エルダー2019年4月号
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エルダー3りを考えて、効率化する工夫も求められます。そういった意味では、社員一人ひとりの工夫や貢献が現場を支えているといえるでしょう。―現在は、高卒で入った18歳の社員から、上は90歳まで、幅広い世代の社員が働いているそうですね。飯尾 会長の村松は、家族のような関係が大事だと常々話していますが、私もそう思います。18歳から90歳までの社員が在籍する当社は、いわば四世代が同居する家族のようなものです。親はわが子に厳しく接するものですが、じいじ、ばあばは孫にはやさしいですよね。同じように、うちの職場でも高齢社員は新人や若い人に対して面倒見がよく、やさしく教えながら育ててくれています。指導マニュアルとは別の自然体の教えもあるのです。 障害者が新しく入れば、できる仕事を見つけていねいにフォローする。教えるじいじ、ばあばにとっても、若い人と接することは、楽しく働くことにつながり、一緒に働く若い社員はそれを見習い、人に対するやさしさや思いやりの心を学び、身につきます。それが職場の働きやすさや気持ちよく仕事ができる環境につながっていくのです。 こうした家族的社風はビジョンがあってできたわけではなく、この30年間に自然につちかわれてきました。私もそれを引き継いで大切にしていきたいと思っています。―すばらしい社風ですね。その一方で企業としては利益を出していくための効率的経営も求められます。同じ職場で高齢者と若者、障害者が協同しながら働くために作業工程などで工夫している点はありますか。飯尾 もちろん最新のNC旋盤やロボットの操作は若い人たちが中心になります。製品が完成するまでには、パイプ素材の加工・切断・曲げ・溶接・表面処理などさまざまな工程がありますが、それぞれの工程内での段取り作業や、前工程から後工程への物の運搬など、人のたずさわる仕事が多く存在します。特に安い輸入品に対抗してわれわれが生き残るために、大手がやりたがらない1本からの注文に応じる「多品種少量、短納期生産」にシフトすることが必要と判断し、それが可能な技術力を磨いてきました。その結果、いまでは地元以外にも顧客が広がりました。製品の数が増えれば、材料を運ぶ作業など工程の段取高齢者雇用をきっかけとしてつちかわれた四世代が同居する家族のような社風にこやかな表情で仕事をする八木きく子さん(87歳)と、それを見守る飯尾社長

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