エルダー2019年4月号
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高齢者に聞くエルダー37した。会員登録させてもらい、翌日から「奈古味」の調理場で働かせてもらうことになりました。早いものでそれから10年が過ぎました。夫を看病しながら働かせてもらえたことに感謝するばかりです。公益社団法人目黒区シルバー人材センターは会員1300人を擁ようし、平均年齢は75歳である(2018年8月現在)。2003年に女性会員で運営するレストラン「奈古味」を開業。2015年8月号の本誌では、同センターの取組みを紹介している。同世代の仲間たちに支えられはじめはホール勤務を打診されたのですが、40年間もお客さまに接してきたので、調理場に入ってみたいとお願いして実現しました。お店が商店街の真ん中にありますから、扱う食材はほとんど商店街で仕入れます。地元の活性化につながりますし、何よりも新鮮です。商店街のみなさんとお話しするのも楽しみで、うちの目の前の八百屋のおかみさんはたしか90歳近くじゃなかったでしょうか。まさに八百屋ひとすじ、生涯現役です。また、商店街の名前が「平和通り商店街」というのも気に入っています。このあたりも空襲で焼けたそうですが、終戦後見事に再生しました。温かい雰囲気が大好きです。「奈古味」で働いてきた日々は、そのまま夫の看病に明け暮れた日々でした。入退院をくり返していましたから、近くの病院ならまだしも、遠方に転院したときは気が滅入ることもありましたが、同世代の働く仲間たちとわいわい話すことでつらいことも乗り越えてこられました。私は世間知らずのところがあり、高齢者に対するさまざまな公的サービスなども仲間から教えてもらい「これで生活が楽になったわ」と言ったらあきれられました。やさしい同僚に囲まれて、いまは毎日がとても楽しいです。シルバー人材センターで働いた報酬は配分金という形で支払われる。内藤さんはこれまで自営だったため、64歳で初めて給与振込明細をもらった。病床の夫に見せたときの嬉しそうな顔をいまも覚えているという。出会いを糧かてに生涯現役を「奈古味」の営業時間は11時30分から17時30分。朝番は8時30分から15時まで、昼から入るときは12時から閉店まで、調理とホールで2交替のローテーションを組み、週2〜3回勤務しています。1日5人で営業していますから結構忙しいですが、みなさん私と同じか、もっと年配の人も頑張っているので負けてはいられません。朝番のときは、下ごしらえなどにすぐに取り掛かり、午後からのシフトのときは洗い場も担当します。自分たちで運営しているという気持ちが、全員の心の支えになっているような気がします。夫が亡くなったときにリーダーの決断で8カ月間の長期休暇をいただきました。「奈古味」のお役に立つことで感謝の気持ちを示したいと思っています。「奈古味」ではつくるのも高齢者ですが、お客さまも高齢の方が多く、毎日コーヒータイムを楽しむ常連さんもいます。40席が満席になると実ににぎやかで、あちこちで話に花が咲いて、私たちまで笑顔になります。料理が根っから好きな私には、いまの仕事は天職かもしれません。料理と食べることが趣味なので、日ごろから一人の食卓にも手をかけています。仕事帰りに仲間とご飯を食べるのも楽しみの一つで、ときには少しお酒を飲むこともあります。休日にはときどき、姉と近郊の温泉を巡っています。昔はゴルフをやりましたが、最近は行っておらず身体を積極的に動かしていないので、せめて店まで自転車を使わずに歩こうかと思っています。若いときに取得した国家資格はその後の人生であまり活用していませんが、いままでずっと髪を自分で染めているのが密かな自慢です。そのうち資格が役立つときがくるかもしれません。だから人生は面白いのです。

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