エルダー活躍先進事例集2016年版
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製造業BFACDEGHIJKLMNOPQSTR高齢者が働きやすい職場づくりのためにこれまで行った改善や工夫改善区分課 題検討状況・改善内容① 制度面新規学卒者や中途者採用を募集しても応募者が少なく、思うような人材が採用できない。また、長く勤務してほしいが自己都合などで退職する従業員も多く、パートタイマーの正社員登用制度がないため、将来に不安を抱く人も多い。電子部品製造業界は景気変動の波の影響を激しく受け易く、人手不足の解消には、高齢者の活用が欠かせなかった。平成21年7月に70歳定年制度を導入し、70歳定年後も嘱託として再雇用を可能とする制度とした。更に、70歳の定年までは、同一の賃金テーブルとする制度を採用し、従業員の生活の安定を図った。パートタイマーの正社員登用制度を就業規則に規定し、優秀なパートタイマーで正社員と同様な勤務ができる従業員を積極的に正社員へ登用するようにした。また、高齢従業員の就業希望や体力にあわせた、土曜日の休み・短時間勤務等を可能とする弾力的勤務時間制度を導入した。② 能力開発熟練工として活躍してもらう目的で、同一職場・同一職種で長く勤務することを優先していた。しかし、外部要因による業務内容の変化に対応できない場合、その職場・職種の仕事がなくなる場合があった。仕事のローテーションにより、他の職場経験を積極的に積んでもらうような仕事配分を行い、多くの仕事に対応できる人材を育成する多能工化の推進を行った。その結果、業務内容の変化に応じて、人員の適正配置を柔軟にする生産体制ができるようになった。また、従業員は、他の職場の業務を理解するとともに人的交流が図られ従業員間のコミュニケーションが盛んになり、職場の一体感が生まれた。③ 環境改善原材料となるプラスチックフィルムの原反並びに梱包した製品は、500kgから1トン以上になるなど重い。ハンドリフトを使ってこれらを人力で移動させる作業を長時間行うため、腰痛を発症する従業員が出ていた。またハンドリフトによる原反を機械に装着する場合、原反の落下による大怪我の危険があり、生産性が上がらなかった。平成24年に新築した工場を増築する際、倉庫並び製造工程を、「人力から電動化」した。工場がクリーンルームになっているため、「高年齢者雇用安定助成金」を利用して、ハンドリフトに代わり、小型電動フォークリフトを導入し、作業性・安全性をともに向上させた。工場内の1階と2階の物流スペースには、同フォークリフトが入る大型エレベーターと垂直自動搬送機を導入した。また、「うっかり事故」の発生を予防するため、大型プレス機など全ての機械装置にセンサーを取り付け、工場内の電気配線・圧搾空気・純水等の配管を天井に配置して通路スペースも広くし安全性を改善した。④ 健康管理・ 安全衛生、 その他倉庫の冷暖房があまり効かず、従業員の身体に大きな負担となっていた。また、健康管理は各個人の責任としており、病気による長期休暇取得後の復帰プログラムがないため、従業員にとって不安であった。工場内の物流スペース全体に冷暖房システムを導入し、1年を通じて快適な環境下で作業できるように改善し、身体負担を軽減した。また、就業規則を改訂し、会社の健康診断制度を設け、パートタイマーを含む全従業員に健康診断の受診を義務付け、高齢従業員には、「生活習慣病予防検診」を受診してもらい、オプションでがん検診等の受診を呼びかけている。同時に病気等による長期休暇取得後の復帰プログラムを設け、段階的に職場に復帰することを可能とし、安心して治療に専念できるようにした。⑤ 新職場、 職務の創出高齢従業員には長く勤務してほしいが、体力の低下や家庭の事情(例えば、親の介護)等の事由から、フルタイム勤務が出来ないことにより退職する場合があった。8種類の多種勤務時間帯を導入し、フルタイム勤務に不安を抱える高齢従業員が、本人の就業希望や体力にあわせた勤務が可能となった。60歳以上の優秀な経験者を中途採用することができるようになったため、新たに品質保証の業務を創出し、従事させている。また、現在の最高年齢である73歳の従業員には、体力を考慮して1日4時間勤務の廊下・ロビー・トイレ等の屋内清掃業務を新たに創出した。⑥ 未解決の課題、 うまくいかな かったこと70歳定年を迎える従業員が今後増加してくる。現在の定年後の継続雇用制度では、「定年後嘱託として再雇用する場合の労働条件については、個別に協議し、労働契約書を取り交わす」こととなっており、年齢の上限はない。70歳定年後の継続雇用における賃金制度が未整備であるため、研究している。更に働きやすい職場とするためには資金が必要となるため、各種助成金制度等の活用を検討している。2016年版 エルダー活躍先進事例集28-75
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