【表紙】 令和8年9月1日発行(毎月1回1日発行)第48巻第9号通巻562号 Monthly Elder 高齢者雇用の総合誌 9 2026 特集 シニア社員のための“働きがい”改革! リーダーズトーク 管理職の役割と責任を明確化し全社でシニアのキャリア支援の充実を 法政大学 キャリアデザイン学部 キャリアデザイン学科 教授 坂爪洋美 【前頁】 10月は「高年齢者就業支援月間」です 高年齢者活躍企業フォーラムのご案内 (高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)  高年齢者が働きやすい就業環境にするために、企業等が行った創意工夫の事例を募集した「高年齢者活躍企業コンテスト」の表彰式をはじめ、コンテスト入賞企業等による事例発表、学識経験者を交えたトークセッションを実施し、企業における高年齢者の雇用の実態に迫ります。「年齢にかかわらずいきいきと働ける社会」を築いていくために、企業や個人がどのように取り組んでいけばよいのかを一緒に考える機会にしたいと考えます。 日時 2026(令和8)年10月9日(金)13:00〜16:00 受付開始12:00〜 場所 KABUTO ONE HALL & CONFERENCE (東京都中央区日本橋兜町7番1号 KABUTO ONE 4階) ●東京メトロ東西線・日比谷線「茅場町」駅 11 出口直結 ●東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線「日本橋」駅 D2出口から徒歩2分 ●JR線、東京メトロ丸の内線「東京」駅 八重洲北口から徒歩12分 定員 100名(事前申込制・先着順) 会場・ライブ配信同時開催 参加費 無料 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) プログラム 13:00〜13:10 主催者挨拶 13:10〜13:35 高年齢者活躍企業コンテスト表彰式 厚生労働大臣表彰および独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 13:35〜14:20 高年齢者活躍企業コンテスト上位入賞企業による事例発表 14:20〜14:30 (休憩) 14:30〜15:15 基調講演「高年齢者の安全配慮と健康管理」 赤津順一氏 一般財団法人日本予防医学協会 理事 15:15〜16:00 トークセッション コーディネーター……内田賢氏 東京学芸大学 名誉教授 パネリスト……………・事例発表企業3社 ・赤津順一氏 参加申込方法 フォーラムのお申込みは、以下の専用URLからお願いします(会場・ライブ配信)。 https://www.elder.jeed.go.jp/moushikomi.html 参加申込締切 〈会場参加〉2026年10月7日(水)14:00 〈ライブ視聴〉2026年10月9日(金)15:00 高年齢者活躍企業フォーラムに関するお問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 【P1-4】 Leaders Talk No.136 管理職の役割と責任を明確化し全社でシニアのキャリア支援の充実を 法政大学 キャリアデザイン学部 キャリアデザイン学科 教授 坂爪洋美さん さかづめ・ひろみ 専門は社会・組織心理学。和光大学現代人間学部教授などを経て2015(平成27)年より現職。『シリーズダイバーシティ経営 多様な人材のマネジメント』、『シリーズダイバーシティ経営 管理職の役割』(いずれも共著・中央経済社)など著書多数。  複雑・多様化しているといわれる現代の管理職。人材の多様化に加え、テレワークや短時間勤務といった柔軟な働き方に対するニーズの高まり、副業・兼業の解禁など、働き方そのものが多様化していることもその要因です。今回は組織マネジメントや管理職問題に詳しい、法政大学教授の坂爪洋美さんにご登場いただき、管理職を取り巻く現状や課題、シニア社員を含む多様な人材のマネジメントなどについて、お話をうかがいます。 多様な人材のマネジメントからキャリア支援までさまざまな役割・責任を背負う現代の管理職 ―近年、管理職の役割が複雑・多様化し、その負担が大きくなっていると指摘されています。管理職が置かれている現状とその背景について、考えをお聞かせください。 坂爪 そもそも管理職にかぎらず、現代社会においては「だれもが忙しい」という現状があります。厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」(2024年)によると、仕事や職業生活において強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は68.3%にのぼっており、その要因として「仕事の量」(43.2%)がもっとも多くなっています。  しかも忙しいなかで育児や介護、病気の治療などで働く時間がかぎられる人がおり、人材や働き方の多様性が進むにつれ、管理業務の負担が大きくなり、それに加えてプレイヤーとしての働きも求められるなど、管理職の仕事は複雑化しています。  さらにマネジメント業務自体の負担も増えています。部下との1on1面談が浸透しつつありますが、昔のように指示するだけでは部下は動きません。また、転職が活発となる状況で、働く側が必ずしもいまの会社にこだわらなくなると、マネジメントの失敗が退職の引き金になります。退職の原因としては、賃金などの処遇面もあると思いますが、組織と個人の関係性の変化を埋めることが、管理職の仕事の一部になってきています。  また、1on1ではキャリア形成支援の役割も付加され、部下が行っている仕事の意義などについても説明しなければなりません。しかし、説明や対話の機会が増えると生じるのがハラスメント問題です。「それって、ハラスメントじゃないですか?」といわれないよう、伝えるためのスキルも求められています。 ―管理職が部下のキャリア形成支援までになうのはたいへんだと思います。近年はキャリア自律が叫ばれていますが、管理職が部下のキャリア形成にかかわるようになったのはいつごろからでしょうか。 坂爪 そもそもの始まりは2000年代初頭の成果主義ブームからだと思います。一人ひとりの成果を見ることは正しいことですが、成果を評価するにしても、しっかりフィードバックしなければ部下の納得は得られません。さらに、フィードバックする際に部下の将来像をも考えながら実施したほうがよいということで、管理職の業務がキャリア面談まで拡大するなど、1on1の対応範囲がどんどん拡大していったと見ています。  そして2010年以降、従業員の動機づけ、モチベーション管理の手法として、「キャリア自律」という言葉が使われるようになります。もともとはキャリア=昇進・昇格であり、それがモチベーションの源泉と考えるのが一般的でしたが、いまはキャリアに対する考えが多様化し、昇進・昇格だけでは社員は動きません。また、だれもが昇進できるわけではないという状況で、「あなたが目ざすキャリアを自分で描こう」というキャリア自律の考えは、企業の人事にとって納得性が高かったのでしょう。  しかし、現場の管理職にキャリア形成支援を丸投げしても、多くの管理職は、それまでにキャリア形成支援を受けたことはありませんから、何をどうしたらいいのか、収拾がつかなくなっているのが現状だと思います。 マネジメント対象である部下の数の最適化や管理職の裁量・要件の見直しを ―最近は「管理職になりたくない」という若手が増えているともいわれます。その背景にはどういう事情があると考えていますか。 坂爪 給与に関しては、共働き世帯が増えてきたなかで、管理職になって高い給与をもらわなくても、二人合わせれば管理職相当の収入が得られるようになるなど、家計の収入構造が変わったことが大きいと思います。  また、一昔前であれば、管理職が先に帰社して部下が残業をするのがあたり前でしたが、いまはそれが逆転し、管理職が遅くまで仕事をして、場合によっては土日出勤することもあります。  部下目線でこうした管理職を見れば、「こういう働き方は嫌だな」と考えてしまい、魅力的な仕事ではなくなってきていることもあるでしょう。また、管理職自身、自らの仕事の魅力ややりがいについて答えられないという問題もあります。部下に「課長の仕事はどこが楽しいですか」と聞かれた際、答えに窮する管理職は少なくないのではないでしょうか。管理職自身が自分の仕事の意義をふり返るための時間すらなくなっている気がします。 ―そうした管理職を支援・サポートするために企業や人事部にはどのような対応が求められていますか。 坂爪 プレイングマネジャーとして、現場の仕事とマネジメントの仕事を管理職に任せるのであれば、部下の数を減らすのがもっともオーソドックスな方法でしょう。例えば、20人の部下がいるような場合、そもそも1on1の時間の確保自体がむずかしく、できたとしても質は落ちてしまいます。国の調査によると部下の平均人数は10人を超えていますが※1、できれば7人程度までダウンサイズする必要があります。  また、どの程度直接的な効果があるかはわかりませんが、欧米のように、管理職に対して採用・異動・昇進などに関して、一定の裁量・権限を与えることです。国際比較調査では日本の課長は本当に異動の権限を持っていません。例えば、キャリア面談をしても、部下からすると「権限もないのにどうして話さないといけないのか」という気持ちになりますし、お互いに不毛な時間を過ごすことになりかねません。裁量を持つことで管理職の要件も変わってきますが、その点も含めて管理職の役割をセットで見直す必要があります。  さらにいえば、管理職の最終的な職責は業績責任です。部下にいまの仕事に必要な能力を獲得させることは管理職の仕事だとしても、キャリア形成支援などの役割からは解放するべきでしょう。例えば、進むべきキャリアラダー※2についてイントラネット上にすべて公開したり、人事部内にキャリア相談室を設置しそこでキャリア面談を行うなど、管理職に任せる以外の方法を考えることが必要です。 年上部下にも期待・役割を明確に伝えること年齢は関係なく管理職の役割に徹する ―高齢者雇用の進展もあり、役職定年や定年後再雇用によって年上の部下が増え、業務指示などシニア社員への対応に苦慮している管理職も多いと聞きます。 坂爪 年上部下であるシニア社員への対応の基本はシンプルで、まずは期待をしっかりと伝えること。これは年上であろうと年下であろうと変わりません。シニア自身、役職から離れるとメールが減り、いろいろな場面で「無視されている」、「期待されなくなっている」と感じることが増え、本人も葛藤しているはずです。  一方で、じつは管理職の側もシニア社員について、「やる気はないだろう」、「どうせ無理だから仕事は任せられない」というアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)があるように思います。そうした意識の払拭も求められます。役職定年や定年後再雇用になっても会社にとっては貴重な戦力のはずです。  例えば、ITに弱い、アプリケーションが使えないなどの問題があれば、「使えるようにしてください。そうしないとほかの人の仕事が回りません」と明確な言葉で伝えることが大切です。年上・年下、後輩・先輩に関係なく、役割としての管理職に徹することです。  そのうえで、年上部下への対応で困った ケースなどを共有化してはどうでしょう。管理職同士の勉強会などで共有するのです。管理職のなかには、自部署や部下についての悩みをだれにも相談できずに抱え込んでしまうケースもありますし、年上部下のマネジメントが部署を超えた共通の課題であることを共有することにも意味があると思います。 ―シニア社員の問題を含め、多くの課題が管理職に押しつけられているように思います。企業・人事としてどのような対応が求められますか。 坂爪 年上部下の問題を含め、人事制度の穴を管理職が埋めているのが現状です。会社から「お金は出せないが、シニア社員の意欲を引き出すのはあなたの仕事だ」といわれて困っている管理職も多いでしょう。シニア社員をどのように活用したいのかという明確な方針を会社として打ち出していくことが必要です。  55歳、60歳でもキャリアの迷いはあるものです。55歳の大先輩から面談で相談を受けた若い上司からすれば、何を話せばよいかわかりません。会社は、上司の面談の前に、自分のキャリアの棚卸しを含めて整理できるキャリア相談室のような場を用意すべきでしょう。そして会社や職場でやりたいキャリアプランをしっかりと把握し、そのためのキャリア形成支援を、シニア社員に対してもしっかり行っていくべきだと思います。また、最近では50歳、55歳の節目にキャリア研修をしている会社も増えてきましたが、単発で終わらせるのではなく、継続的にキャリア形成支援をしていくことが重要だと思います。 (聞き手・文/溝上憲文、撮影/中岡泰博) ※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2025―労働統計加工指標集―』 ※2 キャリアラダー……職種や役割での能力や経験などを段階的に整理して、成長の過程を「はしご(ラダー)」のように可視化した仕組みのこと 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のイラスト:水穂真善/アフロ 2026 September No.562 特集 6 シニア社員のためのW働きがいW改革! 7 総論 シニア社員にとってのW働きがいWとは ─役割が変わっても、価値を発揮し続けるために─ Great Place To WorkR Institute Japan 代表/株式会社働きがいのある会社研究所 代表取締役社長 荒川陽子 11 解説1 シニア社員のW働きがいW改革@ 制度設計の視点から 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー 石山大志 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島明子 15 解説2 シニア社員のW働きがいW改革A キャリア形成支援の視点から 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長 宮島忠文 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島明子 18 解説3 シニア社員のW働きがいW改革B マネジメントの視点から 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 宮下太陽 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島明子 21 事例 株式会社横引シャッター(東京都足立区) 一人ひとりの裁量を尊重する経営が年齢を問わず社員の働きがいを引き出す 1 リーダーズトーク No.136 法政大学 キャリアデザイン学部 キャリアデザイン学科 教授 坂爪洋美さん 管理職の役割と責任を明確化し全社でシニアのキャリア支援の充実を 24 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 【第5回】 企画立案サービスを活用しよう! 30 江戸時代にもあった「仕事と介護の両立問題」 〜目からウロコの高齢者介護史〜 【第4回】 江戸時代以前、高齢者が要介護状態になった原因とは ―現代と江戸時代を比べてみたら― ア井将之 32 高齢者の職場探訪 北から、南から 第169回 奈良県 医療法人中川会 飛鳥病院 36 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第119回 東洋コミュニティサービス株式会社マンション管理員 川合清司さん(73歳) 38 AIと歩む人生100年時代 【第2回】 AIはシニア人材の働き方をどう支えるか ―業務効率化・負荷軽減・安全と健康の新しい可能性― 柏村祐 42 知っておきたい労働法Q&A 《第98回》 就業規則の改定と不利益変更、人事制度改革の留意点 家永勲/木勝瑛 46 サステナビリティを高めるシニア人材活用戦略 【第3回】 シニア人材の経験知を「資産化」する 佐賀輝/宮下太陽 48 いまさら聞けない人事用語辞典 第71回 「職務分析」 吉岡利之 50 労務資料 『令和8年版高齢社会白書』 内閣府 53 立川談慶の人生100年時代の歩き方 【第8回】 「抜け雀」から学ぶ「やせ我慢」の大切さ 54 令和8年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.367 五感を研ぎ澄ませて励むおいしい和菓子づくり 和菓子職人 坪田知之さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第111回] ひらがな暗算 篠原菊紀 【P6】 特集 シニア社員のための“働きがい” 改革!  少子化による生産年齢人口の減少が続くなか、会社の持続的な成長のためにはシニア社員を含む多様な人材の活躍が欠かせません。一方でシニア社員の場合、役職定年や定年後再雇用による役割や職責の変更、処遇の見直しなどによるモチベーションの低下をいかに防ぐかが大切となります。  そこで重要になるのが、仕事のやりがいや働きやすさを超えた“働きがい”です。今回は「シニア社員のための“働きがい”改革!」と題し、シニア社員の働きがいを高めるために必要な取組みについて解説します。 【P7-10】 総論 シニア社員にとっての“働きがい”とは ─役割が変わっても、価値を発揮し続けるために─ Great Place To WorkR Institute Japan 代表/株式会社働きがいのある会社研究所 代表取締役社長 荒川(あらかわ)陽子(ようこ) 1 役割の変化が突きつける問い  多くのビジネスパーソンにとって、役職定年や定年後再雇用は避けて通れない現実です。昨日まで部門を率いていた管理職が、ある日を境に一般社員として働くことになるー。長年積み上げてきたキャリアの延長線上に、突然「役割の変化」が訪れます。  この変化への対応がむずかしいのは、仕事の内容だけでなく、「組織における自分の存在意義」そのものが問い直されるからです。「自分はまだ必要とされているのか」、「これまでの経験はいまの職場で活かせるのか」ーそうした問いを抱えながら働くシニア社員は、決して少なくありません。  しかし、シニア社員を受け入れる組織側の準備が十分でないケースが多いのが現状です。組織は何をすべきなのか。その答えを探るうえで、まず「働きがい」という概念を正しく理解することが不可欠です。 2 「やりがい」だけでは足りない理由  シニア社員の活躍を語る際、「やりがい」という言葉がよく使われます。しかし「やりがい」と「働きがい」は異なる概念であり、この違いを理解することがシニア社員活躍推進の出発点となります。  「やりがい」とは、おもに仕事の内容そのものに対する充実感や達成感をさします。一方、「働きがい」はより広い概念です。世界170カ国で「働きがい」を研究・支援する専門機関であるGreat Place To WorkRは、30年以上にわたる調査・分析を通じて企業の働きがい向上をサポートし、働きがいに優れた企業の認定やランキングの発表を行っています。こうしたバックグラウンドを持つGreat Place To WorkR Institute Japan(以下、「GPTW Japan」)は、働きがいとは「『やりがい(仕事の充実感)』と『働きやすさ(職場環境のよさ)』の両方がそろったときに生まれるもの」と定義しています。仕事内容への満足だけでなく、職場の人間関係、組織からの承認、公正な評価と報酬、上司や同僚との信頼関係ーそうした要素が総合的に整って初めて「働きがい」は生まれます(8ページ図表1)。  シニア社員にとって、この区別は特に重要な意味を持ちます。役職定年や再雇用後のシニア社員が直面する課題は「仕事の内容がおもしろくない」という問題だけではないからです。役職を外れたことによる自己肯定感の低下、若手社員との関係性への不安、処遇変化に対する納得感の欠如ーこれらはいずれも「働きがい」全体にかかわる問題です。担当業務を工夫して「やりがい」を高めようとしても、「自分の意見は聞いてもらえない」、「評価が不公平だ」という感覚が残るかぎり、シニア社員の本来の力は発揮されません。組織全体として「働きがい」を高める環境をつくることが、シニア社員が真の活躍をするうえで不可欠です。 3 データが示す「シニア社員の働きがいが高い職場」の三つの特徴  GPTW Japanが2025年版「働きがいのある会社」ランキングに選出された企業を対象に、シニア社員(55歳以上)の働きがいが高い群と低い群に分類して分析したところ、三つの共通した特徴が明らかになりました。 特徴@ 人事処遇が公正である  両群のギャップがもっとも大きかったのは、「適切な人材配置」、「昇進」、「報酬」に対する納得感など、人事処遇の公平性に関する項目でした。役職定年制度や再雇用制度によって一律に処遇が下がる企業ではシニア社員が不満を抱きやすく、長年同じ部署・職種にとどまり続けることでモチベーションの維持がむずかしくなるケースも少なくありません。シニア社員の働きがいが高い職場では、年齢や役職にかかわらず、貢献に対して公平感のある制度と運用がなされています。 特徴A 安心して働ける環境がある  「経営・管理者層の言行一致」や「安心して働ける環境」についても、両群の間に明確な差がみられました。シニア社員は社内カルチャーや仕事にはなじんでいる一方、社内の変化への対応や新しい技術の習得に不安を感じやすい側面があります。マネジメントの言行が一致していることで組織への信頼感が醸成され、精神的な安心感を持って働ける環境が整っていることが重要です。 特徴B シニア社員だけでなく、だれもが働きがいが高い  シニア社員の働きがい上位群では、シニア社員・若手社員ともに全設問平均の肯定回答率が80%を超えていました。一方、下位群ではシニア社員と若手社員の間に11ポイント以上の有意な差が生じていました。シニア社員に特化した優遇策ではなく、「だれもが公平にチャンスを持てる組織文化」こそがシニア社員の働きがいを高める本質的な要因です。 4 「経験を活かす」ために必要なアンラーニング シニア社員の最大の強みは、長年にわたって積み上げてきた経験と知識です。しかしこの「経験」は、使い方を誤ると逆効果になります。シニア社員が経験を活かすためには、単に「過去の知識を伝える」だけでは不十分です。必要なのは「アンラーニング」ー過去の成功体験や固定観念を意識的に手放し、新たな視点で学び直す姿勢です。  ある企業のシニア社員の事例がこれを物語っています。かつて管理職として高い成果をあげてきたシニア社員が、組織改編を機に20〜30代の若手社員と同じグループで働くことになりました。当初は「自分の経験は古めかしく受け取られるのではないか」という不安を抱えていましたが、その不安は杞憂に終わりました。自身の成功事例も失敗談も若手社員にとって貴重なケーススタディとなり、「これなら自分の経験を還元できる」という実感が生まれたのです。さらに注目すべきは、このシニア社員が「教える側」に徹したわけではないことです。若手社員との対話のなかで最先端のツールや高効率なノウハウを吸収し、双方向の学びが生まれていました。過去の成功体験に縛られず若手社員から学ぶことをおそれない姿勢があってこそ、シニア社員の経験は真に「活きた知恵」となります(図表2)。 5 「まだ必要とされている」実感を生む環境・制度・仕組み  シニア社員が働きがいを感じるためには、「自分はまだ必要とされている」という実感が不可欠です。この実感は偶然生まれるものではなく、組織が意図的に環境・制度・仕組みを整えることで初めて生まれます。 @学び続けられる環境をつくる  変化への対応や新技術の習得に不安を感じるシニア社員が安心して働き続けられるよう、継続的な学習機会を組織として提供することが重要です。GPTW Japanが発表した2025年版のシニアランキングにおいて、大企業部門で第1位に選ばれたDHL Express(DHLジャパン株式会社)では「CISパスポート」と呼ばれる全社員向けのトレーニング制度を設け、「業績にかかわらず、いつ何時もトレーニングは決して止めない」という方針を徹底しています。