エルダー2019年4月号
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ることになり、消化義務のカウントの管理が煩雑になるおそれがあります。実際の有給休暇指定の方法について4有給休暇が消化されていないことを把握して、適宜指定を実施しなければなりませんが、そのための準備も必要です。一つは、就業規則の改定です。有給休暇の指定命令については、現在の就業規則には記載がないはずですが、休暇に関する記載は絶対的必要記載事項であるため、記載することなく指定することはできず、記載せずに指定する場合には罰則の適用があると考えられています(労働基準法120条)。また、実際の指定にあたっては、労働者の意見を尊重することが求められているため、メールやそのほかの方法で、労働者の意見聴取を実施したうえで、有給休暇の指定日を決定する必要があります。企業における繁忙期に有給休暇の取得が困難であるなど、各企業の事情もふまえて、基準日から6カ月経過するまでに労働者からの意見聴取を実施したうえで、当該意見聴取の日から5カ月経過するまでの日を指定するようにすれば、労働者ごとに基準日が異なることを気にすることなく、5日の有給休暇を消化することができるのではないでしょうか。労働安全衛生法の改正1労働安全衛生法により、事業場における労働者が50名を超える場合には、産業医を選任する必要があります。同法の改正前における、産業医の役割としては、どちらかというと、非常時における面接指導や復職判断における主治医からの診断と比較するためのセカンドオピニオンとしての役割などが中心であり、日常的な関与が大きくない側面があったことは否定できないと思われます。今回の改正において、産業医の権限が拡大され、期待される役割や職務の範囲も広がりました。そして、それにともない、企業の産業医に対する情報提供義務が強化された結果、企業においては労働時間管理を徹底していかなければならなくなりました。また、労働者の健康管理に対する関与も強められています。これまでは、労働者と産業医が直接コンタクトを取ることは少なかったかもしれませんが、健康相談対応に必要な体制として、社内において選任した旨を周知するよう努めるものとされました。産業医に対する情報提供義務2産業医を選任した企業は、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として、以下の情報を提供する義務を負うことになりました。① 健康診断の実施後の措置、長時間労働者に対する面接指導実施後の措置、ストレスチェックの結果に基づく面接指導後の措置などに関する情報労働安全衛生法の改正によって、産業医の権限強化とともに、労働時間の把握義務の対象が管理監督者や裁量労働制、事業場外労働者にまで拡大されるなど、無視することができない変更が含まれていますので、留意する必要があります。A労働基準法以外の働き方改革関連法について教えてほしい働き方改革において、有給休暇消化義務や時間外労働の上限規制が取りざたされていますが、ほかに留意すべき規制や変更はないのでしょうか。Q22019.448

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