エルダー2019年4月号
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2019.42コーケン工業株式会社 代表取締役社長飯尾祐次さんて働く意志があって真面目に仕事に取り組んでもらえれば、60歳を過ぎてもチームの仲間として貢献し、ものづくりの戦力になることを発見したのです。 これをきっかけに、地域には働きたいと考えている高齢者がもっといるのではと考え、「健康なおじいちゃん! おばあちゃん! 大募集、85歳まで」という折込チラシで求人を始めました。1990年のことです。 すると、翌日には会社の前に何十人ものお年寄りの行列ができていました。そんなに来るとはだれも思っていなかったので驚きました。なかには手押し車を押してきた人もいました。同業者には「そんなに年寄りを集めてどうするんだ」と笑われたそうですが、そのときから高齢者の雇用が本格的に始まったのです。―経営理念に「全社員が物心ともに豊かに、健やかになる事を追求する。雇用の継続に努め、地域社会の繁栄に貢献する」という言葉―貴社では、高齢者や障害者の雇用に積極的に取り組み、2017(平成29)年に「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞中小企業庁長官賞を受賞されました。高齢者雇用のきっかけについて教えてください。飯尾 当社では現在、60歳以上の社員が約90人働いています。社員総数は約290人ですから、約3分の1が60歳以上となります。 高齢者雇用の取組みの始まりは、社員が100人前後だったバブル経済のころにさかのぼります。仕事が忙しい一方で、高校、大学に求人募集をかけても見向きもされず、深刻な人手不足に悩んでいた時代です。そんなとき当時の社長の村松(久範氏、現会長)が、日中にスーパーで買い物をしたり、カラオケに興じている元気な高齢者がたくさんいることに気づきました。そこで、カラオケ店で何人かの高齢者に「そんな時間があるならうちで働かないか」と声をかけたところ、実際に数人の高齢者が働くことになりました。そしを掲げています。高齢者の雇用を含めてどういう思いが込められているのでしょうか。飯尾 社員が楽しく働くことは、コミュニケーションを活性化させ、アイデアやいろいろな発想が生まれ、結果としてよい製品ができ、お客さまに喜んでもらえます。しかし、仮によい製品ができたとしても、社員が疲弊していたら楽しい会社ではなくなるし、コミュニケーションも悪くなり、よい製品を継続的に生み出し続けることができなくなるでしょう。 つまり、社員が楽しく働くことが会社のためになるのだという考えのもとで経営理念をつくりました。また、経営方針には「チームコーケンの幸せ」として、「社員一人ひとりを尊重し、働きがいのある会社の実現を目指します」と書いています。社員がチームの一員として貢献することの幸せを感じられる会社でありたいと思っています。 現在、当社では農業機械や建設機械の部品に使われる金属パイプの製造を手がけています。約20年前は二輪、四輪メーカーの部品が売上げの6割を占めていましたが、国内メーカーの生産拠点の海外移転が進み、厳しい価格競争にさらされていました。そのときに、折込チラシで高齢者の求人をスタート翌日、会社前には高齢者の大行列が

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