学ぶ機会が保障されることで、シニア社員は変化をおそれずに働き続けることができます。 A年齢にかかわらずチャレンジできる制度を設ける  DHLジャパン株式会社の社内公募制度(ポスティング制度)では、応募に年齢の記入が不要で、評価されるのは能力と意欲のみです。55歳を超えて異なる職種に転身するケースも珍しくなく、60歳を過ぎてから新たな部署で活躍する社員もいます。またマネジャーはほぼ100%が内部昇格で、現場から経営層へと上り詰めた社員も少なくありません。「年齢ではなくチャレンジ意欲で道が拓ける」という実感が、シニア社員の自己効力感を支えます。 B若手社員とシニア社員が学び合う仕組みをつくる  若手社員とシニア社員が「お互いから学び合う職場」をつくることも有効です。週に一度のグループ会などで各自の仕事内容を共有し、互いの悩みを持ち寄る場をつくることが相互学習を促進します。また、若手・中堅社員がシニア社員のメンターになる「リバースメンタリング」の導入も効果的です。シニア社員の学ぶ意欲を刺激すると同時に、若手社員の自己効力感を高め、双方向の成長が生まれます。 6 実践事例:DHLジャパンが体現する「全世代の働きがい」  DHLジャパン株式会社は、2025年版「働きがいのある会社」ランキングにおいてシニアランキング大規模部門と全従業員対象ランキングの両方で第1位を獲得しています。同社の根幹にあるのは「人への投資こそが最大の成果を生む」という信念です。代表取締役社長のトニー・カーン氏によれば、リーマンショック後の苦境においてもこの信念は揺らぐことなく積極的な人材投資を継続し、2010(平成22)年からわずか2年で多額の赤字から黒字へとV字回復を果たしました。「"People First"strategy(ピープルファーストストラテジー)」が成功の原動力となりました。  「健康で意欲があれば、その長年の経験は次世代にとってかけがえのない財産になる」という考えのもと、年齢による制限は原則設けておらず、65歳を超えて活躍を続ける社員も存在します。これらを支えているのが「DHL for ALL」というカルチャーです。性別や世代を分けるのではなく「全員にチャンスがある」ことを徹底する文化が、全世代の働きがいを同時に高めることを可能にしています。長年働き続けた社員が永年勤続表彰で称えられ、その姿が若手社員にとって「自分も将来こうなりたい」という将来像となります。トニー・カーン社長は「シニアランキングで表彰されたことは、シニア社員にとって誇りであると同時に、若手社員にとっても大きな喜びです」と語っています。世代を超えて互いを励まし合う好循環こそが、同社の強さの源泉です。 7 おわりに─シニア社員の「働きがい」が組織全体を強くする  シニア社員の「働きがい」を高めることは、シニア社員個人の問題ではなく、組織全体の競争力に直結する課題です。役職定年や定年後再雇用によって立場や役割が変わっても、「経験を活かして働ける」、「まだ必要とされている」と実感できる環境があれば、シニア社員は組織に大きな価値をもたらし続けます。そしてその姿が若手社員の希望となり、組織全体に好循環が生まれます。  少子高齢化が加速する日本において、シニア社員の「働きがい」を高めることは、もはや選択肢ではなく必須の経営課題です。世代を超えた相互学習と、だれもが公平にチャンスを持てる組織文化の醸成ーその挑戦を続ける組織だけが、これからの時代を生き抜く力を持つことができるでしょう。 図表1 働きがい=働きやすさ×やりがい GPTWの考える働きがい = 働きやすさ 快適に働き続けるための就労条件や報酬条件など 「働き方改革」の取組みの中心テーマ 目に見えやすい × やりがい 仕事に対するやる気やモチベーションなど 仕事そのものや仕事を通じた変化に起因するもの 目に見えにくい ※筆者作成 図表2 シニア社員と若手社員の双方向の学び合い シニア社員 経験・成功事例・失敗談 最新ツール・高効率ノウハウ 若手社員 ※筆者作成 【P11-14】 解説1 シニア社員の“働きがい”改革@ 制度設計の視点から 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー 石山(いしやま)大志(たいし) 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島(こじま)明子(あきこ) 1 背景(雇用の器はできているが、中身の設計が進んでいない)  労働供給制約、超高齢社会の到来が進むなか、 これまで必ずしも職場の第一線で活躍する人材とはとらえられていなかったシニア社員も、企業の中核戦力として位置づけられるケースが増えてきています。しかし実際には、経営層や周囲の従業員から「成長意欲が低い」、「仕事内容に対して給与が高いことに若手社員が不満を抱きやすい」といった話はよく語られます。本稿では、この問題を加齢の必然ではなく、制度設計の結果としてとらえ直し、シニア社員の活躍に向けた評価制度や働き方にかかわる制度・運用の考え方について整理します。  まず、シニア社員の雇用にかかわる現状として、厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」(2025年)によれば、65歳までの雇用確保措置の実施率は99.9%です。内訳は継続雇用制度65.1%、定年引上げ31.0%、定年廃止3.9%で、70歳までの就業確保措置も34.8%に達しました。高年齢者雇用安定法による「65歳までの雇用継続」に関する経過措置が2025年3月末で終了し、希望者全員の65歳までの雇用確保が全面義務化されています。  一方で、ミドル・シニア社員に着目した調査では、モチベーションや将来展望の低下が生じていることが示されています。例えば、株式会社パーソル総合研究所と法政大学石山(いしやま)恒貴(のぶたか)研究室による「ミドル・シニアの躍進実態調査」(2017〈平成29〉年)では、役職退任にともなう心理的変化として「仕事に対するやる気・モチベーションの低下」がもっとも多くあげられています。また、自身の「キャリアの終わり」を意識する転換点は平均45.5歳とされるなど、シニア社員となる前の早い段階から将来展望の低下が生じています。  これは、それぞれの企業においてシニア社員の活躍を引き出すための中身の制度設計が進んでいないことも要因ではないでしょうか。株式会社パーソル総合研究所「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」(2021年)では、定年後再雇用者の職務は半数以上が定年前と変わらないにもかかわらず、年収は平均44.3%低下しています。また、シニア社員向けの教育・研修は、半数の企業で「実施されていない」という結果です。雇用は継続されましたが、何をになわせ、どのように報い、どのように能力を伸ばすかという設計がなされていない実態が浮かび上がります。つまり、シニア社員の意欲低下の原因は、会社の制度面にあると考えることもできるのではないでしょうか。  本稿では、人事諸制度の設計の視点から、シニア社員の働きがい改革に向けた要点を説明します。つまり、「働きがい」施策は仕事の資源(仕事に向かう心身の健康やモチベーションなど)を増やすもの、「働きやすさ」施策は要求度を下げるものとして整理します。なお、要求度の観点では健康・お金などさまざまな要素がありますが、本稿では家族の介護という問題を念頭に置き、その不安・負担を軽減するために企業に求められる取組みを紹介します。 2 働きがい:評価制度をどう設計し直すか  企業の現場においても、既存の評価制度がシニア社員の活躍に向けてうまく機能していないという課題を耳にすることが多くあります。ここで、評価制度が機能しない理由を三つに整理しておきます。第一に、日本の評価制度は昇格・昇給を目的として設計されている場合が多いためです。シニア社員では管理職・従業員の双方がその意義を見出しづらく、制度そのものが形骸化してしまいます。第二に、役割が変わったにもかかわらず、評価の物差しが現役プレイヤー基準のまま据え置かれていることです。第三に、評価者が“年下上司”であり、心理的な負荷から「全員B(=平均水準)」に収斂(しゅうれん)しやすいことです。評価の精度以前に、評価をめぐる対話が成立していないという課題もよくみられます。  では、評価制度をどのように設計すればよいのでしょうか。一つめの方向性は、貢献類型選択型(複線評価)への改定です。貢献をプレイヤー型(現場の最前線に立ち、自身の技能や営業力などを活かして直接的に目標達成や売上げに貢献するタイプ)、エキスパート型(製造、技術、法務など特定の分野における高度な専門知識や豊富な経験を持つ「専門家」タイプ)、伝承・育成型、組織支援型などに類型化し、本人の選択に応じて評価ウェイトを変えることができるようにするものです。利点は、後進育成を全員に一律に課さずにすむ点にあります。教えることが得意でない人や、現役プレイヤーとして高い価値を出す人を無理に型にはめる必要がなくなります。設計上の要点は、各類型の処遇レンジを原則同水準に置き、類型が難易度の序列ではなく貢献の方向性を示すものだと明示することです。  二つめの方向性は、知の移転を成果物で測る方式です。「後進育成に貢献した」という測りにくい行動評価ではなく、技術標準書や事例集の整備、OJT実績に加え、後継者が独力でその業務を遂行できる水準に達したか(スキルマップ上の到達度、業務の属人化解消率)を評価軸の中心に据えます。ただし成果物の点数だけをおもな指標にすると、中身のともなわない文書が量産されるおそれがあります。そのため、作成物や内容の方向性については、事前にすり合わせを行うなどの注意が必要です。  加えて、制度そのものの改定以上に効果があるのが、運用ルールの見直しです。例えば、@期初の役割合意面談で期待を言語化して本人に伝えること、A年下上司向けの「年上部下マネジメント」研修を実施すること、B役職離脱時・再雇用移行時の面談を必須化することも考えられます。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の調査※1では、面談を実施していない企業ほど、役職を降りた後の「仕事に対する意欲」、「会社に尽くそうとする意欲」の低下が大きいことが示されています。制度を改定する前に、面談を義務化するという運用ルールに改定するだけでも効果が期待できます。  本稿では評価制度に着目していますが、その前提となる等級制度上においてキャリアの複線化を行うことができるかの検討を行うことも重要です。等級制度において複数のキャリアコースを明示し、本人が選び、上司と合意する手続きを組み込むということです。自己決定理論が示すように、同じ役割でも会社や組織が一方的に割り当てたものは動機づけにつながりにくいのです。  近年、役職定年制の導入企業は16.7%にとどまる※2など減少傾向にありますが、廃止後の受け皿となる職務や期待役割が曖昧なままでは、モチベーションを引き出しても活躍しづらい環境に移るだけです。役職定年制の見直しや廃止に際しては、評価制度をはじめとする制度や運用ルールの改定もあわせて行うことが求められます。 3 働きやすさ:介護の不安にどう対応するか  健康不安、介護負担、老後資金の見通しの欠如は、それ自体が動機づけ要因ではありません。しかし放置すれば、動機づけの仕組み自体が機能しなくなります。シニア世代は、体力の変化、親の介護、自身の老後の設計が重なる時期です。仕事の要求度を下げてから資源を積む。この順序を逆にした施策は従業員に響きません。  まず重視したいのは健康と安全です。休業4日以上の労災死傷者のうち、60歳以上が占める割合は3割近くに達しています。事故の型は転倒・墜落が中心で、女性の転倒リスクが特に高い状況です※3。改正労働安全衛生法に基づく「高年齢者の労働災害防止のための指針」が2026(令和8)年4月から適用され、60歳以上への労災防止措置が事業者の努力義務として位置づけられました。  ただし課題は、制度の不在ではなく、制度が届いていないことにあります。厚生労働省令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」(2025年)によれば、「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」の事業所の認知度は21.6%、実際に対策に取り組む事業所は18.1%にとどまり、認知度は前年から低下しています。まず自社の認知率と実施率を測ることが出発点となります。  次に重要になるのが“家族の介護”です。経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(2026年3月改訂)は、2030年に家族介護者が約318万人、経済損失は約9兆円に達すると試算しています。重要なのは、損失の大半が介護離職ではなく、働き続けている人の生産性低下(約27.5%)によるものだという点です。企業規模別では、大企業(製造業・3000人)で年間約6億2415万円、中小企業(製造業・100人)でも約773万円と推計されています。  仕事と介護の両立支援にかかわる法制度も整備されてきました。2025年4月施行の改正育児・介護休業法により、介護に直面した旨を申し出た労働者への個別周知・意向確認、介護に直面する前の早期(40歳等)の情報提供、研修・相談窓口設置等の雇用環境整備が義務化されました。介護は育児と違って発生の予測がむずかしく、当事者になってからでは遅いものです。直面する前に情報を届けることが立法の趣旨です。「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」のなかには、仕事と介護の両立の施策推進に向けての取組みステップ(14ページ図表)が示されていますが、取組みのポイントは制度の有無ではなく「いかにして社員の介護をオープンにしやすくするか」という観点です。制度を周知するだけでは、申告が評価上の不利益につながるのではないかという懸念が働きます。管理職研修、匿名の相談窓口、介護保険外サービスとの接続に加え、「仕事と介護の両立は自社の経営アジェンダである」、「介護をしていることが評価上不利にならない」というメッセージを経営層から発信することが必要です。  加えて、勤務制度と福利厚生の見直しも取組みに含めておきたい要素です。短時間勤務、選択的週休3日、時間単位年休、テレワーク、副業・地域活動の解禁は、健康・介護・学び直しのいずれにも効果があります。カフェテリアプラン(選択型福利厚生制度)についても、子育てだけではなく、介護・健康・リスキリングまで設計へ広げる視点が必要です。  ただし、これらをシニア社員専用制度として切り出すと、世代間の分断を招くおそれがあります。全社員向けの制度として設計し、結果としてシニア社員の利用率が高くなるという形が望ましいです。制度の名称に年齢を冠(かん)さないこと自体が、設計を行ううえでは重要です。 4 まとめ  ここまで働きがいと働きやすさの観点から、シニア社員の活躍に向けて取り組むべき事項を整理してきました。シニア社員が意欲を失い、時間を消化するだけの職場では、若手社員や中堅社員が自分の将来を職場のなかで描くことはむずかしいといえます。シニア社員の働きがい改革は、いまはシニア社員のためだけの施策ではなく、若手・中堅社員が自社の20年後をどう見るかという、組織の将来価値にかかわる経営課題です。また、人的資本開示における人材育成方針の説得力にも直結します。ミドル・シニア社員の活用に答えを持つことが、投資家からの高い評価を獲得するうえでは重要だといえます。 ※1 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構『65歳定年時代における組織と個人のキャリアの調整と社会的支援 ―高齢社員の人事管理と現役社員の人材育成の調査研究委員会報告書―』(2018年) https://www.jeed.go.jp/elderly/research/report/elderly/65career_chousei.html ※2 人事院「令和5年民間企業の勤務条件制度等調査」(2024年) ※3 厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」(2026年) 図表 企業における仕事と介護の両立支援の実施ステップ 全企業が取り組むべき事項 STEP 1 経営層のコミットメント 仕事と介護の両立支援において全社的に取り組む意向を示す 経営者自身が知る 「介護」を知り、企業活動への影響の可能性を認識しているか? 経営者からのメッセージ発信 仕事と介護の両立施策推進に向けて、ポリシーを発信しているか? 推進体制の整備 担当役員設置/担当者の指名、管理職層の巻き込みができているか? STEP 2 実態の把握と対応 組織内での仕事と介護の両立における影響・リスクを把握し、対応 アンケート・聴取※2 介護休業取得・介護両立支援制度等の利用事例を収集・提供できているか※2? 実態把握の結果をまとめて、全社の共通認識のために、社内周知ができているか? 人材戦略の具体化 介護を行う従業員が活躍できるよう 人材戦略を設計できているか? 適切な指標の設定 仕事と介護の両立支援に関して適切な指標を設定できているか? 両立支援制度の策定 社員の実情に合った社内制度を構築し、利用促進に関する方針を策定できているか? STEP 3 情報発信と雇用環境整備 企業がプッシュ型の情報発信を行うことで、従業員個人の将来的なリスクを低減 基礎情報の提供・方針周知 介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、法定の方法・内容で、情報提供できているか※1? 介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針を周知できているか※2? 研修の実施※2 管理職層を中心に両立支援推進に関する研修の機会を提供できているか? 相談窓口の設置・周知※2 社内での相談先等を社員向けに明示的に周知できているか? 個別周知・意向確認※1 介護を申し出た社員に対する制度の個別周知と意向確認ができているか? + 企業独自の取組の充実 企業の実情・リソースに応じて検討・実施 ※自社単体で実施が困難な場合は、外部リソースの活用も検討 人事労務制度の充実 法定義務を超えた介護休暇・休業制度、福利厚生による経済的な支援 等 労働環境の充実 テレワーク等を選択可能にする※3といった柔軟な働き方 業務改革による長時間労働の是正 等 個別相談の充実 外部の専門家設置 1on1、人事部・管理職との三者面談 等 コミュニティ形成 精神的負担を軽減するため、介護経験者 同士による対話の場づくり 等 効果検証 各施策の実施効果について、KPI達成状況等を踏まえた検証 外部との対話・接続により、両立支援を促進 外部への発信と対話による企業価値向上 顧客・投資家・従業員家族・将来の従業員候補等のステークホルダーへの発信と対話 地域と連携した両立体制構築 自治体や企業等が提供する介護資源へのアクセス ※1:R7育介法改正で義務化された項目 ※2:R7育介法改正でいずれか義務化された項目 ※3:R7育介法改正で努力義務化された項目 出典:「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」図表17.企業における介護両立支援の全体像(経済産業省) 【P15-17】 解説2 シニア社員の“働きがい”改革A キャリア形成支援の視点から 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長 宮島(みやじま)忠文(ただふみ) 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島明子 1 なぜシニア社員のキャリア形成支援が進まないのか  シニア社員のキャリア形成支援が思うように進まないという問題を考えるうえで知っておかなければいけない大きな原因として、「キャリア自律」という概念が理解されにくいことがあげられます。「キャリア」という言葉が聞き慣れていることから一見わかった気になるものの、じつは共通認識が持たれていないことも理解阻害の要因となっています。  厚生労働省「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書(2002年)※1によれば、「『キャリア』とは、一般に『経歴』、『経験』、『発展』さらには、『関連した職務の連鎖』等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉とらえられる」と述べられています。  その定義をふまえて、当社(株式会社社会人材コミュニケーションズ)では「仕事における、志を実現するための未来を創るプロセス」として、キャリア開発の視点からより未来志向の概念と定義しています。「いまさら変えられない」ではなく「自分の未来を変えていく」という未来志向であることの認識が必要であると考えています。  次にキャリア自律についてですが、キャリア自律とは、1990年代半ばに米国で提唱された概念です。Waterman, Collard, & Water man(1994年)によれば、自らのキャリアを管理する責任は社員本人にあり、企業には社員にキャリア開発の機会を提供する責任があるとされています※2。  キャリア自律とは、あくまで社員個人がキャリアを主体的に考えて、開発していくことですが、企業としても環境を整備する必要があると考えます。その理由としては、組織としても競争力を高めていく必要性が求められることにあります。  競争力を高めるためには社員のモチベーションや主体性を高めることが必要ですが、キャリア自律はこれらに大きな影響力をおよぼしています。  シニア社員のモチベーション低下のきっかけとしては、組織内での昇進や昇格に対する行き詰まり感や、役職定年、加齢などがあげられます。しかし、現場で一番の原因として感じるのは、「キャリア自律」に対する意識の低さがあげられます。「キャリア自律」といわれても、そもそも自分のキャリアを考えたこともない、考える機会がなかった人が大多数なのです。  「キャリア自律」に対する意識が高い人の多くは、「失職の危機に直面するような困難な経験」を経験しています。例えば、「健康面でこの先の人生がないかもしれない」、「企業の倒産の危機などに直面した」といったケースです。こういったことを自身が直接経験したこともあれば、近しい人が直面したことを目の当たりにしたこともあげられます。  仕事を失うかもしれない、極端にいえば命を失うかもしれないという経験をした人が、自分の生きざま(キャリア)を意識している傾向があります。さらに、そのようなことに加えて、自身の進路について意思決定をしてこなかった点(意思決定のあきらめ感)、プロとしての業務レベルに疑問を感じることがなかった点、すなわち、キャリアのあり方を考えるきっかけがなかった点もあげられます。  このようなことが起こる最大の原因は流動性の問題ですが、ここでいう流動性とは、単に転職や異動を意味するものではなく、自らの意思で仕事を選択・獲得していく機会をさします。同じ仕事を続けることに問題はありませんが、重要なことは職務決定の際に自身で決められる機会と自己決定がともなうことです。そのような機会がなかったことは、シニア社員の「キャリア自律」に対する意識の低さにつながっているのです。 2 キャリア形成支援策の前提となる条件  先の通り、企業が支援を進めていく必要性があり、多くの企業ではすでにさまざまな支援策を導入していますが、その意図が社員に十分伝わっていないことが大きな課題となっています。シニア社員側にヒアリングを行うと、企業の行っているキャリア形成支援策の意図が伝わっていないことが見えてきます。  各企業は施策をいろいろ行っていますが、社員から見て企業のメッセージは伝わっていないのです。もちろんこの原因は企業と社員のどちらか一方にあるというものではありません。どうしてもミドル・シニア社員側から人事の施策を見ると「肩たたき」と解釈する人も多いようです。実際、研修中に、「要するに会社を辞めろということですよね」と研修の目的について聞いてくる方が多くいます。