の柳本雄次さんに、障害者の自立支援の歩みと、今後の支援のあり方についてお話をうかがいます。 ●職場ルポ  建設機械向け高圧配管用継手の製造会社の株式会社日本エー・エム・シー(福井県)を訪問。障害のある人への理解が深い社風のなか、のびのびと職場で活躍している障害のある従業員の様子を取材しました。 ●グラビア  練り物、すり身の製造販売を手がける株式会社しまおう(長崎県)を取材。郷土の味を守るため、製造・配送・販売にたずさわっている障害のある従業員の様子を紹介します。 ●編集委員が行く  三鴨岐子編集委員が、医療法人社団心緑会小石川メンタルクリニック(東京都)のリワークデイケアとNPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワークJSN東京(東京都)を訪問。休職からの職場復帰を支援するリワークプログラムについてお伝えします。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 電話 043-213-6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●編集委託−株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 電話 03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 6月号 令和7年5月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 取締役 大野聡士 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 武庫川女子大学 准教授 増田和高 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 国際医療福祉大学 准教授 若林功 【P33】 障害者雇用の総合誌「働く広場」がいつでも無料でお読みいただけます! 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、障害者に対する雇用支援などを実施しており、その一環として障害者雇用の月刊誌「働く広場」を発行しています。 本誌はデジタルブックでも公開しており、スマートフォンやパソコンでいつでも無料でお読みいただけます。ぜひ、ご利用ください!(毎月5日に最新号がアップされます) 掲載をお知らせするメール配信サービスもございますのであわせてご利用ください。 自由に拡大できて便利! 読みたいページにすぐ飛べる! ★ルポルタージュ形式で障害者雇用の現場をわかりやすく紹介 ★国が進める施策の動向や、関係制度、助成金などの支援策を紹介 ★「障害者雇用率向上へのヒント」、「障害のある人の地域生活支援について」など、テーマを掘り下げた記事が充実 お問合せ先 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)企画部情報公開広報課 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 電話043-213-6200 FAX043-213-6556 E-mail hiroba@jeed.go.jp https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html JEED 働く広場 検索 【裏表紙】 6月号 令和7年5月25日発行 通巻572号(毎月1回25日発行)