エルダー2019年4月号
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特集2人生100年時代 継続雇用・定年延長を考える本日は、60歳以降の人事管理の今後について、最新の研究成果をふまえてお話しさせていただきます。高齢社員の人事管理についてお伝えしたいことの一つは、「人手不足だからとりあえず雇う」といった短期的な視点での高齢社員活用は、もううまくいかない時代になっているということです。そうではなく、通常のマネジメントに組み込む、あるいはパートタイマーやアルバイトなどと同様に、60歳以降を1グループであるという視点でとらえ、活用方針を明確にして、そのグループの人事管理を整えていくということが大事になっています。まずは、65歳までの人事管理をしっかり考えることが重要です。制度設計はもちろんですが、それを上手に動かすための仕掛けも必要となります。その二つを合わせて人事管理を整備すると、65歳以上の継続雇用や定年延長、定年廃止もやりやすくなることが、研究の結果からわかっています。一方、60歳以降の方々は、会社から期待されている役割、あるいは、自分の強みが何かを認識することが、まずは求められます。会社が自分に期待している役割がわからない場合は、会社にそれを確認します。なかには、上司が高齢社員に遠慮して、期待する役割を伝えていないケースもありますが、それではお互いに十分なパフォーマンスを発揮できません。期待される役割を高齢社員自身が認識することは大変重要です。また、ぜひ実施していただきたいこととして、60歳以降の仕事と生活について、早い段階で考える場をつくるということがあります。50歳、55歳などの節目に行う退職準備教育などです。働く方は、「自分のキャリアは自分でつくる」という意識を持って、60歳以降のことを早いうちから考えて準備し、働くイメージを明確にしておく。自分はどういう働き方をしたいのかを考えて、会社に伝えることが重要になります。高齢社員の人事管理を考える際のポイントは、高齢社員に企業の業績に貢献してもらうための仕組みを整えることです。貢献に対する成果として、例えば報酬については、高齢社員に対しても、働きに見合った支払いができるような仕組みをつくっていく必要があります。また、ほかの従業員に認識してもらうことも大事なポイントです。高齢社員がいることで、「前の上司がいてやりにくい」などの声が聞こえる職場では、生産性が下がってしまいます。そうならないよう「高齢社員の人たちにしっかりと働いてもらう仕組みを会社は考えていて、こういう役割を期待している」ということを、ほかの社員に伝えて理解してもらう。そうして初めて、高齢社員の能力が100%発揮できる、会社の求めている状況が得られるのです。なお、研究成果の一部は、高齢・障害・求職者雇用支援機構の『継続雇用制度の現状と制度進化』※に掲載されていますので、よりくわしくお知りになりたい場合は、そちらもお読みいただければと思います。高齢社員の人事管理 ―現状と今後の展望―千葉経済大学経済学部経営学科 准教授 藤波 美帆講 演※ 『継続雇用制度の現状と制度進化』  https://www.jeed.or.jp/elderly/news/2018/q2k4vk000001t5bt-att/q2k4vk000001t5d0.pdfエルダー19宮城会場

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