エルダー2019年4月号
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2019.442※ バイスプレジデント……法人の代表(プレジデント)を補佐または代理する役員の名称ケーススタディ安全健康職場づくりに働けるで高齢労働者が安全・健康に働ける職場づくりについて、労働災害や業務上疾病などの事例をもとに専門家が解説。今回は、東内一明先生に、高齢労働者の職場環境改善について解説していただきました。職場環境改善費用はコストでなく投資 いまから20年余も昔、私がまだ現役の労働基準監督官であったころ、アメリカの安全衛生状況を視察することになり、シリコンバレーを代表する、とある企業を視察することになりました。本社の建物は、カリフォルニアの鬱うっ蒼そうと茂った広大な森のなかにあり、何となく大学のようなたたずまいで、応接をしていただいた安全衛生ている」と私を非難し、「コストであるなら、当社の株主は支出することを承知しないだろう。リターンのある投資だから許されており、来年度はもっと多くのリターンを求めて増額する予定だ。株主もそれをよしとするだろう」と胸を張りました。 私は恥じ入り、少し頭を下げました。同時に、自信たっぷりに予算を公表し、当時日本では聞いたことのない株主の意向を理由とする説明に、とても新鮮な感覚を覚えました。 ともあれ、いま日本は、比類ない速さで高齢化が進み、現在でも、高齢者を受け入れなければ、職場は到底成り立ちません。将来ますますその傾向は高まります。高齢者のために職場を改善することは、企業活動の維持・発展というを担当するバイスプレジデント※も、医学部出身ということでした。 彼は、知的な雰囲気を漂わせながら、「当社は、売り上げの30%を研究費用に回して、未来への投資を続けている革新的な企業である」と自慢するのです。そこで、当時若くて生意気だった私は、「ならば、安全衛生のためのコストはどのくらいか」と、意地悪く質問しました。すると彼は、少し頬を紅潮させて、「安全衛生の費用はコストではない、投資だ、あなたは間違っ一般社団法人労務安全監査センター 東ひがし内うち 一かず明あき最終回高齢労働者の職場環境改善―改善費用はコストではなく、未来への投資―

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