エルダー2019年4月号
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にで健康安全職場づくり働けるエルダー45そのものの高さを調節できない場合は、床の高さを調節しなければなりません。図5は、床を掘って、作業台の高さを作業者にとって適切な高さに改善した例です。 高齢者にとって、重量物を持ち上げ、かつ保持するような作業は、非常にたいへんです。図6は、一斗缶を持ち上げて内容物を別の容器に注ぐ作業をなくすために、一斗缶の専用置台を作成し、一斗缶には、別途購入したコックを取りつけ、コックの下に容器を据えて注げるようにしています。重量物の持ち上げ・保持作業の改善 図7は、生産の最終場面で製品を梱包し、出荷する際、従来は手作業で積み込んでいたものを、クレーンで積み込むことにした例です。 ここでご紹介した改善策は、一般的で、かつ比較的安価に実行できるものもあります。しかし、それなりの費用が必要になります。特に最後にご紹介した機械化による製品の積込み作業には、高額の費用が投入されています。 しかし、いずれの場合も、企業の担当者は、より望ましい未来への投資作業自体が大幅に効率化し、生産性が大きく向上しており、元は十分に取れていると話しています。 振り返ってみると、ほぼ100年前に始まった安全第一の運動もそうでした。安全第一の運動の推進のために投じられた人々の時間と知恵と費用が、圧倒的に安全な職場と生産性の向上を実現しました。だからこそ実利主義のアメリカで、大いに盛んになったのです。これが日本にも伝わり、私がこの仕事を始めるべく旧労働省に入省した半世紀前と比べても、安全性と生産性の向上は実に歴然としています。 この道に誤りはありません。かつて私が視察したシリコンバレーのバイスプレジデントのように、私もいささか頬を紅潮させて、次のように、主張したいと思います。 「高齢者のための環境改善は、より望ましい未来への投資」です。図7 クレーンによる積み込み作業例図6 一斗缶の専用置台の設置例〈資料提供〉 図1〜4・7……株式会社不二家      図5・6……山崎製パン株式会社  ※ イラストはご提供いただいた資料を元に編集部で作成したものです。ひがしうち・かずあき一般社団法人労務安全監査センター代表。1966(昭和41)年旧労働省入省、熊本・茨城労基局長などを歴任。現在、一般社団法人労務安全監査センターの代表、大手製造業などの顧問を務める。『働く高齢者の安全・健康管理』(労働新聞社)など著書多数。

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