そのため、毎回、当社では「より活躍していただきたいため」と説明している状態です。  このように「ミドル・シニア向けの制度や施策に対する会社の目的やビジョンを理解しているか」というと、「理解できている」層よりも「理解できていない」層のほうが多い状況です(図表1・2)。きちんと目的が伝わっていないと施策は有効性が低くなります。企業のメッセージが、ミドル・シニア社員に歪んでとらえられることにむずかしさがあります。応援をしているのに、退職勧奨ととらえてしまう人もかなりいるので、理解できているのは少数派というところです。  ゆえに、まずは社員にキャリアマネジメントの意義の理解を浸透させていくことが必要です。  そのためには2段階で考える必要があります。まず一つめはキャリア研修のように「ふだんの業務から離れて」自身のキャリアを考える場を設けること、二つめは考えたキャリアの方針を実践する場を設けることです。実践する場とは自身で部門の異動先を示すことができ、実際にも異動できる可能性のある仕組みです(公募制・ジョブポスティング・社内副業制度など)。もちろん個人の希望のみならず企業の戦略と合致している必要があります。 3 今後求められるキャリア研修の視点  最近では大企業を中心に、少しずつではありますが、シニア社員を対象としたキャリア研修(キャリア自律研修・キャリアマネジメント研修)を行うようになっています。  実際に当社が研修を行っている企業の方々からも、「ビジネスモデルを深化させ続けるために社員にもキャッチアップしてもらいたい」、「年齢も高いので緩やかに仕事をするという姿勢ではなく進化を続けてもらいたい」、「なかなか社員が積極的に仕事に取り組まない」、「優秀な社員ほど離職してしまう」、また、「社員の学び続ける態度が弱い」というようなご相談を受けています。  しかしながら、こういった背景から多くの方がキャリア研修を受講されているのですが、実践的な場面、例えば職業紹介の現場やプロボノ(プロフェッショナルとしてのボランティア)では、はたしてどこまで役に立っているのか疑問に思われる方も多く見受けられます。具体的には、「研修を受けて目標や計画は書いたが、ふだんの仕事では使っていない」、「なんとなくやる気になったが、その先はどうしていいかわからない」といった声を耳にします。  独立行政法人労働政策研究・研修機構「企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題」(2023年2月)のなかでも、プログラム内容は「キャリアに関する講義」が中心となっており、「環境変化や役割変化等に関する講義」を実施しているところは少ないことが明らかになっています。そのため、キャリア研修では、講義のみではなく、自身が主体的に考える場としていくこと、加えて、ふだんの業務で使えるレベルの行動指針の策定までの粒度が求められます。 4 まとめ  本稿では、キャリア自律が進まない背景と、企業がキャリア自律を考える環境整備の必要性やその考え方について述べました。今後、生産年齢人口減少下の日本社会において、「雇ってあげる」ではなく、「稼いでもらう」という視点で、シニア社員に対するキャリア形成支援を行う企業が増えることを期待しています。 ※1 厚生労働省「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会報告書」(2002年) https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/07/h0731-3a.html ※2 堀内泰利・岡田昌毅(2009年)「キャリア自律が組織コミットメントに与える影響」『産業・組織心理学研究』23(1),15-28 図表1 ミドル・シニア社員向けの制度や施策に対する会社の目的やビジョンを理解していますか 十分理解できている 25.3% 十分には理解できていない 33.3% 理解できていない 10.7% 認識していない 8.0% 目的やビジョンは存在しない 22.7% 資料提供:株式会社社会人材コミュニケーションズ 図表2 現在、あなたは会社から期待されていると感じますか 大いに感じている 0.0% 感じている 38.7% 普通 29.0% あまり感じていない 22.6% 全く感じていない 9.7% 資料提供:株式会社社会人材コミュニケーションズ 【P18-20】 解説3 シニア社員の“働きがい”改革B マネジメントの視点から 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 宮下(みやした)太陽(たいよう) 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島明子 1 シニア社員が活躍しやすい組織風土の醸成  シニア社員が能力を発揮し、活き活きと働ける環境を整備するためには、組織風土の醸成が求められます。解説2でも述べた通り、シニア社員向けの制度や施策を行う会社側の目的やビジョンを経営層などからシニア社員に伝え、理解してもらうことが重要です。さらに現場のマネジメントとしては、シニア社員が働きやすい組織風土を整える役割が求められます。  サイボウズ株式会社サイボウズチームワーク総研「シニア社員の職場との関わり」についての意識調査※1のなかでは、職場のなかで「気軽に話しかけてほしい」シニア社員は8割にのぼり、「年齢や上下関係を気にしてほしい」シニア社員は約4割弱です。働くシニアにとっては、年齢に対して過剰に配慮されることより、むしろ、対等に接してもらうことを求めているといえます。  一方では、年齢が離れたシニア社員と若手社員が分け隔てなく働くというのは簡単ではないという見方もあります。一般財団法人企業活力研究所の調査※2のなかでも、若手・ミドル層がシニアと仕事をすることでデメリットと感じることとして、「過去の経験に固執している」(56.7%)、「柔軟性に欠ける」(49.4%)、次いで「事務的な仕事を自分でやろうとしない」(37.2%)があげられています。  特に、昨今は、成果主義の職場も増えたことで現役世代は精神的な余裕がなく、「スキルや経験内容が見えづらいシニアの人とどのように一緒に働いてよいかわからない」、「尊敬できるところが少ない」といった現場の声も耳にします。まずは、シニア社員の意欲低下を防ぐコミュニケーションのとり方や、若手社員との間のコミュニケーションギャップが生じないような配慮、世代を問わずお互いが尊重し合える職場風土の醸成が、マネジメントの役割として求められているといえます。そのことは、結果として、シニア社員の心理的安全性を高めるとともに、若手社員にとっても、年を重ねても長く働き続けたい職場として定着率向上につながると考えます。 2 シニア社員の活躍をうながす働き方  シニア社員が年齢を問わず、意欲高く働けるためには、個人がいくつになっても責任ある仕事を任せられることが大切です。働き方の多様化や人材育成の視点から、最近では、副業・兼業の解禁や、希望に応じて他部署の仕事を兼任できる制度を設けている企業も出てきています。シニア社員が増える日本企業にとってこうした制度は、プロジェクト単位の柔軟な働き方を実現し、その専門性を活かす職場づくりにつながります。  プロジェクト型の働き方であれば、プロジェクトのリーダーと組織のリーダーは別であり、フラットな働き方が可能であることから、役職や肩書きの価値よりも、専門性の方が重視されます。  日ごろから同じ部署の同じメンバーに限定せず、社内のさまざまな部署や、社外の人材を交えてプロジェクトベースで仕事を行う習慣を持つことができることは、年齢にとらわれず、多様な人材とのコミュニケーションを通じ、多様な価値観を受け入れる訓練にもつながります。  2021(令和3)年4月に施行された、改正高年齢者雇用安定法の70歳までの「就業確保措置」(努力義務)のなかには、高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入が含まれています。定年前であっても、社員自身の自由意志に基づき、雇用契約を解消し、業務委託契約に切り替える制度を導入している企業も出てきています。プロジェクト単位の働き方を通じて、社外からの人材を受け入れる仕組みをつくることは、フリーランスへ転換した元シニア社員との仕事もしやすくなり、シニア社員のセカンドキャリア支援にもつながります。  シニア社員の活躍を促進するためには、プロジェクト単位での働き方をはじめとしたシニア社員自身が有する経験や専門性を活かし、フラットな働き方が可能な環境づくりが重要だといえます。 3 シニア社員の活躍を支える上司の役割  シニア社員の働きがいを考える際、上司が陥りやすいのは、シニア社員を「配慮の対象」としてのみとらえてしまうことです。もちろん健康や介護との両立などへの配慮は不可欠です。しかし、配慮だけが前面に出ると、本人は「もはや自分には何も期待されていない」と受けとめてしまうことがあります。  働きがいの源泉は、自分が必要とされているという実感です。役職定年や再雇用によって立場が変わったとしても、経験や知見まで失われるわけではありません。上司には、シニア社員を守るべき存在として扱うのではなく、チームに貢献する期待役割を持つ人材として位置づけ続ける視点が求められます。  その際にカギとなるのが、「自己効力感」です。 自己効力感とは、「自分にはできる」、「自分は貢献できる」という感覚をさします。シニア社員の活躍支援というと研修やキャリア面談が注目されがちですが、それだけで自己効力感は高まりません。欠かせないのは、本人が持つ経験や強みが職場で活かされ、それが成果につながる実感を得られることです。  例えば、顧客との関係構築、現場でつちかった判断力、トラブル対応の知見など、シニア社員ならではの強みは数多く存在します。上司は、それらを単なる「支援業務」として曖昧に任せるのではなく、チームに必要な役割として明確に位置づける必要があります。「何を期待しているのか」を言葉にして伝えることが、自己効力感を高める第一歩になります。  株式会社日本総合研究所のプロアクティブ行動に関する調査※3では、自己効力感や集団的効力感が主体的な行動をうながし、その結果として成果につながることが確認されています(20ページ図表)。特に自己効力感は、個人の主体的な行動を強力に後押しするエンジンとして位置づけられています。さらに注視すべきは、一人の主体的な行動が刺激となり、チーム全体の主体的な行動や協働を引き出していくという波及効果です。  もっとも、個人の自己効力感だけでは十分ではありません。個人が「自分にはできる」と感じていても、職場全体に停滞感やあきらめの空気が漂っていれば、その意欲は持続しません。だからこそ必要となるのが、「集団的効力感」です。  集団的効力感とは、単に職場の雰囲気がよい状態ではありません。メンバー同士が互いの強みを理解し、「このチームなら目標を達成できる」という確信を共有している状態をさします。調査でも、集団的効力感がチーム全体の主体的な行動を活性化させる重要な要因であることが示されています。  とりわけ現在の職場では、異なる経験や価値観を持つ人材同士の協働が求められています。若手社員が持つ新しい発想やデジタル技術などの知見と、シニア社員が持つ経験知や現場感覚が結びついたとき、新たな価値創造が生まれます。シニア社員は単なる知識伝承のにない手にとどまらず、組織変革を支えるパートナーでもあるのです。  上司に求められるのは、既存業務の分配に終わらせず、世代を超えた協働機会を意図的に設計し、新たな職域や役割を開発していくことです。例えば「若手社員の新規開拓への同行アドバイザー」や「部署横断の業務改善推進」など、シニア社員の強みが活きる場をつくり、そこで生まれた小さな成功を「チーム全体の成果」として承認・共有していく。こうした体験の積重ねが集団的効力感を育み、組織全体の挑戦意欲を高めていきます。  シニア社員の働きがい改革とは、本人だけの問題ではありません。上司がシニア社員を期待役割を持つ主体としてとらえ、若手社員との協働による新たな職域をひらくことによって個人の自己効力感が高まり、チームの集団的効力感へと波及していきます。シニア社員を起点とした価値創造のサイクルを回せるかどうかに、これからのマネジメントの成否がかかっているといえるでしょう。 4 まとめ  本稿では、シニア社員の活躍の土台となる組織風土を醸成することが必要であり、シニア社員自身が専門性や経験を活かせるプロジェクト単位での働き方の提案を行いました。さらに、シニア社員を支える上司の役割としては、シニア社員個人の効力感、さらにはシニア社員が所属するチームとしての集団的効力感の向上を図ることが重要です。生産年齢人口減少下の日本においては、シニア社員比率が組織内で多くを占める企業は増えていく可能性がありますが、適切なマネジメントを通じて、シニア社員を組織の価値向上につなげられる成功企業が増えることを期待します。 ※1 サイボウズ株式会社サイボウズチームワーク総研「シニア社員の職場との関わり」についての意識調査(2021年) https://teamwork.cybozu.co.jp/blog/seniorworker1.html ※2 一般財団法人企業活力研究所「シニア人材の新たな活躍に関する調査研究報告書」(2012年3月) https://www.bpfj.jp/cms/wp-content/uploads/2020/04/「シニア人材の新たな活躍に関する調査研究」全文.pdf ※3 株式会社日本総合研究所『2025年度版プロアクティブ行動に関する調査結果』(2026年) https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2026/0317.pdf 図表 プロアクティブ行動を中核とする成果創出モデル 階層1 プロアクティブ行動を促進する要因 自己効力感 フォロワーシップ 上司リーダーシップ@(倫理型) 上司リーダーシップA(人的資本持続型) 集団的効力感 上司リーダーシップB(変革型) 職場環境(報酬) 階層2 成果を創出する要因 職場環境(教育) ワークエンゲージメント 個人プロアクティブ チームプロアクティブ 心理的安全性 上司リーダーシップC(包摂型) 階層3 成果 個人成果(実績) チーム成果(実績) チーム成果(展望) 出典:株式会社日本総合研究所「2025年度版プロアクティブ行動に関する調査結果」(2026年)に基づき著者作成 【P21-23】 事例 一人ひとりの裁量を尊重する経営が年齢を問わず社員の働きがいを引き出す 株式会社横引(よこびき)シャッター(東京都足立区) 特殊シャッターの専門メーカー  株式会社横引シャッターは、1986(昭和61)年に東京都足立区綾瀬で創業した、各種シャッターの設計・製造・施工・販売までをトータルで手がけるメーカーである。上げ下げ式が主流だったシャッターを横に引けるよう開発し、「上吊(うわづ)り式横引きシャッター」で特許を取得した。同社の製品は、駅の売店やビルのテナントなどで広く使われている。2025(令和7)年度には、この横に引くシャッターでグッドデザイン賞を受賞した。  社員数は35人(2026年8月現在)、そのおよそ半数を60歳以上が占めている。同社は2021年に定年を70歳へ引き上げ、70歳以降も、希望者全員を年齢上限なく正社員として継続雇用している。年齢によって給与を下げることはなく、技術の習得や経験に応じて随時昇給する制度も設けているほか、短時間勤務制度など、社員一人ひとりが働きやすい形を選べる柔軟な働き方ができる仕組みを整えている。 年齢ではなく成果で見る  市川(いちかわ)慎次郎(しんじろう)代表取締役社長は、社員の働きがいを高めるため、「社員が楽しく働けるかどうか」を重視している。その背景には、社員を「社長の分身」ととらえる考え方がある。  「社員は社長の分身です。たとえ社長がやりたいことがあっても、一人ではできません。営業をする人、設計図を書く人、設計図をもとにつくる人がいて、全員が社長の代理です。その分身である社員一人ひとりが楽しく働けることが何より大切です。楽しくないと前向きに仕事はできないし、それが仕事の質にもつながります。だからこそ、できるだけ楽しく働けるよう、何をすればよいかを考えることが大切です」(市川社長)  少数精鋭の同社が全国の現場に対応できるのも、社員一人ひとりが楽しく前向きに働けているからこそだ。  この考え方は、高齢社員の活躍にも通じている。  「社員の年齢はほとんど意識していません。会社としては、仕事でしっかり力を発揮してもらえれば、それでよいと考えています。きちんと成果につながっているなら、年齢や性別や国籍で差をつける意味がありません」(市川社長)  長年の知識と経験を持つ高齢社員は、設計上の難題を投げかけると解決策を示すことができ、市川社長にとっても、若い社員たちにとっても頼れる存在だという。一方で、市川社長は高齢社員を「お客さま扱い」せず、戦力として期待していることを本人に直接伝えている。  「例えば、『もう年だから、あと何年働けるかわからない』など、ネガティブなことを口にする高齢社員がいれば、『すぐに代わりの人材を手配するので直接いってほしい』という話を日ごろからしています。私自身は年寄りだとは思っていないですし、頼りにしているのですから。そのうえで、『そろそろ引退の時期かと感じたら、半年〜一年前には話してほしい』とも伝えています。そうした場合は、後進を育ててきちんと引き継ぎをして、本人も周囲もみんなが安心できるように会社が準備を行います。それまでは代わりはつくりません」(市川社長)  厳しさのなかにも配慮が感じられるなど、高齢社員が安心して働き続けられる仕組みを整えている市川社長。さらに最近あったできごとを紹介してくれた。  「70代のある社員が、正社員として働き続けることに負荷を感じ始めていたのです。そこで本人と話し合い、いったん正社員を退いてもらうことにしました。今後の働き方については、まさにこれから本人と相談をしながら決めていくところではあるのですが、話合いの時間を設けて以降、本人の表情が明るくなったのです。年齢と正社員という立場の間で、自分にプレッシャーをかけすぎて、体が思うように動かなくなり悩んでいたのだと思います。不安が解消したことで、いまは楽しく働けているそうで、見ていても明るさがまったく違います」  こうした職場は、市川社長が時間をかけてつくってきたものである。その根底にあるのは「餅は餅屋」という考え方だ。社長は方向性を示すが、それをどう形にするかは各分野の担当者に委ねる。とりわけ長年の経験を積んだ高齢社員には、その知識と判断を信頼して進め方を任せる場面が多い。こうして一人ひとりの裁量を尊重する職場で、高齢社員は日々どのような働きがいを感じているのか。ベテラン3人に話を聞いた。 現在も第一線で活躍する高齢社員  設計室で働く山やま下した光こ う一いちさん(77歳)は、72歳で入社し、週3日勤務を続けている。ゼネコンでの現場監督、鉄板類の専門商社、住宅メーカーの管理技術者などを経て、ハローワークを通じて同社に入社した。シャッターの設計自体は入社後に初めて経験をしたそうだが、それまでの経験を活かせる仕事であり、即戦力として受け入れられたことが働きやすさにつながっているという。  働きがいについて、山下さんは独特の表現で語る。  「年を取ったら『きょういく』と『きょうよう』が必要だ、とよくいわれます。『きょういく』は『今日行くところ』、『きょうよう』は『今日用事がある』という意味です。仕事があれば、それが今日行くところと今日の用事になります。何より、楽しく働けていることが大きいですね」  週3日という働き方が無理のないリズムをつくっており、まとまった休みが必要な場合は、勤務日を調整することで、海外・国内を問わず趣味の旅行に行くなど、仕事と余暇のバランスを保ちながら働いている。本人が選べる柔軟な勤務形態が、こうした等身大の働き方を支えている。  同じく設計室勤務の金井(かない)伸治(しんじ)さん(84歳)は、同社の最高齢者。76歳で入社し、現在も、自宅から電車で片道1時間かけて通勤している。  金井さんの働きがいは、仕事そのものの奥深さにある。  「設計で使うCADは長く使っていても、わからないことがたくさんあり、奥が深いです。設計案を詰めていくとわからないところが出てくるので、いろいろと調べながら、クリアしていくのが楽しいですね。ソフトも進化していますし、それに合わせて自分も進化しているつもりです。まだまだできないことがあるので、それがかえっておもしろく、働きがいとなっています」(金井さん)  また、文字通り「社員の夢」を応援するために社長が企画した「夢を叶えるプロジェクト」の第一号として、あこがれだったポルシェをサーキットで運転する機会も得た。かつて同社には94歳まで働いた先輩の職人もおり、金井さん自身も、まだまだ現役で働く意欲があり、「少なくともあと2年、入社10年目までは続けたい」と話す。  営業部の白山(しらやま)康志(やすし)さん(67歳)は、53歳のときに同社に入社した。異業種からの転身だったが、現在は頼りになるベテラン営業担当として、若手・中堅社員を支えている。  少人数の組織のため、社員一人あたりが担当する業務の幅は広くなるが、白山さんはそれが働きがいにつながっているようだ。  「人数が少ない分、一人の責任範囲は広くたいへんですが、その分、自分の裁量で仕事をする自由があります。人数が少ないからか、営業担当同士がライバルという感覚もなく、みんなで売上げを上げることができればよいというスタンスで、働きやすい環境だと感じています」(白山さん)  同社はオーダーメイドで製品をつくるため、現場ごとに寸法や形状、設置場所が異なる。白山さんは「現場ごとに条件が異なるので、過去のやり方がそのまま通用するわけではありません。その分おもしろさがあります」と語る。 手ごたえは社員自身が見いだす  3人が語る働きがいは、仕事があることの張り合い、業務の奥深さ、案件ごとの違いなど、それぞれ内容が異なる。共通しているのは、成果を出すかぎり年齢に関係なく戦力として扱われ、自分の裁量で働ける環境から生まれている点である。会社側が意図して「やりがい」を与えたというより、社員が日々の業務のなかで自ら手ごたえを見いだしている。小規模な企業だからこそ可能な、一人ひとりに応じた働きやすさの追求が、こうした年齢を問わない働きがいにつながっている。 写真のキャプション 市川慎次郎代表取締役社長(写真提供:株式会社横引シャッター) 72歳で入社、設計室の山下光一さん(写真提供:株式会社横引シャッター) 76歳で入社、設計室の金井伸治さん(写真提供:株式会社横引シャッター) 53歳で入社、営業部の白山康志さん(写真提供:株式会社横引シャッター) 【P24-29】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 第5回 企画立案サービスを活用しよう! 〈前回のあらすじ〉 社長の指示により、高齢社員が長く働ける職場づくりを推進することになったLDer金属株式会社。自社の課題や今後の対応についてまとめられた提案書をプランナーから受け取ったが…。 ※経費負担やサービス利用の流れは2026(令和8)年9月現在の取扱いです。また、企画立案の内容により支払限度額と負担額が異なります。 詳細については、JEEDホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/employer/plan_services.html ★このマンガに登場する人物、会社等はすべて架空のものです ★前回(2026年8月号)は、JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202608/index.html#page=28 つづく(10月号、11月号は休載します) 【P29】 解説 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 第5回 企画立案サービスを活用しよう!  JEEDでは、高齢者雇用に取り組む事業主の方へのさまざまな支援を行っています。その中心として活動をしているのが、「70歳雇用推進プランナー」です。高齢者雇用のプロフェッショナルである70歳雇用推進プランナーが、その知識や経験、実務上のノウハウを活かし、高齢者雇用に悩んでいる事業主のみなさまをサポートしています。 ◆「企画立案サービス」とは  高年齢者の雇用管理改善や生涯現役社会の実現に取り組む事業主などに対して、70歳雇用推進プランナー(または高年齢者雇用アドバイザー)による相談・助言の過程で明らかになったさまざまな課題について、必要な条件整備(人事管理制度の整備、賃金・退職金制度の整備、職場改善・職域開発など)のための具体的な改善案を作成し提供します。 ◆利用方法と手続き  JEED各都道府県支部と事業主の間で依頼内容について取りまとめた確認書を取り交わしたうえで、依頼内容に基づく企画立案の実施に最適な70歳雇用推進プランナー(または高年齢者雇用アドバイザー)を選任し、企画の立案および提案を行います。 ◆企画立案サービスに係る経費  経費はJEEDと事業主がそれぞれ2分の1ずつを負担します。 企画立案の内容 最高限度額 事業主負担分 基礎的なもの 100,000円 (2分の1)50,000円 企画立案に時間を要するもの 200,000円 (2分の1)100,000円 (注)企画立案に相当時間を要するもの 300,000円 (2分の1)150,000円 上記(注)よりさらに時間を要するもの 要相談 相談のうえ決定した額の2分の1を負担していただきます ※上記は、2026(令和8)年9月現在の内容です。詳細については、JEEDホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/employer/plan_services.html 【P30-31】 文化・福祉ジャーナリスト ア井(さきい)将之(まさゆき) 江戸時代にもあった 「仕事と介護の両立問題」 〜目からウロコの高齢者介護史〜 第4回 江戸時代以前、高齢者が要介護状態になった原因とは ―現代と江戸時代を比べてみたら― 現代の要介護となる原因は認知症や脳卒中  これまで、武士が介護休業を取得していたこと、そして武士・庶民を問わず、男性が積極的に老親介護に取り組んでいたことなど、介護をする側の立場から江戸時代の介護事情について見てきました。そこで今回は視点を変えて、介護を受ける側、江戸時代以前の要介護状態について取り上げてみたいと思います。  ではまず、昔と今とを比べるためにも、現代において要介護状態になる原因を見ておきましょう。2026(令和8)年現在の日本の介護保険制度では、高齢者が病気やケガによりどのくらいの介護が必要となったかを識別するための「要介護度」という基準が設けられています。「要支援1〜2」、「要介護1〜5」という七段階に分けられていて、要支援1がもっとも軽度で、要介護5が日常生活のほぼすべてで介護が必要でほぼ寝たきりの状態です。そして介護する側の負担が大きくなるのは通常「要介護3以上」といわれており、公的介護施設である特別養護老人ホームも、入居基準は原則として要介護3以上と定められています。もし老親が要介護3以上の要介護度になった場合、介護する側の子どもとしては「介護をどうするか」の問題が深刻化し、介護離職するかどうか、といったことも現実味を帯びてくるわけです。  厚生労働省が毎年実施・公表している『国民生活基礎調査(2025年版)』によると、「要介護3以上」の高齢者が要介護状態になった原因の一位は、要介護3と4ではどちらも「認知症」が最多で、要介護3では全体の23.3%、要介護4では全体の21.6%を占めていました。一方、ほぼ寝たきり状態に近い要介護5の場合、原因の一位は「脳血管疾患(脳卒中)」で全体の27.6%となっています。  そして要介護となる原因として二番目に多かったのは、要介護3と4はどちらも「脳血管疾患(脳卒中)」で、要介護3では全体の18.8%、要介護4では15.2%でした。要介護5の原因の二番目は「認知症」の23.8%です。  まとめますと、介護負担が大きい要介護3以上の原因疾患として特に大きいのは「認知症」と「脳血管疾患(脳卒中)」の二つといえそうです。この二つの疾患で要介護3と4は約四割、要介護5では過半数に達しています。ちなみに要介護になる原因で三番目に多かったのは要介護3と4は「骨折・転倒」、要介護5は「高齢による衰弱」でした。 江戸時代に要介護となる要因は?  江戸時代には当時の国民全体を対象とするような調査はさすがに行われてはいませんが、それに近いデータはあります。それは前回も取り上げた『孝義録(こうぎろく)』の表彰事例を探るという方法です。少しおさらいしておきますと、『孝義録』とは幕府・藩が領内の「善行者」を身分に関係なく表彰するという制度・慣習で、その善行のなかには「孝行」も含まれ、老親への介護行為も対象となっていました。そんな『孝義録』の一つである仙台藩が編纂(へんさん)した『仙台孝義録』では、庶民500件、武士64件の計564件の表彰記録が残され、そのうち親等への扶養・介護が行われている事例は418件にも上っています。  『孝義録』では、項目や数字が羅列されているだけではなく、なぜ表彰されたのかの内容も事例として細かく記述されています。それを見ることで、どんな病気・疾患の者をどのようにケアしたのかの把握も可能です。では、『仙台孝義録』においては、要介護者の疾病・障害の種類として最多だったのは……なんだと思われますか?  もしかしたらピンときた人もいるかもしれませんが、「目の病気」です。418件中、「盲目・失明」は50件、「眼病」が15件を占めて最多でした。江戸時代当時、現代であれば眼科ですぐに治療できる白内障(はくないしょう)への有効な治療法がなく、それで目が不自由になるケースが多かったようです。一応、目に鍼(はり)を刺すという施術法での対応もされてはいたものの、費用がかかるうえに施術しても確実に治るというわけでもなく、簡単に完治できる現代とは状況が大きく違っていました。幕府が全国各地の善行者の記録を集めて編纂した『官刻孝義録』にも、親が失明してそれをケアする子どもが孝行者として表彰されているケースは多く記録されています。  続いて二番目に要介護になる原因として多かったのは、「中風(ちゅうぶ)」の49件でした。中風とは現代でいう脳血管疾患(脳卒中)のことです。現在であれば手術により完治が期待できるような症例であっても、当時は命にかかわったり、麻痺(まひ)が後遺症として残ったりしやすかったと考えられます。『官刻孝義録』でも親が中風で倒れたという事例は多く、その一例として、中風で倒れた母親を、「郷横目(ごうよこめ)」という役人としての仕事や農事で忙しいなかでも懸命に介護して表彰された「越後国(えちごのくに)・七郎右衛門(しちろううえもん)」の記録などがあります。  江戸期の要介護状態になる要因として目の病気、中風とみてきましたが、現代で原因の最上位に位置していた認知症はどうなのかというと……じつはランク外です。というのも、当時は認知症のことは「呆(ぼ)け」、「耄(もう)」などといわれ、何か特別な原因疾病があるとは考えず、「老いればだれでも起こること」のような一般的な症状として扱われる面があったようです。ですので、認知症の症状のみが出ている老親をケアしている場合だと、表彰対象者として認識されるケースが少なかったとも考えられます。  ただ、認知症と思われる症状の記録は残っており、『官刻孝義録』でもそれらしき症状が出ている老親介護のケースがみられるほか、江戸期の随筆を集めた『随筆百花苑(ずいひつひゃっかえん)』には、次のような記載があります。  追ヽ老毛(おいおいろうもう)して、…朝飯をあがりてすぐさま飯をくわせよといふ。ハイといふて膳を出ス。食仕舞少し過て又飯をくハせよといふ。  (しだいに老いほうけて、……朝食の後すぐに「飯をくわせろ」という。「ハイ」といって膳を出す。食べて膳を片付けるとまた「飯をくわせろ」という。)  現代でも、「何を食べたのかを忘れる」のは物忘れ、「食べたこと自体を忘れる」のは認知症とよくいわれますが、これはまさに典型的な認知症の症状といえます。ほかにも江戸時代の儒学者・新井白石(はくせき)が、彼の父親から認知症について詳しく教えてもらったことを書き残しているなど、認知症の痕跡のようなものは当時の史料から多く散見できます。まとまったデータはないものの、認知症の発症者は江戸時代から相当数いたようです。 【参考資料】 ・ア井将之 著『武士の介護休暇―日本は老いと介護にどう向き合ってきたか―』(河出書房新社)2024年 ・柳谷慶子 著『近世の女性相続と介護』(吉川弘文館)2007年 ・厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」 【P32-35】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第169回 奈良県 このコーナーでは、都道府県ごとに、 当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 雇用の年齢上限を設けず高齢職員の持つ経験を活かし続ける 企業プロフィール 医療法人中川会 飛鳥(あすか)病院(奈良県高市(たかいち)郡) ▲設立 1984(昭和59)年 ▲業種 医療業(精神科病院) ▲職員数 196人(うち正規職員181人) (60歳以上男女内訳) 男性(31人)、女性(65人) (年齢内訳) 60〜64歳 23人(11.7%) 65〜69歳 30人(15.3%) 70歳以上 43人(21.9%) ▲定年・継続雇用制度 定年63歳。希望者全員を70歳まで継続雇用。以降も基準該当者を年齢上限を設けず継続雇用。最高年齢者は85歳(准看護師)  奈良県は本州の中央部、紀伊(きい)半島の内陸に位置する内陸県です。県北西部の奈良盆地に人口や都市機能が集まる一方、南部には紀伊山地の雄大な山々が連なり、日本一大きな村として知られる十津川(とつかわ)村をはじめ、緑豊かな森林景観が広がります。  『古事記』に「まほろば(すぐれた地)」とうたわれた大和(やまと)の地であり、飛鳥・藤原から平城京へと続く日本古代史の舞台となりました。2026(令和8)年7月26日には「飛鳥・藤原の宮都(きゅうと)」がユネスコの世界遺産に登録されたことでも注目を集めています。  JEED奈良支部高齢・障害者業務課の寺井(てらい)暁生(あきお)課長が、地域の産業と雇用の状況を語ってくれました。  「奈良県には、靴下やニット製品などの繊維製品製造業、日本三大美林の一つに数えられる吉野杉を背景に発達した木材・木製品製造業、電機・一般機械・金属製造業、プラスチック成形業、製薬業、毛皮革製造業など、古くから発達してきた多彩な地場産業が数多く集積しています。一方で、生産年齢人口が減少していくなか、企業は人材採用に苦慮されており、従業員数を確保するうえでも、高齢者の活躍が必須であるという認識が高まっています」  同課では、「企業診断システム」※を活用した相談・助言に力を入れており、寺井課長は「その企業における高齢者雇用の現状と課題を把握し、診断結果にもとづいた具体的な改善の方向性や取組み方法を、制度改善提案として説明しています」と続けます。  奈良支部で活躍するプランナーの一人、北場(きたば)好美(よしみ)さんは、2017(平成29)年から高年齢者雇用アドバイザー・プランナーとして活動し、今年で10年目を迎えます。特定社会保険労務士、行政書士、ハラスメント防止コンサルタントの資格を持ち、労働法令や賃金制度、コミュニケーションなど幅広い観点から、事業所に寄り添った助言を行っています。  訪問先で感じる最近の変化について、北場プランナーは次のように話します。  「4、5年前と比べると、高齢者が働いている事業所が増え、問題意識を持って話を聞いてもらえるようになりました。奈良らしいところでいうと、神社やお寺などの宗教法人を訪問することがあります。人手不足はこうした宗教界でも同じことで、今後どうやって人材を維持していくかが大きな課題になっています。人々を導く立場にあるからこそ、『高齢者雇用にも世に先んじて取り組む必要があるのではないでしょうか』と働きかけています」  今回は、北場プランナーの案内で「医療法人中川会飛鳥病院」を訪れました。 「心ふれあう医療」を掲げ、地域精神医療をになう  飛鳥病院は、奈良県高市郡高取町にある精神科の単科病院です。前身は、橿原(かしはら)神宮前駅近くにあった「中川医院」。のちに「久米診療所」と名をあらため、1984(昭和59)年、精神科病院として開設されました。その原点の地ではいまも、サテライトクリニック「久米診療所」が診療を続けています。飛鳥病院は入院医療を中心に、デイケアセンター「オアシス」も備え、介護老人保健施設や特別養護老人ホームを含むグループとして、地域医療を支えています。  同院が基本理念に掲げるのは「真のふれあい・やさしさ(Heart to Heart)」です。自然豊かで落ち着いた療養環境のもと、患者さんの話に耳を傾けることを大切にした「人と人、心ふれあう医療」の実践を目ざしています。皆己(みなみ)嘉延(よしのぶ)事務長は「理念を見て求人に応募してくる方もいるなど、私たちの根幹となる考え方です。職員一人ひとりの心に留めてもらえるように目に留まりやすい場所に掲示しています」と説明します。  そんな同院を支える大きな力となっているのが、豊富な経験を持つ高齢の職員たちです。総職員196人のうち、60歳以上が96人と半数近くを占め、70歳以上も43人が在籍。常勤・非常勤職員を合わせた平均年齢は57.3歳にのぼります。 年齢上限を設けず勤務可能な体制を整備  同院の定年は63歳。希望者は全員70歳まで継続雇用し、基準該当者は70歳を超えても年齢上限なく勤務を続けることができます。皆己事務長は、人材確保のむずかしさについて次のように話します。  「地域的な問題もあり、若い看護師はどうしても給与の高い大阪府へ流れてしまいます。時給が120円違えば、1日で約1000円の差です。ただでさえ人材確保が厳しいなかで、精神科は人材を集めるのが特にたいへんな分野ですが、そのぶん年齢を重ねた方が戦力になってくれています。1996年に定年を60歳から63歳へ引き上げ、以前は希望者を65歳まで継続雇用する形でしたが、いまは希望者全員70歳まで、基準該当者は年齢上限なく働けるようにしました」  北場プランナーが2026年2月に同院を訪れたのは、当初、70歳までの就業確保措置をうながす相談・助言のためでした。ところが、訪ねてみると、すでに体制が整っていたといいます。「地域性や事業の性質上、人材不足が特に深刻化するなかで、ほかの病院に先んじて対応されていました」とふり返ります。  皆己事務長は「精神科は、一般病棟のように力仕事や緊急性の高い場面が比較的少なく、患者さんとの対話が仕事の中心です。ですから、体力面の負担が少なく、年齢を重ねた方でも経験を活かして長く働いていただけます」と高齢職員が持つ強みについて話してくれました。  実際、他院で定年を迎えた看護師が、同年代の知人の紹介で入職し、当直を担当する例も少なくありません。  同法人では働きやすさを推進するための取組みも進んでいます。残業はほとんどなく、勤務は8時40分から17時まで。定時に退勤できるため、家庭との両立がしやすい環境です。年間休日も、以前は96日でしたが、14日増やし110日へとあらためました。「月に1〜2日は休みが増える計算になり、職員はとても喜んでくれています」と皆己事務長。病院内には託児所を設けており、子育て中の職員が働き続けられる体制も整えています。  制度面ではすでに対応がすんでいることから、北場プランナーは「事務長やスタッフのみなさんの日ごろの努力で、明るい職場づくりが行われていると思います」と話します。 看護と経営、各現場を率いるベテラン  今回は、同院で活躍中のお二人の高齢職員にお話をうかがいました。  副看護部長を務める松本(まつもと)範子(のりこ)さん(84歳)は、看護学校を卒業後、透析センターの立上げや公立病院での勤務など、看護一筋のキャリアを歩んできました。60歳で定年を迎えた後も「病院を立ち上げるから来てほしい」と各所から声がかかり、介護老人保健施設や病院の機能評価にたずさわった後、74歳で同院へ。現在は療養病棟で、退院に向けた生活訓練や日常生活の指導を担当しています。  「看護の仕事は楽しいですし、天職かなと思っています」と松本さんは笑顔をみせます。若手への指導で大切にしているのは、長年の経験でつちかった「看護診断」※の視点です。  「私たちは、医師が診察するように、看護師も看護としての診断をつけてこいと教えられてきました。患者さんが腹痛を訴えたら、医師に報告する前に、看護師として原因は何か、どうしたらよいかを自分なりに考える。いまの看護師さんは『お腹が痛いといっています』と報告に来ますが、便は出ているのか、どのあたりが痛いのか、食後なのかといった情報がないと、ただの報告で終わってしまいます。看護学校でずっとそういった教育を受けてきたので、それを活かしていかないともったいないです。現場での教育や共有はいまも必要だと思います」  体力づくりも欠かしません。「嫌なことがあっても、プールで泳げばスッキリします。切り替えができるから、続けてこられたのだと思います」と話してくれました。  総務課の薮下(やぶした)直也(なおや)課長は、「松本さんが管理する病棟は雰囲気がとてもよく、ストレスチェックでも高ストレスの職員が一人もいません。若い職員も頼って集まってきます。長年の経験を惜しみなく教えてくださるので、病院としても本当にありがたい存在です」と評します。  総合企画室で室長を務める戸田(とだ)雅明(まさあき)さん(73歳)は、前職の銀行で中川会グループを担当していた縁から、50代半ばで同院へ移りました。現在は財務分析に加え、若手を率いて医療機関や施設への営業・連携活動にもたずさわっています。「病院の収入は診療報酬や介護報酬によって定められているため、一般企業のように営業活動で利益を伸ばすことがむずかしい構造です。近年は物価高で調達コストも上がっており、収入とコストのバランスをシビアにみていく必要があります」と、経営環境の厳しさを見つめます。  若手の育成にも力を注いでいます。「営業のノウハウがない若手には、あいさつの仕方など、営業にとっての第一歩から伝えています。結果は必ず数字として表れます。収益が上がり、患者さんが増えたときに、大きなやりがいを感じます」  若手とのコミュニケーションも大切にし、世代を超えて話しやすい雰囲気づくりを心がけています。皆己事務長は「これまでの知識を病院に還元し、経営分析から若手指導まで幅広くになっていただいています。20代の職員が慕って、自然と相談に集まっているのが心強いですね」と話します。  戸田さんは今後の抱負として「当院は建て替えから4年目を迎えましたが、まだ旧病棟が残っています。その建て替えの足がかりをつけるところまでは、やり遂げたいと思っています。そのためにも収益の上がる業務を組み立てながら、病院の将来につなげていきたいですね」と語りました。 経験を次代へ、地域医療を支え続けるために  同院の取組みについて、北場プランナーは「これから先、少子高齢化はさらに急速に進みます。医療のような、いわゆるエッセンシャルワークにどう人材を確保していくかは、社会全体の課題です。すでに70歳までの継続雇用を実現し、明るい職場づくりを続けている中川会さんには、ぜひその貴重な経験を、地域や社会全体に共有していただきたいと思います」と評します。  同院は現在、精神科の医療機関がない地域への新たなクリニック開設や訪問看護の拡充を進めており、時代の変化に合わせた展開を目ざしています。  「元気だから働くのではなく、働くから元気でいられる」。取材のなかで、北場プランナーが語ったそんな言葉が印象に残りました。経験豊かなベテランが活き活きと働き、その姿が若手の目標になる。飛鳥病院には、そんなよい循環ができあがっているようです。(取材・西村玲) ※「企業診断システム」については、JEEDホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/employer/system.html ※看護診断……実在または潜在する健康問題、生活過程に対する個人・家族・地域社会の反応についての臨床判断。看護師に責務のある目標を達成するための決定的な治療の根拠を提供する 北場好美 プランナー アドバイザー・プランナー歴:10年 [北場プランナーから] 「社会保険労務士として開業した当初から、『人を大切にする』ことをモットーにしてきました。いまでは社労士会でも同様のスローガンを掲げるようになり、時代の変化を感じます。高齢者雇用は、まさに『人を大切にする』ことの具体化だと思っています。私自身が64歳で、一般的には高齢者雇用の当事者となる年齢ですので、当事者目線での問題提起も心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆奈良支部高齢・障害者業務課の寺井課長は、北場プランナーについて「数年にわたり当該業務に従事し活動を重ねてこられました。少子高齢化のなか、事業の継続・発展の源を『人財』ととらえ、日々事業所に寄り添った相談・助言による支援を行っています」と話します。 ◆奈良支部高齢・障害者業務課は、近鉄橿原線の畝傍御陵前(うねびごりょうまえ)駅から徒歩約15分。奈良職業能力開発促進センター(ポリテクセンター奈良)内にあります。付近には、このほど世界遺産に認定された「飛鳥・藤原の宮都」や、初代・神武天皇陵があり、歴史と文化が息づく地域です。 ◆奈良県では5人の70歳雇用推進プランナーが活動し、2025年度は制度改善提案58件、相談・助言163件の活動を行いました。 ◆相談・助言を実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●奈良支部高齢・障害者業務課 住所:奈良県橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 電話:0744-22-5232 地図文字 奈良県高市郡 写真のキャプション 飛鳥病院の外観 左から、皆己嘉延事務長、総合企画室室長として病院経営を支える戸田雅明さん、薮下直也総務課課長 副看護部長として病棟を任されている松本範子さん 【P36-37】 第119回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  川合清司さん(73歳)は、農林水産業関係の金融機関に30 年間勤めた。その後、経営企画の仕事などを経て、現在はマンションの管理業務を精力的にこなしている。つねに新しい世界に興味を持ち、人生を謳歌(おうか)している川合さんが生涯現役で働く醍醐味(だいごみ)を語る。 東洋コミュニティサービス株式会社 マンション管理員 川合(かわい)清司(きよし)さん 農業に寄り添って働いてきた日々  私は、新潟(にいがた)県新潟市で産声をあげ、高校まで郷里で過ごしました。実家の材木屋は国産の材木を扱っていましたが、高度経済成長の波に乗って海外から木材を買いつける仕事に移行しました。時代に勢いがあったので、たいした苦労もしないまま、東京の大学に進学させてもらいました。両親には、いまでも感謝しています。  大学卒業後は農林水産業関係の金融機関に就職しました。同期入社は40人ほどいて、その半数が国立大学出身者で、その多くが地方出身者でした。職場全体でも、農林水産業に強い思い入れをもつ職員が多かったように思います。同じ金融機関でも銀行とは異なる独特の雰囲気が職場にあり、よい職場に巡り合うことができたと満足しています。日本の農業がこれからどうなっていくのかは、私にとって、いまでも最大の関心事です。  その金融機関では、東京と地方で交互に勤務する働き方が一般的で、東京で20年間勤務、地方は愛媛県松山市や徳島県などで10年間勤務しました。地方では農林水産業関連の中小企業への融資を、本店では、金融機関のさまざまな問題が表出したときに広報を担当して、真夜中に記者会見を開いたこともあります。いまとなっては懐かしい思い出です。  川合さんが30年間勤めた金融機関は、設立から100年以上にわたり、日本の農林水産業発展に寄与してきた。川合さんの人生は農業と深くかかわっており、農業の未来を語るとき、川合さんの笑顔がはじける。 時代の先を行く研究に魅了されて  職員のなかで役員に昇格できるのは一握りです。同期の多くは60歳の定年前に退職し、私も53歳で退職しました。当時は退職後の仕事の世話もしてくれましたので、職場の先輩に岐阜(ぎふ)県多治見(たじみ)市に本社を置く、食品スーパーを紹介してもらい、約10年間単身赴任しました。