エルダー2019年4月号
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特集2エルダー25人生100年時代 継続雇用・定年延長を考える浅野 はい、高齢社員の場合は、能力やどのような勤務がしたいのか、あるいは、健康面などに多様性が出てきます。また、役割を変えるとなると、よほどていねいに進めていかないと、なかなか納得が得られません。 いまお二人にお話しいただいた、個人面談やキャリア研修、1カ月間のお休みといったマインドリセットの仕組みは大いに参考になると思います。60歳を過ぎてからの賃金の設計とその考え方、社員の反応について今野 続いて、賃金についてお聞きします。両社とも、60歳を超えると賃金は60歳到達時点の6~7割になるとのことですが、そうされた理由、背景などをお話しいただけますでしょうか。能村 当社の賃金設定は、2003(平成15)年に60歳定年後の「嘱託再雇用制度」を整備した際に取り入れた考え方で、当時は60歳定年で辞めても年金が受給できたので、公的年金に企業年金を足した額を一つの水準とし、それより高くなるように、賞与を含めて月額14カ月分を目安に設計しました。 65歳定年制の導入時も、基本給部分はこの考え方を踏とう襲しゅうしています。ただし、基本給に残業相当額をプラスしたことと賞与も加えたことで、現行制度では60歳到達時の賃金の6~7割、場合によって8~9割の社員もいます。61歳以降でも業績がよく、個人査定も高い場合は、賞与の支給率は現役の3分の2ですが、かなり高い賃金になっています。千 当社で定年を延長した2013年当時は、ほかの企業の事例がほとんどなく、かなり苦労したと聞いています。60歳以降は資格・役割が変わるので、60歳到達時点の水準より下げることが前提としてありましたが、下がるとはいえ、一定の水準の生活を送ってもらいたいということと総額人件費をみながら決めていきました。今野 60歳を境にして賃金が変わることについて、社員からの不満や、それに対する説明の仕方などについてお聞かせください。千 制度移行期は、従前の再雇用制度の水準から上がるので不満は出ていませんでしたが、定年延長から5年が経過し、いまは比較対象が60歳到達時点の水準になるので、少し不満が出始めているのかなととらえています。 ただ、その一方で60代の社員意識調査のスコアが年々上がっているのです。賃金が一定の水準を保っていれば、仕事の中身ややりがいなどのほうが大事になっているのではないかと思っています。能村 当社でも全社員に100の質問をするという定点観測をしているのですが、満足度は年々上がってきています。また、65歳を超えてからの「アクティブ・エイジング制度」の社員も、生涯現役の道を示せていることがよいのか、不満の声が出ているという状況は見受けられません。今野 ありがとうございます。浅野さん、これらの点について、ご見解をお願いします。浅野 賃金のことは、水準の話に加えて、どのような考え方で決めたのかも重要です。企業の考え方や事情があらわれる点だと思います。能村盛隆氏 (大和ハウス工業株式会社 経営管理本部 執行役員 人事部長)

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