BOOKS AI時代の働き方について新しい知識や気づきが得られる、人事担当者におすすめの書 ジョブ型の真実とAIと協働 組織の競争力の源泉を問い直す 山崎(やまざき)憲(けん) 著/日本生産性本部生産性労働情報センター/3080円  著者は明治大学専任教授で、人事労務管理や人的資源管理論などを専門とし、AIやICTの進展が雇用システムに及ぼす影響や、新しい労働組織と社会のあり方などをおもな研究テーマとしている。本誌8月号では、新連載「AIと歩む人生100年時代」の第1回目の執筆者として、AIの実際やAI時代に活かすシニア人材の経験などについてご寄稿いただいた★。  本書は、「ジョブ型」か「メンバーシップ型」かといった表面的な二項対立を説くのではなく、「そもそも『ジョブ型』とは何か。『メンバーシップ型』とは何のために成立し、どのような役割を果たしてきたのか」といった問題から、日本や諸外国の歴史や事例をもとにひも解いていく。すると、アメリカの企業がいま重視しているのは、職務の固定ではなく、ジョブ同士のつなぎ目である「連携と協働の設計」であり、「ジョブ型」の中身はすでに変わっているという。そして、AIの進化によって仕事そのものの中身がつくり替えられると指摘されるなかで、組織の「協働」のあり方がどう変わり、それによってどのような問題が生じるのかを問いかける。  AI時代の働き方などに関する、最新の知識と気づきが得られる価値ある一冊である。 高齢の親が自宅で安全・安心に過ごすために。介護のプロによる90超のヒント集 自宅で暮らしたい 「介護未満」の親の支え方 藤原(ふじわら)清明(きよあき) 著/青春出版社/1210円  元気だと思っていた親にふと老いを感じ、不安を抱いた経験は多くの人にあるのではないか。  本書は、まだ介護認定を受けるほどではないけれど、離れて暮らしている、あるいは一人でいる時間が長いといった親の「日常生活が心配」という人におすすめしたい一冊。これまで1000人以上の高齢者の介護にたずさわってきた介護のプロが、家事、食事、通院に役立つ方法から体力・脳力の低下対策、つまずきやケガ、病気を防ぐコツまで、親が自宅で安全・安心に過ごすためのヒントの数々を紹介している。  例えば、高齢になると目が見えづらくなるが、茶碗の内側の色を変えれば食べ残しを減らせることもあるという。ほかにも、リフォーム工事なしで風呂場での転倒を防ぐひと工夫や、夜間の転倒事故を防ぐセンサーライトの活用、老いた親との「雑談テク」、老化を遅らせる趣味・娯楽のこと、日常の不便を解消するための高齢者向け有料サービスの利点や料金の目安など、90項目を超える知恵や工夫が満載である。  「介護未満」の暮らし方を意識すると、「要介護の予防になる」と著者は最後に説いている。親を思う子世代のみならず、自らの老いを感じ始めた世代にも有益な内容といえるだろう。 旅館・ホテルのスタッフ定着率を高める評価制度や面談とは? 異業種の人もヒントが得られる一冊 人が辞めない旅館・ホテルのつくり方 ―宿泊業の定着力を高める「評価・報酬制度」の教科書 三ツ井(みつい)創太郎(そうたろう) 著/同どう文ぶん舘かん出版/1980円  外国人観光客の増加を背景に日本の宿泊業界の売上高は右肩上がりと報じられる一方で、旅館やホテルでは深刻な人材不足が続いている。  本書は、コンサルティング会社を設立して、日本の旅館・ホテルを対象に人材採用や評価制度構築、組織活性化といった実務支援を行っている著者が、その経験から導き出した「人が辞めない旅館・ホテルのつくり方」を、事例を盛り込みながら解説する。旅館・ホテルの人材不足の根底には、採用しても辞めていく構造的な課題があり、その原因を追究して定着率を高めるために、やる気を引き出す「評価制度」、社員がイキイキと働く「報酬制度」、効果を最大化する「フィードバック面談」などを提案し、それぞれの必要性や構築のノウハウを説く。  旅館・ホテルの人材定着に特化した書籍だが、人が辞めない職場づくりは、どの業界でも共通の課題。本書の内容は働き方の柔軟性や人を大切にすることを重視したもので、例えば、介護などの家庭の事情による離職を未然に防ぐことや、社員が成長を実感できる評価制度は年齢にかかわらずやりがいを持って働くことができる人材の育成につながるなど、ほかの業界にとっても多くのヒントが得られる良書である。 生涯現役で働くためのヒントも満載!50代からの「資産戦略」と「稼ぎ方」を説く 定年後のお金の悩み、解決します 荻原(おぎわら)博子(ひろこ) 著/河出書房新社/1100円  相次ぐ物価上昇に家計が苦しくなるなか、老後資金に不安を募らせている人は多いだろう。長生きはしたいが、医療費や介護費の負担についても気になる。さて、どうしたらよいのか。  本書は、定年後のお金の不安を解決し、自由に健康に生きるために、50代から始めたい有益な資産形成と心を豊かにする稼ぎ方を詳しく解説する指南書である。著者は、経済ジャーナリストとして幅広く活躍する家計経済の第一人者。マネープランの専門家というイメージが強いが、元気なうちは社会とつながり自分の役割を持つことのできる仕事を続けていくことを薦めており、本書においても「50代からやるべきスキルの棚卸し」や「定年後に活きる『稼ぐ力』の鍛え方」といったテーマで定年前後の働き方や仕事の見つけ方、稼ぐ方法などを説いている。中高年世代が生涯現役で働くためのヒントも多く得られるだろう。  さらに、資産の守り方や活かし方に加え、定年後を健康的に生きるための50代からの健康戦略や地方移住のメリット・デメリット、生前贈与の活用、市民農園での自給自足体験など心身の健康づくりに関する情報やアドバイスも豊富で、視界が開けるような一冊となっている。 「老い」を体験した実感を、前向きなメッセージとともに綴ったエッセイ 年とる力 阿川(あがわ)佐和子(さわこ) 著/文藝春秋(ぶんげいしゅんじゅう)/1045円  幅広い世代の読者から親しまれているエッセイストで作家の阿川佐和子さんが、72歳を迎えてから、「老い」をテーマに、「高齢者初心者マークをつけたくなる」と実感した自身の変化や新たに始めたこと、大事にしたいことなどをユーモアたっぷりに綴った新書判のエッセイ。刊行後、話題を集め続けているという。  食べることや、体重計に一日5回乗るという「お気楽ダイエット」、70歳にして始めた趣味・習いごと、老いてゆく体のこと、友だちとのこと、身近な人との別れや死について考えることなど、日常のことも深刻な話題も、軽妙に語っているような文章が続いていく。もちろん、楽しいことばかりではないが、「一つ失うたびに笑ってみる」、「だんだん弱っていく自分の身体について、面白がる気持ちを忘れないでいたい」といった前向きなメッセージが読者の心を動かす。  また、「『こういう高齢者もいるのか』と呆れ、笑い、そして日常の小さな元気の源にしていただければ」と自身を記し、「良き年の取り方」の参考になれば、とも綴っている。企業の人事労務担当者の実務に直結しているわけではないが、シニアが実感する老いやそのときの思いなどに触れることができる内容である。 ★第1回(2026年8月号)は、JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202608/#page=42 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します