エルダー2019年4月号
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2019.48す。普通人材との差が最も大きかったのが「独創性」でした。 40代になると、プロジェクトをマネジメントする役割をになう人が多くなりますが、活躍人材の行動特性でポイントが最も高いのは「挑戦力」であり、普通人材との差が最も大きかったのも挑戦力です。また、入手した幅広い情報を取捨選択する「情報取捨選択力」、予期しない状況でも臨機応変に対応する「状況対応力」なども求められます。 50代の活躍人材の行動特性のポイントが最も高いのは「探求心」(よりよい成果・品質を求める)で、2番目に「状況対応力」が入っています。興味深いのは、普通人材との差が大きかった行動特性として「学習力」があげられることです。新たな知識やノウハウを修得する力です。実は、ここに出てきた挑戦力、好奇心、学習力は業界を超えて必要な能力でもあります。新しい学びで「変化対応行動」を―先生は「どのような人材が変化に対応できるか」、という研究もされています。具体的に教えてください。佐藤 いまの仕事に必要なスキルは学べますが、いまの時代は、不確実性が高まっており10年、20年後に備えて何を勉強すればよいかはだれにもわかりません。確実なのは、新しいことを学ばないといけないということです。そのときに大事なことは「知的好奇心」、「チャレンジ力」、「学習習慣」の三つを持っていること。この三つを備えていると「変化対応行動」を取れることが、私たちの研究でわかっています。 今後どのような変化が起こるのかわかりませんが、変化にあわてないためには、世の中の出来事に常に関心を持つ知的好奇心が必要です。また、新しいことに取り組むチャレンジ力、そして新しいことを学ぶ学習習慣があることが大事になります。 この三つを日ごろからやれていれば変化対応行動が取れますし、将来への不安も低いことが明らかになっています。特に情報サービス産業にたずさわっている人は、自分は5年後、10年後も仕事ができるのか強い不安を持っていますが、逆にいえば、三つの行動が取れていれば不安も小さくなるということです。―どのようにすれば、変化対応行動を取れるようになるのでしょうか。佐藤 変化対応行動力が高い人と低い人にわけた電機産業のホワイトカラーの調査があります。両者のこれまでの仕事の経験や仕事以外の行動の違いを調べたものです。 わかったことは、変化対応行動力が高い人は、比較的変化の激しい職場で仕事をしてきたということです。つまり新しい仕事にチャレンジする必要に迫られ、新しいことを学ばなければいけない職場にいた人は変化対応行動を取りやすい。逆に、これまでに仕事の変化が少なく、順風満帆だった人は、変化対応行動が取れない可能性もあります。 変化対応行動における学びとは、知識をひたすら詰め込むことではありません。新しい学びとは、これまでにつちかった知識・経験と対立することも学ばないといけません。なぜなら、いままでの仕事のやり方が、全部とはいいませんが一部通用しなくなるわけです。これからの学習習慣は、「これまでのやり方と違うよ」といわれたことも学ぶ。つまり、正しいと思っていた価値観を変えられるかどうか、アンラーニング、学習棄却※できるかも重要になります。多様な価値観の人材との交流を―価値観の転換を含めて、企業としてはどのような支援をしていけばよいのでしょうか。佐藤 変化対応行動力が高い人は、企業内で自分と違う価値観を持っている人と一緒に仕事をしたり、交流することが多いこともわかってい※ アンラーニング、学習棄却……すでに学んだ知識や既存の価値観を捨て、新たに学び直すこと

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