エルダー2019年4月号
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特集1エルダー9業界別 シニア人材の活かし方ます。例えば、女性の上司に仕えた、組織風土が違う関連会社に出向して働いた経験などです。また、企業内だけではなく、企業の外でもさまざまな交流を経験していたこともわかっています。 したがって社員の変化対応行動力を高めるには、自分と違う価値観の人と交流する機会を増やすことです。その点では、多様な人材が活躍できる職場づくりを推進するなど、企業のダイバーシティマネジメントも極めて重要です。 また、働き方改革によって生まれた時間をどう使うかも大事です。自分のために使ってもいいし、外に出ていろんな人と交流することも、社員が変化対応行動力を高めることにつながります。例えば、私が教えているビジネススクールでは企業の役員、部長、課長も学んでいますが、みんな学生であり、同級生です。社内での役割から学生という役割に変わるために、会社のなかの価値観を捨てざるを得ないし、単に学ぶこと以外に得られる学びもあるのです。マンションの管理組合の役員などをやってもいいでしょう。会社の役割とは違うため、自分の言い分を周りは会社の部下のように忖そん度たくもしてくれない。これが学びになるのです。―前述の「高齢者雇用推進ガイドライン」でも、同じ仕事に慣れているからずっと任せるのではなく、あえて違ったことをやってもらうことを、30代から積み重ねていくことも大事だと指摘しています。佐藤 そうですね。ガイドラインでも多くの仕事・経験を積ませるとともに、研修などを活用して「予期しない状況」をつくり出し、ロールプレイで解決する練習を経験しておくことを推奨しています。 個別のスキルはすぐに役に立たなくなる可能性があるので事前に学ぶことはできません。会社がこれを勉強しろといって役に立たなかったら会社の責任問題にもなりかねませんしね(笑)。何かを学べという必要はありません。学習習慣を確立することが大切で、学ぶ内容は問いません。 リクルートワークス研究所が実施した社会人の学びの研究調査によると、OJT、OFFJT以外に、いまの仕事に必要なスキルを勉強している人は約4割でした。ところが翌年も継続して勉強し続けている人は少ない。必要がなくなれば学ばなくなってしまう人が結構多いのです。企業の役割としては、世の中に関心を持ち、社内外で違う価値観に触れ、学び続ける社員をどのようにつくっていくかが重要です。そのためには学ぶ時間を用意してあげること、そして学んだ中身ではなく、自分と価値観が違う人と交流し、気づきを得るなど学んでいる社員を素直に褒ほめてあげることが大切でしょう。佐藤博樹教授さとう・ひろき中央大学大学院戦略経営研究科教授。専門は人的資源管理。内閣府の男女共同参画会議議員やワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議委員、経済産業省のダイバーシティ経営企業100選運営委員長、当機構の高年齢者雇用開発コンテスト審査委員長などを務める。『人材活用進化論』(日本経済新聞出版社)、『職場のワーク・ライフ・バランス』(共著、日経文庫)など著書多数。

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