私は27歳のときに結婚しましたので、それ以来の単身生活は学生時代に戻ったようでした。会社は食品だけでなく、ドラッグストアの店舗を次々に展開、私は経営企画の担当者として出店計画を進めました。金融の仕事とは異なるものの、やりがいのある仕事でした。その会社はフィットネスクラブも経営しており、多くの現場を担当して、約10年間で退職しました。  ちょうどそのころ、金融機関時代に親しくさせてもらった、ある製菓会社の会長が「超高圧食品加工技術」の新会社を設立することになり、私もその新会社にかかわることになりました。全国的にも名前が知られる製菓会社の会長とは金融機関時代からのおつき合いで気心が知れていました。会長は早くから超高圧食品加工技術の研究に参画していました。簡単にいえばあらゆる農作物に超高圧をかけることで栄養価が増すという画期的な技術です。昭和30年代の初めから研究が進められ、多くの企業が参画していました。ただコストがかかることもあり、研究から手を引く企業も出てきました。しかし、その製菓会社だけは、会長の肝いりの事業ということで、研究を継続していました。そして、満を持した形で超高圧食品加工技術の新会社を設立することになり、私がその会社を任されたのです。その新会社は、新しい技術の普及を目ざしましたが、私の力不足で、この新しい技術を日本の社会に浸透させることができず、私がその会社を辞めてからも研究は継続したものの、その新会社は幕を閉じたと聞きました。  この新会社にかかわったことで得られた宝物は、多くの人との出会いでした。製菓会社の会長をはじめ、新しい技術によって世の中の発展に寄与しようという人たちとの出会いがあって、いまの私があるように思います。例えば、「バイオ炭※」を開発した人と出会い、この人が東北地方の果樹農家を中心に無農薬・減農薬栽培の普及を目的として研究会を立ち上げたので、私もボランティアとしてお手伝いをしています。思えば、子どものころから今日まで、人生は人との出会いでつながっているとつくづく感じています。  いまや全国区の知名度を誇る製菓会社は、米菓だけでなく、パックご飯の製造でも、よく知られている。超高圧食品加工技術の研究に取り組んだことは納得がいく。「食品では普及がむずかしかった超高圧加工技術が、医療の世界で役立っています」と川合さんは目を細めた。 人との出会いを大切に  現在、私はマンション管理の仕事をしています。仕事を探すうえで、ボランティア活動も併行して続けたかったので、働き方が自由に選べる仕事をしようと思いました。求人広告で、マンションの「代行管理」という仕事を知り、2022(令和4)年から勤めはじめました。「代行」ですからさまざまなマンションの管理に出向くのですが、そのなかに東洋コミュニティサービス株式会社が管理するマンションで働く機会があり、同社の担当者の方と親しくなりました。その方とのつき合いが長くなっていくなかで、同社の専任を希望し正社員になることができました。これも人とのつながりだったと思います。  勤務形態は水曜日と日曜日を除く週5日勤務です。朝8時から14時までの勤務なので、終業以降の時間も比較的自由に使うことができます。私のような高齢者にとって、働く時間を選べる働き方はありがたいものです。多様な働き方が実現することによって、生涯現役で働く道も少し広がるのではないでしょうか。  朝は始業に遅れないように早めに管理人室に入るようにしています。横浜から都内への通勤なので、勤務日は早起きしますし、週5日勤務なので生活のリズムも確立されました。現在のマンションの規模は30世帯という部屋数で、私にとってほどよい規模で、無理なく日々の業務がこなせています。  大切にしているのは住民の方々とのコミュニケーションです。日々の挨拶を心がけ、小さなお子さんや、私よりも高齢の方には、その人にふさわしい距離感をもって対応するようにしています。人と人が出会うと必ずドラマが生まれると私は思います。これは私がこれまで数多くの人たちと出会うことで人生を豊かにしてきたことに裏打ちされています。保育園に行くのが嫌で、泣いてばかりいたお子さんが、いつの間にか私がハイタッチをして「行ってらっしゃい」というと、小さな手を振ってくれるようになりました。なんともいえない充実感を感じます。会社の定年の75歳までの残り2年間、一日一日を大切に過ごしていこうと思います。  私はいま、5人の70 代で組織するサイバー研究会に加わっています。名づけて「アウト老会」。サイバー攻撃の探知技術を開発し、特許も取得しました。東京都中小企業振興公社から新技術認定も取得、さらなる飛躍を目ざしています。この名前、どうぞ胸に刻んでおいてください。 ※バイオ炭……木材や農作物の残渣などのバイオマス(生物由来資源)を、高温・低酸素状態で熱分解(炭化)して得られる多孔質の炭素物質 【P38-41】 AIと歩む人生100年時代 第一ライフ資産運用研究所 政策調査部 主席研究員 柏村(かしわむら)祐(たすく)  生成AIの登場により、ビジネスシーンにおいてもAI利用が本格化し、今後の仕事や働き方に大きな変化をもたらすことが期待されます。一方で、少子高齢化が進むわが国においては、シニア人材の活用がますます重要な経営課題となっており、AIの活用により業務負荷の軽減やスキルの補完などが実現できれば、これまでとは異なる形でシニア人材の価値が発揮されるといった変化も期待できます。本企画では、AIが職場や仕事、働き方に与える影響とともに、AI社会だからこそ高まるシニア人材の価値やその活用戦略について展望します。 第2回 AIはシニア人材の働き方をどう支えるか ―業務効率化・負荷軽減・安全と健康の新しい可能性― 人生100年時代の職場に求められる新しい視点  人生100年時代という言葉が広く使われるようになり、働く期間も長期化しています。かつては、60歳定年を迎えた後は「余生」として静かに過ごすという考え方が一般的でした。しかし現在では、60代、70代になっても働き続けることは珍しくありません。内閣府の『高齢社会白書』でも、65歳以上の労働力人口の比率は上昇傾向にあると整理されており、高齢期の就業は一部の例外ではなく、社会全体で前提とすべき現実になりつつあります。企業にとっても、シニア人材の活躍は人手不足への対応にとどまらず、現場力の維持、知識や技能の継承、顧客との信頼関係の維持という点で重要な経営課題になっています。一方で、年齢を重ねれば、体力、視力、聴力、記憶力、集中力などに変化が生じます。もちろん個人差は大きく、年齢だけで一律に判断することはできません。ただし、働き続ける期間が長くなるほど、企業は「同じ仕事を同じやり方で同じ負荷のまま続けてもらう」という発想から転換する必要があります。これから求められるのは、シニア人材の経験や判断力を活かしながら、身体的・認知的な負担を軽くし、安全に働ける職場をつくることです。  そこで注目されるのがAIの活用です。AIというと、「人の仕事を奪う技術」、「若い世代が使うむずかしい技術」と受けとめられがちです。しかし、シニア人材の活躍という観点から見ると、AIはむしろ、人の力を補い、経験を発揮しやすくする支援技術です。文章作成、情報整理、翻訳、音声入力、作業支援、体調管理、リスク予測など、AIがになえる領域は広がっています。うまく活用すれば、シニア人材が「もう年齢的にむずかしい」と感じていた仕事のハードルを下げ、より長く、より安心して働き続けることを支えることができます。 AIは「代替」ではなく「補完」の技術である  AI導入を考える際に大切なのは、AIを人の代わりに置くのではなく、「人の能力を補うもの」として位置づけることです。特にシニア人材の活用では、この考え方が重要です。シニア人材の強みは、単に長く働いてきたことではありません。過去の成功と失敗を知っていること、顧客や取引先との関係を理解していること、現場で起きる微妙な変化を感じ取れること、若手に助言できることにあります。こうした経験知や判断力は、AIだけで簡単に代替できるものではありません。一方で、報告書の下書き、メール文案の作成、会議記録の整理、社内規程の確認、問合せ内容の分類、翻訳、要約といった作業は、AIが得意とする領域です。これらの作業に時間を取られていると、経験豊富な人材であっても、本来の強みを発揮する時間が削られてしまいます。AIに下調べや下書き、整理を任せ、人が確認し、判断し、相手に合わせて修正する。この役割分担こそが、シニア人材の価値を引き出すAI活用の基本です(図表1)。  このように整理すると、AIは「人の仕事を奪う技術」ではなく、「人が強みを発揮しやすくする技術」ととらえることができます。 業務効率化/文章・記録・確認作業の負担を軽くする  職場でもっとも導入しやすいAI活用は、文章や情報整理にかかわる業務です。例えば、報告書のたたき台をつくる、会議メモを要約する、メールの返信案をつくる、社内マニュアルから必要な情報を探す、長い資料の要点を整理する、といった使い方です。これらは多くの職場で日常的に発生する業務です。しかし、ゼロから文章を書いたり、大量の資料を読み込んだりする作業は、時間がかかるだけでなく、疲労もともないます。特に視力が低下してくると、細かな文字を長時間読むことは大きな負担になります。AIによる要約、読み上げ、音声入力を組み合わせれば、こうした負担を軽減できます。例えば、営業や顧客対応の現場では、過去の対応履歴をAIに整理させることで、担当者は顧客の状況を短時間で把握できます。人事・労務部門では、社内規程や制度に関する問合せに対し、AIが関連する規程の候補を示すことで、確認作業を効率化できます。管理部門では、会議の録音から議事メモの案を作成し、人が内容を確認することで、記録作成の負担を減らせます。  ここで重要なのは、AIが作成したものをそのまま使わないことです。AIはもっともらしい文章をつくることができますが、内容がつねに正しいとはかぎりません。特に労務、法務、安全衛生、個人情報にかかわる事項では、人による確認が不可欠です。AIに任せるのは「下書き」と「整理」であり、最終判断は人が行う。この原則を明確にしておくことが、安心してAIを活用する前提になります。 負荷軽減/身体的・認知的な負担を補う  シニア人材の働き方を考えるうえでは、業務量だけでなく、身体的・認知的な負担にも目を向ける必要があります。AIは、こうした負担を補う道具としても活用できます。身体的な負担の軽減では、作業手順の表示、音声による案内、危険箇所の通知、移動ルートの最適化などが考えられます。工場、倉庫、店舗、介護、警備、設備管理などの現場では、立ち仕事、移動、重量物の取扱い、温度環境などが負担になります。AIとセンサーを組み合わせれば、作業者の動きや環境変化を把握し、転倒や熱中症、過度な疲労につながる兆候を早めにとらえることができます(図表2)。  認知的な負担の軽減も重要です。年齢を重ねると、複数の作業を同時に処理することや、細かい手順を記憶して対応することが負担になる場合があります。AIによるリマインド、チェックリスト作成、作業手順の提示、入力補助は、こうした負担を和らげます。例えば、設備点検の現場で、タブレットやスマートフォンに点検手順を表示し、音声で確認しながら作業できれば、記憶に頼る部分を減らせます。また、ミスの防止にもつながります。  ただし、負荷軽減を目的とするAI活用は、従業員を監視する仕組みと受けとめられないよう注意が必要です。作業データや健康データを扱う場合には、何のために使うのか、だれが見るのか、どこまで記録するのかを明確にしなければなりません。AI活用の目的は、働く人を管理し、締めつけることではなく、無理を早めに察知し、安全に働き続けられる環境を整えることです。 安全と健康/労働災害の予防と健康経営○R(★)  シニア人材の活躍を支えるには、安全と健康を守る仕組みが欠かせません。シニア人材は、若年層と比べて転倒や墜落・転落、腰痛などの影響が大きくなりやすく、いったん労働災害が起きると休業が長期化しやすい傾向があります。企業にとっても、労働災害の予防は安全衛生上の課題であると同時に、人材確保や職場の信頼にかかわる経営課題です。AIは、労働災害の予防にも活用できます。例えば、過去のヒヤリハット情報、事故記録、作業時間、気温、湿度、作業場所、勤務シフトなどを分析すれば、事故が起きやすい作業や時間帯を把握しやすくなります。夏場の屋外作業や倉庫作業では、気象データや作業負荷を組み合わせて、熱中症リスクを早めに知らせる仕組みも考えられます。カメラやセンサーを用いて、危険区域への接近や不自然な姿勢を検知することも可能です。健康経営の観点からは、AIを活用した体調管理も重要になります。睡眠、歩数、心拍、疲労感、勤務状況などのデータを本人が確認し、自分の体調変化に気づくことができれば、無理をする前に休息や相談につなげられます。企業側も、個人を特定しない形で職場全体の傾向を把握できれば、勤務シフト、休憩、作業配置、職場環境の改善に役立てることができます。  もっとも、健康情報はきわめて慎重に扱うべき情報です。本人の同意なく収集したり、人事評価や配置判断に安易に使ったりすれば、従業員の不信感を招きます。AIによる健康管理は、企業が従業員を一方的に管理するための仕組みではありません。本人の健康を守り、職場全体の安全性を高めるための支援として設計することが必要です。 AI時代に高まるシニア人材の価値  AIが普及すると、情報検索、翻訳、要約、資料作成などの作業はこれまでより簡単になります。そうなると、単に情報を多く知っていることだけでは、仕事上の差別化がむずかしくなるかもしれません。一方で、現場での経験、顧客や同僚との信頼関係、状況判断、若手への助言、トラブル時の対応力といった人間ならではの価値は、むしろ重要になります。シニア人材には、長年の経験を通じてつちかわれた「勘どころ」があります。顧客の表情や言葉のわずかな変化から本音を読み取る力、過去の失敗から危険な兆候を察知する力、若手がつまずきやすい点を先回りして教える力などです。AIはこうした力を直接持っているわけではありません。しかし、情報整理や定型作業をAIに任せることで、シニア人材が人との対話や判断、育成に使える時間を増やすことができます。  つまり、AI時代のシニア人材活用とは、年齢を理由に仕事を狭めることではありません。経験が活きる仕事へ業務を再設計し、その周辺にある負担の大きい作業をAIで支えることです。AIによって「できないこと」を補い、「できること」、「得意なこと」に集中できる環境を整えることが、これからの職場づくりに求められます。 導入のポイントは小さく始め、現場で育てること  AI活用を進める際には、大がかりなシステム導入から始める必要はありません。むしろ、最初は小さく始めることが大切です。例えば、会議メモの要約、メール文案の作成、社内FAQの整理、作業手順書をわかりやすく書き換えるなど、効果が見えやすく、リスクが比較的小さい業務から始めるとよいでしょう。  その際、シニア人材を「教えられる側」と決めつけないことも重要です。AIの操作に慣れるまでの支援は必要ですが、業務のどこに負担があり、どの作業をAIで補えばよいかをもっともよく知っているのは、実際に現場で働いている人です。シニア人材自身が、AI活用の設計に参加することで、現場に合った使い方が生まれます。  また、AI活用にはルールも必要です。個人情報や機密情報を安易に入力しないこと、AIの回答を必ず確認すること、重要な判断は人が行うこと、健康データは本人の同意と明確な目的のもとで扱うことなど、基本的な原則を職場で共有しておく必要があります。  AIは便利な道具ですが、使い方を誤れば、誤情報、情報漏えい、過度な監視といった問題につながります。だからこそ、効率化と安全性、利便性と信頼性のバランスを取ることが欠かせません。 人が長く活躍できる職場をつくるために  AI活用の目的は、単なる効率化ではありません。人生100年時代において、年齢にともなう変化を前提にしながら、一人ひとりが経験や能力を活かして働き続けられる職場をつくることにあります。シニア人材にとってAIは、むずかしい技術でも、冷たい機械でもありません。文章作成を助け、情報を整理し、作業手順を示し、体調変化に気づかせ、危険を予測し、経験をより活かしやすくする実務上の道具です。AIをうまく使えば、「年齢のためにできなくなる仕事」を減らし、「年齢を重ねたからこそ価値を発揮できる仕事」に集中しやすくなります。  企業に求められるのは、AIを導入すること自体ではありません。AIを使って業務をどう見直すか、負荷をどう減らすか、安全に働ける環境をどう整えるかです。シニア人材の経験とAIの支援を組み合わせることができれば、企業は人手不足に対応するだけでなく、世代を超えて知識が受け継がれる、より強い職場をつくることができます。AIは、人生100年時代の職場において、人を置き換える存在ではありません。人が年齢を重ねても能力を発揮し続けられる環境を支える、新たな社会基盤なのです。 ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 図表1 AIがシニア人材の働き方を支える三つの領域 領域 AIが支援できること シニア人材が発揮しやすくなる力 業務効率化 文書作成、要約、翻訳、議事録、検索、問合せ分類 判断力、対人対応力、顧客理解 負荷軽減 音声入力、読み上げ、リマインド、チェックリスト作成、作業手順支援 経験知、確認力、若手への助言 安全と健康 転倒・疲労・熱中症リスクの把握、体調変化の早期検知 安全な就労継続、無理のない働き方 出典:筆者作成 図表2 職種・業務別に見たAI活用の例 職種・業務 想定される負担 AI活用の例 期待される効果 事務・管理部門 文書作成、資料確認、会議記録 文章案作成、要約、議事録作成、社内規程検索 作業時間短縮、確認負担の軽減 営業・顧客対応 顧客情報の把握、メール対応、問合せ整理 対応履歴の要約、返信案作成、問合せ分類 顧客対応の質向上、経験の活用 製造・設備管理 点検手順の確認、危険箇所の把握 作業手順表示、異常検知、音声案内 ミス防止、安全性向上 店舗・サービス 接客、在庫確認、クレーム対応 接客支援、FAQ検索、需要予測 接客負担軽減、判断支援 介護・福祉 記録作成、見守り、身体的負担 介護記録支援、見守りセンサー、転倒検知 記録負担軽減、事故予防 人事・労務 相談対応、制度説明、健康管理 FAQ 対応、面談記録整理、体調変化の把握 対応品質の平準化、早期支援 出典:筆者作成 【P42-45】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第98回 就業規則の改定と不利益変更、人事制度改革の留意点 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲/弁護士 木勝瑛 Q1 特定年齢層の人件費抑制のための賃金規程の改定は有効となるのでしょうか  当社では、少子化や将来の業績悪化に備えて人件費を抑制するため、就業規則・賃金規程を改定し、一定年齢以降の役職定年・昇給停止を実施することを検討しています。就業規則の変更によって実施することは可能でしょうか。 A  就業規則の変更により賃金など重要な労働条件を引き下げる場合は、「高度の必要性に基づいた合理的な内容」であることが求められ、経営上の必要性の客観的な裏づけが不十分な場合には、変更は無効とされます。 1 就業規則の不利益変更の枠組み  労働契約法は、使用者が労働者と個別に合意することなく、就業規則を変更することによって、労働者の労働条件を不利益に変更することはできないことを原則としています(同法第9条)。  例外として、変更後の就業規則を労働者に周知させることを前提としたうえで、就業規則の変更内容や変更に至る手続き・過程について、@労働者の受ける不利益の程度、A労働条件の変更の必要性、B変更後の就業規則の内容の相当性、C労働組合等との交渉の状況その他の事情に照らして合理的なものであると認められるときにかぎり、変更後の就業規則の定めが有効となります(同法第10条)。  もっとも、賃金(退職金や賞与への影響も含む)など、労働者にとって重要な権利・労働条件に関して実質的な不利益がおよぶ場合には、その変更が、当該不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの「高度の必要性に基づいた合理的な内容」のものであることが必要であると解されています(最高裁昭和63年2月16日判決等)。  高年齢層の給与カーブの見直し(一定年齢以降の昇給の停止など)は、人件費管理の観点から検討されることが多いものですが、賃金にとどまらず賞与や退職金にも波及し得るため、その合理性は慎重に判断されることになるでしょう。 2 裁判例の紹介  就業規則の改定による賃金・賞与・退職金の減額が争われた事案として、学校法人目白学園事件(東京地裁令和6年5月15日判決)があります。  この事案の使用者は、大学などを運営する学校法人で、少子化による将来の入学者数の減少や老朽化する校舎の建替費用などの増加を想定して、特段の対策を講じないかぎり、将来的に赤字に転落するという見通しのもと、就業規則を改定しました。その内容は、一律の定期昇給制度を改めて、一定年齢以降の昇給を隔年に制限または60歳以降は停止とするとともに、63歳以上の教職員等については7割または8割の支給に変更するものとされ、これらに連動して賞与や退職金も減額するというものでした。  この変更に同意しなかった原告が、当該変更は労働契約法第10条に照らし無効であると主張して、減額された給与などの差額の支払いを求めました。  裁判所は、定年まで勤務した場合の原告の生涯賃金が退職金を含めて合計約1650万円(当時の給与の約2年分を超える額)も減額されることなどから、本件変更は労働者の重要な権利に対し相当に重大な不利益を与えるものであると評価しました。そのうえで、将来的に赤字になる見通しがあったなど経営上の必要性自体は否定できないとしつつも、使用者自身が立地条件から人口減少の影響を受けにくいと文部科学省に説明する文書を提出していたことや財務見通しと実際の収支との乖離が大きいことなどを指摘して、変更の必要性の程度には疑問があるとしました。  そして、重大な不利益に対する代償措置も不十分であるとして、高度の必要性に基づいた合理的な内容のものとは認められないとして、就業規則の変更を無効としました。  なお、本件では、使用者が、計画策定段階から全教職員を対象とする説明会・意見交換会を、中間まとめや実行案の各段階に分けて合計35回以上にわたって開催したほか、労働組合との団体交渉にも複数回応じ、最終的には教職員の62.7%(480人のうち301人)から書面による同意も得ていました。周知・説明の手続自体は、相応にていねいなものであったといえます。しかしながら、裁判所は、こうした手続の相当性を一定程度認めながらも、経営上の必要性の程度に疑問が残る以上、手続面のていねいさのみでは、重大な不利益を労働者に法的に受忍させるだけの「高度の必要性に基づいた合理的な内容」であるとは認められないと判断しました。 3 実務上の留意点  本判決は、賃金という重要な労働条件を就業規則の変更によって引き下げるには「高度の必要性」が必要であるという従来の判例の枠組みを前提に、その必要性を基礎づける経営上の事情について、客観的な資料との整合性にまで踏み込んで検討した点に特徴があります。将来の収支悪化を理由とする場合であっても、その前提となる見通しが過大であったり、使用者自身のほかの説明と矛盾していたりすると、変更の必要性が認めがたいものとなります。労使交渉等の手続をどれだけ尽くしても、必要性・相当性という実体面の不備までは補われないことを示す点で、実務上示唆に富む判断といえます。  高年齢層の給与カーブの見直しは、特定の年齢層に不利益が集中しやすく、賞与や退職金にも波及するため、不利益の程度が大きくなりがちです。減額幅の抑制や経過措置、激変緩和期間の設定、不利益を受ける層に対する実質的な代償措置を十分に用意し、その内容が不利益に見合うものとなっているかを検証しておく必要があります。  また、多数の労働者から同意を得た場合であっても、賃金などの重要な労働条件に関する同意は、労働者の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要とされていることにも留意する必要があります。 