TOPIC1 職場における熱中症防止のためのガイドライン  2026(令和8)年4月の改正労働安全衛生法の施行により高齢労働者の労働災害防止措置が努力義務となりました。本稿では、2026年3月に厚生労働省が策定した「職場における熱中症防止のためのガイドライン※1」の「第3 熱中症リスクに応じた措置」から一部を抜粋して紹介します(編集部)。 1 労働衛生管理体制の確立等  事業場における熱中症防止対策については、衛生委員会、安全衛生委員会又はこれらを設けていない事業場における労働者の意見を聴く機会等を活用し、労働者の理解と協力を得つつ労使で話し合い、その内容を労働者に対して周知することが重要である。(中略) (1)各種管理者等の選任と役割  事業者は、産業医の意見も参考にしながら、衛生管理者(50人未満の事業場では安全衛生推進者又は衛生推進者)を中心に、本ガイドラインに掲げる熱中症防止対策について検討させ、以下の(ア)〜(ク)に掲げる業務を行わせるとともに、事業場における熱中症防止に係る責任体制の確立を図ること。(中略) (ア)作業に応じて、適用すべきWBGT※2基準値を決定し、併せて衣類に関しWBGT値に加えるべき着衣補正値の有無を確認すること。 (イ)WBGT値の低減対策を検討し、その実施状況を確認すること。 (ウ)入職日、作業や休暇の状況等に基づき、あらかじめ各作業従事者の暑熱順化の状況を確認すること。なお、あらかじめ暑熱順化不足の疑われる作業従事者は第3の3の(2)に示す暑熱順化プログラムに沿って暑熱順化を行う必要があること。 (エ)朝礼時等作業開始前において作業従事者の体調及び暑熱順化の状況を確認すること。 (オ)作業場所のWBGT値の把握と結果の評価を行う。事業者は、評価結果に基づき、必要に応じて作業時間の短縮等の措置を検討すること。 (カ)職場巡視を行い、作業従事者の水分及び塩分の摂取状況を確認すること。 (キ)退勤後に体調が悪化しうることについて注意喚起すること。 (ク)熱中症に関する労働衛生教育の実施状況を確認すること。(中略) (2)作業手順・作業計画の策定  夏季の暑熱環境下における作業に対する作業手順・作業計画を策定すること。作業手順・作業計画には、特に新規入職者や休み明けの作業従事者については、熱中症を発症するリスクが高いため、作業内容等を十分に考慮した暑熱順化プログラム、WBGT値に応じた十分な休憩時間の確保、WBGT基準値を踏まえた作業中止に関する事項を含める必要があること。(中略) 2 作業環境管理 (1)WBGT値の低減  事業者は、過去に熱中症による労働災害が発生した場所など、WBGT基準値を超えている又は超えるおそれのある場所において作業を行うことが予定されている場合には、以下に掲げる措置を例としてWBGT値低減対策を講ずること等により、WBGT値の低減に努めること。 ア WBGT基準値を超えている又は超えるおそれのある作業場所(以下単に「高温多湿作業場所」という。)においては、発熱体と作業従事者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けること。 イ 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面及び地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けること。 ウ 高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備やミストシャワー等による散水設備などを設け、既に設置している冷房設備等については、その機能を点検すること。(中略) (2)休憩場所の整備等  熱中症の重篤化を防ぐためには、適切な身体冷却が有効であるため、事業者は、作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所を確保すること。(中略) 3 作業管理 (1)作業時間の短縮等  1の(2)で検討した作業手順・作業計画に基づき、熱中症予防対策を作業の状況等に応じて実施するよう努めること。熱中症予防対策は、以下のものが考えられること。 ア 作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での作業を連続して行う時間を短縮するよう努めること。(中略) イ 身体作業強度(代謝率レベル)が高い作業を避けること。 ウ 可能であれば、日陰の場所に作業場所を変更すること。 (2)暑熱順化  高温多湿作業場所において作業従事者を作業に従事させる場合には、暑熱順化(熱に慣れ当該環境に適応すること)の有無が、熱中症の発症リスクに大きく影響することを踏まえ、計画的に、暑熱順化期間を設けること。(中略)  暑熱順化の方法としては、7日以上かけて暑熱環境での身体的負荷を増やし、作業時間を調整し、次第に長くすることが挙げられる。特に、新規入職者等に対して他の作業従事者と同様の暑熱作業を行わせないよう、計画的な暑熱順化プログラムを組むこと。(中略) (3)プレクーリング  WBGT値が高い暑熱環境下で、作業強度を下げたり通気性の良い衣服を採用したりすることが困難な作業においては、作業開始前にあらかじめ深部体温を下げ、作業中の体温上昇を抑えるプレクーリングについては、体表面から冷却する方法と、(中略)体内から冷却する方法を検討すること。(中略) (4)水分及び塩分の摂取  安衛則第617条により、多量の発汗を伴う作業場では、塩及び飲料水を備え付けることが義務付けられており、当該作業場では、飲料水、スポーツドリンク、経口補水液、塩飴等を備え付けなければならないこと。  高温多湿作業場所においては、作業従事者について自覚症状以上に脱水状態が進行していることがあること等に留意の上、作業従事者の自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を指導するとともに、作業従事者の水分及び塩分の摂取を確認するための表の作成、作業中の巡視における確認等により、定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図ること。(中略)  特に、加齢や疾病によって脱水状態であっても自覚症状に乏しい場合があることに留意すること。また、高血圧であって塩分等の摂取が制限される、糖尿病であって糖分等の摂取が制限されるなど基礎疾患を有する作業従事者については、主治医、産業医等に相談させること。 (5)服装による身体冷却  作業の性質上通気性の確保等が困難ではない場合は、熱を吸収し、又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用させること。(中略) (6)作業中の巡視  定期的な水分及び塩分の摂取に係る確認を行うとともに、作業従事者の健康状態等(心拍数、体温及び尿の回数・色等の身体状況)を確認し、熱中症を疑わせる兆候が現れた場合において速やかに作業の中断その他必要な措置を講ずること等を目的に、高温多湿作業場所での作業中は巡視を頻繁に行い、声をかける等して作業従事者の健康状態を確認すること。また、長時間の単独作業を避け、なるべく短時間にさせること。(以下略) ※1 詳細については厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」をご確認ください。 https://neccyusho.mhlw.go.jp/pdf/2026/r8_neccyusho_guidelines.pdf ※2 WBGT……暑さ指数。人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい@湿度、A日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、B気温の三つを取り入れた指標