いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第70回 「ハローワーク」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、「ハローワーク」について取り上げます。 セーフティネットの中心的役割  ハローワークは職業安定法を根拠に設置された厚生労働省の機関です。かなり浸透している用語ですが、じつは1989(平成元)年に導入された“愛称”で、正式名称は公共職業安定所(略称:職安(しょくあん))といいます。  ハローワークの取組内容や実績については、厚生労働省の『公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績(令和8年4月)』※1(以下、『取組と実績』)に詳しく記載されています。ここではハローワークについて「憲法に定められた勤労権の保障のため、障害者や生活保護受給者の方など民間の職業紹介事業等では就職へ結びつけることが難しい就職困難者や人手不足の中小零細企業を中心に、国が無償で支援を行う雇用のセーフティネットの中心的役割を担うもの」と説明しています。職業紹介事業とは、求人(採用したい)および求職(仕事をしたい)の申込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすることをさしますが、2025(令和7)年度では3万3888所という数多くの民営職業紹介事業所※2が存在しています(厚生労働省職業安定局需給調整事業課調べ※3)。しかし、そのうち大半が有料であっせんを行っていることに対して、ハローワークの設置意義としては、民間の職業紹介事業では困難な求人者・求職者を対象に、無償で行っている点があげられます。  ハローワークは、本稿執筆現在では計544所の本所(436)・出張所(95)・分室(13)による全国ネットワークを活かした支援のほか、地方公共団体(都道府県・市区町村)と一緒に取り組む雇用対策協定に基づく連携施策などによる地域密着型の支援も実施しています。また、2002年より全国版のハローワークインターネットサービスが提供されています。 雇用に関する3業務を一体的に実施  ハローワークの業務には、おもに職業紹介・雇用保険・雇用対策の3業務がありますが、これらは就職支援を効果的に実施するために一体的に行われています。 @職業紹介…求人者は、募集したい人材の要件や処遇内容について登録すると全国のハローワークやインターネットを通じて求職者にアプローチすることができます。一方、求職者は希望やスキルに合った求人情報を探したり、ハローワークを通した応募手続きを行ったりすることができます。これらを効果的に進めるために、ハローワーク職員によるキャリアコンサルティング※4や応募書類の添削、面接対策、スキルアップのための職業訓練(ハロートレーニング)の案内なども行っています。 A雇用保険…労働者が失業・休業等をした場合の生活の安定や早期再就職の促進を目的とした給付を行う雇用保険について、受給希望者はハローワークで給付の手続きを行い、ハローワークでは受給要件を満たしていることを確認したうえで、受給資格の決定を行います。失業等給付※5や育児休業等給付が対象ですが、特に失業等給付については、ハローワークで職業紹介と一体的に運営することで、求職活動実績を確認することを通した適正な支給を確保することができるとしています。 B雇用対策…企業に対して障害者雇用率※6の達成に向けた指導を行うほか、高年齢者雇用確保措置の導入をうながすための指導を実施しています。また、労働時間・賃金・職場環境などの雇用管理に関する改善を支援し、企業の人材確保と安定的な雇用の実現を後押ししています。 高齢者雇用におけるニーズは高まっている  職業紹介については、求職者のニーズの多様化に対応するため、対象者別の専門窓口を設置しています(図表参照)。しかしながら、令和7年度『年次経済財政報告』(内閣府)※7をみると入職経路(労働者が現在の職場に入る際に利用したルート)に占めるハローワークの比率は、2010年26.2%、2020年18.2%、2023年13.9%と低下傾向にあります。また、『取組と実績』のハローワークにおける職業紹介等の実績をみても、新規求職申込件数は2021年度463.0万件に対して2024年度が440.9万件、若年者についてみると2021年度10.8万人に対して2024年度が8.4万人という状況です。これには先に述べた民営職業紹介事業所のサービスが求人者にも求職者にも広く浸透し活用されている影響が要因としてあげられます。  一方で、同実績の高齢者(65歳以上の就職件数)をみると、2021年度が11.2万件、2022年度12.7万件、2023年度13.7万件、2024年度14.4万件という右肩上がりの状況です。これは、高齢者の新規求職者数が増加傾向にある影響もありますが、ハローワークでは生涯現役支援窓口で特に65歳以上の求職者への再就職に向けた手厚い支援を実施しているなど、民間の事業所では十分に対応しきれないニーズに対応していることも要因としてあげられます。  人材確保に悩んでいる企業については、ハローワークにおける高齢者の求人を積極的に活用することも一つの策と考えられます。 ***  次回は、「職務分析」について取り上げます。 ※1 https://www.mhlw.go.jp/content/001683249.pdf ※2 「エージェント」や「人材紹介会社」と呼ばれることが多い。厚生労働大臣に許可された事業者のみがあっせんを取り扱いできる ※3 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001699953.pdfに1990年度から2025年度までの推移がまとめられている ※4 働く人が自分のキャリアについて整理し、よりよい選択ができるように職業選択についてのアドバイスを行うこと ※5 失業者への給付である「求職者給付」、早期再就職者への給付である「就職促進給付」、自主的教育訓練受講者への給付である「教育訓練給付」、介護休業等により雇用を継続する者への給付である「雇用継続給付」がある ※6 障害者雇用率については、本連載第61回(2025年9月号)をご覧ください。    https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202509/index.html#page=50 ※7 https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je25/index_pdf.htm 図表 ハローワークの専門支援窓口 マザーズコーナー(183) 子育て中の女性等に対する就職支援を実施。 わかもの支援コーナー・窓口(201) 正社員を希望するおおむね35歳未満のフリーター等に対する就職支援を実施。 中高年層(ミドルシニア)専門窓口(92) 中高年層(ミドルシニア)の不安定就労者に対して、就職から職場定着までの一貫した支援を実施。 生涯現役支援窓口(300) 高年齢求職者の職業生活の再設計に係る支援や就労ニーズに即した総合的な就労支援を実施。 人材確保対策コーナー(124) 医療、介護、保育、建設、警備、運輸などの求人倍率の高い人材不足分野へのマッチング支援を実施。 地方就職支援コーナー(2) 地方就職希望者に対する就職支援を実施。 農林漁業就職支援コーナー(16) 農林漁業人材の確保・職場定着までの支援を総合的に実施。 *( )は設置数 出典:『公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績(令和8年4月)』(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/001683249.pdf