Q2 人事制度改革で賃金体系の変更を検討中です。新制度では賃金減額が生じる可能性があるのですが問題はないでしょうか  当社では、従業員の評価基準を明確にし、キャリアパスを整備するため、これまでの「時給+歩合給」の賃金体系を廃止し、「月額基本給+役職手当」とする新しい人事・賃金制度の導入を検討しています。会社全体の人件費削減を目的としたものではありませんが、シミュレーションの結果、一部の従業員(特に歩合給が多かった者や役職者)について、平均で6%程度、最大で10%程度の賃金減額が生じることが判明しました。このような制度変更を就業規則の変更によって実施することは可能でしょうか。 A  賃金という重要な労働条件を引き下げる就業規則の変更には、「高度の必要性」が求められます。会社全体の制度改善といった目的があっても、従業員が被る不利益が大きく、代償措置や労働者(労働組合等)との交渉が不十分な場合、変更は無効とされる可能性が高いです。 1 就業規則の変更による賃金減額のハードル  Q1で解説したように、使用者が一方的に就業規則を変更して労働者の労働条件を不利益に変更することは原則としてできません(労働契約法第9条)。例外的に、変更後の就業規則を周知させたうえで、@労働者の受ける不利益の程度、A変更の必要性、B内容の相当性、C労働組合等との交渉状況などを総合考慮し、合理的なものであると認められる場合にのみ有効となります(同法第10条)。特に賃金など労働者にとって重要な労働条件を不利益に変更する場合、単なる合理性ではなく、その不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの「高度の必要性」に基づく合理的な内容であることが求められます(最高裁平成12年9月7日判決等)。 2 裁判例の紹介  就業規則の新設による新たな賃金体系の導入にともなう賃金減額の有効性が争われた近時の裁判例として、ジェットスター・ジャパン事件(東京地裁令和7年9月11日判決)があります。本件は、航空会社の客室乗務員に対し、従来適用されていた「時給制+歩合給(機内販売のコミッション)+役職手当等」の賃金体系を改め、「月額基本給+乗務手当」等を基本とする新賃金体系を、就業規則に新たな規定を追加する実質的な新設という形で導入した事案です。会社側は、この変更は人件費削減目的ではなく、「職責と業務内容に応じたメリハリのある処遇の実現」、「明確なキャリアパスの設定と公平な評価制度の導入」、「ワークライフバランスを考慮した勤務体系の導入」などが目的であると主張しました。 ■裁判所の判断  不利益の程度を判断するためには新旧制度における賃金額の比較が必要となります。この点について、旧制度では、従業員が有給休暇や傷病休暇を取得すると8時間分の時給が支払われる仕組みになっていたため、時給制の旧制度のもとでは、有給休暇や傷病手当を取得するほど支給額が高くなる仕組みになっていました。そこで、会社は、ノーワーク・ノーペイの原則を理由にこれらを算定から除外すべき旨を主張しましたが、裁判所は会社の主張を排斥し、旧制度下において支給された賃金は、有給休暇や傷病休暇を取得したことにより高くなった賃金をベースに比較すべきと判断しました。その結果、賃金の減額率は最大で約10.83%、最小で約2.98%、平均で約6.10%に上り、労働者は相応の不利益を受けていると認定しました。  次に変更の必要性について、会社が主張する人事制度改善などの目的があったとしても、それらはいずれも労働者に賃金減額という重大な不利益を法的に受忍させるだけの「高度の必要性」があるとは認められないと判断しました。さらに、内容の相当性についても、役職者の方が一般乗務員よりも賃金減額率が大きい傾向にあり、そもそもどのような基準にしたがって減額率を設定したのかが不明確である点や、賃金減額に対する代償措置が十分ではない点を指摘し、相当性を否定しました。  また、労働組合との交渉などのプロセスにおいても、会社は途中から新賃金体系で賃金減額となる旨を説明し始めたものの、組合からの反対意見や固定給引上げを求める代替案に対して賃金減額の根拠を具体的に示すことなく、実質的な交渉を行わなかったと指摘しました。加えて、訴訟前と訴訟において新賃金体系に対する説明内容に一貫性がないことなどから、説明は不十分であり各労働者の意見集約を怠ったと厳しく評価しました。  結論として、本件労働条件の変更は合理性を欠き無効であるとされ、新賃金体系の導入(労働条件の変更)は認められませんでした。 3 実務上の留意点  本判決では、会社の示した制度変更の目的と制度の内容の関連性が疑問視されています。大前提として、制度設計の際には、制度変更の目的との関係で合理的な制度を構築しなければ制度の内容の相当性が否定される可能性が高いでしょう。  また、人事評価制度の刷新や月給制への移行など、企業側から見てよりよい制度への改善を目的とした変更であっても、結果として一部の労働者に相当程度の賃金減額をもたらす場合、裁判所は厳しい判断を下す傾向にあります。  そのため、労働者に生じる不利益の程度については、労働者の実態に合わせて精緻にシミュレーションしておかなければなりません。基本給や時給単価の比較だけでなく、歩合給や有給休暇・傷病休暇取得時の手当の扱いなど、従来得られていた実質的な経済的利益(休暇の取得状況などを含む)をすべて含めてシミュレーションを行うことが重要です。  さらに、不利益に対する代償措置や経過措置の設計についても重要です。特定の役職や層に不利益が集中しないような調整給の支給や、長期間にわたる十分な激変緩和措置を設けることも検討する必要があるでしょう。  加えて、労働者に対する説明についてもていねいに行う必要があります。本件では、会社は説明会や団体交渉を複数回行っているものの、実質的な交渉はなされていないと評価されています。形式的な説明では足りず、実質的な説明・交渉を行わなければならない点に留意すべきでしょう。 【P46-17】 サステナビリティを高めるシニア人材活用戦略 第3回 シニア人材の経験知を「資産化」する 株式会社日本総合研究所 佐賀(さが)輝(ひかる)/宮下(みやした)太陽(たいよう)  不確実性が高まる現代において、企業が持続的に成長し続けるためには、サステナビリティ(持続可能性)の視点が不可欠です。とりわけ、人材を「資本」としてとらえ、その価値を最大限に引き出す人的資本経営の重要性が高まっています。そのなかでもシニア人材をはじめとする多様な人材の活用は、経験・知見の継承や組織のレジリエンス向上の観点からも、これからの企業経営の鍵を握る重要な要素です。そこで本企画では、シニア人材の持つ価値をあらためて整理するとともに、その活用に向けた具体的な戦略について解説します。 1 はじめに  本連載の第2回※では、シニア人材の知見や経験が、企業の経営基盤や現場力、組織風土の安定を支える重要な価値を持つことを述べました。なかでも現場力の維持には、シニア人材が持つスキルや経験知を次世代へ伝承していくことが欠かせません。  「スキル」は日本だけでなく、世界的にもVUCAの時代のさまざまな変化に対応する一つのキーワードになっています。世界経済フォーラム「The Future of Jobs Report 2025」の報告では、技術変革、地経学的分断などと並んで、人口動態の変化が2030年までの世界の労働市場を形成・変革する要因とされています。特に先進国においては、高齢化と生産年齢人口の減少を背景にタレントマネジメントや教育・指導などにおける「スキル」の需要が高まっていくと指摘されています。  しかし、多くの企業ではシニア人材のスキル伝承が十分に進んでいるとはいえません。シニア人材が日々の業務に追われていることに加え、中堅層の不足や人手不足によって、若手を育成する余裕が失われつつあります。また、そもそも「何を優先的に伝承すべきか」が整理されていないことも少なくありません。そこで本稿では、「伝承すべきスキルが不明確である」という課題に着目し、シニア人材の経験知を組織の資産として残すための方法について、近年注目されている「スキルベース」の考え方をふまえて検討します。 2 スキルベースの考え方とシニア人材に適用する意義  「スキルベース」とは、ジョブをタスクレベルに分解したうえで、タスク別に要求されるスキルを明らかにし、スキルに基づいて人材を配置する人材マネジメント(47ページ図表)をさします。細分化されたスキルに着目することで、人材活用の柔軟性を高めることが期待されています。  欧米では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展による業務の高度化や慢性的な人材不足を背景に、ジョブで求める要件をすべて満たす人材の獲得が困難になるという問題が発生しました。そのため、ジョブをタスクやスキルに分解し、高度なスキルを有する人材を柔軟に組み合わせることでジョブを遂行するスタイルが確立されつつあります。さらに昨今の生成AIなどの技術革新により、業務に必要なスキルの変化が加速していることも、スキルベースへの関心を高める要因となっています。  スキルベースの考え方の導入は、日本では端緒についたところですが、今後は「スキル」に着目した採用・育成・キャリア開発を通じて、柔軟な人材マネジメントを実現する必要性が高まると考えられます。そのようななか、組織にスキルの考え方をなじませる第一歩として、シニア人材に絞ってスキルベースの考え方を適用するやり方は組織にとっても負担が小さいため、現実的なアプローチといえます。シニア人材に注目してスキルベースの考え方を適用する理由は二つあります。  一つめは、シニア人材が有するスキルや経験そのものが企業の重要な資産だからです。第2回でも述べた通り、シニア人材は品質や安全、事業継続を支える重要な役割をになっています。こうした経験知を組織的に継承できれば、企業の成長と持続性の向上につながります。  二つめは、シニア人材のなかには、長年同じ領域の業務をにない、特定の業務や顧客、設備に深い知見を持つ人が少なくないからです。こうした知見は特定の業務経験のなかで蓄積されているため、担当業務をタスクやスキルに分解することで、組織として残すべき知識やノウハウを整理しやすくなります。  ここで重要なのは、スキルそのものだけでなく、その背景にある経験知まで明らかにすることです。スキルだけでは、「何ができるか」はわかっても、「なぜできるのか」はわかりません。シニア人材がつちかってきた判断基準や勘所まで整理して初めて、経験知の資産化につながります。 3 シニア人材のスキルを資産化する方法  シニア人材のスキルを資産化するためには、三つのステップがあります。  第1ステップは、シニア人材がになっているコアとなるタスクを明らかにすることです。業務全体を漠然ととらえるのではなく、「どの業務が事業継続や品質、安全、顧客対応にとって重要なのか」を整理します。現場の管理職やリーダーへのヒアリング、業務記録の確認、生成AIの活用などにより、タスクの素案を作成し、現場の実態に即して精緻化していくことが考えられます。  第2ステップは、それぞれのタスクに必要なスキルを明らかにすることです。例えば、設備点検であれば、点検手順を理解する力だけでなく、異音や振動の変化を察知する力、過去の故障履歴と照らし合わせて判断する力、関係者へ適切に報告する力などが含まれます。このようにタスクをスキルに分解することで、伝承すべき内容が具体化されます。  第3ステップは、そのスキルを支える経験知を掘り下げることです。ここが、単なるスキル整理と経験知の資産化を分けるもっとも重要な点です。シニア人材へのヒアリングを通じて、「そのスキルをどのような経験から身につけたのか」、「どのような失敗から学んだのか」、「判断に迷ったときに何を基準にしているのか」、「若手がつまずきやすい点はどこか」などを明らかにします。  スキルベースと聞くと、第2ステップのスキルを明らかにすることまでで満足してしまいがちです。しかし、「このスキルを習得しろ」というだけでは、「背中を見て学べ」という従来のアプローチと本質的に変わりません。これまで暗黙知となっていたシニア人材の経験知部分をスキルとセットで明らかにすることが重要なのです。  コアスキルと習得方法を明示することで、経験知を組織で共有し、後進育成に活用するための土台が整ったといえます。そして後進への教育をになう適任者は、習得すべきスキルと関連する経験知を熟知しているシニア人材です。シニア人材を核として後進育成を進めていく方法論については、次回で検討していきたいと思います。 ※本連載第2回(2026年8月号)は、JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202608/#page=50 【参考資料】 ・世界経済フォーラム「The Future of Jobs Report 2025」 図表 ジョブ・タスク・スキルの関係性の例 ジョブ 営業職 タスク @ターゲット企業選定 A商談実施 B営業提案・交渉 スキル A.市場分析 B.財務分析 C.課題仮説構築 ※筆者作成 【P48-49】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第71回 「職務分析」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、「職務分析」について取り上げます。 仕事の“見える化”  職務分析の定義については、厚生労働省『職務分析・職務評価実施マニュアル』(以下、『実施マニュアル』※1)に、「職務に関する情報を収集・整理し、職務の内容を明確にするプロセス」(6ページ)とあります。  職務分析の具体的な内容に入る前に理解しておきたいのは「職務」とは何かです。職務を異なる粒度で定義しているものもみられますが、JEEDの職業能力開発総合大学校基盤整備センターが公開している“スキルアイ”※2で用いられている解説がわかりやすいので、こちらをもとに確認していきましょう。ふだん使う用語に「仕事」がありますが、これは企業の経営活動において一定の目的で遂行するもので、分業または分担が可能な“まとまり”のことをさします。この仕事をさらに分解すると「作業」になり、これ以上の分割はできません。一方で、仕事を企業組織の業務機能を同一の種類、系統などで括った区分で、複数の仕事を集めたものが「職務」となります。この職務を一定の目的のもと集めたものを「部門」とし、部門が集まると会社という単位になります。  それでは、職務分析の内容に入っていきたいと思います。コンサルティング会社などがさまざまな手法や観点から実施しているのが実際のところですが、『実施マニュアル』の内容に沿ってみていきたいと思います。第一のステップとしては「情報の収集」とあり、ここでは対象職務に従事している従業員に日々の業務(仕事)や業務の目的、必要な知識・技能の習得に関するインタビューを行います。第二のステップとして、「情報の整理」があり、業務の代替可能性や事業への影響度、時間的割合・頻度などからおもな業務を抽出していきます。この際、取り扱う範囲や遂行するために必要な知識や技能の水準を整理していきます。また、おもな業務に従事する従業員にどの程度の責任や権限が与えられ、成果が求められているかも整理していきます。分析したこれらの一連の情報は、職務の目的や業務内容・責任範囲・必要な知識・技能・経験などで整理された職務記述書(ジョブディスクリプション〈Job Description〉)として書面でまとめ、従業員の教育・評価・採用・配置などの指針として活用していくのが一般的です。情報の収集と整理、アウトプットの一連の流れから、職務分析は仕事の“見える化”ともいえます。 国も周知・実施支援に力を入れている  職務分析で整理された内容は、職務記述書の作成以外に「職務評価」に活用されることがあります。職務評価とは、『実施マニュアル』によると「社内の職務同士を比較し、両者が同じか、異なるのか、異なる場合にどこが異なるかを明確にするプロセス」(6ページ)とあります。  この職務評価ですが、国が周知・実施支援に力を入れており、『実施マニュアル』以外の各種マニュアルの発行※3、「多様な働き方の実現応援サイト」※4にも職務評価の特設サイトを設け情報提供を行う、コンサルティングによる取組み支援を行う※5などの施策を講じています。  この理由としては、同一労働同一賃金の推進があげられます。これはパートタイム・有期雇用労働法(2021年4月1日全面施行)、改正労働者派遣法(2020年4月1日施行)に基づき、いわゆる正社員やパートタイマーなどの雇用形態の違いによって賃金などの待遇を決めるのではなく、従事している職務内容(業務内容や責任の程度)、転勤や配置変更の有無および範囲や貢献などに応じて待遇を決定することを目的とした施策です。もし、雇用形態ごとに待遇の違いがある場合にはバランスのとれた均衡待遇とすることが求められ、その違いについて事業主は求められた場合には待遇を決定するにあたって考慮したことを説明しなければならないとされています。これに対して『実施マニュアル』では「職務分析・職務評価で整理・比較した職務の内容を示せば、職務の内容に基づく根拠のある説明ができる」(4ページ)として職務評価の実施を推奨しています。実務面でも、しっかりと職務内容や大きさ(対象範囲や難易度、責任の度合いなど。ジョブサイズともいう)を押さえておかないと待遇差について説明がつかないことが多々あり、各々が従事している職務の明確化とその比較は、待遇を検討するうえでの基本ともいえます。  具体的な比較方法については、社内の職務同士を比較し職務の大きさの違いをとらえる「単純比較法」や、詳細な職務分析を行い個々の職務を難易度ごとに分類して比較する「分類法」、職務の評価項目※6ごとにレベルを定義しその違いで評価する「要素比較法」、職務の評価項目ごとにポイント化し総計ポイントで職務の大きさを評価する「要素別点数法」などがあります(図表参照)。  高齢者雇用の観点からは、定年後再雇用となると定年前よりも一律で賃金水準が抑えられてしまう運用がみられますが、職務分析・職務評価を通した根拠ある待遇にすることで、本人のさらなる活躍や、適材適所の人材配置につなげることができると考えられます。 ***  次回は、「心理的安全性」について取り上げます。 ※1 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/parttime/dl/m_pamph.pdf ※2 「Job Skills Navigator powered by AI(通称:スキルアイ)」は、多数の業種について仕事内容や、求められる知識および技能・技術をとりまとめたモデルデータを用いて、企業組織で必要となる職業能力の洗い出しや、従業員の職業能力を把握するためのツール https://www.tetras.uitec.jeed.go.jp/statistics/skillai ※3 『職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル』に詳しい職務評価の考え方や手法、取組み事例などが紹介されている https://www.mhlw.go.jp/content/001042386.pdf ※4 https://part-tanjikan.mhlw.go.jp ※5  道府県働き方改革推進支援センターが実施している社会保険労務士などの専門家によるコンサルティング。「働き方改革推進支援センター」については、以下参照 https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/consultation ※6 代表的な項目に、人材代替性・革新性・専門性・裁量性・対人関係の複雑さ(部門外・社外)、対人関係の複雑さ(部門内)、問題解決の困難度、経営への影響度などがある(学習院大学「GEM Pay Survey System」) 図表  職務(役割)評価の手法(イメージ図) 単純比較法 社内の職務を1:1で比較し、職務の大きさが同じか、異なるのかを全体を捉えて評価します 易 普 分類法 社内で基準となる職務について、詳細な職務分析を行うことで、個々の職務を難易度にもとづき分類し、それを総合的に評価します 易 普 普 難 要素比較法 あらかじめ職務の構成要素別に、レベルを定義し、そのレベルの違いで評価します 要素別点数法 構成要素別の評価結果を、ポイントの違いで表します ○○の要素については、 普 □□の要素については、 普 ●●の要素については、 易 ■■の要素については、 易 ○○の要素については、 普 □□の要素については、 難 ●●の要素については、 普 ■■の要素については、 難 ○○の要素については、3P ●●● □□の要素については、3P ●●● ●●の要素については、1P ● ■■の要素については、1P ● 合計8p ○○の要素については、3P ●●● □□の要素については、5P ●●●●● ●●の要素については、3P ●●● ■■の要素については、5P ●●●●● 合計16p 出典:「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」(厚生労働省) 【P50-52】 労務資料 『令和8年版高齢社会白書』 内閣府  内閣府では、高齢社会対策基本法に基づき、1996(平成8)年より、高齢化の状況や政府の講じた高齢社会対策の実施の状況などについて、毎年政府が国会に提出している年次報告書『高齢社会白書』を取りまとめています。  『令和8年版高齢社会白書』では、「令和7年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」、「令和8年度 高齢社会対策」という二つの部分から構成されています。  今号では、『令和8年版高齢社会白書』のなかから、特に高齢者の就業に関する内容について抜粋して紹介します(編集部)。 第1章 高齢化の状況 第2節 高齢期の暮らしの動向 1 就業・所得 ■労働力人口の推移 ○令和7年の労働力人口は、7004万人であり、このうち65〜69歳の者は403万人、70歳以上の者は557万人であった。労働力人口に占める65歳以上の者の割合は13.7%であり、長期的には上昇傾向にある(51ページ図表1)。 ■労働力人口比率の推移 ○令和7年の労働力人口比率を見ると、65〜69歳では56.1%、70〜74歳では36.7%、75歳以上は12.7%となっており、いずれも上昇傾向である。 ■65歳以上の就業者数及び就業率の推移 ○65歳以上の就業者数及び就業率は上昇しており、特に65歳以上の就業者数を見ると22年連続で前年を上回っている。 ○65歳以上の就業率は各世代とも上昇傾向にあり、令和7年の就業率は、65〜69歳で54.5%、70〜74歳で36.2%、75歳以上で12.6%となっている(52ページ図表2)。 ■主な産業別65歳以上の就業者及び割合 ○令和7年における65歳以上の就業者を主な産業別に見ると、「卸売業、小売業」が131万人と最も多く、次いで「医療、福祉」が122万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が108万人となっている。 ○令和7年における産業別の65歳以上の就業者を10年前と比較すると、「医療、福祉」が64万人増加し、10年前の約2.1倍となっている。次いで「サービス業(他に分類されないもの)」が28万人、「教育、学習支援業」が18万人と、それぞれ増加している。 ○令和7年における各産業の就業者に占める65歳以上の就業者の割合を見ると、「農業、林業」が50.6%と最も高く、次いで「不動産業、物品賃貸業」が29.0%、「サービス業(他に分類されないもの)」が22.4%となっている(52ページ図表3)。 