BOOKS ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 定年後をどう生きるか。その不安を制度や社会構造から読み解き、答えを探る一冊 役割のあと 何で生きるか 岡部(おかべ)康弘(やすひろ)著/幻冬舎(げんとうしゃ)ルネッサンス★/1320円  本書は、企業人の働き方を長年研究し、「人は何に支えられて生きるのか」を問い続けている著者が、役職定年や再雇用制度などの実態をひもときながら、役割や仕事を失ったとき、「人は何を支えに生きていくのか」を探る一冊。  本文は、一定の年齢で管理職から外れる役職定年から、定年退職、退職後という流れに沿って、定年後の不安を個人の問題ではなく、制度や社会構造、組織、生き方の各側面から読み解き、働くことと人生の主導権をにぎるのはだれか、また、人はなぜ生きるのか、人生後半を何によって生きるのかを問い、答えを探る。  役職定年を迎えた大手企業元部長へのインタビューや、再雇用後の仕事・給与・満足度の現実、エイジズム(年齢差別)の現状や課題などに迫り、考察し、「年齢を重ねても挑戦し、人とかかわり、心が動く瞬間を自らつくり続けること」の意味を考え、役割や肩書きを失ったあとも、「自分の関心に従って動き、人とつながり、必要とされる場所に新たな役割をつくること」を読者に呼びかける。高齢者雇用にたずさわる担当者の手引きとして、一読をおすすめしたい。 ★本書の販売は、電子書籍の配信のみ。購入方法は出版社のホームページをご参照ください 人事部門の初任者にも経験者にも有用。人事の基礎知識や用語をわかりやすく解説 いまさら聞けない人事用語辞典 吉岡(よしおか)利之(としゆき)著/公益財団法人日本生産性本部生産性労働情報センター/2640円  本書は、本誌2020(令和2)年6月号から現在まで長期連載中の「いまさら聞けない人事用語辞典」で取りあげた用語解説を書籍としてまとめた一冊。  連載開始から5年以上が経過しているため、書籍化するにあたり、統計データを最新のものに更新するなどの修正をした。また、『エルダー』の連載では高齢者雇用に関連する内容に重点を置いていたが、より多くの人たちに本書を活用してほしいという趣旨から、内容の見直しや書き換えを行い、人事部門に初めて配属された人はもちろん、ある程度経験を積んだ人にも、担当者として押さえておきたい人事関連の基礎知識や用語をわかりやすく解説した内容となっている。  本文の構成は、用語ごとに数行の定義を示した後、詳しい解説を掲載している。解説では、用語の定義や概要、その用語ができた背景、関連する用語や考え方の説明、浸透・運用実態といった要素をなるべく含めて、体系的に理解できるように工夫されている。  基本的な用語を中心に、関連して知っておくとよい用語も選定されており、それぞれの用語の奥深さや新たな気づきも得られる良書である。 管理職という役割を「罰ゲーム」から「人を育てる“最さい幸こう”の仕事」に 心が動くマネジメント物語 誰も教えてくれなかった管理職の喜び18話 前川(まえかわ)孝雄(たかお)著/FeelWorks/1694円  「負担が増えるだけで割に合わない」とか「自分はなりたくない」と考える若者が増えて、「罰ゲーム」とさえいわれている昨今の管理職。  本書は、その役割を、「人を育てる“最幸(さいこう)”の仕事」とするために、500社超の部下を育て活かす現場づくりにたずさわってきた著者が、豊富な経験から得たノウハウと実際に起きた人の心を動かすマネジメントの物語を紹介する。  著者は、「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げて研修事業などに邁進し、本誌の巻頭コーナー「リーダーズトーク」(2022年5月号)※などにご登場いただいている。  本書の特徴は、実話をもとにしたごく一般的な職場の上司と部下の等身大のエピソードで構成されているところにあるが、そこに至るまでの上司の試行錯誤の様子や、部下からの抵抗など決してきれい事とはいえない生々しい状況も描かれている。また、管理職がやりがいを実感する物語が読者の職場でも再現できるように、著者が提唱する、例えば「アドバイスより傾聴を徹底する」などの『一人ひとりを活かす6つの上司力』の構造にあてはめて、18の物語を解説している。日々悩みながら奮闘している管理職のみなさんに力を与えてくれる一冊だ。 人生後半を、自分らしく生きていくための術を紹介 定年後、上機嫌を愉しむ 死ぬまで元気に、知的に生きるために 齋藤(さいとう)孝(たかし)著/ポプラ社/1078円  「定年」という人生の大きな節目を意識したとき、明るい気持ちになる人もいれば、生活への不安をはじめ、自分の健康や居場所などが心配になって元気がなくなる人もいるだろう。  本書は、そんなモヤモヤを吹き飛ばし、人生後半を思いきり自分らしく生きていくための術を紹介し、シニア世代の背中を押してくれる。  著者は、明治大学文学部教授の教育学者で、「読書力」や「コミュニケーション力」などに関する多数の著書でも知られる。1960(昭和35)年生まれのまさに定年後世代であり、本書では自身の人生観や死生観、病気の経験にふれ、大病を経験してからは「いつ終わりが来てもかまわないという淡々とした感覚」を持って、現在まで立ち止まらずに、好きなこと、新しいことにチャレンジし続けているという。そして、「何かに打ち込んでいる途上で」、「上機嫌で笑いながら、軽くスッと事切れるのが私の理想です」という心情を明かす。本文では、定年後のシフトチェンジの仕方から、コミュニケーションや学び、孤独やプライドについての考え方、不機嫌から上機嫌へ転換するためのカギなどを説く。シニア世代向けの指南書だが、高齢者雇用のためのヒントもみつかるだろう。 これからの多様な人材の能力活用に向けて、人事労務担当者にとって参考になる一冊 日本女性の仕事とキャリア ―職業とタスクからみる均等法後40年― 小松(こまつ)恭子(きょうこ)著/独立行政法人労働政策研究・研修機構/3630円  雇用における性別による差別を禁止し、均等な機会・待遇の確保を目的とした「男女雇用機会均等法」。1986(昭和61)年の施行から2026(令和8)年は40年の節目を迎えた。働く女性の人数は大幅に増えたが、そのことが、女性の仕事の質の向上につながったのか。  本書は、女性の就業を「質」の面からとらえ、仕事(職業およびそれを構成するタスク)に着目した実証分析により、現代の日本女性の就業行動と能力活用の実態を多面的に解明する。さらに、キャリア継続やスキル活用を制約する要因についても考察する。主として女性のキャリアを対象としているが、高齢者雇用が拡大するなか、家族の介護や自身の健康にかかわる「制約」を抱えている高齢労働者は多い。日本の雇用システムは長く無限定な働き方を前提としてきたが、著者は、「制約を抱える労働者が例外ではなくなりつつある状況のもとで、また働き方や仕事に対する価値観が多様化するなかで、その仕組みはどのように再構築されるべきなのか。本書は、こうした問いに向き合うための手がかりを提供したい」とまえがきに綴っている。  人事労務担当者がこれからの人事施策を考える際に参考になる一冊である。 ※リーダーズトーク(2022年5月号)は、JEEDホームページからもご覧いただけます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202205/html5m.html#page=3