図表1 労働力人口の推移 労働力人口に占める65歳以上の割合(%) 65歳以上割合(右目盛り) 昭和55(1980)年 4.9% 7(2025)年 13.7% 労働力人口(万人) 合計 15〜24歳 25〜34歳 35〜44歳 45〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65〜69歳 70歳以上 昭和55(1980)年 5,650 699 1,438 1,393 1,208 385 248 65 114 平成2(1990)年 6,384 834 1,225 1,614 1,418 560 372 199 161 12(2000)年 6,766 761 1,508 1,296 1,617 666 426 265 229 22(2010)年 6,632 544 1,329 1,542 1,343 686 605 312 273 23(2011)年 6,596 525 1,291 1,569 1,333 655 637 296 288 24(2012)年 6,565 514 1,261 1,577 1,346 629 627 310 299 25(2013)年 6,593 518 1,239 1,582 1,380 620 602 345 307 26(2014)年 6,609 518 1,214 1,576 1,406 620 575 377 322 27(2015)年 6,625 516 1,191 1,558 1,439 617 556 413 334 28(2016)年 6,678 539 1,182 1,529 1,484 619 541 450 336 29(2017)年 6,732 543 1,173 1,502 1,529 629 537 454 366 30(2018)年 6,849 580 1,168 1,477 1,573 638 540 450 423 令和元(2019)年 6,912 598 1,158 1,442 1,619 647 544 438 466 2(2020)年 6,902 584 1,158 1,397 1,636 663 545 424 495 3(2021)年 6,907 580 1,161 1,371 1,661 663 545 41 516 4(2022)年 6,902 572 1,151 1,346 1,671 678 557 395 532 5(2023)年 6,925 586 1,156 1,319 1,665 700 569 394 537 6(2024)年 6,957 595 1,168 1,297 1,653 721 576 400 546 7(2025)年 7,004 603 1,190 1,280 1,639 738 594 403 557 資料:総務省「労働力調査」 (注1)年平均の値 (注2)「労働力人口」とは、15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたものをいう。 (注3)平成23年は岩手県、宮城県及び福島県において調査実施が一時困難となったため、補完的に推計した値を用いている。 (注4)四捨五入のため合計は必ずしも一致しない。 図表2 65歳以上の就業者数及び就業率の推移 (万人) 65〜69歳の就業者数 70〜74歳の就業者数 75歳以上の就業者数 平成28(2016)年 438 187 145 29(2017)年 444 207 155 30(2018)年 441 246 174 令和元(2019)年 428 275 188 2(2020)年 413 296 194 3(2021)年 399 314 196 4(2022)年 386 316 211 5(2023)年 383 303 228 6(2024)年 390 292 248 7(2025)年 392 284 266 (%) 65〜69歳の就業率(右目盛り) 70〜74歳の就業率(右目盛り) 75歳以上の就業率(右目盛り) 平成28(2016)年 42.8 25.0 8.7 29(2017)年 44.3 27.2 9.0 30(2018)年 46.6 30.2 9.8 令和元(2019)年 48.4 32.2 10.3 2(2020)年 49.6 32.5 10.4 3(2021)年 50.3 32.6 10.5 4(2022)年 50.8 33.5 11.0 5(2023)年 52.0 34.0 11.4 6(2024)年 53.6 35.1 12.0 7(2025)年 54.5 36.2 12.6 資料:総務省「労働力調査」 (注)年平均の値 図表3 主な産業別65歳以上の就業者数及び割合 (万人) 主な産業別65歳以上の就業者数 平成27(2015)年 主な産業別65歳以上の就業者数 令和7(2025)年 農業、林業 101 88 建設業 64 80 製造業 81 85 情報通信業 4 9 運輸業、郵便業 33 41 卸売業、小売業 114 131 金融業、保険業 6 9 不動産業、物品賃貸業 28 42 学術研究、専門・技術サービス業 25 37 宿泊業、飲食サービス業 49 59 生活関連サービス業、娯楽業 40 44 教育、学習支援業 22 40 医療、福祉 58 122 サービス業(他に分類されないもの) 80 108 公務(他に分類されるものを除く) 7 14 (%) 各産業の就業者数に占める65歳以上の就業者の割合 平成27(2015)年(右目盛り) 各産業の就業者数に占める65歳以上の就業者の割合 令和7(2025)年(右目盛り) 農業、林業 48.3 50.6 建設業 12.7 16.7 製造業 7.8 8.2 情報通信業 1.9 3.0 運輸業、郵便業 9.8 11.9 卸売業、小売業 10.8 12.7 金融業、保険業 3.9 5.7 不動産業、物品賃貸業 23.1 29.0 学術研究、専門・技術サービス業 11.6 13.7 宿泊業、飲食サービス業 12.8 14.2 生活関連サービス業、娯楽業 17.4 18.7 教育、学習支援業 7.2 11.2 医療、福祉 7.4 12.9 サービス業(他に分類されないもの) 19.6 22.4 公務(他に分類されるものを除く) 3.0 5.6 資料:総務省「労働力調査」 【P53】 立川(たてかわ)談慶(だんけい)の人生100年時代の歩き方 第8回 「抜け雀」から学ぶ「やせ我慢」の大切さ  還暦を超えてここまで来てしみじみと感じるのが、「世の中で一番大切なことはやせ我慢では?」ということです。落語家の話ですから無責任きわまりますが、「しょうがねえなあ」ということでやり過ごすことがどれほど大切なのかと日々思うばかりで、「しょうがねえなあ」といいながら「やせ我慢」することが、じつはでき得る最大の社会貢献ではとすら信じているのです。  「抜け雀」という落語があります。「貧乏旅籠(はたご)に宿泊した一文無しの絵描きが、宿賃の代わりに置いていった『雀の絵』が、抜け出して餌をついばむと評判になり、一気に人気店になります。その後その父親がその旅籠を訪れ、『この絵には抜かりがある。鳥かごが描かれていない』といって新たに絵を描き添えてゆきます。そして最初に雀の絵を描いた絵描きが訪れ、その鳥かごを描いてくれたのは父親だったと打ち明ける」という話です。  父と息子が織り成す人情噺(にんじょうばなし)で、先日も「父の日」での落語会で口演させていただきました。終演後、主催者と飲みながら話し、ふと気がついたのが、「この噺、旅籠の主が最初の絵描きを無銭飲食で訴えてしまっていたら終わりではないか」ということです。  たしかにその通りです。  この落語、旅籠の主がおっちょこちょいで「しょうがねえなあ」と渋々承諾してしまうところからすべてが始まります。そこで「やせ我慢」して「ま、いっか」的にやり過ごす「鈍感な優しさ」がのちに奇跡をもたらしたのではと、考えられませんでしょうか。  「娘が自分の父親を助けるためにつくった大金」を、父親が見ず知らずの若者の命を救うためにあげてしまう「文七元結(ぶんしちもっとい)」も「やせ我慢」が幸せを招く噺でもあります。中島(なかじま)岳志(たけし)さんはこれを「利他」の概念で分析していますが、まさに「利他」こそ「やせ我慢」そのものであります。我慢は長続きできない「短期的発想」ですが、やせ我慢は「長期的発想」ともいえましょう。  大金ではなく小銭の募金、私はここから「やせ我慢」して続けてみようかと思っています。必ず自分に返ってくるはずです。 【P54-55】 令和8年度生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内 令和7年度参加者満足度93% 参加無料  改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となるなか、高年齢者の戦力化は喫緊の課題です。  本シンポジウムでは、企業の人事担当者など関係者のみなさまに向けて、講演、事例発表、パネルディスカッションを通じて、ミドル・シニア層の戦力化に向けた実践的な取組みや課題、今後の展望についてともに考えます。 企業の経営者人事担当者必見 さまざまな企業の取組みがわかる ワークエンゲージメントとウェルビーイングの向上のための効果的取組 〜生涯現役でいきいきと働いていくために〜  少子高齢化の進展や65歳までの雇用確保の義務化を背景に、シニア就業者は増加しています。こうしたなか、シニアが定年後もいきいきと働き続けるためには、ワークエンゲージメントおよびウェルビーイングの向上が重要となります。本テーマでは、シニアが生涯現役で活躍するために、個人と組織の双方の観点から効果的な取組を考えます。 日時 2026(令和8)年10月16日(金)14:00〜16:45 ライブ配信 プログラム 14:00〜14:05 開会挨拶 14:05〜14:35 基調講演 「ワークエンゲージメントとウェルビーイングの向上のための効果的取組〜生涯現役でいきいきと働いていくために〜」 石山恒貴 氏 法政大学大学院地域創造インスティテュート/キャリアデザイン学部 教授 14:35〜15:35 事例発表 株式会社JR 東日本テクノハートTESSEI 総務部担当部長 伊澤星史 氏 DHLジャパン株式会社 執行役員人事本部長 大植栄二郎 氏 太陽生命保険株式会社 人事総務部人事課長 竹内俊介 氏 15:35〜15:45 休憩 15:45〜16:35 パネルディスカッション コーディネーター 石山恒貴 氏 パネリスト 株式会社JR 東日本テクノハートTESSEI 太陽生命保険株式会社 DHLジャパン株式会社 16:35〜16:45 総括 石山恒貴 氏 お問合せ先 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 生涯現役で活躍するためのキャリア戦略と企業支援  近年、健康寿命の延伸や生成AI 等の技術革新により、働く人と企業を取り巻く環境は大きく変化しています。こうしたなか、生涯現役で働き続けるためには、個人が主体的にキャリアを形成していくことが重要となります。本テーマでは、ミドル・シニアが環境変化に適応しながら活躍し続けるためのキャリア戦略について議論を深めます。 日時 2026(令和8)年10月30日(金)14:00〜16:45 ライブ配信 プログラム 14:00〜14:05 開会挨拶 14:05〜14:35 基調講演 「生涯現役で活躍するためのキャリア戦略と企業支援」 廣川進 氏 法政大学 キャリアデザイン学部 教授 14:35〜15:35 事例発表 株式会社IHI 人事部次長 余語一喜 氏 トラスコ中山株式会社 経営管理本部人事部人事課長 兼ヘルスケア課長 玉井智也 氏 中外製薬株式会社 人事部エンプロイーサポートグループ グループマネジャー 山本秀一 氏 15:35〜15:45 休憩 15:45〜16:35 パネルディスカッション コーディネーター 廣川進 氏 パネリスト 株式会社IHI 中外製薬株式会社 トラスコ中山株式会社 16:35〜16:45 総括 廣川進 氏 申込方法 申込締切 ライブ視聴:各開催日 当日15時 1 参加イベントを選択 下記の「申込案内ページ」から、参加を希望するイベントを選択してください。 2 申込み 「利用者登録せずに申し込む方はこちら」を選択し、利用規約に同意した上で必須事項を入力し、「確認へ進む」を選択してください。 ※入力後、受信したメールに記載されているURLをクリックすると、申請ページが表示されます。 3 申込み確認 入力内容を確認し、「申込む」を選択してください。 ※申込み後、完了メールが届きますので、ご確認ください。 4 当日 申込み完了メールに掲載されているURLから動画を視聴してください。 申込案内ページ https://www.elder.jeed.go.jp/moushikomi.html ※専用フォームからのお申込みがむずかしい場合、54ページのお問合せ先にご連絡ください。お電話で対応させていただきます。 ※お申込みの際に取得した個人情報は適切に管理され、JEEDが主催・共催・後援するシンポジウム・セミナー、刊行物の案内等にのみ利用します。利用目的の範囲内で適切に取り扱うものとし、法令で定められた場合を除き、第三者に提供しません。 【P56-57】 BOOKS ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 定年後をどう生きるか。その不安を制度や社会構造から読み解き、答えを探る一冊 役割のあと 何で生きるか 岡部(おかべ)康弘(やすひろ)著/幻冬舎(げんとうしゃ)ルネッサンス★/1320円  本書は、企業人の働き方を長年研究し、「人は何に支えられて生きるのか」を問い続けている著者が、役職定年や再雇用制度などの実態をひもときながら、役割や仕事を失ったとき、「人は何を支えに生きていくのか」を探る一冊。  本文は、一定の年齢で管理職から外れる役職定年から、定年退職、退職後という流れに沿って、定年後の不安を個人の問題ではなく、制度や社会構造、組織、生き方の各側面から読み解き、働くことと人生の主導権をにぎるのはだれか、また、人はなぜ生きるのか、人生後半を何によって生きるのかを問い、答えを探る。  役職定年を迎えた大手企業元部長へのインタビューや、再雇用後の仕事・給与・満足度の現実、エイジズム(年齢差別)の現状や課題などに迫り、考察し、「年齢を重ねても挑戦し、人とかかわり、心が動く瞬間を自らつくり続けること」の意味を考え、役割や肩書きを失ったあとも、「自分の関心に従って動き、人とつながり、必要とされる場所に新たな役割をつくること」を読者に呼びかける。高齢者雇用にたずさわる担当者の手引きとして、一読をおすすめしたい。 ★本書の販売は、電子書籍の配信のみ。購入方法は出版社のホームページをご参照ください 人事部門の初任者にも経験者にも有用。人事の基礎知識や用語をわかりやすく解説 いまさら聞けない人事用語辞典 吉岡(よしおか)利之(としゆき)著/公益財団法人日本生産性本部生産性労働情報センター/2640円  本書は、本誌2020(令和2)年6月号から現在まで長期連載中の「いまさら聞けない人事用語辞典」で取りあげた用語解説を書籍としてまとめた一冊。  連載開始から5年以上が経過しているため、書籍化するにあたり、統計データを最新のものに更新するなどの修正をした。また、『エルダー』の連載では高齢者雇用に関連する内容に重点を置いていたが、より多くの人たちに本書を活用してほしいという趣旨から、内容の見直しや書き換えを行い、人事部門に初めて配属された人はもちろん、ある程度経験を積んだ人にも、担当者として押さえておきたい人事関連の基礎知識や用語をわかりやすく解説した内容となっている。  本文の構成は、用語ごとに数行の定義を示した後、詳しい解説を掲載している。解説では、用語の定義や概要、その用語ができた背景、関連する用語や考え方の説明、浸透・運用実態といった要素をなるべく含めて、体系的に理解できるように工夫されている。  基本的な用語を中心に、関連して知っておくとよい用語も選定されており、それぞれの用語の奥深さや新たな気づきも得られる良書である。 管理職という役割を「罰ゲーム」から「人を育てる“最さい幸こう”の仕事」に 心が動くマネジメント物語 誰も教えてくれなかった管理職の喜び18話 前川(まえかわ)孝雄(たかお)著/FeelWorks/1694円  「負担が増えるだけで割に合わない」とか「自分はなりたくない」と考える若者が増えて、「罰ゲーム」とさえいわれている昨今の管理職。  本書は、その役割を、「人を育てる“最幸(さいこう)”の仕事」とするために、500社超の部下を育て活かす現場づくりにたずさわってきた著者が、豊富な経験から得たノウハウと実際に起きた人の心を動かすマネジメントの物語を紹介する。  著者は、「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げて研修事業などに邁進し、本誌の巻頭コーナー「リーダーズトーク」(2022年5月号)※などにご登場いただいている。  本書の特徴は、実話をもとにしたごく一般的な職場の上司と部下の等身大のエピソードで構成されているところにあるが、そこに至るまでの上司の試行錯誤の様子や、部下からの抵抗など決してきれい事とはいえない生々しい状況も描かれている。また、管理職がやりがいを実感する物語が読者の職場でも再現できるように、著者が提唱する、例えば「アドバイスより傾聴を徹底する」などの『一人ひとりを活かす6つの上司力』の構造にあてはめて、18の物語を解説している。日々悩みながら奮闘している管理職のみなさんに力を与えてくれる一冊だ。 人生後半を、自分らしく生きていくための術を紹介 定年後、上機嫌を愉しむ 死ぬまで元気に、知的に生きるために 齋藤(さいとう)孝(たかし)著/ポプラ社/1078円  「定年」という人生の大きな節目を意識したとき、明るい気持ちになる人もいれば、生活への不安をはじめ、自分の健康や居場所などが心配になって元気がなくなる人もいるだろう。  本書は、そんなモヤモヤを吹き飛ばし、人生後半を思いきり自分らしく生きていくための術を紹介し、シニア世代の背中を押してくれる。  著者は、明治大学文学部教授の教育学者で、「読書力」や「コミュニケーション力」などに関する多数の著書でも知られる。1960(昭和35)年生まれのまさに定年後世代であり、本書では自身の人生観や死生観、病気の経験にふれ、大病を経験してからは「いつ終わりが来てもかまわないという淡々とした感覚」を持って、現在まで立ち止まらずに、好きなこと、新しいことにチャレンジし続けているという。そして、「何かに打ち込んでいる途上で」、「上機嫌で笑いながら、軽くスッと事切れるのが私の理想です」という心情を明かす。本文では、定年後のシフトチェンジの仕方から、コミュニケーションや学び、孤独やプライドについての考え方、不機嫌から上機嫌へ転換するためのカギなどを説く。シニア世代向けの指南書だが、高齢者雇用のためのヒントもみつかるだろう。 これからの多様な人材の能力活用に向けて、人事労務担当者にとって参考になる一冊 日本女性の仕事とキャリア ―職業とタスクからみる均等法後40年― 小松(こまつ)恭子(きょうこ)著/独立行政法人労働政策研究・研修機構/3630円  雇用における性別による差別を禁止し、均等な機会・待遇の確保を目的とした「男女雇用機会均等法」。1986(昭和61)年の施行から2026(令和8)年は40年の節目を迎えた。働く女性の人数は大幅に増えたが、そのことが、女性の仕事の質の向上につながったのか。  本書は、女性の就業を「質」の面からとらえ、仕事(職業およびそれを構成するタスク)に着目した実証分析により、現代の日本女性の就業行動と能力活用の実態を多面的に解明する。さらに、キャリア継続やスキル活用を制約する要因についても考察する。主として女性のキャリアを対象としているが、高齢者雇用が拡大するなか、家族の介護や自身の健康にかかわる「制約」を抱えている高齢労働者は多い。日本の雇用システムは長く無限定な働き方を前提としてきたが、著者は、「制約を抱える労働者が例外ではなくなりつつある状況のもとで、また働き方や仕事に対する価値観が多様化するなかで、その仕組みはどのように再構築されるべきなのか。本書は、こうした問いに向き合うための手がかりを提供したい」とまえがきに綴っている。  人事労務担当者がこれからの人事施策を考える際に参考になる一冊である。 ※リーダーズトーク(2022年5月号)は、JEEDホームページからもご覧いただけます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202205/html5m.html#page=3 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和7年度)」を公表  厚生労働省は、都道府県労働局や公共職業安定所(ハローワーク)における「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和7年度)」を公表した。  それによると、障害者差別および合理的配慮の提供に関する相談件数は631件で、前年度に比べて193件増加した(対前年度比44.1%増)。相談者の内訳は、障害者からが573件、事業主からが44件、その他(家族等)が14件となっている。相談内容をみると、障害者差別に関する相談は122件、合理的配慮の提供に関する相談は509件となっている。  障害者差別に関する相談内容についてみると、「募集・採用時」がもっとも多く16.7%、次いで「退職の勧奨」が15.2%、「解雇」が13.0%となっている。合理的配慮の提供に関する相談内容についてみると、「上司・同僚の障害理解に関するもの」(27.3%)、「相談体制の整備、コミュニケーションに関するもの」(16.0%)、「就業場所・職場環境に関するもの」(14.1%)が多かった。  また、都道府県労働局長による紛争解決の援助申立受理件数は2件で、前年度の2件と同数となっている。障害者雇用調停会議による調停申請受理件数は15件で、前年度の11件から4件増加となっている。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73696.html 厚生労働省 改訂版「モデル労働条件通知書」などを公表(パートタイム・有期雇用労働法等の改正に対応)  厚生労働省は、2026(令和8)年10月1日に施行されるパートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法の改正にともない、改訂版の「モデル労働条件通知書」などを公表している。  今回の改正のおもな事項は次の通り。 ◆パートタイム・有期雇用労働者の雇い入れ時の労働条件明示事項に、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨を明示(違反者は10万円以下の過料に処される)。 〈モデル労働条件通知書〉一般労働者用 https://www.mhlw.go.jp/content/001696984.pdf 〈モデル労働条件通知書〉短時間労働者用 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001697547.pdf 〈モデル労働条件通知書〉派遣労働者用 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001697549.pdf ◆同一労働同一賃金ガイドラインの改正。不合理な待遇差とみなされる基準がより明確化される。 〈改正後の同一労働同一賃金ガイドライン〉 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001696696.pdf 〈改正前・改正後の新旧対照表(解説付き)〉 https://www.mhlw.go.jp/content/001695906.pdf 今回の改正に関するリーフレット https://www.mhlw.go.jp/content/001698012.pdf 「同一労働同一賃金特集ページ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html 経済産業省 「企業・自治体等向け 女性の健康課題の解決に向けたフェムテック導入ガイダンス」を公表  経済産業省は、女性の健康課題への対応策の一つとして、フェムテックを活用する際のポイントや事例をまとめた「企業・自治体等向け 女性の健康課題の解決に向けたフェムテック導入ガイダンス」を公表した。  フェムテック(Femtech)とは、Female(女性)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、月経、妊娠・出産、更年期など女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスをさしている。女性の健康課題による労働損失等の経済損失は、社会全体で約3.4兆円と推計されているなか、フェムテックの活用が対応策の一つとして期待されている。  同ガイダンスは、企業や自治体等がフェムテックの導入を検討する際の手引きとしてまとめられた。組織の人材戦略や職場環境整備をになう経営者・管理職や人事・総務担当者をおもな読者として想定し、フェムテック導入による意義・効果、導入にあたっての考え方、導入検討のポイントなどを解説。また、健康課題に応じたフェムテック製品・サービスの例をはじめ、実際にフェムテックを導入する際の五つのステップ、導入の必要性を組織内で説明する際に活用できる各種データや、製品・サービスを導入した企業、医療機関の事例などを紹介している。  経済産業省では、だれもが働きやすい環境づくりの一つの方法として、同ガイダンスの活用を呼びかけている。 https://www.meti.go.jp/press/2026/05/20260527002/20260527002.html 中央労働委員会 「令和7年賃金事情等総合調査」(賃金事情調査・退職金、年金及び定年制事情調査)の結果を公表  中央労働委員会は、2025(令和7)年「賃金事情等総合調査」(「賃金事情調査」と「退職金、年金及び定年制事情調査」)の結果をまとめた。  「賃金事情調査」の結果から、2025年6月分の平均所定内賃金についてみると41万2800円で、前年(40万3900円)に比べ8900円増加。平均所定外賃金は7万800円で、前年(6万8100円)に比べ2700円増加している。  次に、「退職金、年金及び定年制事情調査」の結果から、定年制に関する部分をみると、定年制を採用している企業は、調査産業計で集計149社のすべてとなっており、定年を「60歳」としているのは70.5%、「65歳」が27.5%となっている。  続いて、継続雇用制度に関する部分をみると、継続雇用制度を採用している企業は、定年制のある企業の94.0%で、そのすべてで再雇用制度を採用している。再雇用時の雇用形態は、「嘱託社員」が58.6%ともっとも多く、ほかでは「契約社員」24.3%、「正社員」5.7%、「パート・アルバイト」が5.0%などとなっている。  再雇用時と定年退職時の労働条件を比べてみると、所定労働時間が「定年退職時と同じ」は79.1%、定年退職時の「50%以上80%未満」、「80%以上100%未満」がともに4.3%となっている。基本給の時間単価を比較すると、「50%以上80%未満」が60.4%、「50%未満」が16.5%、「80%以上100%未満」が7.9%となっている。 https://www.mhlw.go.jp/churoi/chingin/index.html 調査・研究 JILPT 「ものづくり産業における人材確保・定着と技能継承に関する調査」結果を発表  独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、「ものづくり産業における人材確保・定着と技能継承に関する調査」結果を発表した。  調査は、若者を中心とした人材の確保・定着についての課題や、ベテラン技能者から若手技能者への技能継承を進めるために取り組んでいる工夫などを把握することを目的として、企業にアンケート調査を行ったもの。有効回収数は、4342社。  調査結果では、技能継承を「重視している」と回答した企業が51.8%、「やや重視している」が39.3%で、あわせて9割超(91.1%)となっている。  技能継承を進めるための取組みとしては(複数回答)、「再雇用や勤務延長などにより高年齢者従業員に継続して勤務してもらう」(54.8%)の割合がもっとも高く、次いで「継承すべき技能の見える化(テキスト化・マニュアル化・デジタル化)を図る」(31.2%)、「技能継承の対象となる者を選抜して訓練する」(27.9%)などの順となっている。  技能継承が「うまくいっている」と「ややうまくいっている」と回答した企業にその理由をたずねると(複数回答)、「計画的にOJTを実施しているから」(40.4%)がもっとも高く、次に「指導者と指導を受ける側とのコミュニケーションがよく図られているから」(34.9%)、「十分な時間をかけているから」(29.7%)などとなっている。 https://www.jil.go.jp/press/documents/20260527.pdf 発行物 生命保険文化センター 小冊子『ねんきんガイド―今から考える老後保障―』を改訂  公益財団法人生命保険文化センターは、小冊子『ねんきんガイド―今から考える老後保障―』(B5判、カラー68ページ)を改訂した。  この冊子は、老後をどのように暮らしていくのか、そのためにはどのような経済的準備が必要なのかを考えるときに参考にできる最新情報を掲載し、公的年金制度の基礎知識、個人年金保険の仕組みや契約時の注意点などを、図表や具体例を用いてわかりやすく解説している。  今回の改訂(2026〈令和8〉年6月)のおもなポイントは、次の通り。 ◆特集「公的年金制度の主な改正内容」を掲載し、2025年の年金制度改正法に基づき、公的年金制度の改正内容を説明 ◆2026年度の年金額・加算額などを反映し、事例計算や年金額早見表などを更新 ◆制度改正などを反映し、最新情報を掲載(育児期間の国民年金保険料の免除、在職老齢年金の支給停止調整額の引上げ、離婚時の年金分割の請求期限延長、遺族年金・障害年金の保険料納付要件の特例の延長、iDeCoの加入可能年齢・拠出限度額の引上げなど) ◆各種掲載データの最新化 ※一冊200円(税込・送料別)。申込みは、左記ホームページから、またはFAX・郵送で。 https://www.jili.or.jp/press/2026/10494.html 【P60】 次号予告 10月号 特集 令和8年度 高年齢者活躍企業コンテストT 厚生労働大臣表彰受賞企業事例から リーダーズトーク 三嶋(原)浩子さん(京都精華大学メディア表現学部 教授) 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 編集アドバイザー(五十音順) 池田誠一……日本放送協会解説委員室解説委員 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 金沢春康……一般社団法人 100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐藤弘太……日本商工会議所産業政策第二部労働担当課長 谷 圭一郎……日清食品ホールディングス株式会社グローバル人事部次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TISI株式会社人事本部人事部 山ア京子……明治大学商学部特任准教授、日本人材マネジメント協会理事長 JEEDメールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.html であることを確認のうえアクセスしてください。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 編集後記 ●今号の特集は「シニア社員のためのW働きがい”改革!」をお届けしました。  シニア社員に、その能力や経験を発揮してもらいながら戦力として活躍してもらうためには、さまざまな視点から取組みを深めることが必要不可欠です。やりがいを持って働いてもらうための裁量や責任の付与をはじめ、モチベーション低下を防ぐ適切な評価・処遇制度、病気の治療や家族の介護といったさまざまな事情に対応可能な多様で柔軟な勤務制度、社員の安全や健康に配慮した職場環境改善・整備など、「働きやすさ」を高める総合的な取組みが「働きがい」につながります。  豊富な経験や知見を持つシニア人材は会社にとって貴重な戦力。ぜひ本企画を参考にしていただき、シニア社員のための「W働きがい”改革」に取り組んでいただければ幸いです。 ●10月は「高年齢者就業支援月間」です。10月9日に開催される「高年齢者活躍企業フォーラム」をはじめ、10月16日・30日にそれぞれ開催される「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」、全国47都道府県で開催される「地域ワークショップ」などのイベントがもりだくさんです。みなさまのご参加をお待ちしています。 ●読者アンケートへのご協力も、どうぞよろしくお願いいたします(上記の二次元コードから回答いただけます)。 月刊エルダー9月号 No.562 ●発行日−−令和8年9月1日(第48巻 第9号 通巻562号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 古屋勝史 編集人−−企画部次長 石井伸明 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6200 FAX 043(213)6556 (企画部情報公開広報課) ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp 発送先の変更などについては、上記のメールアドレスまでご連絡ください。 ●編集委託 株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く方の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用・雇用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.36 五感を研ぎ澄ませて励むおいしい和菓子づくり 和菓子職人 坪田(つぼた)知之(ともゆき)さん(63歳) 「原材料がお菓子に変わる過程にやりがいを感じます。お客さまに幸せな気持ちになってもらえるよう、ていねいな仕事を心がけています」 地元銘菓を生み出してきた「千葉県の名工」  「船橋(ふなばし)ばか面(めん)おどり」、「船橋名産菓梨(めいさんかなし)の里(さと)」、「船橋三番瀬(さんばんぜ)最中(もなか)」。どれも「ふなばしセレクション※」の認証を受けた銘菓だ。考案したのは、千葉県船橋市で1966(昭和41)年創業の和菓子店「扇屋(おうぎや)」の二代目、坪田知之さん。和菓子職人としてのキャリアは44年におよぶ。年間100種類以上の上生菓子から焼き菓子まで幅広く手がけるたしかな腕が、扇屋ののれんを守り続けている。  「どの商品にも手を抜かず、全力で仕上げる。何かに特化せず、なんでもバランスよくこなせる職人でありたいと思っています」  そう話す坪田さんは、全国菓子大博覧会で「農林水産大臣賞」などの受賞を重ね、2024(令和6)年には「千葉県の卓越した技能者(千葉県の名工)」に選出された。 和菓子の味の決め手おいしいあんへのこだわり  看板商品の「梨の里」をはじめ、扇屋の焼き菓子はどれも、中のあんがみずみずしくしっとりとしている。この食感を生むのが、独自の「急速冷凍焼成技法」だ。修業時代に焼き菓子を任され、「きれいに焼き上がると本当にうれしかった」という坪田さんは、だれに教わるでもなく、試行錯誤を重ねながらこの製法にたどり着いた。  「焼き菓子は、ただ焼成すると中のあんの水分が蒸発しパサつく傾向があります。かといってあんを軟らかくすると、今度は外側の生地が垂れたり割れたりして見た目が悪くなります。そこで、軟らかいあんを包んだらすぐに冷凍し、冷凍のまま焼成します。こうすることで、あんの水分が蒸発する前に生地が焼き上がるため、見た目も美しく、しっとりとした焼き菓子に仕上がります」  あんづくりは手間がかかり重労働でもあるため、仕入れに頼る店も多い。しかし、「和菓子はあんで味が決まるといっても過言ではない」という坪田さんは、あんの自家製造にこだわる。小豆(あずき)やいんげん豆などの原材料から、こしあん、粒あん、白あんなど、菓子ごとに糖度を変えながら30種類近いあんをすべて自家製で仕込む。  「『和菓子は五感の総合芸術』ともいわれますが、食べる人だけでなく、職人も五感をフルに働かせてつくるものだと思っています。見た目の美しさ、味のおいしさはいうまでもありませんが、嗅覚では柏もちや桜もちなどの葉を、温かいうちに巻いて香りを移します。触覚では硬さや軟らかさ、熱さや冷たさなどを確かめます。また聴覚では、あんを練るときの火加減や、もちつき、蒸すときの音を聞いて判断します。このように、五感すべてを働かせて、つねにおいしい和菓子をつくろうという気持ちで仕事に向き合う。その感性こそが大切だと思っています」 父から継いだ家業を娘とともに守る  先代である父が扇屋を開業したのは、坪田さんが3歳のとき。朝早くから夜遅くまで働く両親の姿を毎日目にして育った。「両親の力になりたい」、「店をなくしたくない」という思いから、自然と家業を継ぐ決意を固めていった。  高校卒業後、父の師匠の店である東京・本郷の「扇屋」に8年間弟子入りし、基礎を身につけた。その後、自分の手で一から十までつくり上げてみたいと、ほかの和菓子店で修業を重ねた。そんななか、1993(平成5)年に父が急逝し、家業を継ぐことに。以来30年余り、坪田さんは扇屋の味を守り、育ててきた。現在は長女の和美さんも和菓子づくりに加わっている。  「本郷の兄弟子からは、厳しく叱られることもなく、ていねいに仕事を教えてもらいました。娘にも同じように、経営の苦労から菓子づくりの理念まで、ていねいに伝えるようにしています」  今年、扇屋は創業60周年を迎える。その記念銘菓として、船橋の名所を題材にした新作を開発中だ。  「この先も健康に気をつけながら、仕事場に立てなくなる日まで、和菓子づくりに励んでいきたいと思います」 株式会社扇屋 TEL:047(465)6716 https://ougiya-wagashi.com (撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英) ※ふなばしセレクション……ふなばし産品ブランド協議会が船橋市内の優良な商品を広く募集し、「ふなばしセレクション認証品」として認証する制度 写真のキャプション 長女の和美(かずみ)さんと2人で和菓子をつくる。「仕事は1人よりも2人で息を合わせてやるほうが効率よくできます。長女の仕事のパートナーも育てたい」と話す 扇屋の店先には、閉店時でも和菓子を購入できる自動販売機が設置されている 創業時から家族で営まれてきた扇屋。現在は妻の智子(ともこ)さん(左)、長女の和美さんと3人で店を支えている 上生菓子の「菊」をつくるため、三角ベラを使い等間隔に筋をつけているところ。複数の品物を均一に仕上げられるところに職人の技が光る 木型、抜き型、細工ベラなど、上生菓子づくりに用いる道具の一部。近年は木型職人が減り、3Dプリンターで代用品をつくることもあるが、使い勝手の面でおよばないという 「なんでもつくれる職人になりたかった」と坪田さんがいうように、ショーケースには季節の上生菓子や焼き菓子がずらりと並ぶ。取材の日も客がひっきりなしに来店していた 柿、菊、月うさぎ、栗、松茸(まつたけ)―初秋を彩る上生菓子の数々。白あんをベースにした練り切りに、木型や細工ベラを使ってていねいに意匠を施していく。坪田さんは年間100種類以上の上生菓子を手がける 焼き上がった商品をオーブンから取り出す。凍ったまま焼き上げることで、外はきれいに焼けて、中はしっとりとしたあんの焼き菓子ができあがる 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  脳の力のピークは「18〜25歳」とされることが多いですが、その一方で、「誠実性」や「協調性」、「心の安定性」は年齢を重ねるとともに高まるといわれています。その力を支えるのは、ワーキングメモリの力です。脳トレでしっかりと鍛えて、加齢とともに伸びる力をさらに伸ばしましょう。 第111回 目標3分 ひらがな暗算 数字や記号をひらがなに変えた計算式を、頭の中で、ひらがなから数字や記号に置き換えて計算してください。最後のIは、□の中に入る数字を答えましょう。 @さんたすにひくいちたすご= Aよんひくいちたすろくたすなな= Bろくひくよんたすきゅうひくいち= Cななたすじゅうさんひくじゅういち= Dにたすさんじゅうよんひくご= Eよんじゅうごひくななたすはち= Fじゅうななひくはちたすじゅうさん= Gにじゅうろくひくよんひくろく= Hさんじゅういちたすななたすよん= I□ひくきゅうひくに=にじゅうなな 脳科学で読み解く「ひらがな暗算」  今回の脳トレは、数字や演算記号をひらがなに置き換えた状態で解く、暗算トレーニングです。問題を解くには、ひらがなを数字や記号へ変換し、その情報を頭の中に保持したまま計算を進める必要があります。この一連の処理では、情報を一時的に保持しながら操作する「ワーキングメモリ」(作業記憶)が積極的に働くと考えられます。  さらに、文字を数字として読み替える認知的な切り替え(認知的柔軟性)や、複数の情報を同時に処理する実行機能も求められます。通常の暗算では計算そのものが中心になりますが、「ひらがな暗算」では「変換→保持→計算」という複数の認知プロセスを連続して行うため、脳には、より多面的な刺激を与えます。  また、この脳トレにくり返し取り組むことで、ひらがなから数字への対応が徐々に自動化され、認知処理の効率が高まることも期待できます。このような「新しいルールを学習し、それを素早く運用する」という過程は、脳に適度な刺激を与える認知トレーニングとしての特徴もあります。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。人システム研究所所長、公立諏訪東京理科大学特任教授。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルN I RSを使って、脳活動を調べている。『脳活ドリル オール新作! たっぷり1000問』(宝島社)など著書多数。 【問題の答え】 @9 A16 B10 C9 D31 E46 F22 G16 H42 I38 【P65】 ホームページはこち (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2026年9月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-330 【裏表紙】 高年齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 地域ワークショップ  高年齢者雇用にご関心のある事業主や人事担当者のみなさま!改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務とされ、高年齢者の活躍促進に向けた対応を検討中の方々も多いのではないでしょうか。  JEEDでは各都道府県支部が中心となり、生涯現役社会の実現に向けた「地域ワークショップ」を開催します。事業主や企業の人事担当者のみなさまへ、高年齢者に戦力として活躍してもらい、いきいき働いていただくための情報をご提供します。  各地域の実情をふまえた具体的で実践的な内容ですので、ぜひご参加ください。 概要 日時/場所 高年齢者就業支援月間の10月〜11月に各地域で開催 カリキュラム (以下の項目などを組み合わせ、2〜3時間で実施します) ▲専門家による講演【70歳までの就業機会の確保に向けた具体的な取組みなど】 ▲事例発表【先進的に取り組む企業の事例紹介】 ▲ディスカッション など 参加費 無料(事前のお申込みが必要となります) 開催スケジュール 下記の表をご参照ください 開催スケジュール ※  で記載されている北海道、青森、宮城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、福井、静岡、三重、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、愛媛、福岡、長崎、鹿児島、沖縄については、ライブ配信やアーカイブ配信等の動画配信を予定しています。 ※開催日時などに変更が生じる場合があります。詳細は、各都道府県支部のホームページをご覧ください。 都道府県 開催日 場所 北海道 10月30日(金) 北海道職業能力開発促進センター 青森 11月12日(木) アピオあおもり 岩手 10月20日(火) いわて県民情報交流センター(アイーナ) 宮城 11月6日(金) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 10月27日(火) 秋田県生涯学習センター 山形 10月15日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 10月20日(火) ウィル福島 アクティおろしまち 茨城 10月21日(水) ホテルレイクビュー水戸 栃木 10月22日(木) とちぎ福祉プラザ 群馬 10月29日(木) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 10月7日(水) さいたま共済会館 千葉 10月5日(月) ホテルポートプラザちば 東京 10月16日(金) SYDホール 神奈川 10月6日(火) かながわ労働プラザ 新潟 10月6日(火) 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター 富山 10月20日(火) 富山県総合情報センター 福岡 10月21日(水) JR博多シティ 石川 10月22日(木) 石川県地場産業振興センター 福井 10月8日(木) 福井県中小企業産業大学校 山梨 11月17日(火) 山梨職業能力開発促進センター 長野 10月20日(火) ホテル信濃路 岐阜 10月2日(金) みんなの森 ぎふメディアコスモス みんなのホール 静岡 10月14日(水) グランシップ 愛知 11月19日(木) 岡谷鋼機名古屋公会堂 三重 10月15日(木) 津公共職業安定所 都道府県 開催日 場所 滋賀 10月16日(金) 滋賀職業能力開発促進センター 京都 10月20日(火) 京都経済センター 大阪 10月27日(火) 大阪府社会保険労務士会館 兵庫 10月14日(水) 兵庫県中央労働センター 奈良 10月15日(木) 奈良商工会議所 和歌山 10月23日(金) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 10月22日(木) 米子コンベンションセンター 島根 10月15日(木) 島根職業能力開発促進センター 岡山 10月23日(金) 岡山職業能力開発促進センター 広島 10月23日(金) 広島職業能力開発促進センター 山口 10月1日(木) 山口職業能力開発促進センター 徳島 10月14日(水) ろうきんホール 香川 10月15日(木) 香川職業能力開発促進センター 愛媛 10月22日(木) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 10月22日(木) 高知職業能力開発促進センター 福岡 10月21日(水) JR博多シティ 佐賀 10月30日(金) アバンセ 長崎 10月22日(木) 長崎県庁 熊本 10月21日(水) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月6日(火) トキハ会館 宮崎 10月14日(水) 宮崎県立芸術劇場 鹿児島 10月27日(火) カクイックス交流センター 沖縄 10月23日(金) 沖縄労働局 各地域のワークショップの内容は、各都道府県支部高齢・障害者業務課(65ページ参照)までお問い合わせください。 上記日程は予定であり、変更する可能性があります。 変更があった場合は各都道府県支部のホームページでお知らせします。 jeed 生涯現役ワークショップ 検索 2026 9 令和8年9月1日発行(毎月1回1日発行)第48巻第9号通巻562号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 〈編集委託〉株式会社労働調査会